JP2004170289A - 信号処理方法および信号処理装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】推定手段22は過渡応答状態のセンサ1からの信号yを受けてその収束値を推定する。減算手段26は、推定手段22によって得られた推定値Meを入力信号yから減算する。誤差検出手段27は、減算手段26の減算結果Qから過渡変動成分を除去し、推定誤差に対応する値dを求める。補正手段28は、誤差検出手段27によって検出された誤差dで推定値Meを加算補正する。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、センサが過渡状態に出力する信号からその収束値を速やかに且つ精度よく予測するための技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種の物理量を検出するためのセンサには、その物理量の変化に対して過渡的な応答を示すものが多い。
【0003】
例えば、ロードセル等のように物品の質量を検出するためのセンサは、物品の荷重を受けて変形し、その変形量に応じた電圧の信号を出力するが、センサに対する物品の荷重が急激に行なわれた場合、センサ自体が振動するため、その出力信号y(t)も例えば図6の(a)に示すように振動する。
【0004】
この出力信号の振動は時間が経過するにしたがって減衰して、最終的には物品の質量Mに対応した一定の値に収束するが、ライン等で物品の質量検査を連続的に行なう場合、この振動が完全に収束するまで待っていたのでは効率的な検査がおこなえない。
【0005】
このため、従来では、図7に示しているように、センサ1からの出力信号y(t)をLPF(低域通過フィルタ)2に入力して、出力信号y(t)に含まれる振動成分(過渡変動成分)を除去し、LPF2から図6の(b)のように出力される信号y(t)′から、物品の質量を検出する方法が多く採用されていた。
【0006】
ところが、機械的なセンサ1の過渡応答の振動周波数は数Hz〜数10Hzと低いため、これに合わせてLPF2の高域遮断周波数も非常に低く設定しなければならず、その時定数が非常に大きくなる。
【0007】
このため、図6の(b)に示したように、物品の荷重タイミングt0から相当な時間が経過しなければLPF2の出力信号y(t)′は質量Mに達せず、このLPF2の時定数によって測定時間が制限されてしまい、より高速な計量に対応できない。
【0008】
この問題を解決する方法として、非特許文献1には、センサ1の動的特性を数理モデル化し、その数理モデルと実際にセンサ1から過渡状態に出力される信号とから、カルマンフィルタ理論に基づいてセンサ1の出力の収束値を推定する方法が提案されている。
【0009】
【非特許文献1】解説「カルマン・フィルタ理論のハカリへの応用」 システムと制御 Vo1.22,No.1 pp.37〜44,1978
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようにセンサの特性を数理モデル化し、その数理モデルに基づいてセンサの出力信号からその収束値を推定し、その推定値を物品の質量とする方法は、少ないサンプル値で高速に物品の質量を予測できる。
【0011】
しかしながら、実際のセンサの動的特性を完全に数理モデル化することは困難であり、そのモデル化の誤差によって推定値に誤差が生じ、測定精度が低下するという問題があった。
【0012】
本発明は、この問題を解決し、過渡応答状態におけるセンサの出力信号からその収束値を速やかに且つ精度よく検出できる信号処理方法および信号処理装置を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本発明の請求項1の信号処理方法は、
センサの動的数理モデルを求める段階(S1)と、
前記動的数理モデルに基づいて前記センサの過渡状態における出力からその収束値を推定する段階(S2)と、
前記推定値を前記センサの過渡状態における出力から減算する段階(S3)と、
前記減算結果に含まれる過渡変動成分を除去して、前記推定値の誤差を求める段階(S4)と、
前記求めた誤差で前記推定値を補正する段階(S5)とを含んでいる。
【0014】
また、本発明の請求項2の信号処理方法は、請求項1の信号処理方法において、
前記収束値の推定を、前記センサの動的数理モデルに対応したカルマンフィルタのアルゴリズムにしたがって行なうことを特徴としている。
【0015】
また、本発明の請求項3の信号処理装置は、
センサから出力される信号を受け、該信号が過渡変動している間にその収束値を前記センサの動的数理モデルに基づいて推定する推定手段(22)と、
前記推定手段によって得られた推定値を、前記センサの出力信号から減算する減算手段(26)と、
前記減算手段の出力から過渡変動成分を除去する誤差検出手段(27)と、
前記推定手段によって得られた推定値を、前記誤差検出手段の出力によって補正する補正手段(28)とを備えている。
【0016】
また、本発明の請求項4の信号処理装置は、請求項3の信号処理装置において、
前記推定手段は、前記センサの動的数理モデルに対応したカルマンフィルタによって構成されていることを特徴としている。
【0017】
また、本発明の請求項5の信号処理装置は、請求項3または請求項4の信号処理装置において、
前記誤差検出手段は、前記センサの動的数理モデルに基づいて、前記減算手段の出力信号の収束値を推定して出力するように構成されていることを特徴としている。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
始めに、本発明の信号処理方法を、図1のフローチャートに基づいて説明する。
【0019】
図1に示しているように、予め処理対象の信号を出力するセンサの動的数理モデルを求めておく(S1)。
【0020】
そして、過渡状態におけるセンサから出力される信号に対して、センサの動的数理モデルに基づいて演算処理を行い、その収束値を推定する(S2)。
【0021】
次に、この推定処理で得られた推定値Meをセンサの出力信号から減算し(S3)、その減算結果から過渡変動成分を除去して推定値Meの誤差dを求め(S4)、この求めた誤差dで推定値Meを加算補正する(S5)。
【0022】
このように、本発明の信号処理方法では、センサの動的数理モデルに基づいて得られた推定値Meをセンサの出力信号から減じて、推定の誤差dを求め、この誤差dで推定値を補正しているため、動的数理モデルが実際のセンサの特性と一致しない場合であっても、センサの出力信号の収束値を速やかに且つ高精度に求めることができる。
【0023】
次に、本発明の信号処理装置の実施形態を説明する。
図2は、本発明を適用した信号処理装置20の構成を示している。
【0024】
この信号処理装置20は、物理量Mを受けたときの過度状態におけるセンサ1の出力信号y(t)を受けて、その収束値を予測検出するためのものであり、A/D変換器21は、センサ1から出力されるアナログの信号y(t)を、所定のサンプリング周期でサンプリングしてディジタル値y(k)に変換して、推定手段22に出力する。なお、センサ1自体にA/D変換機能が設けられている場合には、このA/D変換器21を省略することができる。
【0025】
推定手段22は、予め求められているセンサ1の動的数理モデルに基づいて、入力値y(k)からその収束値(定常値)を推定し、その推定値Meを出力する。
【0026】
この推定手段22は、状態推定器23と保持器24とによって構成されている。
【0027】
状態推定器23は、A/D変換器21から出力されるディジタル値y(k)を受ける毎に、予め求められているセンサ1の動的数理モデル(状態空間表現)に基づいて、その収束値の推定演算を順次行い、算出された推定値Msを保持器24に出力する。ここで、状態推定器23は、例えばセンサ1の状態空間表現に対応した離散時間系のカルマンフィルタのアルゴリズムにしたがって、推定値Msを算出する。なお、動的数理モデルおよび推定手順については後述する。
【0028】
保持器24は、センサ1に負荷が与えられた所定のタイミングから一定時間Taが経過したとき(即ち、所定数のディジタル値y(k)が入力されたとき)に状態推定器23が出力している推定値を保持し、これを推定手段22における最終の推定値Meとして出力する。
【0029】
減算手段26は、A/D変換器21から出力されるディジタル値y(k)から、推定手段22によって得られた推定値Meを減算し、その減算結果Qを誤差検出手段27に出力する。
【0030】
誤差検出手段27は、例えば、ディジタル型のLPFによって構成されており、減算手段26の出力信号Qからセンサ1の過渡的な振動成分を除去する。なお、この誤差検出手段27は、推定手段22で推定値Meが保持出力されたタイミングから減算手段26の出力信号Qに対するフィルタリング処理を行なうように構成されている。
【0031】
補正手段28は、推定手段22によって得られた推定値Meを、誤差検出手段27の出力dによって加算補正し、その補正された推定値Me′(=Me+d)を出力する。
【0032】
次に、センサ1が物品の質量を検出するためのセンサの場合における信号処理装置20の動作例を説明する。
【0033】
ある時刻t0にセンサ1に物品の荷重が印加されると、センサ1の出力信号y(t)は、図3の(a)に示すように、急峻に増加した後、物品の荷重Mに対応したレベルを中心にして、センサ1の固有振動数等で決まる周期で減衰振動する。
【0034】
このセンサ1の出力信号y(t)は、A/D変換器21によってディジタル値y(k)に順次変換されて、推定手段22の状態推定器23に入力される。
【0035】
状態推定器23は、入力されたディジタル値y(k)から推定される値Msを図3の(b)のように順次算出し、時刻t0からTa時間が経過したタイミングに算出された値Meが図3の(c)のように保持器24によって保持され、最終推定値として減算手段26および補正手段28に出力される。
【0036】
このため、減算手段26からは、図3の(d)のように、信号y(k)と最終推定値Meの差分に対応する信号Qが出力され、その信号Qが誤差検出手段27に入力される。
【0037】
この信号Qは、信号y(t)に含まれる振動成分と、推定手段22における動的数理モデル化の誤差分とを含んでいるが、誤差検出手段27によって振動成分が除去されて、図3の(e)のように誤差dだけが出力される。
【0038】
なお、誤差検出手段27としてLPFを用いた場合、前記した応答遅れが発生するが、誤差dの絶対値は非常に小さいため、短時間Tbに収束する。
【0039】
この誤差dは、推定手段22によって得られた最終推定値Meとともに補正手段28に入力されてその推定値Meが加算補正され、その加算補正された推定値Me′が図3の(f)のように出力される。
【0040】
この補正された推定値Me′は、推定手段22によって得られた推定値Meと、その推定の誤差dとの和であり、質量が負荷されてからTa+Tbが経過したときには両者とも一定値となり、センサ1に負荷された物品の質量Mに対して極めて高い精度で一致している。
【0041】
したがって、動的数理モデル化の誤差による推定手段22の推定誤差があっても、センサ1の出力信号の収束値を、過渡状態中に高精度に且つ速やかに検出することができる。
【0042】
次に、センサ1の動的数理モデルと状態推定器23の処理について詳しく説明する。
【0043】
センサの動的数理モデルは、入力とそれに対応したセンサの変位量とを関係付ける微分方程式で表現することができ、1階の微分方程式に分解されて行列の形になる。
【0044】
即ち、変位量をx、入力をuとすると、
dx/dt=Ax+Bu ……(1)
と表すことができる。ここで、係数A、Bは、入力、出力の次元が等しくなるn×mの行列である。
【0045】
また、センサが実際に出力する値は、この変位量xを観測過程を経て取り出すものであり、測定できる値をyとし、C、Dを係数とすると、
y=Cx+Du ……(2)
と表すことができる。
【0046】
さらに、ガウス性白色雑音v、wが入力と観測側に混入しているとすれば、上式(1)、(2)は、それぞれ次のようになる。
【0047】
dx/dt=Ax+Bu+v ……(3)
y=Cx+Du+w ……(4)
【0048】
この式(3)、(4)が状態空間表現と呼ばれており、この状態空間表現で表されたセンサの動的状態はベクトルxとして定式化される。実際に測定できる物理量はyであるために、yの値から状態ベクトルxを推定する必要がある。
【0049】
これを実現する手法として、カルマンフィルタのアルゴリズムが知られており、上記の係数A〜Dの各行列が定数の場合には、定常カルマンのアルゴリズムを利用することができる。
【0050】
実際には、予めセンサの動的特性から、状態変数ベクトルxと各係数A〜Dの行列の値を決定して、前記状態空間表現式(状態方程式)を完成しておく。
【0051】
そして、前記した定常カルマンのアルゴリズムを用いて、出力値yから2乗分散値を最小にするように状態値xの平均値を推定する。
【0052】
この際、カルマンフィルタは逐次型のアルゴリズムであるので、状態値の初期値や状態の分散の初期値を予め設定しておく。また、出力のノイズ成分は、ガウス性白色雑音に近くなるように前処理を施す場合もある。
【0053】
例えば、センサが質量を検出するためのロードセルの場合、2自由度系運動方程式で記述される。
【0054】
即ち、xを変位量として時間の関数x(t)とし、物品の荷重がない状態でセンサ1に負荷される受け皿等の総質量をm、センサ1に負荷される物品の質量(未知数)をM、センサ1のダンパ係数をc、ばね定数をk、重量加速度をg、機械的外乱をn(t)とし、m>Mの条件で、t=0に質量Mを与えた場合、センサの動特性は次の式(5)のように表すことができ、観測量y(t)は式(6)のように表される。
【0055】
(m+M)x″+cx′+kx=Mg+n(t) t>0……(5)
y(t)=hx(t)+v(t) t≧0 ……(6)
x(0)=0、x(0)′=0
【0056】
ここで、x″はxの2回微分(加速度)、x′はxの1回微分(速度)を表す。また、v(t)はガウス性白色雑音、hは定数である。
【0057】
さらに、上記変位量x(t)が、LPF機能をもつセンサ(変位:s1)と電圧変換部とを通過した後の電気的変位s1は、以下の線形ダイナミクスで表現できる。
【0058】
Ts1′+s1=K1x+u(t) t≧0 ……(7)
s1(0)=0 ……(8)
ここで、Tは変換系の時定数、K1は比例定数、u(t)は電気的等価雑音である。
【0059】
また、観測信号は、上記s1(t)と観測系の雑音をe(t)とすると、
y1(t)=s1+e(t) t≧0 ……(9)
となる。
【0060】
ここで、状態変数の定義s1、s2=x、s3=x′、s4=Mと上記(5)〜(9)の式から状態空間への変換を行なう。なお、s4は求める(推定すべき)質量である。
【0061】
先ず、式(7)のxはs2であるから、
Ts1′+s1=K1s2+u(t)
s1′=−(1/T)s1+(K1/T)s2+u(t)/T
が得られる。
【0062】
また、式(5)から、
(m+M)s3′+cs3+ks2=Mg+n(t)
s3′=−[k/(m+M)]s2−[c/(m+M)]s3+[M/(m+M)]g+n(t)/(m+M)
が得られる。
【0063】
また、状態変数の定義から、
s3=s2′
となる。
【0064】
これらの式変形から、各状態変数の微分値を状態変数s1〜s4の項を用いて表すと以下のようになる。
【0065】
s1′=−(1/T)s1+(K1/T)s2+0s3+0s4+u(t)/T
【0066】
s2′=0s1+0s2+s3+0s4
【0067】
s3′=0s1−[k/(m+M)]s2−[c/(m+M)]s3+0s4+[M/(m+M)]g+n(t)/(m+M)
【0068】
s4′=0s1+0s2+0s3+0s4
【0069】
また、s4=Mをs3′の式に代入すれば、次のようになる。
s3′=0s1−[k/(m+s4)]s2−[c/(m+s4)]s3+0s4+[s4/(m+s4)]g+n(t)/(m+s4)
【0070】
以上の各式から、次の状態空間表現が得られる。
s(t)′=f(s)・s(t)+v(s,t) t>0
但し、ベクトルs=[s1,s2,s3,s4]T
ベクトルs(0)=[0,0,0,M]T
記号[ ]Tは転置行列を表す
【0071】
y(t)=Hs(t)+e(t) t≧0
【0072】
【0073】
v(s,t)=[u(t)/T,0,n(t)/(m+s4),0]T
H=[1,0,0,0]
【0074】
ここで、M(=s4)がmに対して十分小さいとすれば、M/mは1より十分小さいので、
k/(m+s4)=k/[m(1+s4/m)]=k/m
と近似できる。
【0075】
同様に、
c/(m+s4)=c/m
gs4/(m+s4)=gs4/m
u(t)/(m+s4)=u(t)/m
と近似できる。
【0076】
したがって、前記各状態方程式は、以下のように線形近似される。
【0077】
s1′=−(1/T)s1+(K1/T)s2+0s3+0s4+u(t)/T
【0078】
s2′=0s1+0s2+s3+0s4
【0079】
s3′=0s1−ks2/m−cs3/m+0s4+Mg/m+n(t)/m
【0080】
s4′=0s1+0s2+0s3+0s4
【0081】
上記線形近似により、センサ1の状態空間表現は、
s′=[A][s1,s2,s3,s4]T+Bu(t)
で表現され、定常カルマンフィルタを適用することができる。
【0082】
このとき、雑音u、vが互いに独立で、共に平均値E{u,v}=0、分散は正規性白色雑音で、E{uuT}=q0、E{vvT}=p0となり、系の初期条件s(0)と統計的に独立であると仮定することで、状態ベクトルs=[s1,s2,s3,s4]Tに対する最小2乗分散最適推定値が得られる。
【0083】
また、上記のように得られた線形系についての連続時間表現を、次の離散時間表現に変換することができる。
【0084】
sk+1=Φsk+Γuk k=0,1,2,…
s0=[0,0,0,M]T
yk=Hsk+vk k=0,1,2,…
【0085】
但し、uk,vkは時系列ノイズで、
平均値E{uk,vk}=0
となる。
【0086】
また、分散は正規性白色雑音で、
E{ukuj T}=qdδkj、E{vkvk T}=rdδkj
となる。ただし、記号δkjはクロネッカー記号である。
【0087】
この離散時間表現に対して推定を行なうために、前記した状態推定器23として離散時間系のカルマンフィルタが用いられている。
【0088】
離散時間系のカルマンフィルタは、図4に示すように構成され、次のフィルタ方程式を満たす。ただし、この式で前記した状態ベクトルsをxに変換している。
【0089】
x^t+1/t=Φtx^t/t ……(10)
x^t/t=x^t/t−1+Kt[yt−Htx^t/t−1]……(11)
t=0,1,2,……
【0090】
ここで、x^は推定値、ytは入力値(観測値)、ΦtおよびHtは係数行列、Ktはカルマンゲインである。
【0091】
このカルマンフィルタのアルゴリズムは、x^等の初期条件(初期設定する)が与えられると、カルマンゲインの初期値K0が求められ、この値K0とt=0において観測された入力値y0と式(11)から、最初の推定値x^0/0を求める。
【0092】
次に、この推定値x^0/0と式10から推定値x^1/0を求め、また、分散等の式(詳述せず)から次のK1を求める。
【0093】
そして、この値K1とt=1において観測された入力値y1と式(11)から、次の推定値x^1/1を求める。
【0094】
以下同様に、新しい観測値y(この実施形態ではA/D変換器21の出力値)が入力される毎に古い推定値を修正して新しい推定値を計算することを繰り返し、所定時間Taが経過したときの推定値を推定手段22の最終の推定値Meとして保持器24が保持出力する。
【0095】
なお、この推定処理の開始タイミングおよび保持タイミングは任意であり、外部から推定手段22に対して推定開始や推定値の保持を指示する信号を与えて、推定処理の開始と推定値の保持を行なわせるようにしてもよいし、あるいは、推定手段22が観測値yの変化の開始タイミング(例えば観測値yが連続して所定値以上変化したタイミング)を検知して推定処理を開始し、新しい推測値と古い推定値との差が所定範囲内に入ったか否かを検知して、所定範囲内に入ったときの推定値を保持するようにしてもよい。
【0096】
ただし、前記したように、センサ1の状態空間表現は理論式であり、前記線形近似の誤差や各パラメータT、k、c、g、m等の誤差によって、実際のセンサの動的な特性を正確に表しているとは限らない。
【0097】
したがって、前記したように、推定手段22で推定された値Meには、実際のセンサ1の動的特性と数理モデルとの差による誤差が生じることになるが、この実施形態の信号処理装置20では、推定値Meを入力信号から減算し、その減算結果Qから過渡変動成分を除去して推定誤差に対応する値dを求め、その誤差dで推定値Meを加算補正している。
【0098】
このため、線形近似の誤差や各パラメータT、k、c、g、m等の誤差によって、センサ1の状態空間表現がセンサ1の実際の動的な特性と一致していない場合であっても、センサ1の出力の収束値を正確に且つ速やかに検出することができる。
【0099】
なお、上記実施形態の信号処理装置20では、誤差検出手段27としてLPFを用いていたが、この誤差検出手段27として、推定手段22と同様に、センサ1の動的数理モデルに対応したカルマンフィルタを用いて減算手段26の出力信号Qの収束値(誤差)dを推定処理してもよい。
【0100】
また、このように誤差検出に推定処理を用いる場合には、図5に示す信号処理装置20′のように、誤差検出手段を推定手段22の状態推定器23で兼用することもできる。
【0101】
この場合、状態推定器23は、推定値Meが得られるまでA/D変換器21の出力y(k)に対する推定処理を行い、推定値Meが得られて保持器24で保持された後は、減算手段26の出力信号Qに対する推定処理を行なう。
【0102】
また、上記した信号処理装置20では、センサ1からの信号をA/D変換器21によってディジタル値に変換し、そのディジタル値に対して推定処理、減算処理、誤差検出処理および補正処理を行なっているが、これは本発明を限定するものではなく、A/D変換器21を省略して上記全ての処理をアナログ的に行なうように構成してもよい。
【0103】
また、A/D変換器21からの信号を受けた推定手段22が推定値MeをD/A変換処理して出力するように構成するとともに、減算手段26、誤差検出手段27、補正手段28をアナログ回路で構成し、センサ1からのアナログの出力信号を減算手段26に直接入力してもよい。
【0104】
また、前記した信号処理装置20、20′では、センサの動的数理モデルとして状態空間表現を用い、その推定処理をカルマンフィルタによって行なっていたが、他の動的数理モデルと推定アルゴリズムを用いて、センサの出力信号の収束値や減算手段26の出力信号の収束値を推定してもよい。
【0105】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の信号処理方法および信号処理装置は、センサの動的数理モデルに基づいてセンサの過渡状態における出力からその収束値を推定し、その推定値をセンサの過渡状態における出力から減算し、その減算結果に含まれる過渡変動成分を除去して推定値の誤差を求め、求めた誤差で推定値を補正している。
【0106】
このため、センサの動的数理モデルと実際の動的特性とが一致していない場合であっても、過渡状態にあるセンサの出力信号の収束値を、正確に且つ速やかに予測検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の信号処理方法の手順を示すフローチャート
【図2】本発明の実施形態の構成を示す図
【図3】実施形態の動作を説明するための信号波形図
【図4】実施形態の要部の構成例を示す図
【図5】実施形態の変形例を示す図
【図6】センサおよびLPFの出力信号を示す図
【図7】従来装置の構成を示す図
【符号の説明】
1……センサ、20、20′……信号処理装置、21……A/D変換器、22……推定手段、23……状態推定器、24……保持器、26……減算手段、27……誤差検出手段、28……補正手段
Claims (5)
- センサの動的数理モデルを求める段階(S1)と、
前記動的数理モデルに基づいて前記センサの過渡状態における出力からその収束値を推定する段階(S2)と、
前記推定値を前記センサの過渡状態における出力から減算する段階(S3)と、
前記減算結果に含まれる過渡変動成分を除去して、前記推定値の誤差を求める段階(S4)と、
前記求めた誤差で前記推定値を補正する段階(S5)とを含む信号処理方法。 - 前記収束値の推定を、前記センサの動的数理モデルに対応したカルマンフィルタのアルゴリズムにしたがって行なうことを特徴とする請求項1の信号処理方法。
- センサから出力される信号を受け、該信号が過渡変動している間にその収束値を前記センサの動的数理モデルに基づいて推定する推定手段(22)と、
前記推定手段によって得られた推定値を、前記センサの出力信号から減算する減算手段(26)と、
前記減算手段の出力から過渡変動成分を除去する誤差検出手段(27)と、
前記推定手段によって得られた推定値を、前記誤差検出手段の出力によって補正する補正手段(28)とを備えた信号処理装置。 - 前記推定手段は、前記センサの動的数理モデルに対応したカルマンフィルタによって構成されていることを特徴とする請求項3記載の信号処理装置。
- 前記誤差検出手段は、前記センサの動的数理モデルに基づいて、前記減算手段の出力信号の収束値を推定して出力するように構成されていることを特徴とする請求項3または請求項4記載の信号処理装置。
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