JP2004157026A - エンジン性能測定方法および装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】エンジンマップ取得に要する時間を短縮させる。
【解決手段】エンジン10のスロットル開度を変化させるスロットルアクチュエータ12と、エンジン10の回転数を測定する回転センサ17と、前記エンジン10に負荷を切り離し自在に接続するクラッチ14と、該クラッチ14により前記エンジン10を負荷から切り離した状態でスロットル開度をスロットル閉状態から所定のスロットル開度にステップ的に変化させる処理を複数のスロットル開度に対して実行する運転パターン発生部11と、スロットル開度をステップ的に変化させたときのエンジン回転数の変化と該エンジン慣性量とからエンジン発生トルクを演算する演算部13とを備える。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エンジンの特性を測定するエンジン性能測定方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、エンジンの様々な性能測定、例えば近年の関心事項としては、回転数とトルクが時々刻々と変化するトランジェントモードにおける排気ガスの出かた等の試験を行なうために、性能測定を行なおうとするエンジンを実験室等に持ち込んでベンチレーション上でダイナモに連結し、そのエンジンのスロットルの開度やダイナモのトルクあるいは回転数を、たとえば上記のトランジェントモードに適合するように変化させながら、そのエンジンの様々な性能や特性を計測することが行なわれている。このために、回転数−エンジン発生トルク−スロットル開度のエンジンマップが利用されている。
【0003】
このように、エンジンマップを利用してエンジン性能を試験する、自動運転時のスロットル予測制御装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、作成されたエンジンマップに基づく予測制御において、ファジィ補正制御部を備えることでトルク偏差が生じた場合の回転速度の乱れを少なくするスロットル開度予測制御装置がある(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
上記のようなエンジンマップの作成方法としては、図8に示すような、いわゆるステップ学習法が用いられている。すなわち、図8(a)に示すように、ダイナモによりエンジン回転数を指定回転数(例えば、1000r/min)に合わせた後、図8(b)に示すように、スロットル開度(θ)を所定時間Tごとに数%ずつ増加させる。これにより、図8(c)に示すように、エンジントルクもスロットル開度に応じて変化する。この変化における変曲点Q1とQ2をサーチし、この変曲点Q1とQ2間を適宜数に分割し、各点N1、N2、N3…Nnでのエンジン回転数−エンジン発生トルク−スロットル開度のエンジンマップを記憶する。
【0006】
次にエンジン回転数を別の指定回転数(例えば、2000r/min)に合わせた後、同様にスロットル開度を数%ずつ増加させて各点N1、N2、N3…Nnでのエンジン回転数−エンジン発生トルク−スロットル開度のエンジンマップを記憶する。このようにして、指定回転数を何回も(約10回程度)変え、各々のエンジンマップを取得することによりステップ学習を完了する。このようなステップ学習法により取得されたエンジン回転数−エンジン発生トルク−スロットル開度の関係を記述したグラフ(エンジンマップ)を作成する。
【0007】
【特許文献1】
特開平3−9238号公報(第299〜300頁、第1図)。
【特許文献2】
特開平5−288647号公報(第1頁、図1)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のようなステップ学習による性能測定方法では、1つのエンジン回転数での測定に3分程度要するため、10回で30分程度の時間を要することになり、エンジンマップ取得の作業能率が悪いという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑み、エンジンマップ取得に要する時間を短縮させたエンジン性能測定方法および装置を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成する本発明のエンジン性能測定方法は、エンジンを回転させてエンジン回転数−エンジン発生トルク−スロットル開度のエンジンマップを作成するエンジン性能測定方法において、
前記エンジンを無負荷状態に置いてスロットル開度をスロットル閉状態から所定のスロットル開度にステップ的に変化させて時間的に変化するエンジン回転数を測定する処理を複数のスロットル開度に対して行う第1ステップと、
スロットル開度をステップ的に変化させたときのエンジン回転数の変化と該エンジンの慣性量とからエンジン発生トルクを演算する第2ステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明のエンジン性能測定方法では、クラッチを切り、アイドリング状態にあるエンジンに対し、スロットル開度をステップ的に変化させ、単位時間当たりのエンジン回転数の変化を測定する。この操作を複数のスロットル開度に対して行う。そして、スロットル開度をステップ的に変化させたときのエンジン回転数の変化とそのエンジンの持つ慣性量とからエンジン発生トルクを演算する。このように、エンジンを無負荷状態に置いての空ぶかし学習法による測定であるため、1つのスロットル開度に対して数秒ないし数十秒で計測完了し、全体のスロットル開度に対して約3分程度で測定完了する。
【0012】
前記第2ステップでは、次式を用いてエンジン発生トルクを演算することが好ましい。
【0013】
【数2】
Figure 2004157026
【0014】
但し、
eg:エンジン発生トルク[Nm]
eg:エンジン慣性量[kgm
ω:エンジンの角速度[rad/s]
前記第1ステップでは、エンジンの回転数が該エンジンの所定の最高回転数よりも低い回転数で安定する低スロットル開度に関しては、スロットル閉状態から所定の低スロットル開度にステップ的に変化させて時間的に変化するエンジン回転数を測定すると共に、スロットル全開状態から該所定の低スロットル開度にステップ的に変化させて時間的に変化する回転数を測定することが好ましい。これにより、低い回転数で安定する低スロットル開度に対しても正確なエンジンマップデータを取得することができる。
【0015】
本発明のエンジン性能測定装置は、エンジンを回転させて該エンジン回転数−エンジン発生トルク−スロットル開度のエンジンマップを作成するエンジン性能測定装置において、
前記エンジンのスロットル開度を変化させるスロットルアクチュエータと、
前記エンジンの回転数を測定する回転センサと、
前記エンジンに負荷を切り離し自在に接続するクラッチと、
前記クラッチにより前記エンジンを負荷から切り離した状態でスロットル開度をスロットル閉状態から所定のスロットル開度にステップ的に変化させる処理を複数のスロットル開度に対して実行する運転パターン発生部と、
スロットル開度をステップ的に変化させたときのエンジン回転数の変化と該エンジンの慣性量とからエンジン発生トルクを演算する演算部とを備えたことを特徴とする。
【0016】
本発明のエンジン性能測定装置では、クラッチを負荷から切り離した状態でエンジンを空ぶかしし、運転パターン発生部の指令に基づいてスロットルアクチェータがスロットル開度をスロットル閉状態から所定のスロットル開度にステップ的に変化させる処理を複数のスロットル開度に対して実行し、そのスロットル開度におけるエンジンの回転数を回転センサで検出し、演算部でスロットル開度をステップ的に変化させたときのエンジン回転数の変化と該エンジンの慣性量とからエンジン発生トルクを演算する。本発明の装置では、エンジンを無負荷状態においての空ぶかし学習法による測定装置であるため、1つのスロットル開度に対して数秒ないし数十秒で計測完了し、全体のスロットル開度に対して約3分程度で測定完了する。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1は、本実施形態のエンジン性能測定装置を示すブロック図である。
【0019】
同図に示すように、このエンジン性能測定装置は、エンジン10とエンジン10のスロットル開度を変化させるスロットルアクチュエータ12と、エンジン10の回転数を検出する回転センサ17と、運転パターン発生部11と、演算部13と、クラッチ14とを備えている。
【0020】
運転パターン発生部11は、スロットル開度をスロットル閉状態から所定のスロットル開度にステップ的に変化させる処理を複数のスロットル開度に対して実行するものである。演算部13はスロットル開度をステップ的に変化させたときのエンジン回転数の変化と該エンジンの慣性量とからエンジン発生トルクを演算するものである。
【0021】
試験対象となるエンジン10は、切り離し自在のクラッチ14および出力軸15を介してダイナモ16等の負荷に接続されている。なお、本発明においては、ダイナモ16は使用しないため、クラッチ14は常に切り離し(断)の状態にしている。
【0022】
本発明のエンジン性能測定方法は、エンジンに負荷をかけない空ぶかし学習法で行われる。この方法では、予めエンジン慣性[kgm]を入手しておく。計測に当たっては、エンジン10の暖機を行った後、空ぶかしによるアイドリング運転の状態で行う。
【0023】
図2は、本実施形態の空ぶかし学習法による性能測定のエンジン運転イメージ図であって、横軸(時間軸)を短縮して描いている。図3は、所定のスロットル開度のときのエンジン回転数(r/min)の変化を示している。
【0024】
先ず、スロットル開度20%におけるエンジン回転数−エンジン発生トルクのデータを取得する場合について説明する(スロットル開度0%および10%については後述)。
【0025】
スロットル開度0%(エンジンはアイドリング状態にある)からスロットル開度20%にステップ的にスロットル開度を変化させる。すなわち、図2にθ2で示すように、ごく短時間スロットル開度を20%に開けたあとすぐ0%に復帰させる。これにより、図3に示すように、単位時間当たりのエンジン回転数(r/min)は、曲線L1で示すように、最初はなだらかにその後は急激に上昇し、最終的にそのエンジンの持つ最高回転数(例えば8000r/min)になる。このアイドリング状態から最高回転数に至る間の曲線L1の任意の点P1、P2、P3・・・Pn(nは任意の整数、nが多いほど精度が高くなる)での角速度ωを、回転センサ17の出力に基づいて演算部13で算出する。さらに、該演算部13で各点P1〜Pnにおける微分量dω/dtを算出すると共に、エンジン発生トルクTeg[Nm]を算出する。
【0026】
通常、クラッチ14を入れてダイナモ16を接続したとすると、次式が成立する。
【0027】
【数3】
Figure 2004157026
【0028】
ここに、
eg:エンジン発生トルク [Nm]
eg:エンジン慣性量[kgm
CL:クラッチ伝達トルク[Nm]
ω:エンジンの角速度[rad/s]
ところが、本発明では、クラッチ14は常に断であるからTCL=0である。よって次式が成立する。
【0029】
【数4】
Figure 2004157026
【0030】
演算部13では、上記式によりエンジン発生トルクTegを算出する。
【0031】
このようにして算出した、スロットル開度20%におけるエンジン回転数(r/min)とエンジン発生トルク(Nm)と関係を、図6に示すように、エンジンマップテーブルとして作成する。
【0032】
次に、ある程度時間をおいて(例えば10秒)、今度はスロットル開度をθ3に示すように、ステップ的に30%に開けると、図3に示す曲線L2が得られ、同様にしてスロットル開度30%におけるエンジン発生トルクTegを演算する。以後、同様の操作でスロットル開度θ4(40%)、50%・・・100%までのエンジン発生トルクTegを演算し、これらの各スロットル開度におけるエンジン回転数(r/min)とエンジン発生トルク(Nm)と関係についても、図6と同様のエンジンマップテーブルを作成する。
【0033】
スロットル開度が0%であるエンジンのアイドリング時、あるいは10%程度の低い開度の場合は、エンジンは低回転で安定してしまい、それ以上の高回転域での回転数−エンジン発生トルク−スロットル開度のエンジンマップの情報が欠落するおそれがある。これに対処すするため、以下の方法でデータを取得する。
【0034】
スロットル開度0%でエンジンアイドリング時のデータを取得するには、図2にθ0で示すように、スロットル開度をいきなり100%に全開した後全閉に復帰させる。これにより、図4に示すように、エンジン回転数(r/min)が曲線L0で示すように、最高回転数になった後、元のアイドリングに復帰する。この最高回転数からアイドリング状態に移行する下りの曲線L0’で任意の点P1、P2、P3・・・Pnでの角加速度dω/dtを、演算部13で算出する。このようにして得られた角加速度dω/dtからエンジン発生トルクを演算し、スロットル開度0%のデータとする。
【0035】
また、スロットル開度10%でエンジンが低速回転で安定した場合は、次のようにしてデータを取得する。
【0036】
スロットル開度10%におけるデータを得るには、図2にθ1で示すように、スロットル開度をステップ的の10%に開くと、図5に示すように低速回転N1で安定しようとするが、このときいきなり100%に全開した後10%に復帰させる。これにより、図5に示すように、エンジン回転数(r/min)はアイドリングから低速回転数N1に至る曲線L01と最高回転数になった後低速回転数N1に至る下り曲線L01’が得られる。この曲線L01とL01’で点P1、P2、P3・・・Pnでの角加速度dω/dtを、演算部13で算出する。このようにして得られた角加速度dω/dtからエンジン発生トルクを演算し、スロットル開度10%のデータとする。
【0037】
図7は、上記のようにして取得し、図6に例示したような、各スロットル開度におけるエンジン回転数−エンジン発生トルクのエンジンマップテーブルを記述したエンジンマップの一例を示す図である。同図に示すように、各スロットル開度θ0、θ1、θ2、θ3、θ4(ここでは、0、10、20、30、40%)におけるエンジン回転数−エンジン発生トルクの関係を示している。
【0038】
以上のように、本実施形態のエンジン性能測定方法では、無負荷での空ぶかし学習による計測であるため、1つのスロットル開度に対して数秒ないし数十秒で計測完了し、全体のスロットル開度に対して約3分程度で測定完了する。これは、従来のステップ学習法による1ステップの時間とほぼ同じであり、大幅に測定時間が短縮される。また、実際に得られたエンジンマップもステップ学習法によるものと大差なく、高精度のものが得られた。
【0039】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、従来のステップ学習方法による測定法に比べてエンジンマップ取得に要する時間を大幅に短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態のエンジン性能測定方法の形態を示すブロック図である。
【図2】本実施形態の空ぶかし学習による性能測定のエンジン運転イメージ図である。
【図3】所定のスロットル開度のときのエンジン回転数の変化を示すグラフである。
【図4】スロットル開度0%のときのエンジン回転数の変化を示すグラフである。
【図5】スロットル開度の10%のときのエンジン回転数の変化を示すグラフである。
【図6】スロットル開度20%のときのエンジンマップテーブルを示す図である。
【図7】本実施形態の方法で取得したエンジンマップの一例を示す図である。
【図8】従来のステップ学習法によるエンジン性能測定方法の運転イメージ図である。
【符号の説明】
10 エンジン
11 運転パターン発生部
12 スロットルアクチュエータ
13 演算部
14 クラッチ
17 回転センサ

Claims (4)

  1. エンジンを回転させてエンジン回転数−エンジン発生トルク−スロットル開度のエンジンマップを作成するエンジン性能測定方法において、
    前記エンジンを無負荷状態に置いてスロットル開度をスロットル閉状態から所定のスロットル開度にステップ的に変化させて時間的に変化するエンジン回転数を測定する処理を複数のスロットル開度に対して行う第1ステップと、
    スロットル開度をステップ的に変化させたときのエンジン回転数の変化と該エンジンの慣性量とからエンジン発生トルクを演算する第2ステップとを含むことを特徴とするエンジン性能測定方法。
  2. 前記第2ステップは、次式を用いてエンジン発生トルクを演算するステップであることを特徴とする請求項1記載のエンジン性能測定方法。
    Figure 2004157026
    但し、
    eg:エンジン発生トルク[Nm]
    eg:エンジン慣性量[kgm
    ω:エンジンの角速度[rad/s]
  3. 前記第1ステップは、エンジンの回転数が該エンジンの所定の最高回転数よりも低い回転数で安定する低スロットル開度に関しては、スロットル閉状態から所定の低スロットル開度にステップ的に変化させて時間的に変化するエンジン回転数を測定すると共に、スロットル全開状態から該所定の低スロットル開度にステップ的に変化させて時間的に変化する回転数を測定するステップであることを特徴とする請求項1記載のエンジン性能測定方法。
  4. エンジンを回転させて該エンジン回転数−エンジン発生トルク−スロットル開度のエンジンマップを作成するエンジン性能測定装置において、
    前記エンジンのスロットル開度を変化させるスロットルアクチュエータと、
    前記エンジンの回転数を測定する回転センサと、
    前記エンジンに負荷を切り離し自在に接続するクラッチと、
    前記クラッチにより前記エンジンを負荷から切り離した状態でスロットル開度をスロットル閉状態から所定のスロットル開度にステップ的に変化させる処理を複数のスロットル開度に対して実行する運転パターン発生部と、
    スロットル開度をステップ的に変化させたときのエンジン回転数の変化と該エンジンの慣性量とからエンジン発生トルクを演算する演算部とを備えたことを特徴とするエンジン性能測定装置。
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JP2021081217A (ja) * 2019-11-14 2021-05-27 株式会社小野測器 エンジン試験システム

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