本発明の構成を説明するに先立ち、本明細書で用いる用語の説明を以下に述べる。明示的に他の定義を付した場合を除き、原則として本明細書で用いる用語は以下に定義する意味に用いることとする。
「役」とは、図柄の組み合わせのうち遊技価値を与えるものをいう。たとえば「赤7役」、「プラム役」、「ベル役」などがある。
「賞群」とは、1つ若しくは複数の役の集まり又は役となる特定図柄の組み合わせ以外の役とは異なる遊技価値を与える複数の図柄組み合わせの集まりをいう。1つの役からなる賞群の場合は、形式的に役と賞群とは一致する。賞群の名称には、たとえば「BB賞」、「RB賞」、「小役賞1(又はスイカ賞)」、「小役賞2(又はベル賞)」、「小役賞3(チェリー賞)」、「再遊技賞」などがある。なお、役(特定図柄組み合わせ)がないにも拘わらず、遊技価値を得ることができる図柄の組み合せがある場合にはこれも賞群にふくまれる。
「乱数抽出」とは、数列発生器から発生する複数の数値の中から1つの数値をサンプリングするまでのことをいう。
「賞群抽選テーブル」とは、複数の賞群毎に定められている数値の幅(抽選区分)の集まりをいう。
「内部抽選」とは、乱数抽出の結果サンプリングされた数値と賞群抽選テーブルを用いて当選又はハズレを決定することをいう。
「当選」とは、いずれかの賞群に応じて入賞する権利が発生することをいう。
「入賞する権利」とは内部抽選の結果与えられる入賞の前提となる権利である。入賞する権利は入賞ライン上に役を構成する図柄を揃えることによって入賞に転換する。入賞する権利は賞群ごとに与えられ、次回ゲームに持ち越すことが可能な入賞する権利と持ち越すことができない入賞する権利が含まれる。
「ハズレ」とは、入賞する権利が発生しないことをいう。
「当選の持越し」とは、前回以前のゲームにおいて持ち越した入賞する権利が存在することをいう。たとえば当選フラグによって抽選の結果を制御する場合は、当選の持ち越しは当選フラグをクリアしないことにより実現され、当選持越し状態は次回ゲームの内部抽選に関わらず当該賞群の当選フラグが立っている(対応するビットが真)状態をいう。
「入賞」とは、内部抽選によって当選した後、有効な入賞ライン上に役が揃うことをいう。
「当選フラグ」とは、当選の結果発生した「入賞する権利」を記憶したデータをいう。
「当選フラグの持ち越し」とは、当選したにも拘わらず入賞しなかったゲームのフラグが次のゲームでも消去されていないことをいう。
「ベット操作」とは、遊技価値によって入賞ラインを有効化する操作をいう。ベット操作には、遊技価値媒体(例えばメダル)を遊技機に供給する(たとえばメダル投入口からメダルを投入する)方法、クレジットされている遊技価値媒体を機械操作で供給する(たとえばクレジットされているメダルをベットボタンで供給する)方法および両方法を併用する方法がある。再遊技賞で始まるゲームでのベット操作は、前ゲームで有効化された入賞ラインと同じ入賞ラインが自動的に有効化されることで行われる。
「クレジット操作」とは、遊技価値を遊技機に供給することにより遊技価値を遊技機の内部に貯留する操作または貯留された遊技価値を精算する操作をいう。「クレジット操作」には、遊技価値媒体(例えばメダル)を遊技機に供給する(たとえばメダル投入口からメダルを投入する)方法、プリペイドカード等遊技価値を記録した遊技価値媒体から遊技価値の一部または全部を遊技機に供給する方法および両方法を併用する方法がある。なお、メダルを投入する方法(操作)は、前記したベット操作の一つにも該当するが、1ゲームに必要な最大枚数(たとえば3枚)までのメダル投入はベット操作であり、最大枚数を超えるメダル投入はクレジット操作である。
「ゲーム」とは、ベット操作から次のベット操作が可能になるまでの期間の1回の遊技又はその遊技の繰り返しをいう。ゲームには、「通常ゲーム」、「高当選通常ゲーム」、「ジャックゲーム」、「報知ゲーム」、「再遊技当選高確率ゲーム」、「CTゲーム」等の各種態様がある。「通常ゲーム」とは、内部抽選によって複数の賞群およびハズレのいずれかが抽選されるゲームをいう。「高当選通常ゲーム」とは、当選率が通常ゲームより高い通常ゲームをいう。「ジャックゲーム」とは、内部抽選によって1の賞群かハズレのいずれかが抽選されるゲームをいう。「報知ゲーム」とは、当選した特定の賞群に関連した情報を常に遊技者に報知するゲームをいう。「再遊技当選高確率ゲーム」とは、ハズレをなくすあるいは少なくするかわりに再遊技(リプレイ)賞の当選確率を高くしたゲームをいう。「CTゲーム」とは、停止操作のみで少なくとも1つのリールを停止して、特定の賞群の中の役の入賞の有無を決めるゲームをいう。
「報知」とは、内部利益等何らかの利益が存在することを遊技者に知らせることをいう。代表的には当選持越し状態を知らせること、特殊ゲームを行う状態にあることを知らせることなどがある。報知はその内容を完全に伝える場合の他、不完全に伝える場合(たとえば確率的に伝える場合)がある。
「遊技」とは、一般に許可営業の娯楽を指すが、より一般的な娯楽の意味の遊戯をも遊技に含めることとする。
「遊技価値」とは、遊技者が得る価値をいう。配当、購入によって遊技者が入手する遊技メダルは遊技価値の一例である。賞群又は役によって定まる遊技価値には配当、高当選通常ゲームへの移行および再遊技等がある。なお、プリペイド形式のカード等に電子的または磁気的情報として遊技価値の額または量が記録される場合もある。
「メダル」とは、遊技価値の一態様であって、クレジット操作によって遊技装置の内部に貯留される遊技価値、あるいは、ベット操作の前提として遊技装置に供給される遊技価値である。メダルには「有体メダル」と「無体メダル」を含む。「有体メダル」は、実体的有形的に実存する遊技価値である。有体メダルは通常メダル形状の金属体で構成される。メダル投入口に投入された有体メダルを特に「投入メダル」と称する。「無体メダル」は有体メダルに相当する遊技価値であるが、無形の情報として取り扱われる遊技価値である。無体メダルは遊技価値媒体に記録され、メダル貸し機によって読み出され、貸出メダル情報として遊技装置に供給される。
「遊技価値媒体」とは、遊技価値の一態様である無体メダルの額または残高を記録した情報記録媒体である。プリペイドカード、遊技場固有の会員カードとして供給される記録カード等がある。遊技価値媒体は、カード形状のものに限られず、コイン形状等のものもある。遊技価値媒体への情報記録の方式は、磁気記録、電子的記録、光磁気記録、光記録等が例示できる。遊技価値媒体からの情報の読み取りあるいは遊技価値媒体への情報の書き込みの方式は、磁気ヘッドによる方式、電磁波を用いる方式、光プローブを用いる方式、等各種の方式を適用できる。
また、「遊技価値媒体」には、たとえばインターネット等の通信手段によって接続されているデータ記録媒体や、携帯電話等適当な通信手段によってデータ通信が可能な携帯情報端末を含む。これらインターネット接続等された記録領域や携帯電話等携帯情報端末の記録領域に遊技価値の額または残高を記録し、メダル貸し機に遊技価値を提供することが可能である。
以下、本発明の構成その他を説明する。前記課題を解決するため、本発明は以下のような構成を有する。なお、以下の説明において、本明細書で開示する発明について番号を付す。ただし、本番号はあくまでも便宜的な指標であり、各発明の技術的範囲の広狭の順番や従属関係等を示すものではない。
本明細書で開示する第1発明の遊技装置は、投入メダルを検出する毎に所定の状態変化を示す第1カウント信号を生成するメダル検出部と第1制御基板と第2制御基板とを備える。そして、第2制御基板には、メダル貸し機との間でメダル貸出信号を通信する手段と、メダル貸出信号を利用した無体メダルの貸出取引が成立した場合に、その取引枚数相当の投入メダルが検出されたのと同様な第2カウント信号を生成する手段と、を含む。第1制御基板には、第1カウント信号および第2カウント信号を受信する手段と、受信した第1カウント信号または第2カウント信号に応じたメダル枚数のベット操作またはクレジット操作を行う手段とを含む。
このような第1発明の遊技装置では、第2制御基板がメダル貸し機との通信機能の大部分を担い、さらに第2制御基板は第1カウント信号と同様な第2カウント信号を生成する。このため、第1制御基板の処理負荷を著しく軽減できる。すなわち、無体メダルの取引枚数を示す第2カウント信号は、投入メダルが検出されたのと同様な信号、つまり、投入または供給枚数を示す限りにおいて第1カウント信号と全く同じ信号である。このため、第1制御基板においては第1カウント信号と第2カウント信号とを区別することなく同様に取り扱える。よって第1制御基板における投入メダルのカウント機能と無体メダルのカウント機能とをほとんど同一のハードウェア構成およびソフトウェア構成で実現することが可能になる。つまり、従来技術である投入メダルのカウント(第1カウント信号)に加えて、メダル貸し機から貸し出された無体メダルのカウント(第2カウント信号)にも対応する遊技装置であっても、第1制御基板に適用する技術はほとんど従来技術を流用することが可能であり、遊技装置の設計開発の負荷の低減、設計開発期間の短縮、さらに法律等に定める承認が得やすいという効果を得ることができる。なお、比較的複雑なメダル貸し機との通信機能は、第2制御基板で実現する。第2制御基板の性能等に対する規制は第1制御基板よりも少ないので、設計が容易となり、また、法律等による承認も受けやすくなる。
また、仮に、投入メダルに対応する従来機種とメダル貸し機からの無体メダルの貸出に対応する新規機種とを別個に設計開発する場合であっても、それらの第1制御基板を共通化することができる。このため、複数機種を同時に設計開発する場合の期間が短縮され、また、複数機種について同時に法律等に定める承認を受ける場合の承認が受けやすくなる。
次に、前記第1発明を特定するに際して用いた用語の本明細書における解釈を以下に説明する。
「メダル検出部」とは、遊技者によって遊技装置に投入されたメダルを検出する機能を持つ遊技装置の一部装置である。なお、メダル検出部にメダルが導入される前に、予め投入される有体メダルの真偽を判定し、真メダルのみをメダル検出部に振り分ける操作が行われる。偽メダルはメダル払出口に振り分けられる。メダル検出部はカウント信号を生成する。メダル検出部には、光センサ等のメダル検出手段を備え、振り分けられた真メダルを検出して第1カウント信号を生成する。ここで、「カウント信号」とは、そのまま第1制御基板に受信される信号であって、ベット操作またはクレジット操作に供されるメダルの枚数情報を与える信号である。カウント信号によって伝送されるメダルの枚数情報は、有体メダルの枚数情報あるいは無体メダルの枚数情報の何れをも含む。本明細書では、メダル検出部によって生成される有体メダルに関するカウント信号を第1カウント信号とし、後に説明する第2制御基板によって生成される無体メダルに関するカウント信号を第2カウント信号とする。
「第1カウント信号」とは、投入メダルを検出する毎に所定の状態変化を示すカウント信号である。「所定の状態変化」は、予め設計された信号の状態変化の態様である。第1カウント信号の場合の「所定の状態変化」は、1枚の投入メダルが検出されれば必ず発生する信号状態の変化であり、検出されない場合には発生することがない信号状態の変化である。なお、ここで「必ず発生」や「発生することがない」との表現を用いているが、実質的な使用状態において相当な確率で「必ず発生」することや「発生することがない」ことを期待できる、という意味である。確率的には設計が意図しない信号状態変化の「未発生」や「発生」があり得ることは勿論である。
第1カウント信号の「所定の状態変化」の具体的な例としては、たとえば投入メダルが検出されるごとに第1状態から第2状態に変化する矩形波信号の状態変化を例示できる。その他パルス波、任意の波形パターンの状態変化を例示できる。また、1枚の投入メダルが検出されるごとに1つの波形パターン(たとえば矩形波)が生成されることに限られず、複数の波形パターンの発生(たとえば1枚の投入メダルの検出に対して2つのメダル検出部を用いて2つの矩形波の発生)があってもよい。
「第1制御基板」は、回胴式遊技装置に備えられる制御基板のひとつであって、カウント信号を受取り、そのカウント信号を元にベット操作またはクレジット操作を行う処理を制御する機能を含む制御基板である。第1制御基板が、これら以外の機能たとえば、スタートレバー操作を契機とする内部抽選、ストップボタン押下のタイミング取得、回胴制御、入賞判定、配当の実施等の機能を含んでも構わない。なお、本発明の「第1制御基板」には、無体メダルの取引情報を取得するための特別な通信機能を備えない。後に説明する第2カウント信号(無体メダルのカウント信号)を受信する機能は、従来技術である第1カウント信号を受信する機能を実現するハードウェアおよびソフトウェアで実現が可能である。なお、「第1制御基板」は、一般に主制御基板と称されるものを想定する。しかし、本発明の第1制御基板は、前記の通りカウント信号受信機能、ベット操作またはクレジット操作実行機能を少なくとも有するものであれば十分である。一般に主制御基板が有する前記したような機能を含んでもよく、また、含まなくても良い。一般的な主制御基板の持つ機能を第1制御基板に含まない場合、主制御基板の全機能は、第1制御基板を含む複数の制御基板で実現されることになる。
「制御基板」の用語は、通常、中央演算処理装置(CPU)、主メモリ、不揮発性メモリ、外部入出力ポート、これらを相互に接続するバス等のハードウェア資源を指称する用語である。しかし、本明細書では、制御基板が処理する機能を実現するためのソフトウェアを含めて制御基板の用語を用いる。つまり制御基板の実現する機能に必要なソフトウェア(プログラムやプログラムモジュール等)が主メモリや不揮発性メモリに導入され記録されている限り、このようなソフトウェアも制御基板を構成する要素の一つである。また、このようなソフトウェアが制御基板の外部に記録されている場合であっても、入出力ポート等を介してコマンド(命令)やデータがCPUにロードされる限り制御基板を構成するソフトウェアである。なお、制御基板には、前記したような部品(中央演算処理装置、主メモリ、不揮発性メモリ、外部入出力ポート、これらを相互に接続するバス等)の全部あるいは一部を必ずしも含む必要はない。
「第2制御基板」とは、第1制御基板が行う処理以外の処理の制御を行う制御基板であり、少なくともメダル貸し機との間の通信機能と第2カウント信号の生成機能とを実現する処理手段を含む。すなわち、第2制御基板の行い得る処理は、第1制御基板が少なくとも実行する処理(カウント信号受信機能、および、ベット操作またはクレジット操作実行機能を実現する処理)以外の処理である。したがって、第2制御基板が主制御基板の機能を実現する場合もある。第2制御基板としていわゆる副制御基板を想定する場合、たとえば報知操作、演出制御操作等を処理し制御する。演出制御操作とは、ゲームの進行に従って音響出力制御、ランプ制御、画像表示制御等を行う操作であり、報知操作とは、そのゲームにおける内部抽選の結果等を遊技者に知らしめる操作である。第2制御基板は単一である必要はなく、複数の第2制御基板が存在してもよい。たとえば演出処理、報知処理を行う第2制御基板と、メダル貸し機との通信機能および第2カウント信号を生成する機能を実現する第2制御基板とを複数有することが可能である。その他任意の機能あるいは機能の組み合わせを複数の第2制御基板に分割して実現してもよい。
なお、本発明の説明で用いる第1制御基板および第2制御基板は、いわゆる主制御基板および副制御基板と称させる制御基板の区分けとは概念的に相違するものである。すなわち、主制御基板は法律等でその性能等に規制を受ける制御基板であり、副制御基板は法律等で規制を受けないかあるいは主制御基板より規制の緩やかな制御基板である。一方、本発明の第1制御基板は少なくともメダルのカウント信号を受信し、ベット操作またはクレジット操作を行う機能を実現する処理手段を含む制御基板であり、第2制御基板はメダル貸し機との通信および第2カウント信号を生成する機能を実現する処理手段を含む制御基板である。したがって、第1制御基板は主制御基板または複数の制御基板の一部であるが、第2制御基板は主制御基板の一部であっても良く、また、副制御基板の全部もしくは一部であっても良い。
「メダル貸し機」とは、有体メダルまたは無体メダルを貸し出す装置である。通常、現金の投入あるいは遊技価値媒体からの遊技価値の減算の代償としてメダルの貸し出しが行われる。なお、有体メダルあるいは無体メダルの貸し出しに特化したメダル貸し機も存在する。メダル貸し機から無体メダルを貸し出す場合には、遊技装置との間で通信を行ってメダルの貸出取引を行う。
「メダルの貸出取引」とは、遊技装置とメダル貸し機との間で行われるメダルの貸出に関する取引である。メダル貸出スイッチの押下等遊技者の意思を反映した申込とその申込に対するメダル貸し機側の承諾によってメダル貸出契約が成立する。そしてメダル貸出契約の履行であるメダルの貸出と対価の決済を以って貸出取引が成立(完了)する。なお、無体メダルの貸出取引は、メダル貸出信号を利用して実行される。
「メダル貸出信号」とは、無体メダルの貸出取引が実行される際に利用される信号群である。無体メダルの貸出取引は、単一の信号を利用して行うことも可能であるが、前記したような申込、承諾、メダル貸出、対価の決済等一連の処理が組み合わせて実行される。このため複数の信号を組み合わせて貸出取引を行うことが好ましい。この場合、メダル貸出信号は複数の信号からなる信号群を総称することになる。メダル貸出信号が単一の信号の場合として、シリアルインタフェイスを利用した通信信号を例示できる。
「第2カウント信号」とは、第2制御基板で生成されるカウント信号であって、メダル貸出信号を利用した無体メダルの貸出取引が成立した場合に、その取引枚数相当の投入メダルが検出された場合に生成される信号と同様な信号である。すなわち第2カウント信号は、無体メダルの取引枚数を反映したカウント信号である。第2カウント信号は、第1カウント信号と同様なカウント信号であるため、従来技術の大部分を流用した技術で第1制御基板における第2カウント信号の処理が行える。
「取引枚数」とは、一度のメダル貸出取引によって取引される無体メダルの枚数である。1枚のメダルあるいは複数メダル等任意のメダル枚数を設定できる。たとえば1度の取引で10枚のメダルを取引枚数とすることが出来る。
「取引枚数相当の投入メダルが検出されたのと同様な信号」とは、無体メダルの貸出取引がなされた際に、その無体メダルの取引枚数相当の投入メダルが、実際には投入口にメダルが投入されていないものの、メダル検出部がメダルの投入を検出したとすれば生成するであろう信号、という意味である。たとえば、取引枚数が10枚の場合に、一度の無体メダルの貸出取引が成立すると、10枚の投入メダルがメダル検出部で検出された場合に生ずるであろう信号(第2カウント信号)を第2制御基板が生成する。
「カウント信号を受信する手段」とは、カウント信号の状態変化を検出することが可能な手段をいう。この状態変化は何らかの処理を開始する契機を与えることができる。通常信号を受信する手段には、信号を検知する他、信号に変調が加えられている場合は復調する手段をも含む場合がある。ここでは、信号の状態変化が検知できれば、前記手段に該当するものとする。
「カウント信号に応じたメダル枚数」とは、カウント信号が示す所定の状態変化の繰り返し数に相当するメダル枚数という意味である。すなわち、カウント信号が示す所定の状態変化は、前記した通り1枚の投入メダルを検出した場合に生ずる状態変化であるから、この状態変化の繰り返し数が投入された無体メダルの枚数または取引された無体メダルの枚数を表すことになる。カウント信号に応じたメダル枚数とは、この投入された有体メダル枚数または取引された無体メダル枚数を指す。
「ベット操作またはクレジット操作」は、何れかの操作が実行されることを意味する。何れの操作が優先されるかは遊技装置の設計事項であり、後に選択可能であっても良い。ベット操作が優先される場合、最大ベット枚数を超えるカウント信号の受信は、クレジット操作に提供される。
なお、ここで説明した用語の解釈は、以下に説明する第2発明以降の発明についても同様に適用するものとする。また、第2発明以降の発明で説明した用語の解釈に付いても同様とする。
前記した第1発明において以下のような構成要件をさらに含む第2発明を開示することができる。すなわち、第2発明の第2制御基板には、第2ブロッカ信号に応じて無体メダルの貸出取引を許可または禁止する手段をさらに含むことができる。また、第1制御基板には、クレジット数が所定数に達した場合に所定の状態変化を示す第1ブロッカ信号を生成する手段をさらに含むことができる。さらに、第1ブロッカ信号に応じて有体メダルの投入を許可または禁止する手段をさらに含むことができる。また、第1制御手段には、クレジット数が所定数から取引枚数を減じた数を超えた場合に所定の状態変化を示す第2ブロッカ信号を生成する手段を含むこともできる。
このような第2発明によれば、ブロッカ信号を生成し、これを用いて有体メダルのメダル検出部への投入あるいは無体メダルの取引を制限することができる。
ここで、「クレジット数」とは、クレジットされている無体メダルの枚数をいう。「所定数」とは、遊技装置が予め記録している数であり、通常クレジットの最大数である。「所定の状態変化」は前記したとおり予め設計された信号の状態変化の態様であるが、ここでいうブロック信号の状態変化は、たとえば許可状態あるいは禁止状態の何れかの状態にある(その状態を維持すること)を含む。
「第1ブロッカ信号」とは、第1制御基板によって生成される信号であり、クレジット数が所定数に達した場合に所定の状態変化を示す信号である。所定数をたとえば50枚とすると、クレジット数が50になったときに第1ブロッカ信号を生成し、第1ブロッカ信号を受けた有体メダルの投入を許可または禁止する手段が、有体メダル投入を制限する。メダル投入の制限方法は、有体メダルを投入出来ないように投入口を塞ぐ方式、あるいは、投入された有体メダルを払出口に払い出す方式が例示できる。
「第2ブロッカ信号」とは、クレジット数が所定数から取引枚数を減じた数を超えた場合に所定の状態変化を示す信号である。所定数をたとえば50枚とし、取引枚数を10枚とすると、クレジット数が40を超えたときに第2ブロッカ信号を生成し、第2ブロッカ信号を受けた第2制御基板が、無体メダルの取引を制限する。取引の制限方法は、メダル貸出信号あるいはメダル貸出信号に含まれる取引許可信号を禁止状態にする方式が例示できる。
「ブロッカ信号」は、第1ブロッカ信号および第2ブロッカ信号を総称する名称である。ブロッカ信号は、有体メダルの投入を許可または禁止する手段あるいは第2制御基板で受信され、その信号状態に応じてメダルの投入あるいは取引を許可または禁止する指令を与える。ブロッカ信号の信号状態は、代表的には許可または禁止の2状態である。なお、遊技装置の電源が未投入の場合、ブロッカ信号は禁止状態とすることができる。これにより、電源未投入時の有体メダルの誤投入メダルをメダル払出口に払い出すことができる。この意味では、ブロッカ信号は、メダル投入あるいはメダル取引を許可する信号と捉えることができる。
「無体メダルの貸出取引を禁止する手段」には、貸出取引を事前に禁止する手段に加えて、貸出取引の成立後にその取引を無効にすることによって結果的に貸出取引を禁止する手段も含む。たとえばメダル貸出信号を利用して取引を行った後に、貸しメダルとして受け取った無体メダルの情報を破棄し、同時に決済された遊技価値を遊技価値媒体に加算することによって貸出取引を無効化する場合も、貸出取引の禁止の概念に含む。なお、貸出取引を禁止する手段には、たとえばメダル貸し機の機能の全体を制限する等メダル貸出信号を利用しない手段をも含む。メダルの貸出取引がメダル貸出信号を利用してソフトウェア的に実現される場合は、その許可または禁止の手段もソフトウェアを利用して実現できることは勿論である。
「有体メダルの投入を禁止する手段」には、有体メダルの投入自体を禁止する手段に加えて、メダルの投入自体は受けるがその後メダルを排出することによって結果的にメダル投入を禁止する手段も含む。たとえば、投入されたメダルをメダル払出口に排出する手段はその一例である。また、一旦有体メダルの投入を検出しこれをクレジットに加算した後に、クレジットから減算し相当する有体メダルを払出口に払い出す手段も有体メダルの投入を禁止する手段に含まれる。
本明細書で開示する第3発明の遊技装置は、投入メダルを検出する毎に所定の状態変化を示す第1カウント信号を生成するメダル検出部と第1制御基板と第2制御基板とを備える。そして、第2制御基板には、メダル貸し機との間でメダル貸出信号を通信する手段と、メダル貸出信号を利用した無体メダルの貸出取引が成立した場合に、その取引枚数相当の投入メダルが検出されたのと同様な第2カウント信号を生成する手段と、第1カウント信号を受信する手段と、第1カウント信号と第2カウント信号との合成信号を生成する手段と備える。第1制御基板には、合成信号を受信する手段と、受信した合成信号に応じたメダル枚数のベット操作またはクレジット操作を行う手段とを備える。
このような第3発明の遊技装置では、第1カウント信号と第2カウント信号を共に第2制御基板で受信し、その合成信号を生成する。生成される合成信号はカウント信号同様の信号なので、第1発明の場合と同じ効果を享受することができる。さらに、第3発明では、第1制御基板のカウント信号を受信し処理する部分に関しては、従来技術をそのまま流用することができるので、設計開発の負担軽減および法律当に定める承認の受け易さをさらに増加することができる。
ここで「合成信号」とは、第1カウント信号と第2カウント信号とを合成したカウント信号である。第1カウント信号あるいは第2カウント信号のいずれかに所定の状態変化が生じた場合に合成信号にも同じ状態変化を生ずる。合成信号を生成する論理回路の構成としてOR回路を例示できる。
前記第3発明の遊技装置において以下の構成要素を含む第4発明を開示できる。すなわち、第1制御基板には、クレジット数が所定数に達した場合に所定の状態変化を示す第1ブロッカ信号を生成する手段をさらに含み、遊技装置には、第1ブロッカ信号に応じて有体メダルの投入を許可または禁止する手段をさらに含み、第2制御基板には、第1ブロッカ信号に応じて無体メダルの貸出取引を許可または禁止する手段と、第1ブロッカ信号を有体メダルの投入を許可または禁止する前記手段に転送する手段とをさらに含むことができる。
このような第4発明によれば、第1制御基板で生成した第1ブロッカ信号によってメダルの投入あるいは取引を制限することが可能になる。
なお、第4発明において、無体メダルの取引枚数によっては所定数を超えるクレジット操作が行われることになる。そこで、以下のような構成を含む第5発明によって、所定数と超えるクレジット操作の処理を行うことができる。すなわち、第5発明の遊技装置は、第4発明の遊技装置の第1制御基板に、所定数を超えるクレジット操作が行われた場合に所定数を超えるクレジット操作を無効にするとともに無効にしたクレジット数に相当する枚数の有体メダルを返却する手段、または、所定数を超えるクレジット操作を実行しようとした場合にそのクレジット操作を停止し、実行しようとしたクレジット数に相当する枚数の有体メダルを返却する手段、の何れかの手段をさらに含む。
また、第4および第5発明の遊技装置において、第2制御基板に以下のような構成要件を付加する第6発明を開示できる。すなわち、第2制御基板には、メダル貸出信号の通信を行っている期間に有体メダルの投入を禁止するような第1ブロッカ信号を生成し第1ブロッカ信号に応じて有体メダルの投入を許可または禁止する前記手段に送信する手段と、第1カウント信号を受信した場合に所定の期間無体メダルの貸出取引を禁止する手段と、をさらに含むことができる。
このような第6発明によって、有体メダルの投入操作と無体メダルの取引操作とが同時に行われる事態を避けることができる。
さらに、前記した第1〜第6発明の第1制御基板と第2制御基板を、以下のような構成とする第7発明を開示できる。すなわち、第2制御基板が不正防止構造の基板ケースに収納されている構成、または、第1制御基板と第2制御基板とが同一の不正防止構造の基板ケースに収納されている構成、の何れかの構成とする。
このような第7発明によれば、メダル取引に関する不正防止の万全を図ることが可能になる。ここで「不正防止構造の基板ケース」とは、不可逆的な締結方法で基板を密閉する容器であり、一度開封した場合にはその痕跡が履歴として残る構造を有するものである。制御基板を覆うプラスチック等の構造部材であり、所定回数の開閉が行われたことが判別できる。検査等を受けるために1度開閉されることを考慮して、通常2回目の開閉が成されたことが判別できるような構造が採用される。つまり、2度目の開閉が行われた場合、不正行為が成された蓋然性が高いと判断できる。
本明細書で開示する第8発明は、前記第1発明の遊技装置に関する制御方法である。第8発明の制御方法は、投入メダルを検出する毎に所定の状態変化を示す第1カウント信号を生成するメダル検出部と第1制御基板と第2制御基板とを備える遊技装置の制御方法であり、以下のステップを有する。すなわち、第2制御基板がメダル貸し機との間でメダル貸出信号の通信を行い、無体メダルの貸出取引を実行するステップと、貸出取引が成立した場合にその取引枚数相当の投入メダルが検出されたのと同様な第2カウント信号を第2制御基板が生成するステップと、第2カウント信号に応じたメダル枚数のベット操作またはクレジット操作を第1制御基板が行うステップとを有する。
このような第8発明の制御方法によれば、無体メダルの貸出取引の結果である貸出メダル情報を第2カウント信号として第1制御基板に伝達し、第1制御基板はこの第2カウント信号を元にベット操作またはクレジット操作を行うことができる。
この第8発明の制御方法において、第1制御基板が、第2カウント信号とは別に第1カウント信号を受信し、第1カウント信号に応じたメダル枚数のベット操作またはクレジット操作を行うステップをさらに含むことができる。このような制御方法によれば、投入メダルのカウント信号である第1カウント信号をも第1制御基板が処理し、無体メダルおよび有体メダルの両方に対応する遊技装置の制御を実現できる。
さらに、クレジット数が所定数に達した場合に、第1制御基板が、所定の状態変化を示す第1ブロッカ信号を生成するステップと、クレジット数が所定数から取引枚数を減じた数を超えた場合に、第1制御基板が、所定の状態変化を示す第2ブロッカ信号を生成するステップと、第2制御基板が第2ブロッカ信号を受信し、第2ブロッカ信号に応じて前記無体メダルの貸出取引を許可または禁止するステップと、第1ブロッカ信号に応じて有体メダルの投入を許可または禁止する手段が第1ブロッカ信号を受信し、第1ブロッカ信号に応じて有体メダルの投入を許可または禁止するステップと、をさらに含むことができる。このような制御方法によれば、前記第2発明として説明した遊技装置を制御することが可能になる。
本明細書で開示する第9発明は、前記第3発明の遊技装置に関する制御方法である。第9発明の制御方法は、投入メダルを検出する毎に所定の状態変化を示す第1カウント信号を生成するメダル検出部と第1制御基板と第2制御基板とを備える遊技装置の制御方法であり、以下のステップを有する。すなわち、第2制御基板が第1カウント信号を受信するステップと、第2制御基板がメダル貸し機との間でメダル貸出信号の通信を行い、無体メダルの貸出取引を実行するステップと、貸出取引が成立した場合に、その取引枚数相当の投入メダルが検出されたのと同様な第2カウント信号を第2制御基板が生成するステップと、第2制御基板が、第1カウント信号と第2カウント信号との合成信号を生成するステップと、合成信号に応じたメダル枚数のベット操作またはクレジット操作を第1制御基板が行うステップと、を含む。
このような第9発明の制御方法によれば、無体メダルの貸出取引の結果である貸出メダル情報を第2カウント信号として生成し、さらに有体メダルのカウント信号である第1カウント信号との合成信号を生成して、これを第1制御基板に伝達し、第1制御基板はこの合成信号を元にベット操作またはクレジット操作を行うことができる。
この第9発明の制御方法において、クレジット数が所定数に達した場合に、第1制御基板が、所定の状態変化を示す第1ブロッカ信号を生成するステップと、第2制御基板が、第1ブロッカ信号を受信し、第1ブロッカ信号に応じて無体メダルの貸出取引を許可または禁止するステップと、をさらに含むことができる。このような制御方法により、無体メダルの取引を制限することが可能になる。
また、所定数を超えるクレジット操作が行われた場合に所定数を超えるクレジット操作を無効にするとともに無効にしたクレジット数に相当する枚数の有体メダルを返却するステップ、または、所定数を超えるクレジット操作を実行しようとした場合にそのクレジット操作を停止し、実行しようとしたクレジット数に相当する枚数の有体メダルを返却するステップ、の何れかのステップをさらに含むことができる。これにより、所定数を超えるクレジット操作が行われた場合の処理を実行することができる。
なお、前記した第8および第9発明の制御方法とその関連する発明において、無体メダルの貸出取引を実行するステップとして、以下のようなステップを含むことができる。すなわち、第2制御基板が貸出許可信号の状態を許可に変更するステップと、メダル貸出ボタンの押下を契機に第2制御基板が貸出スイッチ信号の状態を許可に変更するステップと、貸出スイッチ信号の状態変化に応答してメダル貸し機が貸出準備信号の状態を許可に変更するステップと、貸出許可信号および貸出準備信号の状態がともに許可であることを条件に、かつ、貸出許可信号または貸出準備信号の何れかの信号の状態が許可に変更されることに応答して、メダル貸し機が貸出要求信号の状態を許可に変更するステップと、貸出要求信号の状態が許可に変更されることに応答して第2制御基板が貸出応答信号の状態を許可に変更するステップと、貸出応答信号の状態が許可に変更されることに応答してメダル貸し機が貸出要求信号の状態を禁止に変更するステップと、貸出要求信号の状態が禁止に変更されることに応答して第2制御基板が貸出応答信号の状態を禁止に変更するとともに、取引枚数相当の第2カウント信号の生成を開始するステップと、貸出応答信号の状態が禁止に変更されることに応答してメダル貸し機が貸出準備信号の状態を禁止に変更するとともに遊技価値媒体からの取引枚数相当の遊技価値の減算を行うステップとを含むことができる。
このような各ステップの実行により、無体メダルの貸出取引を確実に実行することができる。
ここで「貸出許可信号」、「貸出スイッチ信号」、「貸出準備信号」、「貸出要求信号」および「貸出応答信号」の各信号は、メダル貸出信号の全部または一部を構成する。なお、メダル貸出信号には他の付加的な信号を含む場合がある。たとえば遊技装置に提供される遊技価値媒体の残高表示用の信号や電源等が例示できる。
「貸出許可信号」は、遊技装置の第2制御基板が発する準備(レディ)信号であり、遊技装置側がメダルの貸出取引を行うことが可能なときに許可状態になる信号である。メダルの貸出取引が可能なときとは、遊技装置がゲーム中であるとき、エラー中であるとき、クレジットが所定数(最高値)に達しているとき等メダルを受け付けることが出来ないとき以外のときをいう。許可状態はたとえば電圧レベルがLowレベルにある状態を例示できる。
「貸出スイッチ信号」は、遊技装置に備えた貸出スイッチが発する信号であり、貸出スイッチのボタン等の操作に応じて許可状態になる信号である。たとえばボタンを押下している期間、許可状態(たとえばLowレベル)になる信号を例示できる。
「貸出準備信号」は、メダル貸し機が発する準備(レディ)信号であり、貸出スイッチ信号に応じて許可状態になる信号である。ただし、貸出許可信号が許可状態にあることを条件とする。なお、貸出スイッチ信号が許可状態において貸出許可信号か許可になることを契機に貸出準備信号が許可状態になってもよい。また、貸出準備信号は、遊技装置からの貸出応答信号を受けて禁止状態になり貸出取引の処理を終了する。この際、カード度数の減算等遊技価値媒体からの遊技価値の減算を行う。
「貸出要求信号」は、メダル貸し機から発せられる貸出要求の信号である。たとえば禁止状態(たとえばHighレベル)が許可状態(たとえばLowレベル)に状態変化することによって一取引単位のメダル貸出の要求を実行する。
「貸出応答信号」は、遊技装置が発する貸出了解の信号である。貸出要求信号の禁止状態から許可状態への変化を受けて禁止(たとえばHighレベル)から許可(たとえばLowレベル)に状態変化し、貸出要求信号の許可状態から禁止状態への変化を受け、メダル貸出の受け付けを完了した時点で許可から禁止に状態変化することによって応答する。貸出応答信号が許可から禁止に状態変化する時点はメダル貸出の受け付けを完了した時点であるから、この時点でクレジットへの加算処理(第2カウント信号の生成)が開始される。なお、第1制御基板において実際にクレジットに加算される処理が終了されることを以ってメダル貸出の受け付けを完了としても良い。この場合、第1制御基板からのクレジット処理完了の信号を受けて貸出応答信号が許可から禁止に状態変化することになる。