JP2004174778A - 有底の溝をもつ樹脂性物体とその製造方法と製造装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、有底の溝をもつ樹脂成形品の製造方法である。この方法は、流動性を有する樹脂を成形型に封じる工程と、成形型内の樹脂を保圧する工程と、成形型内の樹脂を貫通しない範囲で成形型内の樹脂に刃を差込む工程と、差込んだ刃を前記した保圧工程中に抜く工程とを備える。
この方法では、差込んだ刃が保圧工程中に抜かれる。このため、刃が抜かれた後にも成形型内の樹脂が保圧されることになる。刃を差込むことによって隆起してしまう部分に保圧がかかるために、その隆起の程度が小さく抑えられる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】本発明は有底の溝をもつ樹脂性物体を製造する技術に関する。また有底の溝をもつ樹脂性物体自体に関する。本明細書で使用する「樹脂性」とは、本発明が利用する「樹脂の性質」を有することを意味している。従って「樹脂性物体」とは、樹脂成形品自体又は本発明が利用する「樹脂の性質」を有する物体を意味する。また「樹脂性材料」とは、樹脂成形品のための樹脂材料又は本発明が利用する「樹脂の性質」を有する材料を意味する。
【0002】
【従来の技術】有底の溝をもつ樹脂性物体が必要とされている。例えば、自動車の内装用表皮には、エアバック展開時に破断し易いように、裏面に溝を設けておくことが必要とされている。溝をもつ自動車用表皮は、次のようにして製造される。まず流動性を有する樹脂性材料を成形型内に射出して成形型内に封じる。予め決められた量の樹脂性材料を射出すると、次に成形型内の樹脂性材料を保圧する。樹脂性材料の保圧は、成形型内に少しずつ樹脂性材料を射出していくことによって行なわれる。成形型内の樹脂性材料を保圧することによって、樹脂性材料が固化する過程で樹脂性材料の表面が変形することが防止される。この保圧工程中に、成形型内の樹脂性材料を貫通しない範囲で成形型内の樹脂性材料に刃(溝成形部材)を差し込む。保圧が終了すると、そのままの状態でしばらく放置して樹脂性材料を冷却する。この冷却工程中に、樹脂性材料に差込んだ刃を抜く。以上の製造工程を経ることによって、刃が差込まれた部分に溝が成形された自動車用表皮が製造される。製造された自動車用表皮は、溝が成形された面がエアバック側を向き、溝が成形されていない面が自動車の車室側を向くように配置される。
特許文献1等には、上記した樹脂性物体の成形方法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】
特開2000−141414号公報
【特許文献2】
特開平8−268205号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の製造技術によると、溝が成形されていない面の「裏面に溝が成形されている部分」に隆起が発生し、外観が損なわれる。この問題は、成形型の成形面に起因するものでなく、溝が成形されない面を成形する成形型の内面、特に裏面に溝が成形される部分の成形型の成形面をいかに平坦に加工しておいても、型から取出した成形物の表面に隆起が発生してしまう。
【0005】
本発明は、上記した実情に鑑みてなされたものであり、刃等の溝成形部材を差込むことによって生じる隆起の程度を小さくできる技術を提供する。これによって、外観に優れた「有底の溝をもつ樹脂性物体」を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段と作用と効果】上記課題を解決するために、本発明では、請求項1に記載の「有底の溝をもつ樹脂性物体(例えば樹脂成形品)」を製造する方法を創作した。
この方法は、流動性を有する樹脂性材料を成形型内に封じる工程と、成形型内の樹脂性材料を保圧する工程と、成形型内の樹脂性材料を貫通しない範囲で成形型内の樹脂性材料に溝成形部材を差込む差込工程と、差込んだ溝成形部材を前記した保圧工程中に抜く工程とを備える。
この方法では、樹脂性材料に差込んだ溝成形部材が保圧工程中に抜かれる。このために、溝成形部材が抜かれた後にも成形型内の樹脂性材料が保圧されることになる。溝成形部材を差込むことによって隆起してしまう部分が保圧されつづけると隆起の程度が小さく抑えられる。本方法を用いると、隆起の程度が小さく外観に優れた樹脂性物体を製造することができる。
なお、樹脂性材料を高速で射出して成形型内に封じる場合は、射出圧力によって溝成形部材が変形・破損する可能性があることから、射出工程直後、即ち、保圧工程中に溝成形部材を差込むことが好ましい。射出圧力と溝成形部材の剛性の関係によって、溝成形部材が変形・破損しない場合には、射出工程中に溝成形部材を差込むようにしてもよいし、溝成形部材を差込んでから射出してもよい。射出方向等を工夫することによって差し込まれた溝成形部材が樹脂性材料の流動を妨げないようにすることもできる。
【0007】
上記の方法では、溝成形部材を差込む前に、溝成形部材を冷却しておく工程を備えることが好ましい(請求項2)。
溝成形部材が抜かれた後に樹脂性材料が保圧されると、その圧力によって樹脂性材料に形成された溝を画定する側面同士が接触する場合がある。この場合、溝を画定する側面がある程度固化していないと、接触した側面同士が接合して溝が閉じてしまうことがある。溝成形部材を差込む前に溝成形部材を冷却しておくと、溝成形部材を樹脂性材料に差込んだときに、その溝成形部材と接触した部分(溝を画定する側面となる部分)を素早く固化させることができる。従って、樹脂性材料に成形された溝の側面同士が接合してしまうことを防止できる。
【0008】
上記の方法において、前記した差込工程の前に溝成形部材が差込まれる部分の樹脂性材料を加熱しておく工程をさらに備えることが好ましい(請求項3)。
樹脂性材料は、成形型と接触しているところから徐々に冷却されて固化していく。溝成形部材を差込むことによって、樹脂性材料の表面の固化層が樹脂性材料の内部に運ばれる。表面の固化層が厚いと溝成形部材によって運ばれる量が多くなり、これにより隆起の程度が大きくなってしまう。溝成形部材を差込む前に、溝成形部材が差込まれる部分の樹脂性材料を加熱しておくと、溝成形部材が差込まれる部分での固化層を薄くすることができる。このために、溝成形部材を差し込むことによって内部に運ばれる固化物の量を低減させ、樹脂性物体の表面に生じる隆起の程度をより小さく抑えることができる。
【0009】
なお、上記した各方法で製造された有底の溝をもつ樹脂性物体自体も本発明の創造物である(請求項4)。
この樹脂性物体は、溝成形部材を差込むことに起因して生じる隆起の程度が小さく、外観に優れている。
【0010】
また本発明では、有底の溝をもつ樹脂性物体の製造装置をも提供する(請求項5)。この製造装置は、キャビティが形成されているとともにそのキャビティに連通するガイド溝を有する成形型と、流動性を有する樹脂性材料をキャビティに封じる手段と、キャビティ内の樹脂性材料を保圧する手段と、前記したガイド溝に沿って移動可能な溝成形部材と、キャビティ内の樹脂性材料を貫通しない範囲で溝成形部材をキャビティ内に移動させるとともにキャビティ内に移動した溝成形部材を前記した保圧手段による保圧中に反キャビティ側に移動させる手段とを備える。
この製造装置によると、樹脂性材料に差込んだ溝成形部材が、樹脂性材料の保圧中に抜かれる。このために、溝成形部材が抜かれた後にも樹脂性材料が保圧されることになる。溝成形部材を差込むことによって隆起してしまう部分が保圧されつづけるために、その隆起の程度が小さくなる。この製造装置を用いると、隆起の程度が小さく外観に優れた樹脂性物体を製造できる。
【0011】
上記した製造装置は、溝成形部材をキャビティ内に移動させる前に、その溝成形部材を冷却しておく手段を備えることが好ましい(請求項6)。
この製造装置を用いると、樹脂性材料に形成された溝を画定する側面同士が接合してしまうことを防止できる。
【0012】
上記した製造装置は、前記した溝成形部材をキャビティ内に移動させる前に、その溝成形部材が差込まれる部分の樹脂性材料を加熱しておく手段を備えることが好ましい(請求項7)。
この製造装置によると、溝成形部材が差込まれる部分の樹脂性材料が加熱されるために、溝成形部材が差込まれる部分での固化層を薄くすることができる。このために、溝成形部材を差し込むことによって内部に運ばれる固化物の量を低減させ、樹脂性物体の表面に生じる隆起の程度をより小さく抑えることができる。
【0013】
なお上記した各製造装置において、流動性を有する樹脂性材料をキャビティに封じる間は、前記したガイド溝のキャビティ側の開口部を、溝成形部材で閉塞しておくことことが好ましい(請求項8)。
もし、溝成形部材が反キャビティ側に大きく引込んだ状態で樹脂性材料をキャビティに封じると、ガイド溝内に樹脂性材料が流れ込んでしまう。流れ込んだ樹脂性材料はガイド溝内で固化する。この場合、溝成形部材を差込むとガイド溝内で固化した樹脂性材料がキャビティ内に運ばれ、これにより樹脂性物体の隆起の程度が大きくなってしまう。本発明では、樹脂性材料をキャビティに封じる間に、ガイド溝のキャビティ側の開口部を溝成形部材で閉塞しておくために、ガイド溝内に樹脂性材料が流れ込まない。このために、樹脂性物体の隆起の程度をより小さくできる。
【0014】
また、溝成形部材は一様の厚みの本体部と先端に向かって細くなっている端部を備え、流動性を有する樹脂性材料をキャビティに封じる間は、溝成形部材の本体部でガイド溝を閉塞するとともに前記した端部がキャビティ内に突入する位置関係に維持しておいてもよい(請求項9)。
溝成形部材が先端に向かって細くなっているために、キャビティ内の樹脂性材料に溝成形部材をスムーズに差込むことができる。このようにすると、樹脂性物体の隆起の程度をより小さく抑えることができる。
【0015】
また、本発明のもう一つの創作物が請求項10に記載されている。この発明は、有底の溝をもつ樹脂性物体自体である。この樹脂性物体は、その溝を画定する側面同士がほぼ接触するほど近接しており、しかもその側面同士が接合していない。
この樹脂性物体は、例えば、上記した請求項1,2の製造方法や請求項5,6,8,9の製造装置によって製造することができる。
上記の「ほぼ接触するほど近接」とは、側面同士が実際に接触している状態又は実質上接触している状態をいう。例えば、側面同士の間隔が0.2mm以下である場合に、実質上接触しているといえる。この樹脂性物体は、溝が形成されていない面を押す力が加わっても、溝の側面同士が接触しているために撓みが少ない。このため強度的に非常に優れている。
この樹脂性物体は、例えばエアバックが展開し易いように溝が設けられた自動車用表皮に最適である。溝が形成されている面がエアバック側を向き、溝が形成されていない面が自動車の車室を向くように配置されると、自動車の車室から大きな力が加わったとしても破断せず、それでいてエアバックが展開するときにはしっかりと破断する。本発明の樹脂性物体は、非常に実用的である。
【0016】
【発明の実施の形態】各請求項に記載の発明は、次の形態で好適に実施することができる。
(形態1)請求項1から9のいずれかに記載の「樹脂性材料」は樹脂である。
(形態2)請求項1から10のいずれかに記載の「樹脂性物体」は樹脂成形品である。
(形態3)形態2の樹脂成形品は、エアバック展開時に破断し易いように溝が設けられた自動車用表皮である。
(形態4)請求項1,2,4,5,6,8,9のいずれかに記載の「保圧」は、少しずつ樹脂を射出することによってかけられる。
(形態5)請求項1から9のいずれかに記載の「溝成形部材」は刃である。
(形態6)請求項2,4,6,8,9のいずれかにおいて、成形型内に冷水通過経路が設けられる。この冷水通過経路を通過する冷水(約20度の水)によって溝成形部材が冷却される。
(形態7)請求項3,4,7,8,9のいずれかにおいて、成形型内に温水通過経路が設けられる。この温水通過経路を通過する温水(約40度の水)によって、樹脂性材料の溝成形部材が差込まれる側の面に接する成形型が加熱される。これにより、溝成形部材が差込まれる部分の樹脂性材料が加熱される。
(形態8)請求項1から9のいずれかでは、油圧シリンダによって溝成形部材を移動させる。
【0017】
【実施例】以下、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。図1は、本実施例の自動車用表皮製造装置(以下では簡単に製造装置と記載する)の一部を断面で表した図である。図1では、製造装置を極めて簡略化して示してある。
製造装置10は、左側にある第一成形型12と、右側にある第二成形型14と、第一成形型12に収納されている油圧シリンダ16と、その油圧シリンダ16を駆動する制御装置18と、油圧シリンダ16と接続している軸20と、軸20の先端に設けられた刃30,32,34等を備えている。
【0018】
第一成形型12と第二成形型14との間にキャビティ24が形成されている。このキャビティ24には樹脂が流し込まれる。キャビティ24の形状は、必要とされる自動車用表皮の形状に合わせてある。
第一成形型12内には、キャビティ24と連通するガイド溝50(図1では図示省略しているが図3から図6に示されている)が設けられている。このガイド溝50には、溝内を摺動可能な刃30,32,34が収納されている。
油圧シリンダ16と制御装置18との間には信号線26が接続されている。制御装置18は、油圧シリンダ16の動作を統括的に制御する。油圧シリンダ16は、制御装置18から出力される駆動信号がONされると軸20を矢印D1方向に移動させる。これにより、軸20の先端に設けられた刃30,32,34がキャビティ方向に前進する。また油圧シリンダ16は、制御装置18から出力される駆動信号がOFFされると軸20を矢印D2方向に移動させる。これにより、軸20の先端に設けられた刃30,32,34が反キャビティ方向に後退する。
【0019】
図中の符号60は冷水の通過経路である。冷水の温度は約20度に設定されている。この冷水通過経路60の冷水によって刃30,32,34が冷却されている。
また符号62は温水の通過経路である。温水の温度は約40度に設定されている。この温水によって第一成形型12が加熱される。これにより、第一成形型12のキャビティ24側の面がある程度高温に維持されている。
【0020】
次に、図2を参照して、上記構成を有する製造装置10で自動車用表皮を製造する方法について説明する。図2には、自動車用表皮の製造方法のタイムテーブルが示されている。
(射出工程)
射出機(図示省略)によってキャビティ24に流動性を有する樹脂を注入する。これによりキャビティ24内が樹脂で満たされる。射出工程では、完成品である自動車用表皮の全樹脂量のうち約95%の樹脂が注入される。残りの5%程度の樹脂は、次の保圧工程で注入される。
(保圧工程)
保圧工程では、キャビティ24に少しずつ樹脂を注入していく。ここでの樹脂の注入も上記した射出機によって行なわれる。これにより、キャビティ24内の樹脂に圧力がかかり、固化していく樹脂表面の変形が抑えられる。保圧工程は、自動車用表皮の全樹脂量のうち約5%の樹脂を約3〜7秒かけて注入していく。
保圧工程中に、油圧シリンダ16がONされて、刃30,32,34が樹脂に差込まれる(即ち刃30,32,34をキャビティ24内に進入させる)。この様子は、後で詳しく説明する。刃30,32,34を差込むタイミングAは、保圧工程に入ってから約0.1〜3.0秒後である。このタイミングAはもっと早くしてもよい。例えば、保圧工程に入ると同時に実行してもよいし、射出工程中の最終段階で差込むようにしてもよい。逆に、タイミングAをもう少し遅くしてもよい。
差込んだ刃30,32,34は保圧工程中に抜かれる。刃30,32,34を抜くタイミングBは、保圧工程に入ってから0.4〜6.0秒程度である。タイミングAとタイミングBとの間の時間(刃30,32,34が樹脂内に差込まれている時間)は0.3〜4.0秒程度である。刃30,32,34が抜かれてからしばらくは樹脂に保圧がかけられることになる。
(冷却工程)
キャビティ24内で樹脂をしばらく放置しておくことによって、樹脂を冷却して固化させる。冷却工程後には、第二成形型14を開いてキャビティ24内の樹脂成形品を取出す。これにより、刃30,32,34が差込まれた部分が溝になった自動車用表皮が完成する。形成された溝は、エアバックが展開するときに破断する部分となる。従って、完成した自動車用表皮は、溝が形成された面がエアバック側に向き、溝が形成されていない面が自動車の車室側を向くように配置される。
【0021】
次に、図3から図6を参照して、刃30,32,34が差込まれて樹脂に溝が形成される様子を詳しく説明する。図3から図6は、図1の破線の丸で囲まれた領域を拡大して示している。
図3は、射出工程終了時の様子を示している。図3の符号40は、キャビティ24内に封じられた樹脂である。符号50は、キャビティ24と連通しているガイド溝である。ガイド溝50には、刃32が摺動可能に収納されている。刃32の刃先32aは約90度に形成されている。射出工程中も、刃32は図3の位置にある。即ち、第一成形型12のキャビティ24側の面12aよりも刃先32aが上方に突出している。しかも、ガイド溝50のキャビティ24側の開口が刃32によって閉塞されている。もし、射出工程中に刃32が反キャビティ24側(図3の下側)に大きく後退していると、キャビティ24に封入された樹脂がガイド溝50に流れ込んでしまう。この場合、刃32を差込むときに、ガイド溝50に流れ込んだ樹脂がキャビティ24内に運ばれる。すると、キャビティ24内に運ばれた樹脂(いわゆるバリ)によって、完成品である自動車用表皮が大きく隆起してしまう。本実施例では、ガイド溝50に樹脂が流れ込まないように構成しているために、このような問題がない。
なお、刃32の幅(ガイド溝50の幅)s1は約0.5mmである。また、キャビティ24の幅(樹脂40の厚さ)s2は約2.5mmである。面12aから上方に突出している刃先32aの長さs3は約0.2mmである。
【0022】
図4は、刃32を樹脂40に差込んだときの様子を示す。差込まれた刃32と第二成形型14のキャビティ24側の面14aとの間の距離s4は約0.4mmである。上記のタイミングAとタイミングBとの間は、刃32が図4の位置に置かれている。
図5は、差込まれた刃32を樹脂40から抜いたときの様子を示す。このとき刃32は、樹脂40に差込まれる前の位置(図3の位置)に戻っている。樹脂40には溝42が形成されている。このときの溝42の幅は刃32の幅と同じである。
【0023】
図6は、刃32を抜いた後にさらに保圧された後の様子を示す。保圧がかかって樹脂40に成形された溝42の幅が狭くなっていることがわかる。このときの溝42の幅s5は、0〜0.2mm程度である。溝42を画定する側面同士が接触する場合(s5=0の場合)もある。
上記したように刃32は、冷水通過経路60内の冷水によって冷却されている。従って、刃32が樹脂40に差込まれると、樹脂40の刃32と接触した部分(溝42を画定する側面)が素早く固化する。このために、保圧がかけられることによって溝42を画定する側面同士が接触したとしても、それらが接合してしまうことが防止される。仮に、刃32を冷却していないと、樹脂40の刃32と接触した部分が充分に固化しないために、溝42を画定する側面同士が接触したときにそれらが接合する可能性がある。この場合、溝42が閉じてしまうために、エアバック展開時に破断しないおそれがある。この問題が、本実施例では解決されている。
【0024】
また、上記したように、第一成形型12には温水通過経路62が設けられている。図7を参照して、温水通過経路62によって第一成形型12を加熱した場合の作用を説明する。図7は、刃32が抜かれて溝42が形成された樹脂40の断面を示している。図7の状態では、樹脂40には、未固化層(流動層)40aと第一成形型側固化層40bと第二成形型側固化層40cとが形成されている。第一成形型側固化層40bの厚さs7が、第二成形型側固化層40cの厚さs6よりも小さいことがわかる。これは、温水通過ガイド溝62によって第一成形型12のキャビティ側の面12aが高温に維持されており、第一成形型側にある樹脂40の固化速度が遅いからである。このように第一成形型側固化層40bが薄いと、刃32が差込まれることによってキャビティ24内に運ばれる固化物の量が少なくなる。従って、刃32を差込むことに起因して樹脂40に形成されてしまう隆起部70の隆起の程度が小さくなる。仮に、温水通過経路62を設けなかった場合は、第一成形型側固化層40bが厚く形成されてしまう。この場合、刃32を差込むことによってキャビティ24内に運ばれる固化物の量が多くなり、これにより隆起部70の隆起の程度が大きくなってしまう。この問題が、本実施例では解決されている。
【0025】
本実施例では、差込んだ刃30,32,34が保圧工程中に抜かれる。このために、刃30,32,34が抜かれた後にもキャビティ24内の樹脂に保圧がかけられる。刃30,32,34を差込むことによって隆起してしまう部分に保圧がかかるために、その隆起の程度が小さく抑えられる。本実施例によると、隆起の程度が小さい自動車用表皮を製造できる。製造された自動車用表皮は、外観が極めてよく、品質的にも非常に優れている。
【0026】
図8に、本実施例によって製造された自動車用表皮40の写真を示す。この図8を見ると、面40dの溝42近くの部分70がフラットであることがよくわかる(符号70のことを図8において隆起部として使用したが、図8ではもはや隆起部とはいえないぐらいフラットである)。
また図8によると、溝42を画定する側面同士がほぼ接触している様子もよくわかる。自動車用表皮40は、面40e側にエアバックが装備されるように配置される。従って面40dが自動車の車室側を向くように配置される(面40dは意匠面である)。例えば、自動車に乗っている者によって、自動車用表皮40に矢印D3方向の力が加えられる場合がある。自動車用表皮40は、溝42を画定する側面同士がほぼ接触しているために、このような力が加わったときの撓みが小さい。この自動車用表皮40は、強度的に非常に優れている。
【0027】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
例えば、刃先の形状は実施例のものに限定されない。図9には、他の刃先の一例を示している。図9(a)は、刃先が90度よりも鋭角になっている。同図(b)には、片刃形状の刃32が示されている。また刃は鋭利である必要はなく、同図(c)のように断面丸形状であってもよいし、同図(d)のように断面台形状であってもよい。
また、保圧のかけ方は、上記実施例に限られない。例えば、シリンダによってキャビティ内に圧力をかけるようにしてもよい。
また、第2成形型14に例えば15℃〜20℃の冷水の通過経路を設けることもできる。この場合、第2成形型側固化層40cの厚さs6をより厚くすることができ、これにより刃32の差込みによる隆起の程度をより小さくすることもできる。第2成形型側固化層40cに厚みがあると変形し難いからである。
【0028】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例に係る自動車用表皮製造装置の一部を断面で示す。
【図2】実施例に係る自動車用表皮の製造方法のタイムテーブルを示す。
【図3】キャビティ部分を拡大して示した図である(射出工程終了時)。
【図4】キャビティ部分を拡大して示した図である(刃を差込んだ時)。
【図5】キャビティ部分を拡大して示した図である(刃を抜いた時)。
【図6】キャビティ部分を拡大して示した図である(保圧工程終了時)。
【図7】樹脂の固化部分と未固化部分を示した図である。
【図8】実施例に係る装置と方法を用いて製造された自動車用表皮の一部を示す写真である。
【図9】刃先の形状の一例である。
【符号の説明】
10・・自動車用表皮製造装置
12・・第一成形型
12a・・第一成形型のキャビティ側の面
14・・第二成形型
14a・・第二成形型のキャビティ側の面
16・・油圧シリンダ
18・・制御装置
20・・軸
24・・キャビティ
26・・信号線
30,32,34・・刃
32a・・刃先
40・・キャビティ内の樹脂
40a・・樹脂の未固化部分
40b・・樹脂の第一成形型側固化部分
40c・・樹脂の第二成形型側固化部分
42・・樹脂に形成された溝
60・・冷水通過経路
62・・温水通過経路
70・・・樹脂に形成された隆起部
Claims (10)
- 流動性を有する樹脂性材料を成形型内に封じる工程と、成形型内の樹脂性材料を保圧する工程と、成形型内の樹脂性材料を貫通しない範囲で成形型内の樹脂性材料に溝成形部材を差込む差込工程と、差込んだ溝成形部材を前記保圧工程中に抜く工程とを備える有底の溝をもつ樹脂性物体の製造方法。
- 前記差込工程の前に前記溝成形部材を冷却しておく工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 前記差込工程の前に前記溝成形部材が差込まれる部分の樹脂性材料を加熱しておく工程とを備える請求項1又は2に記載の製造方法。
- 請求項1から3のいずれかに記載の方法で製造された有底の溝をもつ樹脂性物体。
- キャビティが形成されているとともにそのキャビティに連通するガイド溝を有する成形型と、流動性を有する樹脂性材料を前記キャビティに封じる手段と、前記キャビティ内の樹脂性材料を保圧する手段と、前記ガイド溝に沿って移動可能な溝成形部材と、前記キャビティ内の樹脂性材料を貫通しない範囲で前記溝成形部材を前記キャビティ内に移動させるとともに前記キャビティ内に移動した前記溝成形部材を前記保圧手段による保圧中に反キャビティ側に移動させる手段とを備える有底の溝をもつ樹脂性物体の製造装置。
- 前記溝成形部材を前記キャビティ内に移動させる前に当該溝成形部材を冷却しておく手段を備えることを特徴とする請求項5に記載の製造装置。
- 前記溝成形部材を前記キャビティ内に移動させる前に当該溝成形部材が差込まれる部分の樹脂性材料を加熱しておく手段を備えることを特徴とする請求項5又は6に記載の製造装置。
- 流動性を有する樹脂性材料を前記キャビティに封じる間は、前記ガイド溝の前記キャビティ側の開口部を、前記溝成形部材で閉塞しておくことを特徴とする請求項5から7のいずれかに記載の製造装置。
- 前記溝成形部材は一様の厚みの本体部と先端に向かって細くなっている端部を備え、流動性を有する樹脂性材料を前記キャビティに封じる間は、前記溝成形部材の本体部で前記ガイド溝を閉塞するとともに前記端部がキャビティ内に突入する位置関係に維持しておくことを特徴とする請求項8に記載の製造装置。
- 有底の溝をもつ樹脂性物体であり、その溝を画定する側面同士がほぼ接触するほど近接しており、しかもその側面同士が接合していないことを特徴とする樹脂性物体。
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CN100451542C (zh) * | 2004-10-29 | 2009-01-14 | 丰田自动车株式会社 | 加工余留厚度的测定方法 |
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2002
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