JP2004151153A - 偏光回折素子及び光ピックアップ装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】作製に時間がかからず、安価かつ簡易に偏光回折素子を提供すると共に、異種材料の界面の端部において剥がれが生じにくく、信頼性の高い偏光回折素子を提供する。
【解決手段】第一の透明基板上に接着剤層、複屈折膜、オーバーコート層を積層するとともに前記複屈折膜の前記オーバーコート層側に周期的な溝を形成し、さらに該オーバーコート層上面に第二の透明基板を設けた偏光回折素子において、前記複屈折膜および接着剤層を偏光回折素子の中央部に設け、複屈折膜および接着剤層が偏光回折素子の外周端部に露出していないことを特徴とする。
【選択図】 図1
【解決手段】第一の透明基板上に接着剤層、複屈折膜、オーバーコート層を積層するとともに前記複屈折膜の前記オーバーコート層側に周期的な溝を形成し、さらに該オーバーコート層上面に第二の透明基板を設けた偏光回折素子において、前記複屈折膜および接着剤層を偏光回折素子の中央部に設け、複屈折膜および接着剤層が偏光回折素子の外周端部に露出していないことを特徴とする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は光ディスク用ピックアップ等に用いられる偏光回折素子であって、特に光学特性が良く、信頼性の高い新規な偏光回折素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、偏光方向によって回折効率が異なる偏光素子として種々のものが提案されているが、その中でも光ディスク用ピックアップの小型化を目的とした薄型のピックアップ用偏光回折素子として複屈折回折格子型偏光回折素子が種々提案されている。
例えば特開昭63−314502号公報に開示された回折格子は、基板として複屈折光学結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO3)を用い、これに周期パターンでプロトン交換を施し、さらにこのプロトン交換領域上に誘電体膜を装荷した構造となっている。プロトン交換領域では、異常光線に対しては屈折率が増加し、常光線に対しては減少するので、プロトン交換領域での常光線の位相差を誘電体膜で相殺することにより、常光線を直進させるとともに、異常光線だけを回折させる偏光子を実現できる。この複屈折回折格子型偏光子は、小型化、量産化が可能で高い偏光分離度が得られる偏光子であるが、結晶に対して周期的プロトン交換を行なう必要があるので、プロトン交換に時間がかかり、作製に時間がかかることや、基板に光学結晶を用いるので製造コストも高くなるなどの欠点を有している。
この点を考慮し、特開平10−302291号公報、特開2000−75130公報では、簡単な工程で安価に作製できる偏光分離素子として、透明基板上に周期的な溝を有する複屈折膜と、その上に光学的に等方性のオーバーコート層が被覆あるいは装荷されている構造の複屈折回折格子型偏光回折素子が提案されている。
高分子複屈折膜を複屈折材料に用いた構成のものは材料コストも比較的安価であるため、大量生産が容易になっている。また良好な光学特性、素子両面の平坦性を向上、素子の強度向上を目的とした構成として図6の断面図に示すようにガラスやプラスチック等の第一の透明基板12a上に周期的な溝が形成された複屈折膜13が接着剤層15により接着され、その複屈折膜13が等方性のオーバーコート層14で覆われ、このオーバーコート層14が接着剤としての機能も兼ねた第二の透明基板12bと接着した構成のものが提案されている。このような構成のものは素子として必要な強度があり、かつ生産性の高い構成となっているものである。
【特許文献1】特開昭63−314502号公報
【特許文献2】特開平10−302291号公報
【特許文献3】特開2000−75130公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記構成の偏光回折素子10は、異種材料の界面の端部において剥がれが生じ易く、保存安定性(信頼性)が十分ではないことが判明した。その剥がれの問題の理由の一つとしては、複屈折膜13と透明基板12a、12bの収縮率、熱膨張率が異なるために温度変化などの環境変化により内部応力が発生し、偏光回折素子端部から剥がれが発生するものと考えられる。一般に異種材料の接合面には内部応力が発生し易く、反りやそれに伴う接着面の剥離等が起こりやすい。また、さらに衝撃を与えたときの剥離もおこりやすくなり、耐衝撃性が弱いなどの問題もあげられる。一般に異種材料の接着では接着剤の選定条件が困難であり、選定できる場合であっても高コストになるなどの課題が発生する。
また、この剥離、対衝撃性の対策として、接着剤層15(オーバーコート層14)の層厚を厚くし接着力をあげる方法は有効である。しかし、単に接着剤層13(オーバーコート層14)を厚くした場合は、接着剤硬化時に発生する接着剤の収縮の影響が大きくなるため、接着剤層15の膜厚を均一にすることが非常に困難になり、素子両面の平行度の制御が困難になる。またその際に使用する接着剤も大量に必要となるので生産性が悪くなるなどの問題が発生する。
上記の点から接着剤層15(オーバーコート層14)の厚さを制御しやすい厚さのままで、接着力が強化された構成の素子が必要となっている。
本発明は上記に鑑みなされたものであって、作製に時間がかからず、安価かつ簡易に偏光回折素子を提供すると共に、異種材料の界面の端部において剥がれが生じにくく、信頼性の高い回折格子を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る偏光回折素子の請求項1記載の発明は、第一の透明基板上に接着剤層、複屈折膜、オーバーコート層を積層するとともに前記複屈折膜の前記オーバーコート層側に周期的な溝を形成し、さらに該オーバーコート層上面に第二の透明基板を設けた偏光回折素子において、前記複屈折膜および接着剤層を偏光回折素子の中央部に設け、複屈折膜および接着剤層が偏光回折素子の外周端部に露出しないよう構成した。
これにより同種材料からなる第一の透明基板と第二の透明基板とをオーバーコート層(接着層)で接合することができ、内部応力が発生しにくく、内部応力に起因する反りや接着面の剥離等を抑制することができ、また、偏光回折素子端部の接着力を十分得ることができるため、複屈折膜と第二の透明基板との間の接着剤層の厚さを薄くすることができ、偏光回折素子全体の厚さを制御し易くなる。更に、偏光回折素子端部に複屈折膜や接着剤等が露出しないので、信頼性、特に湿度に対する安定性が向上する効果がある。
本発明に係る偏光回折素子の請求項2記載の発明は、請求項1記載の偏光回折素子において、第二の透明基板の端部を厚くし、凹形状とすると共に、該第二の透明基板の凹部側をオーバーコート層と接触するよう構成した。
これにより第二の透明基板とオーバーコート層との接触面積が大きくなり、接着力強化の効果が上がり、また、第一及び第二の透明基板との間に介在する樹脂(オーバーコート層)の量が少なくなり、ダイシングブレードの目詰まりを抑え、高速かつ低チッピング(欠けによる欠損)で切り離すことが可能となる。
【0005】
本発明に係る偏光回折素子の請求項3記載の発明は、請求項1、2記載の偏光回折素子において、複屈折膜と第二の透明基板との間にオーバーコート層の厚さを制御するスペーサーを配置した。
これによりオーバーコート層の厚さを制御し、泰一透明基板と第二透明基板との平行度を良好に維持することが可能となる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項4記載の発明は、請求項3記載の偏光回折素子において、前記スペーサーが所定の厚さの樹脂からなることを特徴とした。これによりスペーサーを構成する際にスクリーン印刷、凹版印刷などの印刷手法を利用することができ、良好な生産性を維持することができる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項5記載の発明は、請求項4記載の偏光回折素子において、前記スペーサーがUV硬化樹脂からなることを特徴とした。
これにより硬化時間を短くでき、生産性が良好となる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項6記載の発明は、請求項3〜5記載の偏光回折素子において、前記スペーサーが印刷手法によって形成されることを特徴とした。
これによりスペーサーの厚さ制御を十分に行うことができ、かつ、良好な生産性を確保することができる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項7記載の発明は、請求項1〜6記載の偏光回折素子において、オーバーコート層の材料として、アクリル系、エポキシ系の材料を用いた。
これによりオーバーコート材料の粘性が適度で製造しやすく、また屈折率等の特性制御も容易であり、かつ、接着力が強く良好な透明性を維持することができる。
【0006】
本発明に係る偏光回折素子の請求項8記載の発明は、請求項1〜7記載の偏光回折素子において、周期的凹凸格子が形成される複屈折膜が高分子複屈折膜であることを特徴とした。
これにより低コストで偏光回折素子を製造することができる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項9記載の発明は、請求項1〜8載の偏光回折素子において、周期的凹凸格子が形成される複屈折膜が分子鎖が配向した高分子複屈折膜であることを特徴とした。
これにより高い生産性を確保することができる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項10記載の発明は、請求項9記載の偏光回折素子において、前記高分子複屈折膜が延伸により分子鎖を配向させた高分子膜であることを特徴とした。
これにより高い生産性を確保することができる。
本発明に係る請求項11記載の発明は、レーザー光を出射するレーザー光源と、レーザー光源から出射されたレーザー光を集束して光記録媒体に照射する対物レンズと、レーザー光源と光記録媒体との間の光路上であって、前記レーザー光源から射出されたレーザー光を透過し、前記光記録媒体からの反射光を回折する請求項1〜10のいずれかに記載の偏光回折素子と、光記録媒体と偏光回折素子との間の光路上でレーザー光の偏光方向を換えるλ/4板と、偏光回折素子により回折された反射光を検出する光検出器と、を備え光ピックアップ装置を構成した。
これにより高性能かつ信頼性の高い光ピックアップ装置を安価に製造することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明に係る偏光回折素子を詳細に説明する。
図1は本発明に係る偏光回折素子1の断面を示す図であり、符号2aは第一の透明基板、2bは第二の透明基板、3は複屈折膜、4はオーバーコート層、5は接着剤層である。第一の透明基板2a上に、同一平面上に周期的凹凸格子3aが形成されている複屈折膜3の下面が接着剤層5により接着されており、その複屈折膜3は偏光回折素子1の中央部分に偏位して配置され、複屈折膜3の外周縁部が偏光回折素子1の外周面に露出しないよう構成している。また、複屈折膜3の上面及び外周側面はオーバーコート層4により覆われ、更に該オーバーコート層4上に第二の透明基板2bが設けられている。
図6の従来例と比較した場合、光学的機能を持つ周期的な溝が形成されていない複屈折膜3および接着剤層5の外周部分を除去し、偏光回折素子1の端部には複屈折膜3および接着剤層5が存在しないので、オーバーコート層4に使用する材料は第一及び第二の透明基板(同種材料)の接着に最適なものを選択することができ、偏光回折素子の端部に十分な接着力を持たせることができ剥離が発生しにくくなる。
また、第一の透明基板2aと複屈折膜3とを接着する接着剤層に用いる材料が偏光回折素子外周面に露出せず、当該接着剤の性能に起因する剥離等の影響を考慮しなくて良いので、透明基板2aと複屈折膜3との接着に最適な材料の選択が可能となる。
更に偏光回折素子1端部の接着力を十分得ることができるので、複屈折膜3と透明基板2a、2b間の接着剤層5の厚さを薄くすることが可能となり、偏光回折素子全体の厚さを制御しやすい厚さに抑え、かつ上下の透明基板2a、2bの平行度が良好で、かつ生産性の向上が可能な構成となると共に、偏光回折素子1の端部に異種材料の接着界面が露出しないので信頼性、特に湿度に対して安定性が向上する。
なお、偏光回折素子のオーバーコート層4は粘性や屈折率等の特性の制御の容易さや接着力および透明性の点からアクリル、エポキシ系であることが好ましく、複屈折膜3は大面積で且つ大量に低コストで作成することを考慮すると、ポリカーボネイト(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミドなどの高分子複屈折膜であることが好ましい。中でも分子鎖が配向した高分子膜であることが好ましく、生産性を考慮すると延伸された有機高分子膜であることが特に好ましい。
【0008】
図2は本発明に係る偏光回折素子の他の実施の形態を示す図であり、上記第一の実施の形態と異なる点は第二の透明基板2bをその下面中央部に凹部2cを備えた断面形状凹型とし、中央の凹部2cに複屈折膜3が位置するようにした点である。
このような構成とすることにより、第二の透明基板2bとオーバーコート層4との接触面積が増え、接着力を強化することができる。また、光学的に特性変動等が生じない部位、例えば凹部の突出面2dの表面を粗面加工することによっても、同様に接着力強化の効果が得られる。
また、このような偏光回折素子は後述するように透明基板上に一度に複数個を作成し、最終工程にてダイシング装置で個々の素子に切り離すことにより一般に作製されるが、図1の構成の場合は図6のような構成の場合に比べ、切断部位における樹脂(複屈折膜3、オーバーコート層4、接着剤層5)が少なくなるためダイシングブレードの目詰まりが少なく、高速かつ低チッピング(欠けによる欠損)で切り離すことが可能となる。
すなわち、図6の場合は「第一透明基板12a+接着剤層15+複屈折膜13+オーバーコート層14+第二透明基板12b」となり、樹脂部分として接着剤層15、複屈折膜13、オーバーコート層14が存在するが、図1及び図2の場合は「第一透明基板+オーバーコート層+第二透明基板」となり、接着剤層及び複屈折膜を切断する必要がなく、また特に図2の場合には偏光回折素子の切断端部における第二の透明基板の厚みが厚く、樹脂からなるオーバーコート層4の厚みが少ないのでよりダイシングブレードの目詰まりが少なく高速に切り離すことが可能となる。
【0009】
図3は本発明に係る偏光回折素子の他の実施の形態を示す図であり、図2に示した形態と異なる点は複屈折膜3の両端上部にスペーサー6を配置し、スペーサー6の上部と透明基板2bの中央の凹部2cとを当接した状態とした点である。このようにスペーサー6を存在させることにより、複屈折膜3と透明基板2b間のオーバーコート層4の厚さを制御し均一にすることが可能となり、上下の透明基板の平行度が良好となり、光学素子としても良好な性能が得られることができる。
なお、スペーサー6はUV硬化樹脂であることが好ましい。UV硬化樹脂は紫外線を照射することにより硬化するので硬化時間を短くでき、生産性が良好となる。また、スペーサー6はその厚さが1μm以上100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以上、50μm以下が好ましい。すなわちスペーサー6の厚みが100μm以上であるとスペーサー6自身の厚さの均一性を出すことが困難になるからである。
また、スペーサー6の厚みを1μm以下とすると、複屈折膜3と透明基板2bとの間のオーバーコート層4の厚さが1μm以下になり、接着力が不十分になるおそれがあり、一方、スペーサー6の厚みを100μm以上とすると、充填するオーバーコート剤の量が増え生産性の低下を招き、オーバーコート層4の厚さの均一性制御も困難になる。
上記のスペーサー6の形成には印刷手法で行なうことが好ましい。スクリーン印刷、凹版印刷などの手法は所定の厚さに樹脂を塗布するには周知の手法であり、生産性が非常に良好である。
【0010】
図4は本発明に係る偏光回折素子1を用いた光ピックアップ装置の概略構成を示す図であり、レーザー光源20からの出射光は偏光回折素子1に入射する。この際、前記レーザー光源20の出射光の振動方向は偏光回折素子1の格子ベクトルと一致しており0次光としてほとんど損失なく透過し、λ/4板22に入射する。λ/4板に入射した直線偏光は円偏光に変換され、対物レンズ24におり光記録媒体26上の記録面に集光する。
光記録媒体26上の記録面で反射された光は対物レンズ24を経てλ/4板22に入射し、円偏光から直線偏光に変換され偏光回折素子1に向けて出射する。ここで、偏光回折素子1を出射する直線偏光はレーザー光源20出射時の振動方向と直交する方向に変換され、偏光回折素子1ではほとんど±1次光として回折される。そして±1次光回折された戻り光は光検出器28で検出され、光記録媒体26に記録されている情報信号の他、フォーカスサーボやトラッキングサーボのための誤差信号等が検出される。
【0011】
図5は本発明に係る偏光回折素子の製造方法の一例を示す図であり、数値等を交えて具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
ます、厚さ500μmの透明基板2aに紫外線硬化型接着剤にて厚さ30μmの接着剤層5を設け、厚さ100μmの高分子複屈折膜3を貼り合わせ、減圧下にて一体化させた後、紫外線を照射、100℃にて10分間ベーキングを行ない完全に接着剤層5を硬化させた(図5−(a))。
その後、高分子複屈折膜3上に金属からなる周期パターン(□3.0×3.0mm/3.0μmピッチ)を形成し、この金属からなる周期パターンをエッチングマスクとしてドライエッチングを行ない、金属マスクを除去し、高分子複屈折膜3に周期的凹凸格子形状3aを作成した(図5−(b))。
次に、周期的凹凸格子3aの外周の高分子複屈折膜および接着剤層5をダイシングの手段により除去し(図5−(c))、さらに周期的凹凸格子が形成されている高分子複屈折膜3側にオーバーコート層4となるアクリル系紫外線硬化樹脂をボッティングし、その上からウエットエッチングにより□4mm、深さ150μmの凹形状に加工した厚さ500μmの透明基板2bをのせ、適度に加圧し、凹凸格子3a内および接着強化部にオーバーコート剤を充填した(図5−(d))。
この状態にて紫外線を照射後、100℃で10分間ベーキングを行ない、完全に硬化させた後、ダイシング装置にて□5.0×5.0mmに切り出し、図2に示すような構成の偏光回折素子を作製した(図5−(e)、図5−(f))。
(実施例2)
図5−(c)の後に、周期的凹凸格子3aを含む凸部の外周に相当する透明基板2aの上面に、複屈折膜13よりも背の高い所定の厚さのスペーサーとなるUV硬化樹脂をスクリーン印刷により塗布し、紫外線照射により硬化させ、10±3μmのスペーサーを作成した。このスペーサーは複屈折膜13よりも上方に突出し且つ上面が平坦であるため、オーバーコート層4を塗布してから上側の透明基板2bを積層する際に、透明基板2bからの加圧力により周期的凹凸格子3aを潰す虞がなくなる。即ち、透明基板2bの下面が直接スペーサーの上面に当接するため、凹凸格子3aを損傷することもないし、回折素子全体の厚さを一定に確保することが容易となる。なお、スペーサーを作成した以外は実施例1と同様の作成法にて、図2に示すような構成の偏光回折素子を作製した。
(実施例3)
オーバーコート層4にエポキシ系紫外線硬化樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の作成法にて、図2に示すような構成の偏光回折素子を作製した。
【0012】
(比較例1)
図5−(c)において、偏光回折素子の端子端部の複屈折膜13および接着剤層15を除去せず、上部透明基板12bに厚さ500μmの透明基板を用いた他は実施例1と同様の作製法にて、図6に示すように複屈折膜が外周面に露出した構成の偏光回折素子を作製した。
(比較例2)
図5−(c)において、偏光回折素子の端子端部の複屈折膜13および接着剤層15を除去せず、上部透明基板に厚さ500μmの透明基板を用いた他は実施例2と同様の作製法にて、図6に示すように複屈折膜が外周面に露出し、かつ、前記スペーサーを備えた偏光回折素子を作製した。
実施例および比較例のように偏光回折素子を作成し、□5.0×5.0mmにおける作製後と信頼性試験(70℃、95%RHの環境下、200時間保持)後の外観評価を行ない、周辺に剥がれが確認できたものを×、確認されなかったものを○とした。評価結果を表1に示した。
【表1】
上記比較からも明らかなように、本発明に係る偏光回折素子は、複屈折膜3および接着剤層5が偏光回折素子端部に露出していない構成にすることにより、剥がれ等が起こらず、偏光回折素子としての機能を満足させ、生産性、信頼性の高い偏光回折素子を提供することができる。
【0013】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、第一の透明基板上に接着剤層、複屈折膜、オーバーコート層を積層するとともに前記複屈折膜の前記オーバーコート層側に周期的な溝を形成し、さらに該オーバーコート層上面に第二の透明基板を設けた偏光回折素子において、前記複屈折膜および接着剤層が偏光回折素子端部に露出していない構成としたので、同種材料からなる第一の透明基板と第二の透明基板とをオーバーコート層(接着層)で接合することができ、内部応力が発生しにくく、内部応力に起因する反りや接着面の剥離等を抑制することができ、また、偏光回折素子端部の接着力を十分得ることができるため、複屈折膜と第二の透明基板との間の接着剤層の厚さを薄くすることができ、偏光回折素子全体の厚さを制御し易くなる。更に、偏光回折素子端部に複屈折膜や接着剤等が露出しないので、信頼性、特に湿度に対する安定性が向上する効果がある。
請求項2記載の発明によれば、第二の透明基板のオーバーコート層側の端部を厚くし、第二の透明基板の断面を凹形状としたので、第二の透明基板とオーバーコート層との接触面積が大きくなり、接着力強化の効果が上がり、また、第一及び第二の透明基板との間に介在する樹脂(オーバーコート層)の量が少なくなり、ダイシングブレードの目詰まりを抑え、高速かつ低チッピング(欠けによる欠損)で切り離すことが可能となる。
請求項3記載の発明によれば、複屈折膜と第二の透明基板との間にスペーサーを設け、複屈折膜と第二の透明基板との間の距離を規定したので、オーバーコート層の厚さを制御し、泰一透明基板と第二透明基板との平行度を良好に維持することが可能である。
請求項4記載の発明によれば、前記スペーサーを樹脂により構成したので、スペーサーを構成する際にスクリーン印刷、凹版印刷などの印刷手法を利用することができ、良好な生産性を維持することができる。
請求項5記載の発明によれば、前記スペーサーがUV硬化樹脂であるので、硬化時間を短くでき、生産性が良好となる。
請求項6記載の発明によれば、前記スペーサーを印刷手法によって形成するので、スペーサーの厚さ制御を十分に行うことができ、かつ、良好な生産性を確保することができる。
請求項7記載の発明によれば、前記オーバーコート層としてアクリル系、エポキシ系の材料を用いているので、オーバーコート材料の粘性が適度で製造しやすく、また屈折率等の特性制御も容易であり、かつ、接着力が強く良好な透明性を維持することができる。
請求項8記載の発明によれば、前記複屈折膜として高分子複屈折膜を用いたので、低コストで偏光回折素子を製造することができる。
請求項9記載の発明によれば、前記複屈折膜として分子鎖が配向した高分子複屈折膜を用いたので、高い生産性を確保することができる。
請求項10記載の発明によれば、前記複屈折膜として延伸により分子鎖を配向した高分子複屈折膜を用いたので、高い生産性を確保することができる。
請求項11記載の発明によれば、安価かつ高性能、高品質の偏光回折素子を光ピックアップ装置に用いたので、高性能かつ信頼性の高い光ピックアップ装置を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る偏光回折素子の断面を示す図。
【図2】本発明に係る偏光回折素子の他の実施の形態を示す図。
【図3】本発明に係る偏光回折素子の他の実施の形態を示す図。
【図4】本発明に係る偏光回折素子を用いた光ピックアップ装置の概略構成を示す図。
【図5】本発明に係る偏光回折素子の製造方法の一例を示す図。
【図6】従来の偏光回折素子の一例を示す図。
【符号の説明】
1 偏光回折素子
2a 第一の透明基板
2b 第二の透明基板
3 複屈折膜
4 オーバーコート層
5 接着剤層
6 スペーサー
【発明の属する技術分野】
本発明は光ディスク用ピックアップ等に用いられる偏光回折素子であって、特に光学特性が良く、信頼性の高い新規な偏光回折素子に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、偏光方向によって回折効率が異なる偏光素子として種々のものが提案されているが、その中でも光ディスク用ピックアップの小型化を目的とした薄型のピックアップ用偏光回折素子として複屈折回折格子型偏光回折素子が種々提案されている。
例えば特開昭63−314502号公報に開示された回折格子は、基板として複屈折光学結晶であるニオブ酸リチウム(LiNbO3)を用い、これに周期パターンでプロトン交換を施し、さらにこのプロトン交換領域上に誘電体膜を装荷した構造となっている。プロトン交換領域では、異常光線に対しては屈折率が増加し、常光線に対しては減少するので、プロトン交換領域での常光線の位相差を誘電体膜で相殺することにより、常光線を直進させるとともに、異常光線だけを回折させる偏光子を実現できる。この複屈折回折格子型偏光子は、小型化、量産化が可能で高い偏光分離度が得られる偏光子であるが、結晶に対して周期的プロトン交換を行なう必要があるので、プロトン交換に時間がかかり、作製に時間がかかることや、基板に光学結晶を用いるので製造コストも高くなるなどの欠点を有している。
この点を考慮し、特開平10−302291号公報、特開2000−75130公報では、簡単な工程で安価に作製できる偏光分離素子として、透明基板上に周期的な溝を有する複屈折膜と、その上に光学的に等方性のオーバーコート層が被覆あるいは装荷されている構造の複屈折回折格子型偏光回折素子が提案されている。
高分子複屈折膜を複屈折材料に用いた構成のものは材料コストも比較的安価であるため、大量生産が容易になっている。また良好な光学特性、素子両面の平坦性を向上、素子の強度向上を目的とした構成として図6の断面図に示すようにガラスやプラスチック等の第一の透明基板12a上に周期的な溝が形成された複屈折膜13が接着剤層15により接着され、その複屈折膜13が等方性のオーバーコート層14で覆われ、このオーバーコート層14が接着剤としての機能も兼ねた第二の透明基板12bと接着した構成のものが提案されている。このような構成のものは素子として必要な強度があり、かつ生産性の高い構成となっているものである。
【特許文献1】特開昭63−314502号公報
【特許文献2】特開平10−302291号公報
【特許文献3】特開2000−75130公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記構成の偏光回折素子10は、異種材料の界面の端部において剥がれが生じ易く、保存安定性(信頼性)が十分ではないことが判明した。その剥がれの問題の理由の一つとしては、複屈折膜13と透明基板12a、12bの収縮率、熱膨張率が異なるために温度変化などの環境変化により内部応力が発生し、偏光回折素子端部から剥がれが発生するものと考えられる。一般に異種材料の接合面には内部応力が発生し易く、反りやそれに伴う接着面の剥離等が起こりやすい。また、さらに衝撃を与えたときの剥離もおこりやすくなり、耐衝撃性が弱いなどの問題もあげられる。一般に異種材料の接着では接着剤の選定条件が困難であり、選定できる場合であっても高コストになるなどの課題が発生する。
また、この剥離、対衝撃性の対策として、接着剤層15(オーバーコート層14)の層厚を厚くし接着力をあげる方法は有効である。しかし、単に接着剤層13(オーバーコート層14)を厚くした場合は、接着剤硬化時に発生する接着剤の収縮の影響が大きくなるため、接着剤層15の膜厚を均一にすることが非常に困難になり、素子両面の平行度の制御が困難になる。またその際に使用する接着剤も大量に必要となるので生産性が悪くなるなどの問題が発生する。
上記の点から接着剤層15(オーバーコート層14)の厚さを制御しやすい厚さのままで、接着力が強化された構成の素子が必要となっている。
本発明は上記に鑑みなされたものであって、作製に時間がかからず、安価かつ簡易に偏光回折素子を提供すると共に、異種材料の界面の端部において剥がれが生じにくく、信頼性の高い回折格子を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る偏光回折素子の請求項1記載の発明は、第一の透明基板上に接着剤層、複屈折膜、オーバーコート層を積層するとともに前記複屈折膜の前記オーバーコート層側に周期的な溝を形成し、さらに該オーバーコート層上面に第二の透明基板を設けた偏光回折素子において、前記複屈折膜および接着剤層を偏光回折素子の中央部に設け、複屈折膜および接着剤層が偏光回折素子の外周端部に露出しないよう構成した。
これにより同種材料からなる第一の透明基板と第二の透明基板とをオーバーコート層(接着層)で接合することができ、内部応力が発生しにくく、内部応力に起因する反りや接着面の剥離等を抑制することができ、また、偏光回折素子端部の接着力を十分得ることができるため、複屈折膜と第二の透明基板との間の接着剤層の厚さを薄くすることができ、偏光回折素子全体の厚さを制御し易くなる。更に、偏光回折素子端部に複屈折膜や接着剤等が露出しないので、信頼性、特に湿度に対する安定性が向上する効果がある。
本発明に係る偏光回折素子の請求項2記載の発明は、請求項1記載の偏光回折素子において、第二の透明基板の端部を厚くし、凹形状とすると共に、該第二の透明基板の凹部側をオーバーコート層と接触するよう構成した。
これにより第二の透明基板とオーバーコート層との接触面積が大きくなり、接着力強化の効果が上がり、また、第一及び第二の透明基板との間に介在する樹脂(オーバーコート層)の量が少なくなり、ダイシングブレードの目詰まりを抑え、高速かつ低チッピング(欠けによる欠損)で切り離すことが可能となる。
【0005】
本発明に係る偏光回折素子の請求項3記載の発明は、請求項1、2記載の偏光回折素子において、複屈折膜と第二の透明基板との間にオーバーコート層の厚さを制御するスペーサーを配置した。
これによりオーバーコート層の厚さを制御し、泰一透明基板と第二透明基板との平行度を良好に維持することが可能となる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項4記載の発明は、請求項3記載の偏光回折素子において、前記スペーサーが所定の厚さの樹脂からなることを特徴とした。これによりスペーサーを構成する際にスクリーン印刷、凹版印刷などの印刷手法を利用することができ、良好な生産性を維持することができる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項5記載の発明は、請求項4記載の偏光回折素子において、前記スペーサーがUV硬化樹脂からなることを特徴とした。
これにより硬化時間を短くでき、生産性が良好となる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項6記載の発明は、請求項3〜5記載の偏光回折素子において、前記スペーサーが印刷手法によって形成されることを特徴とした。
これによりスペーサーの厚さ制御を十分に行うことができ、かつ、良好な生産性を確保することができる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項7記載の発明は、請求項1〜6記載の偏光回折素子において、オーバーコート層の材料として、アクリル系、エポキシ系の材料を用いた。
これによりオーバーコート材料の粘性が適度で製造しやすく、また屈折率等の特性制御も容易であり、かつ、接着力が強く良好な透明性を維持することができる。
【0006】
本発明に係る偏光回折素子の請求項8記載の発明は、請求項1〜7記載の偏光回折素子において、周期的凹凸格子が形成される複屈折膜が高分子複屈折膜であることを特徴とした。
これにより低コストで偏光回折素子を製造することができる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項9記載の発明は、請求項1〜8載の偏光回折素子において、周期的凹凸格子が形成される複屈折膜が分子鎖が配向した高分子複屈折膜であることを特徴とした。
これにより高い生産性を確保することができる。
本発明に係る偏光回折素子の請求項10記載の発明は、請求項9記載の偏光回折素子において、前記高分子複屈折膜が延伸により分子鎖を配向させた高分子膜であることを特徴とした。
これにより高い生産性を確保することができる。
本発明に係る請求項11記載の発明は、レーザー光を出射するレーザー光源と、レーザー光源から出射されたレーザー光を集束して光記録媒体に照射する対物レンズと、レーザー光源と光記録媒体との間の光路上であって、前記レーザー光源から射出されたレーザー光を透過し、前記光記録媒体からの反射光を回折する請求項1〜10のいずれかに記載の偏光回折素子と、光記録媒体と偏光回折素子との間の光路上でレーザー光の偏光方向を換えるλ/4板と、偏光回折素子により回折された反射光を検出する光検出器と、を備え光ピックアップ装置を構成した。
これにより高性能かつ信頼性の高い光ピックアップ装置を安価に製造することができる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、図面に示した実施の形態に基づき本発明に係る偏光回折素子を詳細に説明する。
図1は本発明に係る偏光回折素子1の断面を示す図であり、符号2aは第一の透明基板、2bは第二の透明基板、3は複屈折膜、4はオーバーコート層、5は接着剤層である。第一の透明基板2a上に、同一平面上に周期的凹凸格子3aが形成されている複屈折膜3の下面が接着剤層5により接着されており、その複屈折膜3は偏光回折素子1の中央部分に偏位して配置され、複屈折膜3の外周縁部が偏光回折素子1の外周面に露出しないよう構成している。また、複屈折膜3の上面及び外周側面はオーバーコート層4により覆われ、更に該オーバーコート層4上に第二の透明基板2bが設けられている。
図6の従来例と比較した場合、光学的機能を持つ周期的な溝が形成されていない複屈折膜3および接着剤層5の外周部分を除去し、偏光回折素子1の端部には複屈折膜3および接着剤層5が存在しないので、オーバーコート層4に使用する材料は第一及び第二の透明基板(同種材料)の接着に最適なものを選択することができ、偏光回折素子の端部に十分な接着力を持たせることができ剥離が発生しにくくなる。
また、第一の透明基板2aと複屈折膜3とを接着する接着剤層に用いる材料が偏光回折素子外周面に露出せず、当該接着剤の性能に起因する剥離等の影響を考慮しなくて良いので、透明基板2aと複屈折膜3との接着に最適な材料の選択が可能となる。
更に偏光回折素子1端部の接着力を十分得ることができるので、複屈折膜3と透明基板2a、2b間の接着剤層5の厚さを薄くすることが可能となり、偏光回折素子全体の厚さを制御しやすい厚さに抑え、かつ上下の透明基板2a、2bの平行度が良好で、かつ生産性の向上が可能な構成となると共に、偏光回折素子1の端部に異種材料の接着界面が露出しないので信頼性、特に湿度に対して安定性が向上する。
なお、偏光回折素子のオーバーコート層4は粘性や屈折率等の特性の制御の容易さや接着力および透明性の点からアクリル、エポキシ系であることが好ましく、複屈折膜3は大面積で且つ大量に低コストで作成することを考慮すると、ポリカーボネイト(PC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリスチレン、ポリサルフォン(PSF)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリイミドなどの高分子複屈折膜であることが好ましい。中でも分子鎖が配向した高分子膜であることが好ましく、生産性を考慮すると延伸された有機高分子膜であることが特に好ましい。
【0008】
図2は本発明に係る偏光回折素子の他の実施の形態を示す図であり、上記第一の実施の形態と異なる点は第二の透明基板2bをその下面中央部に凹部2cを備えた断面形状凹型とし、中央の凹部2cに複屈折膜3が位置するようにした点である。
このような構成とすることにより、第二の透明基板2bとオーバーコート層4との接触面積が増え、接着力を強化することができる。また、光学的に特性変動等が生じない部位、例えば凹部の突出面2dの表面を粗面加工することによっても、同様に接着力強化の効果が得られる。
また、このような偏光回折素子は後述するように透明基板上に一度に複数個を作成し、最終工程にてダイシング装置で個々の素子に切り離すことにより一般に作製されるが、図1の構成の場合は図6のような構成の場合に比べ、切断部位における樹脂(複屈折膜3、オーバーコート層4、接着剤層5)が少なくなるためダイシングブレードの目詰まりが少なく、高速かつ低チッピング(欠けによる欠損)で切り離すことが可能となる。
すなわち、図6の場合は「第一透明基板12a+接着剤層15+複屈折膜13+オーバーコート層14+第二透明基板12b」となり、樹脂部分として接着剤層15、複屈折膜13、オーバーコート層14が存在するが、図1及び図2の場合は「第一透明基板+オーバーコート層+第二透明基板」となり、接着剤層及び複屈折膜を切断する必要がなく、また特に図2の場合には偏光回折素子の切断端部における第二の透明基板の厚みが厚く、樹脂からなるオーバーコート層4の厚みが少ないのでよりダイシングブレードの目詰まりが少なく高速に切り離すことが可能となる。
【0009】
図3は本発明に係る偏光回折素子の他の実施の形態を示す図であり、図2に示した形態と異なる点は複屈折膜3の両端上部にスペーサー6を配置し、スペーサー6の上部と透明基板2bの中央の凹部2cとを当接した状態とした点である。このようにスペーサー6を存在させることにより、複屈折膜3と透明基板2b間のオーバーコート層4の厚さを制御し均一にすることが可能となり、上下の透明基板の平行度が良好となり、光学素子としても良好な性能が得られることができる。
なお、スペーサー6はUV硬化樹脂であることが好ましい。UV硬化樹脂は紫外線を照射することにより硬化するので硬化時間を短くでき、生産性が良好となる。また、スペーサー6はその厚さが1μm以上100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは5μm以上、50μm以下が好ましい。すなわちスペーサー6の厚みが100μm以上であるとスペーサー6自身の厚さの均一性を出すことが困難になるからである。
また、スペーサー6の厚みを1μm以下とすると、複屈折膜3と透明基板2bとの間のオーバーコート層4の厚さが1μm以下になり、接着力が不十分になるおそれがあり、一方、スペーサー6の厚みを100μm以上とすると、充填するオーバーコート剤の量が増え生産性の低下を招き、オーバーコート層4の厚さの均一性制御も困難になる。
上記のスペーサー6の形成には印刷手法で行なうことが好ましい。スクリーン印刷、凹版印刷などの手法は所定の厚さに樹脂を塗布するには周知の手法であり、生産性が非常に良好である。
【0010】
図4は本発明に係る偏光回折素子1を用いた光ピックアップ装置の概略構成を示す図であり、レーザー光源20からの出射光は偏光回折素子1に入射する。この際、前記レーザー光源20の出射光の振動方向は偏光回折素子1の格子ベクトルと一致しており0次光としてほとんど損失なく透過し、λ/4板22に入射する。λ/4板に入射した直線偏光は円偏光に変換され、対物レンズ24におり光記録媒体26上の記録面に集光する。
光記録媒体26上の記録面で反射された光は対物レンズ24を経てλ/4板22に入射し、円偏光から直線偏光に変換され偏光回折素子1に向けて出射する。ここで、偏光回折素子1を出射する直線偏光はレーザー光源20出射時の振動方向と直交する方向に変換され、偏光回折素子1ではほとんど±1次光として回折される。そして±1次光回折された戻り光は光検出器28で検出され、光記録媒体26に記録されている情報信号の他、フォーカスサーボやトラッキングサーボのための誤差信号等が検出される。
【0011】
図5は本発明に係る偏光回折素子の製造方法の一例を示す図であり、数値等を交えて具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
(実施例1)
ます、厚さ500μmの透明基板2aに紫外線硬化型接着剤にて厚さ30μmの接着剤層5を設け、厚さ100μmの高分子複屈折膜3を貼り合わせ、減圧下にて一体化させた後、紫外線を照射、100℃にて10分間ベーキングを行ない完全に接着剤層5を硬化させた(図5−(a))。
その後、高分子複屈折膜3上に金属からなる周期パターン(□3.0×3.0mm/3.0μmピッチ)を形成し、この金属からなる周期パターンをエッチングマスクとしてドライエッチングを行ない、金属マスクを除去し、高分子複屈折膜3に周期的凹凸格子形状3aを作成した(図5−(b))。
次に、周期的凹凸格子3aの外周の高分子複屈折膜および接着剤層5をダイシングの手段により除去し(図5−(c))、さらに周期的凹凸格子が形成されている高分子複屈折膜3側にオーバーコート層4となるアクリル系紫外線硬化樹脂をボッティングし、その上からウエットエッチングにより□4mm、深さ150μmの凹形状に加工した厚さ500μmの透明基板2bをのせ、適度に加圧し、凹凸格子3a内および接着強化部にオーバーコート剤を充填した(図5−(d))。
この状態にて紫外線を照射後、100℃で10分間ベーキングを行ない、完全に硬化させた後、ダイシング装置にて□5.0×5.0mmに切り出し、図2に示すような構成の偏光回折素子を作製した(図5−(e)、図5−(f))。
(実施例2)
図5−(c)の後に、周期的凹凸格子3aを含む凸部の外周に相当する透明基板2aの上面に、複屈折膜13よりも背の高い所定の厚さのスペーサーとなるUV硬化樹脂をスクリーン印刷により塗布し、紫外線照射により硬化させ、10±3μmのスペーサーを作成した。このスペーサーは複屈折膜13よりも上方に突出し且つ上面が平坦であるため、オーバーコート層4を塗布してから上側の透明基板2bを積層する際に、透明基板2bからの加圧力により周期的凹凸格子3aを潰す虞がなくなる。即ち、透明基板2bの下面が直接スペーサーの上面に当接するため、凹凸格子3aを損傷することもないし、回折素子全体の厚さを一定に確保することが容易となる。なお、スペーサーを作成した以外は実施例1と同様の作成法にて、図2に示すような構成の偏光回折素子を作製した。
(実施例3)
オーバーコート層4にエポキシ系紫外線硬化樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の作成法にて、図2に示すような構成の偏光回折素子を作製した。
【0012】
(比較例1)
図5−(c)において、偏光回折素子の端子端部の複屈折膜13および接着剤層15を除去せず、上部透明基板12bに厚さ500μmの透明基板を用いた他は実施例1と同様の作製法にて、図6に示すように複屈折膜が外周面に露出した構成の偏光回折素子を作製した。
(比較例2)
図5−(c)において、偏光回折素子の端子端部の複屈折膜13および接着剤層15を除去せず、上部透明基板に厚さ500μmの透明基板を用いた他は実施例2と同様の作製法にて、図6に示すように複屈折膜が外周面に露出し、かつ、前記スペーサーを備えた偏光回折素子を作製した。
実施例および比較例のように偏光回折素子を作成し、□5.0×5.0mmにおける作製後と信頼性試験(70℃、95%RHの環境下、200時間保持)後の外観評価を行ない、周辺に剥がれが確認できたものを×、確認されなかったものを○とした。評価結果を表1に示した。
【表1】
上記比較からも明らかなように、本発明に係る偏光回折素子は、複屈折膜3および接着剤層5が偏光回折素子端部に露出していない構成にすることにより、剥がれ等が起こらず、偏光回折素子としての機能を満足させ、生産性、信頼性の高い偏光回折素子を提供することができる。
【0013】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、第一の透明基板上に接着剤層、複屈折膜、オーバーコート層を積層するとともに前記複屈折膜の前記オーバーコート層側に周期的な溝を形成し、さらに該オーバーコート層上面に第二の透明基板を設けた偏光回折素子において、前記複屈折膜および接着剤層が偏光回折素子端部に露出していない構成としたので、同種材料からなる第一の透明基板と第二の透明基板とをオーバーコート層(接着層)で接合することができ、内部応力が発生しにくく、内部応力に起因する反りや接着面の剥離等を抑制することができ、また、偏光回折素子端部の接着力を十分得ることができるため、複屈折膜と第二の透明基板との間の接着剤層の厚さを薄くすることができ、偏光回折素子全体の厚さを制御し易くなる。更に、偏光回折素子端部に複屈折膜や接着剤等が露出しないので、信頼性、特に湿度に対する安定性が向上する効果がある。
請求項2記載の発明によれば、第二の透明基板のオーバーコート層側の端部を厚くし、第二の透明基板の断面を凹形状としたので、第二の透明基板とオーバーコート層との接触面積が大きくなり、接着力強化の効果が上がり、また、第一及び第二の透明基板との間に介在する樹脂(オーバーコート層)の量が少なくなり、ダイシングブレードの目詰まりを抑え、高速かつ低チッピング(欠けによる欠損)で切り離すことが可能となる。
請求項3記載の発明によれば、複屈折膜と第二の透明基板との間にスペーサーを設け、複屈折膜と第二の透明基板との間の距離を規定したので、オーバーコート層の厚さを制御し、泰一透明基板と第二透明基板との平行度を良好に維持することが可能である。
請求項4記載の発明によれば、前記スペーサーを樹脂により構成したので、スペーサーを構成する際にスクリーン印刷、凹版印刷などの印刷手法を利用することができ、良好な生産性を維持することができる。
請求項5記載の発明によれば、前記スペーサーがUV硬化樹脂であるので、硬化時間を短くでき、生産性が良好となる。
請求項6記載の発明によれば、前記スペーサーを印刷手法によって形成するので、スペーサーの厚さ制御を十分に行うことができ、かつ、良好な生産性を確保することができる。
請求項7記載の発明によれば、前記オーバーコート層としてアクリル系、エポキシ系の材料を用いているので、オーバーコート材料の粘性が適度で製造しやすく、また屈折率等の特性制御も容易であり、かつ、接着力が強く良好な透明性を維持することができる。
請求項8記載の発明によれば、前記複屈折膜として高分子複屈折膜を用いたので、低コストで偏光回折素子を製造することができる。
請求項9記載の発明によれば、前記複屈折膜として分子鎖が配向した高分子複屈折膜を用いたので、高い生産性を確保することができる。
請求項10記載の発明によれば、前記複屈折膜として延伸により分子鎖を配向した高分子複屈折膜を用いたので、高い生産性を確保することができる。
請求項11記載の発明によれば、安価かつ高性能、高品質の偏光回折素子を光ピックアップ装置に用いたので、高性能かつ信頼性の高い光ピックアップ装置を安価に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る偏光回折素子の断面を示す図。
【図2】本発明に係る偏光回折素子の他の実施の形態を示す図。
【図3】本発明に係る偏光回折素子の他の実施の形態を示す図。
【図4】本発明に係る偏光回折素子を用いた光ピックアップ装置の概略構成を示す図。
【図5】本発明に係る偏光回折素子の製造方法の一例を示す図。
【図6】従来の偏光回折素子の一例を示す図。
【符号の説明】
1 偏光回折素子
2a 第一の透明基板
2b 第二の透明基板
3 複屈折膜
4 オーバーコート層
5 接着剤層
6 スペーサー
Claims (11)
- 第一の透明基板上に接着剤層、複屈折膜、オーバーコート層を順次積層するとともに前記複屈折膜の前記オーバーコート層側に周期的な溝を形成し、さらに該オーバーコート層上面に第二の透明基板を設けた偏光回折素子において、前記複屈折膜および接着剤層を偏光回折素子の中央部に設け、複屈折膜および接着剤層が偏光回折素子の外周端部に露出していないことを特徴とする偏光回折素子。
- 請求項1に記載の偏光回折素子において、前記第二の透明基板の端部を厚くして凹形状とすると共に、該第二の透明基板の凹部側を前記オーバーコート層と接触させたことを特徴とする偏光回折素子。
- 請求項1、2に記載の偏光回折素子において、前記複屈折膜と前記第二の透明基板との間に前記オーバーコート層の厚さを制御するスペーサーを配置したことを特徴とする偏光回折素子。
- 請求項3に記載の偏光回折素子において、前記スペーサーが所定の厚さの樹脂からなることを特徴とする偏光回折素子。
- 請求項4に記載の偏光回折素子において、前記スペーサーがUV硬化樹脂からなることを特徴とする偏光回折素子。
- 請求項3乃至5に記載の偏光回折素子において、前記スペーサーが印刷手法によって形成されることを特徴とする偏光回折素子。
- 請求項1乃至6に記載の偏光回折素子において、前記オーバーコート層の材料として、アクリル系、エポキシ系の材料を用いたことを特徴とする偏光回折素子。
- 請求項1乃至7に記載の偏光回折素子において、周期的凹凸格子が形成される前記複屈折膜が高分子複屈折膜であることを特徴とする偏光回折素子。
- 請求項1乃至8に記載の偏光回折素子において、周期的凹凸格子が形成される前記複屈折膜が分子鎖が配向した高分子複屈折膜であることを特徴とする偏光回折素子。
- 請求項9に記載の偏光回折素子において、前記高分子複屈折膜が延伸により分子鎖を配向させた高分子膜であることを特徴とする偏光回折素子。
- レーザー光を出射するレーザー光源と、レーザー光源から出射されたレーザー光を集束して光記録媒体に照射する対物レンズと、レーザー光源と光記録媒体との間の光路上であって、前記レーザー光源から射出されたレーザー光を透過し、前記光記録媒体からの反射光を回折する請求項1〜10のいずれか一項に記載の偏光回折素子と、光記録媒体と偏光回折素子との間の光路上でレーザー光の偏光方向を換えるλ/4板と、偏光回折素子により回折された反射光を検出する光検出器と、を備えることを特徴とする光ピックアップ装置。
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JP2006178181A (ja) * | 2004-12-22 | 2006-07-06 | Konica Minolta Photo Imaging Inc | ホログラム素子内蔵レンズの作製方法 |
-
2002
- 2002-10-28 JP JP2002313301A patent/JP2004151153A/ja active Pending
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