JP2004155293A - 自動車用エアバッグパネル - Google Patents

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Abstract

【課題】化粧シートによる美麗な絵付けが施された装飾効果の高いエアバッグパネルであって、化粧シートと基材との密着強度が高く、しかも、エアバッグの膨張展開時に砕けた際の破片が鋭利でなく、運転者や同乗者の負傷などの二次災害のおそれのない、安全性の高い自動車用エアバッグパネルを提供する。
【解決手段】表面側から順に、アクリル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂からなる透明樹脂シート層21、絵柄印刷インキ層23、ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート層24、及びポリオレフィン系樹脂からなるバッカー層25が積層された化粧シート2を、ポリプロピレン系樹脂成形品からなる基材1上に積層した自動車用エアバッグパネルである。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のステアリングホイール又はフロントパネル等に内蔵して収納されるエアバッグを被覆して保護すると共に、該収納部を隠蔽して外観を整えるために設けられるエアバッグパネルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、自動車用エアバッグパネルは、エアバッグ収納部が設けられるフロントパネル等と同様、自動車用部材として耐衝撃性に優れたABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂成形品を基材とするものが一般的である。そしてその表面加工としては、安価な量産車種の場合は簡単な塗装仕上げ程度の場合も多いが、高級感の求められる高級車用途の場合には、木目模様等の印刷による繊細な絵柄による美麗な意匠仕上げを可能とするために、予め熱可塑性樹脂シートに絵柄の印刷を施した化粧シートを、ABS樹脂成形品の成形後若しくは成形と同時にその表面に積層する手法が、広く用いられている。
【0003】
そして、係るABS樹脂成形品への絵付用の化粧シートとしては、従来は主として、ポリ塩化ビニル樹脂からなる基材シートの表面に絵柄印刷インキ層を設け、該絵柄印刷インキ層上に、耐候性に優れたアクリル系樹脂からなる透明樹脂シート層を積層し、更に、前記ポリ塩化ビニル樹脂シートの裏面に、ABS樹脂成形品との接着性を高めるためのABS樹脂からなるバッカー層を積層した構成の化粧シートが用いられるのが一般的である。
【0004】
ところで、係るABS樹脂成形品は従来、不良品や使用済品の廃棄時には、チップ状に粉砕されて埋め立て処分されたり、焼却処理に付されたりする場合が多かったが、近年の環境保護意識の高まりを受けて、粉砕後に再度成形用樹脂として再利用する、リサイクル化の必要性が指摘される様になっている。しかし、前記した従来の化粧シートを用いたABS樹脂成形品は、基材のABS樹脂とは全く異質な樹脂であるポリ塩化ビニル樹脂を化粧シートに使用していたために、そのまま粉砕しても成形用樹脂として再利用することができない。しかも、化粧シートを基材から剥離して分別回収することも困難であり、リサイクル化の目処が立っていないのが現状である。
【0005】
また、ABS樹脂は、アクリロニトリル−スチレン系樹脂のマトリックス中にブタジエン系ゴム粒子が分散した内部構造に由来して、応力による変形をゴム粒子が吸収するため耐衝撃性に優れているが、ゴム粒子が吸収しきれない応力を受けて一旦破断が開始すると、マトリックス樹脂の剛性が高く伸びにくいために内部で応力が分散されず、一気に破断が進行して鋭利な破面を生ずる性質がある。このため、ABS樹脂成形品を自動車用エアバッグパネルとして使用した場合、衝突事故等でエアバッグが膨張展開した際に、ABS樹脂の破砕により生じる鋭利な破片が、運転者や同乗者の負傷という二次災害の原因となる危険性があり、問題となっている。
【0006】
上記のようなABS樹脂製のエアバッグパネルの危険性の問題に鑑みて、二次災害の危険があるほど鋭利な破片を発生せず、しかもリサイクル利用の容易な樹脂材料として、ポリプロピレン系樹脂を使用したエアバッグパネルも、既に提案されている(特許文献1、2)。しかし、このポリプロピレン系樹脂製のエアバッグパネルは、エアバッグの膨張展開時における二次災害の防止には有効であるが、ポリプロピレン系樹脂は表面張力が低いため接着性に劣り、例えば従来のポリ塩化ビニル樹脂系の化粧シートでは密着強度が不十分で使用できないという問題点がある。
【0007】
先行技術文献情報
【特許文献1】
特開2000−272453号公報
【特許文献2】
特開2000−142174号公報
【特許文献3】
特開2001−1368号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来の技術における上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、化粧シートによる美麗な絵付けが施された装飾効果の高いエアバッグパネルであって、化粧シートと基材との密着強度が高く、しかも、エアバッグの膨張展開時に砕けた際の破片が鋭利でなく、運転者や同乗者の負傷などの二次災害のおそれのない、安全性の高い自動車用エアバッグパネルを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の自動車用エアバッグパネルは、ポリプロピレン系樹脂成形品からなる基材上に、表面装飾のための化粧シートが積層されてなり、該化粧シートは、表面側から順にアクリル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂からなる透明樹脂シート層、絵柄印刷インキ層、ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート層、及びポリオレフィン系樹脂からなるバッカー層が積層されてなり、該バッカー層側の面を前記基材側に向けて前記基材上に積層されてなることを特徴とするものである。
【0010】
さらには、上記バッカー層が、不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト重合した酸変性ランダム重合ポリプロピレン樹脂90〜95重量%と、低密度ポリエチレン5〜10重量%との混合樹脂組成物からなることを特徴とするものである。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明の自動車用エアバッグパネルの一例を示せば、図1のように、ポリプロピレン系樹脂成形品からなる基材1上に、熱可塑性樹脂シートを主体として構成された化粧シート2が積層されたものであって、該化粧シート2は、表面側、つまり基材1への積層面とは反対側から順に、透明樹脂シート層21、絵柄インキ層23、基材シート層24及びバッカー層25が積層されたものである。そして、本発明においては特に、上記透明樹脂シート21はアクリル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂からなり、基材シート層24及びバッカー層25はポリオレフィン系樹脂からなることを特徴としている。
【0012】
基材1に用いるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンを主たる単量体成分とする単独重合体又は共重合体を主成分とする樹脂組成物であればよく、ホモポリプロピレンのほか例えばランダム重合ポリプロピレン、ブロック重合ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン共重合体等を用いることができ、これら複数種の樹脂の混合物であっても良い。さらに必要に応じて、軟質成分として例えば低密度ポリエチレン、アタクティックポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム又はその水素添加物等を適宜添加した樹脂組成物を使用することもできる。このほか、例えば着色剤、充填剤、安定剤等の各種添加剤を適宜添加することも任意である。
【0013】
化粧シート2における透明樹脂シート層21には、アクリル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂が用いられる。この両者を比較すれば、透明性(高光透過率、低曇度)や表面光沢度(鏡面性)などの意匠性の面ではアクリル系樹脂が有利であるが、耐溶剤性やリサイクル性(基材1から剥離せずにそのまま粉砕して基材1等の成形用樹脂として再利用すること)、経済性などの面ではポリオレフィン系樹脂が有利であるので、それぞれ目的に応じて使い分けるのがよい。
【0014】
上記アクリル系樹脂は、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体を主成分として単独又は共重合して得られる熱可塑性樹脂であり、必要に応じて、例えば(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸等のアクリル系単量体や、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族系単量体等が共重合成分として添加されていたり、或いは例えばスチレン−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体、メタクリル酸メチル−スチレン−ブタジエン共重合体等のゴム成分がグラフト共重合、ブロック共重合又はブレンドされていたりしてもよい。中でも、メタクリル酸メチルを主成分とするものが、耐候性や透明性、加工性、機械的物性や表面物性等の各種物性面で最も望ましく用いられる。
【0015】
また、上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン単独重合体のほか、例えばエチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン共重合体や、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸(エステル)共重合体、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体金属中和物(いわゆるアイオノマー樹脂)等のオレフィン系共重合体樹脂等を、それぞれ単独で又は複数種混合して使用することができる。
【0016】
中でも本発明の用途に最も好適なのはポリプロピレン系樹脂、すなわちプロピレンを主成分とする単独又は共重合体であり、具体的には、例えばホモポリプロピレン、ランダム重合ポリプロピレン、ブロック重合ポリプロピレン、及び、ポリプロピレン結晶部を有し、且つプロピレン以外の炭素数2〜20のα−オレフィン、好ましくはエチレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1又はオクテン−1、のコモノマー成分を15モル%以上含有するプロピレン−α−オレフィン共重合体などを例示することができる。また、通常ポリプロピレン樹脂の柔軟化に用いられる低密度ポリエチレン、アタクティックポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合ゴム又はその水素添加物、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−プロピレン共重合ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合ゴム等の改質剤を添加することもできる。
【0017】
透明樹脂シート層21には、必要に応じて例えば紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、可塑剤、柔軟剤、滑剤、抗菌剤、防黴剤、艶調整剤等の各種の添加剤を適宜添加してもよい。また、絵柄インキ層23を透視可能な透明性を阻害しない範囲において、着色顔料や光輝性顔料等の着色剤や体質顔料、充填剤などを添加することもできる。
【0018】
化粧シート2における基材シート層24及びバッカー層25に使用するポリオレフィン系樹脂としても、基本的には上記透明樹脂シート層21に使用されるものと同様のものを使用することができる。これら基材シート層24及びバッカー層25にも上記した各種の添加剤を添加できることは勿論であり、特に、基材1を隠蔽して意匠性を安定させるために、これらの層の一方又は両方に、例えば酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、カーボンブラック、金属粉等の不透明顔料を添加して隠蔽性に着色しておくことが望ましい。
【0019】
なお、このうちバッカー層25に関しては、ポリプロピレン系樹脂成形品からなる基材1に対する密着強度を考慮して、熱接着性に優れたポリオレフィン系樹脂組成物を使用することが望ましく、具体的には、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸又はその無水物で変性したポリオレフィン系樹脂や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル類で変性したポリオレフィン系樹脂等の変性ポリオレフィン系樹脂を用いるか、若しくは、該変性ポリオレフィン系樹脂を前述した各種のポリオレフィン系樹脂にブレンドした樹脂組成物を用いることが望ましい。
【0020】
これらの中でも特に望ましいのは、砂利道等での運転中の激しい振動や真夏の炎天下での蒸し風呂状高温にさらされても接着力が低下しない耐衝撃性及び耐熱性を備えた、不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト重合した酸変性ランダム重合ポリプロピレン樹脂である。その変性量としては、樹脂組成物(酸変性ランダム重合ポリプロピレン樹脂以外の混合樹脂成分がある時はこれを含む)1g当たりのカルボニル基含量として0.0001〜0.1ミリモル当量の範囲が、接着力に優れ望ましい。なお、酸変性ランダム重合ポリプロピレン樹脂は、押出成形時にネックインを発生し易く製膜性に劣る傾向があるので、これを解消するために例えば低密度ポリエチレンを5〜10重量%程度添加するとよい。
【0021】
これら透明樹脂シート層21、基材シート層24及びバッカー層25の厚みについては、本発明において特に限定されるものではないが、一般的にはそれぞれ20〜200μm程度、さらに好ましくはそれぞれ50〜150μm程度の範囲内で選ばれる。そして、これらを合わせた化粧シート2の総厚としては、一般的には100〜500μm程度の範囲内で設計される。
【0022】
化粧シート2における絵柄インキ層23は、本発明の自動車用エアバッグパネルに任意の所望の絵柄による意匠性を付与するために設けられるもので、その絵柄の種類としては、例えば木目柄、石目柄、布目柄、抽象柄、幾何学模様、文字又は記号、或いはそれらの複数種類の組合せ等、所望により任意であり、単色無地であっても勿論構わない。また必要に応じて、絵柄インキ層23の裏面側に、隠蔽性の付与のための不透明ベタインキ層を設けることもできる。
【0023】
絵柄インキ層23の形成方法としては、顔料等の着色剤を適当な展色剤樹脂と共に適当な溶剤中に溶解又は分散してなる印刷インキ又は塗料を使用して、例えばグラビア印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット印刷法等の各種印刷法や、例えばロールコート法、グラビアコート法、ナイフコート法、リップコート法、スプレーコート法等の各種塗工法等によって形成される。
【0024】
絵柄インキ層23は、図1に示した様に、基材シート層24の表面に印刷又は塗工形成されるのが一般的であるが、本発明はこれに限定されるものでは勿論なく、例えば透明樹脂シート層21の表面又は裏面、基材シート層24が透明であればその裏面など、要するに化粧シート2の表面側から透視可能な位置であればどこに設けても良く、複数の位置に併設しても勿論構わない。
【0025】
上記化粧シート2における透明樹脂シート層21、基材シート層24及びバッカー層25の相互間の積層方法は、本発明において特に限定されるものではなく、例えば接着剤層23を介したウェットラミネート法又はドライラミネート法や、接着剤層23を介するか又は介さない熱ラミネート法、層間に溶融押出した熱可塑性樹脂層を介して積層するサンドラミネート法、いずれかの層の形成用材料を溶融押出して成形すると同時に溶融状態で他の層と積層するエクストルージョンラミネート法等、従来公知の手法を任意に採用することができる。また、図1における基材シート層25とバッカー層26の様に、層間に絵柄インキ層等が介在しない場合には、これらを共押出法により同時に成形してもよい。
【0026】
なお、上記エクストルージョンラミネート法においては、層間の密着強度を十分に確保するために、形成すべき層の形成用材料と共に、酸変性ポリオレフィン系樹脂等の接着性樹脂組成物を共押出して、層間に接着性樹脂層23を形成する手法を採用することもできる。その際、該接着性樹脂組成物としては、自動車用としての耐衝撃性や耐熱性を考慮して、前記バッカー層25の場合と同様、不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト重合した酸変性ランダム重合ポリプロピレン樹脂を主成分とする組成物などが最も望ましい。
【0027】
透明樹脂シート層21の表面には、必要に応じて図2に示す様に、表面を摩耗等から保護したり表面の艶状態を調整したりするための表面保護層26を設けることもできる。この表面保護層26には、各種物性を考慮して、例えば2液硬化型ウレタン系樹脂や架橋型アクリル系樹脂、アミノアルキド系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性樹脂や、(メタ)アクリレート系樹脂等の電離放射線硬化性樹脂などの硬化性樹脂が使用されるのが一般的である。この表面保護層26にはさらに必要に応じて、例えば着色剤、充填剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、艶調整剤、滑剤、帯電防止剤、結露防止剤、抗菌剤、防黴剤、減摩剤等の各種添加剤を適宜添加することもできる。
【0028】
本発明の自動車用エアバッグパネルにおける基材1と化粧シート2との積層方法としては、予め射出成形法等により成形された基材1の表面に、化粧シート2を通常のロールラミネート法、プレスラミネート法、真空成形同時ラミネート法等によりラミネートすることも可能であるが、射出成形法等による基材1の成形工程において、成形用金型の内部に化粧シート2を導入することにより、基材1の成形と同時に化粧シート2とラミネートする成形同時ラミネート法によると、成形とラミネートとを同一工程で行えるので効率的であるほか、溶融状態の成形用樹脂の熱を利用して基材1と化粧シート2との強固な接着を図ることができるので、最も望ましいと言える。
【0029】
【実施例】
<実施例1>
厚み90μmの着色ポリプロピレン樹脂シート(共和レザー(株)製)を基材シートとして、その表面に2液硬化型ウレタン樹脂系インキ(東洋インキ製造(株)製「ラミスター」)を使用して、グラビア印刷法により木目柄の絵柄インキ層(乾燥後の塗布量2〜3g/m)を印刷形成し、続いて該印刷面に感熱接着剤(塩化酢酸ビニル/ポリエステル/アクリル=1/1/1)を乾燥後の塗布量1g/mに塗布した後、該塗布面に厚み100μmの透明アクリル系樹脂シート(三菱レイヨン(株)製「アクリプレン」)を熱ラミネートし、最後に基材シートの裏面に、厚み100μmの着色バッカー層(無水マレイン酸をグラフト重合した酸変性ランダム重合ポリプロピレン樹脂(1g中のカルボニル基含量は0.02ミリモル当量)95重量部と低密度ポリエチレン5重量部との混合物、両面コロナ品)を熱ラミネートして、化粧シートを作製した。
【0030】
上記化粧シートを射出成形用金型の雌型キャビティ面に、その透明アクリル系樹脂シート面を金型キャビティ面側に向けて装填し、市販の自動車フロントパネル用グレードのポリプロピレン系樹脂を通常の条件で射出成形して、厚み3mmのポリプロピレン系樹脂成形品からなる基材の表面に上記化粧シートが積層された本発明の自動車用エアバッグパネルを作製した。
【0031】
<実施例2>
厚み70μmの着色ポリプロピレン樹脂シートを基材シートとして、その表面に上記実施例1と同様にして絵柄インキ層を形成し、更に2液硬化型ウレタン樹脂系アンカーコート剤を乾燥後の塗布量1g/mに塗布した後、該塗布面に、マレイン酸変性ランダム重合ポリプロピレン系接着性樹脂20μmと、ホモポリプロピレン樹脂60μmとをこの順に共押出法によりラミネートし、続いて基材シートの裏面に、厚み100μmの着色バッカー層(無水マレイン酸をグラフト重合した酸変性ランダム重合ポリプロピレン樹脂(1g中のカルボニル基含量0.02ミリモル当量)95重量部と低密度ポリエチレン5重量部の混合物、両面コロナ品)を熱ラミネートし、最後に表面のホモポリプロピレン樹脂層上に2液硬化型ウレタン系樹脂からなる乾燥後の塗布量6g/mの表面保護層を施して、化粧シートを作製した。この化粧シートを使用して、上記実施例1と同一の要領で射出成形を行い、本発明の自動車用エアバッグパネルを作製した。
【0032】
<比較例1>
厚み100μmの着色ポリ塩化ビニル樹脂シートの表面に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂系印刷インキを使用して絵柄インキ層を印刷形成し、該印刷面に、上記実施例1に用いたものと同一の透明アクリル系樹脂フィルムを、上記実施例1と同一の要領で熱ラミネートし、さらに裏面に厚み100μmの着色ABS樹脂シートを熱ラミネートして、化粧シートを作製した。この化粧シートを使用して、上記実施例1と同一の要領で射出成形を行い、自動車用エアバッグパネルを作製した。
【0033】
<比較例2>
上記比較例1において、射出成形用の樹脂をポリプロピレン系樹脂からABS樹脂に変更し、その他は上記比較例1と同一の要領で自動車用エアバッグパネルを作製した。
【0034】
<性能比較>
上記実施例1、2及び比較例1、2の自動車用エアバッグパネルについて、耐寒衝撃試験(デュポン式、JIS K 5400、−10℃、破壊の有無)及び密着強度試験(初期密着強度(成形直後)及び耐熱密着強度(90℃120時間後)、○:980N/m以上、△:590〜980N/m、×:590N/m未満)を実施したところ、結果は下表の通りであった。
【0035】
Figure 2004155293
【0036】
但し、比較例1の耐寒衝撃試験サンプルは、基材の破壊はなかったものの、部分的に化粧シートの基材からの浮き剥がれが発生した。
【0037】
また、上記実施例1、2及び比較例2の自動車用エアバッグパネルを、市販の小型乗用車のエアバッグ収納部に装着し、エアバッグを膨張展開させたところ、比較例2の自動車用エアバッグパネルは破面の鋭利な多数の細かい破片に砕けて飛び散ったのに対し、実施例1、2の自動車用エアバッグは一部が破損したものの破片数は少なく、破面も人の肌を傷つけるほど鋭利なものではなかった。
【0038】
【発明の効果】
以上詳細に説明した様に、本発明の自動車用エアバッグパネルは、従来使用されていたABS樹脂成形品に代えてポリプロピレン系樹脂成形品を基材に使用しているので、エアバッグの膨張展開時の安全性が高いのみならず、該ポリプロピレン系樹脂成形品からなる基材に対しても化粧シートが十分な密着強度を持って積層されており、意匠性及び耐久性にも優れている。さらに、化粧シートにポリ塩化ビニル樹脂を使用していないので、燃焼時の有害ガス等の問題もなく、また、特に透明樹脂シート層にポリオレフィン系樹脂を使用した場合には、全体が実質的にポリオレフィン系樹脂からなるので、基材と化粧シートとを分離する必要なく、そのまま粉砕して成形用材料として再利用可能なリサイクル性をも備えたものとなる等、種々の顕著な効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の自動車用エアバッグパネルの一例の模式断面図。
【図2】本発明の自動車用エアバッグパネルの一例の模式断面図。
【符号の説明】
1 基材
2 化粧シート
21 透明樹脂シート層
22 接着剤層(接着性樹脂層)
23 絵柄インキ層
24 基材シート層
25 バッカー層
26 表面保護層

Claims (2)

  1. 自動車のステアリングホイール又はフロントパネル等に設けられるエアバッグ収納部を被覆するためのエアバッグパネルであって、ポリプロピレン系樹脂成形品からなる基材上に、表面装飾のための化粧シートが積層されてなり、該化粧シートは、表面側から順にアクリル系樹脂又はポリオレフィン系樹脂からなる透明樹脂シート層、絵柄印刷インキ層、ポリオレフィン系樹脂からなる基材シート層、及びポリオレフィン系樹脂からなるバッカー層が積層されてなり、該バッカー層側の面を前記基材側に向けて前記基材上に積層されてなることを特徴とする自動車用エアバッグパネル。
  2. 上記バッカー層は、不飽和カルボン酸又はその無水物をグラフト重合した酸変性ランダム重合ポリプロピレン樹脂90〜95重量%と、低密度ポリエチレン5〜10重量%との混合樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1に記載の自動車用エアバッグパネル。
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