JP2004160688A - 二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルム - Google Patents
二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよび金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルム Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】一辺が長手方向に平行な1μm角のフィルム表面において、幅方向に平行な2辺を通過する幅40nm以上の縦フィブリルが存在する二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびそれを基層とする金属蒸着フィルム。
【選択図】なし。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、包装用途、工業用途など広範な用途に好適な二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびその金属蒸着フィルムに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
廃棄物や資源の削減という社会的要請に基づき、特に包装用途では材料の薄膜化への期待が大きくなっている。現在、例えば包装用では、20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどが用いられており、その大半は、汎用の縦−横逐次二軸延伸法で製造されている。ここでいう汎用の縦−横逐次二軸延伸法とは、ポリマーを押出機で融解させ、濾過フィルターを経た後、スリット状口金から押し出し、金属ドラムに巻き付けてシート状に冷却・固化せしめた未延伸フィルムを得、該未延伸フィルムを周速差が設けられたロール間で長手方向に延伸し、次いでテンターに導いて幅方向に延伸、熱固定し、冷却後に巻き取って延伸フィルムを得る、二軸延伸ポリプロピレンフィルムの代表的な製造方法のことである。
【0003】
ここで例示した20μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムに対し、15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムで同等の性能や加工適性が得られるのであれば25%のゴミおよび資源の削減に繋げることができる。
【0004】
かかる要求を満足するためには、まず二軸延伸ポリプロピレンフィルムを強力化して、加工工程での張力に対する伸びを抑える必要がある。この際、加工工程の張力はフィルムの長手方向に掛かるため、主に長手方向に二軸延伸ポリプロピレンフィルムを強力化する必要がある。
【0005】
また、一般的にポリプロピレンフィルムを強力化することにより、ポリプロピレンフィルムの熱収縮率は上昇する傾向にある。高温におけるフィルムの寸法安定性が悪化すると、印刷、コーティング、ラミネート、蒸着、製袋、離型などの二次加工時にフィルムが収縮してフィルムの商品価値が極度に低下することがある。したがって、熱収縮率を汎用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムとほぼ同等またはそれ以下に抑える必要がある。
【0006】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムを強力化するために、長手方向、幅方向に延伸した後、引き続き長手方向に再延伸して、長手方向に強いフィルムを作る方法は、公知である(例えば、特許文献1〜3参照。)。さらに、これら長手方向に強いフィルムの幅方向の弱さを解消する目的で、特定の溶融結晶化温度を有するポリプロピレンシートを二軸延伸後、長手方向に再延伸する方法が開示されている(特許文献4参照。)。また、逐次二軸延伸法以外では縦−横同時二軸延伸法により長手方向に強力化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造することができる(例えば、非特許文献1または2参照。)。
【0007】
二軸延伸ポリプロピレンフィルムの強力化に関して、上記した製造プロセス面からの検討に加えて、ポリプロピレンの改質による原料面からの検討も従来より行われている。例えば、ポリプロピレンの結晶性を高めるなどの改質を行うことにより、剛性・防湿性などに優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる(例えば、特許文献5参照。)。また、ポリプロピレンに石油樹脂やテルペン樹脂などを添加することにより、製膜性を向上させることができ、かつ剛性・防湿性などに優れた二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる(例えば、特許文献6参照。)。さらに、これら結晶性の高いポリプロピレンに石油樹脂やテルペン樹脂などを添加した二軸延伸ポリプロピレンフィルムも公知である(例えば、特許文献7〜10参照。)。
【0008】
【特許文献1】
特公昭41−21790号公報
【0009】
【特許文献2】
特公昭45−37879号公報
【0010】
【特許文献3】
特公昭49−18628号公報
【0011】
【特許文献4】
特開昭56−51329号公報
【0012】
【特許文献5】
特開2001−40111号公報
【0013】
【特許文献6】
特許第1733605号公報
【0014】
【特許文献7】
特許第3077482号公報
【0015】
【特許文献8】
特表平11−507605号公報
【0016】
【特許文献9】
特表2000−508984号公報
【0017】
【特許文献10】
特開2002−128913号公報
【0018】
【非特許文献1】
西山、“成形加工”、2002年、第14巻、第14号、p.18−24
【0019】
【非特許文献2】
ブライル(Breil)、“タッピ プロシーディングス ポリマーズ、ラミネイションズアンドコーティングス カンファレンス”(“TAPPI Proceedings. Polymers,Laminations&Coatings Conference”)、(アメリカ)、1999年、 p.727−745
【0020】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、汎用の縦−横逐次二軸延伸法では長手方向に強力化した二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得ることは困難であった。すなわち、汎用の縦−横逐次二軸延伸法では、縦延伸で生成した配向結晶を横延伸するため、温度を半融解状態にする必要がある。このため、横延伸後には結晶の大半は幅方向に再配列し、剛性が幅方向に大きく偏った二軸延伸ポリプロピレンフィルムしか得られなかった。
【0021】
上記の、汎用のポリプロピレンを用いて汎用の縦−横逐次二軸延伸法で製膜した、いわゆる汎用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの微細な構造(以下、フィブリル構造と称する)を、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察すると、太さ20nm前後の繊維状のフィブリルからなる網目状構造が観察され、フィブリルは主に幅方向(=横方向)に配向している(例えば、図3参照)。ここで、フィブリルはその長さ方向には強いが、幅方向には容易に変形する。したがって、このことがフィルムの剛性が幅方向に大きく偏る原因であると考えられていた。
【0022】
このように、汎用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムはフィブリルが主に幅方向に配向している(長手方向に弱い)ため、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋、離型などのフィルム加工工程で印刷ピッチずれ、フィルムの伸び/縮み、シワ入り、膜割れ(クラック)などの問題を生じることがあった。汎用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基層に用いた金属蒸着フィルムを例に挙げると、基層のフィルムのフィブリルが主に幅方向に配向している(長手方向に弱い)ため、印刷、ラミネート、コーティング、製袋、離型などの種々のフィルム加工工程で蒸着膜に膜割れ(クラック)が発生し、その結果ガスバリア性が大きく低下するという問題があった。
【0023】
また、上記した長手方向に再延伸する方法や同時二軸延伸法では、工程が煩雑で設備費がかさむという問題があった。また、熱寸法安定性や防湿性が悪化したり、長手方向の剛性が不十分なこともあった。
【0024】
さらに、結晶性の高いポリプロピレンを用いた場合、従来のポリプロピレンに比べて製膜性が劣り、二軸延伸の際に破れが発生し、工程が不安定になるという問題があった。また、汎用の縦−横逐次二軸延伸法で結晶性の高いポリプロピレンを製膜した場合、上記した結晶の再配列のために、実際には幅方向の剛性が主に高くなり、長手方向の剛性は不十分であった。また、ポリプロピレンに石油樹脂やテルペン樹脂を添加した二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムの熱収縮率が高くなり、熱寸法安定性に劣るとともに、高温下ではフィルムの剛性が低下するという問題があり、長手方向の剛性も不十分であった。また、結晶性の高いポリプロピレンに石油樹脂やテルペン樹脂を添加した二軸延伸ポリプロピレンフィルムも破れの問題があり、製膜性が不十分で、かつ長手方向の剛性も不十分であった。
【0025】
本発明の目的は、上記課題を解消すべくなされたものであり、二軸延伸ポリプロピレンフィルムのフィブリル構造を制御することにより、従来一般的に行われる汎用の縦−横逐次二軸延伸法で、フィルムの長手方向の剛性が高い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することである。また、熱収縮率、防湿性などが汎用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムとほぼ同等もしくは優れることにより、従来に比べて薄膜化しても同等の性能を有する二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することである。さらに、該二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとした場合に、ガスバリア性に優れるとともに、二次加工後もそのガスバリア性能を維持することができる、真にガスバリア性能に優れた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを提供することである。
【0026】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは鋭意検討した結果、主として、以下の構成により上記課題を解決できることを見出した。
【0027】
すなわち、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、主として、一辺が長手方向に平行な1μm角のフィルム表面において、幅方向に平行な2辺を通過する幅40nm以上の縦フィブリルが存在することを特徴とする。
【0028】
さらに、好ましい態様として、25℃での長手方向のヤング率(Y(MD))が2.5GPa以上であること、また長手方向のヤング率(Y(MD))と幅方向のヤング率(Y(TD))により次式(1)で表されるm値
m=Y(MD)/(Y(MD)+Y(TD)) (1)
が25℃において、0.4〜0.7であること、また25℃での長手方向のヤング率(Y(MD))と120℃での長手方向の熱収縮率(S(MD))の関係が、次式(2)を満たすこと、
Y(MD)≧S(MD)−1 (2)
を特徴とする。
また、本発明の金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、主として、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基層の少なくとも片面に金属蒸着層を設けていること、また基層と金属蒸着層の接着強度が0.3N/cm以上であること、また基層と金属蒸着層の間に厚さが0.05〜2μmのポリエステルウレタン系樹脂からなる被覆層を設けていることを特徴とする。
【0029】
【発明の実施の形態】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、一辺が長手方向に平行な1μm角の該フィルム表面において、幅方向に平行な2辺を通過する幅40nm以上の縦フィブリルを有する。
【0030】
縦フィブリルとは、原子間力顕微鏡(AFM)によるフィルムの表面観察において観察される、長手方向に配向したフィブリルをいう。縦フィブリルは、幾分波打ったり、枝分かれしたような形状であるものも含む。また、観察する部分によってはフィブリルが長手方向から幾分傾いたような形態をとるが、フィブリルが長手方向に対して±45°以内で幅方向に比較して長手方向に優先的に配向しているものも含む。
【0031】
本発明では、一辺が長手方向に平行な1μm角の視野で場所を変えて原子間力顕微鏡(AFM)を用いて5回観察を行った際に、得られた画像のうち4回以上、幅方向に平行な2辺を連続して(途中で途切れることなく)通過する幅40nm以上の縦フィブリルが1本以上観察できるフィルムを、縦フィブリルが存在するフィルムと定義する。この際、縦フィブリルはフィルムの両面について観察されることが好ましいが、いずれか片方の面について観察されればよい。また、AFMによる5回の測定全てで縦フィブリルが確認されることがより好ましい。
【0032】
本発明では、上記のような縦フィブリルを導入することにより、フィルムの長手方向に応力が付加された際に、応力に対して縦フィブリルが変形しにくいため、フィルムの長手方向の剛性を非常に高くすることができる。したがって、印刷時にはピッチずれなど、ラミネート、製袋時にはフィルムの伸び/縮み、シワ入りなどを抑制し、フィルムに抗張力性を付与することができる。また、該フィルムにコーティング膜、蒸着膜などを設けた場合は、印刷、ラミネート、製袋などの種々のフィルム加工時に膜割れ(クラック)に起因するガスバリア性やヒートシール力、光沢などの低下を抑制することができる。以上のことから、上記のような縦フィブリルを導入することにより、フィルム加工工程におけるフィルム起因のロスを低減でき、さらには加工条件を従来より広範囲に設定できる。その結果、加工品の生産性および品質を著しく向上させることができる。
【0033】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが有する縦フィブリルは、一辺が長手方向に平行な1μm角のフィルム表面において、幅方向に平行な2辺を連続して通過する。縦フィブリルが長いほど、フィブリル構造が変形しにくいため、フィルムの長手方向の剛性をさらに高くすることができ、フィルム加工時の抗張力性をさらに向上させることができる。縦フィブリルは、一辺が長手方向に平行な5μm角のフィルム表面において、幅方向に平行な2辺を連続して通過することがより好ましく、一辺が長手方向に平行な10μm角のフィルム表面において、幅方向に平行な2辺を連続して通過することがさらに好ましい。
【0034】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが有する縦フィブリルは、一辺が長手方向に平行な1μm角のフィルム表面において、1本以上存在すれば、フィルムの長手方向のヤング率を高くして抗張力性を付与できるが、好ましくは2本以上、より好ましくは3本以上存在すれば、長手方向のヤング率をさらに高くすることができる。ここで、一辺が長手方向に平行な1μm角のフィルム表面において、画像内で枝分かれした縦フィブリルは全て1本と計測する。縦フィブリルが多いほど、フィルムの長手方向のヤング率は高くなる傾向にあり、縦フィブリルの本数には本発明の効果を奏する限り特に上限はないが、例えば、あまりに多すぎると表面ヘイズが高くなって透明性が悪化する場合があるため、一辺が長手方向に平行な1μm角のフィルム表面において10本以下であることが特に好ましい。
【0035】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが有する縦フィブリルの幅は、フィルムの長手方向のヤング率を高くして抗張力性を付与するという観点から、40nm以上である。ここで、縦フィブリルの幅とは、原子間力顕微鏡(AFM)により観察された画像において、幅方向に平行な2辺の間に幅方向に平行な直線を画像が4分割されるように等間隔に3本引き、これら3本の直線に沿って計測される縦フィブリルの幅の平均値である。なお、画像内で枝分かれした縦フィブリルの幅は、枝分かれしていない部分の幅はそのまま、枝分かれしている部分の幅は幅方向に平行な直線に沿って全ての枝分かれした部分の幅を合計して計測すればよいが、枝分かれしたフィブリルのいずれかの幅が40nm以上であることがより好ましい。縦フィブリルの幅が上記範囲であれば、縦フィブリルが加工張力に対して変形しにくいことから、フィルムに十分な抗張力性を付与できるとともに、ガスバリア性に優れたフィルムとすることができる。縦フィブリルの幅が大きいほど、フィルムの長手方向のヤング率は高くなる傾向にあり、縦フィブリルの幅には特に上限はないが、例えば、あまりに大きすぎると表面ヘイズが高くなって透明性が悪化する場合があるため、500nm以下であることが好ましい。本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが有する縦フィブリルの幅は、好ましくは50〜500nm、より好ましくは55〜250nm、最も好ましくは60〜200nmである。
【0036】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムのフィブリル構造は、上記したように、より太く(幅が大きく)、より長く、より多く縦フィブリルを導入したものであることが好ましく、かかる縦フィブリルから幅20nm前後の細い網目状のフィブリルが成長していることがより好ましい。かかる態様であることで、加工張力に対してさらにフィブリル構造が変形しにくくなり、非常に腰の強いフィルムとすることができる。
【0037】
上記縦フィブリルを導入するためには、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるプロピレンは、長鎖分岐を有するポリプロピレン(以下、LB−PPと記すことがある)を含むことが好ましい。従来の汎用二軸延伸ポリプロピレンに用いるポリプロピレンの分子構造は線状構造であるが、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンは、長鎖分岐により分岐構造を有するポリプロピレンを含むことが好ましい。
【0038】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、上記のようなLB−PPを含むことにより、汎用の縦−横逐次二軸延伸法において、これまで困難であった長手方向の剛性が高い二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造することができる。すなわち、上記LB−PPにより、横延伸時の縦配向結晶の幅方向への再配列を抑制することができる。これは、上記LB−PPの長鎖分岐が縦配向結晶を擬似架橋するタイ分子として働き、横延伸時に延伸応力を系全体に均一に伝播させるため、縦配向結晶の幅方向への再配列を抑制しているためと推察される。
【0039】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンは、上記のようなLB−PPを含まないと、フィブリルが主に幅方向に配向するために上記した態様を満足するような十分な縦フィブリルが得られず、長手方向の剛性が不十分となる場合がある。
【0040】
上記のようなLB−PPを得るには、分岐構造を持つオリゴマーやポリマーをブレンドする方法、特開昭62−121704号公報に記載されているようにポリプロピレン分子中に長鎖分岐構造を導入する方法などが好ましく用いられる。LB−PPの具体例としては、Basell社製ポリプロピレン(タイプ名:PF−814など)、Borealis社製ポリプロピレン(タイプ名:WB130HMSなど)、Dow社製ポリプロピレン(タイプ名:D201など)などが挙げられる。
【0041】
ポリプロピレンの長鎖分岐の程度を示す指標値として、下記式で表される分岐指数gが挙げられる。
【0042】
g=[η]LB/[η]Lin
ここで、[η]LBは長鎖分岐を有するポリプロピレンの固有粘度であり、[η]Linは長鎖分岐を有するポリプロピレンと実質的に同一の重量平均分子量を有する直鎖状の結晶性ポリプロピレンの固有粘度である。なお、ここで示した固有粘度はテトラリンに溶解した試料について公知の方法で135℃で測定する。また、重量平均分子量は、M.L.McConnellによってAmerican Laboratory、May、63−75(1978)に発表されている方法、すなわち低角度レーザー光散乱光度測定法で測定する。
【0043】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含まれるLB−PPの分岐指数gは、0.95以下であることが好ましい。分岐指数gが上記範囲を超えると、LB−PPの添加効果が低下し、フィルムとしたときの長手方向のヤング率が不十分となる場合がある。LB−PPの分岐指数gは、より好ましくは0.9以下である。
【0044】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンのメルトフローレイト(MFR)は、製膜性の観点から1〜30g/10分であることが好ましい。MFRが上記範囲未満であると、溶融押出時に濾圧が上昇したり、押出原料の置換に長時間を要するなどの問題点を生じる場合がある。MFRが上記範囲を超えると、製膜されたフィルムの厚み斑が大きくなるなどの問題点が生じる場合がある。MFRは、より好ましくは1〜20g/10分である。
【0045】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンのメソペンタッド分率(mmmm)は、90〜99.5%であることが好ましく、92〜99.5%であることがより好ましい。ここで、mmmmとは、ポリプロピレンにおけるアイソタクチックの立体構造を直接反映する指標である。mmmmを上記範囲とすることで、寸法安定性に優れ、耐熱性、剛性、防湿性、耐薬品性などが著しく向上したフィルムを安定製造することができるので、印刷、コーティング、蒸着、製袋、ラミネート、離型などのフィルム加工工程において、高い二次加工性を有するフィルムを提供することができる。mmmmが上記範囲未満であると、フィルムとしたときの腰が低下し、熱収縮率が大きくなる傾向にあるため、印刷、コーティング、蒸着、製袋、ラミネート、離型などの二次加工性が低下する場合があり、水蒸気透過率も高くなる場合がある。mmmmが上記範囲を超えると、製膜性が悪化する場合がある。mmmmは、さらに好ましくは93〜99%、最も好ましくは94〜98.5%である。
【0046】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンのアイソタクチックインデックス(II)は、92〜99.8%であることが好ましい。IIが上記範囲未満であると、フィルムとしたときの腰が低下する、熱収縮率が大きくなる、水蒸気透過率が高くなるなどの問題点が生じる場合があり、印刷、コーティング、蒸着、製袋、ラミネート、離型などの二次加工性が低下する場合がある。IIが高くなるほど剛性、寸法安定性、防湿性が向上する傾向にあるが、上記範囲を超えると、製膜性が悪化する場合がある。IIは、より好ましくは94〜99.5%である。
【0047】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンは、経済性などの観点から、本発明の特性を損なわない範囲で、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する際に生じた屑フィルムや、他のフィルムを製造する際に生じた屑フィルム、その他の樹脂をブレンド使用してもかまわない。
【0048】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンは、主としてプロピレンの単独重合体からなるが、本発明の目的を損なわない範囲で、ポリプロピレンと他の不飽和炭化水素の単量体成分が共重合された重合体であってもよいし、プロピレンとプロピレン以外の単量体成分が共重合された重合体がブレンドされていてもよいし、プロピレン以外の不飽和炭化水素の単量体成分の(共)重合体がブレンドされてもよい。このような共重合成分やブレンド物を構成する単量体成分として、例えば、エチレン、プロピレン(共重合されたブレンド物の場合)、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチルペンテン−1、3−メチルブテン−1、1−ヘキセン、4−メチルペンテン−1、5−エチルヘキセン−1、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、ビニルシクロヘキセン、スチレン、アリルベンゼン、シクロペンテン、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネンなどが挙げられる。
【0049】
ここで、上記したポリプロピレンの特性値(MFR、g値、mmmm、II)は、製膜前の原料チップを用いて判定することが望ましいが、製膜後のフィルムについても、該フィルムを60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間程度抽出し、不純物・添加物を除去後、130℃で2時間以上真空乾燥したものをサンプルとして用いて測定することもできる。
【0050】
次に、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムには、縦フィブリル導入、強力化、防湿性向上、製膜性向上などの観点から延伸助剤が1種以上含有されていることが好ましい。ここでいう延伸助剤とは、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに用いるポリプロピレンに添加することにより、未添加の場合に比較して、安定でより高倍率の延伸を可能にする添加剤をいう。かかる延伸助剤が混合されることにより、LB−PPによる縦配向結晶の幅方向への再配列抑制効果が十分に発揮され、フィブリルが主に幅方向に配向するために上記した態様を満足するような十分な縦フィブリルが得られ、製膜性、ガスバリア性に優れたものとなるので好ましい。
【0051】
かかる延伸助剤は、ポリプロピレンに対する相溶性が高い樹脂であることが好ましく、また、ガラス転移点温度(以下、Tgと記すことがある)は、60℃以上であることが好ましい。60℃以上であれば、フィルムの防湿性、剛性向上効果が十分に得られるので好ましい。また、Tgの上限は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定されないが、120℃以下であると、ポリプロピレンとの相溶性がよくなり、フィルムの延伸性、防湿性が優れたものとなるので好ましい。
【0052】
本発明の延伸助剤としては、極性基を実質的に含まない石油樹脂および/または極性基を実質的に含まないテルペン樹脂の1種以上が、高倍率延伸、縦フィブリル導入、ガスバリア性向上などの観点から好ましく用いられる。
【0053】
ここで、極性基を実質的に含まない石油樹脂とは、水酸基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホン基またはそれらの変成体などからなる極性基を有さない石油樹脂であり、具体的には石油系不飽和炭化水素を原料とするシクロペンタジエン系、あるいは高級オレフィン系炭化水素を主原料とする樹脂である。
【0054】
さらに、かかる極性基を実質的に含まない石油樹脂のガラス転移点温度(以下、Tgと記すことがある)は、60℃以上であることが好ましい。Tgが上記範囲未満であると、剛性の向上効果が小さくなる場合がある。Tgの上限は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定されないが、120℃以下であると、ポリプロピレンとの相溶性がよくなり、フィルムの延伸性、防湿性が優れたものとなるので好ましい。
【0055】
また、かかる石油樹脂に水素を添加し、その水素添加率を90%以上、好ましくは99%以上とした水素添加(以下、水添と記すことがある)石油樹脂は、特に好ましく用いられる。代表的な水添石油樹脂としては、例えばTgが70℃以上で水添率99%以上のポリジシクロペンタジエンなどの脂環族石油樹脂を挙げることができる。
【0056】
また、極性基を実質的に含まないテルペン樹脂とは、水酸基、アルデヒド基、ケトン基、カルボキシル基、ハロゲン基、スルホン基またはそれらの変成体などからなる極性基を有さないテルペン樹脂、すなわち(C5H8)nの組成の炭化水素およびこれから導かれる変性化合物である。ここで、nは2〜20程度の自然数である。
【0057】
テルペン樹脂はテルペノイドと呼ばれることもあり、代表的な化合物としては、ピネン、ジペンテン、カレン、ミルセン、オシメン、リモネン、テレピノレン、テルピネン、サビネン、トリシクレン、ビサボレン、ジンギペレン、サンタレン、カンホレン、ミレン、トタレン等があり、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの場合、水素を添加し、その水素添加率を90%以上とするのが好ましく、特に99%以上とすることが好ましい。なかでも、水添β−ピネン、水添β−ジペンテンなどが特に好ましく用いられる。
【0058】
極性基を実質的に含まない石油樹脂のガラス転移点温度(以下、Tgと記すことがある)は、60℃以上であることが好ましい。Tgが上記範囲未満であると、剛性の向上効果が小さくなる場合がある。Tgの上限は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定されないが、120℃以下であると、ポリプロピレンとの相溶性がよくなり、フィルムの延伸性、防湿性が優れたものとなるので好ましい。
【0059】
該石油樹脂またはテルペン樹脂の臭素価としては、10以下が好ましく、さらに好ましくは5以下、特に好ましくは1以下のものがよい。
【0060】
上記延伸助剤の添加量は、その可塑化効果が発揮される量でよいが、前記石油樹脂およびテルペン樹脂の添加量を合わせて0.1〜30重量%であることが好ましい。該樹脂の混合量が上記範囲未満では延伸性、長手方向の剛性の向上効果が小さくなったり、透明性が悪化する場合がある。また、上記範囲を越えると、熱寸法安定性が悪化したり、フィルム表層に該添加剤がブリードアウトして滑り性が悪化したり、フィルム同士がブロッキングする場合がある。添加剤の混合量は、石油樹脂およびテルペン樹脂の添加量を合わせて、より好ましくは1〜20重量%であり、さらに好ましくは2〜15重量%である。
【0061】
なお、延伸助剤として極性基を含有する石油樹脂および/またはテルペン樹脂を使用した場合には、ポリプロピレンとの相溶性に劣ることから、フィルム内部にボイドが形成されやすく、水蒸気透過率が高くなり、また帯電防止剤や滑剤のブリードアウトを悪化させる可能性がある。
【0062】
かかる延伸助剤の具体例としては、例えばトーネックス(株)社製“エスコレッツ”(タイプ名:E5300シリーズなど)、ヤスハラケミカル(株)社製“クリアロン”(タイプ名:P−125など)、荒川化学工業(株)社製“アルコン”(タイプ名:P−125など)などが挙げられる。
【0063】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基層とし、少なくとも片面に金属蒸着層を設けていることにより、ガスバリア性の高い金属蒸着フィルムとなる。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、縦フィブリルが応力に対して変形しにくいため、蒸着層の膜割れ(クラック)発生を抑制され、印刷、ラミネート、コーティング、製袋、離型などの二次加工後の蒸着フィルムのガスバリア性低下を抑制することができる。したがって、金属蒸着層は縦フィブリルが存在する面に付設されることが好ましい。また、金属蒸着後も上記手法で測定した際に縦フィブリルが検出されることが好ましい。
【0064】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの基層と金属蒸着層の間に、ポリエステルウレタン系樹脂の被覆層を設けていることにより、さらにガスバリア性の高い金属蒸着フィルムとすることができる。
【0065】
金属蒸着後に優れたガスバリア性を得る上で、該被覆層は、水溶性および/または水分散性の、架橋されたポリエステルウレタン系樹脂と水溶性の有機溶剤との混合塗剤を塗布、乾燥することにより形成されたものであることが好ましい。
【0066】
被覆層に用いるポリエステルウレタン系樹脂とは、ジカルボン酸とジオール成分をエステル化したポリエステルポリオールとポリイソシアネート、また必要によって鎖伸張剤から成るものである。
【0067】
被覆層に用いるポリエステルウレタン樹脂のジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、セバシン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、アゼライン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタール酸、ジフェニン酸、4,4’−オキシ安息香酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸などを用いることができる。
【0068】
被覆層に用いるポリエステルウレタン樹脂のジオール成分としてはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコールなどの脂肪族グリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの芳香族ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどのポリ(オキシアルキレン)グリコールなどが挙げられる。
【0069】
また、被覆層に用いるポリエステルウレタン系樹脂は、ジカルボン酸成分、ジオール成分の他にp−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸やアクリル酸(およびその誘導体)などが共重合されていてもよく、さらに、これらは線状構造であるが、3価以上のエステル形成成分を用いて分枝状ポリエステルとすることもできる。
【0070】
ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンの付加物、ヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールエタンの付加物などを挙げることができる。
【0071】
また、鎖伸張剤としては、ペンダントカルボキシル基含有ジオール類や例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどのグリコール類、あるいはエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、フェニレンジアミン、トリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノシクロヘキシルメタンなどのジアミン類などが挙げられる。
【0072】
ポリエステルウレタン系樹脂の具体例としては大日本インキ化学工業(株)製“ハイドラン”(タイプ名:AP−40Fなど)などが挙げられる。
【0073】
また、該被覆層を形成する際、被覆層の被膜成形性および基層との接着力を向上させるために、塗剤に水溶性の有機溶剤として、N−メチルピロリドン、エチルセロソルブアセテート、ジメチルホルムアミドの少なくとも1種以上を添加することが好ましい。特にN−メチルピロリドンが被膜成形性と基材との密着性を向上させる効果が大きく好ましい。添加量は、該ポリエステルウレタン系樹脂100重量部に対し1〜15重量部が塗剤の引火性および臭気悪化防止の点から好ましく、さらに好ましくは3〜10重量部である。
【0074】
さらに、水分散性ポリエステルウレタン樹脂に架橋構造を導入して、被覆層と基層の接着性を高めることが好ましい。このような塗液を得る手法としては、特開昭63−15816号公報、特開昭63−256651号公報、特開平5−152159号公報の方法が挙げられる。架橋性成分として、イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物から選ばれる少なくとも一種の架橋剤を添加することが挙げられる。これら架橋剤は上述のポリエステルウレタン樹脂と架橋して、基層と金属蒸着層との接着性を高めるものである。
【0075】
架橋剤として用いるイソシアネート系化合物としては、例えば前記した、トルエンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシネート、イソホロンジイソシアネートなどが例示されるが、これに限定されるものではない。
【0076】
また、架橋剤として用いるエポキシ系化合物としては、例えば、ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテルおよびそのオリゴマー、オルトフタル酸ジグリシジルエーテル、イソフタル酸ジグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエーテルなどが例示されるが、これらに限定されない。
【0077】
架橋剤として用いるアミン系化合物としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン等のアミン化合物および、上記アミノ化合物にホルムアルデヒドや炭素数が1〜6のアルコールを付加縮合させたアミノ樹脂、ヘキサメチレンジアミン、トリエタノールアミンなどが例示されるが、これらに限定されない。
【0078】
食品衛生性および基材との接着性の点から、該被覆層にはアミン系化合物を添加することが好ましい。架橋剤として用いるアミン系化合物の具体例としては、大日本インキ化学工業(株)製“ベッカミン”(タイプ名:APMなど)などが挙げられる。
【0079】
イソシアネート系化合物、エポキシ系化合物、アミン系化合物から選択される架橋剤の添加量は、該水溶性ポリエステルウレタン系樹脂と水溶性有機溶剤の混合塗剤100重量部に対し1〜15重量部が耐薬品性向上および耐水性悪化防止の点から好ましく、さらに好ましくは3〜10重量部である。架橋剤の添加量が上記範囲未満であると、接着性の改善効果が得られない場合があり、また上記範囲を超えると、未反応で残存する架橋剤によると推定される、被覆層と基層の接着性低下がみられる場合がある。
【0080】
また、該金属蒸着用フィルムを製膜する時間内で、上述の被覆層組成が完全に架橋して硬化するために、被覆層には少量の架橋促進剤を添加してもよい。
【0081】
被覆層に添加する架橋促進剤としては、架橋促進効果が大きいので、水溶性の酸性化合物が好ましい。架橋促進剤としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸、トリメチルアジピン酸、セバシン酸、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、グルタール酸、スルホン酸、ピメリン酸、2,2−ジメチルグルタール酸、アゼライン酸、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、1,3−シクロペンタンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ナフタール酸、ジフェニン酸、4,4’−オキシ安息香酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸などを用いることができる。
【0082】
これらの架橋促進剤の具体例としては、大日本インキ化学工業(株)製“キャタリスト”(タイプ名:PTSなど)などが挙げられる。
【0083】
また、該被覆層には、不活性粒子を添加してもよく、不活性粒子としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタンなどの無機フィラー、および、例えば、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル粒子、架橋シリコン粒子などの有機高分子粒子が挙げられる。また、不活性粒子以外にもワックス系の滑剤、およびこれらの混合物などを添加しても良い。
【0084】
該被覆層は、0.05〜2μmの厚さで設けられることが好ましい。該被覆層が上記範囲より薄いと、基層との接着性が悪化して細かな膜抜けを生じ、金属蒸着後のガスバリア性能が悪化することがある。該被覆層が上記範囲より厚いと、被覆層の硬化に時間を要し、上述の架橋反応が未完全でガスバリア性能が悪化する場合があり、また該被覆層をフィルム製膜工程中で該基層上に設けた場合、フィルム屑の基層への回収性が悪化し、被覆層樹脂を核とした内部ボイドが多数でき、機械特性が低下する場合がある。該被覆層の厚みは、より好ましくは0.08〜1.5μm、さらに好ましくは0.1〜1μmである。
【0085】
また、被覆層と基層との接着強度は、0.6N/cm以上が好ましい。被覆層と基層の接着強度が上記範囲内であると、加工の工程で被覆層が剥がれやすく使用上の制限が大きくなる場合がある。被覆層と基層の接着強度は、好ましくは0.8N/cm以上であり、より好ましくは1.0N/cm以上である。なお、被覆層と基層の接着強度の上限は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定はされないが、例えば下記したようなフィルム製造工程内で被覆層を形成する際に製膜性が悪化する場合があるので、10N/cm以下とすることが好ましい。
【0086】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの金属蒸着面の中心線平均粗さ(Ra)は、金属蒸着層の厚みと同等もしくはそれ以下であることがガスバリア性能の観点から好ましく、500nm以下であることがより好ましい。Raが上記範囲を越えると、被覆層、金属蒸着層を順次形成した金属蒸着フィルムとした際にアルミ膜にピンホールなどが生じ、ガスバリア性が悪化する場合がある。Raは、特に下限は設けないが、滑り性、ブロッキング防止性などの取り扱い性の観点から、0.1nm以上であることが好ましい。Raは、より好ましくは300nm以下、さらに好ましくは100nm以下、最も好ましくは50nm以下である。また、基層の少なくとも片面に被覆層を設けたフィルムとした場合は、設けない場合より平滑な表面が得られる場合があり、被覆後の被覆層表面のRaは、ガスバリア性能の観点から、50nm以下であることがより好ましく、40nm以下であることがさらに好ましく、30nm以下であることが最も好ましい。さらに、被覆層を設けない場合と被覆層を設けている場合のいずれの場合においても、蒸着後のフィルムの金属蒸着面のRaが上記範囲を満たすことが好ましい。
【0087】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面光沢は、蒸着後の金属光沢の麗美性のため、135%以上が好ましく、より好ましくは138%以上である。また、被覆層を設けたフィルムとした場合も上記範囲を満たすことが好ましい。
【0088】
また、本発明において被覆層を設ける手法としては、リバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアードクターコーターあるいはこれら以外の塗布装置を用いてポリプロピレンフィルム製造工程外で被覆液を塗布する方法が好ましい。さらに好ましくは、フィルム製造工程内で塗布する方法として、ポリプロピレン未延伸フィルムに被覆液を塗布し、逐次二軸延伸する方法、一軸延伸されたポリプロピレンフィルムに塗布し、更に先の一軸延伸方向と直角の方向に延伸する方法などがある。このうち一軸延伸されたポリプロピレンフィルムに塗布し、更に先の一軸延伸方向と直角の方向に延伸する方法が被覆層の厚みを均一にし、かつ生産性が向上することから最も好ましい。
【0089】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着用フィルムとして使用する場合には、基層のポリプロピレンには有機滑剤や耐電防止剤添加しない方が被覆層および金属蒸着層の接着性の観点から好ましい。しかし、滑り性を付与し、作業性や巻き取り性を向上させるために、下記に示す有機架橋性粒子や無機粒子を少量添加することは許容される。
【0090】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムには、上記構成の金属蒸着フィルムとして用いる場合を除き、フィルムの帯電による静電気障害防止のため帯電防止剤が好ましく添加される。本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに含有される帯電防止剤は特に限定されないが、例えば、ベタイン誘導体のエチレンオキサイド付加物、第4級アミン系化合物、アルキルジエタノールアミン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ステアリン酸グリセリドなど、もしくはこれらの混合物を挙げることができる。
【0091】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムには、上記構成の金属蒸着フィルムとして用いる場合を除き、滑剤を添加することが好ましく、上記帯電防止剤と併用することがより好ましい。これは、JIS用語で表現される熱可塑性樹脂の加熱成形時の流動性、離型性をよくするために添加されるもので、加工機械とフィルム表面、またはフィルム同士の間の摩擦力を調節するために添加される。
【0092】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに添加される滑剤は特に限定されないが、例えば、ステアリン酸アミド、エルシン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイン酸アミドなどのアミド系化合物など、もしくはこれらの混合物が挙げられる。
【0093】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに添加される帯電防止剤の添加量は、用いるポリプロピレン樹脂100重量部に対して、0.3重量部以上添加されていることが好ましく、より好ましくは0.4〜1.5重量部の範囲である。また、帯電防止剤と滑剤の合計添加量は0.5〜2.0重量部が帯電防止性と滑り性の点でより好ましい。
【0094】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムには滑り性付与のため無機粒子および/または架橋有機粒子が好ましく添加混合される。
【0095】
本発明で、無機粒子とは金属化合物の無機粒子であり、特に限定されないが、例えば、ゼオライト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、珪酸アルミニウム、カオリン、カオリナイト、タルク、クレイ、珪藻土、モンモリロナイト、酸化チタンなどの粒子、もしくはこれらの混合物を挙げることができる。
【0096】
また、本発明で、架橋有機粒子は架橋剤を用いて高分子化合物を架橋した粒子である。本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに添加される架橋有機粒子は、特に限定されないが、例えば、ポリメトキシシラン系化合物の架橋粒子、ポリスチレン系化合物の架橋粒子、アクリル系化合物の架橋粒子、ポリウレタン系化合物の架橋粒子、ポリエステル系化合物の架橋粒子、フッソ系化合物の架橋粒子、もしくはこれらの混合物を挙げることができる。
【0097】
また、無機粒子および架橋有機粒子の平均粒径は0.5〜6μmであることが好ましい。平均粒径が上記範囲未満であると、滑り性が悪くなる場合があり、上記範囲を越えると、粒子の脱落やフィルム同士を擦った時にフィルム表面に傷がつきやすくなる場合がある。
【0098】
無機粒子および/または架橋有機粒子の添加量は、0.02〜0.5重量%であることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.2重量%とすることが、耐ブロッキング防止性、滑り性および透明性の点で好ましい。
【0099】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムには、必要に応じて上記以外の造核剤、熱安定剤、酸化防止剤などを添加せしめてもよい。
【0100】
例えば造核剤としては、ソルビトール系、有機リン酸エステル金属塩系、有機カルボン酸金属塩系、ロジン系造核剤などを0.5重量%以下、熱安定剤としては2,6−ジ−第3−ブチル−4−メチルフェノ−ル(BHT)などを0.5重量%以下、酸化防止剤としてはテトラキス−(メチレン−(3,5−ジ−第3−ブチル−4−ハイドロオキシ−ハイドロシンナメ−ト))ブタン(Irganox 1010)などを0.5重量%以下の範囲で添加してもよい。
【0101】
次に、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片面には、添加剤ブリードアウト・飛散抑制、コーティング膜・蒸着膜易接着、易印刷性付与、ヒートシール性付与、プリントラミネート性付与、光沢付与、ヘイズ低減(透明性付与)、離型性付与、滑り性付与、表面硬度向上、平滑性付与、表面粗度向上、ガスバリア性向上、イージーピール性付与、手切れ性付与などの種々の目的に応じて、適宜公知のポリオレフィン系樹脂を積層することが好ましい。
【0102】
この際の積層厚みは、0.25μm以上であり、かつフィルムの全厚みの1/2以下であることが好ましい。積層厚みが0.25μm未満であると、膜切れなどにより均一な積層が困難となり、全厚みの1/2を越えると、機械特性に及ぼす表層の影響が大きくなり、ヤング率の低下を引き起こし、フィルムの抗張力性もまた低下する。また、この際の積層フィルム表面にも縦フィブリルが存在することが好ましいが、必ずしも本発明の範囲を満たす必要はなく、積層方法は共押出、インライン・オフライン押出ラミネート、インライン・オフラインコーティングなどが挙げられるがこれらのうちいずれかに限定されるわけではなく、随時最良の方法を選択すれば良い。
【0103】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの少なくとも片方のフィルム表面にコロナ放電処理を施し、フィルム表面の濡れ張力を35mN/m以上とすることは、印刷性、接着性、帯電防止性および滑剤のブリードアウト性を向上させるため好ましく採用することができる。この際、コロナ放電処理の雰囲気ガスとしては、空気、酸素、窒素、炭酸ガス、あるいは窒素/炭酸ガスの混合系などが好ましく、経済性の観点からは空気中でコロナ放電処理することが特に好ましい。また、火炎(フレーム)処理、プラズマ処理なども表面濡れ張力向上の観点から好ましい。濡れ張力の上限は特に設けないが、過度な表面処理は表面を劣化させる場合があり、60mN/m以下であることが好ましい。
【0104】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの25℃での長手方向のヤング率(Y(MD))は2.5GPa以上であることが好ましい。25℃でのY(MD)が上記範囲未満であると、フィルム加工時に抗張力性が不十分となったり、長手方向に比較して幅方向の剛性が高くなり、剛性がアンバランスとなる場合がある。このため、フィルムの腰が不十分となる場合があり、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋、離型などのフィルム加工時に、印刷ピッチずれ、フィルムの伸び、シワ入り、膜割れ(クラック)を生じるなど、フィルムの抗張力性が不十分となる場合がある。25℃でのY(MD)は、縦フィブリルの幅や本数などのフィブリル構造により制御することができ、フィブリル構造は溶融状態から冷却固化して未延伸シートを得る際の冷却ドラム温度、縦延伸条件(温度、倍率など)、用いるポリプロピレンの結晶性(mmmm、IIなどに対応)、延伸助剤の混合量などにより制御することができる。したがって、本発明の特性を損なわない範囲で適宜最適な製膜条件・原料を選定すればよい。25℃でのY(MD)は、より好ましくは2.7GPa以上、さらに好ましくは3.0GPa以上、最も好ましくは3.2GPa以上である。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとした場合も上記範囲を満たすことが好ましい。
【0105】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの80℃でのY(MD)は、0.4GPa以上であることが好ましい。80℃でのY(MD)が上記範囲未満であると、長手方向に比較して幅方向の剛性が高くなり、剛性がアンバランスとなる場合がある。このため、フィルムの腰が不十分となる場合があり、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋などのフィルム加工時に、印刷ピッチずれ、フィルムの伸び、シワ入り、膜割れ(クラック)を生じるなど、フィルムの抗張力性が不十分となる場合がある。80℃でのY(MD)は、縦フィブリルの幅や本数などのフィブリル構造により制御することができ、フィブリル構造は溶融状態から冷却固化して未延伸シートを得る際の冷却ドラム温度、縦延伸条件(温度、倍率など)、用いるポリプロピレンの結晶性(mmmm、IIなどに対応)、延伸助剤の混合量などにより制御することができる。したがって、本発明の特性を損なわない範囲で適宜最適な製膜条件・原料を選定すればよい。80℃でのY(MD)は、より好ましくは0.5GPa以上、さらに好ましくは0.6GPa以上である。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとした場合も上記範囲を満たすことが好ましい。
【0106】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、長手方向のヤング率(Y(MD))と幅方向のヤング率(Y(TD))により次式(1)で表されるm値
m=Y(MD)/(Y(MD)+Y(TD)) (1)
が25℃において0.4〜0.7であることが好ましい。ここで、m値は長手方向と幅方向のヤング率の和に占める長手方向のヤング率の比率である。したがって、m値<0.5のフィルムは長手方向に比較して幅方向の剛性が高く、m値=0.5のフィルムは長手方向と幅方向の剛性が実質的にバランスしており、m値>0.5のフィルムは幅方向に比較して長手方向の剛性が高い。m値が0.4〜0.7であることにより、長手方向と幅方向の剛性がバランスした二軸延伸ポリプロピレンフィルム、さらには幅方向に比較して長手方向の剛性が高い二軸延伸ポリプロピレンフィルムとできるので、従来に比べて飛躍的に腰の強いフィルムとすることができ、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋、離型などのフィルム加工時に優れたハンドリング性、加工性を示すフィルムを、汎用の縦−横逐次二軸延伸法を用いて安定製造できる。25℃でのm値が上記範囲未満であると、幅方向に比較して長手方向の剛性が劣り、剛性がアンバランスになるため、フィルム加工時の抗張力性が不十分であったり、フィルムの腰が不十分となり、膜割れ(クラック)、やフィルムの伸び、シワ入り、印刷ピッチずれなどのベースフィルム起因のトラブルが発生することがあり、フィルム加工時のハンドリング性、加工性に劣る場合がある。m値が上記範囲を超えると、長手方向に比較して幅方向の剛性が著しく低下するため、薄膜化を行った際のフィルムの腰が不十分となり、フィルム加工時のハンドリング性、加工性に劣る場合があり、長手方向にフィルムが裂けやすくなる場合がある。25℃におけるm値は、縦フィブリルの幅や本数などのフィブリル構造により制御することができ、フィブリル構造は製膜条件(溶融状態から冷却固化して未延伸シートを得る際の冷却ドラム温度、縦・横延伸温度、倍率、縦・横延伸後のフィルムの弛緩など)、用いるポリプロピレンの結晶性(mmmm、IIなどに対応)、延伸助剤の混合量などにより制御することができる。したがって、本発明の特性を損なわない範囲で適宜最適な製膜条件・原料を選定すればよい。25℃におけるm値は、より好ましくは0.42〜0.68、さらに好ましくは0.44〜0.65、最も好ましくは0.46〜0.62である。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、印刷、ラミネートヒートシールなどの加工工程の際には、室温以上に加熱されることがあるが、室温以上の温度においてもm値が上記範囲(0.4〜0.7)であることが二次加工性の観点から好ましい。特に、m値は、例えば80℃においても上記範囲を満たすことが好ましい。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとした場合も上記範囲を満たすことが好ましい。
【0107】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの25℃での長手方向のF2値は、40MPa以上であることが望ましい。ここで、長手方向のF2値とは、長手方向:15cm、幅方向:1cmのサイズで切り出した試料を、原長50mm、引張り速度300mm/分で伸張した際の伸度2%の時に試料にかかる応力である。25℃での長手方向のF2値が上記範囲未満であると、長手方向に比較して幅方向の剛性が高くなり、剛性がアンバランスとなる場合がある。このため、フィルムの腰が不十分となる場合があり、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋、離型などのフィルム加工時に、印刷ピッチずれ、フィルムの伸び、シワ入り、膜割れ(クラック)を生じるなど、フィルムの抗張力性が不十分となる場合がある。25℃での長手方向のF2値は、縦フィブリルの幅や本数などのフィブリル構造により制御することができ、フィブリル構造は溶融状態から冷却固化して未延伸シートを得る際の冷却ドラム温度、縦延伸条件(温度、倍率など)、用いるポリプロピレンの結晶性(メソペンタッド分率(mmmm)、アイソタクチックインデックス(II)などに対応)、の混合量などにより制御することができる。したがって、本発明の特性を損なわない範囲で適宜最適な製膜条件・原料を選定すればよい。25℃での長手方向のF2値は、より好ましくは45MPa以上である。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとした場合も上記範囲を満たすことが好ましい。
【0108】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの25℃での長手方向のF5値は、50MPa以上であることが好ましい。ここで、長手方向のF5値とは、長手方向:15cm、幅方向:1cmのサイズで切り出した試料を、原長50mm、引張り速度300mm/分で伸張した際の伸度5%の時に試料にかかる応力である。25℃での長手方向のF5値が上記範囲未満であると、長手方向に比較して幅方向の剛性が高くなり、剛性がアンバランスとなる場合がある。このため、フィルムの腰が不十分となる場合があり、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋、離型などのフィルム加工時に、印刷ピッチずれ、フィルムの伸び、シワ入り、膜割れ(クラック)を生じるなど、フィルムの抗張力性が不十分となる場合がある。25℃での長手方向のF5値は、縦フィブリルの幅や本数などのフィブリル構造により制御することができ、フィブリル構造は溶融状態から冷却固化して未延伸シートを得る際の冷却ドラム温度、縦延伸条件(温度、倍率など)、用いるポリプロピレンの結晶性(メソペンタッド分率(mmmm)、アイソタクチックインデックス(II)などに対応)、延伸助剤の混合量などにより制御することができる。したがって、本発明の特性を損なわない範囲で適宜最適な製膜条件・原料を選定すればよい。25℃での長手方向のF5値は、より好ましくは55MPa以上である。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとした場合も上記範囲を満たすことが好ましい。
【0109】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの120℃での長手方向の熱収縮率(S(MD))は、5%以下であることが好ましい。120℃での長手方向の熱収縮率が上記範囲を越えると、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋、離型などの加工時に温度を付加した際のフィルムの収縮が大きくなり、膜割れ(クラック)、ピッチずれ、シワ入りなどの工程不良を誘起する場合がある。120℃でのS(MD)は、溶融状態から冷却固化して未延伸シートを得る際の冷却ドラム温度、縦・横延伸条件(延伸温度、倍率、延伸後のフィルムの弛緩など)、用いるポリプロピレンの結晶性(mmmm、IIなどに対応)、延伸助剤の混合量などにより制御することができる。したがって、本発明の特性を損なわない範囲で適宜最適な製膜条件・原料を選定すればよい。120℃でのS(MD)は、より好ましくは4%以下である。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとした場合も上記範囲を満たすことが好ましい。
【0110】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの120℃でのS(MD)と幅方向の熱収縮率の和は、8%以下であることが好ましい。120℃でのS(MD)と幅方向の熱収縮率の和が上記範囲を越えると、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋、離型などのフィルム加工時に温度を付加した際のフィルムの収縮が大きくなり、膜割れ(クラック)、ピッチずれ、シワ入りなどの工程不良を誘起する場合がある。120℃でのS(MD)と幅方向の熱収縮率の和は、溶融状態から冷却固化して未延伸シートを得る際の冷却ドラム温度、縦・横延伸条件(延伸温度、倍率、延伸後のフィルムの弛緩など)、用いるポリプロピレンの結晶性(mmmm、IIなどに対応)、延伸助剤の混合量などにより制御することができる。したがって、本発明の特性を損なわない範囲で適宜最適な製膜条件・原料を選定すればよい。120℃でのS(MD)と幅方向の熱収縮率の和は、より好ましくは6%以下である。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとした場合も上記範囲を満たすことが好ましい。
【0111】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、25℃でのY(MD)と120℃でのS(MD)で表される次式(2)を満たすことが好ましい。
【0112】
Y(MD)≧S(MD)−1 (2)
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、上記式を満たすことによりフィルム加工時に、抗張力性が高く、かつハンドリング性に優れたフィルムとすることできる。本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが上記式を満たさないと、フィルム加工時に抗張力性が不十分となったり、フィルムの収縮起因の工程不良を誘起することがある。上記式を満足させるためには、製膜条件(溶融状態から冷却固化して未延伸シートを得る際の冷却ドラム温度、縦・横延伸温度、倍率、縦・横延伸後のフィルムの弛緩など)、用いるポリプロピレンの結晶性(mmmm、IIなどに対応)、延伸助剤の混合量などにより制御することができる。したがって、本発明の特性を損なわない範囲で適宜最適な製膜条件・原料を選定すればよい。より好ましくは、下記式(2’)を満たすものである。また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを金属蒸着フィルムとした場合も上記範囲を満たすことが好ましい。
【0113】
Y(MD)≧S(MD)−0.7 (2’)
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの水蒸気透過率は、1.5g/m2/d/0.1mm以下であることが好ましい。水蒸気透過率が上記範囲を越えると、例えば、内容物を外気と遮断する包装体として本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを用いた際の防湿性に劣る場合がある。水蒸気透過率は、縦フィブリルの幅や本数などのフィブリル構造により制御することができ、フィブリル構造は製膜条件(溶融状態から冷却固化して未延伸シートを得る際の冷却ドラム温度、縦・横延伸温度、倍率など)、用いるポリプロピレンの結晶性(mmmm、IIなどに対応)、延伸助剤の混合量などにより制御することができる。したがって、本発明の特性を損なわない範囲で適宜最適な製膜条件、原料を選定すればよい。水蒸気透過率は、より好ましくは、1.2g/m2/d/0.1mm以下である。
【0114】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの製造には、公知の方法が使用できる。例えば、公知のポリプロピレンに長鎖分岐を有するポリプロピレン(LB−PP)を添加したポリプロピレンに、極性基を実質的に含まない石油樹脂および/または極性基を実質的に含まないテルペン樹脂の1種以上を混合した樹脂、ならびに該フィルムの少なくとも片面に第2、第3、・・の層を積層した積層体とする場合には各々所望の樹脂を必要に応じて準備する。これらの樹脂を別々の押出機に供給して200〜290℃の温度で溶融させ、濾過フィルターを経た後、(積層体とする場合は、短管あるいは口金ないで合流せしめ、目的とするそれぞれの積層厚みで)スリット状口金から押し出し、冷却用ドラムに巻き付けてシート状に冷却固化せしめ未延伸(積層)フィルムとする。冷却用ドラムの温度は20〜100℃とし、フィルムを適度に結晶化させることが二軸延伸後のフィルムの縦フィブリルを太く、多くする上で好ましい。また、冷却用ドラムへの密着方法としては静電印加法、水の表面張力を利用した密着方法、エアーナイフ法、プレスロール法、水中キャスト法などのうちいずれの手法を用いてもよいが、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得る手法としては厚み制御性が良好なエアーナイフ法が好ましい。
【0115】
次に、得られた未延伸(積層)フィルムを、公知の縦−横逐次二軸延伸法を用いて二軸延伸する。まず、未延伸フィルムを所定の温度に保たれたロールに通して予熱し、引き続きそのフィルムを所定の温度に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向(=縦方向)に延伸して直ちに室温に冷却する。ここで、縦フィブリルにより長手方向に高度に強力化された二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製造する重要なポイントとして、縦方向の延伸倍率が挙げられる。通常の縦−横逐次二軸延伸ポリプロピレンフィルムを製膜する際の縦方向の実効延伸倍率は、4.5〜5.5倍の範囲であり、6倍を越えると安定な製膜が困難になり、横延伸でフィルムが破れてしまうのに対して、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、縦方向の実効延伸倍率を6倍以上とすることが好ましい。縦方向の実効延伸倍率が上記範囲未満であると、フィブリルが主に幅方向に配向するために上記した態様を満足するような十分な縦フィブリルが得られず、フィブリル構造が加工張力に対して変形しやすくなるため、フィルムの長手方向の剛性が不足する場合があり、薄膜化を行った際のフィルムの腰が不十分となることがある。縦方向の実効延伸倍率は、より好ましくは7倍以上、さらに好ましくは8倍以上である。この際、縦延伸を少なくとも2段階以上に分けて行うことは、縦フィブリルの導入、長手方向の強力化、表面欠点抑制などの観点から好ましい場合がある。縦延伸温度は、安定製膜性、フィブリル構造の制御、厚みムラ抑制、長手方向の強力化などの観点から適宜最適な温度条件を選定すればよく、120〜150℃であることが好ましい。また、縦延伸後の冷却過程において、フィルムの厚みムラが悪化しない程度に縦方向に弛緩を与えることは、長手方向の寸法安定性の観点から好ましい。さらに、縦延伸後のフィルムに所望の樹脂層を適宜押出ラミネートやコーティングなどにより設置してもよい。ただし、この場合、押出ラミネート樹脂層は幅方向に一軸延伸しかされないため、該樹脂層表面には縦フィブリルは観察されなくてもよい。
【0116】
引き続き、この縦延伸フィルムをテンター式延伸機に導いて、各々所定の温度で予熱し、幅方向に延伸する。ここで、幅方向の実効延伸倍率は、10倍以下であることが好ましい。幅方向の実効延伸倍率が10倍を越えると、得られるフィルムの長手方向の剛性が不足したり、縦フィブリルが少なくなったり、製膜が不安定になる場合がある。横延伸温度は、安定製膜、厚みムラ、長手方向の強力化、縦フィブリルの導入などの観点から適宜最適な温度条件を選定すればよく、150〜180℃であることが好ましい。
【0117】
幅方向に延伸したのち、さらに幅方向に1%以上の弛緩を与えつつ150〜180℃で熱固定し、冷却する。さらに、必要に応じ、フィルムの少なくとも片面に空気あるいは窒素あるいは炭酸ガスと窒素の混合雰囲気中で、コロナ放電処理する。この際、ヒートシール層を積層している場合には、高いヒートシール強度を得るためにはコロナ放電処理を行わない方が好ましい。次いで、該フィルムを巻き取ることで、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムが得られる。
【0118】
また、さらにガスバリア性を高めたフィルムとする場合には、上記未延伸積層フィルムを120〜150℃の温度に加熱し、長手方向に6倍以上に延伸した後、冷却し、一軸延伸されたフィルム基層上に前述の被覆層塗剤をコート(必要により基層表面にコロナ放電処理を行い)し、次いでテンター式延伸機に導入し150〜180℃で幅方向に10倍以下に延伸した後、150〜180℃で弛緩熱処理し冷却する。さらに、必要に応じ基層の被覆層を設けた面および/または反対側の第3層の面に、空気あるいは窒素あるいは炭酸ガスと窒素の混合雰囲気中で、コロナ放電処理する。この際、第3層としてヒートシール層を積層した場合には、高い接着強度を得るためには、コロナ放電処理はしない方が好ましい。次いで、該フィルムを巻き取り、金属蒸着用二軸延伸ポリプロピレンフィルムとする。
【0119】
上記で得られた金属蒸着用二軸延伸ポリプロピレンフィルムを40〜60℃でエージングを行うことが、被覆層の反応が促進することにより、基層との接着強度が向上し、また金属蒸着層との接着強度も向上して、ガスバリア性能が向上するため好ましい。エージングを行う時間は、12時間以上が耐薬品性向上の効果の点から好ましく、さらに好ましくは24時間以上である。
【0120】
次に、金属蒸着は、金属の真空蒸着によって行い、蒸発源から金属を蒸着させ、本発明において得られた金属蒸着用二軸延伸ポリプロピレンフィルムの被覆層面上(被覆層を形成しない場合は蒸着面は金属蒸着層との接着性の観点から適宜選択すればよい)に蒸着層を形成する。
【0121】
この蒸発源としては抵抗加熱方式のボート形式や、輻射あるいは高周波加熱によるルツボ形式や、電子ビーム加熱による方式などがあるが、特に限定されない。
【0122】
この蒸着に用いる金属としては、Al,Zn,Mg,Sn,Siなどの金属が好ましいが、Ti,In,Cr,Ni,Cu,Pb,Feなども使用できる。これらの金属はその純度が99%以上、望ましくは99.5%以上の粒状、ロッド状、タブレット状、ワイヤー状あるいはルツボの形状に加工したものが好ましい。
【0123】
また、この蒸着金属の中で特に、金属蒸着層の耐久性、生産性、コスト面から、アルミニウムの蒸着層を少なくとも片面に設けていることが好ましい。このときアルミニウムと同時あるいは逐次に、例えばニッケル、銅、金、銀、クロム、亜鉛などの他の金属成分も蒸着することができる。
【0124】
金属蒸着層の厚さは10nm以上であることが高度なガスバリア性能を発現するために好ましい。さらに好ましくは20nm以上である。蒸着層の厚さには本発明の効果を奏する限り特に上限は設けないが、例えば、経済性、生産性の点から100nm未満がより好ましい。
【0125】
金属蒸着層の光沢度は、600%以上が好ましく、700%以上がさらに好ましい。
【0126】
また、上記金属蒸着層は、金属酸化物の蒸着層でもよく、ガスバリア性に優れた透明ガスバリアフィルムとして、透明包装用フィルムなどに好適に用いられる。ここで、金属酸化物の蒸着膜とは、不完全酸化アルミニウム、不完全酸化珪素などの金属酸化物の被膜であり、特に不完全酸化アルミニウムが蒸着層の耐久性、生産性、コスト面から好ましい。これらの蒸着方法は公知の方法で行うことができ、例えば、不完全酸化アルミニウム膜の場合は、真空度10−4Torr以下の高度の真空装置内でフィルムを走行させ、アルミニウム金属を加熱溶融して蒸発させ、蒸発箇所に少量の酸素ガスを供給し、アルミニウムを酸化させながらフィルム表面に凝集堆積させ、蒸着層を付設する。金属酸化物の蒸着層の厚さは10〜50nmの範囲が好ましく、さらに好ましくは10〜30nmの範囲である。金属酸化物の蒸着層の不完全度は、蒸着した後に酸化が進み金属酸化物蒸着フィルムの光線透過率が変化し、光線透過率は好ましくは70〜90%の範囲である。光線透過率が70%未満では包装袋とした場合に、内容物が透視しにくいので好ましくない。また光線透過率が90%を超える場合は、包装袋とした場合にガスバリア性能が不足しやすくなるので好ましくない。
【0127】
本発明において得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムにおいて、基層と金属蒸着層の間に被覆層を形成しない場合、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと金属蒸着層または金属酸化物蒸着層との接着強度は0.3N/cm以上であることが好ましく、0.5N/cm以上であることがさらに好ましい。また、基層と金属蒸着層の間に被覆層を形成する場合、二軸延伸ポリプロピレンフィルムと金属蒸着層または金属酸化物蒸着層との接着強度は、0.6N/cm以上であることが好ましく、0.8N/cm以上であることがさらに好ましい。いずれの場合も、接着強度が上記範囲未満であると、蒸着したフィルムをロール状に長尺に巻き取り、二次加工時に巻き出す際に蒸着層が剥ぎ取られ、ガスバリア性能が悪化する場合がある。なお、蒸着層と基層の接着強度の上限は、本発明の効果を奏する限りにおいて特に限定はされないが、5N/cm以下が好ましく、より好ましくは3N/cmである。
【0128】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、金属蒸着膜および金属酸化物蒸着を付設したフィルムのガスバリア性能は、基層厚み15μmで水蒸気透過率が4g/m2/d以下、好ましくは1g/m2/d以下であり、酸素透過率が1000ml/m2/d/MPa以下、好ましくは500ml/m2/d/MPa以下であることが食品包装袋として用いた場合に好ましい。また、基層に被覆層を形成した場合、表面平滑化、金属蒸着層との密着性向上の効果により、その金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムのガスバリア性能は著しく向上し、基層厚み15μmで水蒸気透過率が1g/m2/d以下、好ましくは0.5g/m2/d以下であり、酸素透過率が200ml/m2/d/MPa以下、好ましくは100ml/m2/d/MPa以下であることが食品包装袋として用いた場合に好ましい。
【0129】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィブリルが主に幅方向に配向したフィブリル構造を有する従来の汎用二軸延伸ポリプロピレンフィルムとは異なり、特定のフィブリル構造、すなわち縦フィブリルを有し、該縦フィブリルが加工張力に対して変形しにくいため、従来の汎用二軸延伸ポリプロピレンフィルムに比較して長手方向の剛性が高いことから、フィルム加工時の抗張力性に優れるとともに、長手方向と幅方向の剛性がバランス化していることから、フィルムを薄膜化しても十分な腰を有する。これより、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムのハンドリング性に優れるだけでなく、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋、離型などのフィルム加工時に、加工張力に対する優れた抗張力性を示し、印刷ピッチずれ、フィルムの伸び、シワ入り、膜割れ(クラック)などのベースフィルム起因のトラブルを解消することができる。
【0130】
また、従来の汎用二軸延伸ポリプロピレンフィルムより薄くしても寸法安定性、防湿性などに優れることから、従来より薄くしても寸法安定性、防湿性などのその他の特性を損なうことなく、加工特性を保持することができる。かつ、既存の縦−横逐次二軸延伸機を用いることから、大きな設備投資を必要とせず、上記特性を有するフィルムを低コストで安定製造することができる。
【0131】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを蒸着フィルムとした場合には、ガスバリア性に優れたフィルムとすることができ、加工工程で蒸着膜の膜割れ(クラック)が発生しにくいため、加工後のガスバリア性の悪化を抑制することができる。また、従来の汎用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基層とした蒸着フィルムに比較して、同じ厚みでも長手方向の剛性が高く、ガスバリア性に優れることから、従来の金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムより基層フィルムを薄くしても加工特性、ガスバリア性能を保持することができる。
【0132】
さらに、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびその金属蒸着フィルムは、他のフィルムと複合化して構成体に加工して用いるような場合でも、該構成体の二次加工性やガスバリア性能を向上させることができる。また、一般特性を損なうことなく、本発明のフィルム、もしくは本発明のフィルムと複合化する他のフィルムを適宜薄膜化できるため、廃棄物や資源を削減することができる。
【0133】
以上のことから、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびその金属蒸着フィルムは、包装用、工業用などに好ましく用いることができる。
【0134】
[特性値の測定法]
本発明で用いられている用語および測定法を以下にまとめて説明する。
(1)フィブリル構造観察
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて以下の条件で、画像の縦方向とサンプルの長手方向が一致するようにサンプルを設置して測定を行った。なお、測定に当たっては画像がぼやけないようにゲイン、振幅などの各条件を適宜調節し、それでも画像がぼやけるときにはカンチレバーを適宜交換した。なお、測定はフィルムの両面について行うのが好ましいが、いずれか片面だけについて行ってもよい。
【0135】
装置 :NanoScope III AFM(Digital Instruments社製)
カンチレバー:シリコン単結晶
走査モード :タッピングモード
走査範囲 :1μm×1μm、5μm×5μm、10μm×10μm
走査速度 :0.3Hz
フィルムの場所を変えて1μm角の視野で測定を5回行い、得られた画像のうち4回以上、測定視野の幅方向に平行な2辺を連続して(途中で途切れることなく)通過する幅40nm以上の縦フィブリルが1本以上観察できたフィルムを、縦フィブリルが存在するフィルムとし、○とした。逆に、5回の測定で縦フィブリルの存在を確認できたのが3回以下であるか、縦フィブリルが観察されなかったフィルムを×とした。
【0136】
また、該縦フィブリルの幅は、測定視野の幅方向に平行な2辺の間に幅方向に平行な直線を画像が4分割されるように等間隔に3本引き、これら3本の直線に沿って計測される値の平均値である。この際、枝分かれしていない部分の幅はそのまま、枝分かれしている部分の幅は測定視野の幅方向に平行な直線に沿って全ての枝分かれした部分の幅を合計して計測する。このようにして5回測定を行って縦フィブリルが検出された画像全てについて、縦フィブリルの幅を算出し、これらの平均値を該サンプルの縦フィブリルの幅とした。
【0137】
さらに、上記各5回の測定のうち縦フィブリルが検出された1μm角の画像全てについて、縦フィブリルの本数を計測し、これらの平均値を算出した。該平均値が3本以上であったものをA、2本以上3本未満であったものをB、1本以上2本未満であったものをCとして評価した。
上記手法で、5回の測定で4回以上、幅40nm以上の縦フィブリルが5μm角の画像において幅方向に平行な2辺を通過したものを○○、10μm角の画像において幅方向に平行な2辺を通過したものを○○○として評価した。
【0138】
したがって、例えば1μm角の画像で5回測定を行い、5回とも縦フィブリルが検出され、5つの画像から算出した縦フィブリルの幅の平均値が70nm、本数の平均値が2.8本であり、10μm角画像でも5回中4回縦フィブリルが検出されたフィルムの縦フィブリル評価結果は、縦フィブリルの有無:○○○、縦フィブリルの本数:B、幅:70nmである。
(2)ヤング率、F2値、F5値
25℃でのヤング率、F2値、F5値は、(株)オリエンテック社製フィルム強伸度測定装置(AMF/RTA−100)を用いて、65%RHにて測定した。サンプルを測定方向:15cm、測定方向と直角の方向:1cmのサイズに切り出し、原長50mm、引張り速度300mm/分で伸張して、ヤング率(GPa)は、JIS−Z1702に規定された方法に従い測定した。また、F2値(MPa)、F5値(MPa)は、それぞれ伸度2%、5%に対する試料にかかる応力を測定した。また、80℃などの高温で測定を行う際は、ゴンドー科学(株)社製高低温度恒温槽を装着し、上記と同様の条件にて測定した。
(3)熱収縮率
測定方向を長手方向および幅方向として、フィルムから試長260mm、幅10mmにサンプリングし、原寸(L0)として200mmの位置にマークを入れる。このサンプルの下端に3gの荷重をかけ、120℃の熱風循環オーブン中で15分間熱処理した後室温中に取り出し、サンプルにマークした長さ(L1)を測定する。この際、熱収縮率は次式により求められる。各方向(長手方向、幅方向)について上記操作を行い、長手方向と幅方向の熱収縮率、およびその和を求めた。
【0139】
熱収縮率(%)=100×(L0−L1)/L0
(4)接着強度
金属蒸着された二軸延伸ポリプロピレンフィルムの金属蒸着層の接着強度は、金属蒸着層もしくは金属酸化物蒸着層面に、20μm厚の二軸配向ポリプロピレンフィルム(東レ製S648)をポリウレタン系接着剤を用いて貼り合わせ、40℃で48時間放置後、15mm幅で東洋ボールドウィン製テンシロンを用い、剥離速度10cm/分で90°剥離により測定した。また、被覆層と基層の二軸延伸ポリプロピレンフィルムの接着強度は、金属蒸着前のフィルムについて被覆層面に、上記と同じく20μm厚の二軸配向ポリプロピレンフィルム(東レ製S648)をポリウレタン系接着剤を用いて貼り合わせて上記と同じ方法で測定した。
(5)被覆層厚み、金属蒸着層および金属酸化物状着層の厚み
透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて、フィルム断面構成観察を行い、積層厚みおよび厚み構成を測定した。
(6)固有粘度([η])
135℃のテトラリン中に溶解したポリプロピレンについて、三井東圧化学(株)製のオストワルド粘度計を用いて測定した。
(7)メルトフローレイト(MFR)
JIS K6758に示されるポリプロピレン試験方法(230℃、2.16kgf)に従って測定した。
(8)メソペンタッド分率(mmmm)
ポリプロピレンをo−ジクロロベンゼン−D6に溶解させ、JEOL製JNM−GX270装置を用い、共鳴周波数67.93MHzで13C−NMRを測定した。得られたスペクトルの帰属、およびメソペンタッド分率の計算については、T.Hayashiらが行った方法(Polymer、29、138〜143(1988))に基づき、メチル基由来のスペクトルについて、mmmmピークを21.855ppmとして各ピークの帰属を行い、ピーク面積を求めてメチル基由来全ピーク面積に対する比率を百分率で表示した。詳細な測定条件は以下のとおりである。
【0140】
測定濃度:15〜20wt%
測定溶媒:o−ジクロロベンゼン(90wt%)/ベンゼン−D6(10wt%)
測定温度:120〜130℃
共鳴周波数:67.93MHz
パルス幅:10μ秒(45°パルス)
パルス繰り返し時間:7.091秒
データ点:32K
積算回数:8168
測定モード:ノイズデカップリング
(9)アイソタクチックインデックス(II)
ポリプロピレンを60℃以下の温度のn−ヘプタンで2時間抽出し、ポリプロピレン中の添加物を除去する。その後130℃で2時間真空乾燥する。これから重量W(mg)の試料を取り、ソックスレー抽出器に入れ沸騰n−ヘプタンで12時間抽出する。次に、この試料を取り出し、アセトンで十分洗浄した後、130℃で6時間真空乾燥し、その後常温まで冷却し、重量W’(mg)を測定し、次式で求めた。
【0141】
II=(W’/W)×100(%)
(10)ガラス転移温度(Tg)
Seiko Instruments社製熱分析装置RDC220型に、サンプル重量5mgとしてアルミニウムパンに封入して装填し、20℃/分の速度で昇温し、得られた熱量曲線から同社製熱分析システムSSC5200の内蔵プログラムを用い、ガラス転移の開始点をガラス転移温度(Tg)とした。
(11)臭素価
JIS K−2543−1979に準じて測定した。試料油100g中の不飽和成分に付加される臭素のg数で表される。
(12)中心線平均表面粗さ(Ra)
JIS B0601に従って、触針式表面粗さ計を用いて測定した。なお、小坂研究所(株)製、高精度薄膜段差測定器(型式:ET−30HK)を使用し、触針径円錐型0.5μmR、荷重16mg、カットオフは0.08mmとした。
【0142】
この際、Raは、粗さ曲線からその中心線の方向に測定長さLの部分を抜き取り、この抜き取部分の中心線をX軸、縦方向をY軸とし、粗さ曲線をy=f(x)で表した時、次の式によって求められる値をnmで表したものをいう。
(13)フィルムの表面光沢度
JIS Z8741法に基づき、スガ試験機製ディジタル変角光沢度計UGV−5Dを用い、60°鏡面光沢度として求めた。
(14)粒子の平均粒径
遠心沈降法(堀場製作所製 CAPA500を使用)を用いて測定した体積平均径を平均粒径(μm)とした。
(15)フィルムを構成する各層の厚み
フィルムをミクロトームを用いて切断し、断面を形成させ、該断面を走査型電子顕微鏡(SEM)S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて500〜10,000倍に拡大観察して断面写真を採取する。該断面写真において、各層の厚み方向の長さを計測し、拡大倍率から逆算して各層の厚み(μm)を求めた。ただし、各層の厚みは、断面採取位置を変えて計5回測定を行い、各々について厚みの平均値として算出した。
(16)濡れ張力(mN/m)
ホルムアミドとエチレングリコールモノエチルエーテルとの混合液を用いて、JIS K6768に規定された測定方法に基づいて測定した。
(17)水蒸気透過率
二軸延伸ポリプロピレンフィルム単体については、MOCON/ModernControls社製の水蒸気透過率測定装置PERMATRAN−W3/30を用いて、温度40℃、湿度90%RHの条件で測定した。金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムについては、金属蒸着を行った面に、ポリプロピレン製の粘着フィルム(3M社製、Scotchmark、40μm厚み)を貼り合わせ、上記条件で測定した。
(18)実効延伸倍率
スリット状口金から押し出し、金属ドラムに巻き付けてシート上に冷却固化せしめた未延伸フィルムに、長さ1cm四方の升目をそれぞれの辺がフィルムの長手方向、幅方向に平行になるように刻印した後、延伸・巻き取りを行い、得られたフィルムの升目の長さ(cm)を測定し、これを長手方向・横方向の実効延伸倍率とした。
(19)金属蒸着フィルムの表面光沢
金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを連続式真空蒸着装置に装填し、電子ビーム加熱方式の蒸発源からアルミニウムを蒸発させ、フィルムを連続的に走行させながら、Macbeth社製光学濃度計(TR927)を用いて測定した光学濃度(−log(光線透過率))が1.9〜2.1の範囲でアルミニウムを蒸着した。この金属蒸着フィルムの金属蒸着面をJIS Z8741に基づき測定し、表面光沢を求めた。
(20)酸素透過率
金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムの金属蒸着を行った面に、ポリプロピレン製の粘着フィルム(3M社製、Scotchmark、40μm厚み)を貼り合わせ、MOCON/Modern Controls社製の酸素透過率測定装置Oxtran2/20を用いて、温度23℃、湿度0%RHの条件で測定した。
(21)製膜安定性
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを巻取速度100m/分で24時間製膜した際に、下記の基準で判定した。
【0143】
A級:破れが0〜1回発生。
【0144】
B級:破れが2〜4回発生。
【0145】
C級:破れが5〜8回発生。
【0146】
D級:破れが9回以上発生。
とした。工業的に実用に供することができるのは、A級、B級である。
(22)二次加工性
長さ1000m、厚さ15μmの本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、厚さ20μmの未延伸ポリプロピレンフィルムをラミネートして食品包装用フィルムとした。該フィルムを未延伸ポリプロピレンフィルム層が内側になるようにして、(株)フジキカイ製の縦型ピロー包装機(FUJI FW−77)を用いて、フィルムを筒状に挿入し、製袋した。
【0147】
その際、フィルムにシワや伸びなどが入らず、製袋品の形状がよいものを○とし、フィルムの長手方向のヤング率が低かったり腰が低いために伸びたり、滑りが悪かったり、熱収縮率が大きいためにシワが入ったりして製袋品の形状が悪くなったものを×として評価した。
(23)延伸バリア性
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルム金属蒸着フィルムとした場合の、二次加工時の張力によるガスバリア性悪化(抗張力)を評価するため、金属蒸着を行った面に、ポリプロピレン製の粘着フィルム(3M社製、Scotchmark、40μm厚み)を貼り合わせ、長手方向に50MPaの応力を付加した。1時間放置後、上記と同じ方法で酸素透過率と水蒸気透過率を測定し、張力付加後のガスバリア性悪化率が20%未満を○とし、20%以上を×として評価した。
(24)耐クラック性
上記(23)項において、張力負荷後の金属蒸着フィルムの金属蒸着層を光学顕微鏡で観察した際に、金属蒸着フィルムの金属層にクラックが全面にスジ状に発生したものを×、クラックが(全面には)発生していないものを○として評価した。
【0148】
【実施例】
本発明を実施例に基づいて説明する。なお、所望の厚みのフィルムを得るためには、特に断りのない限り、押出機の回転数と冷却ドラムの周速を所定の値に調節した。
【0149】
実施例1
メルトフローレイト(MFR)が2.3g/10分、メソペンタッド分率(mmmm)が92%、アイソタクチックインデックス(II)が96%である公知のポリプロピレン92重量%に、長鎖分岐を有するポリプロピレン(LB−PP)として、Basell社製ポリプロピレンPF−814を5重量%、ポリプロピレンに相溶して、延伸助剤として、極性基を実質的に含まない石油樹脂である、Tg80℃、臭素価3cg/g、水添率99%のポリジシクロペンタジエン3重量%をそれぞれ添加混合した樹脂100重量部に、架橋有機粒子として平均粒径2μmのポリメタクリル酸系重合体の架橋粒子(架橋PMMA)を0.15重量部添加し、帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステルとアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルを1:1の割合に混合して0.8重量部添加し、二軸押出機に供給して270℃でガット状に押出し、20℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを一軸押出機に供給して280℃で溶融させ、濾過フィルターを経た後にスリット状口金から押出し、30℃の金属ドラムに巻き付けてシート状に成形した。
【0150】
このシートを136℃に保たれたロールに通して予熱し、139℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に8倍延伸して直ちに室温に冷却する。引き続きこの延伸フィルムをテンターに導入して163℃で予熱し、160℃で幅方向に8倍に延伸し、次いで幅方向に8%の弛緩を与えつつ、160℃で熱固定した後、冷却して巻き取り、厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0151】
得られたフィルムの原料組成とフィルム特性の評価結果をまとめてそれぞれ表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0152】
実施例2
実施例1において、ポリプロピレンに相溶して、延伸助剤として、極性基を実質的に含まないテルペン樹脂である、Tg75℃、臭素価4cg/g、水添率99%のβ−ピネンを10重量%混合し、長手方向に8倍、幅方向に7倍延伸した以外は同様の条件で作製した以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを実施例2とした。
【0153】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0154】
実施例3
実施例2において、長手方向の延伸倍率を10倍に上げた以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを実施例3とした。
【0155】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0156】
実施例4
実施例1において、LB−PPとして、Borealis社製ポリプロピレンWB130HMSを用いた以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを実施例4とした。
【0157】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0158】
実施例5
実施例3において、LB−PPの添加量を20重量%とし、長手方向に10倍、幅方向に6倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを実施例5とした。
【0159】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0160】
実施例6
実施例1において、MFRが3.5g/10分、mmmmが97.5%、IIが98%である公知のポリプロピレンを用いて、長手方向に8倍、幅方向に9倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを実施例6とした。
【0161】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0162】
実施例7
実施例1において、冷却ドラムの温度を70℃に上げて未延伸シートを得た以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを実施例7とした。
【0163】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0164】
実施例8
コア層を形成する樹脂として、MFRが2.3g/10分、mmmmが92%、IIが96%である公知のポリプロピレン92重量%に、LB−PPとしてBasell社製ポリプロピレンPF−814を5重量%、ポリプロピレンに相溶して、延伸助剤として、極性基を実質的に含まないテルペン樹脂である、Tg75℃、臭素価3cg/g、水添率99%の水添β−ジペンテン3重量%をそれぞれ添加混合し、二軸押出機に供給して260℃でガット状に押出し、15℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを一軸押出機に供給して270℃で溶融させた。フィルム表層を形成する樹脂としては、エチレン含有量1重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体100重量部に、架橋有機粒子として平均粒径が2μmの架橋シリコン粒子を0.1重量部添加し、二軸押出機に供給して260℃でガット状に押出し、15℃の水槽に通して冷却してチップカッターで3mm長にカットした後、100℃で2時間乾燥したチップを別の一軸押出機に供給して280℃で溶融させた。それぞれ別々の押出機に供給して上記温度で溶融させた樹脂を濾過フィルターを通過させた後、3層積層口金内で二軸延伸後の厚み構成が表層/コア層/表層=1/13/1μmとなるように合流せしめ、スリット状口金から押し出し、30℃の金属ドラムに巻き付けてシート状に成形した。
【0165】
このシートを133℃に保たれたロールに通して予熱し、136℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に8倍延伸して直ちに室温に冷却する。引き続きこの延伸フィルムをテンターに導入して165℃で予熱し、162℃で幅方向に8倍に延伸し、次いで幅方向に8%の弛緩を与えつつ、160℃で熱固定した後、冷却して巻き取り、厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0166】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0167】
実施例9
実施例8において、コア層を形成する樹脂として、公知のポリプロピレン70重量%に、LB−PPを10重量%、水添β−ジペンテンを20重量%添加混合した樹脂組成を用い、長手方向に11倍、幅方向に6倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを実施例9とした。
【0168】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0169】
実施例10
実施例2において、長手方向の延伸を2段に分けて、135℃で予熱した後、1段目では137℃で3.8倍、2段目では140℃で2.1倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを実施例10とした。
【0170】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するため長手方向のヤング率が高く、抗張力性に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。
【0171】
比較例1
メルトフローレート(MFR)が2.3g/10分、メソペンタッド分率(mmmm)が92%、アイソタクチックインデックス(II)が96%である、公知のポリプロピレン単体100重量部に、架橋有機粒子として平均粒径2μmのポリメタクリル酸系重合体の架橋粒子(架橋PMMA)を0.15重量部添加し、帯電防止剤としてグリセリン脂肪酸エステルとアルキルジエタノールアミン脂肪酸エステルを1:1の割合に混合して0.8重量部添加したものを一軸押出機に供給して280℃で溶融させ、濾過フィルターを経た後にスリット状口金から押出し、30℃の金属ドラムに巻き付けてシート状に成形した。
【0172】
このシートを132℃に保たれたロールに通して予熱し、137℃に保ち周速差を設けたロール間に通し、長手方向に5倍延伸して直ちに室温に冷却する。引き続きこの延伸フィルムをテンターに導入して165℃で予熱し、160℃で幅方向に10倍に延伸し、次いで幅方向に8%の弛緩を与えつつ、160℃で熱固定をした後、冷却して巻き取った厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0173】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有さないため長手方向のヤング率が低く、抗張力性が不十分であり、防湿性、二次加工性に劣っていた。
【0174】
比較例2
比較例1において、長手方向の延伸倍率を6倍に上げた以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例2とした。
【0175】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、横延伸の際に破れが散発し、全体として製膜性が悪く、工業的に生産できないフィルムであった。
【0176】
比較例3
比較例2において、長手方向の延伸倍率をさらに7倍に上げた以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例3とした。
【0177】
結果を表1、2に示す。横延伸の際に破れが多発したため、満足なフィルムが得られなかった。
【0178】
比較例4
比較例1において、基層のポリプロピレン樹脂に帯電防止剤と架橋PMMA粒子を添加せず、フィルム表層を形成する樹脂としてエチレン含有量1重量%のエチレン・プロピレンランダム共重合体100重量部に、架橋有機粒子として平均粒径が2μmの架橋スチレン粒子を0.1重量部添加した樹脂組成を用い、二軸延伸後の厚み構成を表層/基層/表層=1/13/1μmとした以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例4とした。
【0179】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有さないため長手方向のヤング率が低く、抗張力性が不十分であり、防湿性、二次加工性に劣っていた。
【0180】
比較例5
比較例1において、ポリプロピレン単体90重量%に、ポリプロピレンに相溶して、延伸助剤として、極性基を実質的に含まないテルペン樹脂である、Tg75℃、臭素価4cg/g、水添率99%のβ−ピネンを10重量%混合し、長手方向に5倍、幅方向に9倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例5とした。
【0181】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有さないため長手方向のヤング率が低く、抗張力性が不十分であり、二次加工性に劣っていた。
【0182】
比較例6
比較例5において、長手方向の延伸倍率を8倍に上げ、幅方向に7倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例6とした。
【0183】
結果を表1、2に示す。横延伸の際に破れが散発し、十分な長さのフィルムを採取することができず、工業的に生産できないフィルムであった。
【0184】
比較例7
比較例6において、長手方向の延伸倍率をさらに9倍に上げた以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレフィルムを比較例7とした。
【0185】
結果を表1、2に示す。横延伸の際に破れが多発したため、満足なフィルムが得られなかった。
【0186】
比較例8
比較例1において、冷却ドラムの温度を70℃に上げて未延伸シートを得た以外は同様の条件で作成した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例8とした。
【0187】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有さないため長手方向のヤング率が低く、抗張力性が不十分であり、防湿性、二次加工性に劣っていた。
【0188】
比較例9
実施例1において、LB−PP単体を用いて、長手方向に5倍、幅方向に12倍延伸した以外は同様の条件で作製した厚さ15μmの二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例9とした。
【0189】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有さないため長手方向のヤング率が低く、抗張力性が不十分となり、二次加工性に劣っていた。
【0190】
比較例10
比較例1において、長手方向に8倍延伸し、冷却後そのまま巻き取った厚さ15μmの縦一軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例10とした。
【0191】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、縦フィブリルを有するがそれらを連結する網目状のフィブリルがみられなかった。このため、長手方向に裂けやすく、フィルムのハンドリング性に著しく劣っていることから、二次加工性に劣っていた。
【0192】
比較例11
比較例1において、得られた未延伸シートを縦・横それぞれ10×10cmに切り出し、(株)東洋精機製パンタグラフ方式同時二軸延伸装置で165℃の温度で90秒間予熱し、長手方向に7倍、幅方向に7倍に同時に延伸した後、得られたフィルムを金枠に張り付け、160℃に加熱した熱風オーブンを用いて幅方向に8%の弛緩を与えつつ60秒間熱処理し、その後室温に取り出して冷却した。
【0193】
結果を表1、2に示す。得られたフィルムは、フィブリル構造自体は等方的であるものの、縦フィブリルが観察されなかった。このため、長手方向の剛性が低く、抗張力性が不十分となり、二次加工性に劣っていた。
【0194】
【表1】
【0195】
【表2】
【0196】
本発明で得られたフィブリル構造として、代表して実施例3および8のフィルムのAFM画像(それぞれ図1、図2)を示す。図より、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、一辺が長手方向に平行な1μm角のフィルム表面において、幅横行に平行な2辺を通過する幅40nm以上の縦フィブリルを有する。また、表1、2より、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムでは、この縦フィブリルが応力に対して変形しにくいことから、長手方向のヤング率が高く、抗張力性に非常に優れるとともに寸法安定性、防湿性、二次加工性に優れていた。このような優れた特性を有するフィルムを汎用の縦−横逐次二軸延伸機を用いて、破れなどの工程不良なく、安定して製膜することができた。また、製膜条件や原料の選定によりフィブリル構造を制御することができた。一方、本発明において好ましくないフィブリル構造として、代表として比較例1のフィルムのAFM画像を示す(図3)。図より、フィブリルは主に横方向に配向しており、該フィルムは縦フィブリルを有さない。このように、比較例に示す従来のフィルムは、いずれも縦フィブリルを有さず、応力に対してフィブリル構造が変形しやすいため、二次加工性に劣っていた。また、工業上著しく生産性を落とさない範囲で製膜条件を変更しても縦フィブリルは得られなかった。
【0197】
実施例11
実施例8において、二軸延伸後に引き続きフィルム片面に炭酸ガス濃度15%、窒素ガス濃度85%の雰囲気中でコロナ放電処理を行い、表面濡れ張力を45mN/mとして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0198】
次に、このフィルムを真空蒸着機内に入れて走行させ、加熱溶融し蒸発させたアルミニウム金属を該コロナ放電処理面に厚さ45nmに凝集堆積させ、金属蒸着層を付設し、金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0199】
得られた金属蒸着フィルムの評価結果をまとめて表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ガスバリア性に優れていた。また、応力付加後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性能に大きな変動はみられなかった。
【0200】
実施例12
実施例3において、帯電防止剤と架橋PMMA粒子を添加せず、平均粒径2μmの架橋シリコン粒子を0.1重量%添加した以外は上記実施例11と同様にして金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0201】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ガスバリア性に優れていた。また、応力付加後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性能に大きな変動はみられなかった。
【0202】
実施例13
実施例9において、上記実施例11と同様にして金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0203】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ガスバリア性に優れていた。また、応力付加後も金属蒸着に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性能に大きな変動はみられなかった。
【0204】
実施例14
実施例8において、長手方向の延伸後、一軸延伸フィルムの表面に大気中でコロナ放電処理を施し濡れ張力を37mN/mとして、その処理面上に被覆層としてポリエステルウレタン系水分散性樹脂として“ハイドラン”AP−40F(大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度30%)100重量部と水溶性の有機溶剤としてN−メチルピロリドンを15重量部混合した塗剤に、架橋剤としてメラミン化合物“ベッカミン”APM(大日本インキ化学工業(株)製)を5重量部加え、さらに架橋促進剤として水溶性の酸性化合物の“キャタリスト”PTS(大日本インキ化学工業(株)製)を2重量部加えた混合塗剤をコーティングバーにてコートし、引き続き実施例8と同様に幅方向に延伸して二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。該フィルムの厚み構成は、被覆層/フィルム層=0.2μm/15μmであった。
【0205】
次に、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムを真空蒸着装置内に入れて走行させ、加熱溶融して蒸発させたアルミニウム金属を該被覆層面に厚さ45nmに凝集堆積させ、金属蒸着層を付設し、金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0206】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ガスバリア性に優れていた。また、応力付加後も金属蒸着層に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性能に大きな変動はみられなかった。
【0207】
実施例15
実施例14において、被覆層をポリエステルウレタン系水分散性樹脂として“ハイドラン”AP−40F(大日本インキ化学工業(株)製、固形分濃度30%)100重量部に、架橋剤としてメラミン化合物“ベッカミン”APM(大日本インキ化学工業(株)製)を5重量部加え、さらに架橋促進剤として水溶性の酸性化合物の“キャタリスト”PTS(大日本インキ化学工業(株)製)を2重量部加えた混合塗剤をコーティングバーにてコートした以外は実施例14と同様にして、被覆層厚み0.2μmとした二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0208】
次に、上記二軸延伸ポリプロピレンフィルムに、実施例14と同様にしてアルミニウム蒸着層を付設し、金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0209】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ガスバリア性に優れていた。また、応力付加後も金属蒸着に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性能に大きな変動はみられなかった。
【0210】
実施例16
実施例3において、帯電防止剤を添加せず、架橋PMMA粒子の添加量を0.05重量%として得られた二軸延伸ポリプロピレンフィルムの表層面に大気中でコロナ放電処理を施し濡れ張力を37mN/mとして、その処理面上に被覆層として実施例14の混合塗剤をオフラインのグラビアコーターにて塗布して、被覆層厚み0.2μmを形成して巻き取り、二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0211】
また、実施例14と同様にアルミニウム蒸着を行い、金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0212】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ガスバリア性に優れていた。また、応力付加後も金属蒸着に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性能に大きな変動はみられなかった。
【0213】
実施例17
実施例9において、実施例14と同様にして被覆層をコートした以外は同様にして二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0214】
また、実施例14と同様にアルミニウム蒸着を行い、金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0215】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、ガスバリア性に優れていた。また、応力付加後も金属蒸着に目立ったクラックは観察されず、ガスバリア性能に大きな変動はみられなかった。
【0216】
比較例12
比較例4において、実施例11と同様にして金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0217】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、縦フィブリルを有さないため長手方向のヤング率が低く、抗張力性が不十分であるため、応力付加に伴い金属蒸着層には無数のスジ状のクラックが発生した。このため、応力付加後のガスバリア性能は大きく悪化した。
【0218】
比較例13
比較例5において、帯電防止剤と架橋PMMA粒子を添加せず、平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子を0.1重量部添加した以外は実施例11と同様にして金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0219】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、縦フィブリルを有さないため長手方向のヤング率が低く、抗張力性が不十分であるため、応力付加に伴い金属蒸着層には無数のスジ状のクラックが発生した。このため、応力付加後のガスバリア性能は大きく悪化した。
【0220】
比較例14
比較例4において、実施例14と同様にして金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0221】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムのガスバリア性能は、被覆層を設けていることにより向上した。しかしながら、該金属蒸着フィルムは縦フィブリルを有さないため長手方向のヤング率が低く、抗張力性が不十分であるため、応力付加に伴い金属蒸着層には無数のスジ状のクラックが発生した。このため、応力付加後のガスバリア性能は大きく悪化した。
【0222】
比較例15
比較例5において、帯電防止剤と架橋PMMA粒子を添加せず、平均粒径2μmの架橋ポリスチレン粒子を0.1重量部添加した以外は実施例14と同様にして金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0223】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムのガスバリア性能は、被覆層を設けていることにより向上した。しかしながら、該金属蒸着フィルムは縦フィブリルを有さないため長手方向のヤング率が低く、抗張力性が不十分であるため、応力付加に伴い金属蒸着層には無数のスジ状のクラックが発生した。このため、応力付加後のガスバリア性能は大きく悪化した。
【0224】
比較例16
実施例14において、被覆層厚みを0.03μmとした以外は同様の条件で作製した金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例15とした。
【0225】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、被覆層厚みが薄く均一塗布できずに表面の凹凸により金属蒸着層にピンホールが形成されるためか、基層フィルムと被覆層との接着強度が低く(このため金属蒸着層の接着強度は測定不能)、ガスバリア性向上効果がみられなかった。また、応力付加に伴い被覆層から金属蒸着層が剥がれ、ガスバリア性能も大きく悪化した。
【0226】
比較例17
実施例14において、被覆層厚みを4μmとした以外は同様の条件で作製した金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを比較例16とした。
【0227】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、被覆層厚みが厚いため被覆層の硬化が不十分となり、巻き取ったフィルムがブロッキングし、フィルム表層との接着強度も弱く(このため金属蒸着層の接着強度は測定不能)、ガスバリア性向上効果がみられなかった。また、応力付加に伴い被覆層から金属蒸着層が剥がれ、ガスバリア性能も大きく悪化した。
【0228】
比較例18
実施例14の被覆層用塗剤として、テレフタル酸0.12mol、イソフタル酸0.84mol及びジエチレングリコール0.33mol、ネオペンチルグリコール0.65molを触媒下、190〜220℃で溜出する水を除去しながら6時間反応させ、その後250℃減圧下にて1時間縮合反応させてプレポリマーを得、次に5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフルフリル)−3−メチル−3−シクロヘキセン1,2−ジカルボン酸無水物0.13molを仕込み、140℃、3時間選択的モノエステル化反応し、ポリマーを得た。さらに、このポリマーをアンモニアで中和し、ポリエステル樹脂を得た。次に本ポリエステル樹脂の有効成分量100重量部当たりに、架橋剤としてイソシアネート化合物のヘキサメチレンジイソシネートを10重量部を加え、さらに架橋触媒として“キャタリスト”PTS(大日本インキ化学工業(株)製)を1.5重量部を加えて混合した塗剤を用いた以外は、実施例14と同様にして、金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムを得た。
【0229】
結果を表3に示す。得られた金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムと被覆層との接着強度が低く(このため金属蒸着層の接着強度は測定不能)、応力付加に伴い被覆層から金属蒸着層が剥がれ、ガスバリア性能も大きく悪化した。
【0230】
【表3】
【0231】
表3より、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、縦フィブリルを有し、この縦フィブリルが応力に対して変形しにくいため、長手方向の剛性が高く、金属蒸着フィルムの基層として用いた際に、応力を付加しても従来の金属蒸着フィルムのようなガスバリア性の著しい悪化はみられなかった。また、基層と蒸着層の間に被覆層を設けていることにより、さらにガスバリア性を高めることができた。
【0232】
【発明の効果】
本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィブリルが主に幅方向に配向したフィブリル構造を有する従来の汎用二軸延伸ポリプロピレンフィルムとは異なり、特定のフィブリル構造すなわち縦フィブリルを有し、該縦フィブリルが加工張力に対して変形しにくいため、従来の汎用二軸延伸ポリプロピレンフィルムに比較して長手方向の剛性が高いことから、フィルム加工時の抗張力性に優れるとともに、長手方向と幅方向の剛性がバランス化していることから、フィルムを薄膜化しても十分な腰を有する。これより、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムは、フィルムのハンドリング性に優れるだけでなく、印刷、ラミネート、コーティング、蒸着、製袋などのフィルム加工時に、加工張力に対する優れた抗張力性を示し、印刷ピッチずれ、フィルムの伸び、シワ入り、膜割れ(クラック)などのベースフィルム起因のトラブルを解消することができる。
【0233】
また、従来の汎用二軸延伸ポリプロピレンフィルムより薄くしても寸法安定性、防湿性などに優れることから、従来より薄くしても寸法安定性、防湿性などのその他の特性を損なうことなく、加工特性を保持することができる。かつ、既存の縦−横逐次二軸延伸機を用いることから、大きな設備投資を必要とせず、上記特性を持ったフィルムを低コストで安定製造することができる。
【0234】
また、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを蒸着フィルムとした場合には、ガスバリア性に優れたフィルムとすることができ、加工工程で蒸着膜の膜割れ(クラック)が発生しにくいため、加工後のガスバリア性の悪化を抑制することができる。また、従来の汎用の二軸延伸ポリプロピレンフィルムを基層とした蒸着フィルムに比較して、同じ厚みでも長手方向の剛性が高く、ガスバリア性に優れることから、従来の金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルムより基層フィルムを薄くしても加工特性、ガスバリア性能を保持することができる。
【0235】
さらに、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびその金属蒸着フィルムは、他のフィルムと複合化して構成体に加工して用いるような場合でも、該構成体の二次加工性やガスバリア性能を向上させることができる。また、一般特性を損なうことなく、本発明のフィルム、もしくは本発明のフィルムと複合化する他のフィルムを適宜薄膜化できるため、廃棄物や資源を削減することができる。
【0236】
以上のことから、本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムおよびその金属蒸着フィルムは、包装用、工業用などに好ましく用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムのAFM画像により観察されるフィブリル構造の一例である。
【図2】本発明の二軸延伸ポリプロピレンフィルムのAFM画像により観察されたフィブリル構造の他の例である。
【図3】従来の二軸延伸ポリプロピレンフィルムのAFM画像により観察されたフィブリル構造の一例である。
Claims (7)
- 一辺が長手方向に平行な1μm角のフィルム表面において、幅方向に平行な2辺を通過する幅40nm以上の縦フィブリルが存在する二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
- 25℃での長手方向のヤング率(Y(MD))が2.5GPa以上である請求項1に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
- 長手方向のヤング率(Y(MD))と幅方向のヤング率(Y(TD))により次式(1)で表されるm値
m=Y(MD)/(Y(MD)+Y(TD)) (1)
が25℃において、0.4〜0.7である請求項1または2に記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。 - 25℃での長手方向のヤング率(Y(MD))と120℃での長手方向の熱収縮率(S(MD))の関係が、次式(2)を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
Y(MD)≧S(MD)−1 (2) - 請求項1〜4のいずれかに記載の二軸延伸ポリプロピレンフィルムからなる基層の少なくとも片面に金属蒸着層を設けていることを特徴とする金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
- 基層と金属蒸着層の接着強度が0.3N/cm以上であることを特徴とする請求項5に記載の金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
- 基層と金属蒸着層の間に厚さが0.05〜2μmのポリエステルウレタン系樹脂からなる被覆層を設けていることを特徴とする請求項5または6に記載の金属蒸着二軸延伸ポリプロピレンフィルム。
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