JP2004164994A - 開閉器 - Google Patents
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Abstract
【課題】物理的吸着剤、水素吸蔵合金などの機能性材料を利用することで、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供する。
【解決手段】電流遮断時においては、固定アーク接触子11および可動アーク接触子24の間にアーク30が発生する。アーク部において高温のガス流32fが発生し、これが蓄圧空間S1にとり込まれることにより、蓄圧空間S1の温度は急激に上昇する。蓄圧空間S1に配置された機能性材料41の温度も上昇し、その臨界温度以上に達すると、機能性材料41からCO2ガス42が排出されるため、固定ピストン27による機械的に圧縮に加え、蓄圧空間S1の圧力はさらに急激に上昇する。この高い蓄圧空間S1の圧力により、もともと昇圧空間S1内に存在したSF6ガスが、機能性材料から発生したCO2ガス42とともに強力にアーク30に吹付けられる。
【選択図】 図1
【解決手段】電流遮断時においては、固定アーク接触子11および可動アーク接触子24の間にアーク30が発生する。アーク部において高温のガス流32fが発生し、これが蓄圧空間S1にとり込まれることにより、蓄圧空間S1の温度は急激に上昇する。蓄圧空間S1に配置された機能性材料41の温度も上昇し、その臨界温度以上に達すると、機能性材料41からCO2ガス42が排出されるため、固定ピストン27による機械的に圧縮に加え、蓄圧空間S1の圧力はさらに急激に上昇する。この高い蓄圧空間S1の圧力により、もともと昇圧空間S1内に存在したSF6ガスが、機能性材料から発生したCO2ガス42とともに強力にアーク30に吹付けられる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、送配電線路において電流を遮断する機能を有する開閉器に係る。
【0002】
【従来の技術】
電流遮断器能を有する開閉器には、使用目的や必要とされる機能に応じて、断路器、遮断器など様々なものが存在する。ここでは、72kVkV以上の高電圧送電系統の保護用開閉器として、広く使用されているパッファ形ガス遮断器を例に取り従来の技術を説明する。
【0003】
図7は従来のパッファ形ガス遮断器の一例を示す図であり、(a)は閉極状態を、(b)は開極動作初期の状態を、(c)は開極動作終了直後の状態を、(d)は開極動作終了後電流零点に至った状態を示す断面図である。
【0004】
この図7に示すように、消弧性のガスが充填された図示していない容器内には、固定接触子部10として定義される第1接触子部、可動接触子部20として定義される第2接触子部が対向配置されている。消弧性ガスとしては、アーク遮断性能および電気絶縁性能ともに優れたSF6ガスが使用されることが通常である。なお、以下、可動接触子部20の位置関係について、固定接触子部10側の方向を前方、その反対側を後方と定義して説明する。
【0005】
固定接触子部10は、固定アーク接触子11とその周囲に配置された固定通電接触子12から構成されている。固定通電接触子12には導体13が固定されており、図示していないガス遮断器の口出し部に接続される。
【0006】
一方、可動接触子部20は、中空の操作ロッド21とこの操作ロッド21の周囲に配置されて前端部で操作ロッド21に連結されたフランジ22、フランジ22の後方に連結されたパッファシリンダ23、フランジ22の前方に連結された中空かつ指状の可動アーク接触子24とその周囲に配置された可動通電接触子25、可動アーク接触子24を包囲する絶縁性のノズル26を備えている。
【0007】
前記可動接触子部20のパッファシリンダ23内には固定ピストン27が挿入され、この固定ピストン27は図示しない容器に支持されたフランジ14に固定されている。このフランジ14には通電部28が固定されており、その先端部においてパッファシリンダ23と接触通電および摺動通電可能になっている。また、フランジ14には導体29が固定されており、図示していないガス遮断器の口出し部に接続されている。
【0008】
以上のような可動接触子部20のうち、操作ロッド21は、図示していない駆動装置によってその軸方向に往復運動するように構成されており、その中程に、その中空部と充填ガス雰囲気空間とを連通する複数の連通穴21aを有している。また、可動アーク接触子24と絶縁ノズル26との間には、パッファシリンダ23内部の圧縮空間S1で圧縮された消弧性ガスをガス流として、フランジ22に設けられた連通穴22aを経て、アーク空間S2に導くための上流側ガス流路S3が形成されている。
【0009】
さらに、固定ピストン27は、円形平板状に形成されており、その内周面で操作ロッド21の外周面に対して摺動すると共に、その外周面でパッファシリンダ23の内周面に対して摺動するように構成されている。この場合、固定ピストン27は、その後方に一体的に設けられて軸方向に伸びるピストン支持部27aによって図示していない容器内に固定されている。そして、このように固定された固定ピストン27に対し、操作ロッド21とパッファシリンダ23が一体的に移動することにより、パッファシリンダ23と固定ピストン27が相対移動し、それによって、パッファシリンダ23内部に形成される空間S1が圧縮されるようになっている。
【0010】
以上のような構成を有する図7のパッファ形ガス遮断器の閉極時の通電状態について説明する。
図7(a)に示すように、可動接触子部20の操作ロッド21がパッファシリンダ23と共に固定接触子部10側に移動し、パッファシリンダ23先端のフランジ22に設けられた可動通電接触子25が固定接触子部10の固定通電接触子12に、また、可動アーク接触子24が固定アーク接触子11に接触している。この状態で、電流は、ガス遮断器の片側の口出し部から導入され、例えば、導体13側から入り、固定通電接触子12、可動通電接触子25、フランジ22、パッファシリンダ23、通電部28、フランジ14および導体29を通って、ガス遮断器の反対側の口出し部から出ていく。
【0011】
次に、開極動作について説明する。
まず、開極動作途中の初期状態においては、後方の操作ロッド21が移動しており、この操作ロッド21を含む可動接触子部20が一体的に移動している。図7(b)はこのような開極動作によって固定アーク接触子11と可動アーク接触子24が開離した後の状態を示しており、両アーク接触子11、24間のアーク空間S2には大電流アーク30が発生している。ここで、パッファシリンダ23内部の空間S1の圧力は、パッファシリンダ23と固定ピストン27との相対移動による機械的な圧縮作用によって昇圧されることになる。
【0012】
この時、大電流アーク30により、アーク空間S2は高温高圧の状態にある。例えば大電流アーク30の電流が50kAの場合、その温度は容易に10000K以上に達する。このため、アーク空間S2は圧縮空間S1より圧力が上昇し、操作ロッド21の内部空間から連通穴21aを経て圧縮空間S1に至るガス流32aが生じる。すなわち、大電流アーク30のエネルギーのうちの一部が圧縮空間に取り込まれる。
【0013】
このように、開極動作が進むと、パッファシリンダ23内部の蓄圧空間S1は機械的な圧縮作用に加えて、熱的作用により昇圧される。このように空間S1が十分に昇圧された状態で、図7(c)に示すように開極動作がさらに進みノズル25のスロート部S4が開口すると、可動アーク接触子24と絶縁ノズル26との間のガス流路から固定アーク接触子11に向かって流れるガス流32bが発生する。その一方で、可動アーク接触子24の中空部から、操作ロッド21に設けられた連通穴21aに向かって流れるガス流32cも発生する。ただし、この段階ではアーク空間S2が径の大きな大電流アーク30によりほぼ閉塞された状態にあるため、ガス流32b、32cは弱い流れである。
【0014】
さらに、図7(d)に示すように電流零点に達すると、大電流アーク30は減衰し、残留アークプラズマ31となって、圧力、密度及び温度が減少する。これにより、ノズル25のスロート部S4は十分に開口し、強力なガス流32d、32eが発生し、これらの2方向のガス流によって、相乗的に強力に冷却されて消弧され、電流遮断が達成される。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
前記のようなパッファ形ガス遮断器のように、アークに消弧性ガスを吹付けてアークを消滅させ、電流遮断を行うタイプの開閉器においては、ガスの吹付け圧力、すなわち蓄圧空間S1の圧力の上昇により、ガス吹付け力が向上し、アークが消滅しやすくなり、電流遮断性能が向上することが知られている。さらに、アーク遮断が可能な期間を長く確保しようとすると、蓄圧空間内S1内に存在する吹付けガスの体積が、それに応じて多く必要となることが一般に知られている。
【0016】
しかしながら、前述のパッファ形ガス遮断器においては、電流遮断性能を向上させるために高い吹付け圧力を得ようとすると、それだけ蓄圧空間の圧力を高く上昇させるための大きなエネルギーが必要となり、たとえば大きな機械的駆動力が必要となる。また、アーク遮断が可能な期間を長く確保しようとすると、蓄圧空間S1内のガス体積を多く確保する必要があり、そのガス体積を昇圧させるためにさらに大きなエネルギーが必要となっていた。これらをまとめると、開閉装置の電流遮断性能を向上させるためには、強い吹付け圧力を長い期間維持することが必要であり、そのためには大きなエネルギーにより、大きなガス体積を高い圧力に昇圧させる必要があり、これにより必然的に装置の大型化を招いた。
【0017】
また、消弧性ガスとして広く使用されているSF6ガスは地球温暖化係数が23900と非常に高いことが知られており、1997年12月に開催された地球温暖化防止に関する京都会議(COP3)において温室効果ガスとして削減対象に指定された。しかしながら、SF6ガスは今のところ実用的に最も優れたアーク遮断媒体と認識されており、SF6に比べて地球温暖化係数が小さく環境にやさしい他の代替ガス、例えば空気、N2、CO2などをアーク遮断媒体として適用した場合、SF6と同等レベルのアーク遮断性能を得るためにはさらに強力な吹付け力が必要となり、さらに大型化が必要となることが問題となっていた。
【0018】
一方、ゼオライトなどの物理的吸着剤、水素吸蔵合金、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3などの材料は、ある臨界温度に応じて、それぞれに特有のガスを排出あるいは吸収することが知られている。図6にその特性の概念図を示す。一例として、Li4SiO4は一気圧の圧力においては、臨界温度である720℃以上の温度でCO2ガスを放出し、同温度以下では逆にCO2ガスを吸収する方向に反応が進むことが知られている。さらに、温度が高くなるほどCO2ガス放出量は多くなることが知られている。
【0019】
本発明は前記のような従来の開閉器における問題点を解決するために提案されたものであって、物理的吸着剤、水素吸蔵合金などの機能性材料が有する特性に着目することにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、消弧性ガスが充填された密閉容器内に収納され、開閉器の投入時は接触導通状態にあり、開極動作時は相対移動しつつ開離するとともに両者間にアークを発生するアーク空間が形成されるように対向配置された第1接触子および第2接触子と、
前記消弧性ガスの蓄圧空間と、前記蓄圧空間から前記アーク空間に消弧性ガスを案内するガス流路とを有する開閉器において、
前記蓄圧空間に、温度に応じてガスを排出あるいは吸収することが可能な機能性材料を配置したことを特徴とする。
【0021】
このような構成を有する請求項1の発明においては、電流遮断時にはアーク部で発生した高温のガス流が蓄圧空間にとり込まれ、蓄圧空間の温度が急激に上昇する。すると、蓄圧空間に配置された機能性材料の温度も上昇し、その臨界温度以上に達する。これにより機能性材料から消弧性ガスが排出されるため、従来の場合よりも高い吹付け圧力、および多量の吹付けガス量が得られる。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記機能性材料が、物理的吸着材、水素吸蔵合金、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3のいずれか1つあるいは混合材料であることを特徴とする。
【0023】
ゼオライトなどのガスの物理的吸着材、水素吸蔵合金、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3などは、ある臨界温度を超えるとそれぞれの材料に特有のガスを放出し、逆に臨界温度以下においてはガスを吸収することが知られている。したがって、このような構成の請求項2の発明によれば、請求項1により得られる作用と同一の作用が得られる。
【0024】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記消弧性ガスは、SF6ガスよりも地球温暖化係数が低いガスのうちの1種類の純粋ガス、または2種類以上の混合ガス、または少なくとも1種類以上のガスとSF6ガスとの混合ガスであることを特徴とする。
このような構成の請求項3の発明では、消弧性ガスとして従来使用されているSF6ガスよりも地球温暖化係数が低い純ガスあるいは混合ガスを使用するため、地球環境への負荷を従来よりも低減することができる。
【0025】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記SF6ガスよりも地球温暖化係数が低いガスは、CO2、N2、O2、H2、He、Arのいずれかであることを特徴とする。
【0026】
このような構成を有する請求項4の発明においては、CO2、N2、O2、H2、He、Arは、消弧ガスとして従来使用されているSF6ガスよりも地球温暖化への影響が著しく小さいことに加え、オゾン層破壊への影響、人体への毒性がないため、地球環境への負荷を特に低減することが可能である。
【0027】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の発明において、前記機能性材料から発生されるガスは、その組成に前記消弧性ガスの少なくとも1種類と同じ元素を含むことを特徴とする。
【0028】
一般に、開閉器の電流遮断直後は、機能性材料から放出されたガスが、もともと密閉容器に充填されていた消弧性ガスに加わった状態となっている。したがって、機能性材料から排出されるガスがもともとの充填消弧性ガスと異なる場合には、両者の混合ガスとなっている。したがって、この状態においては初期に設定された開閉器の特性とは異なっている。しかしながら、前記のような構成を有する請求項4の発明においては、前記機能性材料から発生されるガスが、その組成に前記消弧性ガスの少なくとも1種類と同じ元素を含むよう構成することにより、機能性材料からのガス放出後の開閉器の特性変化を低く抑えることができる。
【0029】
請求項6の発明は、請求項5に記載の発明において、前記消弧性ガスがCO2を含むガスであって、前記機能性材料が、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3のいずれか1つあるいは混合材料であることを特徴とする。
【0030】
このような構成を有する請求項6の発明において使用されるLi4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3などの材料は、その臨界温度を超えることによりCO2ガスを発生させ、逆に臨界温度以下ではCO2ガスを吸収する機能を有する。したがって、前記消弧性ガスがCO2ガスの場合において、上記機能性材料からのガス放出後においても充填ガスはCO2ガス単一であるため、開閉器の特性変化をさらに低く抑えることができる。
【0031】
請求項7の発明は、請求項5に記載の発明において、前記消弧性ガスがH2を含むガスであって、前記機能性材料が水素吸蔵合金であることを特徴とする。
このような構成を有する請求項7の発明においては、前記消弧性ガスとしてH2を含むガスを採用し、前記機能性材料として水素吸蔵合金を使用したので、上記機能性材料からのガス放出後においても充填ガスはH2ガス単一であるため、開閉器の特性変化をさらに低く抑えることができる。
【0032】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の発明において、前記機能性材料の色が白色あるいは透明色でないことを特徴とする。
一般に、機能性材料の温度が上昇する過程としては、昇圧空間に流れ込む高温ガスからの熱伝達に加え、アークおよびそれに伴う高圧ガスからの輻射吸収によるものが考えられる。同一条件下においては、一般的に白色あるいは透明色でない物質の方が、輻射吸収による熱移動率が高いことが知られている。したがって、このような構成を有する請求項6の発明において、前記機能性材料の色を白色または透明色以外とすることにより、輻射吸収による機能性材料への熱移動が効率的に行われ、速やかに材料温度が上昇し、電流遮断に対するガス放出の応答性が向上する。
【0033】
請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の発明において、前記機能性材料から発生されるガスは、前記消弧性ガスと混合された際の絶縁耐圧が、両者の分圧和から決定される絶縁耐圧よりも高くなるものであることを特徴とする。
【0034】
通常、電流遮断直後は、機能性材料から放出されたガスが、もともと密閉容器に充填されていた消弧性ガスに加わった状態となっている。したがって、機能性材料から排出されるガスがもともとの充填消弧性ガスと異なる場合には、両者の混合ガスとなっている。ところで、混合ガスの絶縁特性については負の相乗効果、および正の相乗効果があることが知られている。ある2種のガスを混合させた場合、それぞれのガスの分圧和から決定される絶縁耐圧よりも混合ガスとしての絶縁耐圧が低くなる場合を負の相乗効果、高くなる場合を正の相乗効果という。
【0035】
したがって、前記のような構成を有する請求項9の発明においては、前記機能性材料から発生されるガスと、もともと密閉容器に充填されている消弧性ガスとを、両者が混合された際に正の相乗効果を示すような組み合わせとすることにより、遮断性能の向上効果に加え、同時に良好な絶縁性能も得ることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下には、本発明における開閉器の複数の実施の形態について、図1ないし図5を参照して具体的に説明する。なお、図7に従来技術の開閉器と同一の部分については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0037】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態は、本発明をパッファ形ガス遮断器に適用したものであって、図1は、その電流遮断時の状態を示す。すなわち、電流遮断器能を有する開閉器には、使用目的、必要とされる機能に応じて、断路器、遮断器など様々なものが存在する。ここでは、一例として72kV以上の高電圧送電系統の保護用開閉器として、広く使用されているパッファ形ガス遮断器を取り上げて解説する。
【0038】
このパッファ形ガス遮断器の基本的な構造は、図7において説明した従来のパッファ形ガス遮断器と同様である。密閉容器内に充填されている消弧性ガス43は、ここでは現在広く使用されているSF6ガスとする。このパッファ形ガス遮断器における蓄圧空間S1内には円筒状の機能性材料41が配置されている。すなわち、蓄圧空間S1を構成するパッファシリンダ23の内面に沿って円筒状の機能性材料41が配設され、アーク部30と蓄圧空間S1はフランジ22に設けた連通穴22aおよび中空状操作ロッド21に設けた連通穴22bにより連通されている。この機能性材料41としては、様々な種類が考えられるが、本実施の形態では、一例として、約700℃の臨界温度以上でCO2ガスを排出するLi4SiO4を使用する。
【0039】
このような構成を有する第1の実施の形態において、パッファ形ガス遮断器としての基本的な動作は、従来の技術において説明したものと同様である。
一方、電流遮断時においては、固定アーク接触子11および可動アーク接触子24の間にアーク30が発生する。通常、アーク温度は10000K以上まで容易に達する。したがって、アーク部において高温のガス流32fが発生し、これが蓄圧空間S1にとり込まれることにより、蓄圧空間S1の温度は急激に上昇する。すると、蓄圧空間S1に配置された機能性材料41の温度も上昇し、その臨界温度以上に達する。これにより機能性材料41からCO2ガス42が排出されるため、固定ピストン27による機械的に圧縮に加え、蓄圧空間S1の圧力はさらに急激に上昇する。こうした高い蓄圧空間S1の圧力により、もともと昇圧空間S1内に存在したSF6ガスが、機能性材料から発生したCO2ガス42とともに強力にアーク30に吹付けられるため、極めて良好なアーク遮断が実現される。
【0040】
この場合、本実施の形態においては、機能性材料41が円筒状をなし、しかもパッファシリンダ23の内面全域にわたって配設されているため、連通穴22aおよび22bによりアークからの熱エネルギーが容易に昇圧空間S1へととり込まれ、さらにアークからの高温のガス流22bは蓄圧空間S1内において機能性材料41にほぼ垂直に衝突するため、機能性材料41への熱伝達が良好に行われ、速やかかつ大量にCO2ガスの排出が行われる。
【0041】
しかも、電流の遮断直後は、機能性材料41から排出されたCO2ガスが、もともと充填されていたSF6ガスに加わった状態となっている。したがって、密閉容器圧力は初期の圧力よりも上昇しており、また、密閉容器内のガスはSF6ガスとCO2の混合ガスとなっているため、この状態においては初期に設定された開閉器の性能とは異なった状態となっている。しかしながら、その後、蓄圧空間の温度は速やかに低下するため、機能性材料41の温度もその臨界温度以下にまで低下する。そのため、機能性材料41は電流遮断時に放出したCO2ガスを今度は吸収するよう機能する。したがって、機能性材料41がCO2ガスを吸収し終わった段階では、当該遮断器の特性は初期に設定されたものに完全に復された状態となる。
【0042】
電流遮断直後においては密閉容器内のガスはSF6ガスとCO2の混合ガスとなっている。混合ガスの絶縁特性については負の相乗効果、および正の相乗効果があることが知られているが、SF6ガスとCO2ガスの混合ガスの絶縁耐力は、図2に示すようにそれぞれのガスの分圧和から決定される絶縁耐圧よりも混合ガスとしての絶縁耐圧の方が高くなる、いわゆる正の相乗効果を示すことが知られている。したがって、SF6ガスとCO2ガスのような正の相乗効果を有するガスを組み合わせることにより、機能性材料のガス排出による遮断性能の向上効果だけでなく、同時に良好な絶縁性能も得ることができる。
【0043】
一般的に遮断電流値が大きくなると、それだけアークは消弧しにくくなり、電流を遮断するためにはさらに高い吹付け圧力および多量の吹付けガス量が必要となる。一方、遮断電流が大きいほどアーク部においてより高温のガスが生成されるため、蓄圧空間の温度は上昇する。したがって、本構成によると、電流を遮断しにくい大電流遮断時には、蓄圧空間に設置した機能性材料はそれだけ多くの消弧性ガスを放出し、より高い吹付け圧力、および多量の吹付けガス量が得られ、大電流遮断時においても良好な遮断性能を得ることができる。これにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態を示す電流遮断時における開閉器である。この開閉器の概ねの構造は、図1において説明した第1の実施の形態を示すパッファ形ガス遮断器と同様であるが、本実施の形態においては、蓄圧空間S1に固定ピストンは存在せず、パッファシリンダ23の操作機構側(可動アーク接触子24や可動通電接触子25と反対側)の開口部が操作ロッド21に固定されたフランジ22cによって塞がれ、蓄圧空間S1が閉じた空間を形成している。また、この蓄圧空間S1との内部とアーク部30とは、フランジ22に設けた連通穴22aおよび中空状操作ロッド21に設けた連通穴22bにより連通されている。また、密閉容器内に充填されている消弧性ガス44は、ここではCO2ガスとする。
【0045】
前記蓄圧空間S1の内部には、カーボンを含まない顔料により黒に着色された円筒状の機能性材料46が蓄圧空間S1内に配置されている。この機能性材料としては、様々な種類が考えられるが、ここでは一例として、約700℃の臨界温度以上でCO2ガスを排出するLi4SiO4を使用する。着色された機能性材料46と金属製のパッファシリンダ23は断熱材45によりしきられており、両者は熱的に絶縁されている。
【0046】
このような構成を有する第2の実施の形態の基本的な作用は、第1の実施の形態と同一であるが、本実施の形態においてはピストンによる機械的な圧縮を行わないので、機械的駆動力を非常に小さくすることが可能で、大幅な小形化、低コスト化が図られる。機械的な圧力上昇手段を用いなくても、電流遮断時に機能性材料46より排出されるCO2ガス42により、電流を遮断するのに十分な吹付けガス圧力、吹付けガス量を確保することができる。
【0047】
特に、本実施の形態では、断熱材45により機能性材料46と金属性のパッファシリンダ23は熱的に絶縁されているため、同境界面における熱移動を抑制することができる。このため、高温ガスから注入される熱量が効率的に機能性素子の温度上昇に利用され、電流遮断に対するガス放出の応答性が向上する。
【0048】
一方、機能性材料46の温度が上昇する過程としては、蓄圧空間S1に流れ込む高温ガス32fからの熱伝達に加え、アーク30およびそれに伴う高圧ガス32fからの輻射吸収によるものが考えられる。本実施の形態における機能性材料46は黒色に着色されているため、輻射吸収による機能性材料への熱移動が効率的に行われ、速やかに材料温度が上昇し、電流遮断に対するガス放出の応答性がさらに向上する。黒着色している顔料はカーボンを含まないため、たとえ機能性材料46が熱分解し消弧性ガスに混入した場合においても電気絶縁性能に悪影響をおよぼさない。
【0049】
更に、機能性材料46より排出されるガス42はCO2ガスであり、もともと密閉容器に充填されていたガス44と同一ガスである。したがって電流遮断時に機能性材料からの排出ガスが加わっても、容器内はいぜんCO2ガスのままである。このため、電流遮断後の開閉器の特性変化は低く抑えられる。
【0050】
CO2ガスは、従来消弧性ガスとして広く使用されているSF6ガスと比較して、地球温暖化係数が23900分の1と極めて小さく、さらにオゾン層破壊への影響、および毒性も無いため、地球環境への負荷を著しく低減することができる。CO2自体のアーク遮断性能はSF6ガスと比較すると劣るが、機能性材料46から発生するガス42により高い吹付けガス圧力および十分なガス流量が得られるため、良好なアーク遮断が実現できる。
【0051】
これにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。さらに、地球環境への負荷を低減したコンパクトかつ高性能な開閉器を提供することができる。
【0052】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態を示す電流遮断時における開閉器である。この開閉器の概ねの構造は、図3において説明した第2の実施の形態を示す開閉器と同様であるが、機能性材料の配置構造が前記第2の実施の形態と異なる。すなわち、本実施の形態においては、図4(b)の断面図に示すように、棒状の機能性材料47を昇圧空間S1内に操作ロッド21の軸方向と平行に多数本配置した構造となっている。
【0053】
このような構成を有する本形態においては、図3に示すような単純円筒形の機能性材料と比べて、その表面積を大幅に増やすことが可能である。このため、高温のガス流32fからの熱伝達が効率的に行われ、機能性材料47の温度が急激に上昇する。したがって、電流遮断に対するガス放出の応答性が向上する。これにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。
【0054】
なお、本実施の形態においては、機能性材料の表面積を増やすことが本質的な問題であり、これを実現する構成は、棒形状にする以外にも多々存在するもので、機能性材料の表面に凹凸や溝を形成したり、機能性材料自体を網状やフィン状に形成することも可能である。
【0055】
(第4の実施の形態)
図5は、本発明の第4の実施の形態を示す電流遮断時における開閉器である。この開閉器の基本的な構造は図7において説明した従来のパッファ形ガス遮断器と同様である。本実施の形態においては、絶縁ノズル26の内部に第2の蓄圧空間S5が形成され、同空間内に機能性材料41が配置されている。この場合、機能性材料41より発生する消弧性ガス42はアーク30に対して垂直に吹付けられるように、第2の蓄圧空間S5の開口部は、絶縁ノズル26の内面に配置されている。
【0056】
このような構成を有する本実施の形態の基本的な作用は、第1の実施の形態と同一である。それに加え、本実施の形態においては、機能性材料41がアーク30近傍に配置されているため、蓄圧空間S1に配置するときよりもより高温に曝される。さらにアーク30までの流路長も短いため、電流遮断に対するガス放出の応答性が各段に向上する。
【0057】
特に、アーク遮断においては、アーク径を細くしぼるほど、その遮断性能が向上することが定性的に知られている。本実施の形態においては、機能性材料41より発生する消弧性ガス42が、アーク30に対して垂直に吹付けられるため、当該部分でアーク径が著しく絞られ優れたアーク遮断性能が実現される。これにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。
【0058】
(他の実施の形態)
本発明は前記のような実施の形態に限定されるものではなく、次のような他の実施の形態も包含するものである。
【0059】
(1) 第4の実施の形態は、前記第1から第3の実施の形態のように、第1の蓄圧空間S1の内部に機能性材料を配置したものと組み合わせることも可能であり、第1、第2の蓄圧空間の両方に機能性材料を配置することにより、より優れた遮断性能を得ることもできる。
【0060】
(2) 図示の実施の形態は、第1、第2の接触子部のうち一方を固定接触子部とし、他方を可動接触子部としたが、対向する両方の接触子部を互いに接離するように駆動することで、電流の投入・遮断を行う開閉器についても、本発明を適用することができる。
【0061】
(3) 図示の実施の形態のように蓄圧空間を可動接触子部側に設ける以外に、固定接触子部側に設けたり、両方の接触子部に設けることも可能である。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、温度に応じてガスを排出あるいは吸収することが可能な機能性材料を効果的に利用することにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。さらに、地球環境への負荷を低減したコンパクトかつ高性能な開閉器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に対応するパッファ形ガス遮断器の電流遮断時の状態を示す縦断面図。
【図2】SF6ガスとCO2の混合ガスの絶縁特性図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に対応する開閉器の電流遮断時の状態を示す従断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に対応する開閉器の電流遮断時の状態を示す図であって、(a)はその縦断面図、(b)は(a)の面Aにおける断面図。
【図5】本発明の第4の実施の形態に対応する開閉器の電流遮断時の状態を示す縦断面図。
【図6】温度に応じてガスを排出あるいは吸収することが可能な機能性材料の特性図。
【図7】従来の開閉器の例としてのパッファ形遮断器を示す縦断面図であって、(a)は閉極状態、(b)は開極動作初期の状態、(c)は開極動作終了直後の状態、(d)は開極動作終了後電流零点に至った状態を示す。
【符号の説明】
10:固定接触子部(第1接触子部)
11:固定アーク接触子
12:固定通電接触子
13:導体
14:フランジ
20:可動接触子部(第2接触子部)
21:操作ロッド
21a,21b:連通穴
22,22c:フランジ
22a:連通穴
23:パッファシリンダ
24:可動アーク接触子
25:可動通電接触子
26:絶縁ノズル
27:固定ピストン
27a:支持部
28:通電部
29:導体
30:アーク
31:残留アークプラズマ
32a〜32h:ガス流
41:機能性素子
42:発生ガス
43:充填SF6ガス
44:充填CO2ガス
45:断熱材
46:着色機能性素子
47:棒状機能性素子
S1:圧縮(蓄圧)空間または第1蓄圧室
S2:アーク空間
S3:上流側ガス流路
S4:スロート部
S5:第2の蓄圧空間
【発明の属する技術分野】
本発明は、送配電線路において電流を遮断する機能を有する開閉器に係る。
【0002】
【従来の技術】
電流遮断器能を有する開閉器には、使用目的や必要とされる機能に応じて、断路器、遮断器など様々なものが存在する。ここでは、72kVkV以上の高電圧送電系統の保護用開閉器として、広く使用されているパッファ形ガス遮断器を例に取り従来の技術を説明する。
【0003】
図7は従来のパッファ形ガス遮断器の一例を示す図であり、(a)は閉極状態を、(b)は開極動作初期の状態を、(c)は開極動作終了直後の状態を、(d)は開極動作終了後電流零点に至った状態を示す断面図である。
【0004】
この図7に示すように、消弧性のガスが充填された図示していない容器内には、固定接触子部10として定義される第1接触子部、可動接触子部20として定義される第2接触子部が対向配置されている。消弧性ガスとしては、アーク遮断性能および電気絶縁性能ともに優れたSF6ガスが使用されることが通常である。なお、以下、可動接触子部20の位置関係について、固定接触子部10側の方向を前方、その反対側を後方と定義して説明する。
【0005】
固定接触子部10は、固定アーク接触子11とその周囲に配置された固定通電接触子12から構成されている。固定通電接触子12には導体13が固定されており、図示していないガス遮断器の口出し部に接続される。
【0006】
一方、可動接触子部20は、中空の操作ロッド21とこの操作ロッド21の周囲に配置されて前端部で操作ロッド21に連結されたフランジ22、フランジ22の後方に連結されたパッファシリンダ23、フランジ22の前方に連結された中空かつ指状の可動アーク接触子24とその周囲に配置された可動通電接触子25、可動アーク接触子24を包囲する絶縁性のノズル26を備えている。
【0007】
前記可動接触子部20のパッファシリンダ23内には固定ピストン27が挿入され、この固定ピストン27は図示しない容器に支持されたフランジ14に固定されている。このフランジ14には通電部28が固定されており、その先端部においてパッファシリンダ23と接触通電および摺動通電可能になっている。また、フランジ14には導体29が固定されており、図示していないガス遮断器の口出し部に接続されている。
【0008】
以上のような可動接触子部20のうち、操作ロッド21は、図示していない駆動装置によってその軸方向に往復運動するように構成されており、その中程に、その中空部と充填ガス雰囲気空間とを連通する複数の連通穴21aを有している。また、可動アーク接触子24と絶縁ノズル26との間には、パッファシリンダ23内部の圧縮空間S1で圧縮された消弧性ガスをガス流として、フランジ22に設けられた連通穴22aを経て、アーク空間S2に導くための上流側ガス流路S3が形成されている。
【0009】
さらに、固定ピストン27は、円形平板状に形成されており、その内周面で操作ロッド21の外周面に対して摺動すると共に、その外周面でパッファシリンダ23の内周面に対して摺動するように構成されている。この場合、固定ピストン27は、その後方に一体的に設けられて軸方向に伸びるピストン支持部27aによって図示していない容器内に固定されている。そして、このように固定された固定ピストン27に対し、操作ロッド21とパッファシリンダ23が一体的に移動することにより、パッファシリンダ23と固定ピストン27が相対移動し、それによって、パッファシリンダ23内部に形成される空間S1が圧縮されるようになっている。
【0010】
以上のような構成を有する図7のパッファ形ガス遮断器の閉極時の通電状態について説明する。
図7(a)に示すように、可動接触子部20の操作ロッド21がパッファシリンダ23と共に固定接触子部10側に移動し、パッファシリンダ23先端のフランジ22に設けられた可動通電接触子25が固定接触子部10の固定通電接触子12に、また、可動アーク接触子24が固定アーク接触子11に接触している。この状態で、電流は、ガス遮断器の片側の口出し部から導入され、例えば、導体13側から入り、固定通電接触子12、可動通電接触子25、フランジ22、パッファシリンダ23、通電部28、フランジ14および導体29を通って、ガス遮断器の反対側の口出し部から出ていく。
【0011】
次に、開極動作について説明する。
まず、開極動作途中の初期状態においては、後方の操作ロッド21が移動しており、この操作ロッド21を含む可動接触子部20が一体的に移動している。図7(b)はこのような開極動作によって固定アーク接触子11と可動アーク接触子24が開離した後の状態を示しており、両アーク接触子11、24間のアーク空間S2には大電流アーク30が発生している。ここで、パッファシリンダ23内部の空間S1の圧力は、パッファシリンダ23と固定ピストン27との相対移動による機械的な圧縮作用によって昇圧されることになる。
【0012】
この時、大電流アーク30により、アーク空間S2は高温高圧の状態にある。例えば大電流アーク30の電流が50kAの場合、その温度は容易に10000K以上に達する。このため、アーク空間S2は圧縮空間S1より圧力が上昇し、操作ロッド21の内部空間から連通穴21aを経て圧縮空間S1に至るガス流32aが生じる。すなわち、大電流アーク30のエネルギーのうちの一部が圧縮空間に取り込まれる。
【0013】
このように、開極動作が進むと、パッファシリンダ23内部の蓄圧空間S1は機械的な圧縮作用に加えて、熱的作用により昇圧される。このように空間S1が十分に昇圧された状態で、図7(c)に示すように開極動作がさらに進みノズル25のスロート部S4が開口すると、可動アーク接触子24と絶縁ノズル26との間のガス流路から固定アーク接触子11に向かって流れるガス流32bが発生する。その一方で、可動アーク接触子24の中空部から、操作ロッド21に設けられた連通穴21aに向かって流れるガス流32cも発生する。ただし、この段階ではアーク空間S2が径の大きな大電流アーク30によりほぼ閉塞された状態にあるため、ガス流32b、32cは弱い流れである。
【0014】
さらに、図7(d)に示すように電流零点に達すると、大電流アーク30は減衰し、残留アークプラズマ31となって、圧力、密度及び温度が減少する。これにより、ノズル25のスロート部S4は十分に開口し、強力なガス流32d、32eが発生し、これらの2方向のガス流によって、相乗的に強力に冷却されて消弧され、電流遮断が達成される。
【0015】
【発明が解決しようとする課題】
前記のようなパッファ形ガス遮断器のように、アークに消弧性ガスを吹付けてアークを消滅させ、電流遮断を行うタイプの開閉器においては、ガスの吹付け圧力、すなわち蓄圧空間S1の圧力の上昇により、ガス吹付け力が向上し、アークが消滅しやすくなり、電流遮断性能が向上することが知られている。さらに、アーク遮断が可能な期間を長く確保しようとすると、蓄圧空間内S1内に存在する吹付けガスの体積が、それに応じて多く必要となることが一般に知られている。
【0016】
しかしながら、前述のパッファ形ガス遮断器においては、電流遮断性能を向上させるために高い吹付け圧力を得ようとすると、それだけ蓄圧空間の圧力を高く上昇させるための大きなエネルギーが必要となり、たとえば大きな機械的駆動力が必要となる。また、アーク遮断が可能な期間を長く確保しようとすると、蓄圧空間S1内のガス体積を多く確保する必要があり、そのガス体積を昇圧させるためにさらに大きなエネルギーが必要となっていた。これらをまとめると、開閉装置の電流遮断性能を向上させるためには、強い吹付け圧力を長い期間維持することが必要であり、そのためには大きなエネルギーにより、大きなガス体積を高い圧力に昇圧させる必要があり、これにより必然的に装置の大型化を招いた。
【0017】
また、消弧性ガスとして広く使用されているSF6ガスは地球温暖化係数が23900と非常に高いことが知られており、1997年12月に開催された地球温暖化防止に関する京都会議(COP3)において温室効果ガスとして削減対象に指定された。しかしながら、SF6ガスは今のところ実用的に最も優れたアーク遮断媒体と認識されており、SF6に比べて地球温暖化係数が小さく環境にやさしい他の代替ガス、例えば空気、N2、CO2などをアーク遮断媒体として適用した場合、SF6と同等レベルのアーク遮断性能を得るためにはさらに強力な吹付け力が必要となり、さらに大型化が必要となることが問題となっていた。
【0018】
一方、ゼオライトなどの物理的吸着剤、水素吸蔵合金、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3などの材料は、ある臨界温度に応じて、それぞれに特有のガスを排出あるいは吸収することが知られている。図6にその特性の概念図を示す。一例として、Li4SiO4は一気圧の圧力においては、臨界温度である720℃以上の温度でCO2ガスを放出し、同温度以下では逆にCO2ガスを吸収する方向に反応が進むことが知られている。さらに、温度が高くなるほどCO2ガス放出量は多くなることが知られている。
【0019】
本発明は前記のような従来の開閉器における問題点を解決するために提案されたものであって、物理的吸着剤、水素吸蔵合金などの機能性材料が有する特性に着目することにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、消弧性ガスが充填された密閉容器内に収納され、開閉器の投入時は接触導通状態にあり、開極動作時は相対移動しつつ開離するとともに両者間にアークを発生するアーク空間が形成されるように対向配置された第1接触子および第2接触子と、
前記消弧性ガスの蓄圧空間と、前記蓄圧空間から前記アーク空間に消弧性ガスを案内するガス流路とを有する開閉器において、
前記蓄圧空間に、温度に応じてガスを排出あるいは吸収することが可能な機能性材料を配置したことを特徴とする。
【0021】
このような構成を有する請求項1の発明においては、電流遮断時にはアーク部で発生した高温のガス流が蓄圧空間にとり込まれ、蓄圧空間の温度が急激に上昇する。すると、蓄圧空間に配置された機能性材料の温度も上昇し、その臨界温度以上に達する。これにより機能性材料から消弧性ガスが排出されるため、従来の場合よりも高い吹付け圧力、および多量の吹付けガス量が得られる。
【0022】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記機能性材料が、物理的吸着材、水素吸蔵合金、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3のいずれか1つあるいは混合材料であることを特徴とする。
【0023】
ゼオライトなどのガスの物理的吸着材、水素吸蔵合金、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3などは、ある臨界温度を超えるとそれぞれの材料に特有のガスを放出し、逆に臨界温度以下においてはガスを吸収することが知られている。したがって、このような構成の請求項2の発明によれば、請求項1により得られる作用と同一の作用が得られる。
【0024】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載の発明において、前記消弧性ガスは、SF6ガスよりも地球温暖化係数が低いガスのうちの1種類の純粋ガス、または2種類以上の混合ガス、または少なくとも1種類以上のガスとSF6ガスとの混合ガスであることを特徴とする。
このような構成の請求項3の発明では、消弧性ガスとして従来使用されているSF6ガスよりも地球温暖化係数が低い純ガスあるいは混合ガスを使用するため、地球環境への負荷を従来よりも低減することができる。
【0025】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、前記SF6ガスよりも地球温暖化係数が低いガスは、CO2、N2、O2、H2、He、Arのいずれかであることを特徴とする。
【0026】
このような構成を有する請求項4の発明においては、CO2、N2、O2、H2、He、Arは、消弧ガスとして従来使用されているSF6ガスよりも地球温暖化への影響が著しく小さいことに加え、オゾン層破壊への影響、人体への毒性がないため、地球環境への負荷を特に低減することが可能である。
【0027】
請求項5の発明は、請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の発明において、前記機能性材料から発生されるガスは、その組成に前記消弧性ガスの少なくとも1種類と同じ元素を含むことを特徴とする。
【0028】
一般に、開閉器の電流遮断直後は、機能性材料から放出されたガスが、もともと密閉容器に充填されていた消弧性ガスに加わった状態となっている。したがって、機能性材料から排出されるガスがもともとの充填消弧性ガスと異なる場合には、両者の混合ガスとなっている。したがって、この状態においては初期に設定された開閉器の特性とは異なっている。しかしながら、前記のような構成を有する請求項4の発明においては、前記機能性材料から発生されるガスが、その組成に前記消弧性ガスの少なくとも1種類と同じ元素を含むよう構成することにより、機能性材料からのガス放出後の開閉器の特性変化を低く抑えることができる。
【0029】
請求項6の発明は、請求項5に記載の発明において、前記消弧性ガスがCO2を含むガスであって、前記機能性材料が、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3のいずれか1つあるいは混合材料であることを特徴とする。
【0030】
このような構成を有する請求項6の発明において使用されるLi4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3などの材料は、その臨界温度を超えることによりCO2ガスを発生させ、逆に臨界温度以下ではCO2ガスを吸収する機能を有する。したがって、前記消弧性ガスがCO2ガスの場合において、上記機能性材料からのガス放出後においても充填ガスはCO2ガス単一であるため、開閉器の特性変化をさらに低く抑えることができる。
【0031】
請求項7の発明は、請求項5に記載の発明において、前記消弧性ガスがH2を含むガスであって、前記機能性材料が水素吸蔵合金であることを特徴とする。
このような構成を有する請求項7の発明においては、前記消弧性ガスとしてH2を含むガスを採用し、前記機能性材料として水素吸蔵合金を使用したので、上記機能性材料からのガス放出後においても充填ガスはH2ガス単一であるため、開閉器の特性変化をさらに低く抑えることができる。
【0032】
請求項8の発明は、請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の発明において、前記機能性材料の色が白色あるいは透明色でないことを特徴とする。
一般に、機能性材料の温度が上昇する過程としては、昇圧空間に流れ込む高温ガスからの熱伝達に加え、アークおよびそれに伴う高圧ガスからの輻射吸収によるものが考えられる。同一条件下においては、一般的に白色あるいは透明色でない物質の方が、輻射吸収による熱移動率が高いことが知られている。したがって、このような構成を有する請求項6の発明において、前記機能性材料の色を白色または透明色以外とすることにより、輻射吸収による機能性材料への熱移動が効率的に行われ、速やかに材料温度が上昇し、電流遮断に対するガス放出の応答性が向上する。
【0033】
請求項9の発明は、請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の発明において、前記機能性材料から発生されるガスは、前記消弧性ガスと混合された際の絶縁耐圧が、両者の分圧和から決定される絶縁耐圧よりも高くなるものであることを特徴とする。
【0034】
通常、電流遮断直後は、機能性材料から放出されたガスが、もともと密閉容器に充填されていた消弧性ガスに加わった状態となっている。したがって、機能性材料から排出されるガスがもともとの充填消弧性ガスと異なる場合には、両者の混合ガスとなっている。ところで、混合ガスの絶縁特性については負の相乗効果、および正の相乗効果があることが知られている。ある2種のガスを混合させた場合、それぞれのガスの分圧和から決定される絶縁耐圧よりも混合ガスとしての絶縁耐圧が低くなる場合を負の相乗効果、高くなる場合を正の相乗効果という。
【0035】
したがって、前記のような構成を有する請求項9の発明においては、前記機能性材料から発生されるガスと、もともと密閉容器に充填されている消弧性ガスとを、両者が混合された際に正の相乗効果を示すような組み合わせとすることにより、遮断性能の向上効果に加え、同時に良好な絶縁性能も得ることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下には、本発明における開閉器の複数の実施の形態について、図1ないし図5を参照して具体的に説明する。なお、図7に従来技術の開閉器と同一の部分については、同一の符号を付し、説明は省略する。
【0037】
(第1の実施の形態)
第1の実施の形態は、本発明をパッファ形ガス遮断器に適用したものであって、図1は、その電流遮断時の状態を示す。すなわち、電流遮断器能を有する開閉器には、使用目的、必要とされる機能に応じて、断路器、遮断器など様々なものが存在する。ここでは、一例として72kV以上の高電圧送電系統の保護用開閉器として、広く使用されているパッファ形ガス遮断器を取り上げて解説する。
【0038】
このパッファ形ガス遮断器の基本的な構造は、図7において説明した従来のパッファ形ガス遮断器と同様である。密閉容器内に充填されている消弧性ガス43は、ここでは現在広く使用されているSF6ガスとする。このパッファ形ガス遮断器における蓄圧空間S1内には円筒状の機能性材料41が配置されている。すなわち、蓄圧空間S1を構成するパッファシリンダ23の内面に沿って円筒状の機能性材料41が配設され、アーク部30と蓄圧空間S1はフランジ22に設けた連通穴22aおよび中空状操作ロッド21に設けた連通穴22bにより連通されている。この機能性材料41としては、様々な種類が考えられるが、本実施の形態では、一例として、約700℃の臨界温度以上でCO2ガスを排出するLi4SiO4を使用する。
【0039】
このような構成を有する第1の実施の形態において、パッファ形ガス遮断器としての基本的な動作は、従来の技術において説明したものと同様である。
一方、電流遮断時においては、固定アーク接触子11および可動アーク接触子24の間にアーク30が発生する。通常、アーク温度は10000K以上まで容易に達する。したがって、アーク部において高温のガス流32fが発生し、これが蓄圧空間S1にとり込まれることにより、蓄圧空間S1の温度は急激に上昇する。すると、蓄圧空間S1に配置された機能性材料41の温度も上昇し、その臨界温度以上に達する。これにより機能性材料41からCO2ガス42が排出されるため、固定ピストン27による機械的に圧縮に加え、蓄圧空間S1の圧力はさらに急激に上昇する。こうした高い蓄圧空間S1の圧力により、もともと昇圧空間S1内に存在したSF6ガスが、機能性材料から発生したCO2ガス42とともに強力にアーク30に吹付けられるため、極めて良好なアーク遮断が実現される。
【0040】
この場合、本実施の形態においては、機能性材料41が円筒状をなし、しかもパッファシリンダ23の内面全域にわたって配設されているため、連通穴22aおよび22bによりアークからの熱エネルギーが容易に昇圧空間S1へととり込まれ、さらにアークからの高温のガス流22bは蓄圧空間S1内において機能性材料41にほぼ垂直に衝突するため、機能性材料41への熱伝達が良好に行われ、速やかかつ大量にCO2ガスの排出が行われる。
【0041】
しかも、電流の遮断直後は、機能性材料41から排出されたCO2ガスが、もともと充填されていたSF6ガスに加わった状態となっている。したがって、密閉容器圧力は初期の圧力よりも上昇しており、また、密閉容器内のガスはSF6ガスとCO2の混合ガスとなっているため、この状態においては初期に設定された開閉器の性能とは異なった状態となっている。しかしながら、その後、蓄圧空間の温度は速やかに低下するため、機能性材料41の温度もその臨界温度以下にまで低下する。そのため、機能性材料41は電流遮断時に放出したCO2ガスを今度は吸収するよう機能する。したがって、機能性材料41がCO2ガスを吸収し終わった段階では、当該遮断器の特性は初期に設定されたものに完全に復された状態となる。
【0042】
電流遮断直後においては密閉容器内のガスはSF6ガスとCO2の混合ガスとなっている。混合ガスの絶縁特性については負の相乗効果、および正の相乗効果があることが知られているが、SF6ガスとCO2ガスの混合ガスの絶縁耐力は、図2に示すようにそれぞれのガスの分圧和から決定される絶縁耐圧よりも混合ガスとしての絶縁耐圧の方が高くなる、いわゆる正の相乗効果を示すことが知られている。したがって、SF6ガスとCO2ガスのような正の相乗効果を有するガスを組み合わせることにより、機能性材料のガス排出による遮断性能の向上効果だけでなく、同時に良好な絶縁性能も得ることができる。
【0043】
一般的に遮断電流値が大きくなると、それだけアークは消弧しにくくなり、電流を遮断するためにはさらに高い吹付け圧力および多量の吹付けガス量が必要となる。一方、遮断電流が大きいほどアーク部においてより高温のガスが生成されるため、蓄圧空間の温度は上昇する。したがって、本構成によると、電流を遮断しにくい大電流遮断時には、蓄圧空間に設置した機能性材料はそれだけ多くの消弧性ガスを放出し、より高い吹付け圧力、および多量の吹付けガス量が得られ、大電流遮断時においても良好な遮断性能を得ることができる。これにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。
【0044】
(第2の実施の形態)
図3は、本発明の第2の実施の形態を示す電流遮断時における開閉器である。この開閉器の概ねの構造は、図1において説明した第1の実施の形態を示すパッファ形ガス遮断器と同様であるが、本実施の形態においては、蓄圧空間S1に固定ピストンは存在せず、パッファシリンダ23の操作機構側(可動アーク接触子24や可動通電接触子25と反対側)の開口部が操作ロッド21に固定されたフランジ22cによって塞がれ、蓄圧空間S1が閉じた空間を形成している。また、この蓄圧空間S1との内部とアーク部30とは、フランジ22に設けた連通穴22aおよび中空状操作ロッド21に設けた連通穴22bにより連通されている。また、密閉容器内に充填されている消弧性ガス44は、ここではCO2ガスとする。
【0045】
前記蓄圧空間S1の内部には、カーボンを含まない顔料により黒に着色された円筒状の機能性材料46が蓄圧空間S1内に配置されている。この機能性材料としては、様々な種類が考えられるが、ここでは一例として、約700℃の臨界温度以上でCO2ガスを排出するLi4SiO4を使用する。着色された機能性材料46と金属製のパッファシリンダ23は断熱材45によりしきられており、両者は熱的に絶縁されている。
【0046】
このような構成を有する第2の実施の形態の基本的な作用は、第1の実施の形態と同一であるが、本実施の形態においてはピストンによる機械的な圧縮を行わないので、機械的駆動力を非常に小さくすることが可能で、大幅な小形化、低コスト化が図られる。機械的な圧力上昇手段を用いなくても、電流遮断時に機能性材料46より排出されるCO2ガス42により、電流を遮断するのに十分な吹付けガス圧力、吹付けガス量を確保することができる。
【0047】
特に、本実施の形態では、断熱材45により機能性材料46と金属性のパッファシリンダ23は熱的に絶縁されているため、同境界面における熱移動を抑制することができる。このため、高温ガスから注入される熱量が効率的に機能性素子の温度上昇に利用され、電流遮断に対するガス放出の応答性が向上する。
【0048】
一方、機能性材料46の温度が上昇する過程としては、蓄圧空間S1に流れ込む高温ガス32fからの熱伝達に加え、アーク30およびそれに伴う高圧ガス32fからの輻射吸収によるものが考えられる。本実施の形態における機能性材料46は黒色に着色されているため、輻射吸収による機能性材料への熱移動が効率的に行われ、速やかに材料温度が上昇し、電流遮断に対するガス放出の応答性がさらに向上する。黒着色している顔料はカーボンを含まないため、たとえ機能性材料46が熱分解し消弧性ガスに混入した場合においても電気絶縁性能に悪影響をおよぼさない。
【0049】
更に、機能性材料46より排出されるガス42はCO2ガスであり、もともと密閉容器に充填されていたガス44と同一ガスである。したがって電流遮断時に機能性材料からの排出ガスが加わっても、容器内はいぜんCO2ガスのままである。このため、電流遮断後の開閉器の特性変化は低く抑えられる。
【0050】
CO2ガスは、従来消弧性ガスとして広く使用されているSF6ガスと比較して、地球温暖化係数が23900分の1と極めて小さく、さらにオゾン層破壊への影響、および毒性も無いため、地球環境への負荷を著しく低減することができる。CO2自体のアーク遮断性能はSF6ガスと比較すると劣るが、機能性材料46から発生するガス42により高い吹付けガス圧力および十分なガス流量が得られるため、良好なアーク遮断が実現できる。
【0051】
これにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。さらに、地球環境への負荷を低減したコンパクトかつ高性能な開閉器を提供することができる。
【0052】
(第3の実施の形態)
図4は、本発明の第3の実施の形態を示す電流遮断時における開閉器である。この開閉器の概ねの構造は、図3において説明した第2の実施の形態を示す開閉器と同様であるが、機能性材料の配置構造が前記第2の実施の形態と異なる。すなわち、本実施の形態においては、図4(b)の断面図に示すように、棒状の機能性材料47を昇圧空間S1内に操作ロッド21の軸方向と平行に多数本配置した構造となっている。
【0053】
このような構成を有する本形態においては、図3に示すような単純円筒形の機能性材料と比べて、その表面積を大幅に増やすことが可能である。このため、高温のガス流32fからの熱伝達が効率的に行われ、機能性材料47の温度が急激に上昇する。したがって、電流遮断に対するガス放出の応答性が向上する。これにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。
【0054】
なお、本実施の形態においては、機能性材料の表面積を増やすことが本質的な問題であり、これを実現する構成は、棒形状にする以外にも多々存在するもので、機能性材料の表面に凹凸や溝を形成したり、機能性材料自体を網状やフィン状に形成することも可能である。
【0055】
(第4の実施の形態)
図5は、本発明の第4の実施の形態を示す電流遮断時における開閉器である。この開閉器の基本的な構造は図7において説明した従来のパッファ形ガス遮断器と同様である。本実施の形態においては、絶縁ノズル26の内部に第2の蓄圧空間S5が形成され、同空間内に機能性材料41が配置されている。この場合、機能性材料41より発生する消弧性ガス42はアーク30に対して垂直に吹付けられるように、第2の蓄圧空間S5の開口部は、絶縁ノズル26の内面に配置されている。
【0056】
このような構成を有する本実施の形態の基本的な作用は、第1の実施の形態と同一である。それに加え、本実施の形態においては、機能性材料41がアーク30近傍に配置されているため、蓄圧空間S1に配置するときよりもより高温に曝される。さらにアーク30までの流路長も短いため、電流遮断に対するガス放出の応答性が各段に向上する。
【0057】
特に、アーク遮断においては、アーク径を細くしぼるほど、その遮断性能が向上することが定性的に知られている。本実施の形態においては、機能性材料41より発生する消弧性ガス42が、アーク30に対して垂直に吹付けられるため、当該部分でアーク径が著しく絞られ優れたアーク遮断性能が実現される。これにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。
【0058】
(他の実施の形態)
本発明は前記のような実施の形態に限定されるものではなく、次のような他の実施の形態も包含するものである。
【0059】
(1) 第4の実施の形態は、前記第1から第3の実施の形態のように、第1の蓄圧空間S1の内部に機能性材料を配置したものと組み合わせることも可能であり、第1、第2の蓄圧空間の両方に機能性材料を配置することにより、より優れた遮断性能を得ることもできる。
【0060】
(2) 図示の実施の形態は、第1、第2の接触子部のうち一方を固定接触子部とし、他方を可動接触子部としたが、対向する両方の接触子部を互いに接離するように駆動することで、電流の投入・遮断を行う開閉器についても、本発明を適用することができる。
【0061】
(3) 図示の実施の形態のように蓄圧空間を可動接触子部側に設ける以外に、固定接触子部側に設けたり、両方の接触子部に設けることも可能である。
【0062】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、温度に応じてガスを排出あるいは吸収することが可能な機能性材料を効果的に利用することにより、良好な遮断性能を有しながらもコンパクトな開閉器を提供することができる。さらに、地球環境への負荷を低減したコンパクトかつ高性能な開閉器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態に対応するパッファ形ガス遮断器の電流遮断時の状態を示す縦断面図。
【図2】SF6ガスとCO2の混合ガスの絶縁特性図。
【図3】本発明の第2の実施の形態に対応する開閉器の電流遮断時の状態を示す従断面図。
【図4】本発明の第3の実施の形態に対応する開閉器の電流遮断時の状態を示す図であって、(a)はその縦断面図、(b)は(a)の面Aにおける断面図。
【図5】本発明の第4の実施の形態に対応する開閉器の電流遮断時の状態を示す縦断面図。
【図6】温度に応じてガスを排出あるいは吸収することが可能な機能性材料の特性図。
【図7】従来の開閉器の例としてのパッファ形遮断器を示す縦断面図であって、(a)は閉極状態、(b)は開極動作初期の状態、(c)は開極動作終了直後の状態、(d)は開極動作終了後電流零点に至った状態を示す。
【符号の説明】
10:固定接触子部(第1接触子部)
11:固定アーク接触子
12:固定通電接触子
13:導体
14:フランジ
20:可動接触子部(第2接触子部)
21:操作ロッド
21a,21b:連通穴
22,22c:フランジ
22a:連通穴
23:パッファシリンダ
24:可動アーク接触子
25:可動通電接触子
26:絶縁ノズル
27:固定ピストン
27a:支持部
28:通電部
29:導体
30:アーク
31:残留アークプラズマ
32a〜32h:ガス流
41:機能性素子
42:発生ガス
43:充填SF6ガス
44:充填CO2ガス
45:断熱材
46:着色機能性素子
47:棒状機能性素子
S1:圧縮(蓄圧)空間または第1蓄圧室
S2:アーク空間
S3:上流側ガス流路
S4:スロート部
S5:第2の蓄圧空間
Claims (9)
- 消弧性ガスが充填された密閉容器内に収納され、開閉器の投入時は接触導通状態にあり、開極動作時は相対移動しつつ開離するとともに両者間にアークを発生するアーク空間が形成されるように対向配置された第1接触子および第2接触子と、
前記消弧性ガスの蓄圧空間と、前記蓄圧空間から前記アーク空間に消弧性ガスを案内するガス流路とを有する開閉器において、
前記蓄圧空間に、温度に応じてガスを排出あるいは吸収することが可能な機能性材料を配置したことを特徴とする開閉器。 - 前記機能性材料が、物理的吸着材、水素吸蔵合金、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3のいずれか1つあるいは混合材料であることを特徴とする請求項1に記載の開閉器。
- 前記消弧性ガスは、SF6ガスよりも地球温暖化係数が低いガスのうちの1種類の純粋ガス、または2種類以上の混合ガス、または少なくとも1種類以上のガスとSF6ガスとの混合ガスであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の開閉器。
- 前記SF6ガスよりも地球温暖化係数が低いガスは、CO2、N2、O2、H2、He、Arのいずれかであることを特徴とする請求項3に記載の開閉器。
- 前記機能性材料から発生されるガスは、その組成に前記消弧性ガスの少なくとも1種類と同じ元素を含むことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の開閉器。
- 前記消弧性ガスがCO2を含むガスであって、前記機能性材料が、Li4SiO4、Li2SiO3、Li2TiO3、LiNiO2、LiFeO2、Li2ZrO3、CaCO3、MgCO3のいずれか1つあるいは混合材料であることを特徴とする請求項5に記載の開閉器。
- 前記消弧性ガスがH2を含むガスであって、前記機能性材料が水素吸蔵合金であることを特徴とする請求項5に記載の開閉器。
- 前記機能性材料の色が白色あるいは透明色でないことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の開閉器。
- 前記機能性材料から発生されるガスは、前記消弧性ガスと混合された際の絶縁耐圧が、両者の分圧和から決定される絶縁耐圧よりも高くなるものであることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1つに記載の開閉器。
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