JP2004147969A - 吻合装置及び吻合具 - Google Patents

Abstract

【課題】装置の構成を比較的単純にすることができ、且つ、吻合後に、先端部材を前方に移動させずに体外に抜き取るようにすること。
【解決手段】吻合装置４０は、相互の係合する雄雌一対のリング部材１１，１２からなる吻合リング１０を用いて腸組織Ｂ１，Ｂ２の吻合を可能に設けられている。この吻合装置４０は、雄リング部材１１が配置される本体４１と、この本体４１に接近可能に設けられるとともに、雌リング部材１２が配置される先端部材４２とを備えている。この先端部材４２は、先端側に位置するアンビル７３と、このアンビル７３の周面８３に突設された突部８５とを備えている。この突部８５は、雌リング部材１２の中心穴２８内に形成された溝部３２と係合し、先端部材４２と雌リング部材１２との相対回転により、それらを離間不能にする固定位置と、それらを離間可能にする解除位置との間で変位するようになっている。
【選択図】 図７

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、吻合装置及び吻合具に係り、更に詳しくは、腸組織等の生体組織の切断部位を接合する際に用いられる吻合装置及び吻合具に関する。
【０００２】
【従来の技術】
従来より、患部を切除するために切断された腸同士を再接合（吻合）する際に用いられる吻合具が知られている。この吻合具は、相互に係合する一対の部材により構成されており、これら部材の間に腸の切断部位を挟み込むことで当該切断部位を吻合し、そのまま体内に残されるようになっている。このような吻合具は、体内で経時的に縮小する所定の生体適合性材料によって形成されており、切断部位が治癒した頃に、自然消滅し、若しくは、肛門から体外に排出されるようになっている。
【０００３】
ところで、前記吻合具による腸の吻合は、医師の手によって行われる他、例えば、後記特許文献１，２に開示された吻合装置によっても行うことができる。
特許文献１の吻合装置は、組織を貫通可能な尖端部を有する第１のファスナーと、前記尖端部を受容する受容部を有する第２のファスナーとにより構成される吻合具が用いられる。ここでの吻合装置は、前記第２のファスナーを保持する頭部と、前記第１のファスナーを保持して頭部に接近可能なアンビルとを備えている。この吻合装置では、第１のファスナーが保持されたアンビルを第２のファスナーが保持された頭部に接近させることにより、各ファスナーの間に組織を挟み込んだ状態で、前記尖端部が組織を貫通して受容部に受容され、これによって、切断された組織同士が吻合される。その後、ナイフで各ファスナーの中央部分及びそれらの間に挟まれた組織部分が切断され、吻合された組織間を連通させる。
【０００４】
一方、特許文献２の吻合装置は、吻合具を構成する吻合リングの中心穴に挿通される先端側の接合棒を備え、この接合棒は、後端側の回転体を回転操作することで、前後方向に移動できるようになっている。また、接合棒の先端部分には、軸方向に延びる割溝が複数箇所に形成されており、当該割溝の内部に押棒が侵入することで、接合棒の先端部分が径方向に拡張するようになっている。
【０００５】
特許文献２の吻合装置による吻合は、次のようにして行われる。
すなわち、前記回転体が所定方向に回転操作されることにより、前記接合棒が後方に移動し、これによって、当該接合棒の先端部分は、割溝の内部に押棒が侵入して径方向に拡張し、吻合リングの先端側に係合する。そして、当該係合状態を保ったまま、接合棒が更に後方に移動することで、各リング部材の相対部間の離間幅を狭め、当該相対部間に腸の切断部位が挟み込まれる。
このような作業が終了した後は、前記回転体が前述と逆方向に回転操作されて前記接合棒が前方に移動し、これにより、その先端部分が縮径して吻合リングの先端側との係合が解除される。そして、吻合リングの中心穴から接合棒が抜き出されて、装置全体が体外に取り出される。
【０００６】
【特許文献１】
特開平４−３０９３４１号公報
【特許文献２】
特開平８−２３８２５２号公報
【０００７】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特許文献１の吻合装置にあっては、組織の吻合後に、ナイフで各ファスナーの中央部分を切断しなければならず、当該中央部分が無駄になる他、ファスナーに対して硬さの相違する組織も同時に切断する必要があり、ナイフの受け部材の設計が難しくなるという不都合がある。
【０００８】
また、前記特許文献２の吻合装置にあっては、前記接合棒の先端部分が径方向に拡縮することにより、前記吻合リングに係脱される構造となっているため、接合棒の形状や構造が複雑になり、これが、装置を構成する部品点数を増大させ、また、装置の組み立てを困難にさせるという不都合を招来する。また、吻合後の接合棒の抜き取り時においては、吻合リングと接合棒との係合を解除するために、当該接合棒を一旦前方に移動しなければならない。このため、吻合リングのすぐ前方の腸部位が屈曲等している場合には、接合棒の抜き取り時に、その先端部位が前記腸部位に干渉する虞があり、これが、接合棒のスムーズな抜き取りを阻害するという不都合もある。
【０００９】
ところで、前記特許文献１、２の吻合装置に用いられる吻合具は、相互に係合する一対の部材（特許文献１のファスナー、特許文献２の吻合リング）同士を係合させ易くするように、硬質の生体適合性材料により形成されている。ところが、このように、吻合具を硬質材料で形成すると、吻合された組織の動き等によって、略密着した状態で相互に係合された前記部材の間に隙間が生じ易くなるとともに、当該部材の外周側が組織の内壁に当たって強く圧迫し、組織の血流を阻害する虞もある。
【００１０】
【発明の目的】
本発明は、このような不都合に着目して案出されたものであり、その目的は、装置の構成を比較的単純にすることができ、且つ、吻合後に、先端部材を前方に移動させずに体外に抜き取ることができる吻合装置及び吻合具を提供することにある。
【００１１】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明は、生体組織の切断部位を接合可能な一対のリング部材のうち何れか一方のリング部材側に配置される本体と、この本体に接近可能に設けられるとともに、何れか他方のリング部材側に配置される先端部材とを備え、当該先端部材が本体に接近することにより、前記各リング部材の間に前記切断部位を挟み込んで当該切断部位を接合する吻合装置において、
前記先端部材は、前記他方のリング部材の中心穴内で係合する係合部を備え、この係合部は、前記先端部材と前記中心穴との相対回転により、前記先端部材及び前記他方のリング部材を離間不能にする固定位置と、それらを離間可能にする解除位置との間で変位する、という構成を採っている。このような構成によれば、先端部材を他方のリング部材の中心穴内から前方に突出させずに、それらを係合させることができ、しかも、先端部材を他方のリング部材から離間させる際には、それらの相対回転を行えば良いため、先端部材を前方に移動させずに体外に抜き取ることができる。従って、先端部材を体外に抜き取る際に、他方のリング部材のすぐ前方の生体組織に対する干渉を回避することができ、先端部材の抜き取り作業をスムーズに行うことができる。また、従来構造のように、所定の軸状部材を径方向に拡縮させる必要がないため、吻合装置の構成を比較的単純にすることができる。
【００１２】
本発明において、前記切断部位が挟み込まれた各リング部材を係合する際に操作される操作部と、この操作部の操作を規制するストッパと、当該ストッパに連動して前記先端部材を回転させる連動手段とを更に備え、
前記ストッパは、前記操作部を操作不能にする規制位置と、前記操作部を操作可能にする操作許容位置との間で変位し、
前記連動手段は、前記ストッパが前記規制位置から前記操作許容位置に変位したときに、前記係合部を前記固定位置から前記解除位置に変位させる、という構成を採ることが好ましい。このように構成することで、ストッパの操作に連動して、先端部材が他方のリング部材に対して離間可能になるため、吻合後に先端部材を体外に抜き取る際に、当該先端部材と他方のリング部材とを別途相対回転させる作業が不要となり、切断部位の吻合から装置の体外への抜き取りまでの一連の吻合作業をより少ない操作でより速く行うことが可能になる。
【００１３】
また、本発明に係る吻合具は、所定の吻合装置に取り付けられて生体組織の切断部位を接合する一対のリング部材からなる吻合具において、
何れか一方のリング部材は、その中心穴内に前記吻合装置の一部が係合する係合部を備え、この係合部は、前記中心穴及び前記吻合装置の相対回転により係脱可能となる形状に設けられる、という構成を採っている。このような構成によっても、前述と同様の理由で、吻合装置の構成を比較的単純にすることができ、且つ、吻合後に、吻合装置の一部となる先端部材を前方に移動させずに体外に抜き取ることが可能となる。
【００１４】
なお、本明細書において、「先」若しくは「前」は、特に明記しない限り、吻合装置の一端側となる吻合部位側を意味する一方、「後」は、前記吻合装置の他端側となる操作部位側を意味する。
【００１５】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【００１６】
［第１実施例］
図１には、第１実施例に係る吻合具としての吻合リングの概略分解斜視図が示され、図２には、図１の概略縦断面図が示されている。また、図３には、腸の切断部位が前記吻合リングで吻合された状態を表す断面図が示されている。これらの図において、吻合リング１０は、相互に係合可能な雄雌一対のリング部材１１，１２により構成されている。これら雄雌リング部材１１，１２の間には、図３に示されるように、腸組織Ｂ１，Ｂ２の各切断部位が挟み込まれ、その状態で、雄雌リング部材１１，１２を係合することにより、腸組織Ｂ１，Ｂ２の切断部位を再接合（吻合）できるようになっている。この吻合リング１０は、吻合後に体内に残されるようになっており、体内で経時的に縮小する生体適合性材料により形成されている。この生体適合性材料としては、特に限定されるものではないが、ポリ乳酸、ポリグルコール酸及びこれらの共重合体からなる公知の材料を例示できる。このように体内に残された吻合リング１０は、各腸組織Ｂ１，Ｂ２が固着した後に、自然消滅し、若しくは、肛門から体外に排出されるようになっている。
【００１７】
図１中右側に位置する雄リング部材１１は、平面視で略円形をなす中心穴１４を有するリング本体１５と、このリング本体１５に突設されたフック部材１８及び脚部材２０とを備えて構成されている。
【００１８】
前記リング本体１５は、平面視で略円形となる外周形状をなし、雌リング部材１２に相対する相対面２２と、この相対面１６の反対側に位置する外面２３とを備えている。
【００１９】
前記フック部材１８は、周方向に沿って相対面２２上に多数設けられており、当該相対面２２から略垂直方向に延びる長片状の基部２５と、この基部２５から段差Ｄを介して連なる先端部２６とからなる。この先端部２６は、円錐の略中央から縦方向に切断して得られる略半円錐状の外形をなし、その最先端側で腸組織Ｂ１，Ｂ２を貫通させるようになっている。
【００２０】
前記脚部材２０は、外面２３の周方向四箇所に略等間隔で設けられており、外面２２から略垂直方向に延びる棒状体によって構成されている。
【００２１】
前記雌リング部材１２は、雄リング部材１１の中心穴１４と略同一の形状及びサイズに設けられた中心穴２８と、雄リング部材１１の相対面２２に相対する相対面２９と、当該相対面２９の反対側に位置する外面３０とを備えている。
【００２２】
前記中心穴１４の内壁には、側面視略Ｌ字状をなす係合部としての溝部３２が一箇所形成されている。この溝部３２は、外面３０側で周方向に延びる横溝３４と、この横溝３４の一端側に連なって相対面２９に向かって延びる縦溝３５とにより構成されている。横溝３４は、中心穴２８の内壁側が開放する一方、縦溝３５は、中心穴２８の内壁側及び相対面２９側が開放している。従って、溝部３２は、相対面２９側から見たときに、中心穴２８の内壁を略コ字状に切り欠いたような形状に表れ、当該切欠部分の表端側が溝部３２への挿入口３２Ａとなる。
【００２３】
前記相対面２９には、前記雄リング部材１１のフック部材１８が受容されるフック係合穴３７が多数形成されている。当該フック係合穴３７は、周方向二列に略等ピッチで形成されており、内側と外側とで周方向に若干シフトした位置に設けられている。従って、各フック部材１８は、これら各フック係合穴３７に相対可能となる位置に設けられることになる。また、各フック係合穴３７は、フック部材１８の先端部２６を嵌合可能に設けられている。すなわち、フック係合穴３７の内部には、フック部材１８の段差Ｄに係合可能な突起３８（図２参照）が設けられている。この突起３８は、先端部２６をフック係合穴３７の開放部から所定の力で挿入したときに、先端部２６が弾性変位を伴ってフック係合穴３７の底部側に達することができるように設定され、且つ、先端部２６がフック係合穴３７の底部側に達したときに、各リング部材１１，１２が連結されるようになっている。なお、図３に示されるように、各リング部材１１，１２が連結された状態では、それらの各相対面間２２，２９に、二枚厚状に重ねられた腸組織Ｂ１，Ｂ２を挟み込んで脱落不能とする隙間が形成されるようになっている。また、このような各リング部材１１，１２の連結状態では、それらの各中心穴１４，２８の略全域が相対するようになっている。
【００２４】
以上のように構成された吻合リング１０による腸組織Ｂ１，Ｂ２の吻合は、図４に示される吻合装置４０を用いて行うことができる。
【００２５】
前記吻合装置４０は、図４中左下側が腸組織Ｂ１，Ｂ２（図３参照）の吻合を行う吻合部位となる一方、同図中右上が操作者の操作部位となっている。この吻合装置４０は、本体４１と、本体４１の先端側で着脱自在に保持されるとともに、当該本体４１に対して離間接近可能な先端部材４２とを備えて構成されている。
【００２６】
前記本体４１は、その先端側に位置する頭部４４と、この頭部４４の後方に連なるシャフト４５と、このシャフト４５の後方に位置するとともに、相互に離間接近可能な二股状の把持部４７，４８を有する握りレバー４９（操作部）と、把持部４７，４８間に位置するストッパ５１と、このストッパ５１から後方に延設され、軸線Ｌを略中心として回転可能に取り付けられた回転部５２とを備えている。
【００２７】
前記頭部４４は、図５に示されるように、その先端側に前記雄リング部材１１が装着されるようになっている。この頭部４４は、図５及び図６に示されるように、先端側が開放する凹部５４を有する略円筒状をなし、先端側に位置する円環状の先端面５６には、前記雄リング部材２３の脚部材２０が収容される脚収容穴５８が周方向四箇所に形成されている。
【００２８】
前記凹部５４は、前記雄雌リング部材１１，１２の各中心穴１４，２８（図５参照）と略同一の内径を有する丸穴状に設けられており、脚収容穴５８に前記脚部材２０が収容された状態で、中心穴１４の略全域に相対するようになっている。凹部５４の内側には、その内壁に沿う円筒状のカッター５９と、このカッター５９の内部略中央に位置して前後方向に延びる中軸６１と、この中軸６１が挿通される外筒６２とが設けられている。
【００２９】
前記カッター５９は、前記握りレバー４９の把持部４７，４８を相互に接近させる握り操作を行うことにより、先端側の刃先が前記先端面５６よりも前方（図５中左方）に突出するようになっている。
【００３０】
前記中軸６１は、その後端側が回転部５２内に形成された通路６３とねじ係合しており、回転部５２を回転すると前後方向（図５中左右方向）に移動して先端側が凹部５４の内外間を移動するようになっている。また、中軸６１の先端側は、端部が開放する円筒状に設けられており、その内部空間６１Ａに前記先端部材４２の一部が着脱自在に収容されるようになっている。
【００３１】
前記外筒６２は、中軸６１の外径よりも大きな内径に設定されており、これら中軸６１及び外筒６２は、相対回転可能且つ軸線方向に相対移動可能な状態となっている。また、外筒６２の外周面には、ストッパ５１に連なる棒状若しくは片状の連結部材６４が固定されており、中軸６１が前後方向に移動したときでも、それに追従して外筒６２が前後方向に動かないようになっている。一方、外筒６２の内周面には、放射状に延びる多数の突片６６が中軸６１に干渉しないように設けられており、これにより、外筒６２の内周面に凹凸面６７が形成されることになる。
【００３２】
前記脚収容穴５８の内部には、前後方向に延びる棒状のプッシャ６９の先端側が配置されている。このプッシャ６９は、その後端側に連なるベース７０を介してカッター６０に連結されており、握りレバー４９の握り操作によって、カッター６０に連動して前後方向に移動できるようになっている。つまり、握りレバー４９の握り操作を行うと、脚収容穴５８内に脚部材２０が収容された状態の雄リング部材１１が前方に押し出されることになる。
【００３３】
前記ストッパ５１は、図４に部分的に示されるように、把持部４７側が開放端側となる略Ｕ字状に設けられており、その内側に前記回転部５２が配置されている。ここで、ストッパ５１は、前記回転部５２に対してその周方向に回転可能に設けられ、これによって、開放側の端部５１Ａが把持部４７に非干渉となる位置（図４の位置）と、端部５１Ａが把持部４７に干渉する位置（図５の位置）との間を変位できるようになっている。すなわち、前者の位置は、各把持部４７，４８が離間接近することのできる位置、つまり、握りレバー４９を操作可能にする操作許容位置となる。一方、後者の位置は、各把持部４７，４８が離間接近できずにロックされる位置、つまり、握りレバー４９を操作不能にする規制位置となる。なお、ストッパ５１は、予め規制位置にセットされており、後述するように、握りレバー４９の操作が必要となったときに、人為的に操作許容位置に変位される。ここで、ストッパ５１は、前述したように、連結部材６４を介して外筒６２に連結されており、ストッパ５１を前記規制位置と操作許容位置との間で変位させると、それに追従して外筒６２が中軸６１に対して回転するようになっている。この回転により、後述するように、外筒６２に係合した先端部材４２を回転させることが可能になる。従って、外筒６２及び連結部材６４は、ストッパ５１に連動して先端部材４２を回転させる連動手段を構成することになる。
【００３４】
前記先端部材４２は、図５及び図７に示されるように、前記中軸６１に連結されるアンビル軸７２と、このアンビル軸７２の先端側に連なるとともに、雌リング部材１２の中心穴２８内に収容されるアンビル７３とを備えて構成されており、当該アンビル７３に雌リング部材１２が取り付けられるようになっている。
【００３５】
前記アンビル軸７２は、中軸６１の先端側に連結された状態で、当該中軸６１とともに前後方向すなわち図５中左右方向に移動可能となる。このアンビル軸７２は、中軸６１の内部空間６１Ａ内に挿入される挿入領域７５と、この挿入領域７５よりもアンビル７３側に位置するとともに、前記外筒６２内に挿入される大径領域７６とを備えている。挿入領域７５は、その外径が内部空間６１Ａの内径よりも僅かに小さくなっており、これによって、アンビル軸７２は、中軸６１に対して回転を許容する状態で連結される。前記大径領域７６は、その外周面が、放射状に延びる多数の突片７８で形成された凹凸面７９となっており、この凹凸面７９は、外筒６２の凹凸面６７と噛み合い可能となる形状及び大きさに設けられている。
【００３６】
このように構成されたアンビル軸７２を中軸６１に連結する際には、先ず、図５に示されるように、中軸６１の先端側を前記先端面５６から前方に突出させて、挿入領域７５を内部空間６１Ａ内に挿入する。この状態では、まだ、大径領域７６が外筒６２内に収容されずに当該外筒６２の前方に位置している。次いで、この状態から、前記回転部５２を回転し、中軸６１を後方に所定量移動すると、外筒６２は前後方向に動かないため、当該外筒６２内に大径領域７６が収容されることになる。このとき、外筒６２及び大径領域７６に形成された各凹凸面６７，７９が噛み合って、外筒６２とアンビル軸７２とが相対回転不能に結合する。なお、中軸６１とアンビル軸７２とは、相対回転可能に連結されているため、各凹凸面６７，７９の相対位置が多少合っていなくても、中軸６１の移動の過程で、当該中軸６１及びアンビル軸７２が相対回転しながら各凹凸面６７，７９が噛み合わされる。
【００３７】
前記アンビル７３は、図５及び図７に示されるように、雌リング部材１２の中心穴２８に受容可能となるサイズの帽子状に形成されている。すなわち、アンビル７３は、平面視略円形状をなし、その最大外径が中心穴２８の内径と略同一に設定されている。このアンビル７３は、アンビル軸７２が略中央に固定された裏面８２と、この裏面８２の外周縁から前端に向かって縮径する湾曲面状の周面８３と、この周面８３から外側に向かって突出する略ブロック状をなすとともに、雌リング部材１２の溝部３２に係合する係合部としての突部８５とにより構成されている。なお、図示省略しているが、前記裏面８２には、その外周縁付近に、前記カッター５９の刃先を受け止める刃受けリング部材が設けられている。
【００３８】
前記突部８５は、溝部３２内を移動可能となるサイズに設けられている。この突部８５は、次のように溝部３２内に挿入される。先ず、アンビル７３の先端側と雌リング部材１２の相対面２９側とが対向した状態から、突部８５が溝部３２の挿入口３２Ａからその内部に向かって挿入される。すると、突部８５が縦溝３５の底部に向かって移動し、これによって、アンビル７３が中心穴２８内に嵌め込まれる。この状態から、アンビル７３と雌リング部材１２とを相対回転することで、突部８５が横溝３４内に移動する。この状態では、前述した横溝３４の形状から、突部８５は、雌リング部材１２とアンビル７３とを離間不能にする固定位置にあることになる。一方、この状態から、前述と逆方向（以下、「解除方向」と称する）に、アンビル７３と雌リング部材１２とを相対回転すると、突部８５が横溝３４から縦溝３５内に移動する。このときには、アンビル７３を雌リング部材１２からアンビル軸７２方向に引っ張ることで、アンビル７３を雌リング部材１２から分離することができる。従って、このときには、突部８５は、雌リング部材１２とアンビル７３とを離間可能にする解除位置にあることになる。すなわち、アンビル７３が中心穴２８内に収容された状態では、それらの相対回転により、突部８５が固定位置と解除位置との間で変位できるようになっている。
【００３９】
なお、吻合装置４０における前記以外の構成については、公知の構成が採用されており、ここでは詳細な説明を省略する。
【００４０】
次に、前記吻合装置４０による腸同士の吻合手順について説明する。
【００４１】
先ず、図８（Ａ）に示されるように、雌リング部材１２が取り付けられたアンビル７３が一方の腸組織Ｂ１の切断部位から挿入され、アンビル軸７２を表出させた状態で、前記切断部位が糸で巾着状に縛られる。一方、他方の腸組織Ｂ２内には、肛門（図示省略）から、頭部４４を先端側として本体４１が挿入される。そして、頭部４４が他方の腸組織Ｂ２の切断部位に達したら、当該切断部位側から雄リング部材１１が装着される。この際、中軸６１は、雄リング部材１１よりも前方に突出される。その後、中軸６１を表出させた状態で、腸組織Ｂ２の切断部位が糸で巾着状に縛られる。
【００４２】
以上の準備が終わったら、アンビル軸７２の挿入領域７５が中軸６１の先端側から内部空間６１Ａに挿入され、アンビル軸７２と中軸６１とが連結される。そして、前記回転部５２（図４参照）を回転操作し、図８（Ｂ）に示されるように、アンビル軸７２及び中軸６１を後方（同図中下方）に移動し、これに伴って、アンビル７３に取り付けられた雌リング部材１２が、一方の腸組織Ｂ１とともに他方の腸組織Ｂ２側の雄リング部材１１に近づく。そして、図８（Ｃ）に示されるように、アンビル７３の大径領域７６が本体４１側の外筒６２に相対回転不能に係合するとともに、各腸組織Ｂ１，Ｂ２の端部が接触する。なお、この状態では、雄リング部材１１の各フック部材１８と、雌リング部材１２の各フック係合穴３７とがそれぞれ相対するようになっている。
【００４３】
次いで、前記ストッパ５１（図４参照）が前記規制位置から操作許容位置に変位するように回転される。この際、ストッパ５１の回転に連動して外筒６２が回転し、これによって、アンビル７３も雌リング部材１２に対して回転する。この回転方向は、雌リング部材１２とアンビル７３との係合を解除する前記解除方向となる。従って、アンビル７３の突部８５は、図８（Ｂ）に示される前記固定位置から同図（Ｃ）に示される前記解除位置に変位することとなる。
【００４４】
そして、握りレバー４９（図４参照）を強く握ると、図９（Ａ）に示されるように、雄リング部材１１が前記プッシャ６９（図５参照）の移動により雌リング部材１２に向かって押し出され、雄リング部材１１のフック部材１８が、二枚厚状に重ねられた腸組織Ｂ１，Ｂ２の部分を貫通して雌リング部材１２のフック係合穴３７に嵌合し、各腸組織Ｂ１，Ｂ２が吻合される。また、これと同時に、カッター５９が前方（図９（Ａ）中上方）に向かって突き出され、当該カッター５９が各中心穴１４，２８間を通ってアンビル７３の裏面８２に当り、これによって、各中心穴１４，２８間に位置する腸組織Ｂ１，Ｂ２が切断され、各中心穴１４，２８の内側を介して各腸組織Ｂ１，Ｂ２が連通する。
【００４５】
その後、本体４１が図９（Ａ）中下方に移動される。すると、当該本体４１に取り付けられたアンビル７３は、雌リング部材１２に対して既に分離可能な状態となっているため、当該雌リング部材１２から離れて、カッター５９で切断された腸組織Ｂ１，Ｂ２の一部と本体４１とともに、他方の腸組織Ｂ２内を通って肛門（図示省略）から抜き出される。
【００４６】
従って、このような第１実施例によれば、吻合作業の後で、アンビル７３を雌リング部材１２に対して回転することで、それらを分離させる構造となっているため、装置の構造を比較的単純にすることができるという効果を得る。
【００４７】
また、先端部材４２を雌リング部材１２から更に先端側に移動させることなくそれらの分離が可能となるため、雌リング部材１２の近傍の腸組織Ｂ１の部分が屈曲していても、先端部材４２を難なく体外に抜き出すことができるという効果をも得る。
【００４８】
更に、ストッパ５１の変位に連動して突部８５の係合位置を変えることができるため、腸組織Ｂ１，Ｂ２の吻合から装置の抜き取りまでの一連の吻合作業をより少ない操作でより早く行うことができる。
【００４９】
また、ステイプラー状の公知の吻合装置（特開平８−６６４０６号公報等参照）と同様の操作で、吻合リング１０による腸組織Ｂ１，Ｂ２の吻合を行うことができ、医療現場においては、従来の吻合技術や操作技術で簡単に対応することができる。
【００５０】
なお、前記第１実施例では、本体４１側に雄リング部材１１を配置し、また、先端部材４２側に雌リング部材１２を配置したが、本発明はこれに限らず、逆に、本体４１側に雌リング部材１２を配置し、先端部材４２側に雄リング部材１１を配置することもできる。この場合は、前述した吻合装置４０の構造を変えずに、前記脚部材２０を雌リング部材１２の外面３０側に設ける一方、溝部３２を雄リング部材１１の中心穴１４内に設けた構成を例示できる。
【００５１】
次に、本発明の第２実施例について説明する。なお、以下の説明において、前記第１実施例と同一若しくは同等の構成部分については同一符号を用いるものとし、説明を省略若しくは簡略にする。
【００５２】
［第２実施例］
第２実施例は、図１０及び図１１に示されるように、第１実施例の吻合リング１０及び吻合装置４０の構造を若干変更したものである。
【００５３】
すなわち、本実施例における雄リング部材１１は、前記第１実施例の脚部２０の代わりに、穴部８８が外面２３の複数箇所に設けられている他、中心穴１４の内壁に、前記雌リング部材１２と略同一の溝部３２が形成されている。一方、雌リング部材１２は、前記第１実施例に対して、外面３０の複数箇所に穴部８８を更に設けた構成となっている。これら穴部８８，８９は、特に限定されるものではないが、本実施例では、略丸穴状に設けられているとともに、外面２３，３０の周方向四箇所に略等間隔で設けられている。なお、その他の吻合リング１０の構成は、第１実施例と同一となっている。
【００５４】
前記頭部４４は、第１実施例の脚収容穴５８及びプッシャ６９の代わりに、先端面５６の周方向複数箇所に突部９１が設けられるとともに、当該突部９１の内側位置にプッシャ９２が設けられている。なお、その他の吻合装置４０の構成は、第１実施例と同一となっている。
【００５５】
前記突部９１は、前記穴部８８，８９の何れか一方を選択的に受容できる形状及び大きさに設けられていればよく、本実施例では、穴部８８，８９に対応するサイズの円筒状に設けられ、且つ、先端面５６の周方向四箇所に設けられている。前記プッシャ９２は、後端側が前記ベース７０に繋がる略円筒状をなし、前記凹部５４内に収容されている。ここで、前記カッター５９は、プッシャ９２の内部に配置されている。このため、握りレバー４９を操作すると、カッター５９及びプッシャ９２が、前方（図１１中左方）に移動して、凹部５４の外側に突出することとなる。
【００５６】
この第２実施例に係る吻合装置４０は、雄リング部材１１若しくは雌リング部材１２の何れか一方を本体４１側、何れか他方を先端部材４２側に、選択的に取り付けることができるようになっている。そして、握りレバー４９の操作で、本体４１側に取り付けられたリング部材１１，１２の何れか一方が、プッシャ９２によって何れか他方側に押し出され、これによって、前記第１実施例と同様な吻合を行うことが可能となっている。
【００５７】
従って、このような第２実施例によっても、前記第１実施例と同一の効果が得られる他、本体４１と先端部材４２との間で各リング部材１１，１２の取り付けを選択的に行うことができるため、吻合作業の自由度を高めることができる。しかも、体内に残される吻合リング１０に脚部材２０がないため、当該脚部材２０の残存に起因する吻合後の体内の違和感等を軽減することができる。
【００５８】
なお、第２実施例では、各リング部材１１，１２の選択的な取り付けを可能にしたが、各リング部材１１，１２の何れか一方にのみ穴部８８，８９を設け、何れか他方にのみ溝部３２を設けた吻合リング１０とすることも可能である。
【００５９】
以上の各実施例に対し、前記溝部３２をアンビル７３の周面８３に形成する一方、突部８５を中心穴２２，２８に形成するようにしてもよい。但し、前記各実施例の方が、雌リング部材１２及びアンビル７３の加工を簡単に行うことができる他、吻合後に各腸組織Ｂ１，Ｂ２の連通部位に突部８５が残らなくすることができる。
要するに、吻合リング１０及び先端部材４２に設けられる係合部としては、前述した溝部３２及び突部８５の構造に限定されるものではなく、吻合リング１０及び先端部材４２を相対回転させたときに、それらを前記固定位置と解除位置との間で変位可能に係合できる限りにおいて、種々の形状及び構造を採用することができる。
【００６０】
また、アンビル軸７２に対してアンビル７３の姿勢を変えることができるようにしてもよい。このようにすると、吻合リング１０で腸組織Ｂ１，Ｂ２を吻合した後で、先端部材４２を体外に一層抜き取り易くすることができる。なお、アンビル７３の姿勢を変える構造としては、本出願人によって既に出願された特願２００２−２２８０８４号の構造、若しくは、特開平８−６６４０６号公報に開示された公知の構造等を例示できる。
【００６１】
更に、前記吻合リング１０としては、図１２に例示されるように、各リング部材１１，１２の内周部分９５と外周部分９６とを硬さの相違する材料で形成するとよい。ここで、内周部分９５は、フック部材１８やフック係合穴３７が設けられる部分である。その一方、外周部分９６は、内周部分９５の外側に位置する部分であり、当該内周部分９５よりも軟質となる材料、例えば、不織布状若しく発泡体状等の材料によって形成されている。
【００６２】
このように外周部分９６を軟質材料で形成すると、各リング部材１１，１２の結合性を内周部分９５で確保しながら、吻合された腸組織Ｂ１，Ｂ２の変形に追従するように外周部分９６が変形し、腸組織Ｂ１，Ｂ２の変形によるリング部材１１，１２の間の隙間の発生を抑制することができる。しかも、外周部分９６による腸組織Ｂ１，Ｂ２の内壁の圧迫が少なくなり、腸組織Ｂ１，Ｂ２の血流を十分に確保することができる。
【００６３】
以上において、本発明における装置各部の構成は図示構成例に限定されるものではなく、前記各実施例と実質的に同様の作用を奏する限りにおいて、種々の変更が可能である。
【００６４】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、装置の構成を比較的単純にすることができ、且つ、吻合後に、先端部材を前方に移動させずに体外に抜き取ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図１】第１実施例に係る吻合リングの概略分解斜視図。
【図２】図１の概略縦断面図。
【図３】腸組織の切断部位同士が前記吻合リングで吻合された状態を表す断面図。
【図４】第１実施例に係る吻合装置の概略斜視図。
【図５】図４の要部を拡大した断面図。
【図６】図５のＡ−Ａ線に沿う方向の断面図。
【図７】雌リング部材及び先端部材の概略斜視図。
【図８】（Ａ）は、先端部材を本体に取り付ける前の状態を示す断面図であり、（Ｂ）は、（Ａ）の状態から先端部材が本体に取り付けられ、腸組織同士が接近する状態を示す断面図であり、（Ｃ）は、相互に接近するように移動された各腸組織が当ったときの状態を示す断面図である。
【図９】（Ａ）は、図８（Ｃ）の状態から、雄リング部材が雌リング部材に嵌合したときの状態を示す断面図であり、（Ｂ）は、吻合装置が他方の腸組織内から抜き出されるときの状態を示す断面図である。
【図１０】第２実施例に係る吻合リングの概略分解斜視図。
【図１１】第２実施例に係る吻合装置における一部省略縦断面図。
【図１２】変形例に係る吻合リングの概略分解斜視図。
【符号の説明】
１０ 吻合リング（吻合具）
１１ 雄リング部材
１２ 雌リング部材
１４ 中心穴
２８ 中心穴
３２ 溝部（係合部）
４０ 吻合装置
４１ 本体
４２ 先端部材
４９ 握りレバー（操作部）
５１ ストッパ
６２ 外筒（連動手段）
６４ 連結部材（連動手段）
８５ 突部（係合部）
Ｂ１ 腸組織
Ｂ２ 腸組織

Claims (3)

1. 生体組織の切断部位を接合可能な一対のリング部材のうち何れか一方のリング部材側に配置される本体と、この本体に接近可能に設けられるとともに、何れか他方のリング部材側に配置される先端部材とを備え、当該先端部材が本体に接近することにより、前記各リング部材の間に前記切断部位を挟み込んで当該切断部位を接合する吻合装置において、
   前記先端部材は、前記他方のリング部材の中心穴内で係合する係合部を備え、この係合部は、前記先端部材と前記中心穴との相対回転により、前記先端部材及び前記他方のリング部材を離間不能にする固定位置と、それらを離間可能にする解除位置との間で変位することを特徴とする吻合装置。
2. 前記切断部位が挟み込まれた各リング部材を係合する際に操作される操作部と、この操作部の操作を規制するストッパと、当該ストッパに連動して前記先端部材を回転させる連動手段とを更に備え、
   前記ストッパは、前記操作部を操作不能にする規制位置と、前記操作部を操作可能にする操作許容位置との間で変位し、
   前記連動手段は、前記ストッパが前記規制位置から前記操作許容位置に変位したときに、前記係合部を前記固定位置から前記解除位置に変位させることを特徴とする請求項１記載の吻合装置。
3. 所定の吻合装置に取り付けられて生体組織の切断部位を接合する一対のリング部材からなる吻合具において、
   何れか一方のリング部材は、その中心穴内に前記吻合装置の一部が係合する係合部を備え、この係合部は、前記中心穴及び前記吻合装置の相対回転により係脱可能となる形状に設けられていることを特徴とする吻合具。

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