JP2004152651A - 表面伝導型電子放出素子及び画像形成装置の製造方法 - Google Patents

表面伝導型電子放出素子及び画像形成装置の製造方法 Download PDF

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    • H01J9/02Manufacture of electrodes or electrode systems
    • H01J9/022Manufacture of electrodes or electrode systems of cold cathodes
    • H01J9/027Manufacture of electrodes or electrode systems of cold cathodes of thin film cathodes

Abstract

【課題】高精細化が容易で、大面積に亘って均一な電子放出特性の得られる表面伝導型電子放出素子を低コストで形成する製造方法を提供する。
【解決手段】基板1上にイオン交換性の樹脂パターンを形成し、該樹脂パターン部分に金属成分を含む溶液をイオン交換反応を用いて吸収させた後、該樹脂パターンを焼成して導電性薄膜4を形成し、得られた導電性薄膜4にフォーミング処理を施す工程を経て表面伝導型電子放出素子を製造する。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばフラットディスプレイ等の表示装置やコピー機やプリンターにおける露光装置等の画像形成装置の電子源として使用することができる表面伝導型電子放出素子及びそれを用いた画像形成装置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在主流の画像表示装置はCRT(Cathode Ray Tube)であるが、それに代わる画像表示装置として数多くのフラット・パネル・ディスプレイ、例えばLCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、ELD(Electro Luminesence Display)、FED(Field Emission Display、電界放出型表示装置)等が開発検討および製品化されてきている。その中で表面伝導型電子放出素子についても検討が進められている。
【0003】
表面伝導型電子放出素子としては、ハートウェル等による素子が報告されている(M.Hartwell and C.G.Fonstad “IEEE Trans. ED Conf.”,519(1975))。この表面伝導型電子放出素子は、基板上に形成された小面積の導電性薄膜に、膜面に平行に電流を流すことにより、電子放出が起こる現象を利用するものである。
【0004】
電子放出部を含む導電性薄膜は、絶縁性基板上に堆積された導電性材料からなるものであって、真空蒸着技術、フォトリソグラフィー技術を使用して形成することが知られている。
【0005】
また、真空装置を必要とせず、安価に大面積に亘って多数の素子を形成するのに適した導電性薄膜の形成方法として、導電性材料を含む溶液の液滴をインクジェット方式で付与する方法も知られている。この技術についての本出願人による先行技術の一部を紹介すると、インクジェット形成方式による素子作成に関しては特開平9−102271号公報や特開2000−251665号公報、これらの素子をXYマトリクス形状に配置した例としては特開昭64−31332号公報や特開平7−326311号公報を挙げることができる。さらには、配線形成方法に関しては特開平8−185818号公報や特開平9−50757号公報に、駆動方法については特開平6−342636号公報等に詳述されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような構成の表面伝導型電子放出素子の従来の製造方法において、真空蒸着技術、フォトリソグラフィー技術を使用して導電性薄膜を形成する方法においては、大面積に亘って多数の表面伝導型電子放出素子を形成することは可能であっても、特殊かつ高価な製造装置を必要とし、生産コストが高い問題がある。
【0007】
また、インクジェット方式による方法でも、高精細化への対応に限界があり、また大画面に表面伝導型電子放出素子を形成させる際に、タクトが増大し、素子形状・素子膜厚さの均一性制御が困難になるという欠点がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、高精細化が容易で、大面積に亘って均一な電子放出特性の得られる表面伝導型電子放出素子を低コストで形成する製造方法及びそれを用いた画像形成装置の製造方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的のために、基板の上にイオン交換性の樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、該樹脂パターン部分に金属成分を含む溶液を吸収させるイオン交換性の吸収工程と、該樹脂パターンを焼成する焼成工程を経て導電性薄膜を形成する工程と、該導電性薄膜にフォーミング処理を施す工程とを有することを特徴とする表面伝導型電子放出素子の製造方法を提供するものである。
【0010】
また、上記本発明は、前記金属成分を含む溶液が、少なくともパラジウムを含む錯体化合物であること、
上記樹脂パターン形成工程において、樹脂パターン形成材料にイオン交換性を有する感光性樹脂を用いること、
前記樹脂パターン形成工程が、感光性樹脂を基板の表面に塗布する塗布工程と、塗布後感光性樹脂を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後塗膜を所定のパターンに露光する露光工程と、露光後塗膜の非露光部を除去する現像工程とを有すること、前記樹脂パターン形成工程が、感光性樹脂を基板の表面に塗布する塗布工程と、塗布後感光性樹脂を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後塗膜を所定のパターンに露光する露光工程と、露光後塗膜の露光部を除去する現像工程とを有すること、
をその好ましい態様として含むものである。
【0011】
更に本発明は、複数の電子放出素子と、該電子放出素子から放出される電子線の照射により画像を形成する画像形成部材とを具備する画像形成装置の製造方法において、電子放出素子を上記いずれかの方法で形成することを特徴とする画像形成装置の製造方法を提供するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
まず、本発明の製造対象である表面伝導型電子放出素子の典型的な素子構成として、前述のハートウェル等により報告された素子構成を、図1に示した模式図をもとに説明する。図1(a)は典型例としての表面伝導型電子放出素子の平面図を、図1(b)は断面図を示している。
【0013】
図1において、1はガラス等からなる電気的絶縁性の基板であり、その大きさおよびその厚みは、その上に設置される表面伝導型電子放出素子の個数、個々の素子の設計形状、電子源としての使用時に容器の一部を構成する場合には、その容器を真空に保持するための耐大気圧構造等の力学的条件等に依存して適宜設定される。
【0014】
基板1の材質としては、青板ガラス、ナトリウム等の不純物含有量を減少させたガラス、石英ガラス、表面にSiO層を形成したガラスおよびアルミナ等のセラミックス基板等が挙げられる。
【0015】
上記基板1上には、相対向して素子電極2,3が形成されている。
【0016】
素子電極2,3の材料としては一般的な導電性材料が用いられ、例えば、Pd、Pt、Ru、Ag、Au、Ti、In、Cu、Cr、Fe、Zn、Sn、Ta、W、Pb等の金属、PdO、SnO、In、PbO、Sb等の酸化物、HfB、ZrB、LaB、CeB、YB、GdB等の硼化物、TiC、ZrC、HfC、TaC、SiC、WC等の炭化物、TiN、ZrN、HfN等の窒化物、Si、Ge等の半導体、カーボン等が挙げられ、その膜厚は、好ましくは数十nmから数μmの範囲が適当である。
【0017】
素子電極2,3間の間隔L、素子電極2,3の相対向する幅W、導電性薄膜4の幅W’、素子電極2,3の形状等は、当該表面伝導型電子放出素子の利用形態等に応じて適宜設計されるが、間隔Lは好ましくは数百nmから1mmであり、より好ましくは素子電極2,3間に印加する電圧等を考慮して1μmから100μmの範囲である。また、素子電極2,3の相対向する幅Wは、好ましくは素子電極2,3の電気抵抗値や得られる表面伝導型電子放出素子の電子放出特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲である。
【0018】
この素子電極2,3は、例えば真空蒸着装置を用いて、基板1の全面または一部分に導電性材料を蒸着することで得ることができる。さらに具体的には、上記蒸着後、基板1にレジスト材料を塗布し、所定のパターンを露光・現像し、パターン化したレジストを得た後、RIEなどのドライエッジ装置を用いて、パターンの無い部分の蒸着膜を除き、その後、パターニングしたレジストを所定の溶液で剥離することで所望の形状の素子電極2,3を得ることができる。
【0019】
素子電極2,3は、市販のPt等の金属粒子を含有したペーストをオフセット印刷等の印刷法によって塗布して形成することも可能である。また、より精密なパターンを得る目的で、Pt等を含有する感光性ペーストをスクリーン印刷等の印刷法で塗布し、フォトマスクを用いて露光、現像するという工程でも形成可能である。
【0020】
通常、上記素子電極2,3の形成後、素子電極2,3を跨ぐ形で、電子放出部が形成される導電性薄膜4を形成する。
【0021】
導電性薄膜4としては、良好な電子放出特性を得るために、微粒子で構成された微粒子膜が特に好ましい。また、その膜厚は、素子電極2,3間の抵抗値、および後述するフォーミング処理条件等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは1nmから数百nmであり、特に好ましくは1nmから50nmの範囲とするのが良い。そのシート抵抗値は、10〜10Ω/□である。
【0022】
上記微粒子膜とは、複数の微粒子が集合した膜であり、その微細構造として、微粒子が個々に分散配置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接あるいは重なり合った状態(島状も含む)の膜を指しており、微粒子の粒径は、1nmから数百nm、好ましくは1nmから20nmである。
【0023】
本発明者らの研究によると、導電性薄膜4の形成材料には、一般的にはパラジウム(Pd)が適しているが、これに限ったものではない。また成膜方法も、スパッタ法、溶液塗布後に焼成する方法等を適宜用いることができる。
【0024】
この導電性薄膜4には、フォーミング工程と称される通電処理を施し、導電性薄膜4を局所的に破壊、変形もしくは変質させて、亀裂部を形成する電気的に高抵抗な領域を形成するもので、これが電子放出部5となる。
【0025】
なお、図示の便宜から、図1に示される電子放出部5は、導電性薄膜4の中央に矩形の形状で示されているが、これは模式的なものであり、実際の電子放出部5の位置や形状を忠実に表現しているものではない。
【0026】
上記表面伝導型電子放出素子は、これを複数配列すると共に、これらを駆動するための配線を設けることにより、マルチ電子源として用いることができる。このような電子源としては、一対の素子電極2,3を有する電子放出素子をX方向およびY方向に行列状に複数個配し、同じ行に配された複数の表面伝導型電子放出素子の一方の素子電極2または3と他方の素子電極3または2をそれぞれ配線に共通に接続すると共に、この配線と直交する方向で、該表面伝導型電子放出素子の上方に配した制御電極(グリッドとも呼ぶ)により、表面伝導型電子放出素子からの電子を制御駆動できるようにしたはしご状配置のものがある。これとは別に、表面伝導型電子放出素子をX方向およびY方向に行列状に複数個配し、同じ行に配された複数の表面伝導型電子放出素子の素子電極2,3の一方をX方向の配線に共通に接続し、同じ列に配された複数の表面伝導型電子放出素子の素子電極2,3の他方をY方向の配線に共通に接続したものも挙げられる。これはいわゆる単純マトリクス配置である。
【0027】
表面伝導型電子放出素子を用いた画像形成装置としては、上記のようなマルチ電子源と、この電子源の表面伝導型電子放出素子より放出された電子線の照射により画像を形成する画像形成部材とを組み合わせたものを挙げることができる。画像形成部材として、電子によって可視光を発光する蛍光体を有するものを用いれば、例えばテレビ受像機やコンピューターディスプレーとして用いられる表示パネルとすることができる。また、画像形成部材として、感光体ドラムを用い、電子線の照射によりこの感光体ドラムに形成される潜像をトナーを用いて現像できるようにすれば、例えばコピー機やプリンターとすることができる。
【0028】
本発明は、上記のような表面伝導型電子放出素子及び画像形成装置の製造方法に関するもので、まず、表面伝導型電子放出素子の製造方法を、本発明で使用する樹脂パターン形成材料、金属成分を含む溶液、これらを用いた導電性薄膜の形成方法、素子電極および導電性薄膜形成後の工程の順に説明する。
【0029】
(1)樹脂パターン形成材料
本発明で使用する樹脂パターン形成材料としては、形成した樹脂パターンが、後述する金属成分を含む溶液を吸収できるものであって、しかも金属成分を含む溶液中の金属成分と反応し、イオン交換可能な樹脂の溶液またはその前駆体が用いられる。このイオン交換性の樹脂パターンを形成することにより、後述する吸収工程をイオン交換性の吸収工程とすることができ、金属成分の吸収を向上させ、材料の利用効率を高め、さらにはより形状の整ったパターンを形成することができる。イオン交換が可能な樹脂としては、パターンの形状制御の点で特に好ましいことから、カルボン酸基を有するものが好ましい。
【0030】
樹脂パターン形成材料は、上記条件を満たすものであれば特に制限はないが、パターンの形成しやすさの点から、感光性樹脂が好ましい。感光性樹脂としては、樹脂構造中に感光基を有するタイプのものであっても、例えば環化ゴム−ビスアジド系レジストのように、樹脂に感光剤が混合されたタイプのものでもよい。いずれのタイプの感光性樹脂成分においても、光反応開始剤や光反応禁止剤を適宜混合しておくことができる。また、現像剤に可溶な感光性樹脂塗膜が光照射によって現像剤に不溶化するタイプ(ネガタイプ)であっても、現像剤に不溶な感光性樹脂塗膜が光照射によって現像剤に可溶化するタイプ(ポジタイプ)であってもよい。
【0031】
感光性樹脂は、水溶性でも溶剤溶解性でもよいが、良好な作業環境を維持しやすいこと、廃棄物の自然に与える負荷が小さいことなどから、水溶性の感光性樹脂が好ましい。水溶性の感光性樹脂とは、後述する現像工程における現像を水もしくは水を50重量%以上含む現像剤で行うことができる感光性樹脂をいい、溶剤溶解性の感光性樹脂とは、現像工程における現像を有機溶剤もしくは有機溶剤を50重量%以上含む現像剤で行う感光性樹脂をいう。
【0032】
さらに水溶性の感光性樹脂について説明すると、水溶性の感光性樹脂としては、水を50重量%以上含有し、50重量%未満の範囲で、例えば乾燥速度を速めるためのメチルアルコールやエチルアルコールなどの低級アルコールを加えた現像剤や感光性樹脂成分の溶解促進や安定性向上などを図るための成分を加えた現像剤を使用するものを用いることができる。但し、環境負荷を軽減する観点から、水の含有率が70重量%以上の現像剤で現像できるものが好ましく、さらに好ましくは水の含有率が90重量%以上の現像剤で現像できるものであり、水だけを現像剤として現像できるものが最も好ましい。この水溶性の感光性樹脂としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂やポリビニルピロリドン系樹脂などの水溶性の樹脂を用いたものを挙げることができる。
【0033】
(2)金属成分を含む溶液
本発明で用いる金属成分を含む溶液は、焼成によって金属または金属化合物膜を形成できるものであれば、有機溶剤を50重量%以上含む有機溶剤系溶媒を用いた有機溶剤系溶液でも、水を50重量%以上含む水系溶媒を用いた水系溶液でもよい。この金属成分を含む溶液としては、例えば白金、銀、パラジウム、銅などの有機溶剤溶解性または水溶性の金属有機化合物を有機溶剤系溶媒または水系溶媒中に金属成分として溶解させたものを用いることができる。
【0034】
本発明で用いる金属成分を含む溶液としては、上記感光性樹脂と同様に、良好な作業環境を維持しやすいこと、廃棄物の自然に与える負荷が小さいことなどから、水系溶液であることが好ましい。この水系溶液の水系溶媒としては、水を50重量%以上含有し、50重量%未満の範囲で、例えば乾燥速度を速めるためのメチルアルコールやエチルアルコールなどの低級アルコールを加えたものや上述した金属有機化合物の溶解促進や安定性向上などを図るための成分を加えたものとすることができる。しかし、環境負荷を軽減する観点から、水の含有率が70重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは水の含有率が90重量%以上であり、総て水であることが最も好ましい。
【0035】
特に、焼成することにより導電性パターンを形成可能な水溶性の金属有機化合物としては、例えば金、白金、銀、パラジウム、銅などの錯体化合物を挙げることができる。これらの中でも、電子放出特性の優れた表面伝導型電子放出素子を得やすいことから、パラジウムを含む錯体化合物が好ましい。
【0036】
上記錯体化合物としては、その配位子が、分子内に少なくとも1つ以上の水酸基を有する含窒素化合物であるものが好ましい。さらに、分子内に少なくとも1つ以上の水酸基を有する含窒素化合物で配位子が構成された錯化合物の中でも、例えばエタノールアミン、プロパノールアミン、イソプロパノールアミン、ブタノールアミンなどのアルコールアミン、セリノール、TRISなど、炭素数が8以下の含窒素化合物のいずれか単独もしくは複数種類で配位子が構成された錯化合物がより好ましい。
【0037】
上記錯体化合物が好適に用いられる理由としては、水溶性の高さならびに結晶性の低さを挙げることができる。例えば一般に市販されているアンミン錯体などでは、乾燥中に結晶が析出して均一な膜が得にくくなる場合がある。また、脂肪族アルキルアミンなどの「フレキシブル」な配位子とすると結晶性を下げることが可能であるが、アルキル基の疎水性により水溶性が低下してしまうことがある。これに対して上記のような配位子とすることで、水溶性の高さと結晶性の低さを両立させることが可能となる。
【0038】
さらには、得られる金属または金属化合物パターンの膜質向上ならびに基体との密着性を向上させるために、例えばロジウム、ビスマス、ルテニウム、バナジウム、クロム、錫、鉛、ケイ素などの単体または化合物が前記金属化合物の成分として含まれていることが好ましい。
【0039】
(3)導電性薄膜の形成方法
導電性薄膜の形成は、通常、対をなす素子電極および必要な配線の形成後、両素子電極間に跨って形成するが、素子電極の形成前に導電性薄膜を形成した後、対をなす素子電極の少なくとも一部をそれぞれ導電性薄膜に重ねて形成し、この対をなす素子電極間から導電性薄膜の一部を露出させるようにすることもできる。配線の形成は、素子電極の形成と同時、素子電極の形成前、素子電極の形成後のいずれでもよい。いずれの場合も、導電性薄膜の形成は、以下の▲1▼樹脂パターン形成工程(塗布工程、乾燥工程、露光工程、現像工程)、▲2▼吸収工程、▲3▼必要に応じて行われる洗浄工程、▲4▼焼成工程、▲5▼さらには必要に応じて行われるミリング工程を経て行うことができる。
【0040】
▲1▼:樹脂パターン形成工程は、前記樹脂パターン形成材料を用いて基板上にイオン交換性の樹脂パターンを形成する工程で、感光性樹脂以外の樹脂パターン形成材料を印刷、転写、リフトオフ等によって基板上に付設することで行うこともできるが、樹脂パターン形成材料として感光性樹脂を用い、樹脂パターン形成工程を、塗布工程、乾燥工程、露光工程および現像工程に分けて行うことが好ましい。以下、この塗布工程、乾燥工程、露光工程および現像工程について説明する。
【0041】
塗布工程は、表面伝導型電子放出素子を形成すべき電気的絶縁性の基板上に感光性樹脂を塗布する工程である。この塗布は、各種印刷法(スクリーン印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷など)、スピンナー法、ディッピング法、スプレー法、スタンプ法、ローリング法、スリットコーター法、インクジェット法などを用いて行うことができる。
【0042】
乾燥工程は、上記塗布工程において基板上に塗布した感光性樹脂の塗膜中の溶媒を揮発させて塗膜を乾燥する工程である。この塗膜の乾燥は、室温下で行うこともできるが、乾燥時間を短縮するために加熱下で行うことが好ましい。加熱乾燥は、例えば無風オーブン、乾燥機、ホットプレートなどを用いて行うことができる。塗布する感光性樹脂の配合や塗布量などによっても相違するが、一般的には50〜100℃の温度下に1〜30分間置くことで行うことができる。
【0043】
露光工程は、上記乾燥工程において乾燥された基板上の感光性樹脂塗膜を、表面伝導型電子放出素子の導電性薄膜として使用するのに適した所定のパターンに露光する工程である。露光工程で光照射して露光する範囲は、使用する感光性樹脂がネガタイプであるかポジタイプであるかによって相違する。光照射によって現像剤に不溶化するネガタイプの場合、表面伝導型電子放出素子の導電性薄膜パターンとすべき領域に光を照射して露光するが、光照射によって現像剤に可溶化するポジタイプの場合、ネガタイプとは逆に、表面伝導型電子放出素子の導電性薄膜パターンとすべき領域以外の領域に光を照射して露光する。光照射領域と非照射領域の選択は通常のフォトレジストによるマスク形成における手法と同様にして行うことができる。
【0044】
現像工程は、上記露光工程で露光された感光性樹脂塗膜について、所望の導電性薄膜パターンとすべき領域以外の領域の感光性樹脂塗膜を除去する工程である。感光性樹脂がネガタイプの場合、光照射を受けていない感光性樹脂塗膜は現像剤に可溶で、光照射を受けた露光部の感光性樹脂塗膜が現像剤に不溶化するので、現像剤に不溶化していない非光照射部の感光性樹脂塗膜を現像剤で溶解除去することで現像を行うことができる。また、感光性樹脂がポジタイプの場合、光照射を受けていない感光性樹脂塗膜は現像剤に対して不溶で、光照射を受けた露光部の感光性樹脂塗膜が現像剤に可溶化するので、現像剤に可溶化した光照射部の感光性樹脂塗膜を現像剤で溶解除去することで現像を行うことができる。
【0045】
なお、現像剤としては、水溶性の感光性樹脂の場合、例えば水や通常の水溶性フォトレジストに用いられる現像剤と同様のものを用いることができる。また、溶剤溶解性の感光性樹脂の場合は、有機溶媒や溶剤系フォトレジストに用いられる現像液と同様のものを用いることができる。
【0046】
▲2▼:吸収工程は、上記現像工程を経て形成した樹脂パターンに前述した金属成分を含む溶液を吸収させる工程である。本発明における吸収工程は、前述のように、樹脂パターンがイオン交換性を有するものであることから、イオン交換性の吸収工程である。金属成分を含む溶液の吸収は、形成した樹脂パターンを前記金属成分を含む溶液と接触させることで行われる。具体的には、例えば前記金属成分を含む溶液に浸漬させるディッピング法や、樹脂パターンに例えばスプレー法やスピンコート法で前記金属成分を含む溶液を塗布する塗布法などで行うことができる。金属成分を含む溶液を接触させるに先立って、例えば金属成分を含む溶液として前記水系溶液を用いる場合に、前記水系溶媒を用いて樹脂パターンを膨潤させておくこともできる。
【0047】
▲3▼:洗浄工程は、樹脂パターンに金属成分を含む溶液を吸収させた後、樹脂系パターンに付着した余剰の該溶液や、樹脂パターン以外の箇所に付着した余剰の該溶液を除去する工程である。この洗浄工程は、前記金属を含む溶液中の溶媒と同様の洗浄液を用い、この洗浄液に前記樹脂パターンを形成した基体を浸漬する方法や、該洗浄液を前記樹脂パターンを形成した基体に吹き付けることなどによって行うことができる。また、洗浄工程は、例えばエアーの吹き付けや振動などで余剰の溶液を十分振り落とすことで行うこともできる。
【0048】
▲4▼:焼成工程は、上記現像工程および吸収工程さらに必要に応じて上記洗浄工程を経た樹脂パターンを(ネガタイプでは光照射部の感光性樹脂塗膜、ポジタイプでは非光照射部の感光性樹脂塗膜)を焼成し、樹脂パターン中の有機成分を分解除去し、樹脂パターンに吸収されている金属成分を含む溶液中の金属成分により、金属または金属化合物で構成された導電性薄膜を形成する工程である。焼成は、大気中で行うことができるが、銅やパラジウムなどの酸化しやすい金属の導電性薄膜の場合には、真空もしくは脱酸素雰囲気下(例えば窒素などの不活性ガス雰囲気下など)で行うこともできる。
【0049】
焼成は、樹脂パターンに含まれる有機成分の種類などによっても相違するが、通常400℃〜600℃の温度下に数分〜数十分置くことで行うことができる。焼成は、例えば熱風循環炉などで行うことができる。この焼成によって、基体上に、所定のパターンに沿った形状の金属または金属化合物の膜として、導電性薄膜を形成することができる。
【0050】
▲5▼:ミリング工程は、上記焼成工程後、必要に応じて行われるもので、基体上に形成した金属または金属化合物の導電性薄膜をパターニングする工程である。イオンミリング法は一般的に用いられている方法であればどれも可能である。使用するレジストはポジレジストでもネガレジストでも可能である。露光は、所定のマスクを用いて露光し現像することで所定のパターンを得ることができる。露出面をイオンミリング法などでエッチングする。エッチングは金属面をエッチングできればどの方法でも可能である。最後にレジストを剥離するが、剥離液は、使用したレジストの種類に応じて選択される。
【0051】
(4)素子電極および導電性薄膜形成後の工程
素子電極および導電性薄膜の形成後は、フォーミング工程により電子放出部を形成し、好ましくは更に活性化工程を施すことにより、製品としての電子放出素子を製造する。
【0052】
フォーミング工程は、上記導電性薄膜に通電処理を施し、導電性薄膜を局所的に破壊、変形もしくは変質させることにより、電気的に高抵抗な状態の電子放出部を形成するフォーミング処理を施す工程である。この電子放出部は、通常、亀裂状をなす。
【0053】
フォーミング工程は、例えば、前述したX方向およびY方向に表面伝導型電子放出素子を行列状に複数個配したマルチ電子源を製造する場合、基板の周囲の取り出し電極部を残して、基板全体を覆うようにフード状の蓋をかぶせ、蓋と基板との間に真空空間を作り、外部電源より取り出し電極からX方向およびY方向配線間に電圧を印加し、各導電性薄膜に通電することによって行うことができる。フォーミング処理後の導電性薄膜4の抵抗値Rsは、通常、10Ω〜10Ωの値である。
【0054】
例えば、導電性薄膜が主に酸化パラジウム(PdO)で構成されている場合、上記通電処理は、若干の水素ガスを含む真空雰囲気下で行うことが好ましい。このようにすると、通電処理時に水素によって還元が促進され、酸化パラジウム(PdO)がパラジウム(Pd)に変化し、この変化時に膜の還元収縮によって亀裂の発生(電子放出部の形成)を促進することができる。
【0055】
亀裂の発生位置およびその形状は、元の導電成膜膜の均一性に大きく影響される。製造する表面伝導型電子放出素子間の特性のバラツキを押さえるためには、上記亀裂が、対をなす素子電極間の中央で、直線状になるようにすることが好ましい。
【0056】
なお、このフォーミング工程によって亀裂を形成すると、所定の電圧ではこの亀裂付近から電子放出を生じるが、フォーミング工程を経ただけでは発生効率が低い。このため、後述する活性化工程を施すことが好ましい。
【0057】
フォーミング処理時の電圧波形の例を図2に示す。
【0058】
電圧波形は、パルス波形が好ましく、これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に印加する図2(a)に示す手法と、パルス波高値を増加させながら、電圧パルスを印加する図2(b)に示す手法がある。
【0059】
図2(a)におけるT1およびT2は、それぞれ電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通常T1は1μs〜10msの範囲で、また、T2は10μs〜10msの範囲で設定される。図示されるパルス波形は三角波で、この三角波の波高値(フォーミング処理時のピーク電圧)は、電子放出素子の形態に応じて適宜選択され、このような条件のもと、例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。なお、パルス波形は三角波に限定されるものではなく、矩形波などの他の波形を採用することもできる。
【0060】
図2(b)におけるT1およびT2の値については、図2(a)に示したのと同様とすることができる。図2(b)における三角波の波高値(フォーミング処理時のピーク電圧)は、例えば0.1Vステップ程度づつ、増加させることができる。
【0061】
フォーミング処理の終了については、フォーミング処理用パルスの間に、導電性薄膜を局所的に破壊、変形しない程度の電圧、例えば0.1V程度のパルス電圧を挿入して素子電流を測定し、抵抗値を求めて、例えばフォーミング処理前の抵抗に対して1000倍以上の抵抗を示した時点でフォーミングを終了させることができる。
【0062】
活性化工程は、素子電流および放出電流を、著しく変化させる処理を行うであり、この処理は、例えば、炭素原子を含むガスを含有する雰囲気下で、通電フォーミングと同様に、パルスの印加を繰り返すことで行うことができる。
【0063】
この活性化工程は、例えば前述したX方向およびY方向に表面伝導型電子放出素子を行列状に複数個配したマルチ電子源を製造する場合、前記フォーミング工程と同様にフード状の蓋をかぶせて基板との間で内部に真空空間を作り、外部からX方向配線およびY方向配線を通じてパルス電圧を素子電極に繰り返し印加すると共に、炭素原子を含むガスを導入し、それに由来する炭素あるいは炭素化合物を前記亀裂近傍にカーボン膜として堆積させることで行うことができる。
【0064】
上記炭素原子を含むガスを含有する雰囲気は、例えば油拡散ポンプやロータリーポンプなどを用いて真空容器内を排気した場合に雰囲気内に残留する有機物質のガスを利用して形成することができる他、イオンポンプなどにより一旦十分に排気した真空中に適当な有機物質のガスを導入することによっても得られる。
【0065】
このときの好ましい有機物質のガス圧は、得られる表面伝導型電子放出素子の用途、真空容器の形状、有機物質の種類などにより異なるため、場合に応じて適宜設定される。
【0066】
適当な有機物質としては、アルカン、アルケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類などを挙げることができる。具体的には、メタン、エタン、プロパンなど、C2n+2で表される飽和炭化水素、エチレン、プロピレンなどC2nなどの組成式で表される不飽和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸など、あるいはこれらの混合物を使用できる。
【0067】
上記活性化工程により、雰囲気中に存在する炭素原子を含むガスから、炭素あるいは炭素化合物が電子放出部およびその付近に堆積し、素子電流および放出電流が著しく変化するようになる。活性化工程の終了時期は、素子電流と放出電流を測定しながら適宜判定することが好ましい。また、活性化工程の処理のためのパルス幅、パルス間隔、パルス波高値なども適宜設定される。
【0068】
炭素あるいは炭素化合物とは、例えばグラファイト(いわゆるHOPG、PG、GCを包含するものであり、HOPGはほぼ完全なグラファイトの結晶構造、PGは結晶粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたもの、GCは結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れがさらに大きくなったものを指す)、あるいは非晶質カーボン(アモルファスカーボン、アモルファスカーボンと前記グラファイトの微結晶の混合物を指す)であり、その堆積する膜厚は、50nm以下の範囲とするのが好ましく、30nm以下の範囲とすることがより好ましい。
【0069】
図3の(a),(b)に、活性化工程で用いられる印加電圧の好ましい一例を示す。
【0070】
印加する最大電圧値は、10〜20Vの範囲で適宜選択される。図3(a)中、T1は、電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔であり、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている。また、図3(b)中、T1およびT1’はそれぞれ、電圧波形の正と負のパルス幅、T2はパルス間隔であり、T1>T1’、電圧値は正負の絶対値が等しく設定されている。
【0071】
また、複数の電子放出素子を上記のようにして形成し、この電子放出素子から放出される電子線の照射により画像を形成する画像形成部材を組合わせることにより、画像形成装置を製造することができる。
【0072】
【実施例】
以下に実施例を用いて本発明をより詳しく説明するが、この実施例は本発明を限定するものではない。
【0073】
実施例1
図1に示すタイプの表面伝導型電子放出素子を、図4〜図8に示される手順で作成した。
【0074】
図1において、1は基板、2および3は素子電極、4は導電性薄膜、5は電子放出部、Lは素子電極2と素子電極3の間の間隔、Wは素子電極2,3の相対向する幅、W’導電性薄膜4の幅を表している。また、図4〜図8において、1は基板、2,3は素子電極、4は導電成膜、6はY方向配線、7は層間絶縁層、8はコンタクトホール、9はX方向配線であり、導電成膜4は電子放出部(図8では図示されていない)を含むものとなっている。
【0075】
以下、本実施例における表面伝導型電子放出素子の作成方法を図1、図4〜図8で説明する。
【0076】
(A)素子電極の形成
まず、図4に示されるように、基板1上に49対の素子電極2,3を形成した。
【0077】
基板1としては、アルカリ成分が少ない旭硝子社製「PD−200」のガラス板の上にナトリウムブロック層としてSiO膜を100nm塗付焼成したもの(75mm×75mm×厚さ2.8mm)を用いた。
【0078】
さらに素子電極2,3は、基板1上に、まず下引き層としてスパッタ法によってチタニウム(Ti)5nm、その上に白金(Pt)40nmを成膜した後、フォトレジストを塗布し、露光、現像、エッチングという一連のフォトリソグラフィー法によってパターニングして形成した。本実施例では、素子電極2,3の間隔L=10μm、素子電極2,3の相対向する幅W=100μmとした。
【0079】
(B)Y方向配線(下配線)の形成
図5に示されるように、共通配線としてのY方向配線(下配線)6を、一方の素子電極3に接し、かつそれらを連結するライン状のパターンで形成した。
【0080】
材料としては銀(Ag)フォトペーストインキを用い、スクリーン印刷した後、乾燥させてから、所定のパターンに露光し現像した。この後、480℃前後の温度で焼成してY方向配線6を形成した。
【0081】
Y方向配線の厚さは約10μm、幅は50μmであった。なお、Y方向配線の終端部は、取り出し電極として使うために、線幅をより大きくした。
【0082】
(C)層間絶縁層の形成
図6に示されるように、上記Y方向配線6と、後述するX方向配線(上配線)9との間を絶縁するために、X方向配線9の形成位置に沿って、Y方向配線6上からライン状に層間絶縁層7を形成した。また、X方向配線9と他方の素子電極2との電気的接続を得るためのコンタクトホール8を素子電極2上の位置に形成した。
【0083】
上記層間絶縁層7の形成は、PbOを主成分とする感光性のガラスペーストをスクリーン印刷した後、露光し現像する工程を4回繰り返し、最後に480℃前後の温度で焼成することで行った。この層間絶縁層7の厚みは、全体で約30μm、幅は150μmであった。
【0084】
(D)X方向配線(上配線)の形成
図7に示されるように、走査電極としてのX方向配線(上配線)9を、コンタクトホール8上を通ってY方向配線6と直交方向にライン状に形成した。
【0085】
X方向配線9の形成は、先に形成した層間絶縁層7の上に、Agペーストインキをスクリーン印刷した後乾燥させ、この上に再度同様なことを行い2度塗りしてから、480℃前後の温度で焼成することで行った。得られたX方向配線9は、上記層間絶縁層7を挟んでY方向配線(下配線)6と交差しており、層間絶縁層7のコンタクトホール8部分で他方の素子電極2と接続されたものであった。
【0086】
このX方向配線9の厚さは約15μm、幅は400μmであった。また、同時に、図示していないが、外部駆動回路への引出し端子もこれと同様の方法で形成した。
【0087】
(E)導電性薄膜の形成
感光性樹脂(三洋化成製「サンレジナーBMR−850」)に、アミン系シランカップリング剤(信越化学製「KBM−603」)を0.06wt%添加した溶液を、上記工程によりX方向配線(上配線)9まで形成した基板1にスピンコーターで全面に塗布し、ホットプレートにて45℃で2分間乾燥した。
【0088】
次いでネガフォトマスクを用い、光源を超高圧水銀ランプ(照度:8.0mW/cm)にて、基板1とマスクをコンタクトさせ、露光時間2秒で露光した。次いで、現像剤として純水を用い、ディッピングで30秒間処理し、目的のパターンを得た。樹脂パターン形成後の膜厚は1.1μmであった。
【0089】
この樹脂パターンを形成した基板1を純水中に30秒浸漬した後、Pd錯体水溶液(酢酸パラジウム−モノエタノールアミン錯体;パラジウム含有量0.15重量%)に60秒浸漬した。
【0090】
その後、基板1を引き上げ、流水で5秒間洗浄し、樹脂パターン間のPd錯体水溶液を洗浄し、エアーで水切りをし、80℃のホットプレートで3分乾燥した。
【0091】
その後、熱風循環炉にて、500℃で30分間焼成して直径60μm、厚み10nmの酸化パラジウム(PdO)の導電性薄膜4を形成した(図8参照)。
【0092】
この導電性薄膜4の49個の平均電気抵抗値は、20kΩでばらつきは2.5%であった。
【0093】
(F)フォーミング
基板1の周囲の取り出し電極部を残して、基板1全体を覆うようにフード状の蓋をかぶせて基板1との間で真空空間を作り、外部電源より上記取り出し電極部からX方向配線とY方向配線間に電圧を印加して、各導電性薄膜4に通電処理を施した。
【0094】
電圧としては、図2(a)で説明したような三角波のパルス電圧とし、図2(a)におけるT1は0.1msec、T2は50msec、ピーク電圧は12Vとした。上記パルス電圧の印加下で、基板1とフード状の蓋の間の空間に、水素2重量%、窒素98重量%の混合ガスを1分間に5000Paの圧力上昇率で導入し、導電性薄膜4を還元した。この導電性薄膜4は、還元と共に亀裂を生じ、10分後には全部の導電性薄膜4の抵抗値が1MΩ以上に上昇した。
【0095】
(G)活性化
基板1の周囲の取り出し電極部を残して、基板1全体を覆うようにフード状の蓋をかぶせて基板1との間で真空空間を作り、この真空空間に炭素原子を含むガスを供給し、外部電源より上記取り出し電極部からX方向配線とY方向配線間に電圧を印加した。
【0096】
本実施例では、カーボン源としてトリニトリルを用い、スローリークバルブを通して真空空間内に導入し、1.3×10−4Paを維持した。また、電圧は図3で説明した矩形パルスとし、図3におけるT1、T1’およびT2はそれぞれ1msec、1msecおよび10msecとし、最大電圧は16Vとした。
【0097】
このとき、素子電極3に与える電圧を正とし、素子電流Ifは、素子電極3から素子電極2へ流れる方向が正である。約60分後に放出電流Ieがほぼ飽和に達した時点で通電を停止し、スローリークバルブを閉め、活性化処理を終了した。
【0098】
(H)得られた表面伝導型電子放出素子の特性
上述のようにして作成された表面伝導型電子放出素子の基本特性について図9、図10を用いて説明する。
【0099】
図9は、前述した構成を有する表面伝導型電子放出素子の電子放出特性を測定するための測定評価装置の概略図である。
【0100】
表面伝導型電子放出素子の素子電極2,3間を流れる素子電流If、およびアノード電極10への放出電流Ieの測定を行うもので、素子電極2,3に電源11と電流計12とを接続し、測定すべき表面伝導型電子放出素子の上方に高圧電源13と電流計14とを接続したアノード電極10を配置している。
【0101】
なお、図5において、1は基板、2,3は素子電極、4は電子放出部5を含む導電性薄膜、5は電子放出部、11は素子に素子電圧Vfを印加するための電源、12は素子電極2,3間の電子放出部5を含む導電性薄膜4を流れる素子電流Ifを測定するための電流計、10は表面伝導型電子放出素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極、13はアノード電極10に電圧を印加するための高圧電源、14は表面伝導型電子放出素子の電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定するための電流計である。
【0102】
表面伝導型電子放出素子およびアノード電極10は真空容器15内に設置され、その真空容器15には排気ポンプ16その他の機器が具備されており、所望の真空下で本表面伝導型電子放出素子の測定評価を行えるようになっている。
【0103】
本実施例においては、アノード電極10の電圧は400V、アノード電極10と表面伝導型電子放出素子との距離Hは4mmとした。
【0104】
図9に示した測定評価装置により測定された放出電流Ieおよび素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の典型的な例を図10に示す。なお、放出電流Ieと素子電流Ifは大きさが著しく異なるが、図10ではIf、Ieの変化の定性的な比較検討のために、リニアスケールで縦軸を任意単位で表記した。
【0105】
素子電極2,3(図9参照)間に印加する電圧12Vにおける放出電流Ieを測定した結果平均0.6μAであり、電子放出効率は平均0.17%を得た。また、表面伝導型電子放出素子間の均一性も良く、各表面伝導型電子放出素子間でのIeのばらつきは9%と良好な値が得られた。
【0106】
【発明の効果】
以上に説明したように、本発明に従い表面伝導型電子放出素子を作成した場合、従来技術での作成よりも安価で均一性に優れた表面伝導型電子放出素子の製造が可能である。また、その表面伝導型電子放出素子を用いることで、簡便に大面積に亘って多数の表面伝導型電子放出素子を作製できるため、低コストで品質表示の良い画像表示装置が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の製造対象である表面伝導型電子放出素子の典型的素子構成を示す図である。
【図2】フォーミング工程における印加電圧の説明図である。
【図3】活性化工程における印加電圧の説明図である。
【図4】実施例における表面伝導型電子放出素子の作成手順の説明図である。
【図5】実施例における表面伝導型電子放出素子の作成手順の説明図である。
【図6】実施例における表面伝導型電子放出素子の作成手順の説明図である。
【図7】実施例における表面伝導型電子放出素子の作成手順の説明図である。
【図8】実施例における表面伝導型電子放出素子の作成手順の説明図である。
【図9】実施例で得られた表面伝導型電子放出素子についての電子放出特性の測定評価装置の説明図である。
【図10】実施例で得られた表面伝導型電子放出素子の特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 基板
2 素子電極
3 素子電極
4 導電性薄膜
5 電子放出部
6 Y方向配線
7 層間絶縁層
8 コンタクトホール
9 X方向配線
10 アノード電極
11 電源
12 電流計
13 高圧電源
14 電流計
15 真空容器
16 排気ポンプ

Claims (6)

  1. 基板上にイオン交換性の樹脂パターンを形成する樹脂パターン形成工程と、該樹脂パターン部分に金属成分を含む溶液を吸収させるイオン交換性の吸収工程と、該樹脂パターンを焼成する焼成工程を経て導電性薄膜を形成する工程と、該導電性薄膜にフォーミング処理を施す工程とを有することを特徴とする表面伝導型電子放出素子の製造方法。
  2. 請求項1に記載の金属成分を含む溶液が、少なくともパラジウムを含む錯体化合物であることを特徴とする表面伝導型電子放出素子の製造方法。
  3. 請求項1または2に記載の樹脂パターン形成工程において、樹脂パターン形成材料にイオン交換性を有する感光性樹脂を用いることを特徴とする表面伝導型電子放出素子の製造方法。
  4. 前記樹脂パターン形成工程が、感光性樹脂を基板の表面に塗布する塗布工程と、塗布後感光性樹脂を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後塗膜を所定のパターンに露光する露光工程と、露光後塗膜の非露光部を除去する現像工程とを有することを特徴とする請求項3に記載の表面伝導型電子放出素子の製造方法。
  5. 前記樹脂パターン形成工程が、感光性樹脂を基板の表面に塗布する塗布工程と、塗布後感光性樹脂を乾燥させる乾燥工程と、乾燥後塗膜を所定のパターンに露光する露光工程と、露光後塗膜の露光部を除去する現像工程とを有することを特徴とする請求項3に記載の表面伝導型電子放出素子の製造方法。
  6. 複数の電子放出素子と、該電子放出素子から放出される電子線の照射により画像を形成する画像形成部材とを具備する画像形成装置の製造方法において、電子放出素子を請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法で形成することを特徴とする画像形成装置の製造方法。
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