JP2004167165A - 食器洗浄機及びその洗剤供給方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】食器洗浄機において、洗浄水タンク内の洗浄水の洗剤濃度が所定値Sとなるように、濯ぎ水の供給時間に応じた濯ぎ水供給量に基づいて洗剤供給量が算出され、その洗剤供給量(S208,S214,S218)分の洗剤が洗浄水タンク内に供給される(S210)。そのため、濯ぎ時間が変更されることで洗浄室内への濯ぎ水供給量が変化し、それに伴って洗浄水タンク内への濯ぎ水の流入量が変化しても、洗浄水タンク内の洗浄水を適正な洗剤濃度である所定値Sに保つことができる。したがって、濯ぎ時間の変更に拘わらず、常に適正な洗剤濃度の洗浄水によって食器を洗浄することが可能になる。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、食器の洗浄及び濯ぎを行う食器洗浄機及びその洗剤供給方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の食器洗浄機には、洗浄水を貯留する洗浄水タンクと濯ぎ水を貯留する濯ぎ水タンクとを別々に備え、次のように食器の洗浄及び濯ぎを行うものがある。まず、洗浄室内に収容された食器に対して洗浄水を噴射することで食器の洗浄を行う。この食器に噴射された洗浄水は、再び洗浄水タンク内に回収されて循環供給される。そして、食器の洗浄が完了すると、洗浄室内の食器に対して濯ぎ水を噴射することで食器の濯ぎを行う。この食器に噴射された濯ぎ水は、洗浄水タンク内に回収されて洗浄水と混ざり合い、次回の洗浄水として使用されることになる。
【0003】
このように濯ぎ水を次回の洗浄水として使用する場合には、洗浄水タンク内の洗浄水の洗剤濃度が濯ぎ水の流入によって希釈される。そのため、濯ぎ運転中において洗浄水タンク内に新たな洗剤を投入することによって、洗浄水を適正な洗剤濃度に保っている。したがって、何らかの理由によって濯ぎ時間が変更された場合には、洗浄水タンク内への濯ぎ水の流入量が変化するため、その流入量の変化に応じて洗剤の投入量も変化させる必要がある。そこで、洗浄水タンク内に濃度センサを設置し、この濃度センサにより検知された洗剤濃度に基づいて、洗浄水が適正な洗剤濃度となるように洗剤の投入量を決定する食器洗浄機がある。
【0004】
なお、特許文献1には、洗浄液を封入した洗浄液タンクを洗浄水タンクより高い位置に設置し、洗浄液タンクに連結された空気導入管を電磁弁により濯ぎポンプの運転中開放することで、洗浄液タンク内の洗浄液を洗浄水タンク内に向けて自然落下させる洗浄液供給装置が記載されている。
【0005】
【特許文献1】
特開平5−293071号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、洗浄水タンク内の洗浄水が十分に攪拌されず、洗浄水の洗剤濃度が不均一な場合があるため、上述の濃度センサを用いた食器洗浄機にあっては、均一な状態での洗剤濃度が検知されず、洗浄水が適正な洗剤濃度とならないおそれがある。
【0007】
そこで、本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、適正な洗剤濃度の洗浄水によって食器を洗浄することのできる食器洗浄機及びその洗剤供給方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る食器洗浄機は、食器が収容された洗浄室内に洗浄水タンクから洗浄水を供給することで食器の洗浄を行った後、洗浄室内に濯ぎ水を供給することで食器の濯ぎを行うと共に、洗浄室内に供給した濯ぎ水を洗浄水タンク内に回収することで次回の洗浄水として使用する食器洗浄機において、洗浄水タンク内に洗剤を供給する洗剤供給手段と、濯ぎ時間を検出し、検出した濯ぎ時間に応じた濯ぎ水供給量に基づいて、洗浄水タンク内に貯留される洗浄水の洗剤濃度が所定値となるように洗剤供給量を算出し、算出した洗剤供給量の洗剤を供給させるように洗剤供給手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0009】
この食器洗浄機においては、洗浄水タンク内の洗浄水の洗剤濃度が所定値となるように、濯ぎ時間に応じた濯ぎ水供給量に基づいて洗剤供給量が算出され、その洗剤供給量分の洗剤が洗浄水タンク内に供給される。そのため、何らかの理由によって濯ぎ時間が変更されて洗浄室内への濯ぎ水供給量が変化し、それに伴って洗浄水タンク内への濯ぎ水の流入量が変化するような場合にも、洗浄水タンク内の洗浄水の洗剤濃度を所定値に保つことができる。したがって、濯ぎ時間の変更に拘わらず、常に適正な洗剤濃度の洗浄水によって食器を洗浄することが可能になる。
【0010】
また、上記目的を達成するために、本発明は食器洗浄機の洗剤供給方法にも係り、食器が収容された洗浄室内に洗浄水タンクから洗浄水を供給することで食器の洗浄を行った後、洗浄室内に濯ぎ水を供給することで食器の濯ぎを行うと共に、洗浄室内に供給した濯ぎ水を洗浄水タンク内に回収することで次回の洗浄水として使用する食器洗浄機における洗剤供給方法おいて、濯ぎ時間を検出し、検出した濯ぎ時間に応じた濯ぎ水供給量に基づいて、洗浄水タンク内に貯留される洗浄水の洗剤濃度が所定値となるように洗剤供給量を算出し、算出した洗剤供給量の洗剤を洗浄水タンク内に供給することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る食器洗浄機及びその温度検出方法の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1に示すように、食器洗浄機1は、上下に仕切られたステンレス製の本体ケース2を有している。この本体ケース2の下部には機械室3が形成され、この機械室3内には、食器洗浄機1の動作全般を制御するマイクロコンピュータ(制御手段)4が内蔵された電装ボックス6等が収容されている。一方、本体ケース2の上部には、洗浄室7が形成されると共に、この洗浄室7の開閉を行うために上下動するドア(図示せず)が取り付けられている。
【0013】
この洗浄室7内には、ラックレール(図示せず)が着脱自在に配置されており、このラックレール上に、飲食後の皿や茶碗等の食器Pが並べられた格子状の食器ラック8が載置される。さらに、洗浄室7の上部には、放射状に延びる3本のアームからなる上側洗浄ノズル9と、一直線状に延びる上側濯ぎノズル11とが同一軸線上において回転自在に配置されている。同様に、洗浄室7の下部には、放射状に延びる3本のアームからなる下側洗浄ノズル12と、一直線状に延びる下側濯ぎノズル13とが同一軸線上において回転自在に配置されている。したがって、食器ラック8に並べられた食器Pには、洗浄ノズル9,12によって上下から洗浄水が噴射され、また、濯ぎノズル11,13によって上下から濯ぎ水が噴射されるため、食器Pの洗浄及び濯ぎが効率良く行われる。
【0014】
このように構成された洗浄室7の底面7aには、第1のフィルタ14が着脱自在に配置されており、この第1のフィルタ14の下方には、洗浄水を貯留するための洗浄水タンク15が形成されている。この洗浄水タンク15内には、温水である洗浄水を所定温度に維持するための洗浄水ヒータ16と、この洗浄水の温度を検知するための洗浄水温センサ17とが設置されている。
【0015】
さらに、洗浄水タンク15の底面15aには、第1のフィルタ14より目の細かい第2のフィルタ18が着脱自在に配置されており、この第2のフィルタ18の下方には、底面15aの一部が落ち込むようにして落込部19が形成されている。この落込部19の底面19aには排水管20が接続されており、この排水管20には、第2のフィルタ18の筒状部18aを貫通して上端部が洗浄水タンク15内に位置するオーバーフロー管21の下端部が嵌め込まれている。したがって、余剰な洗浄水は、オーバーフロー管21の上端部に形成された流入孔から管内に流れ込み、排水管20を介して外部に排出されるため、洗浄水タンク15内の洗浄水が一定水位に保たれる。
【0016】
この洗浄水タンク15の落込部19には、洗浄水吸込管22を介して洗浄水供給ポンプ23が接続されている。この洗浄水供給ポンプ23の吐出口には洗浄水吐出管24が接続され、この洗浄水吐出管24は、第1の洗浄水吐出管25と第2の洗浄水吐出管26とに分岐して、第1の洗浄水吐出管25は上側洗浄ノズル9に接続され、第2の洗浄水吐出管26は下側洗浄ノズル12に接続されている。
【0017】
また、機械室3内には、外部の給湯器(図示せず)から給湯管27を介して濯ぎ水が供給される濯ぎ水タンク28が配置されている。この濯ぎ水タンク28内には、温水である濯ぎ水を所定温度に維持するための濯ぎ水ヒータ29と、この濯ぎ水の温度を検知するための濯ぎ水温センサ31とが設置されている。さらに、濯ぎ水タンク28内には、余剰な濯ぎ水を外部に排出して一定水位に保つためのオーバーフロー管32が設置されており、その上端部から管内に流入した濯ぎ水は、排水管20を介して外部に排出される。
【0018】
この濯ぎ水タンク28には、濯ぎ水吸込管33を介して濯ぎ水供給ポンプ34が接続されている。この濯ぎ水供給ポンプ34の吐出口には濯ぎ水吐出管36が接続され、この濯ぎ水吐出管36は、第1の濯ぎ水吐出管37と第2の濯ぎ水吐出管38とに分岐して、第1の濯ぎ水吐出管37は上側濯ぎノズル11に接続され、第2の濯ぎ水吐出管38は下側濯ぎノズル13に接続されている。
【0019】
さらに、機械室3内には、洗浄水タンク15内の洗浄水に混入させるための液状又は粉状の洗剤Wを貯留した洗剤タンク39が配置されている。この洗剤タンク39には、洗剤吸込管41を介して洗剤供給ポンプ(洗剤供給手段)42が接続されている。この洗剤供給ポンプ42の吐出口には洗剤吐出管43の一端が接続されており、この洗剤吐出管43の他端43aは、洗浄室7内に位置して下方に向かって開口している。
【0020】
ここで、上述した食器洗浄機1の動作について説明する。運転開始ボタンがONされると、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」という)4から洗浄開始信号が送出されて洗浄水供給ポンプ23が始動する。これにより、洗浄水タンク15内に貯留された洗浄水は、洗浄水吐出管24等を介して上下の洗浄ノズル9,12に圧送されて、各洗浄ノズル9,12から食器Pに向けて噴射される。このとき、各洗浄ノズル9,12は噴射力の反力によって回転し続けるため、洗浄水が食器Pに満遍なく当てられて、食器Pの汚れが効率良く洗い落とされる。
【0021】
この食器Pに噴射された洗浄水は、食器Pから洗い落とされた残菜などの汚損物が第1のフィルタ14によって取り除かれつつ洗浄水タンク15内に回収される。さらに、第2のフィルタ18によって細かい汚損物が取り除かれた後、洗浄水供給ポンプ23により再び洗浄室7内に循環供給される。
【0022】
このような洗浄工程が所定時間行われると、マイコン4から洗浄終了信号が送出されて洗浄水供給ポンプ23が停止し、マイコン4から濯ぎ開始信号が送出されて濯ぎ水供給ポンプ34が始動する。これにより、濯ぎ水タンク28内に貯留された濯ぎ水は、濯ぎ水吐出管36等を介して上下の濯ぎノズル11,13に圧送されて、各濯ぎノズル11,13から食器Pに向けて噴射される。このとき、各濯ぎノズル11,13もまた、噴射力の反力によって回転し続けるため、濯ぎ水が食器Pに満遍なく当てられて、食器Pの濯ぎが効率良く行われる。
【0023】
この食器Pに噴射された濯ぎ水は、第1のフィルタ14を介して洗浄水タンク15内に回収されて洗浄水と混ざり合い、次回の洗浄工程における洗浄水として使用される。このような濯ぎ工程が所定時間行われると、マイコン4から濯ぎ終了信号が送出されて濯ぎ水ポンプ23が停止し、食器洗浄機1の1サイクルの動作が完了する。
【0024】
なお、上述の濯ぎ工程中には、洗剤タンク39内に貯留された洗剤Wが洗剤供給ポンプ42により洗剤吐出管43内を圧送されて、洗剤吐出管43の他端43aから洗浄室7内に滴下される。この滴下された洗剤Wは、濯ぎ水と混ざり合って洗浄水タンク15内に流入することになる。このようにして洗浄水タンク15内に新たな洗剤Wを供給するのは、洗浄水タンク15内への濯ぎ水の流入によって洗浄水の洗剤濃度が低下してしまうのを防止するためである。
【0025】
以上のような食器洗浄機1においては、種々の理由によって濯ぎ時間が変更される場合がある。例えば、食器ラック8に並べられた食器Pの数が増すほど濯ぎ時間を長くするというように、食器Pの重量に応じて濯ぎ時間が自動的に変更される場合や、食器に対する効率の良い加熱殺菌を行うために濯ぎ時間が自動的に変更される場合などがある。これらの他にも、濯ぎによる食器の仕上がりが重視されて、濯ぎ時間の初期値がユーザによって変更される場合などもある。このような種々の理由によって濯ぎ時間が変更されると、洗浄水タンク15内への濯ぎ水の流入量が変化してしまうので、洗浄水タンク15内に貯留された洗浄水の洗剤濃度の希釈度合いも変化してしまう。
【0026】
そこで、洗浄水タンク15内の洗浄水を適正な洗剤濃度に保つためには洗剤供給ポンプ42による洗剤供給量を変化させる必要があり、この食器洗浄機1では、濯ぎ時間の変更に応じて洗剤供給ポンプ42による洗剤供給量の調節を行っている。
【0027】
以下、洗剤供給ポンプ42を用いた食器洗浄機1による洗剤供給動作について説明する。図2に示すように、濯ぎ工程開始前に決定された濯ぎ水の供給時間nをマイコン4がその記憶部から読み出すことで、濯ぎ時間の検出を行う(ステップS202)。この濯ぎ水供給時間nは、例えば、濯ぎ工程における濯ぎ水供給ポンプ34の始動から停止までの時間、すなわち濯ぎ水供給ポンプ34の運転時間である。ステップS202に続いて、マイコン4は、読み出した濯ぎ水供給時間nが基準濯ぎ水供給時間Nsに対して延長されているか否かを判断する(ステップS204)。
【0028】
この判断の結果、濯ぎ水供給時間nが延長されていた場合には、濯ぎ水供給時間の延長分である延長時間Δnに対応する増加濯ぎ水量ΔLを記憶部から読み出す(ステップS206)。この増加濯ぎ水量ΔLは、濯ぎ水供給時間nが基準濯ぎ水供給時間Nsに対して「Δn」だけ延長された際に(n=Ns+Δn)、基準濯ぎ水供給量Lに対して増加した濯ぎ水供給量の増加分である。なお、延長時間Δnと増加濯ぎ水量ΔLとの対応関係は、データテーブルとしてマイコン4の記憶部に予め保存されている。
【0029】
ステップS206に続いて、マイコン4は、洗剤供給量(A+ΔA)を決定する(ステップS208)。この洗剤供給量(A+ΔA)は、洗浄水タンク15内の洗浄水の適正な洗剤濃度を「S」(%)とすると、次の式(1)により算出することができる。
A+ΔA=S×(L+ΔL)/100…(1)
【0030】
一例として、洗剤濃度Sを「0,15%」、基準濯ぎ水供給時間Nsが「7秒」のときの基準濯ぎ水供給量Lを「3,000g」、延長時間Δnが「3秒」のときの増加濯ぎ水量ΔLを「1,500g」とすると、洗剤供給量(A+ΔA)は、式(1)により「6.75g{=0.15×(3,000+1,500)/100}」となる。
【0031】
ステップS208に続いて、マイコン4は、決定した洗剤供給量(A+ΔA)分の洗剤を供給させるべく洗剤供給ポンプ42の運転時間を制御し、これにより、洗剤供給ポンプ42は、洗剤供給量(A+ΔA)分の洗剤を洗浄水タンク15内に供給する(ステップS210)。なお、洗浄水タンク15内への洗剤の供給は、次回の洗浄工程開始前であれば任意のタイミングで行うことが可能であるが、濯ぎ工程中に行うのが好ましい。その理由としては、洗剤吐出管43の他端43aから滴下された洗剤が、洗浄水タンク15内に流入する濯ぎ水と混ざり合い、洗浄水タンク15内に貯留された洗浄水への混入がスムーズになるからである。
【0032】
一方、ステップS204の判断の結果、濯ぎ水供給時間nが延長されていなかった場合には、読み出した濯ぎ水供給時間nが基準濯ぎ水供給時間Nsに対して短縮されているか否かを判断する(ステップS212)。この判断の結果、濯ぎ水の供給時間nが短縮されていなかった場合には、マイコン4は洗剤供給量Aを決定する(ステップS214)。この洗剤供給量Aは、濯ぎ水供給時間nと基準濯ぎ水供給時間Nsとが等しいとき(n=Ns)の基準洗剤供給量であり、上述したように洗剤濃度Sが「0,15%」、基準濯ぎ水供給量Lが「3,000g」であれば、「4.5g{=0.15×3,000/100}」となる。
【0033】
続いて、マイコン4は、決定した洗剤供給量A分の洗剤Wを供給させるべく洗剤供給ポンプ42の運転時間を制御し、これにより、洗剤供給ポンプ42は、洗剤供給量A分の洗剤Wを洗浄水タンク15内に供給する(ステップS210)。
【0034】
一方、ステップS212の判断の結果、濯ぎ水供給時間が短縮されていた場合には、濯ぎ水供給時間の短縮分である短縮時間(−Δn)に対応する減少濯ぎ水量(−ΔL)を記憶部から読み出す(ステップS216)。この減少濯ぎ水量(−ΔL)は、濯ぎ水供給時間が基準濯ぎ水供給時間Nsに対して「−Δn」だけ短縮された際に(n=Ns−Δn)、基準濯ぎ水供給量Lに対して減少した濯ぎ水供給量の減少分である。なお、短縮時間(−Δn)と減少濯ぎ水量(−ΔL)との対応関係は、データテーブルとしてマイコン4の記憶部に予め保存されている。
【0035】
ステップS216に続いて、マイコン4は、洗剤供給量(A−ΔA)を決定する(ステップS218)。この洗剤供給量(A−ΔA)は、次の式(2)により算出することができる。
A−ΔA=S×(L−ΔL)/100…(2)
【0036】
続いて、マイコン4は、決定した洗剤供給量(A−ΔA)分の洗剤Wを供給させるべく洗剤供給ポンプ42の運転時間を制御し、これにより、洗剤供給ポンプ42は、洗剤供給量(A−ΔA)分の洗剤Wを洗浄水タンク15内に供給する(ステップS210)。
【0037】
以上のように、食器洗浄機1においては、洗浄水タンク15内の洗浄水の洗剤濃度が所定値Sとなるように、濯ぎ水の供給時間に応じた濯ぎ水供給量に基づいて洗剤供給量が算出され、その洗剤供給量分の洗剤Wが洗浄水タンク15内に供給される。そのため、濯ぎ時間が変更されることで洗浄室7内への濯ぎ水供給量が変化し、それに伴って洗浄水タンク15内への濯ぎ水の流入量が変化しても、洗浄水タンク15内の洗浄水を適正な洗剤濃度である所定値Sに保つことができる。したがって、濯ぎ時間の変更に拘わらず、常に適正な洗剤濃度の洗浄水によって食器Pを洗浄することが可能になる。
【0038】
しかも、食器洗浄機1においては、洗剤供給ポンプ42の運転時間の制御により洗剤供給量の調節が行われるため、マイコン4により決定された洗剤供給量分の洗剤が極めて正確に洗浄水タンク15内に供給されることになる。
【0039】
また、食器洗浄機1においては、洗浄水タンク15内の洗浄水が適正な洗剤濃度に保たれているか否かを監視する必要がないため、濯ぎ時間が自動的に変更される場合には特に有効である。また、濯ぎ水時間が原則として固定値であって、これをユーザが変更するような場合にも、洗剤供給量の調節をユーザが行う必要がないため、ユーザにとっての利便性が高いものとなる。
【0040】
また、洗浄水タンク15内に濃度センサ等を設置する必要がないため、濃度センサ設置のための組立工数の増加や部品点数の増加を防止することができ、食器洗浄機1のコストダウンが可能になる。
【0041】
さらに、適正な洗剤供給量分の洗剤Wが常に供給されるため、無駄のある洗剤Wの供給を防止することができ、食器洗浄機1の低ランニングコスト化を図ることができる。
【0042】
次に、食器洗浄機1において濯ぎ時間が変更される場合の一例として、食器Pに対する効率の良い加熱殺菌を行うために濯ぎ時間が自動的に変更される場合について説明する。
【0043】
近年、「食器の十分な加熱殺菌」が可能か否かを判断するための数値として加熱殺菌当量が注目されている。この加熱殺菌当量は、濯ぎなどの処理時間と食器の表面温度とに基づいて決定され、例えば、日本厨房工業会規格においては、洗浄や濯ぎなどの1サイクルの処理によって「10,000」以上の加熱殺菌当量を食器に与えることが「食器の十分な加熱殺菌」のための要件とされている。
【0044】
そこで、食器洗浄機1では、日本厨房工業会規格の加熱殺菌要件を遵守すべく、濯ぎ工程にて食器Pに与えられる加熱殺菌当量が「10,000」以上となるように、マイコン4が濯ぎ水の供給時間の制御を行う。以下、濯ぎ工程における濯ぎ水の供給時間の制御について説明する。
【0045】
なお、以下の説明においては、濯ぎ工程での濯ぎ水供給ポンプ34による濯ぎ水の供給時間はn秒間であるものとする。そして、濯ぎ水の供給開始から2秒間は、濯ぎ水吸込管33、濯ぎ水供給ポンプ34、濯ぎ水吐出管36,37,38及び濯ぎノズル11,13からなる濯ぎ水供給路に残留する濯ぎ水(以下「残留濯ぎ水」という)が洗浄室7内に供給され、残りの「n−2」秒間は、濯ぎ水タンク28から流出した濯ぎ水(以下「流出濯ぎ水」という)が洗浄室7内に供給されるものとする。
【0046】
図3に示すように、まず、食器Pに接する残留濯ぎ水の接触温度A1,A2を検出し(ステップS302)、さらに、食器Pに接する流出濯ぎ水の接触温度A3〜Anを検出する(ステップS304)。ここで、温度An(n=1,2,…)は、濯ぎ水の供給開始からn秒経過時点での濯ぎ水の接触温度を示す。なお、濯ぎ水の接触温度A1〜A7の検出は、例えば、洗浄室7内の食器P近傍に温度センサを設置し、前回の濯ぎ工程にて洗浄室7内に供給された濯ぎ水の温度を検出することで行われる。
【0047】
ステップS304に続いて、検出された各濯ぎ水の接触温度A1〜Anに対応する単位加熱殺菌当量Q1〜Qnをマイコン4がその記憶部から読み出す(ステップS306)。マイコン4の記憶部には、図4に示すように、異なる温度ごとに単位加熱殺菌当量が対応付けられたデータテーブルが保存されている。なお、このデータテーブルにおける温度と単位加熱殺菌当量との対応関係は、日本厨房工業会規格で定められたものである。
【0048】
ステップS306に続いて、マイコン4は、単位加熱殺菌当量Q1〜Qnを積算することで加熱殺菌当量を算出し(ステップS308)、この加熱殺菌当量が「10,000」以上であるか否かを判断する(ステップS310)。この判断の結果、算出した加熱殺菌当量が「10,000」以上である場合には、ステップS302に戻りそれ以降の処理を濯ぎ工程開始直前まで繰り返す。
【0049】
この加熱殺菌当量が「10,000」以上である場合の一例としては、食器洗浄機1が連続運転されたときのように残留濯ぎ水の温度低下がほとんどない状態で濯ぎ水が7秒間供給され、濯ぎ水の接触温度A1〜A7のすべてが「73.0℃」であったような場合がある。この場合には、図5に示すように、単位加熱殺菌当量Q1〜Q7のすべてが「1,507」となるため(図4参照)、加熱殺菌当量は「10,549(=1,507×7)>10,000」となる。
【0050】
一方、ステップS310の判断の結果、算出した加熱殺菌当量が「10,000」未満である場合には、濯ぎ工程での濯ぎ水供給ポンプ34による濯ぎ水の供給時間nを時間Δnだけ延長させる(ステップS312)。この延長させる時間Δnは、加熱殺菌当量の不足分を補うようにその不足分と濯ぎ水の供給時間とから逆換算して決定されるが、マイコン4の制御プログラムの単純化を図るべく、固定時間(例えば1秒)を延長させるようにしてもよい。そして、ステップS312の後、ステップS302に戻りそれ以降の処理を濯ぎ工程開始直前まで繰り返す。
【0051】
この加熱殺菌当量が「10,000」未満である場合の一例としては、食器洗浄機1が休止状態から運転を開始されたときのように残留濯ぎ水の温度低下がある状態で濯ぎ水が7秒間供給され、残留濯ぎ水の接触温度A1が「65.0℃」、同温度A2が「70.0℃」、流出濯ぎ水の接触温度A3〜A7が「73.0℃」であったような場合がある。この場合には、図6に示すように、単位加熱殺菌当量Q1が「55」、同当量Q2が「435」、同当量Q3〜Q7が「1,507」となるため(図4参照)、加熱殺菌当量は「8,025(=55+435+1,507×5)<10,000」となる。
【0052】
そして、この場合にステップS312にて延長させる時間Δnは、上述したように加熱殺菌当量の不足分を補うように決定される。これにより、延長させる時間Δnが「1.34秒」であれば、図7に示すように、単位加熱殺菌当量Q8は「1,507」、同当量Q(8.34)は「512」となる。このとき、加熱殺菌当量は「10,044(=55+435+1,507×6+512)>10,000」である。
【0053】
以上のように、食器洗浄機1は、濯ぎ水タンク28から洗浄室7内に濯ぎ水を供給する濯ぎ水供給ポンプ(濯ぎ水供給手段)34と、濯ぎ水の接触温度A1〜Anを検出する温度センサ(濯ぎ水温検出手段)と、温度センサにより検出された接触温度に応じた単位加熱殺菌当量Q1〜Qnと、濯ぎ水タンク28から洗浄室7内への濯ぎ水の供給時間nとに基づいて、食器Pに与えられる加熱殺菌当量を算出し、算出した加熱殺菌当量が「10,000」(所定の加熱殺菌当量)に達していない場合に、濯ぎ水の供給時間を延長させるように濯ぎ水供給ポンプ34を制御するマイコン(制御手段)4とを備え、濯ぎ時間を自動的に変更することによって、予め濯ぎ水の供給時間を長く設定しておくような場合に比べ、食器Pに対する効率の良い加熱殺菌が可能になり、食器洗浄機1運転時の省エネルギ化が図られる。
【0054】
なお、加熱殺菌当量の上限値を定めて、これを超えないような制御を行ってもよい。すなわち、何らかの原因で加熱殺菌当量の算出値が上限値を超えた場合には、加熱殺菌当量の下限値を下回らない範囲内で、濯ぎ水供給ポンプ34による濯ぎ水の供給時間を短縮させるようにしてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る食器洗浄機及びその洗剤供給方法によれば、適正な洗剤濃度の洗浄水によって食器を洗浄することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る食器洗浄機の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示す食器洗浄機による洗剤供給動作を示すフローチャートである。
【図3】図1に示す食器洗浄機による濯ぎ水の供給時間の制御手順を示すフローチャートである。
【図4】図1に示す食器洗浄機のマイコンの記憶部に保存されたデータテーブルにおける温度と単位加熱殺菌当量との対応関係を示す表である。
【図5】加熱殺菌当量の算出値が「10,000」以上である場合の濯ぎ水の供給時間と単位加熱殺菌当量との関係を示すグラフである。
【図6】加熱殺菌当量の算出値が「10,000」未満である場合の濯ぎ水の供給時間と単位加熱殺菌当量との関係を示すグラフである。
【図7】濯ぎ工程における濯ぎ水の供給時間を延長させることで加熱殺菌当量の算出値が「10,000」以上となった場合の濯ぎ水の供給時間と単位加熱殺菌当量との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1…食器洗浄機、4…マイクロコンピュータ(制御手段)、7…洗浄室、15…洗浄水タンク、42…洗剤供給ポンプ(洗剤供給手段)、P…食器、W…洗剤。
Claims (2)
- 食器が収容された洗浄室内に洗浄水タンクから洗浄水を供給することで前記食器の洗浄を行った後、前記洗浄室内に濯ぎ水を供給することで前記食器の濯ぎを行うと共に、前記洗浄室内に供給した濯ぎ水を前記洗浄水タンク内に回収することで次回の洗浄水として使用する食器洗浄機において、
前記洗浄水タンク内に洗剤を供給する洗剤供給手段と、
濯ぎ時間を検出し、検出した濯ぎ時間に応じた濯ぎ水供給量に基づいて、前記洗浄水タンク内に貯留される洗浄水の洗剤濃度が所定値となるように洗剤供給量を算出し、算出した洗剤供給量の洗剤を供給させるように前記洗剤供給手段を制御する制御手段とを備えたことを特徴とする食器洗浄機。 - 食器が収容された洗浄室内に洗浄水タンクから洗浄水を供給することで前記食器の洗浄を行った後、前記洗浄室内に濯ぎ水を供給することで前記食器の濯ぎを行うと共に、前記洗浄室内に供給した濯ぎ水を前記洗浄水タンク内に回収することで次回の洗浄水として使用する食器洗浄機における洗剤供給方法おいて、
濯ぎ時間を検出し、検出した濯ぎ時間に応じた濯ぎ水供給量に基づいて、前記洗浄水タンク内に貯留される洗浄水の洗剤濃度が所定値となるように洗剤供給量を算出し、算出した洗剤供給量の洗剤を前記洗浄水タンク内に供給することを特徴とする食器洗浄機の洗剤供給方法。
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