JP2004148694A - シート状物の延伸用試験装置 - Google Patents

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博信 上田
Ichiro Nakajima
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Abstract

【課題】シート状物の延伸用試験装置において、実機の延伸状況と比較的近い状態で製品フィルムの延伸条件を定性的に評価し得るように、シート状物を延伸する。
【解決手段】熱可塑性樹脂のシート状物1の端部を把持する掴み装置2を具備した複数の等長リンク31が折尺状に形成されたリンク装置3を、シート状物1の両側端に配置し、折尺状の等長リンク31の交差角度を変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置3の間隔を変化させる横延伸手段を備え、縦延伸手段と横延伸手段の変化時間を制御する制御手段を設ける。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はシート状物の延伸用試験装置に係り、特に、熱可塑性樹脂フィルム等のシート状物の延伸条件の検討や延伸したシート状物の物性を分析するための前処理装置として好適なシート状物の延伸用試験装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、シート状物の延伸条件の検討や延伸したシート状物の物性を分析するための前処理装置として使用する試験装置は、例えば、図6に示すものが知られている。試験装置は、シート状物100の四辺を把持する複数の掴み装置101と図中X方向(シート状物の縦方向)に延伸する手段102及び図中Y方向(シート状物の横方向)に延伸する手段103を備えたものとなっていた。
【0003】
一方、製品フィルムの製造ラインで実際に稼動しているシート状物の延伸機は、例えば、図7に示すようなもので、シート状物200の両側端に具備した無端リンク装置201を設け、該無端リンク装置201は折尺状に形成された複数個の等長リンク装置202よりなり、シート状物200の入口側スプロケット203より駆動され、運動方向に末広がり状に配置されたガイドレール204に案内されて掴みピッチを徐々に拡大することにより、シート状物200を縦横二方向に同時に延伸させた後シート状物200を外し、出口側スプロケット205により駆動されて、入口側スプロケット203に戻るように構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開昭61−58723号公報(第1−3頁,第1−3図)
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の試験装置と実機である延伸機との根本的な相違はシート状物の延伸性(繊維の配向性)にある。すなわち、実機の延伸がシート状物の横方向両端面のみで縦横同時に延伸するのに対し、試験装置は縦方向の両端面も把持し、横延伸に強制的に縦延伸を加えた縦横同時延伸になる。
【0006】
このため、延伸倍率,延伸速度及び延伸温度などの諸条件を同一化しても、延伸された試験装置のシート状物100と実機のシート状物200の配向性は異なる挙動を示す。このため、該試験装置ではシート状物の破断限界などを定性的に判断する手段にしかなり得ない。特に、縦延伸方向の最先端のボーイング量(シート状物端面の弓形変形量)により、延伸条件を決定する場合には、該試験装置では無理である。したがって、製品フィルムとして必要な特性を得るための延伸条件は実機において、パラメータサーベイを行う必要がある。
【0007】
また、実機におけるパラメータサーベイとしては、延伸速度,延伸温度などの条件に関しては自由度があるものの、所望する特性を得るための機械的パラメータ(延伸倍率,掴みピッチ)には自由度は少なく、限られた範囲での条件出ししか出来ない。
【0008】
例えば、実機パラメータの許容範囲外に好適な延伸条件が存在する可能性がある場合には、それを実証するには装置の改造など多大な経費がかかるばかりか、効果が無いことが判明した場合には、その損失は言うまでも無い。
【0009】
このように、従来の試験機では現在のシート状物の利用性、特に繊維の配向性を重要視した製品フィルムの延伸条件を見出すこと、或いは、その方向性を実機に反映させるための手段として配慮が欠けていた。
【0010】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、実機によるシート状物の延伸状態とほぼ等しい状態を再現し得るシート状物の延伸用試験装置を提供することにある。
【0011】
また、さらに種々のフィルム及び延伸ニーズに簡便に対応可能で、製品フィルムの延伸条件を定性的に評価し、より直接的に実機へ反映できるシート状物の延伸状態を得ることのできるシート状物の延伸用試験装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、熱可塑性樹脂のシート状物の両側端にそれぞれ配置され、シート状物の端部を把持する掴み装置を有する複数の等長リンクを折尺状に形成したリンク装置と、折尺状の等長リンクの交差角度を変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置の間隔を変化させる横延伸手段とを具備し、縦延伸手段と横延伸手段の該変化時間を制御する制御手段を設けることにより、達成される。
【0013】
さらに、等長リンクに連結された掴み装置と相隣する掴み装置の間隔を複数の等長リンク間で等間隔に変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置の間隔を平行に変化させる横延伸手段とを備え、縦横同時に延伸する同時二軸延伸としたものである。
【0014】
また、等長リンクに連結された掴み装置と相隣する掴み装置の間隔を複数の等長リンク間で等間隔に変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置が進行方向に末広がり状に間隔を変化させる横延伸手段とを備え、縦横同時に延伸する同時二軸延伸としたものである。
【0015】
また、等長リンクに連結された掴み装置と相隣する掴み装置の間隔を複数の等長リンク間で不等間隔に変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置の間隔を平行に変化させる横延伸手段を備え、縦横同時に延伸する同時二軸延伸としたものである。
【0016】
また、等長リンクに連結された掴み装置と相隣する掴み装置の間隔を複数の等長リンク間で不等間隔に変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置が進行方向に末広がり状に間隔を変化させる横延伸手段を備え、縦横同時に延伸する同時二軸延伸としたものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例を図1〜図3により説明する。
図1は本発明の実施例であるシート状物の延伸用試験装置を示す平面図で、その構成及び動作は以下の通りである。
【0018】
シート状物1の端部を把持する複数の掴み装置2をシート状物1の両側に具備したリンク装置3は折尺状に形成された複数個の等長リンク31よりなる。等長リンク31は、ガイドレール4,5に案内され、駆動ガイドレール5が駆動源(図示せず)により固定ガイドレール4の方向に移動することで、掴み装置2の掴みピッチはP1からP2に徐々に拡大する。一方、リンク装置3及びガイドレール4,5が設置された駆動ベッド6と相対する反対側の駆動ベッド7は駆動源(図示せず)により、平行を保ち、両者の間隔が広がる方向に移動することで、前述の駆動ガイドレール5の駆動源と合せ、シート状物1を縦横二方向に同時に延伸させる(図中破線)。駆動ガイドレール5及び駆動ベッド7の駆動源は制御手段14によってそれぞれ独立に制御可能となっている。
【0019】
尚、本実施例の縦方向の延伸としては、実機と同様に等長リンク31を直接牽引し、掴みピッチを変化させることも可能である。また、上記駆動部の駆動源を例えばサーボモータとすれば、回転数制御が可能である。すなわち、縦方向と横方向の駆動速度を独立制御することで、任意の軌跡でシート状物1を延伸させることができる。
【0020】
図2は、例えば、図1に示したリンク装置3(等長リンク31が5組の時)とガイドレール4,5及びベッド6からなる閉状態のリンク装置8が縦方向及び横方向の駆動を等速度で行い開状態のリンク装置9になった場合の各等長リンク31の掴み部の延伸軌跡10の一例である。図2の試験における効果は、一度の延伸試験により複数の延伸軌跡によるシート状物1の延伸特性が評価できるため、延伸条件の早期絞込みに大変効果がある。
【0021】
また、図3は本発明のリンク装置の延伸軌跡の制御例であり、縦方向と横方向の駆動源を独立に制御することにより、そのバリエーションは無限に広がる。すなわち、縦方向を無駆動とし、横方向のみ駆動させることで、横延伸フィルムが作成でき、逆にすれば、縦延伸フィルムが作成できる。また、駆動源を加速度制御することで、縦横の延伸倍率が異なるフィルムの作成もでき、その際に生じるリンクへの強度的影響も調べることができるので、ハード設計の観点からも有益な情報を得ることが可能となる。
【0022】
図4は本発明の他の実施例であるシート状物の延伸用試験装置の平面図で、図1と同符号は同一部材を示し説明を省略する。本図と図1との相違点は図1の平行なベッド6,7に対し、リンク装置3の進行方向に末広がり状に間隔が広くなるようにベッドを傾斜させて配置した傾斜型ベッド11,12とした点である。本実施例による動作並びに効果は図1の実施例と同等で、本実施例特有の効果は、延伸状態がより実機に近い延伸シート状物を作成できる点にある。
【0023】
尚、傾斜型ベッドは、傾斜型ベッドとフィルム縦方向の中心線がなす角度を変更可能としてある。例えば、ベッドを配置するベースに、固定穴を複数設け、ベースの固定穴を変えることで、角度を有段変化させるようにしたり、フィルムの入口側又は出口側となるベッドの一方の端面を回転自在な構造とし、相対する端面をベースに固定(ベース側をベッドの回転軌跡上に長穴とする)する手段等を用いることにより可能となる。
【0024】
図5は本発明のさらに他の実施例であるシート状物の延伸用試験装置の平面図で、図1と同符号は同一部材を示し説明を省略する。本図と図1との相違点は、図1の駆動ガイドレール5が固定ガイドレール4に平行であるのに対し、本図では駆動ガイドレールを傾け傾斜型ガイドレール13とした点である。本実施例による動作並びに効果は図1の実施例と同等で、本実施例特有の効果は、掴み装置2の掴みピッチが進行方向に徐々に拡大するので、延伸状態がより実機に近い延伸シート状物を作成できる点にある。
【0025】
尚、傾斜型ガイドレール13と固定ガイドレール4のなす傾斜角度は図4の実施例と同様に変更可能である。また、図4の傾斜型ベッド11,12と図5の傾斜型ガイドレール13を組合せたシート状物の延伸用試験装置とすることも可能である。
【0026】
【発明の効果】
本発明によれば、一度の延伸操作によって複数の等長リンクに取付けられた掴み装置の延伸軌跡が得られ、これによって、複数の延伸軌跡によって延伸されたシート状物が得られ、一度の延伸試験によってシート状物の延伸特性が評価できるため、延伸条件の早期絞込みに大変効果がある。また、縦方向と横方向の駆動源を独立に制御することにより、様々なバリエーションのフィルムが作成できる他、リンクへの強度的影響も見ることができるため、ハード設計の観点からも有益な情報を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例であるシート状物の延伸用試験装置を示す平面図である。
【図2】図1の装置の片側のリンク装置の延伸軌跡の一例を示す図である。
【図3】図1の装置の縦横の駆動源を独立制御して得られる片側のリンク装置の延伸軌跡の制御例を示す図である。
【図4】本発明の他の実施例であるシート状物の延伸用試験装置を示す平面図である。
【図5】本発明のさらに他の実施例であるシート状物の延伸用試験装置を示す平面図である。
【図6】従来のシート状物の延伸用試験装置の一例を示す平面図である。
【図7】実機としてのシート状物の縦横同時二軸延伸機の一例を示す平面図である。
【符号の説明】
1…シート状物、2…掴み装置、3…リンク装置、4…固定ガイドレール、5…駆動ガイドレール、6,7…駆動ベッド、14…制御手段、31…等長リンク装置。

Claims (5)

  1. 熱可塑性樹脂のシート状物の両側端にそれぞれ配置され、前記シート状物の端部を把持する掴み装置を有する複数の等長リンクを折尺状に形成したリンク装置と、前記折尺状の等長リンクの交差角度を変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置の間隔を変化させる横延伸手段とを具備し、前記縦延伸手段と前記横延伸手段の該変化時間を制御する制御手段を設けたことを特徴としたシート状物の延伸用試験装置。
  2. 請求項1記載のシート状物の延伸用試験装置において、前記等長リンクに連結された掴み装置と相隣する掴み装置の間隔を複数の等長リンク間で等間隔に変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置の間隔を平行に変化させる横延伸手段とを備え、縦横同時に延伸する同時二軸延伸としたことを特徴とするシート状物の延伸用試験装置。
  3. 請求項1記載のシート状物の延伸用試験装置において、前記等長リンクに連結された掴み装置と相隣する掴み装置の間隔を複数の等長リンク間で等間隔に変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置が進行方向に末広がり状に間隔を変化させる横延伸手段とを備え、縦横同時に延伸する同時二軸延伸としたことを特徴とするシート状物の延伸用試験装置。
  4. 請求項1記載のシート状物の延伸用試験装置において、前記等長リンクに連結された掴み装置と相隣する掴み装置の間隔を複数の等長リンク間で不等間隔に変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置の間隔を平行に変化させる横延伸手段を備え、縦横同時に延伸する同時二軸延伸としたことを特徴とするシート状物の延伸用試験装置。
  5. 請求項1記載のシート状物の延伸用試験装置において、前記等長リンクに連結された掴み装置と相隣する掴み装置の間隔を複数の等長リンク間で不等間隔に変化させる縦延伸手段と、シート状物の両端に相対するリンク装置が進行方向に末広がり状に間隔を変化させる横延伸手段を備え、縦横同時に延伸する同時二軸延伸としたことを特徴とするシート状物の延伸用試験装置。
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