JP2004161997A - ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリエステル樹脂の全構成単位を100モル%とするとき、炭素数5以下のオキシカルボン酸単位を45〜99モル%含み、炭素数5以下のオキシカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位と炭素数4以下の脂肪族ジオール単位を合計で95モル%以上含有するポリエステル樹脂であって、オキシカルボン酸の含有量をMモル%とするとき、ポリエステル樹脂の密度ρ(kg/m3)との関係が、ρ≧1345+M×0.75の式を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸、炭素数4以下の脂肪族ジオールを共重合し、特定の密度領域にあるポリエステル樹脂に関するものである。さらに、詳しくは、グリコール酸を主成分とするオキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸、炭素数4以下の脂肪族ジオールを共重合し、特定の密度領域にある高度なガスバリア性を有するポリエステル樹脂に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
食品包装等に高分子材料を用いる場合、内容物の変質を防ぐためガス透過性が低いことが望まれている。ポリエステル樹脂ではポリエチレンテレフタレートが成形性、機械物性、ガスバリア性のバランスが優れるため各種の飲料容器などの食品包装材料に使用される例が多かった。しかしながら、特に長期保存性が求められる食品包装に対してはポリエチレンテレフタレート樹脂をもってしてもガスバリア性が必ずしも十分であるとはいえず、ガスバリア性に優れるポリエステル樹脂やポリエチレンテレフタレート樹脂のガスバリア性改質材が種々提案されてきた。
特公昭63−40444号にはイソフタル酸とエチレングリコールおよび1,3ビス(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼンの共重合体が二酸化炭素、酸素透過性の低い樹脂として提案されているが、これでもガスバリア性能が充分であると言えない。
【0003】
オキシカルボン酸を共重合したポリエステル、例えばポリグリコール酸を利用した検討もなされてきた。米国特許4565851号には、ポリエチレンテレフタレートへのポリグリコール酸のブレンドによるガスバリア性の改良が開示されている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートとポリグリコール酸は混和性が悪いため、透明な樹脂組成物を得るのは難しく、外観が良好な包装材料にするのは難しいという問題点を有している。また、特開平10−138371号にはポリエチレンテレフタレートなどの熱可塑性樹脂とポリグリコール酸の多層容器が、特開平10−337772号にはポリグリコール酸からなる中空成形容器が開示されている。しかしながら、ポリエチレンテレフタレートとポリグリコール酸とを多層成形容器にすると接着性が悪いため、実用性を出すためには界面の接着に接着剤を用いらざるを得ず、さらにポリグリコール酸は加水分解しやすく、実用的な包装材料には使用しにくいという問題点を有している。多層成形ボトルとして用いた場合には、ポリグリコール酸はポリエチレンテレフタレートと混和性が良くないため、回収、再資源化することが困難であるという問題点も有している。
【0004】
また、オキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸を共重合したポリエステルについては特許第2564469号、特公平7−21107号、特開昭61−179226号などで提案されている。特許第2564469号、特公平7−21107号では、ポリエチレンテレフタレート成分と、脂肪族オキシカルボン酸を共重合したポリエチレンイソフタレート成分とを多層構造化、あるいはブレンドして用いているが、このオキシカルボン酸含むポリエチレンイソフタレートはオキシカルボン酸を充分に多くは含んでおらず、ガスバリア性が十分ではない。
さらに特開昭61−179226号でもイソフタル酸とオキシカルボン酸の共重合体が提案されている。しかしながら、この共重合体は、260℃以上の高温で製造され、結果として低い密度の共重合体になっており、ガスバリア性が充分に高いとは言えない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記のような状況を改善するため、高濃度のオキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを共重合し、特定の密度領域にあり高度なガスバリア性と実用上問題のない耐加水分解性を有し、ポリエチレンテレフタレートとともに包装材料として使用しても、その回収、再資源化に支障のないポリエステル樹脂を提案することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ポリエステル樹脂の全構成単位を100モル%とするとき、炭素数5以下のオキシカルボン酸単位を45〜99モル%含み、炭素数5以下のオキシカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位と炭素数4以下の脂肪族ジオール単位を合計で95モル%以上含有するポリエステル樹脂であって、オキシカルボン酸の含有量をMモル%とするとき、ポリエステル樹脂の密度ρ(kg/m3)との関係が、ρ≧1345+M×0.75の式を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂に関するものである。
【0007】
また、本発明のポリエステル樹脂の好ましい態様は、オキシカルボン酸の含有量をMモル%とするとき、炭酸ガス透過係数PCO2(ml・mm/m2・day・atm)との関係が、PCO2≦3.4−M×0.025の式を満たすことを特徴としている。 特に上記ポリエステル中の炭素数5以下のオキシカルボン酸単位がグリコール酸であることが好ましい。 また、本発明のポリエステル中の芳香族ジカルボン酸単位が、イソフタル酸単位および/または2,6−ナフタレンジカルボン酸単位および/またはテレフタル酸単位であることが好ましく、中でもイソフタル酸単位がとりわけ好ましい。
【0008】
また、本発明は炭素数5以下のオキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、炭素数4以下の脂肪族ジオールとをエステル化し、さらに150℃〜250℃の温度範囲で溶融重縮合させることを特徴とするポリエステル樹脂に関するものである。
さらに、本発明は炭素数5以下のオキシカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸エステル、炭素数4以下の脂肪族ジオールとをエステル交換させ、さらに150℃〜250℃の温度範囲で溶融重縮合させることを特徴とするポリエステル樹脂に関するものである。
【0009】
【発明の実施の態様】
ポリエステル樹脂
本発明のポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂の全構成単位を100モル%とするとき、炭素数5以下のオキシカルボン酸単位を45〜99モル%含み、炭素数5以下のオキシカルボン酸単位と芳香族ジカルボン酸単位と炭素数4以下の脂肪族ジオール単位を合計で95モル%以上含有するポリエステル樹脂であって、オキシカルボン酸の含有量をMモル%とするとき、ポリエステル樹脂の密度ρ(kg/m3)との関係が、ρ≧1349+M×0.85の式を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂である。
ここで用いられる炭素数5以下のオキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、4−ヒドロキシn−酪酸、2−ヒドロキシイソ酪酸、5−ヒドロキシn−吉草酸、3−ヒドロキシプロピオン酸などを例示することができる。これらは単独で使用しても2種以上を混合して使用しても良い。
【0010】
これらのオキシカルボン酸の中でも、ガスバリア性が高いポリエステル樹脂が得られることから、グリコール酸、3−ヒドロキシカルボン酸などが好ましく、グリコール酸がより好ましい。これらのオキシカルボン酸は該ポリエステル樹脂の全構成単位を100モル%とするとき、通常、45〜99モル%、好ましくは50〜98モル%、更に好ましくは60〜97モル%含まれる。
【0011】
本発明において使用される芳香族ジカルボン酸としては、炭素数8〜12の芳香族ジカルボンが挙げられる。具体的にはイソフタル酸、テレフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸などが例示される。 これらの芳香族ジカルボン酸は単独で使用しても、2種以上を混合して使用しても良い。 これらの芳香族ジカルボン酸の中でも、ガスバリア性、機械物性に優れたポリエステルが得られる点で、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、テレフタル酸から選択される少なくとも1種であることが好ましい。特にイソフタル酸を使用することが好ましい。
【0012】
本発明において使用される炭素数4以下の脂肪族ジオール単位としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール等があげられる。これらの脂肪族ジオールは単独で使用しても、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でも、エチレングリコールを使用するのが好ましい。
本発明のポリエステル樹脂は上述したオキシカルボン酸単位、芳香族ジカルボン酸単位、炭素数4以下の脂肪族ジオール単位を合計で、通常95モル%以上、好ましくは97モル%以上、更に好ましくは99モル%以上含有している。 上記のような範囲でオキシカルボン酸単位、芳香族ジカルボン酸単位、炭素数4以下の脂肪族ジオール単位を共重合することで、高度なガスバリア性を有し、実用上の耐加水分解性と他のポリエステル樹脂特にポリエチレンテレフタレートとの混和性、接着性の高いポリエステル樹脂を供することができ、好ましい。
【0013】
本発明のポリエステル樹脂において、オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、炭素数4以下の脂肪族ジオール以外にも、組成が範囲を外れない限り、下記に挙げた単位を含むことができる。 含有してもよいジカルボン酸の単位としては、具体的に、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、デカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸が、また、含有してもよいジオール類の単位としては、具体的に、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ドデカメチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環族ジオール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,2-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス(4-β-ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノール類、ハイドロキノン、レゾルシンなどの芳香族基を含むジオール類が挙げられる。
【0014】
また、本発明に用いるポリエステル樹脂は必要に応じてエステル形成能を有する官能数3以上のモノマー単位を0.001〜2モル%含有してもよく、、より好ましくは0.01〜0.4モル%含有してもよい。 官能数3以上のモノマー単位としては、3以上のカルボキシル基を有する多官能カルボン酸類、または3以上のヒドロキシル基を有する多官能アルコール類から導かれる単位、3以上のカルボキシル基およびヒドロキシル基を有する多官能ヒドロキシ酸類が挙げられる。 これらの中では、特に3以上のヒドロキシル基を有する多官能アルコール類から導かれる単位を含有するのが好ましい。具体的には、グリセリン、ジグリセリン、(トリスヒドロキシメチル)メタン、1,1,1-(トリスヒドロキシメチル)エタン、1,1,1-(トリスヒドロキシメチル)プロパン、ペンタエルスリトール、ジペンタエリスリトールや、ソルビトール、グルコース、ラクトース、ガラクトース、フルクトース、サッカロースなどの糖類、1,3,5トリスヒドロキシエトキシイソシアヌレートなどの窒素含有多価アルコールから導かれる単位が挙げられる。 これらの中でも、グリセリン、1,1,1(トリスヒドロキシメチル)エタン、1,1,1(トリスヒドロキシメチル)プロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールから選ばれるのがより好ましい。
【0015】
本発明のポリエステル樹脂は、オキシカルボン酸の含有量をMモル%とするとき、ポリエステル樹脂の密度ρ(Kg/m3)との関係が、ρ≧1349+M×0.85の式を満たすことを特徴としている。この様な関係が成り立つポリエステルは、ガスバリア性と機械物性のバランスに優れており、ボトル、フィルムなどの包材として使用する際に特に適している。ここで、密度ρは、溶融状態のポリエステル樹脂を氷水中に急冷したペレットを室温で24時間減圧乾燥した後、23℃における四塩化炭素−ヘプタン溶液による密度勾配管を用いて測定した値であり、Mは、重クロロホルム溶液中の400MHz水素核磁気共鳴スペクトルを測定することによって求めた値である。
【0016】
例えば、グリコール酸(GA)、イソフタル酸(IA)、エチレングリコール(EG)からなるポリエステルの場合、観測されるシグナルは、▲1▼副生成したジエチレングリコールユニット(DEG)のエーテル酸素隣接メチレンに由来するもの、▲2▼GAユニットのメチレンと、EGユニットのメチレン、さらにDEGユニットのエーテル酸素非隣接メチレンが重なったもの、▲3▼IAユニットの環プロトン、の三つに大別される。これら三つのシグナルの強度比を用いて、各モノマーのユニット比を求める。
【0017】
まず、末端の官能基数を考慮すると、IA由来のカルボン酸ユニット数は、EGおよびDEG由来のヒドロキシルユニット数の和に等しいと仮定できる。そこで、EGユニット数は、シグナル▲3▼から求められるIAユニット数と、シグナル▲1▼から求められるDEGユニット数の差であるといえる。次に、シグナル▲2▼の積分強度は、GAユニット、EGユニット、DEGユニットからなるので、GAユニット数は、シグナル▲2▼の積分強度から、EGユニットおよびDEGユニットに起因する積分強度を減じれば求めることができる。 以上より、GA、IA、EG、DEGの各ユニット比を求めることができる。
【0018】
また、本発明のポリエステル樹脂は、オキシカルボン酸の含有量をMモル%とするとき、炭酸ガス透過係数PCO2(ml・mm/m2・day・atm)との関係が、PCO2≦2.7−M×0.023の式を満たすことを特徴としている。ここで、炭酸ガス透過係数は、ポリエステル樹脂のプレスフィルムを成型した後、ジーエルサイエンス社製GPM−250装置を用いて25℃で測定した値である。
【0019】
また本発明のポリエステル樹脂は、透明性に優れる成形品が得られる点から、結晶性が低く冷結晶化温度が100℃以上であるか、または結晶性がなく実質的に非晶であることが好ましい。
【0020】
ここで、結晶性とは、乾燥した室温で1日以上、好ましくは14日以上保管したポリエステル樹脂をDSCにてガラス転移点以下の温度に−50℃/min.以上、好ましくは−100℃以上の速度で冷却し、その温度に5〜15分の保持の後、再び溶融成形加工の可能な温度、好ましくは230℃以上の温度まで10℃/min.の昇温速度で測定した際に認められる融解ピークの大きさで評価することができる。本発明のポリエステル樹脂は、融解ピークの大きさが70J/g以下であることが好ましく、50J/g以下であることがより好ましい。また、冷結晶化温度とは、上記条件でDSCを測定した際に、ガラス転移点以上、融解温度以下の領域で観察される発熱ピーク温度のことであり、このピーク温度は100℃以上であることが好ましく、110℃以上であることがより好ましい。さらに、実質的に非晶性とは、上記条件でDSCを測定した際に、ガラス転移による熱容量の変化以外に、少なくとも0.5J/g以上のピークが確認できないもののことである。
本発明のポリエステル樹脂の還元粘度(IV)は、通常0.3〜2.5、好ましくは0.4〜2.0、更に好ましくは0.5〜1.5である。
【0021】
また、上記ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、通常20℃〜90℃、好ましくは25℃〜80℃、更に好ましくは30℃〜70℃である。
ポリエステル樹脂の製造方法
本発明のポリエステル樹脂は、上記のオキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、炭素数4以下の脂肪族ジオールとをエステル化し、さらに150℃〜250℃の温度範囲で溶融重縮合させる方法か、オキシカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸エステル、炭素数4以下の脂肪族ジオールとをエステル交換させ、さらに150℃〜250℃の温度範囲で溶融重縮合させる方法のいずれかの方法によって製造することができる。
【0022】
本発明において、オキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、及び炭素数4以下の脂肪族ジオールをエステル化する方法としては、所定のオキシカルボン酸、芳香族ジカルボン酸、炭素数4以下の脂肪族ジオールを同時にあるいは遂次的に、好ましくは130〜220℃の温度で加圧あるいは常圧にて、直接エステル化する方法が挙げられる。 尚、ここで用いるオキシカルボン酸としては、単量体のオキシカルボン酸でも、オキシカルボン酸の環状単量体でも環状多量体、または鎖状多量体でもかまわない。多量体の具体例としては、グリコライド、ラクタイドや各種ラクトン類が挙げられる。
【0023】
上記の反応を行う際には、ジカルボン酸原料合計1モルに対して、ジオール原料1.01〜3.5モル、好ましくは1.1〜3.0モル、オキシカルボン酸原料を1.35モル〜18モル、好ましくは2モル〜18モル、より好ましくは3モル〜18モルの割合で仕込み、反応させるのが好ましい。 上記のエステル化反応は、全く触媒を添加しなくてもよいし、濃硫酸やp-トルエンスルホン酸などの酸や金属錯体などの触媒の存在下行っても良いが、無触媒で行うのが好ましい。
【0024】
また、本発明において、オキシカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸エステル、及び炭素数4以下の脂肪族ジオールをエステル交換させる方法としては、所定量のオキシカルボン酸エステル、芳香族ジカルボン酸エステル、炭素数4以下の脂肪族ジオールとを、130〜220℃の温度で常圧下に、低級モノアルコールを留出しながらエステル交換を行う方法が挙げられる。
上記の反応は、ジカルボン酸原料合計1モルに対して、ジオール原料1.01〜4モル、好ましくは1.2〜3.2モル、オキシカルボン酸エステル原料を1.35モル〜18モル、好ましくは2モル〜18モル、より好ましくは3モル〜18モルの割合で仕込み、反応させるのが好ましい。上記のエステル交換反応は、通常、各種の酢酸マンガン、酢酸亜鉛などの金属錯体の存在下に行われる。
【0025】
次いで、上記のような方法で得た低重合体を、重合触媒と安定剤の存在下に、150℃〜250℃の温度範囲、好ましくは190〜230℃の温度範囲で、10Torr以下好ましくは2Torr以下の減圧条件にて攪拌を加えながらエチレングリコールなどのジオールを主体とする成分を溜出しながら1時間〜24時間、好ましくは2時間〜12時間、溶融重縮合を行うことで所定のポリエステル樹脂を製造することができる。
また、ここで用いる重合触媒としては、ナトリウムなどのアルカリ金属、マグネシウムなどのアルカリ土類金属や、アルミニウム、亜鉛、スズ、チタン、銅、ニッケル、コバルト、ジルコニウム、ゲルマニウム、鉄、アンチモン、バナジウム、などの金属の有機錯体、酸化物、単体を用いることができるが、特に、亜鉛、スズ、チタン、コバルト、ゲルマニウム、アンチモンなどの遷移金属の有機錯体あるいは、酸化物が好ましく、二酸化ゲルマニウムが特に好ましい。
【0026】
さらに、これらの反応は、各種安定剤や着色防止剤の存在下で行っても構わない。安定剤や着色防止剤としては、リン化合物や、ヒンダードフェノール化合物などが例示される。これらの中では、特にリン化合物を含有するのが好ましい。リン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ポリリン酸などの無機リン化合物、トリメチルリン酸やジフェニルリン酸などのリン酸エステル化合物、トリフェニルホスファイト、トリス(2,4ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイトなどの亜リン酸エステル化合物などがあげられる。
【0027】
このように150℃〜250℃の温度範囲、好ましくは190℃〜230℃以下の低温で溶融重縮合を行うと、少量のオリゴマーしか溜出しないため効率よく重合でき、分子量も充分に高いポリエステル樹脂が得られる。その結果、密度が高く、ガスバリア性、機械強度、色相が優れるポリエステル樹脂が得られ好ましい。
【0028】
ポリエステル樹脂の用途
本発明のポリエステル樹脂は通常の成形方法によりフィルム、シート、中空成形容器その他種々の形状をした成形体の素材として未延伸の状態で使用することもできる。さらに、該ポリエステル樹脂を延伸状態でフィルム、シート、中空成形容器として成形しても、ガスバリア性がさらに優れた成形体が得られる。
本発明のポリエステル樹脂には必要に応じて従来のポリエステルに配合されている耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、核剤、無機充填剤、滑剤、スリツプ剤、アンチブロツキング剤、安定剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、酸素吸収剤、末端封止剤など適宜量が配合されていても差しつかえない。
【0029】
本発明のポリエステル樹脂は、他の樹脂のガスバリア性改質材としてブレンドして用いてもいい。本発明のポリエステル樹脂を添加する他の樹脂の種類としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂や、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂が挙げられ、これらの中ではポリエステル樹脂が均一に混合されるという点で好ましい。本発明のポリエステル樹脂を添加するポリエステル樹脂としては、具体的に、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレート、ポリトリメチレン2,6ナフタレート、ポリブチレン2,6ナフタレート、ポリヘキサメチレン2,6ナフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリトリメチレンイソフタレート、ポリブチレンイソフタレート、ポリヘキサメチレンイソフタレート、ポリ1,4シクロヘキサンジメタノールテレフタレートの芳香族ポリエステルや、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペートなどの脂肪族ポリエステルが挙げられる。 これらの中では、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレートが好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
【0030】
本発明のポリエステル樹脂は、上記のような他のポリエステル樹脂と溶融混合して添加するのが好ましい。または、溶融混合後さらに固相重合を行っても構わない。溶融混合を行う温度は、本発明のポリエステル樹脂と他のポリエステル樹脂の流動温度以上の温度であればどの温度でも構わないが、180〜300℃の温度範囲、好ましくは220〜290℃の温度範囲であることが望ましい。また、溶融混合を行う時間は、30秒〜4時間の間が好ましく、1分〜2時間の間がより好ましい。
この溶融混合を行う装置としては、一軸押出機、二軸押出機、プラストミル、ニーダーや、各種の押出成形機や射出成形機、あるいは、攪拌装置、減圧装置の付いた反応器などが挙げられる。また、この溶融混合は不活性気体雰囲気下および/または減圧下で行われるのが望ましい。
【0031】
さらに、溶融混合にて得られたポリエステル樹脂組成物は、さらに、その融点以下の温度で、減圧下あるいは不活性気流下にて20分〜100時間の範囲で保持し、固相重合を行ってもよい。固相重合の方法は公知の方法を採用することができ、例えば、不活性ガス雰囲気下にポリエステル樹脂組成物のペレットを80℃〜融解ピーク温度以下30℃の温度範囲の下に1〜300分保つことにより予備結晶化を行った後、130℃〜融解ピーク温度以下10℃の温度範囲で1〜100時間保つことにより固相重合を行うことができる。固相重合を行った樹脂は、分子量が大きくなり、機械的強度が向上するとともに、低分子量成分含有量が低減するため好ましい。
【0032】
得られた樹脂組成物は通常の成形方法によりフィルム、シート、中空成形容器その他種々の形状をした成形体の素材として未延伸の状態で使用することもできる。
さらに、該樹脂組成物を延伸状態でフィルム、シート、中空成形容器として成形しても、ガスバリア性がさらに優れた成形体が得られる。
さらに、本発明のポリエステル樹脂は、他の樹脂と積層した形態で製造することも可能である。成形体としては、シート、板状物、管状物のみならず、種々の中空体、容器などの形状の成形体に適用できる。該積層成形体は従来から公知の方法によって製造することができる。
【0033】
本発明のポリエステル樹脂と積層するのに用いる他の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンなどのポリオレフィン樹脂や、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などの樹脂が挙げられ、これらの中ではポリエステル樹脂が界面の安定性が良好で、特別な接着剤を用いる必要がないため好ましい。
本発明のポリエステル樹脂と積層するのに用いるポリエステル樹脂としては、具体的に、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン2,6ナフタレートやこれら共重合体などの芳香族ポリエステル、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリ乳酸やこれら共重合体などの脂肪族ポリエステルやこれら2種以上のポリエステルの混合物を例示することができる。これらの中でもポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0034】
本発明のポリエステル樹脂およびポリエチレンテレフタレートから構成される積層成形体としては、延伸、未延伸のフィルム、シートの他に、例えば中空成形容器、コップ等、延伸を伴う成形方法により得られる容器や未延伸のシートを深絞り成形して得られる容器などの材料に好適に用いられる。 多層中空成形容器の場合、多層中空成形体用プリフォームを加工して成形される。多層中空成形体用プリフォームは、本発明のポリエステル樹脂層およびポリエチレンテレフタレート層から構成される積層構造を有する多層中空成形体用プリフォームである。多層中空成形体用プリフォームのうちでは、本発明のポリエステル樹脂を中間層としかつ両外側層をポリエチレンテレフタレート層の三層から構成される積層構造を有するプリフォームから延伸多層中空成形体を形成させると、機械的強度に優れ、透明性およびガスバリヤー性などの性質に優れた延伸多層中空成形体を得ることができるので好ましい。 本発明のポリエステル樹脂から得られる多層中空成形体用プリフォームは従来から公知の方法によって作成される。たとえば、積層構造を有する管状成形体を成形加工することによつて、多層中空成形体用プリフォームが得られる。または複数個の溶融射出装置を有する成形機により、内層から順次段階的に成形することにより、あるいは複数台の射出シリンダーを有する成形機を用い、単一の金型に1回型締め動作で、溶融したポリエチレンテレフタレート及び本発明のポリエステルを、タイミングをずらして連続的かつ交互に、もしくはほぼ同時に射出することにより、先に射出したポリエチレンテレフタレートを内、外層に、後から射出した本発明によるポリエステルを中間層に形成することによって多層中空成形体用プリフォームが得られる。
【0035】
本発明の共縮合ポリエステルから得られる延伸多層中空成形体は、ポリエステル樹脂相およびポリエチレンテレフタレート層から構成される延伸多層中空成形体であり、前記多層中空成形体用プリフォームを延伸ブロー成形することにより製造される。該延伸多層中空成形体は、本発明のポリエステル樹脂相およびポリエチレンテレフタレート層から構成された延伸二層中空成形体である場合もあるし、ポリエステル樹脂相とポリエチレンテレフタレート層とが交互に積層した三層から構成された延伸三層中空成形体である場合もあるし、ポリエステル樹脂相とポリエチレンテレフタレートとが交互に積層した四層以上に多層から構成された延伸多層中空成形体である場合もある。該延伸多層中空成形体は一軸延伸成形体である場合もあるし、二軸延伸成形体である場合もあるが、一般には二軸延伸成形体が機械的強度およびガスバリヤー性に優れているので好適である。
本発明のポリエステル樹脂から得られる延伸多層中空成形体は前記多層中空成形体中空成形体用プリフォームを延伸ブロー成形することにより製造される。その方法としては、前記の温度のプリフォームを縦軸方向に延伸した後にさらにブロー成形することによつて横軸方向に延伸する方法(二軸延伸ブロー成形)などを例示することができる。さらに、延伸多層中空成形体にヒートセットを施すことも可能である。ヒートセットをすることで容器の寸法安定性が増し、熱水充填などが必要な耐熱ボトルの用途に用いることも可能である。
特に、本発明のポリエステル樹脂は非晶性または結晶性が低く、ポリエチレンテレフタレートとの接着性が良好なので、延伸多層成形中空成形体の成形の際にポリエチレンテレフタレートの成形条件をそのまま適用しても透明性や成形性などに悪影響をおよぼすことがなく、得られた延伸多層成形中空成形体は機械的強度、耐熱特性、ガスバリア性および透明性も良好であり、種々の用途に利用することができる。
【0036】
さらに、本発明のポリエステル樹脂は、芳香族ポリエステルのユニットを有しているため、ポリエチレンテレフタレートとの混和性に優れ、ポリエチレンテレフタレートと一括で溶融混合させても、もとのポリエチレンテレフタレートの物性をさほど低下させないという特徴を有している。そのため、上記の積層成形体、とりわけポリエチレンテレフタレートとの延伸多層中空成形容器として用いた後に、分離する手間をかけることなく、既存のPETボトルリサイクルシステムを用いて、再生樹脂として再資源化にすることが可能である。
【0037】
【実施例】
次に、本発明を実施例によって具体的に説明する。
▲1▼密度 ポリエステル樹脂の密度は、密度勾配管法(23℃)により測定した。
▲2▼還元粘度 ポリエステル樹脂の還元粘度IVは、フェノールとテトラクロルエタン混合溶液(重量比1/1)中、25℃で測定した。
▲3▼組成 ポリエステル樹脂の組成は、重クロロホルム溶液の400MHz水素核磁気共鳴スペクトルを測定することによって求めた。例えば実施例1について、各シグナルの帰属は、以下の通りであり、積分強度比より組成を算出した。
δ3.5 − 4.0ppm(1.02H、ジエチレングリコールユニットのエーテル酸素隣接メチレン)、δ4.1 − 5.1ppm(13.88H、グリコール酸ユニットのメチレン、エチレングリコールユニットのメチレンおよびジエチレングリコールユニットのエーテル酸素非隣接メチレン)、δ7.4 − 8.8ppm(4.0H、イソフタル酸ユニットの環プロトン)
・DEG=1.02/4=0.255ユニット
・IA =4.0/4=1.0ユニット
・EG=IA―DEG=1.0−0.255=0.745ユニット
・GA=(13.88−4EG−4DEG)/2=(13.88−2.98−1.02)/2=4.94ユニット
従って、GA/IA/EG/DEG=4.94/1.0/0.745/0.255(ユニット)=71.2/14.4/10.7/3.7(モル%)となる。
▲4▼ガラス転移温度 ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、示差走査型熱量計SSC5200H型(セイコー電子工業社製)を用いて測定した。あらかじめよく乾燥させた樹脂から試料をサンプルパンに10mg秤量し、窒素雰囲気中、室温から200℃まで昇温(昇温速度 100℃/分)して200℃で5分間保持した後、−50℃まで急冷(降温速度 100℃/分)して−50℃で10分間保持し、次いで200℃までの昇温(昇温速度=10℃/分)過程で測定を行った。付属の解析ソフトでガラス転移温度、融点における融解熱、冷結晶化温度を求めた。
▲5▼ガスバリア性 ポリエステル樹脂のプレスフィルムのガスバリア性について、炭酸ガス透過係数はジーエルサイエンス社製GPM−250装置を用いて、また酸素ガス透過係数は、モコン(MOCON)社製オキシトラン(OXTRAN)装置を用いて、それぞれ25℃で測定した。
▲6▼透明性 ポリエステル樹脂の透明性はヘイズメーター(日本電光社製)を用いてプレスフィルムの値にて求めた。
▲7▼耐加水分解性 ポリエステル樹脂の耐加水分解性は23℃相対湿度50%下に2ヶ月フィルムを保存して、フィルムの状態変化を観察し、下の評点で評価した。
○:変化無し ×:フィルムの強度が著しく低下する
【0038】
実施例1 (ポリエステル合成)
グリコール酸449g(5.91モル)、イソフタル酸133.2g(0.80モル)、エチレングリコール174.8g(2.37モル)、トリメチロールエタン0.35g(0.003モル)を反応槽に仕込み、窒素雰囲気の常圧下、攪拌下に130〜200℃で、生成する水を留去しながら約24時間、透明化するまでエステル化反応を行った。
得られたポリエステルオリゴマーを攪拌装置、留出管を装備したガラス製反応器に仕込んだ。留出管は真空ポンプと減圧調整器からなる真空装置に接続されており、蒸発物を留去可能な構造となっている。ここにゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウム 6.7wt%含有)を2.71g添加した。まず窒素気流下200℃で攪拌下約30分反応し、その後その系を200℃に保ったまま、約1時間で約0.8torrまで減圧にし、その後約10時間で約0.8〜0.5torrの条件で、225℃まで攪拌しながら昇温して反応を行い、生成するエチレングリコールを系外に留去した。この重縮合反応の間、反応物の粘度は時間の経過とともに増大した。
この反応によって得られたポリエステル樹脂の密度は、1426kg/m3であった。還元粘度IVは、0.635 dl/gであった。また、この重縮合物中のグリコール酸、イソフタル酸、エチレングリコール、およびジエチレングリコールの各成分単位の組成はそれぞれ71.0モル%、14.5モル%、10.1モル%、および4.4モル%であった。また、このポリエステル樹脂は非晶であり、ガラス転移温度は41.0℃であった。
【0039】
このポリエステル樹脂を約40℃で約20時間減圧下に乾燥後、2枚の真鍮板、アルミ板および離型フィルムの間に所定量をはさみ、200℃で溶融させ、10MPaで1分間圧縮したのち、20℃の温度に設定した圧縮成形機で再び10MPaで圧縮冷却し、約70μの厚みをもつプレスフィルムを作製した。得られたフィルムを用い、そのガスバリア性を測定した結果、炭酸ガス透過係数は0.85cm3・mm/m2・day・atm、酸素透過係数は0.34cm3・mm/m2・24h・atmであった。また得られたフィルムは透明でヘイズ値は0.5%であった。このフィルムを所定の条件に保持して耐加水分解性を評価したが、特に変化はなく、良好な耐加水分解性を示した。これら結果を表1に示す。
【0040】
実施例2
実施例1と同様に、グリコール酸100.0g(1.32モル)、イソフタル酸24.3g(0.15モル)、エチレングリコール25.0g(0.40モル)、トリメチロールエタン0.11g(0.0009モル)を仕込み、所定の方法でエステル化反応を実施した(7時間)。その後、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウム 6.7wt%含有)を0.4g添加し、所定の方法で7.5時間反応を行った。 得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0041】
実施例3
実施例1と同様に、グリコール酸91.0g(1.2モル)、イソフタル酸50.0g(0.3モル)、エチレングリコール47.5g(0.77モル)、トリメチロールエタン0.4g(0.0033モル)を仕込み、所定の方法でエステル化反応を実施した(6時間)。その後、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウム 6.7wt%含有)を0.5g添加し、所定の方法で6.3時間反応を行った。 得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0042】
実施例4
実施例1と同様に、グリコール酸 136.9g(1.8モル)、イソフタル酸 16.6g(0.1モル)、エチレングリコール 8.1g(0.13モル)とを所定の方法でエステル化反応を実施した(6時間)。その後、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウム 6.7wt%含有)を0.6g添加し、所定の方法で3.5時間反応を行った。
得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0043】
実施例5
2,6ナフタレンジカルボン酸ジメチル 244.2g(1モル)とエチレングリコール 122.1g(2モル)、酢酸マンガン 0.12gとを160℃〜220℃の温度でメタノールを溜出させることでエステル交換反応を行った。次いで、実施例1と同様に、先に得られた反応物15.2g (2,6ナフタレンジカルボン酸換算 0.05モル)とグリコール酸 372.6g(4.9モル)とを所定の方法でエステル化反応を実施した(6時間)。その後、ゲルマニウム系触媒(二酸化ゲルマニウム 6.7wt%含有)を1.4g添加し、所定の方法で7.5時間反応を行った。
得られたポリエステル樹脂について、実施例1と同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0044】
比較例1
グリコライド(ベーリンガー・インゲルハイム社製)400gとラウリルアルコール240mgを溶解したクロロホルム溶液、塩化スズ120mgを溶解したクロロホルム溶液とを攪拌装置、留出管を装備したガラス製反応器に仕込み、充分に窒素ガス置換を行った後、常圧、180℃で攪拌し加熱を行った。約1時間で系内は固化したので、攪拌を停止し、次いで1時間そのまま加熱を続けた。その後、250℃に加熱し、固体を溶解させ、ポリマーを取り出した。このように得られたポリグリコール酸樹脂(Tg=43℃、Tm=223℃、PMMA換算数平均分子量10万[ヘキサフルオロ−2−プロパノール溶媒])について、実施例1と溶融温度を240℃にする以外は同様の方法でプレスフィルムを作成した。このフィルムのガスバリア性を測定した結果、炭酸ガス透過係数は0.1cm3・mm/m2・day・atm、酸素透過係数は0.03cm3・mm/m2・24h・atmであったが、得られたフィルムのヘイズは65%であり不透明であった。このフィルムについて所定の方法で耐加水分解性を評価したところ、手で持ち上げるだけでボロボロに崩壊した。
【0045】
比較例2
ポリエチレンテレフタレート(IV=0.818dl/g)について、実施例1と溶融温度を280℃にする以外は同様の方法でプレスフィルムを作成した。このフィルムのガスバリア性を測定した結果、炭酸ガス透過係数は26cm3・mm/m2・day・atm、酸素透過係数は5.3cm3・mm/m2・24h・atmであった。
【0046】
【表1】
*1 ガラス転移温度が不明瞭
*2 溶媒に溶解しなかったため推定値
*3 GA:グリコール酸、IA:イソフタル酸、TA:テレフタル酸、
2,6NDA:2,6-ナフタレンジカルボン酸、EG:エチレングリコール、
DEG:ジエチレングリコール
【0047】
実施例6
20mmφ一軸押出機2台から構成され、一方から押し出された樹脂が他方から押し出された樹脂の層間に入るように設計されたTダイを装着した2種3層フィルム成形機において、ポリエチレンテレフタレート(70℃で24時間真空乾燥、IV=0.818dl/g)をシリンダー温度270〜280℃、実施例1のポリエステル樹脂(50℃で24時間真空乾燥)をシリンダー温度200〜220℃、ダイ温度を260℃で共押出し、65℃に設定されたロールにて冷却してフィルムを成形した。グリコール酸共重合ポリエステル樹脂が内層、ポリエチレンテレフタレートが外層の2種3層のフィルムが得られた。得られたフィルムは透明で、各層は互いに引き剥がすことができず、断面を顕微鏡で観察し、厚みを測定した。外層は、それぞれ厚み35ミクロンのポリエチレンテレフタレート、中間層は、厚み35ミクロンのグリコール酸系ポリエステルから構成されていた。このフィルムについて、二軸延伸装置(岩本製作所製)を用いて予熱温度100℃、予熱時間3分、延伸倍率3倍×3倍、延伸速度25mm/秒の同時二軸延伸を試みたところ、延伸性は良好で、良好な延伸フィルムが得られた。結果を表2に示す。
【0048】
比較例3
実施例1に換え、比較例1のポリグリコール酸を用い、そのシリンダ温度を240℃〜220℃にした以外は、実施例4と同様の方法で2種3層フィルムを得た。得られたフィルムは不透明で、各層間にノッチを入れると簡単に剥離した。次いで、得られた多層フィルムについて実施例4と同様の方法で二軸延伸を試みたが、延伸性が悪く、延伸フィルムに成形することはできなかった。
【0049】
【表2】
【0050】
【本発明の効果】
本発明により、高濃度のオキシカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とを共重合した特定の密度領域のポリエステル樹脂が提供される。この樹脂は高度なガスバリア性を有し、機械的性質、透明性、耐加水分解性などに優れ、各種、ガスバリア包装材料に利用される。また、ポリエチレンテレフタレートとの混和性、接着性に優れるため、ポリエチレンテレフタレートのガスバリア性改質材として、さらにはポリエチレンテレフタレートと積層成形する材料として好適に用いることができる。ポリエチレンテレフタレートとの樹脂組成物やポリエチレンテレフタレートとの積層成形体は、ガスバリア性に優れ、機械的性質、耐熱性、透明性に優れるため、フィルム、シート、中空成形容器などの形状で食品包装、食品容器、医用材料、工業材料などに幅広く利用することができ、さらに、その使用後、回収、再資源化もポリエチレンテレフタレート同様に行うことが可能である。
Claims (4)
- ポリエステル樹脂であって、その全構成単位を100モル%とするとき、炭素数5以下のオキシカルボン酸単位と、芳香族ジカルボン酸単位と、炭素数4以下の脂肪族ジオール単位を合計で95モル%以上含有し、かつ炭素数5以下のオキシカルボン酸単位を45〜99モル%含み、
オキシカルボン酸の含有量をMモル%とするとき、ポリエステル樹脂の密度ρ(kg/m3)との関係が、
ρ≧1349+M×0.85
の式を満たすことを特徴とするポリエステル樹脂。 - オキシカルボン酸の含有量をMモル%とするとき、炭酸ガス透過係数PCO2(ml・mm/m2・day・atm)との関係が、
PCO2≦2.7−M×0.023
の式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。 - 前記炭素数5以下のオキシカルボン酸単位がグリコール酸であることを特徴とする請求項1に記載のポリエステル樹脂。
- 前記芳香族ジカルボン酸単位が、イソフタル酸単位および/または2,6-ナフタレンジカルボン酸単位および/またはテレフタル酸である請求項1ないし2に記載のポリエステル樹脂。
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-
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