JP2004163383A - 放射線像変換パネル - Google Patents
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Abstract
【課題】放射線像変換パネルにおいて、輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させる。
【解決手段】多数の微細な凸部11が形成された凹凸表面を有する基板10上に、輝尽発光光を反射する反射層20を、凸部11の壁面12を含む上記凹凸表面の略全面に形成する。上記反射層20上に輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層30を気相法により形成し、この輝尽性蛍光体層30上に保護層40を積層して放射線像変換パネルを作成する。
【選択図】 図1
【解決手段】多数の微細な凸部11が形成された凹凸表面を有する基板10上に、輝尽発光光を反射する反射層20を、凸部11の壁面12を含む上記凹凸表面の略全面に形成する。上記反射層20上に輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層30を気相法により形成し、この輝尽性蛍光体層30上に保護層40を積層して放射線像変換パネルを作成する。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線像変換パネルに関し、詳しくは、凹凸表面を有する基板上に輝尽性蛍光体の柱状構造が形成された輝尽性蛍光体層を備えている放射線像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の放射線写真法に代わる方法として、たとえば特開昭55−12145号に記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線像変換方法が知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シート)を利用するもので、被写体を透過した、あるいは被検体から発せられた放射線をパネルの輝尽性蛍光体に吸収させ、そののちに輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)として放出させ、この蛍光を光電的に読み取って電気信号を得、次いで得られた電気信号に基づいて被写体あるいは被検体の放射線画像を可視像として再生するものである。読取りを終えたパネルは、残存する画像の消去が行なわれた後、次の撮影のために備えられる。すなわち、放射線像変換パネルは繰り返し使用される。
【0003】
この放射線像変換方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せを用いる放射線写真法による場合に比較して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点がある。さらに、従来の放射線写真法では一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線像変換方法では放射線像変換パネルを繰返し使用するので資源保護、経済効率の面からも有利である。このように放射線像変換方法は非常に有利な画像形成方法であるが、この方法に用いられる放射線像変換パネルも従来の放射線写真法に用いられる増感紙と同様に、高感度であってかつ良好な画質(鮮鋭度、粒状性など)を与えるものであることが望まれる。
【0004】
一般に、輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルは輝尽性蛍光体と結合剤(結着剤)とを含む分散液を、基板あるいは保護層上に塗布・乾燥して作成されるため輝尽性蛍光体の充填密度が低く、放射線感度を充分高くするには輝尽性蛍光体層の層厚を厚くする必要がある。また、放射線像変換方法における画像の粒状性は、放射線量子数の場所的ゆらぎ(量子モトル)あるいは放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層の構造的乱れ(構造モトル)等によって決定されるので、輝尽性蛍光体層の層厚が薄いと、輝尽性蛍光体層に吸収される放射線量子数が減少して量子モトルが増加したり、構造的乱れが顕在化して構造モトルが増加したりするなど画質の低下を生ずる。このため、放射線感度および画像の粒状性を向上させるためには輝尽性蛍光体層の層厚は厚い必要がある。
【0005】
一方、これに対し放射線像変換方法における画像の鮮鋭性は、放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層の層厚が薄いほど高い傾向にあり、鮮鋭性の向上のためには輝尽性蛍光体層の薄層化が必要である。
【0006】
すなわち、従来の輝尽性蛍光体と結合剤から形成される輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルは、放射線に対する感度および画像の粒状性と、画像の鮮鋭性とが輝尽性蛍光体層の層厚に対してまったく逆の傾向を示すので、放射線像変換パネルは放射線に対する感度および粒状性と鮮鋭性間との間において、ある程度の相互犠牲によって作成されているのが実状である。このため、従来の放射線像変換パネルでは、輝尽性蛍光体粒子による励起光の散乱、拡散が大きいため、輝尽性蛍光体層厚の増大と共に急激に画像の鮮鋭性が低下し、感度および鮮鋭度が共に良好な放射線像変換パネルを得ることは容易なことではない。
【0007】
このような問題を解決するために結合剤を含有しない輝尽性蛍光体層からなる放射線像変換パネルが提案されている。これによれば、輝尽性蛍光体層が結合剤を含有しないので、輝尽性蛍光体の充填率が格段に向上するとともに、輝尽性蛍光体層中での励起光および輝尽性発光光の指向性を従来に比較して向上させることができるので、放射線像変換パネルに対する感度および画像の粒状性を向上させながら、同時に画像の鮮鋭性も期待することができる。
【0008】
上述のような結合剤を含有しない輝尽性蛍光体層からなる放射線像変換パネルにおいても、感度、粒状性を維持しながら、さらに優れた鮮鋭度の画質が得られる放射線像変換パネルが求められている。
【0009】
この放射線像変換パネルには、基板と輝尽性蛍光体層との間に反射層を設けて輝尽性蛍光体層から発生し基板側に向かう輝尽発光光をこの反射層で反射させ輝尽性蛍光体層から輝尽発光光を効率良く射出させるもの(例えば、特許文献1参照)、あるいは、表面に多数の微細な凸部を有する基板上に輝尽性蛍光体の柱状構造を気相堆積させて基板面に対して垂直に柱状構造が形成された輝尽性蛍光体層を作成し、鮮鋭性の高い放射線像が得られるようにしたもの(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0010】
【特許文献1】
特許第2514321号公報
【0011】
【特許文献2】
特許第2080977号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記基板と輝尽性蛍光体層との間に反射層を設けて輝尽性蛍光体層から輝尽発光光を効率良く射出させる反射層形成手法と、多数の微細な凸部を有する基板上に輝尽性蛍光体の柱状構造を気相堆積させて鮮鋭性の高い放射線像を得る柱状構造形成手法とを組み合わせて、すなわち、凹凸表面を有する基板の表面に反射層を積層するとともに、この反射層上に輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層を形成し、画質の良い放射線像が得られる放射線像変換パネルを作成したいという要請がある。
【0013】
しかしながら、例えば、真空蒸着法により、0.001Paの環境中で凹凸表面を有する基板上に反射層を形成すると、基板の厚さ方向に延びる凹凸表面の壁面に蒸着材料が回り込まずこの壁面に所望の特性を有する反射層が形成されないため、輝尽性蛍光体層で発生した輝尽発光光が上記壁面を透過して所定の検出光路から外れて失われてしまい、輝尽性蛍光体層から輝尽発光光が効率良く射出されなかったり、あるいは、輝尽性蛍光体層に照射された励起光が上記壁面を通って基板中に入射した後、この励起光が壁面を通って再び輝尽性蛍光体層に入射して所定の位置とは異なる位置から輝尽発光光を発生させ、この輝尽発光光がノイズとして検出されたりする。そのため、上記反射層形成手法と柱状構造形成手法とを組み合わせて放射線像変換パネルを作成しても放射線像の画質を向上させることが難しいという問題がある。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、凹凸表面を有する基板上に形成された輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層から発生する輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させることができる放射線像変換パネルを提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の放射線像変換パネルは、凹凸表面を有する基板と、前記凹凸表面の基板の厚さ方向に延びる壁面を含む前記凹凸表面の略全面に形成された輝尽発光光を反射する反射層と、この反射層上に形成された輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層とを備えていることを特徴とするものである。
【0016】
前記反射層は、輝尽発光光に対する反射率が50%以上であり、かつ、透過率が5%以下であることが好ましく、さらに、輝尽発光光に対する反射率が60%以上であり、かつ、透過率が1%以下であることがより好ましい。また、前記反射層は、輝尽性蛍光体層へ照射される励起光に対する透過率が5%以下であることが好ましく、さらに、前記透過率が1%以下であることがより好ましい。ここで、励起光が上記反射層で反射されても、この反射された励起光が輝尽性蛍光体層中を伝播する範囲は小さいので放射線像の取得の妨げになることはない。
【0017】
なお、輝尽発光光に対する反射率および透過率は輝尽発光光のピーク波長における値であり、励起光に対する透過率は励起光のピーク波長における値である。
【0018】
前記反射層は、金属膜と透明薄膜とが積層されたものとすることができる。
【0019】
前記反射層は、0.01Pa以上、100Pa以下の環境中で気相法により形成されることが好ましく、0.1Pa以上、10Pa以下の環境中で気相法により形成されることがより好ましい。気相法としてはスパッタ法を用いることが好ましい。
【0020】
基板の凹凸表面は多数の微細な凸部からなるものが好ましい。その場合、基板上に形成されている多数の凸部は、1個の凸部に対して最近接の凸部が4個または6個(最密)規則正しく並んでいることが好ましいが、平均的にむらなく並んでいればランダムに配列されていても差し支えない。また、凸部の形状は、凸部の上部に基板と平行な面を有していれば特に限定されるものではなく、円柱型、多角柱型、あるいは円錐台や多角錘台など、様々な形状を選択することができる。
【0021】
また、凸部の最大径、高さおよび凸部同士の間隔は、凸部のそれぞれを起点に気相堆積法によって形成された層厚方向に伸びた輝尽性蛍光体の柱状構造が1つずつ形成され、輝尽性蛍光体層の表面が凸部から伸びた輝尽性蛍光体の柱状構造のみで形成されるように調整されることが好ましい。ここで、最大径とは、凸部の形状が円柱型の場合にはその最大径を、凸部の形状が多角柱型の場合にはその対角線を、円錐台や多角錘台の場合は、基板と平行な面の最大径を意味する。具体的には、凸部の最大径、高さおよび凸部同士の間隔は、いずれも0.2〜40μmの範囲であることが好ましく、0.5〜10μmの範囲であることがより好ましい。凸部の形状や、凸部の最大径、高さなどのサイズは均一であることが好ましいが、ばらつきがあっても差し支えない。
【0022】
【発明の効果】
本発明の放射線像変換パネルによれば、凹凸表面を有する基板と、上記凹凸表面の基板の厚さ方向に延びる壁面を含む上記凹凸表面の略全面に形成された輝尽発光光を反射する反射層と、この反射層上に形成された輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層とを備えているので、上記壁面においても輝尽発光光を反射させることができ、輝尽性蛍光体層から射出される輝尽発光光の光量を増大させることができる。さらに、この反射層が励起光の透過を制限するものであれば、上記壁面を通って基板中へ入射する励起光の光量が低減され所定の位置とは異なる位置で励起されたノイズとなる輝尽発光光の発生が抑制されるので、輝尽性蛍光体層からS/Nの高い輝尽発光光を射出させることができる。上記のことにより、上記輝尽性蛍光体層から発生する輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させることができる。
【0023】
また、凹凸表面上に形成された反射層を、輝尽発光光に対する反射率が50%以上、かつ、透過率が5%以下となるようにすれば、上記壁面において輝尽発光光を反射させることができ、輝尽性蛍光体層から射出される輝尽発光光の光量を増大させることができるとともに、上記壁面を通って基板中へ入射する輝尽発光光の光量を制限することができ、所定の位置とは異なる位置からのノイズとなる輝尽発光光の射出を抑制することができる。これにより、輝尽性蛍光体層からS/Nの高い輝尽発光光を射出させることができ、上記輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させることができる。
【0024】
また、凹凸表面上に形成された反射層を、励起光に対する透過率が5%以下となるようにすれば、壁面において輝尽発光光を反射させることができ、輝尽性蛍光体層から射出される輝尽発光光の光量を増大させることができるとともに、上記壁面を通って基板中へ入射する励起光の光量を制限することができ、この励起光の励起による所定の位置とは異なる位置からのノイズとなる輝尽発光光の発生を抑制することができる。これにより、輝尽性蛍光体層からS/Nの高い輝尽発光光を射出させることができ、上記輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させることができる。
【0025】
さらに、反射層を0.01Pa以上、100Pa以下の環境中、より好ましくは0.1Pa以上、10Pa以下の環境中で気相法により形成されたものとすれば、反射層を形成するための薄膜材料をより容易に壁面に回り込ませることができ、壁面に入射する輝尽発光光を反射させて輝尽性蛍光体から射出される輝尽発光光の光量を増大させる効果を確実に得ることができるとともに、壁面に入射する励起光の透過を防止する効果をも確実に得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態による放射線像変換パネルの概略構成示す図、図2は放射線像変換パネルに記録された放射線像を検出する様子を示す図、図3は壁面に反射層が形成されていない放射線像変換パネルから放射線像を検出する様子を示す図である。
【0027】
本発明の実施の形態による放射線像変換パネル100は、多数の微細な凸部11が形成された凹凸表面を有するガラス等の透明材料からなる基板10と、凸部11の基板10の厚さ方向に延びる壁面12を含む上記凹凸表面の略全面に形成された輝尽発光光を反射する反射層20と、凸部11上に積層された反射層20の上に形成された輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層30とを備えている。なお、凹凸表面の略全面に形成された反射層とは、凹凸表面の全面に欠陥なく形成された反射層の場合に限らず、例えば、放射線像変換パネルの製作上の都合等により凹凸表面の一部に反射層が形成されていない領域が存在する反射層をも意味するものである。
【0028】
反射層20は、金属膜と透明薄膜とが積層されたものであり、輝尽発光光のピーク波長に対して反射率が50%以上、90%以下、かつ、透過率が5%以下であり、輝尽性蛍光体層30へ照射される励起光に対する透過率が5%以下である。なお、反射層20は、0.01Pa以上、100Pa以下の環境中で気相法により形成されたものである。
【0029】
上記基板10(支持体ともいう)としては、各種高分子材料、ガラス、金属等を用いることができ、具体的にはセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス、耐熱ガラス(パイレックス(R)等)等のガラス板、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート、クロムシート等の金属シートあるいは金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。支持体の膜厚は選択する支持体の材質等によって異なるが、ガラスあるいは金属基板の場合には、100μm〜5mmの範囲であることが好ましく、200μm〜2mmの範囲であることがより好ましい。
【0030】
このような支持体上の凸型ドット形状は、公知の方法によって設けることができ、例えば、支持体そのものをエンボッシュやエッチングにより凸型ドット形状としてもよいし、光、熱、薬品などで支持体に固着硬化する樹脂を素材とするインクを用いて、グラビア法あるいはシルク法などによって印刷した後、乾燥、硬化処理を行う印刷法あるいは写真蝕刻法などによって形成することができる。写真蝕刻法の場合であれば、まず、光に対し不透明部分の島状のパターンを有するマスクをナイロン系感光性樹脂の表面に密着させ、感光波長域250nm〜400nmの波長を含む紫外線で照射し、露光後にこの感光性樹脂を現像する。この現像によって感光性樹脂の非露出部が流され、露光部が凸部として残ることとなる。なお、マスクを感光性樹脂表面に密着させずに、レンズ光学系を用いて露光する方式を用いてもよい。
【0031】
輝尽性蛍光体層30に用いられる輝尽性蛍光体としては、例えば、
米国特許第3,859,527号明細書に記載されているSrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、ThO2:Er、およびLa2O2S:Eu,Sm、
【0032】
特開昭55-12142号に記載されている ZnS:Cu,Pb、BaO・xAl2O3:Eu(ただし、0.8≦x≦10)、および、MIIO・xSiO2 :A(ただし、MIIはMg,Ca,Sr,Zn,Cd、またはBaであり、AはCe,Tb,Eu,Tm,Pb,Tl,BiまたはMnであり、xは0.5≦x≦2.5である)、
【0033】
特開昭55-12144号に記載されている LnOX:xA(ただし、LnはLa,Y,Gd、およびLuのうちの少なくとも一種、XはClおよびBrのうちの少なくとも一種、AはCeおよびTbのうちの少なくとも一種、そして、xは、0<x<0.1である)、
【0034】
特開昭55-12145号に記載されている(Ba1-X,M2+ X)FX:yA(ただし、M2+はMg,Ca,Sr,Zn、およびCdのうちの少なくとも一種、XはCl,BrおよびIのうちの少なくとも一種、AはEu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,YbおよびErのうちの少なくとも一種、そしてxは0≦x≦0.6、yは0≦y≦0.2である)、
【0035】
特開昭57-148285号に記載されている下記いづれかの、一般式xM3(PO4)2・NX2:yAまたは一般式 M3(PO4)2・yA (式中、M及びNはそれぞれMg,Ca,Sr,Ba,Zn及びCdのうち少なくとも1種、XはF,Cl,Br及びIのうち少なくとも1種、AはEu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Sb,Tl,Mn及びSnのうち少なくとも1種を表わす。また、x及びyは0<x≦6、0≦y≦1なる条件を満たす数である。)で表わされる蛍光体、下記いづれかの一般式nReX3・mAX′2:xEu、一般式nReX3・mAX′2:xEu,ySm (式中、ReはLa,Gd,Y,Luのうち少なくとも1種、Aはアルカリ土類金属、Ba,Sr,Caのうち少なくとも1種、X及びX′はF、Cl,Brのうち少なくとも1種を表わす。また、x及びyは、1×10-4<x<3×10-1、1×10-4<y<1×10-1なる条件を満たす数であり、n/mは1×10-3<n/m<7×10-1なる条件を満たす。)で表わされる蛍光体、及び一般式 MIX・aMIIX′2・bMIIIX″3:cA (但し、MIはLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、MIIはBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu及びNiから選ばれる少なくとも1種の二価金属である。MIIIはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInから選ばれる少なくとも1種の三価金属である。X,X′及びX″はF,Cl,Br及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲンである。AはEu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu,Bi及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属である。またaは、0≦a<0.5の範囲の数値であり、bは0≦b<0.5の範囲の数値であり、cは0<c≦0.2の範囲の数値である。)で表わされるアルカリハライド蛍光体、
【0036】
特開昭56-116777号に記載されている(Ba1-X,MII X)F2・aBaX2:yEu,zA(ただし、MIIはベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,亜鉛およびカドミウムのうちの少なくとも一種、Xは塩素,臭素およびヨウ素のうちの少なくとも一種、Aはジルコニウムおよびスカンジウムのうちの少なくとも一種であり、a、x、y、およびzはそれぞれ 0.5≦a≦1.25、0≦x≦1、10-6≦y≦2×10-1、および0<z≦10-2である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0037】
特開昭58-69281号に記載されている MIIIOX:xCe(ただし、MIIIはPr,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、XはClおよびBrのうちのいずれか一方あるいはその両方であり、xは0<x<0.1である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0038】
特開昭58-206678号に記載されているBa1-XMX/2LX/2FX:yEu2+(ただし、MはLi,Na,K,RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表わし;Lは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga,InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属を表わし;X は、Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表わし;そして、xは10-2≦x≦0.5、yは0<y≦0.1である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0039】
特開昭59-75200号に記載されている MIIFX・aMIX′・bM′IIX″2・cMIIIX3・xA:yEu2+(ただし、MIIはBa,SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;MI はLi,Na,K,RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;M′IIはBeおよびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属であり;MIII はAl,Ga,InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;Aは金属酸化物であり;XはCl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;X′,X″および Xは、F,Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そして、aは0≦a≦2、bは0≦b≦10-2、cは0≦c≦10-2、かつa+b+c≧10-6 であり;x は0<x≦0.5、yは0<y≦0.2 である)の組成式で表わされる蛍光体、
などをあげることができる。
【0040】
特にアルカリハライド蛍光体は、蒸着・スパッタリング等の方法で輝尽性蛍光体層を形成させやすく好ましい。但し、本発明の放射線像変換パネルに用いられる輝尽性蛍光体は、前述の蛍光体に限られるものではなく、放射線を照射した後、励起光を照射した場合に輝尽発光を示す蛍光体であればいかなる蛍光体であってもよい。なお、輝尽性蛍光体層は、上記の輝尽性蛍光体を単独で用いても、また適宜組み合わせて用いてもよい。
【0041】
輝尽性蛍光体層30を形成するための輝尽性蛍光体の気相堆積法としては、蒸着法、抵抗加熱法、スパッタ法、化学蒸着(CVD)法などの公知の方法を用いることができる。ここでは、電子蒸着法により形成する場合を例にとって説明する。
【0042】
電子蒸着法は、抵抗加熱法などと比較して、蒸発源を局所的に加熱して瞬時に蒸発させるので、蒸発速度を制御しやすく、また蒸発源として仕込んだ蛍光体もしくはその原料の組成と形成された蛍光体層中の蛍光体の組成との不一致を小さくすることができるという利点がある。ただし、ガス導入により真空度の低い状態(圧力として約0.1Pa以上)では使用不可のため、このような場合は他の方法(抵抗加熱法等)を用いる。
【0043】
多元蒸着(共蒸着)により蛍光体層を形成する場合には、まず蒸発源として、上記輝尽性蛍光体の母体(MIX)成分を含むものと付活剤(A)成分を含むものとからなる少なくとも2個の蒸発源を用意する。多元蒸着は、蛍光体の母体成分と付活剤成分の蒸気圧が大きく異なる場合に、その蒸着速度を各々制御することができるので好ましい。各蒸発源は、所望とする輝尽性蛍光体の組成に応じて、蛍光体の母体成分および付活剤成分それぞれのみから構成されていてもよいし、添加物成分などとの混合物であってもよい。また、蒸発源は2個に限定されるものではなく、例えば別に添加物成分などからなる蒸発源を加えて3個以上としてもよい。
【0044】
蛍光体の母体成分は、母体を構成する化合物それ自体であってもよいし、あるいは反応して母体化合物となりうる2以上の原料の混合物であってもよい。また、付活剤成分は、一般には付活剤元素を含む化合物であり、例えば付活剤元素のハロゲン化物が用いられる。
【0045】
付活剤AがEuである場合には、付活剤成分のEu化合物におけるEu2+化合物のモル比が70%以上であることが好ましい。一般に、Eu化合物にはEu2+とEu3+ が混合して含まれているが、所望とする輝尽発光(あるいは瞬時発光であっても)はEu2+を付活剤とする蛍光体から発せられるからである。Eu化合物はEuBrxであることが好ましく、その場合に、xは2.0≦x≦2.3の範囲内の数値であることが好ましい。xは2.0であることが望ましいが、2.0に近づけようとすると酸素が混入しやすくなる。よって、実際には、xは2.2付近でBrの比率が比較的高い状態が安定している。
【0046】
蒸発源は、突沸防止などの点からその含水量が0.5重量%以下であることが好ましい。蒸発源の脱水は、上記の各蛍光体成分を減圧下で100〜300℃の温度範囲で加熱処理したり、あるいは窒素雰囲気などの水分を含まない雰囲気中で、蛍光体成分の融点以上の温度で数十分から数時間加熱することにより行うことができる。
【0047】
蒸発源の相対密度は、80%以上98%以下であることが好ましく、90%以上96%以下であることがより好ましい。蒸発源が相対密度の低い粉体状態であると、蒸着の際に粉体が飛散するなどの不都合が生じたり、蒸発源の表面から均一に蒸発しないで蒸着膜の膜厚が不均一となったりする。よって、安定した蒸着を実現するためには蒸発源の密度がある程度高いことが望ましい。上記相対密度とするには、一般に、粉体を20MPa以上の圧力で加圧成形したり、あるいは融点以上の温度で加熱溶融して、タブレット(錠剤)の形状にする。但し、蒸発源は必ずしもタブレット形状である必要はない。
【0048】
また、蒸発源、特に蛍光体母体成分を含む蒸発源は、アルカリ金属不純物(蛍光体の構成元素以外のアルカリ金属)の含有量が10ppm以下であり、アルカリ土類金属不純物(蛍光体の構成元素以外のアルカリ土類金属)の含有量が1ppm以下であることが望ましい。このような蒸発源は、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物の含有量の少ない原料を使用することによって調整することができる。これによって、不純物の混入が少ない蒸着膜を形成することができるとともに、そのような蒸着膜は発光量を増加させることができる。
【0049】
上記の蒸発源および基板を蒸着装置内に設置し、装置内を排気して、1×10-5Pa〜1×10-2Pa程度の真空度とする。このとき、真空度をこの程度に保持しながら、Arガス、Neガスなどの不活性ガスを導入してもよい。また、必要に応じてO2 、H2 等の反応性ガスを導入してもよい。また、装置内の雰囲気中の水分圧を、ディフュージョンポンプとコールドトラップの組み合わせなどを用いることにより、7.0×10-3Pa以下にすることが好ましい。
【0050】
次に、2つの電子銃から電子線をそれぞれ発生させて、各蒸発源に照射する。このとき、電子線の加速電圧を1.5kV以上5.0kV以下に設定することが好ましい。電子線の照射により、蒸発源である輝尽性蛍光体の母体成分や付活剤成分などは加熱されて蒸発、飛散し、そして反応を生じて蛍光体を形成するとともに基板表面に堆積する。この際に、各電子線の加速電圧などを調整することにより、各蒸発源の蒸発速度を制御することができる。蛍光体の堆積する速度、すなわち蒸着速度は、0.05μm/分〜300μm/分であることが好ましい。堆積速度が0.05μm/分未満の場合には、本発明の放射線像変換パネルの生産性が低く好ましくない。また堆積速度が300μm/分を越える場合には堆積速度のコントロールがむずかしくなる。なお、電子線の照射を複数回に分けて行って2つ以上の蒸着膜を形成することもできる。さらに、蒸着の際に必要に応じて被蒸着物(基板)を冷却または加熱してもよい。
【0051】
蒸着終了後、得られた蒸着膜を加熱処理(アニール処理)する。加熱処理は、例えば50℃〜600℃の範囲の温度、窒素雰囲気下(少量の酸素または水素を含んでいてもよい)で数時間かけて行う。
【0052】
一元蒸着(疑似一元蒸着)の場合には、蒸発流に垂直な方向(基板に平行な方向)に上記蛍光体母体成分と付活剤成分とを分離して含む1個の蒸発源を用意することが好ましい。そして蒸着に際しては、1つの電子線を用いて、蒸発源の母体成分領域および付活剤成分領域各々に電子線を照射する時間(滞在時間)を制御することにより、均一な組成の輝尽性蛍光体からなる蒸着膜を形成することができる。
【0053】
あるいは、蒸発源として輝尽性蛍光体自体を用いる一元蒸着であってもよく、その場合にも、上述のようにして含水量を0.5重量%以下と調整したものを用いる。また、蒸発源の蛍光体はアルカリ金属不純物の含有量が10ppm以下であり、アルカリ土類金属不純物の含有量が1ppm以下であることが好ましい。
【0054】
また、上記輝尽性蛍光体からなる蒸着膜を形成するに先立って、蛍光体の母体のみからなる蒸着膜を形成してもよい。これによって、よりいっそう柱状構造の良好な蒸着膜を得ることができる。なお、蛍光体からなる蒸着膜中の付活剤などの添加物は、特に蒸着時の加熱および/または蒸着後の加熱処理によって、蛍光体母体からなる蒸着膜中に拡散するために、両者の境界は必ずしも明確ではない。
【0055】
このようにして、所望のアルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の柱状構造が厚み方向に成長した蛍光体層が得られる。
【0056】
蛍光体層は、結合剤を含有せず、上記アルカリ金属ハロゲン化物係輝尽性蛍光体のみからなり、輝尽性蛍光体の柱状構造と柱状構造の間には空隙が存在する。輝尽性蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、気相堆積層の実施手段や条件などによって異なるが、10〜1000μmの範囲であることが好ましく、20〜800μmの範囲であることがより好ましい。輝尽性蛍光体層の層厚を10μm未満にした場合には放射線吸収率が極端に低下して放射線感度が悪くなり、画像の粒状性が劣化するばかりか、輝尽性蛍光体層が透明となり易く、励起光の輝尽性蛍光体層中での横方向への広がりが著しく増大し、画像の鮮鋭性が劣化する傾向にあるので好ましくない。
【0057】
本発明の放射線像変換パネル100においては、輝尽性蛍光体層30の反射層20が設けられる面とは反対側の面に、輝尽性蛍光体層30を物理的にあるいは化学的に保護するための保護層40が設けられてもよい。この保護層は、保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あるいはあらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。保護層の材料としては酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、塩化ビニリデン、ナイロン等の通常の保護層用材料が用いられる。また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2 、SiN、Al2O3 、などの無機物質を積層して形成してもよい。
【0058】
また、保護層中には、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナなどの光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末などの滑り剤、およびポリイソシアネートなどの架橋剤といった各種の添加剤が分散含有されていてもよい。これらの保護層の層厚は一般に、高分子物質からなる場合には0.1μm〜20μm程度が、ガラスなどの無機化合物の場合には100〜1000μmの範囲が好ましい。
【0059】
保護層の表面には、さらに、保護層の耐汚染性を高めるためのフッ素樹脂塗布層を設けてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調整したフッ素樹脂溶液を保護層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させ、さらに放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm〜20μmの範囲が好ましい。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を適宜用いることができる。特に、架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
【0060】
上述のようにして、本発明の放射線像変換パネル100を得ることができるが、パネルの構成は、公知のバリエーションを含むものであってもよい。例えば、得られる画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収して輝尽発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい。
以下、上記放射線像変換パネル100を使用して輝尽性蛍光体層から発生した輝尽発光光を検出する場合について図2を参照して説明する。
【0061】
なお、ここでは多数のCCD素子が主走査方向(図中紙面に垂直なXで示す方向、以後、主走査X方向という)に配列されてなる受光面62を有するラインセンサ61と、輝尽性蛍光体層30上の主走査方向に延びる領域を受光面62上に正立等倍像として結像させる結像光学系65とを用いて、輝尽性蛍光体層30から発生する輝尽発光光を検出する。
【0062】
主走査X方向に延びる線状の励起光Le1の照射を受けて輝尽性蛍光体層30から発生した輝尽発光光は、輝尽性蛍光体層30から直接射出されたり(例えば図中に示す輝尽発光光K1)、あるいは、壁面12を含む基板10上に形成された反射層20で反射されてから輝尽性蛍光体層30および保護層40を通して射出された後(例えば図中に示す輝尽発光光K2や輝尽発光光K3)、結像光学系65を通して受光面62上に結像されラインセンサ61で検出される。
【0063】
なお、放射線像変換パネル100は、主走査X方向に延びる線状の励起光Le1の照射を受けつつ、主走査X方向と直交する副走査方向(図中矢印Y方向、以後、副走査Y方向という)に搬送され、これにより、輝尽性蛍光体層30の表面が励起光Le1によって2次元状に走査され、輝尽性蛍光体層30の表面の2次元状の領域から発生した輝尽発光光が検出され放射線像が読み取られる。
【0064】
ここで、上記凸部の壁面に反射層が形成されていない放射線像変換パネル100Aを使用して、輝尽性蛍光体層から発生した輝尽発光光を検出する場合について図3を参照して説明する。
【0065】
主走査X方向に延びる線状の励起光Le2の照射を受けて輝尽性蛍光体層30Aから発生した輝尽発光光は、保護層40Aを通して放射線像変換パネル100Aから射出され、結像光学系65を通して受光面62上に結像されてラインセンサ61で検出される。
【0066】
ここで、輝尽性蛍光体層30Aに照射された励起光Le2の一部が壁面12Aを通して基板10A中に入射した後、この励起光Le3が壁面12Aを通して再び輝尽性蛍光体層30Aに入射して所定の位置とは異なる位置から輝尽発光光を発生させ、このノイズとなる輝尽発光光がラインセンサ61によって検出される(例えば、輝尽発光光Ke7)。また、励起光Le2の照射を受けて輝尽性蛍光体層30Aから発生した輝尽発光光の一部は壁面12Aを透過して基板10A中に入射しラインセンサ61で検出されることなく失われる(例えば、輝尽発光光Ke5)。さらに、輝尽発光光の一部は壁面12Aを通して基板10A中に入射し、再び壁面12Aを通して輝尽性蛍光体層30Aに入射し、所定の位置とは異なる位置から結像光学系65に向けて射出されノイズとしてラインセンサ61によって検出される(例えば、輝尽発光光Ke6)。
【0067】
上記のように壁面12Aに反射層20Aが形成されていなかった場合には輝尽発光光が検出されることなく失われたり、ノイズとなる輝尽発光光が検出されるため、輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質の向上は望めない。
【0068】
なお、上記ラインセンサを用いた検出手段とは異なる構成からなる集光ガイドとこの集光ガイドの一端に接続されたフォトマルチプライヤからなる検出手段を用いて上記放射線像変換パネルから輝尽発光光を検出する場合についても、壁面に反射層を形成したことによる作用は同等である。ただし、上記の場合には、点状の励起光が主走査方向に走査されて、放射線像を示す1点の情報を持つ輝尽発光光が時系列的に発生するので、輝尽発光光の一部が壁面12Aを通して基板10A中に入射し、再び壁面12Aを通して輝尽性蛍光体層30Aに入射して所定の検出光路を外れて射出され、上記検出手段で検出された輝尽発光光はノイズとはならずに放射線像を示す情報として検出される。
【0069】
ここで、反射層を壁面に形成する実験を行なった内容について表1および表2を参照して説明する。
【0070】
この実験は、多数の微細な凸部が形成された凹凸表面を有するガラス基板を複数用意し、これらのガラス基板上に様々な膜構成からなる反射層を形成して以下に示す実施例、および比較例の放射線像変換パネルを作成し、各放射線像変換パネルに記録した放射線像を読み取って鮮鋭性を比較したものである。なお、以後、上記ガラス基板に反射層が積層された実験用の基板を反射層付基板という。
【0071】
○反射層付基板の作成条件
・基板:
ガラス板(厚さ0.7mm)の表面に、柱径2μmから5μm、高さ2μmから5μm、柱の間隔1μmから2μmの円柱形状の凸部からなる多数の凸ドットパターンをフッ素系反応ガスによるドライエッチング方式により形成しガラス基板を作成した。
【0072】
なお、実施例と比較例とに用いるガラス基板に差はない。また、凸部の柱径、高さ、柱の間隔を下記の表1中の「基板パターン」の欄に示す。
【0073】
・反射層の構成:
実施例における反射層は、金属膜と透明薄膜とをスパッタ法によりガラス基板上の凸部の壁面を含む凹凸表面の全面に形成した。金属膜はアルミニウム(Al)で形成され、透明薄膜は酸化ケイ素(SiO2)と酸化チタン(TiO2)で形成されている。
【0074】
これに対して、比較例における反射層は、金属膜と透明薄膜とをEB蒸着によりガラス基板上の凸部の壁面を含む凹凸表面の全面に形成した。
【0075】
なお、成膜方法、および成膜時の真空度を表1中の「反射層成膜法」の欄に示し、反射層の膜構成(材質、膜厚、積層順番)を表1中の「反射層の構成」の欄に示す。また、ガラス基板上に積層されたそれぞれの膜の厚さの測定は、凹凸のない膜厚測定用の平らな表面を持つ平板ガラスに対して、上記放射線像変換パネル作成用のガラス基板と同時に成膜を行ない、この膜厚測定用の平板ガラスに積層された膜の厚さを測定した。
【0076】
以下、表1に上記反射層付基板の作成条件の一覧を示す。
【0077】
【表1】
○輝尽性蛍光体層の成膜:
(CsBr蒸発源の作製)
CsBr粉末75gをジルコニア製粉末成形用ダイス(内径:35mm)に入れ、粉末金型プレス成形機(テーブルプレスTB−5型、エヌピーエーシステム(株)製)にて40kNの圧力で加圧し、タブレット(直径:35mm、厚み:20mm)に成形した。このとき、CsBr粉末にかかった圧力は約40MPaであった。次に、このタブレットに真空乾燥機にて温度200℃で2時間の真空乾燥処理を施した。得られたタブレットの密度は3.9g/cm3、含水量は0.3重量%であった。
【0078】
(EuBrx タブレット作製方法)
上記EuBrx(x=2.2)粉末26gを内径25mmφの白金坩堝に投入し、これを窒素雰囲気下で800℃、30分の加熱処理を行なって熔融し、直径25mm、厚さ10mmのタブレットを得た。このタブレットの密度は5.3g/cm3、含水量は0.3wt%であった。
【0079】
(蒸着)
次に、上記ガラス基板を蒸着器中に設置し、蒸着器内の所定の位置にEuBrx タブレットおよびCsBrタブレットを配置し、蒸着器を排気して1×10-3Paの真空度とした。続いて、ガラス基板の凸ドットパターンが形成された蒸着面の反対側に位置したシーズヒータからなる加熱源で、ガラス基板を300℃に加熱した。蒸着源のそれぞれに電子銃により電子線を照射して、CsBr:Eu輝尽性蛍光体(層厚400μm、面積10cm×10cm)を堆積させた。この際、各々の電子銃のエミッション電流を調整することによって、輝尽性蛍光体におけるEu/Csモル濃度比が0.003/1となるように調整した。乾燥雰囲気下、蒸着器中を大気圧に戻し、ガラス基板を取り出した。
【0080】
(熱処理)
次に、このガラス基板をガス導入可能な真空加熱装置に入れ、ロータリーポンプを用いて約1Paまで真空に引いて蒸着膜に吸着している水分等を除去した後、窒素ガス雰囲気中、200℃の温度で2時間蒸着膜を熱処理した。真空下でガラス基板を冷却し、充分に温度が下がった状態で装置からガラス基板を取り出した。ガラス基板上には、CsBr:Eu輝尽性蛍光体の柱状構造が密に林立した構造の蛍光体層が形成された。これによって、ガラス基板に設けられた凸部である円柱のそれぞれに、それぞれの凸部の径に応じた太さで、長さ400μmの柱状構造を有する輝尽性蛍光体層が形成された。
【0081】
なお、実施例と比較例とで上記形成された輝尽性蛍光体層に差はない。
【0082】
○実験結果
表2に実験結果を示す。
【0083】
【表2】
・反射層の透過率の比較結果:
反射層付基板の反射層の反射率および透過率は、表2中の「反射層付基板の性能」の欄から読み取れるように、全ての実施例(実施例1から実施例9)において輝尽発光光のピーク波長に対する反射率が50%以上であり、透過率が5%以下であった。また、全ての実施例(実施例1から実施例9)において反射層付基板の反射層の励起光のピーク波長に対する透過率は5%以下であった。
【0084】
これに対して、全ての比較例(比較例1から比較例6)における反射層付基板の反射層の輝尽発光光のピーク波長に対する反射率は50%未満であり、透過率は5%を越えていた。また、全ての比較例(比較例1から比較例6)における反射層付基板の反射層の励起光のピーク波長に対する透過率は5%を越えていた。
【0085】
各反射層付基板をSEMで観察したところ、全ての実施例(実施例1から実施例9)において凸部の壁面に反射層が形成されており、全ての比較例(比較例1から比較例6)において凸部の壁面に反射層が形成されていなかった。
【0086】
なお、表2中の「反射層付基板の性能」の欄の輝尽発光光に対する反射率および透過率は輝尽発光光のピーク波長である440nmの波長の光に対して測定されたものである。また、励起光に対する透過率は励起光のピーク波長である660nmの波長の光に対して測定されたものである。また、上記反射率および透過率は散乱光をも含めた値である。
【0087】
また、上記反射率および透過率を測定する測定装置には、分光光度計((株)日立製作所製:U3310)を使用し、この分光光度計にφ150mmの積分球を装着し、反射層付基板の表面の反射率および反射層付基板の表面から入射する光の透過率を測定した。
【0088】
・放射線像変換パネルの鮮鋭性の比較結果
上記放射線像変換パネルの性能(鮮鋭性)は、表2中の「鮮鋭性」の欄から読み取れるように、全ての実施例(実施例1から実施例9)の放射線像変換パネルが比較例(比較例1から比較例6)の放射線像変換パネルより良好な鮮鋭性を示した。なお、上記鮮鋭性の良否は、放射線像変換パネル上に鉛板を置き、管電圧80kVpのX線を100mR照射したのち、鉛板をはずして波長660nmの半導体レーザを搭載した読取装置にて画像を読み取り、鉛板あり/なしのエッジプロファイルを相対比較することによって判定した。
【0089】
ここで、基板の厚さ方向に延びる壁面は、基板に対して概略垂直方向に延びる場合に限らず、基板に対して斜め方向に延びる壁面であってもよい。このような場合においても、壁面が延びる方向にかかわらずこの壁面を含む凹凸表面の略全面に反射層を形成することにより、上記輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させる効果を得ることができる。
【0090】
なお、凹凸部上に形成された反射層の輝尽発光光に対する反射率が50%以上、かつ、透過率が5%以下となるように限定しない場合、また、凹凸部上に形成された反射層の励起光に対する透過率が5%以下となるように限定しない場合、あるいは、凹凸部上に形成された反射層の、励起光に対する透過率が5%以下となるように限定しないで、さらに加えて、上記反射層の輝尽発光光に対する反射率が50%以上、かつ、透過率が5%以下となるように限定しない場合のいずれの場合においても、上記輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させる効果を得ることができることが、上記と同様の実験によって確認することができた。
【0091】
反射層は、必ずしも金属膜と透明薄膜とが積層されたものとしなくてもよく、また、この反射層は、0.01Pa以上、100Pa以下の環境中で気相法によって形成されたものに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による放射線像変換パネルの概略構成示す図
【図2】放射線像変換パネルに記録された放射線像を検出する様子を示す図
【図3】壁面に反射層が形成されていない放射線像変換パネルから放射線像を検出する様子を示す図
【符号の説明】
10 基板
11 凸部
12 壁面
20 反射層
30 輝尽性蛍光体層
40 保護層
100 放射線像変換パネル
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線像変換パネルに関し、詳しくは、凹凸表面を有する基板上に輝尽性蛍光体の柱状構造が形成された輝尽性蛍光体層を備えている放射線像変換パネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の放射線写真法に代わる方法として、たとえば特開昭55−12145号に記載されているような輝尽性蛍光体を用いる放射線像変換方法が知られている。この方法は、輝尽性蛍光体を含有する放射線像変換パネル(蓄積性蛍光体シート)を利用するもので、被写体を透過した、あるいは被検体から発せられた放射線をパネルの輝尽性蛍光体に吸収させ、そののちに輝尽性蛍光体を可視光線、赤外線などの電磁波(励起光)で時系列的に励起することにより、輝尽性蛍光体中に蓄積されている放射線エネルギーを蛍光(輝尽発光光)として放出させ、この蛍光を光電的に読み取って電気信号を得、次いで得られた電気信号に基づいて被写体あるいは被検体の放射線画像を可視像として再生するものである。読取りを終えたパネルは、残存する画像の消去が行なわれた後、次の撮影のために備えられる。すなわち、放射線像変換パネルは繰り返し使用される。
【0003】
この放射線像変換方法によれば、従来の放射線写真フィルムと増感紙との組合せを用いる放射線写真法による場合に比較して、はるかに少ない被曝線量で情報量の豊富な放射線画像を得ることができるという利点がある。さらに、従来の放射線写真法では一回の撮影ごとに放射線写真フィルムを消費するのに対して、この放射線像変換方法では放射線像変換パネルを繰返し使用するので資源保護、経済効率の面からも有利である。このように放射線像変換方法は非常に有利な画像形成方法であるが、この方法に用いられる放射線像変換パネルも従来の放射線写真法に用いられる増感紙と同様に、高感度であってかつ良好な画質(鮮鋭度、粒状性など)を与えるものであることが望まれる。
【0004】
一般に、輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルは輝尽性蛍光体と結合剤(結着剤)とを含む分散液を、基板あるいは保護層上に塗布・乾燥して作成されるため輝尽性蛍光体の充填密度が低く、放射線感度を充分高くするには輝尽性蛍光体層の層厚を厚くする必要がある。また、放射線像変換方法における画像の粒状性は、放射線量子数の場所的ゆらぎ(量子モトル)あるいは放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層の構造的乱れ(構造モトル)等によって決定されるので、輝尽性蛍光体層の層厚が薄いと、輝尽性蛍光体層に吸収される放射線量子数が減少して量子モトルが増加したり、構造的乱れが顕在化して構造モトルが増加したりするなど画質の低下を生ずる。このため、放射線感度および画像の粒状性を向上させるためには輝尽性蛍光体層の層厚は厚い必要がある。
【0005】
一方、これに対し放射線像変換方法における画像の鮮鋭性は、放射線像変換パネルの輝尽性蛍光体層の層厚が薄いほど高い傾向にあり、鮮鋭性の向上のためには輝尽性蛍光体層の薄層化が必要である。
【0006】
すなわち、従来の輝尽性蛍光体と結合剤から形成される輝尽性蛍光体層を有する放射線像変換パネルは、放射線に対する感度および画像の粒状性と、画像の鮮鋭性とが輝尽性蛍光体層の層厚に対してまったく逆の傾向を示すので、放射線像変換パネルは放射線に対する感度および粒状性と鮮鋭性間との間において、ある程度の相互犠牲によって作成されているのが実状である。このため、従来の放射線像変換パネルでは、輝尽性蛍光体粒子による励起光の散乱、拡散が大きいため、輝尽性蛍光体層厚の増大と共に急激に画像の鮮鋭性が低下し、感度および鮮鋭度が共に良好な放射線像変換パネルを得ることは容易なことではない。
【0007】
このような問題を解決するために結合剤を含有しない輝尽性蛍光体層からなる放射線像変換パネルが提案されている。これによれば、輝尽性蛍光体層が結合剤を含有しないので、輝尽性蛍光体の充填率が格段に向上するとともに、輝尽性蛍光体層中での励起光および輝尽性発光光の指向性を従来に比較して向上させることができるので、放射線像変換パネルに対する感度および画像の粒状性を向上させながら、同時に画像の鮮鋭性も期待することができる。
【0008】
上述のような結合剤を含有しない輝尽性蛍光体層からなる放射線像変換パネルにおいても、感度、粒状性を維持しながら、さらに優れた鮮鋭度の画質が得られる放射線像変換パネルが求められている。
【0009】
この放射線像変換パネルには、基板と輝尽性蛍光体層との間に反射層を設けて輝尽性蛍光体層から発生し基板側に向かう輝尽発光光をこの反射層で反射させ輝尽性蛍光体層から輝尽発光光を効率良く射出させるもの(例えば、特許文献1参照)、あるいは、表面に多数の微細な凸部を有する基板上に輝尽性蛍光体の柱状構造を気相堆積させて基板面に対して垂直に柱状構造が形成された輝尽性蛍光体層を作成し、鮮鋭性の高い放射線像が得られるようにしたもの(例えば、特許文献2参照)等が知られている。
【0010】
【特許文献1】
特許第2514321号公報
【0011】
【特許文献2】
特許第2080977号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記基板と輝尽性蛍光体層との間に反射層を設けて輝尽性蛍光体層から輝尽発光光を効率良く射出させる反射層形成手法と、多数の微細な凸部を有する基板上に輝尽性蛍光体の柱状構造を気相堆積させて鮮鋭性の高い放射線像を得る柱状構造形成手法とを組み合わせて、すなわち、凹凸表面を有する基板の表面に反射層を積層するとともに、この反射層上に輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層を形成し、画質の良い放射線像が得られる放射線像変換パネルを作成したいという要請がある。
【0013】
しかしながら、例えば、真空蒸着法により、0.001Paの環境中で凹凸表面を有する基板上に反射層を形成すると、基板の厚さ方向に延びる凹凸表面の壁面に蒸着材料が回り込まずこの壁面に所望の特性を有する反射層が形成されないため、輝尽性蛍光体層で発生した輝尽発光光が上記壁面を透過して所定の検出光路から外れて失われてしまい、輝尽性蛍光体層から輝尽発光光が効率良く射出されなかったり、あるいは、輝尽性蛍光体層に照射された励起光が上記壁面を通って基板中に入射した後、この励起光が壁面を通って再び輝尽性蛍光体層に入射して所定の位置とは異なる位置から輝尽発光光を発生させ、この輝尽発光光がノイズとして検出されたりする。そのため、上記反射層形成手法と柱状構造形成手法とを組み合わせて放射線像変換パネルを作成しても放射線像の画質を向上させることが難しいという問題がある。
【0014】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、凹凸表面を有する基板上に形成された輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層から発生する輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させることができる放射線像変換パネルを提供することを目的とするものである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明の放射線像変換パネルは、凹凸表面を有する基板と、前記凹凸表面の基板の厚さ方向に延びる壁面を含む前記凹凸表面の略全面に形成された輝尽発光光を反射する反射層と、この反射層上に形成された輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層とを備えていることを特徴とするものである。
【0016】
前記反射層は、輝尽発光光に対する反射率が50%以上であり、かつ、透過率が5%以下であることが好ましく、さらに、輝尽発光光に対する反射率が60%以上であり、かつ、透過率が1%以下であることがより好ましい。また、前記反射層は、輝尽性蛍光体層へ照射される励起光に対する透過率が5%以下であることが好ましく、さらに、前記透過率が1%以下であることがより好ましい。ここで、励起光が上記反射層で反射されても、この反射された励起光が輝尽性蛍光体層中を伝播する範囲は小さいので放射線像の取得の妨げになることはない。
【0017】
なお、輝尽発光光に対する反射率および透過率は輝尽発光光のピーク波長における値であり、励起光に対する透過率は励起光のピーク波長における値である。
【0018】
前記反射層は、金属膜と透明薄膜とが積層されたものとすることができる。
【0019】
前記反射層は、0.01Pa以上、100Pa以下の環境中で気相法により形成されることが好ましく、0.1Pa以上、10Pa以下の環境中で気相法により形成されることがより好ましい。気相法としてはスパッタ法を用いることが好ましい。
【0020】
基板の凹凸表面は多数の微細な凸部からなるものが好ましい。その場合、基板上に形成されている多数の凸部は、1個の凸部に対して最近接の凸部が4個または6個(最密)規則正しく並んでいることが好ましいが、平均的にむらなく並んでいればランダムに配列されていても差し支えない。また、凸部の形状は、凸部の上部に基板と平行な面を有していれば特に限定されるものではなく、円柱型、多角柱型、あるいは円錐台や多角錘台など、様々な形状を選択することができる。
【0021】
また、凸部の最大径、高さおよび凸部同士の間隔は、凸部のそれぞれを起点に気相堆積法によって形成された層厚方向に伸びた輝尽性蛍光体の柱状構造が1つずつ形成され、輝尽性蛍光体層の表面が凸部から伸びた輝尽性蛍光体の柱状構造のみで形成されるように調整されることが好ましい。ここで、最大径とは、凸部の形状が円柱型の場合にはその最大径を、凸部の形状が多角柱型の場合にはその対角線を、円錐台や多角錘台の場合は、基板と平行な面の最大径を意味する。具体的には、凸部の最大径、高さおよび凸部同士の間隔は、いずれも0.2〜40μmの範囲であることが好ましく、0.5〜10μmの範囲であることがより好ましい。凸部の形状や、凸部の最大径、高さなどのサイズは均一であることが好ましいが、ばらつきがあっても差し支えない。
【0022】
【発明の効果】
本発明の放射線像変換パネルによれば、凹凸表面を有する基板と、上記凹凸表面の基板の厚さ方向に延びる壁面を含む上記凹凸表面の略全面に形成された輝尽発光光を反射する反射層と、この反射層上に形成された輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層とを備えているので、上記壁面においても輝尽発光光を反射させることができ、輝尽性蛍光体層から射出される輝尽発光光の光量を増大させることができる。さらに、この反射層が励起光の透過を制限するものであれば、上記壁面を通って基板中へ入射する励起光の光量が低減され所定の位置とは異なる位置で励起されたノイズとなる輝尽発光光の発生が抑制されるので、輝尽性蛍光体層からS/Nの高い輝尽発光光を射出させることができる。上記のことにより、上記輝尽性蛍光体層から発生する輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させることができる。
【0023】
また、凹凸表面上に形成された反射層を、輝尽発光光に対する反射率が50%以上、かつ、透過率が5%以下となるようにすれば、上記壁面において輝尽発光光を反射させることができ、輝尽性蛍光体層から射出される輝尽発光光の光量を増大させることができるとともに、上記壁面を通って基板中へ入射する輝尽発光光の光量を制限することができ、所定の位置とは異なる位置からのノイズとなる輝尽発光光の射出を抑制することができる。これにより、輝尽性蛍光体層からS/Nの高い輝尽発光光を射出させることができ、上記輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させることができる。
【0024】
また、凹凸表面上に形成された反射層を、励起光に対する透過率が5%以下となるようにすれば、壁面において輝尽発光光を反射させることができ、輝尽性蛍光体層から射出される輝尽発光光の光量を増大させることができるとともに、上記壁面を通って基板中へ入射する励起光の光量を制限することができ、この励起光の励起による所定の位置とは異なる位置からのノイズとなる輝尽発光光の発生を抑制することができる。これにより、輝尽性蛍光体層からS/Nの高い輝尽発光光を射出させることができ、上記輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させることができる。
【0025】
さらに、反射層を0.01Pa以上、100Pa以下の環境中、より好ましくは0.1Pa以上、10Pa以下の環境中で気相法により形成されたものとすれば、反射層を形成するための薄膜材料をより容易に壁面に回り込ませることができ、壁面に入射する輝尽発光光を反射させて輝尽性蛍光体から射出される輝尽発光光の光量を増大させる効果を確実に得ることができるとともに、壁面に入射する励起光の透過を防止する効果をも確実に得ることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な実施の形態について、図面を用いて説明する。図1は本発明の実施の形態による放射線像変換パネルの概略構成示す図、図2は放射線像変換パネルに記録された放射線像を検出する様子を示す図、図3は壁面に反射層が形成されていない放射線像変換パネルから放射線像を検出する様子を示す図である。
【0027】
本発明の実施の形態による放射線像変換パネル100は、多数の微細な凸部11が形成された凹凸表面を有するガラス等の透明材料からなる基板10と、凸部11の基板10の厚さ方向に延びる壁面12を含む上記凹凸表面の略全面に形成された輝尽発光光を反射する反射層20と、凸部11上に積層された反射層20の上に形成された輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層30とを備えている。なお、凹凸表面の略全面に形成された反射層とは、凹凸表面の全面に欠陥なく形成された反射層の場合に限らず、例えば、放射線像変換パネルの製作上の都合等により凹凸表面の一部に反射層が形成されていない領域が存在する反射層をも意味するものである。
【0028】
反射層20は、金属膜と透明薄膜とが積層されたものであり、輝尽発光光のピーク波長に対して反射率が50%以上、90%以下、かつ、透過率が5%以下であり、輝尽性蛍光体層30へ照射される励起光に対する透過率が5%以下である。なお、反射層20は、0.01Pa以上、100Pa以下の環境中で気相法により形成されたものである。
【0029】
上記基板10(支持体ともいう)としては、各種高分子材料、ガラス、金属等を用いることができ、具体的にはセルロースアセテートフィルム、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリアミドフィルム、ポリイミドフィルム、トリアセテートフィルム、ポリカーボネートフィルム等のプラスチックフィルム、石英ガラス、無アルカリガラス、ソーダガラス、耐熱ガラス(パイレックス(R)等)等のガラス板、アルミニウムシート、鉄シート、銅シート、クロムシート等の金属シートあるいは金属酸化物の被覆層を有する金属シートが好ましい。支持体の膜厚は選択する支持体の材質等によって異なるが、ガラスあるいは金属基板の場合には、100μm〜5mmの範囲であることが好ましく、200μm〜2mmの範囲であることがより好ましい。
【0030】
このような支持体上の凸型ドット形状は、公知の方法によって設けることができ、例えば、支持体そのものをエンボッシュやエッチングにより凸型ドット形状としてもよいし、光、熱、薬品などで支持体に固着硬化する樹脂を素材とするインクを用いて、グラビア法あるいはシルク法などによって印刷した後、乾燥、硬化処理を行う印刷法あるいは写真蝕刻法などによって形成することができる。写真蝕刻法の場合であれば、まず、光に対し不透明部分の島状のパターンを有するマスクをナイロン系感光性樹脂の表面に密着させ、感光波長域250nm〜400nmの波長を含む紫外線で照射し、露光後にこの感光性樹脂を現像する。この現像によって感光性樹脂の非露出部が流され、露光部が凸部として残ることとなる。なお、マスクを感光性樹脂表面に密着させずに、レンズ光学系を用いて露光する方式を用いてもよい。
【0031】
輝尽性蛍光体層30に用いられる輝尽性蛍光体としては、例えば、
米国特許第3,859,527号明細書に記載されているSrS:Ce,Sm、SrS:Eu,Sm、ThO2:Er、およびLa2O2S:Eu,Sm、
【0032】
特開昭55-12142号に記載されている ZnS:Cu,Pb、BaO・xAl2O3:Eu(ただし、0.8≦x≦10)、および、MIIO・xSiO2 :A(ただし、MIIはMg,Ca,Sr,Zn,Cd、またはBaであり、AはCe,Tb,Eu,Tm,Pb,Tl,BiまたはMnであり、xは0.5≦x≦2.5である)、
【0033】
特開昭55-12144号に記載されている LnOX:xA(ただし、LnはLa,Y,Gd、およびLuのうちの少なくとも一種、XはClおよびBrのうちの少なくとも一種、AはCeおよびTbのうちの少なくとも一種、そして、xは、0<x<0.1である)、
【0034】
特開昭55-12145号に記載されている(Ba1-X,M2+ X)FX:yA(ただし、M2+はMg,Ca,Sr,Zn、およびCdのうちの少なくとも一種、XはCl,BrおよびIのうちの少なくとも一種、AはEu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,YbおよびErのうちの少なくとも一種、そしてxは0≦x≦0.6、yは0≦y≦0.2である)、
【0035】
特開昭57-148285号に記載されている下記いづれかの、一般式xM3(PO4)2・NX2:yAまたは一般式 M3(PO4)2・yA (式中、M及びNはそれぞれMg,Ca,Sr,Ba,Zn及びCdのうち少なくとも1種、XはF,Cl,Br及びIのうち少なくとも1種、AはEu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Sb,Tl,Mn及びSnのうち少なくとも1種を表わす。また、x及びyは0<x≦6、0≦y≦1なる条件を満たす数である。)で表わされる蛍光体、下記いづれかの一般式nReX3・mAX′2:xEu、一般式nReX3・mAX′2:xEu,ySm (式中、ReはLa,Gd,Y,Luのうち少なくとも1種、Aはアルカリ土類金属、Ba,Sr,Caのうち少なくとも1種、X及びX′はF、Cl,Brのうち少なくとも1種を表わす。また、x及びyは、1×10-4<x<3×10-1、1×10-4<y<1×10-1なる条件を満たす数であり、n/mは1×10-3<n/m<7×10-1なる条件を満たす。)で表わされる蛍光体、及び一般式 MIX・aMIIX′2・bMIIIX″3:cA (但し、MIはLi,Na,K,Rb及びCsから選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属であり、MIIはBe,Mg,Ca,Sr,Ba,Zn,Cd,Cu及びNiから選ばれる少なくとも1種の二価金属である。MIIIはSc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga及びInから選ばれる少なくとも1種の三価金属である。X,X′及びX″はF,Cl,Br及びIから選ばれる少なくとも1種のハロゲンである。AはEu,Tb,Ce,Tm,Dy,Pr,Ho,Nd,Yb,Er,Gd,Lu,Sm,Y,Tl,Na,Ag,Cu,Bi及びMgから選ばれる少なくとも1種の金属である。またaは、0≦a<0.5の範囲の数値であり、bは0≦b<0.5の範囲の数値であり、cは0<c≦0.2の範囲の数値である。)で表わされるアルカリハライド蛍光体、
【0036】
特開昭56-116777号に記載されている(Ba1-X,MII X)F2・aBaX2:yEu,zA(ただし、MIIはベリリウム,マグネシウム,カルシウム,ストロンチウム,亜鉛およびカドミウムのうちの少なくとも一種、Xは塩素,臭素およびヨウ素のうちの少なくとも一種、Aはジルコニウムおよびスカンジウムのうちの少なくとも一種であり、a、x、y、およびzはそれぞれ 0.5≦a≦1.25、0≦x≦1、10-6≦y≦2×10-1、および0<z≦10-2である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0037】
特開昭58-69281号に記載されている MIIIOX:xCe(ただし、MIIIはPr,Nd,Pm,Sm,Eu,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,YbおよびBiからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり、XはClおよびBrのうちのいずれか一方あるいはその両方であり、xは0<x<0.1である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0038】
特開昭58-206678号に記載されているBa1-XMX/2LX/2FX:yEu2+(ただし、MはLi,Na,K,RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属を表わし;Lは、Sc,Y,La,Ce,Pr,Nd,Pm,Sm,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Al,Ga,InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属を表わし;X は、Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンを表わし;そして、xは10-2≦x≦0.5、yは0<y≦0.1である)の組成式で表わされる蛍光体、
【0039】
特開昭59-75200号に記載されている MIIFX・aMIX′・bM′IIX″2・cMIIIX3・xA:yEu2+(ただし、MIIはBa,SrおよびCaからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ土類金属であり;MI はLi,Na,K,RbおよびCsからなる群より選ばれる少なくとも一種のアルカリ金属であり;M′IIはBeおよびMgからなる群より選ばれる少なくとも一種の二価金属であり;MIII はAl,Ga,InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも一種の三価金属であり;Aは金属酸化物であり;XはCl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;X′,X″および Xは、F,Cl,BrおよびIからなる群より選ばれる少なくとも一種のハロゲンであり;そして、aは0≦a≦2、bは0≦b≦10-2、cは0≦c≦10-2、かつa+b+c≧10-6 であり;x は0<x≦0.5、yは0<y≦0.2 である)の組成式で表わされる蛍光体、
などをあげることができる。
【0040】
特にアルカリハライド蛍光体は、蒸着・スパッタリング等の方法で輝尽性蛍光体層を形成させやすく好ましい。但し、本発明の放射線像変換パネルに用いられる輝尽性蛍光体は、前述の蛍光体に限られるものではなく、放射線を照射した後、励起光を照射した場合に輝尽発光を示す蛍光体であればいかなる蛍光体であってもよい。なお、輝尽性蛍光体層は、上記の輝尽性蛍光体を単独で用いても、また適宜組み合わせて用いてもよい。
【0041】
輝尽性蛍光体層30を形成するための輝尽性蛍光体の気相堆積法としては、蒸着法、抵抗加熱法、スパッタ法、化学蒸着(CVD)法などの公知の方法を用いることができる。ここでは、電子蒸着法により形成する場合を例にとって説明する。
【0042】
電子蒸着法は、抵抗加熱法などと比較して、蒸発源を局所的に加熱して瞬時に蒸発させるので、蒸発速度を制御しやすく、また蒸発源として仕込んだ蛍光体もしくはその原料の組成と形成された蛍光体層中の蛍光体の組成との不一致を小さくすることができるという利点がある。ただし、ガス導入により真空度の低い状態(圧力として約0.1Pa以上)では使用不可のため、このような場合は他の方法(抵抗加熱法等)を用いる。
【0043】
多元蒸着(共蒸着)により蛍光体層を形成する場合には、まず蒸発源として、上記輝尽性蛍光体の母体(MIX)成分を含むものと付活剤(A)成分を含むものとからなる少なくとも2個の蒸発源を用意する。多元蒸着は、蛍光体の母体成分と付活剤成分の蒸気圧が大きく異なる場合に、その蒸着速度を各々制御することができるので好ましい。各蒸発源は、所望とする輝尽性蛍光体の組成に応じて、蛍光体の母体成分および付活剤成分それぞれのみから構成されていてもよいし、添加物成分などとの混合物であってもよい。また、蒸発源は2個に限定されるものではなく、例えば別に添加物成分などからなる蒸発源を加えて3個以上としてもよい。
【0044】
蛍光体の母体成分は、母体を構成する化合物それ自体であってもよいし、あるいは反応して母体化合物となりうる2以上の原料の混合物であってもよい。また、付活剤成分は、一般には付活剤元素を含む化合物であり、例えば付活剤元素のハロゲン化物が用いられる。
【0045】
付活剤AがEuである場合には、付活剤成分のEu化合物におけるEu2+化合物のモル比が70%以上であることが好ましい。一般に、Eu化合物にはEu2+とEu3+ が混合して含まれているが、所望とする輝尽発光(あるいは瞬時発光であっても)はEu2+を付活剤とする蛍光体から発せられるからである。Eu化合物はEuBrxであることが好ましく、その場合に、xは2.0≦x≦2.3の範囲内の数値であることが好ましい。xは2.0であることが望ましいが、2.0に近づけようとすると酸素が混入しやすくなる。よって、実際には、xは2.2付近でBrの比率が比較的高い状態が安定している。
【0046】
蒸発源は、突沸防止などの点からその含水量が0.5重量%以下であることが好ましい。蒸発源の脱水は、上記の各蛍光体成分を減圧下で100〜300℃の温度範囲で加熱処理したり、あるいは窒素雰囲気などの水分を含まない雰囲気中で、蛍光体成分の融点以上の温度で数十分から数時間加熱することにより行うことができる。
【0047】
蒸発源の相対密度は、80%以上98%以下であることが好ましく、90%以上96%以下であることがより好ましい。蒸発源が相対密度の低い粉体状態であると、蒸着の際に粉体が飛散するなどの不都合が生じたり、蒸発源の表面から均一に蒸発しないで蒸着膜の膜厚が不均一となったりする。よって、安定した蒸着を実現するためには蒸発源の密度がある程度高いことが望ましい。上記相対密度とするには、一般に、粉体を20MPa以上の圧力で加圧成形したり、あるいは融点以上の温度で加熱溶融して、タブレット(錠剤)の形状にする。但し、蒸発源は必ずしもタブレット形状である必要はない。
【0048】
また、蒸発源、特に蛍光体母体成分を含む蒸発源は、アルカリ金属不純物(蛍光体の構成元素以外のアルカリ金属)の含有量が10ppm以下であり、アルカリ土類金属不純物(蛍光体の構成元素以外のアルカリ土類金属)の含有量が1ppm以下であることが望ましい。このような蒸発源は、アルカリ金属やアルカリ土類金属などの不純物の含有量の少ない原料を使用することによって調整することができる。これによって、不純物の混入が少ない蒸着膜を形成することができるとともに、そのような蒸着膜は発光量を増加させることができる。
【0049】
上記の蒸発源および基板を蒸着装置内に設置し、装置内を排気して、1×10-5Pa〜1×10-2Pa程度の真空度とする。このとき、真空度をこの程度に保持しながら、Arガス、Neガスなどの不活性ガスを導入してもよい。また、必要に応じてO2 、H2 等の反応性ガスを導入してもよい。また、装置内の雰囲気中の水分圧を、ディフュージョンポンプとコールドトラップの組み合わせなどを用いることにより、7.0×10-3Pa以下にすることが好ましい。
【0050】
次に、2つの電子銃から電子線をそれぞれ発生させて、各蒸発源に照射する。このとき、電子線の加速電圧を1.5kV以上5.0kV以下に設定することが好ましい。電子線の照射により、蒸発源である輝尽性蛍光体の母体成分や付活剤成分などは加熱されて蒸発、飛散し、そして反応を生じて蛍光体を形成するとともに基板表面に堆積する。この際に、各電子線の加速電圧などを調整することにより、各蒸発源の蒸発速度を制御することができる。蛍光体の堆積する速度、すなわち蒸着速度は、0.05μm/分〜300μm/分であることが好ましい。堆積速度が0.05μm/分未満の場合には、本発明の放射線像変換パネルの生産性が低く好ましくない。また堆積速度が300μm/分を越える場合には堆積速度のコントロールがむずかしくなる。なお、電子線の照射を複数回に分けて行って2つ以上の蒸着膜を形成することもできる。さらに、蒸着の際に必要に応じて被蒸着物(基板)を冷却または加熱してもよい。
【0051】
蒸着終了後、得られた蒸着膜を加熱処理(アニール処理)する。加熱処理は、例えば50℃〜600℃の範囲の温度、窒素雰囲気下(少量の酸素または水素を含んでいてもよい)で数時間かけて行う。
【0052】
一元蒸着(疑似一元蒸着)の場合には、蒸発流に垂直な方向(基板に平行な方向)に上記蛍光体母体成分と付活剤成分とを分離して含む1個の蒸発源を用意することが好ましい。そして蒸着に際しては、1つの電子線を用いて、蒸発源の母体成分領域および付活剤成分領域各々に電子線を照射する時間(滞在時間)を制御することにより、均一な組成の輝尽性蛍光体からなる蒸着膜を形成することができる。
【0053】
あるいは、蒸発源として輝尽性蛍光体自体を用いる一元蒸着であってもよく、その場合にも、上述のようにして含水量を0.5重量%以下と調整したものを用いる。また、蒸発源の蛍光体はアルカリ金属不純物の含有量が10ppm以下であり、アルカリ土類金属不純物の含有量が1ppm以下であることが好ましい。
【0054】
また、上記輝尽性蛍光体からなる蒸着膜を形成するに先立って、蛍光体の母体のみからなる蒸着膜を形成してもよい。これによって、よりいっそう柱状構造の良好な蒸着膜を得ることができる。なお、蛍光体からなる蒸着膜中の付活剤などの添加物は、特に蒸着時の加熱および/または蒸着後の加熱処理によって、蛍光体母体からなる蒸着膜中に拡散するために、両者の境界は必ずしも明確ではない。
【0055】
このようにして、所望のアルカリ金属ハロゲン化物系輝尽性蛍光体の柱状構造が厚み方向に成長した蛍光体層が得られる。
【0056】
蛍光体層は、結合剤を含有せず、上記アルカリ金属ハロゲン化物係輝尽性蛍光体のみからなり、輝尽性蛍光体の柱状構造と柱状構造の間には空隙が存在する。輝尽性蛍光体層の層厚は、目的とする放射線像変換パネルの特性、気相堆積層の実施手段や条件などによって異なるが、10〜1000μmの範囲であることが好ましく、20〜800μmの範囲であることがより好ましい。輝尽性蛍光体層の層厚を10μm未満にした場合には放射線吸収率が極端に低下して放射線感度が悪くなり、画像の粒状性が劣化するばかりか、輝尽性蛍光体層が透明となり易く、励起光の輝尽性蛍光体層中での横方向への広がりが著しく増大し、画像の鮮鋭性が劣化する傾向にあるので好ましくない。
【0057】
本発明の放射線像変換パネル100においては、輝尽性蛍光体層30の反射層20が設けられる面とは反対側の面に、輝尽性蛍光体層30を物理的にあるいは化学的に保護するための保護層40が設けられてもよい。この保護層は、保護層用塗布液を輝尽性蛍光体層上に直接塗布して形成してもよいし、あるいはあらかじめ別途形成した保護層を輝尽性蛍光体層上に接着してもよい。保護層の材料としては酢酸セルロース、ニトロセルロース、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、塩化ビニリデン、ナイロン等の通常の保護層用材料が用いられる。また、この保護層は蒸着法、スパッタリング法等により、SiC、SiO2 、SiN、Al2O3 、などの無機物質を積層して形成してもよい。
【0058】
また、保護層中には、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、二酸化チタン、アルミナなどの光散乱性微粒子、パーフルオロオレフィン樹脂粉末、シリコーン樹脂粉末などの滑り剤、およびポリイソシアネートなどの架橋剤といった各種の添加剤が分散含有されていてもよい。これらの保護層の層厚は一般に、高分子物質からなる場合には0.1μm〜20μm程度が、ガラスなどの無機化合物の場合には100〜1000μmの範囲が好ましい。
【0059】
保護層の表面には、さらに、保護層の耐汚染性を高めるためのフッ素樹脂塗布層を設けてもよい。フッ素樹脂塗布層は、フッ素樹脂を有機溶媒に溶解(または分散)させて調整したフッ素樹脂溶液を保護層の表面に塗布し、乾燥することにより形成することができる。フッ素樹脂は単独で使用してもよいが、通常はフッ素樹脂と膜形成性の高い樹脂との混合物として使用する。また、ポリシロキサン骨格を持つオリゴマーあるいはパーフルオロアルキル基を持つオリゴマーを併用することもできる。フッ素樹脂塗布層には、干渉むらを低減させ、さらに放射線画像の画質を向上させるために、微粒子フィラーを充填することもできる。フッ素樹脂塗布層の層厚は通常は0.5μm〜20μmの範囲が好ましい。フッ素樹脂塗布層の形成に際しては、架橋剤、硬膜剤、黄変防止剤などのような添加成分を適宜用いることができる。特に、架橋剤の添加は、フッ素樹脂塗布層の耐久性の向上に有利である。
【0060】
上述のようにして、本発明の放射線像変換パネル100を得ることができるが、パネルの構成は、公知のバリエーションを含むものであってもよい。例えば、得られる画像の鮮鋭度を向上させることを目的として、上記の少なくともいずれかの層を、励起光を吸収して輝尽発光光は吸収しないような着色剤によって着色してもよい。
以下、上記放射線像変換パネル100を使用して輝尽性蛍光体層から発生した輝尽発光光を検出する場合について図2を参照して説明する。
【0061】
なお、ここでは多数のCCD素子が主走査方向(図中紙面に垂直なXで示す方向、以後、主走査X方向という)に配列されてなる受光面62を有するラインセンサ61と、輝尽性蛍光体層30上の主走査方向に延びる領域を受光面62上に正立等倍像として結像させる結像光学系65とを用いて、輝尽性蛍光体層30から発生する輝尽発光光を検出する。
【0062】
主走査X方向に延びる線状の励起光Le1の照射を受けて輝尽性蛍光体層30から発生した輝尽発光光は、輝尽性蛍光体層30から直接射出されたり(例えば図中に示す輝尽発光光K1)、あるいは、壁面12を含む基板10上に形成された反射層20で反射されてから輝尽性蛍光体層30および保護層40を通して射出された後(例えば図中に示す輝尽発光光K2や輝尽発光光K3)、結像光学系65を通して受光面62上に結像されラインセンサ61で検出される。
【0063】
なお、放射線像変換パネル100は、主走査X方向に延びる線状の励起光Le1の照射を受けつつ、主走査X方向と直交する副走査方向(図中矢印Y方向、以後、副走査Y方向という)に搬送され、これにより、輝尽性蛍光体層30の表面が励起光Le1によって2次元状に走査され、輝尽性蛍光体層30の表面の2次元状の領域から発生した輝尽発光光が検出され放射線像が読み取られる。
【0064】
ここで、上記凸部の壁面に反射層が形成されていない放射線像変換パネル100Aを使用して、輝尽性蛍光体層から発生した輝尽発光光を検出する場合について図3を参照して説明する。
【0065】
主走査X方向に延びる線状の励起光Le2の照射を受けて輝尽性蛍光体層30Aから発生した輝尽発光光は、保護層40Aを通して放射線像変換パネル100Aから射出され、結像光学系65を通して受光面62上に結像されてラインセンサ61で検出される。
【0066】
ここで、輝尽性蛍光体層30Aに照射された励起光Le2の一部が壁面12Aを通して基板10A中に入射した後、この励起光Le3が壁面12Aを通して再び輝尽性蛍光体層30Aに入射して所定の位置とは異なる位置から輝尽発光光を発生させ、このノイズとなる輝尽発光光がラインセンサ61によって検出される(例えば、輝尽発光光Ke7)。また、励起光Le2の照射を受けて輝尽性蛍光体層30Aから発生した輝尽発光光の一部は壁面12Aを透過して基板10A中に入射しラインセンサ61で検出されることなく失われる(例えば、輝尽発光光Ke5)。さらに、輝尽発光光の一部は壁面12Aを通して基板10A中に入射し、再び壁面12Aを通して輝尽性蛍光体層30Aに入射し、所定の位置とは異なる位置から結像光学系65に向けて射出されノイズとしてラインセンサ61によって検出される(例えば、輝尽発光光Ke6)。
【0067】
上記のように壁面12Aに反射層20Aが形成されていなかった場合には輝尽発光光が検出されることなく失われたり、ノイズとなる輝尽発光光が検出されるため、輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質の向上は望めない。
【0068】
なお、上記ラインセンサを用いた検出手段とは異なる構成からなる集光ガイドとこの集光ガイドの一端に接続されたフォトマルチプライヤからなる検出手段を用いて上記放射線像変換パネルから輝尽発光光を検出する場合についても、壁面に反射層を形成したことによる作用は同等である。ただし、上記の場合には、点状の励起光が主走査方向に走査されて、放射線像を示す1点の情報を持つ輝尽発光光が時系列的に発生するので、輝尽発光光の一部が壁面12Aを通して基板10A中に入射し、再び壁面12Aを通して輝尽性蛍光体層30Aに入射して所定の検出光路を外れて射出され、上記検出手段で検出された輝尽発光光はノイズとはならずに放射線像を示す情報として検出される。
【0069】
ここで、反射層を壁面に形成する実験を行なった内容について表1および表2を参照して説明する。
【0070】
この実験は、多数の微細な凸部が形成された凹凸表面を有するガラス基板を複数用意し、これらのガラス基板上に様々な膜構成からなる反射層を形成して以下に示す実施例、および比較例の放射線像変換パネルを作成し、各放射線像変換パネルに記録した放射線像を読み取って鮮鋭性を比較したものである。なお、以後、上記ガラス基板に反射層が積層された実験用の基板を反射層付基板という。
【0071】
○反射層付基板の作成条件
・基板:
ガラス板(厚さ0.7mm)の表面に、柱径2μmから5μm、高さ2μmから5μm、柱の間隔1μmから2μmの円柱形状の凸部からなる多数の凸ドットパターンをフッ素系反応ガスによるドライエッチング方式により形成しガラス基板を作成した。
【0072】
なお、実施例と比較例とに用いるガラス基板に差はない。また、凸部の柱径、高さ、柱の間隔を下記の表1中の「基板パターン」の欄に示す。
【0073】
・反射層の構成:
実施例における反射層は、金属膜と透明薄膜とをスパッタ法によりガラス基板上の凸部の壁面を含む凹凸表面の全面に形成した。金属膜はアルミニウム(Al)で形成され、透明薄膜は酸化ケイ素(SiO2)と酸化チタン(TiO2)で形成されている。
【0074】
これに対して、比較例における反射層は、金属膜と透明薄膜とをEB蒸着によりガラス基板上の凸部の壁面を含む凹凸表面の全面に形成した。
【0075】
なお、成膜方法、および成膜時の真空度を表1中の「反射層成膜法」の欄に示し、反射層の膜構成(材質、膜厚、積層順番)を表1中の「反射層の構成」の欄に示す。また、ガラス基板上に積層されたそれぞれの膜の厚さの測定は、凹凸のない膜厚測定用の平らな表面を持つ平板ガラスに対して、上記放射線像変換パネル作成用のガラス基板と同時に成膜を行ない、この膜厚測定用の平板ガラスに積層された膜の厚さを測定した。
【0076】
以下、表1に上記反射層付基板の作成条件の一覧を示す。
【0077】
【表1】
○輝尽性蛍光体層の成膜:
(CsBr蒸発源の作製)
CsBr粉末75gをジルコニア製粉末成形用ダイス(内径:35mm)に入れ、粉末金型プレス成形機(テーブルプレスTB−5型、エヌピーエーシステム(株)製)にて40kNの圧力で加圧し、タブレット(直径:35mm、厚み:20mm)に成形した。このとき、CsBr粉末にかかった圧力は約40MPaであった。次に、このタブレットに真空乾燥機にて温度200℃で2時間の真空乾燥処理を施した。得られたタブレットの密度は3.9g/cm3、含水量は0.3重量%であった。
【0078】
(EuBrx タブレット作製方法)
上記EuBrx(x=2.2)粉末26gを内径25mmφの白金坩堝に投入し、これを窒素雰囲気下で800℃、30分の加熱処理を行なって熔融し、直径25mm、厚さ10mmのタブレットを得た。このタブレットの密度は5.3g/cm3、含水量は0.3wt%であった。
【0079】
(蒸着)
次に、上記ガラス基板を蒸着器中に設置し、蒸着器内の所定の位置にEuBrx タブレットおよびCsBrタブレットを配置し、蒸着器を排気して1×10-3Paの真空度とした。続いて、ガラス基板の凸ドットパターンが形成された蒸着面の反対側に位置したシーズヒータからなる加熱源で、ガラス基板を300℃に加熱した。蒸着源のそれぞれに電子銃により電子線を照射して、CsBr:Eu輝尽性蛍光体(層厚400μm、面積10cm×10cm)を堆積させた。この際、各々の電子銃のエミッション電流を調整することによって、輝尽性蛍光体におけるEu/Csモル濃度比が0.003/1となるように調整した。乾燥雰囲気下、蒸着器中を大気圧に戻し、ガラス基板を取り出した。
【0080】
(熱処理)
次に、このガラス基板をガス導入可能な真空加熱装置に入れ、ロータリーポンプを用いて約1Paまで真空に引いて蒸着膜に吸着している水分等を除去した後、窒素ガス雰囲気中、200℃の温度で2時間蒸着膜を熱処理した。真空下でガラス基板を冷却し、充分に温度が下がった状態で装置からガラス基板を取り出した。ガラス基板上には、CsBr:Eu輝尽性蛍光体の柱状構造が密に林立した構造の蛍光体層が形成された。これによって、ガラス基板に設けられた凸部である円柱のそれぞれに、それぞれの凸部の径に応じた太さで、長さ400μmの柱状構造を有する輝尽性蛍光体層が形成された。
【0081】
なお、実施例と比較例とで上記形成された輝尽性蛍光体層に差はない。
【0082】
○実験結果
表2に実験結果を示す。
【0083】
【表2】
・反射層の透過率の比較結果:
反射層付基板の反射層の反射率および透過率は、表2中の「反射層付基板の性能」の欄から読み取れるように、全ての実施例(実施例1から実施例9)において輝尽発光光のピーク波長に対する反射率が50%以上であり、透過率が5%以下であった。また、全ての実施例(実施例1から実施例9)において反射層付基板の反射層の励起光のピーク波長に対する透過率は5%以下であった。
【0084】
これに対して、全ての比較例(比較例1から比較例6)における反射層付基板の反射層の輝尽発光光のピーク波長に対する反射率は50%未満であり、透過率は5%を越えていた。また、全ての比較例(比較例1から比較例6)における反射層付基板の反射層の励起光のピーク波長に対する透過率は5%を越えていた。
【0085】
各反射層付基板をSEMで観察したところ、全ての実施例(実施例1から実施例9)において凸部の壁面に反射層が形成されており、全ての比較例(比較例1から比較例6)において凸部の壁面に反射層が形成されていなかった。
【0086】
なお、表2中の「反射層付基板の性能」の欄の輝尽発光光に対する反射率および透過率は輝尽発光光のピーク波長である440nmの波長の光に対して測定されたものである。また、励起光に対する透過率は励起光のピーク波長である660nmの波長の光に対して測定されたものである。また、上記反射率および透過率は散乱光をも含めた値である。
【0087】
また、上記反射率および透過率を測定する測定装置には、分光光度計((株)日立製作所製:U3310)を使用し、この分光光度計にφ150mmの積分球を装着し、反射層付基板の表面の反射率および反射層付基板の表面から入射する光の透過率を測定した。
【0088】
・放射線像変換パネルの鮮鋭性の比較結果
上記放射線像変換パネルの性能(鮮鋭性)は、表2中の「鮮鋭性」の欄から読み取れるように、全ての実施例(実施例1から実施例9)の放射線像変換パネルが比較例(比較例1から比較例6)の放射線像変換パネルより良好な鮮鋭性を示した。なお、上記鮮鋭性の良否は、放射線像変換パネル上に鉛板を置き、管電圧80kVpのX線を100mR照射したのち、鉛板をはずして波長660nmの半導体レーザを搭載した読取装置にて画像を読み取り、鉛板あり/なしのエッジプロファイルを相対比較することによって判定した。
【0089】
ここで、基板の厚さ方向に延びる壁面は、基板に対して概略垂直方向に延びる場合に限らず、基板に対して斜め方向に延びる壁面であってもよい。このような場合においても、壁面が延びる方向にかかわらずこの壁面を含む凹凸表面の略全面に反射層を形成することにより、上記輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させる効果を得ることができる。
【0090】
なお、凹凸部上に形成された反射層の輝尽発光光に対する反射率が50%以上、かつ、透過率が5%以下となるように限定しない場合、また、凹凸部上に形成された反射層の励起光に対する透過率が5%以下となるように限定しない場合、あるいは、凹凸部上に形成された反射層の、励起光に対する透過率が5%以下となるように限定しないで、さらに加えて、上記反射層の輝尽発光光に対する反射率が50%以上、かつ、透過率が5%以下となるように限定しない場合のいずれの場合においても、上記輝尽発光光の検出に基づいて取得される放射線像の画質を向上させる効果を得ることができることが、上記と同様の実験によって確認することができた。
【0091】
反射層は、必ずしも金属膜と透明薄膜とが積層されたものとしなくてもよく、また、この反射層は、0.01Pa以上、100Pa以下の環境中で気相法によって形成されたものに限るものではない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による放射線像変換パネルの概略構成示す図
【図2】放射線像変換パネルに記録された放射線像を検出する様子を示す図
【図3】壁面に反射層が形成されていない放射線像変換パネルから放射線像を検出する様子を示す図
【符号の説明】
10 基板
11 凸部
12 壁面
20 反射層
30 輝尽性蛍光体層
40 保護層
100 放射線像変換パネル
Claims (5)
- 凹凸表面を有する基板と、前記凹凸表面の前記基板の厚さ方向に延びる壁面を含む前記凹凸表面の略全面に形成された輝尽発光光を反射する反射層と、該反射層上に形成された輝尽性蛍光体の柱状構造からなる輝尽性蛍光体層とを備えていることを特徴とする放射線像変換パネル。
- 前記反射層が、前記輝尽発光光に対する反射率が50%以上であり、かつ、透過率が5%以下であることを特徴とする請求項1記載の放射線像変換パネル。
- 前記反射層が、前記輝尽性蛍光体層へ照射される励起光に対する透過率が5%以下であることを特徴とする請求項1または2記載の放射線像変換パネル。
- 前記反射層が、金属膜と透明薄膜とが積層されたものであることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の放射線像変換パネル。
- 前記反射層が、0.01Pa以上、100Pa以下の環境中で気相法により形成されたものであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の放射線像変換パネル。
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KR20180124010A (ko) * | 2016-03-18 | 2018-11-20 | 제이엑스티지 에네루기 가부시키가이샤 | 광학 위상차 부재, 광학 위상차 부재를 포함하는 복합 광학 부재 및 광학 위상차 부재의 제조 방법 |
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2002
- 2002-12-25 JP JP2002374347A patent/JP2004163383A/ja not_active Withdrawn
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