JP2004160901A - フッ素ゴム成形品及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)からなる内層部2と、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されていないフッ素ゴム(B)からなる外層部3とから構成されているフッ素ゴム成形品であって、前記パーフルオロアルキルビニルエーテルがパーフルオロメチルビニルエーテルである二層構造のフッ素ゴムチューブ1。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は耐熱性、耐薬品性などに優れた特殊ゴムの成形品に関する。具体的にはフッ素ゴム弾性体の成形品及びその成形加工方法に関するもので、特に形状がチューブに関する発明である。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】特開平10−52869
近年フッ素ゴムは、優れた耐熱性、耐薬品性を有する弾性体として市販され、その加工品が種々の分野に種々の形状で利用されている。利用される分野の例としては、半導体工業分野、化学工業分野、医療・医薬分野などがあり、形状としては各種のO−リングに代表されるシール材形状やチューブ形状などがある。
【0003】
[フッ素ゴムの定義]
本明細書で用いる用語「フッ素ゴム」とは、炭素原子が共有結合により鎖状に連なった高分子で、分子中にフッ素を結合状態で含む、常温で弾性を示すゴム材料を指すものとする。
而して、すでに種々のフッ素ゴムが開発され、あらゆる産業分野に利用されている。フッ素ゴムは一般的に他の合成ゴムと比較して、耐薬品性、耐熱性に優れているが、子細に見ると分子構造の違いによってその性質には違いがある。例えば、強酸に対しては強い耐性を示すが、強アルカリに対しては耐性を示さない種類のフッ素ゴムもあり、強アルカリ、強酸両者に強い耐性を示すフッ素ゴムもある。表1に現在市販されているフッ素ゴムの分子構造と大まかな性質を示す。
【0004】
【表1】
【0005】
注) VF2:ビニリデンフルオライド CH2=CF2
HFP:ヘキサフルオロプロピレン CF2=CFCF3
TFE:テトラフルオロエチレン CF2=CF2
PMVE:パーフルオロメチルビニルエーテル CF2=CFOCF3
Pr:プロピレン CH2=CHCH3
E:エチレン CH2=CH2
*:タイプIのゴムを1としたときの相対値
**:「−」は共重合を表す。例えば、VF2−HFP はビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体の意味である。
【0006】
タイプIのフッ素ゴムは、ダイキン工業(株)よりダイエル700番系(シリーズ)として、デュポン(株)からはバイトンAタイプとして市販されている。タイプIIのフッ素ゴムは、ダイキン工業(株)から、ダイエル900番系(シリーズ)として、デュポン(株)からはバイトンBタイプとして市販されている。タイプIIIのフッ素ゴムは、旭硝子(株)からKFポリマーなる商品名で市販されている。タイプIVのフッ素ゴムは、デュポン(株)よりバイトンGLTなる商品名で市販されている。タイプVのフッ素ゴムは、デュポン(株)よりバイトンETPなる商品名で市販されている。タイプVIのフッ素ゴムは、ダイキン工業(株)よりダイエルパーフルオロなる商品名で、デュポン(株)からはカルレッツなる商品名でそれぞれ市販されている。
この表1から分かる通り、タイプVIのフッ素ゴムの性能が最も良好であるがコストが極めて高い。次いで、タイプIV、タイプVの性能がよいがコストはタイプIに比べて10倍程度である。これらに共通していることは、いずれも分子中にパーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)を含むことであり、このモノマーを共重合したフッ素ゴムは、一般に耐アルカリ性、耐酸性、耐油性、耐薬品性、耐熱性などの諸性質が優れている。しかしながら、パーフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)は現在の技術では安価に製造することが出来ず、必然的にPMVEを含むフッ素ゴムはコストが高くなる。
【0007】
[本発明品の形状]
本発明はフッ素ゴムに関するものである。即ち、第1層が分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴムで、第2層が分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含まないフッ素ゴムで構成されたフッ素ゴム成形体に関する。分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴム(A)は、すでに開発され半導体工業分野や化学工業分野で利用されている。例えば、第1表に示したタイプVIのパーフルオロゴムチューブの製法は、引用文献1に開示されている。しかし、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴムとそのフッ素ゴム以外のフッ素ゴムを組み合わせた、フッ素ゴム成形体または2層構造のチューブは本発明以前には開発されていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、耐薬品性については分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴムと同様の性能を維持しながら、コスト的にはより安価なフッ素ゴム成形品の開発を目的として研究を重ねた。特に使用する材料の組み合わせ、押出方法及び加硫方法に関して種々検討を加えた結果、第1層が分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴム、例えば第1表中のタイプIV、タイプVまたはタイプVIのフッ素ゴムからなり、第2層がパーフルオロアルキルビニルエーテルを含まないフッ素ゴム、例えば第1表中のタイプI、タイプIIまたはタイプIIIのフッ化ビニリデン系フッ素ゴムで構成された2層構造が、本開発の目的を達成する事を見出し、本発明を完成した。特に2層成形品に於いて欠点とされる層間剥離についても、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴムと、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含まないフッ素ゴムの組み合わせによって、実用上問題ないことを見出した。
【0009】
[使用するゴム材料の配合]
本発明で使用するゴム材料は前述したごとく、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴムであり、これらのゴムは生ゴム単独で使用してもよい。しかし、通常は加硫剤のほかに補強剤、必要に応じて加工助剤、可塑剤、着色剤などを充填剤として添加する。
フッ素ゴムの加硫には、アミン系加硫剤、ポリオール系加硫剤及びパーオキサイド系加硫剤が使用されるが、本発明においてはいずれの加硫剤も使用できる。パーオキサイド系加硫剤としては、一般にジクミールパーオキサイドなどの有機過酸化物とトリアリルイソシアヌレート(TAIC)の組み合わせが使用される。ポリオール系加硫剤としては、アンモニュウム塩やホスホニュウム塩とビスフェノールAやビスフェノールAFの組み合わせで用いられる。アミン系加硫剤としては、ヘキサメチレンジアミンカーバメートなどが使用できる。また、これらの加硫剤には、必要に応じて反応中に発生するフッ素酸を中和する受酸剤として金属酸化物を配合することが出来る。本発明においては、いずれの加硫剤も好適に適用できる。
補強剤としては、カーボンブラック、シリカ、クレー、珪藻土など無機粉末が一般的に使用され、最も好適にはミディアムサーマルカーボン(MT−C)が使用されるが、これらに限定されるものではない。
これらの加硫剤、加硫助剤、補強剤などの添加剤は、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴム、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含まないフッ素ゴムに共通して本発明の効果に影響なく使用できる特徴がある。
【0010】
[加硫工程]
フッ素ゴムの加硫は通常2段階で行われる。すなわち、生ゴムに所定量の充填剤、加硫剤などを均一に混合したコンパウンドを所定形状の金型中にて圧力1〜10メガパスカル加えた状態で、温度150〜190℃に0.1〜1時間保つ。このような加圧と加熱の同時操作は、通常熱プレス装置により行うのが一般的であるが、高圧釜の中に未加硫の成型品を入れて高圧蒸気を吹き込んで加硫する方法もある。これを一次加硫と称している。次いで、一次加硫工程の終わった加工品を、無加圧の状態で200℃前後の温度で、12〜24時間加熱処理する。この間に加硫はさらに進み、加硫時に発生するガス状物質が揮発し、加硫物の物性は向上する。
【0011】
しかしながら、形状がチューブ状や異形断面を有する長尺ものである場合には、一次加硫として一般的な金型を使用するプレス加硫を採用することが出来ないので、押し出された未加硫状態のチューブまたは長尺の異形押出品を、加硫釜などの高圧容器に納めて高圧蒸気加硫を行うのが一般的である。本発明者らもこの方法により、チューブ形状のフッ素ゴムの加硫を試みたが、チューブは圧力によって潰れて形状を保つことが出来ず、変形した形状の加硫品しか得られなかった。従って本発明者らは、一次加硫について種々検討を加えた結果、二通りの方法を見出した。
その一つは、未加硫チューブを押出成形する時に、マンドレルを中心部に挿入して行い、そのまま高圧釜の中に入れ高圧蒸気下にて一次加硫を行った後、マンドレルを取り除いた。マンドレルの作用によって高圧蒸気の圧力によるチューブの変形が起こったり潰れたりすることはなく、引き続く2次加硫においてもチューブの変形はない。
今ひとつの方法は、押し出された未加硫のチューブを常温常圧下で放射線照射を行う。常温常圧下の処理であるので、チューブの変形がなく一次加硫が進行し、引き続く2次加硫時にもチューブは変形せず形が保たれることを見出した。
【0012】
[層間剥離]
フッ素系高分子材料は、一般に他の高分子材料とは相溶性に乏しく、相互に接着することは難しい。とくに、本発明に関わる内外層が異なる材料で構成される長尺のチューブにあっては、2層間の剥離は致命的な欠陥となる。さらにチューブポンプないししごきポンプと称せられるチューブに繰り返し剪断応力の加わる様な使用方法においては、2層チューブの場合は層間剥離の問題は重要である。本発明者らは、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴムと、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含まないフッ素ゴムを、未加硫状態で両者を重ね合わせた後に加硫した場合には、接触面で相互に強固な接着が可能になることを見出した。特に2層構造の長尺のチューブの場合のように、異なる材料の接触面積が大きな場合においても、層間剥離の起こらないことを見出し本発明を完成するにいたった。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明のフッ素ゴム成形品(請求項1)は、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)の第1層と、その第1層に積層され、その第1層と異なるフッ素ゴム(B)からなる第2層とから構成されていることを特徴としている。また、前記フッ素ゴム(B)が、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されていないフッ素ゴムであることが好ましい(請求項2)。さらに、前記パーフルオロアルキルビニルエーテルがパーフルオロメチルビニルエーテルであるものが好ましい(請求項3)。
ここでいう、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PAVE)とは本発明においては次のように表されるものとする。
PAVE:CF2=CFORf
ただしRfはフルオロアルキル基を表し、その炭素数は1ないし6のものをいう。
【0014】
本発明のフッ素ゴム成形品の製造方法(請求項4)は、加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を第1層とし、加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を第2層とした2層構造の未加硫フッ素ゴム成形体を押出成形し、次いで加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することにより前架橋を行い、加硫剤の分解する温度で加熱加硫を行うことを特徴としている。
【0015】
本発明のフッ素ゴム成形品の製造方法の第二態様(請求項5)は、加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を第1層とし、加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を第2層とした2層構造の未加硫フッ素ゴム成形体を押出成形し、次いで加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することにより前架橋を行い、しかる後、加硫剤の分解する温度の高圧蒸気で、加硫を行うことを特徴としている。
【0016】
本発明のフッ素ゴムチューブ(請求項6)は、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)の内層部と、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)からなる外層部とから構成されていることを特徴としている。また、前記パーフルオロアルキルビニルエーテルはパーフルオロメチルビニルエーテルであることが好ましい(請求項7)。
【0017】
本発明のフッ素ゴムチューブの製造方法(請求項8)は、加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を内層部とし、加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を外層部とした2層構造の未加硫フッ素ゴムチューブの成形体を押出成形し、次いで加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することにより前架橋を行い、加硫剤の分解する温度で加熱加硫を行うことを特徴としている。
【0018】
本発明のフッ素ゴムチューブの製造方法の第2態様(請求項9)は、加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を内層部とし、加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を外層部とした2層構造の未加硫フッ素ゴムチューブの成形体を押出成形し、次いで加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することにより前架橋を行い、加硫剤の分解する温度の高圧蒸気で加硫を行うことを特徴としている。
【0019】
本発明のフッ素ゴムチューブの製造方法の第3態様(請求項10)は、加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を内層部とし、加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を外層部とした未加硫の2層構造のチューブを、長尺のマンドレルを中心部に挿入した状態で押出し、次いで加硫剤の分解する温度の高圧蒸気で加熱加硫を行い、しかる後マンドレルを取り去ることを特徴としている。
【0020】
【作用および発明の効果】
本発明のフッ素ゴム成形品(請求項1)は、第1層が、パーフルオロアルキルビニルエーテルが重合されてなるフッ素ゴム(A)(以下フッ素ゴム(A)とする)からなり、第2層が前記第1層と異なるフッ素ゴム(B)(以下フッ素ゴム(B)とする)からなるため、耐薬品性および耐熱性に優れているフッ素ゴム成形品を得ることができる。また、第2層側は目的に応じたフッ素ゴム(B)を用いることでそれらの効果を合わせもったフッ素ゴム成形品を得ることができる。
【0021】
本発明のフッ素ゴム成形品をフッ素ゴムシートなどとして用いる場合、耐薬品性および耐熱性が必要な部分を第1層にあて、第2層には他の必要とされている用途に応じたフッ素ゴム(B)、たとえば、色彩を加えたフッ素ゴム(B)などを被覆して用いることができる。また、このようなフッ素ゴムシートでは第2層のフッ素ゴム(B)を第1層のフッ素ゴム(A)で挟んで3層にしたり、あるいはさらに4層にするなど、多層のフッ素ゴムシートを成形してもよい。また、O−リング、線材などとして用いる場合では、比較的安価なフッ素ゴム(B)からなる第2層の上をフッ素ゴム(A)からなる第1層で被覆することで耐薬品性の高いO−リングを安価に製造することができる。
【0022】
前記フッ素ゴム(B)が分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム以外のフッ素ゴムである場合(請求項2)、比較的安価で耐薬品性、耐熱性の高いフッ素ゴム成形品を得ることができる。
【0023】
本発明のフッ素ゴム成形品の成形方法は(請求項4、5)、押し出し成形した未加硫のフッ素ゴム成形体を加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することを特徴とする。この照射による前架橋により、その後の加熱加硫中に発生する水分や酸その他の分解生成ガスによるフッ素ゴム成形体の発泡を抑えることができる。また、このように未加硫の2層フッ素ゴム成形体を同時に加硫することで、2層間を強固に接着することができる。前記フッ素ゴム(A)とフッ素ゴム(B)に配合される加硫剤は同一のものを用いることができる。その場合、2層間をより強固に接着することができる。
【0024】
本発明のフッ素ゴムチューブ(請求項6)は、流動体の通る内層部が、パーフルオロアルキルビニルエーテルが重合されてなるフッ素ゴムから構成されているため、耐薬品性の高いチューブを成形することができる。さらに、外層部を第2層として色彩を加えたフッ素ゴム(B)を用いれば、装飾性の高いチューブを成形することができる。
【0025】
本発明のフッ素ゴムチューブの製造方法は(請求項8、9)、押し出し成形した未加硫のフッ素ゴム成形体を加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することで、前述したものと同様の作用を得ることができる。さらに、前述した条件下で加硫を行うことでチューブの形状を変形させることなく、保つことができる。この製造方法でも、前記フッ素ゴム(A)(B)に配合される加硫剤には同一のものを用いることができ、前述と同様の効果を得ることができる。
【0026】
本発明のフッ素ゴムチューブの製造方法は(請求項10)、未加硫のフッ素ゴムをマンドレルを中心部に挿入して押し出し成形をし、そのまま、加硫剤の反応条件下で加硫することで、2層の接したフッ素ゴム(A)(B)を同時に加硫することで、強固に2層間を接着することができ、チューブを変形させることなく加硫することができる。また、前記フッ素ゴム(A)(B)に配合される加硫剤は同一のものを用いることができ、前記同様それにより、さらに2層間を強固に接着することができる。
【0027】
【発明の実施の形態】
次に図面を参照しながら本発明のフッ素ゴム成形体の実施形態を説明する。図1は本発明のフッ素ゴム成形体の実施形態であるフッ素ゴムチューブを示す断面図であり、図2は本発明のフッ素ゴム成形体の他の実施形態であるO−リングを示す断面図であり、図3は本発明のフッ素ゴム成形体の他の実施形態であるフッ素ゴムシートを示す断面図である。
【0028】
図1の二層フッ素ゴムチューブ1はフッ素ゴム(A)からなる内層部2とフッ素ゴム(B)からなる外層部3とから構成され、チューブ状に成形された未加硫のフッ素ゴム成形体を加硫することで得ることができる。
【0029】
未加硫の二層フッ素ゴムチューブは、図4に示すごとく金型Iを介して配置されたa、b2台のスクリュー押出機により製造することができる。フッ素ゴム(B)をaの押出機を用いて押出し、フッ素ゴム(A)をbの押出機を用いて押出す。それぞれ共通の金型に導き、合流部において内層部2と外層部3が接着され、出口から押出される。それを冷却し、場合によっては引き取り機により引き取る。この連続した未加硫の二層フッ素ゴムチューブにガンマー線を常温常圧で5〜500kGy(キログレイ)照射し、予備架橋を行った。5kGy以下では放射線架橋の効果が薄く、300kGy以上では材料の劣化を招くおそれがある。その後、さらに、電気炉中150〜300℃で10〜50時間加熱加硫を行い、二層フッ素ゴムチューブ1を得た。その大きさは、特に限定されるものではないがチューブ内径0.1〜100mm程度、チューブ外径0.5〜200mm程度のものが好ましい。また、内層の厚さは0.01〜5mm、外層の厚さは0.5〜30mm程度が好ましい。さらに、加硫剤、加硫助剤、補強材はフッ素ゴム(A)およびフッ素ゴム(B)に共通したものを用いるのが好ましい。特に加硫剤は両層同一のものを用いることで、2層間の接着がより強固になる。
【0030】
図2の2層O−リング4は、フッ素ゴム(B)からなる芯材5と、その芯材5に積層されたフッ素ゴム(A)からなる外層6とから構成される未加硫の2層の線材を従来の押出し成形により成形し、その線材の両端を当接させ、O−リング用圧縮金型にセットし、これに前述した放射線による予備架橋および電気炉での加熱加硫を順番に行うことで得ることができる。加熱加硫では熱板プレスを用いても構わない。また、2層O−リングの両端を結ぶ当接面は、予備架橋および加熱加硫を行うことによって強固に接着される。
【0031】
図3のフッ素ゴムシート7は、押出成形により成形あるいは金型にてフッ素ゴム(A)の未加硫シートとフッ素ゴム(B)の未加硫シートを重ねて圧接して成形した未加硫の多層フッ素ゴムシートを、前述したように予備架橋を行いその後、加熱加硫を行うことで得ることができる。この実施形態では断面の形状は内外層均等であるが、形、大きさは特に限定されるものではない。さらに、押出し成形により成形された角材であっても構わない。
【0032】
図2の2層O−リング4および図3のフッ素ゴムシート7についても、加硫剤、加硫助剤、補強材はフッ素ゴム(A)およびフッ素ゴム(B)に共通したものを用いるのが好ましい。特に加硫剤は両層同一のものを用いることで、2層間の接着がより強固になる。
【0033】
【実施例】
次いで実施例に基づいて説明する。
[実施例1]
パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)として、ダイキン工業(株)が市販しているダイエルパーフルオロGA−55(第1表タイプVI相当)を用意した。このダイエルパーフルオロGA―55は実質的にはパーフルオロメチルビニルエ−テルが共重合されている。フッ素ゴム(A)とは異なるフッ素ゴム(B)としてはダイキン工業(株)が市販するダイエルG−902(第1表のタイプII相当)を用意した。いずれのコンパウンドも加硫剤としてジクミールパーオキサイド(1.5重量部)、加硫助剤としてトリアリルイソシアヌレート(4重量部)、補強剤としてMTカーボン(20重量部)が配合され均一に混練されている。
これらのコンパウンドを、図4に示すごとく金型I(図6参照)を介して配置されたa、b2台のスクリュー押出機のうち、bにダイエルパーフルオロGA−55コンパウンドを、aにダイエルG−902コンパウンドをチャージした。
使用したスクリュー押出機bのシリンダー径は30ミリ、L/Dは25であり、押出機aのシリンダー径は、40ミリ、L/Dは25である。いずれの押出機も、ホッパー側から4ゾーンに分けて温度調節を行い、各ゾーンの温度を60℃、65℃、70℃、75℃に保った。金型温度は75℃である。
金型Iの概略組立図を図6に示した。この金型は、外径6ミリ、内径4ミリ、全体の肉厚1ミリのチューブが押し出されるように製作されており、内外層の厚みは、押出機a、bのスクリュー回転数を制御する事により調節できる。本実施例では、押出機bのスクリュー回転数を5rpm、押出機aのスクリュー回転数を15rpmで行い、内層厚み0.2mmの分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含むフッ素ゴム、外層厚み0.8mmの分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルを含まないフッ素ゴムで構成された、未加硫2層チューブを押し出すことが出来た。チューブの線速は、4.2m/min.であった。
次いで、この連続した未加硫2層チューブから15メートルを切り取り、コバルト60を線源とするガンマー線を常温常圧で50KGy(キログレイ)照射して予備架橋を行った。その後さらに電気炉中で180℃で5時間加熱加硫を行い、内層がパーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム、外層がパーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されていないフッ素ゴムからなる加硫2層チューブを得た。
【0034】
[実施例2]
図5に、金型を介して実施例1で用いたものと同じa、b2台の押出機を設置した。金型の一方から径4ミリメートルのTPX樹脂製のマンドレルdを送り込み、押出機aからダイエルG−902を、bからダイエルパーフルオロGA−55を押出した。押出機bのスクリュー回転数を5rpm、aの回転数を15rpmとし、マンドレルdの送り込み速度を4.2m/min.とした。
押出機の温度調節は、実施例1と同じである。かくして、マンドレルdを中心に挿入した状態の未加硫2層チューブeを得た。この押出物から5メートルを切り取り、加硫釜中にて約6.3気圧の蒸気圧で15分間一次加硫を行った。次いで、180℃の電気炉中で10時間2次加硫を行ったのち、マンドレルを引き抜いて内層がパーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム、外層がパーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてないフッ素ゴムより構成された2層の加硫されたチューブを得た。
【0035】
[実施例3]
パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴムとしてデュポンダウエラストマージャパン社の発売しているバイトンETPコンパウンドを用意した(第1表のタイプVに相当)。バイトンETPは実質的にパーフルオロメチルビニルエーテルが共重合されている。
パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されていないフッ素ゴムとして、ダイキン工業(株)が市販するダイエルG−902(第1表のタイプIIに相当)を用意した。いずれも加硫剤、補強剤などが配合されたコンパウンドである。実施例1に使用したと同じ装置を用い、押出機aにダイエルG−902コンパウンドを、押出機bにはバイトンETPコンパウンドを供給した。実施例1とほぼ同じ押出条件により押出を行い、内層がバイトンETP、外層がダイエルG−902の未加硫チューブを得た。この連続した未加硫2層チューブから15メートルを切り取り、コバルト60を線源とするガンマー線を常温常圧で50KGy(キログレイ)照射して予備架橋を行った。その後さらに電気炉中で180℃で5時間加熱加硫を行い、加硫2層チューブ、即ち、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されていないフッ素ゴムが外層で、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されているフッ素ゴムが内層で構成されている加硫2層チューブを得た。
【0036】
[比較例1]
実施例1の工程中で得られた2層構造の未加硫チューブに、ガンマー線照射を施すことなく、電気炉中で180℃で5時間加熱加硫を行ったところ、加硫は進んだが加硫品は潰れた状態になり、チューブとしての機能を保持しない物であった。
【0037】
[比較例2]
実施例3の工程中で得られた2層構造の未加硫チューブに、ガンマー線照射を施すことなく、電気炉中180℃で5時間加熱加硫を行ったところ、加硫は進んだが加硫品には発泡が見られ、潰れた状態になり、チューブとしての機能を保持しない物であった。
【0038】
実施例1、2及び3で得られた加硫2層チューブのチューブポンプテストを、有機溶剤メチルエチルケトンを使用して行った。使用したチューブポンプは、(株)アズワンから発売されている、カートリッジチューブポンプCTP−3である。結果をフッ素ゴム単層のチューブ、パーフルオロゴム単層のチューブと比較して表2に示した。
【0039】
【表2】
【0040】
注1 表1タイプVI相当の単層チューブ:
ダイキン工業製のダイエルパーフルオロGAー55で製作した単層のチューブ
注2 表1タイプII相当の単層チューブ:
ダイキン工業製のダイエルG−902で製作した単層のチューブ
注3 6*4は、チューブの外径6ミリ内径4ミリの意味
この結果、本発明の2層チューブはパーフルオロゴム単独のチューブと同等にケトン系の有機溶剤の輸送に使用できることが分かった。
【0041】
以上のように、実施例に基づいて本発明の効果を説明をしたが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。特に、パーフルオロアルキルビニルエーテルが重合されてなるフッ素ゴム(A)として、パーフルオロメチルビニルエーテルを用いているが、パーフルオロエチルビニルエーテルやパーフルオロプロピルビニルエーテルであっても、他のパーフルオロアルキルビニルエーテルであってパーフルオロアルキル基の炭素数が4〜6のものであってもよい。
【0042】
また、前架橋の電離性放射線を照射する条件として、コバルト60を線源とするガンマー線50KGyを照射しているが、それらには限定されず、加硫剤が熱分解されない条件下であれば、ガンマー線を5〜300KGy、好ましくは10〜100KGyである。
【0043】
さらに加硫剤、加硫条件も限定されるものではなく、加硫剤に関しては前述したごとく、パーオキサイド加硫剤以外にもアミン系加硫剤やポリオール系加硫剤が使用できる。パーオキサイド加硫系に関していえば、ジクミールパーオキサイドイド以外にもパーヘキサ2.5Bなどが使用できる。加硫温度は140℃〜200℃好ましくは160℃〜190℃で加硫時間は、加硫温度に逆比例するが、通常2時間〜24時間、好ましくは4時間から16時間である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のフッ素ゴム成形体の実施形態であるフッ素ゴムチューブを示す断面図である。
【図2】本発明のフッ素ゴム成形体の実施形態であるO−リングを示す断面図である。
【図3】本発明のフッ素ゴム成形体の実施形態であるフッ素ゴムシートを示す断面図である。
【図4】本発明の2層構造のフッ素ゴムチューブを成形する押出機配置概念図を示した一例である。
【図5】本発明の2層構造のフッ素ゴムチューブを成形する押出機配置概念図を示した一例である。
【図6】本発明の2層構造のフッ素ゴムチューブを成形する金型略図の一例である。
【符号の説明】
a 押出し機
b 押出し機
c スクリュー
d マンドレル
e 2層チューブ
I 金型
1 2層チューブ
2 内層部
3 外層部
4 O−リング
5 芯材
6 外層
7 フッ素ゴムシート
Claims (10)
- パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)の第1層と、
その第1層に積層され、第1層と異なるフッ素ゴム(B)からなる第2層とから構成されているフッ素ゴム成形品。 - 前記フッ素ゴム(B)が、分子中にパーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されていないフッ素ゴムである請求項1記載のフッ素ゴムの成形品。
- 前記パーフルオロアルキルビニルエーテルがパーフルオロメチルビニルエーテルである請求項1記載のフッ素ゴム成形品。
- 請求項1記載のフッ素ゴム成形品を製造する方法であって、加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を第1層とし、
加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を第2層とした2層構造の未加硫フッ素ゴム成形体を押出成形し、
次いで加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することにより前架橋を行い、加硫剤の分解する温度で加熱加硫を行うことを特徴とするフッ素ゴム成形品の製造方法。 - 請求項1記載のフッ素ゴム成形品を製造する方法であって、加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を第1層とし、
加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を第2層とした2層構造の未加硫フッ素ゴム成形体を押出成形し、
次いで加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することにより前架橋を行い、しかる後、加硫剤の分解する温度の高圧蒸気で加硫を行うことを特徴とするフッ素ゴム成形品の製造方法。 - パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)の内層部と、
前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)からなる外層部とから構成されている二層フッ素ゴムチューブ。 - 前記パーフルオロアルキルビニルエーテルがパーフルオロメチルビニルエーテルである請求項6記載の二層フッ素ゴムチューブ。
- 請求項6記載の二層フッ素ゴムチューブを製造する方法であって、
加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を内層部とし、
加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を外層部とした2層構造の未加硫フッ素ゴムチューブの成形体を押出成形し、
次いで加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することにより前架橋を行い、加硫剤の分解する温度で加熱加硫を行うことを特徴とする二層フッ素ゴムチューブの製造方法。 - 請求項6記載の二層フッ素ゴムチューブを製造する方法であって、
加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を内層部とし、
加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を外層部とした2層構造の未加硫フッ素ゴムチューブの成形体を押出成形し、
次いで加硫剤の分解温度以下の温度下で電離性放射線を照射することにより前架橋を行い、加硫剤の分解する温度の高圧蒸気で加硫を行うことを特徴とするフッ素ゴムチューブの製造方法。 - 請求項6記載の二層フッ素ゴムチューブを製造する方法であって、
加硫剤が均一に配合された未加硫の、パーフルオロアルキルビニルエーテルが共重合されてなるフッ素ゴム(A)を内層部とし、
加硫剤が均一に配合された未加硫の、前記フッ素ゴム(A)と異なるフッ素ゴム(B)を外層部とした未加硫の2層構造のチューブを、
長尺のマンドレルを中心部に挿入した状態で押出し、
次いで加硫剤の分解する温度の高圧蒸気で加熱加硫を行い、しかる後マンドレルを取り去ることを特徴とする二層フッ素ゴムチューブの製造方法。
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