JP2002202238A - スピン偏極走査型トンネル顕微鏡及び再生装置 - Google Patents

スピン偏極走査型トンネル顕微鏡及び再生装置

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JP2002202238A
JP2002202238A JP2000401627A JP2000401627A JP2002202238A JP 2002202238 A JP2002202238 A JP 2002202238A JP 2000401627 A JP2000401627 A JP 2000401627A JP 2000401627 A JP2000401627 A JP 2000401627A JP 2002202238 A JP2002202238 A JP 2002202238A
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electrode
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JP2000401627A
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Shiho Okuno
志保 奥野
Kuniyoshi Tanaka
国義 田中
Tatsuya Kishi
達也 岸
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Toshiba Corp
Original Assignee
Toshiba Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 試料と探針との磁気的相互作用なしにスピン
検出を行うことができ、且つ表面凹凸が激しい試料に対
しても探針の破損を防止できる。 【解決手段】 試料表面の磁気スピンを数nm以下の空
間分解能で観察するためのスピン偏極走査型トンネル顕
微鏡において、先端部から数100nmの距離に磁性電
極33を被着したカーボンナノチューブ32からなる探
針30と、磁性電極33に対し交流磁場を印加して磁性
電極33の磁化方向を変調する磁場発生機構41と、探
針30と試料20との間にバイアス電圧を印加し、トン
ネル電流が一定となるように制御するSTM制御部40
と、磁場変調に伴うトンネル電流の変調応答信号成分を
抽出して試料表面の磁気スピン状態を検出する位相検波
増幅器45とを備えた。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、走査型トンネル顕
微鏡に係わり、特に磁性材料の磁気構造或いは強磁性体
の磁区構造を数nm以下の空間分解能で観察するのに適
したスピン偏極走査型トンネル顕微鏡、及びこれを用い
た再生装置に関する。
【0002】
【従来の技術】磁性体表面の微細磁区構造を評価するた
めの最も分解能の高い磁区観察手段として、磁気力顕微
鏡が知られている。この磁気力顕微鏡の分解能は最高で
10nm程度である。これに対して、磁気記録媒体等の
超微細化に伴い、超微細磁区観察技術の更なる分解能向
上が望まれている。
【0003】走査型トンネル顕微鏡(Scanning Tunneli
ng Microscopy)は、試料或いは探針を駆動させること
により探針を試料表面上で試料に対し相対的に走査し、
トンネル電流が探針−試料間距離に対して極めて敏感で
あることを利用して、試料表面の構造,物性を原子分解
能で評価する手法である。この走査型トンネル顕微鏡に
おいて、試料或いは探針として磁性体を用いた場合に
は、トンネル電子はスピン偏極するため、スピン状態を
分別できれば原子レベル分解能で試料表面の磁気情報を
得ることができる。
【0004】このようなスピン偏極走査型トンネル顕微
鏡として、強磁性体探針を用い、磁性体試料表面との間
のスピンに依存したトンネル電流変化からスピン情報を
得る方法が文献(R.Wissendanger,H. J.Guntherodt, G.
Guntherodt, R.J.Gambino and R.Ruf, Physical Review
Letters, vol.65,p247(1990))に開示されている。強
磁性体探針を用いたこれらの観察例では、磁化の向きが
コントラストとして表示されている。
【0005】ところが、これらの公知例で得られる像は
表面の凹凸像にスピン情報が重畳したものであり、表面
形態及びスピン配置が未知な実際の試料表面からスピン
像のみを取り出すことはできないという欠点があった。
これを解決する方法として、バイアス電圧に対するスピ
ン偏極度の違いを利用する方法が特開2000−131
215号公報及び文献(M.Bode, M.Getzlaff, and R.Wi
esendangerer, Physical Review Letters, vol.81,p425
6(1998), O.Pietzsch, A.Kubetzka, M.Bode, and R.Wie
sendangerer, Physical Review Letters, vol.84,p5212
(2000))に開示されている。
【0006】しかしながら、この種の装置にあっても次
のような問題を避けることは困難であった。即ち、探針
は強磁性であるため、試料と探針の互いの磁気的な影響
が発生し、測定精度が劣化する可能性がある。また、試
料表面の凹凸が激しい場合、探針が試料表面に接触する
ことを避けられず、探針が破損しやすいという欠点があ
った。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】このように、従来のス
ピン偏極走査型トンネル顕微鏡においては、強磁性体の
探針を用いることにより磁性体試料表面のスピン情報を
得ることはできるものの、探針が強磁性であるため試料
と探針の互いの磁気的な影響が発生する可能性があり、
また探針が破損しやすいという欠点があった。
【0008】本発明は、上記事情を考慮して成されたも
ので、その目的とするところは、試料と探針との磁気的
相互作用なしにスピン検出を行うことができ、且つ表面
凹凸が激しい試料に対しても探針の破損を防止すること
のできるスピン偏極走査型トンネル顕微鏡を提供するこ
とにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】(構成)上記課題を解決
するために本発明は次のような構成を採用している。
【0010】即ち本発明は、試料表面の磁気スピン状態
を数nm以下の空間分解能で観察するためのスピン偏極
走査型トンネル顕微鏡において、先端部から所定距離以
内の領域に磁性電極を被着したカーボンナノチューブか
らなる探針と、前記磁性電極に対し交流磁場を印加して
該磁性電極の磁化方向を周期的に変化させる磁場発生機
構と、前記探針を試料表面に対して相対的に走査させる
走査機構と、前記探針と試料との間に所定の電圧を印加
するバイアス電圧源と、前記探針と試料との間に流れる
トンネル電流を検出する電流検出機構と、前記トンネル
電流の平均値が一定となるように前記探針を高さ方向に
駆動する駆動機構と、前記磁化方向の変化に伴うトンネ
ル電流の交流応答信号成分を抽出して試料表面の磁気ス
ピン状態を検出する磁気スピン検出機構とを具備してな
ることを特徴とする。
【0011】ここで、本発明の望ましい実施態様として
は次のものが挙げられる。 (1) 磁性電極材料は、Fe,Co,Ni,Cr,Mn,
若しくはこれらの少なくとも一つを含む合金、又は化合
物であること。 (2) 磁性電極は、カーボンナノチューブの先端からスピ
ン拡散長(一般には数100nm)以内の距離に配置さ
れていること。 (3) 試料と探針との距離を0.1nmから10nmに保
つこと。 (4) 磁場発生機構はコイルからなり、交流電流を供給さ
れるものであること。さらに、交流電流の周波数は10
0Hz〜100kHzであること。 (5) 検出されたトンネル電流の交流応答信号成分を画像
化する手段を設けたこと。
【0012】また本発明は、磁気情報を再生するための
再生装置において、磁気記録に供される磁気記録媒体
と、先端部から所定距離以内の領域に磁性電極を被着し
たカーボンナノチューブからなる探針と、前記磁性電極
に対し交流磁場を印加して該磁性電極の磁化方向を周期
的に変化させる磁場発生機構と、前記探針を磁気記録媒
体表面に対して相対的に走査させる走査機構と、前記探
針と磁気記録媒体との間に所定の電圧を印加するバイア
ス電圧源と、前記探針と磁気記録媒体との間に流れるト
ンネル電流を検出する電流検出機構と、前記トンネル電
流が一定となるように前記探針を高さ方向に駆動する駆
動機構と、前記磁化方向の変化に伴うトンネル電流の交
流応答信号成分を抽出して磁気記録媒体表面の磁気スピ
ン状態を検出する磁気スピン検出機構とを具備してなる
ことを特徴とする。
【0013】(作用)本発明では、先端部から所定距離
以内の領域に磁性電極を被着したカーボンナノチューブ
から探針を構成している。カーボンナノチューブは、ス
ピン拡散長が数100nmを越えることが報告されてお
り、その一端側からスピンを持った電子を流すとスピン
状態を保ったまま電子が流れるという特徴がある。従っ
て、カーボンナノチューブの先端からスピン拡散長以内
の距離に磁性電極を設けておき、この磁性電極をある方
向に磁化させておくと、磁性電極の磁化方向と電子スピ
ン方向との関係に応じて磁気抵抗が変わり、トンネル電
流も変化する。つまり、上記のようにカーボンナノチュ
ーブ及び磁性電極からなる探針を用いても、探針先端を
強磁性体で形成した場合と同様に試料表面の磁気スピン
状態を測定することが可能となる。
【0014】そしてこの場合、探針自体は非磁性(探針
の先端はカーボンナノチューブであり非磁性体)である
ため、試料磁化による探針磁化の影響或いはその逆を避
けることができる。さらに、カーボンナノチューブは高
い弾性率を有することから、仮にカーボンナノチューブ
の先端が試料表面に接触しても問題はなく、探針の破損
を防止することが可能となる。
【0015】
【発明の実施の形態】実施形態を説明する前に、本発明
の基本原理について説明する。
【0016】カーボンナノチューブは、グラファイトシ
ートを螺旋状に丸めたチューブ状の構造を持つ。チュー
ブは単層のものと多層のものがあるが、本発明の探針と
しては何れも使用できる。このカーボンナノチューブの
一端である先端(A)は、試料表面に0.1nmから1
0nmの間隔を隔てて配置される。その高さは、カーボ
ンナノチューブと試料間に流れるトンネル電流の平均値
が一定の値となるように走査中に逐次高さ調整される。
カーボンナノチューブの他端である基端(B)側には磁
性電極を設ける。この磁性電極は、カーボンナノチュー
ブの先端(A)からスピン拡散長(数100nm)以
下、例えば800nm以下に設置されていれば、完全な
端でなくてよい。先端(A)からの距離はさらに好まし
くは500nm以下である。
【0017】磁性電極は、カーボンナノチューブを流れ
てきた試料表面からのトンネル電流を捕えるための電極
である。本発明に適応できる電極材料としては、Fe,
Co,Ni,Mn,Cr及びこれらを含む合金、パーマ
ロイと呼ばれるNiFe系合金、CoNbZr系,Fe
TaC系,CoTaZr系,FeAlSi系,FeB
系,CoFeB系の軟磁性合金、ホイスラー合金やCr
2 ,Fe3 4 ,La 1-x Srx MnO3 などのハー
フメタル磁性体が挙げられる。
【0018】パーマロイやアモルファス系の軟磁性材料
は、磁性電極を制御する上で好ましく、Co,Fe,C
oFe,Fe3 4 は大きなスピン信号を得るのに好ま
しい。また、磁性電極がカーボンナノチューブヘの直接
接触する部分に3nm以下の厚さを持つCo,CoF
e,或いはFe3 4 を形成させ、その上にパーマロイ
などの軟磁性体を形成させると、磁性電極の制御性に優
れかつ大きなスピン信号を得ることができる。
【0019】この磁性電極の直近にはその磁化方向を制
御する磁場発生機構が取り付けられている。磁場発生機
構はコイル状或いは非コイル状の導線から成る。さらに
その磁場発生機構へは、電力供給するための10Hz以
上の交流電流電源が繋がれている。この交流電流電源か
らの電流により交流磁場が発生して磁性電極の磁化方向
を変調させる。そして、この磁場変調に伴う電極電流の
変調応答信号成分検出機構を設けることにより、トンネ
ル電流のスピン成分を検出することができる。
【0020】磁場発生機構からの発生磁場方向は探針軸
に平行になるように探針軸を中心としてコイルを巻く、
或いは導線を探針軸に垂直に設けることで、試料の垂直
磁化成分を検出することができる。また、磁場が探針軸
に直角になるように電極の横にコイルを設置する、或い
は導線を探針軸に平行に設けることで、磁場印加方向と
平行な試料の面内磁化成分を検出することができる。磁
場発生機構は1つの磁性電極に対して1台或いは複数台
並べてもよい。複数台の場合にはここに印加する交流電
流の周波数は互いに変えることにより、試料の磁化ベク
トルを決定することができる。
【0021】本発明の探針(磁性電極付カーボンナノチ
ューブ)は最終的にはピエゾスキャナー等の駆動系ヘマ
ウントされるが、磁性電極と駆動系との間には介在物が
存在してもよい。図1にその一例を示す。図1(a)で
は通常の探針11の先に、まずファンデルワールス力で
カーボンナノチューブ12を付けた後、接着部へ磁性電
極13を蒸着した。そして、通常の探針11をピエゾ素
子等の駆動系15へ取り付けた。図1(b)では絶縁体
の板14の上に先端が飛び出るようにカーボンナノチュ
ーブ12を置いたのち、磁性体を蒸着することで磁性電
極13を形成すると共にこれで接着も行った。(a)も
(b)も磁性電極13には配線を設けて電流が流れるよ
うにしてある。
【0022】図2は、磁場発生機構としてコイル18を
設けた例であり、このコイル18は探針軸を中心として
巻かれており、探針の軸方向に磁場が印加する。そし
て、コイル18に流す電流を交流とすることにより、磁
性電極13の磁化方向が変調されるようになっている。
【0023】なお、走査型トンネル顕微鏡としての上記
以外の不可欠基本構造は、探針を試料表面に対して相対
的に走査させる駆動機構と、探針と試料間にバイアス電
圧を印加するバイアス電圧源及び探針と試料間に流れる
トンネル電流を検出する電流検出機構である。本発明の
スピン偏極走査型トンネル顕微鏡は、基本構造を同じく
してそのまま再生装置に用いることができる。このよう
な再生装置は、特に高密度記録媒体の再生に適してい
る。
【0024】以下、本発明の詳細を図示の実施形態によ
って説明する。
【0025】(第1の実施形態)図3は、本発明の第1
の実施形態に係わるスピン偏極走査型トンネル顕微鏡の
基本構成を示す図である。
【0026】探針30は、例えば前記図1(a)に示す
構造となっており、カーボンナノチューブ32及び磁性
電極33等からなる。この探針30は基端側がピエゾス
キャナー35に固定され、先端(カーボンナノチューブ
側)が試料20の表面に対して相対走査されるようにな
っている。探針30の近傍には、磁性電極33に磁場を
印加するための磁場発生機構41が配設されている。こ
の磁場発生機構41は、例えば前記図2に示すように探
針軸を中心に巻かれたコイルであり、交流電源44によ
り駆動されるようになっている。
【0027】探針30の磁性電極33には、STM制御
/信号処理部40によりバイアス電圧が印加される。こ
のバイアス電圧の印加により探針30と試料20との間
に流れるトンネル電流は、トンネル電流増幅器43によ
り増幅されて、STM制御/信号処理部40及び後述す
る位相検波増幅器45に入力される。そして、STM制
御/信号処理部40では、トンネル電流の平均値が一定
となるように、ピエゾスキャナー35を駆動するための
ピエゾ制御信号を出力するようになっている。
【0028】また、交流電源44による交流信号は位相
検波増幅器45に変調信号として供給される。位相検波
増幅器45では、交流電源44からの変調信号を基に、
増幅器43を介して得られるトンネル電流が同期検波さ
れる。ここで、トンネル電流の中には磁気スピンに依存
した成分があり、これは磁場発生機構41を交流駆動す
ることにより大きく変化するため、交流駆動に応じて信
号を取り出せばスピン成分を取り出すことができる。即
ち、上記のように交流信号に同期してトンネル電流を検
波することにより、試料表面の磁化成分のみを検出する
ことが可能となる。
【0029】なお、上記の説明では、探針30の試料表
面上での走査及び探針30の上下動にピエゾスキャナー
35を用いたが、ピエゾスキャナー35は探針30の上
下動のみに用い、探針30を試料表面上で走査するため
に試料20を載置したステージを移動させるようにして
もよい。
【0030】上記構成において、カーボンナノチューブ
32ヘ磁性電極33としてCoFe/パーマロイの積層
電極を設けてピエゾスキャナー35にマウントし、スピ
ン偏極走査型トンネル顕微鏡のテストを行った。積層電
極としては、Co/パーマロイ,Fe/パーマロイ等も
好ましく、このパーマロイの代わりに軟磁性アモルファ
スも好ましい。CoFe,Co,Feがカーボンナノチ
ューブに接する。CoFe,Co,Feの厚さは0.3
〜2nm、パーマロイ等の軟磁性体の厚さは1〜30n
mが好ましい。磁性電極33を磁化させるための磁場発
生機構41としては、図2に示すように、磁性電極を中
心軸としてコイルを巻き、交流電源44により777H
zの周波数で10Gの磁場発生を行い、トンネル電流の
うち磁場変調と同期した成分を位相検波増幅器45によ
り検出した。
【0031】試料20としてCo垂直磁化膜を用い、ト
ンネル電流が0.2nAになるように探針30の高さを
制御しながら探針30を試料20上で走査した。探針3
0の高さ位置を画像信号とした画面からは試料表面のト
ポロジーが、位相検波増幅器45の出力を画像信号とし
たものはトポグラフ像とは無関係なコントラストを示
し、このコントラストは試料20への3kGのパルス磁
場印加で消失した。また、非磁性基板部分からの信号は
ゼロであった。以上の結果から、位相検波増幅器45の
出力信号が試料表面の磁化状態を検出していることを確
認した。
【0032】また、図3と同様のスピン偏極走査型トン
ネル顕微鏡の構成で、カーボンナノチューブ32の先端
(A)から距離300nmのところに磁性電極33とし
てのCoFe電極を設けた探針30を用い、Co試料2
0に対してスピン信号強度を位相検波増幅器45により
求めた。比較例として、非磁性であるタングステン探針
のこれも先端から距離300nmのところにCoFe電
極を設けたものを用い、Co試料に対してスピン信号強
度を位相検波増幅器45により求めた。
【0033】変調応答信号の大きさをトンネル電流値で
規格化した抵抗変化率は、前者が5%であったのに対
し、後者はノイズレベル以下で検出不能であった。本実
施形態で抵抗変化率が変わるのは、カーボンナノチュー
ブ32はスピン拡散長が長く、試料表面のスピン状態を
そのまま保持して磁性電極33に達し、ここで磁気抵抗
効果が起こるためである。また、電極位置をカーボンナ
ノチューブ32の先端(A)から距離150nmのとこ
ろに設けて比較実験を行ったところ、抵抗変化率は15
%以上に増大した。この結果から、磁性電極33の設置
位置はカーボンナノチューブ32の先端(A)に近い方
が望ましいのが分かる。
【0034】また、図3と同様のスピン偏極走査型トン
ネル顕微鏡を用い、カーボンナノチューブ32からなる
探針30と通常のタングステン探針とを、10nmの表
面凹凸を有する試料表面を走査させて探針の耐性テスト
を行った。その結果、タングステン探針では3回のスキ
ャンで像がダブルとなったのに対し、カーボンナノチュ
ーブによる像は変化しなかった。この結果は、カーボン
ナノチューブの耐衝撃性が高いを示している。
【0035】このように本実施形態によれば、先端部か
らスピン拡散長以内の距離に磁性電極33を被着したカ
ーボンナノチューブ32から探針30を構成し、磁場印
加機構41により磁性電極33の磁化方向を変調しなが
らトンネル電流を検出することによって、探針先端を強
磁性体で形成した場合と同様に試料表面の磁気スピン状
態を測定することができる。
【0036】また本実施形態では、探針30の先端はカ
ーボンナノチューブ32であり非磁性体であるため、試
料磁化による探針磁化の影響或いはその逆を避けること
ができる。さらに、カーボンナノチューブ32は高い弾
性率を有することから、仮にカーボンナノチューブ32
の先端が試料表面に接触しても問題はなく、探針30の
破損を防止することが可能となる。つまり、試料と探針
との磁気的相互作用なしにスピン検出を行うことがで
き、且つ表面凹凸が激しい試料に対しても探針の破損を
防止することができる。
【0037】(第2の実施形態)図4は、本発明の第2
の実施形態に係わる再生装置の要部構成を示す断面図で
ある。
【0038】図中の60は探針であり、この探針60は
先の実施形態と同様に、カーボンナノチューブ62及び
磁性電極63等から構成されている。65はトンネル電
流を一定にするために探針60を微小駆動する微小駆動
部、67は複数の探針60を同時に駆動するための大領
域駆動部、69は磁場発生機構、70は磁気記録媒体を
示している。
【0039】本実施形態では、磁性電極63を有するカ
ーボンナノチューブ62を微小駆動部65にマウントし
て1ユニットとしたものを、複数ユニット1列に並べて
さらに大きな距離へ対応した大領域駆動部67ヘマウン
トした。これにより磁気ヘッド部を構成した。磁気ヘッ
ド部の複数ユニットに対するバイアス電圧源(図示せ
ず)及び磁場発生機構69はそれぞれ1つにした。そし
て、複数のカーボンナノチューブ62を磁気記録媒体7
0の表面に微小間隙を隔てて配置し、これらを相対的に
スキャンするものとした。
【0040】より具体的には、磁性電極63、磁場発生
機構69、微小駆動部65としてのピエゾ素子等は微細
加工により作製した。探針60は50本並べて探針アレ
イとした。磁場発生機構69は、磁性電極63の側部に
隣接配置された細線からなり、ここに流す電流により磁
性電極63に対しカーボンナノチューブ62の軸方向を
向いた磁場がかかる。配線を設けた磁性電極63を含む
カーボンナノチューブアレイと磁場発生機構69とを1
ユニットとして、磁気記録媒体70の上へセットした。
【0041】磁気記録媒体70には、直径7nmの柱状
からなるパターンを各記録ビットとした媒体を用いた。
この磁気記録媒体70に対し磁気ヘッド部全体を相対的
に移動させる。図4では、磁気ヘッド部を紙面左右方向
及び紙面表裏方向に移動させている。紙面左右方向の移
動距離dは、カーボンナノチューブ間の距離をrとする
と、最大でd=rとなることが好ましい。カーボンナノ
チューブの本数をnとすると、全体では(n+1)×d
の幅を持つ媒体領域の読み込みが可能となる。
【0042】磁気ヘッド部を移動させながら、各探針に
より移動距離範囲内の記録ビット情報を読み取る。具体
的には、各磁性電極からの信号のうち磁場変調応答信号
成分を位相検波増幅器により検出して各出力信号とす
る。なお、図では1列のアレイからなるが、50×50
のようなマトリックスアレイにすることで更に高速処理
も可能である。なお、図4の配置において紙面に垂直方
向の駆動については、1列アレイの場合には媒体長さに
対応した距離を移動させる必要があるが、マトリックス
アレイの場合には、隣の探針までの移動距離で済む。
【0043】以上の方法での再生信号を検討した結果、
1Tbpsiの記録密度に対応した磁気記録媒体の記録
状態を読み込めることを確認した。
【0044】このように本実施形態によれば、カーボン
ナノチューブ及び磁性電極等からなる探針を磁気ヘッド
として用いることにより、磁気記録媒体に記録された磁
気情報を読み出すことができる。しかも、探針による磁
気スピンの分解能が極めて高いため、1Tbpsiの記
録密度に対応した磁気記録媒体の読み出しも可能とな
る。また、探針を列状又はマトリックス状に配列するこ
とにより、読み出しの高速処理をはかることもできる。
また、第1の実施形態と同様に、探針の先端部にカーボ
ンナノチューブを用いていることから、探針と磁気記録
媒体との磁気的相互作用を無くすことができ、且つ探針
の長寿命化をはかることもできる。
【0045】なお、本発明は上述した各実施形態に限定
されるものではない。磁性電極を磁化させる方向は必ず
しも探針軸方向に限るものではなく、探針軸と水平の方
向であってもよい。水平方向に磁化させる場合は、磁性
電極の側部にコイルを配置したり、磁性電極の上部に細
線を設ければよい。さらに、磁場発生機構は必ずしも1
つに限るものではなく、複数個設け各々の合成磁場を利
用してもよい。磁性電極を設ける位置はカーボンナノチ
ューブの先端からスピン拡散長以内の距離であればよ
く、通常は800nm以内であればよい。さらに、磁性
電極の材料は仕様に応じて適宜変更可能である。
【0046】また、第2の実施形態においては、探針を
複数にしたが、1つの探針で磁気記録媒体の情報を読み
込むようにしてもよいのは勿論のことである。さらに、
第2の実施形態において、磁気記録媒体を円板状に形成
し、カーボンナノチューブを磁気記録媒体の中心を通る
直線上に配置し、磁気記録媒体を回転させて磁気情報を
読み出すようにすることも可能である。
【0047】その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲
で、種々変形して実施することができる。
【0048】
【発明の効果】以上詳述したように本発明によれば、ス
ピン偏極走査型トンネル顕微鏡の探針を非磁性のカーボ
ンナノチューブと、このカーボンナノチューブの先端か
ら所定距離以内の領域に配置した磁性電極で構成するこ
とにより、磁性材料の磁気構造或いは強磁性体の磁区構
造を数nm以下の空間分解能で観察することができる。
しかも、カーボンナノチューブが非磁性であることから
探針磁化と試料磁化の互いの影響を避けることができ、
カーボンナノチューブが高い弾性率を有することから表
面凹凸が激しい試料に対しても探針の破損を防止するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の基本構成を説明するためのもので、カ
ーボンナノチューブのマウント例を示す図。
【図2】本発明の基本構成を説明するためのもので、磁
場発生機構の設置例を示す図。
【図3】第1の実施形態に係わるスピン偏極走査型トン
ネル顕微鏡の全体構成を示す図。
【図4】第4の実施形態に係わる再生装置の基本構成を
示す図。
【符号の説明】
11…従来の探針 12,32,62…カーボンナノチューブ 13,33,63…磁性電極 14…絶縁板 15,35…ピエゾ素子(駆動機構) 18,41…コイル(磁場発生機構) 20…試料 30,60…探針 40…STM制御部/信号処理部 43…トンネル電流増幅器 44…交流電源 45…位相検波増幅器 65…微小駆動部 67…大領域駆動部 69…細線(磁場発生機構) 70…磁気記録媒体

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】先端部から所定距離以内の領域に磁性電極
    を被着したカーボンナノチューブからなる探針と、前記
    磁性電極に対し交流磁場を印加して該磁性電極の磁化方
    向を周期的に変化させる磁場発生機構と、前記探針を試
    料表面に対して相対的に走査させる走査機構と、前記探
    針と試料との間に所定の電圧を印加するバイアス電圧源
    と、前記探針と試料との間に流れるトンネル電流を検出
    する電流検出機構と、前記トンネル電流の平均値が一定
    となるように前記探針を高さ方向に駆動する駆動機構
    と、前記磁化方向の変化に伴うトンネル電流の交流応答
    信号成分を抽出して試料表面の磁気スピン状態を検出す
    る磁気スピン検出機構とを具備してなることを特徴とす
    るスピン偏極走査型トンネル顕微鏡。
  2. 【請求項2】前記磁性電極材料は、Fe,Co,Ni,
    Cr,Mn,若しくはこれらの少なくとも一つを含む合
    金、又は化合物であることを特徴とする請求項1記載の
    スピン偏極走査型トンネル顕微鏡。
  3. 【請求項3】請求項1記載のスピン偏極走査型トンネル
    顕微鏡と、前記顕微鏡の探針で表面の磁気スピン状態が
    検出される磁気記録媒体とを具備してなることを特徴と
    する再生装置。
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