JP2007039562A - アクリル系ブロック共重合体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有し、アクリル系単量体成分を主成分とするアクリル系重合体ブロック(a)及びメタアクリル系単量体成分を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】 アクリル酸−t−ブチル及び/又はメタアクリル酸−t−ブチルの存在割合が全単量体成分に対して5モル%未満となるように、アクリル系重合体ブロック(a)及びメタアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A0)の重合を溶媒中で行った後、この重合体溶液にカルボン酸基もしくはスルホン酸基を含有する有機酸を混合し、100〜180℃に加熱する。
【選択図】 なし
【解決手段】 アクリル酸−t−ブチル及び/又はメタアクリル酸−t−ブチルの存在割合が全単量体成分に対して5モル%未満となるように、アクリル系重合体ブロック(a)及びメタアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A0)の重合を溶媒中で行った後、この重合体溶液にカルボン酸基もしくはスルホン酸基を含有する有機酸を混合し、100〜180℃に加熱する。
【選択図】 なし
Description
本発明は、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体の製造方法に関する。
メタアクリル酸メチルなどをハードセグメント、アクリル酸ブチルなどをソフトセグメントに有するアクリル系ブロック共重合体は、熱可塑性エラストマーとして使用できることが知られている。メタアクリル系重合体ブロックとアクリル系重合体ブロックを含有するブロック共重合体としては、ポリメタアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸ブチル−b−ポリメタアクリル酸メチルのブロック共重合体(MMA−b−BA−b−MMA)、ポリメタアクリル酸メチル−b−ポリアクリル酸2エチルヘキシル−b−ポリメタアクリル酸メチルのブロック共重合体(MMA−b−2EHA−b−MMA)などが知られている(特許文献1参照)。アクリル系ブロック共重合体は、耐候性、耐久性、耐熱性および耐油性に優れるという特徴を有する。
アクリル系ブロック共重合体は、種々のリビング重合により合成が可能である。合成方法の一例として、シリルケテンアセタール/ルイス酸系のいわゆるグループトランスファー重合(特許文献2参照)、ポリフィリン・有機アルミニウム錯体によるリビング重合(非特許文献1参照)、有機希土類金属錯体を開始剤とするリビング重合(特許文献3参照)などがあげられる。とくに、有機希土類金属錯体による重合では、メタアクリル系重合体ブロックを立体規則的に重合し、アクリル系重合体を非立体規則的に重合することができ、これにより、耐熱性と耐衝撃性もしくはエラストマー的性質の優れたブロック共重合体を与えることが可能であることが報告されている。さらに、ハロゲン系開始剤および銅触媒による原子移動ラジカル重合において、アクリル酸エステル類の重合ののち、選択的なエステル結合の分解をおこなうことにより、ポリアクリル酸−ポリアクリル酸エステル−ポリアクリル酸からなるブロック重合体を得られ、高温でも物性変化の小さい粘着剤となり得ることが特許文献4に記載されている。
カルボキシル基や酸無水物基などの官能基をアクリル系ブロック共重合体に導入することにより、耐熱性等の種々の物性を改善可能であることが知られている。
カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体を製造する方法としては、アクリル酸−t−ブチル及び/又はメタクリル酸−t−ブチルを単量体成分として含有するアクリル系ブロック共重合体を製造し、その後、アクリル酸−t−ブチルやメタクリル酸−t−ブチルのエステルを酸触媒により分解する方法などがある。
カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体を製造する方法としては、アクリル酸−t−ブチル及び/又はメタクリル酸−t−ブチルを単量体成分として含有するアクリル系ブロック共重合体を製造し、その後、アクリル酸−t−ブチルやメタクリル酸−t−ブチルのエステルを酸触媒により分解する方法などがある。
前駆体となるアクリル系ブロック共重合体の製造では、重合触媒として遷移金属錯体が用いられ、反応制御を容易にするために、適宜重合溶媒が使用される。また、重合触媒として用いた遷移金属錯体は、精製処理を行うことにより除去され、これにより、アクリル系ブロック共重合体溶液が得られる。
しかし、前駆体となるアクリル系ブロック共重合体と、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を導入した後(アクリル酸−t−ブチルやメタクリル酸−t−ブチルのエステルを酸触媒により分解した後)のアクリル系ブロック共重合体は、極性が大きく異なり、溶媒への溶解性も変化する。このため、比較的極性の低い有機溶媒を用いて前駆体の重合を行った場合、カルボキシル基及び/又は酸無水物基導入後のブロック共重合体溶液は著しい粘度上昇、もしくはゲル化を引き起こし、製造プロセスを設計する上で困難となる。
このような現象を回避する手段として、前駆体の重合後に溶媒を除去し、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体の溶解に適した溶媒に置換する方法が考えられる。しかしながら、高分子量の重合体からの溶媒除去は困難な場合が多く、また、同一プロセスで異なる溶媒を使用することで製造プロセスの複雑化が避けられない。
他の方法として、溶媒を使用せずにカルボキシル基及び/又は酸無水物基を導入することも考えられる。しかし、重合体の分子量によっては溶融粘度が高く、後工程での酸触媒の除去を考えると最良の方法とは言えない。
本発明は、アクリル酸−t−ブチル及び/又はメタクリル酸−t−ブチルを単量体として使用したアクリル系ブロック共重合体を前駆体として、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体を簡便に製造する方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体の製造方法を検討した結果、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、アクリル酸−t−ブチル及び/又はメタアクリル酸−t−ブチルの存在割合が全単量体成分に対して5モル%未満となるように、アクリル系単量体成分を主成分とするアクリル系重合体ブロック(a)及びメタアクリル系単量体成分を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A0)の重合を溶媒中で行った後、この重合体溶液にカルボン酸基、もしくはスルホン酸基を含有する有機酸を混合し、100〜180℃に加熱することを特徴とするカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法に関する。
好適な実施態様としては、アミノ基及び/又は水酸基を含有しない溶媒を用いることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法が挙げられる。
好適な実施態様としては、有機酸としてp−トルエンスルホン酸を用いることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法が挙げられる。
好適な実施態様としては、溶媒としてトルエン及び/又はアセトニトリルを用いることを特徴とするアクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法が挙げられる。
本発明を用いれば、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体を簡便な方法で製造することができる。その結果、生産効率の向上や、製造コストの低下を図ることが可能となる。
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。
<アクリル系ブロック共重合体(A)>
本発明に係る方法で製造されるアクリル系重合体ブロック(a)およびメタアクリル系重合体ブロック(b)からなるブロック共重合体(A)は、アクリル系重合体ブロック(a)およびメタアクリル系重合体ブロック(b)の少なくとも一方にカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有している。ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体であっても、分岐状(星状)ブロック共重合体であっても、これらの混合物であってもよく、特に問うものではない。ブロック共重合体(A)の構造は、必要とされるブロック共重合体(A)の物性に応じて使いわければよい。また、その分子量や、アクリル系重合体ブロック(a)とメタアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、要求されるブロック共重合体(A)を含有する組成物の成型時の形状の保持や溶融性、エラストマーとしての弾性等の物性から適宜決定される。
本発明に係る方法で製造されるアクリル系重合体ブロック(a)およびメタアクリル系重合体ブロック(b)からなるブロック共重合体(A)は、アクリル系重合体ブロック(a)およびメタアクリル系重合体ブロック(b)の少なくとも一方にカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有している。ブロック共重合体(A)の構造は、線状ブロック共重合体であっても、分岐状(星状)ブロック共重合体であっても、これらの混合物であってもよく、特に問うものではない。ブロック共重合体(A)の構造は、必要とされるブロック共重合体(A)の物性に応じて使いわければよい。また、その分子量や、アクリル系重合体ブロック(a)とメタアクリル系重合体ブロック(b)の組成比は、要求されるブロック共重合体(A)を含有する組成物の成型時の形状の保持や溶融性、エラストマーとしての弾性等の物性から適宜決定される。
<アクリル系重合体ブロック(a)>
アクリル系重合体ブロック(a)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、このようなものとして、例えば、アクリル酸エステルおよびこれと共重合可能なビニル系単量体とからなるものが挙げられる。
アクリル系重合体ブロック(a)は、アクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、このようなものとして、例えば、アクリル酸エステルおよびこれと共重合可能なビニル系単量体とからなるものが挙げられる。
アクリル系重合体ブロック(a)を構成するアクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−n−ヘプチル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、アクリル酸トルイル、アクリル酸ベンジル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸−2−メトキシエチル、アクリル酸−3−メトキシブチル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸グリシジル、アクリル酸−2−アミノエチル、アクリル酸のエチレンオキサイド付加物、アクリル酸トリフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、アクリル酸2−パーフルオロエチル、アクリル酸パーフルオロメチル、アクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、アクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどを挙げることができる。
これらは単独でまたはこれらの2種以上を組み合わせて用いることができる。いずれの単量体を用いるかは、ゴム弾性や低温特性、圧縮永久歪み等の諸物性およびコスト等を勘案して、適宜決定する。
アクリル系重合体ブロック(a)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、メタアクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物などを挙げることができる。
メタアクリル酸エステルとしては、たとえば、メタアクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル、メタアクリル酸−n−プロピル、メタアクリル酸イソプロピル、メタアクリル酸−n−ブチル、メタアクリル酸イソブチル、メタアクリル酸−n−ペンチル、メタアクリル酸−n−ヘキシル、メタアクリル酸シクロヘキシル、メタアクリル酸−n−ヘプチル、メタアクリル酸−n−オクチル、メタアクリル酸−2−エチルヘキシル、メタアクリル酸ノニル、メタアクリル酸デシル、メタアクリル酸ドデシル、メタアクリル酸フェニル、メタアクリル酸トルイル、メタアクリル酸ベンジル、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸−2−メトキシエチル、メタアクリル酸−3−メトキシブチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタアクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタアクリル酸ステアリル、メタアクリル酸グリシジル、メタアクリル酸−2−アミノエチル、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)ジメトキシメチルシラン、メタアクリル酸のエチレンオキサイド付加物、メタアクリル酸トリフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−トリフルオロメチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチルエチル、メタアクリル酸2−パーフルオロエチル−2−パーフルオロブチルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロエチル、メタアクリル酸パーフルオロメチル、メタアクリル酸ジパーフルオロメチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロメチル−2−パーフルオロエチルメチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロデシルエチル、メタアクリル酸−2−パーフルオロヘキサデシルエチルなどを挙げることができる。
芳香族アルケニル化合物としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレンなどを挙げることができる。シアン化ビニル化合物としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどを挙げることができる。
共役ジエン系化合物としては、たとえば、ブタジエン、イソプレンなどを挙げることができる。
ハロゲン含有不飽和化合物としては、たとえば、塩化ビニル、塩化ビニリデン、パーフルオロエチレン、パーフルオロプロピレン、フッ化ビニリデンなどを挙げることができる。
ケイ素含有不飽和化合物としては、たとえば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
不飽和ジカルボン酸化合物としては、たとえば、無水マレイン酸、マレイン酸、マレイン酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステル、フマル酸、フマル酸のモノアルキルエステルおよびジアルキルエステルなどを挙げることができる。
ビニルエステル化合物としては、たとえば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニルなどを挙げることができる。
マレイミド系化合物としては、たとえば、マレイミド、メチルマレイミド、エチルマレイミド、プロピルマレイミド、ブチルマレイミド、ヘキシルマレイミド、オクチルマレイミド、ドデシルマレイミド、ステアリルマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミドなどを挙げることができる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、アクリル系重合体ブロック(a)に要求されるガラス転移温度および耐油性、メタアクリル系重合体ブロック(b)との相溶性などのバランスの観点から、好ましいものを選択することができる。
アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度は、エラストマー組成物のゴム弾性の観点から、好ましくは25℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−20℃以下である。アクリル系重合体ブロック(a)のガラス転移温度が、エラストマー組成物の使用される環境の温度より高いとゴム弾性が発現されにくいので不利である。
アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性を上げる為に、アクリル系重合体ブロック(a)にカルボキシル基及び/又は酸無水物基などの官能基を導入してもよい。カルボキシル基や酸無水物基は強い凝集力をもっており、これらの官能基を有する単量体はガラス転移温度(Tg)が高く、ブロック共重合体(A)の耐熱分解性を向上させる効果を有する。カルボキシル基や酸無水物基を導入する際の前駆体としては、アクリル酸−t−ブチルやメタアクリル酸−t−ブチルを用いることができる。
<メタアクリル系重合体ブロック(b)>
メタアクリル系重合体ブロック(b)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、このようなものとして、例えば、メタアクリル酸エステルおよびこれと共重合可能なビニル系単量体とからなるものが挙げられる。
メタアクリル系重合体ブロック(b)は、メタアクリル酸エステルを主成分とする単量体を重合してなるブロックであり、このようなものとして、例えば、メタアクリル酸エステルおよびこれと共重合可能なビニル系単量体とからなるものが挙げられる。
メタアクリル系重合体ブロック(b)を構成するメタアクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル系重合体ブロック(a)を構成するアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体として例示されたメタアクリル酸エステルと同様の単量体が挙げられる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、加工性、コストおよび入手しやすさの点で、メタアクリル酸メチルが好ましい。また、メタアクリル酸イソボルニル、メタアクリル酸シクロヘキシルなどを共重合させることによって、ガラス転移点を高くすることができる。
メタアクリル系重合体ブロック(b)を構成するメタアクリル酸エステルと共重合可能なビニル系単量体としては、たとえば、アクリル酸エステル、芳香族アルケニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド化合物などを挙げることができる。
アクリル酸エステルとしては、たとえば、アクリル系重合体ブロック(a)を構成するアクリル酸エステルとして例示されたアクリル酸エステルと同様の単量体が挙げられる。
芳香族アルケニル化合物、シアン化ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ハロゲン含有不飽和化合物、ケイ素含有不飽和化合物、不飽和ジカルボン酸化合物、ビニルエステル化合物、マレイミド系化合物としては、アクリル系重合体ブロック(a)を構成する単量体として例示したものと同様の単量体を挙げることができる。
これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系単量体は、メタアクリル系重合体ブロック(b)に要求されるガラス転移温度の調整、アクリル系重合体ブロック(a)との相溶性などの観点から好ましいものを選択することができる。
ブロック(b)のガラス転移温度は、エラストマー組成物の熱変形の観点から、好ましくは25℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上である。ブロック(b)のガラス転移温度がエラストマー組成物の使用される環境の温度より低いと、凝集力の低下により、熱変形しやすくなる場合がある。
メタアクリル系重合体ブロック(b)にカルボキシル基及び/又は酸無水物を導入する際の前駆体として、アクリル酸−t−ブチルやメタアクリル酸−t−ブチルを用いることができる。これにより、アクリル系ブロック共重合体(A)の耐熱性を上げることができる。
<アクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法>
アクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法としては、特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合および近年開発されたリビングラジカル重合を挙げることができる。このうち、リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造制御の点ならびに架橋性官能基を有する単量体を共重合できる点から好ましい。
アクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法としては、特に限定されないが、制御重合を用いることが好ましい。制御重合としては、リビングアニオン重合、連鎖移動剤を用いるラジカル重合および近年開発されたリビングラジカル重合を挙げることができる。このうち、リビングラジカル重合がブロック共重合体の分子量および構造制御の点ならびに架橋性官能基を有する単量体を共重合できる点から好ましい。
リビング重合とは、狭義においては、末端が常に活性を持ち続ける重合のことを示すが、一般には、末端が不活性化されたものと活性化されたものが平衡状態にある擬リビング重合も含まれ、本発明におけるリビングラジカル重合は、重合末端が活性化されたものと不活性化されたものが平衡状態で維持されるラジカル重合であり、近年様々なグループで積極的に研究がなされている。
その例としては、ポリスルフィドなどの連鎖移動剤を用いるもの、コバルトポルフィリン錯体(Journal of American Chemical Society,1994年,第116巻,7943頁)やニトロキシド化合物などのラジカル捕捉剤を用いるもの(Macromolecules,1994年,第27巻,7228頁)、有機ハロゲン化物などを開始剤とし遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合(Atom Transfer Radical Polymerization:ATRP)などを挙げることができる。本発明において、これらのうちいずれの方法を使用するかは特に制約はないが、制御の容易さなどから原子移動ラジカル重合が好ましい。
原子移動ラジカル重合では、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤、周期律表第8族、9族、10族、または11族元素を中心金属とする金属錯体を触媒として重合が行われる(例えば、Matyjaszewskiら,Journal of American Chemical Society,1995,117,5614、Macromolecules,1995,28,7901、Science,1996,272,866、またはSawamotoら,Macromolecules,1995,28,1721)。
これらの方法によると、一般的に非常に重合速度が高く、ラジカル同士のカップリングなどの停止反応が起こりやすいラジカル重合でありながら、重合がリビング的に進行し、分子量分布の狭いMw/Mn=1.1〜1.5程度の重合体が得られ、分子量はモノマーと開始剤の仕込み時の比率によって自由にコントロールすることができる。
原子移動ラジカル重合法において、開始剤として用いられる有機ハロゲン化物またはハロゲン化スルホニル化合物としては、一官能性、二官能性、または、多官能性の化合物を使用できる。これらは目的に応じて使い分けることができる。ジブロック共重合体を製造する場合は、一官能性化合物が好ましい。a−b−a型のトリブロック共重合体、b−a−b型のトリブロック共重合体を製造する場合は二官能性化合物を使用することが好ましい。分岐状ブロック共重合体を製造する場合は多官能性化合物を使用することが好ましい。
原子移動ラジカル重合の触媒として用いられる遷移金属錯体としてはとくに限定はないが、好ましいものとして、1価および0価の銅、2価のルテニウム、2価の鉄または2価のニッケルの錯体を挙げることができる。これらの中でも、コストや反応制御の点から銅の錯体が好ましい。
原子移動ラジカル重合は、無溶媒(塊状重合)または各種溶媒中で行うことができるが、本願においては、反応制御や取り扱いの容易性等の観点から、溶媒を用いて重合を行う。溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素系溶媒、塩化メチレン、クロロホルムなどのハロゲン化炭化水素系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン系溶媒、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、t−ブタノールなどのアルコール系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどのニトリル系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒などを挙げることができ、これらは単独で又は二種以上を混合して用いることができる。反応制御の観点から、アクリル系重合体ブロック(a)の重合溶媒としては、アセトニトリル、メタアクリル系重合体ブロック(b)の重合溶媒としてはアセトニトリルとトルエンの混合溶媒が好ましく用いられる。
溶媒の使用量は、系全体の粘度と必要とする攪拌効率の関係から適宜決定することができる。
また、原子移動ラジカル重合は、室温〜200℃で行うのが好ましく、50〜150℃の範囲で行うのがより好ましい。原子移動ラジカル重合温度が室温より低いと、粘度が高くなり過ぎて反応速度が遅くなる場合があり、200℃を超えると安価な重合溶媒を使用できない。
原子移動ラジカル重合によりブロック共重合体を重合する方法としては、単量体を逐次添加する方法、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法、別々に重合した重合体を反応により結合する方法などを挙げることができる。これらの方法は、目的に応じて使い分けることができる。重合工程の簡便性の点から、あらかじめ合成した重合体を高分子開始剤としてつぎのブロックを重合する方法が好ましい。
重合工程について以下に詳細に説明する。
<(1)アクリル系重合体ブロック(a)の重合工程>
アクリル系重合体ブロック(a)の重合工程(1)の具体例を以下に示す。本発明におけるアクリル系重合体ブロック(a)の重合工程では、例えば、反応機に撹拌型耐圧反応機を用いて、反応機内を十分に窒素置換し、酸素を取り除いた状態にして、アクリル系単量体、重合触媒である遷移金属触媒、重合溶媒および重合開始剤をそれぞれ所定量順次仕込み、前記の温度範囲(例えば原子移動ラジカル重合であれば、好ましくは室温〜200℃)で、触媒である遷移金属に対して0.1〜4倍モルの触媒配位子を添加してラジカル重合を開始する方法(前記制御重合)にてアクリル系重合体ブロックが製造される。
アクリル系重合体ブロック(a)の重合工程(1)の具体例を以下に示す。本発明におけるアクリル系重合体ブロック(a)の重合工程では、例えば、反応機に撹拌型耐圧反応機を用いて、反応機内を十分に窒素置換し、酸素を取り除いた状態にして、アクリル系単量体、重合触媒である遷移金属触媒、重合溶媒および重合開始剤をそれぞれ所定量順次仕込み、前記の温度範囲(例えば原子移動ラジカル重合であれば、好ましくは室温〜200℃)で、触媒である遷移金属に対して0.1〜4倍モルの触媒配位子を添加してラジカル重合を開始する方法(前記制御重合)にてアクリル系重合体ブロックが製造される。
アクリル系重合体ブロック(a)の重合における反応機の種類は、特に限定されないが、低粘性から高粘性に至る条件における重合体溶液の十分な混合と重合体溶液の迅速な昇温および冷却と重合反応中の重合体溶液からの発熱の除去が必要となることから、撹拌型反応機を使用することが製法上有利である。
アクリル系重合体ブロック(a)の重合における原料の仕込み順序は、溶液中に遷移金属触媒を十分に分散させることが重合反応の安定性に著しく寄与することから、触媒を最も良く分散できる順序で仕込むことが肝要である。この場合、触媒は最初に添加するよりも溶液が反応機に仕込まれた状態で添加することが好ましく、より好ましくは溶液を撹拌している状態に添加することが好ましい。また重合溶媒として触媒を凝集させる性質を持つ溶液を使用する場合には、触媒を添加後に触媒を凝集させる溶液を添加することが好ましい。
触媒配位子を添加してラジカル重合を開始する際の溶液温度は、重合活性を十分に発現し得る温度となる60℃以上で、かつラジカル重合特有の強い初期発熱を抑えるためには85℃以下とすることが製造上有利となる。従って、本発明においては重合開始時の溶液温度は60℃〜85℃であることが好ましく、重合反応の安定化には70℃〜80℃がより好ましい。
アクリル系重合体ブロック(a)の重合を行う工程(1)においては、アクリル系単量体の転化率が99%を超えると、ラジカル同士のカップリング、不均化などの副反応により反応のリビング性が損なわれ、設計通りの重合体が得られない場合がある。一方、アクリル系単量体の転化率を90%以下として終了すると、未反応アクリル系単量体が次の重合工程へのコンタミとなって製品物性を低下させたり、未反応アクリル系単体量の回収を煩雑化させる場合がある。従って、アクリル系単量体の転化率は90%〜99%とすることが好ましく、コンタミ低減や、副反応の低減のためには95〜99%とすることがより好ましい。
アクリル系重合体ブロックの重合反応時間は、アクリル系単量体の重合転化率の追跡上および目標の転化率(90〜99%)で終了させるために1時間以上とし、また生産性から8時間以下とすることが好ましく、重合コントロールのし易さから3〜6時間とすることがより好ましい。また重合中の重合体溶液温度は、重合反応速度を安定させることを目的に、目標温度から±10℃以内に制御することが好ましく、精度向上のためには±5℃以内とすることがより好ましい。重合終了後は、アクリル系重合体ブロックの重合進行を抑制するために、可能な限り迅速に工程(2)の実施に移る必要がある。
<(2)メタアクリル系重合体ブロック(b)の重合工程>
メタアクリル系重合体ブロック(b)の重合工程(2)の具体例を以下に示す。工程(1)と同様、重合溶媒、重合触媒である遷移金属触媒、およびメタアクリル系単量体をそれぞれ所定量順次反応容器に導入し、アクリル系重合体ブロック(a)の重合と同様に好ましくは室温〜200℃の温度範囲で、触媒である遷移金属に対して0.1〜4倍モルの触媒配位子を添加する。これにより、ラジカル重合が開始される。この場合、アクリル系重合体ブロックのカップリング、不均化などの副反応を抑制するために、重合溶媒添加による溶液の希釈を速やかに行うことが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(b)の重合工程(2)の具体例を以下に示す。工程(1)と同様、重合溶媒、重合触媒である遷移金属触媒、およびメタアクリル系単量体をそれぞれ所定量順次反応容器に導入し、アクリル系重合体ブロック(a)の重合と同様に好ましくは室温〜200℃の温度範囲で、触媒である遷移金属に対して0.1〜4倍モルの触媒配位子を添加する。これにより、ラジカル重合が開始される。この場合、アクリル系重合体ブロックのカップリング、不均化などの副反応を抑制するために、重合溶媒添加による溶液の希釈を速やかに行うことが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(b)の重合における原料の添加順序は、特に限定されないが、遷移金属触媒を添加するにあたり、重合体溶液中に触媒を十分に分散させることが反応の安定化に必要であることから、前記のように重合溶媒を添加して重合体溶液を低粘性とした後に遷移金属触媒を添加することが好ましい。また遷移金属触媒を添加後は、アクリル系重合体ブロックのカップリング反応等の副反応を低減するために、速やかに(例えば10分以内)メタアクリル系単量体を添加することが好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(b)の重合反応時間は、アクリル系重合体ブロック重合工程と同様に、メタアクリル系単量体の重合転化率の追跡を可能にし、目標の転化率で終了させるために1時間以上とし、また生産性から8時間以下とすることが好ましく、重合コントロールのし易さから3〜6時間とすることがより好ましい。また重合中の重合体溶液温度も、アクリル系重合体ブロック重合工程と同様に重合反応速度を安定させることを目的に、目標温度から±10℃以内に制御することが好ましく、精度向上のためには±5℃以内とすることがより好ましい。
メタアクリル系重合体ブロック(b)の重合を行う工程(2)において、未反応メタアクリル系単量体が多量に残った状態で重合を終了すると、溶媒回収工程の煩雑化や溶媒回収時におけるメタアクリル系単量体の劣化によってリサイクル使用が困難となる場合がある。このため、90%を超える高転化率とすることが望ましい。一方、転化率が99%を超えると、ラジカル同士のカップリング、不均化などの副反応により反応のリビング性が損なわれ、設計通りの重合体が得られない場合があるため、実用的にはメタアクリル系単量体の転化率は90〜99%であることが好ましく、副反応の抑制のためには95〜99%がより好ましい。
また、メタアクリル系単量体の重合を高転化率とするためには、重合溶媒の重量をメタアクリル系重合体ブロック100重量部に対して300重量部以下とするのが望ましく、より重合活性を高めるには重合体溶液中のメタアクリル系単量体の濃度を高くするのがよい。しかしながら、重合溶媒量が10重量部未満となると、60%を超える転化率になった時に、重合体溶液粘度が著しい増加を示し、反応活性を維持するために添加するポリアミン化合物の重合体溶液中への混合・拡散が著しく悪化し、高転化率を実現できない場合がある。従って、メタアクリル系重合体ブロックの重合工程において、メタクリル系単量体の転化率を90〜99%とするためには、重合溶媒の量を、(b)メタアクリル系重合体ブロック100重量部に対して10〜300重量部とすることが好ましく、混合・拡散および反応活性のアップのためには、(b)メタアクリル系重合体ブロック100重量部に対して150〜250重量部とすることがより好ましい。
重合開始剤に対する遷移金属触媒の添加量は、可能な限り削減することが原料費のコストダウンから重要である。しかし、開始剤のハロゲン基に対して遷移金属添加量が0.1倍モル未満では、反応活性が低いばかりでなく発現しない場合がある。一方、20倍モルを超える触媒添加は、反応活性向上に寄与しないばかりでなく、重合反応終了後の触媒除去工程を煩雑化させる場合がある。従って、遷移金属触媒の添加量は、重合開始剤に対して0.1〜20倍モルにすることが好ましく、十分な反応性と制御性を確保するためには0.5〜10倍モルがより好ましい。
触媒活性は、ポリアミン化合物の添加量によっても制御可能である。錯体形成における必要量以上のポリアミン化合物の添加は、分子量分布を増大させるだけでなく、触媒除去工程にも悪影響となるため可能な限り削減することのが望ましい。遷移金属錯体として銅化合物を使用する場合には、通常の原子移動ラジカル重合の条件では、遷移金属の配位座の数と、配位子の配位する基の数から決定され、ほぼ等しくなるように設定される。たとえば、通常、2,2'−ビピリジルおよびその誘導体を銅化合物に対して加える量がモル比で2倍であり、ペンタメチルジエチレントリアミンの場合はモル比で1倍であり、金属原子が配位子に対して過剰になる方が好ましい。本発明の場合は、ポリアミン化合物量が原子移動ラジカル重合反応時に加える重合開始剤に対して、0.1倍モル未満では充分な重合活性が得られず、重合開始剤に対して4倍モルを超えると重合反応が速すぎて制御できない場合がある。また、遷移金属触媒錯体へのポリアミン化合物の過剰な配位により、反応が進行しなくなるなどの問題が生じる場合がある。以上のことから、好ましいポリアミン化合物の添加量は重合開始剤に対して0.1〜4倍モルが好ましく、十分な反応性と制御性を確保するためには0.2〜3倍モルがより好ましい。
<(3)アクリル系ブロック共重合体溶液の精製工程>
重合によって得られた重合体溶液は、重合体および触媒である金属錯体を含んでいるため、重合活性を消失させるとともに、これら金属錯体を分離除去する必要がある。金属錯体の分離除去の方法としては、有機酸を添加して金属錯体を失活させた後にこれを除去する方法がある。本発明で使用することができる有機酸は、特に限定されないが、カルボン酸基もしくはスルホン酸基を含有する有機物であることが好ましい。その中でも、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、ベンゼンスルホン酸もしくはその誘導体が好ましく、それらの中ではp−トルエンスルホン酸がより好ましい。
重合によって得られた重合体溶液は、重合体および触媒である金属錯体を含んでいるため、重合活性を消失させるとともに、これら金属錯体を分離除去する必要がある。金属錯体の分離除去の方法としては、有機酸を添加して金属錯体を失活させた後にこれを除去する方法がある。本発明で使用することができる有機酸は、特に限定されないが、カルボン酸基もしくはスルホン酸基を含有する有機物であることが好ましい。その中でも、有機溶媒への分散しやすさ、酸と金属錯体の反応との生成物の性状、入手しやすさなどから、ベンゼンスルホン酸もしくはその誘導体が好ましく、それらの中ではp−トルエンスルホン酸がより好ましい。
加える酸触媒の量は、有機酸および無機酸を用いる場合は、ブロック共重合体(A)100重量部あたり0.1〜20重量部が好ましく、0.1〜1重量部がより好ましい。
触媒成分が失活した後は、不溶化した銅触媒残渣、及び過剰有機酸を分離する。これら固体成分の分離方法としては、濾過、遠心分離、沈降分離、液体サイクロン等の種々の分離方式を適用することが可能である。分離の際、重合体溶液に溶媒を添加し、液粘度を下げることにより、分離を容易に行うことができる。希釈溶媒としては重合溶媒と同じくトルエンが好ましい。なお、固液分離は省略することも可能であり、この場合は後述する官能基の導入反応を行う。
<(4)カルボキシル基及び/又は酸無水物基の導入工程>
上述した通り、本願発明においては、ブロック共重合体(A)にカルボキシル基や酸無水物基を導入するために、アクリル系重合体ブロック(a)やメタアクリル系重合体ブロック(b)に、カルボキシル基及び/又は酸無水物を導入する際の前駆体として、アクリル酸−t−ブチルやメタアクリル酸−t−ブチルを導入しておく。これらを分解することにより、ブロック共重合体(A)中にカルボキシル基や酸無水物基を導入することができる。分解の方法としては、酸触媒を用いた加熱を挙げることができる。酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸、塩酸や硫酸などの無機酸、およびスルホン酸型などのH+型イオン交換樹脂交換樹脂などを用いることができる。本発明では、前述した触媒精製工程で用いた有機酸をそのまま使用する方法が簡便であり、有機酸としてはp−トルエンスルホン酸が好ましい。
上述した通り、本願発明においては、ブロック共重合体(A)にカルボキシル基や酸無水物基を導入するために、アクリル系重合体ブロック(a)やメタアクリル系重合体ブロック(b)に、カルボキシル基及び/又は酸無水物を導入する際の前駆体として、アクリル酸−t−ブチルやメタアクリル酸−t−ブチルを導入しておく。これらを分解することにより、ブロック共重合体(A)中にカルボキシル基や酸無水物基を導入することができる。分解の方法としては、酸触媒を用いた加熱を挙げることができる。酸触媒としては、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸、塩酸や硫酸などの無機酸、およびスルホン酸型などのH+型イオン交換樹脂交換樹脂などを用いることができる。本発明では、前述した触媒精製工程で用いた有機酸をそのまま使用する方法が簡便であり、有機酸としてはp−トルエンスルホン酸が好ましい。
この反応に用いる溶媒としては、アミノ基及び/又は水酸基を有しない溶媒であれば特に制約はない。アミノ機を有する溶媒は溶媒自身が分解する可能性があり、また、アルコール類はカルボキシル酸基とエステル交換反応することから適さない。
上記溶媒の具体例としては、炭化水素系溶媒、エーテル系溶媒、ハロゲン化炭化水素系溶媒、ケトン系溶媒、アルコール系溶媒、ニトリル系溶媒、エステル系溶媒、カーボネート系溶媒などを用いることができる。
炭化水素系溶媒としては、ベンゼン、トルエンなどを挙げることができる。エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフランなどを挙げることができる。ハロゲン化炭化水素系溶媒としては、塩化メチレン、クロロホルムなどを挙げることができる。ケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどを挙げることができる。ニトリル系溶媒としては、アセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどを挙げることができる。エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチルなどを挙げることができる。カーボネート系溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
触媒精製後の重合体溶液をそのまま用いることができ、工程を簡略化することが可能であるることから、反応溶媒としてはトルエンが好ましい。
酸触媒の存在下での加熱温度は、100〜180℃が必要である。100℃未満では反応活性が低く、所望の反応転化率に到達するために非常に長時間を有する。180℃を超えた反応温度では、酸触媒による金属材料の腐食が懸念されるばかりでなく、t−ブチルエステル以外の(メタ)アクリル酸エステル部位まで分解するおそれがある。なお、(メタ)アクリル酸エステルとは、メタアクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを意味する。
反応後のカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するブロック共重合体は極性が上がるため、低極性の溶媒には溶解しにくくなる。このようなことを防ぎ、しかも十分な耐熱性を得るために、本発明においては、官能基量はカルボキシル基及び/又は酸無水物基を導入する前駆体であるアクリル酸−t−ブチル及び/又はメタクリル酸−t−ブチルの量で規定され、重合体を構成する全単量体成分に対して5モル%未満とする。
アクリル酸−t−ブチルやメタクリル酸−t−ブチルが5モル%以上存在する場合、重合体溶液粘度の著しい上昇やゲル化が起こり、重合体溶液を溶液状で取り扱うことが不可能になる。後述するように、アクリル酸−t−ブチルやメタクリル酸−t−ブチルを5モル%未満とすることにより、酸触媒の中和、除去を溶液状態で行えるようになり、製造を効率的に行うことが可能となる。
官能基の導入反応に用いる反応装置は特に限定されるものではなく、攪拌機、及びジャケットを備えた反応機、その他、適度な滞留時間を保持しながら連続的に溶液を加温することのできる管型反応機などを用いることができる。
<(5)アクリル系ブロック共重合体溶液の中和工程>
引き続き塩基性物質を添加して溶液を中和する。塩基性物質としては、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体などを挙げることができる。塩基性吸着剤としては、キョーワード500SH(協和化学製)などを挙げることができる。固体無機酸としては、Na2O、K2O、MgO、CaOなどを挙げることができる。陰イオン交換樹脂としては、スチレン系強塩基性陰イオン交換樹脂、スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂、アクリル系弱塩基型陰イオン交換樹脂などを挙げることができる。
引き続き塩基性物質を添加して溶液を中和する。塩基性物質としては、塩基性活性アルミナ、塩基性吸着剤、固体無機酸、陰イオン交換樹脂、セルロース陰イオン交換体などを挙げることができる。塩基性吸着剤としては、キョーワード500SH(協和化学製)などを挙げることができる。固体無機酸としては、Na2O、K2O、MgO、CaOなどを挙げることができる。陰イオン交換樹脂としては、スチレン系強塩基性陰イオン交換樹脂、スチレン系弱塩基性陰イオン交換樹脂、アクリル系弱塩基型陰イオン交換樹脂などを挙げることができる。
前記金属錯体および塩基性物質の分離方法としては、濾過、遠心分離、沈降分離、液体サイクロン等の種々の分離方式が適用可能である。分離の際、重合体溶液に溶媒を添加し、液粘度を下げることにより、分離を容易に行うことができる。本発明では、溶媒としては重合体の溶解性の面でトルエンが特に好ましい。
<(6)アクリル系ブロック共重合体溶液から重合溶媒、未反応のアクリル系単量体およびメタアクリル系単量体を蒸発分離する工程>
アクリル系ブロック共重合体溶液から有機溶媒成分を蒸発分離するに際しては、種々の蒸発機が適用可能である。そのような中でも、重合体溶液の液膜を加熱することにより揮発分を除去、すなわち蒸発、脱揮等させる種々の形式の薄膜蒸発機が好ましい。その他、単軸もしくは2軸スクリューと脱揮口を有する押出機による蒸発も可能である。
アクリル系ブロック共重合体溶液から有機溶媒成分を蒸発分離するに際しては、種々の蒸発機が適用可能である。そのような中でも、重合体溶液の液膜を加熱することにより揮発分を除去、すなわち蒸発、脱揮等させる種々の形式の薄膜蒸発機が好ましい。その他、単軸もしくは2軸スクリューと脱揮口を有する押出機による蒸発も可能である。
蒸発温度としては脱揮能力の確保と重合体の熱劣化抑制の観点から100〜300℃が好ましい。100℃未満では溶媒の蒸気圧が低く、脱揮能力を確保することが難しくなる。300℃を超えると重合体の熱劣化が進行しやすくなり、物性の低下を招く。
重合体中の残存溶媒量としては、10000ppm以下であることが望ましい。残存溶媒量が10000ppmを超えると、溶媒の臭気の問題により作業環境が悪化するとともに環境への負荷がかかるため望ましくない。
上記の方法により、カルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体が得られる。なお、以上においては、アクリル系重合体ブロック(a)の重合を行なった後、メタアクリル系重合体ブロック(b)の重合を行っているが、重合順序は特に問うものではなく、ブロック(b)の重合を行なった後、ブロック(a)の重合を行なってもよい。
本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
<重合転化率の測定法>
本実施例中の転化率の測定にはガスクロマトグラフィーを用い、重合溶媒を内部標準物質として、重合開始前のモノマーと溶媒の面積比の数値と、任意の時間でサンプリングされたモノマーと溶媒の面積比の数値を比較し、その数値の減少の割合より転化率を算出した。システム:(株)島津製作所製GC−14B、カラム:Agilent Technologies製DB−17。
本実施例中の転化率の測定にはガスクロマトグラフィーを用い、重合溶媒を内部標準物質として、重合開始前のモノマーと溶媒の面積比の数値と、任意の時間でサンプリングされたモノマーと溶媒の面積比の数値を比較し、その数値の減少の割合より転化率を算出した。システム:(株)島津製作所製GC−14B、カラム:Agilent Technologies製DB−17。
<重合体分子量の測定法>
重合体溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システム:Waters社製GPCシステム、カラム:昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)。
重合体溶液を活性アルミナで濾過することにより銅錯体を除去した。本実施例に示す分子量は以下に示すGPC分析装置で測定し、クロロホルムを移動相として、ポリスチレン換算の分子量を求めた。システム:Waters社製GPCシステム、カラム:昭和電工(株)製Shodex K−804(ポリスチレンゲル)。
<重合体の熱分解により発生するイソブチレンガスの測定方法>
約0.05gの試料を加熱温度280℃の条件下、ATD(加熱脱着装置、Perkin Elmer製、TurboMatrix ATD)で加熱し、発生したガス成分のGC/MS分析を行った。
約0.05gの試料を加熱温度280℃の条件下、ATD(加熱脱着装置、Perkin Elmer製、TurboMatrix ATD)で加熱し、発生したガス成分のGC/MS分析を行った。
<t−ブチル基反応率の算出方法>
前駆体A0から発生するイソブチレンガス量をX0重量ppm(樹脂に対する濃度)、反応後の重合体Aから発生するイソブチレンガス量をX重量ppm(同じく樹脂に対する濃度)とした場合、反応率を下式により算出した。
前駆体A0から発生するイソブチレンガス量をX0重量ppm(樹脂に対する濃度)、反応後の重合体Aから発生するイソブチレンガス量をX重量ppm(同じく樹脂に対する濃度)とした場合、反応率を下式により算出した。
反応率[%]=(X0−X)/X0×100
(製造例1)
窒素置換した500L反応機にアクリル酸ブチル79.6kg(621mol)、アクリル酸−t−ブチル1.75kg(13.6mol)、及び臭化第一銅0.692kgを仕込み、攪拌を開始した。引き続きジャケットに温水を通水し、内溶液を70℃に昇温して30分間保持した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.22kgをアセトニトリル7.14kgに溶解させた溶液を仕込み、75℃に昇温を開始した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン101mLを加えて、第一ブロックの重合を開始した。
窒素置換した500L反応機にアクリル酸ブチル79.6kg(621mol)、アクリル酸−t−ブチル1.75kg(13.6mol)、及び臭化第一銅0.692kgを仕込み、攪拌を開始した。引き続きジャケットに温水を通水し、内溶液を70℃に昇温して30分間保持した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル1.22kgをアセトニトリル7.14kgに溶解させた溶液を仕込み、75℃に昇温を開始した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン101mLを加えて、第一ブロックの重合を開始した。
アクリル酸ブチルの転化率が99.0%、アクリル酸−t−ブチルの転化率が99.2%に到達したところで、トルエン106kg、塩化第一銅0.478kg、メタアクリル酸メチル49.1kg(490mol)、アクリル酸エチル7.98kg(79.7mol)及びペンタメチルジエチレントリアミン101mLを加えて、第二ブロックの重合を開始した。
メタアクリル酸メチルの転化率が95.5%、アクリル酸エチルの転化率が74.9%に到達したところで、トルエン290kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが59500、分子量分布Mw/Mnが1.50であった。また、280℃熱分解反応により発生するイソブチレンは重合体に対して5300重量ppmであった。
得られたブロック共重合体溶液に対しp−トルエンスルホン酸を2.20kg加え、反応機内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.72kg添加した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離した。得られた重合体溶液の粘度は28mPa・s(30℃)であった。また、重合体溶液にpH試験紙を浸した後に空気中でしばらく放置すると、試験紙はpH=2程度を示した。
(製造例2)
窒素置換した500L反応機にアクリル酸ブチル76.0kg(593mol)及び臭化第一銅0.622kgを仕込み、攪拌を開始した。引き続きジャケットに温水を通水し、内溶液を70℃に昇温して30分間保持した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.868kgをアセトニトリル6.67kgに溶解させた溶液を仕込み、75℃に昇温を開始した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン91mLを加えて、第一ブロックの重合を開始した。
窒素置換した500L反応機にアクリル酸ブチル76.0kg(593mol)及び臭化第一銅0.622kgを仕込み、攪拌を開始した。引き続きジャケットに温水を通水し、内溶液を70℃に昇温して30分間保持した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.868kgをアセトニトリル6.67kgに溶解させた溶液を仕込み、75℃に昇温を開始した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン91mLを加えて、第一ブロックの重合を開始した。
アクリル酸ブチルの転化率が95.4%に到達したところで、トルエン104kg、塩化第一銅0.429kg、メタアクリル酸メチル42.3kg(423mol)、アクリル酸ブチル9.21kg(71.8mol)、メタアクリル酸−t−ブチル3.77kg(26.5mol)及びペンタメチルジエチレントリアミン91mLを加えて、第二ブロックの重合を開始した。
メタアクリル酸メチルの転化率が91.7%、アクリル酸ブチルの転化率が75.0%、メタアクリル酸−t−ブチルの転化率が95.2%に到達したところで、トルエン250kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが73300、分子量分布Mw/Mnが1.38であった。また、280℃熱分解反応により発生するイソブチレンは重合体に対して11200重量ppmであった。
得られたブロック共重合体溶液に対しp−トルエンスルホン酸を1.98kg加え、反応機内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.46kg添加した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離した。得られた重合体溶液の粘度は49mPa・s(14℃)であった。また、重合体溶液にpH試験紙を浸した後に空気中でしばらく放置すると、試験紙はpH=2程度を示した。
(製造例3)
窒素置換した500L反応機にアクリル酸ブチル32.7kg(255mol)、アクリル酸エチル32.1kg(321mol)、アクリル酸−2−メトキシエチル19.9kg(153mol)及び臭化第一銅0.615kgを仕込み、攪拌を開始した。引き続きジャケットに温水を通水し、内溶液を70℃に昇温して30分間保持した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.617kgをアセトニトリル7.14kgに、溶解させた溶液を仕込み、75℃に昇温を開始した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン90mLを加えて、第一ブロックの重合を開始した。
窒素置換した500L反応機にアクリル酸ブチル32.7kg(255mol)、アクリル酸エチル32.1kg(321mol)、アクリル酸−2−メトキシエチル19.9kg(153mol)及び臭化第一銅0.615kgを仕込み、攪拌を開始した。引き続きジャケットに温水を通水し、内溶液を70℃に昇温して30分間保持した。その後、2、5−ジブロモアジピン酸ジエチル0.617kgをアセトニトリル7.14kgに、溶解させた溶液を仕込み、75℃に昇温を開始した。内温が75℃に到達した時点でペンタメチルジエチレントリアミン90mLを加えて、第一ブロックの重合を開始した。
アクリル酸ブチルの転化率が95.9%、アクリル酸エチルの転化率が96.5%、アクリル酸−2−メトキシエチルの転化率が98.2%に到達したところで、トルエン73.8kg、塩化第一銅0.424kg、メタアクリル酸メチル29.5kg(295mol)、メタアクリル酸−t−ブチル10.5kg(73.7mol)及びペンタメチルジエチレントリアミン90mLを加えて、第二ブロックの重合を開始した。
メタアクリル酸メチルの転化率が91.3%、メタアクリル酸−t−ブチルの転化率が93.0%に到達したところで、トルエン270kgを加えて反応溶液を希釈すると共に反応機を冷却して重合を停止させた。得られたブロック共重合体のGPC分析を行ったところ、数平均分子量Mnが110200、分子量分布Mw/Mnが1.27であった。また、280℃熱分解反応により発生するイソブチレンは重合体に対して32800重量ppmであった。
得られたブロック共重合体溶液に対しp−トルエンスルホン酸を1.47kg加え、反応機内を窒素置換し、30℃で3時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が無色透明になっていることを確認して、昭和化学工業製ラヂオライト#3000を2.39kg添加した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離した。得られた重合体溶液の粘度は86mPa・s(30℃)であった。また、重合体溶液にpH試験紙を浸した後に空気中でしばらく放置すると、試験紙はpH=2程度を示した。
(実施例1)
窒素置換した500L反応機に製造例1で得られた重合体溶液約250kgを仕込み攪拌を開始した。引き続きジャケットにスチームを供給し、内溶液を150℃に昇温して4時間保持した。その後ジャケットに冷却水を通水し、液温度を30℃まで下げた。
窒素置換した500L反応機に製造例1で得られた重合体溶液約250kgを仕込み攪拌を開始した。引き続きジャケットにスチームを供給し、内溶液を150℃に昇温して4時間保持した。その後ジャケットに冷却水を通水し、液温度を30℃まで下げた。
重合体溶液にキョーワード500SH6.25kgを加え、その後反応機内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。引き続きラヂオライト#3000を1.25kg添加し、30℃で30分攪拌した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の粘度は45mPa・s(30℃)であり、変性に伴う粘度上昇は1.6倍であった。
t−ブチルエステル部位の酸無水物基およびカルボキシル基への変性反応率測定は、280℃熱分解反応によりt−ブチル基から発生するイソブチレン量を定量することにより行った。測定の結果、発生するイソブチレンは重合体に対して110重量ppm、反応率は97.9%であった。これらの結果を表1に示す。
(実施例2)
窒素置換した15L反応機に製造例2で得られた重合体溶液約5kgを仕込み攪拌を開始した。引き続きジャケットに熱媒オイルを供給し、内溶液を150℃に昇温して4時間保持した。その後ジャケットを冷却し、液温度を30℃まで下げた。
窒素置換した15L反応機に製造例2で得られた重合体溶液約5kgを仕込み攪拌を開始した。引き続きジャケットに熱媒オイルを供給し、内溶液を150℃に昇温して4時間保持した。その後ジャケットを冷却し、液温度を30℃まで下げた。
重合体溶液にキョーワード500SH125gを加え、その後反応機内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。引き続きラヂオライト#3000を25g添加し、30℃で30分攪拌した。濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機に重合体溶液を仕込み、濾過機を窒素により0.1MPaGに加圧して固体分を分離し、重合体溶液を得た。得られた重合体溶液の粘度は412mPa・s(14℃)であり、変性に伴う粘度上昇は8.4倍であった。
t−ブチルエステル部位の酸無水物基およびカルボキシル基への変性反応率測定は、280℃熱分解反応によりt−ブチル基から発生するイソブチレン量を定量することにより行った。測定の結果、発生するイソブチレンは重合体に対して130重量ppm、反応率は98.8%であった。これらの結果を表1に示す。
(比較例1)
窒素置換した500L反応機に製造例2で得られた重合体溶液約450kgを仕込み攪拌を開始した。重合体溶液にキョーワード500SH1.12kgを加え、その後反応機内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。引き続きラヂオライト#3000を1.12kg添加し、30℃で30分攪拌した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。
窒素置換した500L反応機に製造例2で得られた重合体溶液約450kgを仕込み攪拌を開始した。重合体溶液にキョーワード500SH1.12kgを加え、その後反応機内を窒素置換し、30℃で1時間撹拌した。反応液をサンプリングし、溶液が中性になっていることを確認して反応終了とした。引き続きラヂオライト#3000を1.12kg添加し、30℃で30分攪拌した。その後反応機を窒素により0.1〜0.4MPaGに加圧し、濾材としてポリエステルフェルトを備えた加圧濾過機(濾過面積0.45m2)を用いて固体分を分離し、重合体溶液を得た。
引き続き重合体溶液から溶媒成分を蒸発した。蒸発機は株式会社栗本鐵工所製SCP100(伝熱面積1m2)を用いた。蒸発機入口の熱媒オイルを180℃、蒸発機の真空度を90Torr、スクリュー回転数を60rpm、重合体溶液の供給速度を32kg/hに設定し重合体溶液の蒸発を実施した。重合体はφ4mmのダイスを通してストランドとし、水槽で冷却後ペレタイザーにより円柱状のペレットを得た。酸トラップ剤としてハイドロタルサイトDHT−4A−2(協和化学工業(株)製)を1重量部配合した。
本ペレットを日本製鋼所製TEX44(44mm、L/D=42.25)で変性処理を実施した。シリンダー温度を260℃、スクリュー回転数を150rpm、樹脂の供給量を15kg/hに設定して押出し処理を実施した。押出し時は、ベント口は塞いた。重合体は二軸押出機の先端に水中カットペレタイザー(GALA INDUSTRIES INC.製CLS−6−8.1 COMPACT LAB SYSTEM)を接続し、水中カットペレタイザーの循環水中に防着剤としてアルフロー(登録商標)H−50ES(日本油脂(株)製)を添加することで、防着性のない球形状の重合体ペレットを得た。
t−ブチルエステル部位の酸無水物基およびカルボキシル基への変性反応率測定は、280℃熱分解反応によりt−ブチル基から発生するイソブチレン量を定量することにより行った。測定の結果、発生するイソブチレンは重合体に対して1900重量ppm、反応率は83.0%であった。これらの結果を表1に示す。
(比較例2)
窒素置換した15L反応機に製造例3で得られた重合体溶液約5kgを仕込み攪拌を開始した。引き続きジャケットに熱媒オイルを供給し、内溶液を150℃に昇温した。150℃に到達してから約20分後に溶液粘度が増大し始め、最後にはゲル状となって攪拌が不可能になった。
窒素置換した15L反応機に製造例3で得られた重合体溶液約5kgを仕込み攪拌を開始した。引き続きジャケットに熱媒オイルを供給し、内溶液を150℃に昇温した。150℃に到達してから約20分後に溶液粘度が増大し始め、最後にはゲル状となって攪拌が不可能になった。
実施例1,2および比較例1,2からわかるように、アクリル酸−t−ブチルやメタアクリル酸−t−ブチルの存在割合を全単量体成分に対して5モル%未満とすることにより、t−ブチルエステル部位の酸無水物基およびカルボキシル基への変性反応後の溶液の粘度上昇が小さく、酸触媒の中和、除去を溶液状態で行えることが分かる。また、本発明に係る方法で変性を行った場合、変性反応率は98%程度と高い値を示すが分かった。
Claims (4)
- アクリル酸−t−ブチル及び/又はメタアクリル酸−t−ブチルの存在割合が全単量体成分に対して5モル%未満となるように、アクリル系単量体成分を主成分とするアクリル系重合体ブロック(a)及びメタアクリル系単量体成分を主成分とするメタアクリル系重合体ブロック(b)からなるアクリル系ブロック共重合体(A0)の重合を溶媒中で行った後、この重合体溶液にカルボン酸基又はスルホン酸基を含有する有機酸を混合し、100〜180℃に加熱することを特徴とするカルボキシル基及び/又は酸無水物基を有するアクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法。
- アミノ基及び/又は水酸基を含有しない溶媒を用いることを特徴とする請求項1に記載のアクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法。
- 有機酸としてp−トルエンスルホン酸を用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のアクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法。
- 溶媒としてトルエン及び/又はアセトニトリルを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル系ブロック共重合体(A)の製造方法。
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