JP2004163274A - 転舵量検出装置および複合型転舵量検出装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】駆動ロッドの移動により操舵車輪を転舵する転舵装置の転舵量検出装置を改良する。
【解決手段】駆動ロッド40に、横断面形状がハウジング42に対する相対回転の中心線を中心とする円をなし、直径が長手方向に沿って直線的に漸変する被検出部90を設け、ハウジング92に被検出部90と対向してホール素子式センサ92を設ける。駆動ロッド40を長手方向に移動させ、操舵車輪を転舵するとき、被検出部90とセンサ92との長手方向の相対位置に対応する電気信号と零点規定値とから駆動ロッド40の位置を取得し、絶対転舵量を取得する。駆動ロッド40とハウジング42とが相対回転しても被検出部90とセンサ92との距離は変化せず、検出誤差の発生が抑制される。パルスロータ110,112,電磁ピックアップ114,116を含む相対転舵量検出装置84の併用により、その零点決定後はパルス数のカウントにより絶対転舵量を高精度で得る。
【選択図】 図3
【解決手段】駆動ロッド40に、横断面形状がハウジング42に対する相対回転の中心線を中心とする円をなし、直径が長手方向に沿って直線的に漸変する被検出部90を設け、ハウジング92に被検出部90と対向してホール素子式センサ92を設ける。駆動ロッド40を長手方向に移動させ、操舵車輪を転舵するとき、被検出部90とセンサ92との長手方向の相対位置に対応する電気信号と零点規定値とから駆動ロッド40の位置を取得し、絶対転舵量を取得する。駆動ロッド40とハウジング42とが相対回転しても被検出部90とセンサ92との距離は変化せず、検出誤差の発生が抑制される。パルスロータ110,112,電磁ピックアップ114,116を含む相対転舵量検出装置84の併用により、その零点決定後はパルス数のカウントにより絶対転舵量を高精度で得る。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、操舵車輪を転舵する転舵装置の転舵量を検出する転舵量検出装置に関するものであり、特に、検出精度の低下の抑制に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転舵装置においては、駆動ロッドがロッド駆動装置により長手方向に移動させられ、その駆動ロッドに接続された車両の操舵車輪の向きが変えられる。ロッド駆動装置は、運転者により操作される操舵部材を駆動源とするものと、動力により作動する動力アクチュエータを駆動源とするものとがある。本発明は、いずれの場合にも適用可能であるが、転舵量の検出が特に重要であるのは、動力アクチュエータを駆動源とするものであるので、それに適用して特に効果的なものである。動力アクチュエータを駆動源とする転舵装置の代表的なものは、操舵部材の操舵量を検出し、その検出値に応じた転舵角が得られるように動力アクチュエータを電気的に制御する電気制御操舵装置である(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
電気制御操舵装置においては、転舵量検出装置が設けられ、絶対的な転舵量が検出される。操舵車輪の転舵角あるいはそれと一対一に対応する物理量である転舵量が検出されるのであり、検出された転舵量と操舵部材の操舵量とに基づいて動力アクチュエータの制御量の決定等が行われる。転舵量検出装置は、例えば、駆動ロッドの外周面に設けられた磁気スケールと、駆動ロッドを長手方向に移動可能に保持するハウジングに設けられたセンサ部とを備え、センサ部と磁気スケールとの相対移動により得られる電気信号に基づいて駆動ロッドの長手方向の位置が検出され、転舵量が検出されるように構成される。駆動ロッドは操舵車輪に接続され、その長手方向の移動によって操舵車輪が転舵されるため、駆動ロッドの長手方向の位置は操舵車輪の転舵位置(角度,方向)と一義的に対応しており、その位置の検出に基づいて絶対的な転舵量が取得されるのである(特許文献1参照)。駆動ロッドの長手方向位置を検出する装置は、この他にも種々知られているが、駆動ロッドに設けられた被検出部とハウジングに設けられたセンサ部とを含むように構成されることが多い。
【0004】
【特許文献1】
実開平5−46655号公報
【特許文献2】
実開平5−37645号公報
【特許文献3】
特開2000−128002号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
しかしながら、従来の転舵量検出装置にはなお改良の余地がある。例えば、駆動ロッドの外周面に長手方向に平行な一平面が形成され、その一平面上に磁気スケール等の被検出部が設けられ、センサ部との距離が一定となるようにされるのであるが、駆動ロッドとハウジングとに相対回転が生ずれば、被検出部とセンサ部との間の距離が変化し、検出誤差発生の一因となる。駆動ロッドのハウジングに対する相対回転を防止する相対回転防止装置が設けられるのであるが、多少の相対回転が生じることは避け得ない。この相対回転に伴う被検出部とセンサ部との間の距離の変動量はそれほど大きくないのが普通であるが、被検出部とセンサ部との間の距離自体が小さいため、距離に対する変動量の割合は大きく、検出誤差発生の一因となるのである。また、駆動ロッドがハウジングに対して、駆動ロッドの長手方向に直角な向であって、被検出部がセンサ部に接近,離間する方向において相対移動することもあり、それによっても被検出部とセンサ部との間の距離が変動し、検出誤差発生の一因となる。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景とし、転舵量検出装置の改良を課題として為されたものであり、本発明によって、下記各態様の転舵量検出装置および複合型転舵量検出装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0007】
なお、以下の各項において、 (1)項および (2)項が請求項1に相当し、 (4)項が請求項2に、 (9)項が請求項3に、(11)項が請求項4に、(13)項が請求項5に、(14)項が請求項6に、(18)項,(19)項および(20)項を併せた項が請求項7にそれぞれ相当する。
【0008】
(1)長手形状をなす駆動ロッドと、その駆動ロッドを長手方向に移動可能に保持するハウジングと、それら駆動ロッドとハウジングとの間に設けられ、駆動ロッドをハウジングに対して前記長手方向に移動させるロッド駆動装置とを備え、前記駆動ロッドが車両の操舵車輪に接続される転舵装置に設けられ、その転舵装置の転舵量を検出する転舵量検出装置であって、
前記駆動ロッドおよび前記ハウジングにそれぞれ設けられた第一部および第二部を備え、それら第一部および第二部の前記長手方向における相対位置に対応する電気信号を発生させる検出部と、
その検出部の電気信号に基づいて前記駆動ロッドの前記長手方向の位置を取得するロッド位置取得部と
を含む転舵量検出装置。
転舵装置の転舵量は、操舵車輪の転舵角が得られる量であればよいが、本項では、駆動ロッドの長手方向の移動位置に基づいて取得される。
本項は、本発明を説明する都合上、便宜的に作成した項である。
【0009】
(2)前記駆動ロッドの前記ハウジングに対する相対回転と前記長手方向に直角な方向の相対移動との少なくとも一方の、前記電気信号に対する悪影響を軽減する悪影響軽減手段を含む (1)項に記載の転舵量検出装置。
本項の転舵量検出装置によれば、駆動ロッドのハウジングに対する相対回転と長手方向に直角な方向の相対移動との少なくとも一方が生じても、電気信号に対する悪影響が軽減され、転舵量の検出誤差の発生が抑制される。
【0010】
(3)前記第二部が、前記長手方向と直交する方向において前記駆動ロッドに対向する状態で前記ハウジングに固定されたセンサ部を含み、前記第一部が、前記駆動ロッド自体に前記センサ部からの距離が長手方向に沿って漸変する状態で形成された被検出部を含む (1)項に記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドがロッド駆動装置によって長手方向に移動させられれば、被検出部とセンサ部との距離が変化し、その距離に応じてセンサ部の出力が変化し、第一部と第二部との駆動ロッドの長手方向における相対位置が検出される。
被検出部のセンサ部からの距離は、駆動ロッドの長手方向に沿って段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。連続的に変化させる場合、直線的に変化させても、曲線的に変化させてもよい。連続的に変化させれば、第一部と第二部との駆動ロッドの長手方向における相対位置が連続的に検出され、駆動ロッドの長手方向の位置が連続的に検出されて転舵量が連続して検出される。
本項の転舵量検出装置によれば、駆動ロッド自体に被検出部が設けられるため、駆動ロッドを利用して転舵量検出装置の構成を簡単にすることができる。
【0011】
(4)前記第二部が、前記長手方向と直交する方向において前記駆動ロッドに対向する状態で前記ハウジングに固定されたセンサ部を含み、前記第一部が、前記駆動ロッド自体に、少なくとも前記センサ部に対向する部分の横断面形状がその駆動ロッドの前記ハウジングに対する相対回転の中心線を中心とする円の一部をなし、その円の直径が長手方向に沿って漸変する状態で形成された被検出部を含み、その横断面形状が円の一部をなすことにより、駆動ロッドとハウジングとの相対回転にかかわらず前記センサ部の電気信号が変化しない構造とされたことが前記悪影響軽減手段を構成している (2)項に記載の転舵量検出装置。
被検出部は、製造の容易さの点からは、駆動ロッドの一部が横断面形状が円形で直径が長手方向に沿って漸変する部分とされることが望ましいが、駆動ロッドとハウジングとの相対回転角度は微小であるのが普通であるため、性能上はその相対回転角度の範囲内で円の一部をなすものとされればよい。円の直径の長手方向における変化は、直線的であっても曲線的であってもよい。駆動ロッドとハウジングとの相対移動に対して所望の電気信号が得られるように変化させられればよいのである。
被検出部の横断面形状が円の一部をなすため、駆動ロッドとハウジングとが相対回転しても、被検出部とセンサ部との距離は変化せず、相対回転がセンサ部の電気信号に悪影響を与えることが回避される。
【0012】
(5)前記被検出部が磁性材料製であり、前記センサ部が、励磁コイルと検出コイルとを含み、前記被検出部までの距離の変化に応じて前記検出コイルに発生する電圧を前記電気信号とする可変インダクタンス式センサを含む (3)項または (4)項に記載の転舵量検出装置。
センサ部の被検出部までの距離は、駆動ロッドの長手方向に沿って漸変させられており、センサ部から出力される電気信号はセンサ部と被検出部との駆動ロッドの長手方向における相対位置に対応し、それに基づいて駆動ロッドの長手方向の位置が取得される。
(6)前記被検出部が磁性材料製であり、前記センサ部が、永久磁石とホール素子とを含み、前記被検出部までの距離に応じて前記ホール素子に発生する電圧を前記電気信号とするホール素子式センサを含む (3)項または (4)項に記載の転舵量検出装置。
【0013】
(7)前記第一部と前記第二部との一方が前記長手方向に延びる電気抵抗層を含み、他方が、その電気抵抗層上を摺動する摺動片を含む (1)項ないし (6)項のいずれかに記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドが長手方向に移動させられれば、摺動片と電気抵抗層とが駆動ロッドの長手方向において相対移動させられ、抵抗値が変化する。抵抗値は摺動片と電気抵抗層との駆動ロッドの長手方向における相対位置に対応し、それに基づいて駆動ロッドの長手方向の位置が取得される。
【0014】
(8)前記第一部と前記第二部との一方が前記長手方向に延びる電気抵抗層を含み、他方が、その電気抵抗層上を摺動する摺動片を保持する板ばねを含み、その板ばねが、前記第一部と前記第二部との前記長手方向と直交する方向の相対移動を弾性変形により吸収する形状を有し、そのことが前記悪影響軽減手段を構成している (2)項の転舵量検出装置。
第一部と第二部とが駆動ロッドの長手方向と直交する方向に相対移動させられる場合、この相対移動が板ばねの弾性変形により吸収される。厳密には、板ばねの弾性変形に伴って、摺動片の電気抵抗層に対する位置が変化するが、この変化は実用上無視し得るほど小さくすることが容易である。例えば、板ばねを駆動ロッドとほぼ平行に延びる状態で設ける。例えば、基端部を駆動ロッドとハウジングとの一方に固定し、自由端部を他方に接触させるのであるが、駆動ロッドとハウジングとの一方と基端部との一方に、駆動ロッドの長手方向と直交する方向に突出する突状の固定部を設けて基端部を固定し、自由端部に電気抵抗層に接触する接触片を保持させ、あるいは接触片を構成する接触部を設けて、駆動ロッドとハウジングとの他方に接触させ、基端部と自由端部との間の部分は駆動ロッドにも電気抵抗層にも接触せず、駆動ロッドとほぼ平行となるように設ける。それにより板ばねの自由端部、すなわち摺動片の、駆動ロッドの長手方向の位置の変化が小さくされ、駆動ロッドの長手方向と直交する方向の移動の悪影響が軽減され、検出誤差が小さくて済む。
【0015】
(9)前記第一部と前記第二部との一方が前記長手方向に延びる電気抵抗層を含み、他方が、その電気抵抗層上を摺動する摺動片を含み、その電気抵抗層の前記摺動片との摺動面が前記駆動ロッドの前記ハウジングに対する相対回転の中心線を中心線とする円筒面の少なくとも一部をなし、その相対回転に伴う電気抵抗層と摺動片との前記中心線まわりの相対回転を許容する構造とされたことが、前記悪影響軽減手段を構成している(2)項または (8)項に記載の転舵量検出装置。
本項によれば、駆動ロッドとハウジングとが相対回転しても、摺動片と電気抵抗層との接触部の、駆動ロッドの長手方向の位置は変わらず、検出誤差の発生が回避される。
本項と (8)項とを組み合わせれば、駆動ロッドのハウジングに対する相対回転と駆動ロッドの長手方向と直交する方向の相対移動との両方について、電気抵抗層と摺動片との駆動ロッドの長手方向における相対位置の検出への悪影響が軽減され、駆動ロッドの位置の検出誤差の発生が抑制される。
【0016】
(10)前記第一部および前記第二部の一方が、励磁コイルおよび検出コイルと、前記長手方向に平行に延びて前記励磁コイルおよび検出コイル内に嵌入可能な磁性材料製ロッドと備えた差動トランスを含み、他方が前記磁性材料製ロッドを前記長手方向に移動させるロッド駆動部を含む (1)項ないし (9)項のいずれかに記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドが長手方向に移動させられれば、磁性材料製ロッドが励磁コイルおよび検出コイルに対して相対移動させられ、検出コイルから発せられる電気信号が変化し、励磁コイルおよび検出コイルと磁性材料製ロッドとの駆動ロッドの長手方向における相対位置が検出される。
【0017】
(11)前記第一部および前記第二部の一方が、励磁コイルおよび検出コイルと、前記長手方向に平行に延びて前記励磁コイルおよび検出コイル内に嵌入可能な磁性材料製ロッドと、その磁性材料製ロッドを前記長手方向に平行な一方向に付勢する付勢装置とを備えた差動トランスを含み、前記第一部および前記第二部の他方が、前記長手方向に直角な当接面において前記磁性材料製ロッドと当接して前記付勢装置の付勢力に抗して磁性材料製ロッドを移動させるロッド駆動部を含み、前記当接面が前記磁性材料製ロッドの前記長手方向に直角な方向の相対移動を許容するようにされたことが前記悪影響軽減手段を構成している (2)項に記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドが長手方向に移動させられるとき、磁性材料製ロッドは付勢装置の付勢により当接面に追従して励磁コイルおよび検出コイル内を移動し、それらの駆動ロッドの長手方向における相対位置が検出される。
本項の転舵量検出装置においては、駆動ロッドとハウジングとが、駆動ロッドの長手方向に直角な方向において相対移動することがあっても、磁性材料製ロッドは当接面に対する相対移動を許容されているため、ロッド駆動部と共に励磁コイルおよび検出コイルに対して相対移動することはなく、励磁コイルおよび検出コイルに対する相対移動による検出精度の低下が少なくて済む。
磁性材料製ロッドは長手形状をなし、励磁コイルおよび検出コイルに嵌入させられて、それらの中を軸方向に移動させられるため、その半径方向の移動は規制されており、磁性材料製ロッドとロッド駆動部との、駆動ロッドの長手方向に直角な方向の相対移動を許容しなくても、その相対移動による磁性材料製ロッドの励磁コイルおよび検出コイルに対する変位が、それらの相対位置の検出に与える影響は少ないが、本項におけるように相対移動を許容すれば、影響がより少なくて済む。
【0018】
(12)前記第一部および前記第二部の一方が、前記長手方向と直角に立体交差する回転軸線まわりに回転可能な回転体と、その回転体に巻き付けられて先端部が回転体の回転を伴って引き出し可能な紐状体と、前記回転体を前記先端部が回転体側に引っ込む向きに付勢する付勢装置と、前記回転体の回転角度に応じた電気信号を発生させる回転センサとを備えた検出器を含み、前記第一部および前記第二部の他方が、前記紐状体の先端を固定的に保持する保持部を含む (1)項ないし(11)項のいずれかに記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドが長手方向に移動させられれば、紐状体が付勢装置の付勢力に抗して回転体を回転させつつ引き出され、あるいは付勢装置の付勢によって回転体が回転させられることにより、紐状体が回転体側に引き込まれる。そのため、回転体の回転角度は、検出器と保持部との相対位置に対応し、その相対位置が検出される。
【0019】
(13)前記第一部および前記第二部の一方が、前記長手方向と直角に立体交差する回転軸線まわりに回転可能な回転体と、その回転体に巻き付けられて先端部が回転体の回転を伴って引き出し可能な紐状体と、前記回転体を前記先端部が回転体側に引っ込む向きに付勢する付勢装置と、前記回転体の回転角度に応じた電気信号を発生させる回転センサとを備えた検出器を含み、前記第一部および前記第二部の他方が、前記紐状体の先端部が前記駆動ロッドの長手方向に平行に延びる姿勢でその先端部の先端を固定的に保持する保持部を含み、前記紐状体の先端部が前記駆動ロッドの長手方向に平行に延び、前記保持部の前記長手方向に直角な方向の移動にかかわらず前記回転センサの電気信号が事実上変化しないようにされていることが前記悪影響軽減手段を構成している (2)項に記載の転舵量検出装置。
検出器と保持部とが最も接近した状態におけるそれらの間の距離、すなわち紐状体の回転体からの最小引き出し量を設定量以上とすることにより、駆動ロッドとハウジングとが、駆動ロッドの長手方向に直角な方向に相対移動しても、保持部と検出器との、駆動ロッドの長手方向における距離が事実上変化せず、回転センサの電気信号が事実上変化しないようにすることができる。
【0020】
(14)長手形状をなす駆動ロッドと、その駆動ロッドを長手方向に移動可能に保持するハウジングと、それら駆動ロッドとハウジングとの間に設けられ、駆動ロッドをハウジングに対して前記長手方向に移動させるロッド駆動装置とを備え、前記駆動ロッドが車両の操舵車輪に接続される転舵装置に設けられ、その転舵装置の転舵量を検出する転舵量検出装置であって、
前記長手方向と直交する方向において前記駆動ロッドに対向する状態で前記ハウジングに固定されたセンサ部と、
前記駆動ロッド自体に、前記センサ部からの距離が長手方向に沿って変化する状態で形成された被検出部と
を含む転舵量検出装置。
被検出部のセンサ部からの距離は、段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。連続的に変化させる場合、直線的に変化させてもよく、曲線的に変化させてもよい。連続的に変化させれば、被検出部とセンサ部との駆動ロッドの長手方向における相対位置が連続して検出され、転舵量が連続して検出される。
駆動ロッドが長手方向に移動させられれば、被検出部のセンサ部からの距離が変化し、被検出部とセンサ部との、駆動ロッドの長手方向における変位が検出され、それに基づいて転舵量を検出することができる。
本項の転舵量検出装置においては、駆動ロッド自体に被検出部が設けられており、転舵量検出装置の構成を簡単にすることができる。
【0021】
(15)前記被検出部が、横断面形状が円形であり、直径が前記長手方向に沿って漸変する直径漸変部を含む(14)項に記載の転舵量検出装置。
本項の転舵量検出装置によれば、例えば、駆動ロッドとハウジングとが相対回転しても、センサ部の出力が変化させられて検出精度が低下することが回避される。
(16)前記被検出部が、前記転舵装置の中立位置に対応する部分において前記センサ部からの距離が急変する急変部を含む(14)項または(15)項に記載の転舵量検出装置。
被検出部のセンサ部からの距離の急変によりセンサ部の出力が急変し、転舵装置の中立位置が検出される。それにより、例えば、中立位置を零点として転舵量を検出することができる。
【0022】
(17)車輪が直進状態にあることを検出する車両直進状態検出手段と、
車両の直進状態検出時に当該転舵量検出装置の基準点を決定する基準点決定手段と
を含む (1)項ないし(16)項のいずれかに記載の転舵量検出装置。
転舵量検出装置の基準点は、車両が直進状態にある場合に設定されることが望ましく、転舵量検出装置の基準点が零点とされることが望ましい。車両の直進状態が検出される毎に零点が決定されるようにすれば、センサ部や転舵装置の、経時変化や温度変化に起因する変化による転舵量の検出精度の低下が抑制される。
【0023】
(18) (1)項ないし(17)項のいずれかに記載の転舵量検出装置である絶対転舵量検出装置と、
前記ロッド駆動装置の構成要素である回転体の回転角度を検出することにより前記転舵装置の相対転舵量を検出する相対転舵量検出装置と
を含む複合型転舵量検出装置。
絶対転舵量は絶対的に定まった基準位置(例えば、中立位置)からの操舵車輪の転舵角に対応する量であり、相対転舵量は、操舵車輪の任意の位置を基準とした転舵角に対応する量、すなわち、任意の位置からの転舵量の変化量に対応する量である。相対転舵量であっても、上記任意の位置が中立位置等の絶対的に定まった基準位置に設定されれば、絶対転舵量と一致する。すなわち、絶対転舵量を検出することができるのである。ロッド駆動装置の構成要素である回転体は、複数回転するのが普通であり、回転体の回転角度を検出すれば検出の分解能を上げることは容易であるが、絶対転舵量を検出し得るものとすれば、構造が複雑となって製造コストが高くなってしまう。一方、駆動ロッドの長手方向の位置に基づいて転舵量を検出する絶対転舵量検出装置は、分解能を高くすることが困難である。そこで、絶対転舵量検出装置と相対転舵量検出装置とを併せて用いれば、例えば、相対転舵量検出装置の零点等の基準点が決定されていない状態においては絶対転舵量検出装置の検出結果を転舵量として採用し、基準点が決定された後には、相対転舵量検出装置の検出結果を転舵量として採用することにより、比較的安価な装置でありながら、作動初期から絶対転舵量を得ることができ、かつ、相対転舵量検出装置の基準点が決定された後は、絶対転舵量を高精度で得ることができる。
(19)前記絶対転舵量検出装置の検出結果と前記相対転舵量検出装置の検出結果とに基づいて最終的な転舵量を決定する最終転舵量決定部を含む(18)項に記載の複合型転舵量検出装置。
(20)前記最終転舵量決定部が、当該複合型転舵量検出装置の検出初期に前記絶対転舵量検出装置により検出された転舵量を最終転舵量に決定する初期転舵量決定部を含む(19)項に記載の複合型転舵量検出装置。
ここにおいて検出初期は、車両の電源投入後、相対転舵量検出装置の零点等基準点がまだ決定されていない状態である。相対転舵量検出装置では、一旦基準点が決定され、その基準点を基準とする転舵量の最終値(電源OFF直前の値であり、この値は電源OFF直前の絶対転舵量を表す)の記憶が電源OFFの状態で維持されるようにしても、電源OFFの状態で転舵量が変われば記憶値は正しい絶対転舵量を表さなくなるため、検出初期には記憶値を転舵制御のために使用することはできない。それに対し、絶対転舵量検出装置により検出された転舵量を最終転舵量に決定することにより、検出初期から転舵装置に操舵車輪の転舵制御を行わせることができる。
(21)前記最終転舵量決定部が、前記絶対転舵量検出装置の検出結果に基づいて前記相対転舵量検出装置の基準点を決定する基準点決定部を含む(19)項または(20)項に記載の複合型転舵量検出装置。
例えば、絶対転舵量検出装置の零点等基準点が予め設定されているのであれば、絶対転舵量が基準点に相当する値になった時、相対転舵量検出装置の基準点が決定される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態である転舵量検出装置および複合型転舵量検出装置を備えた電気制御操舵装置を図1に示す。この電気制御操舵装置は、操舵部材としてのステアリングホイール10,操舵量検出装置の一種である操舵角検出装置としてのロータリエンコーダ12,反力付与装置14,転舵装置16および制御装置18を含んでいる。ステアリングホイール10は、ステアリングシャフト20の一端部に連結されており、運転者により操作され、操作が解除されれば、ステアリングシャフト20の他端部と車体22との間に配設されたねじればね24により、所定の中立位置に復帰させられる。ねじればね24は所定の弾性力を有し、戻し装置を構成する。
【0025】
ステアリングシャフト20に、前記ロータリエンコーダ12が取り付けられており、ステアリングホイール10の操作量である操舵量としての操舵角を検出する。本実施形態においては、ロータリエンコーダ12は、ステアリングホイール10が中立位置に位置する状態での操舵角を0度、ステアリングホイール10が中立位置から、運転者から見て時計方向であって、車両を右旋回させる向きに操作された場合の操舵角を正の値、逆方向に操作された場合の操舵角を負の値で検出するように構成されている。本実施形態では、ステアリングホイール10がいずれの回転位置にあっても、時計方向の回転操作が正方向(右方向)の操作であり、反時計方向の回転操作が負方向(左方向)の操作である。
【0026】
前記反力付与装置14は、本実施形態においては電動モータ32を駆動源として構成されており、ステアリングシャフト20と同心に設けられ、ステアリングホイール10に、その操作方向とは方向が逆であって、操舵角等に応じた大きさの力である操舵反力を与える。以後、電動モータ32を反力モータ32と称する。
【0027】
転舵装置16は、図1ないし図3に示すように、駆動ロッド40,ハウジング42およびロッド駆動装置44を備えている。ハウジング42は車体に、その長手方向が車両の左右方向と平行な姿勢で固定して設けられており、長手形状をなす駆動ロッド40は、ハウジング42内に長手方向に移動可能に保持されている。ロッド駆動装置44は、それら駆動ロッド40とハウジング42との間に設けられ、駆動ロッド40をハウジング42に対して長手方向に移動させる。なお、図示は省略するが、駆動ロッド40とハウジング42との間には相対回転阻止装置が設けられ、駆動ロッド40のハウジング42に対する相対回転が阻止されている。
【0028】
ロッド駆動装置44は、図3に示すように、駆動源としての電動モータ50および電動モータ50の回転を駆動ロッド40の長手方向の移動に変換する運動変換装置52を含む。電動モータ50は、ハウジング42に設けられたコイル54,円筒状をなし、ハウジング42により軸受56を介してその中心線まわりに回転可能に支持されたロータ58,ロータ58に設けられた永久磁石60を備え、駆動ロッド40はロータ58内に長手方向に移動可能に嵌合されている。
【0029】
運動変換装置52は、ロータ58の回転軸線方向における一端部の内側に固定して設けられたナット64と、駆動ロッド40に設けられ、ナット66とボールを介して噛み合わされたねじ部68とを含む。電動モータ50のコイル54に電流が供給されれば、ロータ58が回転させられるとともにナット64が回転させられ、それにより駆動ロッド40が長手方向に移動させられる。ねじ部68は減速機としても機能し、電動モータ50の回転を減速する。また、電動モータ50への供給電流の方向を変えることにより、駆動ロッド40の移動方向が変えられる。
【0030】
駆動ロッド40の両端部はそれぞれ、図1に示すように、ナックルアーム74およびタイロッド76によって車両の操舵車輪78に接続されており、駆動ロッド40が長手方向に移動させられることにより、操舵車輪78が左方向あるいは右方向に向けられ、転舵される。以後、電動モータ50を転舵モータ50と称する。本実施形態においては、ステアリングホイール10が正方向に回転操作されることにより、操舵車輪78が右方向であって正方向に転舵され、ステアリングホイール10が負方向に回転操作されることにより、操舵車輪78が左方向であって負方向に操舵される。ステアリングホイール10が正方向に操作され、操舵車輪78が正方向へ転舵される際に転舵モータ50に供給される電流の方向および駆動ロッド40の移動方向を正方向、ステアリングホイール10が負方向に操作され、操舵車輪が負方向へ転舵される際に転舵モータ50に供給される電流の方向および駆動ロッド40の移動方向を負方向とする。
【0031】
上記のように構成された転舵装置16の転舵量は、複合型転舵量検出装置80により検出される。複合型転舵量検出装置80は、図2および図3に示すように、絶対転舵量検出装置82および相対転舵量検出装置84を含む。なお、これら図において示されているのは、絶対,相対各転舵量検出装置82,84の一部である。
【0032】
絶対転舵量検出装置82を説明する。
絶対転舵量検出装置82は、図3に示すように、駆動ロッド40に設けられ、第一部を構成する被検出部90と、ハウジング42に設けられ、第二部を構成するホール素子式センサ92とを含む。ホール素子式センサ92は、本実施形態においては、永久磁石94,ホール素子96およびアンプ98を含み、ハウジング42の長手方向において転舵モータ50に隣接する部分に、駆動ロッド40の長手方向(軸線)と直交する方向において駆動ロッド40に対向する状態で固定されている。ホール素子96には定電流が供給される。
【0033】
駆動ロッド40は、本実施形態においては、その横断面形状が、駆動ロッド40のハウジング42に対する相対回転の中心線を中心とする円を成すものとされており、そのホール素子式センサ92と対向する部分は、横断面形状である円の直径が長手方向に沿って直線的に連続して変化する状態で形成され、被検出部90が形成されている。被検出部90は、本実施形態では、駆動ロッド40自体にホール素子式センサ92からの距離が長手方向に沿って漸変する状態で形成されており、直径漸変部なのである。被検出部90およびホール素子式センサ92は、操舵車輪78が中立位置に位置する状態において、被検出部90の駆動ロッド40の長手方向における中央部がホール素子式センサ92と対向するとともに、被検出部90の軸線とホール素子式センサ92の軸線とが直交する状態で設けられている。本実施形態においては、操舵車輪78が中立位置に位置し、車両が直進状態にあって転舵装置16が中立位置にある状態において、後述するように、絶対転舵量検出装置82の零点が決定され、基準点が決定される。
【0034】
駆動ロッド40は、本実施形態においては磁性材料である鋼により作られており、被検出部90は磁性材料製である。そのため、永久磁石94,被検出部90およびホール素子96を通る磁路が形成され、ホール素子96に電圧が発生する。この電圧はアンプ98により増幅され、電気信号としてホール素子式センサ92から出力される。ホール素子96に発生する電圧は磁界が強いほど大きく、ホール素子96と被検出部90との距離が短いほど磁界が強くなり、ホール素子96に発生する電圧も大きくなる。被検出部90は、駆動ロッド40に、ホール素子式センサ92からの距離が駆動ロッド40の長手方向に沿って直線的に変化する状態で形成されており、駆動ロッド40が長手方向に移動させられれば、ホール素子式センサ92と被検出部90との距離が変化し、それに応じてホール素子96に発生する電圧が図4に示すように直線的に変化して、駆動ロッド40の長手方向における相対位置に対応する電気信号が得られる。
【0035】
被検出部90は駆動ロッド40に設けられ、ホール素子式センサ92はハウジング42に設けられており、被検出部90とホール素子式センサ92との駆動ロッド40の長手方向における相対位置は、駆動ロッド40とハウジング42との上記長手方向における相対位置であり、基準点の設定により、ホール素子式センサ92が発する電気信号に基づいて駆動ロッド40の長手方向の絶対位置が取得される。この位置は操舵車輪78の転舵角に対応しており、駆動ロッド40の長手方向の絶対位置を検出することにより、転舵装置16の絶対転舵量が検出される。
【0036】
相対転舵量検出装置84を説明する。
相対転舵量検出装置84は、図3に示すように、前記転舵モータ50のロータ58に固定して設けられた被検出部たる回転体としての一対のパルスロータ11,112と、ハウジング42にパルスロータ110,112にそれぞれ対向して固定された検出部としての電磁ピックアップ114,116とを含む。電磁ピックアップ114,116はそれぞれ、図示は省略するが、コイルおよび永久磁石を含む。パルスロータ110,112は同様に構成され、それぞれ外周面に等角度間隔に設けられた複数の歯を有する。パルスロータ110,112はロータ58に、歯1個分、互いに位相をずらした状態で固定されている。
【0037】
転舵モータ50に電流が供給され、ロータ58が回転させられれば、パルスロータ110,112が回転させられる。それによりパルスロータ110,112の各々の複数の歯が電磁ピックアップ114,116に繰り返し接近,離間し、電磁ピックアップ114,116からそれぞれパルス信号が発せられる。電磁ピックアップ114,116からそれぞれ発せられるパルス信号は互いに歯1個分、ずれている。そのため、ロータ58の回転方向に応じて、電磁ピックアップ114,116からそれぞれ発せられるON信号,OFF信号の発生タイミング(順序)が異なり、電磁ピックアップ114,116の出力信号からロータ58の回転方向が得られ、操舵車輪78の転舵方向が得られる。
【0038】
電磁ピックアップ114,116から発せられるパルス信号のパルス数はそれぞれ、ロータ58の回転角度に比例し、駆動ロッド40の移動量に対応し、パルス数のカウントにより転舵装置16の相対転舵量が検出される。相対転舵量検出装置84の零点等基準点を決定すれば、その基準点を基準としてカウントされるパルス数に基づいて駆動ロッド40の位置が得られ、操舵車輪78の絶対転舵量が検出可能となる。
【0039】
制御装置18は、コンピュータ140を主体として構成されており、転舵装置16等を制御する。コンピュータ140は、CPU,ROM,RAM,入出力インタフェースおよびそれらを接続するバスを含んで構成されており、入出力インタフェースには、前記ロータリエンコーダ12,ホール素子式センサ92,電磁ピックアップ114,116,左,右の操舵車輪78の各角速度を検出する角速度センサ146,148等、各種センサ等が接続されている。コンピュータ140はまた、駆動回路142,144をそれぞれ介して反力モータ32および転舵モータ50等を制御する。本実施形態においては、これらコンピュータ140および駆動回路142,144等が制御装置18を構成している。コンピュータ140のROMには、図5にフローチャートで示す最終転舵量決定ルーチン等、各種プログラム等が記憶されている。
【0040】
コンピュータ140においては、ホール素子式センサ92から出力される電気信号に基づいて操舵車輪78の転舵角が演算される。本実施形態においては、操舵車輪78が中立位置にあり、駆動ロッド40が中立位置に位置るる状態において絶対転舵量検出装置82の零点が決定され、基準点が決定される。その状態で得られるホール素子式センサ92の出力値が零点を規定する零点規定値として記憶されるのであり、転舵角演算時におけるホール素子式センサ92の出力値と零点規定値との差から、転舵角演算時における駆動ロッド40の位置が得られ、その位置から操舵車輪78の転舵角が得られる。本実施形態において転舵角は、ホール素子式センサ92の出力値が零点規定値であって、駆動ロッド40が中立位置にあり、操舵車輪78が中立位置にある状態では0度、駆動ロッド40が中立位置より正方向側に移動させられていて、操舵車輪78が中立位置より正方向(右方向)側の領域において転舵される状態では正の値、逆の状態では負の値に演算される。
【0041】
また、コンピュータ140においては、相対転舵量検出装置84から出力されるパルスの数がカウンタによってカウントされる。パルス数のカウントは、パルスロータ110,112のうちの予め定められた一方について行われ、カウンタは、相対転舵量検出装置84の基準点としての零点の決定時に0にリセットされる。本実施形態においては、操舵車輪78が中立位置にある状態において、相対転舵量検出装置84の基準点である零点が決定され、カウンタは、ロータ58が正方向に回転させられて操舵車輪78が正方向に操舵されるとき、パルス数を加算し、ロータ58がフ負方向に回転させられて操舵車輪78が負方向に操舵されるとき、減算する。ロータ58の回転方向は、前述のように、電磁ピックアップ114,116の出力信号からわかる。相対転舵量検出装置84の零点が決定されれば、カウンタのカウント値は駆動ロッド40の長手方向の絶対位置を表し、転舵装置16の絶対転舵量を表すこととなり、このカウント値に基づいて操舵車輪78の転舵角が演算される。
【0042】
以上のように構成された電気制御操舵装置においては、ステアリングホイール10の操舵角がロータリエンコーダ12により検出され、操舵角に対応して目標転舵角が設定される。前述のように、本実施形態において操舵角は、操舵方向に応じて正負の符号を付して取得されるようにされており、目標転舵角も正負の符号を付して設定される。そして、操舵車輪78の実転舵角および目標転舵角に基づいて目標転舵角を得るために必要な電流が演算され、転舵モータ50に供給される。それにより転舵モータ50が駆動され、駆動ロッド40が長手方向に移動させられて操舵車輪78が転舵される。操舵角に対応する方向に対応する角度、転舵されるのである。この際、ステアリングホイール10の操舵角に応じた反力が反力付与装置14によってステアリングホイール10に付与されるが、反力の付与は本発明と関係が薄いため、説明を省略する。
【0043】
操舵車輪78の実際の転舵角である実転舵角は、複合型転舵量検出装置80による転舵装置16の転舵量の検出に基づいて検出される。転舵装置16の転舵量は、図5に示す最終転舵量決定ルーチンにより決定される。最終転舵量の決定を概略的に説明する。ここにおいて最終転舵量は実転舵角に換算される転舵量である。
【0044】
最終転舵量決定ルーチンにおいては、絶対転舵量検出装置82の基準点としての零点の決定および相対転舵量検出装置84の基準点としての零点の決定が行われ、車両のイグニッションスイッチのON後、相対転舵量検出装置84の零点が決定されるまでの間は、絶対転舵量検出装置82により検出された転舵量が最終転舵量に決定される。相対転舵量検出装置84の零点が決定されるまでの間が、複合型転舵量検出装置80の検出初期であり、相対転舵量検出装置84の零点が決定されれば、相対転舵量検出装置84により検出される転舵量が最終転舵量に決定される。相対転舵量検出装置84の零点は、絶対転舵量検出装置82のホール素子式センサ92の出力値が零点規定値である場合および車両の直進走行状態検出時に決定され、その決定後は、相対転舵量検出装置84の検出値は絶対転舵量を表し、最終転舵量に決定される。車両の直進状態の検出条件は、本実施形態においては、ステアリングホイール10の操舵角が0であり、かつ、左右の操舵車輪78の各角速度が同じであると見なしてよい状態が設定時間以上、継続することであり、その検出時には、絶対転舵量検出装置82の零点も決定される。絶対転舵量検出装置82および相対転舵量検出装置84の各零点の決定は、イグニッションスイッチがONの状態で常時、実行されており、検出毎に零点が更新される。
【0045】
以下、フローチャートに基づいて更に詳細に説明する。
最終転舵量決定ルーチンは、車両の電源投入により実行される。まず、ステップ1(以後、S1と略記する)ないしS4がそれぞれ実行され、ホール素子式センサ92が発する電気信号,電磁ピックアップ114,116の予め設定された一方が発するパルスをカウントするカウンタのカウント値,操舵角および左右の操舵車輪78の各角速度が読み込まれた後、車両が直進状態にあるか否かの判定が行われる。S5において操舵角が0度であるか否かが判定され、S6において左右の操舵車輪78の各角速度が等しいか否かが判定され、S7においては、操舵角が0度であって、左右の操舵車輪78の各角速度が等しく、S5およびS6の各判定結果がいずれもYESになって初めてS7が実行されてから設定時間が経過したか否かの判定が行われるのである。なお、本実施形態においては、説明を単純にするために、左右の操舵車輪78の各タイヤの径は同じであって、車両直進状態では各角速度がほぼ同じになることとする。
【0046】
操舵角が0度でなく、左右の操舵車輪78の各角速度が互いに異なっており、あるいは設定時間が経過していない状態では、S5〜S7のいずれかの判定結果がNOになってS13が実行され、フラグF1が1にセットされているか否かが判定される。フラグF1は、1にセットされることにより、車両の直進状態の検出に基づいて相対転舵量検出装置84の零点が決定されたことを記憶する。フラグF1が0にリセットされていれば、S13の判定結果はNOになってS14が実行され、フラグF2が1にセットされているか否かが判定される。フラグF2は、1にセットされることにより、イグニッションスイッチのON後、絶対転舵量検出装置82の零点検出により、相対転舵量検出装置84の零点が決定されたことを記憶する。
【0047】
フラグF2がリセットされていれば、S14の判定結果はNOになってS15が実行され、絶対転舵量検出装置82により検出される転舵量が零であるか否か、すなわちホール素子式センサ92の出力値が先のイグニッションスイッチのON時に記憶された絶対転舵量検出装置82の零点規定値と一致するか否かが判定される。絶対転舵量が零でなければ、S15の判定結果はNOになってS16が実行され、初期転舵量が決定される。
【0048】
S16においては、絶対転舵量検出装置82により検出される転舵量が最終転舵量に決定され、検出初期の最終転舵量である初期転舵量とされる。S1において読み込まれた電気信号と、絶対転舵量検出装置82の零点規定値とに基づいて駆動ロッド40の長手方向の位置が演算されるのである。ここではまだ、イグニッションスイッチのON後、絶対転舵量検出装置82の零点が決定されておらず、先にイグニッションスイッチがONの状態で取得された絶対転舵量検出装置82の零点規定値が演算に用いられる。そして、この初期転舵量に基づいて操舵車輪78の転舵角が演算される。このように初期転舵量を決定することにより、イグニッションスイッチON直後であっても絶対転舵量が得られ、転舵角の演算に使用し、操舵車輪78を転舵制御することができる。
【0049】
車両直進状態が検出されていないが、ホール素子式センサ92の出力値が零点規定値と一致する状態になれば、S15の判定結果がYESになってS17が実行され、フラグF2がセットされる。そして、S18が実行され、相対転舵量検出装置84の零点が決定され、相対転舵量検出装置84の基準点が決定される。
相対転舵量検出装置84から出力されるパルスの数をカウントするカウンタが0にリセットされるのであり、相対転舵量検出装置84の零点は、絶対転舵量検出装置82の検出結果に基づいて決定される。次いでS19が実行され、最終転舵量が0に決定される。
【0050】
絶対転舵量検出装置82の零点検出により相対転舵量検出装置84の零点が決定されれば、フラグF2がセットされるため、車両直進状態が検出されない状態では、S14の判定結果がYESになってS20が実行され、相対転舵量検出装置84の検出結果に基づいて最終転舵量が決定される。S20の実行時には、S18の実行により相対転舵量検出装置84の零点が決定されており、S2において読み込まれた相対転舵量検出装置84により検出された転舵量、すなわち電磁ピックアップ114,116が発するパルスの数をカウントするカウンタのカウント値は絶対転舵量を表し、その転舵量が最終転舵量に決定される。そして、操舵車輪78の転舵角は、このカウント値を用いて演算される。ここでは、相対転舵量検出装置84の零点が、絶対転舵量検出装置82の検出結果に基づいて決定されており、絶対転舵量検出装置82の検出結果と相対転舵量検出装置84の検出結果とに基づいて最終転舵量が決定される。
【0051】
車両直進状態が検出され、S7の判定結果がYESになればS8が実行され、フラグF1が1にセットされているか否かが判定される。フラグF1がセットされていなければ、S8の判定結果はNOになってS9が実行され、フラグF1が1にセットされる。次いで、S10が実行され、絶対転舵量検出装置82の零点が決定される。S1において読み込まれたホール素子式センサ92の出力値が零点を規定する零点規定値としてコンピュータ140のRAMに記憶されるのである。なお、この零点規定値は、車両の電源がOFFにされてもバックアップされて残される。そして、S11において相対転舵量検出装置84の零点が決定される。この零点の決定はS18と同様に行われ、次いでS12が実行されて最終転舵量が0に決定される。
【0052】
このように車両直進状態に基づいて相対転舵量検出装置84の零点が決定されれば、フラグF1がセットされるため、車両の直進状態が検出されず、次にS13が実行されるとき、その判定結果がYESになってS21が実行され、相対転舵量検出装置84が検出する転舵量が最終転舵量に決定される。
【0053】
絶対転舵量検出装置82および相対転舵量検出装置84の各零点は、本実施形態においては、一旦、決定された後も車両の直進状態が検出される毎に決定され、誤差の累積等による検出精度の低下が防止される。
【0054】
本実施形態の絶対転舵量検出装置82においては、被検出部90が、横断面形状が、駆動ロッド40のハウジング42に対する相対回転の中心線を中心とする円をなすものとされており、被検出部90とホール素子式センサ92との距離は、駆動ロッド40とハウジング42との位相を問わず、同じである。したがって、駆動ロッド40とハウジング42とが、それらの相対回転が阻止されているにもかかわらず、製造誤差,組付け誤差等によって相対回転することがあっても、その影響を受けることなく、ホール素子式センサ92が発する電気信号に対する悪影響が軽減され、絶対転舵量の検出誤差の発生が抑制される。
【0055】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ140のS5ないしS7を実行する部分が車両直進状態検出部を構成し、コンピュータ140のS10を実行する部分が絶対転舵量検出装置82の基準点決定手段を構成し、ホール素子式センサ92の出力値と零点規定値との差から駆動ロッド40の位置を取得する部分がロッド位置取得部を構成し、被検出部90およびホール素子式センサ92を備えた検出部と共に絶対転舵量検出装置82を構成している。 また、コンピュータ140のS11を実行する部分が相対転舵量検出装置84の基準点決定部を構成し、パルスロータ110,112,電磁ピックアップ114,116,パルスロータ110あるいは112が発生するパルスをカウントするカウンタ,コンピュータ140のカウンタにパルス数をカウントさせる部分およびS21を実行する部分と共に相対転舵量検出装置84を構成している。さらに、コンピュータ140のS16を実行する部分が初期転舵量決定部を構成し、S18を実行する部分が基準点決定部を構成し、S19,S20を実行する部分と共に最終転舵量決定部を構成している。
【0056】
本発明の別の実施形態を図6に基づいて説明する。なお、図6には、絶対転舵量検出装置のうち、本発明に関係の深い部分のみが概略的に図示されている。また、上記実施形態の構成要素と同じ作用を為す構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。図7以下の実施形態についても同様である。
【0057】
本実施形態の絶対転舵量検出装置150は、被検出部152と、センサ部としての可変インダクタンス式センサ154とを含む。被検出部152は駆動ロッド40に設けられ、前記実施形態の被検出部90と同様に構成されている。駆動ロッド40は磁性材料製とされている。可変インダクタンス式センサ154は、励磁・検出コイル158を含み、駆動ロッド40に対向する状態でハウジング42に固定されている。励磁・検出コイル156は、本実施形態においては、2つの異なるコイルである励磁コイルと検出コイルとが同心状に巻かれたものとされ、ハウジング42の内周側に固定されて駆動ロッド40の外側に配設されている。
【0058】
励磁・検出コイル156の励磁コイルには電流が供給されており、検出コイルには励磁・検出コイル156と被検出部152との距離に応じた電圧が発生し、電気信号として出力される。ステアリングホイール10が回転操作されて駆動ロッド40が長手方向に移動させられ、被検出部152が移動させられて可変インダクタンス式センサ154の被検出部152までの距離が変化すれば、それに応じて検出コイルに発生する電圧が変化する。したがって、出力される電気信号によって可変インダクタンス式センサ154と被検出部152との駆動ロッド40の長手方向における相対位置が得られ、その相対位置および基準点(零点)に基づいて駆動ロッド40の長手方向の位置を取得し、操舵車輪78の絶対転舵量を検出することができる。また、本実施形態においても、駆動ロッド40に設けられた被検出部152は横断面形状が円形をなし、駆動ロッド40とハウジング42とが相対回転しても、被検出部152と励磁・検出コイル156との距離は変化しないため、出力される電気信号は変化させられず、発生信号に悪影響を及ぼすことが回避される。
【0059】
本発明の更に別の実施形態を図7に基づいて説明する。
本実施形態の絶対転舵量検出装置170は、駆動ロッド40に設けられた被検出部172とハウジング42に固定されたホール素子式センサ174とを含む。
被検出部172は、第一直径漸変部176および第二直径漸変部178を含む。
【0060】
第一,第二直径漸変部176,178はそれぞれ、横断面形状が、駆動ロッド40のハウジング42に対する相対回転の中心線を中心とする円形をなし、その円の直径が駆動ロッド40の長手方向に沿って直線的に連続して変化させられ、ホール素子式センサ174からの距離が上記長手方向に沿って変化する状態で形成されている。これら第一,第二直径漸変部176,178は、傾斜角度は同じであるが、互いに逆向きに傾斜させられ、駆動ロッド40の長手方向において隣接して形成されている。第一,第二直径漸変部176,178はそれぞれ、横断面形状である円の直径が最大の部分において隣接するのであるが、第二直径漸変部178の最大直径は、第一直径漸変部176の最大直径より小さくされ、第一直径漸変部176と第二直径漸変部178との間には、ホール素子式センサ174からの距離が急変する急変部182が設けられている。また、第二直径漸変部178の最大直径は、第一直径漸変部176の最小直径よりも小さくされており、第一,第二直径漸変部176,178の直径は互いに異ならされている。ホール素子式センサ174は、前記ホール素子式センサ92と同様に構成されている。また、駆動ロッド40は磁性材料製とされている。
【0061】
被検出部172およびホール素子式センサ174は、転舵装置16および操舵車輪78が中立位置にあり、駆動ロッド40が中立位置に位置する状態において、急変部182がホール素子式センサ174と対向するように設けられている。
被検出部172は、転舵装置16の中立位置に対応する部分においてホール素子式センサ172からの距離が急変するのであり、被検出部172の出力値の急変により急変部182が検出され、転舵装置16および操舵車輪78が中立位置にあることが検出される。また、第一,第二直径漸変部176,178の各直径は互いに異ならされており、ホール素子式センサ172から発せられる電気信号により、駆動ロッド40の長手方向の位置が特定され、絶対転舵量が得られる。さらに、急変部182の検出に基づいて、例えば、相対転舵量検出装置の零点を決定することができる。
【0062】
被検出部172に急変部182を設ける場合、図8に示す絶対転舵量検出装置190のように、被検出部192の第一直径漸変部194および第二直径漸変部196を同じ方向に傾斜させてもよい。第一,第二直径漸変部194,196は、駆動ロッド40の長手方向において互いに隣接して設けられるとともに、第二直径漸変部196の横断面形状である円の最大直径は、第一直径漸変部194の横断面形状である円の最小直径より小さくされ、それらの間に、ホール素子式センサ198からの距離が急変する急変部200が設けられている。
【0063】
本絶対転舵量検出装置190においても、前記絶対転舵量検出装置170と同様に、ホール素子式センサ198の出力値に基づいて絶対転舵量が得られるとともに、急変部200がホール素子式センサ198によって検出されることにより転舵装置16の中立位置が検出される。
【0064】
本発明の更に別の実施形態を図9に示す。
本実施形態の絶対転舵量検出装置210は、駆動ロッド212に設けられた弾性部材の一種である板ばね214と、ハウジング216に設けられ、第二部を構成する電気抵抗層218とを含む。ハウジング216は、本実施形態においては円筒状をなし、電気抵抗層218はハウジング216の円筒面状をなす内周面に、駆動ロッド40の長手方向に延びる状態で設けられ、その板ばね214の自由端部が摺動する摺動面220は、ハウジング216の中心線であって、駆動ロッド212のハウジング216に対する相対回転の中心線を中心線とする円筒面の一部をなす。
【0065】
板ばね214は、本実施形態においては、概ね駆動ロッド212の長手方向に延び、基端部が駆動ロッド212に固定され、自由端側に向かうに従ってハウジング216に接近するように傾斜させられ、その自由端部が電気抵抗層218に接触させられて摺動片を構成している。本実施形態において板ばね214は長くされるとともに、その傾斜角度が小さくされている。なお、図9においては、わかり易くするために、板ばね214の傾斜角度が実際より誇張して図示されている。
【0066】
ステアリングホイール10が回転操作され、駆動ロッド212が長手方向に移動させられるとき、板ばね214の自由端部が電気抵抗層218の摺動面220上を摺動し、抵抗値が変化し、自由端部が接触する位置における抵抗値に応じた電圧が電気信号として出力される。本実施形態においては、摺動片214が電気抵抗層218の長手方向の一端部に接触する状態において電圧が0となり、摺動片214が電気抵抗層218の長手方向の他端部側へ摺動するに従って電圧が直線的に増大するようにされている。本絶対転舵量検出装置210においては、前記絶対転舵量検出装置82と同様に基準点が決定され、駆動ロッド212の位置が取得されて絶対転舵量が取得される。
【0067】
本実施形態においては、電気抵抗層218の摺動面220は円筒面の一部とされており、駆動ロッド212とハウジング216との相対回転に伴う電気抵抗層218と板ばね214との、駆動ロッド212のハウジング216に対する相対回転の中心線まわりの相対回転が許容される構造とされている。そのため、駆動ロッド212とハウジング216とが相対回転しても、板ばね214の電気抵抗層218とに接触する自由端部の駆動ロッド212の長手方向の位置は変わらず、検出誤差の発生が回避される。
【0068】
また、本実施形態においては、駆動ロッド212がハウジング216に対して、その長手方向と直交する方向において相対移動し、電気抵抗層218と板ばね214とが駆動ロッド212の長手方向と直交する方向に相対移動させられる場合、この相対移動が板ばね214の弾性変形により吸収される。厳密には、板ばね214の弾性変形に伴って、板ばね214の電気抵抗層218に対する駆動ロッド212の長手方向の位置が変化するが、本実施形態では、板ばね214が長くされるとともに、その傾斜角度が小さくされているため、電気抵抗層218と板ばね214との駆動ロッド212の長手方向と直交する方向の相対移動に伴って、板ばね214の傾斜が変化し、板ばね214の自由端部の、駆動ロッド212の長手方向の位置が変化しても、この位置の変化は小さくて済む。板ばね214の自由端部、すなわち摺動片の、駆動ロッド212の長手方向の位置の変化が小さいということは、駆動ロッド212の長手方向と直交する方向の移動の悪影響が軽減されるということであり、検出誤差が小さくて済む。
【0069】
本発明の更に別の実施形態を図10に示す。本実施形態の絶対転舵量検出装置230は、駆動ロッド232に設けられて第一部を構成するロッド駆動部234と、ハウジング236に設けられて第二部を構成する差動トランス238とを含む。差動トランス238は、励磁・検出コイル240と、駆動ロッド232の長手方向に延びて励磁・検出コイル240内に嵌入可能な磁性材料製ロッド242を含む。
【0070】
励磁・検出コイル240は、本実施形態においては、2つの異なるコイルである励磁コイルおよび検出コイルが同心状に巻かれ、ケーシング246内に収容されており、その内側に円筒状のガイド244が配設されるとともに、磁性材料製ロッド242が駆動ロッド232の長手方向に延びて移動可能に嵌合されている。磁性材料製ロッド242は、例えば、鋼により作られている。また、ロッド駆動部234は、本実施形態においては、駆動ロッド232の外周面に突設された突状をなし、磁性材料製ロッド242の励磁・検出コイル240の外へ突出させられた端部を相対移動不能に固定して保持している。
【0071】
したがって、ステアリングホイール10が回転操作され、駆動ロッド232が長手方向に移動させられれば、磁性材料製ロッド242がその長手方向に移動させられ、励磁・検出コイル240内を移動させられて、それらの相対位置に応じた電気信号が出力される。本絶対転舵量検出装置230の基準点としての零点は、前記絶対転舵量検出装置82と同様に決定され、その零点および差動トランス238から出力される電気信号に基づいて駆動ロッド232の位置が取得され、転舵装置の絶対転舵量が取得される。
【0072】
絶対転舵量検出装置を差動トランスおよび磁性材料製ロッドを含む装置とする場合、磁性材料製ロッドを駆動ロッドに保持させることは不可欠ではない。例えば、図11に示す絶対転舵量検出装置260の差動トランス262は、ハウジング236に設けられ、励磁・検出コイル264,磁性材料製ロッド266,付勢装置の一種である弾性部材としての圧縮コイルスプリング(以後、スプリングと略称する)268を含み、ロッド駆動部270は駆動ロッド232に設けられ、当接面272を有する。
【0073】
磁性材料製ロッド266は、励磁・検出コイル264内に配設された円筒状のガイド276内に駆動ロッド232の長手方向に平行な方向に移動可能に嵌合されるとともに、ガイド276内に配設されたスプリング268により、駆動ロッド232の長手方向に平行な一方向であって、励磁・検出コイル264から外へ突出する向きに付勢されている。
【0074】
ロッド駆動部270は、駆動ロッド232の外周面に突設された突状をなし、前記当接面272が駆動ロッド232の長手方向に直角に設けられている。磁性材料製ロッド264は、スプリング268の付勢により当接面272に当接させられており、駆動ロッド232の長手方向の移動に追従させられる。また、磁性材料製ロッド264は当接面272に当接しているのみであり、当接面272は、磁性材料製ロッド264の駆動ロッド232の長手方向に直角な方向の相対移動を許容する。
【0075】
本絶対転舵量検出装置260においては、ステアリングホイール10が回転操作され、駆動ロッド232が、ロッド駆動部270が差動トランス262に接近する向きに移動させられれば、ロッド駆動部270はスプリング268の付勢力に抗して磁性材料製ロッド266を、励磁・検出コイル264内に進入する方向に移動させる。駆動ロッド232が逆向きに移動させられれば、磁性材料製ロッド264はスプリング268の付勢により、駆動ロッド232に追従して移動する。磁性材料製ロッド264の移動により、磁性材料製ロッド264と励磁・検出コイル264との駆動ロッド232の長手方向の相対位置に対応する電気信号が出力され、その電気信号に基づいて駆動ロッド232の位置が取得され、転舵装置の絶対転舵量が取得される。
【0076】
本実施形態においては、当接面272が磁性材料製ロッド264の、駆動ロッド232の長手方向に直角な方向の相対移動を許容するようにされているため、駆動ロッド232とハウジング236とが、駆動ロッド232の長手方向に直角な方向において相対移動しても、磁性材料製ロッド264がロッド駆動ロッド232と共に励磁・検出コイル264に対して相対移動することがなく、その相対移動が差動トランス262から出力される電気信号に悪影響を及ぼすことが軽減される。
【0077】
このようにロッド駆動部270が磁性材料製ロッド264の相対移動を許容する場合には、許容しない場合に比較して、磁性材料製ロッド264のガイド276に対する嵌合精度を高くすることができ、駆動ロッド232とハウジング236との相対移動による電気信号への悪影響がより良好に軽減される。前記絶対転舵量検出装置230においても、磁性材料製ロッド242がガイド244に嵌合されてその移動を案内されるため、駆動ロッド232とハウジング236とが、駆動ロッド232の長手方向と直角な方向に相対移動しても、磁性材料製ロッド242の励磁・検出コイル240に対する変位は少なく、その相対移動の電気信号への悪影響は少ないが、磁性材料製ロッド242がロッド駆動部234に相対移動不能に保持されているため、そのガイド244との嵌合精度は、それほど高くされず、変位が生ずる。それに対し、絶対転舵量検出装置260においては、ガイド276と磁性材料製ロッド266との嵌合精度が高く、磁性材料製ロッド266の変位がより少なくて済み、検出精度の低下が良好に防止されるのである。
【0078】
本発明の更に別の実施形態を図12に示す。本実施形態の絶対転舵量検出装置300は、駆動ロッド302に設けられて第一部を構成する保持部304と、ハウジング306に設けられて第二部を構成する検出器308とを含む。検出器304は、回転体の一種であるプーリ312,紐状体としてのワイヤ314,付勢装置の一種である弾性部材としてのうず巻きばね316と、回転センサ318とを含む。
【0079】
プーリ312は、ハウジング306により、駆動ロッド302の長手方向と直角に立体交差する回転軸線まわりに回転可能に支持された回転軸320に取り付けられ、ワイヤ314の一端部が巻き付けられている。ワイヤ314は、プーリ312に巻き付けられた側とは反対側の端部である先端部が、プーリ312の回転を伴ってプーリ312から引き出し可能である。うず巻きばね316は、ハウジング306とプーリ312の回転軸320との間に設けられ、プーリ312を、ワイヤ314の上記先端部がプーリ312内に引っ込む向きに付勢している。
回転センサ318は、プーリ312の回転角度に応じた電気信号を発生させる。
【0080】
前記保持部304は、駆動ロッド302の外周面に設けられた突状をなし、ワイヤ314の先端部の先端を、その先端部が駆動ロッド302の長手方向に平行に延びる姿勢で固定的に保持している。本実施形態においてワイヤ314は、検出器308と保持部304とが最も接近した状態におけるそれらの間の距離、すなわちワイヤ314のプーリ312からの最小引出し量が設定量以上とされており、先端部が駆動ロッド302の長手方向に平行に延びている。
【0081】
ステアリングホイール10が回転操作され、駆動ロッド302が、長手方向において保持部304が検出器308から離れる方向に移動させられれば、ワイヤ314を介してプーリ312がうず巻きばね316の付勢力に抗して回転させられ、ワイヤ314がプーリ312から引き出されることが許容される。また、駆動ロッド302が検出器308に接近する方向に移動させられれば、プーリ312がうず巻きばね316の付勢により回転させられ、ワイヤ314がプーリ312に引き込まれる。このように駆動ロッド302の移動に伴ってプーリ312が回転させられるとき、回転センサ318からプーリ312の回転角度に応じた電気信号が出力され、保持部304と検出器308との相対位置が検出され、駆動ロッド302の位置が取得される。
【0082】
本絶対転舵量検出装置300においては、ワイヤ314のプーリ312からの最小引出し量が設定量以上とされており、駆動ロッド302の位置ないしプーリ312の回転角度を問わず、ワイヤ314の保持部304によって保持された先端部は駆動ロッド302の長手方向に平行に延びている。そのため、駆動ロッド302とハウジング306とが、駆動ロッド302の長手方向に直角な方向に相対移動しても、保持部304と検出器308との、駆動ロッド302の長手方向における距離が事実上変化せず、回転センサ318の電気信号は事実上変化せず、殆ど誤差を生じることなく転舵量が検出される。
【0083】
上記各実施形態において、車両の直進状態を検出するために左右の操舵車輪の各角速度を比較するにあたり、タイヤの径は同じであるとしたが、空気圧や摩耗量の違い等により、同じであるとは限らない。そのため、絶対転舵量検出装置および相対転舵量検出装置の各基準点の決定に先立って、左右の操舵車輪の各角速度の比率を求め、殆ど変化せず、一定とみなしてよい状態での比率を車両直進状態における比率とし、車両直進状態の判定に用いることが望ましい。この場合、車両直進状態の判定時には、角速度センサにより検出された左右の操舵車輪の各角速度の比率を求め、車両直進状態における比率と比較し、ほぼ同じであれば、車両が直進状態であるとする。
【0084】
また、複合型転舵量検出装置において初期転舵量を決定する場合、絶対転舵量検出装置の温度変化による検出値の変化を考慮してもよい。例えば、イグニッションスイッチがOFFにされ、車両が停止させられている時間が短い場合には、先のイグニッションスイッチのON時に取得された絶対転舵量検出装置の零点等基準点を用いて初期転舵量を決定し、車両の停車時間が長い場合には、車両走行時に決定された零点等基準点は使用せず、停車による車両の温度低下に基づく駆動ロッドの収縮を考慮した零点等基準点を初期転舵量の決定に使用する。この零点等基準点は、例えば、季節,停車時間等に応じて予め設定された係数を、車両走行時に決定された零点等基準点を規定する値に掛けることにより取得してもよく、あるいは季節,停車時間等に応じて予め設定された値でもよい。
【0085】
さらに、絶対転舵量検出装置の零点等基準点の決定は、イグニッションスイッチがONにされる毎に行うのに限らず、設定条件の成立時、例えば、設定時間の経過毎に、あるいは設定走行距離の到達毎に行うようにしてもよい。この場合、相対転舵量検出装置については、絶対転舵量検出装置の検出部が発生する電気信号が零点等基準点を規定する信号となった状態で零点等基準点を決定することができる。絶対転舵量検出装置の零点等基準点の決定時に決定することもできる。
あるいは絶対転舵量検出装置の零点等基準点の決定とは別に決定してもよい。
【0086】
また、転舵量検出装置の零点等基準点は、転舵装置の中立位置において決定するのに限らず、他の位置、例えば、転舵可能領域の一方において設定してもよい。
【0087】
さらに、上記各実施形態においては転舵装置に相対転舵量検出装置および絶対転舵量検出装置が設けられていたが、絶対転舵量検出装置のみ設けてもよい。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である転舵量検出装置および複合型転舵量検出装置を備えた電気制御操舵装置を概略的に示す図である。
【図2】上記電気制御操舵装置の転舵装置を概略的に示す正面図である。
【図3】上記複合型転舵量検出装置の絶対転舵量検出装置,相対転舵量検出装置および上記転舵装置を示す正面断面図である。
【図4】上記絶対転舵量検出装置のホール素子式センサから出力される電圧と被検出部の位置との関係を示すグラフである。
【図5】上記電気制御操舵装置の制御装置によって実行される最終転舵角決定ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】本発明の別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図7】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図8】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図9】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図10】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図11】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図12】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【符号の説明】
16:転舵装置 18:制御装置 40:駆動ロッド 42:ハウジング 44:ロッド駆動装置 50:転舵モータ 78:操舵車輪 80:複合型転舵量検出装置 82:絶対転舵量検出装置 84:相対転舵量検出装置 90:被検出部 92:ホール素子式センサ 140:コンピュータ 150:絶対転舵量検出装置 152:被検出部 154:可変インダクタンス式センサ 156:励磁・検出コイル 170:絶対転舵量検出装置 172:被検出部 174:ホール素子式センサ 176:第一直径漸変部 178:第二直径漸変部 182:急変部 190:絶対転舵量検出装置 192:被検出部 194:第一直径漸変部 196:第二直径漸変部 198:ホール素子式センサ 200:急変部 210:絶対転舵量検出装置 212:駆動ロッド 214:板ばね 216:ハウジング 218:電気抵抗層 220:摺動面 230:絶対転舵量検出装置 232:駆動ロッド 234:ロッド駆動部 236:ハウジング238:差動トランス 240:励磁・検出コイル 242:磁性材料製ロッド 260:絶対転舵量検出装置 262:差動トランス 264:励磁・検出コイル 266:磁性材料製ロッド 268:圧縮コイルスプリング 270:ロッド駆動部 272:当接面 300:絶対転舵量検出装置 302:駆動ロッド 304:保持部 306:ハウジング 308:検出器 312:プーリ 314:ワイヤ 316:うず巻きばね 318:回転センサ
【発明の属する技術分野】
本発明は、操舵車輪を転舵する転舵装置の転舵量を検出する転舵量検出装置に関するものであり、特に、検出精度の低下の抑制に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
転舵装置においては、駆動ロッドがロッド駆動装置により長手方向に移動させられ、その駆動ロッドに接続された車両の操舵車輪の向きが変えられる。ロッド駆動装置は、運転者により操作される操舵部材を駆動源とするものと、動力により作動する動力アクチュエータを駆動源とするものとがある。本発明は、いずれの場合にも適用可能であるが、転舵量の検出が特に重要であるのは、動力アクチュエータを駆動源とするものであるので、それに適用して特に効果的なものである。動力アクチュエータを駆動源とする転舵装置の代表的なものは、操舵部材の操舵量を検出し、その検出値に応じた転舵角が得られるように動力アクチュエータを電気的に制御する電気制御操舵装置である(例えば、特許文献3参照)。
【0003】
電気制御操舵装置においては、転舵量検出装置が設けられ、絶対的な転舵量が検出される。操舵車輪の転舵角あるいはそれと一対一に対応する物理量である転舵量が検出されるのであり、検出された転舵量と操舵部材の操舵量とに基づいて動力アクチュエータの制御量の決定等が行われる。転舵量検出装置は、例えば、駆動ロッドの外周面に設けられた磁気スケールと、駆動ロッドを長手方向に移動可能に保持するハウジングに設けられたセンサ部とを備え、センサ部と磁気スケールとの相対移動により得られる電気信号に基づいて駆動ロッドの長手方向の位置が検出され、転舵量が検出されるように構成される。駆動ロッドは操舵車輪に接続され、その長手方向の移動によって操舵車輪が転舵されるため、駆動ロッドの長手方向の位置は操舵車輪の転舵位置(角度,方向)と一義的に対応しており、その位置の検出に基づいて絶対的な転舵量が取得されるのである(特許文献1参照)。駆動ロッドの長手方向位置を検出する装置は、この他にも種々知られているが、駆動ロッドに設けられた被検出部とハウジングに設けられたセンサ部とを含むように構成されることが多い。
【0004】
【特許文献1】
実開平5−46655号公報
【特許文献2】
実開平5−37645号公報
【特許文献3】
特開2000−128002号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果】
しかしながら、従来の転舵量検出装置にはなお改良の余地がある。例えば、駆動ロッドの外周面に長手方向に平行な一平面が形成され、その一平面上に磁気スケール等の被検出部が設けられ、センサ部との距離が一定となるようにされるのであるが、駆動ロッドとハウジングとに相対回転が生ずれば、被検出部とセンサ部との間の距離が変化し、検出誤差発生の一因となる。駆動ロッドのハウジングに対する相対回転を防止する相対回転防止装置が設けられるのであるが、多少の相対回転が生じることは避け得ない。この相対回転に伴う被検出部とセンサ部との間の距離の変動量はそれほど大きくないのが普通であるが、被検出部とセンサ部との間の距離自体が小さいため、距離に対する変動量の割合は大きく、検出誤差発生の一因となるのである。また、駆動ロッドがハウジングに対して、駆動ロッドの長手方向に直角な向であって、被検出部がセンサ部に接近,離間する方向において相対移動することもあり、それによっても被検出部とセンサ部との間の距離が変動し、検出誤差発生の一因となる。
【0006】
本発明は、以上の事情を背景とし、転舵量検出装置の改良を課題として為されたものであり、本発明によって、下記各態様の転舵量検出装置および複合型転舵量検出装置が得られる。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも本発明の理解を容易にするためであり、本明細書に記載の技術的特徴およびそれらの組合わせが以下の各項に記載のものに限定されると解釈されるべきではない。また、一つの項に複数の事項が記載されている場合、それら複数の事項を常に一緒に採用しなければならないわけではない。一部の事項のみを選択して採用することも可能なのである。
【0007】
なお、以下の各項において、 (1)項および (2)項が請求項1に相当し、 (4)項が請求項2に、 (9)項が請求項3に、(11)項が請求項4に、(13)項が請求項5に、(14)項が請求項6に、(18)項,(19)項および(20)項を併せた項が請求項7にそれぞれ相当する。
【0008】
(1)長手形状をなす駆動ロッドと、その駆動ロッドを長手方向に移動可能に保持するハウジングと、それら駆動ロッドとハウジングとの間に設けられ、駆動ロッドをハウジングに対して前記長手方向に移動させるロッド駆動装置とを備え、前記駆動ロッドが車両の操舵車輪に接続される転舵装置に設けられ、その転舵装置の転舵量を検出する転舵量検出装置であって、
前記駆動ロッドおよび前記ハウジングにそれぞれ設けられた第一部および第二部を備え、それら第一部および第二部の前記長手方向における相対位置に対応する電気信号を発生させる検出部と、
その検出部の電気信号に基づいて前記駆動ロッドの前記長手方向の位置を取得するロッド位置取得部と
を含む転舵量検出装置。
転舵装置の転舵量は、操舵車輪の転舵角が得られる量であればよいが、本項では、駆動ロッドの長手方向の移動位置に基づいて取得される。
本項は、本発明を説明する都合上、便宜的に作成した項である。
【0009】
(2)前記駆動ロッドの前記ハウジングに対する相対回転と前記長手方向に直角な方向の相対移動との少なくとも一方の、前記電気信号に対する悪影響を軽減する悪影響軽減手段を含む (1)項に記載の転舵量検出装置。
本項の転舵量検出装置によれば、駆動ロッドのハウジングに対する相対回転と長手方向に直角な方向の相対移動との少なくとも一方が生じても、電気信号に対する悪影響が軽減され、転舵量の検出誤差の発生が抑制される。
【0010】
(3)前記第二部が、前記長手方向と直交する方向において前記駆動ロッドに対向する状態で前記ハウジングに固定されたセンサ部を含み、前記第一部が、前記駆動ロッド自体に前記センサ部からの距離が長手方向に沿って漸変する状態で形成された被検出部を含む (1)項に記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドがロッド駆動装置によって長手方向に移動させられれば、被検出部とセンサ部との距離が変化し、その距離に応じてセンサ部の出力が変化し、第一部と第二部との駆動ロッドの長手方向における相対位置が検出される。
被検出部のセンサ部からの距離は、駆動ロッドの長手方向に沿って段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。連続的に変化させる場合、直線的に変化させても、曲線的に変化させてもよい。連続的に変化させれば、第一部と第二部との駆動ロッドの長手方向における相対位置が連続的に検出され、駆動ロッドの長手方向の位置が連続的に検出されて転舵量が連続して検出される。
本項の転舵量検出装置によれば、駆動ロッド自体に被検出部が設けられるため、駆動ロッドを利用して転舵量検出装置の構成を簡単にすることができる。
【0011】
(4)前記第二部が、前記長手方向と直交する方向において前記駆動ロッドに対向する状態で前記ハウジングに固定されたセンサ部を含み、前記第一部が、前記駆動ロッド自体に、少なくとも前記センサ部に対向する部分の横断面形状がその駆動ロッドの前記ハウジングに対する相対回転の中心線を中心とする円の一部をなし、その円の直径が長手方向に沿って漸変する状態で形成された被検出部を含み、その横断面形状が円の一部をなすことにより、駆動ロッドとハウジングとの相対回転にかかわらず前記センサ部の電気信号が変化しない構造とされたことが前記悪影響軽減手段を構成している (2)項に記載の転舵量検出装置。
被検出部は、製造の容易さの点からは、駆動ロッドの一部が横断面形状が円形で直径が長手方向に沿って漸変する部分とされることが望ましいが、駆動ロッドとハウジングとの相対回転角度は微小であるのが普通であるため、性能上はその相対回転角度の範囲内で円の一部をなすものとされればよい。円の直径の長手方向における変化は、直線的であっても曲線的であってもよい。駆動ロッドとハウジングとの相対移動に対して所望の電気信号が得られるように変化させられればよいのである。
被検出部の横断面形状が円の一部をなすため、駆動ロッドとハウジングとが相対回転しても、被検出部とセンサ部との距離は変化せず、相対回転がセンサ部の電気信号に悪影響を与えることが回避される。
【0012】
(5)前記被検出部が磁性材料製であり、前記センサ部が、励磁コイルと検出コイルとを含み、前記被検出部までの距離の変化に応じて前記検出コイルに発生する電圧を前記電気信号とする可変インダクタンス式センサを含む (3)項または (4)項に記載の転舵量検出装置。
センサ部の被検出部までの距離は、駆動ロッドの長手方向に沿って漸変させられており、センサ部から出力される電気信号はセンサ部と被検出部との駆動ロッドの長手方向における相対位置に対応し、それに基づいて駆動ロッドの長手方向の位置が取得される。
(6)前記被検出部が磁性材料製であり、前記センサ部が、永久磁石とホール素子とを含み、前記被検出部までの距離に応じて前記ホール素子に発生する電圧を前記電気信号とするホール素子式センサを含む (3)項または (4)項に記載の転舵量検出装置。
【0013】
(7)前記第一部と前記第二部との一方が前記長手方向に延びる電気抵抗層を含み、他方が、その電気抵抗層上を摺動する摺動片を含む (1)項ないし (6)項のいずれかに記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドが長手方向に移動させられれば、摺動片と電気抵抗層とが駆動ロッドの長手方向において相対移動させられ、抵抗値が変化する。抵抗値は摺動片と電気抵抗層との駆動ロッドの長手方向における相対位置に対応し、それに基づいて駆動ロッドの長手方向の位置が取得される。
【0014】
(8)前記第一部と前記第二部との一方が前記長手方向に延びる電気抵抗層を含み、他方が、その電気抵抗層上を摺動する摺動片を保持する板ばねを含み、その板ばねが、前記第一部と前記第二部との前記長手方向と直交する方向の相対移動を弾性変形により吸収する形状を有し、そのことが前記悪影響軽減手段を構成している (2)項の転舵量検出装置。
第一部と第二部とが駆動ロッドの長手方向と直交する方向に相対移動させられる場合、この相対移動が板ばねの弾性変形により吸収される。厳密には、板ばねの弾性変形に伴って、摺動片の電気抵抗層に対する位置が変化するが、この変化は実用上無視し得るほど小さくすることが容易である。例えば、板ばねを駆動ロッドとほぼ平行に延びる状態で設ける。例えば、基端部を駆動ロッドとハウジングとの一方に固定し、自由端部を他方に接触させるのであるが、駆動ロッドとハウジングとの一方と基端部との一方に、駆動ロッドの長手方向と直交する方向に突出する突状の固定部を設けて基端部を固定し、自由端部に電気抵抗層に接触する接触片を保持させ、あるいは接触片を構成する接触部を設けて、駆動ロッドとハウジングとの他方に接触させ、基端部と自由端部との間の部分は駆動ロッドにも電気抵抗層にも接触せず、駆動ロッドとほぼ平行となるように設ける。それにより板ばねの自由端部、すなわち摺動片の、駆動ロッドの長手方向の位置の変化が小さくされ、駆動ロッドの長手方向と直交する方向の移動の悪影響が軽減され、検出誤差が小さくて済む。
【0015】
(9)前記第一部と前記第二部との一方が前記長手方向に延びる電気抵抗層を含み、他方が、その電気抵抗層上を摺動する摺動片を含み、その電気抵抗層の前記摺動片との摺動面が前記駆動ロッドの前記ハウジングに対する相対回転の中心線を中心線とする円筒面の少なくとも一部をなし、その相対回転に伴う電気抵抗層と摺動片との前記中心線まわりの相対回転を許容する構造とされたことが、前記悪影響軽減手段を構成している(2)項または (8)項に記載の転舵量検出装置。
本項によれば、駆動ロッドとハウジングとが相対回転しても、摺動片と電気抵抗層との接触部の、駆動ロッドの長手方向の位置は変わらず、検出誤差の発生が回避される。
本項と (8)項とを組み合わせれば、駆動ロッドのハウジングに対する相対回転と駆動ロッドの長手方向と直交する方向の相対移動との両方について、電気抵抗層と摺動片との駆動ロッドの長手方向における相対位置の検出への悪影響が軽減され、駆動ロッドの位置の検出誤差の発生が抑制される。
【0016】
(10)前記第一部および前記第二部の一方が、励磁コイルおよび検出コイルと、前記長手方向に平行に延びて前記励磁コイルおよび検出コイル内に嵌入可能な磁性材料製ロッドと備えた差動トランスを含み、他方が前記磁性材料製ロッドを前記長手方向に移動させるロッド駆動部を含む (1)項ないし (9)項のいずれかに記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドが長手方向に移動させられれば、磁性材料製ロッドが励磁コイルおよび検出コイルに対して相対移動させられ、検出コイルから発せられる電気信号が変化し、励磁コイルおよび検出コイルと磁性材料製ロッドとの駆動ロッドの長手方向における相対位置が検出される。
【0017】
(11)前記第一部および前記第二部の一方が、励磁コイルおよび検出コイルと、前記長手方向に平行に延びて前記励磁コイルおよび検出コイル内に嵌入可能な磁性材料製ロッドと、その磁性材料製ロッドを前記長手方向に平行な一方向に付勢する付勢装置とを備えた差動トランスを含み、前記第一部および前記第二部の他方が、前記長手方向に直角な当接面において前記磁性材料製ロッドと当接して前記付勢装置の付勢力に抗して磁性材料製ロッドを移動させるロッド駆動部を含み、前記当接面が前記磁性材料製ロッドの前記長手方向に直角な方向の相対移動を許容するようにされたことが前記悪影響軽減手段を構成している (2)項に記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドが長手方向に移動させられるとき、磁性材料製ロッドは付勢装置の付勢により当接面に追従して励磁コイルおよび検出コイル内を移動し、それらの駆動ロッドの長手方向における相対位置が検出される。
本項の転舵量検出装置においては、駆動ロッドとハウジングとが、駆動ロッドの長手方向に直角な方向において相対移動することがあっても、磁性材料製ロッドは当接面に対する相対移動を許容されているため、ロッド駆動部と共に励磁コイルおよび検出コイルに対して相対移動することはなく、励磁コイルおよび検出コイルに対する相対移動による検出精度の低下が少なくて済む。
磁性材料製ロッドは長手形状をなし、励磁コイルおよび検出コイルに嵌入させられて、それらの中を軸方向に移動させられるため、その半径方向の移動は規制されており、磁性材料製ロッドとロッド駆動部との、駆動ロッドの長手方向に直角な方向の相対移動を許容しなくても、その相対移動による磁性材料製ロッドの励磁コイルおよび検出コイルに対する変位が、それらの相対位置の検出に与える影響は少ないが、本項におけるように相対移動を許容すれば、影響がより少なくて済む。
【0018】
(12)前記第一部および前記第二部の一方が、前記長手方向と直角に立体交差する回転軸線まわりに回転可能な回転体と、その回転体に巻き付けられて先端部が回転体の回転を伴って引き出し可能な紐状体と、前記回転体を前記先端部が回転体側に引っ込む向きに付勢する付勢装置と、前記回転体の回転角度に応じた電気信号を発生させる回転センサとを備えた検出器を含み、前記第一部および前記第二部の他方が、前記紐状体の先端を固定的に保持する保持部を含む (1)項ないし(11)項のいずれかに記載の転舵量検出装置。
駆動ロッドが長手方向に移動させられれば、紐状体が付勢装置の付勢力に抗して回転体を回転させつつ引き出され、あるいは付勢装置の付勢によって回転体が回転させられることにより、紐状体が回転体側に引き込まれる。そのため、回転体の回転角度は、検出器と保持部との相対位置に対応し、その相対位置が検出される。
【0019】
(13)前記第一部および前記第二部の一方が、前記長手方向と直角に立体交差する回転軸線まわりに回転可能な回転体と、その回転体に巻き付けられて先端部が回転体の回転を伴って引き出し可能な紐状体と、前記回転体を前記先端部が回転体側に引っ込む向きに付勢する付勢装置と、前記回転体の回転角度に応じた電気信号を発生させる回転センサとを備えた検出器を含み、前記第一部および前記第二部の他方が、前記紐状体の先端部が前記駆動ロッドの長手方向に平行に延びる姿勢でその先端部の先端を固定的に保持する保持部を含み、前記紐状体の先端部が前記駆動ロッドの長手方向に平行に延び、前記保持部の前記長手方向に直角な方向の移動にかかわらず前記回転センサの電気信号が事実上変化しないようにされていることが前記悪影響軽減手段を構成している (2)項に記載の転舵量検出装置。
検出器と保持部とが最も接近した状態におけるそれらの間の距離、すなわち紐状体の回転体からの最小引き出し量を設定量以上とすることにより、駆動ロッドとハウジングとが、駆動ロッドの長手方向に直角な方向に相対移動しても、保持部と検出器との、駆動ロッドの長手方向における距離が事実上変化せず、回転センサの電気信号が事実上変化しないようにすることができる。
【0020】
(14)長手形状をなす駆動ロッドと、その駆動ロッドを長手方向に移動可能に保持するハウジングと、それら駆動ロッドとハウジングとの間に設けられ、駆動ロッドをハウジングに対して前記長手方向に移動させるロッド駆動装置とを備え、前記駆動ロッドが車両の操舵車輪に接続される転舵装置に設けられ、その転舵装置の転舵量を検出する転舵量検出装置であって、
前記長手方向と直交する方向において前記駆動ロッドに対向する状態で前記ハウジングに固定されたセンサ部と、
前記駆動ロッド自体に、前記センサ部からの距離が長手方向に沿って変化する状態で形成された被検出部と
を含む転舵量検出装置。
被検出部のセンサ部からの距離は、段階的に変化させてもよく、連続的に変化させてもよい。連続的に変化させる場合、直線的に変化させてもよく、曲線的に変化させてもよい。連続的に変化させれば、被検出部とセンサ部との駆動ロッドの長手方向における相対位置が連続して検出され、転舵量が連続して検出される。
駆動ロッドが長手方向に移動させられれば、被検出部のセンサ部からの距離が変化し、被検出部とセンサ部との、駆動ロッドの長手方向における変位が検出され、それに基づいて転舵量を検出することができる。
本項の転舵量検出装置においては、駆動ロッド自体に被検出部が設けられており、転舵量検出装置の構成を簡単にすることができる。
【0021】
(15)前記被検出部が、横断面形状が円形であり、直径が前記長手方向に沿って漸変する直径漸変部を含む(14)項に記載の転舵量検出装置。
本項の転舵量検出装置によれば、例えば、駆動ロッドとハウジングとが相対回転しても、センサ部の出力が変化させられて検出精度が低下することが回避される。
(16)前記被検出部が、前記転舵装置の中立位置に対応する部分において前記センサ部からの距離が急変する急変部を含む(14)項または(15)項に記載の転舵量検出装置。
被検出部のセンサ部からの距離の急変によりセンサ部の出力が急変し、転舵装置の中立位置が検出される。それにより、例えば、中立位置を零点として転舵量を検出することができる。
【0022】
(17)車輪が直進状態にあることを検出する車両直進状態検出手段と、
車両の直進状態検出時に当該転舵量検出装置の基準点を決定する基準点決定手段と
を含む (1)項ないし(16)項のいずれかに記載の転舵量検出装置。
転舵量検出装置の基準点は、車両が直進状態にある場合に設定されることが望ましく、転舵量検出装置の基準点が零点とされることが望ましい。車両の直進状態が検出される毎に零点が決定されるようにすれば、センサ部や転舵装置の、経時変化や温度変化に起因する変化による転舵量の検出精度の低下が抑制される。
【0023】
(18) (1)項ないし(17)項のいずれかに記載の転舵量検出装置である絶対転舵量検出装置と、
前記ロッド駆動装置の構成要素である回転体の回転角度を検出することにより前記転舵装置の相対転舵量を検出する相対転舵量検出装置と
を含む複合型転舵量検出装置。
絶対転舵量は絶対的に定まった基準位置(例えば、中立位置)からの操舵車輪の転舵角に対応する量であり、相対転舵量は、操舵車輪の任意の位置を基準とした転舵角に対応する量、すなわち、任意の位置からの転舵量の変化量に対応する量である。相対転舵量であっても、上記任意の位置が中立位置等の絶対的に定まった基準位置に設定されれば、絶対転舵量と一致する。すなわち、絶対転舵量を検出することができるのである。ロッド駆動装置の構成要素である回転体は、複数回転するのが普通であり、回転体の回転角度を検出すれば検出の分解能を上げることは容易であるが、絶対転舵量を検出し得るものとすれば、構造が複雑となって製造コストが高くなってしまう。一方、駆動ロッドの長手方向の位置に基づいて転舵量を検出する絶対転舵量検出装置は、分解能を高くすることが困難である。そこで、絶対転舵量検出装置と相対転舵量検出装置とを併せて用いれば、例えば、相対転舵量検出装置の零点等の基準点が決定されていない状態においては絶対転舵量検出装置の検出結果を転舵量として採用し、基準点が決定された後には、相対転舵量検出装置の検出結果を転舵量として採用することにより、比較的安価な装置でありながら、作動初期から絶対転舵量を得ることができ、かつ、相対転舵量検出装置の基準点が決定された後は、絶対転舵量を高精度で得ることができる。
(19)前記絶対転舵量検出装置の検出結果と前記相対転舵量検出装置の検出結果とに基づいて最終的な転舵量を決定する最終転舵量決定部を含む(18)項に記載の複合型転舵量検出装置。
(20)前記最終転舵量決定部が、当該複合型転舵量検出装置の検出初期に前記絶対転舵量検出装置により検出された転舵量を最終転舵量に決定する初期転舵量決定部を含む(19)項に記載の複合型転舵量検出装置。
ここにおいて検出初期は、車両の電源投入後、相対転舵量検出装置の零点等基準点がまだ決定されていない状態である。相対転舵量検出装置では、一旦基準点が決定され、その基準点を基準とする転舵量の最終値(電源OFF直前の値であり、この値は電源OFF直前の絶対転舵量を表す)の記憶が電源OFFの状態で維持されるようにしても、電源OFFの状態で転舵量が変われば記憶値は正しい絶対転舵量を表さなくなるため、検出初期には記憶値を転舵制御のために使用することはできない。それに対し、絶対転舵量検出装置により検出された転舵量を最終転舵量に決定することにより、検出初期から転舵装置に操舵車輪の転舵制御を行わせることができる。
(21)前記最終転舵量決定部が、前記絶対転舵量検出装置の検出結果に基づいて前記相対転舵量検出装置の基準点を決定する基準点決定部を含む(19)項または(20)項に記載の複合型転舵量検出装置。
例えば、絶対転舵量検出装置の零点等基準点が予め設定されているのであれば、絶対転舵量が基準点に相当する値になった時、相対転舵量検出装置の基準点が決定される。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態である転舵量検出装置および複合型転舵量検出装置を備えた電気制御操舵装置を図1に示す。この電気制御操舵装置は、操舵部材としてのステアリングホイール10,操舵量検出装置の一種である操舵角検出装置としてのロータリエンコーダ12,反力付与装置14,転舵装置16および制御装置18を含んでいる。ステアリングホイール10は、ステアリングシャフト20の一端部に連結されており、運転者により操作され、操作が解除されれば、ステアリングシャフト20の他端部と車体22との間に配設されたねじればね24により、所定の中立位置に復帰させられる。ねじればね24は所定の弾性力を有し、戻し装置を構成する。
【0025】
ステアリングシャフト20に、前記ロータリエンコーダ12が取り付けられており、ステアリングホイール10の操作量である操舵量としての操舵角を検出する。本実施形態においては、ロータリエンコーダ12は、ステアリングホイール10が中立位置に位置する状態での操舵角を0度、ステアリングホイール10が中立位置から、運転者から見て時計方向であって、車両を右旋回させる向きに操作された場合の操舵角を正の値、逆方向に操作された場合の操舵角を負の値で検出するように構成されている。本実施形態では、ステアリングホイール10がいずれの回転位置にあっても、時計方向の回転操作が正方向(右方向)の操作であり、反時計方向の回転操作が負方向(左方向)の操作である。
【0026】
前記反力付与装置14は、本実施形態においては電動モータ32を駆動源として構成されており、ステアリングシャフト20と同心に設けられ、ステアリングホイール10に、その操作方向とは方向が逆であって、操舵角等に応じた大きさの力である操舵反力を与える。以後、電動モータ32を反力モータ32と称する。
【0027】
転舵装置16は、図1ないし図3に示すように、駆動ロッド40,ハウジング42およびロッド駆動装置44を備えている。ハウジング42は車体に、その長手方向が車両の左右方向と平行な姿勢で固定して設けられており、長手形状をなす駆動ロッド40は、ハウジング42内に長手方向に移動可能に保持されている。ロッド駆動装置44は、それら駆動ロッド40とハウジング42との間に設けられ、駆動ロッド40をハウジング42に対して長手方向に移動させる。なお、図示は省略するが、駆動ロッド40とハウジング42との間には相対回転阻止装置が設けられ、駆動ロッド40のハウジング42に対する相対回転が阻止されている。
【0028】
ロッド駆動装置44は、図3に示すように、駆動源としての電動モータ50および電動モータ50の回転を駆動ロッド40の長手方向の移動に変換する運動変換装置52を含む。電動モータ50は、ハウジング42に設けられたコイル54,円筒状をなし、ハウジング42により軸受56を介してその中心線まわりに回転可能に支持されたロータ58,ロータ58に設けられた永久磁石60を備え、駆動ロッド40はロータ58内に長手方向に移動可能に嵌合されている。
【0029】
運動変換装置52は、ロータ58の回転軸線方向における一端部の内側に固定して設けられたナット64と、駆動ロッド40に設けられ、ナット66とボールを介して噛み合わされたねじ部68とを含む。電動モータ50のコイル54に電流が供給されれば、ロータ58が回転させられるとともにナット64が回転させられ、それにより駆動ロッド40が長手方向に移動させられる。ねじ部68は減速機としても機能し、電動モータ50の回転を減速する。また、電動モータ50への供給電流の方向を変えることにより、駆動ロッド40の移動方向が変えられる。
【0030】
駆動ロッド40の両端部はそれぞれ、図1に示すように、ナックルアーム74およびタイロッド76によって車両の操舵車輪78に接続されており、駆動ロッド40が長手方向に移動させられることにより、操舵車輪78が左方向あるいは右方向に向けられ、転舵される。以後、電動モータ50を転舵モータ50と称する。本実施形態においては、ステアリングホイール10が正方向に回転操作されることにより、操舵車輪78が右方向であって正方向に転舵され、ステアリングホイール10が負方向に回転操作されることにより、操舵車輪78が左方向であって負方向に操舵される。ステアリングホイール10が正方向に操作され、操舵車輪78が正方向へ転舵される際に転舵モータ50に供給される電流の方向および駆動ロッド40の移動方向を正方向、ステアリングホイール10が負方向に操作され、操舵車輪が負方向へ転舵される際に転舵モータ50に供給される電流の方向および駆動ロッド40の移動方向を負方向とする。
【0031】
上記のように構成された転舵装置16の転舵量は、複合型転舵量検出装置80により検出される。複合型転舵量検出装置80は、図2および図3に示すように、絶対転舵量検出装置82および相対転舵量検出装置84を含む。なお、これら図において示されているのは、絶対,相対各転舵量検出装置82,84の一部である。
【0032】
絶対転舵量検出装置82を説明する。
絶対転舵量検出装置82は、図3に示すように、駆動ロッド40に設けられ、第一部を構成する被検出部90と、ハウジング42に設けられ、第二部を構成するホール素子式センサ92とを含む。ホール素子式センサ92は、本実施形態においては、永久磁石94,ホール素子96およびアンプ98を含み、ハウジング42の長手方向において転舵モータ50に隣接する部分に、駆動ロッド40の長手方向(軸線)と直交する方向において駆動ロッド40に対向する状態で固定されている。ホール素子96には定電流が供給される。
【0033】
駆動ロッド40は、本実施形態においては、その横断面形状が、駆動ロッド40のハウジング42に対する相対回転の中心線を中心とする円を成すものとされており、そのホール素子式センサ92と対向する部分は、横断面形状である円の直径が長手方向に沿って直線的に連続して変化する状態で形成され、被検出部90が形成されている。被検出部90は、本実施形態では、駆動ロッド40自体にホール素子式センサ92からの距離が長手方向に沿って漸変する状態で形成されており、直径漸変部なのである。被検出部90およびホール素子式センサ92は、操舵車輪78が中立位置に位置する状態において、被検出部90の駆動ロッド40の長手方向における中央部がホール素子式センサ92と対向するとともに、被検出部90の軸線とホール素子式センサ92の軸線とが直交する状態で設けられている。本実施形態においては、操舵車輪78が中立位置に位置し、車両が直進状態にあって転舵装置16が中立位置にある状態において、後述するように、絶対転舵量検出装置82の零点が決定され、基準点が決定される。
【0034】
駆動ロッド40は、本実施形態においては磁性材料である鋼により作られており、被検出部90は磁性材料製である。そのため、永久磁石94,被検出部90およびホール素子96を通る磁路が形成され、ホール素子96に電圧が発生する。この電圧はアンプ98により増幅され、電気信号としてホール素子式センサ92から出力される。ホール素子96に発生する電圧は磁界が強いほど大きく、ホール素子96と被検出部90との距離が短いほど磁界が強くなり、ホール素子96に発生する電圧も大きくなる。被検出部90は、駆動ロッド40に、ホール素子式センサ92からの距離が駆動ロッド40の長手方向に沿って直線的に変化する状態で形成されており、駆動ロッド40が長手方向に移動させられれば、ホール素子式センサ92と被検出部90との距離が変化し、それに応じてホール素子96に発生する電圧が図4に示すように直線的に変化して、駆動ロッド40の長手方向における相対位置に対応する電気信号が得られる。
【0035】
被検出部90は駆動ロッド40に設けられ、ホール素子式センサ92はハウジング42に設けられており、被検出部90とホール素子式センサ92との駆動ロッド40の長手方向における相対位置は、駆動ロッド40とハウジング42との上記長手方向における相対位置であり、基準点の設定により、ホール素子式センサ92が発する電気信号に基づいて駆動ロッド40の長手方向の絶対位置が取得される。この位置は操舵車輪78の転舵角に対応しており、駆動ロッド40の長手方向の絶対位置を検出することにより、転舵装置16の絶対転舵量が検出される。
【0036】
相対転舵量検出装置84を説明する。
相対転舵量検出装置84は、図3に示すように、前記転舵モータ50のロータ58に固定して設けられた被検出部たる回転体としての一対のパルスロータ11,112と、ハウジング42にパルスロータ110,112にそれぞれ対向して固定された検出部としての電磁ピックアップ114,116とを含む。電磁ピックアップ114,116はそれぞれ、図示は省略するが、コイルおよび永久磁石を含む。パルスロータ110,112は同様に構成され、それぞれ外周面に等角度間隔に設けられた複数の歯を有する。パルスロータ110,112はロータ58に、歯1個分、互いに位相をずらした状態で固定されている。
【0037】
転舵モータ50に電流が供給され、ロータ58が回転させられれば、パルスロータ110,112が回転させられる。それによりパルスロータ110,112の各々の複数の歯が電磁ピックアップ114,116に繰り返し接近,離間し、電磁ピックアップ114,116からそれぞれパルス信号が発せられる。電磁ピックアップ114,116からそれぞれ発せられるパルス信号は互いに歯1個分、ずれている。そのため、ロータ58の回転方向に応じて、電磁ピックアップ114,116からそれぞれ発せられるON信号,OFF信号の発生タイミング(順序)が異なり、電磁ピックアップ114,116の出力信号からロータ58の回転方向が得られ、操舵車輪78の転舵方向が得られる。
【0038】
電磁ピックアップ114,116から発せられるパルス信号のパルス数はそれぞれ、ロータ58の回転角度に比例し、駆動ロッド40の移動量に対応し、パルス数のカウントにより転舵装置16の相対転舵量が検出される。相対転舵量検出装置84の零点等基準点を決定すれば、その基準点を基準としてカウントされるパルス数に基づいて駆動ロッド40の位置が得られ、操舵車輪78の絶対転舵量が検出可能となる。
【0039】
制御装置18は、コンピュータ140を主体として構成されており、転舵装置16等を制御する。コンピュータ140は、CPU,ROM,RAM,入出力インタフェースおよびそれらを接続するバスを含んで構成されており、入出力インタフェースには、前記ロータリエンコーダ12,ホール素子式センサ92,電磁ピックアップ114,116,左,右の操舵車輪78の各角速度を検出する角速度センサ146,148等、各種センサ等が接続されている。コンピュータ140はまた、駆動回路142,144をそれぞれ介して反力モータ32および転舵モータ50等を制御する。本実施形態においては、これらコンピュータ140および駆動回路142,144等が制御装置18を構成している。コンピュータ140のROMには、図5にフローチャートで示す最終転舵量決定ルーチン等、各種プログラム等が記憶されている。
【0040】
コンピュータ140においては、ホール素子式センサ92から出力される電気信号に基づいて操舵車輪78の転舵角が演算される。本実施形態においては、操舵車輪78が中立位置にあり、駆動ロッド40が中立位置に位置るる状態において絶対転舵量検出装置82の零点が決定され、基準点が決定される。その状態で得られるホール素子式センサ92の出力値が零点を規定する零点規定値として記憶されるのであり、転舵角演算時におけるホール素子式センサ92の出力値と零点規定値との差から、転舵角演算時における駆動ロッド40の位置が得られ、その位置から操舵車輪78の転舵角が得られる。本実施形態において転舵角は、ホール素子式センサ92の出力値が零点規定値であって、駆動ロッド40が中立位置にあり、操舵車輪78が中立位置にある状態では0度、駆動ロッド40が中立位置より正方向側に移動させられていて、操舵車輪78が中立位置より正方向(右方向)側の領域において転舵される状態では正の値、逆の状態では負の値に演算される。
【0041】
また、コンピュータ140においては、相対転舵量検出装置84から出力されるパルスの数がカウンタによってカウントされる。パルス数のカウントは、パルスロータ110,112のうちの予め定められた一方について行われ、カウンタは、相対転舵量検出装置84の基準点としての零点の決定時に0にリセットされる。本実施形態においては、操舵車輪78が中立位置にある状態において、相対転舵量検出装置84の基準点である零点が決定され、カウンタは、ロータ58が正方向に回転させられて操舵車輪78が正方向に操舵されるとき、パルス数を加算し、ロータ58がフ負方向に回転させられて操舵車輪78が負方向に操舵されるとき、減算する。ロータ58の回転方向は、前述のように、電磁ピックアップ114,116の出力信号からわかる。相対転舵量検出装置84の零点が決定されれば、カウンタのカウント値は駆動ロッド40の長手方向の絶対位置を表し、転舵装置16の絶対転舵量を表すこととなり、このカウント値に基づいて操舵車輪78の転舵角が演算される。
【0042】
以上のように構成された電気制御操舵装置においては、ステアリングホイール10の操舵角がロータリエンコーダ12により検出され、操舵角に対応して目標転舵角が設定される。前述のように、本実施形態において操舵角は、操舵方向に応じて正負の符号を付して取得されるようにされており、目標転舵角も正負の符号を付して設定される。そして、操舵車輪78の実転舵角および目標転舵角に基づいて目標転舵角を得るために必要な電流が演算され、転舵モータ50に供給される。それにより転舵モータ50が駆動され、駆動ロッド40が長手方向に移動させられて操舵車輪78が転舵される。操舵角に対応する方向に対応する角度、転舵されるのである。この際、ステアリングホイール10の操舵角に応じた反力が反力付与装置14によってステアリングホイール10に付与されるが、反力の付与は本発明と関係が薄いため、説明を省略する。
【0043】
操舵車輪78の実際の転舵角である実転舵角は、複合型転舵量検出装置80による転舵装置16の転舵量の検出に基づいて検出される。転舵装置16の転舵量は、図5に示す最終転舵量決定ルーチンにより決定される。最終転舵量の決定を概略的に説明する。ここにおいて最終転舵量は実転舵角に換算される転舵量である。
【0044】
最終転舵量決定ルーチンにおいては、絶対転舵量検出装置82の基準点としての零点の決定および相対転舵量検出装置84の基準点としての零点の決定が行われ、車両のイグニッションスイッチのON後、相対転舵量検出装置84の零点が決定されるまでの間は、絶対転舵量検出装置82により検出された転舵量が最終転舵量に決定される。相対転舵量検出装置84の零点が決定されるまでの間が、複合型転舵量検出装置80の検出初期であり、相対転舵量検出装置84の零点が決定されれば、相対転舵量検出装置84により検出される転舵量が最終転舵量に決定される。相対転舵量検出装置84の零点は、絶対転舵量検出装置82のホール素子式センサ92の出力値が零点規定値である場合および車両の直進走行状態検出時に決定され、その決定後は、相対転舵量検出装置84の検出値は絶対転舵量を表し、最終転舵量に決定される。車両の直進状態の検出条件は、本実施形態においては、ステアリングホイール10の操舵角が0であり、かつ、左右の操舵車輪78の各角速度が同じであると見なしてよい状態が設定時間以上、継続することであり、その検出時には、絶対転舵量検出装置82の零点も決定される。絶対転舵量検出装置82および相対転舵量検出装置84の各零点の決定は、イグニッションスイッチがONの状態で常時、実行されており、検出毎に零点が更新される。
【0045】
以下、フローチャートに基づいて更に詳細に説明する。
最終転舵量決定ルーチンは、車両の電源投入により実行される。まず、ステップ1(以後、S1と略記する)ないしS4がそれぞれ実行され、ホール素子式センサ92が発する電気信号,電磁ピックアップ114,116の予め設定された一方が発するパルスをカウントするカウンタのカウント値,操舵角および左右の操舵車輪78の各角速度が読み込まれた後、車両が直進状態にあるか否かの判定が行われる。S5において操舵角が0度であるか否かが判定され、S6において左右の操舵車輪78の各角速度が等しいか否かが判定され、S7においては、操舵角が0度であって、左右の操舵車輪78の各角速度が等しく、S5およびS6の各判定結果がいずれもYESになって初めてS7が実行されてから設定時間が経過したか否かの判定が行われるのである。なお、本実施形態においては、説明を単純にするために、左右の操舵車輪78の各タイヤの径は同じであって、車両直進状態では各角速度がほぼ同じになることとする。
【0046】
操舵角が0度でなく、左右の操舵車輪78の各角速度が互いに異なっており、あるいは設定時間が経過していない状態では、S5〜S7のいずれかの判定結果がNOになってS13が実行され、フラグF1が1にセットされているか否かが判定される。フラグF1は、1にセットされることにより、車両の直進状態の検出に基づいて相対転舵量検出装置84の零点が決定されたことを記憶する。フラグF1が0にリセットされていれば、S13の判定結果はNOになってS14が実行され、フラグF2が1にセットされているか否かが判定される。フラグF2は、1にセットされることにより、イグニッションスイッチのON後、絶対転舵量検出装置82の零点検出により、相対転舵量検出装置84の零点が決定されたことを記憶する。
【0047】
フラグF2がリセットされていれば、S14の判定結果はNOになってS15が実行され、絶対転舵量検出装置82により検出される転舵量が零であるか否か、すなわちホール素子式センサ92の出力値が先のイグニッションスイッチのON時に記憶された絶対転舵量検出装置82の零点規定値と一致するか否かが判定される。絶対転舵量が零でなければ、S15の判定結果はNOになってS16が実行され、初期転舵量が決定される。
【0048】
S16においては、絶対転舵量検出装置82により検出される転舵量が最終転舵量に決定され、検出初期の最終転舵量である初期転舵量とされる。S1において読み込まれた電気信号と、絶対転舵量検出装置82の零点規定値とに基づいて駆動ロッド40の長手方向の位置が演算されるのである。ここではまだ、イグニッションスイッチのON後、絶対転舵量検出装置82の零点が決定されておらず、先にイグニッションスイッチがONの状態で取得された絶対転舵量検出装置82の零点規定値が演算に用いられる。そして、この初期転舵量に基づいて操舵車輪78の転舵角が演算される。このように初期転舵量を決定することにより、イグニッションスイッチON直後であっても絶対転舵量が得られ、転舵角の演算に使用し、操舵車輪78を転舵制御することができる。
【0049】
車両直進状態が検出されていないが、ホール素子式センサ92の出力値が零点規定値と一致する状態になれば、S15の判定結果がYESになってS17が実行され、フラグF2がセットされる。そして、S18が実行され、相対転舵量検出装置84の零点が決定され、相対転舵量検出装置84の基準点が決定される。
相対転舵量検出装置84から出力されるパルスの数をカウントするカウンタが0にリセットされるのであり、相対転舵量検出装置84の零点は、絶対転舵量検出装置82の検出結果に基づいて決定される。次いでS19が実行され、最終転舵量が0に決定される。
【0050】
絶対転舵量検出装置82の零点検出により相対転舵量検出装置84の零点が決定されれば、フラグF2がセットされるため、車両直進状態が検出されない状態では、S14の判定結果がYESになってS20が実行され、相対転舵量検出装置84の検出結果に基づいて最終転舵量が決定される。S20の実行時には、S18の実行により相対転舵量検出装置84の零点が決定されており、S2において読み込まれた相対転舵量検出装置84により検出された転舵量、すなわち電磁ピックアップ114,116が発するパルスの数をカウントするカウンタのカウント値は絶対転舵量を表し、その転舵量が最終転舵量に決定される。そして、操舵車輪78の転舵角は、このカウント値を用いて演算される。ここでは、相対転舵量検出装置84の零点が、絶対転舵量検出装置82の検出結果に基づいて決定されており、絶対転舵量検出装置82の検出結果と相対転舵量検出装置84の検出結果とに基づいて最終転舵量が決定される。
【0051】
車両直進状態が検出され、S7の判定結果がYESになればS8が実行され、フラグF1が1にセットされているか否かが判定される。フラグF1がセットされていなければ、S8の判定結果はNOになってS9が実行され、フラグF1が1にセットされる。次いで、S10が実行され、絶対転舵量検出装置82の零点が決定される。S1において読み込まれたホール素子式センサ92の出力値が零点を規定する零点規定値としてコンピュータ140のRAMに記憶されるのである。なお、この零点規定値は、車両の電源がOFFにされてもバックアップされて残される。そして、S11において相対転舵量検出装置84の零点が決定される。この零点の決定はS18と同様に行われ、次いでS12が実行されて最終転舵量が0に決定される。
【0052】
このように車両直進状態に基づいて相対転舵量検出装置84の零点が決定されれば、フラグF1がセットされるため、車両の直進状態が検出されず、次にS13が実行されるとき、その判定結果がYESになってS21が実行され、相対転舵量検出装置84が検出する転舵量が最終転舵量に決定される。
【0053】
絶対転舵量検出装置82および相対転舵量検出装置84の各零点は、本実施形態においては、一旦、決定された後も車両の直進状態が検出される毎に決定され、誤差の累積等による検出精度の低下が防止される。
【0054】
本実施形態の絶対転舵量検出装置82においては、被検出部90が、横断面形状が、駆動ロッド40のハウジング42に対する相対回転の中心線を中心とする円をなすものとされており、被検出部90とホール素子式センサ92との距離は、駆動ロッド40とハウジング42との位相を問わず、同じである。したがって、駆動ロッド40とハウジング42とが、それらの相対回転が阻止されているにもかかわらず、製造誤差,組付け誤差等によって相対回転することがあっても、その影響を受けることなく、ホール素子式センサ92が発する電気信号に対する悪影響が軽減され、絶対転舵量の検出誤差の発生が抑制される。
【0055】
以上の説明から明らかなように、本実施形態においては、コンピュータ140のS5ないしS7を実行する部分が車両直進状態検出部を構成し、コンピュータ140のS10を実行する部分が絶対転舵量検出装置82の基準点決定手段を構成し、ホール素子式センサ92の出力値と零点規定値との差から駆動ロッド40の位置を取得する部分がロッド位置取得部を構成し、被検出部90およびホール素子式センサ92を備えた検出部と共に絶対転舵量検出装置82を構成している。 また、コンピュータ140のS11を実行する部分が相対転舵量検出装置84の基準点決定部を構成し、パルスロータ110,112,電磁ピックアップ114,116,パルスロータ110あるいは112が発生するパルスをカウントするカウンタ,コンピュータ140のカウンタにパルス数をカウントさせる部分およびS21を実行する部分と共に相対転舵量検出装置84を構成している。さらに、コンピュータ140のS16を実行する部分が初期転舵量決定部を構成し、S18を実行する部分が基準点決定部を構成し、S19,S20を実行する部分と共に最終転舵量決定部を構成している。
【0056】
本発明の別の実施形態を図6に基づいて説明する。なお、図6には、絶対転舵量検出装置のうち、本発明に関係の深い部分のみが概略的に図示されている。また、上記実施形態の構成要素と同じ作用を為す構成要素には、同一の符号を付して説明を省略する。図7以下の実施形態についても同様である。
【0057】
本実施形態の絶対転舵量検出装置150は、被検出部152と、センサ部としての可変インダクタンス式センサ154とを含む。被検出部152は駆動ロッド40に設けられ、前記実施形態の被検出部90と同様に構成されている。駆動ロッド40は磁性材料製とされている。可変インダクタンス式センサ154は、励磁・検出コイル158を含み、駆動ロッド40に対向する状態でハウジング42に固定されている。励磁・検出コイル156は、本実施形態においては、2つの異なるコイルである励磁コイルと検出コイルとが同心状に巻かれたものとされ、ハウジング42の内周側に固定されて駆動ロッド40の外側に配設されている。
【0058】
励磁・検出コイル156の励磁コイルには電流が供給されており、検出コイルには励磁・検出コイル156と被検出部152との距離に応じた電圧が発生し、電気信号として出力される。ステアリングホイール10が回転操作されて駆動ロッド40が長手方向に移動させられ、被検出部152が移動させられて可変インダクタンス式センサ154の被検出部152までの距離が変化すれば、それに応じて検出コイルに発生する電圧が変化する。したがって、出力される電気信号によって可変インダクタンス式センサ154と被検出部152との駆動ロッド40の長手方向における相対位置が得られ、その相対位置および基準点(零点)に基づいて駆動ロッド40の長手方向の位置を取得し、操舵車輪78の絶対転舵量を検出することができる。また、本実施形態においても、駆動ロッド40に設けられた被検出部152は横断面形状が円形をなし、駆動ロッド40とハウジング42とが相対回転しても、被検出部152と励磁・検出コイル156との距離は変化しないため、出力される電気信号は変化させられず、発生信号に悪影響を及ぼすことが回避される。
【0059】
本発明の更に別の実施形態を図7に基づいて説明する。
本実施形態の絶対転舵量検出装置170は、駆動ロッド40に設けられた被検出部172とハウジング42に固定されたホール素子式センサ174とを含む。
被検出部172は、第一直径漸変部176および第二直径漸変部178を含む。
【0060】
第一,第二直径漸変部176,178はそれぞれ、横断面形状が、駆動ロッド40のハウジング42に対する相対回転の中心線を中心とする円形をなし、その円の直径が駆動ロッド40の長手方向に沿って直線的に連続して変化させられ、ホール素子式センサ174からの距離が上記長手方向に沿って変化する状態で形成されている。これら第一,第二直径漸変部176,178は、傾斜角度は同じであるが、互いに逆向きに傾斜させられ、駆動ロッド40の長手方向において隣接して形成されている。第一,第二直径漸変部176,178はそれぞれ、横断面形状である円の直径が最大の部分において隣接するのであるが、第二直径漸変部178の最大直径は、第一直径漸変部176の最大直径より小さくされ、第一直径漸変部176と第二直径漸変部178との間には、ホール素子式センサ174からの距離が急変する急変部182が設けられている。また、第二直径漸変部178の最大直径は、第一直径漸変部176の最小直径よりも小さくされており、第一,第二直径漸変部176,178の直径は互いに異ならされている。ホール素子式センサ174は、前記ホール素子式センサ92と同様に構成されている。また、駆動ロッド40は磁性材料製とされている。
【0061】
被検出部172およびホール素子式センサ174は、転舵装置16および操舵車輪78が中立位置にあり、駆動ロッド40が中立位置に位置する状態において、急変部182がホール素子式センサ174と対向するように設けられている。
被検出部172は、転舵装置16の中立位置に対応する部分においてホール素子式センサ172からの距離が急変するのであり、被検出部172の出力値の急変により急変部182が検出され、転舵装置16および操舵車輪78が中立位置にあることが検出される。また、第一,第二直径漸変部176,178の各直径は互いに異ならされており、ホール素子式センサ172から発せられる電気信号により、駆動ロッド40の長手方向の位置が特定され、絶対転舵量が得られる。さらに、急変部182の検出に基づいて、例えば、相対転舵量検出装置の零点を決定することができる。
【0062】
被検出部172に急変部182を設ける場合、図8に示す絶対転舵量検出装置190のように、被検出部192の第一直径漸変部194および第二直径漸変部196を同じ方向に傾斜させてもよい。第一,第二直径漸変部194,196は、駆動ロッド40の長手方向において互いに隣接して設けられるとともに、第二直径漸変部196の横断面形状である円の最大直径は、第一直径漸変部194の横断面形状である円の最小直径より小さくされ、それらの間に、ホール素子式センサ198からの距離が急変する急変部200が設けられている。
【0063】
本絶対転舵量検出装置190においても、前記絶対転舵量検出装置170と同様に、ホール素子式センサ198の出力値に基づいて絶対転舵量が得られるとともに、急変部200がホール素子式センサ198によって検出されることにより転舵装置16の中立位置が検出される。
【0064】
本発明の更に別の実施形態を図9に示す。
本実施形態の絶対転舵量検出装置210は、駆動ロッド212に設けられた弾性部材の一種である板ばね214と、ハウジング216に設けられ、第二部を構成する電気抵抗層218とを含む。ハウジング216は、本実施形態においては円筒状をなし、電気抵抗層218はハウジング216の円筒面状をなす内周面に、駆動ロッド40の長手方向に延びる状態で設けられ、その板ばね214の自由端部が摺動する摺動面220は、ハウジング216の中心線であって、駆動ロッド212のハウジング216に対する相対回転の中心線を中心線とする円筒面の一部をなす。
【0065】
板ばね214は、本実施形態においては、概ね駆動ロッド212の長手方向に延び、基端部が駆動ロッド212に固定され、自由端側に向かうに従ってハウジング216に接近するように傾斜させられ、その自由端部が電気抵抗層218に接触させられて摺動片を構成している。本実施形態において板ばね214は長くされるとともに、その傾斜角度が小さくされている。なお、図9においては、わかり易くするために、板ばね214の傾斜角度が実際より誇張して図示されている。
【0066】
ステアリングホイール10が回転操作され、駆動ロッド212が長手方向に移動させられるとき、板ばね214の自由端部が電気抵抗層218の摺動面220上を摺動し、抵抗値が変化し、自由端部が接触する位置における抵抗値に応じた電圧が電気信号として出力される。本実施形態においては、摺動片214が電気抵抗層218の長手方向の一端部に接触する状態において電圧が0となり、摺動片214が電気抵抗層218の長手方向の他端部側へ摺動するに従って電圧が直線的に増大するようにされている。本絶対転舵量検出装置210においては、前記絶対転舵量検出装置82と同様に基準点が決定され、駆動ロッド212の位置が取得されて絶対転舵量が取得される。
【0067】
本実施形態においては、電気抵抗層218の摺動面220は円筒面の一部とされており、駆動ロッド212とハウジング216との相対回転に伴う電気抵抗層218と板ばね214との、駆動ロッド212のハウジング216に対する相対回転の中心線まわりの相対回転が許容される構造とされている。そのため、駆動ロッド212とハウジング216とが相対回転しても、板ばね214の電気抵抗層218とに接触する自由端部の駆動ロッド212の長手方向の位置は変わらず、検出誤差の発生が回避される。
【0068】
また、本実施形態においては、駆動ロッド212がハウジング216に対して、その長手方向と直交する方向において相対移動し、電気抵抗層218と板ばね214とが駆動ロッド212の長手方向と直交する方向に相対移動させられる場合、この相対移動が板ばね214の弾性変形により吸収される。厳密には、板ばね214の弾性変形に伴って、板ばね214の電気抵抗層218に対する駆動ロッド212の長手方向の位置が変化するが、本実施形態では、板ばね214が長くされるとともに、その傾斜角度が小さくされているため、電気抵抗層218と板ばね214との駆動ロッド212の長手方向と直交する方向の相対移動に伴って、板ばね214の傾斜が変化し、板ばね214の自由端部の、駆動ロッド212の長手方向の位置が変化しても、この位置の変化は小さくて済む。板ばね214の自由端部、すなわち摺動片の、駆動ロッド212の長手方向の位置の変化が小さいということは、駆動ロッド212の長手方向と直交する方向の移動の悪影響が軽減されるということであり、検出誤差が小さくて済む。
【0069】
本発明の更に別の実施形態を図10に示す。本実施形態の絶対転舵量検出装置230は、駆動ロッド232に設けられて第一部を構成するロッド駆動部234と、ハウジング236に設けられて第二部を構成する差動トランス238とを含む。差動トランス238は、励磁・検出コイル240と、駆動ロッド232の長手方向に延びて励磁・検出コイル240内に嵌入可能な磁性材料製ロッド242を含む。
【0070】
励磁・検出コイル240は、本実施形態においては、2つの異なるコイルである励磁コイルおよび検出コイルが同心状に巻かれ、ケーシング246内に収容されており、その内側に円筒状のガイド244が配設されるとともに、磁性材料製ロッド242が駆動ロッド232の長手方向に延びて移動可能に嵌合されている。磁性材料製ロッド242は、例えば、鋼により作られている。また、ロッド駆動部234は、本実施形態においては、駆動ロッド232の外周面に突設された突状をなし、磁性材料製ロッド242の励磁・検出コイル240の外へ突出させられた端部を相対移動不能に固定して保持している。
【0071】
したがって、ステアリングホイール10が回転操作され、駆動ロッド232が長手方向に移動させられれば、磁性材料製ロッド242がその長手方向に移動させられ、励磁・検出コイル240内を移動させられて、それらの相対位置に応じた電気信号が出力される。本絶対転舵量検出装置230の基準点としての零点は、前記絶対転舵量検出装置82と同様に決定され、その零点および差動トランス238から出力される電気信号に基づいて駆動ロッド232の位置が取得され、転舵装置の絶対転舵量が取得される。
【0072】
絶対転舵量検出装置を差動トランスおよび磁性材料製ロッドを含む装置とする場合、磁性材料製ロッドを駆動ロッドに保持させることは不可欠ではない。例えば、図11に示す絶対転舵量検出装置260の差動トランス262は、ハウジング236に設けられ、励磁・検出コイル264,磁性材料製ロッド266,付勢装置の一種である弾性部材としての圧縮コイルスプリング(以後、スプリングと略称する)268を含み、ロッド駆動部270は駆動ロッド232に設けられ、当接面272を有する。
【0073】
磁性材料製ロッド266は、励磁・検出コイル264内に配設された円筒状のガイド276内に駆動ロッド232の長手方向に平行な方向に移動可能に嵌合されるとともに、ガイド276内に配設されたスプリング268により、駆動ロッド232の長手方向に平行な一方向であって、励磁・検出コイル264から外へ突出する向きに付勢されている。
【0074】
ロッド駆動部270は、駆動ロッド232の外周面に突設された突状をなし、前記当接面272が駆動ロッド232の長手方向に直角に設けられている。磁性材料製ロッド264は、スプリング268の付勢により当接面272に当接させられており、駆動ロッド232の長手方向の移動に追従させられる。また、磁性材料製ロッド264は当接面272に当接しているのみであり、当接面272は、磁性材料製ロッド264の駆動ロッド232の長手方向に直角な方向の相対移動を許容する。
【0075】
本絶対転舵量検出装置260においては、ステアリングホイール10が回転操作され、駆動ロッド232が、ロッド駆動部270が差動トランス262に接近する向きに移動させられれば、ロッド駆動部270はスプリング268の付勢力に抗して磁性材料製ロッド266を、励磁・検出コイル264内に進入する方向に移動させる。駆動ロッド232が逆向きに移動させられれば、磁性材料製ロッド264はスプリング268の付勢により、駆動ロッド232に追従して移動する。磁性材料製ロッド264の移動により、磁性材料製ロッド264と励磁・検出コイル264との駆動ロッド232の長手方向の相対位置に対応する電気信号が出力され、その電気信号に基づいて駆動ロッド232の位置が取得され、転舵装置の絶対転舵量が取得される。
【0076】
本実施形態においては、当接面272が磁性材料製ロッド264の、駆動ロッド232の長手方向に直角な方向の相対移動を許容するようにされているため、駆動ロッド232とハウジング236とが、駆動ロッド232の長手方向に直角な方向において相対移動しても、磁性材料製ロッド264がロッド駆動ロッド232と共に励磁・検出コイル264に対して相対移動することがなく、その相対移動が差動トランス262から出力される電気信号に悪影響を及ぼすことが軽減される。
【0077】
このようにロッド駆動部270が磁性材料製ロッド264の相対移動を許容する場合には、許容しない場合に比較して、磁性材料製ロッド264のガイド276に対する嵌合精度を高くすることができ、駆動ロッド232とハウジング236との相対移動による電気信号への悪影響がより良好に軽減される。前記絶対転舵量検出装置230においても、磁性材料製ロッド242がガイド244に嵌合されてその移動を案内されるため、駆動ロッド232とハウジング236とが、駆動ロッド232の長手方向と直角な方向に相対移動しても、磁性材料製ロッド242の励磁・検出コイル240に対する変位は少なく、その相対移動の電気信号への悪影響は少ないが、磁性材料製ロッド242がロッド駆動部234に相対移動不能に保持されているため、そのガイド244との嵌合精度は、それほど高くされず、変位が生ずる。それに対し、絶対転舵量検出装置260においては、ガイド276と磁性材料製ロッド266との嵌合精度が高く、磁性材料製ロッド266の変位がより少なくて済み、検出精度の低下が良好に防止されるのである。
【0078】
本発明の更に別の実施形態を図12に示す。本実施形態の絶対転舵量検出装置300は、駆動ロッド302に設けられて第一部を構成する保持部304と、ハウジング306に設けられて第二部を構成する検出器308とを含む。検出器304は、回転体の一種であるプーリ312,紐状体としてのワイヤ314,付勢装置の一種である弾性部材としてのうず巻きばね316と、回転センサ318とを含む。
【0079】
プーリ312は、ハウジング306により、駆動ロッド302の長手方向と直角に立体交差する回転軸線まわりに回転可能に支持された回転軸320に取り付けられ、ワイヤ314の一端部が巻き付けられている。ワイヤ314は、プーリ312に巻き付けられた側とは反対側の端部である先端部が、プーリ312の回転を伴ってプーリ312から引き出し可能である。うず巻きばね316は、ハウジング306とプーリ312の回転軸320との間に設けられ、プーリ312を、ワイヤ314の上記先端部がプーリ312内に引っ込む向きに付勢している。
回転センサ318は、プーリ312の回転角度に応じた電気信号を発生させる。
【0080】
前記保持部304は、駆動ロッド302の外周面に設けられた突状をなし、ワイヤ314の先端部の先端を、その先端部が駆動ロッド302の長手方向に平行に延びる姿勢で固定的に保持している。本実施形態においてワイヤ314は、検出器308と保持部304とが最も接近した状態におけるそれらの間の距離、すなわちワイヤ314のプーリ312からの最小引出し量が設定量以上とされており、先端部が駆動ロッド302の長手方向に平行に延びている。
【0081】
ステアリングホイール10が回転操作され、駆動ロッド302が、長手方向において保持部304が検出器308から離れる方向に移動させられれば、ワイヤ314を介してプーリ312がうず巻きばね316の付勢力に抗して回転させられ、ワイヤ314がプーリ312から引き出されることが許容される。また、駆動ロッド302が検出器308に接近する方向に移動させられれば、プーリ312がうず巻きばね316の付勢により回転させられ、ワイヤ314がプーリ312に引き込まれる。このように駆動ロッド302の移動に伴ってプーリ312が回転させられるとき、回転センサ318からプーリ312の回転角度に応じた電気信号が出力され、保持部304と検出器308との相対位置が検出され、駆動ロッド302の位置が取得される。
【0082】
本絶対転舵量検出装置300においては、ワイヤ314のプーリ312からの最小引出し量が設定量以上とされており、駆動ロッド302の位置ないしプーリ312の回転角度を問わず、ワイヤ314の保持部304によって保持された先端部は駆動ロッド302の長手方向に平行に延びている。そのため、駆動ロッド302とハウジング306とが、駆動ロッド302の長手方向に直角な方向に相対移動しても、保持部304と検出器308との、駆動ロッド302の長手方向における距離が事実上変化せず、回転センサ318の電気信号は事実上変化せず、殆ど誤差を生じることなく転舵量が検出される。
【0083】
上記各実施形態において、車両の直進状態を検出するために左右の操舵車輪の各角速度を比較するにあたり、タイヤの径は同じであるとしたが、空気圧や摩耗量の違い等により、同じであるとは限らない。そのため、絶対転舵量検出装置および相対転舵量検出装置の各基準点の決定に先立って、左右の操舵車輪の各角速度の比率を求め、殆ど変化せず、一定とみなしてよい状態での比率を車両直進状態における比率とし、車両直進状態の判定に用いることが望ましい。この場合、車両直進状態の判定時には、角速度センサにより検出された左右の操舵車輪の各角速度の比率を求め、車両直進状態における比率と比較し、ほぼ同じであれば、車両が直進状態であるとする。
【0084】
また、複合型転舵量検出装置において初期転舵量を決定する場合、絶対転舵量検出装置の温度変化による検出値の変化を考慮してもよい。例えば、イグニッションスイッチがOFFにされ、車両が停止させられている時間が短い場合には、先のイグニッションスイッチのON時に取得された絶対転舵量検出装置の零点等基準点を用いて初期転舵量を決定し、車両の停車時間が長い場合には、車両走行時に決定された零点等基準点は使用せず、停車による車両の温度低下に基づく駆動ロッドの収縮を考慮した零点等基準点を初期転舵量の決定に使用する。この零点等基準点は、例えば、季節,停車時間等に応じて予め設定された係数を、車両走行時に決定された零点等基準点を規定する値に掛けることにより取得してもよく、あるいは季節,停車時間等に応じて予め設定された値でもよい。
【0085】
さらに、絶対転舵量検出装置の零点等基準点の決定は、イグニッションスイッチがONにされる毎に行うのに限らず、設定条件の成立時、例えば、設定時間の経過毎に、あるいは設定走行距離の到達毎に行うようにしてもよい。この場合、相対転舵量検出装置については、絶対転舵量検出装置の検出部が発生する電気信号が零点等基準点を規定する信号となった状態で零点等基準点を決定することができる。絶対転舵量検出装置の零点等基準点の決定時に決定することもできる。
あるいは絶対転舵量検出装置の零点等基準点の決定とは別に決定してもよい。
【0086】
また、転舵量検出装置の零点等基準点は、転舵装置の中立位置において決定するのに限らず、他の位置、例えば、転舵可能領域の一方において設定してもよい。
【0087】
さらに、上記各実施形態においては転舵装置に相対転舵量検出装置および絶対転舵量検出装置が設けられていたが、絶対転舵量検出装置のみ設けてもよい。
【0088】
以上、本発明のいくつかの実施形態を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、本発明は、前記〔発明が解決しようとする課題,課題解決手段および効果〕の項に記載された態様を始めとして、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した形態で実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態である転舵量検出装置および複合型転舵量検出装置を備えた電気制御操舵装置を概略的に示す図である。
【図2】上記電気制御操舵装置の転舵装置を概略的に示す正面図である。
【図3】上記複合型転舵量検出装置の絶対転舵量検出装置,相対転舵量検出装置および上記転舵装置を示す正面断面図である。
【図4】上記絶対転舵量検出装置のホール素子式センサから出力される電圧と被検出部の位置との関係を示すグラフである。
【図5】上記電気制御操舵装置の制御装置によって実行される最終転舵角決定ルーチンを示すフローチャートである。
【図6】本発明の別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図7】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図8】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図9】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図10】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図11】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【図12】本発明の更に別の実施形態である絶対転舵量検出装置を概略的に示す正面図(一部断面)である。
【符号の説明】
16:転舵装置 18:制御装置 40:駆動ロッド 42:ハウジング 44:ロッド駆動装置 50:転舵モータ 78:操舵車輪 80:複合型転舵量検出装置 82:絶対転舵量検出装置 84:相対転舵量検出装置 90:被検出部 92:ホール素子式センサ 140:コンピュータ 150:絶対転舵量検出装置 152:被検出部 154:可変インダクタンス式センサ 156:励磁・検出コイル 170:絶対転舵量検出装置 172:被検出部 174:ホール素子式センサ 176:第一直径漸変部 178:第二直径漸変部 182:急変部 190:絶対転舵量検出装置 192:被検出部 194:第一直径漸変部 196:第二直径漸変部 198:ホール素子式センサ 200:急変部 210:絶対転舵量検出装置 212:駆動ロッド 214:板ばね 216:ハウジング 218:電気抵抗層 220:摺動面 230:絶対転舵量検出装置 232:駆動ロッド 234:ロッド駆動部 236:ハウジング238:差動トランス 240:励磁・検出コイル 242:磁性材料製ロッド 260:絶対転舵量検出装置 262:差動トランス 264:励磁・検出コイル 266:磁性材料製ロッド 268:圧縮コイルスプリング 270:ロッド駆動部 272:当接面 300:絶対転舵量検出装置 302:駆動ロッド 304:保持部 306:ハウジング 308:検出器 312:プーリ 314:ワイヤ 316:うず巻きばね 318:回転センサ
Claims (7)
- 長手形状をなす駆動ロッドと、その駆動ロッドを長手方向に移動可能に保持するハウジングと、それら駆動ロッドとハウジングとの間に設けられ、駆動ロッドをハウジングに対して前記長手方向に移動させるロッド駆動装置とを備え、前記駆動ロッドが車両の操舵車輪に接続される転舵装置に設けられ、その転舵装置の転舵量を検出する転舵量検出装置であって、
前記駆動ロッドおよび前記ハウジングにそれぞれ設けられた第一部および第二部を備え、それら第一部および第二部の前記長手方向における相対位置に対応する電気信号を発生させる検出部と、
その検出部の電気信号に基づいて前記駆動ロッドの前記長手方向の位置を取得するロッド位置取得部と、
前記駆動ロッドの前記ハウジングに対する相対回転と前記長手方向に直角な方向の相対移動との少なくとも一方の、前記電気信号に対する悪影響を軽減する悪影響軽減手段と
を含むことを特徴とする転舵量検出装置。 - 前記第二部が、前記長手方向と直交する方向において前記駆動ロッドに対向する状態で前記ハウジングに固定されたセンサ部を含み、前記第一部が、前記駆動ロッド自体に、少なくとも前記センサ部に対向する部分の横断面形状がその駆動ロッドの前記ハウジングに対する相対回転の中心線を中心とする円の一部をなし、その円の直径が長手方向に沿って漸変する状態で形成された被検出部を含み、その横断面形状が円の一部をなすことにより、駆動ロッドとハウジングとの相対回転にかかわらず前記センサ部の電気信号が変化しない構造とされたことが前記悪影響軽減手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の転舵量検出装置。
- 前記第一部と前記第二部との一方が前記長手方向に延びる電気抵抗層を含み、他方が、その電気抵抗層上を摺動する摺動片を含み、その電気抵抗層の前記摺動片との摺動面が前記駆動ロッドの前記ハウジングに対する相対回転の中心線を中心線とする円筒面の少なくとも一部をなし、その相対回転に伴う電気抵抗層と摺動片との前記中心線まわりの相対回転を許容する構造とされたことが、前記悪影響軽減手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の転舵量検出装置。
- 前記第一部および前記第二部の一方が、励磁コイルおよび検出コイルと、前記長手方向に平行に延びて前記励磁コイルおよび検出コイル内に嵌入可能な磁性材料製ロッドと、その磁性材料製ロッドを前記長手方向に平行な一方向に付勢する付勢装置とを備えた作動トランスを含み、前記第一部および前記第二部の他方が、前記長手方向に直角な当接面において前記磁性材料製ロッドと当接して前記付勢装置の付勢力に抗して磁性材料製ロッドを移動させるロッド駆動部を含み、前記当接面が前記磁性材料製ロッドの前記長手方向に直角な方向の相対移動を許容するようにされたことが前記悪影響軽減手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の転舵量検出装置。
- 前記第一部および前記第二部の一方が、前記長手方向と直角に立体交差する回転軸線まわりに回転可能な回転体と、その回転体に巻き付けられて先端部が回転体の回転を伴って引き出し可能な紐状体と、前記回転体を前記先端部が回転体側に引っ込む向きに付勢する付勢装置と、前記回転体の回転角度に応じた電気信号を発生させる回転センサとを備えた検出器を含み、前記第一部および前記第二部の他方が、前記紐状体の先端部が前記駆動ロッドの長手方向に平行に延びる姿勢でその先端部の先端を固定的に保持する保持部を含み、前記紐状体の先端部が前記駆動ロッドの長手方向に平行に延び、前記保持部の前記長手方向に直角な方向の移動にかかわらず前記回転センサの電気信号が事実上変化しないようにされていることが前記悪影響軽減手段を構成していることを特徴とする請求項1に記載の転舵量検出装置。
- 長手形状をなす駆動ロッドと、その駆動ロッドを長手方向に移動可能に保持するハウジングと、それら駆動ロッドとハウジングとの間に設けられ、駆動ロッドをハウジングに対して前記長手方向に移動させるロッド駆動装置とを備え、前記駆動ロッドが車両の操舵車輪に接続される転舵装置に設けられ、その転舵装置の転舵量を検出する転舵量検出装置であって、
前記長手方向と直交する方向において前記駆動ロッドに対向する状態で前記ハウジングに固定されたセンサ部と、
前記駆動ロッド自体に、前記センサ部からの距離が長手方向に沿って変化する状態で形成された被検出部と
を含むことを特徴とする転舵量検出装置。 - 請求項1ないし6のいずれかに記載の転舵量検出装置である絶対転舵量検出装置と、
前記ロッド駆動装置の構成要素である回転体の回転角度を検出することにより前記転舵装置の相対転舵量を検出する相対転舵量検出装置と、
前記絶対転舵量検出装置の検出結果と前記相対転舵量検出装置の検出結果とに基づいて最終的な転舵量を決定する最終転舵量決定部と
を含み、かつ、前記最終転舵量決定部が、検出初期に前記絶対転舵量検出装置により検出された転舵量を最終転舵量に決定する初期転舵量決定部を含むことを特徴とする複合型転舵量検出装置。
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