JP2004169135A - フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄 - Google Patents

フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄 Download PDF

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賢児 伊藤
Yoshio Igarashi
芳夫 五十嵐
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誠一 遠藤
Toru Iwanaga
徹 岩永
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Abstract

【課題】燃焼ガスにより常温から800℃を超える温度に繰り返し加熱される条件下での、耐酸化性、熱き裂寿命などの特性を向上でき、例えば、自動車エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケースなどの排気系部品や、焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品に適用できるフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を得る。
【解決手段】質量比で、C:1.8〜3.5%、Si:4.5〜8.0%、Cr:7.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有する球状黒鉛鋳鉄であり、3℃/分の加熱速度で昇温したときに、非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)が840℃以上である。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば、自動車エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケースなどの排気系部品や、焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品に適用できるフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケースなどの排気系部品には、鋳造性が良くまた低コストなSiを約4%含有する球状黒鉛鋳鉄が用いられてきていた。
【0003】
一方、基地組織がフェライト相主体の耐熱球状黒鉛鋳鉄として、C:2.7〜3.2%、Si:4.4〜5.0%、Mn:0.6%以下、Cr:0.5〜1.0%、Ni:0.1〜1.0%、Mo:1.0%以下、球状化処理剤:0.1%以下、残部を実質的にFeとすることで、Siの増量およびCr、Niの限定添加の効果により、150〜800℃といった繰り返し熱負荷を受ける環境下での耐酸化性、耐熱き裂性を向上し、自動車用エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルドなどの排気系部品に適用できるとする開示がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また別に、片状黒鉛鋳鉄として、C:3.2〜3.7%、Si:2.0〜2.4%、Mn:0.2〜0.8%、P:0.1%以下、S:0.1%以下、Cr:0.1〜0.4%、Ni:0.2〜0.6%、Mo:0.3〜0.6%、Sb(アンチモン):0.02〜0.05%、残部をFeとすることで、特にSbにより耐熱疲労性を向上してシリンダヘッド用材料に適用できるとする開示がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
また、球状黒鉛鋳鉄が適用できる限界温度は平衡状態のフェライト−オーステナイト変態温度(以下、「Ae1」という)に依存し、このAe1を高温側に上げるには、Si(珪素)やAl(アルミニウム)の添加が行われるが、Siを約4.5〜5.0%と多く含有させたり、または僅かにAl(アルミニウム)を添加すると、材料特性と鋳物の性質をかなり悪化させるとの記載がある(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−87796号公報(第2頁第1欄第2〜11行、第5頁第7欄第1〜15行)
【特許文献2】
特公平7−6032号公報(第1頁、第4頁)
【非特許文献1】
GIESSEREI−PRAXIS 5/2002(第159〜171頁)
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
さて、自動車エンジンの高性能化および環境規制の強化に伴い、排気ガス温度が上昇し、ターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケースなどの排気系部品においては、燃焼ガスにより常温から800℃を超える温度に繰り返し加熱される条件下での、耐酸化性、熱き裂寿命などの特性を向上することが求められている。
【0008】
従来のSiを約4%含有する球状黒鉛鋳鉄は、鋳造性が良くまた低コストに得ることが可能であるが、耐酸化性、熱き裂寿命に限界があり、排気ガスの高温化に対応することができない。一方、排気ガスの高温化に対応が可能なオーステナイト系球状黒鉛鋳鉄、フェライト系耐熱鋳鋼、オーステナイト系耐熱鋳鋼などからなる排気系部品は、高価なNi、Crなどの金属を多量に添加含有するためコストが高くなり、また鋳造性や被削性が球状黒鉛鋳鉄より劣るという問題がある。
【0009】
また、特許文献1に開示のような耐熱球状黒鉛鋳鉄は、800℃までの繰り返し熱負荷を受ける環境下での耐酸化性、熱き裂寿命はあるが、燃焼ガスにより常温から800℃を超える温度に繰り返し加熱される条件下での、耐酸化性、熱き裂寿命がまだ不足する。
【0010】
また、特許文献2に開示のような片状黒鉛鋳鉄は、黒鉛が球状化していないので、熱き裂寿命が短い。
【0011】
また、非特許文献1に記載のように球状黒鉛鋳鉄の限界温度を上げるために単にAe1を高くしても、燃焼ガスによる加熱速度でAe1が変化することがあり、Ae1のみでフェライト系球状黒鉛鋳鉄を得ることはできない。
【0012】
上述したように、Ae1は加熱速度で変化することがあるため、定量的にはいえないが、定性的には、一般的な球状黒鉛鋳鉄のAe1は730℃前後、Siを約4%含有する高Si球状黒鉛鋳鉄やSiに加えて、さらにMoを含有するMo含有高Si球状黒鉛鋳鉄でのAe1は800℃前後である。このため従来の球状黒鉛鋳鉄を、常温から800℃を超える温度に繰り返し加熱される条件下で使用される排気ガス温度の高い排気系部品に適用することは、熱き裂寿命の点で限界があった。
【0013】
本発明の課題は、燃焼ガスにより常温から800℃を超える温度に繰り返し加熱される条件下での、耐酸化性、熱き裂寿命などの特性を向上でき、例えば、自動車エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケースなどの排気系部品や、焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品に適用できるフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を得ることにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
排気系部品や燃焼用部品においては、加熱速度およびCやSiを中心とする合金配合割合に応じて変動する非平衡状態のフェライト−オーステナイト変態開始温度(以下、「Ac1」という)および非平衡状態のフェライト−オーステナイト変態終了温度(以下、「Acf」という)があり、冷却時にも非平衡状態のオーステナイト−フェライト変態開始温度(以下、「Ar1」という)および非平衡状態のオーステナイト−フェライト変態終了温度(以下、「Arf」という)があり、共に大きな内部歪みが発生し、熱き裂寿命に影響する。また、組成が一定であれば、加熱速度および冷却速度が大きくなると、Ae1に対してAc1は高くなり、一方、Ae1に対してAr1は低くなり、そして、加熱速度および冷却速度が大きくなればなるほど、Ae1と、Ac1およびAr1との差が大きくなる。
【0015】
そこで、本発明者らは、Ac1およびArfほかを熱機械分析装置(TMA)や変態点測定装置で正確に測定し、このAc1およびArfを800℃さらには840℃以上と高くするため、C、Si、Cr、Ni、Mo、SnおよびSbの少なくとも1以上と、黒鉛球状化元素、さらにCu、B、Biの少なくとも何れか1を適切に含有させ、必要に応じて基地組織をフェライト化する特殊な熱処理を施すことで、燃焼ガスにより常温から800℃を超える温度に繰り返し加熱される条件下での、耐酸化性、熱き裂寿命などの特性を向上でき、例えば、自動車エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケースなどの排気系部品や、焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品に適用できるフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄が得られるとの知見を得、本発明に想到した。
【0016】
すなわち、本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、質量比で、C:1.8〜3.5%、Si:4.5〜8.0%、Cr:7.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有することを特徴とする。
【0017】
本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄においては、質量比で、C:1.8〜3.5%、Si:4.5〜6.0%、Cr:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有することが好ましい。上記組成からなるフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、耐酸化性、熱き裂寿命、常温伸びが向上するので、例えば、自動車エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケースなどの排気系部品、または焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品に適用できる。
【0018】
また、本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄においては、質量比で、C:1.8〜3.5%、Si:5.0〜8.0%、Cr:1.5〜7.0%、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有することが好ましい。上記組成からなるフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、耐酸化性、熱き裂寿命が向上するので、例えば、焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品に適用できる。
【0019】
さらに、本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄においては、質量比で、さらに、Cu:2.0%以下、B:0.3%未満、およびBi:0.1%以下の少なくとも1以上を含有することが好ましい。
【0020】
また、本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、加熱速度に応じて変動する非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)を有するフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄であって、該フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を3℃/分の加熱速度で昇温したときに、前記フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)が840℃以上であることを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、質量比で、下記(1)〜(4)すなわち、(1)C:1.8〜3.5%、Si:4.5〜8.0%、Cr:7.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下、または(2)C:1.8〜3.5%、Si:4.5〜6.0%、Cr:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下、または(3)C:1.8〜3.5%、Si:5.0〜8.0%、Cr:1.5〜7.0%、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下、またはさらに、(4)前記(1)〜(3)に、Cu:2.0%以下、B:0.3%未満、およびBi:0.1%以下の少なくとも1以上を含有し、加熱速度に応じて変動する非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)を有するフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄であって、該フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を3℃/分の加熱速度で昇温したときに、前記フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)が840℃以上であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄においては、前記非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)が、前記フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を加熱して得られる温度と変位の関係から、前記変位を温度で微分した微分膨張変位線がフェライト側から乖離を始める温度であることを特徴とする。
【0023】
そして、本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、鋳造後、加熱速度に
応じた非平衡のフェライト−オーステナイト変態終了温度(Acf)以上に昇温して少なくとも1分間以上保持し、次いで非平衡のオーステナイト−フェライト変態開始温度(Ar1)以上の温度から非平衡のオーステナイト−フェライト変態終了温度(Arf)以下までを0.1〜20℃/分の冷却速度で冷却し、次いでマルテンサイト変態開始温度(Ms)より少なくとも50℃以上の温度域から空冷する、熱処理が施されていることが好ましい。
【0024】
次に、本発明での質量比、変態温度、熱処理ほかの限定理由を説明する。
【0025】
(1)C(炭素):1.8〜3.5%
Cは、溶湯の流動性や黒鉛の晶出に寄与する元素である。Cが1.8%未満では流動性が低下するとともに球状黒鉛を晶出することができず、一方、Cが3.5%を超えると黒鉛の球状化が困難となって粗大黒鉛が形成されて常温伸びが不足し、また鋳造時に引けが発生しやすくなる。したがって、Cは1.8〜3.5%、好ましくは2.0%〜3.1%とする。
【0026】
(2)Si(珪素):4.5〜8.0%
Siは、黒鉛の晶出に関与する元素であり、また基地をフェライトにする作用があり、さらに耐酸化性を向上させると共に、Ac1を上昇させる効果もある。
このためには、Siは4.5%以上必要である。一方、Siが8.0%を超えると基地が脆くなり、常温伸びの低下が顕著となり、また硬くなって被削性を悪くする。したがって、Siは4.5〜8.0%とする。なお、常温伸びが重要な排気系部品などにはSiは4.5〜6.0%が好ましく、また、特に耐酸化性が重要な燃焼用部品などにはSiは5.0〜8.0%が好ましい。
【0027】
(3)Cr:7.0%以下
Crは、材料表面付近に緻密なCr系酸化物を形成して耐酸化性を向上させ、かつAc1を上昇させる。しかし、Crが7.0%を超えて含有すると、M型の晶出炭化物が著しく多くなって材料が脆くなり、また材料の融点が高くなって溶解炉材の寿命を低下させ、さらに鋳造時の湯流れ性や被削性を低下させる。したがって、Crは7.0%以下とする。なお、常温伸びが重要な排気系部品などにはCrは2.0%以下が好ましく、また、特に耐酸化性が重要な燃焼用部品などにはCrは1.5〜7.0%が好ましい。
【0028】
(4)Ni:2.0%
Niを含有することにより材料の常温伸びを向上させる。一方、Niが2.0%を超えて含有すると、Ac1を低下させる。したがって、Niは2.0%以下、好ましくは0.01〜2.0%とする。
【0029】
(5)Mo:2.0%以下
Moは、鋳鉄基地中において炭素(C)と化合して析出炭化物を形成し、また平均熱膨張係数を小さくして、高温域における熱応力の発生を低くして高温強度を向上する。一方、Moが2.0%を超えて多量に含有すると、Ac1が低下して、熱き裂寿命を低下させ、また炭化物が増加して常温伸びと被削性を低下させる。したがって、Moは2.0%以下とする。
【0030】
(6)(2Sn+Sb):0.5%以下
Sn、Sbは、何れも黒鉛の粒数を増加しまた球状化を向上させ、黒鉛粒数を増加することで元素の偏析が緩和されて、Siの含有量を多くしても常温伸びの低下を抑えることができる。また、Sn、Sbは、材料の内部酸化による黒鉛の酸化脱落を防止し、結果として材料の耐酸化性を向上する効果もある。このメカニズムは現在のところ必ずしも明確ではないが、Sn、Sbは、黒鉛と基地組織の界面の基地組織側に濃化して、黒鉛から基地中へのCの拡散することと、基地に侵入した酸素が黒鉛と酸化反応を起すことを抑制するためと推察される。一方、(2Sn+Sb)が0.5%を超えると、共晶セル境界に燐片状の異常黒鉛を生成して靱性の低下を招いたり、内部酸化を助長する。SbはSnに対してこれらの効果を2倍もっていることから、(2Sn+Sb)は0.5%以下、好ましくは0.001%〜0.5%、さらに好ましくは0.001〜0.2%とする。
【0031】
(7)Cu:2.0%以下
Cuは、Niと同様、材料の延性を向上させるため、必要に応じて含有させる。一方、Cuが2.0%を超え含有するとAc1を低下させ、耐酸化性と熱き裂寿命を低下させる。したがってCuは2.0%以下とする。
【0032】
(8)B:0.3%未満
Bは、Crの炭化物を安定化させる効果があり、さらに鋳造後に熱処理を施すと常温伸びを向上させる効果があるため、必要に応じて含有させる。一方、Bが0.3%以上含有すると、黒鉛の球状化を著しく阻害して球状化不良を招く。したがって、Bは0.3%未満、好ましくは0.0001〜0.3%未満、さらに好ましくは0.0001〜0.1%とする。
【0033】
(9)Bi:0.1%以下
Biは、黒鉛粒数を増加させ、黒鉛組織を緻密化して被削性を向上させる効果があるため、必要に応じて含有させる。一方、Biを0.1%を超えて含有しても効果の拡大はなく、製造コストを上昇させる。したがって、Biは0.1%以下、好ましくは0.00001〜0.01%とする。
【0034】
(10)球状化処理元素:0.1%以下
黒鉛を鋳放しで球状に晶出させて、常温伸び、高温耐力ほかの特性を向上させるため、純Mg、Fe−Si−Mg合金などのMg系の球状化処理元素、またはCa系の球状化処理元素を0.1%以下、好ましくはMgを0.020〜0.080%含有させる。
【0035】
(11)Mn、P、S
なお、Mnは、共晶セル境界に偏析して、この部分のAc1を下げて、熱き裂寿命を低下させるため、1.0%以下が良い。また、Pは、黒鉛の球状化に有害であるとともに、結晶粒界に析出して耐酸化性を低下させるので、0.08%以下が良い。また、Sは、黒鉛の球状化に有害であり、0.025%以下が良い。
【0036】
(12)Ac1が840℃以上
前述したとおり、排気系部品や燃焼用部品においては、加熱速度およびCやSiを中心とする合金配合割合に応じて変動するAc1およびAcfがあり、冷却時にもAr1、Arfがあり、共に大きな内部歪みが発生して、熱き裂寿命に影響する。また、組成が一定であれば、加熱速度および冷却速度が大きくなると、Ae1に対して、Ac1は高く、一方、Ar1は低くなり、そして、加熱速度および冷却速度が大きくなればなるほど、Ae1との差が大きくなる。
【0037】
そして、熱き裂寿命を大きく向上させるためには、排気系部品や燃焼用部品が受ける最高加熱温度よりも、排気系部品や燃焼用部品の材料のAc1を常に高くなるようにする必要がある。しかし、Ae1をもとにAc1を設定すると、使用温度がAc1に近く、これを超えないようにするため、余分な元素を含有させたり、高級な材料を使用する必要が生じる。このように、不正確な測定に基づくAc1で組成を決めようとすると、工業的損失が多くなる。
【0038】
そこで、Ac1ほかを例えば以下のようにして、正確に測定する。
図1は、熱機械分析装置(TMA)の一例のブロック線図である。電気炉23中には試料21と標準試料22がセットされ、これが支持管24と検出棒25、26からなる試料ホルダ27で支えられている。支持管24は固定され、検出棒25、26の下端は天秤28、29により試料21と標準試料22に押し付けられている。試料21に押し付けられている天秤28には差動トランス32のコア30とコイル31が取り付けられている。コイル31は標準試料22に押し付けられている検出棒26に固定されている。試料21には荷重制御回路33より制御された制御コイル34とマグネット35で生じる電磁荷重36aが、一方、標準試料22には分銅36の加除により任意の荷重を設定している。
【0039】
PTC37により電気炉23の温度が制御され、制御回路38により一定速度で昇温すると試料21と標準試料22が同時に膨張し、試料21は検出棒25を押し上げ、差動トランス32を移動させる。差動トランス32のコア30とコイル31の相対位置の変化は、試料21と標準試料22の熱膨張の差、すなわち示差膨張となり、TMA回路39により電気信号としてデータが取り出されれる。
そして、このデータは制御回路38からCPU40に送られ、プロッタ41により温度―変位線図として出力される。同時に、CPU40内に温度−変位データが電子情報として記憶される。
【0040】
熱機械分析装置(TMA)を用いて得られた温度−変位線図から、変態温度を決定する方法として、従来は交線法が用いられている。図2は、熱機械分析装置(TMA)を用いて試料を加熱冷却するときの温度−変位線図であり、(a)は加熱時の温度−膨張変位、(b)は冷却時の温度−収縮変位を示す。先ず、図2(a)で、加熱時のフェライト−オーステナイト変態開始時に生じる変曲点を挟む膨張曲線に接線11、12を引き、その交点位置(イ)をAc1とする。同様に12と13の交点(ロ)をAcfとする。次に、図2(b)で、冷却時のオーステナイト−フェライト変態開始時に生じる変曲点を挟む収縮曲線に接線14、15を引き、その交点位置(ハ)をAr1とする。同様に15と16の交点(ニ)をArfとする。
【0041】
ところで、一般的に鋳造材料からなる試料は、組織内の偏析や変態したオーステナイト相への合金元素の溶け込み等により局所的に合金元素の含有量にばらつきがあるため、試料の加熱時に生じるフェライト−オーステナイト相変態は、一定温度で一気に生じず、温度の推移に伴い除々に起こっている。したがって、相変態に伴う試料の寸法変化は、変態開始時には、フェライト相においてほぼ直線的に変化している温度―変位線図から除々に乖離し、変態終了時には、オーステナイト相においてほぼ直線的に変化している温度―変位線図に除々に合流することになる。同様に冷却時に生じるオーステナイト−フェライト変態も一定温度で一気に生じず、温度の推移に伴い除々に起こり、相変態に伴う試料の寸法変化は、変態開始時には、オーステナイト相においてほぼ直線的に変化する温度―変位線図から除々に乖離し、変態終了時には、フェライト相においてほぼ直線的に変化する温度―変位線図に除々に合流することになる。
【0042】
しかしながら、温度―変位線図からの乖離点を求めることは変化が微小であるために、誤差が大きくなる。排気系部品や燃焼用部品などは変態温度を超えると、熱き裂寿命が格段に低下するため、より正確な変態開始温度を見出す必要がある。また、交線法により決定される加熱時のAc1、Acfは、実際の加熱保持温度よりも低い温度を示し、さらに、冷却時のAr1、Arfに基づく相変態温度幅は、実際の相変態温度幅よりも狭い温度幅を示す。そして、このような条件で排気系部品や燃焼用部品に熱処理を施してみても、安定した基地組織を得ることができず、熱き裂寿命を短くし、また常温伸びの低下や被削性の悪化を招くことがある。
【0043】
そこで、温度−変位データから、変位を温度で微分した微分変位線図により、加熱時におけるAc1、Acf、および冷却時におけるAr1、Arfを導き出す。図3は、微分変位比例限法によるAc1、Acf、Ar1、Arfを求める説明図であり、(a)は加熱時の温度−微分膨張変位、(b)は冷却時の温度−微分収縮変位を示す。図2(a)で、フェライト−オーステナイト変態が生じると熱膨張量が変化するので、前述した図2(a)の温度−膨脹変位から変位を温度で微分すると、図3(a)に示すフェライト側一定値17から乖離する点(ホ)があり、この温度を正確なAc1とする。同様に、オーステナイト側一定値18へ合流する点(ヘ)があり、この温度を正確なAcfとする。また、図2(b)の温度−収縮変位から変位を温度で微分すると、図3(b)に示すオーステナイト側一定値19から乖離する点(ト)があり、この温度をAr1とし、フェライト側一定値20へ合流する点(チ)の温度をArfとする。
【0044】
上述のように、温度−微分膨脹変位または温度−微分収縮変位を用いた変態温度解析法(これを「微分変位比例限法」と呼ぶ)により、従来、求めることが困難とされていたAc1、Acf、Ar1、Arfを正確にかつ再現性良く求めることができる。
【0045】
ところで、加熱速度を変化させてのAc1ほかは、全自動変態点測定装置によっても正確にかつ再現性良く求めることができる。図4は、全自動変態記録測定装置の一例のブロック線図である。図4で、プログラム設定部45で加熱時間対温度のプログラムを設定する。この条件は、温度記録部42を介してPID制御部43に入る。そして、PID制御部43はプログラムを高周波加熱ユニット44に与え、試験片21を高周波加熱装置44aで加熱する。加熱、冷却速度の制御は、熱電対47の信号を温度記録部42が電気信号に変換し、PID制御部43がその信号をもとに高周波加熱ユニット44および冷却制御部45aを制御して行われる。
【0046】
高周波加熱装置44aにより、試験片21は、(a)前述した加熱速度のうちの一つの加熱速度でもって、(b)室温から所定の温度、例えば1000℃付近まで加熱され、(c)任意の時間、例えば10分間保持後、(d)冷却制御部45aによる制御でもって冷却ノズル46の先端より冷却気体が放出され、室温まで前述した加熱速度と同等の冷却速度のうち一つの冷却速度でもって冷却される。(e)加熱、冷却中の試験片の膨張、収縮量は検出用の石英管48を介して、1200Hzの差動変圧器を用いた変位検出部49により125倍〜5000倍に拡大され、(f)温度変化と共に2ペン記録計50で記録され、解析される。
全自動変態記録測定装置のデ−タによるAc1ほかの解析手法は基本的には、前述の図1に示す熱機械分析装置(TMA)における測定結果の解析に使用した微分変位比例限法である。また、計測された変態温度は、加熱速度や合金成分配合割合が等しければ、同じ結果が得られる。
【0047】
図5は、加熱・冷却速度と非平衡変態温度(Ac1、Acf、Ar1、Arf)の関係を示す図である。図5から、加熱速度が大きく(右側に)なるに従い、Ae1を基準にしてAc1、Acfは高温側にシフトしている。また、冷却速度が大きくなるに従い、Ae1を基準にしてAr1、Arfは低温側にシフトしている。このことから、材料設計や熱処理条件の設定等に当っては、従来行われてきたAe1を基準とするのではなく、正確に実測されたAc1、Acf、Ar1、Arfを基準に実施しなければならないことがわかる。
【0048】
そして、自動車エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケースなどの排気系部品においては、球状黒鉛鋳鉄を3℃/分の加熱速度で昇温したときに、Ac1が840℃以上であれば、燃焼ガスにより常温から800℃を超える温度に繰り返し加熱される条件下での、熱き裂寿命が確保される。
【0049】
(13)熱処理
Siを4.5〜8.0%含有する球状黒鉛鋳鉄は、鋳放しではシリコフェライトと呼ばれる硬くてもろい基地組織中に介在物が偏析して組織的に不均一であり、常温伸びが小さく、被削性も悪い。また、CrやMoを含有すると、基地組織にパーライトや晶出炭化物を生じて、常温伸び、被削性をさらに低下させる。そこで、必要に応じて、フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を、鋳造後、加熱速度に応じたAcf以上に昇温して少なくとも1分間以上保持し、次いで、Ar1以上の温度から、Arf以下までを0.1〜20℃/分の冷却速度で冷却し、次いで、マルテンサイト変態開始温度(Ms)より少なくとも50℃以上の温度域から空冷する、熱処理を施す。
【0050】
オーステナイト化処理のための加熱温度は、安定した相変態を起こさせるため、加熱速度に応じたAcf以上を必要とする。また加熱保持時間は、被熱処理品の肉厚、形状、合金成分に依存するが、完全なオーステナイト化処理を行なうには少なくとも1分以上必要である。
【0051】
フェライト化処理のための除冷を開始する温度は、相変態を起こさせるためにAr1以上の温度を必要とする。フェライト化処理のための冷却を終了する温度は、相変態を起こさせるためにArf以下の温度を必要とする。また、20℃/分を超える冷却速度で冷却すると、球状黒鉛鋳鉄の温度が追随できず熱処理が困難になる。一方、0.1℃/分未満の冷却速度で冷却すると、熱処理に時間がかかりすぎて生産性が悪い。さらにマルテンサイト変態開始温度(Ms)より少なくとも50℃以上高い温度域から空冷することにより、基地組織のマルテンサイト化を防ぎ、常温伸びが大きくなり、また被削性も改善される。
【0052】
【発明の実施の形態】
次に、発明の実施の形態を詳細に説明する。
【0053】
表1(表1−1と表1−2)に示す化学組成[質量比(%)]の球状黒鉛鋳鉄を、100kg用高周波炉(SiOライニング)を用いて大気溶解し、1450℃以上で出湯した後、直ちに1300℃以上でYブロック型に注湯して供試材を作製した。表1で、発明例1〜21は本発明の組成範囲内にある供試材であり、このうち発明例1〜11および発明例20〜21は排気系部品に適したフェライト耐熱球状黒鉛鋳鉄、発明例12〜19は燃焼用部品などに適したフェライト耐熱球状黒鉛鋳鉄である。一方、比較例1〜9は本発明の組成範囲外にある供試材であり、比較例1は一般的な(JIS)FCD400、比較例2はMo含有高Si球状黒鉛鋳鉄(Hi−SiMo)、比較例3は高Si球状黒鉛鋳鉄(Hi−Si)、比較例4はオーステナイト系球状黒鉛鋳鉄(ニレジストD2)である。
また、比較例10は、発明例6と同じ組成で、後述する本発明例とは異なる熱処理を施した供試材を示す。表1で残部が「実質Fe」とは、残部が実質的にFeおよび不純物であることを示す。
【0054】
【表1】
Figure 2004169135
Figure 2004169135
【0055】
(1)Ac1測定
次に、事前に正確なAc1、Acf、Ar1、Arfを測定した。先ず、発明例1〜21、比較例1〜10から、直径5mm×長さ20mmの試料を作製した。そして、図1に示すように熱機械分析装置[例えば、理学電機(株)製の商品名TAS200]内に試料21をセットし、試料21を3℃/分の加熱速度の条件で700℃から1000℃まで加熱し、試料21の熱膨張量の推移を試料21の上端部に接触させた検出棒25の移動量として捉え、図2(a)の加熱時の温度−膨張変位、および図2(b)の冷却時の温度−収縮変位のデータを得た。次に、図2(a)の加熱時の温度−膨張変位のデータから、変位を温度で微分して、図3(a)でのフェライト側一定値17から乖離する点(ホ)すなわち正確なAc1と、オーステナイト側一定値18へ合流する点(ヘ)すなわち正確なAcfを得た。また、図2(b)の冷却時の温度−膨張変位のデータから、変位を温度で微分して、図3(b)でのオーステナイト側一定値19から乖離する点(ト)すなわち正確なAr1と、フェライト側一定値20へ合流する点(チ)すなわち正確なArfを得た。表2に、Ac1(℃)を示す。
【0056】
表2に示すように、発明例1〜21は、Ac1が何れも840℃以上であったのに対し、比較例1〜4、7は、Ac1が840℃未満であった。なお、一例として、発明例6および比較例10は、図3(a)に示すように、Ac1が856℃で、Acfは971℃、また図3(b)に示すように、Ar1が915℃、Arfが779℃であった。なお、図示しないがAe1はほぼ861℃であった
【0057】
(2)熱処理
次いで、発明例1〜21、および比較例1〜8に対して熱処理を行った。この熱処理は、発明例1〜21については、前述した通り、各々の供試材について正確に測定したAc1、Acf、Ar1、Arfを基準にして実施した。
【0058】
一例として、発明例6での熱処理について説明する。まず、加熱速度を10.0℃/分としてAcf(971℃)以上の975℃まで加熱し、10分間保持した後、20.0℃/分の冷却速度で除冷開始温度まで冷却した。除冷開始温度はAr1(915℃)よりも10℃高く、除冷終了温度はArf(779℃)よりも10℃低い温度として、除冷開始から除冷終了までの除冷温度幅を925℃〜769℃と設定し、その間を冷却速度10.0℃/分で除冷し、次いで768℃以下の温度でマルテンサイト変態開始温度(Ms)より少なくとも50℃以上の温度から空冷処理した。なお、熱処理制御の都合上、除冷開始温度を加熱保持温度とし、975〜769℃を除冷温度幅として設定してもよいことがわかった。
【0059】
なお、表2で、発明例1a、6a、8a、13a、14a、17a、19a、21aは、それぞれ、発明例1、6、8、13、14、17、19、21と同じ組成であるが、熱処理を施さないものを示す。
【0060】
また、表2で比較例10の(*)は、発明例6と同じ組成でAe1をもとに熱処理をしようとしたが完全なオーステナイト化処理ができず、本発明例の供試材とは異なる便宜的な熱処理を施したものを示す。すなわち、比較例10については、従来のAe1(861℃)を基準にして、フェライト化処理温度幅を発明例6と同じにして熱処理を施そうとした。しかしながら、加熱速度を10.0℃/分としてAe1(861℃)より50℃高い911℃まで加熱しても、Acf(971℃)より低く、完全なオーステナイト化処理ができない。このため、便宜的に、発明例6と同じにして加熱速度を10.0℃/分として975℃まで加熱した後10分間保持し、次いでAe1(861℃)よりも50℃高い911℃からAe1(861℃)よりも50℃低い811℃まで、冷却速度10.0℃/分で冷却した後、810℃以下の温度で空冷する、熱処理を施した。
【0061】
図7は熱処理の有無を比較した金属組織顕微鏡写真を示し、(a)は発明例6の熱処理前の鋳放し材、(a)は発明例6の熱処理後、(c)は比較例10の熱処理後をそれぞれ示す。図7(a)(b)から、熱処理を施すことで、介在物の析出が少なく安定した組織となっていることがわかる。一方、図7(c)の発明例6と同じ組成だが、本発明例の供試材とは異なる便宜的な熱処理を施した比較例10では、完全なオーステナイト化処理ができず、未溶解の介在物およびパーライトの析出が認められる。
【0062】
次に、各供試材に対して以下に示す各種の評価試験を行った。
【0063】
(3)耐酸化性
排気系部品は、エンジンからの排気ガスに含まれる硫黄酸化物、窒素酸化物などの酸化物に直接曝されるため、耐酸化性が要求される。また、焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品においても、長時間にわたり酸化雰囲気に曝されるため耐酸化性が要求される。排気ガスや酸化雰囲気に曝される排気系部品や燃焼用部品を考慮し、排気ガス−メタル間の熱伝達を考慮して、840℃の温度での耐酸化性を評価した。耐酸化性は、発明例1〜21(発明例1a、6a、8a、13a、14a、17a、19a、21aを含む)および比較例1〜10から、直径10mm、長さ20mmの丸棒試験片を作製し、丸棒試験片の雰囲気の温度840℃の加熱保持炉において200時間大気中に保持し、取り出し後にショットブラスト処理を施して酸化スケールを除去し、酸化試験前後の単位面積あたりの質量変化、すなわち酸化減量(mg/cm)を求めることで評価した。その結果を表2に示す。
【0064】
【表2】
Figure 2004169135
【0065】
表2に示すとおり、発明例1〜21(発明例1a、6a、8a、13a、14a、17a、19a、21aを含む)は、酸化減量が21〜59mg/cmと少なく、耐酸化性が優れていることがわかる。一方、比較例1〜4、6、7、9は、酸化減量が63〜239mg/cmと多く、発明例1〜21に比較して耐酸化性が劣っていることがわかる。比較例5は、酸化減量が38mg/cmと少なくて耐酸化性は良かったが、Mo含有量が3.25%と多いためにAc1が846℃と低下し、後述する熱き裂寿命が短くなっている。比較例8は、酸化減量が19mg/cmと少なくて耐酸化性は良いが、後述する熱き裂寿命が短くなっている。比較例10は、酸化減量が42mg/cmと少なくて耐酸化性は良かったが、後述する熱き裂寿命が短くなっている。
【0066】
(4)熱き裂寿命
排気系部品においては、エンジンの運転と停止の繰り返しにより生じる熱き裂寿命が要求される。この熱き裂寿命を評価するため、発明例1〜21(発明例1a、6a、8a、13a、14a、17a、19a、21aを含む)、および比較例1〜10から、標点間距離が20mm、標点間の直径が10mmの丸棒試験片を切り出し、この丸棒試験片を電気−油圧サーボ方式の熱疲労試験機にセットして、下限温度を150℃、上限温度を840℃、各1サイクルを7分とした加熱冷却サイクルを繰り返し、この加熱冷却に伴う伸び縮みを機械的に拘束し、拘束率0.5の条件で熱疲労破壊を起こさせた。なお、拘束率とは(自由熱膨張伸び−機械的拘束下の伸び)/(自由熱膨張伸び)を表し、例えば、拘束率1.0とは、試験片が例えば150℃から840℃まで加熱されたときに、全く伸びを許さない機械的拘束条件をいう。また拘束率0.5とは、自由膨張伸びが例えば2mm伸びるところを1mmの伸びしか許さない機械的拘束条件をいう。
【0067】
熱き裂寿命の試験結果を表2に示す。また、図6に、表2でのAc1(℃)と熱き裂寿命(サイクル)の関係を示す。表2から、発明例1〜21および発明例1a、6a、8a、13a、14a、17a、19a、21aは、熱き裂寿命が522〜1201サイクルと長いことがわかる。一方、比較例1〜10は熱き裂寿命が83〜522サイクルであり、発明例1〜21(発明例1a、6a、8a、13a、14a、17a、19a、21aを含む)に比べて短いことがわかる。図6からも、発明例1〜21が、比較例1〜10よりも熱き裂寿命に優れていることがわかる。
【0068】
(5)常温伸び
発明例1〜21(発明例1a、6a、8a、13a、14a、17a、19a、21aを含む)、および比較例1〜10から(JIS Z 2201)に基づく4号試験片を作製し、アムスラー引張試験機で25℃における常温伸び(%)を測定した。その結果を表2に示す。
【0069】
表2から、発明例1〜11、16〜21、および発明例1a、6a、8a、17a、21aは、常温伸びが2.0%以上である。発明例16〜21は、Cu、B、Biの少なくとも1以上を含有することで、常温伸びが安定している。但し、Cuを2%を超えて含有した比較例9は、発明例1〜21に比較して酸化減量が多く耐酸化性が悪い。発明例12〜15、および発明例13a、14a、19aは、常温伸びが2%未満であるが、耐酸化性と熱き裂寿命に優れているので、焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品に適用できる。
【0070】
【実施例】
図8は、エキゾーストマニホルド11、ターボチャージャーハウジング12、触媒ケース14を含む排気系部品の斜視図である。エンジン(図示せず)からの排気ガス(矢印Aで示す)をエキゾーストマニホルド11で集合させ、排気ガスの運動エネルギーでターボチャージャーハウジング12内のタービン(図示せず)を回転させ、このタービンと同軸の圧縮機を駆動して吸入した空気(矢印Bで示す)を圧縮し、高密度の空気をエンジンに供給する(矢印Cで示す)ことにより、エンジンの出力を高めるものである。一方、ターボチャージャーハウジング12からの排ガス中の有害物質は、接続部13を経由して触媒ケース14内の触媒により削減して、消音マフラー15を経由して大気中に放出(矢印Dで示す)する。エキゾーストマニホルド11、ターボチャージャーハウジング12、接続部13、および触媒ケース14には、排気ガス通路が形成されており、排気ガス通路の主要部肉厚はエキゾーストマニホルド11が2.0〜4.5mm、ターボチャージャーハウジング12が2.5〜5.5mm、接続部13が2.5〜3.5mm、触媒ケース14が2.0〜2.5mmで、複雑な形状をしている。
【0071】
エキゾーストマニホルド11を発明例6の組成で鋳造した後、事前に合金配合元素と加熱、冷却速度に基づき実測したAc1、Acf、Ar1、Arfに応じた熱処理を施し、その後、機械加工を実施した。フェライト基地中には、モリブデンを主体とする炭化物(MoC)が析出していたが、エキゾーストマニホルド11に機械加工を施して被削性の評価を行っても何ら問題は生じなかった。さらに、ターボチャージャーハウジング12や触媒ケース14も、エキゾーストマニホルド11と同様に、発明例6の組成で鋳造、熱処理を施した。
【0072】
なお、型分割(見切り)や造型など鋳造での製造が可能であれば、ターボチャージャーハウジング12とエキゾーストマニホルド11とを鋳造時に一体としたターボチャージャーハウジング一体エキゾーストマニホルドや、ターボチャージャーハウジング12を中間に介在しない場合、触媒ケース14とエキゾーストマニホルド11を鋳造時に一体とした触媒ケース一体エキゾーストマニホルドとすることもできる。
【0073】
次に、直列4気筒で排気量2000cc相当の高性能ガソリンエンジンの排気ガス発生を模した排気シミュレータに、エキゾーストマニホルド11を組み付け、耐久試験を実施した。試験条件として、加熱10分、冷却10分を1サイクルとする加熱冷却サイクルを1000サイクルまで実施した。全負荷時の排気ガス温度は、エキゾーストマニホルド11の出口温度で920℃であった。この条件下でのエキゾーストマニホルド11の表面温度は、エキゾーストマニホルド11の集合部で約840℃であった。
【0074】
図9は、発明例6の組成で作製し熱処理を施したエキゾーストマニホルド11の耐久試験734サイクル後の外観模式図である。図9に示すように、特に高温の排気ガスが通過する集合部11cにおいても酸化が少なく熱き裂は発生せず、また熱変形によるガスの漏洩も無く、優れた耐久性および信頼性を有することが確認された。なお、図9で、11aは取付フランジ、11bは枝管、11dは枝管の交差部である。
【0075】
一方、比較例2の組成(Mo含有高Si球状黒鉛鋳鉄)で鋳造、加工、熱処理したエキゾーストマニホルド11を同じ排気シミュレータに組み付け、耐久試験を実施した。図10は、比較例2の組成で作製し熱処理を施したエキゾーストマニホルド11の耐久試験473サイクルの外観模式図である。図10に示すように、集合部11cと、枝管の交差部11dに大きなき裂16が発生していた。
以上のことから、発明例6の組成で作製したエキゾーストマニホルド11は、耐熱き裂性に優れていることが確認できた。
【0076】
なお、実施の形態および実施例では自動車用の排気系部品について説明したが、本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品にも適用可能である。
【0077】
【発明の効果】
以上、詳細に説明のとおり、本発明のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、燃焼ガスにより常温から800℃を超える温度に繰り返し加熱される条件下での、耐酸化性、熱き裂寿命などの特性を向上でき、例えば、自動車エンジン用のターボチャージャーハウジング、エキゾーストマニホルド、触媒ケースなどの排気系部品や、焼却炉用や熱処理炉用の炉床や台車などの燃焼用部品に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱機械分析装置(TMA)の一例のブロック線図である。
【図2】熱機械分析装置(TMA)を用いて試料を加熱冷却するときの温度−変位線図であり、(a)は加熱時の温度−膨張変位、(b)は冷却時の温度−収縮変位を示す。
【図3】微分変位比例限法による、非平衡状態のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)、非平衡状態のフェライト−オーステナイト変態終了温度(Acf)、非平衡状態のオーステナイト−フェライト変態開始温度(Ar1)、非平衡状態のオーステナイト−フェライト変態終了温度(Arf)を求める説明図であり、(a)は加熱時の温度−微分膨張変位、(b)は冷却時の温度−微分収縮変位を示す。
【図4】全自動変態記録測定装置の一例のブロック線図である。
【図5】加熱・冷却速度と、非平衡状態のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)、非平衡状態のフェライト−オーステナイト変態終了温度(Acf)、非平衡状態のオーステナイト−フェライト変態開始温度(Ar1)、非平衡状態のオーステナイト−フェライト変態終了温度(Arf)の関係を示す図である。
【図6】表2でのAc1(℃)と熱き裂寿命(サイクル)の関係を示す図である。
【図7】熱処理の有無を比較した金属組織顕微鏡写真を示し、(a)は発明例6の熱処理前の鋳放し材、(a)は発明例6の熱処理後、(c)は比較例10の熱処理後をそれぞれ示す。
【図8】エキゾーストマニホルド11、ターボチャージャーハウジング12、触媒ケース14を含む排気系部品の斜視図である。
【図9】発明例6の組成で作製し熱処理を施したエキゾーストマニホルド11の耐久試験734サイクル後の外観模式図である。
【図10】比較例2の組成で作製し熱処理を施したエキゾーストマニホルド11の耐久試験473サイクル後の外観模式図である。
【符号の説明】
11:エキゾーストマニホルド
11a:取付フランジ
11b:枝管
11c:集合部
11d:枝管の交差部
12:ターボチャージャーハウジング
13:接続部
14:触媒ケース
15:消音マフラー
16:き裂
21:試料(試験片)
22:標準試料
23:電気炉
24:支持管
25、26:検出棒
27:試料ホルダ
28、29:天秤
30:コア
31:コイル
32:差動トランス
33:荷重制御回路
34:制御コイル
35:マグネット
36:分銅
36a:電磁荷重
37:PTC
38:制御回路
39:TMA回路
40:CPU
41:プロッタ
42:温度記録部
43:PID制御部
44:高周波加熱ユニット
44a:高周波加熱装置
45:プログラム設定部
45a:冷却制御部
46:冷却ノズル
47:熱電対
48:石英管
49:変位検出部
50:2ペン記録計

Claims (8)

  1. 質量比で、C:1.8〜3.5%、Si:4.5〜8.0%、Cr:7.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有することを特徴とするフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
  2. 質量比で、C:1.8〜3.5%、Si:4.5〜6.0%、Cr:2.0%以下、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有することを特徴とするフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
  3. 質量比で、C:1.8〜3.5%、Si:5.0〜8.0%、Cr:1.5〜7.0%、Ni:2.0%以下、Mo:2.0%以下、(2Sn+Sb):0.5%以下、黒鉛球状化元素:0.1%以下を含有することを特徴とするフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
  4. 質量比で、さらにCu:2.0%以下、B:0.3%未満、およびBi:0.1%以下の少なくとも1以上を含有することを特徴とする請求項1乃至請求項3何れかに記載のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
  5. 加熱速度に応じて変動する非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)を有するフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄であって、該フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を3℃/分の加熱速度で昇温したときに、前記フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)が840℃以上であることを特徴とするフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
  6. 加熱速度に応じて変動する非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)を有するフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄であって、該フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を3℃/分の加熱速度で昇温したときに、前記フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄の非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)が840℃以上であることを特徴とする請求項1乃至請求項4何れかに記載のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
  7. 前記非平衡のフェライト−オーステナイト変態開始温度(Ac1)は、前記フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄を加熱して得られる温度と変位の関係から、前記変位を温度で微分した微分膨張変位線がフェライト側から乖離を始める温度であることを特徴とする請求項5または請求項6に記載のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
  8. 前記フェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄は、鋳造後、加熱速度に応じた非平衡のフェライト−オーステナイト変態終了温度(Acf)以上に昇温して少なくとも1分間以上保持し、次いで非平衡のオーステナイト−フェライト変態開始温度(Ar1)以上の温度から非平衡のオーステナイト−フェライト変態終了温度(Arf)以下までを0.1〜20℃/分の冷却速度で冷却し、次いでマルテンサイト変態開始温度(Ms)より少なくとも50℃以上の温度域から空冷する、熱処理が施されていることを特徴とする請求項1乃至請求項7何れかに記載のフェライト系耐熱球状黒鉛鋳鉄。
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