JP2004148188A - タングステン−アンチモン系酸化物触媒の製造方法 - Google Patents

タングステン−アンチモン系酸化物触媒の製造方法 Download PDF

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章能 中島
邦佳 ▲高▼橋
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Abstract

【課題】アルキルベンゼン類を分子状酸素の存在下に接触気相酸化して対応する芳香族アルデヒドを高収率かつ長寿命で製造できる触媒、その製造方法を提供する
【解決手段】WおよびSbを含む化合物の水溶液又は水性スラリーを、Al、Nb、Ta、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物または複合酸化物と混合し、乾燥した後、650℃以上で焼成することにより製造されたW及びSbを含む触媒の存在下に、アルキルベンゼン類を接触気相酸化して対応する芳香族アルデヒドを製造する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、タングステン(W)及びアンチモン(Sb)を必須成分とするタングステン−アンチモン(W−Sb)系酸化物触媒の製造方法、該方法で得られた触媒、及び該触媒を用いた芳香族アルデヒド類の製造方法に関する。
【0002】
詳しくは、本発明は、アルキルベンゼン類の接触気相酸化による芳香族アルデヒドの製造に適したW−Sb系触媒の製造方法、および該製造で得られた触媒、ならびに該触媒の存在下にアルキルベンゼン類を分子状酸素含有ガスにより接触気相酸化して、対応する芳香族アルデヒドを高収率かつ長寿命で製造する方法に関する。
【0003】
【従来の技術】芳香族アルデヒドは反応性の高いアルデヒド基を有しており、芳香族化合物の中でも、幅広い用途がある。中でも、アルデヒド基を2つ有するテレフタルアルデヒド(以下TPALと略記することもある)は、医薬、農薬、染料、液晶ポリマー、導電性ポリマー、耐熱性プラスチック等への利用が期待され安価な工業的製造法が求められている。
【0004】
p−キシレンの接触気相酸化により、TPALを製造しようという試みは、かなり古くから行われており、種々の触媒が提案されている。例えば、担体としてアルミナを使用し、WとMoとの比が1:1ないし20:1の範囲にある酸化物を担持した触媒(特許文献1参照)、炭化珪素を担体としVとRbまたはCsを含む酸化物を担持した触媒(特許文献2参照)、担体としてアルミナを使用しWおよびMoの2元素に、Ca、Ba、Ti、Zr、Hf、Tl、Nb、ZnおよびSnからなる群より選ばれた少なくとも1元素を加えた酸化物を担持した触媒(特許文献3)、炭化珪素を担体とした、Mo酸化物と、W酸化物またはケイタングステン酸、およびBi酸化物からなる触媒(特許文献4参照)、脱ホウ素化したボロシリケート結晶モレキュラーシーブにFe、ZnなどとV、Mo、WなどをCVDで担持した特殊な触媒(特許文献5参照)などが開示されている。
【0005】
しかし、これらの触媒はいずれも目的とするTPALの収率および生産性が低く、工業的に実用化されるには至っていない。
【0006】
また本願発明者らも、W、Sb及びFe等の酸化物からなる触媒を提案し(特許文献6参照)、従来技術より格段に優れたTPAL収率を実現したが、性能の安定性の面で問題を残していた。
【特許文献1】
特公昭47−2086号公報
【特許文献2】
特開昭48−97830号公報
【特許文献3】
米国特許第3,845,137号公報明細書
【特許文献4】
米国特許第4,017,547号公報明細書
【特許文献5】
米国特許第5,324,702号公報明細書
【特許文献6】
特開2001−198464号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、アルキルベンゼン類を分子状酸素の存在下に接触気相酸化して対応する芳香族アルデヒドを高収率かつ長寿命で製造できる新規な触媒の製造方法、該方法で得られた触媒、及び該触媒を用いてアルキルベンゼン類から高収率かつ長寿命で対応する芳香族アルデヒドを製造する方法を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、アルキルベンゼン類の接触気相酸化により対応する芳香族アルデヒドを高収率かつ長寿命で製造できる新規な触媒について鋭意研究の結果、以下に述べる製造方法によって得られた触媒を用いることにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明に至った。
【0009】
すなわち、本発明は、部分酸化反応、特にアルキルベンゼン類を分子状酸素の存在下に気相酸化して対応する芳香族アルデヒドを製造するための好適に使用されるW及びSbを必須成分とするW−Sb系触媒の製造方法であって、W及びSbを含む化合物の水溶液又は水性スラリーをAl、Nb、Ta、ZrおよびTiからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物及び/または複合酸化物と混合し、乾燥した後、650℃以上で焼成することを特徴とするW−Sb系酸化物触媒の製造方法である。
【0010】
また、本発明は、上記の方法で製造されたW−Sb系触媒である。
【0011】
さらに、本発明は、アルキルベンゼン類を分子状酸素の存在下に気相酸化して、対応する芳香族アルデヒドを製造する方法であって、上記W−Sb系触媒を使用することを特徴とする芳香族アルデヒドの製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】本発明のアルキルベンゼン類とは、1ないし複数個のアルキル基が直接ベンゼン環に結合した化合物を表し、その代表例としては、トルエン、p−キシレン、o−キシレン、m−キシレン、プソイドキュメン、メジチレンおよびデュレンなどのメチルベンゼン類、エチルベンゼン、クメンおよびp−シメン、p−tert−ブチルトルエン、p−ジイソプロピルベンゼンなどをあげることができる。
【0013】
本発明の製造方法による触媒はこれらアルキルベンゼン類を気相酸化して、対応するアルデヒドを製造するのに適したものである。具体的には、例えば、トルエンからベンズアルデヒド、p−キシレンからテレフタルアルデヒドおよびp−トルアルデヒド。o−キシレンからフタルアルデヒドおよびo−トルアルデヒド。m−キシレンからイソフタルアルデヒドおよびm−トルアルデヒド。プソイドキュメンから2−メチルテレフタルアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒドおよび3,4−ジメチルベンズアルデヒド。メシチレンから3,5−ジメチルベンズアルデヒド、5−メチルイソフタルアルデヒドおよび1,3,5−トリホルミルベンゼン。デュレンから2,5−ジメチルテレフタルアルデヒド、4,5―ジメチルフタルアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、2,4,5−トリホルミルトルエンおよび1,2,4,5−テトラホルミルベンゼン、エチルベンゼンおよびクメンからベンズアルデヒド、p−シメンからテレフタルアルデヒド、クミンアルデヒドおよびp−トルアルデヒド、p−tert−ブチルトルエンからp−tert−ブチルベンズアルデヒド、p−ジイソプロピルベンゼンからテレフタルアルデヒドおよびクミンアルデヒド等をそれぞれ製造するものである。なかでも本発明の製造方法による酸化用触媒は炭素数8〜10のメチルベンゼン類から対応する芳香族アルデヒドを製造するのに好適に用いられ、特にp−キシレンからテレフタルアルデヒドを製造するのに最も好適に用いられる。
【0014】
本発明のW−Sb系触媒の製造方法は、W及びSbを含む水溶液又は水性スラリーを、Al、Nb、Ta、Zr、及びTiからなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物及び/又は複合酸化物と混合し、濃縮乾固するなど乾燥した後、650℃以上で焼成することにより達成される。
【0015】
本発明において、W−Sb系酸化物触媒のWとSbとの好ましい組成比は、原子比でWを1とした場合、Sbは0.01〜1、より好ましくは0.05〜0.5である。また、本発明の触媒はWとSbに加えて、Zn、Co、Ni、Mn、Mg、Ca、Sr、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、中でもZnを含むことが特に好ましい。
【0016】
本発明において、Al、Nb、Ta、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物及び/又は複合酸化物は成型体であってもよく、また、粉末であっても良い。さらには、これら元素の酸化物あるいは複合酸化物の前駆体となる水酸化物、ゲル、ゾルなどを使用することもできる。
【0017】
本発明で用いるAl、Nb、Ta、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物及び/又は複合酸化物としてはTiの酸化物が好ましく、中でもルチル型のTi酸化物がより好ましい。これらの比表面積には特に制限はないが、副反応を抑え、目的物を高収率で得る点でBET比表面積が30m/g以下のものが好ましい。前駆体を使用する場合も、酸化物に転換後のBET比表面積が30m/g以下となる様な熱処理条件が目安となる。
【0018】
なお、本発明においては、触媒中のAl、Nb、Ta、ZrおよびTiの元素の酸化物及び/又はこれら元素の複合酸化物の好ましい量は、質量基準で、触媒を100としたとき10〜95である。
【0019】
また触媒の形状についても特に制約はなく、反応管のサイズ、形状により、顆粒状、球状、ペレット状、リング状などのほかハニカム状でも使用が可能である。
【0020】
本発明の酸化用触媒の製造方法においては、Al、Nb、Ta、ZrおよびTiから選ばれる少なくとも一種の元素の酸化物及び/又は複合酸化物を担体として、これにW、Sbを必須とする触媒成分を担持する方法を採ることができるが、その際の担持方法には特に制限はなく、この種の触媒の調製に一般的に用いられている方法によって担持することができる。例えば、WおよびSbならびに必要によりZn、Co、Ni、Mn、Mg、Ca、Sr、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含む均一溶液あるいはスラリーを調製し、これを担体に含浸法などにより担持することができる。具体的には、メタタングステン酸アンモニウム水溶液に酒石酸アンチモン水溶液あるいは三酸化アンチモン粉末および任意成分として硝酸亜鉛の水溶液を加え均一溶液あるいはスラリーを調製し、成型担体に含浸してから乾燥、焼成する方法。または粉末担体、ゾルなどをW、Sb含有溶液あるいはスラリーと混合して加熱攪拌、濃縮、蒸発乾固を行い、80〜230℃で乾燥、焼成する方法などが挙げられる。焼成の前もしくは後に、必要により、破砕あるいは成型して触媒のサイズの調整を行うことができる。
【0021】
本発明においては、焼成は650℃以上の温度で行う必要がある。650℃未満で焼成した場合、長期間反応を継続した場合触媒性能が安定せず、経時的な触媒性能の低下(経時劣化)が起こる。650℃以上で焼成した場合には、触媒の耐久性が増し経時劣化は著しく軽減される。さらに経時的な触媒性能の安定化を図るには700℃以上の温度での焼成がより好ましい。ただし、800℃を越える温度で焼成した場合には、経時的な触媒性能の安定性(耐久性)は増すものの、触媒活性が低下するため、800℃以下の温度での焼成が好ましい。
【0022】
なお、焼成時間は1〜100時間、好ましくは2〜30時間である。
【0023】
この乾燥および焼成を行う際の雰囲気には特に制限はなく、大気中でも、高酸素濃度または低酸素濃度雰囲気中でも、また還元性雰囲気中でも、窒素、ヘリウム、アルゴン等の不活性ガス雰囲気中でも、さらには真空中でも行うことができる。これらは触媒調製に使用した原料の特性等に応じて適宜選択できる。
【0024】
本発明において、触媒の調製に用いられる原料には特に制限はないが、タングステンはメタタングステン酸アンモニウム水溶液、パラタングステン酸アンモニウム、三酸化タングステンなどが好適に用いられ、アンチモンは三酸化アンチモン、アンチモン酸ゾル、酒石酸アンチモン水溶液などが好適に用いられる。その他の任意に添加する元素についても、硝酸塩、硫酸塩、酸化物、水酸化物、塩化物、炭酸塩、有機酸塩、金属酸素酸、金属酸素酸アンモニウム塩、ヘテロポリ酸など特に制限なく原料を選択できる。
【0025】
本発明の気相酸化反応を行う際の原料としては、アルキルベンゼン類および分子状酸素のほかに、必要に応じて、希釈ガスを用いる事ができる。分子状酸素源としては、空気または純酸素が使用される。分子状酸素は通常、アルキルベンゼン類1モルに対して、5〜100モルの割合で用いる。希釈ガスとしては、窒素、ヘリウム、炭酸ガスなどの不活性ガスや水蒸気などが好適に用いられる。
【0026】
本発明の気相酸化反応を実施する際の反応条件には特に制限はなく、例えば、空間速度1000〜100000h−1、反応温度350〜650℃の条件下に上記原料ガスを本発明の酸化用触媒に接触させればよい。好ましくは空間速度2000〜50000h−1、反応温度は450〜600℃である。触媒の耐久性の観点からは、反応温度450〜550℃がより好ましい。上記反応は通常常圧かやや加圧で行うが、高圧下、減圧下いずれでも実施することができる。
【0027】
反応方式についても特に制限はなく、固定床式、移動床式または流動床式のいずれでもよい。また単流方式でもリサイクル方式でもよい。
【0028】
【発明の効果】本発明の製造方法によるW−Sb系酸化物触媒は部分酸化性能に優れ、また耐久性にも優れ、特にアルキルベンゼンから対応する芳香族アルデヒドを高収率かつ長寿命で製造することができる。
【0029】
【実施例】以下実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお反応における転化率、選択率および単流収率は、副生物を含めてそれぞれ以下のように定義される。
転化率(モル%)
=(反応した原料のモル数/供給した原料のモル数)×100
選択率(モル%)
=(生成した各化合物のモル数/反応した原料のモル数)×(生成した各化合物の炭素数/供給した原料の炭素数)×100
単流収率(モル%)
=(生成した各化合物のモル数/供給した原料のモル数)×(生成した各化合物の炭素数/供給した原料の炭素数)×100
実施例1
Sb原料として酒石酸アンチモン水溶液をまず調製した。L−酒石酸150.0gを310mlの水に溶解し、これに三酸化アンチモン36.5gを添加し、加熱還流を行い溶解させた。これに少量の水を加え、全体の質量を500gに調整し、Sb濃度0.5mmol/gの酒石酸アンチモン水溶液を得た。この酒石酸アンチモン水溶液6.75gに、メタタングステン酸アンモニウム水溶液(WOとして50wt%含有)10.42gおよびZn0.5mmol/gの硝酸亜鉛水溶液1.8gを加え均一含浸液を得た。酸化チタン粉末(ルチル型、BET比表面積1.0m/g)10.0gを上記含浸液に加え、加熱攪拌を行い、約2時間かけて蒸発乾固をおこなった。これをN流通中260℃で16時間加熱乾燥処理を行ったあと破砕し、16〜30メッシュに分級したものを、大気中700℃で6時間焼成処理を行った。
【0030】
得られた触媒の組成は37質量%WSb0.15Zn0.04/TiOであった。この触媒1.0gを通常の流通式反応装置に充填し、下記の条件下で反応を行った。反応結果を表1に示す。
【0031】
反応圧:常圧
反応ガス組成:p−キシレン/Air=0.8/99.2
(p−キシレン/O=1/25.8)
反応ガス供給速度:120ml(標準状態)/min
SV:7000h−1
反応温度 : 540℃
トータル反応時間:50時間
【0032】
【表1】
Figure 2004148188
【0033】
比較例1
焼成温度を640℃とした以外は、実施例1と同様に触媒調製を行い、反応温度を520℃とした以外は、実施例1と全く同じ反応条件で、反応を行った。反応結果を表2に示す。
【0034】
【表2】
Figure 2004148188
【0035】
実施例2
酸化チタン粉末の代わりに、酸化ニオブ粉末(BET比表面積4.9m/g)を使用し、焼成温度を750℃とした以外は、実施例1と同様に触媒調製を行い、反応温度を550℃とした以外は、実施例1と同じ反応条件で、反応を行った。反応結果を表3に示す。
【0036】
【表3】
Figure 2004148188
【0037】
比較例
焼成温度を640℃とした以外は、実施例2と同様に触媒調製を行い、反応温度を520℃とした以外は、実施例1と同じ反応条件で、反応を行った。反応結果を表4に示す。
【0038】
【表4】
Figure 2004148188

Claims (4)

  1. タングステン及びアンチモンを必須成分とするタングステン−アンチモン系酸化物触媒の製造方法であって、タングステン及びアンチモンを含む水溶液あるいは水性スラリーを、アルミニウム、ニオブ、タンタル、ジルコニウム及びチタンからなる群より選択される少なくとも一種の元素の酸化物及び/又は複合酸化物と混合し、乾燥した後、650℃以上で焼成することを特徴とするタングステン−アンチモン系酸化物触媒の製造方法。
  2. 請求項1に記載の方法により得られた、タングステン−アンチモン系酸化物触媒。
  3. さらに、亜鉛、コバルト、ニッケル、マンガン、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムおよびセシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含む請求項2記載のタングステン−アンチモン系酸化物触媒。
  4. メチルベンゼン類を分子状酸素の存在下に接触気相酸化させて対応する芳香族アルデヒド類を製造する方法であって、触媒として請求項2または3のいずれかに記載のタングステン−アンチモン系酸化物触媒を用いることを特徴とする芳香族アルデヒド類の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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