JP2004143557A - 金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極 - Google Patents

金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極 Download PDF

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Abstract

【課題】この発明は、無機溶融塩を電解浴として電気分解法により酸化チタン(TiO)を金属チタン(Ti)に還元して金属チタンを工業的に有利に量産することができる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極を提供する。
【解決手段】反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元する金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、上記炭素陽極が、粒子径0.074mm以下が15重量%以上25重量%以下であって粒子径3.0mm以上が22重量%以上37重量%以下の粒度分布を有する骨材コークスの一次焼成炭素材で形成されている。
【選択図】    図5

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、無機溶融塩を電解浴として電気分解法により酸化チタン(TiO)を金属チタン(Ti)に還元して金属チタンを工業的に有利に量産することができる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】国際公開第99/64638号パンフレット
【非特許文献1】竹内 栄及び渡辺 治,日本金属学会,1964年,第28巻,第9号,第549〜554頁
【0003】
金属チタンは、次々とその優れた性質が明らかにされ、航空・宇宙の分野だけでなく、近年では、カメラ、めがね、時計、ゴルフクラブ等の民生品の分野にも利用されるようになり、更には、建材や自動車の分野でもその需要が期待されている。そして、この金属チタンの製造方法については、現在、工業的に行われている方法は、半導体用高純度チタンを製造するために極めて小規模にチタン精錬を行う電解法を除き、いわゆるクロール法のみとなっている。
【0004】
しかしながら、このようなクロール法による金属チタンの製錬においては、酸化チタンを製造原料とするものの、この酸化チタンを一旦低沸点の四塩化チタンに変えてから還元するために、その製造工程が長くなり、また、スポンジ状金属チタンの製造過程で高温減圧下の真空分離が不可欠であり、更に、製造されるスポンジ状金属チタンが大きな一つの塊として得られるので製品チタンインゴットを製造する際にはこのスポンジ状金属チタンの破砕・粉砕処理が不可欠になり、しかも、スポンジ状金属チタンはその中心部と外皮部とで固溶酸素濃度が大きく異なるために、製品チタンインゴットの用途によってはその破砕・粉砕処理で中心部からのものと外皮部とからのものとを分別しなければならず、このようなことが結果として金属チタンの製造コストを極めて高くする大きな要因になっている。
【0005】
そこで、従来においても、金属チタンの需要の拡大を反映し、上記クロール法に代わる幾つかの金属チタンの製錬方法が提案されており、代表的には、反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを金属チタンに還元する方法が知られている。
【0006】
例えば、竹内 栄及び渡辺 治、日本金属学会第28巻(1964)第9号第549〜554頁には、黒鉛製ルツボを陽極とし、その中央部にモリブデン製電極を陰極として配置し、ルツボ内には電解浴を形成する無機溶融塩として塩化カルシウム(CaCl)、酸化カルシウム(CaO)及び酸化チタン(TiO)からなる900〜1100℃の混合溶融塩を入れ、不活性ガスのアルゴン(Ar)の雰囲気下に電解浴中で酸化チタンを電解し、生成したチタンイオン(Ti4+)をモリブデン製電極の表面に析出させて金属チタンを製造する方法が記載されている。
【0007】
また、WO 99/64638には、反応容器としてチタン製ルツボを使用し、このルツボ内には電解浴を形成する無機溶融塩として塩化カルシウム(CaCl)の無機溶融塩を入れ、この電解浴中には陽極として黒鉛製電極を、また、陰極として酸化チタン製電極をそれぞれ配置し、上記電解浴中で黒鉛製電極と酸化チタン製電極との間に電圧を印加して陰極の酸化チタン製電極から酸素イオン(O2−)を引き抜き、この引き抜かれた酸素イオンを陽極の黒鉛製電極で炭酸ガス(CO)及び/又は酸素ガス(O)にして放出することにより、酸化チタン製電極それ自体を還元して金属チタンに変換する方法が記載されている。
【0008】
更に、本発明者らにおいては、酸化チタン(TiO)を熱還元して金属チタン(Ti)を製造する金属チタンの製錬方法であって、塩化カルシウム(CaCl)と酸化カルシウム(CaO)及び/又はカルシウム(Ca)からなる混合溶融塩で電解浴を構成し、この電解浴を混合溶融塩中の酸化カルシウム及び/又は塩化カルシウムを電気分解する電解帯域と酸化チタンを還元する還元帯域とに区画し、上記電解帯域では混合溶融塩中の酸化カルシウム及び/又は塩化カルシウムを電気分解して還元性分解生成物であるカルシウム(Ca)及び1価カルシウムイオン(Ca)を生成せしめ、また、上記還元帯域ではこの還元帯域に導入された酸化チタンを上記電解帯域で生成したカルシウム及び1価カルシウムイオンにより還元すると共に、この酸化チタンの還元で得られたスポンジ状金属チタン(Ti)の脱酸素を行うようにした金属チタンの製錬方法及び製錬装置を提案している(特願2002−210,537号)。
【0009】
上記3つの方法において共通している点は、無機溶融塩の電気分解において、無機溶融塩中に溶け込む酸素イオン(O2−)を炭素陽極が捕捉し、この炭素陽極と酸素イオン(O2−)とが反応し、また、炭素陽極自体が酸化、消耗されることで酸素イオン(O2−)を炭酸ガス(CO)、一酸化炭素ガス(CO)、酸素ガス(O)の全部又は一部から成る混合気体として系外に放出する点である。そのため、これらの方法に用いる炭素陽極は一般に消耗性炭素陽極と呼ばれている。
【0010】
ところが、消耗性炭素陽極を用いる金属チタン製錬においては、消耗性炭素陽極に起因する問題を抱えている。例えば、竹内・渡辺の論文に記載の方法においては、酸化チタンを電気分解した際に発生する酸素イオン(O2−)と陽極である黒鉛製ルツボとの反応によって炭酸ガス(CO)や一酸化炭素ガス(CO)を発生し、この黒鉛製ルツボに取り囲まれたモリブデン製電極に析出した金属チタンは、絶えずこれらの炭酸ガス等に曝されることになる。また、炭酸ガス等は溶融塩中に含まれるカルシウム(Ca)との反応により炭素を発生させ、析出した金属チタンはこの炭素にも曝されることになる。析出した金属チタンは、炭酸ガス等や炭素と接触すると、高温下での良反応性により直ちにチタンカーバイドや酸化チタンとなり、或いは金属チタンの固溶炭素や固溶酸素を生じさせてしまう。
このような問題は、WO 99/64638記載の方法や本発明者らが提案した方法においても同様に起こり得る。すなわち、消耗性炭素陽極の表面で発生する炭酸ガス等は、還元された金属チタンと溶融塩中で接触すると、高温下における良反応性により、直ちにチタンカーバイドや酸化チタン、あるいは固溶炭素、固溶酸素を生じ、得られる金属チタンの品質を低下させてしまう虞がある。さらには、発生した炭素が溶融塩中に懸濁することで、還元された金属チタンと物理的に接触し、金属チタンの炭素による汚染を引き起こすのみならず、場合によっては、これらの炭素が溶融塩中に浮遊し、金属チタン製錬の操業自体を阻害する虞もある。
【0011】
一方、消耗性炭素陽極が不純物として鉄、硫黄、バナジウム等の灰分を含有している場合は、この消耗性炭素陽極の反応や消耗により、これらの不純物が無機溶融塩中に移行し、その結果、陰極付近で酸化チタンの還元が行われる際に金属チタン中にこれらの不純物が取り込まれ、得られる金属チタンの品質を低下させる問題もある。
【0012】
そのため、この不純物対策として、実際に使用する消耗性炭素陽極については、一般に、二次焼成を行ったグラファイト成形材が使用される。この二次焼成を行ったグラファイト成形材を得るためには、先ず、骨材コークスの粒間に生じた空隙にバインダーピッチが入り骨材コークスを結合したものを約1300〜1400℃で一次焼成して一次焼成炭素材を製造する。この一次焼成炭素材では、バインダーピッチが焼成されてコークス化しバインダーコークスとなる。次に、この一次焼成炭素材を更に2400℃以上の高温で二次焼成して骨材コークスとバインダーコークスともにグラファイト化することで、上記グラファイト成形材が得られる。このグラファイト成形材は高温焼成を行うため、骨材コークスとバインダーコークスがほぼ同一の温度で焼成されて比較的均一な特性を示し、また、骨材コークスとバインダーコークス中に含有される灰分がガス化して除去されるため、炭素材料中の不純物が少なく、消耗性炭素陽極として使用しても無機溶融塩中への汚染物質の移行を抑えることができる。
【0013】
しかしながら、この二次焼成については、一次焼成炭素材をさらに焼成する必要があるため、処理のための工程数が増加すると共に、高温焼成のための大きな熱エネルギーを必要とし、一次焼成炭素材と比べ製造費用が格段に高くなる。したがって、金属チタン製錬を工業的に行う場合、このような二次焼成を行ったグラファイト成形材を消耗品として使用することについてコストの面で問題がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明者らは、反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元して金属チタンを製造する金属チタンの製錬において、コストを抑えて工業的に有利に金属チタンを量産することができる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極について鋭意検討した結果、粒度分布、か焼温度、素材を制限した骨材コークスの一次焼成炭素材で炭素陽極を形成することで、コスト的に有利な一次焼成炭素材を用いた場合でも、得られる金属チタンの炭素汚染及びその他の不純物による汚染を低減し、得られる金属チタンの品質を低下させることがなく、また、金属製錬における操業上の問題も回避することができることを見出した。また、炭素陽極の形状を炭素陽極で発生する気体の浮上領域が制限できるようにすることで、析出した金属チタンの汚染を可及的に防止することができることを見出し、本発明を完成した。
【0015】
従って、本発明の目的は、工業的に有利に金属チタンの製錬を行うことができる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、消耗性炭素陽極から生じる不純物や遊離炭素等に起因して金属チタンが汚染されることのない金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元する金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、上記炭素陽極が、粒子径0.074mm以下が15重量%以上25重量%以下であって粒子径3.0mm以上が22重量%以上37重量%以下の粒度分布を有する骨材コークスの一次焼成炭素材で形成されていることを特徴とする金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極である。
【0017】
また、本発明は、反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元する金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、上記炭素陽極が、か焼温度800℃以上1200℃以下の骨材コークスの一次焼成炭素材で形成されていることを特徴とする金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極である。
【0018】
更に、本発明は、反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元する金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、上記炭素陽極は、少なくとも電気分解で用いる陰極と平行に相対面すると共に無機溶融塩中に浸漬する側面に、鉛直方向に対して1〜45度の角度でオーバーハング状に傾斜した案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内することを特徴とする金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極である。
【0019】
更にまた、本発明は、反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元する金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、上記炭素陽極は、少なくとも電気分解で用いる陰極と平行に相対面すると共に無機溶融塩中に浸漬する底面に、鉛直方向に対して80〜90度の角度の案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内することを特徴とする金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極である。
【0020】
本発明において、本発明の消耗性炭素陽極を用いる金属チタン製錬については、反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを金属チタンに還元することで金属チタンを製造する金属チタンの製錬であればよく、その方法については特に制限されることはないが、具体例としては、先の出願にて本発明者らが提案した方法(特願2002−210537号)等を挙げることができる。
【0021】
本発明において、金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極は、粒子径0.074mm以下が15重量%以上25重量%以下であって粒子径3.0mm以上が22重量%以上37重量%以下、好ましくは、粒子径0.074mm以下が17重量%以上22重量%以下であって粒子径3.0mm以上が25重量%以上35重量%以下の粒度分布を有する骨材コークスの一次焼成炭素材で形成された消耗性炭素陽極であるのがよい。骨材コークスの粒度分布を制御すると、粉体の充填特性に影響を及ぼすため、得られる一次焼成炭素材の嵩比重、強度、電気的特性、熱特性等の性能に直接関係してくる。すなわち、骨材コークスの粒度分布を上記のような範囲とすることで、得られる一次焼成炭素材の嵩比重が大きくなり、消耗性炭素陽極としての曲げ強度に優れたものとなり、金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極として用いた場合に、構造物としての強度的性能、電極としての電気的性能の点で有利となる。
【0022】
また、骨材コークスの粒度分布を上記のような範囲内にすると、骨材コークス及びバインダーコークスが電気分解によって消耗される際の割合を示す電解試験選択酸化度が小さくなり、優れた性能を示す。
【0023】
この電解試験選択酸化度は、苛性ソーダ(NaOH)を加えた水溶液中で水の電気分解を実施し、実際の電気分解に使用した通電量から炭酸ガス発生による消耗性炭素陽極の消耗重量を算出し、その重量と乾燥後の実際の重量との比較で消耗性炭素陽極から脱落する脱落量を計算し、選択酸化の度合いを測定するものである。溶融塩中での電気分解に対し、熱間と冷間とでの温度の違いが存在するが、電気分解によって電気的に消耗性炭素陽極の炭素が消耗する点においては両者の傾向が一致するため、同一水溶液系での試験結果の比較が可能である。この選択酸化度が小さいと、溶融塩の電気分解中に炭素陽極の酸化反応が均一に行われることを意味し、選択酸化度が大きいと、骨材コークス及びバインダーコークスが電気分解によって消耗する際にバインダーコークスが優先的に酸化し消耗することを意味する。この選択消耗酸化が生じると、消耗されない未消耗炭素部分は次第に他の炭素陽極部分との結合が緩やかとなり、最終的には脱落して遊離炭素や浮遊炭素となる。したがって、上記選択酸化度が小さく優れた性能を示すことで、バインダーコークスが選択的に酸化・消耗されることがないので、骨材コークスの脱落による遊離炭素や浮遊炭素の発生が防止でき、得られる金属チタンの炭素による汚染を可及的に防ぐことができる。
【0024】
また、骨材コークスの粒度分布を本発明のような上記範囲とすると、炭酸ガスによる炭素の酸化の度合いを示すCO酸化消耗速度及びCO酸化全消耗量が小さく優れた性能を示す。このCO酸化消耗速度及びCO酸化全消耗量が小さく優れた性能を示すことで、炭素陽極表面で電気分解において発生する炭酸ガスが当該表面に沿って浮上する際に、再び炭素陽極表面を酸化消耗させてしまう可能性が低くなる点で有利である。これにより、二次的に発生する遊離炭素等による金属チタンの炭素汚染の低減、及び炭素陽極にかかる費用の削減等の点で有利となる。
【0025】
したがって、本発明において、骨材コークスの粒度分布について、粒子径0.074mm以下が15重量%以上25重量%以下であって粒子径3.0mm以上が22重量%以上37重量%以下の粒度分布を有する骨材コークスの一次焼成炭素材で形成された消耗性炭素陽極を金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極として用いると、無機溶融塩の電気分解により溶融塩中に発生する遊離炭素や浮遊炭素の発生を可及的に抑えることができ、得られる金属チタンの炭素による汚染を防止することができる。また、遊離炭素等が炭素陽極と陰極との間を短絡して金属チタン製錬の操業を阻害するといった問題を回避することができる。上記範囲については、粒子径0.074mm以下が17重量%以上22重量%以下であって粒子径3.0mm以上が25重量%以上35重量%以下の粒度分布を有する骨材コークスであれば、下記で説明する骨材コークスのか焼温度に影響されることなく、得られる一次焼成炭素材の選択酸化度、嵩比重、曲げ強度、電気比抵抗、CO酸化消耗速度及びCO酸化全消耗量等の性能において優れたものとすることができ、金属チタン製錬に用いる消耗性炭素陽極として用いた場合に、得られる金属チタンが遊離炭素等による汚染を可及的に低減することができ、工業的に有利に金属チタンを製造することができる。
【0026】
また、本発明における骨材コークスのか焼温度は、800℃以上1200℃以下、好ましくは950℃以上1100℃以下であるのがよい。骨材コークスのか焼温度が高くなれば、嵩比重、曲げ強度は大きくなり、反対に電気比抵抗、CO酸化消耗速度、CO酸化全消耗量は小さくなる。これは、骨材コークスのか焼温度を変えることにより、骨材コークスがより緻密になってその特性が変化するためと考えられ、同じ粒度分布を有する骨材コークスであっても、一次焼成炭素材を形成した場合に、その全体としての特性が変化することによると考えられる。また、骨材コークスのか焼温度が低くなれば、骨材コークスとバインダーコークスとの耐酸化性の差が少なくなることから、電解試験選択酸化度が小さく優れた性能を示す。このような骨材コークスの一次焼成炭素材で形成した消耗性炭素陽極では、上述したように、バインダーコークスが選択的に酸化されることがないので、骨材コークスの脱落を防止することができ、遊離炭素等による金属チタンの汚染を可及的に低減することができる。
【0027】
したがって、骨材コークスのか焼温度が800℃より低い場合には、この骨材コークスの一次焼成炭素材で形成した消耗性炭素陽極では強度の点で不足し、反対にか焼温度が1200℃より高いと選択酸化度が大きくなり過ぎて、溶融塩中に発生する遊離炭素や浮遊炭素の量が増加して、得られる金属チタンの汚染を引き起こしてしまう点で問題となる。骨材コークスのか焼温度を950℃以上1100℃以下であれば、骨材コークスの粒度分布に影響されることなく、得られる一次焼成炭素材の選択酸化度、嵩比重、曲げ強度、電気比抵抗、CO酸化消耗速度及びCO酸化全消耗量等の性能において優れたものとすることができ、金属チタン製錬に用いる消耗性炭素陽極として用いた場合、得られる金属チタンが遊離炭素等による汚染を可及的に低減することができ、工業的に有利に金属チタンを製造することができる。尚、このか焼温度については、一次焼成工程における焼成温度と近いほど、骨材コークスの特性と一次焼成後のバインダーコークスの特性が近づき、全体の品質が均一になり、上記の性能がそれぞれ優れたものとなる点でより有利である。
【0028】
また、本発明における骨材コークスは、石炭系コークスであるのがよい。一般工業的に汎用される石油系コークスは、石油を原料としているため、鉄、硫黄、バナジウム等の成分を含むが、石炭系コークスでは、石油系コークスと比べてこれらの成分が少なく、骨材コークスの一次焼成炭素材から形成する本発明の消耗性炭素陽極では、この骨材コークスは石炭系コークスであるのがよい。
【0029】
また、この石炭系コークスは、脱灰処理したものであるのがよい。この脱灰処理については、例えば、有機溶剤にピッチを溶解して不純物元素を除去する、或いは濃縮する方法である有機溶剤抽出法等を用いてピッチの段階で不純物を除去するコークスの製造方法であれば、その方法については特に制限はされないが、具体的には、製品として得られる石炭系コークスにおける不純物含有量が鉄50ppm以下、珪素100ppm以下、亜鉛20ppm以下まで純化処理を進めたものであるのがよい。脱灰処理した石炭系コークスであれば、脱灰処理を行わない石炭系コークスと比較して更に不純物成分を低減させることができ、この脱灰処理は、一次焼成炭素材を二次焼成によってグラファイト化するのに比べ、必要とする熱エネルギーが格段に少ないため、消耗性炭素陽極の製造コストの上昇を抑えることができる。
【0030】
また、本発明においては、一次焼成炭素材が、脱灰処理したピッチをバインダーピッチとして使用して得た一次焼成炭素材であるのがよい。このようなバインダーピッチとして、具体的には、先に説明した有機溶剤抽出法等を利用し、製品ピッチの不純物含有量が鉄50ppm以下、珪素100ppm以下、亜鉛20ppm以下まで純化処理を進めたものであるのがよい。このようなバインダーピッチを用いて得た一次焼成炭素材は、含まれる不純物を低減することができ、金属チタン製錬の消耗性炭素陽極とすれば、得られる金属チタンの汚染を防止することができる。
【0031】
本発明における消耗性炭素陽極については、上述した粒度分布の制御とか焼温度の制御とを組み合わせて得た骨材コークスの一次焼成炭素材で形成することで、金属チタンの製錬に用いた場合に得られる金属チタンの汚染を低減させる効果が向上する。また、このような骨材コークスを石炭系コークスとし、更にはこの石炭系コークスが脱灰処理したものとすることや、一次焼成炭素材のバインダーが脱灰処理したピッチを用いて得たものとすることを組み合わせることで、上記金属チタンの製錬における金属チタンの汚染の低減効果を一層向上させることができ、コスト的に有利な一次焼成炭素材で形成した消耗性炭素陽極であっても、得られる金属チタンの品質が低下することがなく、工業的に有利に金属チタンを製造することができる。
【0032】
本発明における金属チタン製錬に用いる消耗性炭素陽極の形状について、この消耗性炭素陽極は、少なくとも電気分解で用いる陰極と平行に相対面すると共に無機溶融塩中に浸漬する側面に、鉛直方向に対して1〜45度、好ましくは5〜30度の角度でオーバーハング状に傾斜した案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内するのがよい。例えば、電解浴中の陰極が電解浴縦方向に配設されている場合、本発明における消耗性炭素陽極は、その側面において上記陰極と平行に相対面すると共にこの側面が上記の角度を有した案内傾斜面であるのがよい。
【0033】
先に説明したように、無機溶融塩の電気分解において、消耗性炭素陽極の表面は炭酸ガス等の気体が発生する。この炭酸ガス等の気体は、発生初期には、炭素陽極の表面に対して垂直方向に噴出する方向の力を有さず、溶融塩との比重差によって浮上しようとする鉛直方向の力のみである。そのため、消耗性炭素陽極の表面に沿って気体を浮上させることで、この炭素陽極材の表面で発生した炭酸ガス等の気体は上記オーバーハング状に傾斜した案内傾斜面に沿って上昇し、気体の浮上領域を制限することができる。その結果、炭酸ガス等の気体は溶融塩中を不必要に拡散することなく系外に排出することができるため、析出した金属チタンの汚染を可及的に防止することができる。この炭素陽極の表面で発生する気体は、溶融塩中を浮上する際に、気液の摩擦、液粘度、対流その他の力によりブルーム状に広がるため、このオーバーハング状に傾斜する傾斜角度は大きいほどよいが、傾斜角度が45度を超えると、気体の持つ体積幅が常に気体の浮上する領域として存在するため傾斜の効果が認められなくなる。尚、本発明におけるこの消耗性炭素陽極の形状については、上記案内傾斜面を有する以外には、特に制限されることはなく、平板状、円錐状、四角錐状等の形状であってもよい。
【0034】
また、この消耗性炭素陽極の案内傾斜面について、例えば、電解浴を形成する無機溶融塩の一部を電気分解して還元性分解生成物を生成せしめ、生成した還元性分解生成物により酸化チタンを熱還元して金属チタンを製造する金属チタン製錬であって、上記無機溶融塩が塩化カルシウム(CaCl)と酸化カルシウム(CaO)及び/又はカルシウム(Ca)からなる混合溶融塩であり、かつ、この混合溶融塩により形成される電解浴が、上記電気分解に用いる陰極によって混合溶融塩中の酸化カルシウム及び/又は塩化カルシウムを電気分解する電解帯域と、電解帯域で生成したカルシウム(Ca)及び1価カルシウムイオン(Ca)により酸化チタンを還元する還元帯域とに区画されて金属チタンを製造する場合、本発明における消耗性炭素陽極は、少なくとも上記電解帯域内で上記陰極と平行に相対面すると共に混合溶融塩中に浸漬する側面に、鉛直方向に対して1〜45度、好ましくは5〜30度の角度でオーバーハング状に傾斜した案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内するのがよい。
【0035】
上記電気分解における電解浴での反応については、電解浴内の酸化チタン(TiO)はカルシウム(Ca)及び1価カルシウムイオン(Ca)により還元され、生成した固体の金属チタン(Ti)が異相として析出する。また、反応により生成した酸化カルシウム(CaO)はそのまま混合溶融塩中に溶解し、活量が低下して反応の駆動力が増加する。
TiO + 2Ca + 2e = Ti + 2Ca2+ + 2O2−……(1)
[O]Ti + Ca + e = Ca2+ + O2− ………………(2)
なお、Ca、e、Ca2+、及びO2−はそれぞれ混合溶融塩中に存在するイオン及び電子を示し、[O]Tiは生成した金属チタン中の固溶酸素を示す。式(1)は酸化チタンの還元反応を示し、式(2)は式(1)で金属チタンが生成した後に継続して進行する金属チタン中の固溶酸素が脱酸素される脱酸反応を示す。
【0036】
上記で生成した酸化カルシウム(CaO)は、陰極において酸化カルシウムの2価のカルシウムを1価に還元し、1価のCaイオンを生成せしめる。また、この際に生成した酸素イオン(O2−)は炭素陽極側に移動し、この酸素イオン(O2−)を捕捉した炭素陽極と反応して、CO−COガスを発生する。
陽極:C + O2− = CO + 2e …………………………… (3)
C + 2O2− = CO + 4e ………………………… (4)
陰極:Ca2+ + e = Ca ………………………………… (5)
【0037】
このように、酸素イオン(O2−)を捕捉した炭素陽極の反応面では、先に説明したように炭酸ガス等を発生するが、この炭酸ガス等は、上述したように析出した金属チタンの汚染を引き起こすほか、上記の例では、酸化チタンの還元物質であるカルシウム(Ca)等と物理的に接触することで、還元と無関係な反応を生じ、カルシウム等の物質を消耗させ、電気分解の電流効率を低下させる問題や、上記還元とは無関係な反応から生じた炭素等が炭素陽極と陰極との間を短絡して金属チタン製錬の操業自体を阻害する問題を引き起こす。したがって、消耗性炭素陽極の側面を上記傾斜角を有した案内傾斜面とすることで、発生した炭酸ガス等の気体をある特定の領域に制限して浮上させ、炭酸ガス等が溶融塩中で不必要に拡散するのを防止し、金属チタンとの接触を制限することができる。
【0038】
また、本発明における炭素陽極は、少なくとも電気分解で用いる陰極と平行に相対面すると共に無機溶融塩中に浸漬する底面に、鉛直方向に対して80〜90度、好ましくは80〜85度の角度の案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内してもよい。例えば、電解浴中の陰極が反応槽の底面に対して略平行となる位置(電解浴横方向)に配設されている場合、本発明における消耗性炭素陽極は、その底面において上記陰極と平行に相対面すると共にこの底面が上記の角度を有した案内傾斜面であるのがよい。
【0039】
電解浴中において上記のような位置関係で消耗性炭素陽極と陰極とが配設されると、消耗性炭素陽極は陰極に対して上方に位置するため、電気分解により発生した酸素イオン(O2−)は浮上して上記炭素陽極の底面で捕捉される。この炭素陽極の底面では上述したように炭酸ガス等の気体を発生するが、この炭素陽極の底面が上記角度を有した案内傾斜面であれば、この案内傾斜面に沿って気体が上昇し、気体の浮上領域を制限して炭酸ガス等が溶融塩中で不必要に拡散することなく系外に除去することができる。尚、本発明におけるこの消耗性炭素陽極の形状については、上記案内傾斜面を有する以外には、特に制限されることはなく、平板状、円錐状、四角錐状等の形状であってもよい。
【0040】
また、この消耗性炭素陽極の案内傾斜面について、電解浴を形成する無機溶融塩の一部を電気分解して還元性分解生成物を生成せしめ、生成した還元性分解生成物により酸化チタンを熱還元して金属チタンを製造する金属チタン製錬であって、上記無機溶融塩が塩化カルシウム(CaCl)と酸化カルシウム(CaO)及び/又はカルシウム(Ca)からなる混合溶融塩であり、かつ、この混合溶融塩中において反応槽の底面に対して略平行に位置する陰極とこの陰極より上方に位置する消耗性炭素陽極とを配設し、両電極の間で混合溶融塩中の酸化カルシウム及び/又は塩化カルシウムの電気分解を行うと共にこの電気分解で生成したカルシウム(Ca)及び1価カルシウムイオン(Ca)により酸化チタンを還元して金属チタンを製造する金属チタン製錬の場合、本発明における消耗性炭素陽極は、少なくとも上記陰極と平行に相対面すると共に混合溶融塩中に浸漬する底面に、鉛直方向に対して80〜90度、好ましくは80〜85度の角度の案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内するのがよい。
【0041】
上記のように、消耗性炭素陽極と陰極とが電解浴中で上下に配設され、これら両電極の間に酸化チタンが位置して金属チタンの製錬を行う場合では、陰極で生成した還元性分解生成物が、混合溶融塩との比重差により電解浴中を浮上するため効率よく酸化チタンを還元することができ、また、炭素陽極で発生した炭酸ガス等の気体は案内傾斜面に沿って上昇して、気体の浮上領域が制限されるため析出した金属チタンの炭酸ガス等による汚染が防止でき、還元と無関係な反応を生じることなく効率よく金属チタンを製造することができる。
【0042】
本発明において、上記のような案内傾斜面を有する形状をした消耗性炭素陽極については、先に説明した粒度分布及びか焼温度の制御を組み合わせて得た骨材コークスの一次焼成炭素材で形成することや、このような骨材コークスを石炭系コークスとし、更にはこの石炭系コークスが脱灰処理したものとすることや、一次焼成炭素材のバインダーが脱灰処理したピッチを用いて得たものとすることを組み合わせることで、金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極として用いた場合に、得られる金属チタンの汚染防止効果をより一層向上せしめることができる。
【0043】
【実施例】
以下、試験例、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明する。
【0044】
〔試験例1〕
骨材コークスの粒度分布の違いによる炭素陽極の焼成嵩比重、電気比抵抗、曲げ強度への影響について調査するため、以下のような測定を行った。
先ず、表1に示す粒度分布に調整した石炭系コークス(試料番号1〜11)と脱灰処理した石炭系ピッチからなるバインダーピッチを混捏して、温度150℃、圧力200kgf/cmで1分間型込成形した直径40φmm×高さ120mmの成形体をそれぞれ6本用意し、これらを980℃で焼成した。焼成した各試料を直径36φmm×高さ116mmに加工して試験用炭素陽極とする試料片を作製し、その後JIS R7212に従い嵩比重と曲げ強度測定を行い、また、ケルビンダブルブリッジを用いた四端子電位降下法により電気比抵抗を測定した(あわせて「基本特性試験」とする)。これらの結果を表2に示す。
【0045】
【表1】
Figure 2004143557
【0046】
【表2】
Figure 2004143557
【0047】
次に、上記で得られた各試料片について、CO酸化消耗速度、CO全酸化消耗量(あわせて「CO酸化消耗試験」とする)の測定を以下のようにして行った。
先ず、試験装置内の上皿天秤に試料片を載せ、この試験装置内が窒素ガス雰囲気になるようにして980℃に保持した後、ガスを切替えCOガス1.75リットル/minを送入した。その後、試料片の重量減量分が6.0gになったところで、送入するガスを再びCOガスから窒素ガスに切替え、窒素ガス雰囲気中で冷却した。そして、取り出した各試料片に衝撃を加え、ルーズカーボンを強制的に脱落させ、脱落カーボン量及び残りのカーボン量、更に試験装置内に自然に脱落したカーボン量を秤量し、次式によってCO酸化消耗速度とCO全酸化消耗量を求めた。結果を表2に示す。
CO酸化消耗速度(g/hr)= ガス化量/反応時間
CO全酸化消耗量(%)= 100 + (強制脱落量+自然脱落量)/ガス化量×100
ガス化量= 試験前試料片重量 − (強制脱落量 + 自然脱落量+残留量)
【0048】
また、上記で得られた各試料片を陽極として4N−NaOH水溶液を電解液とする水溶液電気分解による電解消耗試験を以下のようにして行った。
先ず、各試料片の中央部にネジ加工をして真鍮製導電棒をネジ止めして陽極とした。この陽極を、予めSUS製円筒管を陰極として内部に固定した1000mlビーカーに取り付け、高さを調整して固定した。その後、ビーカー内に4N−NaOH水溶液を試料片の一定の高さになるまで注ぎ、0.5A/cmの直流電流を通じて電気分解を行った。総電流量が200Aに達したところで電流を止め、上記陽極を真鍮製導電棒から取り外して水洗した後、乾燥させて秤量した。また、脱落カーボンを含んでいる電解液はフィルターで濾過し、脱落カーボンを乾燥して秤量し、次式によって全消耗速度と選択酸化度を求めた。得られた結果を表2に示す。尚、理論ガス化量は、上記電気分解における通電量からガス化反応する量を理論的な計算により求めたものである。
全消耗速度(g/A hr)=(理論カ゛ス化量+脱落カーホ゛ン量)/総電流量×(経過時間)
選択酸化度(%)= 脱落カーホ゛ン量/理論カ゛ス化量 × 100
【0049】
上記結果を示した表2から分かるように、電極材としての基本特性試験、CO酸化消耗試験及び電解試験については試料番号3〜7の場合に好ましい結果であることが分かった。尚、表2中の嵩比重、電気比抵抗、曲げ強度についてはn=6の平均値であり、CO酸化消耗試験及び電解試験についてはn=2の平均値で示してある。
【0050】
次に、表1に示す粒度分布に調整したか焼温度1300℃の石炭系コークスを用い、脱灰処理した石炭系ピッチからなるバインダーピッチと混捏して、温度150℃、圧力200kgfで1分間型込成形したブロックを形成し、980℃で焼成した後、内径120mmφ、高さ200mm(内寸)のルツボ型炭素陽極試料を作製し、塩化カルシウム(CaCl)と酸化カルシウム(CaO)からなる無機溶融塩の電気分解を行って電流値の経時測定を行った。
上記ルツボ壁にはSUS製丸棒を接続して後に陽極として通電できるように加工しておき、このルツボはSiC抵抗体を組んだ電気炉に置いて乾燥した。その後、予め配合したCaCl+2mol%CaOからなる混合塩をこのルツボ内に入れ、Arガスを通じながら900℃まで昇温した。昇温の途中で、混合塩の溶解に伴う体積減少を見計らって順次混合塩を追加し、最終的に3.5kgの混合溶融塩を作成した。全量溶解後、ルツボ中央の位置にSUS陰極を配置・固定して溶融塩に入れ、炭素陽極とSUS陰極との間に2.8Vの定電圧を印加して電気分解を行った。約4時間後、電気分解を停止し、SUS陰極を電解浴の上部まで引き上げてから電気炉の電源を止め、Ar雰囲気中で溶融塩、ルツボ型炭素陽極、SUS陰極を冷却した。一例として、試料番号5及び試料番号9の電流値測定結果を図1のグラフに示す。
【0051】
上記電気分解での電流値の経時測定では、電気分解の開始と共にルツボ型炭素陽極の表面から炭酸ガスの気泡が発生し、電流が流れ始めた。この電流を流している媒体として酸素イオン等が考えられ、時間の経過と共に酸素イオンが炭酸ガスとして消費されて系外に出されることで、定電圧下では電流値が低下していく。しかし、図1に示したように試料番号9では電気分解開始150分を経過したあたりから、電流値は上昇した。これは、ルツボ型炭素陽極とSUS陰極との間にルツボ型炭素陽極から発生した浮遊炭素が顕著に堆積し、両電極が短絡して迂回電流が発生したためと考えられる。この電流値が上昇する傾向は、試料番号1、2、8〜11で顕著であり、試料番号3〜7ではこの上昇傾向が小さく抑えられた。
【0052】
この試験例1より、骨材コークスの粒度分布を制御することで、骨材コークス粒子の充填密度の制御が可能となり、一次焼成炭素材を消耗性炭素陽極とする場合でも、強度特性、電気的特性、酸化消耗の均一性などの熱間反応安定性に優れ、さらに電気分解中の遊離炭素を低減することができることが分かる。
【0053】
〔試験例2〕
骨材コークスのか焼温度の違いによって、炭素陽極の基本特性試験、CO酸化消耗試験、電解試験の結果に与える影響について調べるため、以下のような測定を行った。
表3に示すようにか焼温度を変えた骨材コークスの試料を用意した(試料番号12〜17)。この骨材コークスは、上記試験例1の結果より、粒子径0.074mm以下が18重量%、粒子径3.0mm以上が30重量%である粒度分布を有し、上記試験例1と同様な試料片を作製した。尚、試料番号17については、参考例とするためにか焼温度1300℃の骨材コークスを用いて980℃で一次焼成したものを、更に2500℃で二次焼成して得たグラファイト成形材からなる試料片とした。
上記試料片について、上記試験例1と同様の方法により基本特性試験、CO酸化消耗試験及び電解試験を行った。その結果を表4に示す。
【0054】
【表3】
Figure 2004143557
【0055】
【表4】
Figure 2004143557
【0056】
上記表4に示した結果より、か焼温度が低い骨材コークスを使用して得た試料片の選択酸化度が小さく、特に、か焼温度が1200℃以下の試料片(試料番号14〜16)では、比較例とするためにグラファイト成形材から得た試料片(試料番号17)に近い値となった。
【0057】
この試験例2より、骨材コークスのか焼温度を制御することで、バインダーコークスの選択酸化による骨材コークスの脱落現象を防止し、遊離炭素量を低減可能であることが分かる。
【0058】
〔試験例3〕
骨材コークスの材質の違いから形成した炭素陽極を用いて金属チタンの製錬を行った場合に、得られる金属チタンへの汚染による影響を調べるために、以下のような試験を行った。
先ず、か焼温度がそれぞれ1000℃である石油系コークス、石炭系コークス及び脱灰処理した石炭系コークスであって、それぞれ、粒子径0.074mm以下が18重量%、粒子径3.0mm以上が30重量%の粒度分布を有する試料を用意し(試料番号18〜20)、脱灰処理した石炭系ピッチからなるバインダーピッチと混捏した後ブロックを形成し、980℃で焼成した後、内径φ120mm、高さ200mm(内寸)のルツボ型炭素陽極を作製した。また、か焼温度1300℃の骨材コークスを用いて980℃で一次焼成したものを、更に2500℃で二次焼成して得たグラファイト成形材を用いて上記と同様なルツボ型炭素陽極についても用意した(試料番号21)。
【0059】
このルツボ型炭素陽極の壁にはSUS製丸棒を接続し、後に陽極として通電できるように加工した。このルツボ型炭素陽極は、SiC抵抗体を組んだ電気炉に配置して乾燥した後、予め配合したCaCl+2mol%CaOからなる混合塩をこのルツボ内に入れ、Arガスを通じながら900℃まで昇温した。昇温の途中で、混合塩の溶解に伴う体積減少を見計らって順次混合塩を追加し、最終的に3.5kgの混合溶融塩を調製した。全量溶解後、SUS製陰極を溶融塩に入れ、1.0Vの定電圧を印加して、水分及び初期に溶融塩中に存在する不純物である鉄(Fe)、バナジウム(V)、及び硫黄(S)のうち予め除去が可能なものを除去するための予備電解を実施した。
【0060】
予備電解実施後、SUS製陰極を引き出し、ルツボ内に溶融塩電気分解用のチタン製陰極を挿入した。このチタン製陰極は、チタンネットを内径8mmφ、高さ140mmの円筒状に丸めて底部を8mmφチタン丸棒で封じ、チタンネット容器としたもので、更に、この内部に酸化チタン4gを入れて上部を同じく8mmφチタン丸棒で蓋をし、電気分解用電源へ接続できるように加工したものである。ルツボ中央の位置で、かつ酸化チタンが全て溶融塩に浸漬する深さにチタン陰極を配置・固定し、炭素陽極とチタン陰極との間に2.8Vの定電圧を印加して、溶融塩の電気分解を行った。約4時間経過した後、電気分解を停止し、チタン陰極を電解浴の上部まで引き上げてから電気炉の電源を止め、Ar雰囲気中でチタン陰極及び溶融塩を冷却した。
【0061】
室温まで除冷した後、チタン陰極を電気炉から引き上げ氷水で水洗して内部のチタン(投入時は酸化チタン)を回収した。回収したチタンは温調デシケーター中で乾燥した後、蛍光X線分析及び赤外吸収法により分析した。これらの分析結果から、回収されたチタンは全量金属チタンに還元されていることが分かった。上記の内容を各試料から得た炭素陽極について実施し、それぞれ回収された金属チタンに含まれる不純物の濃度について表5に示す。
【0062】
【表5】
Figure 2004143557
【0063】
上記表5より、鉄、硫黄、バナジウムの濃度については、石油系コークスを骨材コークスとした場合が最も高く、次いで、石炭系コークス、脱灰処理した石炭系コークス、グラファイト成形材の順であった。一方、金属チタン中の炭素濃度については、グラファイト成形材とその他の骨材コークスの値はほぼ同等であった。
【0064】
この試験例3より、骨材コークスの材質を石炭系コークス、脱灰処理した石炭系コークスとすることで、より安価な一次焼成炭素材であっても二次焼成を行うグラファイト成形材と同程度に溶融塩中への不純物の移行を低減することができ、高純度な金属チタンが製造できることが分かる。
【0065】
〔試験例4〕
電気分解によって、炭素陽極から発生する気体が溶融塩中を浮上する際の気体の浮上領域を制限するために、以下のような試験を行った。
視覚的に理解しやすくするため、水モデルによる電気分解を実施した場合の様子を写真にした図2及び3で説明する。反応槽である電解槽に見立てて、幅850mm×奥行850mm×高さ1000mmのアクリル板製の水槽1に水を入れたものを用意し、この水槽内には消耗性炭素陽極に見立てた中空鉄板2であって、この中空鉄板2の側面2aにフィルター3を貼り合せたものが浸漬されている。この中空鉄板2の上面2bの中央から、実際の溶融塩の電気分解で発生すると考えられるガス量を計算して圧縮エアーを吹き込み、上記側面2aに貼り合せたフィルター3から気体が噴出され、中空鉄板2の側面2aを上昇する気体の様子を観察した。図2では、中空鉄板2の側面2aが、鉛直方向に対して角度0度の場合であり、図3はこの側面2aを鉛直方向に対して角度12度でオーバーハング状に傾斜した案内傾斜面とした場合を示している。図2、3から明らかなように、オーバーハング状に傾斜を付した場合の方が、水面1aに浮上する気泡浮上領域の幅(L)を小さく制限できることが分かる。
【0066】
この試験例4より、炭素陽極の側面にオーバーハング状に傾斜した案内傾斜面を設けることで、この炭素陽極で発生する気体の浮上領域を制御することが可能であることが分かる。
【0067】
〔試験例5〕
図4に示した消耗性炭素陽極8を用いて、図5のような金属チタン製錬装置4による金属チタンの製錬を行った。
マグネシアルツボ5に酸化カルシウムを含有する塩化カルシウムの混合塩を入れ、900℃で保持して混合溶融塩6とし、予め、脱水・不純物除去のための予備電解を実施した。次いで、マグネシアルツボ5の底面に対し5度傾斜するようにチタンプレート製の陰極板7を配置し、この陰極板7の上方には、か焼温度1000℃であって粒子径0.074mm以下が18重量%、粒子径3.0mm以上が30重量%の粒度分布を有する石炭系骨材コークスと、脱灰処理した石炭系ピッチからなるバインダーピッチとを混捏して、980℃で焼成して得た消耗性炭素陽極8を配置した(試料番号22)。この消耗性炭素陽極8は、混合溶融塩6に浸漬する消耗性炭素陽極の底面8aが鉛直方向に対して85度の角度で傾斜するように加工してあり、この底面8aは上記陰極板7と平行に相対面すると共にこの底面8aと陰極板7との間の距離Xは30mmとなるようにした。また、上記消耗性炭素陽極8には、チタン導電棒9が取り付けられて、図示外の直流電源のプラス端子と接続されており、また、陰極板7の端部にはチタン導電棒10が取り付けられて、図示外の直流電源のマイナス端子と接続されている。尚、上記陰極板7以外で混合溶融塩6に浸漬している部分については、マグネシア保護管11で被ってある。
【0068】
このような状況の下、上記陰極板7上に10gの酸化チタン12を沈めて、両電極間に20Aの電流を流して定電流による電気分解を行った。この電気分解において、消耗性炭素陽極8の底面8aで発生する炭酸ガス(CO)等の気体は、この底面8aに付された傾斜によって一定方向に案内されて上昇するため、この底面8aが案内傾斜面として働き、気体の浮上領域を制限した。
【0069】
また、図6に示した消耗性炭素陽極17を用いて、図7のような金属チタン製錬装置13による金属チタンの製錬を行った。
マグネシアルツボ14に酸化カルシウムを含有する塩化カルシウムの混合塩を入れ、900℃で保持して混合溶融塩15とし、予め、脱水・不純物除去のための予備電解を実施した。次いで、この混合溶融塩15には、鉛直方向に対して15度の傾斜を有した金属チタンプレート製の陰極板16を配置し、また、か焼温度1000℃であって粒子径0.074mm以下が18重量%、粒子径3.0mm以上が30重量%の粒度分布を有する石炭系骨材コークスと脱灰処理した石炭系ピッチからなるバインダーピッチとを混捏して、980℃で焼成して得た消耗性炭素陽極17を配置した(試料番号23)。この消耗性炭素陽極17は、混合溶融塩16に浸漬するその側面17aが鉛直方向に対して15度の角度でオーバーハング状に傾斜するように加工してあり、この側面17aは上記陰極板16と平行に相対面すると共にこの側面17aと陰極板16との間の距離Yが25mmとなるようにした。また、マグネシアルツボ14の内壁面と上記陰極板16との間になる位置に、チタン製のネットで作製した箱型容器18を配置して混合溶融塩15に浸漬するようにした。上記消耗性炭素陽極17には、チタン導電棒19が取り付けられており、図示外の直流電源のプラス端子と接続され、また、陰極板16の端部にはチタン導電棒20が取り付けられて、図示外の直流電源のマイナス端子と接続されている。
【0070】
このような状況の下、上記箱型容器18に10gの酸化チタン21を入れ、両電極間に20Aの電流を流して定電流による電気分解を行った。この電気分解において、消耗性炭素陽極17の側面17aで発生する炭酸ガス(CO)等の気体は、この底面17aに付された傾斜によって一定方向に案内されて上昇するため、この底面17aが案内傾斜面として働き、気体の浮上領域を制限した。
【0071】
尚、上記試料番号22と試料番号22における両電極間の距離の差(5mm)は、試料番号22では、炭素陽極と陰極との間に酸化チタンを沈めているため、この酸化チタンの初期の厚み(5mm)を考慮したものである。また、上記金属チタン製錬装置13において、陰極板を鉛直方向に対して平行に配置すると共に炭素陽極の側面が鉛直方向に対して平行とした案内傾斜面を有さない消耗性炭素陽極(試料番号24)の場合について、その他の条件を上記と同様にして電気分解を行った。
【0072】
この試験例5において、上記酸化チタンが効率100%で全量金属チタンに還元されるのに必要な理論電気量の1.5倍の電気量をそれぞれ流したところで電気分解を終了し、消耗性炭素陽極を引き出してアルゴン雰囲気下で室温まで冷却した。また、沈めた酸化チタンについては、マグネシアルツボごと水洗及び希塩酸で洗浄した後、粉末の状態で回収した。回収した物質は温調デシケーター中で乾燥した後、X線回折分析、蛍光X線分析及び赤外吸収法により分析を行った。それぞれの分析結果を表6に示す。
【0073】
【表6】
Figure 2004143557
【0074】
消耗性炭素陽極が案内傾斜面を有する試料番号22及び23では、回収した物質の全量が金属チタンに還元されていることが分かった。一方、消耗性炭素陽極が案内傾斜面を有さない試料番号24では、金属チタン以外に金属チタンが炭素によって汚染されたことを示すチタンカーバイド(TiC)が混在することが分かり、得られた金属チタンの品質が不十分であった。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、二次焼成を行ったグラファイト成形材と比較して安価である骨材コークスの一次焼成炭素材で形成された炭素陽極を金属チタン製錬の消耗性炭素陽極に用いることで工業的に有利に金属チタンを製造することができ、得られる金属チタンについても汚染されることがなく、二次焼成を行ったグラファイト成形材を消耗性炭素陽極とした場合と比べて品質面でも遜色がない。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、無機溶融塩中の電気分解における電流値の経時変化を示すグラフである。
【図2】図2は、電気分解中の消耗性炭素陽極から発生する気体の様子を表すためのモデルであって、消耗性炭素陽極に見立てた中空鉄板を水槽に沈めて圧縮ガスを送り込んだ様子の写真である(炭素陽極の側面が傾斜していない場合)。
【図3】図3は、電気分解中の消耗性炭素陽極から発生する気体の様子を表すためのモデルであって、消耗性炭素陽極に見立てた中空鉄板を水槽に沈めて圧縮ガスを送り込んだ様子の写真である(炭素陽極の側面が傾斜している場合)。
【図4】図4は、本発明の試験例5に係る消耗性炭素陽極を示す斜視説明図である。
【図5】図5は、本発明の試験例5に係る金属チタン製錬装置を示す断面説明図である。
【図6】図6は、本発明の試験例5に係る別の消耗性炭素陽極を示す斜視説明図である。
【図7】図7は、本発明の試験例5に係る別の金属チタン製錬装置を示す断面説明図である。
【符号説明】
1…水槽、1a・・・水面、2…中空鉄板、2a…中空鉄板の側面、2b…中空鉄板の上面、3…フィルター、4、13…金属チタン製錬装置、5、14…マグネシアルツボ、6、15…混合溶融塩、7、16…陰極板、8…消耗性炭素陽極、8a…消耗性炭素陽極の底面、9、10、19、20…チタン導電棒、11…マグネシア保護管、12、21…酸化チタン、17…消耗性炭素陽極、17a…消耗性炭素陽極の側面、18…箱型容器。

Claims (9)

  1. 反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元する金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、
    上記炭素陽極が、粒子径0.074mm以下が15重量%以上25重量%以下であって粒子径3.0mm以上が22重量%以上37重量%以下の粒度分布を有する骨材コークスの一次焼成炭素材で形成されていることを特徴とする金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極。
  2. 反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元する金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、
    上記炭素陽極が、か焼温度800℃以上1200℃以下の骨材コークスの一次焼成炭素材で形成されていることを特徴とする金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極。
  3. 一次焼成炭素材に用いる骨材コークスが、石炭系コークスである請求項1又は2に記載の金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極。
  4. 石炭系コークスが、脱灰処理したものである請求項3に記載の金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極。
  5. 一次焼成炭素材が、脱灰処理したピッチをバインダーとして用いたことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極。
  6. 反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元する金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、
    上記炭素陽極は、少なくとも電気分解で用いる陰極と平行に相対面すると共に無機溶融塩中に浸漬する側面に、鉛直方向に対して1〜45度の角度でオーバーハング状に傾斜した案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内することを特徴とする金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極。
  7. 電解浴を形成する無機溶融塩の一部を電気分解して還元性分解生成物を生成せしめ、生成した還元性分解生成物により酸化チタンを熱還元して金属チタンを製造する金属チタン製錬であって、
    上記無機溶融塩が塩化カルシウム(CaCl)と酸化カルシウム(CaO)及び/又はカルシウム(Ca)からなる混合溶融塩であり、かつ、この混合溶融塩により形成される電解浴が、上記電気分解に用いる陰極によって混合溶融塩中の酸化カルシウム及び/又は塩化カルシウムを電気分解する電解帯域と、電解帯域で生成したカルシウム(Ca)及び1価カルシウムイオン(Ca)により酸化チタンを還元する還元帯域とに区画されて金属チタンを製造する金属チタン製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、
    上記炭素陽極が、少なくとも上記電解帯域内で上記陰極と平行に相対面すると共に混合溶融塩中に浸漬する側面に、鉛直方向に対して1〜45度の角度でオーバーハング状に傾斜した案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内する請求項6に記載の金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極。
  8. 反応槽内に無機溶融塩の電解浴を形成し、電気分解法を利用して酸化チタンを還元する金属チタンの製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、
    上記炭素陽極は、少なくとも電気分解で用いる陰極と平行に相対面すると共に無機溶融塩中に浸漬する底面に、鉛直方向に対して80〜90度の角度の案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内することを特徴とする金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極。
  9. 電解浴を形成する無機溶融塩の一部を電気分解して還元性分解生成物を生成せしめ、生成した還元性分解生成物により酸化チタンを熱還元して金属チタンを製造する金属チタン製錬であって、
    上記無機溶融塩が塩化カルシウム(CaCl)と酸化カルシウム(CaO)及び/又はカルシウム(Ca)からなる混合溶融塩であり、かつ、この混合溶融塩中において反応槽の底面に対して略平行に位置する陰極とこの陰極より上方に位置する消耗性炭素陽極とを配設し、両電極の間で混合溶融塩中の酸化カルシウム及び/又は塩化カルシウムの電気分解を行うと共にこの電気分解で生成したカルシウム(Ca)及び1価カルシウムイオン(Ca)により酸化チタンを還元して金属チタンを製造する金属チタン製錬に用いる金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極であり、
    上記炭素陽極が、少なくとも上記陰極と平行に相対面すると共に混合溶融塩中に浸漬する底面に、鉛直方向に対して80〜90度の角度の案内傾斜面を有し、この案内傾斜面により炭素陽極から発生して上昇する気体を案内傾斜面に沿って案内する請求項8に記載の金属チタン製錬用の消耗性炭素陽極。
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