JP2004203868A - Edg受容体の新規用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】糖尿病性腎症等の予防・治療薬のスクリーニング等の提供。
【解決手段】配列番号:1、配列番号:5または配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するG蛋白質共役型レセプター蛋白質(EDG−2受容体、EDG−3受容体またはEDG−5受容体)またはその塩を用いることを特徴とする糖尿病性腎症等の予防・治療薬のスクリーニング方法などを提供する。
【選択図】なし

Description

本発明は、Endothelial Differentiation Gene(以下、EDGと略記する)−2受容体、EDG−3受容体またはEDG−5受容体、およびそれらをコードするポリヌクレオチドの用途に関する。
EDG−2受容体(非特許文献1)、EDG−3受容体(非特許文献2)、EDG−5受容体(非特許文献3)が報告されており、これらレセプターが血管組織に発現していることが記載されている。
リゾフォスファチジン酸が腎臓メサンギウム細胞上の受容体に結合し、PDGFと共にMAPKを活性化し、メサンギウム細胞の増殖に関与していること、EDG−2受容体およびEDG−4受容体がリゾフォスファチジン酸に対する受容体であること、リゾフォスファチジン酸がIgA腎症に関与していることなどが知られている(非特許文献4)。
スフィンゴシン−1−リン酸が腎臓メサンギウム細胞に発現しているEDG−3受容体またはEDG−5受容体に結合して、メサンギウム細胞を増殖させること、IgA腎症の腎臓でEDG−5受容体が増加していることが知られている(非特許文献5)。
しかしながら、これら受容体が糖尿病性腎症に関与していることは知られていなかった。
Biochem Biophys Res Commun 1997 Feb 24;231(3):619−22 Cell 1999 Oct 29;99(3):301−12 J Biol Chem 1999 Dec 10;274(50):35343−50 Clinical Science(1999)96,431−436 The pharmacogenomics Journal(2001)1,211−217
本発明は、EDG−2受容体、EDG−3受容体またはEDG−5受容体の機能を解明し、これらの受容体の新たな用途を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意研究を重ねた結果、ヒトEDG−2受容体、ヒトEDG−3受容体またはヒトEDG−5受容体がヒト正常メサンギウム細胞で高発現していること、さらに糖尿病性腎症モデルラットの腎臓においてEDG−2受容体、EDG−3受容体またはEDG−5受容体が高発現していることを見出した。糖尿病性腎症は高血糖の持続を起因とした腎症であるのに対し、IgA腎症は感染で誘発された形の高IgA血症により誘発される腎症であり、両者は明らかにその病因が異なっている。
本発明者らは、これらの知見に基づいて、さらに研究を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤、
(2)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤、
(3)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の診断剤、
(4)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤、
(5)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の診断剤、
(6)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤、
(7)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の診断剤、
(8)(i)リゾフォスファチジン酸またはその塩および(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩を用いて、リゾフォスファチジン酸またはその塩と該EDG−2受容体またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を選択することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング方法、
(9)(i)リゾフォスファチジン酸またはその塩および(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング用キット、
(10)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩および(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩を用いて、スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と該EDG−3受容体またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を選択することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング方法、
(11)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩および(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング用キット、
(12)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩および(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩を用いて、スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と該EDG−5受容体またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を選択することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング方法、
(13)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩および(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング用キット、
(14)(i)リゾフォスファチジン酸またはその塩と(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩(特に、アンタゴニスト)を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤、
(15)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩(特に、アンタゴニスト)を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤、
(16)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩(特に、アンタゴニスト)を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤、
(17)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを用いることを特徴とする該EDG−2受容体、EDG−3受容体またはEDG−5受容体の発現量を変化させ、糖尿病性腎症疾、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫を予防・治療する化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(18)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有することを特徴とする該EDG−2受容体、EDG−3受容体またはEDG−5受容体の発現量を変化させ、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫を予防・治療する化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(19)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体の発現量を変化させる化合物(特に、発現量を減少させる化合物)またはその塩を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤、
(20)哺乳動物に対して、(I)(i)リゾフォスファチジン酸またはその塩と(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩(特に、アンタゴニスト)、(II)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩(特に、アンタゴニスト)、(III)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩(特に、アンタゴニスト)、または(IV)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体の発現量を変化させる化合物(特に、発現量を減少させる化合物)またはその塩の有効量を投与することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療方法、および
(21)糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤を製造するための、(I)(i)リゾフォスファチジン酸またはその塩と(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩(特に、アンタゴニスト)、(II)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩(特に、アンタゴニスト)、(III)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩(特に、アンタゴニスト)、または(IV)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体の発現量を変化させる化合物(特に、発現量を減少させる化合物)またはその塩の使用などを提供する。
配列番号:1、配列番号:5または配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するG蛋白質共役型レセプター蛋白質(EDG−2受容体、EDG−3受容体またはEDG−5受容体)またはその塩を用いることにより、糖尿病性腎症等の予防・治療薬を効率良くスクリーニングすることができる。
本発明で用いられるEDG−2受容体は、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質である。
本発明で用いられるEDG−3受容体は、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質である。
本発明で用いられるEDG−5受容体は、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質である。
以下、EDG−2受容体、EDG−3受容体およびEDG−5受容体を単にEDG受容体と略記する場合がある。
EDG受容体は、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞〔例えば、網膜細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、白血球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞(例、乳癌細胞株(GI−101)、結腸癌細胞株(CX−1、GI−112)、肺癌細胞株(LX−1、GI−117)、卵巣癌細胞株(GI−102)、前立腺癌細胞株など)など〕、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など、または血球系の細胞もしくはその培養細胞(例えば、MEL,M1,CTLL−2,HT−2,WEHI−3,HL−60,JOSK−1,K562,ML−1,MOLT−3,MOLT−4,MOLT−10,CCRF−CEM,TALL−1,Jurkat,CCRT−HSB−2,KE−37,SKW−3,HUT−78,HUT−102,H9,U937,THP−1,HEL,JK−1,CMK,KO−812,MEG−01など)に由来するタンパク質であってもよく、また合成タンパク質であってもよい。EDG受容体は特に、腎臓またはメサンギウム細胞で特に高発現している。
本明細書において、「実質的に同一のアミノ酸配列」とは、比較するアミノ酸配列に対して、例えば、約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、なかでも好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をいう。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体としては、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−2受容体と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
配列番号:5で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体としては、例えば、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−3受容体と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体としては、例えば、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−5受容体と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
リガンド結合活性、レセプター結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後に記載するスクリーニング方法に従って測定することができる。
EDG受容体としては、(1)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(3)配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、配列番号:7、配列番号:9、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(4)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質なども用いられる。
本明細書におけるEDG受容体は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。EDG受容体は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
EDG受容体がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明でいうEDG受容体に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、EDG受容体には、上記したタンパク質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
EDG−2受容体の具体例としては、例えば、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるヒトEDG−2受容体、配列番号:3で表わされるアミノ酸配列からなるラットEDG−2受容体などが挙げられる。
EDG−3受容体の具体例としては、例えば、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるヒトEDG−3受容体、配列番号:7で表わされるアミノ酸配列からなるラットEDG−3受容体(断片)などが挙げられる。
EDG−5受容体の具体例としては、例えば、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列からなるヒトEDG−5受容体、配列番号:11で表わされるアミノ酸配列からなるラットEDG−5受容体などが挙げられる。
ヒトEDG−2受容体は(Genbank accession 番号 U80811、Biochem Biophys Res Commun 1997 Feb 24;231(3):619−22)に記載されている公知のタンパク質である。
ラットEDG−2受容体は(Genbank # NM 053936)に記載されている公知のタンパク質である。
ヒトEDG−3受容体は(Cell 1999 Oct 29;99(3):301−12)に記載されている公知のタンパク質である。
ラットEDG−3受容体(断片)は(Genbank # AF184914)に記載されている公知のタンパク質である。
ヒトEDG−5受容体は(J Biol Chem 1999 Dec 10;274(50):35343−50)に記載されている公知のタンパク質である。
ラットEDG−5受容体は(Genbank # NM 017192)に記載されている公知のタンパク質である。
EDG受容体またはその塩は、上記したヒトや哺乳動物の細胞または組織から公知のレセプタータンパク質の精製方法によって製造することもできるし、後に記載するEDG受容体をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後に記載するタンパク質合成法またはこれに準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
EDG受容体の部分ペプチド(以下、単に「部分ペプチド」と略記する場合がある)としては、上記したEDG受容体の部分アミノ酸配列を有するペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、EDG受容体の分子のうち、細胞膜の外に露出している部位であって、EDG受容体と実質的に同質のレセプター結合活性を有するものなどが用いられる。
具体的には、配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−2受容体、配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−3受容体または配列番号:9で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−5受容体の部分ペプチドとしては、疎水性プロット解析において細胞外領域(親水性(Hydrophilic)部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性(Hydrophobic)部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
部分ペプチドのアミノ酸の数は、上記したEDG受容体の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。
実質的に同一のアミノ酸配列とは、これらアミノ酸配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、さらに好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を示す。
アミノ酸配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;マトリクス=BLOSUM62;フィルタリング=OFF)にて計算することができる。
ここで、「実質的に同質のレセプター結合活性」とは、上記と同意義を示す。「実質的に同質のレセプター結合活性」の測定は上記と同様に行なうことができる。
また、部分ペプチドは、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)であってもよい。
さらに、部分ペプチドには、上記したEDG受容体と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
EDG受容体またはその部分ペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
EDG受容体の部分ペプチドまたはその塩は、公知のペプチドの合成法に従って、あるいはEDG受容体を適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、EDG受容体を構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下のa)〜e)に記載された方法が挙げられる。
a)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
b)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
c)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
d)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
e)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
EDG受容体をコードするポリヌクレオチドとしては、上記したEDG受容体をコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、EDG受容体をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。
EDG受容体をコードするポリヌクレオチドを用いて、例えば、実験医学増刊「新PCRとその応用」15(7)、1997記載の公知の方法またはそれに準じた方法により、EDG受容体のmRNAを定量することができる。
EDG受容体をコードするDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞または組織由来のcDNA、上記した細胞または組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞または組織よりtotalRNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
具体的には、EDG−2受容体をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:2または配列番号:4で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:2または配列番号:4で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、配列番号:1または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−2受容体と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAが挙げられる。
EDG−3受容体をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−3受容体と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAが挙げられる。
EDG−5受容体をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:10または配列番号:12で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:10または配列番号:12で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、配列番号:9または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−5受容体と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAが挙げられる。
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12で表わされる塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、例えば、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
「該ハイストリンジェントな条件」とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
配列番号:1で表わされるアミノ酸配列からなるヒトEDG−2受容体をコードするDNAとしては、配列番号:2で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
配列番号:3で表わされるアミノ酸配列からなるラットEDG−2受容体をコードするDNAとしては、配列番号:4で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
配列番号:5で表わされるアミノ酸配列からなるヒトEDG−3受容体をコードするDNAとしては、配列番号:6で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
配列番号:7で表わされるアミノ酸配列からなるラットEDG−3受容体(断片)をコードするDNAとしては、配列番号:8で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
配列番号:9で表わされるアミノ酸配列からなるヒトEDG−5受容体をコードするDNAとしては、配列番号:10で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
配列番号:11で表わされるアミノ酸配列からなるラットEDG−5受容体をコードするDNAとしては、配列番号:12で表わされる塩基配列からなるDNAなどが用いられる。
本発明の「EDG受容体をコードするDNAの塩基配列の一部、または該DNAと相補的な塩基配列の一部を含有してなるポリヌクレオチド」とは、下記のEDG受容体の部分ペプチドをコードするDNAを包含するだけではなく、RNAをも包含する意味で用いられる。
本発明に従えば、EDG受容体遺伝子の複製または発現を阻害することのできるアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、あるいは決定されたEDG受容体をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたポリヌクレオチド(核酸)は、EDG受容体遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいはEDG受容体関連RNAとの相互作用を介してEDG受容体遺伝子の発現を調節・制御することができる。EDG受容体関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、およびEDG受容体関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内および生体外でEDG受容体遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列または核酸とペプチド(タンパク質)との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列またはその相補体から誘導される指令にあるペプチド(タンパク質)のアミノ酸を通常指している。レセプタータンパク質遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループは好ましい対象領域として選択しうるが、レセプタータンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
EDG受容体またはその部分ペプチド(以下、包括的にEDG受容体と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、EDG受容体の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAをEDG受容体の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
(アンチセンス・ポリヌクレオチド)
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的でハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドとの関係は、対象物と「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス・ポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリデオキシリボヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリリボヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質、核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレート化合物(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al.,Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいはレセプタータンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸は公知の各種の方法で細胞に適用できる。
本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドは、生体内におけるEDG受容体または本発明のポリヌクレオチド(例、DNA)の機能を抑制することができるので、例えば、EDG受容体の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤として用いることができる。さらに、本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできるので、EDG受容体の機能不全に関連する疾患の診断に用いることができる。
(siRNA)
EDG受容体をコードするポリヌクレオチドに対するsiRNA(以下、本発明のsiRNA)は、EDG受容体をコードするRNAの一部とそれに相補的なRNAを含有する二重鎖RNAである。
siRNAは、公知の方法(例、Nature, 411巻, 494頁, 2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。
EDG受容体をコードするRNAの一部を含有するリボザイムは、公知の方法(例、TRENDS in Molecular Medicine, 7巻, 221頁, 2001年)に準じて、本発明のポリヌクレオチドの配列を基に設計して製造することができる。例えば、公知のリボザイムの配列の一部をEDG受容体をコードするRNAの一部に置換することによって製造することができる。EDG受容体をコードするRNAの一部としては、公知のリボザイムによって切断され得るコンセンサス配列NUX(式中、Nはすべての塩基を、XはG以外の塩基を示す)の近傍の配列などが挙げられる。
(部分ペプチドをコードするDNA)
EDG受容体の部分ペプチドをコードするDNAとしては、上記したEDG受容体の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞または組織由来のcDNA、上記した細胞または組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞または組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
具体的には、EDG−2受容体の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、
(1)配列番号:2または配列番号:4で表わされる塩基配列を含有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、
(2)配列番号:2または配列番号:4で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、配列番号:1または配列番号:3で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−2受容体と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
EDG−3受容体の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、
(1)配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列を含有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、
(2)配列番号:6または配列番号:8で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、配列番号:5または配列番号:7で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−3受容体と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
EDG−5受容体の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、
(1)配列番号:10または配列番号:12で表わされる塩基配列を含有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、
(2)配列番号:10または配列番号:12で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、配列番号:9または配列番号:11で表わされるアミノ酸配列からなるEDG−5受容体と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAとしては、例えば、配列番号:2、配列番号:4、配列番号:6、配列番号:8、配列番号:10または配列番号:12で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
塩基配列の相同性は、前記した相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、同様の条件にて計算することができる。
ハイブリダイゼーションの方法およびハイストリンジェントな条件は前記と同様である。
EDG受容体もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、EDG受容体と略記する場合がある)に対する抗体は、EDG受容体、あるいはEDG受容体を含有する細胞を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
EDG受容体に対する抗体は、EDG受容体を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナル抗体産生細胞の作製
EDG受容体は、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化レセプタータンパク質等と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、レセプタータンパク質等の抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したレセプタータンパク質等を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(EDG受容体等の抗原)とキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物からEDG受容体等に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。
ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
[レセプタータンパク質、DNAなどの用途]
EDG受容体、EDG受容体をコードするDNA(以下、本発明のDNAと略記する場合がある)、EDG受容体に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)、本発明のDNAに対するアンチセンスDNA(以下、本発明のアンチセンスDNAと略記する場合がある)などは、以下の用途を有している。
(1)EDG受容体の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤
EDG受容体はメサンギウム細胞や糖尿病性腎症モデルラットで高発現していることから、a)EDG受容体、またはb)EDG受容体をコードするDNAを、EDG受容体の機能不全に関連する疾患、特に糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤などの医薬として使用することができる。
例えば、生体内においてEDG受容体が減少しているために、EDG受容体またはそれに対するリガンドの生理作用が期待できない(EDG受容体の欠乏症)患者がいる場合に、a)EDG受容体を該患者に投与し、EDG受容体の量を補充したり、b)(イ)EDG受容体をコードするDNAを該患者に投与し発現させることによって、あるいは(ロ)対象となる細胞にEDG受容体をコードするDNAを挿入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内におけるEDG受容体の量を増加させ、EDG受容体またはリガンドの作用を充分に発揮させることができる。
すなわち、EDG受容体または本発明のDNAは、安全で低毒性な該EDG受容体の機能不全に関連する疾患、特に糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤として有用である。
EDG受容体を上記予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
一方、本発明のDNAを上記予防・治療剤として使用する場合は、本発明のDNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。本発明のDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
例えば、a)EDG受容体、またはb)本発明のDNAは、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、a)EDG受容体、またはb)本発明のDNAを生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な容量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
また、上記予防・治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトや哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
EDG受容体の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、糖尿病性腎症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、糖尿病性腎症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明のDNAの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、糖尿病性腎症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、糖尿病性腎症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(2)本発明のDNAまたはアンチセンスDNAを用いる診断剤及び診断方法
本発明のDNAまたはアンチセンスDNAは、プローブとして使用することにより、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)におけるEDG受容体またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
例えば、本発明のDNAまたはアンチセンスDNAは、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の診断剤として使用することができる。
本発明のDNAまたはアンチセンスDNAを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションによりEDG受容体の発現低下または発現過多が検出された場合は、例えば、EDG受容体の機能不全または過剰発現に起因する疾患、特に糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫等に罹患している可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
(3)本発明のアンチセンスDNAまたはsiRNAを含有してなる医薬
本発明のアンチセンスDNAまたはsiRNAは、EDG受容体の過剰発現などに起因する疾患(例えば、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫)などの疾患の予防・治療薬として用いることができる。
例えば、該アンチセンスDNAまたはsiRNAを用いる場合、該アンチセンスDNAまたはsiRNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。該アンチセンスDNAまたはsiRNAは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
さらに、該アンチセンスDNAは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
(4)EDG受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法
本発明のDNAは、プローブとして用いることにより、EDG受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、例えば、(i)非ヒト哺乳動物の(1)血液、(2)特定の臓器、(3)臓器から単離した組織もしくは細胞、または(ii)形質転換体等に含まれるEDG受容体のmRNA量を測定することによる、EDG受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
EDG受容体のmRNA量の測定は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗癌剤など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肺、大腸、前立腺など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。
得られた細胞に含まれる本発明のタンパク質のmRNAは、例えば、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出し、例えば、TaqManPCRなどの手法を用いることにより定量することができ、公知の手段によりノーザンブロットを行うことにより解析することもできる。
(ii)EDG受容体を発現する形質転換体を上記の方法に従い作製し、該形質転換体に含まれるEDG受容体のmRNAを同様にして定量、解析することができる。
EDG受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に試験化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、細胞に含まれるEDG受容体のmRNA量を定量、解析することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に試験化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、該形質転換体に含まれるEDG受容体のmRNA量を定量、解析することにより行なうことができる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、蛋白質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが用いられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
試験化合物は塩を形成していてもよく、試験化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、EDG受容体の発現量を変化させる作用を有する化合物またはその塩であり、具体的には、(イ)EDG受容体の発現量を増加させることにより、EDG受容体を介する細胞刺激活性を増強させる化合物またはその塩、(ロ)EDG受容体の発現量を減少させることにより、該細胞刺激活性を減弱させる化合物またはその塩である。
細胞刺激活性としては、例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、一酸化炭素産生、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性、好ましくはこれらを促進する活性などが挙げられる。
EDG受容体の発現量を増加させ、該細胞刺激活性を増強させる化合物は、EDG受容体の生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
EDG受容体の発現量を減少させ、該細胞刺激活性を減弱させる化合物は、EDG受容体の生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
上記スクリーニング方法で得られるEDG受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩は、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫などの予防・治療剤として用いることができる。
(5)EDG受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩を含有する各種疾病の予防・治療剤
EDG受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩は、EDG受容体の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤として用いることができる。
該化合物またはその塩を前記したEDG受容体の機能不全に関連する疾患、例えば糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
(6)EDG受容体とリガンドとの結合性を変化させる化合物またはその塩(アゴニスト、アンタゴニストなど)のスクリーニング方法及びスクリーニングキット
EDG受容体等を用いるか、または組換え型レセプタータンパク質等の発現系を構築し、該発現系を用いたレセプター結合アッセイ系を用いることによって、リガンドとEDG受容体等との結合性を変化させる化合物(例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿など)またはその塩を効率よくスクリーニングすることができる。
EDG−2受容体に対するリガンドとしては、EDG−2受容体に結合する化合物であれば特に限定されないが、例えば、リゾフォスファチジン酸(lysophosphatidic acid(LPA))またはその塩などが用いられる。
EDG−3受容体に対するリガンドとしては、EDG−3受容体に結合する化合物であれば特に限定されないが、例えば、スフィンゴシン−1−リン酸(phingosine-1-phosphate(S1P))またはその塩などが用いられる。
EDG−5受容体に対するリガンドとしては、EDG−5受容体に結合する化合物であれば特に限定されないが、例えば、スフィンゴシン−1−リン酸(phingosine-1-phosphate(S1P))またはその塩などが用いられる。
さらに、リガンドとしては、各EDG受容体とそれに対するリガンドとの結合性を変化させる化合物(例えば、低分子合成アゴニストなど)またはその塩を用いることもできる。この各EDG受容体とそれに対するリガンドとの結合性を変化させる化合物またはその塩は、例えば、リガンドとしてリゾフォスファチジン酸またはその塩あるいはスフィンゴシン−1−リン酸またはその塩を用いて、後述する本発明のスクーニング方法を実施することによって得ることができる。
EDG受容体とそれに対するリガンドとの結合性を変化させる化合物としては、例えば、FTY720(2-amino-2-(2-[4-octylphenyl]ethyl)-1,3-propanediol hydrochloride)またはそのリン酸化体、WO02/29001に記載の化合物、WO03/073986に記載の化合物、WO03/062248に記載の化合物、WO03/062252に記載の化合物、Mol Pharmacol (2003)64,994-1005に記載の化合物(例、Ki1643)、J Med Chem (2002)45m,4629-4638に記載の化合物(例、2-alkylthiazolidine-4-carboxylic acids、2-(m- or p-heptylphenyl)thiazolidine-4-carboxylic acid。)、WO03/024402に記載の化合物、US2003/0027800に記載の化合物などが用いられ、なかでもFTY720またはそのリン酸化体、WO02/29001に記載の化合物、WO03/073986に記載の化合物、WO03/062248に記載の化合物、WO03/062252に記載の化合物、WO03/024402に記載の化合物、US2003/0027800に記載の化合物などのアゴニストが好ましく用いられる。
以下、それぞれの受容体に対するリガンド(EDG受容体とそれに対するリガンドとの結合性を変化させる化合物またはその塩を含む)を単にリガンドと略記する。
リガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物には、(イ)レセプターを介して細胞刺激活性を有する化合物(いわゆる、EDG受容体に対するアゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物(いわゆる、EDG受容体に対するアンタゴニスト)、(ハ)リガンドとEDG受容体との結合力を増強する化合物、あるいは(ニ)リガンドとEDG受容体との結合力を減少させる化合物などが含まれる。
すなわち、本発明は、リガンドおよびEDG受容体もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、EDG受容体等)を用いて、リガンドとEDG受容体等との結合性を変化させる化合物またはその塩を選択することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング方法を提供する。具体的には、(i)EDG受容体等とリガンドとを接触させた場合と(ii)EDG受容体等とリガンドおよび試験化合物とを接触させた場合との比較を行ない、リガンドとEDG受容体等との結合性を変化させる化合物またはその塩を選択することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば、該レセプタータンパク質等に対するリガンドの結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較することを特徴とする。
細胞刺激活性としては、例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、一酸化炭素産生、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性、特にこれらの活性を促進する活性が挙げられる。
より具体的には、本発明は、
(i)標識したリガンドを、EDG受容体等に接触させた場合と、標識したリガンドおよび試験化合物をEDG受容体等に接触させた場合における、標識したリガンドのEDG受容体等に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするリガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(ii)標識したリガンドを、EDG受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識したリガンドおよび試験化合物をEDG受容体を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識したリガンドの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするリガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(iii)標識したリガンドを、本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したEDG受容体に接触させた場合と、標識したリガンドおよび試験化合物を本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したEDG受容体に接触させた場合における、標識したリガンドのEDG受容体に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするリガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(iv)EDG受容体を活性化する化合物またはその塩(例えば、リガンドなど)をEDG受容体を含有する細胞に接触させた場合と、EDG受容体を活性化する化合物またはその塩および試験化合物をEDG受容体を含有する細胞に接触させた場合における、EDG受容体を介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするリガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
(v)EDG受容体を活性化する化合物またはその塩(例えば、リガンドなど)を本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したEDG受容体に接触させた場合と、EDG受容体を活性化する化合物またはその塩および試験化合物を本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したEDG受容体に接触させた場合における、EDG受容体を介する細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするリガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いるEDG受容体としては、上記したEDG受容体を含有するものであれば何れのものであってもよいが、EDG受容体を含有する哺乳動物の臓器の細胞膜画分が好適である。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させたヒト由来のレセプタータンパク質等などが適している。
EDG受容体を製造するには、上記の方法が用いられるが、本発明のDNAを哺乳細胞や昆虫細胞で発現することにより行なうことが好ましい。目的とするタンパク質部分をコードするDNA断片には相補DNAが用いられるが、必ずしもこれに制約されるものではない。例えば、遺伝子断片や合成DNAを用いてもよい。EDG受容体をコードするDNA断片を宿主動物細胞に導入し、それらを効率よく発現させるためには、該DNA断片を昆虫を宿主とするバキュロウイルスに属する核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)のポリヘドリンプロモーター、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどの下流に組み込むのが好ましい。発現したレセプターの量と質の検査はそれ自体公知の方法で行うことができる。例えば、文献〔Nambi,P.ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),267巻,19555〜19559頁,1992年〕に記載の方法に従って行なうことができる。
なお、本発明のスクリーニング方法において、EDG受容体を含有するものとしては、公知の方法に従って精製したEDG受容体であってもよいし、EDG受容体を含有する細胞を用いてもよく、またEDG受容体を含有する細胞の膜画分を用いてもよい。
本発明のスクリーニング方法において、EDG受容体を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法は公知の方法に従って行なうことができる。
EDG受容体を含有する細胞としては、EDG受容体を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが好ましい。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したEDG受容体と細胞由来のリン脂質や膜タンパク質などの膜成分が多く含まれる。
EDG受容体を含有する細胞や膜画分中のEDG受容体の量は、1細胞当たり10〜10分子であるのが好ましく、10〜10分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
リガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩をスクリーニングする上記の(i)〜(iii)を実施するためには、例えば、適当なEDG受容体画分と、標識したリガンドが必要である。
EDG受容体画分としては、天然型のEDG受容体画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型EDG受容体画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などを示す。
標識したリガンドとしては、標識したリガンド、標識したリガンドアナログ化合物などが用いられる。例えば〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識されたリガンドなどが用いられる。
具体的には、リガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングを行なうには、まずEDG受容体を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりEDG受容体標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとEDG受容体との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるEDG受容体やリガンドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01〜10mlのEDG受容体溶液に、一定量(5000〜500000cpm)の標識したリガンドを添加し、同時に10-4M〜10-10Mの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識のリガンドを加えた反応チューブも用意する。反応は約0〜50℃、望ましくは約4〜37℃で、約20分〜24時間、望ましくは約30分〜3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B0)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B0−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が、例えば、50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
リガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩をスクリーニングする上記の(iv)〜(v)の方法を実施するためには、例えば、レセプタータンパク質を介する細胞刺激活性を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。
具体的には、まず、EDG受容体を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行なうにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸、cAMPなど)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
また、試験化合物としては、EDG受容体の活性部位の原子座標およびリガンド結合ポケットの位置に基づいて、リガンド結合ポケットに結合するように設計された化合物が好ましく用いられる。EDG受容体の活性部位の原子座標およびリガンド結合ポケットの位置の測定は、公知の方法あるいはそれに準じる方法を用いて行うことができる。
EDG受容体に対するアゴニストであるかアンタゴニストであるかの具体的な評価方法は以下の(1)または(2)に従えばよい。
(1)前記(i)〜(iii)のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、リガンドとEDG受容体との結合性を変化させる(特に、結合を阻害する)化合物またはその塩を得た後、該化合物またはその塩が上記した細胞刺激活性を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩はEDG受容体に対するアゴニストであり、該活性を有しない化合物またはその塩はEDG受容体に対するアンタゴニストである。
(2)(a)試験化合物をEDG受容体を含有する細胞に接触させ、上記した細胞刺激活性を測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩はEDG受容体に対するアゴニストである。
(b)EDG受容体を活性化する化合物またはその塩(例えば、リガンド)をEDG受容体を含有する細胞に接触させた場合と、EDG受容体を活性化する化合物またはその塩および試験化合物をEDG受容体を含有する細胞に接触させた場合における、EDG受容体を介した細胞刺激活性を測定し、比較する。EDG受容体を活性化する化合物による細胞刺激活性を減少させ得る化合物またはその塩はEDG受容体に対するアンタゴニストである。
リガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キットは、EDG受容体、EDG受容体を含有する細胞またはその膜画分を含有するものなどである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
(1)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks' Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
(2)EDG受容体標品
EDG受容体を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×105個/穴で継代し、37℃、5%CO2、95%airで2日間培養したもの。
(3)標識リガンド
市販の〔3H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識したリガンド
水溶液の状態のものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
(4)リガンド標準液
リガンドを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
2.測定法
(1)12穴組織培養用プレートにて培養したEDG受容体発現CHO細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
(2)10-3〜10-10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識リガンドを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物の代わりに10-3Mのリガンドを5μl加えておく。
(3)反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識リガンドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
(4)液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式で求める。
PMB=[(B−NSB)/(B0−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non-specific Binding(非特異的結合量)
0 :最大結合量
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られうる化合物またはその塩は、リガンドとEDG受容体との結合性を変化させる作用を有する化合物またはその塩であり、具体的には、(1)EDG受容体を介して細胞刺激活性を有する化合物またはその塩(いわゆる、EDG受容体に対するアゴニスト)、(2)該細胞刺激活性を有しない化合物またはその塩(いわゆる、EDG受容体に対するアンタゴニスト)、(3)リガンドとEDG受容体との結合力を増強する化合物またはその塩、あるいは(4)リガンドとEDG受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩である。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物としては、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
EDG受容体に対するアゴニストは、EDG受容体に対するリガンドが有する生理活性と同様の作用を有しているので、該生理活性に応じて安全で低毒性な医薬として有用である。
EDG受容体に対するアンタゴニストは、EDG受容体に対するリガンドが有する生理活性を抑制することができるので、該生理活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
リガンドとEDG受容体との結合力を増強する化合物またはその塩は、EDG受容体に対するリガンドが有する生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
リガンドとEDG受容体との結合力を減少させる化合物またはその塩は、EDG受容体に対するリガンドが有する生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
リガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物としては、例えば、FTY720またはそのリン酸化体、WO02/29001に記載の化合物、WO03/073986に記載の化合物、WO03/062248に記載の化合物、WO03/062252に記載の化合物、Mol Pharmacol (2003)64,994-1005に記載の化合物、J Med Chem (2002)45m,4629-4638に記載の化合物、WO03/024402に記載の化合物、US2003/0027800に記載の化合物などが用いられる。
なかでもEDG受容体に対するアゴニストとしては、FTY720またはそのリン酸化体、WO02/29001に記載の化合物、WO03/073986に記載の化合物、WO03/062248に記載の化合物、WO03/062252に記載の化合物、WO03/024402に記載の化合物、US2003/0027800に記載の化合物などが用いられる。
EDG受容体に対するアンタゴニストとしては、WO02/29001に記載の化合物、Mol Pharmacol (2003)64,994-1005に記載の化合物、J Med Chem (2002)45m,4629-4638に記載の化合物、WO03/024402に記載の化合物、US2003/0027800に記載の化合物などが用いられる。
(7)EDG受容体とリガンドとの結合性を変化させる化合物またはその塩(アゴニスト、アンタゴニストなど)を含有する各種疾病の予防・治療剤)
リガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩(アゴニスト、アンタゴニスト)やリガンド、特にアンタゴニストは、EDG受容体の機能不全に関連する疾患、例えば、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫に対する予防・治療剤として用いることができる。
該化合物またはその塩やリガンドをEDG受容体の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤として使用する場合は、上述したような常套手段に従って製剤化することができる。
(8)本発明の抗体を用いるタンパク質などの定量、本発明の抗体を含有する診断剤およびそれを用いる診断方法
本発明の抗体は、EDG受容体を特異的に認識することができるので、被検液中のEDG受容体の定量、特にサンドイッチ免疫測定法、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどによる定量などに使用することができる。
これら個々の免疫学的測定法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えてEDG受容体またはその塩の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる。例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「メソッズ・イン・エンジモノジー」(Methods in ENZYMOLOGY)Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)などを参照することができる。
以上のように、本発明の抗体を用いることによって、EDG受容体を感度良く定量することができる。
さらに、本発明の抗体を用いて、生体内でのEDG受容体を定量することによって、EDG受容体の機能不全に関連する各種疾患の診断をすることができる。
例えば、本発明の抗体を用いてEDG受容体の濃度を定量することによって、EDG受容体の濃度の増加または減少が検出された場合、例えば、EDG受容体の機能不全または過剰発現に起因する疾患、特に糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫に罹患している可能性が高い、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在するEDG受容体を特異的に検出するために使用することができる。また、EDG受容体を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中のEDG受容体の検出、被検細胞内におけるEDG受容体の挙動の分析などのために使用することができる。
(9)細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法
本発明の抗体は、EDG受容体を特異的に認識することができるので、細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングに用いることができる。
すなわち本発明は、例えば、
(i)非ヒト哺乳動物の(a)血液、(b)特定の臓器、(c)臓器から単離した組織もしくは細胞等を破壊した後、細胞膜画分を単離し、細胞膜画分に含まれるEDG受容体またはその部分ペプチドを定量することによる、細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(ii)EDG受容体を発現する形質転換体を破壊した後、細胞膜画分を単離し、細胞膜画分に含まれるEDG受容体を定量することによる、細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(iii)非ヒト哺乳動物の(a)血液、(b)特定の臓器、(c)臓器から単離した組織もしくは細胞等を切片とした後、免疫染色法を用いることにより、細胞表層でのEDG受容体の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上のEDG受容体を確認することによる、細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
(iv)EDG受容体を発現する形質転換体を切片とした後、免疫染色法を用いることにより、細胞表層でのEDG受容体の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上のEDG受容体を確認することによる、細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
細胞膜画分に含まれるEDG受容体の定量は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗癌剤など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肺、大腸、前立腺など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。得られた臓器、組織または細胞等を、例えば、適当な緩衝液(例えば、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヘペス緩衝液など)等に懸濁し、臓器、組織あるいは細胞を破壊し、界面活性剤(例えば、トリトンX100TM、ツイーン20TMなど)などを用い、さらに遠心分離や濾過、カラム分画などの手法を用いて細胞膜画分を得る。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500〜3000rpm)で短時間(通常、約1〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したEDG受容体と細胞由来のリン脂質や膜タンパク質などの膜成分が多く含まれる。
細胞膜画分に含まれるEDG受容体は、例えば、本発明の抗体を用いたサンドイッチ免疫測定法、ウエスタンブロット解析などにより定量することができる。
かかるサンドイッチ免疫測定法は上記の方法と同様にして行なうことができ、ウエスタンブロットは公知の手段により行なうことができる。
(ii)EDG受容体を発現する形質転換体を上記の方法に従い作製し、細胞膜画分に含まれるEDG受容体を定量することができる。
細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物またはその塩のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に試験化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、細胞膜におけるEDG受容体の量を定量することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に試験化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、細胞膜におけるEDG受容体の量を定量することにより行なうことができる。
細胞膜画分に含まれるEDG受容体またはその部分ペプチドの確認は具体的には以下のようにして行なう。
(iii)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には痴呆ラット、肥満マウス、動脈硬化ウサギ、担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗痴呆薬、血圧低下薬、抗癌剤、抗肥満薬など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肺、大腸など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。得られた臓器、組織または細胞等を、常法に従い組織切片とし、本発明の抗体を用いて免疫染色を行う。細胞表層での該レセプタータンパク質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該タンパク質を確認することにより、定量的または定性的に、細胞膜におけるEDG受容体の量を確認することができる。
(iv)EDG受容体を発現する形質転換体等を用いて同様の手段をとることにより確認することもできる。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる作用を有する化合物またはその塩であり、具体的には、(イ)細胞膜におけるEDG受容体の量を増加させることにより、レセプターを介する細胞刺激活性を増強させる化合物またはその塩、(ロ)細胞膜におけるEDG受容体の量を減少させることにより、該細胞刺激活性を減弱させる化合物またはその塩である。
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物としては、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
細胞膜におけるEDG受容体の量を増加させ、該細胞刺激活性を増強させる化合物またはその塩は、EDG受容体の生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
細胞膜におけるEDG受容体の量を減少させ、該細胞刺激活性を減弱させる化合物は、EDG受容体の生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
(10)細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物またはその塩、及びその化合物またはその塩を含有する各種疾病の予防・治療剤
EDG受容体は上記のとおり、例えば、生体内で重要な役割を果たしていると考えられる。したがって、細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物またはその塩は、EDG受容体の機能不全に関連する疾患の予防・治療剤として用いることができる。
例えば、細胞膜におけるEDG受容体の量を変化させる化合物、特に細胞膜におけるEDG受容体の量を減少させる化合物は、EDG受容体の機能不全または過剰発現などに起因する疾患(例えば、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫)の予防・治療薬として用いることができる。
該化合物またはその塩をEDG受容体の機能不全または過剰発現に関連する疾患の予防・治療剤として使用する場合は、上述した常套手段に従って製剤化することができる。
(11)本発明の抗体を含有する医薬
EDG受容体に対する中和抗体は、EDG受容体の関与する活性、例えばシグナル伝達機能を不活性化する活性を有している。従って、本発明の抗体が中和活性を有する場合は、EDG受容体の関与するシグナル伝達、例えば、EDG受容体を介する細胞刺激活性を不活性化することができる。したがって、このような抗体は、EDG受容体の過剰発現などに起因する疾患の予防・治療に用いることができる。
例えば、EDG受容体に対する抗体(例、中和抗体)は、EDG受容体の過剰発現などに起因する疾患(例えば、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫)の予防・治療薬として用いることができる。
本発明の予防・治療剤の製剤化は、前述のEDG受容体を含有する製剤と同様に製剤化することができる。
(12)本発明のDNA導入動物の作製
本発明は、外来性の本発明のDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
〔2〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕記載の動物、
〔3〕ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第〔2〕記載の動物、および
〔4〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA導入動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを導入することによって作出することができる。また、該DNA導入方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを導入し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と自体公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA導入動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F1系統,BDF1系統,B6D2F1系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常なEDG受容体を発現させるDNAを意味し、例えば、正常なEDG受容体の機能を抑制するレセプタータンパク質を発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に導入させるにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを導入させる場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA導入哺乳動物を作出することができる。
EDG受容体の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、(a)ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、(b)各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA導入哺乳動物において目的とするメッセンジャーRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5'上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3'下流 に連結することも目的により可能である。
正常なEDG受容体の翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常なEDG受容体の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は導入動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを導入させた非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的にEDG受容体の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA導入動物を用いて、EDG受容体の機能亢進症や、EDG受容体が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを導入させた哺乳動物は、遊離したEDG受容体の増加症状を有することから、EDG受容体に関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的にEDG受容体の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA導入動物を用いて、EDG受容体の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、EDG受容体の機能不活性型不応症における本発明の異常レセプタータンパク質による正常レセプタータンパク質の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを導入させた哺乳動物は、遊離したEDG受容体の増加症状を有することから、EDG受容体の機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。
また、上記2種類の本発明のDNA導入動物のその他の利用可能性として、例えば、
(a)組織培養のための細胞源としての使用、
(b)本発明のDNA導入動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現されたEDG受容体を分析することによる、EDG受容体により特異的に発現あるいは活性化するEDG受容体との関連性についての解析、
(c)DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
(d)上記(c)記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
(e)本発明の変異レセプタータンパク質を単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、本発明のDNA導入動物を用いて、EDG受容体の機能不活性型不応症などを含む、EDG受容体に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、EDG受容体に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA導入動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどのタンパク質分解酵素により、遊離したDNA導入細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、EDG受容体産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、EDG受容体およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA導入動物を用いて、EDG受容体の機能不活性型不応症を含む、EDG受容体に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA導入動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、EDG受容体が関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
(13)ノックアウト動物
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
〔2〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔3〕ネオマイシン耐性である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔4〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔5〕ゲッ歯動物がマウスである第〔4〕項記載の胚幹細胞、
〔6〕本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
〔7〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔8〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔9〕ゲッ歯動物がマウスである第〔8〕項記載の非ヒト哺乳動物、および
〔10〕第〔7〕項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしているEDG受容体の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的にEDG受容体の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエキソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエキソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエキソンの機能を破壊するか、あるいはエキソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なメッセンジャーRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知 EvansとKaufmaの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDF1マウス(C57BL/6とDBA/2とのF1)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDF1マウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約106個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1〜10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001〜0.5%トリプシン/0.1〜5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1〜3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおけるEDG受容体またはEDG受容体の細胞生物学的検討において有用である。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。
該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、EDG受容体のヘテロ発現不全個体であり、EDG受容体のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔からEDG受容体のホモ発現不全個体を得ることができる。
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、EDG受容体により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、EDG受容体の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
(14a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、前記と同様のものが用いられる。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の疾患症状が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上改善した場合、該試験化合物を糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫に対して治療・予防効果を有する化合物として選択することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、EDG受容体の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患(例えば、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫)に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物またはその塩から誘導される化合物またはその塩も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したEDG受容体とリガンドとの結合性を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物またはその塩を経口投与する場合、一般的に例えば、糖尿病性腎症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、糖尿病性腎症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
(14b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、EDG受容体をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、EDG受容体の発現する組織で、EDG受容体の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便にEDG受容体の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、EDG受容体欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、EDG受容体の発現を促進し、EDG受容体の機能を促進することができるので、例えば、EDG受容体の機能不全に関連する疾患などの予防・治療薬などの医薬として有用である。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、EDG受容体の発現を阻害し、該レセプタータンパク質の機能を阻害することができるので、例えば、EDG受容体の発現過多に関連する疾患などの予防・治療薬などの医薬として有用である。
具体的には、EDG受容体をコードするDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物、特にEDG受容体をコードするDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物は、例えば、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫などの予防・治療薬として有用である。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物またはその塩から誘導される化合物またはその塩も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記したEDG受容体またはその塩とリガンドとの結合性を変化させる化合物またはその塩を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に例えば、糖尿病性腎症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、糖尿病性腎症患者(体重60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、体重60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防・治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、EDG受容体のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子移入動物)を作成すれば、特異的にそのレセプタータンパク質を合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポータ遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、EDG受容体そのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
(15)各種薬物の作用メカニズムの解明方法
EDG受容体を用いることによって、各種薬物がEDG受容体を介して薬理効果を発揮しているか否かを確認することができる。
すなわち、本発明は、
(i)EDG受容体を用いることを特徴とする、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬がEDG受容体に結合することを確認する方法、
(ii)EDG受容体を用いることを特徴とする、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬がEDG受容体に対するアゴニストであることを確認する方法、
(iii)EDG受容体を用いることを特徴とする、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬がEDG受容体に対するアンタゴニストであることを確認する方法、
(iv)各薬をEDG受容体に接触させた場合における、各薬とEDG受容体との結合量を測定することを特徴とする上記(i)〜(iii)記載のスクリーニング方法を提供する。
この確認方法は、前記したリガンドとEDG受容体との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法において、試験化合物に代えて、上記の薬物を使用することによって実施することができる。
また、本発明の確認方法用キットは、前記したリガンドとEDG受容体の結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キットにおいて、試験化合物に代えて、上記の薬物を含有するものである。
このように、本発明の確認方法を用いることによって、市販または開発途中の各種薬物がEDG受容体を介して薬理効果を発揮していることを確認することができる。
(略号の表示)
本明細書において、塩基、アミノ酸、化合物等を略号で表示する場合、IUPAC-IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づき表示を行い、その例を以下に記載する。またアミノ酸が光学異性体を取りうる場合、特に明示しなければL体を表す。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
aまたはA :アデニン
tまたはT :チミン
gまたはG :グアニン
cまたはC :シトシン
uまたはU :ウラシル
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
本明細書の配列表記載の配列は以下のとおりである。
〔配列番号:1〕
ヒトEDG−2受容体のアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:2〕
ヒトEDG−2受容体のアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
〔配列番号:3〕
ラットEDG−2受容体のアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:4〕
ラットEDG−2受容体のアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
〔配列番号:5〕
ヒトEDG−3受容体のアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:6〕
ヒトEDG−3受容体のアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
〔配列番号:7〕
ラットEDG−3受容体の部分アミノ酸配列を表す。
〔配列番号:8〕
ラットEDG−3受容体の部分アミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
〔配列番号:9〕
ヒトEDG−5受容体のアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:10〕
ヒトEDG−5受容体のアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
〔配列番号:11〕
ラットEDG−5受容体のアミノ酸配列を表す。
〔配列番号:12〕
ラットEDG−5受容体のアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
〔配列番号:13〕
実施例1で用いたEDG−1受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:14〕
実施例1で用いたEDG−1受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:15〕
実施例1で用いたEDG−1受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:16〕
実施例1で用いたEDG−2受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:17〕
実施例1で用いたEDG−2受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:18〕
実施例1で用いたEDG−2受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:19〕
実施例1で用いたEDG−3受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:20〕
実施例1で用いたEDG−3受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:21〕
実施例1で用いたEDG−3受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:22〕
実施例1で用いたEDG−4受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:23〕
実施例1で用いたEDG−4受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:24〕
実施例1で用いたEDG−4受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:25〕
実施例1で用いたEDG−5受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:26〕
実施例1で用いたEDG−5受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:27〕
実施例1で用いたEDG−5受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:28〕
実施例1で用いたEDG−6受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:29〕
実施例1で用いたEDG−6受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:30〕
実施例1で用いたEDG−6受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:31〕
実施例1で用いたEDG−7受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:32〕
実施例1で用いたEDG−7受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:33〕
実施例1で用いたEDG−7受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:34〕
実施例1で用いたEDG−8受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:35〕
実施例1で用いたEDG−8受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:36〕
実施例1で用いたEDG−8受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:37〕
実施例2で用いたEDG−2受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:38〕
実施例2で用いたEDG−2受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:39〕
実施例2で用いたEDG−2受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:40〕
実施例2で用いたEDG−3受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:41〕
実施例2で用いたEDG−3受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:42〕
実施例2で用いたEDG−3受容体用プローブの塩基配列を表す。
〔配列番号:43〕
実施例2で用いたEDG−5受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:44〕
実施例2で用いたEDG−5受容体用プライマーの塩基配列を表す。
〔配列番号:45〕
実施例2で用いたEDG−5受容体用プローブの塩基配列を表す。
以下に参考例および実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、これは本発明の範囲を限定するものではない。
参考例1 遺伝子発現解析方法
以下の実施例においては、ヒト成人正常脳由来のmRNA試料を用い、TaqMan法によって、この試料中の標的Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子由来mRNAの有無及びその産生量を定量し、標的Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子の発現レベルを解析する。本例においては、384穴プレートを用いて、標的Gタンパク質共役型レセプター(354種)、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子の発現を解析する。標的GPCR遺伝子として、例えばORL; M; M; M; M; M; A; A2A; A2B; A;α1A; α1B; α1D; α2A; α2B; α2C; β1; β2; β3;AT1; AT2;BB1; BB2;bb3;B; B;CB1;CB2;CCR1; CCR2; CCR3; CCR4; CCR5; CCR6; CCR7; CCR8; CCR9; CCR10; CXCR1; CXCR2; CXCR3; CXCR4; CXCR5; CXCR1; XCR1; C3a; C5a; fMLP;CCK; CCK;CRF; CRF;D1; D2; D3; D4; D5;ET; ET;GAL1; GAL2; GAL3;mglu; mglu; mglu; mglu; mglu; mglu; mglu; mglu;FSH; LSH; TSH;H; H; H; H;5−HT1A; 5−HT1B; 5−HT1D; 5−ht1B; 5−ht1F;5−HT2A; 5−HT2F; 5−HT2C; 5−HT; 5−HT; 5−ht5A; 5−ht5B; 5−HT; 5−HT; BLT: CysLT; CysLT;edg1; edg2; edg3; edg4; MC; MC; MC; MC; MC;MT; MT; MT;Y; Y; Y; Y; Y;NTS1; NTS2;DOP; KOP; MOP; NOP; P2Y; P2Y; P2Y; P2Y;P2Y11; P2Y12;PPAR−α; PPAR−β; PPAR−γ;DP; FP; IP; TP; EP; EP; EP;EP;PAR1; PAR2; PAR3; PAR4;sst; sst; sst; sst; sst;NK; NK; NK;TRH; TRH;VPAC; VPAC; PAC;V1a; V1b; V; OT; Naチャネル(タイプI; タイプII/タイプIIA; タイプIII; SCL11/NaG; PN1; NaCh6; NaDRG; SkM1/μ1, SkM2);Kチャネル(Kv; EAG; KQT; IRK; ROMK; GIRK; KATP等);Ca2+チャネル(α1G; α1E; α1S: α1C; α1D; α1B; α1A; IP3; リアノジンレセプターなど);Clチャネル(GABA; GABA; グリシンレセプター;C1C0; C1C1; CFTRなど);非選択性カチオンチャネル(nAChR; 5−HT; NMDA; AMPA; P2XATP; CNGなど)などから選択される。
実施例1 ヒト正常メサンギウム細胞におけるGタンパク質共役型レセプターEDGファミリーのmRNAの発現
正常ヒトメサンギウム細胞(旭テクノグラス社より購入)から、Isogen(ニッポンジーン社)のマニュアルにしたがってtotal RNAを調製した。このRNA1μgから逆転写酵素としてSuperScriptII逆転写酵素(GIBCO BRL社)を用い、添付のマニュアルに従って42℃で反応を行い、反応終了後にエタノール沈殿してTEに溶解した(RNA 100ng/μl相当)。EDGファミリーのmRNA発現量はSequence Detection System Prism 7900HTシステム(アプライドバイオシステムズ社)を用いて定量した。それぞれのレセプター発現量定量のために、それぞれのレセプターを特異的認識するTaqManプローブおよびプライマーをPrimer Express(PE Applied Biosystems社製ソフトウエアー)を用いて設計し合成した。
EDG−1受容体の検出用には、
5'- CCACCGACCCATGTACTATTTT -3'(配列番号:13),5'-TGTAGGCTACTCCTGCCAACAG -3'(配列番号:14)およびTaqMan probeとして5'-(Fam)- TTGGCAATCTGGCCCTCTCAGA -(Tamra)-3'(配列番号:15)を使用した。
EDG−2受容体検出用には5'- ACTGTCAGCACATGGCTCCTT -3'(配列番号:16), 5'-ACCGTAATGTGCCTCTCGATT -3'(配列番号:17)およびTaqMan probeとして5'-(Fam)- ATTGACACCAGCCTGACGGCAT -(Tamra)-3'(配列番号:18)を使用した。
EDG−3受容体検出用には5'- CCGTGCTCTTCTTGGTCAT-3' (配列番号:19), 5'- CCAGATGGCAATCAAAACC -3'(配列番号:20)およびTaqMan probeとして5'-(Fam)- TGCAGCTTCATCGTCTTGGAGAACCT -(Tamra)-3' (配列番号:21)を使用した。
EDG−4受容体検出用には5'- CCTGGTCAAGACTGTTGTCATC-3'(配列番号:22), 5'- CAGGACATTGCAGGACTCA -3'(配列番号:23)およびTaqMan probeとして5'-(Fam)- TGGTACTGCTCCTGGATGGTTTAGGCT -(Tamra)-3'(配列番号:24)を使用した。
EDG−5受容体検出用には5'- CCAACAAGGTCCAGGAACA-3'(配列番号:25), 5'- AGGTTTTCCACCACAATGG -3'(配列番号:26)およびTaqMan probeとして5'-(Fam)- AATTATACCAAGGAGACGCTGGAAACGC -(Tamra)-3'(配列番号:27)を使用した。
EDG−6受容体検出用には5'- GAACTGCCTGTGCGCCTTT-3'(配列番号:28), 5'- CCATAGAGGCCCATGATGGT -3'(配列番号:29)およびTaqMan probeとして5'-(Fam)- TCTGCCCCTCTACTCCAAGCGCTACATC-(Tamra)-3'(配列番号:30)を使用した。
EDG−7受容体検出用には5'- TGACTGCTTCCCTCACCAA-3'(配列番号:31), 5'- GCATCCTCATGATTGACATGTG -3'(配列番号:32)およびTaqMan probeとして5'-(Fam)- TTGCTGGTTATCGCCGTGGAGA-(Tamra)-3'(配列番号:33)を使用した。
EDG−8受容体検出用には5'- CTTGCTCCACTGTCTTGCC-3'(配列番号:34), 5'- TAGAGTGCACAGATCGCGG -3'(配列番号:35)およびTaqMan probeとして5'-(Fam)- CTCTACGCCAAGGCCTACGTGCTCTTCT-(Tamra)-3'(配列番号:36)を使用した。
定量のための反応液はTaqMan Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)のマニュアルに従い、それぞれのGタンパク質共役型レセプターのプライマー(0.9μM)、プローブ(0.25μM)、cDNAをtotalRNA25ng相当加えて調製した。PCR反応は50℃・2分、95℃・10分の後、95℃・15秒、60℃・1分のサイクルを40回繰り返した。その結果、ヒト正常メサンギウム細胞ではEDG−1受容体が34、420コピー/25ng totalRNA、EDG−2受容体が624、726コピー/25ng totalRNA、EDG−3受容体が176、531コピー/25ng totalRNA、EDG−4受容体が396コピー/25ng totalRNA、EDG−5受容体が16、468コピー/25ng totalRNA、EDG−6受容体が28コピー/25ng totalRNA、EDG−7受容体が722コピー/25ng totalRNA、EDG−8受容体が4,480コピー/25ng totalRNAであった。このことはEDG受容体ファミリー、特にEDG−1受容体,EDG−2受容体,EDG−3受容体,EDG−5受容体がメサンギウム細胞の増殖、糖の取り込み、アポトーシス、遊走などの調節を介して糖尿病性腎症などの腎臓疾患に関与していることを示すものであった。
実施例2 糖尿病性腎症モデルラットの腎臓におけるEDG受容体mRNA発現量解析
42週齢、68週齢のWistar FattyおよびWistar Leanラットより腎臓を摘出し、total RNAをIsogen(ニッポンジーン社)を用いてマニュアルにしたがって調製した。total RNA 1μgからランダムプライマーを用いて逆転写反応した。逆転写酵素SuperScriptII(GIBCO BRL社)を使用し、添付のプロトコールにしたがって反応させ、エタノール沈殿して40μlのTEに溶解した。mRNAの発現量の定量にはABI PRISM 7900HT(アプライドバイオシステムズ社)を使用した。増幅と検出のためのプライマーとTaqMan probeをPrimer Expressの配列を(アプライドバイオシステムズ社)を利用してデザインした。
その配列を以下に示す。
〔EDG−2受容体用〕
5’-TGTCCCTAGACCCAAGAGACTTTAG-3’(配列番号:37)、
5’-GGTCCCCTTCTCTTTTCCAAA-3’(配列番号:38)、
5’-(Fam)-ATGAACTTGCTTGGTAGCCCCCATCTTC-(Tamra)-3’(配列番号:39)。
〔EDG−3受容体用〕
5’-ATCTTGTACGCGCGCATCTA-3’(配列番号:40)、
5’-TGGATCTCTCGGAGTTGTGGTT-3’(配列番号:41)、
5’-(Fam)-TGGTCAAGTCCAGCAGCCGCAG-(Tamra)-3’(配列番号:42)。
〔EDG−5受容体用〕
5’-GTTTGCCCGAGAGGGTTCA-3’(配列番号:43)、
5’-CTTGTCTCTCGATGGCAATGG-3’(配列番号:44)、
5’-(Fam)-CTTCATCACGCTCTCTGCCTCGGTCTT-(Tamra)-3’(配列番号:45)。
定量のための反応液はTaqMan Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)のプロトコールにしたがって、プライマー(0.9μM)、プローブ(0.25μM)、サンプルcDNAを1μlを反応液に加えて1 wellあたり20μlとして調製した。ABI PRISM 7900HTでの反応は、50℃(2分)、95℃(10分)後、95℃(15秒)、60℃(1分)のサイクルを40回行なった。
GAPDHのmRNAの定量は、TaqMan Rodent GAPDH Control Reagents(VIC probe) (アプライドバイオシステムズ社)を用いて、プロトコールにしたがって測定した。
得られた各GPCRのmRNA発現量をGAPDHの発現量で補正した。その結果、糖尿病性腎症モデルWistar Fattyラットの腎臓において、EDG−2受容体、EDG−3受容体およびEDG−5受容体の発現量が高いことが明らかになった。
糖尿病性腎症モデルラット(Wister)の腎臓におけるEDG−2受容体mRNAの発現を示す。横軸のLeanはWister Leanを、FattyはWister Fattyを、42wksは42週齢を、68wksは68週齢を示す。縦軸はGAPDH mRNA発現量に対するEDG−2受容体 mRNA発現量の相対値を示す。 糖尿病性腎症モデルラット(Wister)の腎臓におけるEDG−3受容体mRNAの発現を示す。横軸のLeanはWister Leanを、FattyはWister Fattyを、42wksは42週齢を、68wksは68週齢を示す。縦軸はGAPDH mRNA発現量に対するEDG−3受容体 mRNA発現量の相対値を示す。 糖尿病性腎症モデルラット(Wister)の腎臓におけるEDG−5受容体mRNAの発現を示す。横軸のLeanはWister Leanを、FattyはWister Fattyを、42wksは42週齢を、68wksは68週齢を示す。縦軸はGAPDH mRNA発現量に対するEDG−5受容体 mRNA発現量の相対値を示す。

Claims (21)

  1. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤。
  2. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤。
  3. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の診断剤。
  4. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤。
  5. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の診断剤。
  6. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤。
  7. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチドを含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の診断剤。
  8. (i)リゾフォスファチジン酸またはその塩および(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩を用いて、リゾフォスファチジン酸またはその塩と該EDG−2受容体またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を選択することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング方法。
  9. (i)リゾフォスファチジン酸またはその塩および(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング用キット。
  10. (i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩および(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩を用いて、スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と該EDG−3受容体またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を選択することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング方法。
  11. (i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩および(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング用キット。
  12. (i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩および(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩を用いて、スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と該EDG−5受容体またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を選択することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング方法。
  13. (i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩および(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩を含有することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療薬のスクリーニング用キット。
  14. (i)リゾフォスファチジン酸またはその塩と(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤。
  15. (i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤。
  16. (i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤。
  17. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを用いることを特徴とする該EDG−2受容体、EDG−3受容体またはEDG−5受容体の発現量を変化させ、糖尿病性腎症疾、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫を予防・治療する化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  18. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有することを特徴とする該EDG−2受容体、EDG−3受容体またはEDG−5受容体の発現量を変化させ、糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫を予防・治療する化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
  19. 配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩を含有してなる糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤。
  20. 哺乳動物に対して、(I)(i)リゾフォスファチジン酸またはその塩と(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、(II)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、(III)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、または(IV)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療方法。
  21. 糖尿病性腎症、慢性腎不全、腎炎、糸球体腎炎、間質性腎疾患または腎性浮腫の予防・治療剤を製造するための、(I)(i)リゾフォスファチジン酸またはその塩と(ii)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、(II)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、(III)(i)スフィンゴシン−1−リン酸またはその塩と(ii)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、または(IV)配列番号:1で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−2受容体、配列番号:5で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−3受容体または配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するEDG−5受容体の発現量を変化させる化合物またはその塩の使用。
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