JP2004143609A - 紙のカレンダ処理装置及び紙のカレンダ処理方法 - Google Patents

紙のカレンダ処理装置及び紙のカレンダ処理方法 Download PDF

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Abstract

【課題】紙のカレンダ処理装置及び紙のカレンダ処理方法において、煩雑な調整作業が不要で、紙ウェブの仕様にかかわらず、光沢度、表面強度、嵩高、平滑度などの要求を満たした高品質の紙を製造できるようにようにする。
【解決手段】シュープレスロール10を、紙ウェブ1の走行と同期して回転する円筒形状の可撓性ジャケット11と、可撓性ジャケット11の内部に配置され紙ウェブ1の走行方向Bに沿って複数並設された加圧シュー51,52,53と、ニップ部において可撓性ジャケット11を介して加圧シュー51,52,53を紙ウェブ1に対し所定の面圧で加圧する加圧手段とをそなえて構成する。
【選択図】   図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新聞用紙やコート紙、白コート板紙、ライナー紙等の嵩高で高い平滑度及び光沢度が要求される紙の仕上げに用いて好適のカレンダ処理技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に製紙機械の処理工程においては、プレスパートで脱水された紙ウェブはドライヤで乾燥処理されたのち、カレンダ処理装置によってカレンダ処理される。このカレンダ処理では、紙ウェブに金属面を押し当てて金属面の平滑性を紙面に転写することによって、前工程で生じた紙幅方向の紙厚み変動が均一化されるとともに、平滑性や光沢など印刷適性を決める表面特性が紙面に付与される。
【0003】
製紙機械で処理される紙ウェブのうち、特に新聞用紙やコート紙、白コート板紙、ライナー紙などは、印刷表面強度を維持しながら平滑度や光沢度が良くまた嵩高で剛性の高い紙に仕上げることが要求される。このような要求を満たすカレンダ処理装置として、例えば特許文献1や特許文献2に開示されているようなシューカレンダ処理装置がある。
【0004】
以下、このようなシューカレンダ処理装置の構成の一例を、図5及び図6を参照して説明する。図5及び図6はシューカレンダ処理装置の構成を示す図であり、図5はその側面視による模式的断面図、図6はそのニップ部を図5よりも拡大して示す側面視による模式的断面図である。
このシューカレンダ処理装置は、図5に示すように、紙ウェブ1のパスラインを挟んで上方にヒートロール20、下方にシューロール10が対向して配設されている。ヒートロール20は、その内部6に蒸気や熱媒が供給され(或いは加熱コイルが内装され)、その表面を加熱されている。一方、シューロール10は、加圧シュー13,ピストン14及びこのピストン14をスライドさせる油圧装置12を円筒形状の可撓性ジャケット11の内部に配設して構成される。加圧シュー13はピストン14の先端に固定されており油圧装置12によりピストン14を介してニップ部に向けて加圧されている。
【0005】
これにより、加圧シュー13により可撓性ジャケット11を介して紙ウェブ1をヒートロール20に加圧するようになっており、この紙ウェブ1は、ヒートロール20の熱と加圧力とにより平滑処理されることとなる。この際、紙ウェブ1には加圧力が図6に一点鎖線で示すような分布(加圧圧力分布)Pで作用することとなる。この一点鎖線で示される領域(加圧圧力分布P)の上端がその紙ウェブ搬送方向位置(図6において左右方向位置)において紙ウェブ1に作用する面圧の大きさを示し、この上端の高さが高いほど紙ウェブ1には高い面圧が作用していることを意味する。したがって、この装置では、図6に示すようにニップ部において紙ウェブ1には紙ウェブ搬送方向に対し一定の面圧が作用していることとなる。
【0006】
さて、カレンダ処理では紙ウェブを一定の圧力で加圧するが、このとき紙ウェブは紙厚み方向に潰されて繊維間結合が切られる。このため、カレンダ処理を行うと紙ウェブの表面強度は低下する傾向にあり、作用する加圧力(面圧)が高いほどその傾向は高い。また、高い加圧力でカレンダ処理するほど紙の密度が上がってしまい、嵩の低下も招いてしまう。したがって、表面強度の低下や嵩の低下を抑制するためには、低い加圧力で処理することが望ましい。所定の表面性に紙を仕上げるのに必要な加圧力は処理温度に依存し、低温でカレンダ処理するほど高い加圧力が必要となる。したがって、カレンダ処理時の必要加圧力を低くして表面強度の低下や嵩の低下を抑制するためには紙ウェブを十分に加熱することが好ましい。
【0007】
このように紙ウェブを十分に加熱するには、加圧シュー13の紙ウェブ搬送方向の長さ(シュー長さ)SBを、30〜100mmの範囲で設定するのが最適とされている。この長さは、カレンダ処理に使用されていた以前のシューロールに較べ長いので、シュー長さSBを上記範囲に設定されたシューロールは、通称ロングニップタイプと呼ばれている。
【0008】
【特許文献1】
特許第2800908号公報
【特許文献2】
特表平11−501994号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したようなロングニップタイプのシューカレンダ処理装置においては、加圧長さ(ニップ量)が長い為、加圧力を一定とすると一般的な加圧長さのシューカレンダ処理装置に較べ加圧面圧は低い値となる。加圧面圧が低いと、一般的なシューカレンダ処理装置に較べ、上述したように表面強度の低下や嵩の低下を抑制できる利点があるものの、光沢度や平滑度がやや劣る欠点がある。
【0010】
このため、このロングニップタイプのシューカレンダ処理装置において加圧面圧を大きくすることも考えられるが、この場合、ニップ量が多い為、今度は加圧力の総量が過大となってしまい、このような大きな加圧力が作用する状況下において十分な強度で装置を構成するのは困難である。
また、運転中、可撓性ジャケット11と加圧シュー13との摺接部が発熱するため、この摺接部(つまりニップ部)には油等の冷却用液体が供給される。しかし、ロングニップタイプにおいては、ニップ量が大きいので、ニップ中心にまで冷却用液体を十分な量を浸入させることができず、これが、可撓性ジャケット11及び加圧シュー13の焼き付きや熱変形の原因となる欠点もある。
【0011】
また、油圧装置12の調整により、図6に示すような加圧圧力分布Pを全体的に増大又は減少させることはできるが、加圧圧力分布Pの特性は加圧シュー13の形状に応じた一定のものとなる。加圧圧力分布Pは紙種などの応じて適宜設定されるべきものであるが、例えば紙ウェブ搬送方向上流側(図6中右側)ほど面圧が大きくなるような分布としたいような場合には、図6に示す加圧シュー13では、紙ウェブ搬送方向に対し加圧圧力分布が一定となるため、この加圧シュー13を他の加圧シューに変更しなければならない。このため、紙種が変更される毎に加圧シュー13を交換しなければならなかったり、また、加圧シュー13を予め紙種毎に用意しておかねばならなかったりする欠点がある。
【0012】
本発明はこのような課題に鑑み創案されたもので、煩雑な調整作業が不要で、紙ウェブの仕様にかかわらず、光沢度、表面強度、嵩高、平滑度などの要求を満たした高品質の紙を製造できるようにした、カレンダ処理装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明のカレンダ処理装置は、走行する紙ウェブを加熱するヒートロールと、該紙ウェブに面接触して該ヒートロールとのニップ部で該紙ウェブを挟み加圧するシュープレスロールとをそなえた、紙のカレンダ処理装置であって、該シュープレスロールが、該紙ウェブの走行と同期して回転する円筒形状の可撓性ジャケットと、該可撓性ジャケットの内部に配置され該紙ウェブの走行方向に沿って複数並設された加圧シューと、該ニップ部において該可撓性ジャケットを介して該加圧シューを該紙ウェブに対し所定の面圧で加圧する加圧手段とをそなえて構成されていることを特徴としている。
【0014】
請求項2記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項1記載の装置において、該加圧手段が、上記の複数の加圧シューに対し個別に設けられ、上記の所定の面圧が該加圧シュー毎に個別に設定されることを特徴としている。
請求項3記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項2記載の装置において、該加圧手段が、上記の所定の面圧を可変制御できるように構成されたことを特徴としている。
【0015】
請求項4記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項1〜3の何れかの項に記載の装置において、該面圧が、該走行方向で上流側にある加圧シューでは比較的高い圧力に設定される一方、該走行方向で下流側にある加圧シューでは比較的低い圧力に設定されていることを特徴としている。
請求項5記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項1記載の装置において、該加圧手段が、上記の複数の加圧シューに対し共用して1つ設けられ、該可撓性ジャケットに当接して該紙ウェブを加圧する該加圧シューの加圧面積が、該加圧シュー毎に異なる面積で設定されたことを特徴としている。
【0016】
請求項6記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項5記載の装置において、該加圧面積が、該走行方向で上流側にある加圧シューでは比較的小さな面積に設定される一方、該走行方向で下流側にある加圧シューでは比較的大きな面積に設定されていることを特徴としている。
請求項7記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項1〜6の何れかの項に記載の装置において、上記の複数の加圧シューの相互間に、該加圧シューと該可撓性ジャケットとの摺接部に冷却用液体を噴射する冷却用液体噴射手段がそなえられていることを特徴としている。
【0017】
請求項8記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項1〜7の何れかの項に記載の装置において、該加圧シューの該可撓性ジャケットに当接する面に冷却用液体が供給される凹部がそなえられていることを特徴としている。
請求項9記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項1〜8の何れかの項に記載の装置において、該加圧手段が、圧力媒体が供給される圧力室と、一端を該圧力室に進退移動可能に挿設されたピストンとをそなえて構成され、該加圧シューが、該ピストンの他端に取り付けられたことを特徴としている。
【0018】
請求項10記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項9記載の装置において、該加圧シューが、鉛直方向に対し傾斜した方向で該ニップ部に加圧されることを特徴としている。
請求項11記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項9記載の装置において、該加圧シューが、該ヒートロール及び該シューロールの回転軸と平行な軸線を中心に揺動可能に該ピストンの他端に取り付けられたことを特徴としている。
【0019】
請求項12記載の本発明のカレンダ処理装置は、請求項1〜11の何れかの項に記載の装置において、上記の各加圧シューの該走行方向に対する寸法がそれぞれ10mm〜50mmの範囲で設定されていることを特徴としている。
請求項13記載の本発明のカレンダ処理方法は、ヒートロールに紙ウェブを加圧して該紙ウェブにカレンダ処理を施す、紙のカレンダ処理方法であって、比較的高い圧力且つ比較的短い期間で該紙ウェブを該ヒートロールに加圧する第1のステップと、比較的低い圧力で且つ比較的長い期間で該紙ウェブを該ヒートロールに加圧する第2のステップとをそなえて構成されていることを特徴としている。
【0020】
【発明の実施形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。
(1)第1実施形態
図1及び図2は本発明の第1実施形態としてのシューカレンダ処理装置について示す図であって、図1はその要部構成を示す側面視による模式的断面図、図2はその要部構成を示す正面視による模式的断面図であって図1のA―A断面図である。なお、従来技術で既に説明した部品については同一の符号を付しその説明を省略する。
【0021】
本発明の第1実施形態としてのシューカレンダ処理装置は、上述した従来技術に対し、図1に示すように複数(ここでは3つ)の加圧シュー51,52,53が紙ウェブ1の搬送方向Bに沿って並設されている点に大きな特徴がある。
以下、本シューカレンダ処理装置について具体的に説明する。本シューカレンダ処理装置は、上述した従来技術と同様に、紙ウェブ1のパスラインを挟んで相互に対向して配設されるヒートロール20とシューロール10とをそなえて構成され、ヒートロール20は紙ウェブ1のパスラインの上方に配設され、シューロール10は紙ウェブ1のパスラインの下方に配設されている。
【0022】
シューロール10は、中空の円筒形状に形成され紙ウェブ1と同期して回転する可撓性ジャケット11と、この可撓性ジャケット11の内部に配設された加圧シュー51,52,53及びこれらの加圧シュー51,52,53の支持体50とをそなえて構成されている。各加圧シュー51,52,53はそれぞれピストン59の先端に固設され、各ピストン59は、支持体50に紙ウェブ搬送方向Bに沿って並設された油圧室54,55,56に鉛直方向に進退移動可能にそれぞれ挿設されている。
【0023】
これらの油圧室54,55,56には、図示しない油圧供給源から圧力伝達媒体として油が供給されるようになっており、油圧室54,55,56の油圧によりピストン59を介して加圧シュー51,52,53はヒートロール20とシューロール10とのニップ部に押圧されるようになっている。このように、油圧室54,55,56及びピストン59から本装置の加圧手段が構成されている。
【0024】
また、各油圧室54,55,56には、それぞれ別々の油圧供給路57に接続されている。各油圧供給路57は、例えば、図示しない圧力調整弁を介して上記油圧供給源に接続されており、上記圧力調整弁を制御することにより油圧室54,55,56毎に油圧を可変制御できるようになっている。
ここでは、各油圧室54,55,56の油圧をそれぞれ個別に制御することにより、加圧シュー51,52,53により紙ウェブ1に作用させる面圧を、下流側になるほど減少させるようにしている。
【0025】
なお、図1中の一点鎖線は、図6中の一点鎖線と同様に紙ウェブ1が加圧シュー51,52,53によりそれぞれ受ける加圧圧力分布P,P,Pを示しており、図示するように各加圧シュー51,52,53に対応する加圧圧力分布P,P,Pは相互に異なる分布形状となっており(例えば加圧圧力分布Pはウェブ搬送方向中央で凸形状となっているのに対し、加圧圧力分布P,Pは平坦な形状となっている)、また上述したように上流にある加圧シューほど全体的に高い面圧となっている(P>P>P)。
【0026】
加圧シュー51,52,53及びその周辺の構成を、中央の加圧シュー52を代表にさらに説明すると、図2に示すように、加圧シュー52は、シューロール10の軸方向に対しては分割されない一体ものとして構成され、これに対し、ここでは、ピストン59や油圧室55は上記軸方向に対して複数に分割された構成となっている。つまり、シューロール10の略全幅に渡る長尺の加圧シュー52に対し、ピストン59及び油圧室55が複数そなえられた構成となっているのである。これらの軸方向に並ぶ複数の油圧室55は、同一の油圧供給路57から油が供給されるようになっており、その室内は略同じ油圧とされる。勿論、加圧シュー52に対し、シューロール10の略全幅に渡るピストン59及び油圧室55を一つそなえる構成としても良い。
【0027】
また、図1に示すように、加圧シュー51,52,53と可撓性ジャケット11との摺接部に冷却用の油(冷却用液体)を噴射する冷却液体噴射手段として、加圧シュー51,52,53の上流側及び下流側には冷却油噴射ノズル34がそれぞれ配設され、さらに加圧シュー51,52,53の各相互間には、冷却油噴射ノズル58がそれぞれ配設されている。
【0028】
ここで、各加圧シュー51,52,53のニップ長さSB,SB,SBは、例えばそれぞれ5mm〜100mmの範囲で設定されるが、比較的短くなるように10mm〜50mmの範囲で設定するのが以下の点で好ましい。
つまり、ニップ長さが短いことから、従来技術として上述したロングニップタイプのシューロールに較べ面圧を高くしても加圧線圧が過大となることがなく、各加圧シュー51の面圧を十分な高さに設定することが可能となる。また、加圧シュー51により紙ウェブ1に対し高い面圧が掛けられるのは僅かな時間となるので、表面強度を低下させることなく、紙ウェブを軟化させるとともに、高い平滑度及び光沢度が得られるようになる。
【0029】
さらに、加圧シュー51,52,53の相互間に上記冷却油噴射ノズル34を配設して冷却油の噴射供給するためのスペースを確保し易くなる点からも好ましい。
なお、各加圧シュー51,52,53のニップ長さSB,SB,SBは、それぞれ異なる寸法で設定しても良いし、勿論、同じ寸法で設定しても良い。
【0030】
また、ここでは、加圧シュー51,52,53の可撓性ジャケット11との各当接面に凹部60が設けられており、これらの各凹部60は、加圧シュー51,52,53及びピストン59内にそれぞれ形成された油路61により油圧室54,55,56とそれぞれ連通状態とされている。これにより、各油圧室54,55,56に供給された油の一部が冷却用として上記凹部60から、加圧シュー51,52,53と可撓性ジャケット11との摺接部に供給されるようになっている。
【0031】
本発明の第1実施形態としてのシューカレンダ処理装置は上述したように構成されているので、以下のような作用効果がある。
つまり、加圧シュー51,52,53により紙ウェブ1に作用させる面圧は、上流側の加圧シューほど高く設定され、また、従来のロングニップタイプのシューロールに対し、加圧シューを紙ウェブ走行方向Bに対し分割したような構成となって個々の加圧シュー51,52,53のニップ長さSB,SB,SB(特に最上流側の加圧シュー51のニップ長さSB)が短くなる。したがって、紙ウェブ1は、先ず最上流側の加圧シュー51により比較的高い面圧でヒートロール20に押圧されて効果的に加熱され軟化されるとともに、比較的高い面圧且つ僅かな時間での加圧により、紙ウェブ1の表面強度を保持しつつその光沢度及び平滑度を向上させることができる。
【0032】
次いで、この軟化した紙ウェブ1を、加圧シュー52,53により加圧シュー51による加圧よりも低い圧力で加圧され、これにより、紙ウェブが潰されず、嵩高で表面性のよい紙ウェブ1′を形成することができる。
また、紙ウェブ1の光沢度や平滑度を最適にするためのシューロール10とヒートロール20とのニップ圧力分布は、紙ウェブ1の紙種などに応じて適宜設定されるものであるが、油圧室54,55,56の油圧を制御して加圧シュー51,52,53の加圧量を個別に制御することにより、シューロール10とヒートロール20とのニップ圧力分布を調整することが可能となる。したがって、紙ウェブ1の仕様が変更される度に加圧シューを交換する必要があった従来技術に較べ、単に加圧シュー51,52,53の加圧力を個別に制御するだけで、紙ウェブ1の仕様に拘わらず紙ウェブ1の光沢度及び平滑度を良好な物に保持できる利点がある。
【0033】
また、加圧シュー51,52,53の前後又は相互間に配置された各冷却油噴射ノズル34,58から加圧シュー51,52,53と可撓性ジャケット11との間に噴射された冷却用油により、加圧シュー51,52,53と可撓性ジャケット11との摺接による発熱が冷却される。これにより、加圧シュー51,52,53と可撓性ジャケット11との焼き付きを防止でき、操業を安定して行なえるようになる。
【0034】
(2)第2実施形態
図3は本発明の第2実施形態としてのシューカレンダ処理装置の要部構成を示す模式的な側面図(一部断面を示す図)である。なお、従来技術又は第1実施形態で既に説明した部品については同一の符号を付しその説明を省略する。
図1に示す上記第1実施形態の装置では三個の加圧シュー51,52,53が紙ウェブ搬送方向Bに対し並べられていたのに対し、本実施形態のシューカレンダ処理装置は、図3に示すように、紙ウェブ搬送方向Bに対し二個の加圧シュー31,32が並べられている。また、特に大きく異なる点として、上記第1実施形態の装置では、加圧シュー51,52,53がそれぞれ鉛直方向に進退するように構成されていたのに対し、本実施形態のシューカレンダ処理装置では、上記加圧シュー31,32が鉛直方向に対し傾斜した方向に進退するように保持台30にセットされている点がある。ここでは、上記加圧シュー31,32はそれぞれヒートロール20の周面に対し垂直に紙ウェブ1を押圧できるように上記傾斜の角度が設定されている。勿論、この傾斜角度は種々の条件に応じて適宜決定されるもので、これに限定されない。
【0035】
そして、図3に一点鎖線で示す加圧シュー31の加圧圧力分布Pと加圧シュー32の加圧圧力分布Pとを見比べると分かるように、上記第1実施形態と同様に、上流側の加圧シュー31の面圧は比較的高く設定され、下流側の加圧シュー32の面圧は比較的低く設定されている。
また、上記第1実施形態と同様に、各加圧シュー31,32のニップ長さSB,SBは、一般的にそれぞれ5mm〜100mmの範囲に設定されるが、10mm〜50mmの範囲で比較的短く設定するのが好ましく、それぞれ異なる寸法で設定しても良いし、同じ寸法で設定しても良い。
【0036】
なお、図3中の符号33は、加圧シュー31,32と可撓性ジャケット11との摺接部に、冷却用油(冷却液体)を噴射する冷却用油噴射ノズル(冷却用液体供給手段)であり、加圧シュー31,32の間に配置されている。
この他の構成は上記第1実施形態と同様なので説明を省略する。
本発明の第2実施形態としてのシューカレンダ処理装置は上述したように構成されているので、上流側の加圧シュー31により高い面圧で紙ウェブ1をヒートロール20に押圧することで、表面強度の低下や嵩の低下が生じない内に紙ウェブ1を素早く昇温させるとともにその平滑度及び光沢度を向上させ、下流側の加圧シュー32により紙ウェブ1を低い面圧でヒートロール20に押圧することで嵩高で表面性(平滑性及び光沢性)の良好な紙ウェブ1′がえられるようになる。
【0037】
(3)第3実施形態
図4は本発明の第3実施形態としてのシューカレンダ処理装置の要部構成を示す模式的な側面図(一部断面を示す図)である。なお、従来技術又は上記各実施形態で既に説明した部品については同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態のシューカレンダ処理装置は、図4に示すように上記各実施形態と同様に、可撓性ジャケット11内に複数(ここでは2つ)の加圧シュー41,42が紙ウェブ1の搬送方向Bに沿って並設されている。これらの加圧シュー41,42は、可撓性ジャケット11内のピストン44の先端に継ぎ手45を介して取り付けられており、ヒートロール20やシューロール10の回転軸と平行な軸を中心に揺動可能になっている。加圧シュー41のニップ長さSBは、加圧シュー42のニップ長さSBよりも短く設定されており、可撓性ジャケット11に対する加圧シュー41,42の加圧面積は、上流側の加圧シュー41では比較的小さく設定され、下流側の加圧シュー42では比較的大きく設定されている。上記各実施形態と同様に、各加圧シュー41,42のニップ長さSB,SBは、一般的にそれぞれ5mm〜100mmの範囲に設定されるが、10mm〜50mmの範囲で比較的短く設定するのが好ましい。
【0038】
また、上記ピストン44は支持体40の油圧室40aに挿入され、また、この油圧室40a内には外部の油圧供給系統から所定の油圧が供給されるようになっており、加圧シュー41,42は、油圧室40aの油圧によりロール10,20のニップに対し押圧されるようになっている。
なお、図4中の符号43は、加圧シュー31に摺接して発熱した可撓性ジャケット11を加圧シュー31,32の間で冷却するための冷却用油(冷却液体)を噴射する冷却用油噴射ノズル(冷却用液体供給手段)である。
【0039】
本発明の第3実施形態としてのシューカレンダ処理装置はこのように構成されているので、加圧シュー41,42は、当接するヒートロール20の周面に沿って傾斜するようになり、紙ウェブ1が効果的にヒートロール20により加熱される。この時、加圧シュー41,42は同一のシリンダ44に取り付けられていることから、加圧シュー41,42には略同じ線圧が作用することとなるが、加圧シュー41の加圧面積に対し加圧シュー42の加圧面積が大きく設定されていることから、加圧圧力分布P,Pにより示されるように、加圧面圧は、上流側の加圧シュー41では比較的大きくなり、下流側の加圧シュー42では比較的小さくなる。
【0040】
したがって、本実施形態のシューカレンダ処理装置によれば、上記各実施形態と同様に、平滑度及び光沢度が良好であるとともに、嵩高で表面性の良好な紙ウェブ1′がえられるようになる。
(4)その他
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。例えば、加圧シューの設置数や形状は紙種などの様々な条件に応じて適宜決定されるものである。
【0041】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、シュープレスロールの可撓性ジャケット内に加圧シューを紙ウェブの走行方向に沿って複数並設することにより、加圧シュー毎に面圧を変化させて上記走行方向に対する加圧圧力分布を調整できるようになり、また、従来のカレンダ処理装置の加圧シューを紙ウェブ走行方向に対し分割したような構造となって、加圧シュー一個当たりの紙ウェブ走行方向に対する寸法、つまりニップ幅が狭くなり、加圧シューの面圧を従来よりも増大することが可能となる。
【0042】
これにより、前半の(紙ウェブ走行方向上流側の)加圧シューの面圧を比較的高く設定するとともに後半の(紙ウェブ走行方向下流側の)加圧シューの面圧を比較的低く設定して、前半の加圧シューにより表面強度の低下や嵩の減少が生じる前に紙ウェブを素早く昇温して軟化するとともに平滑度及び光沢度を向上させ、軟化したこの紙ウェブを、後半の加圧シューにより低圧力で加圧して嵩高で表面性の良好な紙ウェブが得られるようになる。
【0043】
つまり、光沢度、表面強度、嵩高、平滑度などの要求を満たした高品質の紙を製造することが可能なる。
また、紙ウェブの走行方向に並べられた加圧シューの相互間に可撓性ジャケットに向けて冷却用液体を供給する冷却用液体供給手段がそなえられていることから、加圧シューと可撓性ジャケットとの摺接部が発熱して高温となることを万遍なく抑制でき、加圧シュー及び可撓性ジャケットにおける焼き付きや熱変形などを防止でき、操業を安定して行なえるようになる。
【0044】
さらに、加圧手段を加圧シューに対し個別に設け、加圧シューにより紙ウェブに作用させる面圧をこれらの加圧手段により可変制御できるように構成すれば、ヒートロールとシューロールとのニップ部における紙ウェブに対する加圧圧力分布を紙仕様に応じて容易に調整できるようになり、煩雑な調整作業が不要で、紙ウェブの仕様にかかわらず、光沢度、表面強度、嵩高、平滑度などの要求を満たした高品質の紙を製造することが可能なる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施形態としてのシューカレンダ処理装置の要部構成を示す側面視による模式的断面図である。
【図2】本発明の第1実施形態としてのシューカレンダ処理装置の要部構成を示す正面視による模式的断面図であって図1のA―A断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態としてのシューカレンダ処理装置の要部構成を示す模式的な側面図(一部断面を示す図)である。
【図4】本発明の第3実施形態としてのシューカレンダ処理装置の要部構成を示す模式的な側面図(一部断面を示す図)である。
【図5】従来のシューカレンダ処理装置の構成を示す側面視による模式的断面図である。
【図6】従来のシューカレンダ処理装置のニップ部を図5よりも拡大して示す側面視による模式的断面図である。
【符号の説明】
1 紙ウェブ(カレンダ処理前)
1′ 紙ウェブ(カレンダ処理後)
10 シューロール
11 可撓性ジャケット
20 ヒートロール
30,40,50 保持台
34 冷却油噴射ノズル(冷却液体噴射手段)
31,32,41,42,51,52,53 加圧シュー
40a,54,55,56 油圧室
44,35,59 ピストン
45 継ぎ手
57 油圧供給路
60 凹部
SB〜SB7 ニップ長さ
〜P7 加圧圧力分布

Claims (13)

  1. 走行する紙ウェブを加熱するヒートロールと、該紙ウェブに面接触して該ヒートロールとのニップ部で該紙ウェブを挟み加圧するシュープレスロールとをそなえた、紙のカレンダ処理装置であって、
    該シュープレスロールが、
    該紙ウェブの走行と同期して回転する円筒形状の可撓性ジャケットと、
    該可撓性ジャケットの内部に配置され該紙ウェブの走行方向に沿って複数並設された加圧シューと、
    該ニップ部において該可撓性ジャケットを介して該加圧シューを該紙ウェブに対し所定の面圧で加圧する加圧手段とをそなえて構成されている
    ことを特徴とする、紙のカレンダ処理装置。
  2. 該加圧手段が、上記の複数の加圧シューに対し個別に設けられ、上記の所定の面圧が該加圧シュー毎に個別に設定される
    ことを特徴とする、請求項1記載の紙のカレンダ処理装置。
  3. 該加圧手段が、上記の所定の面圧を可変制御できるように構成された
    ことを特徴とする、請求項2記載の紙のカレンダ処理装置。
  4. 該面圧が、
    該走行方向で上流側にある加圧シューでは比較的高い圧力に設定される一方、該走行方向で下流側にある加圧シューでは比較的低い圧力に設定されている
    ことを特徴とする、請求項1〜3の何れかの項に記載の紙のカレンダ処理装置。
  5. 該加圧手段が、上記の複数の加圧シューに対し共用して1つ設けられ、
    該可撓性ジャケットに当接して該紙ウェブを加圧する該加圧シューの加圧面積が、該加圧シュー毎に異なる面積で設定された
    ことを特徴とする、請求項1項に記載の紙のカレンダ処理装置。
  6. 該加圧面積が、
    該走行方向で上流側にある加圧シューでは比較的小さな面積に設定される一方、該走行方向で下流側にある加圧シューでは比較的大きな面積に設定されていることを特徴とする、請求項5記載の紙のカレンダ処理装置。
  7. 上記の複数の加圧シューの相互間に、該加圧シューと該可撓性ジャケットとの摺接部に冷却用液体を噴射する冷却用液体噴射手段がそなえられている
    ことを特徴とする、請求項1〜6の何れかの項に記載の紙のカレンダ処理装置。
  8. 該加圧シューの該可撓性ジャケットに当接する面に冷却用液体が供給される凹部がそなえられている
    ことを特徴とする、請求項1〜7記載の紙のカレンダ処理装置。
  9. 該加圧手段が、圧力媒体が供給される圧力室と、一端を該圧力室に進退移動可能に挿設されたピストンとをそなえて構成され、
    該加圧シューが、該ピストンの他端に取り付けられた
    ことを特徴とする、請求項1〜8の何れかの項に記載の紙のカレンダ処理装置。
  10. 該加圧シューが、鉛直方向に対し傾斜した方向で該ニップ部に加圧される
    ことを特徴とする、請求項9記載の紙のカレンダ処理装置。
  11. 該加圧シューが、該ヒートロール及び該シューロールの回転軸と平行な軸線を中心に揺動可能に該ピストンの他端に取り付けられた
    ことを特徴とする、請求項9記載の紙のカレンダ処理装置。
  12. 上記の各加圧シューの該走行方向に対する寸法がそれぞれ10mm〜50mmの範囲で設定されている
    ことを特徴とする、請求項1〜11の何れかの項に記載の紙のカレンダ処理装置。
  13. ヒートロールに紙ウェブを加圧して該紙ウェブにカレンダ処理を施す、紙のカレンダ処理方法であって、
    比較的高い圧力且つ比較的短い期間で該紙ウェブを該ヒートロールに加圧する第1のステップと、
    比較的低い圧力且つ比較的長い期間で該紙ウェブを該ヒートロールに加圧する第2のステップとをそなえて構成されている
    ことを特徴とする、紙のカレンダ処理方法。
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