JP2004172434A - 磁気検出素子及びその製造方法並びにこの磁気検出素子を用いた磁気ヘッド及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】固定磁性層57の延出部57aの上面57a1と付加絶縁層61の上面61aを連続面にする。従って、ハードバイアス層63を一定膜厚の平面形状で形成できるため、ハードバイアス層63内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、フリー磁性層59にバイアス磁界を十分に与えることができ、フリー磁性層59を確実に単磁区化することができるため、磁気検出素子の出力中のノイズを低減できる。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ハードバイアス方式によってフリー磁性層の磁化制御を行う磁気検出素子に係り、特に狭トラック化においても出力の対称性を維持することができ、かつ再生波形の安定性を図ることのできる磁気検出素子及びその製造方法並びにこの磁気検出素子を用いた磁気ヘッド及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図10は、従来の磁気検出素子の構造を示す断面図である。なお、図10ではX方向に延びる素子の中央部分のみを破断して示している。
【0003】
図10の最も下に形成されているのはTa(タンタル)などの非磁性材料で形成された下地層6である。この下地層6の上に反強磁性層1、固定磁性層(ピン磁性層)2が積層されている。反強磁性層1と固定磁性層2とが積層された状態で、所定の大きさの磁界中で熱処理が施されることにより、両層の界面で交換異方性磁界が得られ、固定磁性層2の磁化の方向がY方向に単磁区化され固定される。
【0004】
固定磁性層2の上には、Cu(銅)などの電気抵抗の低い非磁性導電層3が形成され、さらにフリー磁性層4、Taなどの保護層7が積層されている。
【0005】
反強磁性層1はPt―Mn合金、固定磁性層2及びフリー磁性層4はNi―Fe合金またはFe−Co合金で形成されている。
【0006】
図10に示すように、固定磁性層2のT1領域の上面から、非磁性導電層3、フリー磁性層4および保護層7の傾斜面にかけて、非磁性膜9が成膜されている。さらに、非磁性膜9の上には、ハードバイアス層5、電極層8が積層されている。
【0007】
ハードバイアス層5はT1領域の固定磁性層2の上に形成されているため、フリー磁性層4の両側に形成されたハードバイアス層5の膜厚が厚くなっており、従ってフリー磁性層4にハードバイアス層5からのバイアス磁界が十分に与えられている。従って、フリー磁性層4は、その全領域においてX方向に適正に単磁区化されたものとなっている。
【0008】
また、ハードバイアス層5の下のT1領域にも固定磁性層2および反強磁性層1が延出している。このため、固定磁性層2は、トラック幅よりもより長い範囲でY方向に固定されており、その結果、磁気記録媒体からの磁界による固定磁性層2の磁化のゆらぎの発生を防止することが可能となっている。
【0009】
図10に示される磁気検出素子は特許文献1に記載されている。
ところで、近年磁気ヘッドの狭ギャップ化が進み、磁気検出素子の上下に設けられる磁気検出素子を絶縁するギャップ層の膜厚をできる限り薄くすることが求められている。しかし、単純にギャップ層を薄くすると、ギャップ層の上下に形成されるシールド層と磁気検出素子の絶縁が不十分になり短絡しやすくなる。
【0010】
そこで、図11に示されるように、磁気検出素子Sの両側領域にのみ付加的な絶縁層を設ける構造が提案されている。
【0011】
図11に示される磁気検出素子Sは、下部シールド層11上に、下部ギャップ層12を介して積層されている。下部シールド層11はNiFe合金などの軟磁性合金からなり、下部ギャップ層12はAl2O3などの無機絶縁材料からなる。
【0012】
磁気検出素子Sは反強磁性層13、固定磁性層14、非磁性導電層15、フリー磁性層16、保護層17が積層されたものである。なお、図11では、反強磁性層13、固定磁性層14、非磁性導電層15、フリー磁性層16、保護層17の図示X方向の両側端面は連続面になっている。
【0013】
なお、反強磁性層13、固定磁性層14、非磁性導電層15、フリー磁性層16、保護層17各層の材料は、図10に示される磁気検出素子の対応する層の材料と同じである。
【0014】
図11に示される磁気ヘッドでは、磁気検出素子Sの両側領域の下部ギャップ層12上に、付加的な絶縁層18,18が設けられている。なお、絶縁層18は、磁気検出素子Sの側端面から間隔を開けて配置されている。
【0015】
下部ギャップ層12及び絶縁層18,18上に、ハードバイアス層19,19、電極層20,20が形成され、磁気検出素子S及び電極層20,20上に上部ギャップ層21及び上部シールド層22が設けられている。
【0016】
絶縁層18はAl2O3などの無機絶縁材料、ハードバイアス層19はCoPtなどの硬磁性材料、電極層20はCrなどの導電性材料、上部ギャップ層は下部ギャップ層と同様の無機絶縁材料、上部シールド層22は下部シールド層11と同様の軟磁性材料によって形成される。
【0017】
図11に示される磁気へッドは、絶縁層18,18が存在しているため、磁気検出素子Sの上下における上部シールド層22と下部シールド層11間の距離によって規定されるギャップ長G1を小さくしたときにハードバイアス層19,19と下部シールド層11が短絡する危険性を低減できるものである
図11に示されるような、磁気検出素子の両側領域に絶縁層を設ける磁気ヘッドは例えば特許文献2に記載されている。
【0018】
【特許文献1】
特開平10−341048号公報(第4〜5頁、第1図)
【特許文献2】
特開平7−282423号公報(第3〜4頁、第1図)
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、図11に示される磁気ヘッドを形成するときには、まず、下部シールド層11及び下部ギャップ層12を積層した上に、中央部に間隔をあけて一対の絶縁層18,18を形成する。その後、磁気検出素子Sを、一対の絶縁層18,18の間に位置するように薄膜形成及びパターン形成する。
【0020】
従って、絶縁層18,18は、磁気検出素子Sの側端面から一定の間隙を開けて配置される。このため、ハードバイアス層19,19には、磁気検出素子Sの側端面と絶縁層18,18間の間隙上で凹みが発生し、ハードバイアス層19,19内の磁化及びバイアス磁界に乱れが生じてしまう。
【0021】
図10に示される構造の磁気検出素子を用いて、図11の磁気ヘッドにおける付加的な絶縁層を設けた磁気ヘッドを構成する場合にも、同様の問題が発生する。
【0022】
図12に示される磁気ヘッドは、図10に示される磁気検出素子の両側領域に、単純に付加的な絶縁層を設けたものである。
【0023】
図12の磁気へッドは、下部シールド層11の上に下部ギャップ層12を介して、反強磁性層1及び固定磁性層2の第1の方向(図示X方向)の長さ寸法が、非磁性導電層3及びフリー磁性層4の第1の方向の長さ寸法より大きくなっている磁気検出素子S1が積層されている。磁気検出素子S1の両側領域には、図11に示される磁気ヘッドの絶縁層18,18と同様の絶縁層23,23が配置されている。そして、絶縁層23.23の上にハードバイアス層24,24、電極層25,25、上部ギャップ層26、上部シールド層27が積層されている。
【0024】
絶縁層23,23は、磁気検出素子S1の側端面から間隙を開けて配置されている。従って図11に示される磁気ヘッドと同じように、ハードバイアス層24,24には、磁気検出素子S1の側端面と絶縁層23,23間の間隙上で凹みが発生し、ハードバイアス層24,24内の磁化及びバイアス磁界に乱れが生じてしまう。
【0025】
図13に示される磁気ヘッドは、一対の付加的な絶縁層の上に図10に示される磁気検出素子を設けたものである。
【0026】
図13の磁気へッドでは、下部シールド層31の上に下部ギャップ層32を介して磁気検出素子S2が積層されている。磁気検出素子S2の反強磁性層33及び固定磁性層34の第1の方向(図示X方向)の長さ寸法は、非磁性材料層35及びフリー磁性層36の第1の方向の長さ寸法より大きくなっている。磁気検出素子S1の下には、図11に示される磁気ヘッドの絶縁層18,18と同様の絶縁層38,38が配置されている。そして、絶縁層38,38の上に反強磁性層33、固定磁性層34、ハードバイアス層39,39、電極層40,40、上部ギャップ層41、上部シールド層42が積層されている。
【0027】
絶縁層38,38は下部ギャップ層32の上で、第1の方向に間隙をあけて配置されている。従って、絶縁層38,38の上層に形成されるハードバイアス層39,39は湾曲し、ハードバイアス層39,39内の磁化及びバイアス磁界に乱れが発生する。
【0028】
このように、下部ギャップ層上に一対の付加的な絶縁層を設けるという従来の技術的思想と、反強磁性層及び固定磁性層の第1の方向(図示X方向)の長さ寸法を、フリー磁性層36の第1の方向の長さ寸法より大きくするという技術的思想を単純に寄せ集めた磁気検出素子は、ハードバイアス層にゆがみを発生させるものであり、フリー磁性層に安定したバイアス磁界を印加することができないものであった。フリー磁性層に安定したバイアス磁界を印加することができないとフリー磁性層の磁区の単磁区化が困難になりバルクハウゼンノイズが発生しやすくなる。
【0029】
本発明は、上記従来の課題を解決するためのものであり、ハードバイアス方式によってフリー磁性層の磁化制御を行う磁気検出素子の狭トラック化を進めたときにも固定磁性層の磁化を確実に固定でき、また、狭ギャップ化を進めたときにもハードバイアス層とシールド層の絶縁を取れるようにし、かつフリー磁性層に安定したバイアス磁界を供給してノイズを少なくできる磁気検出素子及びその製造方法並びにこの磁気検出素子を用いた磁気ヘッド及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0030】
【課題を解決するための手段】
本発明は、外部からの磁界に応じて内部の磁化方向が変化するフリー磁性層と、内部の磁化方向が固定されている固定磁性層と、前記フリー磁性層と前記固定磁性層との間に介在する非磁性材料層と、交換結合により前記固定磁性層内の磁化を固定する反強磁性層とを有する磁気検出素子において、
前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法は、前記フリー磁性層、前記非磁性材料層の第1の方向の長さ寸法より長く形成され、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に、前記フリー磁性層、前記非磁性材料層の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部が設けられており、前記延出部の両側領域に付加絶縁層が形成されて、前記固定磁性層の前記延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が連続面をなし、この連続面上に、前記フリー磁性層にバイアス磁界を与えるバイアス層が設けられていることを特徴とするものである。
【0031】
本発明では、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法が、前記フリー磁性層、前記非磁性材料層の第1の方向の長さ寸法より長く形成されているため、前記固定磁性層は、前記フリー磁性層の第1の方向の長さ寸法で規定されるトラック幅寸法よりも長い範囲で前記第1の方向に直交する第2の方向(ハイト方向)に固定される。すなわち、フリー磁性層のトラック幅寸法を小さくしても前記固定磁性層の幅寸法を大きく維持することができるので、前記固定磁性層と前記反強磁性層の接合面積を大きく維持でき、前記固定磁性層の磁化を強く固定することができる。従って、磁気ヘッドが帯電して磁気検出素子に大きな過渡電流が発生した場合でも、前記固定磁性層と前記反強磁性層間の交換結合磁界の向きをハイト方向に維持することができる。
【0032】
このように、前記固定磁性層の磁化方向をハイト方向に強く固定できるため、外部磁界が印加されない状態において、前記フリー磁性層と前記固定磁性層の磁化方向の相対的な角度を一定に保つことができ、出力の対称性を向上させることができる。また、磁気検出素子の磁界検出出力も向上する。
【0033】
また、本発明では、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に設けられた前記延出部の両側領域に付加絶縁層が形成され、しかも前記固定磁性層の前記延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が連続面になっている。
【0034】
従って、前記付加絶縁層の上層に形成されるハードバイアス層に凹みや湾曲が生じることを防止できる。すなわち、前記ハードバイアス層を一定膜厚の平面形状で形成できるため、前記ハードバイアス層内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、フリー磁性層にバイアス磁界を十分に与えることができ、フリー磁性層を確実に単磁区化することができるため、磁気検出素子の出力中のノイズを低減できる。
【0035】
なお、前記固定磁性層の前記延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が平坦面をなすことが好ましい。
【0036】
または、本発明は、外部からの磁界に応じて内部の磁化方向が変化するフリー磁性層と、内部の磁化方向が固定されている固定磁性層と、前記フリー磁性層と前記固定磁性層との間に介在する非磁性材料層と、交換結合により前記固定磁性層内の磁化を固定する反強磁性層とを有する磁気検出素子において、
前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法は、前記フリー磁性層の第1の方向の長さ寸法より長く形成され、前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に、前記フリー磁性層の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部が設けられており、前記延出部の両側領域に付加絶縁層が形成されて、前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が平坦面をなし、この平坦面上に、前記フリー磁性層にバイアス磁界を与えるバイアス層が設けられていることを特徴とするものである。
【0037】
本発明でも、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法が、前記フリー磁性層の第1の方向の長さ寸法より長く形成されており、前記固定磁性層の磁化を強く固定することができる。従って、磁気ヘッドが帯電して磁気検出素子に大きな過渡電流が発生した場合でも、前記固定磁性層と前記反強磁性層間の交換結合磁界の向きをハイト方向に維持することができ、出力の対称性を向上させることができる。また、磁気検出素子の磁界検出出力も向上する。
【0038】
また、前記固定磁性層の前記延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が連続面になっているので、前記ハードバイアス層を一定膜厚の平面形状で形成できる。従って、前記ハードバイアス層内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給でき、フリー磁性層を確実に単磁区化することができるため、磁気検出素子の出力中のノイズを低減できる。
【0039】
なお、本発明では、前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が平坦面をなしていることが好ましい。
【0040】
また、本発明の磁気検出素子の上下に絶縁材料からなるギャップ層を介して、磁性材料からなるシールド層が形成されている磁気ヘッドを構成することができる。
【0041】
本発明の磁気ヘッドでは、前記反強磁性層と前記固定磁性層の両側領域に前記付加絶縁層が存在しているため、磁気検出素子の上下におけるシールド層間の距離によって規定されるギャップ長を小さくしたときに前記ハードバイアス層とシールド層が短絡する危険性を低減できる。また、前記ハードバイアス層を一定膜厚の平面形状で形成できるため、前記ハードバイアス層内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、バイアス磁界が前記シールド層に吸収される率を低減できる。
【0042】
本発明の磁気検出素子の製造方法は、以下の工程を有することを特徴とするものである。
(a)下から順に、反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、フリー磁性層を有する多層膜を積層形成する工程と、
(b)前記多層膜を構成する各層の第1の方向における両側端面を削って連続面とし、前記連続面の第1の方向における両側に付加絶縁層を設ける工程と、
(c)前記フリー磁性層及び前記非磁性材料層の両側端部及び前記付加絶縁層を削って、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法を前記フリー磁性層及び前記非磁性材料層の第1の方向の長さ寸法より長くして、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に、前記フリー磁性層及び前記非磁性材料層の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部を形成する工程と
(d)前記固定磁性層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面を連続面にする工程と、
(e)前記平坦面上に、前記フリー磁性層にバイアス磁界を与えるバイアス層を形成する工程。
【0043】
本発明では、前記(c)工程によって、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法を前記フリー磁性層及び前記非磁性材料層の第1の方向の長さ寸法より長くしているので、前記固定磁性層と前記反強磁性層の接合面積を大きく維持でき、前記固定磁性層の磁化を強く固定することができる。
【0044】
従って、本発明の製造方法によって形成された磁気検出素子を用いた磁気ヘッドが帯電して、大きな過渡電流が発生した場合でも、前記固定磁性層と前記反強磁性層間の交換結合磁界の向きをハイト方向に維持することができる。
【0045】
このように、前記固定磁性層の磁化方向をハイト方向に強く固定できるため、外部磁界が印加されない状態において、前記フリー磁性層と前記固定磁性層の磁化方向の相対的な角度を一定に保つことができ、出力の対称性を向上させることができる。また、磁気検出素子の磁界検出出力も向上する。
【0046】
また、前記(d)工程によって、前記固定磁性層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面を連続面にし、前記(e)工程によって、前記連続面上に、前記フリー磁性層にバイアス磁界を与えるバイアス層を形成する。
【0047】
従って、前記ハードバイアス層を一定膜厚の平面形状で形成できるため、前記ハードバイアス層内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、フリー磁性層にバイアス磁界を十分に与えることができ、フリー磁性層を確実に単磁区化することができるため、磁気検出素子の出力中のノイズを低減できる。
【0048】
また、前記ハードバイアス層を前記フリー磁性層の両側に正確に位置合わせできる。
【0049】
なお、本発明では、前記(d)工程において、前記固定磁性層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面を平坦面にすることが好ましい。
【0050】
なお、前記(c)工程及び前記(d)工程の代わりに、
(f)前記フリー磁性層の両側端部及び前記付加絶縁層を削って、前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法を前記フリー磁性層の第1の方向の長さ寸法より長くして、前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に、前記フリー磁性層の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部を形成する工程と、
(g)前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面を連続面にする工程、
を用いてもよい。
【0051】
前記(f)工程及び前記(g)工程を用いると、前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面に、前記ハードバイアス層が形成される。前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面も連続面を形成しているため前記ハードバイアス層を一定膜厚の平面形状で形成でき、前記ハードバイアス層内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、フリー磁性層にバイアス磁界を十分に与えることができ、フリー磁性層を確実に単磁区化することができるため、磁気検出素子の出力中のノイズを低減できる。
【0052】
また、前記ハードバイアス層を前記フリー磁性層の両側に正確に位置合わせできる。
【0053】
なお、前記(g)工程において、前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面を平坦面にすることが好ましい。
【0054】
また、本発明の磁気ヘッドの製造方法は、前述の工程と、さらに前記(a)工程の前に磁性材料からなるシールド層及び絶縁材料からなるギャップ層を形成する工程と、前記(e)または前記(f)工程の後に、絶縁材料からなるギャップ層及び磁性材料からなるシールド層を形成する工程を有することを特徴とするものである。
【0055】
本発明では、前記反強磁性層と前記固定磁性層の両側領域に前記付加絶縁層を形成するため、前記ハードバイアス層とシールド層が短絡する危険性を低減できる。また、前記ハードバイアス層を一定膜厚の平面形状で形成できるため、前記ハードバイアス層内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、バイアス磁界が前記シールド層に吸収される率を低減できる。
【0056】
【発明の実施の形態】
図1は本発明における磁気検出素子(スピンバルブ型薄膜素子)の構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。
【0057】
符号50は磁性材料製の下部シールド層である。下部シールド層50上に下部ギャップ層51が形成されている。下部ギャップ層51上には、磁気検出素子を構成する多層膜T1が形成されている。
【0058】
図1に示す実施形態では、多層膜T1は、下からシードレイヤ52、反強磁性層53、固定磁性層57、非磁性材料層58、フリー磁性層59及び保護層60の順に積層されたものである。
【0059】
シードレイヤ52は、NiFe合金、NiFeCr合金あるいはCr、Taなどで形成されている。シードレイヤ52は、例えば(Ni0.8Fe0.2)60at%Cr40at%の膜厚60Åで形成される。
【0060】
反強磁性層53は、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成される。
【0061】
第1反強磁性層53として、これらの合金を使用し、これを熱処理することにより、大きな交換結合磁界を発生する反強磁性層53及び固定磁性層57の交換結合膜を得ることができる。特に、PtMn合金であれば、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を有し、交換結合磁界を失うブロッキング温度が380℃と極めて高い優れた反強磁性層53及び固定磁性層57の交換結合膜を得ることができる。
【0062】
これらの合金は、成膜直後の状態では、不規則系の面心立方構造(fcc)であるが、熱処理によってCuAuI型の規則型の面心正方構造(fct)に構造変態する。
【0063】
反強磁性層53の膜厚は、トラック幅方向の中心付近において80〜300Åである。
【0064】
図1に示す実施形態では、固定磁性層57は人工フェリ構造である。固定磁性層57は磁性層54、56とその間に介在する非磁性中間層55の3層構造である。
【0065】
磁性層54、56は、例えばNiFe合金、Co、CoNiFe合金、CoFe合金、CoNi合金などの磁性材料で形成される。磁性層54と磁性層56は、同一の材料で形成されることが好ましい。
【0066】
また、非磁性中間層55は、非磁性材料により形成されるもので、Ru、Rh、Ir、Cr、Re、Cuのうち1種またはこれらの2種以上の合金で形成されている。特にRuによって形成されることが好ましい。
【0067】
非磁性材料層58は、固定磁性層57とフリー磁性層59との磁気的な結合を防止する層であり、Cu,Cr,Au,Agなど導電性を有する非磁性材料により形成されることが好ましい。特にCuによって形成されることが好ましい。
【0068】
フリー磁性層59は、NiFe合金やCoFe合金等の磁性材料で形成される。図1に示す実施形態では特にフリー磁性層59がNiFe合金で形成されるとき、フリー磁性層59と非磁性材料層58との間にCoやCoFeなどからなる拡散防止層(図示しない)が形成されていることが好ましい。
【0069】
本実施の形態の特徴部分について述べる。
本実施の形態の磁気検出素子では、固定磁性層57及び反強磁性層53の第1の方向(図示X方向;トラック幅方向)の長さ寸法W1が、フリー磁性層59、非磁性材料層58の第1の方向の長さ寸法W2より長く形成されているため、固定磁性層57は、フリー磁性層59の第1の方向の長さ寸法W2で規定されるトラック幅寸法Twよりも長い範囲で、第1の方向に直交する第2の方向(ハイト方向)に固定される。すなわち、フリー磁性層59のトラック幅寸法Twを小さくしても、固定磁性層57と反強磁性層53の接合面積を大きく維持でき、固定磁性層57の磁化を強く固定することができる。従って、磁気ヘッドが帯電して磁気検出素子に大きな過渡電流が発生した場合でも、固定磁性層57と反強磁性層53間の交換結合磁界の向きをハイト方向に維持することができる。
【0070】
このように、固定磁性層57の磁化方向をハイト方向に強く固定できるため、外部磁界が印加されない状態において、フリー磁性層59と固定磁性層57の磁化方向の相対的な角度を一定に保つことができ、出力の対称性を向上させることができる。また、磁気検出素子の磁界検出出力も向上する。
【0071】
なお、本実施の形態では、トラック幅寸法Twは0.20μm以下、固定磁性層57と反強磁性層53の第1の方向の長さ寸法W1は0.25μm以上である。なお、トラック幅寸法Twは、フリー磁性層59の第1の方向の長さ寸法W2に等しい。
【0072】
また、固定磁性層57の延出部57a及び反強磁性層53に設けられた延出部53aの両側領域に付加絶縁層61が形成され、固定磁性層57の延出部57aの上面57a1と付加絶縁層61の上面61a上に、バイアス下地層62を介してハードバイアス層63が積層されている。ハードバイアス層63はCoPt合金やCoPtCr合金で形成される。
【0073】
本実施の形態では、固定磁性層57の延出部57aの上面57a1と付加絶縁層61の上面61aが連続面、より好ましくは平坦面になっている。
【0074】
従って、付加絶縁層61の上層に形成されるハードバイアス層63に凹みや湾曲が生じることを防止できる。すなわち、ハードバイアス層63を一定膜厚の平面形状で形成できるため、ハードバイアス層63内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、フリー磁性層59にバイアス磁界を十分に与えることができ、フリー磁性層59を確実に単磁区化することができるため、磁気検出素子の出力中のノイズを低減できる。
【0075】
また、ハードバイアス層63をフリー磁性層59の両側に正確に位置合わせできる。
【0076】
バイアス下地層62は、体心立方構造(bcc)で且つ(100)配向性を有する金属膜で形成されることが好ましい。
【0077】
結晶構造が体心立方構造で(100)配向性を有する金属膜としては、Cr(クロム),Ti(チタン),Mo(モリブデン),W(タングステン)またはW50MO50(50,50はat%)を提示することができる。バイアス下地層62はこれらのうち1種の材料で形成されていてもよいし、あるいは2種以上の混合物で形成されていてもよい。
【0078】
体心立方構造で且つ(100)配向性を有するCrなどのバイアス下地層62の上に、Co―Pt合金などのハードバイアス層63が形成されると、ハードバイアス層63の保磁力Hc、および残留磁化(Br)/飽和磁束密度(Bs)で求められる角形比Sは大きくなる。その結果ハードバイアス層63から発生するバイアス磁界は増大する。
【0079】
また、ハードバイアス層63は固定磁性層57の両側にはなく、固定磁性層57から離れた位置に形成されているために、ハードバイアス層63からの磁界は固定磁性層57に印加されず、効率的にフリー磁性層59に集中して印加される。以上により、フリー磁性層59は、その全領域においてX方向に適正に単磁区化されたものとなっている。
【0080】
また、固定磁性層57の上には直接、ハードバイアス層63が形成されておらず、バイアス下地層62が介在しているので、固定磁性層57とハードバイアス層63との間で強磁性結合が発生することがない。その結果、バイアス下地層62の介在により、ハードバイアス層63の磁化が、バイアス下地層62で遮断され、固定磁性層57の磁化に影響を与えることがない。このように、固定磁性層57は、ハードバイアス層63の影響を受けることがなく、従って固定磁性層57は、その全領域において、Y方向に適正に単磁区化され固定されたものとなっている。
【0081】
図2は本発明における磁気検出素子及び磁気ヘッドの構造を記録媒体との対向面側から見た部分断面図である。特に説明がない限り、図1と同じ符号が付けられた層は、図1の該当する層と同じ材料、同じ膜厚、同じ形状である。
【0082】
図2に示される磁気ヘッドが、図1に示される磁気ヘッドと異なるのは、固定磁性層57及び反強磁性層53の第1の方向(X方向;トラック幅方向)の長さ寸法だけでなく、非磁性材料層58の第1の方向の長さ寸法も、フリー磁性層59の第1の方向の長さ寸法より長く形成されている点である。従って、非磁性材料層58にも、フリー磁性層59の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部58aが設けられている。
【0083】
非磁性材料層58、固定磁性層57及び反強磁性層53の延出部の両側領域に付加絶縁層61が形成されて、非磁性材料層58の延出部58aの上面58a1と付加絶縁層61の上面61aが連続面、より好ましくは平坦面をなしている。この連続面または平坦面上に、バイアス下地層62を介して、フリー磁性層59にバイアス磁界を与えるハードバイアス層63が設けられている。
【0084】
図2に示される磁気検出素子及び磁気ヘッドも図1に示される磁気検出素子及び磁気ヘッドと同様の効果を奏することができる。
【0085】
すなわち、磁気ヘッドが帯電して磁気検出素子に大きな過渡電流が発生した場合でも、固定磁性層57と反強磁性層53間の交換結合磁界の向きをハイト方向に維持することができ、出力の対称性を向上させることができる。また、磁気検出素子の磁界検出出力も向上する。
【0086】
また、固定磁性層57の延出部の上面と付加絶縁層の上面が連続面、より好ましくは平坦面になっているので、ハードバイアス層63を一定膜厚の平面形状で形成でき、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給でき、フリー磁性層59を確実に単磁区化することができるため、磁気検出素子の出力中のノイズを低減できる。
【0087】
さらに、フリー磁性層59の両側にハードバイアス層63を正確に位置合わせできる。
【0088】
図1及び図2に示される磁気ヘッドでは、反強磁性層53と固定磁性層57の両側領域に付加絶縁層61が存在しているため、磁気検出素子の上下におけるシールド層間の距離によって規定されるギャップ長を小さくしたときにハードバイアス層63と下部シールド層50が短絡する危険性を低減できる。
【0089】
また、ハードバイアス層63を一定膜厚の平面形状で形成できるため、ハードバイアス層63内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、バイアス磁界が下部シールド層50及び上部シールド層66に吸収される率を低減できる。
【0090】
なお、フリー磁性層は、非磁性中間層を介して複数の磁性層が積層された人工フェリ型のフリー磁性層であってもよい。また、固定磁性層は単層または複数層の磁性層のみからなるものであってもよい。
【0091】
なお,図1及び図2には、ハードバイアス層63,63の上に第1の方向に間隔をおいて形成ざれた一対の電極層64,64を形成しており、センス電流は多層膜T1、T2の膜面平行方向(第1の方向に平行な方向)に流れるCIP(current in the plane)の磁気検出素子である。ただし、第1の方向に間隔をおいて形成ざれた一対の電極層64,64を形成する代わりに、多層膜T1の上下に一対の電極層を形成し、センス電流が多層膜T1,T2の膜面垂直方向に流れるCPP(current perpendicular to the plane)型の磁気検出素子であってもよい。
【0092】
図1に示された磁気検出素子の製造方法を説明する。
図3ないし図19は図1に示す磁気検出素子の製造方法を示す一工程図であり、各工程は記録媒体との対向面側から見た部分断面図で示している。
【0093】
図3に示す工程では、下部シールド層50上に下部ギャップ層51を介して、シードレイヤ52、反強磁性層53、固定磁性層57、非磁性材料層58、フリー磁性層59及び保護層60を連続成膜する。成膜にはスパッタや蒸着法が使用される。スパッタ法には、DCマグネトロンスパッタ法、RFスパッタ法、イオンビームスパッタ法、ロングスロースパッタ法、コリメーションスパッタ法などを使用できる。なお本発明で言う「連続成膜」とは、真空状態を破らずに、チャンバ内でターゲットを次々に代えて成膜していくことを意味する。以下同じである。
【0094】
図3に示す工程では反強磁性層53を、PtMn合金、または、X―Mn(ただしXは、Pd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である)合金で、あるいはPt―Mn―X′(ただしX′は、Pd,Ir,Rh,Ru,Au,Ag,Os,Cr,Ni,Ar,Ne,Xe,Krのいずれか1または2種以上の元素である)合金で形成することが好ましい。
【0095】
またPtMn合金及びX−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、PtMn合金及びX−Mnの式で示される合金において、PtあるいはXが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。特に規定しない限り、〜で示す数値範囲の上限と下限は以下、以上を意味する。
【0096】
また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが37〜63at%の範囲であることが好ましい。また、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’+Ptが47〜57at%の範囲であることがより好ましい。さらに、Pt−Mn−X’の式で示される合金において、X’が0.2〜10at%の範囲であることが好ましい。ただし、X’がPd,Ir,Rh,Ru,Os,Ni,Feのいずれか1種または2種以上の元素である場合には、X’は0.2〜40at%の範囲であることが好ましい。
【0097】
また図3工程では反強磁性層53の膜厚を80Å以上で300Å以下で形成することが好ましい。この程度の厚い膜厚で反強磁性層53を形成することにより磁場中アニールで、反強磁性層53と固定磁性層57間に大きな交換結合磁界を発生させることができる。具体的には、48kA/m以上、例えば64kA/mを越える交換結合磁界を発生させることができる。
【0098】
図3に示す固定磁性層57は、例えばCoFe合金などで形成された磁性層54と磁性層56と、両磁性層54,56間に介在するRuなどの非磁性の中間層55との人工フェリ構造である。フリー磁性層59は、NiFe合金やCoFe合金などの磁性材料で形成されるが、特にフリー磁性層59がNiFe合金で形成されるときフリー磁性層59と非磁性材料層58との間にCoFe合金などで形成された拡散防止層が形成されていることが好ましい。
【0099】
図3に示すように下部ギャップ層51上に保護層60までの各層を積層した後、第1の磁場中アニールを施す。第1の方向(図示X方向:第1の方向)と直交する方向(図示Y方向;第2の方向(ハイト方向))に第1の磁界を印加しつつ、第1の熱処理温度で熱処理し、反強磁性層53と固定磁性層57を構成する磁性層54との間に交換結合磁界を発生させて、磁性層54の磁化を図示Y方向に固定する。もう一方の磁性層56の磁化は、磁性層54との間で働くRKKY相互作用による交換結合によって図示Y方向とは逆方向に固定される。なお例えば第1の熱処理温度を270℃とし、磁界の大きさを800(kA/m)とする。
【0100】
次に図4に示す工程では、保護層60上にリフトオフ用のレジスト層R1を形成する。このレジスト層R1は、反強磁性層53及び固定磁性層57の幅方向の形状を画定するもので、レジスト層R1の第1の方向(図示X方向)における幅寸法は、固定磁性層57と反強磁性層53の第1の方向への幅寸法より若干小さいか同程度である。レジスト層R1の幅寸法W3は、0.2μm〜0.6μmである。
【0101】
レジスト層R1を保護層60上に形成した後、レジスト層R1に覆われていない多層膜T1をイオンミリングで削る。これによりレジスト層R1からはみ出した多層膜T1の両側部分は削れて、多層膜T1は記録媒体との対向面側から見ると略台形状に画定される。
【0102】
図4に示すように多層膜T1の両側端面T1aはイオンミリングで削られたエッチング面であり、両側端面T1aは湾曲面か傾斜面で形成される。図4では両側端面T1aが湾曲面で形成され、多層膜T1を構成する各層の第1の方向(図示X方向)における両側端面が湾曲面に揃った連続面となっている。このイオンミリング工程では、多層膜T1の第1の方向の両側に露出する下部ギャップ層51も若干削れる。ここで「連続面」とは、各層の両側端面が、同じカーブ上や同じ直線上に揃って形成された状態を意味する。図4では、各層の両側端面が同じ湾曲面上に揃って形成されたことで、多層膜T1の両側端面T1aが湾曲面となっている。
【0103】
次に、図5に示す工程では、レジスト層R1をそのまま残して、多層膜T1の両側端面T1aよりも第1の方向(図示X方向)に広がる下部ギャップ層51上から両側端面T1a上にかけてアルミナ(Al2O3)、Al−Si−OまたはSiO2などの無機絶縁材料によって、付加絶縁層61をスパッタや蒸着法で成膜する。これによりレジスト層R1上にも付加絶縁材料層61bが付着する。
【0104】
レジスト層R1を除去すると図6に示される状態になる。なお、図5に示す付加絶縁層61の成膜工程において、付加絶縁層61の上面61aと保護層60の上面60aを連続面にする。ここでいう「連続面」も付加絶縁層61の上面61aと保護層60の上面60aが同じカーブ上や同じ直線上に揃って形成された状態を意味する。特に、付加絶縁層61の上面61aと保護層60の上面60aが平坦面を形成しているとより好ましい。
【0105】
次に、第7図に示される工程では、保護層60上にリフトオフ用のレジスト層R2を形成する。このレジスト層R2は、フリー磁性層59及び非磁性材料層58の幅方向の形状を画定するもので、レジスト層R2の第1の方向(図示X方向)における幅寸法は、フリー磁性層59及び非磁性材料層58の第1の方向への幅寸法より若干小さいか同程度である。レジスト層R2の幅寸法W4は、0.06μm〜0.18μmである。本実施の形態では、付加絶縁層61の上面61aと保護層60の上面60aを連続面にしているので、レジスト層R2のパターン形成を正確に行うことができる。
【0106】
レジスト層R2を保護層60上に形成した後、保護層60、フリー磁性層59と非磁性材料層58のレジスト層R2に覆われていない両側端部60a,59a,58a及び付加絶縁層61をイオンミリングで削る。図8に示される工程のイオンミリングによって、固定磁性層57及び反強磁性層53の第1の方向の長さ寸法W1が、フリー磁性層59及び非磁性材料層58の第1の方向の長さ寸法W2より長くなり、固定磁性層57及び反強磁性層53に、フリー磁性層59及び非磁性材料層58の第1の方向の両側端面T1bより外側に延出している延出部57a及び延出部53aが形成される。
【0107】
図8に示す工程のイオンミリングは、固定磁性層57が削られる直前で止めることが好ましい。ただし、固定磁性層57の磁性層56がある一定の深さまで削り取られてしまう場合もある。
【0108】
また、図8に示す工程のイオンミリングによって、付加絶縁層61の上面61aと固定磁性層57の延出部57aの上面57a1を連続面にする。ここでいう「連続面」も付加絶縁層61の上面61aと固定磁性層57の延出部57aの上面57a1が同じカーブ上や同じ直線上に揃って形成された状態を意味する。特に、付加絶縁層61の上面61aと固定磁性層57の延出部57aの上面57a1が平坦面を形成しているとより好ましい。
【0109】
また、フリー磁性層59と非磁性材料層58の両側端面T1bは、湾曲面か傾斜面で形成される。図8では両側端面T1bが傾斜面で形成され、フリー磁性層59と非磁性材料層58の第1の方向(図示X方向)における両側端面が湾曲面に揃った連続面となっている。
【0110】
次に、図9に示す工程では、レジスト層R2をそのまま残して、付加絶縁層61の上面61aと固定磁性層57の延出部57aの上面57a1によって形成された連続面上から両側端面T1b上にかけて、バイアス下地層62をスパッタ法、イオンビームスパッタ法や蒸着法で成膜し、さらにバイアス下地層62上にハードバイアス層63及び電極層64をスパッタ法、イオンビームスパッタ法や蒸着法で連続成膜する。これによりレジスト層R2上にも下地材料層62a、バイアス材料層63a、および電極材料層64aが付着する。
【0111】
バイアス下地層62は、体心立方構造(bcc)で且つ(100)配向性を有する金属膜で形成されることが好ましい。
【0112】
結晶構造が体心立方構造で(100)配向性を有する金属膜としては、Cr(クロム),Ti(チタン),Mo(モリブデン),W(タングステン)またはW50MO50(50,50はat%)を提示することができる。ハードバイアス層63は、CoPt合金やCoPtCr合金などの硬磁性材料で形成される。電極層64はCr、Cu、Ta、Auなどの導電性材料によって形成される。
【0113】
電極層64の成膜後レジスト層R2を除去し、上部ギャップ層65及び上部シールド層66を成膜すると、図1に示される磁気ヘッドを得ることができる。
【0114】
上述した図8に示される工程によって、固定磁性層57及び反強磁性層53の第1の方向の長さ寸法W1が、フリー磁性層59及び非磁性材料層58の第1の方向の長さ寸法W2より長くなる。従って、フリー磁性層59のトラック幅寸法Twを小さくしても固定磁性層57と反強磁性層53の接合面積を大きく維持でき、固定磁性層57の磁化を強く固定することができる。従って、磁気ヘッドが帯電して磁気検出素子に大きな過渡電流が発生した場合でも、固定磁性層57と反強磁性層53間の交換結合磁界の向きをハイト方向に維持することができる。
【0115】
このように、固定磁性層57の磁化方向をハイト方向に強く固定できるため、外部磁界が印加されない状態において、フリー磁性層59と固定磁性層57の磁化方向の相対的な角度を一定に保つことができ、出力の対称性を向上させることができる。また、磁気検出素子の磁界検出出力も向上する。
【0116】
また、図8に示される工程によって、固定磁性層57の延出部57aの上面57a1と付加絶縁層61の上面61aを連続面にし、この連続面上に、ハードバイアス層63を形成する。
【0117】
従って、付加絶縁層61の上層に形成されるハードバイアス層63を一定膜厚の平面形状で形成できるため、ハードバイアス層63内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、フリー磁性層59にバイアス磁界を十分に与えることができ、フリー磁性層59を確実に単磁区化することができるため、磁気検出素子の出力中のノイズを低減できる。
【0118】
また、ハードバイアス層63をフリー磁性層59の両側に正確に位置合わせできる。
【0119】
図2に示された磁気検出素子及び磁気ヘッドを形成するときには、図8に示すイオンミリング工程時に、フリー磁性層59の両側端部59a及び付加絶縁層61を削り、非磁性材料層58の両側端部58aの全部または一部を削らずに残すことにより、非磁性材料層58、固定磁性層57及び反強磁性層53の第1の方向の長さ寸法をフリー磁性層59の第1の方向の長さ寸法より長くする。このとき、非磁性材料層58、固定磁性層57及び反強磁性層53に、フリー磁性層59の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部が形成される。
【0120】
非磁性材料層58の両側端部58aの全部または一部を削らずに残すことにより、固定磁性層57の磁性層56が削られて、磁性層56の磁気特性が変化することを防ぐことができる。
【0121】
上記イオンミリング工程時に、非磁性材料層58の延出部58aの上面58a1と付加絶縁層61の上面61aを連続面、より好ましくは平坦面にし、前記連続面または平坦面上からフリー磁性層59の両側端面上にかけて、バイアス下地層62をスパッタ法、イオンビームスパッタ法や蒸着法で成膜し、さらにバイアス下地層62上にハードバイアス層63及び電極層64をスパッタ法、イオンビームスパッタ法や蒸着法で連続成膜する。
【0122】
以上本発明をその好ましい実施例に関して述べたが、本発明の範囲から逸脱しない範囲で様々な変更を加えることができる。
【0123】
なお、上述した実施例はあくまでも例示であり、本発明の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0124】
【発明の効果】
以上詳細に説明した本発明では、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法が、前記フリー磁性層の第1の方向の長さ寸法より長く形成されているため、フリー磁性層のトラック幅寸法を小さくしても、前記固定磁性層と前記反強磁性層の接合面積を大きく維持でき、前記固定磁性層の磁化を強く固定することができる。従って、磁気ヘッドが帯電して磁気検出素子に大きな過渡電流が発生した場合でも、前記固定磁性層と前記反強磁性層間の交換結合磁界の向きをハイト方向に維持することができる。
【0125】
このように、前記固定磁性層の磁化方向をハイト方向に強く固定できるため、外部磁界が印加されない状態において、前記フリー磁性層と前記固定磁性層の磁化方向の相対的な角度を一定に保つことができ、出力の対称性を向上させることができる。また、磁気検出素子の磁界検出出力も向上する。
【0126】
また、本発明では、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に設けられた前記延出部の両側領域に付加絶縁層が形成され、しかも前記固定磁性層の前記延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が連続面になっている。
【0127】
従って、前記付加絶縁層の上層に形成されるハードバイアス層に凹みや湾曲が生じることを防止できる。すなわち、前記ハードバイアス層を一定膜厚の平面形状で形成できるため、前記ハードバイアス層内の磁化の方向が揃い、第1の方向と平行な方向のバイアス磁界を適切に供給できる。従って、フリー磁性層にバイアス磁界を十分に与えることができ、フリー磁性層を確実に単磁区化することができるため、磁気検出素子の出力中のノイズを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態の磁気検出素子の構造を示す断面図、
【図2】本発明の第2の実施の形態の磁気検出素子の構造を示す断面図、
【図3】図1に示された磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図4】図1に示された磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図5】図1に示された磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図6】図1に示された磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図7】図1に示された磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図8】図1に示された磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図9】図1に示された磁気検出素子の製造方法を示す一工程図、
【図10】従来の磁気検出素子の構造を示す断面図、
【図11】従来の磁気検出素子の構造を示す断面図、
【図12】従来の磁気検出素子の構造を示す断面図、
【図13】従来の磁気検出素子の構造を示す断面図、
【符号の説明】
50 下部シールド層
51 下部ギャップ層
53 反強磁性層
57 固定磁性層
58 非磁性材料層
59 フリー磁性層
61 付加絶縁層
63 ハードバイアス層
64 電極層
65 上部ギャップ層
66 上部シールド層
Claims (10)
- 外部からの磁界に応じて内部の磁化方向が変化するフリー磁性層と、内部の磁化方向が固定されている固定磁性層と、前記フリー磁性層と前記固定磁性層との間に介在する非磁性材料層と、交換結合により前記固定磁性層内の磁化を固定する反強磁性層とを有する磁気検出素子において、
前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法は、前記フリー磁性層、前記非磁性材料層の第1の方向の長さ寸法より長く形成され、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に、前記フリー磁性層、前記非磁性材料層の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部が設けられており、前記延出部の両側領域に付加絶縁層が形成されて、前記固定磁性層の前記延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が連続面をなし、この連続面上に、前記フリー磁性層にバイアス磁界を与えるバイアス層が設けられていることを特徴とする磁気検出素子。 - 前記固定磁性層の前記延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が平坦面をなしている請求項1記載の磁気検出素子。
- 外部からの磁界に応じて内部の磁化方向が変化するフリー磁性層と、内部の磁化方向が固定されている固定磁性層と、前記フリー磁性層と前記固定磁性層との間に介在する非磁性材料層と、交換結合により前記固定磁性層内の磁化を固定する反強磁性層とを有する磁気検出素子において、
前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法は、前記フリー磁性層の第1の方向の長さ寸法より長く形成され、前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に、前記フリー磁性層の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部が設けられており、前記延出部の両側領域に付加絶縁層が形成されて、前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が連続面をなし、この連続面上に、前記フリー磁性層にバイアス磁界を与えるバイアス層が設けられていることを特徴とする磁気検出素子。 - 前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面が平坦面をなしている請求項3記載の磁気検出素子。
- 請求項1ないし4のいずれかに記載の磁気検出素子の上下に絶縁材料からなるギャップ層を介して、磁性材料からなるシールド層が形成されている磁気ヘッド。
- 以下の工程を有することを特徴とする磁気検出素子の製造方法、
(a)下から順に、反強磁性層、固定磁性層、非磁性材料層、フリー磁性層を有する多層膜を積層形成する工程と、
(b)前記多層膜を構成する各層の第1の方向における両側端面を削って連続面とし、前記連続面の第1の方向における両側に付加絶縁層を設ける工程と、
(c)前記フリー磁性層及び前記非磁性材料層の両側端部及び前記付加絶縁層を削って、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法を前記フリー磁性層及び前記非磁性材料層の第1の方向の長さ寸法より長くして、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に、前記フリー磁性層及び前記非磁性材料層の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部を形成する工程と
(d)前記固定磁性層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面を連続面にする工程と、
(e)前記平坦面上に、前記フリー磁性層にバイアス磁界を与えるバイアス層を形成する工程。 - 前記(d)工程において、前記固定磁性層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面を平坦面にする請求項6記載の磁気検出素子の製造方法。
- 前記(c)工程及び前記(d)工程の代わりに、
(f)前記フリー磁性層の両側端部及び前記付加絶縁層を削って、前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記反強磁性層の第1の方向の長さ寸法を前記フリー磁性層の第1の方向の長さ寸法より長くして、前記非磁性材料層、前記固定磁性層及び前記反強磁性層に、前記フリー磁性層の第1の方向の両側端面より外側に延出している延出部を形成する工程と、
(g)前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面を連続面にする工程、
を有する請求項6または7記載の磁気検出素子の製造方法。 - 前記(g)工程において、前記非磁性材料層の延出部の上面と前記付加絶縁層の上面を平坦面にする請求項8記載の磁気検出素子の製造方法。
- 請求項6ないし9のいずれかに記載の工程を有し、さらに前記(a)工程の前に磁性材料からなるシールド層及び絶縁材料からなるギャップ層を形成する工程と、前記(e)または前記(f)工程の後に、絶縁材料からなるギャップ層及び磁性材料からなるシールド層を形成する工程を有することを特徴とする磁気ヘッドの製造方法。
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