JP2004170281A - 走査型局所電流計測装置および該計測装置を備えた薄膜デバイス製造装置 - Google Patents

走査型局所電流計測装置および該計測装置を備えた薄膜デバイス製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】探針・試料間の原子間力やトンネル電流を正確に検出し、同一場所の表面形態と局所電流分布を再現性よく計測できる走査型局所電流計測装置を提供する。
【解決手段】導電性探針を有する可撓性のカンチレバーと、カンチレバーおよび探針を特定の周波数で加振する手段と、カンチレバーの変位(振動振幅)を一定に制御する手段と、探針と試料の間にバイアス電圧を印加する手段と、カンチレバーの加振周波数と同期した特定の周波数で、該探針の先端が試料表面に接触した瞬間の微少電流を検出する手段と、探針を試料表面に沿って走査する手段を設けることにより試料の表面形態と同一場所の局所電流分布を再現性良く計測するのに好適な走査型局所電流計測装置を得る。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料表面形態と同一場所の局所電流分布を高空間分解能で同時に計測するのに好適な走査型の局所微少電流の計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
微少な探針により物質の表面形態や局所的な物理特性を測定する手段として、走査トンネル顕微鏡(Scanning Tunneling Microscope, STM)や、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope, AFM)、磁気力顕微鏡(Magnetic Force Microscope, MFM)等の手段がある。これらの手段の構造を示す模式図を図3〜5に示す。
【0003】
走査トンネル顕微鏡は、導電性のSTM探針1と導電性試料2との間に、バイアス電圧を印加しておき、探針1と試料2が接近したときに流れるトンネル電流を検出する。トンネル電流を一定にして探針1で試料2の表面を走査したときの探針1の高さ方向の変化や、あるいは探針1の高さを一定にして試料2の表面を走査したときのトンネル電流の変化を得ることで、試料の表面形態や電気的特性を観測する装置である。トンネル電流を検出するため、探針と試料とは接触しない。
【0004】
原子間力顕微鏡は、導体や絶縁体試料に探針11が接近した時に発生する原子間力を利用して試料の表面形態を計測する装置である。原子間力を検出するために、可撓性のカンチレバー12の一端に探針11を設けたプローブユニットが用いられる。
【0005】
磁気力顕微鏡は、上記の原子間力顕微鏡における探針として磁性体を用い、この磁性探針と磁性試料の表面に漏洩した磁界の間に発生する磁気力を利用して試料の磁化状態を測定する。
【0006】
原子間力顕微鏡と磁気力顕微鏡の基本的な構造はほぼ同じである。原子間力顕微鏡には、大別して2つの動作モードがある。
【0007】
第1の動作モードはコンタクトモードと呼ばれている。コンタクトモードにおいては、カンチレバー先端の探針が、試料表面の原子間力の作用する領域まで接近して走査される。一般に、短針と試料の間に働く斥力により生じるカンチレバーの撓みを検出しながら短針を走査して、これを表面形態としている。
【0008】
第2の動作モードはタッピングモードと呼ばれている。磁気力顕微鏡にもこの動作モードが使われる。タッピングモードにおいては、加振素子21を用いてカンチレバー12をその共振周波数近傍で振動させる。探針−試料間の距離は、振動の際、探針が試料に最も接近した状態で、探針の先端が試料に接触する程度に保たれる。探針に試料からの原子間力または磁気力が作用すると、原子間力または磁気力によりカンチレバーの共振周波数、位相の変化もしくは振幅が変化する。これらの共振周波数や位相、振幅の変化を検出することにより、試料の表面形態や磁化状態を計測する。
【0009】
探針と試料間の距離を一定に制御するためは、カンチレバーの共振周波数や位相の変化もしくは振幅から得られる原子間力または磁気力の勾配信号が用いられる。上記コンタクトモードとタッピングモードのAFMまたはMFMの構成図を、それぞれ図4、図5に示す。
【0010】
原子間力顕微鏡と磁気力顕微鏡は、共に試料から探針に作用する力を検出する顕微鏡であるため、通常、探針と試料の間にバイアス電圧が印加されることはない。バイアス電圧により探針に作用する力が変動するからである。
【0011】
例外的に、ジャーナル・オブ・アプライド・フィジィックス、90巻、(2001年)、5202頁から5207頁には、試料にバイアス電流を印加し、探針―試料間に流れる微弱な電流を計測する方式の原子間力顕微鏡が開示されている。該文献に記載された原子間力顕微鏡は、構造的には、探針―試料間の電流を検出する機能が付加されたコンタクトモードの原子間力顕微鏡である。本方式によれば、試料の表面形態と同一場所の電流分布を計測することが可能である。この方式のAFMの模式図を図6に示す。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
通常の原子間力顕微鏡や磁気力顕微鏡は、探針と試料との間にバイアス電圧を印加しないので、試料表面の電気的な特性は測定できない。
【0013】
図4に示したバイアス電圧印加型の原子間力顕微鏡では、試料の表面形態と同一場所の電流分布を計測することが可能である。しかし、コンタクトモードの測定方式を使用しており、探針先端の摩耗や試料表面の変質が起き易く計測データの再現性に劣る問題がある。コンタクトモードの測定方式では、探針を試料表面に常に接触させながら走査することにより表面形態を計測しているためである。表面状態の変質という問題は、特に柔らかい試料や極薄膜試料の場合により深刻である。
【0014】
一方、図5に示すタッピングモードの測定方式では、探針先端の摩耗や試料表面の改質という問題はコンタクトモードの測定方式ほど深刻ではない。しかしながら、タッピングモードによる測定は、コンタクトモードでの測定に比べて検出電流が微少かつ不安定である。なぜなら、タッピングモードは、探針と試料とが間欠的に接触する測定方式であるからである。また、検出電流が微少かつ不安定なため、プローブの走査速度が同じ場合、コンタクトモードと比較して、検出される信号S/Nが非常に悪く、検出信号の映像化が困難であるという問題がある。
【0015】
十分な信号S/Nを確保するためにプローブの走査速度を遅くすると、測定に多大な時間を要することになり、測定装置の機構や回路の経時変化の影響を受け易くなる。この影響を受けると、データや位置のずれが生じて測定が不安定になったり、再現性に劣化が生じて、現実的には検出信号の映像化は困難となる。
【0016】
更に、探針と試料が全く接触しない測定方式を用いる走査トンネル顕微鏡では、検出されたトンネル電流に試料表面の形態情報と電気的特性に関する情報とが混在しており、両者の区別が困難である。つまり、試料表面の同一場所の表面形態と電気特性の測定を行うことはできない。
【0017】
本発明は、このような問題認識の下、試料の表面形態と、計測された表面形態と同一場所の局所電流分布とを再現性よく計測できる走査型局所電流計測装置を提供することを目的とする。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明が適用される走査型局所微少電流計測装置では、探針と試料の間にバイアス電圧を印加し、探針と試料の間に流れる微少電流を検出する。その際、探針の摩耗や試料表面の変質という課題を解決するために、測定はタッピングモードで行う。
【0019】
また、タッピングモードにおける信号S/Nの悪さをカバーするため、検出信号電流を、探針の加振周波数と同じ周波数でフィルタリングする。
【0020】
より具体的には、本発明が適用される計測装置は、探針を有するカンチレバーと、該カンチレバーを所定の周波数で加振する手段と、前記カンチレバーの変位(振動振幅)を一定に制御する手段と、探針と試料の間にバイアス電圧を印加する手段と、該探針と試料間に流れる微少電流を検出する手段とを備える。探針への加振手段とカンチレバーの変位を一定に保つ手段とは、タッピングモードでの測定を行うために必要となる。検出信号のフィルタリングは、検出された微少信号からカンチレバーへの加振周波数と同期した周波数の電流信号を選択し増幅する手段を用いて行う。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を挙げ図面を参照しながら詳細に説明する。図において、同一の符号を付した部分は、同じ性能特性を有する部分を示す。
【0022】
〔実施例1〕
図1は、本発明による走査型局所電流計測装置の基本的な装置構成の一例である。12が可撓性のカンチレバー、11が導電性探針を示す。本実施例では、面方位(100)のSi単結晶基板からリソグラフィ技術により作成したSi製のカンチレバー12と探針11の表面に膜厚30 nmの白金(Pt)を被覆した導電性プローブユニットを用いている。本実施例では、絶縁性材料の上に導電性被膜を被覆したプローブユニットを用いているが、導電性材料のみで構成されたプローブユニットを使用しても良い。導電性被覆としては、Pt、Ir, Au, Ru, Agあるいはこれらの合金やCoを主成分とする磁性膜などを使用することができる。
【0023】
カンチレバーは加振素子21の上に搭載され、発振器22により加振素子21を励起することにより探針とカンチレバーを一定の周波数で振動させる。カンチレバー12は加振素子21の上に搭載される。加振素子21は、圧電素子や水晶発信素子などを使用する。例えば圧電素子からなる加振素子21に発振器22から交流電圧を印加することにより、一定の周波数でカンチレバー12を加振する。
【0024】
一定周波数で振動させた探針が試料16の表面に接近すると、両者の間に作用する原子間力により、カンチレバーの振動振幅や位相変化が生ずる。カンチレバーの振動振幅や位相変化は、レーザ光などを利用した位置検出手段により計測する。カンチレバーの振動振幅や位相変化が一定になるように、すなわち探針に作用する力が一定になるように、試料あるいは探針のZ軸(試料面に垂直方向の軸)の位置を制御する。これにより試料の表面形態を計測する。探針とカンチレバーは一定周波数で振動させるため、探針の先端と試料表面は間欠的に接触する。
【0025】
本実施例では、加振はカンチレバーの共振周波数付近(50〜100kHz)の特定の周波数で行う。カンチレバー12の背後にレーザ源13と変位検出センサー14を配置した。カンチレバー12の撓みによる変位をこの背面に照射したレーザ光の光路変位を変位検出センサー14で検出した。カンチレバーの変位検出方式としては、本実施例で使用した光学的な変位検出の他に、レーザ光を用いた光てこ方式や光干渉方式、静電容量検出方式などを使用しても良い。変位検出センサー14の信号は変位検出回路15で増幅される。
【0026】
探針―試料間の距離を制御する位置信号は交流的信号である。このためロックインアンプ23を使用する。発振器22からの参照信号と変位検出回路15からの変位信号をロックインアンプ23により比較する。これにより得られた位置信号をサーボ制御器6に入力し、探針・試料間距離の制御信号とした。
【0027】
変位検出センサー14で検出された交流的な変位信号はロックインアンプ23に入力される。入力された信号はと発振器22からの参照信号とを比較することにより、特定周波数の変位量が求められる。求められた変位量は、サーボ制御器6の制御信号として用いる。さらに制御信号とXY走査器7の信号により、表面形態像が表示装置8−1に表示される。
【0028】
試料16は試料台を介してXYZスキャナー17の上に搭載される。一定の周波数で加振されたカンチレバーと探針11が試料表面に接近すると探針―試料間に原子間力が作用して、加振振幅や位相変化が起きる。この加振振幅や位相変化は前記の変位検出センサー14、変位検出回路15で検出する。例えば加振振幅が一定となるような制御信号をXYZスキャナー17のZ信号として入力することにより、探針・試料間の原子間力を制御できる。本実施例では試料をXYZスキャナーに搭載した例で説明をするが、探針側をXYZスキャナーに搭載する構成にしても本発明の基本動作は実現できる。
【0029】
試料16には、試料バイアスを印加した。一定周波数で振動させた探針11の先端は間欠的に試料表面に接触し、間欠的に探針―試料間に微少電流が流れる。この間欠的な微少電流を電流検出器5で計測する。電流検出器5で計測した探針―試料間の微少電流は、同様にロックインアンプ23で参照信号と比較することにより、探針の振動周波数と同期させた信号を得る。試料表面上のXY走査位置ごとに上記の微少電流を検出し局所電流像を得た。
【0030】
試料16に電源4による正または負のバイアス電圧を印加する。これにより一定の周波数で加振した探針11の先端が試料表面に間欠的に接触した瞬間に探針―試料間に微少電流が流れる。この微少電流はカンチレバー12の一端に設けられた電流検出器5で検出される。
【0031】
探針―試料間の微少電流を高S/Nで検出するために電流検出器は、3段階の構成とした。第1段階では、第1の電流検出器がカンチレバーに接続され、探針―試料間に流れた微小な電流を検出し、更に電流 / 電圧変換をする。ここで検出される電流には低周波数から高周波数までの広い周波数領域の電流信号が混在しており、ノイズも多く含まれる。即ちこの電流信号にはカンチレバーの加振周波数領域以外の信号が混在している。
【0032】
第2の電流検出器では、カンチレバーの加振周波数領域24以外の信号を除去する。即ち、検出すべき周波数帯域の電流(電圧)信号のみを選択する帯域通過フィルタの役割を果たす。
【0033】
第3の電流検出器では、フィルタリングされた周波数帯域(カンチレバーの加振周波数領域)の電流(電圧)信号のみを選択的に増幅する。第3の電流検出器から得られた微小電流(電圧)は、ロックインアンプ23で参照信号と比較され、探針の振動周波数と同期された特定の周波数のみの電流(電圧)信号が高S/Nで検出される。
【0034】
電流検出器の具体的な構成を図2に示す。電流検出器5はカンチレバー12に接続され探針―試料間に流れた全電流を検出する第1電流検出器5−1と、検出すべき周波数帯域(カンチレバーの加振周波数領域24)の電流信号のみを選択するための帯域フィルターが組み込まれた第2電流検出器5−2と、検出すべき周波数帯域(カンチレバーの加振周波数領域)の電流信号のみを選択的に増幅ための第3電流検出器5−3で構成した。カンチレバー12に接続された第1電流検出器5−1は電流―電圧変換機能を有する。
【0035】
カンチレバー12に接続された第1電流検出器5−1に流入する電流信号には、探針―試料間に流れた低周波数から高周波数までの広い周波数領域の電流信号が混在している。即ちこの電流信号にはカンチレバーの加振周波数領域24以外のノイズ信号が混在しやすい。帯域フィルターが組み込まれた第2電流検出器5−2では、カンチレバーの加振周波数領域24以外の信号を除去する。即ち検出すべき周波数帯域の電流(電圧)信号のみを選択する。第3電流検出器5−3では、前記の周波数帯域の電流(電圧)信号のみを増幅することにより電流(電圧)信号のS/Nを向上する。さらにこの高S/Nの微小電流(電圧)はロックインアンプ23で参照信号と比較することにより、探針の振動周波数と同期させた特定の周波数のみの電流(電圧)信号を高S/Nで検出できる。これにより試料表面形態と同時に同一場所の局所電流像を検出する。
【0036】
本発明の電流検出器5では、100nA(ナノアンペア)から10fA(フェムトアンペア)の範囲の微少電流を高S/Nで検出できる。
【0037】
電流検出器5で検出された信号はロックインアンプ23に入力され、発振器22からの参照信号と同期させて局所電流の信号が得られる。さらに局所電流の信号とXY走査器7の信号により、表面形態像が表示装置8−2に表示される。
【0038】
〔実施例2〕
本発明の内容を図7により詳細に説明する。図7は、前記第図1に示した本発明の走査型局所電流計測装置において、試料表面上を走査する探針11の挙動を示したものである。測定試料16の表面には凹凸があり、また局所的に電流特性の異なる領域が存在する。探針11とカンチレバー12は一定の周波数(例えばカンチレバーの共振周波数近傍)で加振される。探針11が試料表面を走査するとき、探針11の先端部の振動振幅が一定になるようにXYZスキャナー17のZ信号を制御する。
【0039】
探針11は一定周波数で加振されているため、探針先端は間欠的に試料表面に接触する。測定試料に電源4によるバイアス電圧を印加することにより、探針先端が試料表面に接触した瞬間に探針―試料間に局所電流が流れ、これを実施例1で説明した電流検出器5で検出する。この局所電流は、図1に示したロックインアンプ23により参照信号と比較され特定の周波数成分(加振周波数)のみを選択して検出でき、試料表面の走査位置に対応した局所電流分布と表面形態像を同時に計測することが可能である。
【0040】
図7に示したように、本発明では、探針先端部は間欠的に試料表面に接触するため、探針先端部に被覆した導電性被覆の摩耗が少なく、長時間安定にかつ再現性良く局所電流像と表面形態像を得ることが可能である。本発明の電流検出器では、特定の周波数成分(加振周波数)のみを選択して電流信号の増幅をしているため上記周波数帯域以外のノイズ信号を除去でき、高S/Nの微小電流を検出することができる。
【0041】
図7では、内容を分かり易く説明するために、探針が試料表面に接触する間隔を粗く表示して示したが、実際の測定では探針11の走査速度(例えば1Hz)に比べて探針11の加振周波数を十分高く(例えば70kHz)設定することにより、探針が試料表面に接触する間隔を密にでき、位置分解能を向上できる。
【0042】
比較のために図6に示した従来方式における探針の挙動を図8で説明する。探針11とカンチレバー12は加振されないため、探針先端部は常に試料16の表面に接触しながら走査される。即ち探針―試料間の原子間力を一定に保つように制御され、探針先端部の軌跡は試料表面形状とほぼ同じである。測定試料に電源4によるバイアス電圧を印加することにより、探針―試料間の直流的な局所電流を検出する。従来方式の電流検出器5では、探針―試料間に流れた全ての周波数領域の電流信号検出、増幅されるため、ノイズ信号が混入しやすい。
【0043】
また従来方式では探針先端部と試料表面が常に接触しているため、両者の間に大きな摩擦力が発生し易く、またスティックスリップなどにより本来通電し難い領域にリーク電流30などが頻繁に検出され易い欠点がある。また探針先端部の導電性被覆の摩耗や汚染物質の付着などにより、再現性の良い測定ができ難い。
【0044】
〔実施例3〕
図1に示した本発明の走査型局所電流計測装置により、局所電流分布を測定した一例を図9に示す。試料は、Si基板上に膜厚10 nmのNiFe膜、膜厚5 nmのCoFe膜、膜厚0.6 nmのAl膜を順次形成し、上部のAl膜を大気中で自然酸化(Al−O層)した試料である。
【0045】
図9は、上部の自然酸化Al−O層を介して探針→CoFe層→NiFe層間に流れるトンネル電流の分布を測定した一例である。測定時に試料には0.2 Vの負のバイアス電圧を印加し、また測定徒時のトンネル電流の感度は10 pA(ピコアンペア)とした。図9において、白いコントラストで示された領域が局所通電領域、すなわちトンネル電流が流れた領域であり、明るいほど大電流が流れたことを示す。同時に同一場所の表面形態が測定された。表面形態像からこの試料の表面粗さ(Ra)は約0.2 nmであった。同一場所の表面形態像と電流分布像を比較することにより、通電のし易さと表面凹凸の関係などが解析できることが明らかになった。図9の電流分布像は画素数262144個(512x512)で測定された。この全観察領域においてS/Nが良く、測定誤差のない安定した測定ができることが確認された。
【0046】
〔実施例4〕
局所電流分布の測定において、探針先端部の導電性被覆の摩耗や汚染物質の付着などが電流分布の測定誤差になり易い。図1に示した本発明の走査型局所電流計測装置と図6に示した比較用の従来装置を用いて、 同一試料の電流分布像を繰り返し測定し性能を比較した。試料は、Si基板上に膜厚10 nmのNiFe膜、膜厚5nmのCoFe膜を順次形成したものを用いた。測定時に試料には0.05 Vの負のバイアス電圧を印加した。探針11とカンチレバー12の表面に膜厚30 nmのPt膜を被覆したプローブを使用した。1画面の観察領域は500 nm角とし、1画面の画素数は512x512とした。
【0047】
図10に性能を比較した一例を示す。図の横軸は、測定時の画素数の積算値を示す。縦軸は、測定開始から256画素当りの平均電流値で規格化した、通電率である。通電率が100%は、探針・試料間の導電特性の劣化が認められないことを示す。図10の比較から明らかなように、図6に示した比較用の従来装置では、約100万画素以上の測定(画素数512x512の測定画面:約4個)により電流特性の劣化が認められた。一方、図1に示した本発明の走査型局所電流計測装置では、従来装置の2倍以上の画素数の電流特性を安定に、かつ再現性良く測定できることが明らかになった。
【0048】
図10において比較用の従来装置で電流特性の劣化が観察された探針の先端部を走査型電子顕微鏡で観察した結果の模式図を図11に示す。この場合、探針11の表面に被覆した導電性被覆膜32の一部に破損部33が形成され、非導電性の探針11がむき出しになっているのが観察された。これは従来装置では、探針―試料が常に接して走査されるため摩耗により探針表面の導電性皮膜が無くなり易いことを示している。一方、本発明の装置で測定した探針では、100万画素以上を測定しても上記のような破損は認められなかった。
【0049】
〔実施例5〕
探針として磁性材料を用いることも可能である。磁性探針を用いることにより、磁性多層膜試料を流れるトンネル電流の計測から磁気的性質を測定することも可能となる。また試料の周囲にマグネットなどの磁界印加機構を備えることにより、磁性試料のミクロな磁気特性の評価も可能となる。本実施例では、測定試料に磁界印加機構を備えた本発明の走査型局所電流計測装置の一応用例を図12により説明する。
【0050】
図12は、図1に示した本発明の走査型局所電流計測装置において測定試料付近の概略図である。本実施例で用いた試料は、Si基板上に薄いバッファ層(Ta)を形成し、この上に膜厚30 nmの反強磁性膜(PtMn)44、膜厚5 nmの固定層軟磁性膜(NiFeまたはNiFe/CoFeの積層膜)45、および膜厚0.6 nmの絶縁膜(自然酸化Al膜)46を順次形成した絶縁膜 / 固定層軟磁性膜 / 反強磁性膜からなる構成の試料である。
【0051】
測定試料は、予め磁場中熱処理を施すことにより反強磁性膜44および固定層軟磁性膜の磁化48を一方向に着磁した。反強磁性膜44と固定層軟磁性膜45の結合磁界は約100エルステッドであった。測定試料の周囲に磁界印加機構を配置した。磁極42の一部に励起コイル43を設け、磁極42の先端部の磁化の向きを制御した。探針11の先端部には膜厚20 nmの軟磁性被覆膜41を被覆した。探針先端部の軟磁性被覆膜41は保磁力が数エルステッド以下と小さいため、例えば磁極42の先端に約±20エルステッドの磁界を印加し、その極性N,Sを交互に変化した。ことにより探針の磁化48の向きを変化できる。
【0052】
軟磁性層a / 絶縁膜 / 軟磁性層bから構成される磁性多層膜において、絶縁膜を介して軟磁性層aから軟磁性層bの間に流れるトンネル電流は、軟磁性層aと軟磁性層bの磁化方向が同じときトンネル電流(Ip)はIp = Io (1 + P)、一方軟磁性層aと軟磁性層bの磁化方向が反平行なときのトンネル電流(Ia)はIa = Io (1 − P)で記述できることが知られている。Pは軟磁性層スピンの偏極率であり、ここでは軟磁性層aと軟磁性層bの偏極率は等しいと仮定した。IoはP=0の時の電流値である。
【0053】
上記の絶縁膜 / 固定層軟磁性膜 / 反強磁性膜からなる構成の試料を用いた測定例を図12と図13で説明する。本測定では反強磁性膜を介して0.2 Vの負のバイアス電圧を試料に印加した。探針―試料間に流れるトンネル電流は図1のごとくカンチレバー12の一端に接続した電流検出器で測定した。探針と絶縁膜 /固定層軟磁性膜 / 反強磁性膜試料の間にはトンネルバリア絶縁膜を介してトンネル電流が流れる。磁界印加機構に約20エルステッドの磁界を印加することによって探針上の軟磁性膜被覆41の磁化方向を左右(N,S)に変化した。
【0054】
一方、固定層軟磁性膜45の磁化は反強磁性膜44で固定されているため変化しない。図13に示したように、探針の磁化48と固定層軟磁性膜45の磁化方向が同じ時トンネル電流Ip( = Io (1 + P))が検出される。一方、探針の磁化48と固定層軟磁性膜45の磁化方向が反平行の時トンネル電流Ia( = Io (1 −
P))が検出される。ここで一般にIp>Iaの関係がある。
【0055】
図13の電流特性の測定において、局所的に異常通電部49が観測されることがある。このような異常通電の原因として、局部的に絶縁膜の厚さが薄く過剰電流が流れる場合や、固定層軟磁性膜45の局部的な偏極率が異なる場合などが推定される。
【0056】
本実施例では、同一場所を探針の磁化方向を変化して2種類のトンネル電流IpとIaを測定し、両信号の差( Ip − Ia )を求めることにより、局所的な異常通電部49の原因を識別することが可能である。本実施例では、局所的な絶縁破壊が異常通電の原因と推定された。本発明の装置では、再現性の良い測定が出来るため上記の計測が可能である。
【0057】
一方、従来装置では図10で説明したように、測定の再現性に劣るためこのような機能は付加できなかった。
【0058】
〔実施例6〕
近年、半導体デバイスや磁性薄膜デバイスは複数の材料の薄膜を多層化した多機能素子が用いられる。例えば磁気トンネル効果を用いたトンネル接合再生ヘッド(TMRヘッド)や不揮発性磁気メモリ(MRAM)では、強磁性膜 / 絶縁膜 / 強磁性膜からなる構成の絶縁膜(トンネル障壁層)の膜厚や膜質がトンネル接合素子の性能を大きく左右するため、トンネル障壁層の形成プロセスの制御の重要性が指摘されている。このため本発明では、上記のトンネル障壁層の形成プロセスの一部に前記した微小電流検出機能を付加し、多層膜の形成プロセスにフィードバックする機能をもたせた。
【0059】
強磁性金属 / 絶縁体 / 強磁性金属のサンドイッチ構造をした磁気トンネル接合は、スピン依存トンネル効果により磁界に対して高い感度を有する。この磁気トンネル接合は、高感度の磁気トンネル型再生ヘッド(TMRヘッド)や不揮発性磁気メモリ(MRAM)として使用する。磁気トンネル接合におけるトンネル障壁層(絶縁体膜)の膜厚や膜質などの均一性が磁気トンネル接合素子の比抵抗や磁気抵抗変化率などの性能に強く依存する。トンネル障壁層としては膜厚サブナノメータの酸化アルミニウム(AlOx)膜が一般に使用される。磁気トンネル接合素子におけるトンネリング確率は障壁層の膜厚に対して指数関数的に変化するため、障壁層の膜厚や膜質の極わずかの不均一性でも磁気トンネル接合素子の比抵抗や磁気抵抗変化率などの性能に大きな変化をもたらす。
【0060】
従って、TMRヘッドやMRAMなどの研究開発における障壁層のナノスケールでの評価は極めて重要になる。本発明の装置を研究開発で使い、トンネル電流の局所分布と表面形態を測定することにより、スピン依存トンネル効果の物理的現象との関係を詳細に解析することができる。これにより、測定しない場合と比較して、ヘッドやメモリの研究開発を加速させることができ、その期間を縮小させることもできる。また、工業的には、磁気トンネル接合素子における障壁層の性能を再現性良く形成することが、TMRヘッドやMRAMなどの製造部留まりを向上するのに必要である。
【0061】
図14と図15により本発明の一実施例を説明する。図14は、TMRヘッドやMRAMにおける磁気トンネル接合部の膜構成を示す概略図である。
【0062】
図14(a)のごとく基板51には磁気トンネル接合部52に対応するレジストパタ−ンが設けてある。基板としては、Si基板やアルチック基板などを使用する。磁気トンネル接合部52は、上記の基板上にレジストのパターンニングにより形成する。
【0063】
図14(b)は、磁気トンネル接合部52の膜構成の一例を拡大して示した図である。磁気トンネル接合部は、基板51上にプリコート層53として膜厚5nmのTa膜、膜厚35nmのNiFe膜54、反強磁性膜55として膜厚25nmのMnPt膜、膜厚3nmのCoFe膜56、トンネル障壁層57、膜厚1nmのCoFe膜58、膜厚5nmのNiFe膜59、膜厚10nmのRu保護膜60から構成される多層構造の膜である。プリコート層53は、この一部に電極部を形成し、磁気トンネル接合素子の下部電極としても機能する。反強磁性膜55は、多層構造の磁気トンネル接合素子を形成した後に、磁場中で熱処理し一方向に着磁し、この上に形成した軟磁性CoFe膜56の磁化方向を一方向に固定する役割をする。トンネル障壁層57は、Al薄膜を酸化したAl−Ox膜などを使用する。トンネル障壁層57の膜厚は0.4 ―1 nmである。トンネル障壁層57の上部に形成したCoFe膜58とNiFe膜59は、外部磁界に対して容易に磁化方向が変化する、いわゆる自由層として機能する。即ちトンネル障壁層57を介して設けた下部の軟磁性CoFe膜56と、上部の軟磁性CoFe膜58および軟磁性NiFe膜59の磁化方向が平行もしくは反平行になったとき、トンネル障壁層57を介して流れるトンネル電流の確率が変化する。Ru保護膜60は、この一部に電極部を形成し、磁気トンネル接合素子の上部電極としても機能する。
【0064】
図14(b)に示した構成の強磁性層/トンネル障壁層/強磁性層からなるサンドイッチ構造の磁気トンネル接合素子の性能は、前記したようにトンネル障壁層58の膜厚や膜質に強く依存するため、試作や製造での工程管理が極めて重要である。
【0065】
図15に、走査型局所電流計測装置を前記の磁気トンネル接合素子の製造ラインに導入した一例を示す。本実施例の装置は、導入室72、薄膜形成室A74、薄膜形成室B77、障壁層形成室75、障壁特性評価室76、取出し室78から構成され、それぞれの部屋はゲートバルブ73により仕切られている。いずれも到達真空度は10−7 Pa以下の超高真空室からなっている。試料71は、導入室72から真空室に導入される。ここでは基板からのアウトガス処理や表面クリーニング処理などが実施される。薄膜形成室A74には、
図14(b)に示した多層膜53,54,55,56,57に対応するスパッタリングターゲット81、82、83、84、85が配置されTa、NiFe、MnPt、CoFe膜、およびAl膜からなる多層膜が順次形成される。障壁層形成室75では、前記多層膜の最上層のAl膜を酸化してAl−Oxからなるトンネル障壁層57を形成する。障壁層形成室75では、例えば前記多層膜を10Paの酸素雰囲気中で保持しAl膜を自然酸化することにより、Al−Oxからなるトンネル障壁層57を形成する。
【0066】
障壁特性評価室76には、図1に示した本発明の走査型局所電流計測装置が配置されている。本装置ではインラインでの評価を行うために、走査型局所電流計測装置で用いる探針とカンチレバーで構成されるプローブユニットを予め複数個搭載した構成となっており、使用するプローブユニットの交換を自動的に行うことが可能な構成となっている。障壁特性評価室76内にはプローブユニットが一体となったものが複数準備され、プローブ先端が劣化した場合などに、評価室76の真空を保ったまま、新しいプローブユニットに交換する。また、複数の局所電流計測装置を同一の障壁特性評価室76に備えて、これを同時に並行して使うことにより、評価時間を同じにしたまま同一ウエハ内での測定点を増やしたり、また評価時間そのものを短縮することができる。
【0067】
本発明の走査型局所電流計測装置では、試料表面のトポグラフィと局所的なトンネル電流分布が測定できる。また局所的な電流―電圧特性を測定できる。障壁特性評価室76での評価結果は次のようにトポグラフィと電流特性を判定し、形成プロセスに反映される。障壁特性評価室76で試料表面のトポグラフィを測定し、一定の表面粗さ判定基準、例えば表面粗さ0.1 nmより大きい場合に、基板の前処理の改善や薄膜の形成条件、例えばスパッタリングガス圧力や基板温度の改善などにフィードバックする。試料表面の凹凸部で局所的にトンネル障壁層の膜厚や膜質が変化し易くトンネル電流特性が劣化するため、試料表面トポグラフィの制御が重要である。
【0068】
また障壁特性評価室76では、表面トポグラフィの評価に加えて、トンネル電流特性の評価を行う。薄膜形成室A74で作製した基板/Ta膜/NiFe膜/MnPt膜/CoFe膜/Al−Ox多層膜試料において、Al−Oxトンネル障壁層を介して探針11と試料の下部電極(プリコート層53)間に流れる電流特性を図1に示した本発明の走査型局所電流計測装置を用いて評価する。
【0069】
本測定では、表面トポグラフィと同時に図9に示したごとく局所電流分布の測定が可能である。トンネル障壁層57を介して流れるトンネル電流分布が不均一な場合、薄膜の表面性の改善や障壁層形成室75での酸化条件の改善にフィードバックする。
【0070】
更に障壁特性評価室76では、前記した多層膜試料の局所的な電流―電圧特性を測定できる。本発明の走査型局所電流計測装置により求めた電流―電圧特性と、トンネル電流に関する理論式(例えばシモンズの式:J. G. Simmons著, ジャーナル オブ アプライド フィジックス34巻, 1793頁 1963年.)による計算結果とフィッティングさせることによりトンネル障壁層の膜厚を推定し、その結果を障壁層形成室75での酸化条件(酸化時間、酸素ガス圧力、酸化温度など)の設定にフィードバックすることができる。上記の判定によりトンネル障壁層となるAl膜の酸化が不十分な場合は、再び障壁層形成室75で酸化を促進する。
【0071】
表面トポグラフィやトンネル電流特性、電流―電圧特性に目標値からはずれた特性の不良品が発生した場合には、それを選別して製造工程から外して、良品のみを後の工程に送ることができる。これにより、無駄なウエハを後工程に流すことが避けられ、高効率な後工程プロセスを実施することができ、作業時間を総合的に短縮することができる。製造工程から外したウエハは、詳細に分析や解析を行うことにより、特性が目標値から外れた原因を究明し、原因がわかり次第、障壁特性評価よりも前の工程にその対策をフィードバックする。例えば、分析や解析結果から、特性を改善するウエハ製膜のパラメータを導き出し、製膜制御手段にこれらのデータを入力する。これら一連の作業を通して、生産歩留まりの向上が実現され、さらに総合的な生産単価を引き下げることができる。
【0072】
また、表面トポグラフィやトンネル電流特性、電流―電圧特性に目標値からはずれた特性の不良品が発生した場合には、直ちにプロセスを止めてラインを停止して、不良品の多発の防ぐことができる。本発明の装置がラインに無い場合は、全ての工程が完了した段階で、TMRヘッドやMRAMとしての動作機能をチェックするため、不良を発見するタイミングが遅れてしまう。具体的には本発明の装置による評価工程よりも後の工程にかかる時間全てが発見の遅れ時間になる。例えば、後の工程が2週間であればその分が不良品発見の遅れになり対策の遅れにもなるため、本実施例と比較すると損失も大きい。さらに、歩留まりの向上しない生産ラインに対しては、本発明の装置を導入し、表面トポグラフィや局所的なトンネル電流特性、電流―電圧特性を調べて、逐次プロセス条件の改善を図ることにより、歩留まりの向上ができる。
【0073】
一方、障壁特性評価室76で所定の評価をクリアした場合、薄膜形成室B77において上層の薄膜を形成する。薄膜形成室B77には、図14(b)に示した多層膜58,59,60に対応するスパッタリングターゲット86,87,88が配置され、トンネル障壁層の上にCoFe膜、NiFe膜、およびRu膜を順次形成する。上記の試料は取り出し室78から大気中に取り出し、次の製造工程に進められる。
【0074】
本実施例のごとく磁気トンネル接合素子を構成する多層膜形成プロセスに本発明の走査型局所電流計測装置を配置することにより、磁気トンネル接合素子の性能(比抵抗、磁気抵抗変化率など)を左右するトンネル障壁層の膜厚や膜質あるいは表面トポグラフィをインプロセスにおいて評価判定が可能となり、磁気トンネル型再生ヘッド(TMRヘッド)や不揮発性磁気メモリ(MRAM)用の磁気トンネル接合素子の部留まりの大幅な向上に有効である。
【0075】
【発明の効果】
本発明によると、導電性探針を有する可撓性のカンチレバーと、カンチレバーおよび探針を特定の周波数で加振する手段と、カンチレバーの変位(振動振幅)を一定に制御する手段と、探針と試料の間にバイアス電圧を印加する手段と、カンチレバーの加振周波数と同期した特定の周波数で、該探針の先端が試料表面に接触した瞬間の微少電流を検出する手段と、探針を試料表面に沿って走査する手段を設けることにより試料の表面形態と同一場所の局所電流分布を再現性良く計測するのに好適な走査型局所電流計測装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による走査型局所電流計測装置の基本構成の一例を示す概略図。
【図2】本発明による微小電流検出法の説明図。
【図3】従来の走査トンネル顕微鏡の概略説明図。
【図4】従来のコンタクト方式原子間力/磁気力顕微鏡の概略説明図。
【図5】従来のタッピング方式原子間力/磁気力顕微鏡の概略説明図。
【図6】従来方式の電流分布計測装置の概略説明図。
【図7】本発明の測定法の概略説明図。
【図8】従来装置の測定法の概略説明図。
【図9】局所電流分布の一測定例。
【図10】本発明と従来技術の性能比較図。
【図11】探針先端部の走査型電子顕微鏡像の模式図。
【図12】磁界印加機構を備えた本発明の走査型局所電流計測装置の一応用例。
【図13】電流特性の測定例。
【図14】磁気トンネル接合素子の構成説明図。
【図15】走査型局所電流計測装置を搭載した磁気トンネル接合素子形成装置の一例。
【符号の説明】
1:STM探針、2:試料、3:XYZスキャナー、4:電源、5:電流検出器、5−1:第1電流検出器、5−2:第2電流検出器、5−3:第3電流検出器、16:サーボ制御器、7:XY走査器、8:表示装置、8−1:表示装置、8−2:表示装置、11:探針、12:カンチレバー、13:レーザ源、14:変位検出センサー、15:変位検出回路、16:試料、17:XYZスキャナー、21:加振素子、22:発振器、23:ロックインアンプ、24:加振周波数領域、30:リーク電流、31:局所通電領域、32:導電性被覆膜、33:破損部、41:軟磁性膜被覆、42:磁極、43:励磁コイル、44:反強磁性膜、45:固定層軟磁性膜、46:絶縁膜、47:固定層軟磁性膜の磁化、48:探針の磁化、49:異常通電部、51:基板、52:磁気トンネル接合部、53:プリコート層、54:NiFe膜、55:反強磁性層、56:CoFe膜、57:トンネル障壁層、58:CoFe膜、59:NiFe膜、60:保護膜、71:試料、72:導入室、73:ゲートバルブ、74:薄膜形成室A、75:障壁層形成室、76:障壁特性評価室、77:薄膜形成室B、78:取り出し室、81:ターゲットA、82:ターゲットB、83:ターゲットC、84:ターゲットD、85:ターゲットE、86:ターゲットF、87:ターゲットG、88:ターゲットH。

Claims (18)

  1. 探針を備えたカンチレバーと、
    該カンチレバーを加振する圧電素子と、
    加振によるカンチレバーの変位を検出する手段と、
    該圧電素子に所望の周波数の交流信号を印加する手段と、
    前記変位検出手段により検出された変位に基づき前記カンチレバーの変位が一定となるように前記交流信号を印加する手段を制御する制御器と、
    該探針と試料の間にバイアス電圧を印加する電圧源と、
    前記探針に流れた電流を検出する手段とを備えたことを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  2. 請求項1に記載の走査型局所電流計測装置において、前記カンチレバーの加振周波数を通過帯域として持つ帯域通過フィルタと、前記加振周波数を参照周波数とし前記帯域通過フィルタからの出力信号を入力信号とするロックインアンプとを備えたことを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  3. 探針を有するカンチレバーと、
    前記カンチレバーおよび探針を所定の周波数で加振する手段と、
    加振によるカンチレバーの変位を一定に制御する手段と、
    該探針の振動振幅を一定に制御する手段と、
    該探針と試料の間にバイアス電圧を印加する手段と、
    前記探針に流れた電流を検出する手段とを備えたことを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  4. 請求項3に記載の走査型局所電流計測装置において、前記電流検出手段により検出された電流から、前記探針の加振周波数と同期した周波数領域の電流信号を選択する手段と、該電流信号を増幅する手段とを備えたことを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  5. 請求項3に記載の走査型局所電流計測装置において、前記カンチレバーの変位を一定に制御する手段は、振動によるカンチレバーの変位を検出する手段と、該検出された変位に応じてプローブへの加振を変更する手段とを含むことを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  6. 請求項3に記載の走査型局所電流計測装置において、前記探針を試料表面に沿って走査する手段を備えた走査型局所電流計測装置。
  7. 請求項6に記載の走査型局所電流計測装置において、前記探針を一定振幅で加振しながら試料表面を走査することにより試料表面形態を検出することを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  8. 請求項6に記載の走査型局所電流計測装置において、走査により得られる試料表面の位置情報と、前記電流検出手段により得られる検出電流とから、試料表面上の特定の場所における印加バイアス電圧に対する電流特性(電圧―電流特性)を作成する手段を有することを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  9. 請求項7に記載の走査局所電流計測装置において、前記試料表面形態または前記局所電流分布を表示する手段を備えたことを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  10. 請求項7に記載の走査局所電流計測装置において、前記試料表面形態と前記局所電流分布とを同一画面上に表示する表示手段を備えたことを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  11. 請求項3に記載の走査型局所電流計測装置において、少なくとも前記探針の表面に導電性膜が被覆されていることを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  12. 請求項3に記載の走査型局所電流計測装置において、探針が導電性材料からなることを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  13. 請求項3に記載の走査型局所電流計測装置において、測定試料に磁界印加機構を備えたことを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  14. 請求項13に記載の走査型局所電流計測装置において、前記印加磁界の極性を変更する手段を備えたことを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  15. 請求項3に記載の走査型局所電流計測装置において、前記探針の先端部に備えられた磁性体を有することを特徴とする走査型局所電流計測装置。
  16. 薄膜形成室と、該薄膜形成室で形成された薄膜を試料として用いる走査型局所電流計測装置とを有し、
    該局所電流計測装置は、探針を備えたカンチレバーと、該カンチレバーを加振する圧電素子と、加振によるカンチレバーの変位を検出する手段と、該圧電素子に所望の周波数の交流信号を印加する手段と、前記変位検出手段により検出された変位に基づき前記カンチレバーの変位が一定となるように前記交流信号を印加する手段を制御する制御器と、該探針と試料の間にバイアス電圧を印加する電圧源と、前記探針に流れた電流を検出する手段とを備え、該走査型局所電流計測装置で測定された試料の電圧―電流特性に応じて、前記薄膜形成室の製膜条件を変えることを特徴とする薄膜デバイス製造装置。
  17. 薄膜形成室と、該薄膜形成室で形成された薄膜を試料として用いる走査型局所電流計測装置とを有し、
    該局所電流計測装置は、探針を有するカンチレバーと、前記カンチレバーおよび探針を所定の周波数で加振する手段と、加振によるカンチレバーの変位を一定に制御する手段と、該探針の振動振幅を一定に制御する手段と、該探針と試料の間にバイアス電圧を印加する手段と、前記探針に流れた電流を検出する手段とを備え、該走査型局所電流計測装置で測定された試料の電圧―電流特性に応じて、前記薄膜形成室の製膜条件を変えることを特徴とする薄膜デバイス製造装置。
  18. 請求項16に記載の絶縁膜厚評価装置において、探針を有するカンチレバーを複数備えたことを特徴とする薄膜デバイス製造装置。
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