JP2004155804A - (メタ)アクリル系ブロック共重合体の成型体 - Google Patents

(メタ)アクリル系ブロック共重合体の成型体 Download PDF

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Yutaka Kaneda
豊 金田
Kentaro Takesada
健太郎 武貞
Takeshi Chiba
健 千葉
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Abstract

【課題】(メタ)アクリル系ブロック共重合体の成型体の表面を改質し、金型からの離型性を改善する方法を提供する。
【解決手段】メタアクリレート系単量体を主体とする重合体ブロック(A1)とアクリレート系単量体を主体とする重合体ブロック(A2)を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)に、加工助剤(P)を添加して成型する。加工助剤としては滑剤、フィラーが挙げられる。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクリレート系単量体及びメタアクリレート系単量体を重合してなる(メタ)アクリル系ブロック共重合体の成型体に関するものである。詳しくは、前記重合体の成型体の離型性、表面性、摩擦特性に関するものである。また、前記重合体の射出成型体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
熱可塑性エラストマーは溶融成形可能なゴム状物質であり、射出成形、押出し成形、カレンダー成形等、通常熱可塑性樹脂で用いられる成形法により成形することができる。また、具体的用途としてはエラストマー材料、樹脂、ゴム、アスファルト等の改質剤、制振剤、粘着剤のベースポリマー、樹脂改質剤の成分として用いることができる。
【0003】
このように優れた性質、加工性を有する熱可塑性エラストマーであるが、その反面、軟化点の低さから室温付近でも金型からの離型が困難であったり、成型体同士の付着(本明細書では、このような現象もブロッキングという)や自着が発生しやすい。このブロッキングは成型体の製造、保管、輸送、使用の全般にわたって取り扱いの困難な状況を発生させる。たとえば、成型体の製造の際に離型性が低く金型と粘着しやすいと安定した製造そのものが困難であり、また、成型体の保管・輸送時に成型体どうしを接触させてブロッキングした場合や、成型体を折り曲げて自着した場合などは剥離させるために余分な手間とコストが必要であり、また、蛇腹状の成型体においては蛇腹の山同士がブロッキングすると成型体本来の目的が損なわれることがある。
【0004】
アクリル系のブロック重合体のペレットは、スチレン系やオレフィン系熱可塑性エラストマーに比較し柔軟性が高く、特にブロッキングが激しい傾向にあった。このような熱可塑性エラストマーのブロッキングを改善する方法として、特許文献1のように熱可塑性エラストマーに結晶性ポリオレフィンを付与する方法、特許文献2のように塩化ビニル系ペーストレジンを付与する方法が開示されている。また、特許文献3のように熱可塑性樹脂シートのように熱可塑性エラストマーに対して親水性高分子化合物、脂肪酸金属塩、界面活性剤、導電性高分子を含有する制電層を積層する方法も開示されている。
【0005】
特許文献1、2は樹脂をペレット形状に成形する前に配合物を混錬する方法、特許文献3は成形シートのブロッキング防止方法である。特許文献1、2では、ペレットのブロッキング防止のために添加する配合物、高分子成分によっては、エラストマーの物性自体を変化させる懸念も考えられる。また特許文献3では芯鞘型複合押出ダイなどのように専用設備が必要となり、簡便な解決方法とは言いがたい。
【0006】
熱可塑性エラストマーや粘着性樹脂のペレットの粘着防止方法としては、特許文献4、5があげられる。しかしながら、いずれもペレットのブロッキング防止方法であって、成形体のブロッキング防止方法ではない。しかも、何れの公報でも当該樹脂に、(メタ)アクリル系ブロック共重合体に関する記載はない。
【0007】
以上の問題点を解決した上で、(メタ)アクリル系ブロック共重合体の成型体に適用可能なブロッキング防止方法の確立が望まれていた。
【0008】
【特許文献1】
特開平7−171828号公報
【0009】
【特許文献2】
特開平8−34019号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2000−43201号公報
【0011】
【特許文献4】
特開2000−136248号公報
【0012】
【特許文献5】
特開2001−294842号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体の成型体の製造、輸送及び使用の際に生ずる粘着現象(ブロッキング)に対し、その防止方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、上記課題を解決するために、(メタ)アクリル系ブロック共重合体の成型体のブロッキング防止方法について鋭意検討した結果、本発明を完成した。
【0015】
即ち本発明は、メタアクリル系単量体を主体とする重合体ブロック(A1)とアクリル系単量体を主体とする重合体ブロック(A2)を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)に加工助剤(P)を添加して成型したことを特徴とする(メタ)アクリル系ブロック共重合体の成型体、
加工助剤(P)が水に含有され、その水に重合体(A)のペレットを分散させ、その後ペレット表面の水を除去することを特徴とする上記記載の成型体、
加工助剤(P)が水に含有され、その水が重合体(A)のストランドの冷却水として使用することを特徴とする上記記載の成型体、
加工助剤(P)と、重合体(A)のペレットを直接混合させることにより表面塗布することを特徴とする上記記載の成型体、
加工助剤(P)と、重合体(A)を溶融混練させることを特徴とする上記記載の成型体、
加工助剤(P)の量が、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.001〜200部であることを特徴とする上記記載の成型体、
加工助剤(P)が、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、金属石鹸からなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上の滑剤(Q)および/または、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、二酸化珪素、アルミナ、水酸化アルミ、カーボンブラック、アクリル系高分子微粒子からなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上のフィラー(R)であることを特徴とする上記記載の成型体、滑剤(Q)の量が、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.001〜5部であり、かつ、フィラー(R)の量が、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.1〜200部であることを特徴とする上記記載の成型体及び
成型方法が射出成型である、上記記載の成型体に関する。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳細に説明する。本発明に用いる(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)は、メタアクリル系単量体を主成分とする重合体ブロック(A1)とアクリル系単量体を主成分とする重合体ブロック(A2)とをそれぞれ少なくとも1つ含有するブロック共重合体である。前記ブロック共重合体(A)は、線状ブロック共重合体および分岐状(星状)ブロック共重合体からなる群より選ばれた少なくとも1種のブロック共重合体である。
【0017】
前記線状ブロック共重合体は、A−B型のジブロック共重合体、A−B−A型のトリブロック共重合体、B−A−B型のトリブロック共重合体、(−A−B−)n型のマルチブロック共重合体である。前記分岐状(星状)ブロック共重合体は、前記の線状ブロック共重合体を基本構造とする分岐状(星状)ブロック共重合体である。これらの中でも、組成物の物理的性質の点から、A−B−A型のトリブロック共重合体、A−B型のジブロック共重合体、または、これらの混合物が好ましい。
【0018】
(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の数平均分子量は特に限定されないが、好ましくは30000〜500000、さらに好ましくは50000〜400000である。数平均分子量が小さいと粘度が低く、また、数平均分子量が大きいと粘度が高くなる傾向があるので、必要とする加工特性に応じて設定される。
【0019】
ブロック共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフィーで測定した重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)も特に限定されないが、好ましくは1.8以下、さらに好ましくは1.5以下である。Mw/Mnが1.8を超えるとブロック共重合体の均一性が低下する傾向がある。
【0020】
ブロック共重合体(A)のメタアクリル系重合体ブロック(A1)とアクリル系重合体ブロック(A2)の組成比は、重合体ブロック(A1)が5〜90重量%、重合体ブロック(A2)が95〜10重量%である。成型時の形状の保持およびエラストマーとしての弾性の観点から、組成比の好ましい範囲は、重合体ブロック(A1)が10〜80重量%、重合体ブロック(A2)が90〜20重量%であり、さらに好ましくは、重合体ブロック(A1)が20〜50重量%、重合体ブロック(A2)が80〜50重量%である。重合体ブロック(A1)の割合が5重量%より少ないと成形時に形状が保持されにくい傾向があり、重合体ブロック(A2)の割合が10重量%より少ないとエラストマーとしての弾性が低下する傾向がある。
【0021】
また、上記エラストマー組成物の組成比については、硬度の観点から、重合体ブロック(A1)の割合が少ないと硬度が低くなり、また、重合体ブロック(A1)の割合が多いと硬度が高くなる傾向があるため、エラストマー組成物の必要とされる硬度に応じて(A1)、(A2)の組成比を設定することができる。また加工性の観点からは、重合体ブロック(A1)の割合が少ないと粘度が低く、また、重合体ブロック(A1)の割合が多いと粘度が高くなる傾向があるので、必要とする加工特性に応じて設定することができる。
【0022】
重合体ブロック(A1)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなる重合体および/またはそれらから誘導される重合体からなるブロックであり、メタアクリル酸エステル、メタアクリル酸、そのエステル部位が隣接したメタアクリル酸系単量体と無水物を形成したメタアクリル酸誘導体(以下メタアクリル酸無水物と呼称する)、およびメタアクリル酸のアイオノマーからなる群より選ばれる少なくともひとつの成分(a1)50〜100重量%およびこれと共重合可能なビニル系単量体(a2)0〜50重量%とからなることが好ましく、(a1)75〜100重量%および(a2)0〜25重量%であることがさらに好ましい。(a1)と(a2)の成分比が上記範囲にあれば、メタアクリル酸重合体の性質を損なわない。
【0023】
(a1)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0024】
(a1)を構成するメタアクリル酸無水物は、そのエステル部位が隣接したメタアクリル酸系単量体と無水物を形成したメタアクリル酸誘導体であり、以下に重合体中でのその2量体の構造を示す。2量体はグルタル酸無水物類似の6員環(化1参照)、もしくはコハク酸無水物類似の5員環構造(化2参照)を形成している。
【0025】
【化1】
Figure 2004155804
【0026】
【化2】
Figure 2004155804
【0027】
(a1)を構成するメタアクリル酸のアイオノマーとしては、メタアクリル酸と各種の金属塩を反応させて得られるものであれば特に制限されない。金属塩としては、たとえば、1〜2価の金属イオンの、酸化物、水酸化物、炭酸塩、酢酸塩などを挙げることができる。1〜2価の金属イオンとしては、たとえば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属、亜鉛などの典型金属などのイオンをあげることができる。
【0028】
メタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、メタアクリル酸のアイオノマーを製造する方法については後述する。
【0029】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中では、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。耐熱性、反応性が必要な場合はメタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、およびそれらの併用が好ましい。またさらなる耐熱性が必要な場合はメタアクリル酸を金属イオンで一部もしくは全部中和させたアイオノマーが好ましい。所望の耐熱性、凝集力を持たせるためには、これらのメタアクリル酸メチル、メタアクリル酸、メタアクリル酸無水物、メタアクリル酸のアイオノマーの割合を調整すればよい。耐熱性の指標としてはガラス転移温度があげられ、ガラス転移温度が高いほど耐熱性がよい。また、メタアクリル酸イソボルニルなどを共重合させることによってもガラス転移温度を高く、すなわち耐熱性を改良することができる。
【0030】
共重合体ブロック(A1)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体(a2)としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物などをあげることができる。
【0031】
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸2−アミノエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0032】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0033】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0034】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0035】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0036】
ケイ素含有不飽和化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0037】
不飽和時カルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0038】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0039】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0040】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、重合体ブロック(A1)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系重合体ブロック(A2)との相容性などの観点から好ましいものを選択することができる。
【0041】
重合体ブロック(A1)のガラス転移温度は、エラストマー組成物の熱変形の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。重合体ブロック(A1)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より低いと、凝集力の低下により、熱変形しやすくなる傾向がある。
【0042】
重合体ブロック(A2)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、アクリル酸エステル(a3)50〜100重量%、およびこれと共重合可能なビニル系単量体(a4)50〜0重量%とからなることが好ましい。
【0043】
重合体ブロック(A2)を構成するアクリル酸エステル(a3)としては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0044】
これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、ゴム弾性、低温特性およびコストのバランスの点で、アクリル酸−n−ブチルが好ましい。さらに低温特性が必要な場合は、アクリル酸−2−エチルヘキシルを共重合させればよい。耐油性が必要な場合は、アクリル酸−n−エチルが好ましい。耐油性および低温特性のバランスが必要な場合は、アクリル酸−n−エチル、アクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルの組み合わせ、もしくはアクリル酸−n−ブチルおよびアクリル酸−2−メトキシエチルの組み合わせが好ましい。
【0045】
重合体ブロック(A2)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体(a4)としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などをあげることができる。
【0046】
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−t−ブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどをあげることができる。
【0047】
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどをあげることができる。
【0048】
シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどをあげることができる。
【0049】
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどをあげることができる。
【0050】
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどをあげることができる。
【0051】
ケイ素含有不飽和化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどをあげることができる。
【0052】
不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどをあげることができる。
【0053】
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどをあげることができる。
【0054】
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどをあげることができる。
【0055】
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、重合体ブロック(A2)に要求されるガラス転移温度および耐油性、重合体ブロック(A1)との相容性などのバランスの観点から、好ましいものを選択することができる。
【0056】
重合体ブロック(A2)のガラス転移温度は、エラストマー組成物のゴム弾性の観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。重合体ブロック(A2)のガラス転移温度が、エラストマー組成物の使用される環境の温度より高いとゴム弾性が発現されにくいので不利である。
【0057】
ブロック共重合体(A)の製造方法
ブロック共重合体(A)の製造方法としては、とくに限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合および近年開発されたリビングラジカル重合をあげることができる。リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造制御の点ならびに架橋性官能基を有する単量体を共重合できる点から好ましい。
【0058】
リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれ、本発明におけるリビングラジカル重合は、重合末端が活性化されたものと不活性化されたものが平衡状態で維持されるラジカル重合であり、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
【0059】
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(Journal of American Chemical Society,1994,116,7943)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules,1994,27,7228)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などをあげることができる。本発明において、これらのうちどの方法を使用するかはとくに制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
【0060】
原子移動ラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合される(例えば、Matyjaszewskiら,Journal of American Chemical Society,1995,117,5614、Macromolecules,1995,28,7901、Science,1996,272,866、またはSawamotoら,Macromolecules,1995,28,1721)。
【0061】
これらの方法によると一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み時の比率によって自由にコントロールすることができる。
【0062】
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物を使用できる。これらは目的に応じて使い分けることができる。ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましい。A−B−A型のトリブロック共重合体、B−A−B型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用することが好ましい。分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用することが好ましい。
【0063】
一官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
−CH
−CHX−CH
−C(CH
−CHX−COOR
−C(CH)X−COOR
−CHX−CO−R
−C(CH)X−CO−R
−C−SO
式中、Cはフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。Rは水素原子または炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、または炭素数7〜20のアラルキル基を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。Rは炭素数1〜20の一価の有機基を表わす。
【0064】
二官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
X−CH−C−CH−X
X−CH(CH)−C−CH(CH)−X
X−C(CH−C−C(CH−X
X−CH(COOR)−(CH−CH(COOR)−X
X−C(CH)(COOR)−(CH−C(CH)(COOR)−X
X−CH(COR)−(CH−CH(COR)−X
X−C(CH)(COR)−(CH−C(CH)(COR)−X
X−CH−CO−CH−X
X−CH(CH)−CO−CH(CH)−X
X−C(CH−CO−C(CH
X−CH(C)−CO−CH(C)−X
X−CH−COO−(CH−OCO−CH−X
X−CH(CH)−COO−(CH−OCO−CH(CH)−X
X−C(CH−COO−(CH−OCO−C(CH−X
X−CH−CO−CO−CH−X
X−CH(CH)−CO−CO−CH(CH)−X
X−C(CH−CO−CO−C(CH−X
X−CH−COO−C−OCO−CH−X
X−CH(CH)−COO−C−OCO−CH(CH)−X
X−C(CH−COO−C−OCO−C(CH−X
X−SO−C−SO−X
式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20アリール基または炭素数7〜20アラルキル基を表わす。Cはフェニレン基を表わす。フェニレン基は、オルト置換、メタ置換およびパラ置換のいずれでもよい。Cはフェニル基を表わす。nは0〜20の整数を表わす。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
【0065】
多官能性化合物としては、たとえば、以下の化学式で示される化合物などをあげることができる。
(CHX)
(CH(CH)−X)
(C(CH−X)
(OCO−CHX)
(OCO−CH(CH)−X)
(OCO−C(CH−X)
(SOX)
式中、Cは三置換フェニル基を表わす。三置換フェニル基は、置換基の位置は1位〜6位のいずれでもよい。Xは塩素、臭素またはヨウ素を表わす。
【0066】
これらの開始剤として用いられうる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物は、ハロゲンが結合している炭素がカルボニル基、フェニル基などと結合しており、炭素−ハロゲン結合が活性化されて重合が開始する。使用する開始剤の量は、必要とするブロック共重合体の分子量に合わせて、単量体との比から決定すればよい。すなわち、開始剤1分子あたり、何分子の単量体を使用するかによって、ブロック共重合体の分子量を制御することができる。
【0067】
前記原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としてはとくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体をあげることができる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。
【0068】
1価の銅化合物としては、たとえば、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅、シアン化第一銅、酸化第一銅、過塩素酸第一銅などをあげることができる。銅化合物を用いる場合、触媒活性を高めるために、2,2′−ビピリジルおよびその誘導体、1,10−フェナントロリンおよびその誘導体、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンなどを配位子として添加することもできる。また、2価の塩化ルテニウムのトリストリフェニルホスフィン錯体(RuCl(PPh)も触媒として使用する事ができる。
【0069】
ルテニウム化合物を触媒として用いる場合は、活性化剤としてアルミニウムアルコキシド類を添加することもできる。さらに、2価の鉄のビストリフェニルホスフィン錯体(FeCl(PPh)、2価のニッケルのビストリフェニルホスフィン錯体(NiCl(PPh)、および、2価のニッケルのビストリブチルホスフィン錯体(NiBr(PBu)も触媒として使用する事ができる。使用する触媒、配位子および活性化剤の量は、特に限定されないが、使用する開始剤、単量体および溶媒の量と必要とする反応速度の関係から適宜決定することができる。
【0070】
前記原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種溶媒中で行なうことができる。前記溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などをあげることができ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。また、溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする反応速度(即ち、撹拌効率)の関係から適宜決定することができる。
【0071】
また、前記原子移動ラジカル重合は、好ましくは室温〜200℃、より好ましくは50〜150℃の範囲で行なわせることができる。前記原子移動ラジカル重合温度が室温より低いと粘度が高くなり過ぎて反応速度が遅くなるし、200℃を超えると安価に使用できる重合溶媒が殆どない。
【0072】
前記原子移動ラジカル重合により、ブロック共重合体を製造する方法としては、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などをあげることができる。これらの方法は、目的に応じて使い分けることができる。製造工程の簡便性の点から、単量体の逐次添加による方法が好ましい。
【0073】
さらに、重合反応により重合体ブロックに導入された単量体のエステル部位を官能基変換反応させることによりカルボキシル基、酸無水物基を導入することができる。
【0074】
カルボキシル基を有するブロック共重合体の合成方法としては、特に限定はないが、例えば、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、加水分解もしくは酸分解など公知の化学反応、たとえば特開平10−298248号公報、および特開2001−234146号公報などに記載の方法によってカルボキシル基を生成させる方法がある。また、下に示す方法により誘導した酸無水物基を加水分解してカルボキシル基を生成させる方法もある。
【0075】
酸無水物基を有するブロック共重合体の合成方法としては、前記のカルボキシル基を有するブロック共重合体を、加熱により脱水もしくは脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。もしくは、メタクリル酸t−ブチル、アクリル酸t−ブチル、メタクリル酸トリメチルシリル、アクリル酸トリメチルシリルなどのような、カルボキシル基の前駆体となる官能基を有する単量体を含むブロック共重合体を合成し、上記のように加熱により脱アルコール反応を行わせることで、隣り合った単量体のエステル部位をカルボン酸無水物に変換させることができる。
【0076】
この方法により誘導した酸無水物基を有するブロック共重合体は、たとえばオートクレーブ中で精製水と加熱することで加水分解することができ、酸無水物基をカルボキシル基に変換することができる。加水分解の条件は特に制限されないが、200℃、2時間などがあげられる。
【0077】
重合によって得られた反応液は、重合体と金属錯体の混合物を含んでおり、有機酸を添加して金属錯体を除去する。引き続き、吸着処理により不純物を除去することで、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)を含んでなる(メタ)アクリル系ブロック共重合体溶液を得ることができる。
【0078】
使用することができる有機酸は、特に限定されないが、カルボン酸基、もしくは、スルホン酸基を含有するであることが好ましい。使用することができる有機カルボン酸、すなわちカルボン酸基を含有する有機物としては、特に限定されないが、たとえば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ヘキサン酸、4−メチル吉草酸、ヘプタン酸、ウンデカン酸、イコサン酸などの飽和脂肪族の一官能性のカルボン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、トリクロロ酢酸などのハロゲンを含有する飽和脂肪族の一官能性のカルボン酸、アセトキシコハク酸、アセト酢酸、エトキシ酢酸、4−オキソ吉草酸、グリコール酸、グリシド酸、グリセリン酸、2−オキソ酪酸、グルタル酸などの置換基を含有する飽和脂肪族の一官能性のカルボン酸、プロピオル酸、アクリル酸、クロトン酸、4−ペンテン酸、アリルマロン酸、イタコン酸、オキサロ酢酸などの脂肪族不飽和の一官能性のカルボン酸、安息香酸、アセチル安息香酸、アセチルサリチル酸、アトロパ酸、アニス酸、ケイ皮酸、サリチル酸などの芳香環あるいは不飽和結合のα位にカルボン酸の炭素が結合した一官能性のカルボン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、3−オキソグルタル酸、アゼライン酸、エチルマロン酸、4−オキソヘプタン2酸、3−オキソグルタル酸などの飽和脂肪族の二官能性のカルボン酸、アセチレンジカルボン酸などの不飽和脂肪族の二官能性のカルボン酸、イソフタル酸などの芳香族の二官能性のカルボン酸、アニコット酸、イソカンホロン酸などのトリカルボン酸、アミノ酪酸、アラニンなどのアミノ酸、などがあげられる。これらの2種以上を併用してもかまわない。これらの中では、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、シュウ酸が好ましい。
【0079】
本発明で使用することができる有機スルホン酸、すなわちスルホン酸基を含有する有機物としては、特に限定されないが、たとえば、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、ペンタンスルホン酸などの飽和脂肪族の一官能性のスルホン酸、1,2−エタンスルホン酸、1,3−プロパンスルホン酸、1,4−ブタンスルホン酸、1,5−ペンタンスルホン酸などの飽和脂肪族の二官能性のスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、o−トルエンスルホン酸、m−トルエンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフチルアミンスルホン酸、アミノフェノールスルホン酸などの芳香族の一官能性のスルホン酸、などがあげられる。これらの2以上を併用してもかまわない。これらの中では、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、ベンゼンスルホン酸もしくはその誘導体が好ましく、それらの中ではp−トルエンスルホン酸がより好ましい。
【0080】
好適に使用可能な有機酸の選定に当たり、条件を詳細に説明する。第一に、その有機酸が、除去したい銅を中心とする金属錯体と、金属塩を生成することである。第二に、生成した金属塩が、重合体の溶液あるいは融液から分離可能であることである。第三に、有機酸が、重合体に致命的な影響を与えないことである。
有機酸はそれ自体が液体あるいは固体の場合があるが、上の条件を満たせば何れであってもかまわない。
【0081】
これらの条件をさらに詳細に説明する。第一に、有機酸が、除去したい銅を中心とする金属錯体と金属塩を生成するためには、有機酸が、ある程度以上の酸性度を有する必要がある。酸性度の指標として有機化合物の水溶液中の解離定数を用いるならば、第1解離段の酸解離定数の逆数の対数値(pKa)が、6.0以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましく、5.0以下であることがさらに好ましい。この解離定数については、たとえば、化学便覧(改訂3版、日本化学会編、1984、基礎編II、339ページの表10.11)などを参考にすることが出来る。たとえば、酢酸のpKaは4.56、安息香酸のpKaは4.20、シュウ酸のpKaは1.04(第1段)、3.82(第2段)である。上表にはベンゼンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸の値が記載されていないが、いずれも水に可溶であり、ベンゼンスルホン酸のpKaは−2.7(有機化合物辞典942ページ、有機合成化学協会編、1985)、また、p−トルエンスルホン酸は塩酸や硫酸と同程度の強酸であるとされていることから(有機化合物辞典645ページ、有機合成化学協会編、1985)そのpKaは大きくとも2程度であるとすることができる。水に溶けない有機酸の場合は、その誘導体で水溶性の有機酸や、他の酸との強弱関係から類推することができる。
【0082】
第二に、生成した金属塩が、重合体の溶液あるいは融液から分離可能であるためには、生成した金属塩の溶媒に対する溶解度が小さいことが好ましく、難溶であることがさらに好ましく、不溶であることが最も好ましい。金属塩の溶解度を事前に予測することは難しいが、金属錯体の溶媒に対する溶解度、用いる有機酸の溶媒に対する溶解度を参考にすることが出来る。
【0083】
第三に、有機酸が、重合体に致命的な影響を与えないためには、重合体の主鎖や側鎖が酸によって分解されない構造であること、重合体に酸と反応する官能基がないことが好ましい。好ましい場合に該当しない場合は、反応させる有機酸の量や濃度、反応温度、反応時間、溶媒などを調整する必要がある。ただし、重合体の官能基を酸と反応させることで所望の官能基に変換させる場合や、官能基が酸と反応しても化学的手段などで元の状態に戻せる場合などは除く。
【0084】
有機酸の作用により金属錯体の一部が分解してしまう場合を想定して、遊離した配位子をも除去できることが好ましい。すなわち、遊離した配位子が溶媒に不溶であるか、配位子と有機酸との反応により溶媒に不溶な有機塩が生成することが好ましい。この塩の溶解度を事前に予測することは難しいが、配位子の溶媒に対する溶解度、用いる有機酸の溶媒に対する溶解度を参考にすることが出来る。
有機酸をそのまま使用するか、水溶液として使用するか、有機溶媒の溶液として使用するかについては、特に制限はないが、上の条件を満たせば何れであってもかまわない。
【0085】
除去する金属錯体は、特に制限されないが、ハロゲン化銅と、窒素を含有する配位子との反応により生成したものである金属錯体であってもかまわない。また、ここであげる窒素を含有する配位子が、2以上の配位座を有するキレート配位子であってもかまわない。これは、前記原子移動ラジカル重合の触媒として好ましく用いられる金属錯体は、1価の銅を中心金属とする金属錯体であり、1価の銅化合物としては、たとえば塩化第一銅、臭化第一銅などのハロゲン化銅があげられ、さらに、触媒活性を高めるために窒素を含有する配位子、たとえば、2,2′−ビピリジル、その誘導体(4,4′−ジノリル−2,2′−ビピリジル、4,4′−ジ(5−ノリル)−2,2′−ビピリジルが例示できる)などの2,2′−ビピリジル系化合物、1,10−フェナントロリン、その誘導体(4,7−ジノリル−1,10−フェナントロリン、5,6−ジノリル−1,10−フェナントロリンが例示できる)などの1,10−フェナントロリン系化合物、テトラメチルジエチレントリアミン(TMEDA)、ペンタメチルジエチレントリアミン、ヘキサメチル(2−アミノエチル)アミンなどのポリアミンが例示できるが、2以上の配位座を有するキレート配位子が添加される場合があるためである。もちろん、本発明で除去することが可能な金属錯体は、前記原子移動ラジカル重合の触媒に限定されず、触媒機能を持たない金属錯体であってもかまわない。
【0086】
本発明で使用する有機酸の量は、銅を中心とする金属錯体に含有される銅1mol当たり、有機酸1mol以上であることが好ましい。また、配位子の配位座1mol当たり、使用する有機酸の量は0.5molであることが好ましく、1.0mol以上であることが更に好ましい。但し、有機酸の量を増やす程反応時間は短縮されるものの、コストの観点、余剰の有機酸を除く必要の観点などを考慮すると、反応時間を勘案した必要量に抑えることが望ましい。
【0087】
本発明の、有機酸の添加による反応は、無溶媒(ポリマーの融液)または各種の溶媒中で行うことができる。前記溶媒としては、たとえばベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などがあげられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
溶媒を使用する場合、その使用量は、系全体の粘度と必要とする撹拌効率、および反応速度の関係から適宜決定すればよい。前記反応は、0℃〜200℃の範囲、好ましくは室温〜150℃の範囲で行うことができる。前記反応温度が室温より低いと粘度が高くなり過ぎて反応速度遅くなるし、200℃を超えると安価に使用できる重合溶媒が殆どないためである。
【0089】
反応の結果生成した金属塩を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。また必要に応じて、金属塩を除去せずに、次の中和工程に進むことも可能である場合がある。しかしこの場合でも、中和工程終了後には金属塩を除去しなければならない。金属塩が固体状(メタ)アクリル系ブロック共重合体に残存した場合は、減圧押出機による揮発成分除去中に重合体劣化を起こしていたり、成形体の着色や、機械物性低下などの悪影響を及ぼす恐れがある。
【0090】
重合体と、銅を中心金属とする金属錯体を含有する混合物に、有機酸を添加することで金属錯体を除去した後、系が酸性側に寄ることがあり、それが問題になる場合がある。その場合は、系を中和させる工程が必要になる。系を中和させる方法としては既知の方法を使用することができ、特に制限はないが、たとえば、塩基性の固体を使用する方法があげられる。塩基性の固体の例としては、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体などをあげることができる。塩基性吸着剤としては、キョーワード500SH(協和化学製)などをあげることができる。固体無機酸としては、NaO、KO、MgO、CaOなどをあげることができる。陰イオン交換樹脂としては、スチレン系強塩基性陰イオン交換樹脂、スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂、アクリル系弱塩基型陰イオン交換樹脂などをあげることができる。上記中和工程時に添加した吸着剤を除去する方法は特に制限されないが、必要に応じて、フィルタープレスなどの濾過、デカンテーション、遠心沈降など公知の方法を使用することが出来る。
【0091】
本発明における溶液状(メタ)アクリル系ブロック共重合体とは、(メタ)アクリル系ブロック共重合体が有機溶媒に溶解した溶液を含むものであれば特に限定はされず、公知の溶液重合法や上記の種々の制御重合法により合成された重合体溶液の他に、重合中に固体状重合体が一部析出したものであってもよいし、重合が終了した溶液に沈殿剤を添加して一部重合体を沈殿させたものであってもよい。その中でも、重合後の反応液を処理することによって得られたものが好ましく、この場合には、(メタ)アクリル系ブロック共重合体を溶解させた有機溶媒は、重合反応に用いられた反応溶媒及び重合反応における未反応の残存モノマーからなる。
【0092】
このようにして得られた重合体溶液は、引き続き、蒸発操作により重合溶媒及び未反応モノマーを除去して(メタ)アクリル系ブロック共重合体を単離する。
蒸発方式としては薄膜蒸発方式、フラッシュ蒸発方式、押出しスクリューを備えた横形蒸発方式などを用いることができる。(メタ)アクリル系ブロック共重合体は粘着性を有するため、上記蒸発方式の中でも押出しスクリューを備えた横形蒸発方式単独、あるいは他の蒸発方式と組み合わせることにより効率的な蒸発が可能である。
【0093】
蒸発操作により溶剤を除去した重合体は、引き続き、押出し機に供給されペレット化される。押出し機出口は直径2mm〜8mm程度の単一または複数の孔をもつダイスで構成し、押出された樹脂はストランド状で冷却され、その後カットすることにより円柱状のペレットとなる。もしくはホットカット方式又はアンダーウォーターカット方式に代表されるように、ダイス表面を高速回転するカッターを併用して球状ペレットを製造することも可能である。粒度のそろったペレットを安定して製造するにあたってはホットカット方式又はアンダーウォーターカット方式が好ましい。
【0094】
ホットカット方式又はアンダーウォーターカット方式のペレット化は樹脂が溶融状態で行われるため、樹脂温度は通常160℃〜230℃である。これ以下の温度では樹脂の粘性が上がり、安定したペレット化ができない。また230℃を超える温度範囲においては重合体の熱劣化が懸念されるため、押出し機側の温度調整により対応が必要となる。
【0095】
加工助剤(P)
これらの(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)は強い粘着性を有しており、添加剤を加えることなく成型して成型体とする場合に、製造においては金型など、保管や輸送においては包装材料など、使用の全般ににおいては隣接した部材などに対する付着が生じたり、また自着する問題があった。
【0096】
本発明ではこれら樹脂に加工助剤を付与して成型することによりブロッキング性を改善することが可能になった。本発明にいう加工助剤の具体例としては、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、金属石鹸、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、二酸化珪素、アルミナ、水酸化アルミ、カーボンブラック、アクリル系高分子微粒子などをあげることができる。これらの群より選ばれる1種または2種以上が好ましい。
【0097】
脂肪酸アミドの例としては、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エルカ酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミドなどを挙げることができる。市販品としては、”アルフロー(日本油脂(株)製)のHシリーズ、Pシリーズ、Eシリーズ、Sシリーズ、Dシリーズ、ADシリーズ”をあげることができる。
【0098】
脂肪酸エステルの例としては、ラウリン酸メチル、ミリスチン酸メチル、パルミチン酸メチル、ステアリン酸メチル、オレイン酸メチル、エルカ酸メチル、ベヘニン酸メチル、ラウリン酸ブチル、ステアリン酸ブチル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、パルミチン酸オクチル、ステアリン酸オクチル、ネオペンチルポリオール脂肪酸エステル、ネオペンチルポリオール脂肪酸エステルの部分エステル化物、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、などを挙げることができる。市販品としては、”ユニスター(日本油脂(株)製)のMシリーズ、MBシリーズ、Hシリーズ、HPシリーズ”を挙げることができる。
【0099】
脂肪酸金属塩の例としては特に限定されないが、脂肪酸としてはラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、エルカ酸、ベヘニン酸など、金属としてはカリウム、ナトリウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム等からなる脂肪酸金属塩を挙げることができる。たとえば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸バリウム、ステアリン酸バリウム、p−t−ブチル安息香酸バリウム、ステアリン酸アルミニウム、p−t−ブチル安息香酸亜鉛などがあげられる。
【0100】
金属石鹸の例としては、前記脂肪酸金属塩のほかに、芳香族を含めたカルボン酸金属塩、およびアルキルフェノールの金属塩を挙げることができ、金属としてはカリウム、ナトリウム、アルミニウム、カルシウム、亜鉛、マグネシウム、バリウム等を用いた各金属石鹸を挙げることができる。
【0101】
炭酸カルシウムの例としては、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウムのような単体の他、これに飽和脂肪酸あるいは界面活性剤による表面処理を施したもの、あるいはマグネシウム、シリケート等を配合したものを挙げることができる。
【0102】
タルクは”タルクLMR(富士タルク工業(株)製)”、カオリンは”ASP200番(エンゲルハード(株)製)”等を挙げることができる。
【0103】
二酸化珪素の例としては、粉末状の乾式シリカ、湿式シリカなどを挙げることができる。これらの中でも、煙霧質シリカ、シリカ表面の水酸基をモノメチルトリクロロシランまたはジメチルジクロロシラン等と反応させた疎水性の無水無定型シリカが好ましい。煙霧質シリカの市販品としては、日本アエロジル株式会社の”R972”および”R974”など、また無水無定型シリカの市販品は、株式会社トクヤマ製の“レオロシールMT−10,DM−10,DM−20,DM−30およびDM−30S”などが知られている。
【0104】
アルミナの例としては、ローソーダアルミナ、超微粒子酸化アルミニウム、高純度アルミナなどを挙げることが出来る。
【0105】
水酸化アルミニウムの例としては、超微粒水酸化アルミなどを挙げることが出来る。
【0106】
アクリル系高分子微粒子の例としてはポリメタクリル酸メチル樹脂粉末などが挙げられる。ポリメタクリル酸メチル樹脂粉末の市販品として総研化学株式会社製の”ケミスノーMXシリーズ、MPシリーズ”などが挙げることができる。
【0107】
加工助剤(P)の量は、その効果が発現される量であれば特に制限されないが、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.001〜50重量部であることが好ましい。加工助剤(P)の量が(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.001重量部より少ないとその効果が出ない場合があるし、50重量部より多い場合は(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)の特性が損なわれる場合がある。
【0108】
以上の加工助剤(P)について、その効果の発現機構から滑剤(Q)とフィラー(R)の2つに分類することができ、それらはどちらか一方でも、併用してもよく、樹脂の性状、加工方法、加工条件、成型体の形状、成型体に要求される物性などによって選定すればよい。
【0109】
滑剤(Q)としては、何れであってもよく特に限定はないが、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、金属石鹸などが挙げられ、それらの内1種類、又は2種類以上を併用してもよく、樹脂の性状、加工方法、加工条件、成型体の形状、成型体に要求される物性などによって選定すればよい。滑剤(Q)は、成型時の温度や圧力或いはその添加量などにより、成型体表面に析出させる事ができ、所望の防着効果を得ることができる。滑剤(Q)の添加量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.001〜5部であることが好ましく、0.005〜2部であることがさらに好ましく、0.01部〜0.5部であることがもっとも好ましい。0.001部未満では、多少のブロッキング防止効果があるものの、高温貯蔵時等に充分なブロッキング防止の効果が観察されない場合がある。一方、付着量が5重量%を超える濃度で使用した場合、ブロッキング防止効果に変わりはないが、得られる組成物の物性が著しく低下する場合があるため好ましくない。
【0110】
フィラー(R)としては、何れであってもよく特に限定はないが、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、二酸化珪素、アルミナ、水酸化アルミ、カーボンブラック、アクリル系高分子微粒子が挙げられ、それらの内1種類、又は2種類以上を併用してもよく、樹脂の性状、加工方法、加工条件、成型体の形状、成型体に要求される物性などによって選定すればよい。この中ではカーボンブラック、二酸化珪素、タルクが好ましい。これらのフィラーは汎用性があり、安価であるためである。フィラー(R)は、成型体中に分散して、表面付近に存在するものが表面特性の改質に寄与する。このフィラー(R)は、成型体の強度、機械特性、耐熱性などの物性向上にも効果がある場合がある。
【0111】
フィラー(R)の添加量は、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.1〜200重量部であることが好ましく、0.5〜100重量部であることがさらに好ましく、1〜50重量部であることがもっとも好ましい。フィラー(R)の添加量が0.1重量部未満では、多少の表面性改質の効果があるものの、高温貯蔵時等に充分な効果が観察されない場合がある。またフィラー(R)の添加量が200重量部を超える場合には、ポリマーの本来有する物性が損なわれたり、付着している粉体が脱落飛散して作業環境に悪影響を与えることになるため好ましくない。
【0112】
本発明において(メタ)アクリル系ブロック重合体(A)に加工助剤(P)を添加する方法としては、(メタ)アクリル系ブロック重合体(A)のペレット或いはストランドの表面に加工助剤(P)を塗布もしくは付着させる方法と、(メタ)アクリル系ブロック重合体(A)と加工助剤(P)とを溶融混練する方法とが挙げられる。その目的、使用する加工助剤(P)の種類などに合わせて、好ましい形態の加工助剤(P)を選択すればよく、両方を併用してもかまわない。例えば、加工助剤(P)が粉体である場合には、少量で充分あれば塗布により重合体の表面に付着させることができるが、多量の添加が必要な場合は溶融混練が好ましく、加工助剤(P)がペレットもしくは塊状である場合には、溶融混練が好ましく、加工助剤(P)が水分散体もしくは水溶液である場合には、塗布が好ましい。複数の加工助剤(P)を使用する場合に当たっても、上記のようにそれぞれに適した形態の添加剤を選択することが望ましい。
【0113】
(メタ)アクリル系ブロック重合体(A)のペレットの表面に加工助剤(P)を塗布もしくは付着させる方法としては、加工助剤(P)を含有する水に、(メタ)アクリル系ブロック重合体(A)のペレットを分散させてその後ペレット表面の水を除去する方法(方法1)と、加工助剤(P)を含有する水を(メタ)アクリル系ブロック重合体(A)のストランドの冷却水として使用する方法(方法2)と、加工助剤(P)と(メタ)アクリル系ブロック重合体(A)のペレットを直接混合させることにより表面塗布させる方法(方法3)が挙げられ、これらを併用してもかまわない。方法1は、ペレットの表面に確実に(P)を塗布することができる利点があり、ペレット単体の粘着が激しい場合に適している。方法2は、ストランドの形状でないと適用できないという制限があるが、連続生産に適した方法である。方法3は、水を使用しないことから乾燥などの設備が不要であり、ペレット単体の粘着がそれほど激しくない場合に適している。
【0114】
ここでいうペレットとは、重合体を粒状、角状など小塊状の成形材料に造粒したものであれば特に限定はなく、その粒径はハンドリングできる範囲であればかまわないし、形状についても球状、ラグビーボール状、円柱状、不定形などいずれでもよく特に制限されない。
【0115】
ここでいうストランドとは、重合体を押出し機などで棒状に加工したものであれば特に限定はなく、その直径はカットしたペレットがハンドリングできる範囲であれば特に制限されず、断面形状についても円状、楕円状、不定形など何れでもよく特に制限されない。
【0116】
上記2つの、水を用いて滑剤を塗布する方法としては、水への滑剤の合計添加量を、0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.05重量%〜0.5重量%とした液を調整し、これをペレットに噴霧するか、その液中にペレットもしくはストランドを投入し、処理する方法が挙げられる。0.05重量%未満では、成型体が粘着現象を起こし易い傾向がある。一方、5重量%を超える濃度で使用した場合、粘着防止・表面性改質効果に変わりはないため、それ以上使用することによる利点は見出せない。
【0117】
滑剤を添加した水を噴霧することで、滑剤をペレットに塗布する方法として例えば、コンベアなどの移送装置上にペレットを並べ、噴霧器内を通過させる際に滑剤液を連続的に噴霧する方法などが挙げられる。
【0118】
液中にペレットを投入し、滑剤をペレットに塗布する方法としては、通常知られている方法で、実施可能であり、例えば、攪拌機を備えた混合槽に滑剤を添加した溶剤およびペレットを投入し、0℃〜溶剤の沸点以下の温度にて、所定時間混合を行い、濾過等の方法で、ペレットおよび液を分離する。また、重合体(A)の製造がアンダーウォーターカット方式およびストランドカット方式で行われる場合には、その冷却水中に滑剤を加えても良い。ストランドカット方式では、ダイスから払い出された樹脂は高温であり、ストランドを水相にて冷却し、樹脂を固化させた後カッティングする方法が一般的であるが、その水相中に予め滑剤を添加、分散させておき、ストランドを水相中に浸漬させることにより表面に滑剤を付着させることでペレットのブロッキング防止効果を発現することも可能である。
【0119】
これら滑剤が塗布されたペレットは、送風あるいは必要に応じて熱風を与えることにより水を乾燥させる。この際、滑剤は揮発しないため、そのままペレット表面に残留する。
【0120】
ペレットに滑剤を塗布するもう一つの方法として、ペレット及び滑剤を直接混合することで処理することも有効である。本法においては、ペレットに滑剤を塗布した後の乾燥等の工程を省略することが可能であることから、ホットカット方式などの水との接触を伴わないペレット製造法においては特に有効である。ペレット及び滑剤を直接混合する装置としては、例えば水平円筒型混合機、V型混合機、二重円錐型混合機、リボン型混合機、円錐型スクリュー混合機、高速流動型混合機、回転円盤型混合機、気流攪拌型混合機、重力落下型混合機、攪拌型混合機などが挙げられる。
【0121】
本発明で成型体の製造方法としては、射出成型、射出ブロー成型、ブロー成型、押出ブロー成型、押出成型、カレンダー成型、真空成型、プレス成型などがあげられる。何れの成型方法を選択するかは成型体の形状、重合体の性状、所望の生産性から決めればよい。加工プロセスにスクリューなどによる溶融混練が含まれない場合、たとえばプレス成型などでは、フィラー(R)の分散不良が起こる場合があり、あらかじめ溶融混練を行うなどの工夫が必要である。ここでの溶融混練の方法は特に制限されず、公知の加工方法、たとえば二軸押し出し機、バンバリーミキサー、ニーダーなどによる加工を挙げることができる。また、加工プロセスにスクリューなどによる溶融混練が含まれる場合、たとえば射出成型などであっても、スクリューの長さや条件によりフィラー(R)の分散不良が起こる場合があり、この場合には射出スクリューの背圧を上げたり、あらかじめ溶融混練を行うなどの工夫が必要である。
【0122】
得られた成型体は、各種のブーツやホース類、シーリング部材、制振材料、粘着材料、フィルム材料として用いることができる。
【0123】
【実施例】
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下において、EA、BA、MEA、MMA、TBMAは、それぞれ、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸−tert−ブチルを意味する。
【0124】
<試験方法>
(型離れ性)
射出成型の冷却後、金型開き動作を行い、スムーズに型から離れるものを○、さらにスムーズに型から離れるものを○○、スプールが抜けないなどスムーズに型から離れない問題があるものを×とした。
【0125】
(動的摩擦係数)
JIS K7215に準拠し、2mm厚のシートを相手材料として20×20mmと試験片として80×200mmの形状に切り出し、SURFACE PROPERTY TESTER(HEIDON社製TYPE:14DR)を用いて動的摩擦係数を求めた。試験条件は荷重100gf、速度50mm/minで行った。粘着性などが強いために測定できない場合は記号×を記載した。
【0126】
(分子量)
本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システムとして、ウオーターズ(Waters)社製GPCシステムを用い、カラムに、昭和電工株式会社製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)を用いた。
【0127】
(製造例1) MMA−BA−MMA型ブロック共重合体(組成比MMA/BA=3/7、以下MBAMと略称する)の合成
50L反応機に臭化第一銅112.56gを仕込み、反応機内を窒素置換した。アセトニトリル627.44gおよびアクリル酸ブチル1072.8gを予め混合しておいた溶液を、反応機内を減圧にした状態で仕込み、65℃に昇温して30分間攪拌した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル56.50gをアクリル酸ブチル6973.2gおよび酢酸ブチル158.76gに溶解させた溶液、並びにアセトニトリル784.30gを仕込み、85℃に昇温しつつ、さらに30分間攪拌を行った。ペンタメチルジエチレントリアミン16mlを加えて、第一ブロックとなるアクリル酸ブチルの重合を開始した。転化率が95%に到達したところで、トルエン14228.8g、塩化第一銅77.68g、メタクリル酸メチル5182.5gを仕込み、ペンタメチルジエチレントリアミン16mlを加えて、第二ブロックとなるメタクリル酸メチルの重合を開始した。
転化率が56%に到達したところで、トルエン8660gを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mn107000が、分子量分布Mw/Mnが1.46であった。また、NMRによる組成分析を行ったところ、MMA/BA=29/71(重量%)であった。得られたブロック共重合体溶液に対しトルエンを加えて重合体濃度を14.6重量%になるよう調整し、及びp−トルエンスルホン酸を32g加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、分離板型遠心沈降機を用いて固形分を除去した。このブロック共重合体溶液50Lに対し、キョーワード500SH(協和化学工業(株)製)150gを加え、反応機内を窒素置換し、室温で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応を停止させた。その後溶液を払い出し、固液分離を行って吸着剤を除去した。
【0128】
上記重合体溶液をベント口付き横形蒸発機に供給し溶媒及び未反応モノマーの蒸発を行うことで重合体を単離した。蒸発機の胴部ジャケット及びスクリューは熱媒で200℃に温度調節し、蒸発機内部は真空ポンプにより約0.01MPa以下の減圧状態を保持した。
【0129】
(製造例2) 酸無水物基含有ブロック共重合体(以下、AN−M3AMと略称する)、およびカルボキシル基含有ブロック共重合体(以下、COOH−M3AMと略称する)の合成
5Lのセパラブルフラスコを用い、2,5−ジブロモアジピン酸ジエチル5.89g(16.4ミリモル)、BA362ml(2.52モル)、EA344ml(3.17モル)、MEA195ml(1.51モル)の仕込み比で重合を行ない、BAの転化率が95%、EAの転化率が95%、MEAの転化率が97%の時点でTBMA106ml(0.66モル)、MMA280ml(2.62モル)を添加した。TBMAの転化率が64%、MMAの転化率が59%の時点で反応を終了させた。反応溶液をトルエン2.0Lで希釈し、p−トルエンスルホン酸一水和物7.16gを加えて室温で3時間撹拌した。析出した不溶部を桐山漏斗で濾過して除いた後、ポリマー溶液に吸着剤キョーワード500SH(協和化学製)を4.50g加えて室温で更に3時間撹拌した。桐山漏斗で吸着剤を濾過し、溶液を乾燥させて溶剤および残存モノマーを除き、(MMA−TBMA)−(BA−EA−MEA)−(MMA−TBMA)型ブロック共重合体を得た。
得られたブロック共重合体のGPC分析を行なったところ、数平均分子量Mnが111000、分子量分布Mw/Mnが1.47であった。
【0130】
さらに、得られたブロック共重合体45gと、Irganox1010(チバガイギー製)0.2gを設定温度240℃、回転数100回/分で20分間プラストミルで混練し、酸無水物型ブロック共重合体を得た。t−ブチルエステル部位の無水カルボン酸への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)および13C―NMR(核磁気共鳴スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、変換後には1800cm−1あたりに酸無水物に由来する吸収スペクトルが見られるようになることから確認できた。13C−NMRでは変換後にはt−ブチル基のメチン炭素由来の82ppmのシグナルと、メチル炭素由来の28ppmシグナルが消失することから確認できた。この樹脂をAN−M3AMと略称する。
【0131】
さらに、得られたブロック共重合体20gと、精製水40mLをオートクレーブに投入し、200℃の油浴で2時間加熱し、酸無水物基をカルボキシル基に変換した。反応終了後、過剰の水を除き、80℃で真空乾燥させて目的のCOOH−M3AMを得た。カルボキシル基への変換は、IR(赤外線吸収スペクトル)により確認できた。すなわち、IRでは、1800cm−1あたりに酸無水物に由来する吸収スペクトルが、変換後には消失することから確認できた。この樹脂をCOOH−M3AMと略称する。
【0132】
(射出成型)
本実施例に示す射出成型は、東芝製射出成型機IS80EPNを使用した。金型はサイドゲートのプレートを用いて長さ88mm*幅49mm*厚み2mmの成型体を得た。計量位置23mm、成型サイクルは射出10秒、冷却30秒とし、半自動モードで金型からの離型性を評価した。また、取り出した成型体について、摩擦係数を測定した。ノズル先端の設定温度と、金型温度は表1に示した。
【0133】
【表1】
Figure 2004155804
【0134】
(実施例1)
製造例1で得られた樹脂1.3kgを冷凍粉砕したものを、アルフロー(H50ES、日本油脂(株)製)110gを水18Lに分散させた液に投入して2時間攪拌処理し、付着した水を乾燥させて除いた。この樹脂を、射出成型で成型して、成形性を評価した(表2)。金型からの離型性は良好であった。
【0135】
【表2】
Figure 2004155804
【0136】
(実施例2)
製造例1で得られた樹脂を冷凍粉砕したもの900gと、タルクLMR(富士タルク工業(株)製)180gを粉体のままハンドブレンドし、コニカル二軸押出し機(ラボプラストミル50C150、東洋精機製、に接続して使用)で混練した。コニカルの温度はC1/C2/C3/DH=130/150/170/170(℃)、回転数は30rpmとした。得られたストランドを冷凍粉砕し、アルフロー110gを水18Lに分散させた液に投入して2時間攪拌処理し、付着した水を乾燥させて除いた。この樹脂を、実施例1と同様に評価した(表2)。
金型からの離型性は実施例1よりさらに良好であった。
【0137】
(実施例3)
製造例2で得られた樹脂COOH−M3AM1.2kgを冷凍粉砕したものを、アルフロー120gを水20Lに分散させた液に投入して2時間攪拌処理し、付着した水を乾燥させて除いた。この樹脂を、射出成型で成型して、成形性と摩擦特性を評価した(表2)。金型からの型離性は良好であった。
【0138】
(実施例4)
製造例2で得られた樹脂COOH−M3AMを100重量部と、カーボンブラック旭60HN(旭カーボン(株)製)7重量部、ステアリン酸亜鉛SZ2000(堺化学工業(株)製)1.8重量部、Irganox1010(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)0.2重量部を表1に従って配合し、200℃に設定した加圧ニーダーで混練した。得られた樹脂を冷凍粉砕し、実施例3と同様にして、アルフロー処理の後に射出成型で成型して、成形性と摩擦特性を評価した(表2)。金型からの離型性は良好であった。摩擦特性は、実施例3よりも良好であった。
【0139】
(実施例5、実施例6)
製造例2で得られた樹脂COOH−M3AM100重量部と、カーボンブラック旭60HN(旭カーボン(株)製)5重量部、ジンクステアレート(日本油脂(株)製)2重量部を表1に従って配合し、先端ダイス温度を170℃、回転数100rpmに設定した同方向二軸押出し機(LABOTEX30HSS、日本製鋼所(株)製)で混練してストランドとし、これをペレタイズして得られたペレットを70℃12時間熱風乾燥の後に射出成型で成型して、成形性を評価した(表2)。ノズル先端設定温度を実施例5においては180℃、実施例6においては240℃としたが、いずれでも金型からの離型性は良好であった。
【0140】
(実施例7)
製造例2で得られた樹脂AN−M3AM100重量部と、カーボンブラック旭60HN(旭カーボン(株)製)10重量部、ジンクステアレート(日本油脂(株)製)1重量部を表1に従って配合し、先端ダイス温度を170℃、回転数100rpmに設定した同方向二軸押出し機(LABOTEX30HSS、日本製鋼所(株)製)で混練してストランドとし、これをペレタイズして得られたペレットを70℃12時間熱風乾燥の後に射出成型で成型して、成形性を評価した(表2)。金型からの離型性は良好であった。
【0141】
(比較例1)
実施例3において、滑剤を添加しない以外は同様に実施した。この際、金型表面からの離型性は実施例3よりやや劣る程度であったが、スプール部が抜けにくく、連続した成型が不可能な状態であった。試験の結果、加工助剤を用いない場合は事実上成型が困難であるのに対し、加工助剤を塗布もしくは内部添加することで、型離れ性が改善されることが明らかである。さらに、加工助剤として、滑剤とフィラーを併用することで、型離れ性がさらに改良、もしくは表面の摩擦特性が改良されることが認められた。
【0142】
【発明の効果】
本発明の方法を用いることにより、アクリル系単量体及びメタアクリル系単量体を重合してなる(メタ)アクリル系ブロック共重合体ペレットのブロッキングを防止することができる。

Claims (9)

  1. メタアクリル系単量体を主体とする重合体ブロック(A1)とアクリル系単量体を主体とする重合体ブロック(A2)を含有する(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)に加工助剤(P)を添加して成型したことを特徴とする(メタ)アクリル系ブロック共重合体の成型体。
  2. 加工助剤(P)が水に含有され、その水に重合体(A)のペレットを分散させ、その後ペレット表面の水を除去することを特徴とする請求項1記載の成型体。
  3. 加工助剤(P)が水に含有され、その水が重合体(A)のストランドの冷却水として使用することを特徴とする請求項1記載の成型体。
  4. 加工助剤(P)と、重合体(A)のペレットを直接混合させることにより表面塗布することを特徴とする請求項1記載の成型体。
  5. 加工助剤(P)と、重合体(A)を溶融混練させることを特徴とする請求項1記載の成型体。
  6. 加工助剤(P)の量が、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.001〜200部であることを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の成型体。
  7. 加工助剤(P)が、脂肪酸アミド、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、金属石鹸からなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上の滑剤(Q)および/または、炭酸カルシウム、タルク、カオリン、二酸化珪素、アルミナ、水酸化アルミ、カーボンブラック、アクリル系高分子微粒子からなる群より選ばれるいずれか1種または2種以上のフィラー(R)であることを特徴とする請求項1〜5何れかに記載の成型体。
  8. 滑剤(Q)の量が、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.001〜5部であり、かつ、フィラー(R)の量が、(メタ)アクリル系ブロック共重合体(A)100重量部あたり、0.1〜200部であることを特徴とする請求項7記載の成型体。
  9. 成型方法が射出成型である、請求項1〜8何れかに記載の成型体。
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