JP2004172700A - スピーカシステム - Google Patents
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Abstract
【課題】平面振動板と平面振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備えたスピーカシステムにおいて、平面振動板に生じた振動波が平面振動板の端部で反射して生じる共振現象を起こすことがなく、周波数特性にピークディップが少ないスピーカシステムを提供する。
【解決手段】本発明のスピーカシステムは、スピーカとスピーカに接続するスピーカ用回路を備え、スピーカが、振動板と、振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備え、スピーカ用回路が、フィルタ回路を含む信号処理器と、電気機械変換器に接続する複数の増幅器とを備え、スピーカ用回路が、入力信号を一の増幅器を介して印加することにより一の電気機械変換器を駆動し、および、信号処理器のフィルタ回路によってフィルタ処理した入力信号を他の増幅器を介して印加することにより他の電気機械変換器を駆動し、一の電気機械変換器によって振動板に生じた振動波を他の電気機械変換器によって吸収する。
【選択図】 図1
【解決手段】本発明のスピーカシステムは、スピーカとスピーカに接続するスピーカ用回路を備え、スピーカが、振動板と、振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備え、スピーカ用回路が、フィルタ回路を含む信号処理器と、電気機械変換器に接続する複数の増幅器とを備え、スピーカ用回路が、入力信号を一の増幅器を介して印加することにより一の電気機械変換器を駆動し、および、信号処理器のフィルタ回路によってフィルタ処理した入力信号を他の増幅器を介して印加することにより他の電気機械変換器を駆動し、一の電気機械変換器によって振動板に生じた振動波を他の電気機械変換器によって吸収する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響再生のためのスピーカシステム、例えば、平面振動板に複数の電気機械変換器を結合したスピーカおよびこれを駆動するスピーカ用回路を備えるスピーカシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
平面振動板を備えるスピーカおよびスピーカシステムにおいては、平面振動板の形状ならびに材料特性に起因する振動特性がそのスピーカシステムの特性に大きな影響を及ぼす。共振周波数において顕著にあらわれる振動モードは、周波数特性でピークディップを生じる。これは平面振動板で生ずる曲げの振動波が、平面振動板の端部において反射し、進行波と反射波が重ね合わされ、共振が発生するからである。そのため、平面振動板を備えるスピーカでは、平面振動板の材料特性によりピークディップを持った周波数特性が現れ、固有の音色を持った再生音になる。この点を改善するために、平面振動板を備えるスピーカおよびスピーカシステムでは、平面振動板の形状ならびに材料、駆動部である電気機械変換器の位置などについて、様々な検討がなされている。
【0003】
そこで、平面振動板を備えるスピーカでは、平面振動板の外周端に減衰係数の大きな材料を備えるエッジを結合し、平面振動板を伝搬してきた振動波を減衰させ、平面振動板の端部での反射を小さくするなどの方法をとっている。また、平面振動板上に制振材を設けて、振動モードを制御するなどして、顕著な共振が発生しないようにしている。
【0004】
しかし、上記の平面振動板の外周端に減衰係数の大きな材料を備えるエッジを結合する場合には、高域の周波数に比べて低域の周波数で振動減衰が少なく、平面振動板の端部での反射波を充分に小さくすることはできない。これをエッジ形状や材料の最適化を図ることによって改善をするにも、限界がある。また、平面振動板の材料を減衰の大きな材料とした場合には、振動波が減衰してしまう結果、本来に必要な情報量までをも減衰させてしまうことがある。
【0005】
他には、振動モードの節にボイスコイルならびに磁気回路を備える動電型変換器または圧電素子を備える圧電型変換器等の電気機械変換器を配置する方法などが提案されている。平面型スピーカでは、電気機械変換器を一つ用いる場合が最も多いが、複数の電気機械変換器を同一の平面振動板に生じる振動モードの節に配置する場合もある。複数の電気機械変換器が用いられる場合には、専らそれぞれ同相に駆動されることが多い。
【0006】
従来には、平面振動板を複数のボイスコイルによって駆動するスピーカにおいて、これらのボイスコイルを振動モードの節に結合し、これらボイスコイルにインダクタンスあるいはキャパシタンスを備える受動素子を接続し、これらボイスコイルに流れる電流の位相と振幅を制御して、音圧周波数特性の平坦化を図っているスピーカがある(特許文献1参照)。長軸と短軸の比が大きい矩形の平面振動板の場合では、矩形の長軸方向に振動モードが発生しやすくなり、その結果、振動モードの節の位置は、矩形振動板の両端に近い位置になり、それぞれ矩形振動板の短辺側に近い位置になる。したがって、2つのボイスコイルは、矩形振動板のほぼ両端に位置している。ここで、一方のボイスコイルには入力信号がそのまま加えられるのに対し、他方のボイスコイルにはコンデンサが並列に接続される。
【0007】
【特許文献1】
実公昭62−8638号公報 (第1−3頁、第1−7図)
【0008】
しかし、上記のスピーカにおいては、入力信号がそのまま加えられて平面振動板を振動させている一方のボイスコイルに対し、コンデンサが並列に接続された他方のボイスコイルは、入力信号電流とは位相がずれて減衰された信号電流によって平面振動板を振動させているにすぎない。従って、共振現象の原因である平面振動板の端部での反射波を充分に小さくすることはできず、周波数特性の改善にも限界がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、平面振動板と平面振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備えたスピーカシステムにおいて、平面振動板に生じた振動波が平面振動板の端部で反射して生じる共振現象を起こすことがなく、周波数特性にピークディップが少ないスピーカシステムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本発明のスピーカシステムは、スピーカとスピーカに接続するスピーカ用回路を備え、スピーカが、振動板と、振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備え、スピーカ用回路が、フィルタ回路を含む信号処理器と、電気機械変換器に接続する複数の増幅器とを備え、スピーカ用回路が、入力信号を一の増幅器を介して印加することにより一の電気機械変換器を駆動し、および、信号処理器のフィルタ回路によってフィルタ処理した入力信号を他の増幅器を介して印加することにより他の電気機械変換器を駆動し、一の電気機械変換器によって振動板に生じた振動波を他の電気機械変換器によって吸収する。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、スピーカ用回路の信号処理器のフィルタ回路が、振動板における振動波の伝搬速度特性に伴って、低い周波数ほど長い遅延時間をもつフィルタ特性を有する。
【0013】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、他の電気機械変換器が、上記の一の電気機械変換器によって振動板に生じ振動板の端部において反射した反射波を吸収する。
【0014】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、入力信号が複数のチャンネル信号からなり、スピーカ用回路が、一の入力チャンネル信号と、信号処理器によってフィルタ処理した他の入力チャンネル信号とを加算する加算器を備える。
【0015】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、振動板が、平面振動板であり、電気機械変換器が、ボイスコイルおよび磁気回路を含む動電型変換器、あるいは圧電素子を含む圧電型変換器である。
【0016】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、スピーカ用回路の前記信号処理器が、A/D変換器、デジタルシグナルプロセッサ、D/A変換器を含む。
【0017】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、スピーカ用回路の信号処理器が、A/D変換器およびデジタルシグナルプロセッサおよびD/A変換器における信号処理にともなって生じる遅延時間を補償するディレイ回路を含む。
【0018】
以下、本発明の作用について説明する。
【0019】
本発明のスピーカシステムは、スピーカとスピーカに接続するスピーカ用回路とからなり、スピーカが、振動板と振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備え、スピーカ用回路が、フィルタ回路を含む信号処理器と上記の複数の電気機械変換器に接続する複数の増幅器とを備えている。代表的には、本発明のスピーカの振動板は平面振動板であり、本発明のスピーカの電気機械変換器はボイスコイルならびに磁気回路を備える動電型変換器または圧電素子を備える圧電型変換器である。また、本発明のスピーカ用回路の信号処理器は、代表的には、A/D変換器、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、D/A変換器を含む。
【0020】
本発明のスピーカシステムで音響再生を行う場合には、入力信号はスピーカ用回路の増幅器で増幅され、増幅器の出力は平面振動板に結合された電気機械変換器に接続される。その結果、入力信号が入力された一の電気機械変換器によって平面振動板が振動して接する空気を振動させ、音波を再生する。同時に、本発明のスピーカシステムでは、上記の入力信号によって平面振動板に生じた振動波を他の電気機械変換器によって吸収するように信号処理器によって入力信号をフィルタ処理し、増幅器を介して印可し他の電気機械変換器を駆動する。従って、平面振動板を備えるスピーカに特有の周波数特性におけるピークディップを抑え、周波数特性が改善された良好な音響再生が可能となる。これによって、必要な情報量を低減することなく共振を低減することができる。
【0021】
さらに、本発明のスピーカシステムでは、スピーカ用回路の信号処理器のフィルタ回路が、平面振動板における振動波の伝搬速度特性に伴って、低い周波数ほど長い遅延時間をもつフィルタ特性を有する。従って、平面振動板に合わせて適切にフィルタ特性を調整することにより、平面振動板に生じる曲げの振動波を他の電気機械変換器によって吸収することができる。特に、他の電気機械変換器によって吸収される振動波が、一の電気機械変換器によって平面振動板に生じ振動板の端部において反射した反射波である場合には、反射波が有効に低減されるので、共振が低減されて周波数特性のピークディップが改善され、良好な音響再生が可能となる。
【0022】
さらに、本発明のスピーカシステムでは、入力信号がステレオ信号のような複数のチャンネル信号からなる場合には、スピーカ用回路が、一の入力チャンネル信号と、前記信号処理器によってフィルタ処理した他の入力チャンネル信号とを加算する加算器を備える。従って、一の電気機械変換器によって平面振動板に一のチャンネル信号の振動波を生じさせるとともに、他の電気機械変換器によって生じた他のチャンネル信号による振動波を吸収することができる。その結果、単一の平面振動板を備えるスピーカシステムであっても複数のチャンネル信号を音響信号として再生することができ、同時に、平面振動板を備えるスピーカシステムのピークディップをもった周波数特性を改善することができ、良好な音響再生が可能となる。
【0023】
加えて、本発明のスピーカ用回路の信号処理器は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)を含み、DSPにおいてフィルタ回路およびディレイ回路を実現している。従って、A/D変換器とD/A変換器等のハードウェア固有の遅延時間ならびにフィルタ処理の因果性を満足するために必要なフィルタ遅延時間を考慮して、入力信号を適切に遅延して出力することができる。その結果、上記の遅延時間が補償され平面振動板を備えるスピーカシステムの周波数特性を改善できるとともに、フィルタ回路の設計の自由度を増やすことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカシステムについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態によるスピーカシステムのブロック図である。本発明のスピーカシステムは、スピーカ1と、スピーカ1に接続するスピーカ用回路2から構成される。
【0026】
図2(a)は、スピーカ1の構成を示す断面図であり、図2(b)は、スピーカ1の正面図である。スピーカ1は、平面振動板3と、平面振動板3に結合した2つの電気機械変換器4aおよび4bとを備えている。図2の場合において、電気機械変換器4aおよび4bは、ボイスコイルならびに磁気回路を備える動電型変換器であって、図2(b)に破線で示される位置において、平面振動板3とボイスコイル41aおよび41bが結合している。平面振動板3の外周端部はエッジ7によって支持され、エッジ7の外周部はフレーム8に固定されている。また、フレーム8は、2つの電気機械変換器4aおよび4bを固定している。従って、スピーカ1は、電気機械変換器4aおよび4bに駆動信号を入力することによって平面振動板3を振動させ、音響再生を行うことができる。
【0027】
平面振動板3は、代表的には、紙、アルミハニカム、発泡ポリスチレン、板状に成型された樹脂、熱硬化性樹脂を含浸した不織布または織布等であり、一般的にコーン型振動板に用いられるような密度が小さく、振動波の伝搬速度が速く、内部損失の大きい材料であればよい。また、エッジ7についても、発砲ウレタンやゴム等の弾性を有する材料であればよく、形状も図示したロール形に限られるものではない。スピーカ1は、場合によっては、エッジ7を備えないフリーエッジでもよく、フレーム8に直接に平面振動板3の外周端部が固定されているフィックスエッジでもよい。また、電気機械変換器4aおよび4bは、圧電素子を含む圧電型変換器でもよい。
【0028】
本発明のスピーカ1の平面振動板3は、代表的には、長軸と短軸の比が大きい矩形であって、2つの電気機械変換器4aおよび4bのボイスコイルは、長軸方向において平面振動板の両端に近い位置に結合される。平面振動板3の長軸と短軸の比は、2:1以上であればよく、形状も矩形に限られず、楕円またはトラック形でもよい。
【0029】
図1に示す本発明のスピーカシステムは、スピーカ1がスピーカ用回路2に接続される。スピーカ回路2は、信号処理器5と増幅器6aおよび6bとを備えている。スピーカ回路2に入力された入力信号Sは分岐され、一方の入力信号Sはそのまま増幅器6aに入力され、他方の入力信号Sは信号処理器5によって所定のフィルタ処理が施されて増幅器6bに入力される。増幅器6aおよび6bは、入力信号Sをそれぞれ増幅してスピーカ1の電気機械変換器4aおよび4bを駆動する。つまり、スピーカ1の平面振動板3は、電気機械変換器4aにおいては入力信号Sによって駆動され、電気機械変換器4bにおいては所定のフィルタ処理がなされた入力信号Sによって駆動される。
【0030】
その結果、平面振動板3において生じる振動波に起因するスピーカ1の周波数特性への悪影響を低減することができる。すなわち、このような形状の平面振動板3では、平面振動板3で生じた曲げの振動波が、平面振動板3の長軸方向の端部31a、31bで反射し、進行波と反射波が重ね合わされて共振が起こり長軸方向に振動モードが発生しやすくなるが、本発明においては、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波を、フィルタ処理を施した入力信号で駆動される他方の電気機械変換器4bによって吸収することができる。
【0031】
ここで、上記の信号処理器5による所定のフィルタ処理とは、電気機械変換器4aにおいて入力信号Sによって平面振動板3に生じた振動波を、電気機械変換器4bによって吸収するように、入力信号Sを、平面振動板3における振動波の伝搬速度特性に伴って低い周波数ほど長い遅延時間をもつように信号処理を行うことをいう。上記のフィルタ特性は、平面振動板3の形状および材料特性、ならびに電気機械変換器4aおよび4bの位置関係により定まる遅延時間特性に基づいて決定される。
【0032】
本発明では、特に、他方の電気機械変換器4bによって吸収される振動波が、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じ平面振動板3の端部31bへ伝搬し反射してきた反射波である場合には、反射波が有効に低減されるので、周波数特性のピークディップが改善され、良好な音響再生が可能となる。
【0033】
ここで、平面振動板3で生じる振動波を吸収するフィルタ特性を設定する方法について説明する。
【0034】
平面振動板3の長軸と短軸の長さの比が大きい場合には、平面振動板3は長軸方向に長い梁として近似されるので、振動波の伝搬速度Vは、以下の関係式(1)により定まり、振動波の周波数によって変化する性質を持つ。ここで、ω:角周波数、E:平面振動板のヤング率、h:平面振動板の厚み、ρ:平面振動板の密度である。
V=((ω2 E h2)/(12ρ))1/4 [m/sec] …… (1)
【0035】
従って、平面振動板3において距離L[m]を伝搬速度Vの振動波が伝搬するのに要する時間Tは、式(2)で定まる。
T=L((12ρ)/(ω2 E h2))1/4 [sec] …… (2)
【0036】
電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波を電気機械変換器4bによって吸収する場合には、振動波が伝搬する距離Lは、電気機械変換器4aと電気機械変換器4bとの距離をL0とすると、L=L0である。
【0037】
特に、電気機械変換器4aにおいて発生した振動波が平面振動板3の端部31bへ伝搬し反射してきた反射波を、電気機械変換器4bによって吸収する場合には、振動波が伝搬する距離Lは、電気機械変換器4aと平面振動板3の端部31bとの距離をL1、電気機械変換器4bと平面振動板3の端部31bとの距離をL2とすると、L=L1+L2である。
【0038】
従って、平面振動板3の形状および材料特性、ならびに電気機械変換器4aおよび4bの位置関係により、信号処理器5のフィルタ回路の遅延時間tを、上記振動波が伝搬するのに要する時間Tとほぼ一致するように設定する。
【0039】
例えば、平面振動板3が、厚みh=5.0[mm]の発泡ポリスチレンを材料とする場合において、平面振動板3を伝搬する振動波の伝搬速度の周波数特性は、図3(a)のグラフに表される。ここで、振動波の伝搬速度は、低い周波数ほど遅く、高い周波数ほど速くなる。従って、平面振動板3において距離L=0.1[m]を振動波が伝搬するのに要する時間Tは、図3(b)のグラフに表されるように、低い周波数ほど長くなり、高い周波数ほど短くなる。その結果、電気機械変換器4aにおいて生じた振動波および平面振動板3の端部31bへ伝搬し反射してきた反射波を、電気機械変換器4bにおいて吸収するためには、信号処理器5のフィルタ回路の遅延時間の周波数特性を、図3(b)のグラフに等しくなるように設定すればよい。
【0040】
なお、最も低い周波数においては、遅延時間が必要以上に長くなりすぎる場合がある。平面振動板3の振動モードのうち、最も低い周波数の基本モードの周波数、あるいは、電気機械変換器4aおよび4bの最低共振周波数よりも低い周波数については、周波数特性のピークディップの改善に寄与しない。従って、上記の低い周波数帯域については、信号処理器5のフィルタ回路は、上記のフィルタ特性を満足しなくてもよい。また、信号処理器5のフィルタ回路にローカットフィルタを設けて、上記の低い周波数帯域以上の音響再生に必要な帯域のみについて、上記のフィルタ特性によるフィルタ処理を実現してもよい。
【0041】
さらに、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波を電気機械変換器4bによって吸収するためには、信号処理器5のフィルタ回路において入力信号Sを位相反転して出力すればよい。また、振動波が平面振動板3を伝搬するのに伴って減衰する場合には、信号処理器5のフィルタ回路のゲインをその減衰量に等しく減衰させればよい。
【0042】
また、特に、電気機械変換器4aにおいて発生した振動波が平面振動板3の端部31bへ伝搬し反射してきた反射波を、電気機械変換器4bによって吸収する場合には、平面振動板3の端部の固定方法に起因する端部における反射波の反射率と位相変化によって、信号処理器5のフィルタ回路のゲインと位相変化に反映させればよい。例えば、反射率が0.5の場合には、フィルタ回路のゲインを0.5倍すればよい。反射波の反射率は、平面振動板3とエッジ7の特性機械インピーダンスの比によって定まるので、平面振動板3とエッジ7の形状及び材料特性から求めることができる。
【0043】
また、スピーカ1が、エッジ7を備えず平面振動板3が直接フレーム8に固定されているようなフィックスエッジである場合には、平面振動板3の端部では、上記のエッジ7を介するフリーエッジの場合とは反射波の位相が逆転する。従って、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波を電気機械変換器4bによって吸収するためには、フィックスエッジであれば信号処理器5のフィルタ回路において入力信号Sを位相反転せずに出力すればよい。
【0044】
平面振動板3において反射波を生じる端部が複数存在するような場合には、全ての反射波の伝搬距離について、それぞれ複数の遅延処理を設ければよい。もちろん、その中でも影響の大きな反射波についてのみ、遅延処理を設けてもよい。
【0045】
図4(a)は、本発明の実施例のスピーカシステムにおける軸上音圧周波数特性を表すグラフである。ここで、スピーカ回路2の信号処理器5のフィルタ回路は、上記のフィルタ特性を実現し、平面振動板3は、電気機械変換器4aおよび4bにより駆動されている場合である。また、図4(b)は、比較例として、本発明のスピーカシステムにおいて、スピーカ回路2の信号処理器5のフィルタ回路の出力を遮断し、平面振動板3は、電気機械変換器4aのみにより駆動されている場合である。このように、スピーカ1の軸上音圧周波数特性上で2kHz付近に生じるピークを、本発明によるスピーカ回路2によって抑えることができ、良好な音響再生が可能となる。
【0046】
信号処理器5は、任意の回路を用いることができるが、代表的には、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)およびA/D変換器およびD/A変換器を含む。上記の信号処理器5のフィルタ回路は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)により実現可能である。具体的には、フィルタ回路は、FIR型(非巡回型)フィルタおよび/またはIIR型(巡回型)フィルタでよい。また、信号処理器5のA/D変換器およびD/A変換器のサンプリング周波数は、スピーカシステムの再生周波数帯域の2倍以上であればよい。
【0047】
図5は、本発明の第2の実施形態によるスピーカシステムのブロック図である。スピーカ回路2への入力信号がSa、Sbの2チャンネルの信号からなる場合において、本発明のスピーカシステムでは、電気機械変換器4aによって平面振動板3にSaチャンネル信号の振動波を生じさせるとともに、電気機械変換器4bによって生じたSbチャンネル信号による振動波を吸収するように信号処理器53bにおいてSbチャンネル信号をフィルタ処理し、増幅器6aを介して印可し電気機械変換器4aを駆動する。同様に、電気機械変換器4bによって平面振動板3にSbチャンネル信号の振動波を生じさせるとともに、これらの信号を電気機械変換器4aによって生じたSaチャンネル信号による振動波を吸収するように信号処理器53aにおいてSaチャンネル信号をフィルタ処理し、増幅器6bを介して印可し電気機械変換器4bを駆動する。
【0048】
本発明のスピーカシステムでは、上記の信号処理をスピーカ回路2の信号処理器5において実現する。具体的には、信号処理器5は、DSP50(デジタルシグナルプロセッサ)、A/D変換器51、D/A変換器52a、52bを含み、DSP50では、フィルタ回路53a、53bと加算器55a、55bを設けている。加算器55aにおいては、Saチャンネル信号とフィルタ回路53bでフィルタ処理したSbチャンネル信号を加算し、加算器55bにおいては、Sbチャンネル信号とフィルタ回路53aでフィルタ処理したSaチャンネル信号を加算する。
【0049】
この結果、本発明のスピーカシステムにおいては、単一の平面振動板3を備えるのみであっても、ステレオ信号のような複数のチャンネル信号を音響信号として再生することができ、同時に、平面振動板3を備えるスピーカシステムのピークディップをもった周波数特性を改善することができ、良好な音響再生が可能となる。
【0050】
図6は、本発明の第3の実施形態によるスピーカシステムのブロック図である。スピーカ回路2は、信号処理器5と2つの増幅器6aおよび6bとを備え、信号処理器5は、DSP50(デジタルシグナルプロセッサ)、A/D変換器51、D/A変換器52a、52bを含む。スピーカ回路2に入力された入力信号Sは、A/D変換器51でデジタル信号に変換され、DSP50に入力される。DSP50には、フィルタ回路53とディレイ回路54が設けられ、入力信号Sが分岐されてそれぞれ入力される。一方の入力信号Sはディレイ回路54で遅延処理が施された後に増幅器6aに入力され、他方の入力信号Sはフィルタ回路53によって所定のフィルタ処理が施された後に増幅器6bに入力される。増幅器6aおよび6bは、入力された入力信号をそれぞれ増幅してスピーカ1の電気機械変換器4aおよび4bを駆動する。つまり、スピーカ1の平面振動板3は、電気機械変換器4aにおいては入力信号Sそのままによって駆動され、電気機械変換器4bにおいては所定のフィルタ処理がなされた入力信号Sによって駆動される。その結果、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波をフィルタ処理を施した入力信号で駆動される他方の電気機械変換器4bによって吸収することができる。
【0051】
上記のディレイ回路54は、フィルタ回路53等の信号処理器によって生じる遅延時間を補償する目的で設けられる。すなわち、デジタル信号処理においては、因果性を満足するためにフィルタ係数に所定の遅延時間を設ける場合があるが、本発明のディレイ回路54を設けることによって、上記の所定の遅延時間を補償することができる。ディレイ回路54は、上記のようにDSP50内に設けてもよいし、DSPとは別に、遅延した信号を記憶するメモリー回路などにより設けてもよい。
【0052】
図6に示される実施例においては、A/D変換器51とD/A変換器52a、52bにおいて生じる遅延時間は共通しているため、この遅延時間はディレイ回路54で補償する必要はない。しかし、信号処理器2におけるA/D変換器、D/A変換器等のハードウェア固有の遅延や信号処理に応じて生じる遅延が存在する場合等は、上記のディレイ回路で補償すればよい。つまり、平面振動板3を伝搬する振動波の伝達速度に無関係な信号処理器2における遅延については、ディレイ回路を設けることによって必要に応じて補償することができ、さらに良好にスピーカシステムの周波数特性の改善を図ることができる。
【0053】
従って、本発明の第3の実施形態によるスピーカシステムにおいても、スピーカ1の軸上音圧周波数特性上に生じるピークを、スピーカ回路2によって抑えることができ、良好な音響再生が可能となる。さらに、ディレイ回路を設けることによって、フィルタ回路53の設計の自由度を増やすことができる。
【0054】
本発明のスピーカシステムは、上記実施例に限定されるものではない。平面振動板3の形状は、矩形または楕円またはトラック形であればよく、平面振動板3の長軸と短軸の比が大きいものに限定されるものではない。例えば、平面振動板が図7のように2次元的形状である場合には、入力信号により駆動される一の電気機械変換器4aに対して、平面振動板に生じた振動波を吸収するように他の複数の電気機械変換器4bを平面振動板3に結合してもよい。
【0055】
また、振動板は、平面振動板に限られるものではなく、例えば、コーン型振動板であっても、単一の振動板に複数の電気機械変換器が結合されたスピーカであればよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明のスピーカシステムは、平面振動板と平面振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備えたスピーカシステムにおいて、平面振動板に生じた振動波および振動波が平面振動板の端部で反射して生じる反射波に起因する共振現象を低減することができる。従って、周波数特性にピークディップが少ないスピーカシステムを提供することができる。
【0057】
さらに、本発明のスピーカシステムは、単一の平面振動板を備えるのみであっても、ステレオ信号のような複数のチャンネル信号を音響信号として再生することができ、同時に、平面振動板を備えるスピーカシステムのピークディップをもった周波数特性を改善することができる。
【0058】
さらに、本発明のスピーカシステムは、スピーカ回路にディレイ回路を設けることによって、ハードウェア固有の遅延や信号処理に応じて生じる遅延を補償することができ、フィルタ回路の設計の自由度を増やすことができる。その結果、さらに改善されたスピーカシステムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスピーカシステムの好ましい実施形態について説明する図である。
【図2】本発明のスピーカの好ましい実施形態について説明する図である。
【図3】本発明の平面振動板を伝搬する振動波の伝搬速度の周波数特性、ならびに本発明の信号処理器のフィルタ回路の遅延時間の周波数特性を表すグラフである。
【図4】本発明のスピーカシステムにおける軸上音圧周波数特性を表すグラフである。
【図5】本発明のスピーカシステムの他の好ましい実施形態について説明する図である。
【図6】本発明のスピーカシステムの他の好ましい実施形態について説明する図である。
【図7】本発明のスピーカの他の好ましい実施形態について説明する図である。
【符号の説明】
1 スピーカ
2 スピーカ回路
3 平面振動板
4 電気機械変換器
41 ボイスコイル
5 信号処理器
50 DSP(デジタルシグナルプロセッサ)
51 A/D変換器
52 D/A変換器
53 フィルタ回路
54 ディレイ回路
55 加算器
6 増幅器
7 エッジ
8 フレーム
【発明の属する技術分野】
本発明は、音響再生のためのスピーカシステム、例えば、平面振動板に複数の電気機械変換器を結合したスピーカおよびこれを駆動するスピーカ用回路を備えるスピーカシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
平面振動板を備えるスピーカおよびスピーカシステムにおいては、平面振動板の形状ならびに材料特性に起因する振動特性がそのスピーカシステムの特性に大きな影響を及ぼす。共振周波数において顕著にあらわれる振動モードは、周波数特性でピークディップを生じる。これは平面振動板で生ずる曲げの振動波が、平面振動板の端部において反射し、進行波と反射波が重ね合わされ、共振が発生するからである。そのため、平面振動板を備えるスピーカでは、平面振動板の材料特性によりピークディップを持った周波数特性が現れ、固有の音色を持った再生音になる。この点を改善するために、平面振動板を備えるスピーカおよびスピーカシステムでは、平面振動板の形状ならびに材料、駆動部である電気機械変換器の位置などについて、様々な検討がなされている。
【0003】
そこで、平面振動板を備えるスピーカでは、平面振動板の外周端に減衰係数の大きな材料を備えるエッジを結合し、平面振動板を伝搬してきた振動波を減衰させ、平面振動板の端部での反射を小さくするなどの方法をとっている。また、平面振動板上に制振材を設けて、振動モードを制御するなどして、顕著な共振が発生しないようにしている。
【0004】
しかし、上記の平面振動板の外周端に減衰係数の大きな材料を備えるエッジを結合する場合には、高域の周波数に比べて低域の周波数で振動減衰が少なく、平面振動板の端部での反射波を充分に小さくすることはできない。これをエッジ形状や材料の最適化を図ることによって改善をするにも、限界がある。また、平面振動板の材料を減衰の大きな材料とした場合には、振動波が減衰してしまう結果、本来に必要な情報量までをも減衰させてしまうことがある。
【0005】
他には、振動モードの節にボイスコイルならびに磁気回路を備える動電型変換器または圧電素子を備える圧電型変換器等の電気機械変換器を配置する方法などが提案されている。平面型スピーカでは、電気機械変換器を一つ用いる場合が最も多いが、複数の電気機械変換器を同一の平面振動板に生じる振動モードの節に配置する場合もある。複数の電気機械変換器が用いられる場合には、専らそれぞれ同相に駆動されることが多い。
【0006】
従来には、平面振動板を複数のボイスコイルによって駆動するスピーカにおいて、これらのボイスコイルを振動モードの節に結合し、これらボイスコイルにインダクタンスあるいはキャパシタンスを備える受動素子を接続し、これらボイスコイルに流れる電流の位相と振幅を制御して、音圧周波数特性の平坦化を図っているスピーカがある(特許文献1参照)。長軸と短軸の比が大きい矩形の平面振動板の場合では、矩形の長軸方向に振動モードが発生しやすくなり、その結果、振動モードの節の位置は、矩形振動板の両端に近い位置になり、それぞれ矩形振動板の短辺側に近い位置になる。したがって、2つのボイスコイルは、矩形振動板のほぼ両端に位置している。ここで、一方のボイスコイルには入力信号がそのまま加えられるのに対し、他方のボイスコイルにはコンデンサが並列に接続される。
【0007】
【特許文献1】
実公昭62−8638号公報 (第1−3頁、第1−7図)
【0008】
しかし、上記のスピーカにおいては、入力信号がそのまま加えられて平面振動板を振動させている一方のボイスコイルに対し、コンデンサが並列に接続された他方のボイスコイルは、入力信号電流とは位相がずれて減衰された信号電流によって平面振動板を振動させているにすぎない。従って、共振現象の原因である平面振動板の端部での反射波を充分に小さくすることはできず、周波数特性の改善にも限界がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の従来の技術が有する問題を解決するためになされたものであり、その目的は、平面振動板と平面振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備えたスピーカシステムにおいて、平面振動板に生じた振動波が平面振動板の端部で反射して生じる共振現象を起こすことがなく、周波数特性にピークディップが少ないスピーカシステムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0011】
本発明のスピーカシステムは、スピーカとスピーカに接続するスピーカ用回路を備え、スピーカが、振動板と、振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備え、スピーカ用回路が、フィルタ回路を含む信号処理器と、電気機械変換器に接続する複数の増幅器とを備え、スピーカ用回路が、入力信号を一の増幅器を介して印加することにより一の電気機械変換器を駆動し、および、信号処理器のフィルタ回路によってフィルタ処理した入力信号を他の増幅器を介して印加することにより他の電気機械変換器を駆動し、一の電気機械変換器によって振動板に生じた振動波を他の電気機械変換器によって吸収する。
【0012】
好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、スピーカ用回路の信号処理器のフィルタ回路が、振動板における振動波の伝搬速度特性に伴って、低い周波数ほど長い遅延時間をもつフィルタ特性を有する。
【0013】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、他の電気機械変換器が、上記の一の電気機械変換器によって振動板に生じ振動板の端部において反射した反射波を吸収する。
【0014】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、入力信号が複数のチャンネル信号からなり、スピーカ用回路が、一の入力チャンネル信号と、信号処理器によってフィルタ処理した他の入力チャンネル信号とを加算する加算器を備える。
【0015】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、振動板が、平面振動板であり、電気機械変換器が、ボイスコイルおよび磁気回路を含む動電型変換器、あるいは圧電素子を含む圧電型変換器である。
【0016】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、スピーカ用回路の前記信号処理器が、A/D変換器、デジタルシグナルプロセッサ、D/A変換器を含む。
【0017】
さらに好ましい実施形態においては、本発明のスピーカシステムは、スピーカ用回路の信号処理器が、A/D変換器およびデジタルシグナルプロセッサおよびD/A変換器における信号処理にともなって生じる遅延時間を補償するディレイ回路を含む。
【0018】
以下、本発明の作用について説明する。
【0019】
本発明のスピーカシステムは、スピーカとスピーカに接続するスピーカ用回路とからなり、スピーカが、振動板と振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備え、スピーカ用回路が、フィルタ回路を含む信号処理器と上記の複数の電気機械変換器に接続する複数の増幅器とを備えている。代表的には、本発明のスピーカの振動板は平面振動板であり、本発明のスピーカの電気機械変換器はボイスコイルならびに磁気回路を備える動電型変換器または圧電素子を備える圧電型変換器である。また、本発明のスピーカ用回路の信号処理器は、代表的には、A/D変換器、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)、D/A変換器を含む。
【0020】
本発明のスピーカシステムで音響再生を行う場合には、入力信号はスピーカ用回路の増幅器で増幅され、増幅器の出力は平面振動板に結合された電気機械変換器に接続される。その結果、入力信号が入力された一の電気機械変換器によって平面振動板が振動して接する空気を振動させ、音波を再生する。同時に、本発明のスピーカシステムでは、上記の入力信号によって平面振動板に生じた振動波を他の電気機械変換器によって吸収するように信号処理器によって入力信号をフィルタ処理し、増幅器を介して印可し他の電気機械変換器を駆動する。従って、平面振動板を備えるスピーカに特有の周波数特性におけるピークディップを抑え、周波数特性が改善された良好な音響再生が可能となる。これによって、必要な情報量を低減することなく共振を低減することができる。
【0021】
さらに、本発明のスピーカシステムでは、スピーカ用回路の信号処理器のフィルタ回路が、平面振動板における振動波の伝搬速度特性に伴って、低い周波数ほど長い遅延時間をもつフィルタ特性を有する。従って、平面振動板に合わせて適切にフィルタ特性を調整することにより、平面振動板に生じる曲げの振動波を他の電気機械変換器によって吸収することができる。特に、他の電気機械変換器によって吸収される振動波が、一の電気機械変換器によって平面振動板に生じ振動板の端部において反射した反射波である場合には、反射波が有効に低減されるので、共振が低減されて周波数特性のピークディップが改善され、良好な音響再生が可能となる。
【0022】
さらに、本発明のスピーカシステムでは、入力信号がステレオ信号のような複数のチャンネル信号からなる場合には、スピーカ用回路が、一の入力チャンネル信号と、前記信号処理器によってフィルタ処理した他の入力チャンネル信号とを加算する加算器を備える。従って、一の電気機械変換器によって平面振動板に一のチャンネル信号の振動波を生じさせるとともに、他の電気機械変換器によって生じた他のチャンネル信号による振動波を吸収することができる。その結果、単一の平面振動板を備えるスピーカシステムであっても複数のチャンネル信号を音響信号として再生することができ、同時に、平面振動板を備えるスピーカシステムのピークディップをもった周波数特性を改善することができ、良好な音響再生が可能となる。
【0023】
加えて、本発明のスピーカ用回路の信号処理器は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)を含み、DSPにおいてフィルタ回路およびディレイ回路を実現している。従って、A/D変換器とD/A変換器等のハードウェア固有の遅延時間ならびにフィルタ処理の因果性を満足するために必要なフィルタ遅延時間を考慮して、入力信号を適切に遅延して出力することができる。その結果、上記の遅延時間が補償され平面振動板を備えるスピーカシステムの周波数特性を改善できるとともに、フィルタ回路の設計の自由度を増やすことができる。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態によるスピーカシステムについて説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0025】
図1は、本発明の第1の実施形態によるスピーカシステムのブロック図である。本発明のスピーカシステムは、スピーカ1と、スピーカ1に接続するスピーカ用回路2から構成される。
【0026】
図2(a)は、スピーカ1の構成を示す断面図であり、図2(b)は、スピーカ1の正面図である。スピーカ1は、平面振動板3と、平面振動板3に結合した2つの電気機械変換器4aおよび4bとを備えている。図2の場合において、電気機械変換器4aおよび4bは、ボイスコイルならびに磁気回路を備える動電型変換器であって、図2(b)に破線で示される位置において、平面振動板3とボイスコイル41aおよび41bが結合している。平面振動板3の外周端部はエッジ7によって支持され、エッジ7の外周部はフレーム8に固定されている。また、フレーム8は、2つの電気機械変換器4aおよび4bを固定している。従って、スピーカ1は、電気機械変換器4aおよび4bに駆動信号を入力することによって平面振動板3を振動させ、音響再生を行うことができる。
【0027】
平面振動板3は、代表的には、紙、アルミハニカム、発泡ポリスチレン、板状に成型された樹脂、熱硬化性樹脂を含浸した不織布または織布等であり、一般的にコーン型振動板に用いられるような密度が小さく、振動波の伝搬速度が速く、内部損失の大きい材料であればよい。また、エッジ7についても、発砲ウレタンやゴム等の弾性を有する材料であればよく、形状も図示したロール形に限られるものではない。スピーカ1は、場合によっては、エッジ7を備えないフリーエッジでもよく、フレーム8に直接に平面振動板3の外周端部が固定されているフィックスエッジでもよい。また、電気機械変換器4aおよび4bは、圧電素子を含む圧電型変換器でもよい。
【0028】
本発明のスピーカ1の平面振動板3は、代表的には、長軸と短軸の比が大きい矩形であって、2つの電気機械変換器4aおよび4bのボイスコイルは、長軸方向において平面振動板の両端に近い位置に結合される。平面振動板3の長軸と短軸の比は、2:1以上であればよく、形状も矩形に限られず、楕円またはトラック形でもよい。
【0029】
図1に示す本発明のスピーカシステムは、スピーカ1がスピーカ用回路2に接続される。スピーカ回路2は、信号処理器5と増幅器6aおよび6bとを備えている。スピーカ回路2に入力された入力信号Sは分岐され、一方の入力信号Sはそのまま増幅器6aに入力され、他方の入力信号Sは信号処理器5によって所定のフィルタ処理が施されて増幅器6bに入力される。増幅器6aおよび6bは、入力信号Sをそれぞれ増幅してスピーカ1の電気機械変換器4aおよび4bを駆動する。つまり、スピーカ1の平面振動板3は、電気機械変換器4aにおいては入力信号Sによって駆動され、電気機械変換器4bにおいては所定のフィルタ処理がなされた入力信号Sによって駆動される。
【0030】
その結果、平面振動板3において生じる振動波に起因するスピーカ1の周波数特性への悪影響を低減することができる。すなわち、このような形状の平面振動板3では、平面振動板3で生じた曲げの振動波が、平面振動板3の長軸方向の端部31a、31bで反射し、進行波と反射波が重ね合わされて共振が起こり長軸方向に振動モードが発生しやすくなるが、本発明においては、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波を、フィルタ処理を施した入力信号で駆動される他方の電気機械変換器4bによって吸収することができる。
【0031】
ここで、上記の信号処理器5による所定のフィルタ処理とは、電気機械変換器4aにおいて入力信号Sによって平面振動板3に生じた振動波を、電気機械変換器4bによって吸収するように、入力信号Sを、平面振動板3における振動波の伝搬速度特性に伴って低い周波数ほど長い遅延時間をもつように信号処理を行うことをいう。上記のフィルタ特性は、平面振動板3の形状および材料特性、ならびに電気機械変換器4aおよび4bの位置関係により定まる遅延時間特性に基づいて決定される。
【0032】
本発明では、特に、他方の電気機械変換器4bによって吸収される振動波が、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じ平面振動板3の端部31bへ伝搬し反射してきた反射波である場合には、反射波が有効に低減されるので、周波数特性のピークディップが改善され、良好な音響再生が可能となる。
【0033】
ここで、平面振動板3で生じる振動波を吸収するフィルタ特性を設定する方法について説明する。
【0034】
平面振動板3の長軸と短軸の長さの比が大きい場合には、平面振動板3は長軸方向に長い梁として近似されるので、振動波の伝搬速度Vは、以下の関係式(1)により定まり、振動波の周波数によって変化する性質を持つ。ここで、ω:角周波数、E:平面振動板のヤング率、h:平面振動板の厚み、ρ:平面振動板の密度である。
V=((ω2 E h2)/(12ρ))1/4 [m/sec] …… (1)
【0035】
従って、平面振動板3において距離L[m]を伝搬速度Vの振動波が伝搬するのに要する時間Tは、式(2)で定まる。
T=L((12ρ)/(ω2 E h2))1/4 [sec] …… (2)
【0036】
電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波を電気機械変換器4bによって吸収する場合には、振動波が伝搬する距離Lは、電気機械変換器4aと電気機械変換器4bとの距離をL0とすると、L=L0である。
【0037】
特に、電気機械変換器4aにおいて発生した振動波が平面振動板3の端部31bへ伝搬し反射してきた反射波を、電気機械変換器4bによって吸収する場合には、振動波が伝搬する距離Lは、電気機械変換器4aと平面振動板3の端部31bとの距離をL1、電気機械変換器4bと平面振動板3の端部31bとの距離をL2とすると、L=L1+L2である。
【0038】
従って、平面振動板3の形状および材料特性、ならびに電気機械変換器4aおよび4bの位置関係により、信号処理器5のフィルタ回路の遅延時間tを、上記振動波が伝搬するのに要する時間Tとほぼ一致するように設定する。
【0039】
例えば、平面振動板3が、厚みh=5.0[mm]の発泡ポリスチレンを材料とする場合において、平面振動板3を伝搬する振動波の伝搬速度の周波数特性は、図3(a)のグラフに表される。ここで、振動波の伝搬速度は、低い周波数ほど遅く、高い周波数ほど速くなる。従って、平面振動板3において距離L=0.1[m]を振動波が伝搬するのに要する時間Tは、図3(b)のグラフに表されるように、低い周波数ほど長くなり、高い周波数ほど短くなる。その結果、電気機械変換器4aにおいて生じた振動波および平面振動板3の端部31bへ伝搬し反射してきた反射波を、電気機械変換器4bにおいて吸収するためには、信号処理器5のフィルタ回路の遅延時間の周波数特性を、図3(b)のグラフに等しくなるように設定すればよい。
【0040】
なお、最も低い周波数においては、遅延時間が必要以上に長くなりすぎる場合がある。平面振動板3の振動モードのうち、最も低い周波数の基本モードの周波数、あるいは、電気機械変換器4aおよび4bの最低共振周波数よりも低い周波数については、周波数特性のピークディップの改善に寄与しない。従って、上記の低い周波数帯域については、信号処理器5のフィルタ回路は、上記のフィルタ特性を満足しなくてもよい。また、信号処理器5のフィルタ回路にローカットフィルタを設けて、上記の低い周波数帯域以上の音響再生に必要な帯域のみについて、上記のフィルタ特性によるフィルタ処理を実現してもよい。
【0041】
さらに、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波を電気機械変換器4bによって吸収するためには、信号処理器5のフィルタ回路において入力信号Sを位相反転して出力すればよい。また、振動波が平面振動板3を伝搬するのに伴って減衰する場合には、信号処理器5のフィルタ回路のゲインをその減衰量に等しく減衰させればよい。
【0042】
また、特に、電気機械変換器4aにおいて発生した振動波が平面振動板3の端部31bへ伝搬し反射してきた反射波を、電気機械変換器4bによって吸収する場合には、平面振動板3の端部の固定方法に起因する端部における反射波の反射率と位相変化によって、信号処理器5のフィルタ回路のゲインと位相変化に反映させればよい。例えば、反射率が0.5の場合には、フィルタ回路のゲインを0.5倍すればよい。反射波の反射率は、平面振動板3とエッジ7の特性機械インピーダンスの比によって定まるので、平面振動板3とエッジ7の形状及び材料特性から求めることができる。
【0043】
また、スピーカ1が、エッジ7を備えず平面振動板3が直接フレーム8に固定されているようなフィックスエッジである場合には、平面振動板3の端部では、上記のエッジ7を介するフリーエッジの場合とは反射波の位相が逆転する。従って、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波を電気機械変換器4bによって吸収するためには、フィックスエッジであれば信号処理器5のフィルタ回路において入力信号Sを位相反転せずに出力すればよい。
【0044】
平面振動板3において反射波を生じる端部が複数存在するような場合には、全ての反射波の伝搬距離について、それぞれ複数の遅延処理を設ければよい。もちろん、その中でも影響の大きな反射波についてのみ、遅延処理を設けてもよい。
【0045】
図4(a)は、本発明の実施例のスピーカシステムにおける軸上音圧周波数特性を表すグラフである。ここで、スピーカ回路2の信号処理器5のフィルタ回路は、上記のフィルタ特性を実現し、平面振動板3は、電気機械変換器4aおよび4bにより駆動されている場合である。また、図4(b)は、比較例として、本発明のスピーカシステムにおいて、スピーカ回路2の信号処理器5のフィルタ回路の出力を遮断し、平面振動板3は、電気機械変換器4aのみにより駆動されている場合である。このように、スピーカ1の軸上音圧周波数特性上で2kHz付近に生じるピークを、本発明によるスピーカ回路2によって抑えることができ、良好な音響再生が可能となる。
【0046】
信号処理器5は、任意の回路を用いることができるが、代表的には、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)およびA/D変換器およびD/A変換器を含む。上記の信号処理器5のフィルタ回路は、DSP(デジタルシグナルプロセッサ)により実現可能である。具体的には、フィルタ回路は、FIR型(非巡回型)フィルタおよび/またはIIR型(巡回型)フィルタでよい。また、信号処理器5のA/D変換器およびD/A変換器のサンプリング周波数は、スピーカシステムの再生周波数帯域の2倍以上であればよい。
【0047】
図5は、本発明の第2の実施形態によるスピーカシステムのブロック図である。スピーカ回路2への入力信号がSa、Sbの2チャンネルの信号からなる場合において、本発明のスピーカシステムでは、電気機械変換器4aによって平面振動板3にSaチャンネル信号の振動波を生じさせるとともに、電気機械変換器4bによって生じたSbチャンネル信号による振動波を吸収するように信号処理器53bにおいてSbチャンネル信号をフィルタ処理し、増幅器6aを介して印可し電気機械変換器4aを駆動する。同様に、電気機械変換器4bによって平面振動板3にSbチャンネル信号の振動波を生じさせるとともに、これらの信号を電気機械変換器4aによって生じたSaチャンネル信号による振動波を吸収するように信号処理器53aにおいてSaチャンネル信号をフィルタ処理し、増幅器6bを介して印可し電気機械変換器4bを駆動する。
【0048】
本発明のスピーカシステムでは、上記の信号処理をスピーカ回路2の信号処理器5において実現する。具体的には、信号処理器5は、DSP50(デジタルシグナルプロセッサ)、A/D変換器51、D/A変換器52a、52bを含み、DSP50では、フィルタ回路53a、53bと加算器55a、55bを設けている。加算器55aにおいては、Saチャンネル信号とフィルタ回路53bでフィルタ処理したSbチャンネル信号を加算し、加算器55bにおいては、Sbチャンネル信号とフィルタ回路53aでフィルタ処理したSaチャンネル信号を加算する。
【0049】
この結果、本発明のスピーカシステムにおいては、単一の平面振動板3を備えるのみであっても、ステレオ信号のような複数のチャンネル信号を音響信号として再生することができ、同時に、平面振動板3を備えるスピーカシステムのピークディップをもった周波数特性を改善することができ、良好な音響再生が可能となる。
【0050】
図6は、本発明の第3の実施形態によるスピーカシステムのブロック図である。スピーカ回路2は、信号処理器5と2つの増幅器6aおよび6bとを備え、信号処理器5は、DSP50(デジタルシグナルプロセッサ)、A/D変換器51、D/A変換器52a、52bを含む。スピーカ回路2に入力された入力信号Sは、A/D変換器51でデジタル信号に変換され、DSP50に入力される。DSP50には、フィルタ回路53とディレイ回路54が設けられ、入力信号Sが分岐されてそれぞれ入力される。一方の入力信号Sはディレイ回路54で遅延処理が施された後に増幅器6aに入力され、他方の入力信号Sはフィルタ回路53によって所定のフィルタ処理が施された後に増幅器6bに入力される。増幅器6aおよび6bは、入力された入力信号をそれぞれ増幅してスピーカ1の電気機械変換器4aおよび4bを駆動する。つまり、スピーカ1の平面振動板3は、電気機械変換器4aにおいては入力信号Sそのままによって駆動され、電気機械変換器4bにおいては所定のフィルタ処理がなされた入力信号Sによって駆動される。その結果、電気機械変換器4aによって平面振動板3に生じた振動波をフィルタ処理を施した入力信号で駆動される他方の電気機械変換器4bによって吸収することができる。
【0051】
上記のディレイ回路54は、フィルタ回路53等の信号処理器によって生じる遅延時間を補償する目的で設けられる。すなわち、デジタル信号処理においては、因果性を満足するためにフィルタ係数に所定の遅延時間を設ける場合があるが、本発明のディレイ回路54を設けることによって、上記の所定の遅延時間を補償することができる。ディレイ回路54は、上記のようにDSP50内に設けてもよいし、DSPとは別に、遅延した信号を記憶するメモリー回路などにより設けてもよい。
【0052】
図6に示される実施例においては、A/D変換器51とD/A変換器52a、52bにおいて生じる遅延時間は共通しているため、この遅延時間はディレイ回路54で補償する必要はない。しかし、信号処理器2におけるA/D変換器、D/A変換器等のハードウェア固有の遅延や信号処理に応じて生じる遅延が存在する場合等は、上記のディレイ回路で補償すればよい。つまり、平面振動板3を伝搬する振動波の伝達速度に無関係な信号処理器2における遅延については、ディレイ回路を設けることによって必要に応じて補償することができ、さらに良好にスピーカシステムの周波数特性の改善を図ることができる。
【0053】
従って、本発明の第3の実施形態によるスピーカシステムにおいても、スピーカ1の軸上音圧周波数特性上に生じるピークを、スピーカ回路2によって抑えることができ、良好な音響再生が可能となる。さらに、ディレイ回路を設けることによって、フィルタ回路53の設計の自由度を増やすことができる。
【0054】
本発明のスピーカシステムは、上記実施例に限定されるものではない。平面振動板3の形状は、矩形または楕円またはトラック形であればよく、平面振動板3の長軸と短軸の比が大きいものに限定されるものではない。例えば、平面振動板が図7のように2次元的形状である場合には、入力信号により駆動される一の電気機械変換器4aに対して、平面振動板に生じた振動波を吸収するように他の複数の電気機械変換器4bを平面振動板3に結合してもよい。
【0055】
また、振動板は、平面振動板に限られるものではなく、例えば、コーン型振動板であっても、単一の振動板に複数の電気機械変換器が結合されたスピーカであればよい。
【0056】
【発明の効果】
本発明のスピーカシステムは、平面振動板と平面振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備えたスピーカシステムにおいて、平面振動板に生じた振動波および振動波が平面振動板の端部で反射して生じる反射波に起因する共振現象を低減することができる。従って、周波数特性にピークディップが少ないスピーカシステムを提供することができる。
【0057】
さらに、本発明のスピーカシステムは、単一の平面振動板を備えるのみであっても、ステレオ信号のような複数のチャンネル信号を音響信号として再生することができ、同時に、平面振動板を備えるスピーカシステムのピークディップをもった周波数特性を改善することができる。
【0058】
さらに、本発明のスピーカシステムは、スピーカ回路にディレイ回路を設けることによって、ハードウェア固有の遅延や信号処理に応じて生じる遅延を補償することができ、フィルタ回路の設計の自由度を増やすことができる。その結果、さらに改善されたスピーカシステムが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のスピーカシステムの好ましい実施形態について説明する図である。
【図2】本発明のスピーカの好ましい実施形態について説明する図である。
【図3】本発明の平面振動板を伝搬する振動波の伝搬速度の周波数特性、ならびに本発明の信号処理器のフィルタ回路の遅延時間の周波数特性を表すグラフである。
【図4】本発明のスピーカシステムにおける軸上音圧周波数特性を表すグラフである。
【図5】本発明のスピーカシステムの他の好ましい実施形態について説明する図である。
【図6】本発明のスピーカシステムの他の好ましい実施形態について説明する図である。
【図7】本発明のスピーカの他の好ましい実施形態について説明する図である。
【符号の説明】
1 スピーカ
2 スピーカ回路
3 平面振動板
4 電気機械変換器
41 ボイスコイル
5 信号処理器
50 DSP(デジタルシグナルプロセッサ)
51 A/D変換器
52 D/A変換器
53 フィルタ回路
54 ディレイ回路
55 加算器
6 増幅器
7 エッジ
8 フレーム
Claims (7)
- スピーカと該スピーカに接続するスピーカ用回路を備えるスピーカシステムであって、
該スピーカが、振動板と、該振動板に結合した複数の電気機械変換器とを備え、
該スピーカ用回路が、フィルタ回路を含む信号処理器と、該電気機械変換器に接続する複数の増幅器とを備え、
該スピーカ用回路が、入力信号を一の増幅器を介して印加することにより一の電気機械変換器を駆動し、および、該信号処理器のフィルタ回路によってフィルタ処理した該入力信号を他の増幅器を介して印加することにより他の電気機械変換器を駆動し、該一の電気機械変換器によって該振動板に生じた振動波を該他の電気機械変換器によって吸収する
スピーカシステム。 - 前記スピーカ用回路の前記信号処理器のフィルタ回路が、前記振動板における振動波の伝搬速度特性に伴って、低い周波数ほど長い遅延時間をもつフィルタ特性を有する
請求項1に記載のスピーカシステム。 - 前記他の電気機械変換器が、前記一の電気機械変換器によって前記振動板に生じ該振動板の端部において反射した反射波を吸収する、
請求項1および2に記載のスピーカシステム。 - 前記入力信号が複数のチャンネル信号からなり、
前記スピーカ用回路が、一の入力チャンネル信号と、前記信号処理器によってフィルタ処理した他の入力チャンネル信号とを加算する加算器を備える、
請求項1から3に記載のスピーカシステム。 - 前記振動板が、平面振動板であり、
前記電気機械変換器が、ボイスコイルおよび磁気回路を含む動電型変換器、あるいは圧電素子を含む圧電型変換器である、
請求項1から4に記載のスピーカシステム。 - 前記スピーカ用回路の前記信号処理器が、A/D変換器、デジタルシグナルプロセッサ、D/A変換器を含む
請求項1から5に記載のスピーカシステム。 - 前記スピーカ用回路の前記信号処理器が、前記A/D変換器および前記デジタルシグナルプロセッサおよび前記D/A変換器における信号処理にともなって生じる遅延時間を補償するディレイ回路を含む
請求項1から6に記載のスピーカシステム。
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