JP2004148406A - 磁石材料の製造方法、磁石材料およびボンド磁石 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】急冷薄帯製造装置1は、筒体2と、加熱用のコイル4と、筒体2に対し回転する冷却ロール5とを備えている。筒体2の下端には、磁石材料の溶湯6を射出するノズル3が形成されている。ヘリウムガスのような不活性ガス(雰囲気ガス)中で、溶湯6をノズル3から射出し、回転する冷却ロール5の周面53に衝突させ、冷却固化して、急冷薄帯8を製造する。この場合、冷却ロール5の回転に起因して、雰囲気ガスのガス流が発生している。このガス流のパドル7付近におけるレイノルズ数が1000以下なるような条件で急冷薄帯8を製造する。冷却ロール5としては、冷却ロール5の回転に伴う冷却ロール5の周面53の最大偏心量が、得られる急冷薄帯8の平均厚さの2倍以下のものを用いる。
【選択図】図1
Description
このような磁石材料は、例えば急冷薄帯製造装置を用いた急冷法により製造される。この製造方法は、次の通りである。
所定の合金組成の磁石材料(以下「合金」と言う)を溶融し、その溶湯をノズルから射出し、ノズルに対して回転している冷却ロールの周面に衝突させ、該周面と接触させることにより合金を急冷、凝固し、薄帯状(リボン状)の合金を連続的に形成する。この薄帯状の合金は、急冷薄帯と呼ばれ、速い冷却速度で凝固された結果、そのマクロ組織は、微細な多結晶が集合した状態となっており、優れた磁気特性を発揮する。
そのため、冷却ロールの回転に起因して、アルゴンガスのガス流が発生するが、このガス流がパドル(=ノズルから射出された溶湯が冷却ロールの周面に衝突した部位に生じる湯だまり)の側部に回り込み、その一部が冷却ロールの周面と急冷薄帯のロール面(冷却ロールの周面と接触する面)との間に侵入し、これが原因で、急冷薄帯のロール面に巨大ディンプル(巨大な凹部)が生じる。
従って、このような低磁気特性の部分を含む急冷薄帯を用いて製造された永久磁石も、同様に、磁気特性の低下が見られ、また、耐食性も低下する。
すなわち、本発明は、下記(1)〜(14)に示す通りである。
前記冷却ロールの回転に伴う冷却ロール周面の最大偏心量が、得られる薄帯状の磁石材料の平均厚さの2倍以下であり、
前記冷却ロールの回転に起因して発生するガス流の、前記溶湯が衝突した部位におけるレイノルズ数を1000以下とすることを特徴とする磁石材料の製造方法。
(3) 前記雰囲気ガスは、不活性ガスである上記(1)または(2)に記載の磁石材料の製造方法。
(4) 前記不活性ガスは、ヘリウムガスである上記(3)に記載の磁石材料の製造方法。
(6) 前記磁石材料は、R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)とTM(ただし、TMは、遷移金属のうちの少なくとも1種)とBを含む合金である上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の磁石材料の製造方法。
(8) 前記冷却ロールとの接触面において、面積が2000μm2以上の巨大ディンプルの占める面積率が8%以下である上記(7)に記載の薄帯状の磁石材料。
(9) 前記冷却ロールとの接触面において、面積が2000μm2以上の巨大ディンプル以外の部分における平均結晶粒径が50nm以下である上記(7)または(8)に記載の薄帯状の磁石材料。
(10) 上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の磁石材料を粉砕して粉末状としたことを特徴とする粉末状の磁石材料。
(12) 前記粉末状の磁石材料の含有量が82〜99.5wt%である上記(11)に記載のボンド磁石。
(13) 保磁力iHc が0.35MA/m以上である上記(11)または(12)に記載のボンド磁石。
(14) 磁気エネルギー積(BH)max が50kJ/m3 以上である上記(11)ないし(13)のいずれかに記載のボンド磁石。
特に、冷却ロール周面の最大偏心量を小さくすることにより、急冷薄帯の磁気特性のバラツキを有効に防止し、より優れた磁気特性を持つ永久磁石を提供することができる。
また、本発明では、このような磁石を容易に製造することができる。
図1は、本発明の磁石材料を単ロール法により製造する装置(急冷薄帯製造装置)の構成例を示す斜視図、図2は、図1に示す装置における溶湯の冷却ロールへの衝突部位付近の状態を示す断面側面図である。
また、筒体2のノズル3近傍の外周には、加熱用のコイル4が配置され、このコイル4に例えば高周波を印加することにより、筒体2内を加熱(誘導加熱)し、筒体2内の磁石材料を溶融状態にする。
このような急冷薄帯製造装置1を用いた急冷薄帯の製造においては、冷却ロール5の回転に起因して、パドル7の周辺(溶湯6が周面53に衝突した部位)に雰囲気ガスのガス流10が発生する。本発明では、このガス流10のレイノルズ数(Re)を1000以下とし、好ましくは900以下とし、より好ましくは10〜700程度とする。
本明細書におけるレイノルズ数(Re)は、物体の代表寸法として急冷薄帯8の幅(パドル7の幅)を考慮した値であり、次式(I)で表わされる。
なお、最大偏心量ΔRは、例えば、レーザ変位計、静電式変位計、精密ゲージ等の精密寸法測定機器により測定することができる。
[1] Smを主とする希土類元素と、Coを主とする遷移金属とを基本成分とするもの(以下、Sm−Co系合金と言う)。
[2] R(ただし、RはYを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)と、Feを主とする遷移金属と、Bとを基本成分とするもの(以下、R−Fe−B系合金と言う)。
[3] Smを主とする希土類元素と、Feを主とする遷移金属と、Nを主とする格子間元素とを基本成分とするもの(以下、Sm−Fe−N系合金と言う)。
[4] R(ただし、RはYを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)とFe等の遷移金属とを基本成分とし、ナノメーターレベルで磁性相を有するもの(ナノ結晶磁石)。
R−Fe−B系合金の代表的なものとしては、Nd−Fe−B系合金、Pr−Fe−B系合金、Nd−Pr−Fe−B系合金、Ce−Nd−Fe−B系合金、Ce−Pr−Nd−Fe−B系合金、これらにおけるFeの一部をCo、Ni等の他の遷移金属で置換したもの等が挙げられる。
Sm−Fe−N系合金の代表的なものとしては、Sm2 Fe17合金を窒化して作製したSm2 Fe17N3 が挙げられる。
急冷薄帯8の平均厚さtは、特に限定されないが、10〜50μm 程度が好ましく、15〜40μm 程度がより好ましい。この平均厚さtが大きすぎると、結晶粒の粗大化が顕著となり、磁気特性が劣化することがあり、また、小さすぎると、生産性が悪くなる。
以上のような急冷薄帯8を粉砕することにより、本発明の粉末状の磁石材料(磁石粉末)が得られる。
また、磁石粉末の平均粒径は、特に限定されないが、後述するボンド磁石を製造用のものの場合、0.5〜60μm 程度が好ましく、1〜40μm 程度がより好ましい。また、後述するような少量の結合樹脂で成形時の良好な成形性を得るために、磁石粉末の粒径分布は、ある程度分散されている(バラツキがある)のが好ましい。これにより、得られたボンド磁石の空孔率を低減することができ、ボンド磁石の機械的強度をより高め、磁気特性をさらに向上することができる。
また、本発明の粉末状の磁石材料は、ボンド磁石の製造に用いるものに限定されず、例えば、焼結磁石の製造に用いるものであってもよい。
本発明のボンド磁石は、前述の磁石粉末を結合樹脂で結合してなるものである。
結合樹脂(バインダー)としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂のいずれでもよい。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
このような熱可塑性樹脂は、その種類、共重合化等により、例えば成形性を重視したものや、耐熱性、機械的強度を重視したものというように、広範囲の選択が可能となるという利点がある。
これらのうちでも、成形性が特に優れており、機械的強度が高く、耐熱性に優れるという点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂が好ましく、エポキシ樹脂が特に好ましい。また、これらの熱硬化性樹脂は、磁石粉末との混練性、混練の均一性にも優れている。
このような本発明のボンド磁石は、例えば次のようにして製造される。磁石粉末と、結合樹脂と、必要に応じ添加剤(酸化防止剤、潤滑剤等)とを含むボンド磁石用組成物(コンパウンド)を製造し、このボンド磁石用組成物を用いて、圧縮成形、押出成形、射出成形等の方法により、磁場中または無磁場中で所望の磁石形状に成形する。結合樹脂が熱硬化性樹脂の場合には、成形後、加熱等によりそれを硬化する。
磁石粉末の含有量が少なすぎると、磁気特性(特に磁気エネルギー積)の向上が図れず、また、磁石粉末の含有量が多すぎると、相対的に結合樹脂の含有量が少なくなり、成形性が低下する。
すなわち、本発明のボンド磁石は、保磁力iHc が好ましくは0.35MA/m以上、より好ましくは0.50MA/m以上である。
本発明のボンド磁石の形状、寸法等は特に限定されず、例えば、形状に関しては、例えば、円柱状、角柱状、円筒状(リング状)、円弧状、平板状、湾曲板状等のあらゆる形状のものが可能であり、その大きさも、大型のものから超小型のものまであらゆる大きさのものが可能である。
(実施例1)
純度99.9%以上のNd、Fe、Coの各金属と、Fe−B合金とを原料として、合金組成がNd13Febal.Co6 B5.5 (組成A)で表わされる母合金インゴットを鋳造した。このインゴットから約15gのサンプルを切り出した。
その後、石英管内のインゴットサンプルを高周波誘導加熱により溶融し、この溶湯を、1500rpm (周速度:15.7m/秒)で回転する直径200mm、幅20mmの冷却ロールの周面に向けて、石英管の内圧と雰囲気圧との差圧により噴射し、組成Aの合金の急冷薄帯を得た。なお、冷却ロールの表面層は、銅製(厚さ5mm)のものとした。
またこの時、チャンバー内にセットした温度センサー(熱電対)により雰囲気温度Tを測定した。
オリフィス径および噴射圧(差圧)等の条件を種々変更して、下記表1に示す7つの試料A1〜A7の急冷薄帯を製造した。また、ΔR=50μm (>2t)である以外は同様の冷却ロールに交換し、試料A6とほぼ同様の条件で試料A8の急冷薄帯を製造した。各試料について、パドル付近の雰囲気ガスのガス流のレイノルズ数は、表1に示す通りである。
作製した試料A1〜A8の急冷薄帯に関する各数値を下記表1に示す。
また、各急冷薄帯について、ロール面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、さらに画像解析を行った。画像解析の結果より、ロール面に対する面積2000μm2以上の巨大ディンプル(以下単に「巨大ディンプル」と言う)の占める面積率を算出した。その結果も併せて表1に示す。
これに対し、レイノルズ数が1000を超える試料A6〜A8では、巨大ディンプルの占める面積率が8%を超えた。この場合、冷却ロール周面の最大偏心量ΔRが大きい試料A8は、試料A6に比べ、巨大ディンプルの占める面積率がさらに増大している。
これに対し、レイノルズ数が1000を超える試料A6〜A8は、試料A1〜A5に比べ、磁気特性が劣るものであった。この場合、冷却ロール周面の最大偏心量ΔRが大きい試料A8は、試料A6に比べ、磁気特性がさらに低下している。
表3に示す組成B、CおよびDのインゴットを鋳造し、これらのインゴットから切り出したサンプルを用いた以外は、実施例1と同様(ただし、ΔR=15μm )にして、11種の急冷薄帯を製造した。
また、各急冷薄帯の幅wは、0.7〜2.5mmの範囲内、厚さは、20〜35μm の範囲内であり、巨大ディンプル以外の部分における平均結晶粒径は、15〜30nmの範囲内であった。
なお、レイノルズ数が400以下のものは、雰囲気ガスとしてヘリウムガスを、レイノルズ数が400を超えるものは、雰囲気ガスとしてアルゴンガスを用いた。
ここで、試料B1〜B11は、1種の磁石粉末を用いたもの、試料B12〜B22は、試料B1〜B11で用いた磁石粉末の2種以上の混合物(混合粉末)を用いたものである。
得られたボンド磁石の磁気特性(保磁力iHc 、磁気エネルギー積(BH)max )を直流自記磁束計により最大印加磁場2MA/mにて測定した。
さらに、これらのボンド磁石について、60℃×95%RHで500時間までの恒温恒湿試験を行い、耐食性を調べた。この耐食性は、ボンド磁石表面における錆の発生の有無を目視により判別し、錆の発生が全く無かったものを○印、錆の発生が若干認められたものを△印、錆の発生が顕著に認められたものを×印として評価した。
試料B1〜B22の各ボンド磁石について、磁気特性および耐食性の評価結果を、それぞれ下記表4および表5に示す。なお、試料B1〜B11の各ボンド磁石については、急冷薄帯製造時のレイノルズ数および巨大ディンプルの占める面積率を、下記表4に併せて示す。
特に、混合粉末を用いた試料B12〜B14、B16〜B18、B20、B21は、より優れた磁気特性が得られている。
これに対し、試料B4、B8、B11、B15、B19、B22のボンド磁石は、磁気特性および耐食性が劣るものであった。
2 筒体
3 ノズル
4 コイル
5 冷却ロール
51 基部
52 表面層
53 周面
6 溶湯
7 パドル
71 凝固界面
8 急冷薄帯
81 ロール面
82 フリー面
9 巨大ディンプル
10 ガス流
Claims (14)
- 雰囲気ガス中で、磁石材料の溶湯をノズルから射出し、前記ノズルに対し回転している冷却ロールの周面に衝突させ、冷却固化して、薄帯状の磁石材料を製造する磁石材料の製造方法であって、
前記冷却ロールの回転に伴う冷却ロール周面の最大偏心量が、得られる薄帯状の磁石材料の平均厚さの2倍以下であり、
前記冷却ロールの回転に起因して発生するガス流の、前記溶湯が衝突した部位におけるレイノルズ数を1000以下とすることを特徴とする磁石材料の製造方法。 - 前記冷却ロールの周速度が、1〜60m/秒である請求項1に記載の磁石材料の製造方法。
- 前記雰囲気ガスは、不活性ガスである請求項1または2に記載の磁石材料の製造方法。
- 前記不活性ガスは、ヘリウムガスである請求項3に記載の磁石材料の製造方法。
- 前記磁石材料は、R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)を含む合金である請求項1ないし4のいずれかに記載の磁石材料の製造方法。
- 前記磁石材料は、R(ただし、Rは、Yを含む希土類元素のうちの少なくとも1種)とTM(ただし、TMは、遷移金属のうちの少なくとも1種)とBを含む合金である請求項1ないし5のいずれかに記載の磁石材料の製造方法。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の磁石材料の製造方法により製造されたことを特徴とする薄帯状の磁石材料。
- 前記冷却ロールとの接触面において、面積が2000μm2以上の巨大ディンプルの占める面積率が8%以下である請求項7に記載の薄帯状の磁石材料。
- 前記冷却ロールとの接触面において、面積が2000μm2以上の巨大ディンプル以外の部分における平均結晶粒径が50nm以下である請求項7または8に記載の薄帯状の磁石材料。
- 請求項7ないし9のいずれかに記載の磁石材料を粉砕して粉末状としたことを特徴とする粉末状の磁石材料。
- 請求項10に記載の粉末状の磁石材料を結合樹脂で結合してなることを特徴とするボンド磁石。
- 前記粉末状の磁石材料の含有量が82〜99.5wt%である請求項11に記載のボンド磁石。
- 保磁力iHc が0.35MA/m以上である請求項11または12に記載のボンド磁石。
- 磁気エネルギー積(BH)max が50kJ/m3 以上である請求項11ないし13のいずれかに記載のボンド磁石。
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