以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態に係る接点装置1について図面を用いて詳細に説明する。ただし、以下に説明する接点装置1は本発明の一例に過ぎない。そして、本発明は、下記の実施形態に限定されることなく、この実施形態以外であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また、以下の説明では、図1における上下左右を上下左右方向として説明するが、接点装置1の使用形態を限定する趣旨ではない。
本実施形態の接点装置1の概略構成図を図1に示す。本実施形態の接点装置1は、一対の固定接点10と、一対の可動接点11と、各固定接点10を支持する一対の接点台100,101と、両可動接点11を支持する可動接触子12とを備える。また、本実施形態の接点装置1は、固定接点10,可動接点11および後述する消弧部材14を収納する容器13を備える。なお、図1には、本実施形態の接点装置1と、接点装置1の下方に配置される電磁石装置2とで構成される電磁継電器3を表しているが、電磁石装置2は接点装置1の構成要素には含まれない。また、接点装置1は、電磁継電器3の使用に限定しない。
一対の接点台100,101は、導電性材料で構成されており、上下方向を長手方向とする円柱形状に形成されている。そして、一対の接点台100,101は、上下方向に直交する平面内の一方向(図1における左右方向)に並んで配置されている。また、一対の接点台100,101各々の下端部には固定接点10が設けられている。一対の接点台100,101各々は、後述する容器13の上壁に形成された一対の丸孔130に挿入される形で、容器13に接合されている。
可動接触子12は、導電性材料で構成されており、左右方向を長手方向とする矩形板状に形成されている。可動接触子12は、長手方向の両端部が一対の接点台100,101の下端部と対向するように、一対の接点台100,101の下方に配置されている。可動接触子12のうち、各接点台100,101に設けられている固定接点10と対向する各部位には、可動接点11がそれぞれ設けられている。
可動接触子12は、後述する電磁石装置2によって上下方向に駆動される。これにより、可動接触子12に設けられた各可動接点11は、それぞれに対向する固定接点10に接触する閉位置と、固定接点10から離れた開位置との間で移動することになる。可動接点11が閉位置にあるとき、すなわち接点装置1が閉じた状態では、一対の接点台100,101の間は可動接点11,可動接触子12を介して短絡する。また、可動接点11が開位置にあるとき、すなわち接点装置1が開いた状態では、一対の接点台100,101の間は開放される。
容器13は、酸化アルミニウム(アルミナ),炭化ケイ素(SiC),窒化アルミニウムなどのセラミックからなる耐熱性材料で構成される箱体で形成されている。そして、容器13は、その内部に気密空間を形成し、固定接点10,可動接点11,消弧部材14を収納する。なお、容器13は、内部に気密空間を形成する構成に限定しない。
次に、電磁石装置2について説明する。電磁石装置2は、固定子20と、可動子21と、継鉄(図示せず)と、励磁コイル22と、シャフト23と、ホルダ24と、接圧ばね25と、復帰ばね26とを備える。なお、電磁石装置2は、励磁コイル22が巻き付けられるコイルボビン(図示せず)を有していてもよい。
固定子20は、円筒状に形成された固定鉄心であって、その上端部が容器13の下壁に固定されている。可動子21は、円柱状に形成された可動鉄心である。可動子21は、固定子20の下方において、その上端面を固定子20の下端面に接触させた第1の位置と、その上端面が固定子20の下端面から離れた第2の位置との間で移動可能に構成されている。
なお、電磁石装置2は、非磁性体からなり固定子20および可動子21を収納するケース(図示せず)を有していてもよい。ケースは、上面が開口した有底円筒状に形成され、上端部(開口周部)が容器13の下壁に固定される。これにより、ケースは、可動子21の移動方向を上下方向に制限し、かつ可動子21の第2の位置を規定する。
継鉄は、固定子20および可動子21と共に、励磁コイル22の通電時に生じる磁束が通る磁気回路を形成する。このため、継鉄と固定子20と可動子21とは、いずれも磁性材料から形成されている。
励磁コイル22は、継鉄で囲まれる空間内に配置される。また、励磁コイル22の内側には、固定子20と可動子21とが配置される。電磁石装置2は、励磁コイル22への通電時に励磁コイル22で生じる磁束によって可動子21を吸引して上方へ移動させ、励磁コイル22への通電が停止すると復帰ばね26のばね力によって可動子21を下方へ移動させる。
シャフト23は、非磁性材料で構成され、上下方向を長手方向とする丸棒状に形成されている。シャフト23は、電磁石装置2で発生した駆動力を接点装置1へ伝達する。シャフト23は、容器13の下壁の中央部に形成された通孔131に挿通されており、固定子20および復帰ばね26の内側を通って、その下端部が可動子21に固定されている。シャフト23の上端部は、可動接触子12を保持するホルダ24に固定されている。
ホルダ24は、可動接触子12の上下方向の両側に設けられていて互いに対向する上板240および下板241と、上板240と下板241との周縁部同士を連結する側板242とを具備している。ここでは、上板240および下板241はそれぞれ矩形板状に形成されている。側板242は、上板240の下面において互いに対向する一対の辺と、下板241の上面において互いに対向する一対の辺とを連結するように一対設けられている。下板241の中央部には、シャフト23の上端部が固定されている。これにより、電磁石装置2で発生した駆動力がシャフト23を介してホルダ24へと伝達される。そして、可動子21の上下方向への移動に伴って、ホルダ24が上下方向に移動する。
接圧ばね25は、ホルダ24の下板241と可動接触子12との間に配置されており、可動接触子12を上方へと付勢するコイルばねである。復帰ばね26は、固定子20の内側に配置されており、可動子21を下方へと付勢するコイルばねである。
以下に、本実施形態の接点装置1を用いた電磁継電器3の基本的な動作について簡単に説明する。
まず、励磁コイル22の非通電時における電磁継電器3の状態について説明する。この状態では、電磁石装置2の可動子21が第2の位置にある。このため、ホルダ24は、電磁石装置2によってシャフト23を介して下方に引き下げられている。このとき、ホルダ24は、その上板240により可動接触子12を下方に押し下げることになる。したがって、可動接触子12は、上板240によって上方への移動が規制され、可動接点11を固定接点10から離れた開位置に位置させる。この状態は、接点装置1が開いた状態であり、一対の接点台100,101間は開放状態(非導通)である。
次に、励磁コイル22の通電時における電磁継電器3の状態について説明する。この状態では、電磁石装置2の可動子21が第1の位置にある。このため、ホルダ24は、電磁石装置2によってシャフト23を介して上方に引き上げられている。したがって、ホルダ24の上板240が上方へと移動するため、可動接触子12は、上板240による上方への移動規制が解除される。このため、可動接触子12は、ホルダ24の下板241により接圧ばね25を介して上方に押し上げられ、可動接点11を固定接点10に接触する閉位置に位置させる。この状態は、接点装置1が閉じた状態であり、一対の接点台100,101間は短絡状態(導通)である。また、可動接触子12が接圧ばね25により上方へと付勢されているため、固定接点10と可動接点11との間の接圧(接触圧)を確保することができる。
ここで、可動接点11が固定接点10から離れる際に、固定接点10−可動接点11間にアークが生じるおそれがある。そこで、本実施形態の接点装置1は、加熱されると消弧性を有する消弧ガスを放出する消弧部材14が、固定接点10,可動接点11と同一空間に配置されている。具体的には、図1に示すように、消弧部材14は、右側の固定接点10,可動接点11の近傍に位置するように、容器13の右壁内面に設けられている。消弧部材14は、水素を吸蔵した水素吸蔵合金で構成されており、加熱されることによって貯蔵している水素(消弧ガス)を迅速に放出する性質を有している。
そして、固定接点10−可動接点11間にアークが発生した際に、アークの熱が容器13内の気体を介して消弧部材14に伝えられることで消弧部材14が加熱され、消弧部材14から消弧ガス(水素)が放出される。この消弧ガスによりアークを急速に冷却して迅速に消弧することが可能になる。さらに、消弧部材14は、固定接点10,可動接点11の近傍に配置されているので、消弧部材14から勢いよく放出される消弧ガスがアークに吹き付けられることでもアークを消弧することができる。なお、消弧部材14が消弧ガスを放出するタイミングは、アークの発生時に限定せず、アークの発生していないタイミングで消弧ガスが放出されてもよい。
このように、本実施形態の接点装置1は、固定接点10と可動接点11と消弧部材14とを備える。可動接点11は、固定接点10に接触する閉位置および、固定接点10から離れた開位置との間で移動する。消弧部材14は、加熱されることによって、固定接点10と可動接点11とが含まれる空間に消弧性を有する消弧ガス(水素)を放出する。
したがって、本実施形態の接点装置1は、可動接点11が固定接点10から離れる際にアークが生じても、消弧部材14によってアークを迅速に消弧することができる。
なお、消弧部材14が放出する消弧ガスの成分は水素に限定せず、窒素などで構成されていてもよい。また、消弧部材14を構成する材料は、水素吸蔵合金に限定せず、加熱されることによって消弧ガスを放出する材料であればよい。例えば、消弧部材14は、フェノール樹脂等の樹脂材料または、水素吸蔵金属,水素化チタン(TiH)等の金属材料または、ホウ酸などの無機物で構成されていてもよい。また、消弧部材14が消弧ガスを放出するタイミングは、加熱時に限定せず、非加熱時においても消弧ガスを放出する構成であってもよい。
また、図1では、1つの消弧部材14のみを図示しているが、2つ以上の消弧部材14を備えていてもよく、例えば左側の固定接点10,可動接点11の近傍にも消弧部材14が配置されていてもよい。また、消弧部材14の大きさは、図1に示す大きさに限定しない。
また、容器13の内部に形成される空間の気密性を向上させることで、アーク発生時に容器13内における水素濃度が向上し、消弧性能をより向上させることができる。また、消弧性能をより向上させるために、容器13内に予め水素を封入しておくことが望ましい。
また、図2において、固定接点10−可動接点11間に発生したアークをA1で示す。固定接点10−可動接点11間にアークが発生した場合、アークの熱によって固定接点10および接点台101が加熱される。ここで、熱伝導性を有する材料で容器13を構成した場合、接点台101と容器13とは接合されており、接点台101の熱は、容器13を介して消弧部材14に伝導されることで、消弧部材14が加熱される。このように、別途部材を設けることなく、接点装置1の必須の構成である固定接点10,接点台101,容器13からなる構造物を介して消弧部材14を加熱することができる。そして、消弧部材14は、容器13内の気体を介してだけでなく、熱伝導性を有する構造物(固定接点10,接点台101,容器13)を介しても加熱されるので、より速やかに加熱されて消弧ガスを放出することができ、アークをより迅速に消弧することができる。なお、構造物は、固定接点10,接点台101,容器13の少なくとも1つで構成されていてもよい。また、消弧部材14への熱伝導効率を向上させるために、熱伝導率が高い材料で固定接点10,接点台101,容器13を構成することが望ましい。
さらに、可動接触子12が閉位置にある場合、固定接点10,可動接点11,可動接触子12を介して一対の接点台100,101間に電流が流れることによってジュール熱が発生する。このジュール熱が、容器13を介して消弧部材14に伝導されることで、消弧部材14を予熱(加熱)することができる。通電時(閉極時)に消弧部材14を予熱しておくことによって、アークの発生時に消弧ガスを速やかに放出することができ、アークをより迅速に消弧することができる。また、消弧部材14を設ける位置は上記に限定せず、図3に示すように、容器13の上壁における一対の接点台100,101間に組み込ませるように消弧部材14を設けてもよい。この場合、消弧部材14は、一対の接点台100,101からジュール熱が効率よく伝導されるので、予熱効果を向上させることができる。また、消弧部材14を可動接触子12における一対の可動接点11間に設けることでも、消弧部材14にジュール熱を効率よく伝導することができる。このように、通電時に発生するジュール熱を用いて消弧部材14を予熱することができるので、必ずしもアークの発生場所近傍に消弧部材14を設ける必要がなく、消弧部材14の配置自由度が向上する。
なお、本実施形態の接点装置1は、いわゆるプランジャ型の電磁石装置2と共に用いて電磁継電器3を構成しているが、以下に示すいわゆるヒンジ型の電磁石装置4と共に用いて電磁継電器5を構成してもよい。図4を用いて、電磁継電器5について簡単に説明する。
電磁石装置4は、図4(a)(b)に示すように、励磁コイル40,固定鉄心41,可動鉄心42,支持部43,アマチュア44を備え、容器13内に設けられる。アマチュア44は、下面に可動鉄心42が設けられた矩形板状に形成されており、容器13に固定された支持部43に基端部が支持され、先端部に可動接触子12が設けられる。固定鉄心41は、励磁コイル40が巻き付けられ、可動鉄心42と上下方向に対向している。そして、アマチュア44は、基端部を支点として先端部が上下方向に移動するように回転可能に構成されている。なお、アマチュア44には、アマチュア44を上方向に付勢する復帰ばね(図示なし)が設けられている。
可動接触子12は、アマチュア44の先端部に設けられており、アマチュア44の回転によって、可動接点11が固定接点10に接触する第1の位置と、可動接点11が固定接点10から離れた第2の位置との間で移動する。
したがって、励磁コイル40の通電時には、励磁コイル40で生じる磁束により可動鉄心42が固定鉄心41へ吸引され、可動接触子12が第1の位置へと移動する。これにより、一対の接点台100,101間が短絡(導通)する。また、励磁コイル40の非通電時には、復帰ばねのばね力により可動接触子12が第1の位置へと移動する。これにより、一対の接点台100,101間が開放(非導通)する。
(実施形態2)
本実施形態の接点装置1の概略構成図を図5(a)(b)に示す。本実施形態の接点装置1は、実施形態1の接点装置1の構成に加えて、固定接点10,可動接点11が含まれる空間(容器13内の空間)に磁界を発生させる磁界発生装置15を備えている。他の構成は、実施形態1と同一であり、実施形態1と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。なお、図5(b)は、接点装置1を上から見た断面図であり、図5(b)における上下を前後方向として説明する。
磁界発生装置15は、一対の磁石150で構成され、容器13を前後方向から挟み込むように配置されている。そして、磁界発生装置15は、容器13内の空間に前方から後方(図5(a)における紙面の奥から手前)に向かう磁界B1を発生させる。
ここで、右側の可動接点11−固定接点10間にアークが発生し、このアークを介して可動接点11から固定接点10に向かって電流I1が流れているとする。このとき、アークに磁界B1が印加されることで発生するローレンツ力によって、アークが右側に引き伸ばされる。なお、図5(a)において、磁界B1が印加されている場合におけるアークをA1で示し、磁界B1が印加されていない場合におけるアークをA0で示す。このように、磁界B1を発生させ、アークを引き伸ばすことでもアークを消弧することができる。さらに、図5(a)(b)に示すように、磁界B1によってアークが引き伸ばされる方向に消弧部材14を配置することによって、アークが引き伸ばされても消弧しない場合に、アークが消弧部材14に接触する。これにより、消弧部材14が急激に加熱されることによって、消弧ガスが急激に放出されアークを消弧することができる。このように、本実施形態の接点装置1は、磁界発生装置15を備えることで、消弧性能を向上させることができる。
なお、磁界発生装置15は、容器13内に設けられていてもよい。また、磁界発生装置15の構成は、磁石150に限定せず、他の磁性材料で構成されていてもよい。また、本実施形態では、磁界発生装置15は別体に構成されているが、他の構成部材と兼用されていてもよく、例えば容器13,消弧部材14を磁性材料で構成してもよい。
なお、その他の構成および機能は、実施形態1と同様である。
(実施形態3)
本実施形態の接点装置1の概略構成図を図6(a)(b)に示す。本実施形態の接点装置1は、実施形態1の接点装置1の構成に加えて、固定接点10,可動接点11が含まれる空間(容器13内の空間)に気流を発生させる気流発生装置16を備えている。他の構成は、実施形態1と同一であり、実施形態1と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。なお、図6(b)は、接点装置1を上から見た断面図であり、図6(b)における上下を前後方向として説明する。
気流発生装置16は、容器13の前壁および後壁における左右方向の中央部から内側に向かって突出した凸部160で構成されている。凸部160は、上から見た断面形状が三角形であり、容器13の前壁,後壁の上端部から下方に向かって連続して形成されている。この凸部160によって、容器13内における前後方向の幅は、左右方向中央部が最も狭くなり、左右方向中央部から左右両端に向かうにつれて広くなる。なお、凸部160の形状は、上から見た断面形状を三角形に限定せず、容器13内における前後方向の幅において、左右方向中央部を最も狭くする形状であればよく、例えば上から見た断面形状が半円状等であってもよい。また、凸部160は、容器13と一体に構成されていてもよい。
そして、固定接点10−可動接点11間にアークが発生した際、アークの熱によって容器13内の圧力が上昇する。このとき、容器13内において、前後方向の幅が最も狭い、左右方向の中央部の圧力が最も高くなるので、左右方向の中央部から左右方向の両端に向かって気流が発生する。この気流がアークに吹き付けられる。なお、図6(a)において、気流が発生している場合におけるアークをA1で示し、気流がない場合におけるアークをA0で示す。このように、アークに気流が吹き付けられることによって、アークを引き伸ばして消弧することができる。さらに、図6(a)(b)に示すように、気流の下流側に消弧部材14を配置することによって、アークの熱が消弧部材14に効率よく伝えられ、消弧部材14を効率よく加熱することができる。また、気流が吹き付けられたアークが消弧部材14に接触することで、消弧部材14が急激に加熱される。これにより、消弧部材14から消弧ガスが急激に放出され、アークを消弧することができる。このように、本実施形態の接点装置1は、気流発生装置16を備えることで、消弧性能を向上させることができる。
また、凸部160の位置,大きさ等を調整することで発生させる気流を調整できるので、消弧部材14の位置およびアークを接触させるタイミングを調整することができる。したがって、アークが発生した場合にのみ気流が発生させ、消弧ガスを発生させることもできる。
また、気流発生装置16の気流発生方法は上記に限定せず、加熱されることによってガスを放出するガス発生部材161で構成されていてもよい。ガス発生部材161を備えた接点装置1の概略構成図を図7(a)(b)に示す。なお、図7(b)は、接点装置1を上から見た断面図であり、図7(b)における上下を前後方向として説明する。
ガス発生部材161は、容器13の前壁の上端および後壁の上端において、接点台101の前方,後方に対向する位置に設けられている。ガス発生部材161は、加熱時にガスを放出することで気流を発生させる。本実施形態では、ガス発生部材161は、ホウ酸で構成されており、加熱されることによって水蒸気を放出する。なお、ガス発生部材161の構成材料はホウ酸に限定せず、他の材料で構成されていてもよい。
そして、固定接点10−可動接点11間にアークが発生した際、アークの熱によってガス発生部材161が加熱され、ガスを放出することによって気流が発生する。この気流がアークに吹き付けられることによって、アークを引き伸ばして消弧することができる。さらに、図7(a)(b)に示すように、気流の下流側に消弧部材14を配置することによって、アークの熱が消弧部材14に効率よく伝えられ、消弧部材14を効率よく加熱することができる。また、気流が吹き付けられたアークが消弧部材14に接触することで、消弧部材14が急激に加熱される。これにより、消弧部材14から消弧ガスが急激に放出され、アークを消弧することができる。
また、ガス発生部材161の位置,材料,大きさ等を調整することで発生させる気流を調整できるので、消弧部材14の位置およびアークを接触させるタイミングを調整することができる。したがって、アークが発生した場合にのみ気流が発生させ、消弧ガスを発生させることができる。
なお、ガス発生部材161は、アークの発生時に消弧部材14が消弧ガスを放出するよりも早くガスを放出することが望ましい。さらに、ガス発生部材161が放出するガスは、消弧性能を有することが望ましい。また、ガス発生部材161は、アークが発生していない通常時はガスをほとんど放出しないことが望ましい。
なお、その他の構成および機能は、実施形態1と同様である。また、本実施形態の構成は、実施形態2の構成と組み合わされていてもよい。
(実施形態4)
本実施形態の接点装置1は、実施形態1の接点装置1の構成に加えて、容器13内に空気よりも熱伝導率が高い高熱伝導率気体が封入されている。なお、実施形態1と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。
高熱伝導率気体は、空気よりも熱伝導率が高い気体であり、本実施形態では水素で構成されている。
アークが発生した際に、アークの熱は高熱伝導率気体を介して消弧部材14に伝えられるので、消弧部材14への熱伝導効率が向上する。したがって、消弧部材14は、より速やかに加熱されて消弧ガスを放出することができ、アークをより迅速に消弧することができる。さらに、本実施形態では、容器13内に高熱伝導率気体として水素が封入されているので、上述したように水素による消弧効果も期待できる。
このように、本実施形態の接点装置1は、容器13内に高熱伝導率気体が封入されることによって、消弧性能を向上させることができる。さらに、消弧部材14の主な加熱手段として、消弧部材14にアークを接触させるのではなく、容器13内の高熱伝導率気体を介して消弧部材14を加熱している。したがって、消弧部材14へのアークの転流を防止することができ、消弧部材14の消耗を抑制することができる。
なお、高熱伝導率気体は、水素に限定せず、窒素または複数種類の気体を混合した混合ガスで構成されていてもよい。また、高熱伝導率気体とは、熱伝導率の高い気体の種類に限定せず、容器13内の内圧を高めることで熱伝導率が高められた気体であってもよい。
なお、その他の構成および機能は、実施形態1と同様である。また、本実施形態の構成は、実施形態2,3のうち少なくともいずれか1つの構成と組み合わされていてもよい。
(実施形態5)
本実施形態の接点装置1の概略構成図を図8に示す。本実施形態の接点装置1は、実施形態1の接点装置1の構成に加えて、輻射熱の吸収率が高い輻射熱吸収部材17を備えている。他の構成は、実施形態1と同一であり、実施形態1と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。
輻射熱吸収部材17は、消弧部材14よりも輻射熱の吸収率が高い材料であり、本実施形態では、黒体に近い黒色物体で構成されている。そして、輻射熱吸収部材17は、消弧部材14の表面に設けられている。
輻射熱吸収部材17は、アークが発生した際に、アークからの輻射熱を効率よく吸収し、消弧部材14に伝熱する。したがって、消弧部材14は、より速やかに加熱されて消弧ガスを放出することができ、アークをより迅速に消弧することができる。このように、本実施形態の接点装置1は、輻射熱吸収部材17を備えることで、消弧性能を向上させることができる。
なお、輻射熱吸収部材17は、輻射熱をより多く吸収するために、消弧部材14よりも固定接点10,可動接点11に近接した位置、すなわちアークの近傍に設けられることが望ましい。
なお、輻射熱吸収部材17は、黒色物体に限定せず、例えば消弧部材14の表面に塗布される黒色塗料で構成されていてもよい。また、輻射熱吸収部材17は、消弧部材14よりも輻射熱の吸収率が高い材料であればよく、色,形状,材質などを限定しない。
なお、その他の構成および機能は、実施形態1と同様である。また、本実施形態の構成は、実施形態2〜4のうち少なくともいずれか1つの構成と組み合わされていてもよい。
(実施形態6)
本実施形態の接点装置1の概略構成図を図9に示す。本実施形態の接点装置1は、実施形態1の接点装置1の構成に加えて、固定接点10の熱を消弧部材14に伝導する熱伝導部材18を備えている。他の構成は、実施形態1と同一であり、実施形態1と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。
熱伝導部材18は、熱伝導率が高い材料であり、本実施形態では、銅(Cu)で構成されている。そして、熱伝導部材18は、容器13の上壁,右壁の内面に沿って設けられており、一端が接点台101に接触し、他端側の左面に消弧部材14が設けられている。なお、熱伝導部材18は、固定接点10と消弧部材14とを連結するように設けられていてもよい。
アークが発生した際に、アークの熱によって固定接点10が加熱される。ここで、固定接点10の熱は、接点台101,熱伝導部材18からなる構造物を介して消弧部材14に伝導される。したがって、消弧部材14は、より速やかに加熱されて消弧ガスを放出することができ、アークをより迅速に消弧することができる。このように、本実施形態の接点装置1は、熱伝導部材18を備えることで、消弧性能を向上させることができる。
なお、熱伝導部材18の構成材料は、銅に限定せず、熱伝導率が高いステンレス鋼(SUS)等の金属材料または、セラミックまたは、炭化ケイ素(SiC),酸化アルミニウム(アルミナ),窒化アルミ等で構成されていてもよい。また、熱伝導部材18は、単一材料ではなく、複数の材料からなる混合物で構成されていてもよい。
また、熱伝導部材18の材料,構造などで熱伝導率を調整することで、消弧部材14に伝導する熱量を調整することができる。
なお、本実施形態では、容器13の内面に熱伝導部材18を設けているが、図10に示すように、容器13の外面に沿って熱伝導部材18を設けてもよい。この場合、熱伝導部材18は、容器13の外側において一端部が接点台101と接触し、他端部が容器13の右壁を介して消弧部材14と対向するように配置される。そして、固定接点10の熱は、接点台101,熱伝導部材18,容器13からなる構造物を介して消弧部材14に伝導される。
また、熱伝導部材18は、固定接点10の熱も消弧部材14に伝導させるので、図11(a)(b)に示すように、通電時におけるジュール熱も消弧部材14に伝導される。したがって、消弧部材14の予熱効果をより向上させることができる。
なお、その他の構成および機能は、実施形態1と同様である。また、本実施形態の構成は、実施形態2〜5のうち少なくともいずれか1つの構成と組み合わされていてもよい。
(実施形態7)
本実施形態の接点装置1の概略構成図を図12に示す。本実施形態の接点装置1は、固定接点10に消弧部材14が設けられている。他の構成は、実施形態1と同一であり、実施形態1と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。
消弧部材14は、固定接点10と可動接点11との接触を妨げないように、固定接点10(構造物)に組み込まれるように設けられている。
そして、アークが発生した際に、アークの熱によって固定接点10と共に消弧部材14が加熱される。すなわち、消弧部材14は、アークの発生とほぼ同時に急激に加熱され消弧ガスを放出するので、アークをより迅速に消弧することができる。
なお、消弧部材14を設ける場所は、上記に限定しない。例えば、図13(a)に示すように、消弧部材14は、固定接点10と電気的に接続された接点台101に組み込まれるように設けられることでも、アークの発生とほぼ同時に加熱され、消弧ガスを放出するので、アークをより迅速に消弧することができる。さらに、図13(b)に示すように、通電時におけるジュール熱が消弧部材14に効率よく伝導されるので、消弧部材14の予熱効果も向上させることができる。
また、消弧部材14は、可動接触子12側に設けられていてもよい。図14(a)に示すように、消弧部材14は、可動接点11に設けられることでも、アークの発生とほぼ同時に急激に加熱され消弧ガスを放出するので、アークをより迅速に消弧することができる。なお、消弧部材14は、可動接触子12に設けられていてもよい。
また、図14(b)に示すように、可動接点11と電気的に接続され、アークを誘導することでアークによる可動接点11の損傷を防止するアークホーン121を可動接触子12に設ける場合、このアークホーン121に消弧部材14を設けてもよい。このように構成することでも、上記同様に、消弧部材14は、アークの発生とほぼ同時に加熱され消弧ガスを放出することができるので、アークをより迅速に消弧することができる。
このように、本実施形態では、固定接点10と、可動接点11と、固定接点10または可動接点11と電気的に接続された部材(接点台101,アークホーン121)とのいずれかで構成される構造物に消弧部材14が設けられている。すなわち、消弧部材14は、アークの発生し得る部材に設けられることで、アークが発生した際に、アークの発生とほぼ同時に消弧部材14が加熱されて消弧ガスを放出するので、アークA1をより迅速に消弧することができ、消弧性能を向上させることができる。
なお、その他の構成および機能は、実施形態1と同様である。また、本実施形態の構成は、実施形態2〜6のうち少なくともいずれか1つの構成と組み合わされていてもよい。
(実施形態8)
本実施形態の接点装置1の概略構成図を図15に示す。本実施形態の接点装置1は、実施形態1の接点装置1の構成に加えて、一対の導電部材19を備えている。他の構成は、実施形態1と同一であり、実施形態1と同一構成には、同一符号を付して説明を省略する。
導電部材19は、導電率が高い材料であり、本実施形態では、銅(Cu)で構成されている。なお、導電部材19の構成材料は、銅に限定せず、導電率が高いステンレス鋼(SUS)等の金属材料または、ジルコニウム(Zr)系,炭化ケイ素(SiC)などの酸化物および炭素等の無機物で構成されていてもよい。
導電部材19は、上下方向を厚み方向とする板状に形成されており、固定接点10,可動接点11と電気的に絶縁され、固定接点10,可動接点11の近傍となるように容器13の右壁内面に設けられている。具体的には、導電部材19は、上下方向において固定接点10と開位置にある可動接点11との間となる領域内における消弧部材14の上側と下側に配置されており、容器13の右壁内面から左方向に突出するように設けられている。
そして、アークが発生した際に、アークは導電率が高い導電部材19に引き寄せられ、一対の導電部材19にアークが転流することとなる。導電部材19にアークが転流することによって、アークの電圧を低下させることができ、アークによる固定接点10,可動接点11の損傷を防止することができる。
また、導電部材19を設けることによって、アークを所定の位置に点弧させることができ、本実施形態では、消弧部材14は、一対の導電部材19の間の位置に設けられている。したがって、消弧部材14の近傍にアークが発生することになるので、アークの熱によって消弧部材14がより迅速に加熱されて消弧ガスを放出することができるので、アークを迅速に消弧することができ、消弧性能を向上させることができる。なお、導電部材19にアークを転流させるために、アークが引き伸ばされる方向において、導電部材19がアークに対して直交するように配置されることが望ましい。また、導電部材19の個数は、2つに限定せず3つ以上であってもよい。
また、図16に示すように、導電部材19は、消弧部材14と接触するように設けてもよい。
一対の導電部材19は、消弧部材14の上下両端を上下方向から挟み込むように設けられており、それぞれが消弧部材14と接触している。そして、アークが発生した際に、アークが導電部材19に引き寄せられ、導電部材19にアークが転流する。このとき、アークの熱によって加熱された導電部材19の熱は、消弧部材14に伝導される。したがって、消弧部材14は、導電部材19を介しても加熱されるので、アークをより迅速に消弧することができ、消弧性能を向上させることができる。
また、図17に示すように、導電部材19に消弧部材14を設けてもよい。
消弧部材14は、蒸着,メッキ,スパッタ等で導電部材19の表面に薄膜成型されている。なお、消弧部材14は、導電性を有する接着物,かしめ等で導電部材19の表面に固定されていてもよいし、導電部材19と一体に構成されていてもよい。
導電部材19の表面に消弧部材14を設けることによって、アークが導電部材19に引き寄せられ、導電部材19にアークが転流した際に、消弧部材14にアークを接触させることができる。これにより、消弧部材14が急激に加熱されることによって、消弧ガスが急激に放出されアークA1をより迅速に消弧することができる。なお、消弧性能をより向上させるために、消弧部材14は、導電部材19におけるアークの発弧点となる部位に設けられることが望ましい。
また、導電部材19の先端面(左面)に凹部190を設けてもよい。図18に導電部材19の上面図を示す。図18に示すように、凹部190は、導電部材19の左面から、固定接点10および可動接点11から離れる方向(右方向)を底とするように形成されている。
そして、アークが発生した際に、アークの磁界によるローレンツ力によってアークが凹部190内に引き寄せられる。したがって、アークをより確実に導電部材19に転流させることができる。
また、導電部材19の表面に、導電部材19よりも導電率が高い高導電部材を、蒸着,メッキスパッタ等による薄膜成型または、接着物,かしめ等による直接固定または、一体成型等によって設けてもよい。導電部材19に高導電部材を設けることでも、導電部材19にアークが誘導されやすくなり、アークをより確実に導電部材19に転流させることができる。
なお、その他の構成および機能は、実施形態1と同様である。また、本実施形態の構成は、実施形態2〜7のうち少なくともいずれか1つの構成と組み合わされていてもよい。