JP2004160703A - ガス注入ノズル、金型組立体及び成形品の成形方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】溶融熱可塑性樹脂内部への加圧ガスの円滑な注入を可能とする、簡素な構造を有するガス注入ノズルを提供する。
【解決手段】ガス注入ノズル10は、内部にガス導入流路が設けられた外筒部20、及び、ガス導入流路20内に配置されたセンターピン30から構成されており;センターピン30に大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは接して、ガス注入ノズル10は閉鎖状態となり;スペース26に導入された加圧ガスの圧力によってセンターピン30が伸長される結果、ガス導入流路20の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間に隙間25が形成されて、ガス注入ノズル10は解放状態となる。
【選択図】 図1
【解決手段】ガス注入ノズル10は、内部にガス導入流路が設けられた外筒部20、及び、ガス導入流路20内に配置されたセンターピン30から構成されており;センターピン30に大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは接して、ガス注入ノズル10は閉鎖状態となり;スペース26に導入された加圧ガスの圧力によってセンターピン30が伸長される結果、ガス導入流路20の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間に隙間25が形成されて、ガス注入ノズル10は解放状態となる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル、かかるガス注入ノズルを備えた金型組立体、及び、かかる金型組立体を使用した成形品の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融熱可塑性樹脂を用いて射出成形法により成形品を成形する際、ひけや反りのない外観の美麗な成形品を得るために、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧ガスを注入して、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成し、型開きの前に中空部内のガスを大気中に解放する、熱可塑性樹脂製成形品の製造装置が、例えば、特開昭64−14012号公報から公知である。キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂内に注入された加圧ガスによって、溶融熱可塑性樹脂が金型のキャビティ面に押し付けられる結果、得られる成形品にひけや反りが発生することを防止し得る。
【0003】
この特開昭64−14012号公報には、加圧ガスを注入する弁機構も開示されている。この弁機構においては、中心孔が設けられており、加圧ガスが、この中心孔を通して、金型のキャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入される。中心孔の出口端部には逆止弁が配設されている。逆止弁は、拡径部と、この拡径部内を自在に移動し得るボールから構成されている。キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出時、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の圧力によりボールは拡径部の上流端に押し付けられ、拡径部を閉鎖し、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂が中心孔に流入することを防止することができる。
【0004】
また、中空部を有する射出成形品を製造するための射出成形装置において、ガス注入ノズルとして直径0.13〜10mmのオリフィスを使用することが、例えば特開平1−157823号公報に開示されている。中空部を有する射出成形品を製造するための射出成形装置において、ガス注入ノズルとして、ガス流通路内にニードルピンを取り付け、スプリング力とガス圧力によりガス流通路の開閉を行う方法が、例えば、特開2000−84980号公報に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭64−14012号
【特許文献2】特開平1−157823号
【特許文献3】特開2000−84980号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭64−14012号公報に開示された技術を用いて射出成形品を成形した場合、次のような問題が発生する。即ち、中空部内のガスを大気中に解放したとき、樹脂片が飛沫し、弁機構を構成する逆止弁の周囲に樹脂片が付着する。あるいは又、中心孔内に残存した樹脂が逆止弁の拡径部内面に付着する。その結果、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出する際、逆止弁が正常な動作を行うことができなくなり、即ち、ボールが拡径部を完全に閉鎖できなくなり、溶融熱可塑性樹脂の一部がキャビティから逆止弁を通り中心孔に流入し、更には加圧ガス配管系へ流入する。
【0007】
このような溶融熱可塑性樹脂の中心孔あるいは加圧ガス配管系内への流入が生じた場合、流入した溶融熱可塑性樹脂を加圧ガスによってキャビティ側へ押し戻すことにより、中心孔あるいは加圧ガス配管系をクリーニングする方法もある。しかしながら、中心孔あるいは加圧ガス配管系内の溶融熱可塑性樹脂を完全に除去することはできず、中心孔あるいは加圧ガス配管系内には冷却・固化した樹脂が堆積する。その結果、このような堆積した樹脂によって中心孔や加圧ガス配管系が閉塞されてしまい、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを導入できなくなるといった問題点がある。
【0008】
また、このような構成のガス注入ノズルにおいては、ボールが存在するので、加圧ガスの流路がガス注入ノズルの軸線に対して対称とはならない。そのため、ガス注入ノズルから加圧ガスが注入されたとしても、ボールの周囲の溶融熱可塑性樹脂を全て除去することが困難である。従って、樹脂屑が噛み込みやすい構造であると云える。
【0009】
また、このようなガス注入ノズルは、構成部品点数が多く、可動部品が存在し、ガス注入ノズルの製造コストが高いといった問題もある。
【0010】
特開平1−157823号公報に開示された技術を用いて成形品を射出成形した場合、樹脂の種類、樹脂の粘度、射出圧力等の諸条件によって、オリフィスが閉塞する場合がある。特開2000−84980号公報に開示された技術を用いて成形品を射出成形した場合、ガス注入ノズルのパーツ構成が複雑になり、ガス注入ノズルが大型化するばかりでなく、溶融熱可塑性樹脂の逆流、あるいは、ガス流通路の閉塞を招く虞がある。また、ガス注入ノズルの製造コストが高いといった問題もある。
【0011】
従って、本発明の目的は、上述した従来の技術における問題点を解決し、簡素な構造を有し、しかも、溶融熱可塑性樹脂内部への加圧ガスの円滑な注入を可能とするガス注入ノズル、かかるガス注入ノズルを備えた金型組立体、及び、かかる金型組立体を使用した成形品の成形方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明のガス注入ノズルは、
キャビティが設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導入するための溶融樹脂導入部を備えた金型を使用して熱可塑性樹脂を成形するに際して、溶融樹脂導入部を介してキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズルであって、
該ガス注入ノズルは、内部にガス導入流路が設けられた外筒部、及び、ガス導入流路内に配置されたセンターピンから構成され、
ガス導入流路の先端部分、及び、センターピンの先端部分は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、
ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間にはスペースが存在し、
センターピンの後部は、外筒部の後部に対して固定されており、
センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、
キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間に隙間が形成され、以て、該隙間から加圧ガスがキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入されることを特徴とする。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の金型組立体は、
(A)キャビティが設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導入するための溶融樹脂導入部を備えた金型、並びに、
(B)キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル、
を具備する金型組立体であって、
該ガス注入ノズルは、内部にガス導入流路が設けられた外筒部、及び、ガス導入流路内に配置されたセンターピンから構成され、
ガス導入流路の先端部分、及び、センターピンの先端部分は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、
ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間にはスペースが存在し、
センターピンの後部は、外筒部の後部に対して固定されており、
センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、
キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間に隙間が形成され、以て、該隙間から加圧ガスがキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入されることを特徴とする。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の成形品の成形方法は、
(A)キャビティが設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導入するための溶融樹脂導入部を備えた金型、並びに、
(B)キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル、
を具備し、
該ガス注入ノズルは、内部にガス導入流路が設けられた外筒部、及び、ガス導入流路内に配置されたセンターピンから構成され、
ガス導入流路の先端部分、及び、センターピンの先端部分は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、
ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間にはスペースが存在し、
センターピンの後部は、外筒部の後部に対して固定されている金型組立体を用いた成形品の成形方法であって、
(a)溶融樹脂導入部を介して、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入する工程と、
(b)キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入中、導入完了と同時、若しくは導入完了後、ガス注入ノズルを介して、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形する工程、
から成り、
センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、
工程(b)においては、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間に隙間が形成され、以て、該隙間から加圧ガスがキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入されることを特徴とする。
【0015】
本発明のガス注入ノズル、金型組立体あるいは成形品の成形方法(以下、これらを総称して、単に本発明と呼ぶ場合がある)において、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面とが接しているが、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面とは、一種の線接触状態であってもよいし、面接触状態であってもよい。尚、面接触状態である場合、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面とが全面にて接触していなくともよい。要は、溶融樹脂導入部を介してキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入したとき、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂が、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間からガス導入流路に侵入しない状態を達成することができればよい。
【0016】
本発明において、センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、センターピンに予め与えられた引張り力によってガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は気密状態にて圧接していることが、ガス注入ノズルの確実なる閉鎖状態を達成するといった観点から好ましい。そして、この場合、センターピンに予め引張り力を与えるためには、センターピンを伸延した(引っ張った)状態で、センターピンの後部を外筒部の後部に対して固定すればよい。
【0017】
上記の好ましい形態を含む本発明にあっては、センターピンを構成する材料のセンターピン軸線方向における弾性率(Ey)は、1×1010Pa乃至3×101 1Pa、好ましくは1.8×1011Pa乃至2.2×1011Paであることが好ましい。更には、センターピン軸線方向に沿った前記隙間の長さ(dy)は、使用する熱可塑性樹脂の溶融時の特性によって決定すればよいが、0.03mm乃至1mm、好ましくは0.03mm乃至0.5mm、一層好ましくは0.03mm乃至0.2mmであることが望ましい。尚、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力(P)によってセンターピンが伸長されるが、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面が接している時点において、このスペースに導入された圧力(P)の加圧ガスを受け止めるセンターピンの先端部分の外面の面積(センターピン軸線方向におけるセンターピンの投影面積)をS、センターピンの先端部分とセンターピンの先端部分以外の部分との境界領域におけるセンターピンの先端部分の断面積をs、センターピンに予め与えられた引張り力をF、センターピンの伸長し得る部分の長さをLとした場合、センターピン軸線方向に沿った前記隙間の長さ(dy)は、以下の式(1)で表される。更には、外筒部の先端部分を構成する材料の熱膨張率(あるいは熱膨張量)と、センターピンの先端部分を構成する材料の熱膨張率(あるいは熱膨張量)とを考慮して、外筒部の先端部分の材質を含めた諸元及びセンターピンの先端部分の材質を含めた諸元を決定する必要がある。
【0018】
[数1]
dy=L{(S−s)P−F}/(s・Ey) 式(1)
【0019】
これらの好ましい形態を含む本発明の金型組立体あるいは成形品の成形方法における金型へのガス注入ノズルの取り付けとして、
(1)ガス注入ノズルの先端部が溶融樹脂導入部内に配置されるようにガス注入ノズルを取り付ける構成
(2)ガス注入ノズルの先端部が、キャビティ内、あるいは金型のキャビティ面近傍に配置されるようにガス注入ノズルを取り付ける構成
(3)金型は射出シリンダーを備えた射出成形機に取り付けられており、射出シリンダーと溶融樹脂導入部とは連通しており、ガス注入ノズルが射出シリンダーの先端部に配置されるようにガス注入ノズルを取り付ける構成
を挙げることができる。
【0020】
溶融樹脂導入部(所謂、ゲート部)の形式は任意の形式とすることができる。
【0021】
本発明における外筒部を構成する材料として、外筒部に加わる溶融熱可塑性樹脂や加圧ガスの圧力によって外筒部が容易に変形せず、想定最大使用回数にて疲労破壊しないような材料であればよく、例えば、炭素鋼、ニッケル鋼、クロム鋼、タングステン鋼、モリブデン鋼、ケイ素鋼、クロム・バナジウム鋼、工具鋼、バネ鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン合金といった各種の金属や合金、ポリイミド樹脂やPPS樹脂等の有機材料、ジルコニアセラミックス等の無機材料を挙げることができる。外筒部の構造の簡素化の観点からは、先端部分を含む外筒部全体を一体として作製することが好ましいが、先端部分とそれ以外の部分を別々に作製した後、先端部分をそれ以外の部分に取り付けてもよい。
【0022】
本発明におけるセンターピンを構成する材料として、センターピンに加わる溶融熱可塑性樹脂や加圧ガスの圧力によってセンターピンが容易に変形せず、想定最大使用回数にて疲労破壊しないような材料であればよく、例えば、炭素鋼、ニッケル鋼、クロム鋼、タングステン鋼、モリブデン鋼、ケイ素鋼、クロム・バナジウム鋼、工具鋼、バネ鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン合金といった各種の金属や合金、繊維強化PPS樹脂、繊維強化ポリイミド樹脂を挙げることができる。センターピンの構造の簡素化の観点からは、先端部分を含むセンターピン全体を一体として作製することが好ましいが、先端部分とそれ以外の部分を別々に作製した後、先端部分をそれ以外の部分に取り付けてもよい。
【0023】
軸線と直行する仮想平面で外筒部を切断したときの外筒部の外形形状、ガス導入流路の内面形状、センターピンの外形形状として、円形、楕円形、多角形、丸みを帯びた多角形を例示することができる。また、これらの外筒部の外形形状、ガス導入流路の内面形状、センターピンの外形形状は相似形であってもよいし、相似形でなくともよい。
【0024】
本発明の成形品の成形方法において、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂への加圧ガスの導入開始時期は、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入開始から0.1秒乃至25秒とすることが好ましいが、これに限定するものではない。加圧ガスの注入開始時期の下限は、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内へ導入しながら、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂中へ加圧ガスを注入する場合に、注入された加圧ガスがキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂を吹き飛ばすことがなくなるような時期とすればよい。一方、加圧ガスの注入開始時期が25秒を越えると、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の固化によって所望の中空部が形成できなくなる虞がある。キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂への加圧ガスの注入開始の時期は、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入中、導入完了と同時、導入完了後のいずれであってもよい。キャビティ内に導入される溶融熱可塑性樹脂の量は、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で完全に満たす量であってもよいし、完全には満たさない量であってもよい。
【0025】
加圧ガスは、常温及び常圧で気体の物質であり、使用する熱可塑性樹脂と反応や混合しないものが望ましい。具体的には、窒素ガス、空気、炭酸ガス、ヘリウム等が挙げられるが、安全性及び経済性を考慮すると、窒素ガスやヘリウムガスが好ましい。
【0026】
本発明における熱可塑性樹脂は、如何なる熱可塑性樹脂であってもよく、ポリカーボネート樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂等のスチレン系樹脂;PMMA樹脂等のメタクリル系樹脂;ポリオキシメチレン(ポリアセタール)樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD等のポリアミド系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂、又は、これらの熱可塑性樹脂の少なくとも2種類以上の樹脂から成るポリマーアロイを挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂には、剛性に代表される機械的特性、寸法安定性等を成形品に付与するために、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、カーボン繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカー繊維、チタン酸カリウムウィスカー繊維、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー繊維、珪酸カルシウムウィスカー繊維及び硫酸カルシウムウィスカー繊維から成る群から選択された少なくとも1種の材料から構成された無機繊維が含有されていてもよい。また、例えば安定剤、離型剤、紫外線吸収剤の有効発現量を熱可塑性樹脂に配合してもよい。
【0027】
本発明にあっては、センターピンに大気圧が加わった状態において、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、ガス注入ノズルは閉鎖された状態にある。尚、溶融樹脂導入部を介してキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入する際にも、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の圧力が加わり、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接し、ガス注入ノズルは閉鎖された状態にある。一方、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス注入ノズルは解放状態となる。
【0028】
即ち、センターピンの伸縮は、センターピンに加えられた引張り力、及び、加圧ガスによってセンターピンに加えられる圧力によって制御される。従って、従来のガス注入ノズルのように可動部品が不要となり、部品点数を削減することができ、しかも、ガス注入ノズルの内部に溶融熱可塑性樹脂が流入することもなく、成形品の成形を安定して行うことができる。
【0029】
【実施例】
以下、図面を参照して、好ましい実施例に基づき本発明を説明する。
【0030】
実施例のガス注入ノズルを構成する外筒部の模式的な拡大一部断面図を図1の(A)に示し、実施例のガス注入ノズルを構成するセンターピンの模式的な拡大一部断面図を図1の(B)に示し、実施例のガス注入ノズルの先端部の模式的な拡大一部断面図を図1の(C)及び(D)に示す。また、実施例のガス注入ノズルの模式的な断面図を図2に示し、実施例の金型組立体の概念図を、図3に示す。
【0031】
実施例のガス注入ノズル10は、キャビティ43が設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ43内に導入するための溶融樹脂導入部44を備えた金型40を使用して熱可塑性樹脂を成形するに際して、溶融樹脂導入部44を介してキャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズルである。
【0032】
また、金型組立体は、(A)キャビティ43が設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ43内に導入するための溶融樹脂導入部(具体的には、ゲート部)44を備えた金型40、並びに、(B)キャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル10を具備している。ここで、金型40は、固定金型部41及び可動金型部42から構成されており、固定金型部41及び可動金型部42が型締めされることで、キャビティ43が形成される。尚、参照番号45は、熱可塑性樹脂を溶融、可塑化及び計量する射出シリンダーである。
【0033】
このガス注入ノズル10は、内部にガス導入流路22が設けられた外筒部20、及び、ガス導入流路22内に配置されたセンターピン30から構成されている。そして、ガス導入流路22の先端部分23、及び、センターピン30の先端部分33は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23以外の部分24とセンターピン30の先端部分(拡径部)33以外34の部分との間にはスペース26が存在する。
【0034】
具体的には、軸線と直行する仮想平面で外筒部20を切断したときの外筒部20の外形形状、ガス導入流路22の内面形状、センターピン30の外形形状は円形であり、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23の最小直径(r11)を10mm、最大直径(r12)を12mm、センターピン30の先端部分(拡径部)33の最小直径(r21)を1mm、最大直径(r22)を12mmとした。尚、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23以外の部分24の内径は、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23の最小直径(r11)と等しく、センターピン30の先端部分(拡径部)33以外の部分34の外径はセンターピン30の先端部分(拡径部)33の最小直径(r21)と等しい。センターピン30の長さ(センターピン30の伸長し得る部分の長さL)を65mmとした。
【0035】
また、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23以外の部分24とセンターピン30の先端部分(拡径部)33以外の部分34との間のスペース26に導入された加圧ガスの圧力(P)によってセンターピン30が伸長されるが、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23の内面23Aとセンターピン30の先端部分(拡径部)33の外面33Aが接している時点(より具体的には、気密状態にて圧接している時点)において、スペース26に導入された圧力(P)のかかる加圧ガスを受け止めるセンターピン30の先端部分(拡径部)33の外面33A’(図1の(C)参照)のセンターピン軸線方向の投影面積(S)を0.777[=(π/4)×(r11 2−r21 2)]cm2、断面積(s)を0.0079[=(π/4)×r21 2)]cm2とした。更には、センターピン30に予め与えられた引張り力(F)を9.8Nとした。
【0036】
外筒部20はSUS316Lから作製されており、センターピン30はバネ鋼(インコネル750)から作製されている。センターピンを構成する材料であるバネ鋼のセンターピン軸線方向における弾性率(縦弾性率Ey)は、2.14×1011Paである。
【0037】
センターピン30の後部は、外筒部20の後部に対して固定されている。具体的には、外筒部20の後部はホルダー12内に格納され、ホルダー12はホルダー取付ベース13に螺合されている。また、ホルダー取付ベース13は加圧ガス流路貫通孔15が中心部に設けられたコネクター14に螺合されている。ホルダー12とホルダー取付ベース13との螺合によって、外筒部20はホルダー12の内部で後方に押され、外筒部20の後端部21は、センターピン30の後端部31と接触し、センターピン30を後方に押す。その結果、センターピン30の後端部31は、外筒部20の後端部21とコネクター14の前面との間において固定される。
【0038】
そして、センターピン30に大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは接しており、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある。より具体的には、センターピン30に大気圧が加わった状態にあっては、センターピン30に予め与えられた引張り力(F)によって、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは気密状態にて圧接しており、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある(図1の(C)参照)。尚、溶融樹脂導入部44を介してキャビティ43内に溶融熱可塑性樹脂を導入する際にも、センターピン30に予め与えられた引張り力によって、更には、キャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の圧力が加わり、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは気密状態にて圧接し、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある。但し、センターピン30に予め与えられた引張り力を加えることは必須ではなく、要は、溶融樹脂導入部44を介してキャビティ43内に溶融熱可塑性樹脂を導入したとき、キャビティ43内の溶融熱可塑性樹脂が、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間からガス導入流路22に侵入しない状態を達成することができればよい。
【0039】
一方、キャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路22の先端部分23以外の部分24とセンターピン30の先端部分33以外の部分34の間のスペース26に導入された加圧ガスの圧力(P)によってセンターピン30が伸長される結果、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間に隙間25が形成され(図1の(D)参照)、これによって、この隙間25から加圧ガスがキャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入される。尚、センターピン軸線方向に沿ったこの隙間25は、式(1)から、P=3×107Paの約0.9mm、P=1.8×107Paの約0.5mmである。
【0040】
具体的には、ガス注入ノズル10の後端部は配管47を介して加圧ガス源46に接続されている。そして、加圧ガスは、加圧ガス源46から、配管47、加圧ガス流路貫通孔15、ホルダー取付ベース13とセンターピン30の後端部31との間の間隙、外筒部20の後端面とセンターピン30の後端部31との間の間隙、ガス導入流路22とセンターピン30との間のスペース26、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間に形成された隙間25を介して、ガス注入ノズル10の先端部11から吐出される。
【0041】
図3に示した金型組立体において、ガス注入ノズル10の先端部11は、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ43内への導入時、キャビティ43内に配される。ガス注入ノズル10は、図示しない移動機構(例えば、油圧シリンダー)によって、図3の左右方向に移動可能である。
【0042】
図1〜図3に示したガス注入ノズル、金型組立体を用いて成形品の成形を行った。熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニリングプラスチックス株式会社製、商品名:ユーピロンS3000)を使用した。射出成形機に備えられた射出シリンダー45内で樹脂温度280゜Cにて熱可塑性樹脂を可塑化、溶融した。そして、固定金型部41と可動金型部42を型締めした後、図示しない油圧シリンダーにてガス注入ノズル10を前進させ、ガス注入ノズル10を可動金型部42に設けたガス注入口に密着させた(図4の(A)の概念図を参照)。この状態にあっては、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは接しており、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある。より具体的には、センターピン30に大気圧が加わった状態にあっては、センターピン30に予め与えられた引張り力(F)によって、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは気密状態にて圧接しており、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある。
【0043】
そして、射出圧力を1.1×108Pa(1130kgf/cm2−G)として、射出シリンダー45から溶融樹脂導入部(ゲート部)44を介してキャビティ43内に溶融熱可塑性樹脂50を導入した(図4の(B)の概念図を参照)。
【0044】
尚、キャビティ43内に導入した溶融熱可塑性樹脂50の量はキャビティ43を完全に満たす量とした。溶融熱可塑性樹脂50のキャビティ43内への導入時、加圧ガスの圧力(より具体的には、スペース26における圧力)を大気圧とした。尚、ガス注入ノズル10の先端部11に加わる溶融熱可塑性樹脂の圧力は、概ね2×107Pa(約200kgf/cm2)であった。
【0045】
射出開始から3.0秒後に射出動作を停止し、同時に、キャビティ43内の溶融熱可塑性樹脂50の内部に、ガス注入ノズル10から7.8×106Pa(80kgf/cm2−G)の圧縮窒素ガスを注入し、キャビティ43内の溶融熱可塑性樹脂50の内部に中空部51を形成した(図5の概念図を参照)。加圧ガスの圧力(P)は1.8×107Pa(約180kgf/cm2)であり、ガス注入ノズル10の先端部11に加わる溶融熱可塑性樹脂の圧力(残圧)は概ね2×106Pa(約20kgf/cm2)であった。キャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂50の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路22の先端部分23以外の部分24とセンターピン30の先端部分33以外の部分34の間のスペース26に導入された加圧ガスの圧力(P)によってセンターピン30が伸長される結果、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間に隙間25が形成され、これによって、この隙間25から加圧ガスがキャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂50の内部に注入された。センターピン軸線方向に沿った隙間25の長さ(dy)は、約0.5mmである。
【0046】
射出開始から60秒経過まで、キャビティ43内の熱可塑性樹脂を冷却、固化させた後、ガス注入ノズル10への加圧ガスの供給を停止し、スペース26における加圧ガスを大気中に解放してスペース26の圧力を大気圧とした。これによって、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは接した状態となり、ガス注入ノズル10は閉鎖された。より具体的には、センターピン30に予め与えられた引張り力により、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは気密状態にて圧接し、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態となった。
【0047】
次いで、図示しない油圧シリンダーを作動させてガス注入ノズル10を後退させ、可動金型部42に設けたガス注入口を介して、成形品内部に形成された中空部51から圧縮窒素ガスを大気中に解放した。その後、型開きを行い、金型40から成形品を取り出した。得られた成形品には、厚肉部に所望の中空部が形成されており、ガス注入ノズル10の先端部11には熱可塑性樹脂の流入も認められず、ガス注入ノズル10はその機能を完全に果たしていた。また、油圧シリンダーを作動させてガス注入ノズル10を後退させたときにも、ガス注入ノズル10の先端部11に樹脂片等が混入することもなかった。
【0048】
以上、本発明を、好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例にて説明した使用熱可塑性樹脂、成形条件や金型、金型組立体の構造、ガス注入ノズルの構造・構成は例示であり、適宜変更することができる。本発明のガス注入ノズルは、広くは、高粘性流体内に低粘性流体を注入するために用いることができる。あるいは又、本発明のガス注入ノズルは、ブロー成形法におけるガス注入用の針として使用することもできる。
【0049】
図3に示した金型組立体においては、ガス注入ノズル10の先端部11がキャビティ43内に配置されるようにガス注入ノズル10を金型40に取り付ける構成としたが、ガス注入ノズル10の金型への取り付けは、これに限定するものではない。図6に金型組立体の模式図を示すように、ガス注入ノズル10の先端部が金型のキャビティ面43Aの近傍に配置されるようにガス注入ノズル10を取り付ける構成とすることもできる。あるいは又、図7に金型組立体の模式図を示すように、ガス注入ノズル10の先端部が、溶融樹脂導入部44内に配置されるようにガス注入ノズル10を取り付ける構成とすることもできるし、図8に金型組立体の模式図を示すように、金型40は射出シリンダー45を備えた射出成形機に取り付けられており、射出シリンダー45と溶融樹脂導入部44とは連通しており、ガス注入ノズル10が射出シリンダー45の先端部に配置されるようにガス注入ノズル10を取り付ける構成とすることもできる。
【0050】
【発明の効果】
本発明にあっては、センターピンの伸縮は、センターピンに加えられた引張り力、及び、加圧ガスによってセンターピンに加えられる圧力によって制御される。従って、従来のガス注入ノズルのように可動部品が不要となり、部品点数を削減することができ、簡素な構造のガス注入ノズルを提供することができる。しかも、ガス注入ノズルの内部に溶融熱可塑性樹脂が流入することもなく、更には、円滑にキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂に加圧ガスを注入することができるので、成形品の成形を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1の(A)は、実施例のガス注入ノズルを構成する外筒部の模式的な拡大一部断面図であり、図1の(B)は、実施例のガス注入ノズルを構成するセンターピンの模式的な拡大一部断面図であり、図1の(C)及び(D)は、実施例のガス注入ノズルの先端部の模式的な拡大一部断面図である。
【図2】図2は、実施例のガス注入ノズルの模式的な断面図である。
【図3】図3は、実施例の金型組立体の概念図である。
【図4】図4は、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入する前、及び導入中の金型組立体の概念図である。
【図5】図5は、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内部に加圧ガスを導入中の金型組立体の概念図である。
【図6】図6は、金型組立体の変形例の概念図である。
【図7】図7は、金型組立体の別の変形例の概念図である。
【図8】図8は、金型組立体の更に別の変形例の概念図である。
【符号の説明】
10・・・ガス注入ノズル、11・・・ガス注入ノズルの先端部、12・・・ホルダー、13・・・ホルダー取付ベース、14・・・コネクター、15・・・加圧ガス流路貫通孔、20・・・外筒部、21・・・外筒部の後端部、22・・・ガス導入流路、23・・・ガス導入流路の先端部分、23A・・・ガス導入流路の先端部分の内面、24・・・ガス導入流路の先端部分以外の部分、25・・・隙間、26・・・スペース、30・・・センターピン、31・・・センターピンの後端部、33・・・センターピンの先端部分、33A・・・センターピンの先端部分の外面、34・・・センターピンの先端部分以外の部分、40・・・金型、41・・・固定金型部、42・・・可動金型部、43・・・キャビティ、43A・・・金型のキャビティ面、44・・・溶融樹脂導入部、45・・・射出シリンダー、46・・・加圧ガス源、47・・・配管、50・・・溶融熱可塑性樹脂、51・・・中空部
【発明の属する技術分野】
本発明は、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル、かかるガス注入ノズルを備えた金型組立体、及び、かかる金型組立体を使用した成形品の成形方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融熱可塑性樹脂を用いて射出成形法により成形品を成形する際、ひけや反りのない外観の美麗な成形品を得るために、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂内に加圧ガスを注入して、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の内部に中空部を形成し、型開きの前に中空部内のガスを大気中に解放する、熱可塑性樹脂製成形品の製造装置が、例えば、特開昭64−14012号公報から公知である。キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂内に注入された加圧ガスによって、溶融熱可塑性樹脂が金型のキャビティ面に押し付けられる結果、得られる成形品にひけや反りが発生することを防止し得る。
【0003】
この特開昭64−14012号公報には、加圧ガスを注入する弁機構も開示されている。この弁機構においては、中心孔が設けられており、加圧ガスが、この中心孔を通して、金型のキャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入される。中心孔の出口端部には逆止弁が配設されている。逆止弁は、拡径部と、この拡径部内を自在に移動し得るボールから構成されている。キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の射出時、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の圧力によりボールは拡径部の上流端に押し付けられ、拡径部を閉鎖し、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂が中心孔に流入することを防止することができる。
【0004】
また、中空部を有する射出成形品を製造するための射出成形装置において、ガス注入ノズルとして直径0.13〜10mmのオリフィスを使用することが、例えば特開平1−157823号公報に開示されている。中空部を有する射出成形品を製造するための射出成形装置において、ガス注入ノズルとして、ガス流通路内にニードルピンを取り付け、スプリング力とガス圧力によりガス流通路の開閉を行う方法が、例えば、特開2000−84980号公報に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開昭64−14012号
【特許文献2】特開平1−157823号
【特許文献3】特開2000−84980号
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開昭64−14012号公報に開示された技術を用いて射出成形品を成形した場合、次のような問題が発生する。即ち、中空部内のガスを大気中に解放したとき、樹脂片が飛沫し、弁機構を構成する逆止弁の周囲に樹脂片が付着する。あるいは又、中心孔内に残存した樹脂が逆止弁の拡径部内面に付着する。その結果、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に射出する際、逆止弁が正常な動作を行うことができなくなり、即ち、ボールが拡径部を完全に閉鎖できなくなり、溶融熱可塑性樹脂の一部がキャビティから逆止弁を通り中心孔に流入し、更には加圧ガス配管系へ流入する。
【0007】
このような溶融熱可塑性樹脂の中心孔あるいは加圧ガス配管系内への流入が生じた場合、流入した溶融熱可塑性樹脂を加圧ガスによってキャビティ側へ押し戻すことにより、中心孔あるいは加圧ガス配管系をクリーニングする方法もある。しかしながら、中心孔あるいは加圧ガス配管系内の溶融熱可塑性樹脂を完全に除去することはできず、中心孔あるいは加圧ガス配管系内には冷却・固化した樹脂が堆積する。その結果、このような堆積した樹脂によって中心孔や加圧ガス配管系が閉塞されてしまい、キャビティ内に射出された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを導入できなくなるといった問題点がある。
【0008】
また、このような構成のガス注入ノズルにおいては、ボールが存在するので、加圧ガスの流路がガス注入ノズルの軸線に対して対称とはならない。そのため、ガス注入ノズルから加圧ガスが注入されたとしても、ボールの周囲の溶融熱可塑性樹脂を全て除去することが困難である。従って、樹脂屑が噛み込みやすい構造であると云える。
【0009】
また、このようなガス注入ノズルは、構成部品点数が多く、可動部品が存在し、ガス注入ノズルの製造コストが高いといった問題もある。
【0010】
特開平1−157823号公報に開示された技術を用いて成形品を射出成形した場合、樹脂の種類、樹脂の粘度、射出圧力等の諸条件によって、オリフィスが閉塞する場合がある。特開2000−84980号公報に開示された技術を用いて成形品を射出成形した場合、ガス注入ノズルのパーツ構成が複雑になり、ガス注入ノズルが大型化するばかりでなく、溶融熱可塑性樹脂の逆流、あるいは、ガス流通路の閉塞を招く虞がある。また、ガス注入ノズルの製造コストが高いといった問題もある。
【0011】
従って、本発明の目的は、上述した従来の技術における問題点を解決し、簡素な構造を有し、しかも、溶融熱可塑性樹脂内部への加圧ガスの円滑な注入を可能とするガス注入ノズル、かかるガス注入ノズルを備えた金型組立体、及び、かかる金型組立体を使用した成形品の成形方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するための本発明のガス注入ノズルは、
キャビティが設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導入するための溶融樹脂導入部を備えた金型を使用して熱可塑性樹脂を成形するに際して、溶融樹脂導入部を介してキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズルであって、
該ガス注入ノズルは、内部にガス導入流路が設けられた外筒部、及び、ガス導入流路内に配置されたセンターピンから構成され、
ガス導入流路の先端部分、及び、センターピンの先端部分は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、
ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間にはスペースが存在し、
センターピンの後部は、外筒部の後部に対して固定されており、
センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、
キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間に隙間が形成され、以て、該隙間から加圧ガスがキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入されることを特徴とする。
【0013】
上記の目的を達成するための本発明の金型組立体は、
(A)キャビティが設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導入するための溶融樹脂導入部を備えた金型、並びに、
(B)キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル、
を具備する金型組立体であって、
該ガス注入ノズルは、内部にガス導入流路が設けられた外筒部、及び、ガス導入流路内に配置されたセンターピンから構成され、
ガス導入流路の先端部分、及び、センターピンの先端部分は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、
ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間にはスペースが存在し、
センターピンの後部は、外筒部の後部に対して固定されており、
センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、
キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間に隙間が形成され、以て、該隙間から加圧ガスがキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入されることを特徴とする。
【0014】
上記の目的を達成するための本発明の成形品の成形方法は、
(A)キャビティが設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導入するための溶融樹脂導入部を備えた金型、並びに、
(B)キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル、
を具備し、
該ガス注入ノズルは、内部にガス導入流路が設けられた外筒部、及び、ガス導入流路内に配置されたセンターピンから構成され、
ガス導入流路の先端部分、及び、センターピンの先端部分は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、
ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間にはスペースが存在し、
センターピンの後部は、外筒部の後部に対して固定されている金型組立体を用いた成形品の成形方法であって、
(a)溶融樹脂導入部を介して、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入する工程と、
(b)キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入中、導入完了と同時、若しくは導入完了後、ガス注入ノズルを介して、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形する工程、
から成り、
センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、
工程(b)においては、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間に隙間が形成され、以て、該隙間から加圧ガスがキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入されることを特徴とする。
【0015】
本発明のガス注入ノズル、金型組立体あるいは成形品の成形方法(以下、これらを総称して、単に本発明と呼ぶ場合がある)において、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面とが接しているが、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面とは、一種の線接触状態であってもよいし、面接触状態であってもよい。尚、面接触状態である場合、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面とが全面にて接触していなくともよい。要は、溶融樹脂導入部を介してキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入したとき、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂が、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間からガス導入流路に侵入しない状態を達成することができればよい。
【0016】
本発明において、センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、センターピンに予め与えられた引張り力によってガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は気密状態にて圧接していることが、ガス注入ノズルの確実なる閉鎖状態を達成するといった観点から好ましい。そして、この場合、センターピンに予め引張り力を与えるためには、センターピンを伸延した(引っ張った)状態で、センターピンの後部を外筒部の後部に対して固定すればよい。
【0017】
上記の好ましい形態を含む本発明にあっては、センターピンを構成する材料のセンターピン軸線方向における弾性率(Ey)は、1×1010Pa乃至3×101 1Pa、好ましくは1.8×1011Pa乃至2.2×1011Paであることが好ましい。更には、センターピン軸線方向に沿った前記隙間の長さ(dy)は、使用する熱可塑性樹脂の溶融時の特性によって決定すればよいが、0.03mm乃至1mm、好ましくは0.03mm乃至0.5mm、一層好ましくは0.03mm乃至0.2mmであることが望ましい。尚、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力(P)によってセンターピンが伸長されるが、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面が接している時点において、このスペースに導入された圧力(P)の加圧ガスを受け止めるセンターピンの先端部分の外面の面積(センターピン軸線方向におけるセンターピンの投影面積)をS、センターピンの先端部分とセンターピンの先端部分以外の部分との境界領域におけるセンターピンの先端部分の断面積をs、センターピンに予め与えられた引張り力をF、センターピンの伸長し得る部分の長さをLとした場合、センターピン軸線方向に沿った前記隙間の長さ(dy)は、以下の式(1)で表される。更には、外筒部の先端部分を構成する材料の熱膨張率(あるいは熱膨張量)と、センターピンの先端部分を構成する材料の熱膨張率(あるいは熱膨張量)とを考慮して、外筒部の先端部分の材質を含めた諸元及びセンターピンの先端部分の材質を含めた諸元を決定する必要がある。
【0018】
[数1]
dy=L{(S−s)P−F}/(s・Ey) 式(1)
【0019】
これらの好ましい形態を含む本発明の金型組立体あるいは成形品の成形方法における金型へのガス注入ノズルの取り付けとして、
(1)ガス注入ノズルの先端部が溶融樹脂導入部内に配置されるようにガス注入ノズルを取り付ける構成
(2)ガス注入ノズルの先端部が、キャビティ内、あるいは金型のキャビティ面近傍に配置されるようにガス注入ノズルを取り付ける構成
(3)金型は射出シリンダーを備えた射出成形機に取り付けられており、射出シリンダーと溶融樹脂導入部とは連通しており、ガス注入ノズルが射出シリンダーの先端部に配置されるようにガス注入ノズルを取り付ける構成
を挙げることができる。
【0020】
溶融樹脂導入部(所謂、ゲート部)の形式は任意の形式とすることができる。
【0021】
本発明における外筒部を構成する材料として、外筒部に加わる溶融熱可塑性樹脂や加圧ガスの圧力によって外筒部が容易に変形せず、想定最大使用回数にて疲労破壊しないような材料であればよく、例えば、炭素鋼、ニッケル鋼、クロム鋼、タングステン鋼、モリブデン鋼、ケイ素鋼、クロム・バナジウム鋼、工具鋼、バネ鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン合金といった各種の金属や合金、ポリイミド樹脂やPPS樹脂等の有機材料、ジルコニアセラミックス等の無機材料を挙げることができる。外筒部の構造の簡素化の観点からは、先端部分を含む外筒部全体を一体として作製することが好ましいが、先端部分とそれ以外の部分を別々に作製した後、先端部分をそれ以外の部分に取り付けてもよい。
【0022】
本発明におけるセンターピンを構成する材料として、センターピンに加わる溶融熱可塑性樹脂や加圧ガスの圧力によってセンターピンが容易に変形せず、想定最大使用回数にて疲労破壊しないような材料であればよく、例えば、炭素鋼、ニッケル鋼、クロム鋼、タングステン鋼、モリブデン鋼、ケイ素鋼、クロム・バナジウム鋼、工具鋼、バネ鋼、ステンレス鋼、アルミニウム合金、チタン合金といった各種の金属や合金、繊維強化PPS樹脂、繊維強化ポリイミド樹脂を挙げることができる。センターピンの構造の簡素化の観点からは、先端部分を含むセンターピン全体を一体として作製することが好ましいが、先端部分とそれ以外の部分を別々に作製した後、先端部分をそれ以外の部分に取り付けてもよい。
【0023】
軸線と直行する仮想平面で外筒部を切断したときの外筒部の外形形状、ガス導入流路の内面形状、センターピンの外形形状として、円形、楕円形、多角形、丸みを帯びた多角形を例示することができる。また、これらの外筒部の外形形状、ガス導入流路の内面形状、センターピンの外形形状は相似形であってもよいし、相似形でなくともよい。
【0024】
本発明の成形品の成形方法において、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂への加圧ガスの導入開始時期は、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ内への導入開始から0.1秒乃至25秒とすることが好ましいが、これに限定するものではない。加圧ガスの注入開始時期の下限は、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内へ導入しながら、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂中へ加圧ガスを注入する場合に、注入された加圧ガスがキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂を吹き飛ばすことがなくなるような時期とすればよい。一方、加圧ガスの注入開始時期が25秒を越えると、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂の固化によって所望の中空部が形成できなくなる虞がある。キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂への加圧ガスの注入開始の時期は、キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入中、導入完了と同時、導入完了後のいずれであってもよい。キャビティ内に導入される溶融熱可塑性樹脂の量は、キャビティ内を溶融熱可塑性樹脂で完全に満たす量であってもよいし、完全には満たさない量であってもよい。
【0025】
加圧ガスは、常温及び常圧で気体の物質であり、使用する熱可塑性樹脂と反応や混合しないものが望ましい。具体的には、窒素ガス、空気、炭酸ガス、ヘリウム等が挙げられるが、安全性及び経済性を考慮すると、窒素ガスやヘリウムガスが好ましい。
【0026】
本発明における熱可塑性樹脂は、如何なる熱可塑性樹脂であってもよく、ポリカーボネート樹脂;ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のオレフィン系樹脂;ポリスチレン樹脂、AS樹脂、ABS樹脂、AES樹脂等のスチレン系樹脂;PMMA樹脂等のメタクリル系樹脂;ポリオキシメチレン(ポリアセタール)樹脂;ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミドMXD等のポリアミド系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル(PPE)樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂等のポリエステル系樹脂;液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂、又は、これらの熱可塑性樹脂の少なくとも2種類以上の樹脂から成るポリマーアロイを挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂には、剛性に代表される機械的特性、寸法安定性等を成形品に付与するために、例えば、ガラス繊維、ガラスフレーク、カーボン繊維、ウォラストナイト、ホウ酸アルミニウムウィスカー繊維、チタン酸カリウムウィスカー繊維、塩基性硫酸マグネシウムウィスカー繊維、珪酸カルシウムウィスカー繊維及び硫酸カルシウムウィスカー繊維から成る群から選択された少なくとも1種の材料から構成された無機繊維が含有されていてもよい。また、例えば安定剤、離型剤、紫外線吸収剤の有効発現量を熱可塑性樹脂に配合してもよい。
【0027】
本発明にあっては、センターピンに大気圧が加わった状態において、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、ガス注入ノズルは閉鎖された状態にある。尚、溶融樹脂導入部を介してキャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入する際にも、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の圧力が加わり、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接し、ガス注入ノズルは閉鎖された状態にある。一方、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス注入ノズルは解放状態となる。
【0028】
即ち、センターピンの伸縮は、センターピンに加えられた引張り力、及び、加圧ガスによってセンターピンに加えられる圧力によって制御される。従って、従来のガス注入ノズルのように可動部品が不要となり、部品点数を削減することができ、しかも、ガス注入ノズルの内部に溶融熱可塑性樹脂が流入することもなく、成形品の成形を安定して行うことができる。
【0029】
【実施例】
以下、図面を参照して、好ましい実施例に基づき本発明を説明する。
【0030】
実施例のガス注入ノズルを構成する外筒部の模式的な拡大一部断面図を図1の(A)に示し、実施例のガス注入ノズルを構成するセンターピンの模式的な拡大一部断面図を図1の(B)に示し、実施例のガス注入ノズルの先端部の模式的な拡大一部断面図を図1の(C)及び(D)に示す。また、実施例のガス注入ノズルの模式的な断面図を図2に示し、実施例の金型組立体の概念図を、図3に示す。
【0031】
実施例のガス注入ノズル10は、キャビティ43が設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ43内に導入するための溶融樹脂導入部44を備えた金型40を使用して熱可塑性樹脂を成形するに際して、溶融樹脂導入部44を介してキャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズルである。
【0032】
また、金型組立体は、(A)キャビティ43が設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ43内に導入するための溶融樹脂導入部(具体的には、ゲート部)44を備えた金型40、並びに、(B)キャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル10を具備している。ここで、金型40は、固定金型部41及び可動金型部42から構成されており、固定金型部41及び可動金型部42が型締めされることで、キャビティ43が形成される。尚、参照番号45は、熱可塑性樹脂を溶融、可塑化及び計量する射出シリンダーである。
【0033】
このガス注入ノズル10は、内部にガス導入流路22が設けられた外筒部20、及び、ガス導入流路22内に配置されたセンターピン30から構成されている。そして、ガス導入流路22の先端部分23、及び、センターピン30の先端部分33は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23以外の部分24とセンターピン30の先端部分(拡径部)33以外34の部分との間にはスペース26が存在する。
【0034】
具体的には、軸線と直行する仮想平面で外筒部20を切断したときの外筒部20の外形形状、ガス導入流路22の内面形状、センターピン30の外形形状は円形であり、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23の最小直径(r11)を10mm、最大直径(r12)を12mm、センターピン30の先端部分(拡径部)33の最小直径(r21)を1mm、最大直径(r22)を12mmとした。尚、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23以外の部分24の内径は、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23の最小直径(r11)と等しく、センターピン30の先端部分(拡径部)33以外の部分34の外径はセンターピン30の先端部分(拡径部)33の最小直径(r21)と等しい。センターピン30の長さ(センターピン30の伸長し得る部分の長さL)を65mmとした。
【0035】
また、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23以外の部分24とセンターピン30の先端部分(拡径部)33以外の部分34との間のスペース26に導入された加圧ガスの圧力(P)によってセンターピン30が伸長されるが、ガス導入流路22の先端部分(拡径部)23の内面23Aとセンターピン30の先端部分(拡径部)33の外面33Aが接している時点(より具体的には、気密状態にて圧接している時点)において、スペース26に導入された圧力(P)のかかる加圧ガスを受け止めるセンターピン30の先端部分(拡径部)33の外面33A’(図1の(C)参照)のセンターピン軸線方向の投影面積(S)を0.777[=(π/4)×(r11 2−r21 2)]cm2、断面積(s)を0.0079[=(π/4)×r21 2)]cm2とした。更には、センターピン30に予め与えられた引張り力(F)を9.8Nとした。
【0036】
外筒部20はSUS316Lから作製されており、センターピン30はバネ鋼(インコネル750)から作製されている。センターピンを構成する材料であるバネ鋼のセンターピン軸線方向における弾性率(縦弾性率Ey)は、2.14×1011Paである。
【0037】
センターピン30の後部は、外筒部20の後部に対して固定されている。具体的には、外筒部20の後部はホルダー12内に格納され、ホルダー12はホルダー取付ベース13に螺合されている。また、ホルダー取付ベース13は加圧ガス流路貫通孔15が中心部に設けられたコネクター14に螺合されている。ホルダー12とホルダー取付ベース13との螺合によって、外筒部20はホルダー12の内部で後方に押され、外筒部20の後端部21は、センターピン30の後端部31と接触し、センターピン30を後方に押す。その結果、センターピン30の後端部31は、外筒部20の後端部21とコネクター14の前面との間において固定される。
【0038】
そして、センターピン30に大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは接しており、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある。より具体的には、センターピン30に大気圧が加わった状態にあっては、センターピン30に予め与えられた引張り力(F)によって、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは気密状態にて圧接しており、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある(図1の(C)参照)。尚、溶融樹脂導入部44を介してキャビティ43内に溶融熱可塑性樹脂を導入する際にも、センターピン30に予め与えられた引張り力によって、更には、キャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の圧力が加わり、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは気密状態にて圧接し、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある。但し、センターピン30に予め与えられた引張り力を加えることは必須ではなく、要は、溶融樹脂導入部44を介してキャビティ43内に溶融熱可塑性樹脂を導入したとき、キャビティ43内の溶融熱可塑性樹脂が、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間からガス導入流路22に侵入しない状態を達成することができればよい。
【0039】
一方、キャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路22の先端部分23以外の部分24とセンターピン30の先端部分33以外の部分34の間のスペース26に導入された加圧ガスの圧力(P)によってセンターピン30が伸長される結果、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間に隙間25が形成され(図1の(D)参照)、これによって、この隙間25から加圧ガスがキャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入される。尚、センターピン軸線方向に沿ったこの隙間25は、式(1)から、P=3×107Paの約0.9mm、P=1.8×107Paの約0.5mmである。
【0040】
具体的には、ガス注入ノズル10の後端部は配管47を介して加圧ガス源46に接続されている。そして、加圧ガスは、加圧ガス源46から、配管47、加圧ガス流路貫通孔15、ホルダー取付ベース13とセンターピン30の後端部31との間の間隙、外筒部20の後端面とセンターピン30の後端部31との間の間隙、ガス導入流路22とセンターピン30との間のスペース26、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間に形成された隙間25を介して、ガス注入ノズル10の先端部11から吐出される。
【0041】
図3に示した金型組立体において、ガス注入ノズル10の先端部11は、溶融熱可塑性樹脂のキャビティ43内への導入時、キャビティ43内に配される。ガス注入ノズル10は、図示しない移動機構(例えば、油圧シリンダー)によって、図3の左右方向に移動可能である。
【0042】
図1〜図3に示したガス注入ノズル、金型組立体を用いて成形品の成形を行った。熱可塑性樹脂として、ポリカーボネート樹脂(三菱エンジニリングプラスチックス株式会社製、商品名:ユーピロンS3000)を使用した。射出成形機に備えられた射出シリンダー45内で樹脂温度280゜Cにて熱可塑性樹脂を可塑化、溶融した。そして、固定金型部41と可動金型部42を型締めした後、図示しない油圧シリンダーにてガス注入ノズル10を前進させ、ガス注入ノズル10を可動金型部42に設けたガス注入口に密着させた(図4の(A)の概念図を参照)。この状態にあっては、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは接しており、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある。より具体的には、センターピン30に大気圧が加わった状態にあっては、センターピン30に予め与えられた引張り力(F)によって、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは気密状態にて圧接しており、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態にある。
【0043】
そして、射出圧力を1.1×108Pa(1130kgf/cm2−G)として、射出シリンダー45から溶融樹脂導入部(ゲート部)44を介してキャビティ43内に溶融熱可塑性樹脂50を導入した(図4の(B)の概念図を参照)。
【0044】
尚、キャビティ43内に導入した溶融熱可塑性樹脂50の量はキャビティ43を完全に満たす量とした。溶融熱可塑性樹脂50のキャビティ43内への導入時、加圧ガスの圧力(より具体的には、スペース26における圧力)を大気圧とした。尚、ガス注入ノズル10の先端部11に加わる溶融熱可塑性樹脂の圧力は、概ね2×107Pa(約200kgf/cm2)であった。
【0045】
射出開始から3.0秒後に射出動作を停止し、同時に、キャビティ43内の溶融熱可塑性樹脂50の内部に、ガス注入ノズル10から7.8×106Pa(80kgf/cm2−G)の圧縮窒素ガスを注入し、キャビティ43内の溶融熱可塑性樹脂50の内部に中空部51を形成した(図5の概念図を参照)。加圧ガスの圧力(P)は1.8×107Pa(約180kgf/cm2)であり、ガス注入ノズル10の先端部11に加わる溶融熱可塑性樹脂の圧力(残圧)は概ね2×106Pa(約20kgf/cm2)であった。キャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂50の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路22の先端部分23以外の部分24とセンターピン30の先端部分33以外の部分34の間のスペース26に導入された加圧ガスの圧力(P)によってセンターピン30が伸長される結果、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aとの間に隙間25が形成され、これによって、この隙間25から加圧ガスがキャビティ43内に導入された溶融熱可塑性樹脂50の内部に注入された。センターピン軸線方向に沿った隙間25の長さ(dy)は、約0.5mmである。
【0046】
射出開始から60秒経過まで、キャビティ43内の熱可塑性樹脂を冷却、固化させた後、ガス注入ノズル10への加圧ガスの供給を停止し、スペース26における加圧ガスを大気中に解放してスペース26の圧力を大気圧とした。これによって、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは接した状態となり、ガス注入ノズル10は閉鎖された。より具体的には、センターピン30に予め与えられた引張り力により、ガス導入流路22の先端部分23の内面23Aとセンターピン30の先端部分33の外面33Aは気密状態にて圧接し、ガス注入ノズル10は閉鎖された状態となった。
【0047】
次いで、図示しない油圧シリンダーを作動させてガス注入ノズル10を後退させ、可動金型部42に設けたガス注入口を介して、成形品内部に形成された中空部51から圧縮窒素ガスを大気中に解放した。その後、型開きを行い、金型40から成形品を取り出した。得られた成形品には、厚肉部に所望の中空部が形成されており、ガス注入ノズル10の先端部11には熱可塑性樹脂の流入も認められず、ガス注入ノズル10はその機能を完全に果たしていた。また、油圧シリンダーを作動させてガス注入ノズル10を後退させたときにも、ガス注入ノズル10の先端部11に樹脂片等が混入することもなかった。
【0048】
以上、本発明を、好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例にて説明した使用熱可塑性樹脂、成形条件や金型、金型組立体の構造、ガス注入ノズルの構造・構成は例示であり、適宜変更することができる。本発明のガス注入ノズルは、広くは、高粘性流体内に低粘性流体を注入するために用いることができる。あるいは又、本発明のガス注入ノズルは、ブロー成形法におけるガス注入用の針として使用することもできる。
【0049】
図3に示した金型組立体においては、ガス注入ノズル10の先端部11がキャビティ43内に配置されるようにガス注入ノズル10を金型40に取り付ける構成としたが、ガス注入ノズル10の金型への取り付けは、これに限定するものではない。図6に金型組立体の模式図を示すように、ガス注入ノズル10の先端部が金型のキャビティ面43Aの近傍に配置されるようにガス注入ノズル10を取り付ける構成とすることもできる。あるいは又、図7に金型組立体の模式図を示すように、ガス注入ノズル10の先端部が、溶融樹脂導入部44内に配置されるようにガス注入ノズル10を取り付ける構成とすることもできるし、図8に金型組立体の模式図を示すように、金型40は射出シリンダー45を備えた射出成形機に取り付けられており、射出シリンダー45と溶融樹脂導入部44とは連通しており、ガス注入ノズル10が射出シリンダー45の先端部に配置されるようにガス注入ノズル10を取り付ける構成とすることもできる。
【0050】
【発明の効果】
本発明にあっては、センターピンの伸縮は、センターピンに加えられた引張り力、及び、加圧ガスによってセンターピンに加えられる圧力によって制御される。従って、従来のガス注入ノズルのように可動部品が不要となり、部品点数を削減することができ、簡素な構造のガス注入ノズルを提供することができる。しかも、ガス注入ノズルの内部に溶融熱可塑性樹脂が流入することもなく、更には、円滑にキャビティ内の溶融熱可塑性樹脂に加圧ガスを注入することができるので、成形品の成形を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1の(A)は、実施例のガス注入ノズルを構成する外筒部の模式的な拡大一部断面図であり、図1の(B)は、実施例のガス注入ノズルを構成するセンターピンの模式的な拡大一部断面図であり、図1の(C)及び(D)は、実施例のガス注入ノズルの先端部の模式的な拡大一部断面図である。
【図2】図2は、実施例のガス注入ノズルの模式的な断面図である。
【図3】図3は、実施例の金型組立体の概念図である。
【図4】図4は、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入する前、及び導入中の金型組立体の概念図である。
【図5】図5は、キャビティ内の溶融熱可塑性樹脂内部に加圧ガスを導入中の金型組立体の概念図である。
【図6】図6は、金型組立体の変形例の概念図である。
【図7】図7は、金型組立体の別の変形例の概念図である。
【図8】図8は、金型組立体の更に別の変形例の概念図である。
【符号の説明】
10・・・ガス注入ノズル、11・・・ガス注入ノズルの先端部、12・・・ホルダー、13・・・ホルダー取付ベース、14・・・コネクター、15・・・加圧ガス流路貫通孔、20・・・外筒部、21・・・外筒部の後端部、22・・・ガス導入流路、23・・・ガス導入流路の先端部分、23A・・・ガス導入流路の先端部分の内面、24・・・ガス導入流路の先端部分以外の部分、25・・・隙間、26・・・スペース、30・・・センターピン、31・・・センターピンの後端部、33・・・センターピンの先端部分、33A・・・センターピンの先端部分の外面、34・・・センターピンの先端部分以外の部分、40・・・金型、41・・・固定金型部、42・・・可動金型部、43・・・キャビティ、43A・・・金型のキャビティ面、44・・・溶融樹脂導入部、45・・・射出シリンダー、46・・・加圧ガス源、47・・・配管、50・・・溶融熱可塑性樹脂、51・・・中空部
Claims (18)
- キャビティが設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導入するための溶融樹脂導入部を備えた金型を使用して熱可塑性樹脂を成形するに際して、溶融樹脂導入部を介してキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズルであって、
該ガス注入ノズルは、内部にガス導入流路が設けられた外筒部、及び、ガス導入流路内に配置されたセンターピンから構成され、
ガス導入流路の先端部分、及び、センターピンの先端部分は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、
ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間にはスペースが存在し、
センターピンの後部は、外筒部の後部に対して固定されており、
センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、
キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間に隙間が形成され、以て、該隙間から加圧ガスがキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入されることを特徴とするガス注入ノズル。 - センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、センターピンに予め与えられた引張り力によって、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は気密状態にて圧接していることを特徴とする請求項1に記載のガス注入ノズル。
- センターピンを構成する材料のセンターピン軸線方向における弾性率は、1×1010Pa乃至3×1011Paであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のガス注入ノズル。
- センターピン軸線方向に沿った前記隙間は、0.03mm乃至1mmであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のガス注入ノズル。
- (A)キャビティが設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導入するための溶融樹脂導入部を備えた金型、並びに、
(B)キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル、
を具備する金型組立体であって、
該ガス注入ノズルは、内部にガス導入流路が設けられた外筒部、及び、ガス導入流路内に配置されたセンターピンから構成され、
ガス導入流路の先端部分、及び、センターピンの先端部分は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、
ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間にはスペースが存在し、
センターピンの後部は、外筒部の後部に対して固定されており、
センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、
キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入するとき、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間に隙間が形成され、以て、該隙間から加圧ガスがキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入されることを特徴とする金型組立体。 - センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、センターピンに予め与えられた引張り力によって、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は気密状態にて圧接していることを特徴とする請求項5に記載の金型組立体。
- センターピンを構成する材料のセンターピン軸線方向における弾性率は、1×1010Pa乃至3×1011Paであることを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の金型組立体。
- センターピン軸線方向に沿った前記隙間は、0.03mm乃至1mmであることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれか1項に記載の金型組立体。
- ガス注入ノズルの先端部は、溶融樹脂導入部内に配置されていることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の金型組立体。
- ガス注入ノズルの先端部は、キャビティ内、あるいは金型のキャビティ面近傍に配置されていることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の金型組立体。
- 金型は射出シリンダーを備えた射出成形機に取り付けられており、射出シリンダーと溶融樹脂導入部とは連通しており、ガス注入ノズルは射出シリンダーの先端部に配置されていることを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれか1項に記載の金型組立体。
- (A)キャビティが設けられ、溶融熱可塑性樹脂をキャビティ内に導入するための溶融樹脂導入部を備えた金型、並びに、
(B)キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形するためのガス注入ノズル、
を具備し、
該ガス注入ノズルは、内部にガス導入流路が設けられた外筒部、及び、ガス導入流路内に配置されたセンターピンから構成され、
ガス導入流路の先端部分、及び、センターピンの先端部分は、加圧ガス吐出方向に沿って拡径しており、
ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間にはスペースが存在し、
センターピンの後部は、外筒部の後部に対して固定されている金型組立体を用いた成形品の成形方法であって、
(a)溶融樹脂導入部を介して、キャビティ内に溶融熱可塑性樹脂を導入する工程と、
(b)キャビティ内への溶融熱可塑性樹脂の導入中、導入完了と同時、若しくは導入完了後、ガス注入ノズルを介して、キャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に加圧ガスを注入し、中空部を有する成形品を成形する工程、
から成り、
センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は接しており、
工程(b)においては、ガス導入流路の先端部分以外の部分とセンターピンの先端部分以外の部分との間のスペースに導入された加圧ガスの圧力によってセンターピンが伸長される結果、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面との間に隙間が形成され、以て、該隙間から加圧ガスがキャビティ内に導入された溶融熱可塑性樹脂の内部に注入されることを特徴とする成形品の成形方法。 - センターピンに大気圧が加わった状態にあっては、センターピンに予め与えられた引張り力によって、ガス導入流路の先端部分の内面とセンターピンの先端部分の外面は気密状態にて圧接している特徴とする請求項12に記載の成形品の成形方法。
- センターピンを構成する材料のセンターピン軸線方向における弾性率は、1×1010Pa乃至3×1011Paであることを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の成形品の成形方法。
- センターピン軸線方向に沿った前記隙間は、0.03mm乃至1mmであることを特徴とする請求項12乃至請求項14のいずれか1項に記載の成形品の成形方法。
- ガス注入ノズルの先端部は、溶融樹脂導入部内に配置されていることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれか1項に記載の成形品の成形方法。
- ガス注入ノズルの先端部は、キャビティ内、あるいは金型のキャビティ面近傍に配置されていることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれか1項に記載の成形品の成形方法。
- 金型は射出シリンダーを備えた射出成形機に取り付けられており、射出シリンダーと溶融樹脂導入部とは連通しており、ガス注入ノズルは射出シリンダーの先端部に配置されていることを特徴とする請求項12乃至請求項15のいずれか1項に記載の成形品の成形方法。
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