JP2004163569A - トナー - Google Patents
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Abstract
【課題】オフセットや定着強度の定着特性を、より一層効果的に優れた特性にすることのできるトナーを提供する。
【解決手段】トナーは結着樹脂および着色剤を少なくとも含有し、トナーの軟化点を超えた定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)が、2.8×105 dyn/cm2(=2.8×104 Pa )以上に設定され、かつ、離型剤配合量が4重量%以下に設定される。これにより、定着開始時のトナーの緩和弾性率が大きくなり、定着ローラにより、紙等の繊維に落ち込んだ下層のトナー粒子もその上層のトナー粒子を介して加圧されて変形する。このため、紙等の繊維に対するトナーの接触面積が拡大するので、定着強度が向上する。
【選択図】 図4
【解決手段】トナーは結着樹脂および着色剤を少なくとも含有し、トナーの軟化点を超えた定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)が、2.8×105 dyn/cm2(=2.8×104 Pa )以上に設定され、かつ、離型剤配合量が4重量%以下に設定される。これにより、定着開始時のトナーの緩和弾性率が大きくなり、定着ローラにより、紙等の繊維に落ち込んだ下層のトナー粒子もその上層のトナー粒子を介して加圧されて変形する。このため、紙等の繊維に対するトナーの接触面積が拡大するので、定着強度が向上する。
【選択図】 図4
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電画像を加熱定着により現像するために使用するトナーの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法として、光導電性物質からなる感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像を現像ローラ上に担持したトナーを用いて現像し、感光体上に現像されたトナー画像を、直接、または中間転写体を介して紙等の記録媒体上に転写し、更に、記録媒体上のトナー画像を加熱ローラー等の定着ローラにより紙等の記録媒体に圧着加熱して定着する方法が知られている。
【0003】
この方法に使用されるトナーとしては加熱ローラに溶融トナーが付着する、いわゆるオフセット現象を生じないこと、また、記録媒体上に定着されたトナー画像の定着強度に大きいこと等の優れた定着性が要求される。
一般に、ポリマーからなる結着樹脂を含有するトナーは、一定歪みを与えた場合、発生する応力が指数的に減衰する応力緩和挙動を示す。そこで、定着ローラへのトナーのオフセットや紙等の記録媒体上のトナーの定着強度等のトナー画像の定着性の改良や着色剤の分散性の改良を目的として、従来、これらのトナーの特性を定量的に確認するために、動的粘弾性測定から求められるトナーの緩和弾性率および緩和時間が用いられている。
【0004】
応力緩和挙動は、結着樹脂の粘弾性や樹脂内に分散された離型剤等の構造、大きさ、量等の影響を大きく受けるため、トナーの溶融状態を応力緩和挙動、つまり緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことができる。そこで、トナー定着時のトナーの溶融状態を粘弾性特性である緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことで、トナー画像の定着性および離型剤等の分散性をそれぞれ改良することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】
特開2000−81721号公報(段落番号[0016]〜[0018])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、高画質化に対する要求の高まりから、最小画素(1dot)径が小さくなるとともに、トナーの小粒径化が進んでいる。そのため、小粒径化したトナーは、記録媒体である紙の繊維間に落ち込み易くなり、定着時の熱および圧力が繊維間に落ち込んだトナー粒子に十分に伝わらないという問題がある。また、最小画素径が小さくなることから、繊維間に落ち込んだトナー粒子と繊維上に載ったトナー粒子との相互溶融による「橋掛け」が生じ難いため、特に、孤立画素が多いハイライト領域において、定着不良が生じ易いという問題もある。
【0006】
しかしながら、前述のような、トナー定着時のトナーの溶融状態を緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことで、トナー画像の定着性および離型剤等の分散性を改良するという従来のトナーの定着特性の改良では、これらの問題について何ら対応していない。このため、従来のトナーの定着特性の改良では十分にかつ効果的に改良が行われているとはいえず、トナーの定着特性を更に改良する余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、オフセットや定着強度の定着特性を、より一層効果的に優れた特性にすることのできるトナーを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明のトナーは、結着樹脂および着色剤を含有するトナーであって、トナーの軟化点を超えた定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)が、2.8×105 dyn/cm2(=2.8×104 Pa )以上であり、かつ、離型剤配合量が4重量%以下であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のトナーは、前記定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)と前記定着設定温度における緩和時間0.1秒の緩和弾性率G(t=0.1)との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)が3以上であり、かつ93以下であることを特徴としている。
更に、請求項3の発明は、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有することを特徴としている。
【0009】
【発明の作用および効果】
本発明のトナーによれば、定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)を2.8×105 dyn/cm2(=2.8×104 Pa )以上に設定しているので、定着開始(定着ニップ入口)の初期緩和弾性率が比較的大きくなる。これにより、定着開始時(定着ニップ入口時)において、トナーが十分な弾性を有するため、定着ローラ(加熱ローラ)に接触する上層のトナーは緩慢に軟化する。このため、記録媒体である紙等の繊維の間に落ち込んだ下層のトナーにもこの上層のトナーを介して定着ローラ(加熱ローラ)から十分な圧力および熱が加わり、下層のトナーも緩慢に軟化して変形するようになる。これにより、紙等の繊維に対するトナーの接触面積が拡大するので、定着強度が向上するものと考えられる。その場合、定着設定温度をトナーの軟化点(Tm)を越えた温度域内で、トナーのオフセットの生じない温度域に設定することで、定着時のトナーのオフセットが防止される。したがって、本発明のトナーは従来比べて優れた定着性を有するものとなる。
【0010】
また、本発明のトナーは優れた定着性を有することで、離型剤の配合量を4重量%以下に少なくすることができる。
更に、内部にワックスを内包したカプセル型トナーにおいても、ワックスの染み出しが更に容易になり、定着強度が更に改善される。
【0011】
更に、定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)と定着設定温度における緩和時間0.1秒の緩和弾性率G(t=0.1)との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)を3以上で93以下に設定しているので、定着終了(定着ニップ出口)の緩和弾性率が適度に小さくなる。これにより、定着終了時(定着ニップ出口時)においてトナーが適度に軟化しているので、トナーはより一層優れた定着性を有するようになる。
【0012】
前述の特許文献1に開示のトナーでは、ワックス(Wax)を多量に配合するものであり、Waxの多量配合による弊害、例えば、保存性についてはカプセル化してWaxのトナー表面への過剰な露出を防ぐことで対応しており、そのため、製造方法が複雑となり、製造コストや環境負荷の点で問題がある。また、トナーの透明性についても、Waxの多量配合により透明性が低下することを防ぐために、予めWax微粒子分散液を作成することでWaxの分散径を微小化させており、やはり製造方法が複雑となり、製造コストや環境負荷の点で問題がある。本発明のトナーは、前述のように緩和弾性率G(t=0.01)の値、比G(t=0.01)/G(t=0.1)の値を適正な範囲にしつつWaxの配合量を少量化することで、特許文献1のようにWaxを多量に配合させなくとも、良好な定着性を発揮させることができ、また、Waxが少量であるために、特許文献1に開示のような複雑な製造方法を用いなくとも、保存性、透明性が良好なトナーが得られるようになる。
【0013】
しかも、近年、特に低温定着を実現するために、離型剤として樹脂の軟化温度よりも10〜50℃低い軟化温度を示すWaxをトナーに配合することが検討されているが、このようなトナーにおいて、Waxを多量に配合した場合は、定着時の熱により樹脂に先行して溶融しトナー表面に染み出した過剰なWaxがトナーどうしの間で潤滑油のように作用し、定着時の圧力により紙上のトナー画像においてトナーどうしが横滑りし、細線の太りなどの画質の劣化が生じるという問題が生じるおそれがある。トナー全体として本発明のような緩和弾性率に設定したとしても、樹脂の溶融に先行して過剰なWaxがトナー表面に染み出し、これがトナーどうしの間で潤滑油のように作用した場合は、紙上のトナー画像の上部から定着ローラなどで加圧されたとしてもトナーどうしで横滑りし、紙繊維の間に落ち込んだトナーに十分な圧力が加わらないおそれが生じる。したがって、本発明のトナーは、前述のように離型剤の配合量を4重量%以下と少量化することで、このような問題を生じないようすることができる。
【0014】
更に、本発明のトナーは、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有しているので、内部凝集力の強いトナーとすることができ、定着性を更に一層優れたものにすることができる。そして、内部凝集力の強いトナー樹脂は割れ難くなるが、重合法によってトナーを容易に製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるトナーの実施の形態について説明する。
本発明にかかるトナーは、結着樹脂および着色剤を少なくとも含有するトナーであって、定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)が2.8×105dyn/cm2(=2.8×104Pa )以上に設定され、かつ、離型剤配合量が4重量%以下に設定され、好ましくは、定着設定温度における緩和弾性率G(t=0.01)が、3.1×105dyn/cm2〜2.0×106dyn/cm2(3.1×104Pa〜2.0×105Pa )に設定され、かつ、離型剤配合量が0〜3重量%に設定される。更に好ましくは、離型剤配合量が0〜1重量%に設定される。
【0016】
また、本発明のトナーは、定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)と定着設定温度における緩和時間0.1秒の緩和弾性率G(t=0.1)との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)が3以上に設定され、かつ93以下に設定され、好ましくは、G(t=0.01)/G(t=0.1)が50以下に設定される。
更に、本発明のトナーは、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有している。
【0017】
このようにトナーを構成することで、定着開始(定着ニップ入口)の初期緩和弾性率Gを比較的大きくすることができる。これにより、定着開始時(定着ニップ入口時)において、トナーが十分な弾性を有するため、定着ローラ(加熱ローラ)に接触する上層のトナーは緩慢に軟化する。このため、図1(a)に示すように、記録媒体である紙の繊維の間に落ち込んだ下層のトナーにもこの上層のトナーを介して定着ローラ(加熱ローラ)から十分な圧力および熱が加わり、下層のトナーも緩慢に軟化して変形するようになる。その結果、紙の繊維に対するトナーの接触面積が拡大するので、定着強度が向上するものと考えられる。
【0018】
そして、定着設定温度をトナーの軟化点(Tm)を越えた温度域内で、トナーのオフセットの生じない温度域に設定することで、定着時のトナーのオフセットが防止される。したがって、本発明のトナーは従来比べて優れた定着性を有するものとなる。
また、本発明のトナーは優れた定着性を有することで、離型剤の配合量を4重量%以下に少なくすることができる。
更に、内部にワックスを内包したカプセル型重合トナーにおいても、ワックスの染み出しが更に容易になり、定着強度が更に改善される。
【0019】
前述の初期緩和弾性率Gが従来のように小さい場合は、定着開始時(定着ニップ入口時)において、トナーが十分な弾性を有していないため、定着ローラ(加熱ローラ)に接触する上層のトナーは速やかに軟化して変形する。このため、図1(b)に示すように、紙の繊維の間に落ち込んだ下層のトナーには、加熱ローラの熱も圧力も伝わり難くなり、紙の繊維に対するトナーの接触面積を拡大することができないので、定着強度が低くなるものと考えられる。
また、内部にワックスを内包したカプセル型重合トナーでは、内部のワックスが表面へ出ることができず(特に、ワックス配合量がカプセル型重合トナーとしては少なくなればなるほど、ワックスが表面へ出難くなる)、定着強度がより一層低くなるものと考えられる。
【0020】
更に、本発明のトナーは、定着終了(定着ニップ出口)の緩和弾性率が適度に小さくなることから、定着終了時(定着ニップ出口時)においてトナーが適度に軟化するようになる。その結果、トナーは効果的に紙の繊維間に染み出し、より一層優れた定着性を有するようになる。G(t=0.01)/G(t=0.1)が3より小さく、また93より大きいと、トナーのオフセット等が生じ易くなり、定着性が悪くなる。
【0021】
更に、本発明のトナーは、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有しているので、内部凝集力の強いトナーとすることができ、定着性を更に一層優れたものにすることができる。そして、内部凝集力の強いトナー樹脂は割れ難くなるが、重合法によってトナーを容易に製造することができる。
【0022】
以下、このような粘弾性特性を示すトナーにおける結着樹脂として、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂およびポリエステル樹脂をそれぞれ用いた結着樹脂を例として説明する。
まず、ウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂について説明する。
トナーの結着樹脂として、従来ウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂が知られ、樹脂中に着色剤や荷電制御剤とを混練・微粉砕してトナー粒子とされている。また、トナーの結着樹脂として、従来高分子量のポリエステル樹脂からなる結着樹脂も知られ、前述と同様にウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂と同様に樹脂中に着色剤や荷電制御剤とを混練・微粉砕してトナー粒子とされる。
【0023】
そして、これらの結着樹脂は着色剤粒子等をトナー粒子中に保持し、定着に際しては定着ローラーでの熱と圧力で軟化し、紙等の転写材にトナー粒子を付着させる機能を有するが、低温定着を目的として、結着樹脂の分子量を低くし軟化温度を下げると、ガラス転移温度の低下や強度低下が生じ、着色剤の保持性や耐オフセット性、定着像強度、さらには保存性等が低下する。
【0024】
ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂は、水酸基とイソシアネート基が反応した結果生じるウレタン結合(−A−NHCOO−B−、式中Aはポリイソシアネート残基、Bは多活性水素化合物残基)、またはアミノ基とイソシアネート基とが反応した結果生じるウレア結合(−NHCONH−)を結合要素として含有し、その分子間凝集エネルギーは8.74kcal/molであり、メチン結合(−CH2 −)の0.68kcal/mol、エーテル結合(−O−)の1.0kcal/mol、ベンゼン結合の3.9kcal/mol、エステル結合における2.9kcal/molに比して格段に大きく、高結晶性のためそのガラス転移点が高い。しかしながら、ポリスチレンを基準としたときの数平均分子量(Mn)が1,500〜20,000の平均分子量のものは、そのフロー軟化点は140℃以下とすることができ、低分子量化に伴う低温定着性に優れるものとできること、また、その軟化点の低下にもかかわらず、ガラス転移温度は55℃以上とでき、ガラス転移温度の低下や強度低下の程度が小さく、トナーにおける結着樹脂として着色剤の保持性、耐熱性、保存性等に優れる結着樹脂とできるが、高温での耐オフセット性、定着像強度に、より優れることが求められている。
【0025】
ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂は、ポリイソシアネート類と多活性水素化合物とのバルク重合により得られる。ポリイソシアネート類としては、脂肪族ジイソシアネート類であるエタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、チオジエチルジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、βーメチルブタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−ジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコール−ジプロピルエーテル−ω,ω′−ジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
また、環状基を有する脂肪族ジイソシアネートとしてはω,ω′−1,3−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,2−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,2−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジエチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルナフタリンジイソシアネート、ω,ω′−1,5−ジメチルナフタリンジイソシアネート、3,5−ジメルシクロヘキサン−1−メチルイソシアネート−2−プロピルイソシアネート、ω,ω′−n−プロピル−ビフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
芳香族ジイソシアネート類としては1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−3,5−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアネート、1,4−ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
ナフタリンジイソシアネート類としてはナフタリン−1,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ナフタリン−2,6−ジイソシアネート、ナフタリン−2,7−ジイソシアネート、1,1′−ジナフチル−2,2′−ジイソシアネート等が挙げられる。
ビフェニルジイソシアネート類としてはビフェニル−2,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2−ニトロビフェニル−4,4′−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
ジ−あるいはトリフェニルメタンジイソシアネート、およびジ−あるいはトリフェニルエタンジイソシアネートとしては、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,5,2′,5′−テトラメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジメトキシフェニル−3,3′−ジイソシアネート、4,4′−ジエトキシフェニルメタン−3,3′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチル−5,5′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3−ジクロロジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−3,3′−ジイソシアネート、α,β−ジフェニルエタン−2,4−ジイソシアネート、3−ニトロトリフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4−ニトロトリフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等、またはその誘導体が挙げられる。
【0030】
トリイソシアネート類としては1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−1,3,7−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4′−トリイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,6,4′−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、ジフェニル−4,4′−ジイソシアナトカルバミン酸クロリド等、およびその誘導体等が例示される。
また、ポリイソシアネートとして下記式
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R1 はメチレン基、エチレン基、−C(CH3 )2 −基から選ばれるアルキレン基を示し、R2 及びR3 は炭素数4以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンから選ばれる基を示す。)で示されるジイソシアネート類を使用すると、粉砕性に優れるポリマーとでき、トナーとする際の粉砕工程における生産性を向上できる。上記式で示されるジイソシアネート類としては、具体的には、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′,5,5′−テトラメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチル−5,5′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジクロロジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、α,β−ジフェニルエタン−4,4′−ジイソシアネート等、またはその誘導体が挙げられ、また、これらのポリイソシアネート類の混合物を使用するのが好ましい。
【0033】
上記式で示されるポリイソシアネート類は、その基本骨格として2つの芳香族環がアルキレン基を介して結合した構造を有しており、本成分をハードセグメントとして使用することで、バインダーポリマーにおける分子鎖のフレキシビィリティを小さくでき、リジッドな構造となるため、粉砕性に優れるものと考えられる。また、基本骨格として2つの芳香族環がアルキレン基を介して結合した構造を有することにより分子間凝集力を高めることができるものと考えられ、高温オフセット性を抑えることが可能である。
【0034】
また、ポリイソシアネートとして脂環式ジイソシアネート化合物を使用すると、トナーとする際に、耐光性に優れ、画像の長期保存に際して退色のないものとできる。脂環式ジイソシアネート化合物は環状脂肪族炭化水素構造を有するため、光や熱による劣化が抑えられるものと考えられる。また、得られるバインダーポリマーはリジッドな構造で粉砕性に優れるものであり、トナーとする際の粉砕、分級工程における生産性を向上できる。
【0035】
脂環式ジイソシアネート化合物は、環式脂肪族炭化水素、または多環式脂肪族炭化水素に2個のイソシアネート基が直接またはアルキレン基を介して結合した構造を有し、例えば構造式
【化2】
で示されるイソホロンジイソシアネート、また、ω,ω′−1,2−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、3,5−ジメルシクロヘキサン−1−メチルイソシアネート−2−プロピルイソシアネートが例示される。
また、下記式
【0036】
【化3】
【0037】
(式中、R1 は単結合、メチレン基、エチレン基、−C(CH3 )2 −基から選ばれ、lおよびmは1〜5の整数、nは0〜2の整数を示す。)
で示される多環式脂肪族ジイソシアネートも好ましく、例えば下記構造式
【0038】
【化4】
【0039】
で示されるノルボルナンジイソシアネートが例示される。
本発明にあっては、特に、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水素化MDI)、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、p−フェニレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)等の脂環式炭化水素や芳香族炭化水素を有するジイソシアネート類が好ましく、更にこれらのポリイソシアネート類の混合物を使用するのが好ましい。
【0040】
一般に、ポリウレタン合成や後述するポリエステル合成は、逐次反応のため、分子量分布の狭いポリマーが得られるが、多活性水素化合物とのウレタン反応において、例えばイソホロンジイソシアネートの場合には分子量分布をさらに狭くすることができるので、加熱時の溶融が非常に短時間で起こり、そのためシャープメルト性を実現でき、バインダーポリマーの樹脂設計に際して自由度を増すことができる。その詳細な理由は不明であるが、イソホロンジイソシアネートは第1級のイソシアネート基と第2級のイソシアネート基をもち、それぞれのイソシアネート基の反応性が異なることにより、反応に際して選択性を生じることによるものと考えられる。
【0041】
脂環式ジイソシアネート化合物は、他のポリイソシアネート類を併用できる。他のポリイソシアネートとしては、上述した脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、ナフタリンジイソシアネート類、ビフェニルジイソシアネート類、ジ−あるいはトリフェニルメタンジイソシアネート、およびジ−あるいはトリフェニルエタンジイソシアネート、トリイソシアネート類が例示され、その配合割合は、全イソシアネート成分中60重量%以下とするとよい。他のポリイソシアネートが多すぎると耐光性、シャープメルト性等の効果が低下する。
【0042】
次に、ポリイソシアネート類と反応させるポリオール類やポリアミン類について説明する。本発明のトナーにおいては、その定着温度領域において所期の粘弾性とするには、上述したポリイソシアネート類としてウレタン結合やウレア結合を有する樹脂においてその結晶性を乱す、自由度が少ないバルキーな成分とすると共に、多活性水素化合物として同様にその結晶性を乱す、自由度が少ないバルキーな成分として、下記(1)〜(3)の化合物を多活性水素化合物とするとよい。
【0043】
(1) ジオキシカルボン酸、ジアミノカルボン酸、ジオキシスルホン酸、ジアミノスルホン酸、またはそれらの塩、例えば、下記構造式(A)で示される2,2−ジメチロールプロピオン酸、(B)で示される2,2−ジメチロールブタン酸、(C)で示される2,2−ジメチロール吉草酸、(D)で示される2,4−ジアミノ安息香酸、(E)で示される3,4−ジアミノ安息香酸、(F)で示される3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、(G)で示される2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸、(H)で示される2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、(I)で示される4,4′−ジアミノスチルベン−2,2′−ジスルホン酸、(J)で示される3,4−ジアミノブタンスルホン酸、(K)で示されるN−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等が例示される。
【0044】
【化5】
【0045】
これらの化合物は、その分子中に少なくとも2個の水酸基またはアミノ基と、カルボキシル基またはスルホン酸基を有するが、ウレタン反応やウレア反応に際してはイソシアネート基と水酸基またはアミノ基との反応が先行し、カルボキシル基やスルホン酸基との反応は殆ど生じない。また、これらの化合物を使用すると酸性基をウレタン樹脂やウレア樹脂における側鎖に存在させることができるので、トナーの定着に際して、紙等の記録媒体への濡れ性・結合性に優れ、定着強度に優れるものとできる。
【0046】
(2) 脂肪族環状ポリオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、脂肪族環状ポリアミン、例えば1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が例示される。
(3) 分枝構造を有する脂肪族ポリオール、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が例示され、また、分枝構造を有する脂肪族ポリアミン、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ブタンジアミン、2,3−ブタンジアミン、1,2−プロパンジアミン、2−メチル−2,4−ペンタンジアミン等が例示される。
【0047】
また、(1)〜(3)の多活性水素化合物は、トナーとして適した溶融特性を付与することを目的として、例えば、下記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物を併用するのが好ましい。なお、併用されるにあたっては、(1)〜(3)の多活性水素化合物の分子量としては、下記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルの分子量より小さくするとよく、分子量が90〜400、好ましくは120〜380のものとするとよい。
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルとしては、
【0048】
【化6】
【0049】
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基であり、同一でも相違していてもよく、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜12である。)
【0050】
で示され、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド2〜12モル付加物(以下、EO付加物)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2〜12モル付加物(以下、PO付加物)が例示され、これらを単独で、もしくは両者を混合して使用できる。さらには、EO基あるいはPO基の繰り返し単位数が異なる化合物を2種以上混合して用いてもよい。両者を混合して用いる場合、その混合比率(モル比)は、EO付加物/PO付加物=8:2〜1:9、好ましくは8:2〜2:8、更に好ましくは7:3〜4:6である。また、Rは同一でも、相違してもよく、一方がエチレン基で他方がプロピレン基でもよい。また、EO基、PO基はその繰り返し単位数により、バインダーポリマーとした際に物性が変化する。x+yの平均値は2〜12、好ましくは2〜4であり、繰り返し単位数がこれより大きいと、ガラス転移温度の低下や粉砕性の悪化を招くので好ましくなく、小さすぎると強度低下を来たし、折れ剥がれ強度が低下する。また、EO成分の組成比を高めると定着強度(折れ剥がれ強度)を向上させることができるが、ガラス転移温度の低下や粉砕性の悪化を招き、反対に、PO成分の組成比を高めると粉砕性は向上するが、定着強度(折れ剥がれ強度)は低下する。また、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物における水酸基価は、100〜350KOHmg/g、好ましくは200〜290KOHmg/gである。ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物は、ビスフェノールAを基本骨格とすることで、ポリイソシアネートとの反応物であるバインダーポリマーとした際に、分子鎖のフレキシビィリティが小さく、リジッドな構造となるものと考えられる。
【0051】
(1)〜(3)の多活性水素化合物は、上記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル100モルに対して1モル〜900モル、好ましくは5モル〜100モル、さらに好ましくは10モル〜60モルとするとよく、これにより、トナーの製造時における粉砕性や低温定着性、高温での耐オフセット性、定着強度に優れ、また、要求される軟化点(Tm)やガラス転移温度(Tg)等の調整が容易になる。
【0052】
また、上述した多活性水素化合物によるトナーとしての性状を損なわない範囲で、多活性水素化合物として、他のポリオール類、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(カプロラクトンポリオール)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート等を添加してもよい。
【0053】
ポリイソシアネート類と多活性水素化合物の反応割合は、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基数に対する多活性水素化合物における活性水素基数の割合{NCO/活性水素(当量比)}が0.5〜1.0、好ましくは0.7〜1.0の範囲で反応させるとよい。反応にあたっては、まず、多活性水素化合物中に後述する着色剤を均一分散した後、ポリイソシアネート類を、温度30℃〜180℃、好ましくは30℃〜140℃で、大気圧下、無溶剤下で、数分から数時間、バルク重合させるとよい。
【0054】
着色剤としては、以下に示すような、有機ないし無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、バンザーイエローG、バンザーイエロー10G、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどがある。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどがある。赤色系顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などがある。体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。
【0055】
また、透光性カラートナーとして用いる場合は、着色剤としては、以下に示すような、各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などがある。赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などがある。また、青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などがある。
【0056】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部使用することが望ましい。20重量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1重量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
【0057】
本発明のトナーの製造に際しては、着色剤を多活性水素化合物中に分散させてからポリイソシアネート類と反応させるとよい。これにより、着色剤の分散による粘弾性特性に対する影響を抑えることができる。また、ポリイソシアネート類が顔料中の水分により失活することを防止できる。触媒としては、例えばジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、オクチル酸スズ、トリフェニルアンモニウムジクロライド、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズビス(メルカプト酸エステル)等が例示される。
ポリイソシアネート類と多活性水素化合物との反応は無溶剤下で行うことができ、溶液重合のごとく溶剤を必要としなく、また、重縮合反応のごとく副生物を生じないので効率のよい連続生産が可能である。
【0058】
本発明の、ウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂およびトナーは、ポリスチレンを基準としたゲルパーミエーション(GPC)測定での数平均分子量(Mn)が1,500〜20,000、好ましくは2,000〜10,000、更に好ましくは3,000〜8,000のものである。数平均分子量(Mn)が1,500より小さいと、低温定着性に優れるものの、着色剤の保持性や耐フィルミング性、耐オフセット性、定着像強度、保存性に劣るものであり、また、20,000より大きいと低温定着性に劣るものとなり、結着樹脂として単独では使用できないものとなる。また、重量平均分子量(Mw)は3,000〜300,000、好ましくは5,000〜50,000、更に好ましくは8,000〜20,000であり、Mw/Mnが1.5〜20、好ましくは1.8〜10、更に好ましくは1.8〜8、最も好ましくは1.8〜5である。
【0059】
結着樹脂における分子量を制御するには、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基数に対する多活性水素化合物における活性水素基数の割合(NCO/活性水素)を小さくすれば低分子量化でき、また、等量に近づけると高分子量化できるので、適宜、ポリイソシアネートの反応モル数を制御することにより容易に制御できる。なお、本発明の結着樹脂の物性に影響を与えない範囲で鎖伸長剤を適宜使用してもよい。鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビス−(β−ヒドロキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0060】
耐オフセット性と溶融特性を両立させるために、通常は樹脂のMw/Mnを大きくする、つまりブロードな分子量分布を有するように設計するか、または、低分子量体と高分子量体とを別途作製しブレンドする手法がとられているが、Mw/Mnを大きくしたり、ブレンド物とすると、シャープに溶融しないため透明性が低下し、特にカラー画像の画質が低下するという問題がある。これに対して、本発明における結着樹脂は、分子量分布を狭いものとすることによりシャープな溶融特性を示し、透明性に優れ、高画質のカラー画像を得ることができるものである。また、そのウレタン結合やウレア結合の分子間凝集エネルギーが適度に抑制されると共に、その定着時における粘弾性特性を特定のものとすることにより、低温定着性に優れると共に、高温での耐オフセット性に優れ、また、定着強度に優れるトナー画像を与える。
【0061】
ウレタン結合またはウレア結合を有する結着樹脂を含有する本発明のトナーは、フロー軟化点(Tm)が80℃〜150℃、好ましくは90℃〜140℃、さらに好ましくは100℃〜130℃の範囲にある。フロー軟化点(Tm)が80℃より低いと耐フィルミング性に劣るものとなり、また、150℃より高いと低温定着性に劣るものとなる。
また、ガラス転移温度(Tg)は45℃〜100℃、好ましくは50℃〜80℃、さらに好ましくは55℃〜75℃の範囲にある。ガラス転移温度(Tg)が45℃より低いと保存性に劣るものとなり、また、100℃より高いとそれにともなってTmが上昇し、低温定着性に劣るものとなる。
【0062】
本発明におけるウレタン結合またはウレア結合を有する結着樹脂は、分子間結合力が大きく、高結晶性ポリマーであるため、分子量を低下させTmを下げる分子設計をした時のTgの低下幅を小さくすることができ、低Tmと高Tgを両立させることができ、また、50%流出点における溶融粘度が3×103 〜1.5×104 Pa・sとでき、オイルレス定着用トナーとして適したものとできる。
本発明のトナーにおける結着樹脂としては、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を主成分とし、結着樹脂中50重量%未満の範囲で、かつ、主成分の性状を損なわない範囲で他の結着樹脂を含有してもよい。他の結着樹脂としては、結着樹脂を製造する際に共存させてもよいが、製造後に混練してもよい。
【0063】
次に、ポリエステル樹脂からなる結着樹脂について説明する。
本発明トナーの結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂は架橋樹脂および低分子量樹脂であり、架橋ポリエステル樹脂における酸成分、アルコール成分としては、下記の2官能カルボン酸類及びジオール類、及び3価以上のポリカルボン酸または3価以上のポリオールの少なくとも1種が例示される。
【0064】
2官能カルボン酸類としては、例えば2価のカルボン酸、2価のカルボン酸の無水物及びそのエステル類等の誘導体であり、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−p,p′−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4′−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−p,p′−ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、シクロヘキサンカルボン酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸或はこれらの無水物やエステル化物などが例示される。
【0065】
また、ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のアルキレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェノル)プロパン、2,2′−(1,4−フェニレンビスオキシ)ビスエタノール、1,1′−ジメチル−2,2′−(1,4−−フェニレンビスオキシ)ビスエタノール、1,1,1′,1′−テトラメチル−2,2′−(1,4−フェニレンビスオキシ)ビスエタノール等が例示される。
【0066】
3価以上のポリカルボン酸としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸類、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシルプロパン、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシルプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸及びそれらの無水物、エステル化物等が例示される。
【0067】
また、3価以上のポリオールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、しょ糖、1,2,4−メンタトリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が例示される。
【0068】
架橋ポリエステル樹脂は、上述の2官能カルボン酸類及びジオール類に加えて、上述の3価以上のポリカルボン酸または3価以上のポリオールの少なくとも1種の成分をジブチル錫オキサイド等の触媒の存在下、加熱攪拌し、反応水を除去しつつ縮重合反応させて得られる。架橋ポリエステル樹脂の酸価は5mgKOH/g〜40mgKOH/g、好ましくは25mgKOH/g〜30mgKOH/gとされ、また、重量平均分子量は8,000〜30,000、好ましくは15,000〜25,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は5〜12、好ましくは8〜10である。
【0069】
次に、低分子量のポリエステル樹脂としては、上述した2官能カルボン酸類及びジオール類との縮重合反応により得られるもので、好ましくは線状ポリエステル樹脂であり、重量平均分子量が4,000〜12,000、好ましくは8,000〜9,000で、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が2〜10、好ましくは3〜5のものであり、酸価としては2mgKOH/g以下のものである。重量平均分子量が大きいと、低温定着性に問題が生じ、また、小さいと耐ブロッキング性、耐フィルミング性に問題が生じる。
【0070】
以上、トナー用樹脂として、ウレタン結合あるいはウレア結合を有する樹脂や、ポリエステル樹脂を例として説明したが、スチレン・アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の既知のトナー用樹脂とこれらの樹脂を混合して使用してもよい。
なお、ポリエステル樹脂では分子鎖間に強固な化学的な結合または物理的な結合による架橋ポリエステルを用いるため、熱溶融時に粘度が緩慢に低下していくのに対し、ウレタン結合あるいはウレア結合を有する樹脂においては、ウレタン結合あるいはウレア結合による分子鎖間の水素結合が擬似的な架橋点として作用することにより、熱溶融時には、溶融開始直後はその擬似的な架橋により高粘度を示すものの、溶融が進行するに従い、水素結合切断されることで擬似的な架橋点が失われていき、粘度は急激に低下していくため、紙への浸透性がポリエステル樹脂よりも良好となる。したがって、ウレタン結合あるいはウレア結合を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0071】
次に、本発明のトナーの物性値の測定および評価について説明する。
(1)酸価の測定
トナーの試料を予想される酸価に応じて秤量し、テトラヒドロフラン(THF)とエタノールとの体積比=3:1の混合溶媒に溶解、または溶解性の不十分なものについては加温溶解した。この試料を用い、JIS K0070に準拠して酸価を測定した。
【0072】
(2)軟化点(Tm)[℃]の測定
(株)島津製作所製「定荷重押出型細管式レオメータ フローテスターCFD−500D」を用いて、下記条件にて測定する。
測定試料の調製 : 測定試料としてトナー約1gを圧縮成型し、フローテスタのシリンダの内径に合わせた円柱状試料とした。
測定条件 : 荷重 20kgf、ダイ穴 1mm、ダイ長さ 1mm
測定方法 : 1/2法
【0073】
(3)分子量分布の測定
5mgのトナーを5gのTHFに溶解し、樹脂成分以外のTHF不溶分およびコンタミ物質を除去するため、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターを通して、GPC用サンプルを調製した。こうして調製したサンプルを、GPCを用いて、下記の条件にて測定する。
カラム : 昭和電工(株)製「Shodex(GPC)KF806M+KF802.5」
カラム温度 : 30 ℃
溶媒 : テトラヒドロフラン(THF)
流速 : 1.0 ml/min
検出器 : UV検出器(検出波長254 nm)
標準試料 : 単分散ポリスチレン標準試料(重量平均分子量580から390万)
【0074】
(4)ガラス転移点(Tg)の測定
トナー10mgをアルミニウム製セルにパッキングし、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」を用いて下記の条件で測定する。
測定温度 : 0〜200 ℃
昇温速度 : 10 ℃/min
Tg : 2度目の昇温時のDSC曲線より読み取る。
【0075】
(5)粒径の測定
本明細書では、粒径という場合「平均粒径」を意味する。
コールターマルチサイザーIII 型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで粒径別相対重量分布を測定することにより求める。また、シリカ粒子等の外添剤の粒径は、電子顕微鏡法による。
(6)各トナーにおける帯電量(μc/g)の測定
トレック・ジャパン(株)製「吸引式小型粉体帯電量測定装置、210HS」により測定する。
【0076】
(7)緩和弾性率G(t)の測定
本発明のトナーの緩和弾性率G(t)は、図2(a)に示す下記の粘弾性測定装置を用い応力緩和測定モードにより下記の条件で粘弾性測定を行うことで、緩和時間0.01secにおける緩和弾性率G(t=0.01)および緩和時間0.1secにおける緩和弾性率G(t=0.1)を得るとともに、緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)}を算出する。
【0077】
粘弾性測定装置: 使用した粘弾性測定装置は、アレス粘弾性測定システム (ARES粘弾性測定装置;レオメトリック・サイエンティ フィック・エフ・イー社製)である。
使用治具 : 上下2枚のパラレルプレート(φ25mm)。
測定試料の調製: 測定試料は、圧縮成型したトナー約1gをパラレルプレートの下プレートに載せ、ヒーターにより測定温度に加熱し少し柔らかくなってきたところで、このトナーをトランスデューサを作動してパラレルプレートの上プレートで挟んで加圧する。図2(b)に示すようにパラレルプレートからはみ出したトナーはトリミングして取り除き、同図(a)に示すようにパラレルプレートの外周形状(つまり、パラレルプレートの直径)に合わせ、かつ試料の高さ(上下プレート間のギャップ)を1.0〜2.0mmに調製して円柱状試料とする。なお、図2(c)に示すように上下プレート全面にトナーが密着していない場合は不良(NG)として、測定試料とはしない。
測定温度 : 定着設定温度(加熱ローラの表面温度の制御中心値)。
測定歪み : パラレルプレートの上プレートは回転させずに、パラレルプレートの下プレートのみを回転して歪を与える。このとき、測定温度を一定にし、歪み依存(Strain Sweep)モードで、測定試料に徐々に大きな歪み{周波数1[rad/sec](1rad/sec=(1/6.28)Hz、歪み0.1〜200%}を与える。そして、与えた歪みに対し動的粘弾性の貯蔵弾性率G′および損失弾性率G″が線形領域における最大歪みを緩和弾性率測定時の測定歪みとする。
測定モード : 緩和弾性率(Stress Relax)モードでかつ温度依存(Temp Ramp)モードで測定を行った。その場合、設定した測定歪みが測定温度域で常時維持されるように、システムの Auto
Strain、Auto Tension を作動状態に設定した状態で測定を行う。また、測定は測定開始温度から5℃/minの速度で昇温させながら行う。
【0078】
(9)定着性の測定
コニカ社製カラーレーザープリンタ KL−2010から定着器(定着ユニット)を取り外す。この定着器(定着ユニット)は加熱ローラおよび加圧ローラからなる熱ローラ定着器である。そして、定着器(定着ユニット)を外部駆動装置により独立して駆動可能とし、定着ニップ通過時間を調整できるように改造する。また、PPC用普通紙上のトナー画像(トナーの未定着パッチ)に接する側の加熱ローラ(定着ローラ)の表面温度は100℃から200℃まで制御できるように改造する。
【0079】
更に、定着ローラ表面にシリコーンオイルを塗布する塗布手段は取り外し(オイルパッド非装着状態)、更に、印字されていないA4サイズ白紙を1,000枚通紙させ、更に、定着ローラ表面をイソプロピルアルコールにより清掃し、ローラ表面からシリコーンオイルを除去する。また、これ以後、定着性評価用画像が定着器に通過する毎に定着ローラ表面をイソプロピルアルコールにより清掃し、更に綿布にて乾拭きし、定着ローラ表面にシリコーンオイルの無い状態を維持する。
【0080】
この定着ローラ表面からシリコーンオイルを除去した定着器を用い、定着性評価用画像を、加熱ローラ側が未定着トナー付着面となるように定着器を通過させてニップ幅8mm、ニップ通過時間50msecの条件にて定着する。
なお、定着性評価用画像は、セイコーエプソン(株)製カラーレーザープリンタLP−2000Cを使用して以下のように作成する。まず、富士ゼロックスオフィスサプライ社製 J紙(坪量82g/m2)を評価用紙とし、この用紙上にトナーを均一に付着させたいわゆるベタ画像を形成し、そのベタ画像におけるトナー付着量が0.4mg/cm2となるように画像形成条件を調整し、次に、紙の先端から10mmの位置に20mm四方の領域に、解像度600dpiの孤立ドットによる30%ハーフトーン画像を形成し、このハーフトーン画像を定着性評価用画像とした。
【0081】
(8ー1)非オフセット域の測定
定着ローラの表面温度を段階的に変化させながら、未定着の定着性評価用画像をこの定着ローラに通過させ、画像の少なくとも一部が定着ローラ通過時に定着ローラに転移した後、再度紙に移行しているか否かを目視で判定する。画像の少なくとも一部の紙への移行があるものをオフセット有り、画像の少なくとも一部の紙への移行がないものをオフセットなしとする。
【0082】
(8ー2)定着強度良好域の測定
【0083】
そして、前述の非オフセット領域を確認した後、定着性評価用画像を消しゴム(ライオン事務機社製 ECR−502R インキボールペン用)を用い、押圧荷重1kgfで1回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定した。画像濃度残存率85%(ハーフトーン用評価基準)以上の温度領域を定着強度良好域とする。
【0084】
本発明のトナーは、荷電制御剤、必要に応じて離型剤、分散剤、磁性粒子等を含有してもよく、着色剤同様に原料であるポリオール類に分散してもよく、また、樹脂を形成した後適宜混練により配合してもよい。
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されず有機あるいは無機の各種のものを用いることができる。
【0085】
正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンベースEX{オリエント化学工業(株)製}、第4級アンモニウム塩P−51{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシン ボントロンN−01{オリエント化学工業(株)製}、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3: Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ社製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト社製)、さらにアルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料などが挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましい。
【0086】
また、負荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY{オリエント化学工業(株)製}、ボントロンS−22{オリエント化学工業(株)製}、サリチル酸金属錯体E−81{オリエント化学工業(株)製}、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH{保土谷化学工業(株)製}、ボントロンS−34{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシンSO[オリエント化学工業(株)製]、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ社製)、クロモーゲンシュバルツET00(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン社製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましい。
【0087】
これらの荷電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができるが、結着樹脂に添加する荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。
【0088】
また、本発明のトナーに用いられるウレタン結合やウレア結合を有する樹脂およびポリエステル樹脂はそれらの分子量範囲により熱溶融特性に優れ、また、定着温度領域での粘弾性特性により離型剤を不要とするが、添加する場合には、結着樹脂100重量部に対して4重量部(4重量%)以下であり、好ましくは0〜3重量部程度である。更に好ましくは、離型剤配合量は0〜1重量部である。
【0089】
離型剤としては、具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11またはCH3(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸、そのエステル脂肪酸金属塩、脂肪酸アシド、脂肪酸ビスアシド等を例示し得る。異なる低軟化点化合物を混合して用いても良い。具体的には、パラフィンワックス(日本石油社製)、パラフィンワックス(日本精蝋社製)、マイクロワックス(日本石油社製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋社製)、PE−130(ヘキスト社製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学社製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等がある。
【0090】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、あるいは酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst wax PE520、Hoechst wax PE130、Hoechstwax PE190(ヘキスト社製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業社製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst wax PED121、Hoechst wax PED153、Hoechst wax PED521、Hoechst wax PED522、同Ceridust 3620、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同Ceridust 3715(ヘキスト社製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業社製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wachs PP230(ヘキスト社製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、ビスコールTS−200(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスなどが例示される。これらの離型剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。必要に応じて添加される離型剤としては、セイコーインストルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値である軟化点(融点)が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものを使用するとよい。
【0091】
本発明におけるトナー母粒子は、上記で得た組成物を、混練・溶融した後、微粉砕手段により粉砕・分級して得られるが、その流動性を向上させる為に、流動性向上剤を外添してもよい。
流動性向上剤としては、有機系微粉末または無機系微粉末を用いることができる。例えばフツ素系樹脂粉末、すなわちフツ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、アクリル樹脂系微粉末など;又は脂肪酸金属塩、すなわちステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛など;又は金属酸化物、すなわち酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など;又は微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、それらシリカにシランカツプリング剤、チタンカツプリング剤、シリコンオイルなどにより表面処理をほどこした処理シリカなどがあり、これらは1種或いは2種以上の混合物で用いられる。
【0092】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒユームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4 + 2H2 + O2 → SiO2 + 4HCl
【0093】
又、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いる事によってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得る事も可能であり、それらも包含する。その粒径は平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内である事が望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。日本アエロジル社製の「AEROSIL 130」、以下、同 200、同 300、同 380、TT600、MOX170、MOX80、COK84等が挙げられ、また、CABOT Co.社製の「Ca−O−SiL M−5」、以下、同 MS−7、同 MS−75、同 HS−5、同 EH−5等が挙げられ、また、WACKER−CHEMIE GMBH社製の「Wacker HDK N 20V15」、以下、同 N20E、同 T30、同 T40、ダウコーニングCo.社の「D−C Fine Silica」、Fransill社の「Fransol」等が挙げられる。
【0094】
さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としてはシリカ微粉体と反応、あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の上記気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0095】
その様な有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0096】
その処理シリカ微粉体の粒径としては0.003〜0.1μm、0.005〜0.05μmの範囲のものを使用することが好ましい。市販品としては、タラノツクス−500(タルコ社)、AEROSIL R−972(日本アエロジル社)などがある。
流動性向上剤の添加量としては、該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では流動性向上に効果はなく、5重量部を超えるとカブリや文字のにじみ、機内飛散を助長する。
【0097】
本発明のトナーの製造方法は、バインダーポリマー(結着樹脂)の製造に際して上述したが、基本的には次の各工程よりなる。
(1)原料の均一混合工程
着色剤を分散した結着樹脂、荷電制御剤等の添加剤を所定量ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))に投入し、均一混合する。
(2)結着樹脂中への各添加剤の分散固定化工程
均一に混合した後、二軸混練押出機(池貝化成(株)製PCM−30)を使用して溶融混練し、結着樹脂中に各添加剤を分散固定化する。溶融混練手段としては、他に「TEM−37」(東芝機械(株))、「KRCニーダー」((株)栗本鉄工所)等の連続式混練機や加熱・加圧ニーダーのようなバッチ式混練機等が挙げられる。
【0098】
(3)粉砕工程
混練物を粗粉砕して粒度調整をした後、ジェット粉砕機「200AFG」(ホソカワミクロン(株))または「IDS−2」(日本ニューマチック工業(株))を使用し、ジェットエアーによる衝突粉砕により、微粉砕し、平均粒子径1〜8μmのものとする。粉砕手段としては他に、機械式粉砕機ターボミル(川崎重工(株))、スーパーローター(日清エンジニアリング(株))等が挙げられる。
(4)分級工程
微粉を除去し、粒径分布のシャープ化を目的として、風力又はローター回転による粒度調整を風力分級装置「100ATP」(ホソカワミクロン(株))又は「DSX−2」(日本ニューマチック工業(株))又は「エルボージェット」(日鉄鉱業(株))等を使用して行なう。
(5)外添処理工程
得られた着色樹脂粒子と流動化剤を、所定量ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))に投入し均一混合し、トナーとする。
【0099】
このようにして得られるトナーとして、平均粒径は、3〜10μm、好ましくは5〜8μmとするとよく、これにより高精細化を可能とする。また、例えば熱風処理等により円形度を、0.93〜0.99、好ましくは0.94〜0.98のものとするとよく、これにより、流動性、クリーニング性に優れるものとできる。
【0100】
以上、結着樹脂としてウレタン結合やウレア結合を有する樹脂あるいはポリエステル樹脂を例とするトナーについて説明したが、上述したように、結着樹脂が結晶領域と非晶質領域の双方を有するものであれば、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂あるいはポリエステル樹脂に限定されるものではない。
【0101】
例えば、予め結着樹脂の重合を制御すると共に定着時に所定以上の熱エネルギーが加えられた際に機能発現する重合開始剤や架橋開始剤を配合しておくことにより、定着温度領域での熱エネルギーの付与によりトナー中の結着樹脂がさらに重合し、結着樹脂が架橋したり分子量が増大するように設計した組成物においても同様に定着領域における粘弾性特性を制御できる。
【0102】
次に、本発明のトナーが適用される定着装置を図3により説明する。図中、1は定着ローラ、2はバックアップローラ、3は分離爪、4は紙等の記録媒体である。
定着ローラ1は、単層タイプ、多層タイプのいずれでもよい。単層タイプにあっては、加熱手段を内蔵した15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚のシリコンゴム層、またはフッ素ゴム層を積層したものである。また、多層タイプにあっては、加熱手段を内蔵した15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚の弾性層、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm厚のコート層を順次積層したもので、弾性層とコート層の組み合わせとしては、例えば、
(1)シリコン樹脂からなる弾性層、フッ素樹脂からなるコート層としたもの、
(2)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムからなるコート層としたもの、
(3)シリコンゴムからなる弾性層、シリコンゴムとフッ素ゴムからなるコート層としたもの
等が挙げられる。そして、単層タイプにおけるゴム層、また、多層タイプにおける弾性層は、JISA硬度で30度以下、好ましくは15度以下のゴム硬度を有するものである。
【0103】
また、バックアップローラ2は、単層タイプ、多層タイプのいずれでもよい。単層タイプにあっては15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚のシリコンゴム層、またはフッ素ゴム層を積層したものである。また、多層タイプにあっては15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚の弾性層、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm厚のコート層を順次積層したもので、弾性層とコート層の組み合わせとしては、例えば、
(1)シリコンスポンジからなる弾性層、高離型性シリコンからなるコート層を順次積層したもの、
(2)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムからなるコート層を順次積層したもの、
(3)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムラテックス、フッ素樹脂コートからなるコート層を順次積層したもの、
(4)シリコンスポンジゴムからなる弾性層、フッ素樹脂(PFAチューブ)被覆層を順次積層したもの
等が挙げられる。そして、単層タイプにおけるゴム層、また、多層タイプにおける弾性層は、JISA硬度で30度以下、好ましくは15度以下のゴム硬度を有するものである。
【0104】
定着ローラ1とバックアップローラ2との加圧力(線圧)は、0.2〜2kgf/cm、好ましくは0.3〜1kgf/cmであり、ニップ幅は1〜20mm、好ましくは4〜10mmである。また、速度は適宜設定されるが、ニップ通過時間が10〜150msec、好ましくは30〜100msecとなるように設定される。なお、定着ローラ、またはバックアップローラの少なくとも一方がベルトであるベルト定着器としてもよい。
【0105】
上述したように、本発明のトナーは、加熱体との接触に際しているにも係わらず、その弾性や粘性の増加により加熱体に付着(オフセット)することなく記録媒体に定着され、高温における耐オフセット性に優れるので、定着ローラ表面にはシリコンオイル等の離型剤塗布を不要とすることができる。
【0106】
以下、本発明のトナーの実施例および比較例について説明する。なお、以下の実施例および比較例の各物性値の測定および評価は前述の方法で行った。
(実施例1)
実施例1のトナーは、顔料を分散させたポリオール成分とイソシアネート成分とを重合して顔料分散ウレタン樹脂を作製し、更に、これを粉砕、分級することにより製造した。具体的には、ポリオール(PO1)としてのポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}と、顔料としてのCROMOPHTAL YELLOW 8GN(チバスペシャリティケミカルズ社製)とを、混合比がポリオール(PO1)/顔料=64/10(重量比)となるように配合し、これらを混合装置(プラネタリ式攪拌ミキサー;KENMIXmajor社製ケンミックスアイコープロKM23)により混合し、顔料混合液を調製した。
【0107】
次に、この顔料混合液をさらに分散装置(ビーズミル;ドライスヴェルケ社製Advatis V15)により、分散条件がビーズ径0.3mmφ、循環運転(流量20Kg/h)、負荷動力3.5kW一定、単位積算投入動力8kWh/kg)として分散処理し、ポリオール中に顔料を分散させた顔料分散液を調製した。このようにして調製した顔料分散液における顔料粒子の平均粒子径(50%径)は、日機装(株)製「マイクロトラックUPA150 model No.9340」により測定したところ、0.16μmであった。
【0108】
次いで、顔料分散液を前述のポリオール(PO1)であるポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}で適宜希釈し、後述するポリオール成分とポリイソシアネート成分との重合により得られるウレタン樹脂100重量部に対して顔料5重量部となるように顔料濃度を調整した。
【0109】
このように顔料濃度が調整された顔料分散液を、温度を90℃、かつ、到達真空度が5mmHgに設定した恒温槽中にて3時間脱気乾燥を行った。その後速やかに、脱気乾燥した顔料分散液に、別のポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を120℃にて加温溶解させ、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=90/10(モル比)となるようにして、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0110】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.1{イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数;これを重量比に換算すると、イソシアネート成分35.4重量部に対してポリオール(PO3)64.6重量部}となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの0.02重量部を添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、これを大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、顔料分散ポリウレタン樹脂(C)を得た。
得られた顔料分散ポリウレタン樹脂(C)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)が3.82×104 であり、また、数平均分子量(Mn)が1.26×104 、Mw/Mn=3.0であり、更に、Tgが76℃、Tmが136℃であった。
【0111】
この顔料分散ポリウレタン樹脂をジェットミルで粉砕し、さらに気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が8.5μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて攪拌混合し、黄色トナーを得た。
【0112】
得られたトナーについて、110℃から180℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、110℃から130℃の温度域においてはオフセットが発生したが、140℃以上の温度域においてはオフセットのない画像が得られた。また、トナーのTmを越えた150℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例1のトナーは、140℃以上の温度域が非オフセット域であり、また、150℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0113】
また、実施例1のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の方法で温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表1および図4に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
そして、前述の非オフセット域および定着強度良好域の評価結果に基づき、定着設定温度を160℃に設定した。このトナーの定着設定温度(160℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表1および図4に示すように1.18×106dyn/cm2であり、また、定着設定温度(160℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表1および図4に示すように3.07×105dyn/cm2であった。したがって、実施例1のトナーの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比は、G(t=0.01)/G(t=0.1)=3.84である。
【0116】
実施例1のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、良好な透明性を示し、濁りのない画像を得ることができた。
【0117】
(実施例2)
実施例2のトナーは、顔料として、IRGALITE BLUE 8700(チバスペシャリティケミカルズ社製)を使用した以外は、前述の実施例1と同様に製造し、シアン色トナーを得た。
この実施例2の顔料分散ポリウレタン樹脂(C)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)が2.52×104 であり、また、平均分子量(Mn)が0.93×104 であり、更に、Mw/Mn=2.7であり、更に、Tgが76℃、Tmが126℃であった。
【0118】
このシアン色トナーについて、110℃から180℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、110℃および180℃の温度においてはオフセットが発生したが、120℃〜170℃の温度域においてはオフセットのない画像が得られた。また、トナーのTmを越えた140℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例2のトナーは、120℃〜170℃の温度域が非オフセット域であり、また、140℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0119】
また、実施例2のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の実施例1と同様に温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表2および図5に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
そして、前述の非オフセット域および定着強度良好域の評価結果に基づき、定着設定温度を160℃に設定した。このトナーの定着設定温度(160℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表2および図5に示すように3.14×105dyn/cm2であり、また、定着設定温度(160℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表2および図5に示すように3380.95dyn/cm2であった。したがって、緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比、G(t=0.01)/G(t=0.1)=92.9であった。
【0122】
実施例2のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、良好な透明性を示し、濁りのない画像を得ることができた。
【0123】
(実施例3)
実施例3のトナーは、ポリオール成分とイソシアネート成分とを重合してウレタン樹脂を作製し、更に、このウレタン樹脂と顔料とを混合し、ウレタン樹脂を加熱溶融させた状態で混練して顔料を分散させ、この顔料分散ウレタン樹脂を粉砕、分級することにより製造した。以下に、実施例3のトナーを具体的に説明する。まず、実施例3のトナーに用いた3つのポリウレタン樹脂(Q07),(Q08),(Q09)の作製について説明する。
【0124】
[ポリウレタン樹脂(Q07)の作製]
ポリオール(PO1)としてポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}とポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=70/30(モル比)となるように配合して、これを120℃にて加温溶解させ、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0125】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.14(イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数)となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの20ppmを添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、ポリウレタン樹脂(Q07)を得た。
得られたポリウレタン樹脂(Q07)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)が1.95×104 であり、また、数平均分子量(Mn)が0.72×104 であり、更に、Mw/Mn=2.7であり、更に、Tgが81℃、Tmが135℃であった。
【0126】
[ポリウレタン樹脂(Q08)の作製]
前述のポリウレタン樹脂(Q07)と同様に、ポリオール(PO1)として前述のポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルと、ポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=70/30(モル比)となるように配合し、これを120℃にて加温溶解させ、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0127】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.41(イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数)となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの20ppmを添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、ポリウレタン樹脂(Q08)を得た。
得られたポリウレタン樹脂(Q08)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)は0.75×104 、数平均分子量(Mn)は0.37×104 、Mw/Mn=2.0であり、また、Tgは62℃、Tmは102℃であった。
【0128】
[ポリウレタン樹脂(Q09)の作製]
前述のポリウレタン樹脂(Q07)と同様に、ポリオール(PO1)として前述のポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルと、ポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=70/30(モル比)となるようにして配合し、これを120℃にて加温溶解させ、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0129】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.05(イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数)となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの20ppmを添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、ポリウレタン樹脂(Q09)を得た。
得られたポリウレタン樹脂(Q09)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)は5.44×104 、数平均分子量(Mn)は1.61×104 、Mw/Mn=3.4であり、また、Tgは90℃、Tmは171℃であった。
【0130】
次に、実施例3のトナーの作製について説明する。
[実施例3のトナーの作製]
前述のポリウレタン樹脂(Q07)70重量部、同じくポリウレタン樹脂(Q08)20重量部、同じくポリウレタン樹脂(Q09)10重量部、顔料として大日精化工業社製 ECR−101を5重量部、離型剤として日本ワックス社製 精製カルナバWAX type#1 を1重量部、帯電制御剤としてクラリアント社製 Copy Charge NCA を1重量部、および顔料分散剤として関東化学社製 ステアリン酸マグネシウムを1重量部を混合し、更にこれを三井鉱山社製 連続式2本ロール ニーデックス100により混練して、顔料、離型剤、および帯電制御剤を分散させた。
【0131】
この混練物を、フェザーミルにて粗粉砕し、更に気流衝突型粉砕機にて粉砕、気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が7.5μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合撹拌して、マゼンタ色トナーを得た。このとき、このマゼンタ色トナー中の離型剤の配合量は、前述の離型剤の混合量から明らかなように0.9重量%であった。そして、この離型剤の分散状態を透過型電子顕微鏡でトナー断面を観察したところ、離型剤は均一に分散しており、離型剤の分散粒子の円相当径で、最大径890nm、算術平均径で550nmであった。また、このマゼンタ色トナーのTgは75.7℃、Tmは125.7℃であった。
【0132】
得られたマゼンタ色トナーについて、110℃から200℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、120℃〜180℃の温度域においてオフセットのない画像が得られた。また、トナーのTmを越えた140℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例3のトナーは、120℃〜180℃の温度域が非オフセット域であり、また、140℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0133】
また、実施例3のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の方法で温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表3および図6に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
そして、前述の非オフセット域および定着強度良好域の評価結果に基づき、定着設定温度を150℃に設定した。このトナーの定着設定温度(150℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表3および図6に示すように8.85×105dyn/cm2であり、また、定着設定温度(150℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表3および図6に示すように、18400.6dyn/cm2であった。したがって、実施例3のトナーの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比は、G(t=0.01)/G(t=0.1)=48.1である。
【0136】
実施例3のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、良好な透明性を示し、濁りのない画像を得ることができた。
【0137】
(実施例4)
実施例4のトナーは、ポリエステル樹脂に顔料を分散させたマスタバッチを用いて製造した。以下に、実施例4のトナーを具体的に説明する。まず、実施例4のトナーに用いたマスタバッチの作製について説明する。
【0138】
[マスタバッチの作製]
三洋化成工業株式会社製 架橋ポリエステル樹脂 ES−803を70重量部に、顔料として大日精化工業社製 ECR−101を30重量部を混合し、これを三井鉱山社製 連続式2本ロール ニーデックス100により混練して、顔料を分散させたマスタバッチを作製した。
【0139】
次に、実施例4のトナーの作製について説明する。
[実施例4のトナーの作製]
このマスタバッチをフェザーミルにて粗粉砕した後、三洋化成工業株式会社製架橋ポリエステル樹脂 ES−803を124重量部、三洋化成工業株式会社製線状ポリエステル樹脂 ES−8022を273重量部、前述のマスタバッチを83重量部、離型剤として日本ワックス社製 精製カルナバWAX type#1 を15重量部、帯電制御剤としてオリエント化学社製 Bontron E−81を5重量部を混合し、これを東芝機械社製 2軸押し出し機により希釈混練した。
更に、この希釈混練物をフェザーミルにて粗粉砕し、気流衝突型粉砕機にて粉砕、気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が8.1μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合撹拌して、マゼンタ色トナーを得た。このとき、このマゼンタ色トナー中の離型剤の配合量は3重量%であった。そして、この離型剤の分散状態を透過型電子顕微鏡でトナー断面を観察したところ、離型剤は均一に分散しており、離型剤の分散粒子の円相当径で、最大径1200nm、算術平均径で780nmであった。また、このマゼンタ色トナーのTgは59.7℃、Tmは111.5℃であった。
【0140】
得られたマゼンタ色トナーについて、110℃から200℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、130℃〜170℃の温度域においてオフセットのない画像が得られた。また、トナーのTmを越えた140℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例4のトナーは、130℃〜170℃の温度域が非オフセット域であり、また、140℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0141】
また、実施例4のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の方法で温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表4および図7に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
そして、前述の非オフセット域および定着強度良好域の評価結果に基づき、定着設定温度を150℃に設定した。このトナーの定着設定温度(150℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表4および図7に示すように2.86×105dyn/cm2であり、また、定着設定温度(150℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表4および図7に示すように、19799.6dyn/cm2であった。したがって、実施例4のトナーの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比は、G(t=0.01)/G(t=0.1)=14.4である。
【0144】
実施例4のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、良好な透明性を示し、濁りのない画像を得ることができた。
【0145】
(比較例1)
比較例1のトナーは、ポリオール成分とイソシアネート成分とを重合してウレタン樹脂を作製し、更に、このウレタン樹脂と顔料とを混合し、ウレタン樹脂を加熱溶融させた状態で混練して顔料を分散させ、この顔料分散ウレタン樹脂を粉砕、分級することにより製造した。以下に、比較例1のトナーを具体的に説明する。
【0146】
ポリオール(PO1)としてポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}とポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=90/10(モル比)となるように配合して、これを120℃にて加温溶解させ、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0147】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.16(イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数)となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの20ppmを添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、ポリウレタン樹脂(Q01)を得た。
得られたポリウレタン樹脂(Q01)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)は2.02×104 、数平均分子量(Mn)は0.79×104 、Mw/Mn=2.6であり、また、Tgは70℃、Tmは120℃であった。
【0148】
前述のポリウレタン樹脂(Q01)100重量部に、顔料として大日精化工業社製 ECR−101の5重量部を混合し、更にこれを三井鉱山社製 連続式2本ロール ニーデックス100により混練して、顔料を分散させた。
この混練物を、フェザーミルにて粗粉砕し、更に気流衝突型粉砕機にて粉砕、気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が8.1μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合撹拌して、マゼンタ色トナーを得た。
得られたマゼンタ色トナーについて、120℃から200℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、測定温度域全域においてオフセットが発生した。
【0149】
また、比較例1のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の方法で温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表5および図8に示す。
【0150】
【表5】
【0151】
そして、このトナーのTmを越えた温度域における、緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表5および図8に示すように測定温度140℃、160℃、180℃、および200℃において、それぞれ、2.79×105dyn/cm2、2.70×105dyn/cm2、1.39×105dyn/cm2、34812dyn/cm2であった。また、緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表5および図8に示すように測定温度140℃、160℃、180℃、および200℃において、それぞれ、4200.64dyn/cm2、816.877dyn/cm2、642.541dyn/cm2、890.479dyn/cm2であった。したがって、比較例1のトナーの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)}は、それぞれ、66.4、331、216、39.1である。
【0152】
(比較例2)
比較例2のトナーは、樹脂微粒子分散液、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液をそれぞれ調製し、これを所定量混合撹拌しながら、前述の各粒子の凝集体を形成した後、前述の樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)以上の温度に加熱して融合させ、更に、分散液からその融合粒子を分散、乾燥させることにより製造した。以下に、比較例2のトナーを具体的に説明する。
【0153】
[樹脂微粒子分散液の調製]
スチレン 320重量部
n−ブチルアクリレート 80重量部
アクリル酸 6重量部
ドデカンチオール 20重量部
四臭化炭素 4重量部
これらの各成分を混合溶解し、この混合溶液を非イオン性界面活性剤ノニポール 400(花王社製)およびアニオン性界面活性剤ネオゲンSC(第一工業製薬社製)をイオン交換水に溶解した溶液中に添加し、分散、乳化させた後、過硫酸アンモニウムを溶解したイオン交換水溶液を投入した。次いで、系内を窒素で置換した後、撹拌しながら系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、アニオン性樹脂微粒子分散液を得た。
【0154】
[着色剤粒子被覆用極性樹脂微粒子の調製]
アクリル酸 6重量部
アクリル酸エチル 70重量部
スチレン 24重量部
これらの各成分を混合溶解し、この混合溶液を非イオン性界面活性剤ノニポール 400(花王社製)およびアニオン性界面活性剤ネオゲンSC(第一工業製薬社製)をイオン交換水に溶解した溶液中に添加し、分散、乳化させた後、過硫酸アンモニウムを溶解したイオン交換水を投入した。次いで、系内を窒素で置換した後、撹拌しながら系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、カチオン性樹脂微粒子分散液を得た。
【0155】
[着色剤粒子分散液の調製]
黄色顔料 Pigment Yellow 180(クラリアント社製) 50重量部
非イオン性界面活性剤ノニポール 400(花王社製) 5重量部
イオン交換水 200重量部
これらの各成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKE社製 ウルトラタラックス T50)により分散し、着色剤粒子分散液を得た。更に、これに前述のカチオン性樹脂粒子を滴下し、再度ホモジナイザーで処理し、付着させた。この着色剤粒子を乾燥させ、走査型顕微鏡(SEM)で観察したところ、着色剤の周囲に均一に極性樹脂微粒子が付着していることが観察された。
【0156】
[離型剤粒子分散液の調製]
パラフィンワックス HNP0190(融点85℃、日本精蝋社製) 50重量部
カチオン性界面活性剤サニゾール B50(花王社製) 5重量部
イオン交換水 200重量部
これらの各成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKE社製 ウルトラタラックス T50)により分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液を得た。
[比較例2のトナーの作製]
上記樹脂微粒子分散液 200重量部
上記着色剤粒子分散液 16.5重量部
上記離型剤粒子分散液 50重量部
ポリ塩化アルミニウム 1.23重量部
【0157】
これらの各成分を、ホモジナイザー(IKE社製 ウルトラタラックス T50)を用い、混合・分散した後、撹拌しながら加熱し、その後、ここに前述と同じ樹脂微粒子を15重量部追加した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを調整した後、撹拌を継続しながら加熱し、反応終了後冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、吸引濾過により分散粒子を分離し、更にこれに対して真空乾燥を行い、トナー母粒子を得た、
【0158】
更に、このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合撹拌して、体積平均粒子径8.1μmの黄色トナーを得た。このトナーを透過型電子顕微鏡で観察したトナーの断面像によると、トナー粒子中の離型剤粒子の算術平均中心粒径は270nmであった。またこのとき、トナー中の離型剤の配合量は4.5重量%であった。
【0159】
得られた黄色トナーについて、120℃から200℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、140℃〜160℃の温度域においてオフセットのない画像が得られた。しかし、定着強度が85%以上の温度域はなかった。つまり、この黄色トナーの非オフセット域の温度域は140℃〜160℃である。
【0160】
そして、前述の非オフセット域の評価結果に基づき、定着設定温度を150℃に設定した。このトナーの定着設定温度(150℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は5.6×105dyn/cm2であり、また、この緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と定着設定温度(150℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比は、G(t=0.01)/G(t=0.1)=26であった。
【0161】
比較例2のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、透明性が低く、透過画像は黒味を帯び、色の判別が困難であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】定着開始時での粘弾性特性の緩和弾性率の大小によるトナーの挙動を説明する図である。
【図2】トナーの粘弾性測定装置を模式的に示す図である。
【図3】本発明のトナーが適用される定着装置を模式的に示す図である。
【図4】実施例1のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【図5】実施例2のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【図6】実施例3のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【図7】実施例4のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【図8】比較例1のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【符号の説明】
1…定着ローラ、2…バックアップローラ、3…分離爪、4…紙等の記録媒体
【発明の属する技術分野】
本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷などにおける静電画像を加熱定着により現像するために使用するトナーの技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
電子写真法として、光導電性物質からなる感光体上に静電荷像を形成し、次いで該静電荷像を現像ローラ上に担持したトナーを用いて現像し、感光体上に現像されたトナー画像を、直接、または中間転写体を介して紙等の記録媒体上に転写し、更に、記録媒体上のトナー画像を加熱ローラー等の定着ローラにより紙等の記録媒体に圧着加熱して定着する方法が知られている。
【0003】
この方法に使用されるトナーとしては加熱ローラに溶融トナーが付着する、いわゆるオフセット現象を生じないこと、また、記録媒体上に定着されたトナー画像の定着強度に大きいこと等の優れた定着性が要求される。
一般に、ポリマーからなる結着樹脂を含有するトナーは、一定歪みを与えた場合、発生する応力が指数的に減衰する応力緩和挙動を示す。そこで、定着ローラへのトナーのオフセットや紙等の記録媒体上のトナーの定着強度等のトナー画像の定着性の改良や着色剤の分散性の改良を目的として、従来、これらのトナーの特性を定量的に確認するために、動的粘弾性測定から求められるトナーの緩和弾性率および緩和時間が用いられている。
【0004】
応力緩和挙動は、結着樹脂の粘弾性や樹脂内に分散された離型剤等の構造、大きさ、量等の影響を大きく受けるため、トナーの溶融状態を応力緩和挙動、つまり緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことができる。そこで、トナー定着時のトナーの溶融状態を粘弾性特性である緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことで、トナー画像の定着性および離型剤等の分散性をそれぞれ改良することが提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】
特開2000−81721号公報(段落番号[0016]〜[0018])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、近年、高画質化に対する要求の高まりから、最小画素(1dot)径が小さくなるとともに、トナーの小粒径化が進んでいる。そのため、小粒径化したトナーは、記録媒体である紙の繊維間に落ち込み易くなり、定着時の熱および圧力が繊維間に落ち込んだトナー粒子に十分に伝わらないという問題がある。また、最小画素径が小さくなることから、繊維間に落ち込んだトナー粒子と繊維上に載ったトナー粒子との相互溶融による「橋掛け」が生じ難いため、特に、孤立画素が多いハイライト領域において、定着不良が生じ易いという問題もある。
【0006】
しかしながら、前述のような、トナー定着時のトナーの溶融状態を緩和弾性率および緩和時間を用いて表すことで、トナー画像の定着性および離型剤等の分散性を改良するという従来のトナーの定着特性の改良では、これらの問題について何ら対応していない。このため、従来のトナーの定着特性の改良では十分にかつ効果的に改良が行われているとはいえず、トナーの定着特性を更に改良する余地がある。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、オフセットや定着強度の定着特性を、より一層効果的に優れた特性にすることのできるトナーを提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、本発明のトナーは、結着樹脂および着色剤を含有するトナーであって、トナーの軟化点を超えた定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)が、2.8×105 dyn/cm2(=2.8×104 Pa )以上であり、かつ、離型剤配合量が4重量%以下であることを特徴としている。
【0008】
また、本発明のトナーは、前記定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)と前記定着設定温度における緩和時間0.1秒の緩和弾性率G(t=0.1)との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)が3以上であり、かつ93以下であることを特徴としている。
更に、請求項3の発明は、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有することを特徴としている。
【0009】
【発明の作用および効果】
本発明のトナーによれば、定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)を2.8×105 dyn/cm2(=2.8×104 Pa )以上に設定しているので、定着開始(定着ニップ入口)の初期緩和弾性率が比較的大きくなる。これにより、定着開始時(定着ニップ入口時)において、トナーが十分な弾性を有するため、定着ローラ(加熱ローラ)に接触する上層のトナーは緩慢に軟化する。このため、記録媒体である紙等の繊維の間に落ち込んだ下層のトナーにもこの上層のトナーを介して定着ローラ(加熱ローラ)から十分な圧力および熱が加わり、下層のトナーも緩慢に軟化して変形するようになる。これにより、紙等の繊維に対するトナーの接触面積が拡大するので、定着強度が向上するものと考えられる。その場合、定着設定温度をトナーの軟化点(Tm)を越えた温度域内で、トナーのオフセットの生じない温度域に設定することで、定着時のトナーのオフセットが防止される。したがって、本発明のトナーは従来比べて優れた定着性を有するものとなる。
【0010】
また、本発明のトナーは優れた定着性を有することで、離型剤の配合量を4重量%以下に少なくすることができる。
更に、内部にワックスを内包したカプセル型トナーにおいても、ワックスの染み出しが更に容易になり、定着強度が更に改善される。
【0011】
更に、定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)と定着設定温度における緩和時間0.1秒の緩和弾性率G(t=0.1)との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)を3以上で93以下に設定しているので、定着終了(定着ニップ出口)の緩和弾性率が適度に小さくなる。これにより、定着終了時(定着ニップ出口時)においてトナーが適度に軟化しているので、トナーはより一層優れた定着性を有するようになる。
【0012】
前述の特許文献1に開示のトナーでは、ワックス(Wax)を多量に配合するものであり、Waxの多量配合による弊害、例えば、保存性についてはカプセル化してWaxのトナー表面への過剰な露出を防ぐことで対応しており、そのため、製造方法が複雑となり、製造コストや環境負荷の点で問題がある。また、トナーの透明性についても、Waxの多量配合により透明性が低下することを防ぐために、予めWax微粒子分散液を作成することでWaxの分散径を微小化させており、やはり製造方法が複雑となり、製造コストや環境負荷の点で問題がある。本発明のトナーは、前述のように緩和弾性率G(t=0.01)の値、比G(t=0.01)/G(t=0.1)の値を適正な範囲にしつつWaxの配合量を少量化することで、特許文献1のようにWaxを多量に配合させなくとも、良好な定着性を発揮させることができ、また、Waxが少量であるために、特許文献1に開示のような複雑な製造方法を用いなくとも、保存性、透明性が良好なトナーが得られるようになる。
【0013】
しかも、近年、特に低温定着を実現するために、離型剤として樹脂の軟化温度よりも10〜50℃低い軟化温度を示すWaxをトナーに配合することが検討されているが、このようなトナーにおいて、Waxを多量に配合した場合は、定着時の熱により樹脂に先行して溶融しトナー表面に染み出した過剰なWaxがトナーどうしの間で潤滑油のように作用し、定着時の圧力により紙上のトナー画像においてトナーどうしが横滑りし、細線の太りなどの画質の劣化が生じるという問題が生じるおそれがある。トナー全体として本発明のような緩和弾性率に設定したとしても、樹脂の溶融に先行して過剰なWaxがトナー表面に染み出し、これがトナーどうしの間で潤滑油のように作用した場合は、紙上のトナー画像の上部から定着ローラなどで加圧されたとしてもトナーどうしで横滑りし、紙繊維の間に落ち込んだトナーに十分な圧力が加わらないおそれが生じる。したがって、本発明のトナーは、前述のように離型剤の配合量を4重量%以下と少量化することで、このような問題を生じないようすることができる。
【0014】
更に、本発明のトナーは、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有しているので、内部凝集力の強いトナーとすることができ、定着性を更に一層優れたものにすることができる。そして、内部凝集力の強いトナー樹脂は割れ難くなるが、重合法によってトナーを容易に製造することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかるトナーの実施の形態について説明する。
本発明にかかるトナーは、結着樹脂および着色剤を少なくとも含有するトナーであって、定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)が2.8×105dyn/cm2(=2.8×104Pa )以上に設定され、かつ、離型剤配合量が4重量%以下に設定され、好ましくは、定着設定温度における緩和弾性率G(t=0.01)が、3.1×105dyn/cm2〜2.0×106dyn/cm2(3.1×104Pa〜2.0×105Pa )に設定され、かつ、離型剤配合量が0〜3重量%に設定される。更に好ましくは、離型剤配合量が0〜1重量%に設定される。
【0016】
また、本発明のトナーは、定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)と定着設定温度における緩和時間0.1秒の緩和弾性率G(t=0.1)との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)が3以上に設定され、かつ93以下に設定され、好ましくは、G(t=0.01)/G(t=0.1)が50以下に設定される。
更に、本発明のトナーは、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有している。
【0017】
このようにトナーを構成することで、定着開始(定着ニップ入口)の初期緩和弾性率Gを比較的大きくすることができる。これにより、定着開始時(定着ニップ入口時)において、トナーが十分な弾性を有するため、定着ローラ(加熱ローラ)に接触する上層のトナーは緩慢に軟化する。このため、図1(a)に示すように、記録媒体である紙の繊維の間に落ち込んだ下層のトナーにもこの上層のトナーを介して定着ローラ(加熱ローラ)から十分な圧力および熱が加わり、下層のトナーも緩慢に軟化して変形するようになる。その結果、紙の繊維に対するトナーの接触面積が拡大するので、定着強度が向上するものと考えられる。
【0018】
そして、定着設定温度をトナーの軟化点(Tm)を越えた温度域内で、トナーのオフセットの生じない温度域に設定することで、定着時のトナーのオフセットが防止される。したがって、本発明のトナーは従来比べて優れた定着性を有するものとなる。
また、本発明のトナーは優れた定着性を有することで、離型剤の配合量を4重量%以下に少なくすることができる。
更に、内部にワックスを内包したカプセル型重合トナーにおいても、ワックスの染み出しが更に容易になり、定着強度が更に改善される。
【0019】
前述の初期緩和弾性率Gが従来のように小さい場合は、定着開始時(定着ニップ入口時)において、トナーが十分な弾性を有していないため、定着ローラ(加熱ローラ)に接触する上層のトナーは速やかに軟化して変形する。このため、図1(b)に示すように、紙の繊維の間に落ち込んだ下層のトナーには、加熱ローラの熱も圧力も伝わり難くなり、紙の繊維に対するトナーの接触面積を拡大することができないので、定着強度が低くなるものと考えられる。
また、内部にワックスを内包したカプセル型重合トナーでは、内部のワックスが表面へ出ることができず(特に、ワックス配合量がカプセル型重合トナーとしては少なくなればなるほど、ワックスが表面へ出難くなる)、定着強度がより一層低くなるものと考えられる。
【0020】
更に、本発明のトナーは、定着終了(定着ニップ出口)の緩和弾性率が適度に小さくなることから、定着終了時(定着ニップ出口時)においてトナーが適度に軟化するようになる。その結果、トナーは効果的に紙の繊維間に染み出し、より一層優れた定着性を有するようになる。G(t=0.01)/G(t=0.1)が3より小さく、また93より大きいと、トナーのオフセット等が生じ易くなり、定着性が悪くなる。
【0021】
更に、本発明のトナーは、イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有しているので、内部凝集力の強いトナーとすることができ、定着性を更に一層優れたものにすることができる。そして、内部凝集力の強いトナー樹脂は割れ難くなるが、重合法によってトナーを容易に製造することができる。
【0022】
以下、このような粘弾性特性を示すトナーにおける結着樹脂として、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂およびポリエステル樹脂をそれぞれ用いた結着樹脂を例として説明する。
まず、ウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂について説明する。
トナーの結着樹脂として、従来ウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂が知られ、樹脂中に着色剤や荷電制御剤とを混練・微粉砕してトナー粒子とされている。また、トナーの結着樹脂として、従来高分子量のポリエステル樹脂からなる結着樹脂も知られ、前述と同様にウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂と同様に樹脂中に着色剤や荷電制御剤とを混練・微粉砕してトナー粒子とされる。
【0023】
そして、これらの結着樹脂は着色剤粒子等をトナー粒子中に保持し、定着に際しては定着ローラーでの熱と圧力で軟化し、紙等の転写材にトナー粒子を付着させる機能を有するが、低温定着を目的として、結着樹脂の分子量を低くし軟化温度を下げると、ガラス転移温度の低下や強度低下が生じ、着色剤の保持性や耐オフセット性、定着像強度、さらには保存性等が低下する。
【0024】
ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂は、水酸基とイソシアネート基が反応した結果生じるウレタン結合(−A−NHCOO−B−、式中Aはポリイソシアネート残基、Bは多活性水素化合物残基)、またはアミノ基とイソシアネート基とが反応した結果生じるウレア結合(−NHCONH−)を結合要素として含有し、その分子間凝集エネルギーは8.74kcal/molであり、メチン結合(−CH2 −)の0.68kcal/mol、エーテル結合(−O−)の1.0kcal/mol、ベンゼン結合の3.9kcal/mol、エステル結合における2.9kcal/molに比して格段に大きく、高結晶性のためそのガラス転移点が高い。しかしながら、ポリスチレンを基準としたときの数平均分子量(Mn)が1,500〜20,000の平均分子量のものは、そのフロー軟化点は140℃以下とすることができ、低分子量化に伴う低温定着性に優れるものとできること、また、その軟化点の低下にもかかわらず、ガラス転移温度は55℃以上とでき、ガラス転移温度の低下や強度低下の程度が小さく、トナーにおける結着樹脂として着色剤の保持性、耐熱性、保存性等に優れる結着樹脂とできるが、高温での耐オフセット性、定着像強度に、より優れることが求められている。
【0025】
ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂は、ポリイソシアネート類と多活性水素化合物とのバルク重合により得られる。ポリイソシアネート類としては、脂肪族ジイソシアネート類であるエタンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブテンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、チオジエチルジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、βーメチルブタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−ジプロピルエーテルジイソシアネート、チオジプロピルジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、2,2−ジメチルペンタンジイソシアネート、3−メトキシヘキサンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルペンタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、デカンジイソシアネート、3−ブトキシヘキサンジイソシアネート、1,4−ブチレングリコール−ジプロピルエーテル−ω,ω′−ジイソシアネート、ウンデカンジイソシアネート、ドデカンジイソシアネート、チオジヘキシルジイソシアネート等が挙げられる。
【0026】
また、環状基を有する脂肪族ジイソシアネートとしてはω,ω′−1,3−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,2−ジメチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,2−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジエチルベンゼンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルナフタリンジイソシアネート、ω,ω′−1,5−ジメチルナフタリンジイソシアネート、3,5−ジメルシクロヘキサン−1−メチルイソシアネート−2−プロピルイソシアネート、ω,ω′−n−プロピル−ビフェニルジイソシアネート等が挙げられる。
【0027】
芳香族ジイソシアネート類としては1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−メチルベンゼン−3,5−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1,3−ジメチルベンゼン−4,6−ジイソシアネート、1,4−ジメチルベンゼン−2,5−ジイソシアネート、1−エチルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、1−イソプロピルベンゼン−2,4−ジイソシアネート、ジエチルベンゼンジイソシアネート、ジイソプロピルベンゼンジイソシアネート等が挙げられる。
【0028】
ナフタリンジイソシアネート類としてはナフタリン−1,4−ジイソシアネート、ナフタリン−1,5−ジイソシアネート、ナフタリン−2,6−ジイソシアネート、ナフタリン−2,7−ジイソシアネート、1,1′−ジナフチル−2,2′−ジイソシアネート等が挙げられる。
ビフェニルジイソシアネート類としてはビフェニル−2,4′−ジイソシアネート、ビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシビフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2−ニトロビフェニル−4,4′−ジイソシアネート等が挙げられる。
【0029】
ジ−あるいはトリフェニルメタンジイソシアネート、およびジ−あるいはトリフェニルエタンジイソシアネートとしては、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,5,2′,5′−テトラメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジメトキシフェニル−3,3′−ジイソシアネート、4,4′−ジエトキシフェニルメタン−3,3′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチル−5,5′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3−ジクロロジフェニルジメチルメタン−4,4′−ジイソシアネート、ベンゾフェノン−3,3′−ジイソシアネート、α,β−ジフェニルエタン−2,4−ジイソシアネート、3−ニトロトリフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4−ニトロトリフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート等、またはその誘導体が挙げられる。
【0030】
トリイソシアネート類としては1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、1,3,5−トリメチルベンゼン−2,4,6−トリイソシアネート、ナフタリン−1,3,7−トリイソシアネート、ビフェニル−1,3,7−トリイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4,4′−トリイソシアネート、3−メチルジフェニルメタン−4,6,4′−トリイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、ジフェニル−4,4′−ジイソシアナトカルバミン酸クロリド等、およびその誘導体等が例示される。
また、ポリイソシアネートとして下記式
【0031】
【化1】
【0032】
(式中、R1 はメチレン基、エチレン基、−C(CH3 )2 −基から選ばれるアルキレン基を示し、R2 及びR3 は炭素数4以下のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲンから選ばれる基を示す。)で示されるジイソシアネート類を使用すると、粉砕性に優れるポリマーとでき、トナーとする際の粉砕工程における生産性を向上できる。上記式で示されるジイソシアネート類としては、具体的には、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′,5,5′−テトラメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジメチル−5,5′−ジメトキシジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジクロロジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、α,β−ジフェニルエタン−4,4′−ジイソシアネート等、またはその誘導体が挙げられ、また、これらのポリイソシアネート類の混合物を使用するのが好ましい。
【0033】
上記式で示されるポリイソシアネート類は、その基本骨格として2つの芳香族環がアルキレン基を介して結合した構造を有しており、本成分をハードセグメントとして使用することで、バインダーポリマーにおける分子鎖のフレキシビィリティを小さくでき、リジッドな構造となるため、粉砕性に優れるものと考えられる。また、基本骨格として2つの芳香族環がアルキレン基を介して結合した構造を有することにより分子間凝集力を高めることができるものと考えられ、高温オフセット性を抑えることが可能である。
【0034】
また、ポリイソシアネートとして脂環式ジイソシアネート化合物を使用すると、トナーとする際に、耐光性に優れ、画像の長期保存に際して退色のないものとできる。脂環式ジイソシアネート化合物は環状脂肪族炭化水素構造を有するため、光や熱による劣化が抑えられるものと考えられる。また、得られるバインダーポリマーはリジッドな構造で粉砕性に優れるものであり、トナーとする際の粉砕、分級工程における生産性を向上できる。
【0035】
脂環式ジイソシアネート化合物は、環式脂肪族炭化水素、または多環式脂肪族炭化水素に2個のイソシアネート基が直接またはアルキレン基を介して結合した構造を有し、例えば構造式
【化2】
で示されるイソホロンジイソシアネート、また、ω,ω′−1,2−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、ω,ω′−1,4−ジメチルシクロヘキサンジイソシアネート、3,5−ジメルシクロヘキサン−1−メチルイソシアネート−2−プロピルイソシアネートが例示される。
また、下記式
【0036】
【化3】
【0037】
(式中、R1 は単結合、メチレン基、エチレン基、−C(CH3 )2 −基から選ばれ、lおよびmは1〜5の整数、nは0〜2の整数を示す。)
で示される多環式脂肪族ジイソシアネートも好ましく、例えば下記構造式
【0038】
【化4】
【0039】
で示されるノルボルナンジイソシアネートが例示される。
本発明にあっては、特に、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート(水素化MDI)、p−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート(XDI)、p−フェニレンジイソシアネート、p−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(水素化XDI)、2,4−トリレンジイソシアネート(TDI)等の脂環式炭化水素や芳香族炭化水素を有するジイソシアネート類が好ましく、更にこれらのポリイソシアネート類の混合物を使用するのが好ましい。
【0040】
一般に、ポリウレタン合成や後述するポリエステル合成は、逐次反応のため、分子量分布の狭いポリマーが得られるが、多活性水素化合物とのウレタン反応において、例えばイソホロンジイソシアネートの場合には分子量分布をさらに狭くすることができるので、加熱時の溶融が非常に短時間で起こり、そのためシャープメルト性を実現でき、バインダーポリマーの樹脂設計に際して自由度を増すことができる。その詳細な理由は不明であるが、イソホロンジイソシアネートは第1級のイソシアネート基と第2級のイソシアネート基をもち、それぞれのイソシアネート基の反応性が異なることにより、反応に際して選択性を生じることによるものと考えられる。
【0041】
脂環式ジイソシアネート化合物は、他のポリイソシアネート類を併用できる。他のポリイソシアネートとしては、上述した脂肪族ジイソシアネート類、環状基を有する脂肪族ジイソシアネート類、芳香族ジイソシアネート類、ナフタリンジイソシアネート類、ビフェニルジイソシアネート類、ジ−あるいはトリフェニルメタンジイソシアネート、およびジ−あるいはトリフェニルエタンジイソシアネート、トリイソシアネート類が例示され、その配合割合は、全イソシアネート成分中60重量%以下とするとよい。他のポリイソシアネートが多すぎると耐光性、シャープメルト性等の効果が低下する。
【0042】
次に、ポリイソシアネート類と反応させるポリオール類やポリアミン類について説明する。本発明のトナーにおいては、その定着温度領域において所期の粘弾性とするには、上述したポリイソシアネート類としてウレタン結合やウレア結合を有する樹脂においてその結晶性を乱す、自由度が少ないバルキーな成分とすると共に、多活性水素化合物として同様にその結晶性を乱す、自由度が少ないバルキーな成分として、下記(1)〜(3)の化合物を多活性水素化合物とするとよい。
【0043】
(1) ジオキシカルボン酸、ジアミノカルボン酸、ジオキシスルホン酸、ジアミノスルホン酸、またはそれらの塩、例えば、下記構造式(A)で示される2,2−ジメチロールプロピオン酸、(B)で示される2,2−ジメチロールブタン酸、(C)で示される2,2−ジメチロール吉草酸、(D)で示される2,4−ジアミノ安息香酸、(E)で示される3,4−ジアミノ安息香酸、(F)で示される3,6−ジアミノ−2−トルエンスルホン酸、(G)で示される2,4−ジアミノベンゼンスルホン酸、(H)で示される2,5−ジアミノベンゼンスルホン酸、(I)で示される4,4′−ジアミノスチルベン−2,2′−ジスルホン酸、(J)で示される3,4−ジアミノブタンスルホン酸、(K)で示されるN−(2−アミノエチル)−2−アミノエチルスルホン酸等が例示される。
【0044】
【化5】
【0045】
これらの化合物は、その分子中に少なくとも2個の水酸基またはアミノ基と、カルボキシル基またはスルホン酸基を有するが、ウレタン反応やウレア反応に際してはイソシアネート基と水酸基またはアミノ基との反応が先行し、カルボキシル基やスルホン酸基との反応は殆ど生じない。また、これらの化合物を使用すると酸性基をウレタン樹脂やウレア樹脂における側鎖に存在させることができるので、トナーの定着に際して、紙等の記録媒体への濡れ性・結合性に優れ、定着強度に優れるものとできる。
【0046】
(2) 脂肪族環状ポリオール、例えば1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、脂肪族環状ポリアミン、例えば1,4−シクロヘキサンジメチルアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン等が例示される。
(3) 分枝構造を有する脂肪族ポリオール、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール等が例示され、また、分枝構造を有する脂肪族ポリアミン、例えば2−エチル−1,3−ヘキサンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、1,3−ブタンジアミン、2,3−ブタンジアミン、1,2−プロパンジアミン、2−メチル−2,4−ペンタンジアミン等が例示される。
【0047】
また、(1)〜(3)の多活性水素化合物は、トナーとして適した溶融特性を付与することを目的として、例えば、下記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物を併用するのが好ましい。なお、併用されるにあたっては、(1)〜(3)の多活性水素化合物の分子量としては、下記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルの分子量より小さくするとよく、分子量が90〜400、好ましくは120〜380のものとするとよい。
ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテルとしては、
【0048】
【化6】
【0049】
(式中、Rはエチレン基またはプロピレン基であり、同一でも相違していてもよく、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜12である。)
【0050】
で示され、例えばビスフェノールAのエチレンオキサイド2〜12モル付加物(以下、EO付加物)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2〜12モル付加物(以下、PO付加物)が例示され、これらを単独で、もしくは両者を混合して使用できる。さらには、EO基あるいはPO基の繰り返し単位数が異なる化合物を2種以上混合して用いてもよい。両者を混合して用いる場合、その混合比率(モル比)は、EO付加物/PO付加物=8:2〜1:9、好ましくは8:2〜2:8、更に好ましくは7:3〜4:6である。また、Rは同一でも、相違してもよく、一方がエチレン基で他方がプロピレン基でもよい。また、EO基、PO基はその繰り返し単位数により、バインダーポリマーとした際に物性が変化する。x+yの平均値は2〜12、好ましくは2〜4であり、繰り返し単位数がこれより大きいと、ガラス転移温度の低下や粉砕性の悪化を招くので好ましくなく、小さすぎると強度低下を来たし、折れ剥がれ強度が低下する。また、EO成分の組成比を高めると定着強度(折れ剥がれ強度)を向上させることができるが、ガラス転移温度の低下や粉砕性の悪化を招き、反対に、PO成分の組成比を高めると粉砕性は向上するが、定着強度(折れ剥がれ強度)は低下する。また、ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物における水酸基価は、100〜350KOHmg/g、好ましくは200〜290KOHmg/gである。ポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル化合物は、ビスフェノールAを基本骨格とすることで、ポリイソシアネートとの反応物であるバインダーポリマーとした際に、分子鎖のフレキシビィリティが小さく、リジッドな構造となるものと考えられる。
【0051】
(1)〜(3)の多活性水素化合物は、上記式で示されるポリオキシアルキレンビスフェノールAエーテル100モルに対して1モル〜900モル、好ましくは5モル〜100モル、さらに好ましくは10モル〜60モルとするとよく、これにより、トナーの製造時における粉砕性や低温定着性、高温での耐オフセット性、定着強度に優れ、また、要求される軟化点(Tm)やガラス転移温度(Tg)等の調整が容易になる。
【0052】
また、上述した多活性水素化合物によるトナーとしての性状を損なわない範囲で、多活性水素化合物として、他のポリオール類、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(カプロラクトンポリオール)、ポリ(ヘキサメチレンカーボネート)、ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート等を添加してもよい。
【0053】
ポリイソシアネート類と多活性水素化合物の反応割合は、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基数に対する多活性水素化合物における活性水素基数の割合{NCO/活性水素(当量比)}が0.5〜1.0、好ましくは0.7〜1.0の範囲で反応させるとよい。反応にあたっては、まず、多活性水素化合物中に後述する着色剤を均一分散した後、ポリイソシアネート類を、温度30℃〜180℃、好ましくは30℃〜140℃で、大気圧下、無溶剤下で、数分から数時間、バルク重合させるとよい。
【0054】
着色剤としては、以下に示すような、有機ないし無機の各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黒色顔料としては、カーボンブラック、酸化銅、四三酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭などがある。黄色顔料としては、黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスエロー、ナフトールエローS、バンザーイエローG、バンザーイエロー10G、ベンジジンエローG、ベンジジンエローGR、キノリンエローレーキ、パーマネントエローNCG、タートラジンレーキなどがある。橙色顔料としては、赤色黄鉛、モリブデンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGKMなどがある。赤色系顔料としては、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピロゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどがある。紫色顔料としては、マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキなどがある。青色顔料としては、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCなどがある。緑色顔料としては、クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファイナルイエローグリーンGなどがある。白色顔料としては、亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛などがある。体質顔料としては、バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイトなどがある。また、塩基性、酸性、分散、直接染料などの各種染料としては、ニグロシン、メチレンブルー、ローズベンガル、キノリンイエロー、ウルトラマリンブルーなどがある。
【0055】
また、透光性カラートナーとして用いる場合は、着色剤としては、以下に示すような、各種、各色の顔料、染料が使用可能である。黄色顔料としては、C.I.10316(ナフトールイエローS)、C.I.11710(ハンザエロー10G)、C.I.11660(ハンザエロー5G)、C.I.11670(ハンザエロー3G)、C.I.11680(ハンザエローG)、C.I.11730(ハンザエローGR)、C.I.11735(ハンザエローA)、C.I.11740(ハンザエローNR)、C.I.12710(ハンザエローR)、C.I.12720(ピグメントイエローL)、C.I.21090(ベンジジンエロー)、C.I.21095(ベンジジンエローG)、C.I.21100(ベンジジンエローGR)、C.I.20040(パーマネントエローNCG)、C.I.21220(バルカンファストエロー5)、C.I.21135(バルカンファストエローR)などがある。赤色顔料としては、C.I.12055(スターリンI)、C.I.12075(パーマネントオレンジ)、C.I.12175(リソールファストオレンジ3GL)、C.I.12305(パーマネントオレンジGTR)、C.I.11725(ハンザエロー3R)、C.I.21165(バルカンファストオレンジGG)、C.I.21110(ベンジジンオレンジG)、C.I.12120(パーマネントレッド4R)、C.I.1270(パラレッド)、C.I.12085(ファイヤーレッド)、C.I.12315(ブリリアントファストスカーレット)、C.I.12310(パーマネントレッドF2R)、C.I.12335(パーマネントレッドF4R)、C.I.12440(パーマネントレッドFRL)、C.I.12460(パーマネントレッドFRLL)、C.I.12420(パーマネントレッドF4RH)、C.I.12450(ライトファストレッドトーナーB)、C.I.12490(パーマネントカーミンFB)、C.I.15850(ブリリアントカーミン6B)などがある。また、青色顔料としては、C.I.74100(無金属フタロシアニンブルー)、C.I.74160(フタロシアニンブルー)、C.I.74180(ファーストスカイブルー)などがある。
【0056】
これらの着色剤は、単独であるいは複数組合せて用いることができるが、結着樹脂100重量部に対して、1〜20重量部、好ましくは2〜10重量部使用することが望ましい。20重量部より多いとトナーの定着性および透明性が低下し、一方、1重量部より少ないと所望の画像濃度が得られない虞れがある。
【0057】
本発明のトナーの製造に際しては、着色剤を多活性水素化合物中に分散させてからポリイソシアネート類と反応させるとよい。これにより、着色剤の分散による粘弾性特性に対する影響を抑えることができる。また、ポリイソシアネート類が顔料中の水分により失活することを防止できる。触媒としては、例えばジブチルスズジクロライド、ジメチルスズジクロライド、オクチル酸スズ、トリフェニルアンモニウムジクロライド、トリエチルアミン、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエタノール、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジネオデカノエート、ジブチルスズビス(メルカプト酸エステル)等が例示される。
ポリイソシアネート類と多活性水素化合物との反応は無溶剤下で行うことができ、溶液重合のごとく溶剤を必要としなく、また、重縮合反応のごとく副生物を生じないので効率のよい連続生産が可能である。
【0058】
本発明の、ウレタン結合やウレア結合を有する結着樹脂およびトナーは、ポリスチレンを基準としたゲルパーミエーション(GPC)測定での数平均分子量(Mn)が1,500〜20,000、好ましくは2,000〜10,000、更に好ましくは3,000〜8,000のものである。数平均分子量(Mn)が1,500より小さいと、低温定着性に優れるものの、着色剤の保持性や耐フィルミング性、耐オフセット性、定着像強度、保存性に劣るものであり、また、20,000より大きいと低温定着性に劣るものとなり、結着樹脂として単独では使用できないものとなる。また、重量平均分子量(Mw)は3,000〜300,000、好ましくは5,000〜50,000、更に好ましくは8,000〜20,000であり、Mw/Mnが1.5〜20、好ましくは1.8〜10、更に好ましくは1.8〜8、最も好ましくは1.8〜5である。
【0059】
結着樹脂における分子量を制御するには、ポリイソシアネートにおけるイソシアネート基数に対する多活性水素化合物における活性水素基数の割合(NCO/活性水素)を小さくすれば低分子量化でき、また、等量に近づけると高分子量化できるので、適宜、ポリイソシアネートの反応モル数を制御することにより容易に制御できる。なお、本発明の結着樹脂の物性に影響を与えない範囲で鎖伸長剤を適宜使用してもよい。鎖伸長剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ビス−(β−ヒドロキシ)ベンゼン、トリメチロールプロパン等が挙げられる。
【0060】
耐オフセット性と溶融特性を両立させるために、通常は樹脂のMw/Mnを大きくする、つまりブロードな分子量分布を有するように設計するか、または、低分子量体と高分子量体とを別途作製しブレンドする手法がとられているが、Mw/Mnを大きくしたり、ブレンド物とすると、シャープに溶融しないため透明性が低下し、特にカラー画像の画質が低下するという問題がある。これに対して、本発明における結着樹脂は、分子量分布を狭いものとすることによりシャープな溶融特性を示し、透明性に優れ、高画質のカラー画像を得ることができるものである。また、そのウレタン結合やウレア結合の分子間凝集エネルギーが適度に抑制されると共に、その定着時における粘弾性特性を特定のものとすることにより、低温定着性に優れると共に、高温での耐オフセット性に優れ、また、定着強度に優れるトナー画像を与える。
【0061】
ウレタン結合またはウレア結合を有する結着樹脂を含有する本発明のトナーは、フロー軟化点(Tm)が80℃〜150℃、好ましくは90℃〜140℃、さらに好ましくは100℃〜130℃の範囲にある。フロー軟化点(Tm)が80℃より低いと耐フィルミング性に劣るものとなり、また、150℃より高いと低温定着性に劣るものとなる。
また、ガラス転移温度(Tg)は45℃〜100℃、好ましくは50℃〜80℃、さらに好ましくは55℃〜75℃の範囲にある。ガラス転移温度(Tg)が45℃より低いと保存性に劣るものとなり、また、100℃より高いとそれにともなってTmが上昇し、低温定着性に劣るものとなる。
【0062】
本発明におけるウレタン結合またはウレア結合を有する結着樹脂は、分子間結合力が大きく、高結晶性ポリマーであるため、分子量を低下させTmを下げる分子設計をした時のTgの低下幅を小さくすることができ、低Tmと高Tgを両立させることができ、また、50%流出点における溶融粘度が3×103 〜1.5×104 Pa・sとでき、オイルレス定着用トナーとして適したものとできる。
本発明のトナーにおける結着樹脂としては、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂を主成分とし、結着樹脂中50重量%未満の範囲で、かつ、主成分の性状を損なわない範囲で他の結着樹脂を含有してもよい。他の結着樹脂としては、結着樹脂を製造する際に共存させてもよいが、製造後に混練してもよい。
【0063】
次に、ポリエステル樹脂からなる結着樹脂について説明する。
本発明トナーの結着樹脂として用いられるポリエステル樹脂は架橋樹脂および低分子量樹脂であり、架橋ポリエステル樹脂における酸成分、アルコール成分としては、下記の2官能カルボン酸類及びジオール類、及び3価以上のポリカルボン酸または3価以上のポリオールの少なくとも1種が例示される。
【0064】
2官能カルボン酸類としては、例えば2価のカルボン酸、2価のカルボン酸の無水物及びそのエステル類等の誘導体であり、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ジフェニル−p,p′−ジカルボン酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、ジフェニルメタン−p,p′−ジカルボン酸、ベンゾフェノン−4,4′−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−p,p′−ジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、シクロヘキサンカルボン酸、コハク酸、マロン酸、アジピン酸或はこれらの無水物やエステル化物などが例示される。
【0065】
また、ジオール成分としては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール等のアルキレングリコール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ポリオキシエチレン(2,0)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェノル)プロパン、2,2′−(1,4−フェニレンビスオキシ)ビスエタノール、1,1′−ジメチル−2,2′−(1,4−−フェニレンビスオキシ)ビスエタノール、1,1,1′,1′−テトラメチル−2,2′−(1,4−フェニレンビスオキシ)ビスエタノール等が例示される。
【0066】
3価以上のポリカルボン酸としては、例えばトリメリット酸、ピロメリット酸、シクロヘキサントリカルボン酸類、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチレンカルボキシルプロパン、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシルプロパン、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸及びそれらの無水物、エステル化物等が例示される。
【0067】
また、3価以上のポリオールとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、しょ糖、1,2,4−メンタトリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等が例示される。
【0068】
架橋ポリエステル樹脂は、上述の2官能カルボン酸類及びジオール類に加えて、上述の3価以上のポリカルボン酸または3価以上のポリオールの少なくとも1種の成分をジブチル錫オキサイド等の触媒の存在下、加熱攪拌し、反応水を除去しつつ縮重合反応させて得られる。架橋ポリエステル樹脂の酸価は5mgKOH/g〜40mgKOH/g、好ましくは25mgKOH/g〜30mgKOH/gとされ、また、重量平均分子量は8,000〜30,000、好ましくは15,000〜25,000、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)は5〜12、好ましくは8〜10である。
【0069】
次に、低分子量のポリエステル樹脂としては、上述した2官能カルボン酸類及びジオール類との縮重合反応により得られるもので、好ましくは線状ポリエステル樹脂であり、重量平均分子量が4,000〜12,000、好ましくは8,000〜9,000で、重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)が2〜10、好ましくは3〜5のものであり、酸価としては2mgKOH/g以下のものである。重量平均分子量が大きいと、低温定着性に問題が生じ、また、小さいと耐ブロッキング性、耐フィルミング性に問題が生じる。
【0070】
以上、トナー用樹脂として、ウレタン結合あるいはウレア結合を有する樹脂や、ポリエステル樹脂を例として説明したが、スチレン・アクリル樹脂、エポキシ樹脂等の既知のトナー用樹脂とこれらの樹脂を混合して使用してもよい。
なお、ポリエステル樹脂では分子鎖間に強固な化学的な結合または物理的な結合による架橋ポリエステルを用いるため、熱溶融時に粘度が緩慢に低下していくのに対し、ウレタン結合あるいはウレア結合を有する樹脂においては、ウレタン結合あるいはウレア結合による分子鎖間の水素結合が擬似的な架橋点として作用することにより、熱溶融時には、溶融開始直後はその擬似的な架橋により高粘度を示すものの、溶融が進行するに従い、水素結合切断されることで擬似的な架橋点が失われていき、粘度は急激に低下していくため、紙への浸透性がポリエステル樹脂よりも良好となる。したがって、ウレタン結合あるいはウレア結合を有する樹脂を用いることが好ましい。
【0071】
次に、本発明のトナーの物性値の測定および評価について説明する。
(1)酸価の測定
トナーの試料を予想される酸価に応じて秤量し、テトラヒドロフラン(THF)とエタノールとの体積比=3:1の混合溶媒に溶解、または溶解性の不十分なものについては加温溶解した。この試料を用い、JIS K0070に準拠して酸価を測定した。
【0072】
(2)軟化点(Tm)[℃]の測定
(株)島津製作所製「定荷重押出型細管式レオメータ フローテスターCFD−500D」を用いて、下記条件にて測定する。
測定試料の調製 : 測定試料としてトナー約1gを圧縮成型し、フローテスタのシリンダの内径に合わせた円柱状試料とした。
測定条件 : 荷重 20kgf、ダイ穴 1mm、ダイ長さ 1mm
測定方法 : 1/2法
【0073】
(3)分子量分布の測定
5mgのトナーを5gのTHFに溶解し、樹脂成分以外のTHF不溶分およびコンタミ物質を除去するため、ポアサイズ0.2μmのメンブランフィルターを通して、GPC用サンプルを調製した。こうして調製したサンプルを、GPCを用いて、下記の条件にて測定する。
カラム : 昭和電工(株)製「Shodex(GPC)KF806M+KF802.5」
カラム温度 : 30 ℃
溶媒 : テトラヒドロフラン(THF)
流速 : 1.0 ml/min
検出器 : UV検出器(検出波長254 nm)
標準試料 : 単分散ポリスチレン標準試料(重量平均分子量580から390万)
【0074】
(4)ガラス転移点(Tg)の測定
トナー10mgをアルミニウム製セルにパッキングし、セイコーインスツルメント(株)製「DSC120」を用いて下記の条件で測定する。
測定温度 : 0〜200 ℃
昇温速度 : 10 ℃/min
Tg : 2度目の昇温時のDSC曲線より読み取る。
【0075】
(5)粒径の測定
本明細書では、粒径という場合「平均粒径」を意味する。
コールターマルチサイザーIII 型(コールター社製)を用い、100μmのアパチャーチューブで粒径別相対重量分布を測定することにより求める。また、シリカ粒子等の外添剤の粒径は、電子顕微鏡法による。
(6)各トナーにおける帯電量(μc/g)の測定
トレック・ジャパン(株)製「吸引式小型粉体帯電量測定装置、210HS」により測定する。
【0076】
(7)緩和弾性率G(t)の測定
本発明のトナーの緩和弾性率G(t)は、図2(a)に示す下記の粘弾性測定装置を用い応力緩和測定モードにより下記の条件で粘弾性測定を行うことで、緩和時間0.01secにおける緩和弾性率G(t=0.01)および緩和時間0.1secにおける緩和弾性率G(t=0.1)を得るとともに、緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)}を算出する。
【0077】
粘弾性測定装置: 使用した粘弾性測定装置は、アレス粘弾性測定システム (ARES粘弾性測定装置;レオメトリック・サイエンティ フィック・エフ・イー社製)である。
使用治具 : 上下2枚のパラレルプレート(φ25mm)。
測定試料の調製: 測定試料は、圧縮成型したトナー約1gをパラレルプレートの下プレートに載せ、ヒーターにより測定温度に加熱し少し柔らかくなってきたところで、このトナーをトランスデューサを作動してパラレルプレートの上プレートで挟んで加圧する。図2(b)に示すようにパラレルプレートからはみ出したトナーはトリミングして取り除き、同図(a)に示すようにパラレルプレートの外周形状(つまり、パラレルプレートの直径)に合わせ、かつ試料の高さ(上下プレート間のギャップ)を1.0〜2.0mmに調製して円柱状試料とする。なお、図2(c)に示すように上下プレート全面にトナーが密着していない場合は不良(NG)として、測定試料とはしない。
測定温度 : 定着設定温度(加熱ローラの表面温度の制御中心値)。
測定歪み : パラレルプレートの上プレートは回転させずに、パラレルプレートの下プレートのみを回転して歪を与える。このとき、測定温度を一定にし、歪み依存(Strain Sweep)モードで、測定試料に徐々に大きな歪み{周波数1[rad/sec](1rad/sec=(1/6.28)Hz、歪み0.1〜200%}を与える。そして、与えた歪みに対し動的粘弾性の貯蔵弾性率G′および損失弾性率G″が線形領域における最大歪みを緩和弾性率測定時の測定歪みとする。
測定モード : 緩和弾性率(Stress Relax)モードでかつ温度依存(Temp Ramp)モードで測定を行った。その場合、設定した測定歪みが測定温度域で常時維持されるように、システムの Auto
Strain、Auto Tension を作動状態に設定した状態で測定を行う。また、測定は測定開始温度から5℃/minの速度で昇温させながら行う。
【0078】
(9)定着性の測定
コニカ社製カラーレーザープリンタ KL−2010から定着器(定着ユニット)を取り外す。この定着器(定着ユニット)は加熱ローラおよび加圧ローラからなる熱ローラ定着器である。そして、定着器(定着ユニット)を外部駆動装置により独立して駆動可能とし、定着ニップ通過時間を調整できるように改造する。また、PPC用普通紙上のトナー画像(トナーの未定着パッチ)に接する側の加熱ローラ(定着ローラ)の表面温度は100℃から200℃まで制御できるように改造する。
【0079】
更に、定着ローラ表面にシリコーンオイルを塗布する塗布手段は取り外し(オイルパッド非装着状態)、更に、印字されていないA4サイズ白紙を1,000枚通紙させ、更に、定着ローラ表面をイソプロピルアルコールにより清掃し、ローラ表面からシリコーンオイルを除去する。また、これ以後、定着性評価用画像が定着器に通過する毎に定着ローラ表面をイソプロピルアルコールにより清掃し、更に綿布にて乾拭きし、定着ローラ表面にシリコーンオイルの無い状態を維持する。
【0080】
この定着ローラ表面からシリコーンオイルを除去した定着器を用い、定着性評価用画像を、加熱ローラ側が未定着トナー付着面となるように定着器を通過させてニップ幅8mm、ニップ通過時間50msecの条件にて定着する。
なお、定着性評価用画像は、セイコーエプソン(株)製カラーレーザープリンタLP−2000Cを使用して以下のように作成する。まず、富士ゼロックスオフィスサプライ社製 J紙(坪量82g/m2)を評価用紙とし、この用紙上にトナーを均一に付着させたいわゆるベタ画像を形成し、そのベタ画像におけるトナー付着量が0.4mg/cm2となるように画像形成条件を調整し、次に、紙の先端から10mmの位置に20mm四方の領域に、解像度600dpiの孤立ドットによる30%ハーフトーン画像を形成し、このハーフトーン画像を定着性評価用画像とした。
【0081】
(8ー1)非オフセット域の測定
定着ローラの表面温度を段階的に変化させながら、未定着の定着性評価用画像をこの定着ローラに通過させ、画像の少なくとも一部が定着ローラ通過時に定着ローラに転移した後、再度紙に移行しているか否かを目視で判定する。画像の少なくとも一部の紙への移行があるものをオフセット有り、画像の少なくとも一部の紙への移行がないものをオフセットなしとする。
【0082】
(8ー2)定着強度良好域の測定
【0083】
そして、前述の非オフセット領域を確認した後、定着性評価用画像を消しゴム(ライオン事務機社製 ECR−502R インキボールペン用)を用い、押圧荷重1kgfで1回擦り、画像濃度の残存率をX−Rite Inc社製「X−Rite model 404」により測定した。画像濃度残存率85%(ハーフトーン用評価基準)以上の温度領域を定着強度良好域とする。
【0084】
本発明のトナーは、荷電制御剤、必要に応じて離型剤、分散剤、磁性粒子等を含有してもよく、着色剤同様に原料であるポリオール類に分散してもよく、また、樹脂を形成した後適宜混練により配合してもよい。
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の荷電を与え得るものであれば、特に限定されず有機あるいは無機の各種のものを用いることができる。
【0085】
正荷電制御剤としては、例えば、ニグロシンベースEX{オリエント化学工業(株)製}、第4級アンモニウム塩P−51{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシン ボントロンN−01{オリエント化学工業(株)製}、スーダンチーフシュバルツBB(ソルベントブラック3: Color Index 26150)、フェットシュバルツHBN(C.I. NO.26150)、ブリリアントスピリッツシュバルツTN(ファルベン・ファブリッケン・バイヤ社製)、ザボンシュバルツX(ファルベルケ・ヘキスト社製)、さらにアルコキシ化アミン、アルキルアミド、モリブデン酸キレート顔料などが挙げられる。中でも第4級アンモニウム塩P−51が好ましい。
【0086】
また、負荷電制御剤としては、例えば、オイルブラック(Color Index 26150)、オイルブラックBY{オリエント化学工業(株)製}、ボントロンS−22{オリエント化学工業(株)製}、サリチル酸金属錯体E−81{オリエント化学工業(株)製}、チオインジゴ系顔料、銅フタロシアニンのスルホニルアミン誘導体、スピロンブラックTRH{保土谷化学工業(株)製}、ボントロンS−34{オリエント化学工業(株)製}、ニグロシンSO[オリエント化学工業(株)製]、セレスシュバルツ(R)G(ファルベン・ファブリケン・バイヤ社製)、クロモーゲンシュバルツET00(C.I.NO.14645)、アゾオイルブラック(R)(ナショナル・アニリン社製)などが挙げられる。中でも、サリチル酸金属錯体E−81が好ましい。
【0087】
これらの荷電制御剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができるが、結着樹脂に添加する荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100重量部に対して0.001〜5重量部であり、好ましくは0.001〜3重量部である。
【0088】
また、本発明のトナーに用いられるウレタン結合やウレア結合を有する樹脂およびポリエステル樹脂はそれらの分子量範囲により熱溶融特性に優れ、また、定着温度領域での粘弾性特性により離型剤を不要とするが、添加する場合には、結着樹脂100重量部に対して4重量部(4重量%)以下であり、好ましくは0〜3重量部程度である。更に好ましくは、離型剤配合量は0〜1重量部である。
【0089】
離型剤としては、具体的にはパラフィンワックス、ポリオレフィンワックス、芳香族基を有する変性ワックス、脂環基を有する炭化水素化合物、天然ワックス、炭素数12以上の長鎖炭化水素鎖〔CH3(CH2)11またはCH3(CH2)12以上の脂肪族炭素鎖〕を有する長鎖カルボン酸、そのエステル脂肪酸金属塩、脂肪酸アシド、脂肪酸ビスアシド等を例示し得る。異なる低軟化点化合物を混合して用いても良い。具体的には、パラフィンワックス(日本石油社製)、パラフィンワックス(日本精蝋社製)、マイクロワックス(日本石油社製)、マイクロクリスタリンワックス(日本精蝋社製)、硬質パラフィンワックス(日本精蝋社製)、PE−130(ヘキスト社製)、三井ハイワックス110P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス220P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス660P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス210P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス320P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス410P(三井石油化学社製)、三井ハイワックス420P(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1141(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−2130(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−4020(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−1142(三井石油化学社製)、変性ワックスJC−5020(三井石油化学社製)、密ロウ、カルナバワックス、モンタンワックス等を挙げることができる。脂肪酸金属塩として、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、オレイン酸亜鉛、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸マグネシウム等がある。
【0090】
ポリオレフィン系ワックスとしては、例えば低分子量ポリプロピレン、低分子量ポリエチレン、あるいは酸化型のポリプロピレン、酸化型のポリエチレン等が挙げられる。ポリオレフィン系ワックスの具体例としては、例えば、Hoechst wax PE520、Hoechst wax PE130、Hoechstwax PE190(ヘキスト社製)、三井ハイワックス200、三井ハイワックス210、三井ハイワックス210M、三井ハイワックス220、三井ハイワックス220M(三井石油化学工業社製)、サンワックス131−P、サンワックス151−P、サンワックス161−P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst wax PED121、Hoechst wax PED153、Hoechst wax PED521、Hoechst wax PED522、同Ceridust 3620、同Ceridust VP130、同Ceridust VP5905、同Ceridust VP9615A、同Ceridust TM9610F、同Ceridust 3715(ヘキスト社製)、三井ハイワックス420M(三井石油化学工業社製)、サンワックスE−300、サンワックスE−250P(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリエチレンワックス、Hoechst Wachs PP230(ヘキスト社製)、ビスコール330−P、ビスコール550−P、ビスコール660P(三洋化成工業社製)などのような非酸化型ポリプロピレンワックス、ビスコールTS−200(三洋化成工業社製)などのような酸化型ポリプロピレンワックスなどが例示される。これらの離型剤は、単独であるいは複数種組合せて使用することができる。必要に応じて添加される離型剤としては、セイコーインストルメント(株)製「DSC120」で測定されるDSC吸熱曲線における吸熱メインピーク値である軟化点(融点)が40〜130℃、好ましくは50〜120℃のものを使用するとよい。
【0091】
本発明におけるトナー母粒子は、上記で得た組成物を、混練・溶融した後、微粉砕手段により粉砕・分級して得られるが、その流動性を向上させる為に、流動性向上剤を外添してもよい。
流動性向上剤としては、有機系微粉末または無機系微粉末を用いることができる。例えばフツ素系樹脂粉末、すなわちフツ化ビニリデン微粉末、ポリテトラフルオロエチレン微粉末、アクリル樹脂系微粉末など;又は脂肪酸金属塩、すなわちステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸鉛など;又は金属酸化物、すなわち酸化鉄、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛など;又は微粉末シリカ、すなわち湿式製法シリカ、乾式製法シリカ、それらシリカにシランカツプリング剤、チタンカツプリング剤、シリコンオイルなどにより表面処理をほどこした処理シリカなどがあり、これらは1種或いは2種以上の混合物で用いられる。
【0092】
好ましい流動性向上剤としては、ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された微粉体であり、いわゆる乾式法シリカ又はヒユームドシリカと称されるもので、従来公知の技術によって製造されるものである。例えば四塩化ケイ素ガスの酸水素焔中における熱分解酸化反応を利用するもので、基礎となる反応式は次の様なものである。
SiCl4 + 2H2 + O2 → SiO2 + 4HCl
【0093】
又、この製造工程において、例えば塩化アルミニウム又は塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物と共に用いる事によってシリカと他の金属酸化物の複合微粉体を得る事も可能であり、それらも包含する。その粒径は平均の一次粒径として、0.001〜2μmの範囲内である事が望ましく、特に好ましくは、0.002〜0.2μmの範囲内のシリカ微粉体を使用するのが良い。本発明に用いられるケイ素ハロゲン化合物の気相酸化法により生成された市販のシリカ微粉体としては、例えば以下の様な商品名で市販されているものがある。日本アエロジル社製の「AEROSIL 130」、以下、同 200、同 300、同 380、TT600、MOX170、MOX80、COK84等が挙げられ、また、CABOT Co.社製の「Ca−O−SiL M−5」、以下、同 MS−7、同 MS−75、同 HS−5、同 EH−5等が挙げられ、また、WACKER−CHEMIE GMBH社製の「Wacker HDK N 20V15」、以下、同 N20E、同 T30、同 T40、ダウコーニングCo.社の「D−C Fine Silica」、Fransill社の「Fransol」等が挙げられる。
【0094】
さらには、該ケイ素ハロゲン化合物の気相酸化により生成されたシリカ微粉体に疎水化処理した処理シリカ微粉体を用いることがより好ましい。該処理シリカ微粉体において、メタノール滴定試験によって測定された疎水化度が30〜80の範囲の値を示すようにシリカ微粉体を処理したものが特に好ましい。疎水化方法としてはシリカ微粉体と反応、あるいは物理吸着する有機ケイ素化合物などで化学的に処理することによって付与される。好ましい方法としては、ケイ素ハロゲン化合物の上記気相酸化により生成されたシリカ微粉体を有機ケイ素化合物で処理する。
【0095】
その様な有機ケイ素化合物の例は、ヘキサメチレンジシラザン、トリメチルシラン、トリメチルクロルシラン、トリメチルエトキシシラン、ジメチルジクロルシラン、メチルトリクロルシラン、アリルジメチルクロルシラン、アリルフエニルジクロルシラン、ベンジルジメチルクロルシラン、ブロムメチルジメチルクロルシラン、α−クロルエチルトリクロルシラン、β−クロルエチルトリクロルシラン、クロルメチルジメチルクロルシラン、トリオルガノシリルメルカプタン、トリメチルシリルメルカプタン、トリオルガノシリルアクリレート、ビニルジメチルアセトキシシラン、ジメチルエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジフエニルジエトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、1,3−ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3−ジフエニルテトラメチルジシロキサンおよび1分子当り2から12個のシロキサン単位を有し末端に位置する単位にそれぞれ1個宛のSiに結合した水酸基を有するジメチルポリシロキサン等がある。これらは1種あるいは2種以上の混合物で用いられる。
【0096】
その処理シリカ微粉体の粒径としては0.003〜0.1μm、0.005〜0.05μmの範囲のものを使用することが好ましい。市販品としては、タラノツクス−500(タルコ社)、AEROSIL R−972(日本アエロジル社)などがある。
流動性向上剤の添加量としては、該樹脂粒子100重量部に対して0.01〜5重量部、好ましくは0.1〜3重量部である。0.01重量部未満では流動性向上に効果はなく、5重量部を超えるとカブリや文字のにじみ、機内飛散を助長する。
【0097】
本発明のトナーの製造方法は、バインダーポリマー(結着樹脂)の製造に際して上述したが、基本的には次の各工程よりなる。
(1)原料の均一混合工程
着色剤を分散した結着樹脂、荷電制御剤等の添加剤を所定量ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))に投入し、均一混合する。
(2)結着樹脂中への各添加剤の分散固定化工程
均一に混合した後、二軸混練押出機(池貝化成(株)製PCM−30)を使用して溶融混練し、結着樹脂中に各添加剤を分散固定化する。溶融混練手段としては、他に「TEM−37」(東芝機械(株))、「KRCニーダー」((株)栗本鉄工所)等の連続式混練機や加熱・加圧ニーダーのようなバッチ式混練機等が挙げられる。
【0098】
(3)粉砕工程
混練物を粗粉砕して粒度調整をした後、ジェット粉砕機「200AFG」(ホソカワミクロン(株))または「IDS−2」(日本ニューマチック工業(株))を使用し、ジェットエアーによる衝突粉砕により、微粉砕し、平均粒子径1〜8μmのものとする。粉砕手段としては他に、機械式粉砕機ターボミル(川崎重工(株))、スーパーローター(日清エンジニアリング(株))等が挙げられる。
(4)分級工程
微粉を除去し、粒径分布のシャープ化を目的として、風力又はローター回転による粒度調整を風力分級装置「100ATP」(ホソカワミクロン(株))又は「DSX−2」(日本ニューマチック工業(株))又は「エルボージェット」(日鉄鉱業(株))等を使用して行なう。
(5)外添処理工程
得られた着色樹脂粒子と流動化剤を、所定量ヘンシェルミキサー20B(三井鉱山(株))に投入し均一混合し、トナーとする。
【0099】
このようにして得られるトナーとして、平均粒径は、3〜10μm、好ましくは5〜8μmとするとよく、これにより高精細化を可能とする。また、例えば熱風処理等により円形度を、0.93〜0.99、好ましくは0.94〜0.98のものとするとよく、これにより、流動性、クリーニング性に優れるものとできる。
【0100】
以上、結着樹脂としてウレタン結合やウレア結合を有する樹脂あるいはポリエステル樹脂を例とするトナーについて説明したが、上述したように、結着樹脂が結晶領域と非晶質領域の双方を有するものであれば、ウレタン結合やウレア結合を有する樹脂あるいはポリエステル樹脂に限定されるものではない。
【0101】
例えば、予め結着樹脂の重合を制御すると共に定着時に所定以上の熱エネルギーが加えられた際に機能発現する重合開始剤や架橋開始剤を配合しておくことにより、定着温度領域での熱エネルギーの付与によりトナー中の結着樹脂がさらに重合し、結着樹脂が架橋したり分子量が増大するように設計した組成物においても同様に定着領域における粘弾性特性を制御できる。
【0102】
次に、本発明のトナーが適用される定着装置を図3により説明する。図中、1は定着ローラ、2はバックアップローラ、3は分離爪、4は紙等の記録媒体である。
定着ローラ1は、単層タイプ、多層タイプのいずれでもよい。単層タイプにあっては、加熱手段を内蔵した15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚のシリコンゴム層、またはフッ素ゴム層を積層したものである。また、多層タイプにあっては、加熱手段を内蔵した15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚の弾性層、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm厚のコート層を順次積層したもので、弾性層とコート層の組み合わせとしては、例えば、
(1)シリコン樹脂からなる弾性層、フッ素樹脂からなるコート層としたもの、
(2)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムからなるコート層としたもの、
(3)シリコンゴムからなる弾性層、シリコンゴムとフッ素ゴムからなるコート層としたもの
等が挙げられる。そして、単層タイプにおけるゴム層、また、多層タイプにおける弾性層は、JISA硬度で30度以下、好ましくは15度以下のゴム硬度を有するものである。
【0103】
また、バックアップローラ2は、単層タイプ、多層タイプのいずれでもよい。単層タイプにあっては15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚のシリコンゴム層、またはフッ素ゴム層を積層したものである。また、多層タイプにあっては15〜50mm径の芯金の周面に0.1〜20mm、好ましくは0.5〜3mm厚の弾性層、0.05〜2mm、好ましくは0.1〜1mm厚のコート層を順次積層したもので、弾性層とコート層の組み合わせとしては、例えば、
(1)シリコンスポンジからなる弾性層、高離型性シリコンからなるコート層を順次積層したもの、
(2)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムからなるコート層を順次積層したもの、
(3)シリコンゴムからなる弾性層、フッ素ゴムラテックス、フッ素樹脂コートからなるコート層を順次積層したもの、
(4)シリコンスポンジゴムからなる弾性層、フッ素樹脂(PFAチューブ)被覆層を順次積層したもの
等が挙げられる。そして、単層タイプにおけるゴム層、また、多層タイプにおける弾性層は、JISA硬度で30度以下、好ましくは15度以下のゴム硬度を有するものである。
【0104】
定着ローラ1とバックアップローラ2との加圧力(線圧)は、0.2〜2kgf/cm、好ましくは0.3〜1kgf/cmであり、ニップ幅は1〜20mm、好ましくは4〜10mmである。また、速度は適宜設定されるが、ニップ通過時間が10〜150msec、好ましくは30〜100msecとなるように設定される。なお、定着ローラ、またはバックアップローラの少なくとも一方がベルトであるベルト定着器としてもよい。
【0105】
上述したように、本発明のトナーは、加熱体との接触に際しているにも係わらず、その弾性や粘性の増加により加熱体に付着(オフセット)することなく記録媒体に定着され、高温における耐オフセット性に優れるので、定着ローラ表面にはシリコンオイル等の離型剤塗布を不要とすることができる。
【0106】
以下、本発明のトナーの実施例および比較例について説明する。なお、以下の実施例および比較例の各物性値の測定および評価は前述の方法で行った。
(実施例1)
実施例1のトナーは、顔料を分散させたポリオール成分とイソシアネート成分とを重合して顔料分散ウレタン樹脂を作製し、更に、これを粉砕、分級することにより製造した。具体的には、ポリオール(PO1)としてのポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}と、顔料としてのCROMOPHTAL YELLOW 8GN(チバスペシャリティケミカルズ社製)とを、混合比がポリオール(PO1)/顔料=64/10(重量比)となるように配合し、これらを混合装置(プラネタリ式攪拌ミキサー;KENMIXmajor社製ケンミックスアイコープロKM23)により混合し、顔料混合液を調製した。
【0107】
次に、この顔料混合液をさらに分散装置(ビーズミル;ドライスヴェルケ社製Advatis V15)により、分散条件がビーズ径0.3mmφ、循環運転(流量20Kg/h)、負荷動力3.5kW一定、単位積算投入動力8kWh/kg)として分散処理し、ポリオール中に顔料を分散させた顔料分散液を調製した。このようにして調製した顔料分散液における顔料粒子の平均粒子径(50%径)は、日機装(株)製「マイクロトラックUPA150 model No.9340」により測定したところ、0.16μmであった。
【0108】
次いで、顔料分散液を前述のポリオール(PO1)であるポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}で適宜希釈し、後述するポリオール成分とポリイソシアネート成分との重合により得られるウレタン樹脂100重量部に対して顔料5重量部となるように顔料濃度を調整した。
【0109】
このように顔料濃度が調整された顔料分散液を、温度を90℃、かつ、到達真空度が5mmHgに設定した恒温槽中にて3時間脱気乾燥を行った。その後速やかに、脱気乾燥した顔料分散液に、別のポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を120℃にて加温溶解させ、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=90/10(モル比)となるようにして、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0110】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.1{イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数;これを重量比に換算すると、イソシアネート成分35.4重量部に対してポリオール(PO3)64.6重量部}となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの0.02重量部を添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、これを大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、顔料分散ポリウレタン樹脂(C)を得た。
得られた顔料分散ポリウレタン樹脂(C)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)が3.82×104 であり、また、数平均分子量(Mn)が1.26×104 、Mw/Mn=3.0であり、更に、Tgが76℃、Tmが136℃であった。
【0111】
この顔料分散ポリウレタン樹脂をジェットミルで粉砕し、さらに気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が8.5μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて攪拌混合し、黄色トナーを得た。
【0112】
得られたトナーについて、110℃から180℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、110℃から130℃の温度域においてはオフセットが発生したが、140℃以上の温度域においてはオフセットのない画像が得られた。また、トナーのTmを越えた150℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例1のトナーは、140℃以上の温度域が非オフセット域であり、また、150℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0113】
また、実施例1のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の方法で温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表1および図4に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
そして、前述の非オフセット域および定着強度良好域の評価結果に基づき、定着設定温度を160℃に設定した。このトナーの定着設定温度(160℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表1および図4に示すように1.18×106dyn/cm2であり、また、定着設定温度(160℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表1および図4に示すように3.07×105dyn/cm2であった。したがって、実施例1のトナーの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比は、G(t=0.01)/G(t=0.1)=3.84である。
【0116】
実施例1のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、良好な透明性を示し、濁りのない画像を得ることができた。
【0117】
(実施例2)
実施例2のトナーは、顔料として、IRGALITE BLUE 8700(チバスペシャリティケミカルズ社製)を使用した以外は、前述の実施例1と同様に製造し、シアン色トナーを得た。
この実施例2の顔料分散ポリウレタン樹脂(C)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)が2.52×104 であり、また、平均分子量(Mn)が0.93×104 であり、更に、Mw/Mn=2.7であり、更に、Tgが76℃、Tmが126℃であった。
【0118】
このシアン色トナーについて、110℃から180℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、110℃および180℃の温度においてはオフセットが発生したが、120℃〜170℃の温度域においてはオフセットのない画像が得られた。また、トナーのTmを越えた140℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例2のトナーは、120℃〜170℃の温度域が非オフセット域であり、また、140℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0119】
また、実施例2のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の実施例1と同様に温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表2および図5に示す。
【0120】
【表2】
【0121】
そして、前述の非オフセット域および定着強度良好域の評価結果に基づき、定着設定温度を160℃に設定した。このトナーの定着設定温度(160℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表2および図5に示すように3.14×105dyn/cm2であり、また、定着設定温度(160℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表2および図5に示すように3380.95dyn/cm2であった。したがって、緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比、G(t=0.01)/G(t=0.1)=92.9であった。
【0122】
実施例2のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、良好な透明性を示し、濁りのない画像を得ることができた。
【0123】
(実施例3)
実施例3のトナーは、ポリオール成分とイソシアネート成分とを重合してウレタン樹脂を作製し、更に、このウレタン樹脂と顔料とを混合し、ウレタン樹脂を加熱溶融させた状態で混練して顔料を分散させ、この顔料分散ウレタン樹脂を粉砕、分級することにより製造した。以下に、実施例3のトナーを具体的に説明する。まず、実施例3のトナーに用いた3つのポリウレタン樹脂(Q07),(Q08),(Q09)の作製について説明する。
【0124】
[ポリウレタン樹脂(Q07)の作製]
ポリオール(PO1)としてポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}とポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=70/30(モル比)となるように配合して、これを120℃にて加温溶解させ、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0125】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.14(イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数)となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの20ppmを添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、ポリウレタン樹脂(Q07)を得た。
得られたポリウレタン樹脂(Q07)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)が1.95×104 であり、また、数平均分子量(Mn)が0.72×104 であり、更に、Mw/Mn=2.7であり、更に、Tgが81℃、Tmが135℃であった。
【0126】
[ポリウレタン樹脂(Q08)の作製]
前述のポリウレタン樹脂(Q07)と同様に、ポリオール(PO1)として前述のポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルと、ポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=70/30(モル比)となるように配合し、これを120℃にて加温溶解させ、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0127】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.41(イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数)となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの20ppmを添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、ポリウレタン樹脂(Q08)を得た。
得られたポリウレタン樹脂(Q08)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)は0.75×104 、数平均分子量(Mn)は0.37×104 、Mw/Mn=2.0であり、また、Tgは62℃、Tmは102℃であった。
【0128】
[ポリウレタン樹脂(Q09)の作製]
前述のポリウレタン樹脂(Q07)と同様に、ポリオール(PO1)として前述のポリオキシエチレンビスフェノールAエーテルと、ポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=70/30(モル比)となるようにして配合し、これを120℃にて加温溶解させ、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0129】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.05(イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数)となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの20ppmを添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、ポリウレタン樹脂(Q09)を得た。
得られたポリウレタン樹脂(Q09)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)は5.44×104 、数平均分子量(Mn)は1.61×104 、Mw/Mn=3.4であり、また、Tgは90℃、Tmは171℃であった。
【0130】
次に、実施例3のトナーの作製について説明する。
[実施例3のトナーの作製]
前述のポリウレタン樹脂(Q07)70重量部、同じくポリウレタン樹脂(Q08)20重量部、同じくポリウレタン樹脂(Q09)10重量部、顔料として大日精化工業社製 ECR−101を5重量部、離型剤として日本ワックス社製 精製カルナバWAX type#1 を1重量部、帯電制御剤としてクラリアント社製 Copy Charge NCA を1重量部、および顔料分散剤として関東化学社製 ステアリン酸マグネシウムを1重量部を混合し、更にこれを三井鉱山社製 連続式2本ロール ニーデックス100により混練して、顔料、離型剤、および帯電制御剤を分散させた。
【0131】
この混練物を、フェザーミルにて粗粉砕し、更に気流衝突型粉砕機にて粉砕、気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が7.5μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合撹拌して、マゼンタ色トナーを得た。このとき、このマゼンタ色トナー中の離型剤の配合量は、前述の離型剤の混合量から明らかなように0.9重量%であった。そして、この離型剤の分散状態を透過型電子顕微鏡でトナー断面を観察したところ、離型剤は均一に分散しており、離型剤の分散粒子の円相当径で、最大径890nm、算術平均径で550nmであった。また、このマゼンタ色トナーのTgは75.7℃、Tmは125.7℃であった。
【0132】
得られたマゼンタ色トナーについて、110℃から200℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、120℃〜180℃の温度域においてオフセットのない画像が得られた。また、トナーのTmを越えた140℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例3のトナーは、120℃〜180℃の温度域が非オフセット域であり、また、140℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0133】
また、実施例3のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の方法で温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表3および図6に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
そして、前述の非オフセット域および定着強度良好域の評価結果に基づき、定着設定温度を150℃に設定した。このトナーの定着設定温度(150℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表3および図6に示すように8.85×105dyn/cm2であり、また、定着設定温度(150℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表3および図6に示すように、18400.6dyn/cm2であった。したがって、実施例3のトナーの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比は、G(t=0.01)/G(t=0.1)=48.1である。
【0136】
実施例3のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、良好な透明性を示し、濁りのない画像を得ることができた。
【0137】
(実施例4)
実施例4のトナーは、ポリエステル樹脂に顔料を分散させたマスタバッチを用いて製造した。以下に、実施例4のトナーを具体的に説明する。まず、実施例4のトナーに用いたマスタバッチの作製について説明する。
【0138】
[マスタバッチの作製]
三洋化成工業株式会社製 架橋ポリエステル樹脂 ES−803を70重量部に、顔料として大日精化工業社製 ECR−101を30重量部を混合し、これを三井鉱山社製 連続式2本ロール ニーデックス100により混練して、顔料を分散させたマスタバッチを作製した。
【0139】
次に、実施例4のトナーの作製について説明する。
[実施例4のトナーの作製]
このマスタバッチをフェザーミルにて粗粉砕した後、三洋化成工業株式会社製架橋ポリエステル樹脂 ES−803を124重量部、三洋化成工業株式会社製線状ポリエステル樹脂 ES−8022を273重量部、前述のマスタバッチを83重量部、離型剤として日本ワックス社製 精製カルナバWAX type#1 を15重量部、帯電制御剤としてオリエント化学社製 Bontron E−81を5重量部を混合し、これを東芝機械社製 2軸押し出し機により希釈混練した。
更に、この希釈混練物をフェザーミルにて粗粉砕し、気流衝突型粉砕機にて粉砕、気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が8.1μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合撹拌して、マゼンタ色トナーを得た。このとき、このマゼンタ色トナー中の離型剤の配合量は3重量%であった。そして、この離型剤の分散状態を透過型電子顕微鏡でトナー断面を観察したところ、離型剤は均一に分散しており、離型剤の分散粒子の円相当径で、最大径1200nm、算術平均径で780nmであった。また、このマゼンタ色トナーのTgは59.7℃、Tmは111.5℃であった。
【0140】
得られたマゼンタ色トナーについて、110℃から200℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、130℃〜170℃の温度域においてオフセットのない画像が得られた。また、トナーのTmを越えた140℃以上の温度域において、定着強度が85%以上の定着画像が得られた。すなわち、この実施例4のトナーは、130℃〜170℃の温度域が非オフセット域であり、また、140℃以上の温度域が定着強度良好域である。
【0141】
また、実施例4のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の方法で温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表4および図7に示す。
【0142】
【表4】
【0143】
そして、前述の非オフセット域および定着強度良好域の評価結果に基づき、定着設定温度を150℃に設定した。このトナーの定着設定温度(150℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表4および図7に示すように2.86×105dyn/cm2であり、また、定着設定温度(150℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表4および図7に示すように、19799.6dyn/cm2であった。したがって、実施例4のトナーの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比は、G(t=0.01)/G(t=0.1)=14.4である。
【0144】
実施例4のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、良好な透明性を示し、濁りのない画像を得ることができた。
【0145】
(比較例1)
比較例1のトナーは、ポリオール成分とイソシアネート成分とを重合してウレタン樹脂を作製し、更に、このウレタン樹脂と顔料とを混合し、ウレタン樹脂を加熱溶融させた状態で混練して顔料を分散させ、この顔料分散ウレタン樹脂を粉砕、分級することにより製造した。以下に、比較例1のトナーを具体的に説明する。
【0146】
ポリオール(PO1)としてポリオキシエチレンビスフェノールAエーテル{日本油脂(株)製ユニオールDA−400:OH基価273KOHmg/g}とポリオール(PO2)としてジメチロールブタン酸を、ポリオール(PO1)とポリオール(PO2)との配合比{(PO1)/(PO2)}が(PO1)/(PO2)=90/10(モル比)となるように配合して、これを120℃にて加温溶解させ、ポリオール原料であるポリオール(PO3)を調製した。
【0147】
このポリオール(PO3)とイソシアネート成分であるジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネートとを、配合比がイソシアネート成分/(PO3)=1/1.16(イソシアネート基数/イソシアネートと反応可能な活性水素を持つ官能基数)となるように配合し、この配合物の100重量部に、触媒としてジオクチル錫ジラウレートの20ppmを添加して120℃の加温下で混合溶解し、速やかに200mm×300mmのトレーに流し込み、大気炉に投入し、120℃で1時間保持した後、さらに130℃で5時間保持して反応を完結させ、ポリウレタン樹脂(Q01)を得た。
得られたポリウレタン樹脂(Q01)のポリスチレン換算分子量は、重量平均分子量(Mw)は2.02×104 、数平均分子量(Mn)は0.79×104 、Mw/Mn=2.6であり、また、Tgは70℃、Tmは120℃であった。
【0148】
前述のポリウレタン樹脂(Q01)100重量部に、顔料として大日精化工業社製 ECR−101の5重量部を混合し、更にこれを三井鉱山社製 連続式2本ロール ニーデックス100により混練して、顔料を分散させた。
この混練物を、フェザーミルにて粗粉砕し、更に気流衝突型粉砕機にて粉砕、気流式分級機により分級し、分級後の体積平均粒径が8.1μmのトナー母粒子を作製した。このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合撹拌して、マゼンタ色トナーを得た。
得られたマゼンタ色トナーについて、120℃から200℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、測定温度域全域においてオフセットが発生した。
【0149】
また、比較例1のトナーの緩和弾性率Gの時間的変化を、前述の方法で温度140℃、160℃、180℃、および200℃をパラメータとして測定した。このとき、緩和弾性率Gの測定時の歪みは、0.7%に設定した。その測定結果を表5および図8に示す。
【0150】
【表5】
【0151】
そして、このトナーのTmを越えた温度域における、緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は、表5および図8に示すように測定温度140℃、160℃、180℃、および200℃において、それぞれ、2.79×105dyn/cm2、2.70×105dyn/cm2、1.39×105dyn/cm2、34812dyn/cm2であった。また、緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2は、表5および図8に示すように測定温度140℃、160℃、180℃、および200℃において、それぞれ、4200.64dyn/cm2、816.877dyn/cm2、642.541dyn/cm2、890.479dyn/cm2であった。したがって、比較例1のトナーの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)}は、それぞれ、66.4、331、216、39.1である。
【0152】
(比較例2)
比較例2のトナーは、樹脂微粒子分散液、着色剤粒子分散液、離型剤粒子分散液をそれぞれ調製し、これを所定量混合撹拌しながら、前述の各粒子の凝集体を形成した後、前述の樹脂微粒子のガラス転移点(Tg)以上の温度に加熱して融合させ、更に、分散液からその融合粒子を分散、乾燥させることにより製造した。以下に、比較例2のトナーを具体的に説明する。
【0153】
[樹脂微粒子分散液の調製]
スチレン 320重量部
n−ブチルアクリレート 80重量部
アクリル酸 6重量部
ドデカンチオール 20重量部
四臭化炭素 4重量部
これらの各成分を混合溶解し、この混合溶液を非イオン性界面活性剤ノニポール 400(花王社製)およびアニオン性界面活性剤ネオゲンSC(第一工業製薬社製)をイオン交換水に溶解した溶液中に添加し、分散、乳化させた後、過硫酸アンモニウムを溶解したイオン交換水溶液を投入した。次いで、系内を窒素で置換した後、撹拌しながら系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、アニオン性樹脂微粒子分散液を得た。
【0154】
[着色剤粒子被覆用極性樹脂微粒子の調製]
アクリル酸 6重量部
アクリル酸エチル 70重量部
スチレン 24重量部
これらの各成分を混合溶解し、この混合溶液を非イオン性界面活性剤ノニポール 400(花王社製)およびアニオン性界面活性剤ネオゲンSC(第一工業製薬社製)をイオン交換水に溶解した溶液中に添加し、分散、乳化させた後、過硫酸アンモニウムを溶解したイオン交換水を投入した。次いで、系内を窒素で置換した後、撹拌しながら系内が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続し、カチオン性樹脂微粒子分散液を得た。
【0155】
[着色剤粒子分散液の調製]
黄色顔料 Pigment Yellow 180(クラリアント社製) 50重量部
非イオン性界面活性剤ノニポール 400(花王社製) 5重量部
イオン交換水 200重量部
これらの各成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKE社製 ウルトラタラックス T50)により分散し、着色剤粒子分散液を得た。更に、これに前述のカチオン性樹脂粒子を滴下し、再度ホモジナイザーで処理し、付着させた。この着色剤粒子を乾燥させ、走査型顕微鏡(SEM)で観察したところ、着色剤の周囲に均一に極性樹脂微粒子が付着していることが観察された。
【0156】
[離型剤粒子分散液の調製]
パラフィンワックス HNP0190(融点85℃、日本精蝋社製) 50重量部
カチオン性界面活性剤サニゾール B50(花王社製) 5重量部
イオン交換水 200重量部
これらの各成分を混合溶解し、ホモジナイザー(IKE社製 ウルトラタラックス T50)により分散した後、圧力吐出型ホモジナイザーで分散処理し、離型剤粒子分散液を得た。
[比較例2のトナーの作製]
上記樹脂微粒子分散液 200重量部
上記着色剤粒子分散液 16.5重量部
上記離型剤粒子分散液 50重量部
ポリ塩化アルミニウム 1.23重量部
【0157】
これらの各成分を、ホモジナイザー(IKE社製 ウルトラタラックス T50)を用い、混合・分散した後、撹拌しながら加熱し、その後、ここに前述と同じ樹脂微粒子を15重量部追加した。次いで、水酸化ナトリウム水溶液を用いて系内のpHを調整した後、撹拌を継続しながら加熱し、反応終了後冷却し、濾過、イオン交換水で十分に洗浄した後、吸引濾過により分散粒子を分離し、更にこれに対して真空乾燥を行い、トナー母粒子を得た、
【0158】
更に、このトナー母粒子100重量部に対して、疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RX200、粒径12nm)を0.5重量部添加し、ヘンシェルミキサーにて混合撹拌して、体積平均粒子径8.1μmの黄色トナーを得た。このトナーを透過型電子顕微鏡で観察したトナーの断面像によると、トナー粒子中の離型剤粒子の算術平均中心粒径は270nmであった。またこのとき、トナー中の離型剤の配合量は4.5重量%であった。
【0159】
得られた黄色トナーについて、120℃から200℃の温度域で、30%ハーフトーン画像による定着性を評価したところ、140℃〜160℃の温度域においてオフセットのない画像が得られた。しかし、定着強度が85%以上の温度域はなかった。つまり、この黄色トナーの非オフセット域の温度域は140℃〜160℃である。
【0160】
そして、前述の非オフセット域の評価結果に基づき、定着設定温度を150℃に設定した。このトナーの定着設定温度(150℃)における緩和時間0.01secの緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2は5.6×105dyn/cm2であり、また、この緩和弾性率G(t=0.01)dyn/cm2と定着設定温度(150℃)における緩和時間0.1secの緩和弾性率G(t=0.1)dyn/cm2との比は、G(t=0.01)/G(t=0.1)=26であった。
【0161】
比較例2のトナーを用いて、富士ゼロックス社製Acolor用OHPシートにベタ画像を形成し、前述の定着設定温度にてこのベタ画像を定着し、画像の透明性を評価したところ、透明性が低く、透過画像は黒味を帯び、色の判別が困難であった。
【図面の簡単な説明】
【図1】定着開始時での粘弾性特性の緩和弾性率の大小によるトナーの挙動を説明する図である。
【図2】トナーの粘弾性測定装置を模式的に示す図である。
【図3】本発明のトナーが適用される定着装置を模式的に示す図である。
【図4】実施例1のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【図5】実施例2のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【図6】実施例3のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【図7】実施例4のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【図8】比較例1のトナーにおける粘弾性特性の緩和弾性率Gの変化を示す図である。
【符号の説明】
1…定着ローラ、2…バックアップローラ、3…分離爪、4…紙等の記録媒体
Claims (3)
- 結着樹脂および着色剤を少なくとも含有するトナーであって、トナーの軟化点を超えた定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)が、2.8×105 dyn/cm2(=2.8×104 Pa )以上であり、かつ、離型剤配合量が4重量%以下であることを特徴とするトナー。
- 前記定着設定温度における緩和時間0.01秒の緩和弾性率G(t=0.01)と前記定着設定温度における緩和時間0.1秒の緩和弾性率G(t=0.1)との比{G(t=0.01)/G(t=0.1)}が3以上であり、かつ93以下であることを特徴とする請求項1記載のトナー。
- イソシアネート基を2個以上含有する化合物と、活性水素をもつ官能基を2個以上含有する化合物(活性水素含有成分)との重合によって得られる、ウレタン結合あるいはウレア結合を主鎖に有するポリマーを結着樹脂として含有することを特徴とする請求項1または2記載のトナー。
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Cited By (1)
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KR100730332B1 (ko) | 2004-11-18 | 2007-06-19 | 후지제롯쿠스 가부시끼가이샤 | 정전하상 현상용 토너 및 그 제조 방법 |
-
2002
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