JP2004156100A - 液体金属脆化抵抗性の優れた金属構造製品、鉄構製品およびそれらの製造方法 - Google Patents

液体金属脆化抵抗性の優れた金属構造製品、鉄構製品およびそれらの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】材料に応力が負荷され、液体金属と接触する環境下にある金属構造製品、鉄構製品の割れ、すなわち液体金属脆化に対する抵抗性の優れた金属構造製品、鉄構製品およびそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】金属構造製品、鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の表面から50μmの厚さの表層を、超微細結晶粒とし、かつこの結晶粒または旧オーステナイト粒の長軸が表面に実質的に平行となる組織とする。好ましくは、この結晶粒または旧オーステナイト粒の長軸方向長さと短軸方向長さとの比を5以上とする。これは、金属構造製品、鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の表面を超音波衝撃処理することにより得られる。好ましくは、超音波衝撃処理後に、表面から50μmの厚さの範囲が塑性変形していることを検査する品質保証検査を行う。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属材料、たとえば、鉄鋼材料を用いて、橋梁や鉄塔などの構造物を組み立てた後にめっき処理して製造される金属構造製品あるいは、溶融めっき槽や、溶融めっき用ロールのような溶接部を含んで構成されめっき装置などに用いられる金属装置部材などの金属構造製品において、液体金属脆化抵抗性に優れた金属構造製品、鉄構製品(鉄鋼材料により構成された金属構造製品)、およびその製造方法に関するものであり、特に、溶接熱影響部を含む溶接部の液体金属脆化抵抗性を向上させた金属構造製品、鉄構製品、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融金属と固体金属が直接接触すると、金属の組み合わせによっては固体金属が高速で脆性的に破壊することがあり、液体金属脆化として知られている。
【0003】
例えば、高張力鋼やオーステナイト系ステンレス鋼などの鉄鋼材料およびNi合金は、溶融亜鉛や溶融鉛との接触で脆化し、割れが進展する。この脆化割れには応力の存在が必要とされている。そしてこの液体金属脆化割れは、殆どが粒界割れであり、その伝播速度は秒速数メートルに達するといわれている。
【0004】
橋梁や鉄塔などの金属構造製品の多くは、鋼材を切断あるいは変形加工した部材を溶接などにより接合して鉄構製品とした後、防錆のために、亜鉛、亜鉛−アルミニウム、アルミニウムなどのメッキが施される。このメッキは、これらのメッキ金属を溶融したメッキ浴中に上記の鉄構製品を浸漬して行なうが、そのとき、鉄構製品の溶接部、主に溶接熱影響部(HAZ)などの残留応力が存在する箇所が脆化し、粒界割れが発生する。また、溶融めっき槽や溶融めっきロールなどでは、一部に溶接部を含んで構成されることが多くこれらのめっき装置用金属構造製品あるいは鉄構製品は、その使用中に溶融めっき金属と接触し、上記と同様の現象が起こる。
【0005】
従来、この液体金属脆化割れを防止するために、材料改善、応力の緩和などの観点から各種の対策が検討されてきた。金属材料の面から液体金属脆化抵抗性の優れた高強度の材料の開発がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
しかしながら、この材料においても液体金属脆化抵抗性、強度の面で必ずしも十分とはいえないものであった。また、残留応力の緩和の面から、例えば、熱処理により溶接部などを応力除去焼鈍することなどが一般的であるが、処理対象が大型の金属構造製品あるいは鉄構製品である場合は、熱処理するための大型の熱処理炉が必要となり、固定構造物などでは熱処理自体も不可能である。このように、優れた液体金属脆化抵抗性を有する金属構造製品、鉄構製品およびそれらの製造方法は、十分なものが得られていなかった。
【0007】
【特許文献1】
特公平2−5814号公報。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上述のような問題点を解決し、液体金属脆化に対する抵抗性の優れた金属構造製品、鉄構製品およびそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、例えば、超音波で先端を振幅20〜60μm、周波数19kHz〜60kHz、出力0.2〜3kWで振動させる工具を用いて金属表面を打撃する超音波衝撃処理を、金属構造製品あるいは鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所に施すことによって、その表層の組織を改善し、よって液体金属抵抗性の優れた構造製品を得るものであり、また、さらには、この処理を行なう際の適切な前処理、ならびに処理後の検査を行ない、その効果を保証するものである。 その要旨とするところは、以下のとおりである。
(1)金属構造製品の液体金属脆化が問題となる箇所の表面から50μm以上の厚さの表層の結晶粒を超微細化するとともに、該表層の結晶粒の長軸が表面に実質的に平行となるようにしたことを特徴とする液体金属脆化抵抗性の優れた金属構造製品。
(2)鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の表面から50μm以上の厚さの表層の結晶粒を超微細化するとともに、該表層の旧オーステナイト粒の長軸が表面に実質的に平行となるようにしたことを特徴とする液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
(3)前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所が、引張強度490N/mm級以上の鋼であることを特徴とする(2)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
(4)前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所が、溶接ボンド部および/または溶接熱影響部を含むことを特徴とする(2)または(3)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
(5)前記表層の旧オーステナイト粒の長軸方向長さと短軸方向長さとの比が5以上であることを特徴とする(2)〜(4)のいずれか1つに記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
(6)前記表層の旧オーステナイト粒の短軸方向長さが5μm以下であることを特徴とする(2)〜(5)のいずれか1つに記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
(7)金属構造製品の液体金属脆化が問題となる箇所に超音波衝撃処理を施し、表面から50μm以上の厚さの表層の結晶粒を超微細化するとともに、該表層の結晶粒の長軸が表面に実質的に平行となるようにすることを特徴とする液体金属脆化抵抗性の優れた金属構造製品の製造方法。
(8)鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所に超音波衝撃処理を施し、表面から50μm以上の厚さの表層の結晶粒を超微細化するとともに、該表層の旧オーステナイト粒の長軸が表面に実質的に平行となるようにすることを特徴とする液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(9)前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の金属が、引張強度490N/mm級以上の鋼であることを特徴とする(8)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(10)前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所が、溶接ボンド部および/または溶接熱影響部を含むことを特徴とする(8)または(9)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(11)前記表層の旧オーステナイト粒の長軸方向長さと短軸方向長さとの比を5以上とすることを特徴とする(8)〜(10)のいずれか1つに記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(12)前記表層の旧オーステナイト粒の短軸方向長さを5μm以下とすることを特徴とする(8)〜(11)のいずれか1つに記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(13)前記超音波衝撃処理を施す前に、前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所及びその近傍箇所に、前処理を施すことを特徴とする(8)〜(12)のいずれか1つに記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(14)前記前処理が、前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所及びその近傍箇所の内部応力および/または表面応力を変化させる処理であることを特徴とする(13)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(15)前記前処理が、前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の亀裂を検出すると共に、検出された亀裂を除去する処理を含むことを特徴とする(13)又は(14)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(16)前記超音波衝撃処理が、さらに、前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の表面形状を応力集中の生じ難い形状とし、かつ表面近傍に圧縮残留応力を付与することを特徴とする(8)〜(15)のいずれか1つに記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(17)前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所に、超音波衝撃処理を施し、その後さらに、品質保証検査をすることを特徴とする(8)〜(16)のいずれか1つに記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(18)前記品質保証検査は、超音波衝撃処理後の処理面が処理前に比べて、50μm以上の厚さが塑性変形していること、および処理面が応力集中の生じ難い表面形状となっていることのいずれか一方又は双方を確認するものであることを特徴とする(17)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(19)前記品質保証検査の塑性変形していることの確認は、超音波衝撃処理後の処理面をスンプ法により観察し、処理していない部分に比べてその50%以上の金属結晶粒が超微細粒であるかどうかを判断することによるものであることを特徴とする(18)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(20)前記品質保証検査の塑性変形の確認は、超音波衝撃処理後の処理面の結晶粒度を超音波粒径測定装置により測定し、処理していない部分に比べてその50%以上の結晶粒が超微細粒であるかどうかを判断することによるものであることを特徴とする(18)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(21)前記品質保証検査の応力集中の生じ難い表面形状の確認は、超音波衝撃処理後の処理面を型取材を用いて型取りし、型取りした面が応力集中の生じ難い表面形状であるかどうかを判断することによるものであることを特徴とする(18)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
(22)前記品質保証検査の応力集中の生じ難い表面形状の確認は、超音波衝撃処理後の処理面を変位計を用いて測定し、その変位が応力集中の生じ難い面の変位の範囲内であるかどうかを判断することにより行なうものであることを特徴とする(18)に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明が対象とする金属構造製品は、鉄鋼材料やNi合金などの金属材料により構成される鉄塔や橋梁などの構造物、或いは機械部品や配管、容器槽などの構造部品を含むものである。そしてこれらの構造製品は、一般に、金属材料に切削、曲げなどの加工、或いはさらに、溶接加工を施して組立てられ、その後、亜鉛、亜鉛系合金、アルミニウム、アルミニウム合金などの溶融金属メッキ浴に浸漬して、溶融めっきを施し、製造される。また、溶融めっき容器や溶融めっき槽などは、加工により構造部品とした後それらが使用される際に、前述の溶融金属と接触することになる。すなわち、製造あるいは使用の段階で、金属構造製品、鉄構製品は、液体金属(溶融金属)と接触することになる。
【0011】
ところで、液体金属脆化は、金属構造製品(固体金属)が引張応力の存在下で液体金属と接触する環境にあると、その表面に生じた微小の亀裂が厚さ方向に進展し、大きな割れとなって金属構造製品の機能を低下させるものである。図1(a)(b)は、金属構造製品の液体金属脆化割れの亀裂の進展を説明するものであり、金属材料の厚さ方向断面における結晶粒の粒界を示している。なお、鉄鋼材料の場合は、旧オーステナイト粒界を示している。この亀裂の進展方向は、図1(a)に示すように、引張応力(残留応力、外部応力)に垂直な方向で、ほとんどの場合、金属の結晶粒界、あるいは、鉄鋼材料の場合は旧オーステナイト粒界、に沿っている。従って、図1(b)に示すように、粒界の方向と引張応力の方向とが実質的に平行であれば、この応力は亀裂の先端をさらに開口させるようには作用しないので、進展を遅らせ、すなわち亀裂の伝播抵抗を向上させ、液体金属脆化を抑制することができる。
【0012】
また、結晶粒が超微細になれば、粒界が著しく増えることとなり、亀裂が金属材料の厚さ方向に進展するための経路が長くなり、亀裂の伝播抵抗を向上させることになる。
【0013】
発明者らはこの点に着目し、金属構造製品の液体金属脆化が問題となる箇所の表層の結晶粒を超微細化し、かつ、この表層の結晶粒の長軸方向が表面と実質的に平行になるようにするものである。表層の結晶粒が超微細化され、かつこの表層の結晶粒の長軸が、引張応力の方向と実質的に平行となることにより、進展経路もさらに長くなるため、上述のとおり、亀裂の伝播抵抗性を高めることができ、液体金属脆化による割れを抑制することができる。また、鉄鋼材料の場合は、上述のように、亀裂は旧オーステナイト粒界に沿って進展する。したがって、鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所については、当該箇所の表層の結晶粒を超微細化するとともに、この表層の旧オーステナイト粒の長軸が表面と実質的に平行となるようにする。これによって、亀裂の伝播抵抗性を高めることができ、液体金属脆化による割れを抑制することができる。
【0014】
このように、液体金属脆化が問題となる箇所の表層の結晶粒を超微細化し、結晶粒の長軸方向が表面と実質的に平行になるようにする、或いは、表層の結晶粒を超微細化し、旧オーステナイト粒の長軸方向が表面と実質的に平行となるようにする手段として、超音波で先端のハンマー部を振幅20〜60μm、周波数19〜60kHz、出力0.2〜3kWで振動させる装置により金属表面を打撃してピーニングを行なう超音波衝撃処理(例えば米国特許第6,171,415号明細書参照)が好適である。この処理方法は、基本的にはハンマーピーニングと同じであるが、一回一回の打撃のエネルギーは小さいかわりに、1秒間に1万回を超える回数の打撃を与えることによって、金属に塑性変形を与えるものである。このとき、一回一回の打撃力は小さいために、打撃装置に生じる反動は殆どなく、ハンマーピーニング装置に比べて使用性、施工性の面で優れている。
【0015】
また、1回の打撃エネルギーが小さいため、先端部のハンマー形状は、小型にすることができ、溶接部や接続部などの微小な部分や狭隘な部分に対しても打撃処理を施すことができる。この点において、液体金属脆化が問題となる箇所が小さな部分でも処理が適用可能となる。この場合でも、上述のように打撃回数を極めて多くできることから、十分な塑性変形を与えることができる。
【0016】
また、この超音波衝撃処理は、金属表面に対して非常に多くの回数の打撃を与えているので、金属表面に対して従来のハンマーピーニングにはない効果があり、また、一回一回の打撃エネルギーショットは、ショットピーニングよりも大きいので、従来のショットピーニングにない効果もある。
【0017】
すなわち、先ず、打撃の回数が多いことで、処理の均一性が得られる。ハンマーピーニングでも数パスを同一線上で実施すればある程度の均一性が得られるが、超音波衝撃処理の打撃周波数は、19〜60kHzであり、その得られる均一性はハンマーピーニングのそれとは全く異なるレベルにあり、処理スピードが0.5m/分程度であれば、所要の金属表面のほとんどを均一にかつ欠陥を残すことなく仕上げることができる。
【0018】
そして、処理後の金属表面を平滑にするとともに、金属表層の金属組織を微細化する作用があり、極めて有利である。
【0019】
発明者らは、鋼材の表面に1.5mmの曲率半径を有する先端ハンマーを有する超音波衝撃装置により、振幅50μm、周波数25kHzにて処理速度0.5m/minで1パスの超音波衝撃処理を行ない、処理前後の表層組織の状況を詳細に調査した。その結果を処理前後の鋼材の断面状況として、図2及び図3の(a)(b)に、それぞれの組織写真及び模式図で示す。なお、図2(a)、図3(a)は、全組織を表わしており、図2(b)、図3(b)は、旧オーステナイト粒の組織を模式的に示したものである。これらの図から判るように、処理面の断面は、超音波衝撃処理により塑性変形し、極めて微細化しているともに、旧オーステナイト粒の長軸が表面にほぼ平行に伸展した組織となっている。このような表層組織では、上述のとおり、亀裂が進展する経路がより長くなっており、鋼材表面から伸展する亀裂の主たる進展経路である結晶粒界の方向と引張応力の作用する方向とが近接するため、亀裂の進展が軽減されることが考えられた。
【0020】
そこで、発明者らはこれを確認するために、表1に示す組成を有する厚さ16mm鋼板に対して、表2に示すように処理条件を変えて超音波衝撃処理を実施し、処理前後の表層部の組織を調査すると共に、図4に示すビードオンプレートで溶接部を形成する方法で、液体金属脆化試験片を各水準ごとにそれぞれ3個採取し、液体金属脆化割れ試験を実施した。
【0021】
その結果を表3に示す。
【0022】
表3から判るように、結晶粒径が1μm以下の超微細粒となっている表層が表面から50μm未満の厚さでは、割れが発生しており、液体金属脆化感受性が高い。一方、超微細粒となっている表層の厚さが50μm以上であって、この表層の旧オーステナイト粒の長軸が表面に実質的に平行である場合は、割れの発生もなく、優れた液体金属脆化抵抗性を示すことがわかる。
【0023】
これは、上述のとおり、超音波衝撃処理によって表面から50μm以上の厚さの表層が結晶粒径1μm以下の超微細粒となり、かつ、この表層の旧オーステナイト粒の長軸が表面に実質的に平行となることによって、表層の結晶粒界の殆どが応力の方向と実質的に平行な方向に伸びることとなり、亀裂が発生し難く、また、表面から粒界に沿って進展する亀裂の進展経路が長くなるため、亀裂が板厚方向の深部に達して破断に到るまでの時間が長くなるためと考えられる。なお、結晶粒径が1μmを超えると、結晶粒の大きなものが含まれ、均一な超微細化組織とならないためとはならないため、安定した液体金属抵抗性を確保できない。表層の超微細組織とは粒径が1μm以下の結晶粒であるものとする。実質的に平行とは、結晶粒または旧オーステナイト粒の長軸の方向と表面とが、±10°以下の角度であることをいう。
【0024】
また、長軸、短軸は、鋼材(金属材料)の厚さ方向の断面における結晶粒または旧オーステナイト粒の長軸、短軸をいう。
【0025】
この表層の結晶粒または旧オーステナイト粒の長軸方向長さと短軸方向長さとの比が5以上であることが好ましい。これは、上述と同様に、結晶粒または旧オーステナイト粒が表面に平行な長軸方向に伸展したことによって、応力の方向に平行な結晶粒界がより長くなり、亀裂の進展経路が長くなって破断に到るまでの時間が長くなるからと考えられる。さらに、このようにすることによって、結晶粒の超微細化も均一にできるため液体金属脆化抵抗性に対して極めて有利である。
【0026】
また、この表層の結晶粒または旧オーステナイト粒の短軸方向長さが5μm以下であることが好ましい。短軸方向の長さが5μm以上では、表層の超微細化が不十分であり、破断までの時間がやや短くなる。一方、5μm以下であると、破断までの時間をより十分に確保できる。
【0027】
さらに、この超音波衝撃処理では、塑性変形により表層を超微細化組織とすることができると共に、表面形状をなめらかな面形状とし、かつ表面近傍に圧縮残留応力を付与することもできる。
【0028】
したがって、好ましくは、超音波衝撃処理によって液体金属脆化が問題となる箇所の表層を超微細化組織とすると共に、この箇所の表面を応力集中の生じ難い表面形状とし、表面近傍に力を付与することが好ましい。応力集中の生じ難い表面形状とは、例えば、溶接止端部の場合、応力集中係数が2以下となるような形状であって、このような表面形状とすることによって応力集中が生じ難くなり、かつ表面近傍、例えば表面から50μm以内の範囲、に圧縮残留応力を付与することによって、液体金属脆化割れ起点となる微小な欠陥が大きな亀裂に伸展することを抑制することができるので、これらの微小亀裂を無害化し、さらに、液体金属脆化抵抗性を向上させることができる。
【0029】
以上のように、金属材料の表面に超音波衝撃処理を施すことによって、その表層部を超微細化組織とし、あるいは、さらに、表面を応力集中の生じ難い形状とすると共に圧縮残留応力を付与することによって、応力によって進展する液体金属脆化を抑制、低減することができ、液体金属脆化抵抗性の優れた金属構造製品、鉄構製品とすることができる。
【0030】
この超音波衝撃処理は、金属構造製品を液体金属と接触させる前、例えば、溶融めっきを施す前あるいは、溶融めっき槽などとして使用する前に施せば良く、前述の金属構造製品、鉄構製品の少なくとも液体金属脆化が問題となる箇所に施せばよい。その問題となる箇所は金属構造製品、鉄構製品の液体金属と接し、かつ応力が負荷ないし残留しうる個所である。応力が集中ないし残留する具体的な箇所として、溶接継手部(溶接ボンド部、溶接熱影響部)が先ず挙げられる。金属構造製品、鉄構製品の多くが溶接を伴って製作され、その溶接継手部には残留応力が発生する。また、溶接継手部の溶接止端部は、応力が集中しやすい。
【0031】
従って、金属構造製品、鉄構製品の溶接部、すなわち、溶接ボンド部および/または溶接熱影響部を含む部分を超音波衝撃処理することが好ましく、さらには、溶接止端部を含めることも好ましい。
【0032】
溶接部以外に、応力が集中ないし負荷される箇所の例としては、金属構造製品、鉄構製品を製造する段階で加えられることのある、鋸断、せん断、溶断などによる切断箇所がある。これらの箇所は、切断に伴って端面に大きな引張応力、せん断応力が負荷される。そのほか、金属構造製品、鉄構製品には、曲げや捻りを加えて構成されることがあり、これらが集中する箇所には、これらの曲げやねじりに伴う引張応力が負荷されている。これらの加工過程で生じる応力のほか、使用状態で外部から応力が負荷される箇所もあり、これらも液体金属脆化が問題となり得る箇所であり、本処理の対象となる。このように引張応力が負荷されている箇所が、液体金属と接触する環境下にあると、上述のとおり、液体金属脆化を生じることとなる。
【0033】
上述のように、液体金属脆化の発生は、環境、応力及び材料の3つの条件が関与する。本発明の超音波衝撃処理は、このうちの応力条件を低減することを主眼とするものであり、特に、金属構造製品の材料強度を限定するものではないが、液体金属脆化は、強度、硬度の高い場合に発生しやすいと言う観点から、金属材料として鋼材を用いる鉄構製品の場合、引張強度が490N/mm以上の鋼材からなる構造製品の必要箇所には少なくとも施すことが好ましい。引張強度が490N/mm以上の鋼材では、溶接部の残留応力がより高くなるために、液体金属脆化割れ感受性が一段と高くなる。このため、引張強度が490N/mm以上の鋼材の溶接部には、超音波衝撃処理を施すことが一段と有効であるとともに、超音波衝撃処理を施す効果もより大きい。超音波衝撃処理を施す効果は、材料の強度が高くなるとともにより大きくなるので、引張強度が590N/mm以上の鋼材の溶接部、引張強度が690N/mm以上の鋼材の溶接部、引張強度が780N/mm以上の鋼材の溶接部、引張強度が980N/mm以上の鋼材の溶接部、と強度が高くなるのにしたがって、超音波衝撃処理を施す効果と必要性が大きくなる。
【0034】
上述のように超音波衝撃処理は、先端部に所定の曲率半径を有する先端ハンマーを有する超音波衝撃装置により、振幅20〜60μm、サイクル数19〜60kHzにて必要の時間、所要の金属表面部分に対して行なうが、この衝撃処理により表層部分を塑性変形させ、超微細結晶組織とし、かつ、結晶粒あるいは旧オーステナイト粒の長軸方向を表面に実質的に平行なものとするとともに、好ましくは、応力集中が発生し難い表面形状とし、かつ残留圧縮応力付与することができ、液体金属脆化抵抗性を高めることができる。
【0035】
このためには、超音波衝撃処理による表層の塑性変形の厚さは、50μm以上であることが必要である。50μm未満では、表層の50μm以上を超微細な組織とすることが困難であり、十分な液体金属脆化抵抗性を得ることが困難となる。
【0036】
また、引張応力を解消し圧縮応力を付与する点からも、表面から50μm以上の厚さを塑性変形させることが必要である。しかしながら、この表層の超微細組織或いは塑性変形の厚さを過度に大きくすると、表層が過度に硬化したり、変形が大きくなり過ぎたりして製品としての表面性状が悪くなる一方、処理のためのコストが増えるために好ましくない。
【0037】
所要の厚さの超微細組織或いは塑性変形を得るために必要な変形のためのエネルギーはほぼ一定であるため、1サイクルの衝撃エネルギーを大きくして短時間に処理しても良いが、均一性を高めたい場合や、衝撃部位の位置をより精緻に制御し、過度な塑性変形を防止したい場合は、1サイクルの衝撃エネルギーを小さくし、二回以上の処理を同一箇所に対して行なうことが好ましい。
【0038】
また、衝撃エネルギーによって生じる超微細組織或いは塑性変形の厚さは、衝撃装置の先端のハンマーの曲率半径Rとも関係しており、1サイクルの衝撃エネルギーが同じでも、Rが小さければ、1サイクルの衝撃で生じる超微細組織或いは塑性変形の厚さは大きくなり、Rが大きければその厚さは小さくなる。
【0039】
また、表面を応力集中の生じ難い形状とし、圧縮残留応力を付与する場合は、ハンマーのRが小さければ、1サイクルで形成される表面形状の範囲が狭いので繰り返し処理が必要となり、またRが大きければ、形状の制御が困難となることもある。従って、超音波打撃処理装置の先端のハンマーの形状は、処理対象とする金属構造製品の状況によって適宜選択する。
【0040】
超音波衝撃処理を施すにあたっては、金属構造製品、鉄構製品の処理対象箇所の表面から所要の厚さを超微細組織とし、或いはさらに応力集中の生じ難い形状とし圧縮残留応力を付与するために必要なハンマーの形状、1サイクルの打撃エネルギー、サイクル数、処理回数などの処理条件を、例えば、金属材料ごとに、また金属構造製品の溶接部、切断端面などの処理箇所ごとに予備試験などにより、予め決めて置くことによって、処理後に所要の超微細組織とし或いは圧縮残留応力を付与することができる。
【0041】
ところで、本発明の液体金属脆化抵抗性向上方法においては、金属構造製品、鉄構製品の超音波衝撃処理を施す箇所に対して、この箇所の内部応力、表面応力などの応力状態変化させるような処理を、超音波衝撃処理を施した後には行なわないようにすることが必要である。
【0042】
すなわち、超音波打撃処理を施して、当該箇所の表層を超微細組織とし、或いは塑性変形させて表面形状を応力集中の生じ難い形状とし、かつ残留圧縮応力を付与した後で、当該箇所及びその近傍箇所の表層の組織、塑性変形状況、応力状態などを変化させるような処理、例えば、塑性加工、矯正、熱処理、溶接などを施すと、超音波衝撃処理により形成された液体金属脆化を抑制するための上記の表層の性状がこれによって減殺され、抑制効果が低下する。
【0043】
従って、本発明の超音波衝撃処理方法においては、金属構造製品、鉄構製品の少なくとも当該処理を施す箇所に対しては、例えば、塑性加工、矯正、熱処理、溶接など、当該箇所の表層の組織、塑性変形状況、応力状態などを変化させるような処理は、超音波衝撃処理を施す前に、前処理として施しておくことが好ましく、超音波衝撃処理後は、このような処理を行なわないようにすることが好ましい。
【0044】
また、上記の前処理においては、上述の各処理のほか、液体金属脆化が問題となる箇所に対する亀裂の有無を検査し、検出された亀裂を除去する処理を含むことが好ましい。すなわち、目視検査、浸透探傷検査、磁粉探傷検査、渦流探傷検査など金属構造製品、鉄構製品の亀裂を検査する適切な手段により、液体金属脆化が問題となる箇所、すなわち、超音波衝撃処理を施そうとする箇所に対して亀裂の有無を検査し、そして、検出された亀裂に対して、事前にこれを除去する処理を施すものである。除去する方法は、亀裂部分をグラインダー、切削工具等により研削・切削して除去する方法、或いは溶接により亀裂部を溶融接着する方法な適宜など方法を採用しうる。
【0045】
また、特に、除去した亀裂の深さが3mm以上である場合は、亀裂部分を研削除去し、肉盛溶接を行った後、この箇所の表面をグラインダー、切削工具等の機械的手段により平滑な形状に仕上げ、さらに上述の亀裂の検査処理によって亀裂が検出されないことを確認する処理を含むことが好ましい。
【0046】
本発明においては、必要に応じて上述の前処理を施した後、上記の超音波衝撃処理を施し、その後、必要に応じて、品質保証検査を行なう。
【0047】
超音波衝撃処理後の品質保証検査は、処理面が処理前と比較して50μm以上の厚さまで塑性変形していること、すなわち、表面から50μm以上の厚さの表層が超微細組織となっていること、および処理面が応力集中の生じ難い表面形状となっているかどうかのいずれか一方又は双方を確認するものである。
【0048】
処理面が処理前と比較して50μm以上の厚さまで塑性変形していることを確認するには、スンプ法により処理面の複製を制作し、その結晶組織を観察するか、あるいは処理面の結晶粒度を超音波粒径測定装置によるかのいずれかにより結晶粒度を測定し、結晶粒の50%以上が粒径1μm以下の超微細粒であるかどうかを判断することによって行なうことができる。超微細結晶粒が50%未満では、表層の超微細化が不十分であり。
【0049】
また、処理面が応力集中の生じ難い表面形状となっているかどうかを確認するには、例えば歯科用形象材のような型取り材を用いて型取りし、型取りした複製の表面形状を検査するか、或いは、レーザー変位計などの高精度な変位測定装置を用いて表面の変位を測定することによって、処理面が応力集中のし難い表面の曲率ないしは変位を有するかどうかを判断することによって行なうことができる。
【0050】
以上のような方法により、超音波衝撃処理後の表層組織或いは、表面形状を確認する品質保証検査を行なうことによって、金属構造製品、鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の液体金属脆化抵抗性の向上を確認することができる。
【0051】
なお、この品質保証検査により、所要の表面形状或いは表層組織が得られていない場合は、超音波衝撃処理を繰り返し、所要の表層組織或いはさらに表面性状となるようにすることはいうまでもない。
【0052】
【実施例】
以下に実施例により、本発明を説明する。
【0053】
表1に示す組成の鋼(板厚16mm)を母材とし、共金系の溶接材料を用いてアーク溶接した溶接部を試験体とし、超音波衝撃処理を付与して表層の金属組織を、超微細結晶粒とし、旧オーステナイト粒の長軸が表面に実質的に平行な結晶粒からなる層状組織とした。比較材として溶接ままおよび小さい振幅の超音波衝撃処理を行なった試験体を用いた。図4に概略を示す要領で、幅100mm、長さ200mm、板厚は元厚まま、の試験片の中央に、ビードオンプレートで溶接部を形成し、そのまま液体金属脆化試験片とした。言うまでもなく、溶接ままの試験片の溶接部には溶接残留応力が存在している。
【0054】
【表1】
Figure 2004156100
【0055】
これらの試験片を、450℃の溶融亜鉛めっき浴中に3分間浸漬した。試験後の試験片は、浸透試験および断面観察によって液体金属脆化の発生の有無を確認した。
【0056】
表2に超音波衝撃処理条件を示し、表3には表層の金属組織状況および液体金属脆化割れ試験結果を示す。
【0057】
【表2】
Figure 2004156100
【0058】
【表3】
Figure 2004156100
【0059】
表3から明らかな通り、表層の金属組織を、超微細結晶粒とし、旧オーステナイト粒の長軸が表面に実質的に平行な結晶粒からなる層状組織とした本発明例1〜8では液体金属脆化がまったく発生していないのに対して、溶接ままあるいは処理が不充分な比較例9〜12では液体金属脆化が発生しており、本発明の効果が明らかである。
【0060】
【発明の効果】
本発明の液体金属脆化抵抗性の優れた金属構造製品、鉄構製品は、液体金属脆化の問題となる箇所に超音波衝撃処理が施され、表層の結晶粒が超微細細化されかつ、その結晶粒または、旧オーステナイト粒の長軸が、表面と実質的に平行となっており、さらに好適には、表面が応力集中が生じ難い表面形状で、かつ残留圧縮応力が付与されているため、液体金属と接触しても微小亀裂が生じ難くまた、微小亀裂が存在しても亀裂の厚さ方向への進展が抑制され、破断時間が大幅に伸び、液体金属脆化に対して優れた抵抗性を有する。また、本発明の方法によれば、超音波衝撃処理後の品質保証検査を組み合わせることによって、処理を施した箇所の表層が所定の層状組織となり、さらには表面形状となっていることを確認できるため、金属構造製品、鉄構製品の所要箇所の液体金属脆化抵抗性を確実に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】液体金属脆化による亀裂の進展状況を示す模式図であり、(a)は、粒界が引張応力の方向に垂直な方向にある場合、(b)は、粒界のほとんどが引張応力の方向と平行する方向にある場合である。
【図2】鉄構製品の超音波衝撃処理前の組織を示す図であり、(a)は、組織写真(b)は、その旧オーステナイト組織の状況を示す模式図である。
【図3】鉄構製品の超音波衝撃処理後の組織を示す図であり、(a)は、組織写真(b)は、その旧オーステナイト組織の状況を示す模式図である。
【図4】液体金属脆化試験片の状況を示す図である。
【符号の説明】
1…母材
2…溶接部

Claims (22)

  1. 金属構造製品の液体金属脆化が問題となる箇所の表面から50μm以上の厚さの表層の結晶粒を超微細化するとともに、該表層の結晶粒の長軸が表面に実質的に平行となるようにしたことを特徴とする液体金属脆化抵抗性の優れた金属構造製品。
  2. 鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の表面から50μm以上の厚さの表層の結晶粒を超微細化するとともに、該表層の旧オーステナイト粒の長軸が表面に実質的に平行となるようにしたことを特徴とする液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
  3. 前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所が、引張強度490N/mm級以上の鋼であることを特徴とする請求項2に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
  4. 前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所が、溶接ボンド部および/または溶接熱影響部を含むことを特徴とする請求項2または3に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
  5. 前記表層の旧オーステナイト粒の長軸方向長さと短軸方向長さとの比が5以上であることを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
  6. 前記表層の旧オーステナイト粒の短軸方向長さが5μm以下であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1項に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品。
  7. 金属構造製品の液体金属脆化が問題となる箇所に超音波衝撃処理を施し、表面から50μm以上の厚さの表層の結晶粒を超微細化するとともに、該表層の結晶粒の長軸が表面に実質的に平行となるようにすることを特徴とする液体金属脆化抵抗性の優れた金属構造製品の製造方法。
  8. 鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所に超音波衝撃処理を施し、表面から50μm以上の厚さの表層の結晶粒を超微細化するとともに、該表層の旧オーステナイト粒の長軸が表面に実質的に平行となるようにすることを特徴とする液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  9. 前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の金属が、引張強度490N/mm級以上の鋼であることを特徴とする請求項8に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  10. 前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所が、溶接ボンド部および/または溶接熱影響部を含むことを特徴とする請求項8または9に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  11. 前記表層の旧オーステナイト粒の長軸方向長さと短軸方向長さとの比を5以上とすることを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  12. 前記表層の旧オーステナイト粒の短軸方向長さを5μm以下とすることを特徴とする請求項8〜11のいずれか1項に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  13. 前記超音波衝撃処理を施す前に、前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所及びその近傍箇所に、前処理を施すことを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  14. 前記前処理が、前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所及びその近傍箇所の内部応力および/または表面応力を変化させる処理であることを特徴とする請求項13に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  15. 前記前処理が、前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の亀裂を検出すると共に、検出された亀裂を除去する処理を含むことを特徴とする請求項13又は14に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  16. 前記超音波衝撃処理が、さらに、前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所の表面形状を応力集中の生じ難い形状とし、かつ表面近傍に圧縮残留応力を付与することを特徴とする請求項8〜15のいずれか1項に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  17. 前記鉄構製品の液体金属脆化が問題となる箇所に、超音波衝撃処理を施し、その後さらに、品質保証検査をすることを特徴とする請求項8〜16のいずれか1項に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  18. 前記品質保証検査は、超音波衝撃処理後の処理面が処理前に比べて、50μm以上の厚さが塑性変形していること、および処理面が応力集中の生じ難い表面形状となっていることのいずれか一方又は双方を確認するものであることを特徴とする請求項17に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  19. 前記品質保証検査の塑性変形していることの確認は、超音波衝撃処理後の処理面をスンプ法により観察し、処理していない部分に比べてその50%以上の金属結晶粒が超微細粒であるかどうかを判断することによるものであることを特徴とする請求項18に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  20. 前記品質保証検査の塑性変形の確認は、超音波衝撃処理後の処理面の結晶粒度を超音波粒径測定装置により測定し、処理していない部分に比べてその50%以上の結晶粒が超微細粒であるかどうかを判断することによるものであることを特徴とする請求項18に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  21. 前記品質保証検査の応力集中の生じ難い表面形状の確認は、超音波衝撃処理後の処理面を型取材を用いて型取りし、型取りした面が応力集中の生じ難い表面形状であるかどうかを判断することによるものであることを特徴とする請求項18に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
  22. 前記品質保証検査の応力集中の生じ難い表面形状の確認は、超音波衝撃処理後の処理面を変位計を用いて測定し、その変位が応力集中の生じ難い面の変位の範囲内であるかどうかを判断することにより行なうものであることを特徴とする請求項18に記載の液体金属脆化抵抗性の優れた鉄構製品の製造方法。
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