JP2004168580A - 高炉樋用不定形耐火物 - Google Patents
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Abstract
【課題】耐損耗性と共に流動性にも優れる高炉樋用不定形耐火物を提案する。
【解決手段】耐火物成分としてSiCを60〜85mass%、A12O3を10〜30mass%含み、バインダー成分としてアルミナセメントを1〜5mass%含む高炉樋の内張りに用いるSiC含有不定形耐火物において、前記SiCとして、粒径40μm以下のものを20mass%以上含有することにより耐損耗性を改善し、さらに、上記不定形耐火物において、粒径5μm以下のSiCを3〜10mass%配合することにより流動性をも改善する。
【選択図】 図3
【解決手段】耐火物成分としてSiCを60〜85mass%、A12O3を10〜30mass%含み、バインダー成分としてアルミナセメントを1〜5mass%含む高炉樋の内張りに用いるSiC含有不定形耐火物において、前記SiCとして、粒径40μm以下のものを20mass%以上含有することにより耐損耗性を改善し、さらに、上記不定形耐火物において、粒径5μm以下のSiCを3〜10mass%配合することにより流動性をも改善する。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉の溶銑大樋、溶銑樋およびスラグ樋などの高炉樋の内張りに用いて好適なSiC含有不定形耐火物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高炉樋内張用耐火物は、近年、長寿命化とコスト削減を図るために、材料や施工法の面から改良が図られてきた。例えば、樋の骨格を構成する耐火レンガの内側に、不定形耐火物を被覆するに当たり、該不定形耐火物として、A12O3やSiCといった耐火物成分に対しアルミナセメント等をバインダーとして配合してなる不定形耐火物を用いることによって、樋寿命の延長を図るという試みが行われている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
特に、溶銑大樋の内側のスラグが流下する液面部分いわゆるスラグライン部の被覆に使用される不定形耐火物は、溶融スラグ等が耐火物表面を流れる際に、機械的あるいは化学的な摩耗、損耗を受けることから、溶融スラグ等との濡れ性が低く、耐用性の高い耐火物成分を増加させる方向で、不定形耐火物の改良が進められている。その結果、配合されるSiCの量は逐次増加されており、現在では、不定形耐火物の60mass%を超える量のSiCを含むものも用いられている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0004】
ここで、上記SiCとしては、粗粒(粒径:6〜1mm)、微粒(粒径:1mm以下)および微粉(粒径:数十メッシュ以下)からなるものが主に用いられており、その配合割合は、粗粒:50mass%、微粒:20mass%および微粉:30mass%程度とするのが一般的である。このSiCの配合割合は、主として、不定形耐火物に水を添加した際の、不定形耐火物の流動性を基準に定められている。
【0005】
【特許文献1】特開平05−221737号公報
【特許文献2】特開平07−206532号公報
【特許文献3】特開2000−203953号公報
【非特許文献1】桐生幸雄等編集、「耐火物手帳’99」第1版第1刷、耐火物技術協会、P308
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、高炉樋用不定形耐火物は、所定量の水と共に混錬し、スラリー状態として、樋の施工部位に設けた型枠等の中に流し込み、乾燥、養生することにより、所望の形状に耐火物を形成するものである。したがって、スラリー状態としたときに流動性がないと、所望の形状に流し込むことができない。また、流動性を確保するために水の添加量を増やすと、乾燥、養生後、不定形耐火物施工体中の気孔率が増加して緻密性がなくなり、強度の低下を招くおそれもある。したがって、水を過剰に添加することなく、適度に流動性を有するスラリーを形成できるような配合割合とする必要がある。
【0007】
上記のように、高炉樋用不定形耐火物において、耐火物成分の配合を改良するに当たっては、まず耐損耗性を確保することが第一義であるが、それに加えて、施工前における材料の流動性を向上させることも重要な課題である。すなわち、不定形耐火物の設計に当たっては、耐損耗性を高めるとともに、施工時における流動性を確保することが必要となる。
【0008】
本発明の目的は、特に、耐損耗性の向上が期待できるとともに、さらに流動性をも確保できる高炉樋用不定形耐火物を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を達成するため、特に耐損耗性に大きく関与していると考えられるSiC微粉に着目し、これらの配合比率が耐火物の特性に及ぼす影響について検討を進めた。その結果、特定の粒径を有するSiC粉を適正量含有させることにより、耐損耗性および流動性を改善し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明は、耐火物成分としてSiCを60〜85mass%、A12O3を10〜30mass%含み、バインダー成分としてアルミナセメントを1〜5mass%含む高炉樋の内張りに用いるSiC含有不定形耐火物であって、前記SiCとして、粒径40μm以下のものを20mass%以上含有することを特徴とする高炉樋用不定形耐火物である。
【0011】
なお、本発明の耐火物において、前記SiCは、粒径5μm以下のものを3〜10mass%含有することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る高炉樋用不定形耐火物を構成する基本成分について説明する。
SiC:60〜85mass%
SiCは、耐火物の骨格をなす骨材成分の1つであって、特にスラグとの反応性が低く、またスポーリングし難いといった特性を有する点で高炉樋用不定形耐火物には有効な成分であり、不定形耐火物中には60〜85mass%含ませる必要がある。60mass%未満では、溶融スラグとの化学反応によって損耗速度が増大する。また、85mass%を超えて含む場合には、SiC自体に焼結性がないため、不定形耐火物の施工体自体の強度が低くなり、溶銑や溶融スラグの流れによる機械的侵食が顕著となる。好ましくは、70〜85mass%である。
【0013】
A12O3:10〜30mass%
A12O3は、耐火物の骨格をなす骨材成分の1つであって、高炉樋として施工された時の焼結強度の向上に有効であり、不定形耐火物中には10mass%以上含ませる必要がある。しかしその反面、溶融スラグの施工体への浸透を容易にし、耐火物が化学反応による損耗を受け易くなり、特に、30mass%を超えて配合とすると、溶融スラグ流による溶損が大きくなるという問題ある。したがって、A12O3の含有量は、10〜30mass%とする。
【0014】
アルミナセメント:1〜5mass%
アルミナセメントは、上記SiCやA12O3を緻密な施工体に成形するためのバインダーとして使われるものである。その添加量が1mass%未満では、バインダーとしての効果が小さく、施工体として成形することが困難となる。また、その量が5mass%を超えると、アルミナセメント中に含まれるCaOが溶銑や溶融スラグと反応して損耗量が増大する。そのため、アルミナセメントは、1〜5mass%の範囲で配合する。
【0015】
なお、本発明の不定形耐火物においては、上記SiC、A12O3およびアルミナセメントの他にさらに、SiO2、MgO、スピネル、ZrO2等の耐火性酸化物や、ピッチあるいはカーボンブラック等のカーボン類が含まれてもよい。これらは、高炉樋内の施工部位に応じて、溶銑や溶融スラグによる損耗を抑制するために意図的に添加されるものや、また、原料中に不可避に混入しているものであるが、本発明が目的とする高炉樋用不定形耐火物においては、耐損耗性と流動性とを満足する配合の観点からは、いずれが添加されていても問題はない。
【0016】
次に、上記基本成分を有する不定形耐火物が、耐損耗性と流動性とを兼備するための条件について調査した結果を説明する。
まず、発明者らは、不定形耐火物の耐損耗性について、樋を形成する耐火物が緻密である方が有利ではないかと考え、高炉樋用不定形耐火物の主要成分であるSiCの微粉の量と耐損耗性との関係について調査した。
この調査に用いた不定形耐火物は、耐火成分として、SiCを80mass%、A12O3を15mass%含み、そして、バインダー成分としてアルミナセメント3mass%を含み、その他不可避に混入する耐火性物質としてシリカ、マグネシアを含む不定形耐火物を用いた。そして、SiCについては、種々の粒径を有するSiC粉の量を変化させて、その耐損耗性を調べた。その結果を以下に説明する。
【0017】
図1は、上記不定形耐火物中の、粒径40μm以下のSiC微粉の含有率(不定形耐火物中のmass%)を変化させたときの損耗速度の変化を示したものである。ここで、上記損耗速度は、後述する実施例における評価方法と同様にして求めたものである。図1から明らかなように、粒径40μm以下のSiC微粉の含有率が20mass%以上の耐火物では、損耗速度が低下する傾向があり、耐損耗性が向上することがわかる。
【0018】
次に、上記調査で用いた不定形耐火物について、施工前のスラリーの流動性を、後述する実施例と同じ方法でタップフロー値を測定し評価した。
タップフロー値の測定結果を図2に示したが、耐損耗性とは逆に、粒径40μm以下のSiCの含有率が大きくなると流動性が低下していく傾向にあることがわかる。
【0019】
そこで、SiC中の粒径40μm以下の含有率を20mass%以上として耐損耗性を確保した上で、スラリーとしての流動性を向上できる配合について検討した。実験では、粒径40μm以下のSiCを20mass%とした上で、このSiCの中に含まれる粒径5μm以下の超微粉の含有率を変化させ、不定形耐火物の施工前におけるスラリー流動性を評価した。
【0020】
その結果を図3に示す。図3に示す結果から、粒径5μm以下の超微粉のSiCを3〜10mass%配合することにより、施工前のスラリーの流動性を高く維持できることがわかる。また、図4には、図3で用いた不定形耐火物について、耐損耗性を評価した結果を示す。この結果から、粒径5μm以下の超微粉のSiCを3〜10mass%配合しても、耐損耗性には影響しないことがわかる。すなわち、粒径5μm以下の超微粉のSiCを3〜10mass%含ませることにより、耐損耗性と流動性の両方の特性を、他を犠牲にすることなく確保できることがわかる。
【0021】
以上の実験結果から、高炉樋の内張りに用いるSiCを含有する不定形耐火物としては、耐火物成分としてSiCを60〜85mass%およびA12O3を10〜30mass%含み、バインダー成分としてアルミナセメントを1〜5mass%含む配合組成のものを用いることに加え、前記SiCについては特に、粒径40μm以下のものを20mass%以上含む耐火物とすることにより、耐損耗性に優れる高炉樋用不定形耐火物が得られることがわかった。
【0022】
また、上記不定形耐火物においてさらに、粒径5μm以下のSiCを3〜10mass%含むものとすることで、施工体を形成する前のスラリー状態における流動性の高い高炉樋用不定形耐火物を得られることがわかった。
【0023】
【実施例】
表1に示す配合率を有する耐火物試料11種を調合した。各試料は、合計SiC量:80.5mass%、A12O3:11.3mass%、アルミナセメント:1.5mass%、その他にSiO2:0.5mass%、カーボン3.2mass%等の耐火性成分を含むものとし、上記SiCは、粗粒(6mm以下1mm超):38mass%、微粒(1mm以下0.2mm超):18mass%は共通として、粒径0.2mm以下の微粉部分の配合量を調整したものである。これらについて、流動性および耐損耗特性を下記の要領で評価した。
【0024】
【表1】
【0025】
(流動性)
表1に示す耐火物材料100質量部に対して水7質量部を添加し、ミキサーによりよく混錬した。次いで、この混錬直後の耐火物試料について、JIS R2521に記載されたフロー試験によりタップフロー値を測定し、流動性を評価した。この測定方法は、フローテーブル上に置いたフローコーン(上径:70mm、下径:100mm、高さ:60mm)に上記混練後の耐火物試料を詰めてから、フローコーンを上方に抜き取り、タップを15回与え、試料が広がった後の最大径とこれに直角な方向の径をmm単位で計測し、それらの平均値をフロー値とするものである。
【0026】
(耐損耗性)
耐損耗性の評価は、「耐火物手帳’99」、耐火物技術協会、P64〜65記載の回転侵食試験に準じて行った。具体的には、表1に示す耐火物を混錬した後、図5に示す型枠(内側幅:40mm、外側幅:80mm、厚み:50mm、高さ:110mm)に充填して硬化後、110℃で一晩乾燥させ、さらに還元性雰囲気にて1400℃で3時間焼成して試験片を作製した。この試験片を、回転スラグテスト機内で、1550℃の高炉スラグと5時間接触保持して高炉スラグと反応させた後、試験片を切断分割して、その断面における試験片の厚みの減少量を測定し、1時間あたりの損耗量(mm単位)すなわち損耗速度(mm/h)を求めた。なお、表1において、SiCの各粒径の量は、各しきい値の目開きの篩により篩い分けして求めた値である。
【0027】
上記試験の測定結果を、表1中に併せて示す。
比較例である試料番号1,2は、40μm以下のSiC微粉量がそれぞれ11.Omass%、14.7mass%で、本発明範囲である20mass%以上から外れるものである。これらの例では、損耗速度が1.4mm/h以上と大きく、高炉樋用不定形耐火物としては好ましくない。これに対して、40μm以下のSiC微粉を20mass%以上含む試料番号3〜11の本発明例では、いずれも損耗速度が1.1mm/h以下で、優れた耐損耗性が得られており、高炉樋用不定形耐火物として好適であることがわかる。
また、本発明例である試料番号3〜11の中で、粒径5μm以下のSiCを3〜10mass%含む試料番号7〜10は、タップフロー値が120mm以上で、良好な流動性を示しており、高炉樋用不定形耐火物として好適な性状を有していることがわかる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、不定形耐火物に含有させるSiCの所定量を粒径40μm以下の微粉とすることによって、耐損耗性に優れる高炉樋用不定形耐火物を得ることができる。さらに、SiCの所定量を粒径5μm以下の超微粉とすることによって、耐損耗性のほか、不定形耐火物の施工に好適な流動性の良い高炉樋用不定形耐火物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】粒径40μm以下のSiC微粉含有率が耐火物の損耗速度に及ぼす影響を示す図である。
【図2】粒径40μm以下のSiC微粉含有率が耐火物の流動性に及ぼす影響を示す図である。
【図3】粒径5μm以下のSiC微粉含有率が耐火物の流動性に及ぼす影響を示す図である。
【図4】粒径5μm以下のSiC微粉含有率が耐火物の損耗速度に及ぼす影響を示す図である。
【図5】回転侵食試験に用いた耐火物の型枠の寸法を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、高炉の溶銑大樋、溶銑樋およびスラグ樋などの高炉樋の内張りに用いて好適なSiC含有不定形耐火物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
高炉樋内張用耐火物は、近年、長寿命化とコスト削減を図るために、材料や施工法の面から改良が図られてきた。例えば、樋の骨格を構成する耐火レンガの内側に、不定形耐火物を被覆するに当たり、該不定形耐火物として、A12O3やSiCといった耐火物成分に対しアルミナセメント等をバインダーとして配合してなる不定形耐火物を用いることによって、樋寿命の延長を図るという試みが行われている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0003】
特に、溶銑大樋の内側のスラグが流下する液面部分いわゆるスラグライン部の被覆に使用される不定形耐火物は、溶融スラグ等が耐火物表面を流れる際に、機械的あるいは化学的な摩耗、損耗を受けることから、溶融スラグ等との濡れ性が低く、耐用性の高い耐火物成分を増加させる方向で、不定形耐火物の改良が進められている。その結果、配合されるSiCの量は逐次増加されており、現在では、不定形耐火物の60mass%を超える量のSiCを含むものも用いられている(例えば、特許文献1〜3参照。)。
【0004】
ここで、上記SiCとしては、粗粒(粒径:6〜1mm)、微粒(粒径:1mm以下)および微粉(粒径:数十メッシュ以下)からなるものが主に用いられており、その配合割合は、粗粒:50mass%、微粒:20mass%および微粉:30mass%程度とするのが一般的である。このSiCの配合割合は、主として、不定形耐火物に水を添加した際の、不定形耐火物の流動性を基準に定められている。
【0005】
【特許文献1】特開平05−221737号公報
【特許文献2】特開平07−206532号公報
【特許文献3】特開2000−203953号公報
【非特許文献1】桐生幸雄等編集、「耐火物手帳’99」第1版第1刷、耐火物技術協会、P308
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、高炉樋用不定形耐火物は、所定量の水と共に混錬し、スラリー状態として、樋の施工部位に設けた型枠等の中に流し込み、乾燥、養生することにより、所望の形状に耐火物を形成するものである。したがって、スラリー状態としたときに流動性がないと、所望の形状に流し込むことができない。また、流動性を確保するために水の添加量を増やすと、乾燥、養生後、不定形耐火物施工体中の気孔率が増加して緻密性がなくなり、強度の低下を招くおそれもある。したがって、水を過剰に添加することなく、適度に流動性を有するスラリーを形成できるような配合割合とする必要がある。
【0007】
上記のように、高炉樋用不定形耐火物において、耐火物成分の配合を改良するに当たっては、まず耐損耗性を確保することが第一義であるが、それに加えて、施工前における材料の流動性を向上させることも重要な課題である。すなわち、不定形耐火物の設計に当たっては、耐損耗性を高めるとともに、施工時における流動性を確保することが必要となる。
【0008】
本発明の目的は、特に、耐損耗性の向上が期待できるとともに、さらに流動性をも確保できる高炉樋用不定形耐火物を提案することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を達成するため、特に耐損耗性に大きく関与していると考えられるSiC微粉に着目し、これらの配合比率が耐火物の特性に及ぼす影響について検討を進めた。その結果、特定の粒径を有するSiC粉を適正量含有させることにより、耐損耗性および流動性を改善し得ることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
すなわち、本発明は、耐火物成分としてSiCを60〜85mass%、A12O3を10〜30mass%含み、バインダー成分としてアルミナセメントを1〜5mass%含む高炉樋の内張りに用いるSiC含有不定形耐火物であって、前記SiCとして、粒径40μm以下のものを20mass%以上含有することを特徴とする高炉樋用不定形耐火物である。
【0011】
なお、本発明の耐火物において、前記SiCは、粒径5μm以下のものを3〜10mass%含有することが好ましい。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明に係る高炉樋用不定形耐火物を構成する基本成分について説明する。
SiC:60〜85mass%
SiCは、耐火物の骨格をなす骨材成分の1つであって、特にスラグとの反応性が低く、またスポーリングし難いといった特性を有する点で高炉樋用不定形耐火物には有効な成分であり、不定形耐火物中には60〜85mass%含ませる必要がある。60mass%未満では、溶融スラグとの化学反応によって損耗速度が増大する。また、85mass%を超えて含む場合には、SiC自体に焼結性がないため、不定形耐火物の施工体自体の強度が低くなり、溶銑や溶融スラグの流れによる機械的侵食が顕著となる。好ましくは、70〜85mass%である。
【0013】
A12O3:10〜30mass%
A12O3は、耐火物の骨格をなす骨材成分の1つであって、高炉樋として施工された時の焼結強度の向上に有効であり、不定形耐火物中には10mass%以上含ませる必要がある。しかしその反面、溶融スラグの施工体への浸透を容易にし、耐火物が化学反応による損耗を受け易くなり、特に、30mass%を超えて配合とすると、溶融スラグ流による溶損が大きくなるという問題ある。したがって、A12O3の含有量は、10〜30mass%とする。
【0014】
アルミナセメント:1〜5mass%
アルミナセメントは、上記SiCやA12O3を緻密な施工体に成形するためのバインダーとして使われるものである。その添加量が1mass%未満では、バインダーとしての効果が小さく、施工体として成形することが困難となる。また、その量が5mass%を超えると、アルミナセメント中に含まれるCaOが溶銑や溶融スラグと反応して損耗量が増大する。そのため、アルミナセメントは、1〜5mass%の範囲で配合する。
【0015】
なお、本発明の不定形耐火物においては、上記SiC、A12O3およびアルミナセメントの他にさらに、SiO2、MgO、スピネル、ZrO2等の耐火性酸化物や、ピッチあるいはカーボンブラック等のカーボン類が含まれてもよい。これらは、高炉樋内の施工部位に応じて、溶銑や溶融スラグによる損耗を抑制するために意図的に添加されるものや、また、原料中に不可避に混入しているものであるが、本発明が目的とする高炉樋用不定形耐火物においては、耐損耗性と流動性とを満足する配合の観点からは、いずれが添加されていても問題はない。
【0016】
次に、上記基本成分を有する不定形耐火物が、耐損耗性と流動性とを兼備するための条件について調査した結果を説明する。
まず、発明者らは、不定形耐火物の耐損耗性について、樋を形成する耐火物が緻密である方が有利ではないかと考え、高炉樋用不定形耐火物の主要成分であるSiCの微粉の量と耐損耗性との関係について調査した。
この調査に用いた不定形耐火物は、耐火成分として、SiCを80mass%、A12O3を15mass%含み、そして、バインダー成分としてアルミナセメント3mass%を含み、その他不可避に混入する耐火性物質としてシリカ、マグネシアを含む不定形耐火物を用いた。そして、SiCについては、種々の粒径を有するSiC粉の量を変化させて、その耐損耗性を調べた。その結果を以下に説明する。
【0017】
図1は、上記不定形耐火物中の、粒径40μm以下のSiC微粉の含有率(不定形耐火物中のmass%)を変化させたときの損耗速度の変化を示したものである。ここで、上記損耗速度は、後述する実施例における評価方法と同様にして求めたものである。図1から明らかなように、粒径40μm以下のSiC微粉の含有率が20mass%以上の耐火物では、損耗速度が低下する傾向があり、耐損耗性が向上することがわかる。
【0018】
次に、上記調査で用いた不定形耐火物について、施工前のスラリーの流動性を、後述する実施例と同じ方法でタップフロー値を測定し評価した。
タップフロー値の測定結果を図2に示したが、耐損耗性とは逆に、粒径40μm以下のSiCの含有率が大きくなると流動性が低下していく傾向にあることがわかる。
【0019】
そこで、SiC中の粒径40μm以下の含有率を20mass%以上として耐損耗性を確保した上で、スラリーとしての流動性を向上できる配合について検討した。実験では、粒径40μm以下のSiCを20mass%とした上で、このSiCの中に含まれる粒径5μm以下の超微粉の含有率を変化させ、不定形耐火物の施工前におけるスラリー流動性を評価した。
【0020】
その結果を図3に示す。図3に示す結果から、粒径5μm以下の超微粉のSiCを3〜10mass%配合することにより、施工前のスラリーの流動性を高く維持できることがわかる。また、図4には、図3で用いた不定形耐火物について、耐損耗性を評価した結果を示す。この結果から、粒径5μm以下の超微粉のSiCを3〜10mass%配合しても、耐損耗性には影響しないことがわかる。すなわち、粒径5μm以下の超微粉のSiCを3〜10mass%含ませることにより、耐損耗性と流動性の両方の特性を、他を犠牲にすることなく確保できることがわかる。
【0021】
以上の実験結果から、高炉樋の内張りに用いるSiCを含有する不定形耐火物としては、耐火物成分としてSiCを60〜85mass%およびA12O3を10〜30mass%含み、バインダー成分としてアルミナセメントを1〜5mass%含む配合組成のものを用いることに加え、前記SiCについては特に、粒径40μm以下のものを20mass%以上含む耐火物とすることにより、耐損耗性に優れる高炉樋用不定形耐火物が得られることがわかった。
【0022】
また、上記不定形耐火物においてさらに、粒径5μm以下のSiCを3〜10mass%含むものとすることで、施工体を形成する前のスラリー状態における流動性の高い高炉樋用不定形耐火物を得られることがわかった。
【0023】
【実施例】
表1に示す配合率を有する耐火物試料11種を調合した。各試料は、合計SiC量:80.5mass%、A12O3:11.3mass%、アルミナセメント:1.5mass%、その他にSiO2:0.5mass%、カーボン3.2mass%等の耐火性成分を含むものとし、上記SiCは、粗粒(6mm以下1mm超):38mass%、微粒(1mm以下0.2mm超):18mass%は共通として、粒径0.2mm以下の微粉部分の配合量を調整したものである。これらについて、流動性および耐損耗特性を下記の要領で評価した。
【0024】
【表1】
【0025】
(流動性)
表1に示す耐火物材料100質量部に対して水7質量部を添加し、ミキサーによりよく混錬した。次いで、この混錬直後の耐火物試料について、JIS R2521に記載されたフロー試験によりタップフロー値を測定し、流動性を評価した。この測定方法は、フローテーブル上に置いたフローコーン(上径:70mm、下径:100mm、高さ:60mm)に上記混練後の耐火物試料を詰めてから、フローコーンを上方に抜き取り、タップを15回与え、試料が広がった後の最大径とこれに直角な方向の径をmm単位で計測し、それらの平均値をフロー値とするものである。
【0026】
(耐損耗性)
耐損耗性の評価は、「耐火物手帳’99」、耐火物技術協会、P64〜65記載の回転侵食試験に準じて行った。具体的には、表1に示す耐火物を混錬した後、図5に示す型枠(内側幅:40mm、外側幅:80mm、厚み:50mm、高さ:110mm)に充填して硬化後、110℃で一晩乾燥させ、さらに還元性雰囲気にて1400℃で3時間焼成して試験片を作製した。この試験片を、回転スラグテスト機内で、1550℃の高炉スラグと5時間接触保持して高炉スラグと反応させた後、試験片を切断分割して、その断面における試験片の厚みの減少量を測定し、1時間あたりの損耗量(mm単位)すなわち損耗速度(mm/h)を求めた。なお、表1において、SiCの各粒径の量は、各しきい値の目開きの篩により篩い分けして求めた値である。
【0027】
上記試験の測定結果を、表1中に併せて示す。
比較例である試料番号1,2は、40μm以下のSiC微粉量がそれぞれ11.Omass%、14.7mass%で、本発明範囲である20mass%以上から外れるものである。これらの例では、損耗速度が1.4mm/h以上と大きく、高炉樋用不定形耐火物としては好ましくない。これに対して、40μm以下のSiC微粉を20mass%以上含む試料番号3〜11の本発明例では、いずれも損耗速度が1.1mm/h以下で、優れた耐損耗性が得られており、高炉樋用不定形耐火物として好適であることがわかる。
また、本発明例である試料番号3〜11の中で、粒径5μm以下のSiCを3〜10mass%含む試料番号7〜10は、タップフロー値が120mm以上で、良好な流動性を示しており、高炉樋用不定形耐火物として好適な性状を有していることがわかる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、不定形耐火物に含有させるSiCの所定量を粒径40μm以下の微粉とすることによって、耐損耗性に優れる高炉樋用不定形耐火物を得ることができる。さらに、SiCの所定量を粒径5μm以下の超微粉とすることによって、耐損耗性のほか、不定形耐火物の施工に好適な流動性の良い高炉樋用不定形耐火物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】粒径40μm以下のSiC微粉含有率が耐火物の損耗速度に及ぼす影響を示す図である。
【図2】粒径40μm以下のSiC微粉含有率が耐火物の流動性に及ぼす影響を示す図である。
【図3】粒径5μm以下のSiC微粉含有率が耐火物の流動性に及ぼす影響を示す図である。
【図4】粒径5μm以下のSiC微粉含有率が耐火物の損耗速度に及ぼす影響を示す図である。
【図5】回転侵食試験に用いた耐火物の型枠の寸法を示す図である。
Claims (2)
- 耐火物成分としてSiCを60〜85mass%、A12O3を10〜30mass%含み、バインダー成分としてアルミナセメントを1〜5mass%含む高炉樋の内張りに用いるSiC含有不定形耐火物であって、前記SiCとして、粒径40μm以下のものを20mass%以上含有することを特徴とする高炉樋用不定形耐火物。
- 前記SiCは、粒径5μm以下のものを3〜10mass%含有することを特徴とする請求項1に記載の高炉樋用不定形耐火物。
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---|---|---|---|
JP2002334887A JP2004168580A (ja) | 2002-11-19 | 2002-11-19 | 高炉樋用不定形耐火物 |
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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US8815759B2 (en) | 2012-03-30 | 2014-08-26 | Korea Institute Of Science And Technology | Cement-free high strength unshaped refractory |
KR101778230B1 (ko) | 2016-06-17 | 2017-09-14 | 한국내화 주식회사 | 태양광 실리콘 슬러지를 이용한 고로용 대탕도 유입재 |
-
2002
- 2002-11-19 JP JP2002334887A patent/JP2004168580A/ja active Pending
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