JP2004143144A - PrRPおよびその受容体の新規用途 - Google Patents
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Abstract
【課題】水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤等の提供。
【解決手段】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
【選択図】なし
【解決手段】配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
【選択図】なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、公知のレセプター蛋白質PrRP受容体(19P2)およびそのリガンドの新規用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
下垂体機能調節作用、中枢神経機能調節作用、膵臓機能調節作用を有するヒト、ウシおよびラット由来のリガンドポリペプチド(PrRP)とそれに対するヒトおよびマウス由来のレセプター蛋白質(PrRP受容体)が報告されている(特許文献1)。
マウス由来のPrRPが知られている(特許文献2)。
ヒトおよびマウス由来PrRP受容体と高い相同性を有するラット由来オーファン受容体(UHR−1)が報告されている(非特許文献1)。
PrRPがプロラクチン分泌調節作用、胎盤機能調節作用を有することが報告されている(特許文献3)。
PrRPがオキシトシン分泌調節作用を有することが報告されている(特許文献4)。
PrRPに対するモノクローナル抗体(P2L−1Ca、P2L−2Ca、P2L−1Ta)が知られている(特許文献5)。
PrRPが副腎皮質刺激ホルモン放出分泌調節作用を有することが報告されている(特許文献6)。
【0003】
【特許文献1】
WO97/24436号
【特許文献2】
WO98/49295号
【特許文献3】
WO98/58962号
【特許文献4】
WO00/38704号
【特許文献5】
WO99/60112号
【特許文献6】
WO00/38704号
【非特許文献1】
Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol.209, No.2, pp.606−613, 1995
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、PrRPおよびPrRP受容体のさらなる機能を解明し、新たな医薬を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、PrRPが予想外にも体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を有することを見出し、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖などの疾患に対して予防・治療効果を有することがわかった。本発明者らは、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(2)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(3)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(4)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(5)ペプチドが(i)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、(ii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜5個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチド、(iii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜5個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列からなるペプチド、(iv)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜5個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列からなるペプチド、(v)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜5個のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列からなるペプチド、または(vi)上記(ii)〜(v)の欠失・付加・挿入・置換を組み合わせたアミノ酸配列からなるペプチドである上記(1)〜(4)記載の剤、
(6)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤、
(7)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(8)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(9)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤、
(10)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(11)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(12)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(13)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(14)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(15)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(16)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(17)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(18)レセプター蛋白質が配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるレセプター蛋白質である上記(16)または(17)記載の剤、
(19)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(20)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(21)DNAが配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAである上記(19)または(20)記載の剤、
(22)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤、
(23)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(24)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(25)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤、
(26)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(27)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(28)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニストを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(29)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニストを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(30)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニストを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(31)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニストを含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(32)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(33)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(34)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(35)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(36)哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節方法、
(37)哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療方法、
(38)哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節方法、
(39)哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療方法、
(40)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22または配列番号:23で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の使用、
(41)低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22または配列番号:23で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の使用、
(42)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の使用、
(43)高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の使用、
(44)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、および(または)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬のスクリーニング方法、および
(45)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、および(または)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬のスクリーニング用キットを提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるペプチドは、WO97/24436号およびWO98/49295号に記載されている公知のペプチドであり、具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド(以下、PrRPと略記する)である。
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
【0008】
前記の配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしては、前記した配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同質の活性を有するペプチドである。
実質的に同質とは、レセプター結合活性、シグナル伝達活性などが性質的に(例、生理化学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。従って、レセプター結合活性、シグナル伝達活性や、水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用などが同等(例、約0.1〜100倍、好ましくは約0.5〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、ペプチドの分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしては、具体的には、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1〜80個(好ましくは1〜50個、さらに好ましく1〜15個、より好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iv)配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(v)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(vi)これら欠失・付加・挿入・置換を組み合わせたアミノ酸配列からペプチドなどが用いられ、より具体的には、
(i)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iv)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(v)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(vi)これら欠失・付加・挿入・置換を組み合わせたアミノ酸配列からペプチドなどが用いられる。
アミノ酸配列が欠失、付加、挿入または置換されている場合、その欠失、付加、挿入または置換の位は特に限定されない。
また、配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端に、配列番号:28で表されるアミノ酸配列が付加したアミノ酸配列を含有するペプチドなども好ましく用いられる。
【0009】
本明細書におけるペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:61で表わされるアミノ酸配列からなるヒトPrRPをはじめとするPrRPは、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよいが、C末端がアミドである場合が好ましい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
PrRPがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明でいうPrRPの範囲に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、PrRPには、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。以下、これらのペプチドを含めてPrRPと略称することもある。
PrRPの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
PrRPまたはその塩は、WO97/24436号、WO98/49295号などに記載の方法に従って製造することができる。
【0010】
PrRPをコードするDNAとしては、前述したPrRPをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよく、例えばWO97/24436号、WO98/49295号などに記載のDNAが用いられる。
PrRPをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:29〜53および配列番号:68のいずれかの配列番号で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:2〜配列番号:27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるPrRPと実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNAなどであれば何れのものでもよい。
配列番号:29〜配列番号:53および配列番号:68のいずれかの配列番号で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:29〜配列番号:53および配列番号:68のいずれかの配列番号で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:2〜配列番号:27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAとしては、配列番号:29〜配列番号:53および配列番号:68のいずれかの配列番号で表される塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
配列番号:29において、第12番目のRはGまたはAを、第179番目および240番目のYはCまたはTを示す。第179番目のYがCの時、配列番号:2で表されるアミノ酸配列をコードし、第179番目のYがTの時、配列番号:3で表されるアミノ酸配列をコードする。
アミノ酸配列とそれをコードする塩基配列との関係は、後述のとおりである。
【0011】
PrRPを完全にコードするDNAのクローニングは、WO97/24436号、WO98/49295号に記載の方法に従って行うことができる。
また、PrRPをコードするDNAからPrRPを製造する場合、WO97/24436号、WO98/49295号に記載の方法を用いることができる。
PrRPおよび後述するPrRP受容体またはその部分ペプチド、およびこれらをコードするDNAは、自体公知の方法で標識化されていてもよく、具体的にはアイソトープラベル化されたもの、蛍光標識されたもの(例えば、フルオレセインなどによる蛍光標識)、ビオチン化されたものまたは酵素標識されたものなどがあげられる。
【0012】
上記したPrRPに対するレセプター蛋白質としては、WO97/24436号、WO98/49295号、Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol.209, No.2, pp.606−613, 1995などに記載されている公知の蛋白質が用いられ、具体的には、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質(以下、PrRP受容体と略記する)が用いられる。
配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列と約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列からなるPrRP受容体と実質的に同質の活性を有するレセプター蛋白質などがあげられる。
【0013】
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。実質的に同質の活性としては、例えば、リガンド結合活性またはシグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、リガンド結合活性またはシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度や蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
リガンド結合活性またはシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後述するリガンドの決定方法やスクリーニング方法に従って測定することができる。
また、PrRP受容体としては、▲1▼配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲4▼それら欠失・付加・置換を組み合わせたアミノ酸配列からなるレセプター蛋白質なども用いられる。
【0014】
本明細書におけるPrRP受容体は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:54で表わされるアミノ酸配列からなるPrRP受容体をはじめとするPrRP受容体は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)のいずれであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
【0015】
PrRP受容体がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものもPrRP受容体の範囲に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、PrRP受容体には、上記したPrRP受容体において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
PrRP受容体の具体例としては、例えば、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列からなるPrRP受容体などが用いられる。
【0016】
PrRP受容体の部分ペプチドとしては、前記したPrRP受容体の部分ペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、PrRP受容体蛋白質分子のうち、細胞膜の外に露出している部位であって、レセプター結合活性を有するものなどが用いられる。
具体的には、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列からなるPrRP受容体の部分ペプチドとしては、疎水性プロット解析において細胞外領域(親水性(Hydrophilic)部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性(Hydrophobic)部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
【0017】
PrRP受容体の部分ペプチドのアミノ酸の数は、前記したPrRP受容体の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列からなるペプチドなどが好ましい。
また、PrRP受容体の部分ペプチドは、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、PrRP受容体の部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)(Rは上記と同意義を示す)のいずれであってもよい。
PrRP受容体の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものもPrRP受容体の範囲に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、PrRP受容体の部分ペプチドには、前記したPrRP受容体と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したN末端のグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
PrRP受容体またはその部分ペプチドの塩としては、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
PrRP受容体またはその塩、およびPrRP受容体を発現する細胞またはその細胞膜画分は、WO97/24436号、WO98/49295号などに記載の方法に従って製造することができる。
【0018】
PrRP受容体をコードするポリヌクレオチドとしては、PrRP受容体をコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、PrRP受容体をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(即ち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(即ち、非コード鎖)であってもよい。
PrRP受容体をコードするポリヌクレオチドを用いて、例えば、公知の実験医学増刊「新PCRとその応用」15(7)、1997記載の方法またはそれに準じた方法により、PrRP受容体のmRNAを定量することができる。
PrRP受容体をコードするDNAとしては、前述したPrRPをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよく、例えばWO97/24436号、WO98/49295号などに記載のDNAが用いられる。
【0019】
具体的には、PrRP受容体をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63または配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63、配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるPrRP受容体と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプター蛋白質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63、配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63、配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
該ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるPrRP受容体をコードするDNAとしては、それぞれ配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63、配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
【0020】
PrRPもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体は、自体公知の方法、例えばWO97/24436号、WO98/49295号、WO99/60112号などに記載の方法に従って製造し、使用することができる。具体的には、WO99/60112号に記載されているP2L−1Ca、P2L−2Ca、P2L−1Taなどのモノクローナル抗体が用いられる。
PrRP受容体、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、自体公知の方法、例えばWO97/24436号、WO98/49295号などに記載の方法に従って製造し、使用することができる。
PrRPをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAは、自体公知の方法に従って製造し、使用することができる。PrRP受容体またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAは、自体公知の方法に従って製造し、使用することができる。
PrRPをコードするポリヌクレオチドまたはPrRP受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAは、PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするRNAの一部とそれに相補的なRNAを含有する二重鎖RNAである。
siRNAは、公知の方法(例、Nature, 411巻, 494頁, 2001年)に準じて、PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドの配列を基に設計して製造することができる。
PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするRNAの一部を含有するリボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine, 7巻, 221頁, 2001年)に準じて、PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、公知のリボザイムの配列の一部をPrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするRNAの一部に置換することによって製造することができる。PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得るコンセンサス配列NUX(式中、Nはすべての塩基を、XはG以外の塩基を示す)の近傍の配列などが挙げられる。
【0021】
PrRPの主な産生部位は、dorsomedial hypothalamic nucleus(視床下部背内側核)、ventrolateral reticular formation(外側腹側網様核)、nucleus of the tractus solitarius in the medulla oblongata (延髄弧束核)の3箇所である。本発明者らは、PrRPの mRNAおよび免疫活性を検出することにより、副腎摘出一週間後にarea postrema(AP,最後野)にPrRP産生細胞が出現してくることを明らかにした。このことから、副腎摘出により、glucocorticoid(糖質コルチコイド)およびmineralcorticoide(鉱質コルチコイド)が生体内から消失するために、PrRPがこれらの機能を代用すると考えられた。Glucocorticoidは免疫系の抑制、糖新生、グリコーゲン貯蔵の促進作用で、mineralcorticoideはナトリウムイオンの再吸収の増加による体内貯留作用とカリウムイオンの腎臓を介する排泄の促進作用で、水代謝に影響を与える。また、本発明者らは、APでのPrRP発現は生後14〜17日まで見られるが、18日目以降に消失することを見出した。一方、APは浸透圧の感知、血圧調節、摂餌量や体重、体液のhomeostasisなどに調節する部位として知られている。また、APは脳周囲器官でありBlood−brain−barrierが薄く末梢血の影響を受けやすい部位である。こうした事実より、PrRPは体内の水分および浸透圧調節に関与していると考えられた。すなわち、PrRPは、副腎摘出によりおこる水分および浸透圧の異常を回復させるため、mineralcorticoideの作用を代替し水分排出を促進させる作用を持つことものと考えられる。そのメカニズムとしては、PrRP受容体は、APや視床下部などに広く存在することから、PrRPはAPに直接作用しているか、あるいはバソプッレシンなどの抗利尿ホルモンの分泌を調節していると考えられる。
さらに、本発明者らは、PrRPが副腎のアドレナリン産生細胞に存在することを明らかにした。1)PrRPはストレスで産生が上昇すること、2)アドレナリン産生細胞に共存するということから、PrRPはアドレナリン分泌の調節に関与し、さらには血圧、血糖値などの調節に関与していると考えられる。
したがって、▲1▼PrRP、その部分ペプチド、もしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩(以下、PrRPと略記する)、▲2▼PrRPをコードするDNA、▲3▼PrRPに対する抗体、▲4▼PrRPをコードするDNAに対するアンチセンスDNA、▲5▼PrRP受容体、その部分ペプチドまたはその塩(PrRP受容体と略記する)、▲6▼PrRP受容体をコードするDNA、▲7▼PrRP受容体に対する抗体、▲8▼PrRP受容体をコードするDNAに対するアンチセンスDNAは、以下のような用途を有している。
【0022】
(1)PrRPの機能不全に関連する疾患の予防・治療剤
a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAを、PrRPまたはPrRP受容体の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。例えば、生体内においてPrRPまたはPrRP受容体が減少しているために、PrRPまたはPrRP受容体の機能が期待できない患者がいる場合に、a)PrRPを該患者に投与し該PrRPの量を補充したり、b)(イ)PrRPをコードするDNAまたはPrRP受容体をコードするDNAを該患者に投与し発現させることによって、あるいは(ロ)対象となる細胞にPrRPをコードするDNAまたはPrRP受容体をコードするDNAを挿入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内におけるPrRPまたはPrRP受容体の量を増加させ、PrRPまたはPrRP受容体の機能を充分に発揮させることができる。すなわち、PrRPをコードするDNAまたはPrRP受容体をコードするDNAは、安全で低毒性なPrRPまたはPrRP受容体の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤として有用である。
具体的には、a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAは、例えば、体内の水分または浸透圧の調節剤として、さらにはアジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)の予防・治療剤として使用することができる。
さらに、a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAは、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
PrRPまたはPrRP受容体を上記予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
一方、PrRPをコードするDNAまたはPrRP受容体をコードするDNAを上記予防・治療剤として使用する場合は、これらDNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。DNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
例えば、a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAは、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAを生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0023】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0024】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
PrRPの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
DNAの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0025】
(2)遺伝子診断剤
PrRPをコードするDNA、PrRP受容体をコードするDNA、またはこれらDNAに対するアンチセンスDNAは、プローブとして使用することにより、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)におけるPrRPまたはPrRP受容体をコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
DNAまたはアンチセンスDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションによりPrRPまたはPrRP受容体の発現低下が検出された場合は、例えば、PrRPまたはPrRP受容体の機能不全に関連する疾患、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖)である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションによりPrRPまたはPrRP受容体の発現過剰が検出された場合は、例えば、PrRPまたはPrRP受容体の過剰発現に関連する疾患、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧、糖尿病)である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
【0026】
(3)PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩を含有する医薬
PrRPまたはPrRP受容体をコードするDNAは、プローブとして用いることにより、PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、例えば、(i)非ヒト哺乳動物のa)血液、b)特定の臓器、c)臓器から単離した組織もしくは細胞、または(ii)形質転換体等に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNA量を測定することによる、PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
PrRPまたはPrRP受容体のmRNA量の測定は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には免疫不全モデルラット、マウス、ウサギなど)に対して、薬剤(例えば、免疫調節薬など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。
得られた細胞に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNAは、例えば、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出し、例えば、TaqMan PCRなどの手法を用いることにより定量することができ、自体公知の手段によりノーザンブロットを行うことにより解析することもできる。
(ii)PrRPまたはPrRP受容体を発現する形質転換体をWO97/24436号またはWO98/49295号に記載の方法に従い作製し、該形質転換体に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNAを同様にして定量、解析することができる。
【0027】
PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に試験化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、細胞に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNA量を定量、解析することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に試験化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、該形質転換体に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNA量を定量、解析することにより行なうことができる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが用いられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
試験化合物は塩を形成していてもよく、試験化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0028】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる作用を有する化合物またはその塩であり、具体的には、(イ)PrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させることにより、PrRP受容体を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP生成抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を増強させる化合物またはその塩、(ロ)PrRPの発現量を減少させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を減弱させる化合物またはその塩である。
上記スクリーニング方法で得られる化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記スクリーニング方法で得られる化合物の塩としては、前記したPrRPと同様の塩を用いることができる。
上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩は、体内の水分または浸透圧の調節剤として用いることができる。
上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)に対する安全で低毒性なの予防・治療剤として用いることができる。
さらに、上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(好ましくは、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を減少させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する安全で低毒性なの予防・治療剤として用いることができる。
さらに、上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を減少させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(好ましくは、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
【0029】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。具体的には、上記したPrRPを含有する予防・治療剤と同様に製造することができる。
得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につきPrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させる化合物またはその塩を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につきPrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させる化合物またはその塩を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0030】
(4)抗体を用いる診断方法
PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する)は、PrRPまたはPrRP受容体を特異的に認識することができるので、被検液中のPrRPまたはPrRP受容体の検出や中和に使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化されたPrRPまたはPrRP受容体とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたPrRPまたはPrRP受容体の割合を測定することを特徴とする被検液中のPrRPまたはPrRP受容体の定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中のPrRPまたはPrRP受容体の定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体がPrRPまたはPrRP受容体のN端部を認識する抗体で、他方の抗体がPrRPまたはPrRP受容体のC端部に反応する抗体であることが望ましい。
また、PrRPまたはPrRP受容体に対するモノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体)を用いてPrRPまたはPrRP受容体の定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab’)2、Fab’、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いるPrRPまたはPrRP受容体の定量法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、PrRP量またはPrRP受容体量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
【0031】
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中のPrRP量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
【0032】
本発明のサンドイッチ法によるPrRPまたはPrRP受容体の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、PrRPまたはPrRP受容体の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、PrRPまたはPrRP受容体のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてPrRPまたはPrRP受容体の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、PrRPまたはPrRP受容体を感度良く定量することができる。
【0033】
さらには、本発明の抗体を用いてPrRPまたはPrRP受容体の濃度を定量することによって、PrRPまたはPrRP受容体の濃度の減少が検出された場合、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖)などの疾患である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、PrRPまたはPrRP受容体の濃度の増加が検出された場合には、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧、糖尿病)などの疾患である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
【0034】
(5)PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニストなど)のスクリーニング方法、およびPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物を含有する医薬
PrRP受容体を用いるか、または組換え型PrRP受容体の発現系を構築し、該発現系を用いたレセプター結合アッセイ系を用いることによって、PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩を効率よくスクリーニングすることができる。
このような化合物には、(イ)PrRP受容体を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP生成抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を有する化合物またはその塩(いわゆる、PrRP受容体アゴニスト)、(ロ)PrRP受容体を介する細胞刺激活性や該調節作用を阻害する化合物またはその塩(いわゆる、PrRP受容体アンタゴニスト)、(ハ)PrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物またはその塩、あるいは(ニ)PrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩などが含まれる。
すなわち、本発明は、PrRPおよび(または)PrRP受容体を用いることを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬のスクリーニング方法を提供する。
より具体的には、本発明は、(i)PrRPとPrRP受容体とを接触させた場合と(ii)PrRPとPrRP受容体および試験化合物とを接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩(水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬)のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば、PrRP受容体に対するPrRPの結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較することを特徴とする。
【0035】
より具体的には、本発明は、
a)標識したPrRPを、PrRP受容体に接触させた場合と、標識したPrRPおよび試験化合物をPrRP受容体に接触させた場合における、標識したPrRPのPrRP受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
b)標識したPrRPを、PrRP受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識したPrRPおよび試験化合物をPrRP受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識したPrRPの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
c)標識したPrRPを、PrRP受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したPrRP受容体に接触させた場合と、標識したPrRPおよび試験化合物をPrRP受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したPrRP受容体に接触させた場合における、標識したPrRPのPrRP受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
【0036】
d)PrRPを活性化する化合物(例えば、PrRPなど)をPrRP受容体を含有する細胞に接触させた場合と、PrRPを活性化する化合物および試験化合物をPrRP受容体を含有する細胞に接触させた場合における、PrRP受容体を介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
e)PrRPを活性化する化合物(例えば、PrRPなど)をPrRP受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したPrRP受容体に接触させた場合と、PrRPを活性化する化合物および試験化合物をPrRP受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したPrRP受容体に接触させた場合における、レセプターを介する細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法では、PrRPの代わりに、PrRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩(例、合成アゴニストなど)を用いることもできる。このPrRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩は、PrRPを用いて本発明のスクーニング方法を実施することによって得ることができる。
【0037】
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いるPrRP受容体としては、PrRP受容体を含有する哺乳動物の臓器の細胞膜画分が好適である。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させたヒト由来のPrRP受容体などが適している。
PrRP受容体を製造するには、WO94/24436号またはWO98/49295号に記載の方法が用いられるが、PrRP受容体をコードするDNAを哺乳細胞や昆虫細胞で発現することにより行なうことが好ましい。目的とする蛋白質部分をコードするDNA断片には相補DNAが用いられるが、必ずしもこれに制約されるものではない。例えば、遺伝子断片や合成DNAを用いてもよい。PrRP受容体をコードするDNA断片を宿主動物細胞に導入し、それらを効率よく発現させるためには、該DNA断片を昆虫を宿主とするバキュロウイルスに属する核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)のポリヘドリンプロモーター、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどの下流に組み込むのが好ましい。発現したレセプターの量と質の検査はそれ自体公知の方法で行うことができる。例えば、文献〔Nambi,P.ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),267巻,19555〜19559頁,1992年〕に記載の方法に従って行なうことができる。
したがって、本発明のスクリーニング方法において、PrRP受容体を含有するものとしては、それ自体公知の方法に従って精製したPrRP受容体であってもよいし、PrRP受容体を含有する細胞を用いてもよく、またPrRP受容体を含有する細胞の膜画分を用いてもよい。
【0038】
本発明のスクリーニング方法において、PrRP受容体を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法はそれ自体公知の方法に従って行なうことができる。
PrRP受容体を含有する細胞としては、PrRP受容体を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが好ましい。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したPrRP受容体と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
PrRP受容体を含有する細胞や膜画分中のPrRP受容体の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのPrRP受容体結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0039】
PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物をスクリーニングする上記のa)〜c)を実施するためには、例えば、適当なPrRP受容体画分と、標識したPrRPが必要である。
PrRP受容体画分としては、天然型のPrRP受容体画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型PrRP受容体画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などを示す。
標識したPrRPとしては、標識したPrRP、標識したPrRPアナログ化合物などが用いられる。例えば〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識されたPrRPなどが用いられる。
具体的には、PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物のスクリーニングを行なうには、まずPrRP受容体を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりPrRP受容体標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのPrRPとPrRP受容体との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるPrRP受容体やPrRPの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000〜500000cpm)の標識したPrRPを添加し、同時に10−4M〜10−10Mの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識のPrRPを加えた反応チューブも用意する。反応は約0〜50℃、望ましくは約4〜37℃で、約20分〜24時間、望ましくは約30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が、例えば、50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0040】
PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物スクリーニングする上記のd)〜e)の方法を実施するためには、例えば、PrRP受容体を介する細胞刺激活性を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。
具体的には、まず、PrRP受容体を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行なうにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸、cAMPなど)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当なPrRP受容体を発現した細胞が必要である。PrRP受容体を発現した細胞としては、天然型のPrRP受容体を有する細胞株、上記の組換え型PrRP受容体を発現した細胞株などが望ましい。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
また、試験化合物としては、PrRP受容体の活性部位の原子座標およびリガンド結合ポケットの位置に基づいて、リガンド結合ポケットに結合するように設計された化合物が好ましく用いられる。PrRP受容体の活性部位の原子座標およびリガンド結合ポケットの位置の測定は、公知の方法あるいはそれに準じる方法を用いて行うことができる。
【0041】
PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キットは、PrRP、PrRP受容体を含有する細胞またはその細胞膜画分を含有するものなどである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
a)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
b)PrRP受容体標品
PrRP受容体を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
c)標識PrRP
市販の〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識したPrRP
水溶液の状態のものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
d)PrRP標準液
PrRPを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
【0042】
2.測定法
a)12穴組織培養用プレートにて培養したPrRP受容体発現CHO細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
b)10−3〜10−10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識PrRPを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物の代わりに10−3MのPrRPを5μl加えておく。
c)反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識PrRPを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
d)液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式で求める。
PMB=[(B−NSB)/(B0−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non−specific Binding(非特異的結合量)
B0 :最大結合量
【0043】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記スクリーニング方法で得られる化合物の塩としては、前記したPrRPの塩と同様のものが用いられる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる作用を有する化合物またはその塩であり、具体的には、(イ)PrRP受容体を介して細胞刺激活性や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を有する化合物またはその塩(いわゆる、PrRP受容体アゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物またはその塩(いわゆる、PrRP受容体アンタゴニスト)、(ハ)PrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物またはその塩、あるいは(ニ)PrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩である。
【0044】
PrRP受容体アゴニストであるか、アンタゴニストであるかの具体的な評価方法は以下の(i)および(ii)に従えばよい。
(i)例えば、前記a)〜c)のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、PrRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩を得た後、該化合物またはその塩が上記したPrRP受容体を介する細胞刺激活性や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用(好ましくは、アドレナリン分泌促進作用、血圧上昇作用または血糖上昇作用)を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性または作用を有する化合物またはその塩はPrRP受容体アゴニストであり、該活性または作用を有しない化合物またはその塩はPrRP受容体アンタゴニストである。
(ii)(a)試験化合物をPrRP受容体を含有する細胞(例、CHO細胞、アドレナリン産生細胞)に接触させ、上記PrRP受容体を介した細胞刺激活性やアドレナリン分泌調節作用(好ましくは、アドレナリン分泌促進作用)を測定する。該細胞刺激活性または作用を有する化合物またはその塩はPrRP受容体アゴニストである。
(b)PrRP受容体を活性化する化合物(例えば、PrRPPなど)をPrRP受容体を含有する細胞(例、CHO細胞、アドレナリン産生細胞)に接触させた場合と、PrRP受容体を活性化する化合物および試験化合物をPrRP受容体を含有する細胞に接触させた場合における、PrRP受容体を介した該細胞刺激活性または作用を測定し、比較する。PrRP受容体を活性化する化合物による細胞刺激活性または作用を減少させ得る化合物またはその塩はPrRP受容体アンタゴニストである。
(iii)(a)試験化合物を非ヒト哺乳動物に投与し、体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖を測定する。体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用(特に、アドレナリン分泌促進作用、血圧上昇作用または血糖上昇作用)を有する化合物またはその塩はPrRP受容体アゴニストである。一方、該調節作用を有しない化合物またはその塩はPrRP受容体アンタゴニストである。
(b)PrRP受容体を活性化する化合物(例えば、PrRPPなど)を非ヒト哺乳動物に投与した場合と、PrRP受容体を活性化する化合物および試験化合物を非ヒト哺乳動物に接触させた場合における、体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖を測定する。体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用(特に、アドレナリン分泌促進作用、血圧上昇作用または血糖上昇作用)を減少させる化合物またはその塩はPrRP受容体アンタゴニストである。
PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる作用を有する化合物またはその塩は、体内の水分または浸透圧の調節剤として有用である。
PrRP受容体アゴニストは、PrRPが有する生理活性と同様の作用を有しており安全で低毒性な医薬として有用である。
PrRP受容体アンタゴニストは、PrRPが有する生理活性を抑制することができるので、PrRPの生理活性を抑制するための安全で低毒性な医薬として有用である。
PrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物は、PrRPが有する生理活性を増強することができるので、安全で低毒性な医薬として有用である。PrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物は、PrRPが有する生理活性を減少させることができるので、PrRPの生理活性を抑制するための安全で低毒性な医薬として有用である。
具体的には、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるPrRP受容体アゴニストおよびPrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)に対する予防・治療剤として有用である。
さらに、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるPrRP受容体アゴニストおよびPrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
一方、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるPrRP受容体アンタゴニストおよびPrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する予防・治療剤として有用である。
さらに、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるPrRP受容体アンタゴニストおよびPrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
【0045】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上記の医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。具体的には、上記したPrRPを含有する予防・治療剤と同様に製造することができる。
得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につきPrRP受容体アゴニストを約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につきPrRP受容体アゴニストを約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0046】
(6)細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩を含有する医薬
PrRP受容体に対する抗体は、PrRP受容体を特異的に認識することができるので、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、例えば、
(i)非ヒト哺乳動物のa)血液、b)特定の臓器、c)臓器から単離した組織もしくは細胞等を破壊した後、細胞膜画分を単離し、細胞膜画分に含まれるPrRP受容体を定量することによる、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(ii)PrRP受容体を発現する形質転換体等を破壊した後、細胞膜画分を単離し、細胞膜画分に含まれるPrRP受容体を定量することによる、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(iii)非ヒト哺乳動物のa)血液、b)特定の臓器、c)臓器から単離した組織もしくは細胞等を切片とした後、免疫染色法を用いることにより、細胞表層での該受容体蛋白質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該蛋白質を確認することによる、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
(iv)PrRP受容体を発現する形質転換体等を切片とした後、免疫染色法を用いることにより、細胞表層での該受容体蛋白質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該蛋白質を確認することによる、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0047】
細胞膜画分に含まれるPrRP受容体の定量は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には免疫不全ラット、マウス、化ウサギなど)に対して、薬剤(例えば、免疫調節薬など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。得られた臓器、組織または細胞等を、例えば、適当な緩衝液(例えば、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヘペス緩衝液など)等に懸濁し、臓器、組織あるいは細胞を破壊し、界面活性剤(例えば、トリトンX100TM、ツイーン20TMなど)などを用い、さらに遠心分離や濾過、カラム分画などの手法を用いて細胞膜画分を得る。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したPrRP受容体と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
細胞膜画分に含まれるPrRP受容体は、例えば、本発明の抗体を用いたサンドイッチ免疫測定法、ウエスタンブロット解析などにより定量することができる。
かかるサンドイッチ免疫測定法は上記の方法と同様にして行なうことができ、ウエスタンブロットは自体公知の手段により行なうことができる。
(ii)PrRP受容体を発現する形質転換体を上記の方法に従い作製し、細胞膜画分に含まれるPrRP受容体を定量することができる。
【0048】
細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に試験化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、細胞膜におけるPrRP受容体の量を定量することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に試験化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、細胞膜におけるPrRPの量を定量することにより行なうことができる。
細胞膜画分に含まれるPrRP受容体の確認は具体的には以下のようにして行なう。
(iii)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には免疫不全モデルラット、マウス、ウサギなど)に対して、薬剤(例えば、免疫調節薬など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。得られた臓器、組織または細胞等を、常法に従い組織切片とし、本発明の抗体を用いて免疫染色を行う。細胞表層での該受容体蛋白質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該蛋白質を確認することにより、定量的または定性的に、細胞膜におけるPrRP受容体の量を確認することができる。
(iv)PrRP受容体を発現する形質転換体等を用いて同様の手段をとることにより確認することもできる。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
【0049】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物は、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させることにより、PrRP受容体を介する細胞刺激活性や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を増強させる化合物、(ロ)細胞膜におけるPrRP受容体の量を減少させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を減弱させる化合物である。
上記スクリーニング方法で得られる化合物の塩としては、前記したPrRPの塩と同様のものが用いられる。
細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩は、体内の水分または浸透圧の調節剤として有用である。
細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を増強させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)に対する安全で低毒性な予防・治療剤として有用である。
さらに、細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を増強させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
細胞膜におけるPrRP受容体の量を減少させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を減弱させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する安全で低毒性な予防・治療剤として有用である。
さらに、細胞膜におけるPrRP受容体の量を減少させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を減弱させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。具体的には、上記したPrRPを含有する予防・治療剤と同様に製造することができる。
得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させる化合物またはその塩を一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させる化合物またはその塩を一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0050】
(7)PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体を含有してなる医薬
PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体(特に、中和抗体)は、PrRPまたはPrRP受容体が関与するシグナル伝達、例えば、PrRP受容体を介する細胞刺激活性を不活性化することができる。
したがって、PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体(特に、中和抗体)は体内の水分または浸透圧の調節剤として、さらには高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する安全で低毒性な予防・治療剤として用いることができる。
さらに、PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体(特に、中和抗体)は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
上記予防・治療剤は、前記したPrRPを含有する医薬と同様にして製造し、使用することができる。
【0051】
(8)アンチセンスDNAまたはsiRNAを含有してなる医薬
PrRPをコードするDNAに対するアンチセンスDNAもしくはsiRNAまたはPrRP受容体をコードするDNAに対するアンチセンスDNAもしくはsiRNA(以下、アンチセンスDNAまたはsiRNAと略記する)は体内の水分または浸透圧の調節剤として、さらには高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する安全で低毒性な予防・治療剤として用いることができる。
さらに、該アンチセンスDNAまたはsiRNAは、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
例えば、該アンチセンスDNAまたはsiRNAを用いる場合、該アンチセンスDNAまたはsiRNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。該アンチセンスDNAまたはsiRNAは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
さらに、該アンチセンスDNAまたはsiRNAは、組織や細胞におけるPrRPまたはPrRP受容体をコードするDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
【0052】
(9)DNA導入動物の作製
本発明は、PrRP受容体をコードする外来性のDNAまたはPrRPをコードする外来性のDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
〔2〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕記載の動物、
〔3〕ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第〔2〕記載の動物、および
〔4〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
【0053】
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常なPrRP受容体またはPrRPを発現させるDNAを意味し、例えば、正常なPrRP受容体またはPrRPの機能を抑制するPrRP受容体またはPrRPを発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
【0054】
PrRP受容体またはPrRPの発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウイルスなどのレトロウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性蛋白質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存蛋白質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎蛋白質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネーターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネーターなどが用いられる。
【0055】
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流 に連結することも目的により可能である。
正常なPrRP受容体またはPrRPの翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なPrRP受容体またはPrRPの翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
【0056】
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のPrRP受容体の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、PrRP受容体またはPrRPの機能亢進症や、PrRP受容体またはPrRPが関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、PrRP受容体またはPrRPの増加症状を有することから、PrRP受容体またはPrRPに関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0057】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的にPrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、PrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、PrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症における異常PrRP受容体またはPrRPによる正常PrRP受容体またはPrRPの機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、PrRP受容体またはPrRPの増加症状を有することから、PrRP受容体またはPrRPまたはの機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。また、上記2種類の本発明のDNA転移動物のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現されたPrRP受容体またはPrRP組織を分析することによる、PrRP受容体またはPrRPにより特異的に発現あるいは活性化するPrRP受容体またはPrRPとの関連性についての解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼変異PrRP受容体またはPrRPを単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、PrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症などを含む、PrRP受容体またはPrRPに関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、PrRP受容体またはPrRPに関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどの蛋白質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、PrRP受容体またはPrRP産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、PrRP受容体またはPrRPおよびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、PrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症を含む、PrRP受容体またはPrRPに関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、PrRP受容体またはPrRPが関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0058】
(10)ノックアウト動物
本発明は、PrRP受容体をコードするDNAまたはPrRPをコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する)が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
〔2〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔3〕ネオマイシン耐性である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔4〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔5〕ゲッ歯動物がマウスである第〔4〕項記載の胚幹細胞、
〔6〕本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
〔7〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔8〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔9〕ゲッ歯動物がマウスである第〔8〕項記載の非ヒト哺乳動物、および
〔10〕第〔7〕項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしているPrRP受容体またはPrRPの活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的にPrRP受容体またはPrRPの発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
【0059】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
【0060】
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1〜10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001〜0.5%トリプシン/0.1〜5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおけるPrRP受容体またはPrRPの細胞生物学的検討において有用である。
【0061】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、PrRP受容体またはPrRPのヘテロ発現不全個体であり、PrRP受容体またはPrRPのヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔からPrRP受容体またはPrRPのホモ発現不全個体を得ることができる。
【0062】
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、PrRP受容体またはPrRPにより誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、PrRP受容体またはPrRPの生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0063】
(10a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
【0064】
該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の水分または浸透圧調節作用が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上改善された場合、該試験化合物を上記の疾患に対して治療・予防効果を有する化合物として選択することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物またはその塩であり、PrRP受容体またはPrRPの欠損や損傷などによって引き起こされる疾患(例えば、アジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)など)に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。
さらに、該スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したPrRP受容体とリガンドとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物またはその塩を経口投与する場合、一般的に低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、該化合物またはその塩を注射剤の形で通常、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0065】
(10b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、PrRP受容体またはPrRPをコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、PrRP受容体またはPrRPの発現する組織で、PrRP受容体またはPrRP受容体の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便にPrRP受容体またはPrRPの動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、PrRP受容体またはPrRP欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物またはその塩であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩である。
該スクリーニング方法で得られた化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0066】
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩は、体内の水分または浸透圧の調節剤として有用である。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、PrRP受容体またはPrRPの発現を促進し、PrRP受容体またはPrRPの機能を促進することができるので、例えば、PrRP受容体またはPrRPの機能不全に関連する疾患(例えば、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)など)の予防・治療剤などの医薬として有用である。
さらに、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、PrRP受容体またはPrRPの発現を阻害し、PrRP受容体またはPrRPの機能を阻害することができるので、例えば、PrRP受容体またはPrRPの機能過多に関連する疾患(高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群)などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
さらに、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0067】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したPrRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を経口投与する場合、一般的に低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物またはその塩を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物またはその塩の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を注射剤の形で通常、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物またはその塩を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、PrRP受容体またはPrRPのプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々の蛋白質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのPrRP受容体またはPrRPを合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、PrRP受容体またはPrRPそのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0068】
(11)各種薬物の作用メカニズムの解明方法
PrRP受容体を用いることによって、各種薬物がPrRP受容体を介して薬理効果を発揮しているか否かを確認することができる。
すなわち、本発明は、
(1)PrRP受容体を用いることを特徴とする、(i)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬または(ii)アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の予防・治療薬がPrRP受容体に結合することを確認する方法、
(2)PrRP受容体を用いることを特徴とする、(i)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬(特に、アドレナリン分泌促進薬、血圧上昇薬または血糖上昇薬)または(ii)アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病(特に、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖)の予防・治療薬がPrRP受容体に対するアゴニストであることを確認する方法、
(3)PrRP受容体を用いることを特徴とする、(i)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬(特に、アドレナリン分泌抑制薬、血圧低下薬または血糖低下薬)または(ii)高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病(特に、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病)の予防・治療薬がPrRP受容体に対するアンタゴニストであることを確認する方法、
(4)各薬をPrRP受容体に接触させた場合における、各薬とPrRP受容体との結合量を測定することを特徴とする上記(1)〜(3)記載のスクリーニング方法を提供する。
この確認方法は、前記したRFRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法において、試験化合物に代えて、上記の薬物を使用することによって実施することができる。
また、本発明の確認方法用キットは、前記したRFRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物のスクリーニング用キットにおいて、試験化合物に代えて、上記の薬物を含有するものである。
このように、本発明の確認方法を用いることによって、市販または開発途中の各種薬物がPrRP受容体を介して薬理効果を発揮していることを確認することができる。
【0069】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
I :イノシン
R :アデニン(A)またはグアニン(G)
Y :チミン(T)またはシトシン(C)
M :アデニン(A)またはシトシン(C)
K :グアニン(G)またはチミン(T)
S :グアニン(G)またはシトシン(C)
W :アデニン(A)またはチミン(T)
B :グアニン(G)、グアニン(G)またはチミン(T)
D :アデニン(A)、グアニン(G)またはチミン(T)
V :アデニン(A)、グアニン(G)またはシトシン(C)
N :アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)もしくはチミン(T)または不明もしくは他の塩基
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
BHA :ベンズヒドリルアミン
pMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミン
Tos :p−トルエンスルフォニル
Bzl :ベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
DCM :ジクロロメタン
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA :トリフルオロ酢酸
DIEA :ジイソプロピルエチルアミン
Gly :グリシン
AlaまたはA :アラニン
ValまたはV :バリン
LeuまたはL :ロイシン
IleまたはI :イソロイシン
SerまたはS :セリン
ThrまたはT :スレオニン
CysまたはC :システイン
MetまたはM :メチオニン
GluまたはE :グルタミン酸
AspまたはD :アスパラギン酸
LysまたはK :リジン
ArgまたはR :アルギニン
HisまたはH :ヒスチジン
PheまたはF :フェニルアラニン
TyrまたはY :チロシン
TrpまたはW :トリプトファン
ProまたはP :プロリン
AsnまたはN :アスパラギン
GlnまたはQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0070】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
PrRPのアミノ酸配列の一般式を示す。
〔配列番号:2〕
ウシPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
ウシPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
ラットPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
ヒトPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
マウスPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:7〕
ウシPrRP(20)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
ウシPrRP(21)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:9〕
ウシPrRP(22)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:10〕
ラットPrRP(20)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:11〕
ラットPrRP(21)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:12〕
ラットPrRP(22)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:13〕
ヒトPrRP(20)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:14〕
ヒトPrRP(21)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:15〕
ヒトPrRP(22)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:16〕
ウシPrRP(29)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:17〕
ウシPrRP(19)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:18〕
ウシPrRP(31)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:19〕
ウシPrRP(32)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:20〕
ウシPrRP(33)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:21〕
ラットPrRP(31)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:22〕
ラットPrRP(32)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:23〕
ラットPrRP(33)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:24〕
ヒトPrRP(31)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:25〕
ヒトPrRP(32)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:26〕
ヒトPrRP(33)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:27〕
マウスPrRP(31)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:28〕
PrRPの部分アミノ酸配列の一般式を示す。
〔配列番号:29〕
配列番号:2で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:30〕
配列番号:16で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:31〕
配列番号:17で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:32〕
配列番号:18で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:33〕
配列番号:19で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:34〕
配列番号:20で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:35〕
配列番号:7で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:36〕
配列番号:8で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:37〕
配列番号:9で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:38〕
配列番号:4で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:39〕
配列番号:21で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:40〕
配列番号:22で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:41〕
配列番号:23で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:42〕
配列番号:10で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:43〕
配列番号:11で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:44〕
配列番号:12で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:45〕
配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:46〕
配列番号:24で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:47〕
配列番号:25で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:48〕
配列番号:26で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:49〕
配列番号:13で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:50〕
配列番号:14で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:51〕
配列番号:15で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:52〕
配列番号:6で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:53〕
配列番号:6で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするゲノムDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:54〕
ヒトPrRP受容体の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:55〕
ヒトPrRP受容体の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:56〕
ヒトPrRP受容体の全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:57〕
マウスPrRP受容体の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:58〕
マウスPrRP受容体の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:59〕
ラットPrRP受容体(UHR−1)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:60〕
配列番号:54で表わされるアミノ酸配列からなるヒトPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:61〕
配列番号:55で表わされるアミノ酸配列からなるヒトPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:62〕
配列番号:56で表わされるアミノ酸配列からなるヒトPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:63〕
配列番号:57で表わされるアミノ酸配列からなるマウスPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:64〕
配列番号:58で表わされるアミノ酸配列からなるマウスPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:65〕
配列番号:59で表わされるアミノ酸配列からなるラットPrRP受容体(UHR−1)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:66〕
実施例1で用いたセンスプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:67〕
実施例1で用いたアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:68〕
配列番号:27で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
【0071】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
【0072】
実施例1 正常ラットおよび副腎摘出ラットでの延髄最後野におけるPrRP mRNAの検出
Wistar系成熟雄ラットをsodium pentobarbital (50mg/kg, ip, 大日本製薬)にて十分に麻酔し、左右の副腎を摘出した。副腎摘出後、一週間0.9%塩化ナトリウム溶液を与え飼育し、再びsodium pentobarbital (50mg/kg, ip, 大日本製薬)にて麻酔し、脳を摘出した。また、無処置の同系ラットも同様に脳を摘出した。摘出した脳は、4%パラホルムアルデヒド(ナカライテスク)を含む0.1Mリン酸緩衝液 (pH 7.4)で24時間浸漬固定した後、30%ショ糖を含むPBSに2日以上浸漬し、insitu hybridization用の試料とした。
まず、rat PrRP mRNAに対するdigoxigenin(DIG)標識cRNA probeの作製は以下のように行った。
Wistar系成熟雄ラットの延髄からISOGEN (Nippon Gene社)を用いてtotal RNAを抽出した。DNAの混入を防ぐためDNaseで消化した後、Ready to Go T−primed First−strand Kit (Amersham Pharmacia社)を用いて5μgのtotal RNAから逆転写 (RT)反応を行いcDNAを合成した。RT反応後、Ampli Taq−Gold (Perkin Elmer社)を用いてpolymerase chain reaction (PCR)を行った。PrRP mRNA (11−473)に相当する461bpの断片を得るため、sense primerにttatcaccactcaagggacaga(配列番号:66)を、antisense primerにagagtaaacaaagccaacactttt(配列番号:67)をそれぞれ2pmol/10μl用いた。PCRにおいては95℃・10分のpre−PCR heatサイクルの後、94℃・ 1分、58℃・1分で45サイクル増幅し、その後60℃・10分の最終サイクルを行った。2%アガロースゲルで増幅産物を泳動し、予想された461bpの位置に単一バンドを確認した後、このPCR産物をTA−cloning Kit (promega社)を用いてpGEM−T Easy Vectorに組み込んだ。このプラスミドをXL2 Blue (Strategene社)に導入し、white−blue selectionを行い、rat PrRP cDNA断片をクローニングした。この正方向もしくは逆方向に組み込まれたrat PrRP cDNA断片 (461bp)を含むプラスミドをSpeIを用いて直鎖化し、DIG−RNAラベリングキット(Roche社)のプロトコールに従ってT7 RNA polymeraseにてantisenseもしくはsenseのDIG標識cRNA probeを作製した。
In situ hybridizationにはフリーフローティング法を使用した。まずcryomicrotomeを用いて40mmの厚さの前頭断凍結切片を作製した。つぎに切片を4×SSC (SSC; 1×SSC = 150mM NaCl, 15mMクエン酸ナトリウム, pH7.0)で洗浄した後、1μg/ml Proteinase Kを含む10mM Tris−HCl / 1mM EDTA (pH 8.0)処理 (37度・15分)にてプロテアーゼ処理を行った。さらに、0.25%無水酢酸を含む0.1Mトリエタノールアミン (pH 8.0)による処理 (室温・10分)にてアセチル化を行った後、hybridization buffer (50%ホルムアミド, 3×SSC, 0.12Mリン酸緩衝液 (pH 7.4), 1×Denhardt’s solution, 0.125mg/ml酵母tRNA, 0.1mg/mlサケ精子DNA, 10%デキストラン硫酸)による処理 (60℃・20分)にてpre−hybridization反応を行った。Hybridization反応には、1−100ng/μlのantisenseもしくはsense probeをhybridization bufferに希釈し、85度で3分変性した後、切片に加え60度で12時間以上反応させた。引き続き、非特異的にhybridizationしたprobeを洗浄するため以下の操作を行った。1) 2×SSC/50%ホルムアミド処理 (60℃・15分 2回)、 2) TNE (0.5M NaCl, 10mM Tris−HCl (pH7.6), 1mM EDTA)処理 (37℃・10分)、 3) 20μg/ml RNase A in TNE処理 (37℃・30分)、 4) TNE処理(37℃・10分)、 5) 2×SSC処理 (60℃・15分 2回)、 6) 0.5×SSC処理 (60℃・15分 2回)。以上の操作を行った後、DIG標識probeを検出するための免疫組織化学を行った。まず、DIG−1 (100mM Tris−HCl pH 7.5, 150mM NaCl, 0.1% Tween20)で洗浄した後、1.5% Blocking reagent (Roche社)を含む DIG−1による処理(1時間)にて非特異反応のブロッキングを行い、anti−DIG fab−fragment antibody conjugated with alkaline phosphatase (Roche社)を含む DIG−1 (1:1000)を37度で2時間反応させた。DIG−1で十分洗浄した後、DIG−3 (100mM Tris−HCl pH 9.5, 100mM NaCl, 50mM MgCl2)でリンスし、337μg/ml 4−nitroblue tetrazolium (NBT)および175 mg/ml 5−bromo−4−chloro−3−indolyl−phosphate (BCIP)を含むDIG−3 1mlによって、室温にて発色反応を行った。適時に発色をPBS洗浄により止めた後、切片をスライドガラスに載せ、90%グリセロールを含むPBSで封入し、光学顕微鏡で観察した。
無処置ラットでは延髄の最後野にPrRPのmRNA発現は認められなかったが、副腎処理ラットではPrRPのmRNA発現が検出された。
【0073】
実施例2 正常ラットのPrRP受容体(UHR−1)のin situ hybridization
Wistar系成熟雄ラットをsodium pentobarbital (50mg/kg, ip, 大日本製薬)にて十分に麻酔し、速やかに脳を摘出後、4%パラホルムアルデヒド(ナカライテスク)を含む0.1Mリン酸緩衝液 (pH 7.4)で24時間浸漬固定した後、30%ショ糖を含むPBSに2日以上浸漬し、in situ hybridization用の試料とした。UHR−1 (ラットPrRP受容体) mRNAに対するDIG標識cRNA probeの作製は、以下の様に行った。Full length UHR−1 cDNA (1−1116)をpCR II TOPO (Invitrogen社)にサブクローニングした。このUHR−1 cDNAを含むプラスミドをBamHIもしくはXhoIを用いて直鎖化し、DIG−RNAラベリングキット (Roche社)のプロトコールに従ってT7もしくはSp6RNA polymeraseにてそれぞれantisense、senseのDIG標識cRNA probeを作製した。これらのprobeを40mM NaHCO3 / 60mM Na2HCO3(pH 10.2)でそれぞれ60℃・53分アルカリ加水分解し、150bpに断片化した。In situ hybridizationは実施例1と同様の方法で行った。
UHR−1 mRNAシグナルは、延髄の最後野に検出されたことから、延髄最後野は、UHR−1が存在し、PrRPが生理的に作用していると考えられる。
【0074】
実施例3 正常ラットおよび副腎摘出ラットでの延髄最後野における免疫組織染色によるPrRP免疫活性の検出
実施例1と同様に無処置ラットおよび副腎摘出ラットの脳を摘出後、5%アクロレイン(東京化成工業)を含む0.07Mリン酸緩衝液 (pH 7.4)で浸漬固定した。次に30%ショ糖を含むリン酸緩衝食塩水 (PBS)に2日以上浸漬した。免疫組織化学にはフリーフローティング法を使用した。まずcryomicrotomeを用いて60mmの厚さの前頭断凍結切片を作製した。次に切片をPBSに浸して洗浄および浸水化させた後、内因性のペルオキシターゼ活性を0.5%メタ過ヨウ素酸ナトリウムを含むPBSによる処理 (20分)にて失活させ、アルデヒド基を1%水素化ホウ素ナトリウムを含むPBSによる処理 (20分)にて還元した。さらに1%正常ウマ血清および0.4%Triton X−100 を含むPBS (TNBS)による処理 (1時間)にて非特異反応のブロッキングを行った。PrRPの局在はavidin biotinylated−horseradish−peroxidase (HRP) complex (ABC)法 (Vector Laboratory社)で可視化した。すなわち、切片をPrRPの部位特異的モノクローナル抗体であるP2L−1Ca(40μg/ml)もしくはP2L−1Ta(80μg/ml)(いずれもWO99/60112参照)を含むTNBSと室温で12時間以上反応させ、PBSで十分洗浄した後、biotin−conjugated donkey anti−mouseIgG (Chemicon International社) を含むTNBS (1:300)と室温で2時間反応させた。 PBSで十分洗浄後、ABCと室温で30分間反応させ、その後基質として0.02% 3,3−diaminobenzidine−tetrachloride (同仁化学研究所)および0.006% H2O2を含む50mM Tris−HCl (pH 7.6)で発色反応を行った。発色をPBS洗浄により止めた後、切片をスライドガラスに載せ、脱水・キシレンによる透徹を行いエンテラン (Melck社)に封入し、光学顕微鏡で観察した。
無処置ラットでは、延髄最後野ではUHR−1のmRNA発現部位にPrRP陽性繊維の投射は見られるが産生細胞体は検出されなかった。しかし、副腎摘出ラットでは、PrRP産生細胞体が23.4±13.1(平均値±標準誤差)個出現した(図1)。以上のように、副腎摘出により延髄最後野においてPrRP細胞体の出現が見られることから、延髄最後野においてPrRPが副腎機能の一端を担っていることが示唆された。
【0075】
実施例4 新生仔ラットの延髄最後野における免疫組織染色によるPrRP免疫活性の検出
Wistar系成獣ラットを交配することにより生まれた新生仔ラットの延髄最後野でのPrRP陽性細胞体を実施例3と同様の方法で免疫染色を行った。その結果、生後14日目より10 ±4.7個(n=4)細胞体が検出され、15日目で58 ±31個 (n=3)、16日目で72 ±7.5個(n=3)、17日目で75 ±38個(n=3)が検出された。しかし、18日目以降はPrRP細胞体は検出されなかった(図2)。値は、平均値±標準誤差を示す。
以上のように、母乳を主たる栄養分としている新生仔ラットでも延髄最後野においてPrRP細胞体の出現が認められたことから、PrRPは体内の水分調節に関与していることが示唆された。
【0076】
実施例5 ラット副腎初代培養細胞系でのアドレナリン産生細胞における免疫組織染色によるPrRP免疫活性の検出
ラット副腎初代培養細胞を以下の方法で作製した。Wistar系成熟雄ラットより副腎を摘出し、ハンクス溶液(123 mM NaCl, 5 mM KCl, 0.4 mM Na2HPO4, 4 mM NaHO3, 5mM glucoseより構成)に浸し、0.25% コラゲナーゼタイプI(シグマ社)で37℃、20分間処理後、0.25%トリプシンおよび0.1 U/ml DNase Iでさらに37℃、20分間処理した。酵素処理後、細胞にウシ胎児血清(FCS)を添加し、ポアサイズ100 μmのフィルターにより組織片を除去後、細胞懸濁液を200g、5分間遠心分離して酵素液を分離し細胞と分離した。得られた細胞群を10%ウマ血清(Gibco社)と2.5%ウシ胎児血清を含むHam’s F−12倍地(Gibco社)とDulbecco’s ModifiedEagle 培地(Gibco社)の等量混和培地に懸濁し副腎初代培養細胞とした。5%CO2存在下で4日間培養後、培養液を除去しPBSにて洗浄後10%ホルマリンを含むPBSにて30分間固定を行った。細胞をPBSで洗浄後、1%正常ウマ血清と0.4%Triton−Xを含むPBS(TNBS)にて1時間反応させた。抗PrRPモノクローナル抗体P2L−1(2 μg/ml)、抗tyrosine hydroxylase(TH)抗体(2000倍希釈、シグマ社)、抗phenylethanolamine N−methyltransferase(PNMT)抗体(1000倍希釈、Chemicon International社)を一次抗体として室温で24時間反応させた。二次抗体としてAlexa488標識化ヒツジ抗マウスIgG(MolecularProbe社)とAlexa594標識化ヒツジ抗ウサギIgG(MolecularProbe社)を反応後、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。その結果、全てのPrRP陽性細胞はTH陽性細胞およびPNMT陽性細胞と一致して存在した。これらの結果から、PrRPは副腎のアドレナリン産生細胞と共存して存在することが明らかとなり、PrRPは副腎においてアドレナリン分泌を制御し血圧および血糖値をコントロールすることが示唆された。
【0077】
【発明の効果】
PrRPまたはPrRP受容体、およびそれらをコードするDNAは水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を有しており、高血圧、糖尿病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖などの予防・治療剤として有用である。
また、PrRP受容体またはPrRPは、高血圧、糖尿病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖などに対して予防・治療効果のあるPrRP受容体アゴニストや高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧、糖尿病に対して予防・治療効果のあるPrRP受容体アンタゴニストのスクリーニングに有用である。
【0078】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】副腎摘出ラットにおける延髄最終野でのPrRP産生細胞体の数を示す。縦軸のPrRP−ir cell number(cells/AP)は延髄最後野当たりのPrRP産生細胞体の数を示す。横軸のcontは無処理ラットを、ADX(1W)は副腎摘出1週間後のラットを示す。
【図2】新生仔ラットにおける延髄最終野でのPrRP産生細胞体の数を示す。縦軸は細胞数を示す。横軸は生後の日数を示す。
【発明の属する技術分野】
本発明は、公知のレセプター蛋白質PrRP受容体(19P2)およびそのリガンドの新規用途に関する。
【0002】
【従来の技術】
下垂体機能調節作用、中枢神経機能調節作用、膵臓機能調節作用を有するヒト、ウシおよびラット由来のリガンドポリペプチド(PrRP)とそれに対するヒトおよびマウス由来のレセプター蛋白質(PrRP受容体)が報告されている(特許文献1)。
マウス由来のPrRPが知られている(特許文献2)。
ヒトおよびマウス由来PrRP受容体と高い相同性を有するラット由来オーファン受容体(UHR−1)が報告されている(非特許文献1)。
PrRPがプロラクチン分泌調節作用、胎盤機能調節作用を有することが報告されている(特許文献3)。
PrRPがオキシトシン分泌調節作用を有することが報告されている(特許文献4)。
PrRPに対するモノクローナル抗体(P2L−1Ca、P2L−2Ca、P2L−1Ta)が知られている(特許文献5)。
PrRPが副腎皮質刺激ホルモン放出分泌調節作用を有することが報告されている(特許文献6)。
【0003】
【特許文献1】
WO97/24436号
【特許文献2】
WO98/49295号
【特許文献3】
WO98/58962号
【特許文献4】
WO00/38704号
【特許文献5】
WO99/60112号
【特許文献6】
WO00/38704号
【非特許文献1】
Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol.209, No.2, pp.606−613, 1995
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、PrRPおよびPrRP受容体のさらなる機能を解明し、新たな医薬を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、PrRPが予想外にも体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を有することを見出し、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖などの疾患に対して予防・治療効果を有することがわかった。本発明者らは、さらに検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(2)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(3)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(4)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(5)ペプチドが(i)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、(ii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜5個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチド、(iii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜5個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列からなるペプチド、(iv)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜5個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列からなるペプチド、(v)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜5個のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列からなるペプチド、または(vi)上記(ii)〜(v)の欠失・付加・挿入・置換を組み合わせたアミノ酸配列からなるペプチドである上記(1)〜(4)記載の剤、
(6)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤、
(7)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(8)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(9)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤、
(10)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(11)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(12)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(13)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(14)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(15)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(16)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(17)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(18)レセプター蛋白質が配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるレセプター蛋白質である上記(16)または(17)記載の剤、
(19)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(20)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(21)DNAが配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAである上記(19)または(20)記載の剤、
(22)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤、
(23)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(24)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(25)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤、
(26)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(27)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(28)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニストを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(29)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニストを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(30)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニストを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(31)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニストを含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(32)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(33)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤、
(34)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤、
(35)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤、
(36)哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節方法、
(37)哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療方法、
(38)哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節方法、
(39)哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療方法、
(40)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22または配列番号:23で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の使用、
(41)低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22または配列番号:23で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の使用、
(42)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の使用、
(43)高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の使用、
(44)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、および(または)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬のスクリーニング方法、および
(45)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、および(または)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬のスクリーニング用キットを提供する。
【0007】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられるペプチドは、WO97/24436号およびWO98/49295号に記載されている公知のペプチドであり、具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチド(以下、PrRPと略記する)である。
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上の相同性を有するアミノ酸配列などがあげられる。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
【0008】
前記の配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしては、前記した配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるペプチドと実質的に同質の活性を有するペプチドである。
実質的に同質とは、レセプター結合活性、シグナル伝達活性などが性質的に(例、生理化学的に、または薬理学的に)同質であることを示す。従って、レセプター結合活性、シグナル伝達活性や、水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用などが同等(例、約0.1〜100倍、好ましくは約0.5〜10倍、より好ましくは0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度、ペプチドの分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドとしては、具体的には、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1〜80個(好ましくは1〜50個、さらに好ましく1〜15個、より好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iv)配列番号:1で表されるアミノ酸配列に1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(v)配列番号:1で表されるアミノ酸配列中の1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(vi)これら欠失・付加・挿入・置換を組み合わせたアミノ酸配列からペプチドなどが用いられ、より具体的には、
(i)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、
(ii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が付加したアミノ酸配列からなるペプチド、
(iv)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(v)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜15個(好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個)が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列からなるペプチド、
(vi)これら欠失・付加・挿入・置換を組み合わせたアミノ酸配列からペプチドなどが用いられる。
アミノ酸配列が欠失、付加、挿入または置換されている場合、その欠失、付加、挿入または置換の位は特に限定されない。
また、配列番号:1で表されるアミノ酸配列のN末端に、配列番号:28で表されるアミノ酸配列が付加したアミノ酸配列を含有するペプチドなども好ましく用いられる。
【0009】
本明細書におけるペプチドは、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:61で表わされるアミノ酸配列からなるヒトPrRPをはじめとするPrRPは、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)の何れであってもよいが、C末端がアミドである場合が好ましい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
PrRPがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明でいうPrRPの範囲に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、PrRPには、N末端のアミノ酸残基(例、メチオニン残基)のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイルなどのC1−6アシル基など)で保護されているもの、生体内で切断されて生成するN末端のグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチル基などのC1−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。以下、これらのペプチドを含めてPrRPと略称することもある。
PrRPの塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸)や塩基(例、アルカリ金属塩)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。このような塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
PrRPまたはその塩は、WO97/24436号、WO98/49295号などに記載の方法に従って製造することができる。
【0010】
PrRPをコードするDNAとしては、前述したPrRPをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよく、例えばWO97/24436号、WO98/49295号などに記載のDNAが用いられる。
PrRPをコードするDNAとしては、例えば、配列番号:29〜53および配列番号:68のいずれかの配列番号で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:2〜配列番号:27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるPrRPと実質的に同質の活性を有するペプチドをコードするDNAなどであれば何れのものでもよい。
配列番号:29〜配列番号:53および配列番号:68のいずれかの配列番号で表される塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:29〜配列番号:53および配列番号:68のいずれかの配列番号で表される塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:2〜配列番号:27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAとしては、配列番号:29〜配列番号:53および配列番号:68のいずれかの配列番号で表される塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
配列番号:29において、第12番目のRはGまたはAを、第179番目および240番目のYはCまたはTを示す。第179番目のYがCの時、配列番号:2で表されるアミノ酸配列をコードし、第179番目のYがTの時、配列番号:3で表されるアミノ酸配列をコードする。
アミノ酸配列とそれをコードする塩基配列との関係は、後述のとおりである。
【0011】
PrRPを完全にコードするDNAのクローニングは、WO97/24436号、WO98/49295号に記載の方法に従って行うことができる。
また、PrRPをコードするDNAからPrRPを製造する場合、WO97/24436号、WO98/49295号に記載の方法を用いることができる。
PrRPおよび後述するPrRP受容体またはその部分ペプチド、およびこれらをコードするDNAは、自体公知の方法で標識化されていてもよく、具体的にはアイソトープラベル化されたもの、蛍光標識されたもの(例えば、フルオレセインなどによる蛍光標識)、ビオチン化されたものまたは酵素標識されたものなどがあげられる。
【0012】
上記したPrRPに対するレセプター蛋白質としては、WO97/24436号、WO98/49295号、Biochemical and Biophysical Research Communications, Vol.209, No.2, pp.606−613, 1995などに記載されている公知の蛋白質が用いられ、具体的には、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質(以下、PrRP受容体と略記する)が用いられる。
配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列としては、例えば、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列と約90%以上、好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列などが挙げられる。
配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有する蛋白質としては、例えば、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59と実質的に同一のアミノ酸配列を有し、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列からなるPrRP受容体と実質的に同質の活性を有するレセプター蛋白質などがあげられる。
【0013】
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。実質的に同質の活性としては、例えば、リガンド結合活性またはシグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、リガンド結合活性またはシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度や蛋白質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
リガンド結合活性またはシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、自体公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後述するリガンドの決定方法やスクリーニング方法に従って測定することができる。
また、PrRP受容体としては、▲1▼配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、▲2▼配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、▲3▼配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または▲4▼それら欠失・付加・置換を組み合わせたアミノ酸配列からなるレセプター蛋白質なども用いられる。
【0014】
本明細書におけるPrRP受容体は、ペプチド標記の慣例に従って左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。配列番号:54で表わされるアミノ酸配列からなるPrRP受容体をはじめとするPrRP受容体は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)のいずれであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
【0015】
PrRP受容体がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものもPrRP受容体の範囲に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、PrRP受容体には、上記したPrRP受容体において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖蛋白質などの複合蛋白質なども含まれる。
PrRP受容体の具体例としては、例えば、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列からなるPrRP受容体などが用いられる。
【0016】
PrRP受容体の部分ペプチドとしては、前記したPrRP受容体の部分ペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、PrRP受容体蛋白質分子のうち、細胞膜の外に露出している部位であって、レセプター結合活性を有するものなどが用いられる。
具体的には、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表わされるアミノ酸配列からなるPrRP受容体の部分ペプチドとしては、疎水性プロット解析において細胞外領域(親水性(Hydrophilic)部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性(Hydrophobic)部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
【0017】
PrRP受容体の部分ペプチドのアミノ酸の数は、前記したPrRP受容体の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列からなるペプチドなどが好ましい。
また、PrRP受容体の部分ペプチドは、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個(1または2個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、PrRP受容体の部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO−)、アミド(−CONH2)またはエステル(−COOR)(Rは上記と同意義を示す)のいずれであってもよい。
PrRP受容体の部分ペプチドがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものもPrRP受容体の範囲に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、PrRP受容体の部分ペプチドには、前記したPrRP受容体と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したN末端のグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
PrRP受容体またはその部分ペプチドの塩としては、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
PrRP受容体またはその塩、およびPrRP受容体を発現する細胞またはその細胞膜画分は、WO97/24436号、WO98/49295号などに記載の方法に従って製造することができる。
【0018】
PrRP受容体をコードするポリヌクレオチドとしては、PrRP受容体をコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、PrRP受容体をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(即ち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(即ち、非コード鎖)であってもよい。
PrRP受容体をコードするポリヌクレオチドを用いて、例えば、公知の実験医学増刊「新PCRとその応用」15(7)、1997記載の方法またはそれに準じた方法により、PrRP受容体のmRNAを定量することができる。
PrRP受容体をコードするDNAとしては、前述したPrRPをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよく、例えばWO97/24436号、WO98/49295号などに記載のDNAが用いられる。
【0019】
具体的には、PrRP受容体をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63または配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63、配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列とハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズする塩基配列を有し、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるPrRP受容体と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプター蛋白質をコードするDNAであれば何れのものでもよい。
配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63、配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列とハイブリダイズできるDNAとしては、例えば、配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63、配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、自体公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
該ハイストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
より具体的には、配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるPrRP受容体をコードするDNAとしては、それぞれ配列番号:60、配列番号:61、配列番号:62、配列番号:63、配列番号:64または配列番号:65で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
【0020】
PrRPもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体は、自体公知の方法、例えばWO97/24436号、WO98/49295号、WO99/60112号などに記載の方法に従って製造し、使用することができる。具体的には、WO99/60112号に記載されているP2L−1Ca、P2L−2Ca、P2L−1Taなどのモノクローナル抗体が用いられる。
PrRP受容体、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、自体公知の方法、例えばWO97/24436号、WO98/49295号などに記載の方法に従って製造し、使用することができる。
PrRPをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAは、自体公知の方法に従って製造し、使用することができる。PrRP受容体またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAは、自体公知の方法に従って製造し、使用することができる。
PrRPをコードするポリヌクレオチドまたはPrRP受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドに対するsiRNAは、PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするRNAの一部とそれに相補的なRNAを含有する二重鎖RNAである。
siRNAは、公知の方法(例、Nature, 411巻, 494頁, 2001年)に準じて、PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドの配列を基に設計して製造することができる。
PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするRNAの一部を含有するリボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine, 7巻, 221頁, 2001年)に準じて、PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、公知のリボザイムの配列の一部をPrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするRNAの一部に置換することによって製造することができる。PrRPまたはPrRP受容体もしくはその部分ペプチドをコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得るコンセンサス配列NUX(式中、Nはすべての塩基を、XはG以外の塩基を示す)の近傍の配列などが挙げられる。
【0021】
PrRPの主な産生部位は、dorsomedial hypothalamic nucleus(視床下部背内側核)、ventrolateral reticular formation(外側腹側網様核)、nucleus of the tractus solitarius in the medulla oblongata (延髄弧束核)の3箇所である。本発明者らは、PrRPの mRNAおよび免疫活性を検出することにより、副腎摘出一週間後にarea postrema(AP,最後野)にPrRP産生細胞が出現してくることを明らかにした。このことから、副腎摘出により、glucocorticoid(糖質コルチコイド)およびmineralcorticoide(鉱質コルチコイド)が生体内から消失するために、PrRPがこれらの機能を代用すると考えられた。Glucocorticoidは免疫系の抑制、糖新生、グリコーゲン貯蔵の促進作用で、mineralcorticoideはナトリウムイオンの再吸収の増加による体内貯留作用とカリウムイオンの腎臓を介する排泄の促進作用で、水代謝に影響を与える。また、本発明者らは、APでのPrRP発現は生後14〜17日まで見られるが、18日目以降に消失することを見出した。一方、APは浸透圧の感知、血圧調節、摂餌量や体重、体液のhomeostasisなどに調節する部位として知られている。また、APは脳周囲器官でありBlood−brain−barrierが薄く末梢血の影響を受けやすい部位である。こうした事実より、PrRPは体内の水分および浸透圧調節に関与していると考えられた。すなわち、PrRPは、副腎摘出によりおこる水分および浸透圧の異常を回復させるため、mineralcorticoideの作用を代替し水分排出を促進させる作用を持つことものと考えられる。そのメカニズムとしては、PrRP受容体は、APや視床下部などに広く存在することから、PrRPはAPに直接作用しているか、あるいはバソプッレシンなどの抗利尿ホルモンの分泌を調節していると考えられる。
さらに、本発明者らは、PrRPが副腎のアドレナリン産生細胞に存在することを明らかにした。1)PrRPはストレスで産生が上昇すること、2)アドレナリン産生細胞に共存するということから、PrRPはアドレナリン分泌の調節に関与し、さらには血圧、血糖値などの調節に関与していると考えられる。
したがって、▲1▼PrRP、その部分ペプチド、もしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩(以下、PrRPと略記する)、▲2▼PrRPをコードするDNA、▲3▼PrRPに対する抗体、▲4▼PrRPをコードするDNAに対するアンチセンスDNA、▲5▼PrRP受容体、その部分ペプチドまたはその塩(PrRP受容体と略記する)、▲6▼PrRP受容体をコードするDNA、▲7▼PrRP受容体に対する抗体、▲8▼PrRP受容体をコードするDNAに対するアンチセンスDNAは、以下のような用途を有している。
【0022】
(1)PrRPの機能不全に関連する疾患の予防・治療剤
a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAを、PrRPまたはPrRP受容体の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。例えば、生体内においてPrRPまたはPrRP受容体が減少しているために、PrRPまたはPrRP受容体の機能が期待できない患者がいる場合に、a)PrRPを該患者に投与し該PrRPの量を補充したり、b)(イ)PrRPをコードするDNAまたはPrRP受容体をコードするDNAを該患者に投与し発現させることによって、あるいは(ロ)対象となる細胞にPrRPをコードするDNAまたはPrRP受容体をコードするDNAを挿入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内におけるPrRPまたはPrRP受容体の量を増加させ、PrRPまたはPrRP受容体の機能を充分に発揮させることができる。すなわち、PrRPをコードするDNAまたはPrRP受容体をコードするDNAは、安全で低毒性なPrRPまたはPrRP受容体の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤として有用である。
具体的には、a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAは、例えば、体内の水分または浸透圧の調節剤として、さらにはアジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)の予防・治療剤として使用することができる。
さらに、a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAは、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
PrRPまたはPrRP受容体を上記予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
一方、PrRPをコードするDNAまたはPrRP受容体をコードするDNAを上記予防・治療剤として使用する場合は、これらDNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。DNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
例えば、a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAは、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、a)PrRP、b)PrRPをコードするDNA、c)PrRP受容体またはd)PrRP受容体をコードするDNAを生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
【0023】
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0024】
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
PrRPの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
DNAの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0025】
(2)遺伝子診断剤
PrRPをコードするDNA、PrRP受容体をコードするDNA、またはこれらDNAに対するアンチセンスDNAは、プローブとして使用することにより、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)におけるPrRPまたはPrRP受容体をコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
DNAまたはアンチセンスDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、自体公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションによりPrRPまたはPrRP受容体の発現低下が検出された場合は、例えば、PrRPまたはPrRP受容体の機能不全に関連する疾患、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖)である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションによりPrRPまたはPrRP受容体の発現過剰が検出された場合は、例えば、PrRPまたはPrRP受容体の過剰発現に関連する疾患、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧、糖尿病)である可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
【0026】
(3)PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩を含有する医薬
PrRPまたはPrRP受容体をコードするDNAは、プローブとして用いることにより、PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、例えば、(i)非ヒト哺乳動物のa)血液、b)特定の臓器、c)臓器から単離した組織もしくは細胞、または(ii)形質転換体等に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNA量を測定することによる、PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
PrRPまたはPrRP受容体のmRNA量の測定は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には免疫不全モデルラット、マウス、ウサギなど)に対して、薬剤(例えば、免疫調節薬など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。
得られた細胞に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNAは、例えば、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出し、例えば、TaqMan PCRなどの手法を用いることにより定量することができ、自体公知の手段によりノーザンブロットを行うことにより解析することもできる。
(ii)PrRPまたはPrRP受容体を発現する形質転換体をWO97/24436号またはWO98/49295号に記載の方法に従い作製し、該形質転換体に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNAを同様にして定量、解析することができる。
【0027】
PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に試験化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、細胞に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNA量を定量、解析することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に試験化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、該形質転換体に含まれるPrRPまたはPrRP受容体のmRNA量を定量、解析することにより行なうことができる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが用いられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
試験化合物は塩を形成していてもよく、試験化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0028】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、PrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる作用を有する化合物またはその塩であり、具体的には、(イ)PrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させることにより、PrRP受容体を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP生成抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を増強させる化合物またはその塩、(ロ)PrRPの発現量を減少させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を減弱させる化合物またはその塩である。
上記スクリーニング方法で得られる化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記スクリーニング方法で得られる化合物の塩としては、前記したPrRPと同様の塩を用いることができる。
上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩は、体内の水分または浸透圧の調節剤として用いることができる。
上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)に対する安全で低毒性なの予防・治療剤として用いることができる。
さらに、上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(好ましくは、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を減少させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する安全で低毒性なの予防・治療剤として用いることができる。
さらに、上記スクリーニング方法で得られるPrRPまたはPrRP受容体の発現量を減少させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(好ましくは、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
【0029】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。具体的には、上記したPrRPを含有する予防・治療剤と同様に製造することができる。
得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につきPrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させる化合物またはその塩を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につきPrRPまたはPrRP受容体の発現量を増加させる化合物またはその塩を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0030】
(4)抗体を用いる診断方法
PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する)は、PrRPまたはPrRP受容体を特異的に認識することができるので、被検液中のPrRPまたはPrRP受容体の検出や中和に使用することができる。
すなわち、本発明は、
(i)本発明の抗体と、被検液および標識化されたPrRPまたはPrRP受容体とを競合的に反応させ、該抗体に結合した標識化されたPrRPまたはPrRP受容体の割合を測定することを特徴とする被検液中のPrRPまたはPrRP受容体の定量法、および
(ii)被検液と担体上に不溶化した本発明の抗体および標識化された本発明の別の抗体とを同時あるいは連続的に反応させたのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することを特徴とする被検液中のPrRPまたはPrRP受容体の定量法を提供する。
上記(ii)の定量法においては、一方の抗体がPrRPまたはPrRP受容体のN端部を認識する抗体で、他方の抗体がPrRPまたはPrRP受容体のC端部に反応する抗体であることが望ましい。
また、PrRPまたはPrRP受容体に対するモノクローナル抗体(以下、本発明のモノクローナル抗体)を用いてPrRPまたはPrRP受容体の定量を行うことができるほか、組織染色等による検出を行なうこともできる。これらの目的には、抗体分子そのものを用いてもよく、また、抗体分子のF(ab’)2、Fab’、あるいはFab画分を用いてもよい。
本発明の抗体を用いるPrRPまたはPrRP受容体の定量法は、特に制限されるべきものではなく、被測定液中の抗原量(例えば、PrRP量またはPrRP受容体量)に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する測定法であれば、いずれの測定法を用いてもよい。例えば、ネフロメトリー、競合法、イムノメトリック法およびサンドイッチ法が好適に用いられるが、感度、特異性の点で、後述するサンドイッチ法を用いるのが特に好ましい。
【0031】
標識物質を用いる測定法に用いられる標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質などが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、〔125I〕、〔131I〕、〔3H〕、〔14C〕などが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。さらに、抗体あるいは抗原と標識剤との結合にビオチン−アビジン系を用いることもできる。
抗原あるいは抗体の不溶化に当っては、物理吸着を用いてもよく、また通常酵素等を不溶化、固定化するのに用いられる化学結合を用いる方法でもよい。担体としては、アガロース、デキストラン、セルロースなどの不溶性多糖類、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、シリコン等の合成樹脂、あるいはガラス等があげられる。
サンドイッチ法においては不溶化した本発明のモノクローナル抗体に被検液を反応させ(1次反応)、さらに標識化した別の本発明のモノクローナル抗体を反応させ(2次反応)たのち、不溶化担体上の標識剤の活性を測定することにより被検液中のPrRP量を定量することができる。1次反応と2次反応は逆の順序に行っても、また、同時に行なってもよいし時間をずらして行なってもよい。標識化剤および不溶化の方法は前記のそれらに準じることができる。また、サンドイッチ法による免疫測定法において、固相用抗体あるいは標識用抗体に用いられる抗体は必ずしも1種類である必要はなく、測定感度を向上させる等の目的で2種類以上の抗体の混合物を用いてもよい。
【0032】
本発明のサンドイッチ法によるPrRPまたはPrRP受容体の測定法においては、1次反応と2次反応に用いられる本発明のモノクローナル抗体は、PrRPまたはPrRP受容体の結合する部位が相異なる抗体が好ましく用いられる。すなわち、1次反応および2次反応に用いられる抗体は、例えば、2次反応で用いられる抗体が、PrRPまたはPrRP受容体のC端部を認識する場合、1次反応で用いられる抗体は、好ましくはC端部以外、例えばN端部を認識する抗体が用いられる。
本発明のモノクローナル抗体をサンドイッチ法以外の測定システム、例えば、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどに用いることができる。
競合法では、被検液中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させたのち、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検液中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検液中の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検液中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させたのち、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検液中の抗原量を定量する。
また、ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検液中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合にもレーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の定量方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてPrRPまたはPrRP受容体の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。
例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「Methods in ENZYMOLOGY」Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D : Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E : Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I : Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のようにして、本発明の抗体を用いることによって、PrRPまたはPrRP受容体を感度良く定量することができる。
【0033】
さらには、本発明の抗体を用いてPrRPまたはPrRP受容体の濃度を定量することによって、PrRPまたはPrRP受容体の濃度の減少が検出された場合、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖)などの疾患である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、PrRPまたはPrRP受容体の濃度の増加が検出された場合には、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧、糖尿病)などの疾患である、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
【0034】
(5)PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニストなど)のスクリーニング方法、およびPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物を含有する医薬
PrRP受容体を用いるか、または組換え型PrRP受容体の発現系を構築し、該発現系を用いたレセプター結合アッセイ系を用いることによって、PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩を効率よくスクリーニングすることができる。
このような化合物には、(イ)PrRP受容体を介して細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP生成抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内蛋白質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など)や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を有する化合物またはその塩(いわゆる、PrRP受容体アゴニスト)、(ロ)PrRP受容体を介する細胞刺激活性や該調節作用を阻害する化合物またはその塩(いわゆる、PrRP受容体アンタゴニスト)、(ハ)PrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物またはその塩、あるいは(ニ)PrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩などが含まれる。
すなわち、本発明は、PrRPおよび(または)PrRP受容体を用いることを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬のスクリーニング方法を提供する。
より具体的には、本発明は、(i)PrRPとPrRP受容体とを接触させた場合と(ii)PrRPとPrRP受容体および試験化合物とを接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩(水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬)のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば、PrRP受容体に対するPrRPの結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較することを特徴とする。
【0035】
より具体的には、本発明は、
a)標識したPrRPを、PrRP受容体に接触させた場合と、標識したPrRPおよび試験化合物をPrRP受容体に接触させた場合における、標識したPrRPのPrRP受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
b)標識したPrRPを、PrRP受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識したPrRPおよび試験化合物をPrRP受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識したPrRPの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
c)標識したPrRPを、PrRP受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したPrRP受容体に接触させた場合と、標識したPrRPおよび試験化合物をPrRP受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したPrRP受容体に接触させた場合における、標識したPrRPのPrRP受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
【0036】
d)PrRPを活性化する化合物(例えば、PrRPなど)をPrRP受容体を含有する細胞に接触させた場合と、PrRPを活性化する化合物および試験化合物をPrRP受容体を含有する細胞に接触させた場合における、PrRP受容体を介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
e)PrRPを活性化する化合物(例えば、PrRPなど)をPrRP受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したPrRP受容体に接触させた場合と、PrRPを活性化する化合物および試験化合物をPrRP受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したPrRP受容体に接触させた場合における、レセプターを介する細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするPrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法では、PrRPの代わりに、PrRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩(例、合成アゴニストなど)を用いることもできる。このPrRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩は、PrRPを用いて本発明のスクーニング方法を実施することによって得ることができる。
【0037】
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いるPrRP受容体としては、PrRP受容体を含有する哺乳動物の臓器の細胞膜画分が好適である。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させたヒト由来のPrRP受容体などが適している。
PrRP受容体を製造するには、WO94/24436号またはWO98/49295号に記載の方法が用いられるが、PrRP受容体をコードするDNAを哺乳細胞や昆虫細胞で発現することにより行なうことが好ましい。目的とする蛋白質部分をコードするDNA断片には相補DNAが用いられるが、必ずしもこれに制約されるものではない。例えば、遺伝子断片や合成DNAを用いてもよい。PrRP受容体をコードするDNA断片を宿主動物細胞に導入し、それらを効率よく発現させるためには、該DNA断片を昆虫を宿主とするバキュロウイルスに属する核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)のポリヘドリンプロモーター、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどの下流に組み込むのが好ましい。発現したレセプターの量と質の検査はそれ自体公知の方法で行うことができる。例えば、文献〔Nambi,P.ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),267巻,19555〜19559頁,1992年〕に記載の方法に従って行なうことができる。
したがって、本発明のスクリーニング方法において、PrRP受容体を含有するものとしては、それ自体公知の方法に従って精製したPrRP受容体であってもよいし、PrRP受容体を含有する細胞を用いてもよく、またPrRP受容体を含有する細胞の膜画分を用いてもよい。
【0038】
本発明のスクリーニング方法において、PrRP受容体を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法はそれ自体公知の方法に従って行なうことができる。
PrRP受容体を含有する細胞としては、PrRP受容体を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが好ましい。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したPrRP受容体と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
PrRP受容体を含有する細胞や膜画分中のPrRP受容体の量は、1細胞当たり103〜108分子であるのが好ましく、105〜107分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのPrRP受容体結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0039】
PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物をスクリーニングする上記のa)〜c)を実施するためには、例えば、適当なPrRP受容体画分と、標識したPrRPが必要である。
PrRP受容体画分としては、天然型のPrRP受容体画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型PrRP受容体画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などを示す。
標識したPrRPとしては、標識したPrRP、標識したPrRPアナログ化合物などが用いられる。例えば〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識されたPrRPなどが用いられる。
具体的には、PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物のスクリーニングを行なうには、まずPrRP受容体を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりPrRP受容体標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのPrRPとPrRP受容体との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるPrRP受容体やPrRPの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000〜500000cpm)の標識したPrRPを添加し、同時に10−4M〜10−10Mの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識のPrRPを加えた反応チューブも用意する。反応は約0〜50℃、望ましくは約4〜37℃で、約20分〜24時間、望ましくは約30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が、例えば、50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0040】
PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物スクリーニングする上記のd)〜e)の方法を実施するためには、例えば、PrRP受容体を介する細胞刺激活性を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。
具体的には、まず、PrRP受容体を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行なうにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸、cAMPなど)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当なPrRP受容体を発現した細胞が必要である。PrRP受容体を発現した細胞としては、天然型のPrRP受容体を有する細胞株、上記の組換え型PrRP受容体を発現した細胞株などが望ましい。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
また、試験化合物としては、PrRP受容体の活性部位の原子座標およびリガンド結合ポケットの位置に基づいて、リガンド結合ポケットに結合するように設計された化合物が好ましく用いられる。PrRP受容体の活性部位の原子座標およびリガンド結合ポケットの位置の測定は、公知の方法あるいはそれに準じる方法を用いて行うことができる。
【0041】
PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キットは、PrRP、PrRP受容体を含有する細胞またはその細胞膜画分を含有するものなどである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
a)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
b)PrRP受容体標品
PrRP受容体を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
c)標識PrRP
市販の〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識したPrRP
水溶液の状態のものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
d)PrRP標準液
PrRPを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
【0042】
2.測定法
a)12穴組織培養用プレートにて培養したPrRP受容体発現CHO細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
b)10−3〜10−10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識PrRPを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物の代わりに10−3MのPrRPを5μl加えておく。
c)反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識PrRPを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
d)液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式で求める。
PMB=[(B−NSB)/(B0−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non−specific Binding(非特異的結合量)
B0 :最大結合量
【0043】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物としては、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
上記スクリーニング方法で得られる化合物の塩としては、前記したPrRPの塩と同様のものが用いられる。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる作用を有する化合物またはその塩であり、具体的には、(イ)PrRP受容体を介して細胞刺激活性や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を有する化合物またはその塩(いわゆる、PrRP受容体アゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物またはその塩(いわゆる、PrRP受容体アンタゴニスト)、(ハ)PrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物またはその塩、あるいは(ニ)PrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩である。
【0044】
PrRP受容体アゴニストであるか、アンタゴニストであるかの具体的な評価方法は以下の(i)および(ii)に従えばよい。
(i)例えば、前記a)〜c)のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、PrRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩を得た後、該化合物またはその塩が上記したPrRP受容体を介する細胞刺激活性や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用(好ましくは、アドレナリン分泌促進作用、血圧上昇作用または血糖上昇作用)を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性または作用を有する化合物またはその塩はPrRP受容体アゴニストであり、該活性または作用を有しない化合物またはその塩はPrRP受容体アンタゴニストである。
(ii)(a)試験化合物をPrRP受容体を含有する細胞(例、CHO細胞、アドレナリン産生細胞)に接触させ、上記PrRP受容体を介した細胞刺激活性やアドレナリン分泌調節作用(好ましくは、アドレナリン分泌促進作用)を測定する。該細胞刺激活性または作用を有する化合物またはその塩はPrRP受容体アゴニストである。
(b)PrRP受容体を活性化する化合物(例えば、PrRPPなど)をPrRP受容体を含有する細胞(例、CHO細胞、アドレナリン産生細胞)に接触させた場合と、PrRP受容体を活性化する化合物および試験化合物をPrRP受容体を含有する細胞に接触させた場合における、PrRP受容体を介した該細胞刺激活性または作用を測定し、比較する。PrRP受容体を活性化する化合物による細胞刺激活性または作用を減少させ得る化合物またはその塩はPrRP受容体アンタゴニストである。
(iii)(a)試験化合物を非ヒト哺乳動物に投与し、体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖を測定する。体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用(特に、アドレナリン分泌促進作用、血圧上昇作用または血糖上昇作用)を有する化合物またはその塩はPrRP受容体アゴニストである。一方、該調節作用を有しない化合物またはその塩はPrRP受容体アンタゴニストである。
(b)PrRP受容体を活性化する化合物(例えば、PrRPPなど)を非ヒト哺乳動物に投与した場合と、PrRP受容体を活性化する化合物および試験化合物を非ヒト哺乳動物に接触させた場合における、体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖を測定する。体内の水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用(特に、アドレナリン分泌促進作用、血圧上昇作用または血糖上昇作用)を減少させる化合物またはその塩はPrRP受容体アンタゴニストである。
PrRPとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる作用を有する化合物またはその塩は、体内の水分または浸透圧の調節剤として有用である。
PrRP受容体アゴニストは、PrRPが有する生理活性と同様の作用を有しており安全で低毒性な医薬として有用である。
PrRP受容体アンタゴニストは、PrRPが有する生理活性を抑制することができるので、PrRPの生理活性を抑制するための安全で低毒性な医薬として有用である。
PrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物は、PrRPが有する生理活性を増強することができるので、安全で低毒性な医薬として有用である。PrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物は、PrRPが有する生理活性を減少させることができるので、PrRPの生理活性を抑制するための安全で低毒性な医薬として有用である。
具体的には、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるPrRP受容体アゴニストおよびPrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)に対する予防・治療剤として有用である。
さらに、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるPrRP受容体アゴニストおよびPrRPとPrRP受容体との結合力を増強する化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
一方、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるPrRP受容体アンタゴニストおよびPrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する予防・治療剤として有用である。
さらに、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるPrRP受容体アンタゴニストおよびPrRPとPrRP受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
【0045】
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩を上記の医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。具体的には、上記したPrRPを含有する予防・治療剤と同様に製造することができる。
得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につきPrRP受容体アゴニストを約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につきPrRP受容体アゴニストを約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0046】
(6)細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩を含有する医薬
PrRP受容体に対する抗体は、PrRP受容体を特異的に認識することができるので、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、例えば、
(i)非ヒト哺乳動物のa)血液、b)特定の臓器、c)臓器から単離した組織もしくは細胞等を破壊した後、細胞膜画分を単離し、細胞膜画分に含まれるPrRP受容体を定量することによる、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(ii)PrRP受容体を発現する形質転換体等を破壊した後、細胞膜画分を単離し、細胞膜画分に含まれるPrRP受容体を定量することによる、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(iii)非ヒト哺乳動物のa)血液、b)特定の臓器、c)臓器から単離した組織もしくは細胞等を切片とした後、免疫染色法を用いることにより、細胞表層での該受容体蛋白質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該蛋白質を確認することによる、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
(iv)PrRP受容体を発現する形質転換体等を切片とした後、免疫染色法を用いることにより、細胞表層での該受容体蛋白質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該蛋白質を確認することによる、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
【0047】
細胞膜画分に含まれるPrRP受容体の定量は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には免疫不全ラット、マウス、化ウサギなど)に対して、薬剤(例えば、免疫調節薬など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。得られた臓器、組織または細胞等を、例えば、適当な緩衝液(例えば、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヘペス緩衝液など)等に懸濁し、臓器、組織あるいは細胞を破壊し、界面活性剤(例えば、トリトンX100TM、ツイーン20TMなど)などを用い、さらに遠心分離や濾過、カラム分画などの手法を用いて細胞膜画分を得る。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、それ自体公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したPrRP受容体と細胞由来のリン脂質や膜蛋白質などの膜成分が多く含まれる。
細胞膜画分に含まれるPrRP受容体は、例えば、本発明の抗体を用いたサンドイッチ免疫測定法、ウエスタンブロット解析などにより定量することができる。
かかるサンドイッチ免疫測定法は上記の方法と同様にして行なうことができ、ウエスタンブロットは自体公知の手段により行なうことができる。
(ii)PrRP受容体を発現する形質転換体を上記の方法に従い作製し、細胞膜画分に含まれるPrRP受容体を定量することができる。
【0048】
細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に試験化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、細胞膜におけるPrRP受容体の量を定量することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に試験化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、細胞膜におけるPrRPの量を定量することにより行なうことができる。
細胞膜画分に含まれるPrRP受容体の確認は具体的には以下のようにして行なう。
(iii)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には免疫不全モデルラット、マウス、ウサギなど)に対して、薬剤(例えば、免疫調節薬など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肝臓、腎臓など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。得られた臓器、組織または細胞等を、常法に従い組織切片とし、本発明の抗体を用いて免疫染色を行う。細胞表層での該受容体蛋白質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該蛋白質を確認することにより、定量的または定性的に、細胞膜におけるPrRP受容体の量を確認することができる。
(iv)PrRP受容体を発現する形質転換体等を用いて同様の手段をとることにより確認することもできる。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
【0049】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物は、細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させることにより、PrRP受容体を介する細胞刺激活性や水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を増強させる化合物、(ロ)細胞膜におけるPrRP受容体の量を減少させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を減弱させる化合物である。
上記スクリーニング方法で得られる化合物の塩としては、前記したPrRPの塩と同様のものが用いられる。
細胞膜におけるPrRP受容体の量を変化させる化合物またはその塩は、体内の水分または浸透圧の調節剤として有用である。
細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を増強させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、アジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)に対する安全で低毒性な予防・治療剤として有用である。
さらに、細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を増強させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
細胞膜におけるPrRP受容体の量を減少させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を減弱させる化合物またはその塩は水分または浸透圧の調節剤として、例えば、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する安全で低毒性な予防・治療剤として有用である。
さらに、細胞膜におけるPrRP受容体の量を減少させることにより、該細胞刺激活性または調節作用を減弱させる化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩を医薬組成物として使用する場合、常套手段に従って製剤化することができる。具体的には、上記したPrRPを含有する予防・治療剤と同様に製造することができる。
得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させる化合物またはその塩を一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、細胞膜におけるPrRP受容体の量を増加させる化合物またはその塩を一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0050】
(7)PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体を含有してなる医薬
PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体(特に、中和抗体)は、PrRPまたはPrRP受容体が関与するシグナル伝達、例えば、PrRP受容体を介する細胞刺激活性を不活性化することができる。
したがって、PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体(特に、中和抗体)は体内の水分または浸透圧の調節剤として、さらには高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する安全で低毒性な予防・治療剤として用いることができる。
さらに、PrRPまたはPrRP受容体に対する抗体(特に、中和抗体)は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
上記予防・治療剤は、前記したPrRPを含有する医薬と同様にして製造し、使用することができる。
【0051】
(8)アンチセンスDNAまたはsiRNAを含有してなる医薬
PrRPをコードするDNAに対するアンチセンスDNAもしくはsiRNAまたはPrRP受容体をコードするDNAに対するアンチセンスDNAもしくはsiRNA(以下、アンチセンスDNAまたはsiRNAと略記する)は体内の水分または浸透圧の調節剤として、さらには高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症またはクッシング症候群に対する安全で低毒性な予防・治療剤として用いることができる。
さらに、該アンチセンスDNAまたはsiRNAは、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
例えば、該アンチセンスDNAまたはsiRNAを用いる場合、該アンチセンスDNAまたはsiRNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。該アンチセンスDNAまたはsiRNAは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
さらに、該アンチセンスDNAまたはsiRNAは、組織や細胞におけるPrRPまたはPrRP受容体をコードするDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
【0052】
(9)DNA導入動物の作製
本発明は、PrRP受容体をコードする外来性のDNAまたはPrRPをコードする外来性のDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
〔2〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕記載の動物、
〔3〕ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第〔2〕記載の動物、および
〔4〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA転移動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
【0053】
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常なPrRP受容体またはPrRPを発現させるDNAを意味し、例えば、正常なPrRP受容体またはPrRPの機能を抑制するPrRP受容体またはPrRPを発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に転移させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを転移させる場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA転移哺乳動物を作出することができる。
【0054】
PrRP受容体またはPrRPの発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウイルスなどのレトロウイルス、ワクシニアウイルスまたはバキュロウイルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性蛋白質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存蛋白質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎蛋白質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA転移哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネーターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネーターなどが用いられる。
【0055】
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流 に連結することも目的により可能である。
正常なPrRP受容体またはPrRPの翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なPrRP受容体またはPrRPの翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを転移させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
【0056】
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のPrRP受容体の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA転移動物を用いて、PrRP受容体またはPrRPの機能亢進症や、PrRP受容体またはPrRPが関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを転移させた哺乳動物は、PrRP受容体またはPrRPの増加症状を有することから、PrRP受容体またはPrRPに関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの転移は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0057】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的にPrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA転移動物を用いて、PrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、PrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症における異常PrRP受容体またはPrRPによる正常PrRP受容体またはPrRPの機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを転移させた哺乳動物は、PrRP受容体またはPrRPの増加症状を有することから、PrRP受容体またはPrRPまたはの機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。また、上記2種類の本発明のDNA転移動物のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現されたPrRP受容体またはPrRP組織を分析することによる、PrRP受容体またはPrRPにより特異的に発現あるいは活性化するPrRP受容体またはPrRPとの関連性についての解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼変異PrRP受容体またはPrRPを単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、PrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症などを含む、PrRP受容体またはPrRPに関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、PrRP受容体またはPrRPに関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA転移動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどの蛋白質分解酵素により、遊離したDNA転移細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、PrRP受容体またはPrRP産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、PrRP受容体またはPrRPおよびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA転移動物を用いて、PrRP受容体またはPrRPの機能不活性型不応症を含む、PrRP受容体またはPrRPに関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA転移動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、PrRP受容体またはPrRPが関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0058】
(10)ノックアウト動物
本発明は、PrRP受容体をコードするDNAまたはPrRPをコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する)が不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
〔2〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔3〕ネオマイシン耐性である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔4〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔5〕ゲッ歯動物がマウスである第〔4〕項記載の胚幹細胞、
〔6〕本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
〔7〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔8〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔9〕ゲッ歯動物がマウスである第〔8〕項記載の非ヒト哺乳動物、および
〔10〕第〔7〕項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしているPrRP受容体またはPrRPの活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的にPrRP受容体またはPrRPの発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
【0059】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
【0060】
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1〜10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001〜0.5%トリプシン/0.1〜5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおけるPrRP受容体またはPrRPの細胞生物学的検討において有用である。
【0061】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、PrRP受容体またはPrRPのヘテロ発現不全個体であり、PrRP受容体またはPrRPのヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔からPrRP受容体またはPrRPのホモ発現不全個体を得ることができる。
【0062】
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、PrRP受容体またはPrRPにより誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、PrRP受容体またはPrRPの生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0063】
(10a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
【0064】
該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の水分または浸透圧調節作用が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上改善された場合、該試験化合物を上記の疾患に対して治療・予防効果を有する化合物として選択することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物またはその塩であり、PrRP受容体またはPrRPの欠損や損傷などによって引き起こされる疾患(例えば、アジソン病、低ナトリウム血症または抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)など)に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。
さらに、該スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したPrRP受容体とリガンドとPrRP受容体との結合性またはシグナル伝達を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物またはその塩を経口投与する場合、一般的に低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、該化合物またはその塩を注射剤の形で通常、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0065】
(10b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、PrRP受容体またはPrRPをコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、PrRP受容体またはPrRPの発現する組織で、PrRP受容体またはPrRP受容体の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便にPrRP受容体またはPrRPの動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、PrRP受容体またはPrRP欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物またはその塩であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩である。
該スクリーニング方法で得られた化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0066】
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩は、体内の水分または浸透圧の調節剤として有用である。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、PrRP受容体またはPrRPの発現を促進し、PrRP受容体またはPrRPの機能を促進することができるので、例えば、PrRP受容体またはPrRPの機能不全に関連する疾患(例えば、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)など)の予防・治療剤などの医薬として有用である。
さらに、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌促進剤、血圧上昇剤、血糖上昇剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、低血圧、低血糖)などの予防・治療剤として使用することができる。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、PrRP受容体またはPrRPの発現を阻害し、PrRP受容体またはPrRPの機能を阻害することができるので、例えば、PrRP受容体またはPrRPの機能過多に関連する疾患(高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群)などの予防・治療剤などの医薬として有用である。
さらに、本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、例えば、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤(好ましくは、アドレナリン分泌抑制剤、血圧低下剤、血糖低下剤)として、例えば、低血圧、低血糖、高血圧、糖尿病(特に、高血圧、糖尿病)などの予防・治療剤として使用することができる。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0067】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したPrRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を経口投与する場合、一般的に低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)においては、一日につき該化合物またはその塩を約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mg投与する。非経口的に投与する場合は、該化合物またはその塩の1回投与量は投与対象、対象疾患などによっても異なるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩を注射剤の形で通常、低ナトリウム血症患者(体重60kgとして)に投与する場合、一日につき該化合物またはその塩を約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、PrRP受容体またはPrRPのプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々の蛋白質をコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのPrRP受容体またはPrRPを合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポーター遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、PrRP受容体またはPrRPそのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0068】
(11)各種薬物の作用メカニズムの解明方法
PrRP受容体を用いることによって、各種薬物がPrRP受容体を介して薬理効果を発揮しているか否かを確認することができる。
すなわち、本発明は、
(1)PrRP受容体を用いることを特徴とする、(i)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬または(ii)アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の予防・治療薬がPrRP受容体に結合することを確認する方法、
(2)PrRP受容体を用いることを特徴とする、(i)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬(特に、アドレナリン分泌促進薬、血圧上昇薬または血糖上昇薬)または(ii)アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病(特に、アジソン病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖)の予防・治療薬がPrRP受容体に対するアゴニストであることを確認する方法、
(3)PrRP受容体を用いることを特徴とする、(i)水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬(特に、アドレナリン分泌抑制薬、血圧低下薬または血糖低下薬)または(ii)高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病(特に、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病)の予防・治療薬がPrRP受容体に対するアンタゴニストであることを確認する方法、
(4)各薬をPrRP受容体に接触させた場合における、各薬とPrRP受容体との結合量を測定することを特徴とする上記(1)〜(3)記載のスクリーニング方法を提供する。
この確認方法は、前記したRFRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法において、試験化合物に代えて、上記の薬物を使用することによって実施することができる。
また、本発明の確認方法用キットは、前記したRFRPとPrRP受容体との結合性を変化させる化合物のスクリーニング用キットにおいて、試験化合物に代えて、上記の薬物を含有するものである。
このように、本発明の確認方法を用いることによって、市販または開発途中の各種薬物がPrRP受容体を介して薬理効果を発揮していることを確認することができる。
【0069】
本明細書および図面において、塩基やアミノ酸などを略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づくものであり、その例を下記する。またアミノ酸に関し光学異性体があり得る場合は、特に明示しなければL体を示すものとする。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
A :アデニン
T :チミン
G :グアニン
C :シトシン
I :イノシン
R :アデニン(A)またはグアニン(G)
Y :チミン(T)またはシトシン(C)
M :アデニン(A)またはシトシン(C)
K :グアニン(G)またはチミン(T)
S :グアニン(G)またはシトシン(C)
W :アデニン(A)またはチミン(T)
B :グアニン(G)、グアニン(G)またはチミン(T)
D :アデニン(A)、グアニン(G)またはチミン(T)
V :アデニン(A)、グアニン(G)またはシトシン(C)
N :アデニン(A)、グアニン(G)、シトシン(C)もしくはチミン(T)または不明もしくは他の塩基
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
EDTA :エチレンジアミン四酢酸
SDS :ドデシル硫酸ナトリウム
BHA :ベンズヒドリルアミン
pMBHA :p−メチルベンズヒドリルアミン
Tos :p−トルエンスルフォニル
Bzl :ベンジル
Bom :ベンジルオキシメチル
Boc :t−ブチルオキシカルボニル
DCM :ジクロロメタン
HOBt :1−ヒドロキシベンズトリアゾール
DCC :N,N’−ジシクロヘキシルカルボジイミド
TFA :トリフルオロ酢酸
DIEA :ジイソプロピルエチルアミン
Gly :グリシン
AlaまたはA :アラニン
ValまたはV :バリン
LeuまたはL :ロイシン
IleまたはI :イソロイシン
SerまたはS :セリン
ThrまたはT :スレオニン
CysまたはC :システイン
MetまたはM :メチオニン
GluまたはE :グルタミン酸
AspまたはD :アスパラギン酸
LysまたはK :リジン
ArgまたはR :アルギニン
HisまたはH :ヒスチジン
PheまたはF :フェニルアラニン
TyrまたはY :チロシン
TrpまたはW :トリプトファン
ProまたはP :プロリン
AsnまたはN :アスパラギン
GlnまたはQ :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0070】
本願明細書の配列表の配列番号は、以下の配列を示す。
〔配列番号:1〕
PrRPのアミノ酸配列の一般式を示す。
〔配列番号:2〕
ウシPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:3〕
ウシPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:4〕
ラットPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:5〕
ヒトPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:6〕
マウスPrRPの全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:7〕
ウシPrRP(20)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:8〕
ウシPrRP(21)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:9〕
ウシPrRP(22)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:10〕
ラットPrRP(20)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:11〕
ラットPrRP(21)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:12〕
ラットPrRP(22)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:13〕
ヒトPrRP(20)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:14〕
ヒトPrRP(21)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:15〕
ヒトPrRP(22)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:16〕
ウシPrRP(29)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:17〕
ウシPrRP(19)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:18〕
ウシPrRP(31)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:19〕
ウシPrRP(32)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:20〕
ウシPrRP(33)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:21〕
ラットPrRP(31)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:22〕
ラットPrRP(32)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:23〕
ラットPrRP(33)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:24〕
ヒトPrRP(31)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:25〕
ヒトPrRP(32)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:26〕
ヒトPrRP(33)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:27〕
マウスPrRP(31)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:28〕
PrRPの部分アミノ酸配列の一般式を示す。
〔配列番号:29〕
配列番号:2で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:30〕
配列番号:16で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:31〕
配列番号:17で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:32〕
配列番号:18で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:33〕
配列番号:19で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:34〕
配列番号:20で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:35〕
配列番号:7で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:36〕
配列番号:8で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:37〕
配列番号:9で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:38〕
配列番号:4で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:39〕
配列番号:21で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:40〕
配列番号:22で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:41〕
配列番号:23で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:42〕
配列番号:10で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:43〕
配列番号:11で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:44〕
配列番号:12で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:45〕
配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:46〕
配列番号:24で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:47〕
配列番号:25で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:48〕
配列番号:26で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:49〕
配列番号:13で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:50〕
配列番号:14で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:51〕
配列番号:15で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:52〕
配列番号:6で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:53〕
配列番号:6で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするゲノムDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:54〕
ヒトPrRP受容体の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:55〕
ヒトPrRP受容体の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:56〕
ヒトPrRP受容体の全長アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:57〕
マウスPrRP受容体の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:58〕
マウスPrRP受容体の部分アミノ酸配列を示す。
〔配列番号:59〕
ラットPrRP受容体(UHR−1)のアミノ酸配列を示す。
〔配列番号:60〕
配列番号:54で表わされるアミノ酸配列からなるヒトPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:61〕
配列番号:55で表わされるアミノ酸配列からなるヒトPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:62〕
配列番号:56で表わされるアミノ酸配列からなるヒトPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:63〕
配列番号:57で表わされるアミノ酸配列からなるマウスPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:64〕
配列番号:58で表わされるアミノ酸配列からなるマウスPrRP受容体をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:65〕
配列番号:59で表わされるアミノ酸配列からなるラットPrRP受容体(UHR−1)をコードするDNAの塩基配列を示す。
〔配列番号:66〕
実施例1で用いたセンスプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:67〕
実施例1で用いたアンチセンスプライマーの塩基配列を示す。
〔配列番号:68〕
配列番号:27で表わされるアミノ酸配列からなるPrRPをコードするDNAの塩基配列を示す。
【0071】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はそれに限定されるものではない。なお、大腸菌を用いての遺伝子操作法は、モレキュラー・クローニング(Molecular cloning)に記載されている方法に従った。
【0072】
実施例1 正常ラットおよび副腎摘出ラットでの延髄最後野におけるPrRP mRNAの検出
Wistar系成熟雄ラットをsodium pentobarbital (50mg/kg, ip, 大日本製薬)にて十分に麻酔し、左右の副腎を摘出した。副腎摘出後、一週間0.9%塩化ナトリウム溶液を与え飼育し、再びsodium pentobarbital (50mg/kg, ip, 大日本製薬)にて麻酔し、脳を摘出した。また、無処置の同系ラットも同様に脳を摘出した。摘出した脳は、4%パラホルムアルデヒド(ナカライテスク)を含む0.1Mリン酸緩衝液 (pH 7.4)で24時間浸漬固定した後、30%ショ糖を含むPBSに2日以上浸漬し、insitu hybridization用の試料とした。
まず、rat PrRP mRNAに対するdigoxigenin(DIG)標識cRNA probeの作製は以下のように行った。
Wistar系成熟雄ラットの延髄からISOGEN (Nippon Gene社)を用いてtotal RNAを抽出した。DNAの混入を防ぐためDNaseで消化した後、Ready to Go T−primed First−strand Kit (Amersham Pharmacia社)を用いて5μgのtotal RNAから逆転写 (RT)反応を行いcDNAを合成した。RT反応後、Ampli Taq−Gold (Perkin Elmer社)を用いてpolymerase chain reaction (PCR)を行った。PrRP mRNA (11−473)に相当する461bpの断片を得るため、sense primerにttatcaccactcaagggacaga(配列番号:66)を、antisense primerにagagtaaacaaagccaacactttt(配列番号:67)をそれぞれ2pmol/10μl用いた。PCRにおいては95℃・10分のpre−PCR heatサイクルの後、94℃・ 1分、58℃・1分で45サイクル増幅し、その後60℃・10分の最終サイクルを行った。2%アガロースゲルで増幅産物を泳動し、予想された461bpの位置に単一バンドを確認した後、このPCR産物をTA−cloning Kit (promega社)を用いてpGEM−T Easy Vectorに組み込んだ。このプラスミドをXL2 Blue (Strategene社)に導入し、white−blue selectionを行い、rat PrRP cDNA断片をクローニングした。この正方向もしくは逆方向に組み込まれたrat PrRP cDNA断片 (461bp)を含むプラスミドをSpeIを用いて直鎖化し、DIG−RNAラベリングキット(Roche社)のプロトコールに従ってT7 RNA polymeraseにてantisenseもしくはsenseのDIG標識cRNA probeを作製した。
In situ hybridizationにはフリーフローティング法を使用した。まずcryomicrotomeを用いて40mmの厚さの前頭断凍結切片を作製した。つぎに切片を4×SSC (SSC; 1×SSC = 150mM NaCl, 15mMクエン酸ナトリウム, pH7.0)で洗浄した後、1μg/ml Proteinase Kを含む10mM Tris−HCl / 1mM EDTA (pH 8.0)処理 (37度・15分)にてプロテアーゼ処理を行った。さらに、0.25%無水酢酸を含む0.1Mトリエタノールアミン (pH 8.0)による処理 (室温・10分)にてアセチル化を行った後、hybridization buffer (50%ホルムアミド, 3×SSC, 0.12Mリン酸緩衝液 (pH 7.4), 1×Denhardt’s solution, 0.125mg/ml酵母tRNA, 0.1mg/mlサケ精子DNA, 10%デキストラン硫酸)による処理 (60℃・20分)にてpre−hybridization反応を行った。Hybridization反応には、1−100ng/μlのantisenseもしくはsense probeをhybridization bufferに希釈し、85度で3分変性した後、切片に加え60度で12時間以上反応させた。引き続き、非特異的にhybridizationしたprobeを洗浄するため以下の操作を行った。1) 2×SSC/50%ホルムアミド処理 (60℃・15分 2回)、 2) TNE (0.5M NaCl, 10mM Tris−HCl (pH7.6), 1mM EDTA)処理 (37℃・10分)、 3) 20μg/ml RNase A in TNE処理 (37℃・30分)、 4) TNE処理(37℃・10分)、 5) 2×SSC処理 (60℃・15分 2回)、 6) 0.5×SSC処理 (60℃・15分 2回)。以上の操作を行った後、DIG標識probeを検出するための免疫組織化学を行った。まず、DIG−1 (100mM Tris−HCl pH 7.5, 150mM NaCl, 0.1% Tween20)で洗浄した後、1.5% Blocking reagent (Roche社)を含む DIG−1による処理(1時間)にて非特異反応のブロッキングを行い、anti−DIG fab−fragment antibody conjugated with alkaline phosphatase (Roche社)を含む DIG−1 (1:1000)を37度で2時間反応させた。DIG−1で十分洗浄した後、DIG−3 (100mM Tris−HCl pH 9.5, 100mM NaCl, 50mM MgCl2)でリンスし、337μg/ml 4−nitroblue tetrazolium (NBT)および175 mg/ml 5−bromo−4−chloro−3−indolyl−phosphate (BCIP)を含むDIG−3 1mlによって、室温にて発色反応を行った。適時に発色をPBS洗浄により止めた後、切片をスライドガラスに載せ、90%グリセロールを含むPBSで封入し、光学顕微鏡で観察した。
無処置ラットでは延髄の最後野にPrRPのmRNA発現は認められなかったが、副腎処理ラットではPrRPのmRNA発現が検出された。
【0073】
実施例2 正常ラットのPrRP受容体(UHR−1)のin situ hybridization
Wistar系成熟雄ラットをsodium pentobarbital (50mg/kg, ip, 大日本製薬)にて十分に麻酔し、速やかに脳を摘出後、4%パラホルムアルデヒド(ナカライテスク)を含む0.1Mリン酸緩衝液 (pH 7.4)で24時間浸漬固定した後、30%ショ糖を含むPBSに2日以上浸漬し、in situ hybridization用の試料とした。UHR−1 (ラットPrRP受容体) mRNAに対するDIG標識cRNA probeの作製は、以下の様に行った。Full length UHR−1 cDNA (1−1116)をpCR II TOPO (Invitrogen社)にサブクローニングした。このUHR−1 cDNAを含むプラスミドをBamHIもしくはXhoIを用いて直鎖化し、DIG−RNAラベリングキット (Roche社)のプロトコールに従ってT7もしくはSp6RNA polymeraseにてそれぞれantisense、senseのDIG標識cRNA probeを作製した。これらのprobeを40mM NaHCO3 / 60mM Na2HCO3(pH 10.2)でそれぞれ60℃・53分アルカリ加水分解し、150bpに断片化した。In situ hybridizationは実施例1と同様の方法で行った。
UHR−1 mRNAシグナルは、延髄の最後野に検出されたことから、延髄最後野は、UHR−1が存在し、PrRPが生理的に作用していると考えられる。
【0074】
実施例3 正常ラットおよび副腎摘出ラットでの延髄最後野における免疫組織染色によるPrRP免疫活性の検出
実施例1と同様に無処置ラットおよび副腎摘出ラットの脳を摘出後、5%アクロレイン(東京化成工業)を含む0.07Mリン酸緩衝液 (pH 7.4)で浸漬固定した。次に30%ショ糖を含むリン酸緩衝食塩水 (PBS)に2日以上浸漬した。免疫組織化学にはフリーフローティング法を使用した。まずcryomicrotomeを用いて60mmの厚さの前頭断凍結切片を作製した。次に切片をPBSに浸して洗浄および浸水化させた後、内因性のペルオキシターゼ活性を0.5%メタ過ヨウ素酸ナトリウムを含むPBSによる処理 (20分)にて失活させ、アルデヒド基を1%水素化ホウ素ナトリウムを含むPBSによる処理 (20分)にて還元した。さらに1%正常ウマ血清および0.4%Triton X−100 を含むPBS (TNBS)による処理 (1時間)にて非特異反応のブロッキングを行った。PrRPの局在はavidin biotinylated−horseradish−peroxidase (HRP) complex (ABC)法 (Vector Laboratory社)で可視化した。すなわち、切片をPrRPの部位特異的モノクローナル抗体であるP2L−1Ca(40μg/ml)もしくはP2L−1Ta(80μg/ml)(いずれもWO99/60112参照)を含むTNBSと室温で12時間以上反応させ、PBSで十分洗浄した後、biotin−conjugated donkey anti−mouseIgG (Chemicon International社) を含むTNBS (1:300)と室温で2時間反応させた。 PBSで十分洗浄後、ABCと室温で30分間反応させ、その後基質として0.02% 3,3−diaminobenzidine−tetrachloride (同仁化学研究所)および0.006% H2O2を含む50mM Tris−HCl (pH 7.6)で発色反応を行った。発色をPBS洗浄により止めた後、切片をスライドガラスに載せ、脱水・キシレンによる透徹を行いエンテラン (Melck社)に封入し、光学顕微鏡で観察した。
無処置ラットでは、延髄最後野ではUHR−1のmRNA発現部位にPrRP陽性繊維の投射は見られるが産生細胞体は検出されなかった。しかし、副腎摘出ラットでは、PrRP産生細胞体が23.4±13.1(平均値±標準誤差)個出現した(図1)。以上のように、副腎摘出により延髄最後野においてPrRP細胞体の出現が見られることから、延髄最後野においてPrRPが副腎機能の一端を担っていることが示唆された。
【0075】
実施例4 新生仔ラットの延髄最後野における免疫組織染色によるPrRP免疫活性の検出
Wistar系成獣ラットを交配することにより生まれた新生仔ラットの延髄最後野でのPrRP陽性細胞体を実施例3と同様の方法で免疫染色を行った。その結果、生後14日目より10 ±4.7個(n=4)細胞体が検出され、15日目で58 ±31個 (n=3)、16日目で72 ±7.5個(n=3)、17日目で75 ±38個(n=3)が検出された。しかし、18日目以降はPrRP細胞体は検出されなかった(図2)。値は、平均値±標準誤差を示す。
以上のように、母乳を主たる栄養分としている新生仔ラットでも延髄最後野においてPrRP細胞体の出現が認められたことから、PrRPは体内の水分調節に関与していることが示唆された。
【0076】
実施例5 ラット副腎初代培養細胞系でのアドレナリン産生細胞における免疫組織染色によるPrRP免疫活性の検出
ラット副腎初代培養細胞を以下の方法で作製した。Wistar系成熟雄ラットより副腎を摘出し、ハンクス溶液(123 mM NaCl, 5 mM KCl, 0.4 mM Na2HPO4, 4 mM NaHO3, 5mM glucoseより構成)に浸し、0.25% コラゲナーゼタイプI(シグマ社)で37℃、20分間処理後、0.25%トリプシンおよび0.1 U/ml DNase Iでさらに37℃、20分間処理した。酵素処理後、細胞にウシ胎児血清(FCS)を添加し、ポアサイズ100 μmのフィルターにより組織片を除去後、細胞懸濁液を200g、5分間遠心分離して酵素液を分離し細胞と分離した。得られた細胞群を10%ウマ血清(Gibco社)と2.5%ウシ胎児血清を含むHam’s F−12倍地(Gibco社)とDulbecco’s ModifiedEagle 培地(Gibco社)の等量混和培地に懸濁し副腎初代培養細胞とした。5%CO2存在下で4日間培養後、培養液を除去しPBSにて洗浄後10%ホルマリンを含むPBSにて30分間固定を行った。細胞をPBSで洗浄後、1%正常ウマ血清と0.4%Triton−Xを含むPBS(TNBS)にて1時間反応させた。抗PrRPモノクローナル抗体P2L−1(2 μg/ml)、抗tyrosine hydroxylase(TH)抗体(2000倍希釈、シグマ社)、抗phenylethanolamine N−methyltransferase(PNMT)抗体(1000倍希釈、Chemicon International社)を一次抗体として室温で24時間反応させた。二次抗体としてAlexa488標識化ヒツジ抗マウスIgG(MolecularProbe社)とAlexa594標識化ヒツジ抗ウサギIgG(MolecularProbe社)を反応後、共焦点レーザー顕微鏡にて観察した。その結果、全てのPrRP陽性細胞はTH陽性細胞およびPNMT陽性細胞と一致して存在した。これらの結果から、PrRPは副腎のアドレナリン産生細胞と共存して存在することが明らかとなり、PrRPは副腎においてアドレナリン分泌を制御し血圧および血糖値をコントロールすることが示唆された。
【0077】
【発明の効果】
PrRPまたはPrRP受容体、およびそれらをコードするDNAは水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節作用を有しており、高血圧、糖尿病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖などの予防・治療剤として有用である。
また、PrRP受容体またはPrRPは、高血圧、糖尿病、低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧、低血糖などに対して予防・治療効果のあるPrRP受容体アゴニストや高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧、糖尿病に対して予防・治療効果のあるPrRP受容体アンタゴニストのスクリーニングに有用である。
【0078】
【配列表】
【図面の簡単な説明】
【図1】副腎摘出ラットにおける延髄最終野でのPrRP産生細胞体の数を示す。縦軸のPrRP−ir cell number(cells/AP)は延髄最後野当たりのPrRP産生細胞体の数を示す。横軸のcontは無処理ラットを、ADX(1W)は副腎摘出1週間後のラットを示す。
【図2】新生仔ラットにおける延髄最終野でのPrRP産生細胞体の数を示す。縦軸は細胞数を示す。横軸は生後の日数を示す。
Claims (45)
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤。
- ペプチドが(i)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列からなるペプチド、(ii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜5個のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列からなるペプチド、(iii)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜5個のアミノ酸が付加したアミノ酸配列からなるペプチド、(iv)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列に1〜5個のアミノ酸が挿入されたアミノ酸配列からなるペプチド、(v)配列番号:2〜27のいずれかの配列番号で表されるアミノ酸配列中の1〜5個のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列からなるペプチド、または(vi)上記(ii)〜(v)の欠失・付加・挿入・置換を組み合わせたアミノ酸配列からなるペプチドである請求項1〜4記載の剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤。
- レセプター蛋白質が配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるレセプター蛋白質である請求項16または17記載の剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤。
- DNAが配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列からなるレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAである請求項19または20記載の剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、低血圧、低血糖、高血圧または糖尿病の診断剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNAを含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニストを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニストを含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニストを含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニストを含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩を含有してなる低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤。
- 配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩を含有してなる高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤。
- 哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節方法。 - 哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療方法。 - 哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節方法。 - 哺乳動物に対して、
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療方法。 - 水分または浸透圧の調節剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22または配列番号:23で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の使用。 - 低ナトリウム血症、抗利尿ホルモン分泌不適症候群(SIADH)、低血圧または低血糖の予防・治療剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:19、配列番号:20、配列番号:21、配列番号:22または配列番号:23で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を増加させる化合物またはその塩の使用。 - 水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の使用。 - 高ナトリウム血症、中枢性尿崩症、多尿、代謝性アルカリローシス、低カリウム血症、クッシング症候群、高血圧または糖尿病の予防・治療剤を製造するための
(i)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩に対する抗体、
(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(iii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩、
(iv)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体、
(v)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドをコードするDNAに相補的な塩基配列またはその一部を含有するアンチセンスDNA、
(vi)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩に対するアンタゴニスト、または
(vii)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質またはその部分ペプチドの発現量を減少させる化合物またはその塩の使用。 - 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、および(または)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を用いることを特徴とする水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬のスクリーニング方法。
- 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するペプチドもしくはそのアミドもしくはそのエステルまたはその塩、および(または)配列番号:54、配列番号:55、配列番号:56、配列番号:57、配列番号:58または配列番号:59で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプター蛋白質、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる水分、浸透圧、アドレナリン分泌、血圧または血糖の調節薬のスクリーニング用キット。
Priority Applications (1)
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JP2003202790A JP2004143144A (ja) | 2002-08-29 | 2003-07-29 | PrRPおよびその受容体の新規用途 |
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JP2003202790A JP2004143144A (ja) | 2002-08-29 | 2003-07-29 | PrRPおよびその受容体の新規用途 |
Publications (1)
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ID=32472808
Family Applications (1)
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JP2003202790A Withdrawn JP2004143144A (ja) | 2002-08-29 | 2003-07-29 | PrRPおよびその受容体の新規用途 |
Country Status (1)
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2003
- 2003-07-29 JP JP2003202790A patent/JP2004143144A/ja not_active Withdrawn
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