JP2004167445A - ろ過膜装置及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】有機成分を含有する原水をろ過して蛍光顕微鏡での微生物観察をする場合において、ろ過膜からのバックグラウンドを抑えることにより、コントラストの高い蛍光像を得ることができ、さらに、有機成分の吸着等によりろ過特性が低下しづらく、通水性が高いろ過膜装置を提供する。
【解決手段】有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜と、ろ過膜のろ過面に形成された表面が親水化処理された金属薄膜とを有するろ過膜装置。このろ過膜装置は、ろ過膜のろ過面に金属薄膜を形成し、この金属薄膜表面に、通常、気体中で用いられている殺菌用紫外線ランプを用いて紫外線を照射して親水化処理することにより形成される。
【選択図】 図1
【解決手段】有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜と、ろ過膜のろ過面に形成された表面が親水化処理された金属薄膜とを有するろ過膜装置。このろ過膜装置は、ろ過膜のろ過面に金属薄膜を形成し、この金属薄膜表面に、通常、気体中で用いられている殺菌用紫外線ランプを用いて紫外線を照射して親水化処理することにより形成される。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ろ過膜装置及びろ過膜装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
精密ろ過(MF)膜や限外ろ過(UF)膜は、生化学、医療、食品工業、浄水処理等の分野で広く利用されている。これらのろ過膜を用いてろ過した後、原水の汚染度等を調査するために、ろ過膜の表面に捕獲されたろ過物質(例えば、たんぱく質、油脂、ウイルス、細菌等の有機成分)の分析・解析や計測をする場合がある。
【0003】
この有機成分を観察するには、蛍光顕微鏡で膜表面を観察して行うことになるが、ろ過膜が観察対象の微生物等と同様の有機成分からなるため、励起光によりバックグラウンドが高くなる。そのため、コントラストが付き難く、微生物の蛍光像が不鮮明になることが多かった。したがって、ろ過膜表面の観察を行う場合、高い蛍光像を得るためにはバックグラウンドを低く抑える必要がある。
【0004】
また、これらのろ過膜を用いてろ過する時に、有機成分がろ過膜表面へ吸着してろ過を妨げることもあった。
【0005】
ろ過膜の膜素材は大部分がポリカーボネート等の疎水性を有する樹脂素材であり、この疎水性のため、これらの素材から作られたろ過膜は撥水性を有することとなり、これが吸着の原因となっていた。
【0006】
吸着を起こすと、膜のろ過特性が急激に低下してしまい、これを回復させるには、逆洗浄や薬品洗浄等が用いられるが、膜表面に強く吸着している物質層は通常の洗浄ではなかなか除くことができない。
【0007】
その上、膜寿命の低下、作業工程の増加によるコストの上昇と効率の低下等も大きな問題として新たに生じており、現在使用されているMF膜やUF膜のほとんどがこの問題を抱えている。
【0008】
そのため、ろ過膜の通水性を高めるために、ろ過膜の表面を様々な方法で親水化処理してろ過性能を維持する試みが活発に行われてきた。その一つとして、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレートを含む架橋ポリマーにより孔内部及び膜の表面を覆うことにより親水化処理を行い、通水性を高める方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この方法によれば、ポリエチレングリコールジアクリレートモノマーの溶液に精密ろ過膜を浸漬した後、膜内部の孔壁全表面にわたって熱重合で架橋ポリマーを形成して被覆し、未反応モノマーを洗浄抽出した後、乾燥することによって親水化処理が施された精密ろ過膜を得ることに成功している。
【0010】
また、疎水性高分子膜と親水性高分子であるケン化度5〜50度%のポリビニルアルコールとを相分離状態として形成することにより親水性を高めた限外ろ過膜も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−10564号公報
【特許文献2】
特開2002−191947号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このように有機成分を観察する場合には、蛍光顕微鏡で膜表面を観察するため、ろ過膜からの励起光によるバックグラウンドが大きいと捕獲物の像が不鮮明となり、正確な観察が妨げられることとなる。そこで、バックグラウンドを抑えることがろ過膜の重要な機能の一つである。
【0013】
ところが、従来のろ過膜は樹脂製であるため、ろ過膜表面への有機成分の吸着防止対策は取られているが、微生物等の有機成分を蛍光顕微鏡で観察する際の蛍光像の鮮明化対策は取られていない。したがって、ろ過膜による励起光をカットしてバックグラウンドの影響を小さくし、蛍光顕微鏡でコントラストの高い蛍光像を得ることができるろ過膜装置が要求されている。
【0014】
また、ろ過膜は前記したように有機成分の吸着の問題もあるため、有機成分を含有する原水をろ過する場合に有機成分の吸着等によりろ過特性が低下することなく、通水性がよいろ過膜装置が求められていた。
【0015】
そこで、本発明は、有機成分を含有する原水をろ過して蛍光顕微鏡での微生物観察をする場合において、ろ過膜からのバックグラウンドを抑えることにより、コントラストの高い蛍光像を得ることができるろ過膜装置を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、有機成分を含有する原水をろ過する場合でも有機物成分の吸着等によりろ過特性が低下しづらく、通水性が高いろ過膜装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決しようとする手段】
本発明のろ過膜装置は、有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜と、ろ過膜のろ過面に形成された表面が親水化処理された金属薄膜とを有することを特徴としている。
【0018】
本発明の対象となるろ過膜としては、精密ろ過膜又は限外ろ過膜が適しているが、有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜であれば、他のろ過膜にも適用することができる。ろ過膜の膜厚は6〜200μmであることが好ましく、微細小孔の孔径は、0.05μm〜5.0μmの範囲であることが好ましい。
【0019】
ろ過膜装置に用いられる有機質膜としては、合成樹脂材料が適しており、特に、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルが好適している。
【0020】
ろ過膜のろ過面に形成される金属薄膜は、例えば、スパッタリング、蒸着、化学メッキ、化学メッキと電気メッキの組合わせ等により形成することができる。
【0021】
金属薄膜に用いられる金属としては、例えば、チタン、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金、ニッケル、コバルト、銀又は金などが例示され、通水性の点からチタンであることが好ましい。
【0022】
金属薄膜の厚さは、150〜1100Åのものを用いることができ、好ましくは200〜1000Åの範囲である。金属薄膜の厚さが150Å未満であると機械的強度の向上効果及び蛍光顕微鏡での観察する際のバックグラウンドの除去効果が不十分になるので好ましくなく、1100Åを越えると、金属薄膜を形成するためのコストが高くなり、かつ微細小孔の孔径が不均一になるので好ましくない。
【0023】
金属薄膜の親水化処理は、一般に金属薄膜にヒドロキシラジカルを作用させることによって行われ、通常、気体中で用いられている殺菌用紫外線ランプを用いて行う。金属薄膜の親水化処理は、殺菌用紫外線ランプが設置された中で樹脂製ろ化膜に金属薄膜をコーティングしたろ過膜((a)撥水性表面)の金属薄膜面に紫外線照射を行うと気相中に含まれる水分子が励起され、活性酸素の一種であるヒドロキシラジカル[・OH]が発生して、表面層に極僅かの金属酸化物層(例えば、金属薄膜がチタンである場合には酸化チタン層(TiO2))が形成される。その表面に水酸基[OH]が吸着され((b)水酸基[OH]吸着)、さらに、それに物理吸着水が結合して((c)吸着水[H2O]の構造化)、水との接触角が小さくなる。このように親水化処理ができれば水との接触角が小さくなり通水性が良くなると考えられる。
【0024】
通常、これら精密ろ過膜では吸引ろ過で400mmHg以上の真空度や限外ろ過膜ではろ過膜は加圧ろ過で低圧ろ過でも1kg/cm2以上で使用されている。したがって、親水化処理された樹脂製ろ化膜の場合、減圧・加圧いずれの場合でも水との接触角が50°以下で、通水性が良くなると言われている。そこで、金属薄膜の親水化処理の目標を水との接触角を50°以下にして実験確認した結果、水との接触角が50°以下、好ましくは30°以下で、通常の親水化処理された市販品と同等の通水性が得られることが確認できた。
【0025】
さらに、この親水化処理は、親水化処理を効率的に行うことができ、ろ過膜の性質が変化しないように、適当な相対湿度の雰囲気中で行うようにする。金属膜を減圧雰囲気下で形成した場合には、常温で、相対湿度が40〜80%RHの雰囲気下で親水化処理を行うことが好ましい。金属薄膜を無電解メッキや電解メッキで形成した場合には、金属表面に微量の水分が付着していることが多いから、これより低い相対湿度の雰囲気下でも紫外線照射による親水化処理が可能である。
【0026】
本発明のろ過膜装置の製造方法は、有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜のろ過面に金属薄膜を形成する金属薄膜形成工程と、金属薄膜の表面に紫外線を照射して金属薄膜に親水性を付与する親水化処理工程と、を有することを特徴とするものである。
【0027】
本発明において、ろ過膜装置のろ過面に金属薄膜を形成する方法としては、例えばスパッタリング、蒸着、化学メッキ、化学メッキと電気メッキの組み合わせ等により行うことができる。
【0028】
このとき、ろ過膜への金属薄膜の付まわりが良いことや密着性が高い点から、スパッタリング法で行うことが好ましい。付まわりが良く、密着性が高いと、ろ過膜の強度をより高めることができ、蛍光顕微鏡による観察を行う際のバックグラウンドも効率的に抑えることができる。
【0029】
また、本発明のろ過膜装置の金属薄膜に用いられる金属としては、ろ過膜の通水性を高めるものであれば特に制限されないが、チタン、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金、ニッケル、コバルト、銀又は金などを例示することができ、通水性の点からチタンであることが好ましい。
【0030】
金属薄膜の厚さは、強度、ろ過膜の特性及び蛍光顕微鏡での観察する際のバックグラウンドを効果的に抑制する観点から150〜1100Å、好ましくは200〜1000Åの範囲である。
【0031】
また、本発明のろ過膜装置の製造方法においては、ろ過膜装置のろ過面にコーティングされた金属薄膜を親水化処理することが必須の構成要件である。これは、単に金属薄膜を形成しただけでは、金属の撥水性のためにろ過速度が極端に低くなるためである。
【0032】
この親水化処理は、金属薄膜に紫外線照射を行ってヒドロキシラジカルを金属表面に作用させることによって行われ、通常、気体中で用いられている市販の殺菌用紫外線ランプを用いて行われる。ここでの親水化処理も、ろ過膜装置の説明で述べたのと同様の条件で測定したとき、金属薄膜に対する水滴の接触角が50°以下となるようにする。
【0033】
さらに、この親水化処理は、親水化処理を効率的に行うことができ、ろ過膜の性質が変化しないように、常温で、相対湿度が40〜80%RHの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0034】
【実施例】
次に、本発明のろ過膜装置の例を図1に示す。
図1に示したように、本発明のろ過膜装置1は、ポリカーボネート等からなる複数のろ過孔4を有する樹脂製精密ろ過膜2の膜表面に、真空雰囲気下で各種金属から選定された金属を用いてスパッタリング法で金属薄膜3を形成して、次いで、常温で相対湿度(%RH)を調整した大気雰囲気下で紫外線照射を行うことにより膜表面を親水化処理することによって作られたものである。なお、スパッタリング法で形成した金属薄膜3に対する水滴の接触角は90°以上であり、親水化処理は、接触角が50°以下となるまで行った。
【0035】
本発明で使用される樹脂製精密ろ過膜2は、その材質がポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル等であって、膜厚は6〜200μmで、ろ過孔4は小孔径で0.05μmから大孔径で5.0μmの範囲にある市販品から選定した。これら樹脂製ろ過膜2に蛍光を照射すると膜は励起されて励起光を発する。蛍光顕微鏡の支持膜として、これをそのまま使用すると本励起光がバックグラウンドを押し上げ、ろ過孔4に捕獲された細菌などの微生物を不鮮明にしてしまう。
【0036】
これら樹脂製精密ろ過膜上に金属薄膜を形成させることにより、適度の厚みの金属薄膜コートは下部の樹脂による「励起光を滲み込ませる現象」により下部の樹脂の情報を消滅させるであろうと仮定し、実験装置としてはスパッタ機(株式会社テクノファイン製 CFS−4ES−231)を使用して実験を行った。
【0037】
スパッタ用金属にはチタン、鉄、銅、ニッケル、コバルト、銀、金、白金、パラジウム及び白金/パラジウム合金を用いた。仮定した通り、下地樹脂による励起光は消滅してコントラストの高い蛍光像が得られた。但し、下地樹脂からの励起光は金属薄膜の厚みに非常に相関性があり、下地樹脂の厚みにも若干の相関性が見られた。
【0038】
金属薄膜の厚みが150Åより薄くなると励起光が透過し始めコントラストが悪くなり、膜厚が1100Åより厚くなると蛍光の透過が悪くなり輝度が低下することがわかった。下地樹脂の種類と厚みとを加味すると金属薄膜のより好ましい厚みは200〜1000Åである。
【0039】
金属としては金属薄膜で評価した結果、強度的にはチタンが最もよく、次に白金/パラジウム合金、白金、パラジウム、金、銀がほぼ同等で使用可能な膜を形成することができた。
【0040】
なお、本製法で、厚み:8μmのポリカーボネート樹脂製の精密ろ過膜2上にチタンをスパッタリング法で作製した金属チタン薄膜(厚み:約800Å)を使って通水試験を行ったところ、通水量が極端に低下した。
【0041】
チタンの薄膜上に水をたらして水との接触角を測定したところ、図2の(a)の撥水性表面に示したように、接触角が90度以上の撥水性表面に変質していることが判った。なお、図2は紫外線照射による親水化処理の機構を示した図であり、それぞれ上図は金属上の水分子の状態、下図は金属チタン薄膜上の水滴の状態を示したものである。
【0042】
図2に金属チタン薄膜の例で説明したように、金属チタン薄膜((a)撥水性表面)に紫外線照射を行うと気相中に含まれる水分子が励起され、活性酸素の一種であるヒドロキシラジカル[・OH]が発生して、表面層に極僅かの酸化チタン層(TiO2)が形成される。その表面に水酸基[OH]が吸着され((b)水酸基[OH]吸着)、さらに、それに物理吸着水が結合して((c)吸着水[H2O]の構造化)、水との接触角が小さくなる。このように親水化処理ができれば水との接触角が小さくなり通水性が良くなると考えられる。
【0043】
そこで、常温で相対湿度:70%RHの雰囲気下でポリカーボネート精密ろ過膜に蒸着された金属チタンコーティング薄膜に紫外線(UV)照射を行ったところ、水との接触角が45度に近い膜に改質されていた。実験の結果、その他の金属薄膜も紫外線照射をすることにより同様に親水化処理が可能であることを確認した。
【0044】
また、雰囲気中の常温で相対湿度が40%RHより低くなると長時間照射しないと親水化処理できず、80%RHより高くなると膜変質・変形が起こりろ過膜として使用できなかった。したがって、親水化処理を行う際の相対湿度の範囲は40〜80%RHであることが好ましい。
【0045】
(実施例1)
Whatman社製「Nuclepore Track−Etched Membrances」カタログNo.110624に記載のポリカーボネート樹脂製精密ろ過膜(直径:25mm、厚み:10μm、孔径:0.4μm)表面に、スパッタ機(株式会社テクノファイン製 型式:CFS−4ES−231)を用いて金属チタンの薄膜を形成した。金属棒としては金属チタンを用い、薄膜形成条件としては真空度:4×10−3Pa、アルゴン(Ar)流量:25cm3/min、スパッタ電力:100Wで稼動して、金属チタン薄膜の膜厚が800±10Åになる様にスパッタ時間を設定した。次に殺菌用紫外線ランプ(岩崎電気株式会社製 型式:WGL−65−2)の紫外線照射ランプを取付けた箱(600角×600H)の中で金属チタン薄膜に紫外線を照射して親水化処理を行った。箱の中の雰囲気湿度はあらかじめ加湿器により別の容器で温度(23±5℃)と湿度(40〜80%RH±5%RH)が制御された空気を送気して調整した。紫外線照射ランプはタングステン(W)ランプを使用し、3時間照射した。
【0046】
このようにして金属チタン薄膜表面を親水化処理したろ過膜装置を用いて、通水試験を行った。通水試験は、直径:25mmφ(有効面積:2.83cm3)メンブレンホルダーにセットした実施例のろ過膜装置に、限外ろ過膜(UF)処理した純水を、水温(20±1℃)で圧縮空気(0.7Kgf/cm2)で加圧給水することにより行った。通水試験結果は表1に示す。
【0047】
表1に、親水化処理した精密ろ過膜(実施例1)の性状を、ポリカーボネート樹脂製精密ろ過膜(比較例1)及び金属チタンコーティングした精密ろ過膜(比較例2)と比較して示した。また、親水化処理を施した実施例1のろ過膜をメンブレンホルダーにセットし、酵母菌を含む水を通水して酵母菌を採取し、透過型蛍光顕微鏡(株式会社ニコン製)を用いて観察したところ、非常にコントラストの鮮明な蛍光像が観察された。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例2)
実施例1と同じカタログ(No.110624)に記載のポリエステル樹脂製精密ろ過膜(直径:25mm、厚み:10μm、孔径:1.0μm)表面に、スパッタ機(株式会社テクノファイン製 型式:CFS−4ES−231)を用い、白金/パラジウム合金の薄膜を形成した。金属棒としては白金/パラジウム合金を用いて、薄膜形成条件としては真空度:4×10−3Pa、アルゴン(Ar)流量:25cm3/min、スパッタ電力:100Wで、スパッタ機を稼動して、白金/パラジウム合金薄膜の膜厚が900±10Åになる様にスパッタ時間を設定した。次に紫外線照射ランプを取付けた箱(600角×600H)の中で白金/パラジウム合金薄膜に紫外線を照射して、親水化処理を行った。箱の中の雰囲気湿度はあらかじめ加湿器により別の容器で温度(23±5℃)と湿度(40〜80%RH±5%RH)を制御した空気を送って調整した。紫外線照射ランプはタングステン(W)ランプを使用し、3.5時間照射した。
【0050】
このようにして白金/パラジウム合金薄膜表面を親水化処理したろ過膜装置を用いて、通水試験を行った。通水試験は実施例1と同じ方法で行った。通水試験結果を表2に示す。
【0051】
表2に、親水化処理した精密ろ過膜(実施例2)の性状を、ポリエステル樹脂製精密ろ過膜(比較例3)及び金属白金/パラジウム(50/50)合金を蒸着した精密ろ過膜(比較例4)と比較して示した。通水試験結果から親水化処理を施すと通水性が改善されることが証明された。また、親水化処理を施した実施例2のろ過膜をメンブレンホルダーにセットし、酵母菌を含む水を通水して酵母菌を採取し、透過型蛍光顕微鏡(株式会社ニコン製)を用いて観察したところ、非常にコントラストの鮮明な蛍光像が観察された。
【0052】
【表2】
【0053】
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製精密ろ過膜(直径:25mm、厚み:12μm、孔径:1.0)を用いて、実施例2と同様の白金/パラジウム合金薄膜形成及び親水化処理を行い、このろ過膜装置を用いて実施例2と同様の試験を行ったところ、実施例2のろ過膜装置と同等の通水性能を有することが確認できた。
【0054】
(実施例4)
実施例2の白金/パラジウム合金に代えて、金属薄膜形成用金属として白金、パラジウム、金、銀、ニッケル、コバルトを用いて、実施例2と同様の金属薄膜形成及び親水化処理を行って、通水試験を行ったところ、実施例2のろ過膜装置と同等の通水性能を有することが確認できた。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、ろ過によって原水中の有機成分を調べるような場合には、膜表面を蛍光顕微鏡により観察するが、本発明のろ過膜装置によれば、バックグラウンドが抑えられたコントラストの高い蛍光像を得ることができる。
【0056】
また、本発明のろ過膜装置は、有機成分を含有する原水中の溶質を膜分離する際、膜が有機成分の吸着による性能低下を起こしにくいため、通水性が極めて良好であり、膜寿命も長い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のろ過膜装置の模式図である。
【図2】紫外線照射による親水化処理の機構を示した図である。
【符号の説明】
1 ろ過膜装置
2 樹脂製精密ろ過膜
3 金属薄膜
4 ろ過孔
【発明の属する技術分野】
本発明は、ろ過膜装置及びろ過膜装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
精密ろ過(MF)膜や限外ろ過(UF)膜は、生化学、医療、食品工業、浄水処理等の分野で広く利用されている。これらのろ過膜を用いてろ過した後、原水の汚染度等を調査するために、ろ過膜の表面に捕獲されたろ過物質(例えば、たんぱく質、油脂、ウイルス、細菌等の有機成分)の分析・解析や計測をする場合がある。
【0003】
この有機成分を観察するには、蛍光顕微鏡で膜表面を観察して行うことになるが、ろ過膜が観察対象の微生物等と同様の有機成分からなるため、励起光によりバックグラウンドが高くなる。そのため、コントラストが付き難く、微生物の蛍光像が不鮮明になることが多かった。したがって、ろ過膜表面の観察を行う場合、高い蛍光像を得るためにはバックグラウンドを低く抑える必要がある。
【0004】
また、これらのろ過膜を用いてろ過する時に、有機成分がろ過膜表面へ吸着してろ過を妨げることもあった。
【0005】
ろ過膜の膜素材は大部分がポリカーボネート等の疎水性を有する樹脂素材であり、この疎水性のため、これらの素材から作られたろ過膜は撥水性を有することとなり、これが吸着の原因となっていた。
【0006】
吸着を起こすと、膜のろ過特性が急激に低下してしまい、これを回復させるには、逆洗浄や薬品洗浄等が用いられるが、膜表面に強く吸着している物質層は通常の洗浄ではなかなか除くことができない。
【0007】
その上、膜寿命の低下、作業工程の増加によるコストの上昇と効率の低下等も大きな問題として新たに生じており、現在使用されているMF膜やUF膜のほとんどがこの問題を抱えている。
【0008】
そのため、ろ過膜の通水性を高めるために、ろ過膜の表面を様々な方法で親水化処理してろ過性能を維持する試みが活発に行われてきた。その一つとして、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレートを含む架橋ポリマーにより孔内部及び膜の表面を覆うことにより親水化処理を行い、通水性を高める方法が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0009】
この方法によれば、ポリエチレングリコールジアクリレートモノマーの溶液に精密ろ過膜を浸漬した後、膜内部の孔壁全表面にわたって熱重合で架橋ポリマーを形成して被覆し、未反応モノマーを洗浄抽出した後、乾燥することによって親水化処理が施された精密ろ過膜を得ることに成功している。
【0010】
また、疎水性高分子膜と親水性高分子であるケン化度5〜50度%のポリビニルアルコールとを相分離状態として形成することにより親水性を高めた限外ろ過膜も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0011】
【特許文献1】
特開平9−10564号公報
【特許文献2】
特開2002−191947号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
このように有機成分を観察する場合には、蛍光顕微鏡で膜表面を観察するため、ろ過膜からの励起光によるバックグラウンドが大きいと捕獲物の像が不鮮明となり、正確な観察が妨げられることとなる。そこで、バックグラウンドを抑えることがろ過膜の重要な機能の一つである。
【0013】
ところが、従来のろ過膜は樹脂製であるため、ろ過膜表面への有機成分の吸着防止対策は取られているが、微生物等の有機成分を蛍光顕微鏡で観察する際の蛍光像の鮮明化対策は取られていない。したがって、ろ過膜による励起光をカットしてバックグラウンドの影響を小さくし、蛍光顕微鏡でコントラストの高い蛍光像を得ることができるろ過膜装置が要求されている。
【0014】
また、ろ過膜は前記したように有機成分の吸着の問題もあるため、有機成分を含有する原水をろ過する場合に有機成分の吸着等によりろ過特性が低下することなく、通水性がよいろ過膜装置が求められていた。
【0015】
そこで、本発明は、有機成分を含有する原水をろ過して蛍光顕微鏡での微生物観察をする場合において、ろ過膜からのバックグラウンドを抑えることにより、コントラストの高い蛍光像を得ることができるろ過膜装置を提供することを目的とする。
【0016】
さらに、本発明は、有機成分を含有する原水をろ過する場合でも有機物成分の吸着等によりろ過特性が低下しづらく、通水性が高いろ過膜装置を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決しようとする手段】
本発明のろ過膜装置は、有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜と、ろ過膜のろ過面に形成された表面が親水化処理された金属薄膜とを有することを特徴としている。
【0018】
本発明の対象となるろ過膜としては、精密ろ過膜又は限外ろ過膜が適しているが、有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜であれば、他のろ過膜にも適用することができる。ろ過膜の膜厚は6〜200μmであることが好ましく、微細小孔の孔径は、0.05μm〜5.0μmの範囲であることが好ましい。
【0019】
ろ過膜装置に用いられる有機質膜としては、合成樹脂材料が適しており、特に、ポリカーボネートやポリエチレンテレフタレートのようなポリエステルが好適している。
【0020】
ろ過膜のろ過面に形成される金属薄膜は、例えば、スパッタリング、蒸着、化学メッキ、化学メッキと電気メッキの組合わせ等により形成することができる。
【0021】
金属薄膜に用いられる金属としては、例えば、チタン、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金、ニッケル、コバルト、銀又は金などが例示され、通水性の点からチタンであることが好ましい。
【0022】
金属薄膜の厚さは、150〜1100Åのものを用いることができ、好ましくは200〜1000Åの範囲である。金属薄膜の厚さが150Å未満であると機械的強度の向上効果及び蛍光顕微鏡での観察する際のバックグラウンドの除去効果が不十分になるので好ましくなく、1100Åを越えると、金属薄膜を形成するためのコストが高くなり、かつ微細小孔の孔径が不均一になるので好ましくない。
【0023】
金属薄膜の親水化処理は、一般に金属薄膜にヒドロキシラジカルを作用させることによって行われ、通常、気体中で用いられている殺菌用紫外線ランプを用いて行う。金属薄膜の親水化処理は、殺菌用紫外線ランプが設置された中で樹脂製ろ化膜に金属薄膜をコーティングしたろ過膜((a)撥水性表面)の金属薄膜面に紫外線照射を行うと気相中に含まれる水分子が励起され、活性酸素の一種であるヒドロキシラジカル[・OH]が発生して、表面層に極僅かの金属酸化物層(例えば、金属薄膜がチタンである場合には酸化チタン層(TiO2))が形成される。その表面に水酸基[OH]が吸着され((b)水酸基[OH]吸着)、さらに、それに物理吸着水が結合して((c)吸着水[H2O]の構造化)、水との接触角が小さくなる。このように親水化処理ができれば水との接触角が小さくなり通水性が良くなると考えられる。
【0024】
通常、これら精密ろ過膜では吸引ろ過で400mmHg以上の真空度や限外ろ過膜ではろ過膜は加圧ろ過で低圧ろ過でも1kg/cm2以上で使用されている。したがって、親水化処理された樹脂製ろ化膜の場合、減圧・加圧いずれの場合でも水との接触角が50°以下で、通水性が良くなると言われている。そこで、金属薄膜の親水化処理の目標を水との接触角を50°以下にして実験確認した結果、水との接触角が50°以下、好ましくは30°以下で、通常の親水化処理された市販品と同等の通水性が得られることが確認できた。
【0025】
さらに、この親水化処理は、親水化処理を効率的に行うことができ、ろ過膜の性質が変化しないように、適当な相対湿度の雰囲気中で行うようにする。金属膜を減圧雰囲気下で形成した場合には、常温で、相対湿度が40〜80%RHの雰囲気下で親水化処理を行うことが好ましい。金属薄膜を無電解メッキや電解メッキで形成した場合には、金属表面に微量の水分が付着していることが多いから、これより低い相対湿度の雰囲気下でも紫外線照射による親水化処理が可能である。
【0026】
本発明のろ過膜装置の製造方法は、有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜のろ過面に金属薄膜を形成する金属薄膜形成工程と、金属薄膜の表面に紫外線を照射して金属薄膜に親水性を付与する親水化処理工程と、を有することを特徴とするものである。
【0027】
本発明において、ろ過膜装置のろ過面に金属薄膜を形成する方法としては、例えばスパッタリング、蒸着、化学メッキ、化学メッキと電気メッキの組み合わせ等により行うことができる。
【0028】
このとき、ろ過膜への金属薄膜の付まわりが良いことや密着性が高い点から、スパッタリング法で行うことが好ましい。付まわりが良く、密着性が高いと、ろ過膜の強度をより高めることができ、蛍光顕微鏡による観察を行う際のバックグラウンドも効率的に抑えることができる。
【0029】
また、本発明のろ過膜装置の金属薄膜に用いられる金属としては、ろ過膜の通水性を高めるものであれば特に制限されないが、チタン、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金、ニッケル、コバルト、銀又は金などを例示することができ、通水性の点からチタンであることが好ましい。
【0030】
金属薄膜の厚さは、強度、ろ過膜の特性及び蛍光顕微鏡での観察する際のバックグラウンドを効果的に抑制する観点から150〜1100Å、好ましくは200〜1000Åの範囲である。
【0031】
また、本発明のろ過膜装置の製造方法においては、ろ過膜装置のろ過面にコーティングされた金属薄膜を親水化処理することが必須の構成要件である。これは、単に金属薄膜を形成しただけでは、金属の撥水性のためにろ過速度が極端に低くなるためである。
【0032】
この親水化処理は、金属薄膜に紫外線照射を行ってヒドロキシラジカルを金属表面に作用させることによって行われ、通常、気体中で用いられている市販の殺菌用紫外線ランプを用いて行われる。ここでの親水化処理も、ろ過膜装置の説明で述べたのと同様の条件で測定したとき、金属薄膜に対する水滴の接触角が50°以下となるようにする。
【0033】
さらに、この親水化処理は、親水化処理を効率的に行うことができ、ろ過膜の性質が変化しないように、常温で、相対湿度が40〜80%RHの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0034】
【実施例】
次に、本発明のろ過膜装置の例を図1に示す。
図1に示したように、本発明のろ過膜装置1は、ポリカーボネート等からなる複数のろ過孔4を有する樹脂製精密ろ過膜2の膜表面に、真空雰囲気下で各種金属から選定された金属を用いてスパッタリング法で金属薄膜3を形成して、次いで、常温で相対湿度(%RH)を調整した大気雰囲気下で紫外線照射を行うことにより膜表面を親水化処理することによって作られたものである。なお、スパッタリング法で形成した金属薄膜3に対する水滴の接触角は90°以上であり、親水化処理は、接触角が50°以下となるまで行った。
【0035】
本発明で使用される樹脂製精密ろ過膜2は、その材質がポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレートのようなポリエステル等であって、膜厚は6〜200μmで、ろ過孔4は小孔径で0.05μmから大孔径で5.0μmの範囲にある市販品から選定した。これら樹脂製ろ過膜2に蛍光を照射すると膜は励起されて励起光を発する。蛍光顕微鏡の支持膜として、これをそのまま使用すると本励起光がバックグラウンドを押し上げ、ろ過孔4に捕獲された細菌などの微生物を不鮮明にしてしまう。
【0036】
これら樹脂製精密ろ過膜上に金属薄膜を形成させることにより、適度の厚みの金属薄膜コートは下部の樹脂による「励起光を滲み込ませる現象」により下部の樹脂の情報を消滅させるであろうと仮定し、実験装置としてはスパッタ機(株式会社テクノファイン製 CFS−4ES−231)を使用して実験を行った。
【0037】
スパッタ用金属にはチタン、鉄、銅、ニッケル、コバルト、銀、金、白金、パラジウム及び白金/パラジウム合金を用いた。仮定した通り、下地樹脂による励起光は消滅してコントラストの高い蛍光像が得られた。但し、下地樹脂からの励起光は金属薄膜の厚みに非常に相関性があり、下地樹脂の厚みにも若干の相関性が見られた。
【0038】
金属薄膜の厚みが150Åより薄くなると励起光が透過し始めコントラストが悪くなり、膜厚が1100Åより厚くなると蛍光の透過が悪くなり輝度が低下することがわかった。下地樹脂の種類と厚みとを加味すると金属薄膜のより好ましい厚みは200〜1000Åである。
【0039】
金属としては金属薄膜で評価した結果、強度的にはチタンが最もよく、次に白金/パラジウム合金、白金、パラジウム、金、銀がほぼ同等で使用可能な膜を形成することができた。
【0040】
なお、本製法で、厚み:8μmのポリカーボネート樹脂製の精密ろ過膜2上にチタンをスパッタリング法で作製した金属チタン薄膜(厚み:約800Å)を使って通水試験を行ったところ、通水量が極端に低下した。
【0041】
チタンの薄膜上に水をたらして水との接触角を測定したところ、図2の(a)の撥水性表面に示したように、接触角が90度以上の撥水性表面に変質していることが判った。なお、図2は紫外線照射による親水化処理の機構を示した図であり、それぞれ上図は金属上の水分子の状態、下図は金属チタン薄膜上の水滴の状態を示したものである。
【0042】
図2に金属チタン薄膜の例で説明したように、金属チタン薄膜((a)撥水性表面)に紫外線照射を行うと気相中に含まれる水分子が励起され、活性酸素の一種であるヒドロキシラジカル[・OH]が発生して、表面層に極僅かの酸化チタン層(TiO2)が形成される。その表面に水酸基[OH]が吸着され((b)水酸基[OH]吸着)、さらに、それに物理吸着水が結合して((c)吸着水[H2O]の構造化)、水との接触角が小さくなる。このように親水化処理ができれば水との接触角が小さくなり通水性が良くなると考えられる。
【0043】
そこで、常温で相対湿度:70%RHの雰囲気下でポリカーボネート精密ろ過膜に蒸着された金属チタンコーティング薄膜に紫外線(UV)照射を行ったところ、水との接触角が45度に近い膜に改質されていた。実験の結果、その他の金属薄膜も紫外線照射をすることにより同様に親水化処理が可能であることを確認した。
【0044】
また、雰囲気中の常温で相対湿度が40%RHより低くなると長時間照射しないと親水化処理できず、80%RHより高くなると膜変質・変形が起こりろ過膜として使用できなかった。したがって、親水化処理を行う際の相対湿度の範囲は40〜80%RHであることが好ましい。
【0045】
(実施例1)
Whatman社製「Nuclepore Track−Etched Membrances」カタログNo.110624に記載のポリカーボネート樹脂製精密ろ過膜(直径:25mm、厚み:10μm、孔径:0.4μm)表面に、スパッタ機(株式会社テクノファイン製 型式:CFS−4ES−231)を用いて金属チタンの薄膜を形成した。金属棒としては金属チタンを用い、薄膜形成条件としては真空度:4×10−3Pa、アルゴン(Ar)流量:25cm3/min、スパッタ電力:100Wで稼動して、金属チタン薄膜の膜厚が800±10Åになる様にスパッタ時間を設定した。次に殺菌用紫外線ランプ(岩崎電気株式会社製 型式:WGL−65−2)の紫外線照射ランプを取付けた箱(600角×600H)の中で金属チタン薄膜に紫外線を照射して親水化処理を行った。箱の中の雰囲気湿度はあらかじめ加湿器により別の容器で温度(23±5℃)と湿度(40〜80%RH±5%RH)が制御された空気を送気して調整した。紫外線照射ランプはタングステン(W)ランプを使用し、3時間照射した。
【0046】
このようにして金属チタン薄膜表面を親水化処理したろ過膜装置を用いて、通水試験を行った。通水試験は、直径:25mmφ(有効面積:2.83cm3)メンブレンホルダーにセットした実施例のろ過膜装置に、限外ろ過膜(UF)処理した純水を、水温(20±1℃)で圧縮空気(0.7Kgf/cm2)で加圧給水することにより行った。通水試験結果は表1に示す。
【0047】
表1に、親水化処理した精密ろ過膜(実施例1)の性状を、ポリカーボネート樹脂製精密ろ過膜(比較例1)及び金属チタンコーティングした精密ろ過膜(比較例2)と比較して示した。また、親水化処理を施した実施例1のろ過膜をメンブレンホルダーにセットし、酵母菌を含む水を通水して酵母菌を採取し、透過型蛍光顕微鏡(株式会社ニコン製)を用いて観察したところ、非常にコントラストの鮮明な蛍光像が観察された。
【0048】
【表1】
【0049】
(実施例2)
実施例1と同じカタログ(No.110624)に記載のポリエステル樹脂製精密ろ過膜(直径:25mm、厚み:10μm、孔径:1.0μm)表面に、スパッタ機(株式会社テクノファイン製 型式:CFS−4ES−231)を用い、白金/パラジウム合金の薄膜を形成した。金属棒としては白金/パラジウム合金を用いて、薄膜形成条件としては真空度:4×10−3Pa、アルゴン(Ar)流量:25cm3/min、スパッタ電力:100Wで、スパッタ機を稼動して、白金/パラジウム合金薄膜の膜厚が900±10Åになる様にスパッタ時間を設定した。次に紫外線照射ランプを取付けた箱(600角×600H)の中で白金/パラジウム合金薄膜に紫外線を照射して、親水化処理を行った。箱の中の雰囲気湿度はあらかじめ加湿器により別の容器で温度(23±5℃)と湿度(40〜80%RH±5%RH)を制御した空気を送って調整した。紫外線照射ランプはタングステン(W)ランプを使用し、3.5時間照射した。
【0050】
このようにして白金/パラジウム合金薄膜表面を親水化処理したろ過膜装置を用いて、通水試験を行った。通水試験は実施例1と同じ方法で行った。通水試験結果を表2に示す。
【0051】
表2に、親水化処理した精密ろ過膜(実施例2)の性状を、ポリエステル樹脂製精密ろ過膜(比較例3)及び金属白金/パラジウム(50/50)合金を蒸着した精密ろ過膜(比較例4)と比較して示した。通水試験結果から親水化処理を施すと通水性が改善されることが証明された。また、親水化処理を施した実施例2のろ過膜をメンブレンホルダーにセットし、酵母菌を含む水を通水して酵母菌を採取し、透過型蛍光顕微鏡(株式会社ニコン製)を用いて観察したところ、非常にコントラストの鮮明な蛍光像が観察された。
【0052】
【表2】
【0053】
(実施例3)
ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂製精密ろ過膜(直径:25mm、厚み:12μm、孔径:1.0)を用いて、実施例2と同様の白金/パラジウム合金薄膜形成及び親水化処理を行い、このろ過膜装置を用いて実施例2と同様の試験を行ったところ、実施例2のろ過膜装置と同等の通水性能を有することが確認できた。
【0054】
(実施例4)
実施例2の白金/パラジウム合金に代えて、金属薄膜形成用金属として白金、パラジウム、金、銀、ニッケル、コバルトを用いて、実施例2と同様の金属薄膜形成及び親水化処理を行って、通水試験を行ったところ、実施例2のろ過膜装置と同等の通水性能を有することが確認できた。
【0055】
【発明の効果】
以上のように、ろ過によって原水中の有機成分を調べるような場合には、膜表面を蛍光顕微鏡により観察するが、本発明のろ過膜装置によれば、バックグラウンドが抑えられたコントラストの高い蛍光像を得ることができる。
【0056】
また、本発明のろ過膜装置は、有機成分を含有する原水中の溶質を膜分離する際、膜が有機成分の吸着による性能低下を起こしにくいため、通水性が極めて良好であり、膜寿命も長い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のろ過膜装置の模式図である。
【図2】紫外線照射による親水化処理の機構を示した図である。
【符号の説明】
1 ろ過膜装置
2 樹脂製精密ろ過膜
3 金属薄膜
4 ろ過孔
Claims (9)
- 有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜と、
前記ろ過膜のろ過面に形成された表面が親水化処理された金属薄膜と、
を有することを特徴とするろ過膜装置。 - 前記ろ過膜が、精密ろ過膜又は限外ろ過膜であることを特徴とする請求項1記載のろ過膜装置。
- 前記有機質膜が、ポリカーボネート又はポリエステルからなることを特徴とする請求項1又は2記載のろ過膜装置。
- 前記金属薄膜が、蒸着、スパッタリング及び化学メッキのいずれか1つの方法により、前記ろ過膜のろ過面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載のろ過膜装置。
- 前記金属薄膜が、150〜1100Åの厚さであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載のろ過膜装置。
- 有機質膜に多数の微細小孔を形成してなるろ過膜のろ過面に金属薄膜を形成する金属薄膜形成工程と、
前記金属薄膜の表面に紫外線を照射して前記金属薄膜に親水性を付与する親水化処理工程と、
を有することを特徴とするろ過膜装置の製造方法。 - 前記金属薄膜形成工程が、ろ過膜に金属をスパッタリング法により付着させるスパッタリング工程であることを特徴とする請求項6記載のろ過膜装置の製造方法。
- 前記親水化処理工程が、前記金属薄膜の表面にヒドロキシラジカルを作用させることにより行われることを特徴とする請求項6又は7記載のろ過膜装置の製造方法。
- 前記親水化処理工程が、相対湿度40〜80%RHの雰囲気下で紫外線を照射する工程であることを特徴とする請求項6乃至8のいずれか1項記載のろ過膜装置の製造方法。
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EP3228381A1 (de) * | 2016-04-08 | 2017-10-11 | Aqua free Membrance Technology GmbH | Beschichtete polymermembran mit einer porenstruktur zur filtration von wasser und verfahren zu deren herstellung |
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-
2002
- 2002-11-22 JP JP2002338866A patent/JP2004167445A/ja not_active Withdrawn
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