JP2004168916A - 熱硬化型塗料、その塗装方法及びその塗装物 - Google Patents
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Abstract
【課題】1種類の塗料で多数の樹脂系対応が図れ、さらに、防錆力、凹凸の修正および美観の機能を備え、厚い塗膜を形成できる塗装物の塗装方法および熱硬化型塗料を提供する。
【解決手段】塗装物の金属材料1に対して、塗装に適した表面状態にするため、リン酸亜鉛被膜といった化学的処理やサンドブラスト処理といった機械的前処理を実施し、塗装を行うのに適した表面状態にしてから、アルキド樹脂30〜45重量%、メラミン樹脂5〜20重量%、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、二酸化珪素、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム、ベントナイトおよびモノカルボン酸アミド系有機物を含有した熱硬化型塗料で10〜250μmの厚さの熱硬化型塗膜2を形成し、110〜160℃で10〜60分加熱硬化させて塗装物を塗装する。
【選択図】図1
【解決手段】塗装物の金属材料1に対して、塗装に適した表面状態にするため、リン酸亜鉛被膜といった化学的処理やサンドブラスト処理といった機械的前処理を実施し、塗装を行うのに適した表面状態にしてから、アルキド樹脂30〜45重量%、メラミン樹脂5〜20重量%、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、二酸化珪素、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム、ベントナイトおよびモノカルボン酸アミド系有機物を含有した熱硬化型塗料で10〜250μmの厚さの熱硬化型塗膜2を形成し、110〜160℃で10〜60分加熱硬化させて塗装物を塗装する。
【選択図】図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化型塗料、その塗装方法及びその塗装物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の塗装物の金属部分の塗装方法は、前処理実施後に防錆顔料を含有するエポキシ樹脂系、エポキシ樹脂およびメラミン樹脂等から構成される防錆力のある下塗り塗料で塗膜を形成した。塗膜形成後、熱硬化型である場合は120℃以上で加熱硬化を行っていた。その後、必要に応じて下塗り塗装と相性のいい同系の中塗り塗料や凹凸を平滑にするためのスプレーパテで塗膜を形成し、熱硬化型である場合は120℃以上で加熱硬化を行っていた。さらに、美観が得られる熱硬化型メラミン樹脂系エナメルやアクリル樹脂系エナメルの上塗り塗料等で塗膜を形成し、120℃以上で加熱硬化を行っていた。
また、例えば、メラミン樹脂塗装、エポキシ樹脂塗装、アクリル樹脂塗装のように塗装品に塗装を実施する場合、各々塗装指定があるため、指定に合った塗装系の下塗り(中塗り)、上塗りを別々に用意し、塗装を行なっていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−241048号公報
【発明が解決しようとする課題】
塗装物の金属部分の塗装は、防錆に重点をおいた下塗り塗料、美観に重点をおいた上塗り塗料と防錆のためと美観のために別々の塗料を用意しなければならなかった。
さらに、場合によっては防錆性も有しながら上塗りの美観を持たせるための下地としての中塗り塗料やスプレーパテを塗装しなければならなかった。下塗り塗料の塗装、中塗り塗料やスプレーパテの塗装、上塗り塗料の塗装と塗装するごとに長期的な塗膜耐久性が得るため熱硬化を実施しなければならなかった。
また、塗装系の指定があるため、限定された指定樹脂塗料で塗装しなければならなかった。
また、一回の塗装で80μm以上の塗装を実施すると、硬化中に溶剤分が沸騰してわき(ピンホール)が発生する塗膜欠陥が生じ、だれを生じる可能性が大きくなる。
本発明は、1種類の塗料で多数の樹脂系対応が図れ、さらに、防錆力、凹凸の修正および美観の機能を備え、厚い塗膜を形成できる塗装物の塗装方法および熱硬化型塗料を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明においては、塗装物の金属部材に、アルキド樹脂30〜45重量%、メラミン樹脂5〜20重量%、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、二酸化珪素、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム、ベントナイトおよびモノカルボン酸アミド系有機物を含有する熱硬化型塗料を塗装して塗装物を塗装する。
二酸化珪素により防錆力をもち、ベントナイトとモノカルボン酸アミド系有機物、硫酸バリウムと炭酸カルシウムにより厚い塗膜を形成することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における金属材料の塗装系を示す断面図である。酸洗鋼板やSPCC材といった金属材料1に対して、塗装に適した表面状態にするため、リン酸亜鉛被膜といった化学的処理やサンドブラスト処理といった機械的前処理を実施し、塗装を行うのに適した表面状態にしてから熱硬化型塗料(A)の熱硬化型塗膜2を10〜250μmの厚さで形成し、110〜160℃で10〜60分加熱硬化させる。
熱硬化型塗料(A)は、アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、二酸化珪素、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム、ベントナイトおよびモノカルボン酸アミド系有機物より構成された熱硬化型塗料である。熱硬化型塗料(A)の成分は表1に示す。
【0006】
【表1】
熱硬化型塗料(A)は、二酸化珪素を添加することにより、美観、耐久性能を損なわずに防錆性能を向上させることができる。
また、熱硬化型塗料(A)は、硫酸バリウムと炭酸カルシウムを配合比4:1〜1:1(重量比)にすることにより、一回の塗装で50μm以上の厚さの塗膜を安定した品質を得ることができる。その中でもほぼ2:1のとき最も安定した品質を得ることができる。
さらに、ベントナイトとモノカルボン酸アミド系有機物を配合比2:1〜1:2(重量比)にすることにより、一回の塗装で150μm以上の厚さの塗膜を安定した品質を得ることができる。その中でもほぼ1:1のとき最も安定した品質を得ることができる。
尚、有機溶剤シンナーで塗料粘度を35〜65秒に調整し、スプレー塗装を実施することでさらにだれを生じにくくなり、厚い膜厚を形成することができ、わき(ピンホール)等の塗装欠陥を生じずに塗装が実施できる。
熱硬化型塗料は、必要な種々の機能を有するために、基本材料の選定と配合のバランスが重要である。10μmという薄い膜厚から250μmという厚い膜厚に対して、熱硬化条件を一定の110〜160℃で10〜60分としても安定した品質が得られるのは、樹脂の配合バランスに起因したものである。アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂とアクリル樹脂の配合比率が重要なポイントとなり、アルキド樹脂が45重量%より多すぎると可とう性(耐衝撃性)に悪影響を与え、アルキド樹脂が30重量%より少なすぎると軟化し、耐食性能に影響を及ぼす。特に、アルキド樹脂が35〜40重量%、メラミン樹脂が5〜10重量%のときに最も安定した品質を得られる。
【0007】
また、エポキシ樹脂は付着力および防錆性を向上するのに必要な樹脂であるが、少なすぎると前述の機能が得られず、多すぎると耐候性(特に屋外における太陽の紫外線の影響により、色差や光沢度低下を生じ、チョーキング(白亜化)現象を起こす)に悪影響を及ぼす。特にエポキシ樹脂2〜5重量%のときに最も安定した品質が得られる。
また、アクリル樹脂は美観(特に耐候性)の安定化に必要な樹脂であるが、少なすぎると耐候性での光沢度低下や変色を生じやすく、多すぎると熱硬化温度を上昇させることになる。特にアクリル樹脂5〜8重量%のときに最も安定した品質が得られる。
上記の熱硬化型塗料(A)について、以下のような試験を行った。
1.初期物性試験結果
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2.耐久性試験結果
2−1塩水噴霧試験:JIS Z2371 塩水噴霧試験1000時間実施後の外観および2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2−2耐湿試験:JIS K5400耐湿試験(結露発生50℃、98%RH)1000時間実施後の外観及び2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2−3亜硫酸ガス試験:20ppm、40℃、90%RH、1000時間実施後の外観及び2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2−4塩素ガス試験:1ppm、40℃、90%RH、1000時間実施後の外観及び2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2−5耐候試験:JIS K5400促進耐候性(サンシャインカーボンアーク灯式)500時間実施後の外観及び2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
これらの試験結果を表2に示す。
【0008】
【表2】
表2から熱硬化型塗料(A)で、防錆力および美観の両方の機能を有する高品質な塗膜が得られることがわかる。また、付着力、平滑性(凹凸修正機能)、厚膜機能といった中塗りおよびスプレーパテ機能も有するので、一回の塗装で下塗り兼中塗り(兼スプレーパテ)兼上塗りの塗装が可能であり、尚且つ、耐久性(屋外設置時の色および光沢の安定も含む)に優れ、安定した品質の塗膜を得ることができる。
(実施形態2)
図2、3は、本発明の実施形態2における金属材料の塗装系を示す断面図である。酸洗鋼板やSPCC材といった金属材料1に対して、塗装に適した表面状態にするため、リン酸亜鉛被膜といった化学的処理やサンドブラスト処理といった機械的前処理を実施し、塗装を行うのに適した表面状態にしてから熱硬化型塗料(A)の熱硬化型塗膜2を10〜250μmの厚さで形成する。さらに、高防食性能を得るために、熱硬化型塗膜2を形成した後に、常温乾燥型のウレタン樹脂塗装で20〜60μmの常温乾燥型塗膜3を形成する。または、熱硬化型塗料(A)で10〜250μmの熱硬化型塗膜2を形成した後に、付着向上バインダー塗料等の常温乾燥型の塗料で10〜30μmの付着向上バインダー塗膜4を形成し、付着向上バインダー塗膜4を形成させた後に常温乾燥型のハイソリッドラッカーやアクリルラッカー等の常温乾燥型の塗料で15〜50μmの常温乾燥型塗膜5を形成する。ウレタン樹脂塗料、付着向上バインダー塗料、ハイソリッドラッカー、アクリルラッカーの成分を表3〜表6に示す。
【0009】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
熱硬化型塗料(A)で塗装後、付着向上バインダーで塗装を実施し、その後常温乾燥型のウレタン樹脂塗装、ハイソリッドラッカーやアクリルラッカー等の一般的な塗装を施したものについて、熱硬化型塗料(A)と同じ試験を行った。これらの試験結果を表7に示す。
【0010】
【表7】
表7から熱硬化型塗料(A)は、熱硬化型塗料(A)のエポキシ樹脂の作用により優れた付着力を有する。また熱硬化型塗料(A)は、優れた防食性能を持っているので、常温乾燥型のウレタン樹脂、ハイソリッドラッカーおよびアクリルラッカーの下塗りおよび凹凸を修正できるスプレーパテ塗装として適用することができ、美観を重視した上塗り塗料の性能も持っているので、塗装表面の凹凸が少なく美観的にきれいな仕上がり面を得ることができる。
尚、熱硬化型塗料(A)の塗装は、配電盤・制御盤に収納される金属材料である鋼板やSPCC材部品に対して適用することができるし、産業機器および交通機器を構成する鋼板、SPCC材、アルミ材及びステンレス材にも適用できる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、1種類の塗料で多数の樹脂系対応が図れ、さらに、防錆力、凹凸の修正および美観の機能を備え、厚い塗膜を形成できる熱硬化型塗料で塗装を行なうので、工数、作業時間を削減し作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1における金属材料の塗装系を示す断面図。
【図2】本発明の実施形態2における金属材料の塗装系を示す断面図。
【図3】本発明の実施形態2における金属材料の塗装系を示す断面図。
【符号の説明】
1…金属材料
2…熱硬化型塗膜
3、5…常温乾燥型塗膜
4…付着向上バインダー塗膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱硬化型塗料、その塗装方法及びその塗装物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の塗装物の金属部分の塗装方法は、前処理実施後に防錆顔料を含有するエポキシ樹脂系、エポキシ樹脂およびメラミン樹脂等から構成される防錆力のある下塗り塗料で塗膜を形成した。塗膜形成後、熱硬化型である場合は120℃以上で加熱硬化を行っていた。その後、必要に応じて下塗り塗装と相性のいい同系の中塗り塗料や凹凸を平滑にするためのスプレーパテで塗膜を形成し、熱硬化型である場合は120℃以上で加熱硬化を行っていた。さらに、美観が得られる熱硬化型メラミン樹脂系エナメルやアクリル樹脂系エナメルの上塗り塗料等で塗膜を形成し、120℃以上で加熱硬化を行っていた。
また、例えば、メラミン樹脂塗装、エポキシ樹脂塗装、アクリル樹脂塗装のように塗装品に塗装を実施する場合、各々塗装指定があるため、指定に合った塗装系の下塗り(中塗り)、上塗りを別々に用意し、塗装を行なっていた。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−241048号公報
【発明が解決しようとする課題】
塗装物の金属部分の塗装は、防錆に重点をおいた下塗り塗料、美観に重点をおいた上塗り塗料と防錆のためと美観のために別々の塗料を用意しなければならなかった。
さらに、場合によっては防錆性も有しながら上塗りの美観を持たせるための下地としての中塗り塗料やスプレーパテを塗装しなければならなかった。下塗り塗料の塗装、中塗り塗料やスプレーパテの塗装、上塗り塗料の塗装と塗装するごとに長期的な塗膜耐久性が得るため熱硬化を実施しなければならなかった。
また、塗装系の指定があるため、限定された指定樹脂塗料で塗装しなければならなかった。
また、一回の塗装で80μm以上の塗装を実施すると、硬化中に溶剤分が沸騰してわき(ピンホール)が発生する塗膜欠陥が生じ、だれを生じる可能性が大きくなる。
本発明は、1種類の塗料で多数の樹脂系対応が図れ、さらに、防錆力、凹凸の修正および美観の機能を備え、厚い塗膜を形成できる塗装物の塗装方法および熱硬化型塗料を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明においては、塗装物の金属部材に、アルキド樹脂30〜45重量%、メラミン樹脂5〜20重量%、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、二酸化珪素、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム、ベントナイトおよびモノカルボン酸アミド系有機物を含有する熱硬化型塗料を塗装して塗装物を塗装する。
二酸化珪素により防錆力をもち、ベントナイトとモノカルボン酸アミド系有機物、硫酸バリウムと炭酸カルシウムにより厚い塗膜を形成することができる。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施形態について説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1における金属材料の塗装系を示す断面図である。酸洗鋼板やSPCC材といった金属材料1に対して、塗装に適した表面状態にするため、リン酸亜鉛被膜といった化学的処理やサンドブラスト処理といった機械的前処理を実施し、塗装を行うのに適した表面状態にしてから熱硬化型塗料(A)の熱硬化型塗膜2を10〜250μmの厚さで形成し、110〜160℃で10〜60分加熱硬化させる。
熱硬化型塗料(A)は、アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、二酸化珪素、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム、ベントナイトおよびモノカルボン酸アミド系有機物より構成された熱硬化型塗料である。熱硬化型塗料(A)の成分は表1に示す。
【0006】
【表1】
熱硬化型塗料(A)は、二酸化珪素を添加することにより、美観、耐久性能を損なわずに防錆性能を向上させることができる。
また、熱硬化型塗料(A)は、硫酸バリウムと炭酸カルシウムを配合比4:1〜1:1(重量比)にすることにより、一回の塗装で50μm以上の厚さの塗膜を安定した品質を得ることができる。その中でもほぼ2:1のとき最も安定した品質を得ることができる。
さらに、ベントナイトとモノカルボン酸アミド系有機物を配合比2:1〜1:2(重量比)にすることにより、一回の塗装で150μm以上の厚さの塗膜を安定した品質を得ることができる。その中でもほぼ1:1のとき最も安定した品質を得ることができる。
尚、有機溶剤シンナーで塗料粘度を35〜65秒に調整し、スプレー塗装を実施することでさらにだれを生じにくくなり、厚い膜厚を形成することができ、わき(ピンホール)等の塗装欠陥を生じずに塗装が実施できる。
熱硬化型塗料は、必要な種々の機能を有するために、基本材料の選定と配合のバランスが重要である。10μmという薄い膜厚から250μmという厚い膜厚に対して、熱硬化条件を一定の110〜160℃で10〜60分としても安定した品質が得られるのは、樹脂の配合バランスに起因したものである。アルキド樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂とアクリル樹脂の配合比率が重要なポイントとなり、アルキド樹脂が45重量%より多すぎると可とう性(耐衝撃性)に悪影響を与え、アルキド樹脂が30重量%より少なすぎると軟化し、耐食性能に影響を及ぼす。特に、アルキド樹脂が35〜40重量%、メラミン樹脂が5〜10重量%のときに最も安定した品質を得られる。
【0007】
また、エポキシ樹脂は付着力および防錆性を向上するのに必要な樹脂であるが、少なすぎると前述の機能が得られず、多すぎると耐候性(特に屋外における太陽の紫外線の影響により、色差や光沢度低下を生じ、チョーキング(白亜化)現象を起こす)に悪影響を及ぼす。特にエポキシ樹脂2〜5重量%のときに最も安定した品質が得られる。
また、アクリル樹脂は美観(特に耐候性)の安定化に必要な樹脂であるが、少なすぎると耐候性での光沢度低下や変色を生じやすく、多すぎると熱硬化温度を上昇させることになる。特にアクリル樹脂5〜8重量%のときに最も安定した品質が得られる。
上記の熱硬化型塗料(A)について、以下のような試験を行った。
1.初期物性試験結果
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2.耐久性試験結果
2−1塩水噴霧試験:JIS Z2371 塩水噴霧試験1000時間実施後の外観および2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2−2耐湿試験:JIS K5400耐湿試験(結露発生50℃、98%RH)1000時間実施後の外観及び2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2−3亜硫酸ガス試験:20ppm、40℃、90%RH、1000時間実施後の外観及び2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2−4塩素ガス試験:1ppm、40℃、90%RH、1000時間実施後の外観及び2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
2−5耐候試験:JIS K5400促進耐候性(サンシャインカーボンアーク灯式)500時間実施後の外観及び2次物性
(a)外観
(1)硬度:JIS K5400 鉛筆引っかき試験
(2)付着力:ASTM3359(碁盤目又はクロスカット+粘着テープ)50μm以下(B法)、50〜125μm(B法)、125μm以上(A法)
(3)耐衝撃性:JIS K5400耐衝撃試験(デュポン式)60μm以下、60〜100μm、100μm以上
これらの試験結果を表2に示す。
【0008】
【表2】
表2から熱硬化型塗料(A)で、防錆力および美観の両方の機能を有する高品質な塗膜が得られることがわかる。また、付着力、平滑性(凹凸修正機能)、厚膜機能といった中塗りおよびスプレーパテ機能も有するので、一回の塗装で下塗り兼中塗り(兼スプレーパテ)兼上塗りの塗装が可能であり、尚且つ、耐久性(屋外設置時の色および光沢の安定も含む)に優れ、安定した品質の塗膜を得ることができる。
(実施形態2)
図2、3は、本発明の実施形態2における金属材料の塗装系を示す断面図である。酸洗鋼板やSPCC材といった金属材料1に対して、塗装に適した表面状態にするため、リン酸亜鉛被膜といった化学的処理やサンドブラスト処理といった機械的前処理を実施し、塗装を行うのに適した表面状態にしてから熱硬化型塗料(A)の熱硬化型塗膜2を10〜250μmの厚さで形成する。さらに、高防食性能を得るために、熱硬化型塗膜2を形成した後に、常温乾燥型のウレタン樹脂塗装で20〜60μmの常温乾燥型塗膜3を形成する。または、熱硬化型塗料(A)で10〜250μmの熱硬化型塗膜2を形成した後に、付着向上バインダー塗料等の常温乾燥型の塗料で10〜30μmの付着向上バインダー塗膜4を形成し、付着向上バインダー塗膜4を形成させた後に常温乾燥型のハイソリッドラッカーやアクリルラッカー等の常温乾燥型の塗料で15〜50μmの常温乾燥型塗膜5を形成する。ウレタン樹脂塗料、付着向上バインダー塗料、ハイソリッドラッカー、アクリルラッカーの成分を表3〜表6に示す。
【0009】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
熱硬化型塗料(A)で塗装後、付着向上バインダーで塗装を実施し、その後常温乾燥型のウレタン樹脂塗装、ハイソリッドラッカーやアクリルラッカー等の一般的な塗装を施したものについて、熱硬化型塗料(A)と同じ試験を行った。これらの試験結果を表7に示す。
【0010】
【表7】
表7から熱硬化型塗料(A)は、熱硬化型塗料(A)のエポキシ樹脂の作用により優れた付着力を有する。また熱硬化型塗料(A)は、優れた防食性能を持っているので、常温乾燥型のウレタン樹脂、ハイソリッドラッカーおよびアクリルラッカーの下塗りおよび凹凸を修正できるスプレーパテ塗装として適用することができ、美観を重視した上塗り塗料の性能も持っているので、塗装表面の凹凸が少なく美観的にきれいな仕上がり面を得ることができる。
尚、熱硬化型塗料(A)の塗装は、配電盤・制御盤に収納される金属材料である鋼板やSPCC材部品に対して適用することができるし、産業機器および交通機器を構成する鋼板、SPCC材、アルミ材及びステンレス材にも適用できる。
【0011】
【発明の効果】
本発明によれば、1種類の塗料で多数の樹脂系対応が図れ、さらに、防錆力、凹凸の修正および美観の機能を備え、厚い塗膜を形成できる熱硬化型塗料で塗装を行なうので、工数、作業時間を削減し作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態1における金属材料の塗装系を示す断面図。
【図2】本発明の実施形態2における金属材料の塗装系を示す断面図。
【図3】本発明の実施形態2における金属材料の塗装系を示す断面図。
【符号の説明】
1…金属材料
2…熱硬化型塗膜
3、5…常温乾燥型塗膜
4…付着向上バインダー塗膜
Claims (8)
- アルキド樹脂30〜45重量%、メラミン樹脂5〜20重量%、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、二酸化珪素、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム、ベントナイトおよびモノカルボン酸アミド系有機物を含有することを特徴とする熱硬化型塗料。
- アルキド樹脂35〜40重量%、メラミン樹脂10〜16重量%、エポキシ樹脂2〜8重量%、アクリル樹脂3〜10重量%、二酸化珪素0.5〜1.5重量%、硫酸バリウムおよび炭酸カルシウム6〜15重量%、ベントナイトおよびモノカルボン酸アミド系有機物2〜4重量%を含有することを特徴とする熱硬化型塗料。
- 前記硫酸バリウムと前記炭酸カルシウムの配合比を4:1〜1:1とすることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の熱硬化型塗料。
- 前記硫酸バリウムと前記炭酸カルシウムの配合比をほぼ2:1とすることを特徴とする請求項1乃至2のいずれかに記載の熱硬化型塗料。
- 前記ベントナイトと前記モノカルボン酸アミド系有機物の配合比を2:1〜1:2とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱硬化型塗料。
- 前記ベントナイトと前記モノカルボン酸アミド系有機物の配合比をほぼ1:1とすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の熱硬化型塗料。
- 前記請求項1乃至6のいずれかに記載の熱硬化型塗料を塗装物の金属部材に塗装することを特徴とする熱硬化型塗料の塗装方法。
- 前記請求項1乃至6のいずれかに記載の熱硬化型塗料を金属部材に塗装したことを特徴とする熱硬化型塗料の塗装物。
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-
2002
- 2002-11-21 JP JP2002337437A patent/JP2004168916A/ja active Pending
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