JP2004215503A - 遺伝子発現解析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】遺伝子発現解析法、レセプタータンパク質の新規用途などの提供。
【解決手段】複数の遺伝子個々の発現量をまとめて定量解析することにより、ある細胞または組織においてその発現が特徴的に亢進または減少している遺伝子を同定することを特徴とする遺伝子発現解析方法及びその方法に用いられる定量キットなどを提供する。また、動物由来の特定なアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有する新規Gタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩およびリガンドの1つである糖鎖に親和性を示すタンパク質(例、レクチン)を用いることを特徴とする該レセプタータンパク質またはその塩とリガンドとの結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法などを提供する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の遺伝子の発現解析をまとめて行う遺伝子発現解析方法、そのために用いられる遺伝子発現解析キット等に関する。また、本発明は、その遺伝子発現解析方法およびその解析キットを用いた疾患関連遺伝子の特定方法に関する。さらに、本発明は疾患関連遺伝子の発現量と変異の解析による特定疾患の診断方法、及びその特定された遺伝子DNAまたはその遺伝子産物を含む医薬品にも関する。さらに、本発明は、ヒト由来のGタンパク質共役型レセプタータンパク質(dj287G14.2レセプター)およびそれをコードするポリヌクレオチドの用途に関する。さらに、本発明は、マウス由来の新規なGタンパク質共役型レセプタータンパク質(dj287G14.2レセプター)、それをコードするポリヌクレオチドおよびそれらの用途に関する。さらに、本発明はEDG−1レセプターアゴニスト・アンタゴニストまたはEDG−2アゴニスト・アンタゴニストのスクリーニング方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
Gタンパク質共役型レセプタータンパク質は生体の細胞や臓器の各機能細胞表面に存在し、それら細胞や臓器の機能を調節する分子、例えばホルモン、神経伝達物質および生理活性物質等の標的として生理的に重要な役割を担っている。レセプターは生理活性物質との結合を介してシグナルを細胞内に伝達し、このシグナルにより細胞の賦活や抑制といった種々の反応が惹起される。各種生体の細胞や臓器の内の複雑な機能を調節する物質と、特異的レセプタータンパク質、Gタンパク質共役型レセプタータンパク質との関係を明らかにすることは、各種生体の細胞や臓器の機能と密接に関連した医薬品開発に非常に重要な手段を提供するものであり既存の医薬品の約45%が細胞膜上のレセプタータンパク質に作用し、その中でGタンパク質共役型レセプタータンパク質が大きな割合を占めていることも知られている(Drews, J., Science 287, 1960 (2000))。
一方、イオンチャネルは細胞膜を貫通する膜タンパク質で、イオンの膜透過を調節して細胞応答を担っている。イオンに対する選択性があるために、Na、K、Ca2+、Clチャネル等と呼ばれ、チャネルの開閉機構によって、電位依存型(Na、K、Ca2+)と、レセプター依存型(ニコチン性アセチルコリンレセプター、GABAレセプター)に分類される。これらのイオンチャネルは、生体内において多くの生理的機能を有する。例えば、Kイオンを選択的に透過させる膜タンパクであるKチャネルは、生体内で、細胞の静止膜電位形成、再分極、活動電位発生頻度の調節など重要な生理機能に密接に関わっている。また、Clチャネルは神経筋の興奮性調節、細胞容積調節、上皮細胞膜における電解質・水分の輸送など多様な生理機能を示す。このように、各種イオンチャネルは、種々の生理機能を有するので医薬品の標的となる。
また、生体のレセプターには酵素活性を有するものも存在し、例えば、チロシンリン酸化酵素型レセプターなどが挙げられる。その酵素活性が種々の生理的機能を奏するために、チロシンリン酸化酵素型レセプターも多くの医薬品の標的となっている。さらに、その他にも、転写因子、トランスポーター、プロテインキナーゼ、プロテインフォスファターゼ、プロテアーゼ、熱ショックプロテイン、ATPaseまたはDNA結合プロテイン等の遺伝子ファミリーが存在し、それぞれが数十から数百種類のファミリーをなし医薬の標的となっている。
現在までにそれぞれ多種類の遺伝子(Gタンパク質共役型レセプター約400種、チロシンリン酸化酵素型レセプター約100種、イオンチャネルのファミリー約150種)が同定、クローニングされている。しかし、それら全ての遺伝子についてその機能が明らかとなったわけではなく、機能不明のタンパク質が多数存在している。これらのタンパク質の機能を解明することが、新規医薬品の開発への第一段階となる。
生体内で発現している遺伝子を解析する方法として、ノーザンブロット法、ディファレンシャルディスプレイ法、RT−PCR法などが用いられてきた。しかし、一度に解析できる遺伝子数は限られ、多くの遺伝子を含む試料の処理は困難であった。また定量性についても、その感度は低いものであった。
近年、生体内で発現している全ての遺伝子を解析する手段として開発されたマイクロアレイ法は、スライドガラスなどのチップ上に数千ないし数万個のDNA情報を合成またはスポットし、解析するRNAに由来する標的DNAをハイブリダイズし、生成されたハイブリッドを指標として、遺伝子の転写量を測定する方法であるが、定量性についての感度は高いものではなかった。
一方、特定のmRNAを定量する方法としては、TaqMan法等が知られており、例えば、特許公開第2001−204483号公報には、hTERT mRNAを定量する方法が開示されている。さらにTaqMan法は、SNP解析を行う方法の一つとしても知られておりSNPを認識するプライマーとプローブを設計し、それを用いることにより発現量だけでなく疾患に関連する変異を解析することもできる。
【0003】
本発明で用いられるdj287G14.2レセプターと同一のアミノ酸配列を有するタンパク質およびそれをコードするDNAが記載されている(特許文献1)。しかしながら、これらのGタンパク質共役型レセプタータンパク質の機能およびその生理的リガンドは解明されていなかった。
また、EDG−1レセプター(非特許文献1)、EDG−2レセプター(非特許文献2)、EDG−3レセプター(非特許文献3)、EDG−5レセプター(非特許文献4)、EDG−8レセプター(非特許文献5)が記載されており、これらレセプターが血管組織に発現していることが記載されている。しかし、各レセプターが血管のどの細胞にどの程度発現しているか解明されていなかった。EDG−4、EDG−6、EDG−7については血管組織での明確な発現は知られていない。
【0004】
【特許文献1】
WO2001/18207
【非特許文献1】
Biochem Biophys Res Commun 1997 Nov 26;240(3):737−41
【非特許文献2】
Biochem Biophys Res Commun 1997 Feb 24;231(3):619−22
【非特許文献3】
Cell 1999 Oct 29;99(3):301−12
【非特許文献4】
J Biol Chem 1999 Dec 10;274(50):35343−50
【非特許文献5】
Biochemistry 2001 Nov 20;40(46):14053−60
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ある特定のファミリーに属する多くの遺伝子の発現を高感度に、しかも一度に定量するという思想およびそれを実現するための定量システムはこれまでには全く知られていなかった。したがって、ある特定のファミリーに属する多くの遺伝子の発現を高感度に、かつ一度に定量できるシステムがあれば、ある疾患細胞等で特異的に高発現している遺伝子を相対的かつ定量的に同定することができるので、疾患遺伝子の特定、特定疾患の診断、その疾患の治療等の分野で有用である。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、以下に示す、遺伝子発現解析方法、診断方法、それらの方法に用いられる定量キット、それらの方法又はキットによって機能が解明されるタンパク質もしくはその用途などを提供する。
(1)複数の遺伝子個々の発現量をまとめて定量解析することにより、ある細胞または組織においてその発現が特徴的に亢進または減少している遺伝子を同定することを特徴とする遺伝子発現解析方法。
(2)特定の遺伝子ファミリーに属する複数の遺伝子の発現解析をまとめて行うことにより、その遺伝子ファミリーの中で、ある細胞または組織においてその発現が特徴的に亢進または減少している遺伝子をその発現量の絶対値を算出することで同定する上記(1)記載の方法。
(3)複数の各反応場所で、複数の標的mRNAを含み得るmRNA試料と、それぞれの標的mRNAに対応するプライマー対をそれぞれ含んでなる各増幅試薬とを接触させることにより、増幅反応を行い、得られた増幅生成物の生成量を測定することによって遺伝子の発現解析を行う上記(1)記載の方法。
(4)複数の反応場所を有する反応器具の各反応場所で、複数の標的mRNAを含み得るmRNA試料と、それぞれの標的mRNAに対応するプライマー対をそれぞれ含んでなる各増幅試薬とを接触させることにより、増幅反応を行い、得られた増幅生成物の生成量を測定することによって遺伝子の発現解析を行う上記(1)記載の方法。
(5)前記特定の遺伝子ファミリーがGタンパク質共役型レセプター遺伝子ファミリーである上記(2)記載の方法。
(6)前記特定の遺伝子ファミリーがチロシンリン酸化酵素型レセプター遺伝子ファミリーである上記(2)記載の方法。
(7)前記特定の遺伝子ファミリーがイオンチャネル遺伝子ファミリーである上記(2)記載の方法。
(8)前記特定の遺伝子ファミリーが転写因子、トランスポーター、プロテインキナーゼ、プロテインフォスファターゼ、プロテアーゼ、ヒートショックプロテイン、ATPaseまたはDNA結合プロテインのいずれかに関連する遺伝子ファミリーである上記(2)記載の方法。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の方法によって特定される、ある細胞や組織において特徴的に発現が亢進または減少している遺伝子またはその遺伝子産物を含む医薬。
(10)前記反応器具が反応場所としての複数の穴を有するプレートである上記(3)または(4)記載の方法。
(11)前記プレートが96穴または384穴プレートである上記(10)記載の方法。
(12)10〜800個のプライマー対を用いる上記(3)または(4)記載の方法。
(13)10〜300個のプライマー対を用いる上記(3)または(4)記載の方法。
(14)前記増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応である上記(3)、(4)、(12)または(13)記載の方法。
(15)SNPの解析を行う前記(14)記載の方法。
(16)増幅生成物の生成量の測定が、該増幅生成物に相補的又は実質的に相補的であるプローブを用いて行われる上記(3)または(4)記載の方法。
(17)前記プローブが、mRNAにハイブリダイズするプローブである上記(16)記載の方法。
(18)前記プローブが蛍光標識されたプローブである上記(17)記載の方法。
(19)前記mRNA試料として、正常ヒト由来のmRNA試料および特定の疾患患者由来のmRNA試料とを用いる上記(3)または(4)記載の方法。
(20)前記疾患患者由来のmRNA試料中で発現が亢進または減少しているmRNAを特定し、該mRNAをコードする遺伝子を該疾患関連遺伝子であると特定する上記(19)記載の方法。
(21)前記特定の遺伝子ファミリーがヒトGタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子ファミリーであり、癌患者由来のmRNA試料を用いることによって癌関連遺伝子を特定する上記(20)記載の方法。
(22)標的遺伝子配列のエクソン領域の一方の鎖に相補的又は実質的に相補的である第1のプライマーおよび該標的遺伝子配列のエクソン領域の他方の鎖に相補的又は実質的に相補的である第2のプライマーから成るプライマー対を2対以上含んでなるプライマー対キット。
(23)前記標的遺伝子がヒトGタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子、チロシンリン酸化酵素型レセプター遺伝子またはイオンチャネル遺伝子である上記(22)記載のプライマー対キット。
(24)10〜800個のプライマー対で構成される上記(23)記載のプライマー対キット。
(25)10〜300個のプライマー対で構成される上記(23)記載のプライマー対キット。
(26)疾患関連遺伝子を特定するための上記(23)記載のプライマー対キットの使用。
(27)複数の反応場所を有する反応器具の各反応場所に、標的mRNAに対応するプライマー対をそれぞれ含む各増幅試薬を充填してなるmRNA定量キット。
(28)さらに蛍光プローブを含んでなる上記(27)記載のキット。
(29)さらにTth DNAポリメラーゼを含んでなる上記(28)記載のキット。
(30)上記(1)〜(4)のいずれかの方法または上記(27)の定量キットを用いて、患者から採取したmRNA試料に含まれ得る複数の標的疾患遺伝子のmRNAを定量することにより、あるいはそのmRNAの変異量を測定することによりその患者の疾患を診断する方法。
(31)癌関連ヒトGタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子を同定することによって癌を診断する上記(30)記載の診断方法。
(32)上記(30)記載の診断方法によって同定された遺伝子の遺伝子産物に対するアゴニスト、アンタゴニストもしくは抗体、またはその遺伝子産物をコードするDNAを含んでなる医薬。
(33)癌治療剤である上記(32)記載の医薬。
(34)上記(30)に記載の診断方法によって同定された遺伝子の遺伝子産物に対するアゴニスト、アンタゴニストもしくは抗体、またはその遺伝子産物をコードするDNAを投与することによってその遺伝子が関与する疾患を治療する方法。
(35)前記疾患が癌である上記(34)記載の治療方法。
【0007】
また、本発明の遺伝子発現解析方法を用いた結果、dj287G14.2レセプターが前立腺癌細胞において高発現していること分かった。本発明は、この知見に基づいて、レセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩(dj287G14.2レセプター)、該レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA、RNAおよびそれらの誘導体)、該レセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体などの新規用途を提供する。さらに、新規なマウス由来のdj287G14.2レセプター、該レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチド(DNA、RNAおよびそれらの誘導体)、該レセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体などを提供する。
すなわち、本発明は
(36)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬、
(37)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤である上記(36)記載の医薬、
(38)癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である上記(37)記載の医薬、
(39)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる診断薬、
(40)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の診断薬である上記(39)記載の診断薬、
(41)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる医薬、
(42)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤である上記(41)記載の医薬、
(43)(1)配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩および(2)糖鎖に親和性を示すタンパク質を用いることを特徴とする該レセプタータンパク質またはその塩と糖鎖に親和性を示すタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(44)糖鎖に親和性を示すタンパク質がアスパラギン結合型糖鎖またはセリン・スレオニン結合型糖鎖に親和性を示すタンパク質である上記(43)記載のスクリーニング方法、
(45)糖鎖に親和性を示すタンパク質がレクチンである上記(43)記載のスクリーニング方法、
(46)糖鎖に親和性を示すタンパク質がコンカナバリンA、レンズマメレクチン、エンドウマメレクチン、チョウセンアサガオレクチン、イヌエンジュレクチンまたはフィトヘマグルチニンである上記(43)記載のスクリーニング方法、(47)(1)配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩および(2)糖鎖に親和性を示すタンパク質を含有することを特徴とする該レセプタータンパク質またはその塩と糖鎖に親和性を示すタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット、
(48)上記(46)記載のスクリーニング方法または上記(47)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、糖鎖に親和性を示すタンパク質と配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩、
(49)上記(48)記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬、
(50)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤である上記(49)記載の医薬、
(51)癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である上記(50)記載の医薬、
(52)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、当該Gタンパク質共役型レセプタータンパク質の発現量を変化させ、癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石を予防及び/又は治療する化合物またはその塩、または分娩誘発薬のスクリーニング方法、
(53)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる、当該Gタンパク質共役型レセプタータンパク質の発現量を変化させ、癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石を予防及び/又は治療する化合物またはその塩、または分娩誘発薬のスクリーニング用キット、
(54)上記(52)記載のスクリーニング方法または上記(53)記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させ、癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石を予防及び/又は治療する化合物またはその塩、または分娩誘発薬、
(55)上記(54)記載の化合物またはその塩を含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤、
(56)癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である上記(55)記載の剤、
(57)糖鎖に親和性を示すタンパク質を含有してなる配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質のシグナル伝達作用増強剤、
(58)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤である上記(57)記載の剤、
(59)癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である上記(58)記載の剤、
(60)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤、
(61)癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である上記(60)記載の剤、
(62)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の診断薬、
(63)癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である上記(62)記載の診断薬、
(64)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンス・ポリヌクレオチドを含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤、
(65)癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である上記(64)記載の剤、
(66)配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンス・ポリヌクレオチドを含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の診断薬、
(67)癌の診断薬である上記(66)記載の診断薬、
(68)癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である上記(67)記載の診断薬、
(69)哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法、
(70)哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法、
(71)哺乳動物に対して、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩と糖鎖に親和性を示すタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療方法、または分娩誘発方法、
(72)哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質の発現量を変化させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法、
(73)哺乳動物に対して、糖鎖に親和性を示すタンパク質またはその塩の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法、
(74)哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンス・ポリヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法、
(75)哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法、
(76)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の使用、
(77)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体の使用、
(78)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩と糖鎖に親和性を示すタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩の使用、
(79)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質の発現量を変化させる化合物またはその塩の使用、
(80)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための糖鎖に親和性を示すタンパク質またはその塩の使用、
(81)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンス・ポリヌクレオチドの使用、
(82)癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドの使用、
(83)配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25または配列番号:27で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩、
(84)配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25または配列番号:27で表わされるアミノ酸配列からなるGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩、
(85)上記(81)記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド、
(86)配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列からなるDNA、
(87)上記(83)記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター、
(88)上記(87)記載の組換えベクターで形質転換させた形質転換体、
(89)上記(88)記載の形質転換体を培養し、上記(83)記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質を生成せしめることを特徴とする上記(83)記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩の製造法、
(90)上記(83)記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩に対する抗体、
(91)配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列からなるDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA、
(92)上記(85)記載のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチド、
【0008】
また、本発明の遺伝子発現解析方法を用いた結果、EDG−1受容体が血管内皮細胞において、EDG−2受容体が血管平滑筋細胞において高発現していること分かった。本発明は、この知見に基づいて、血管内皮細胞または血管平滑筋細胞を用いるEDG−1受容体アゴニスト・アンタゴニストまたは血管平滑筋細胞を用いるEDG−2受容体アゴニスト・アンタゴニストのスクリーニング方法を提供する。
(93)血管内皮細胞を用いることを特徴とするEDG−1レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法、
(94)EDG−1レセプターが配列番号:38で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩である上記(93)記載のスクリーニング方法、
(95)血管内皮細胞を含有することを特徴とするEDG−1レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング用キット、
(96)上記(93)記載のスクリーニング方法または上記(95)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニストまたはアンタゴニスト、
(97)上記(93)記載のスクリーニング方法または上記(85)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニストを含有してなる動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防及び/又は治療剤、
(98)血管平滑筋細胞を用いることを特徴とするEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法、
(99)EDG−2レセプターが配列番号:40で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩である上記(98)記載のスクリーニング方法、
(100)血管平滑筋細胞を含有することを特徴とするEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング用キット、
(101)上記(98)記載のスクリーニング方法または上記(100)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニスト、
(102)上記(98)記載のスクリーニング方法または上記(100)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニストを含有してなる動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防及び/又は治療剤、
(103)哺乳動物に対して、上記(93)記載のスクリーニング方法または上記(95)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニスト、または上記(98)記載のスクリーニング方法または上記(100)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアンタゴニストの有効量を投与することを特徴とする動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防および/または治療方法、
(104)動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防及び/又は治療剤を製造するための上記(93)記載のスクリーニング方法または上記(95)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニスト、または上記(98)記載のスクリーニング方法または上記(100)記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアンタゴニストの使用等を提供する。
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明においては、複数の遺伝子個々の発現量をまとめて定量解析することにより、ある細胞または組織においてその発現が特徴的に亢進または減少している遺伝子を同定することを特徴とし、さらには特定の遺伝子ファミリーに属する複数の遺伝子の発現解析をまとめて行うことにより、その遺伝子ファミリーの中で、ある細胞または組織においてその発現が特徴的に亢進または減少している遺伝子を、その発現量の絶対値を算出することで同定することを特徴とする。ここで、「遺伝子の発現が特徴的に亢進または減少している」とは、正常細胞または組織における遺伝子の発現と比較して、生理学的有為さがある程度に大量にまたは少量に発現していることをいう。本発明において標的とする遺伝子ファミリーは、特に限定されないが、例えば、Gタンパク質共役型レセプター遺伝子ファミリー、チロシンリン酸化酵素型レセプター遺伝子ファミリー、イオンチャネル遺伝子ファミリー、または転写因子、トランスポーター、プロテインキナーゼ、プロテインフォスファターゼ、プロテアーゼ、ヒートショックプロテイン、ATPaseもしくはDNA結合プロテインのいずれかに関連する遺伝子ファミリーなどから選択される。
複数の遺伝子とは、2個以上の遺伝子を意味し、上限は実施可能な限り、特に限定されないが、通常2〜数万個、好ましくは2〜1000個、より好ましくは10〜800個、さらに好ましくは10〜300個の遺伝子である。
より具体的には、本発明の遺伝子の発現解析は、複数の各反応場所、好ましくは複数の反応場所を有する反応器具の各反応場所で、複数の標的mRNAを含み得るmRNA試料と、それぞれの標的mRNAに対応するプライマー対をそれぞれ含んでなる各増幅試薬とを接触させることにより、増幅反応を行い、得られた増幅生成物の生成量を測定することによって行う。以下、この方法について説明する。
(mRNA試料)
本発明の一態様は、mRNA試料に含まれ得る複数の標的遺伝子のmRNAを定量すことによって遺伝子の発現解析を行う方法である。ここで、「mRNA試料」とは、mRNAを含有する試料であって、その試料中に含まれるmRNAの種類や量を測定する対象となる試料のことをいう。
より具体的には、本発明において対象となるmRNA試料は、その試料中の特定遺伝子の発現レベルを解析する対象となる試料であり、例えば、ヒトまたはその他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)の組織あるいはその培養細胞株から採取したmRNA試料、である。このような組織として、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋などが挙げられる。このようなmRNA試料を用いて、その試料中に含まれる標的mRNAを定量することによって、mRNA試料を採取した部位における標的遺伝子の発現レベルを解析することができる。
すなわち、本発明においては、複数のmRNAを含有するmRNA試料から、一度の処理で、標的mRNAの産生の有無及びその産生量を測定することができる。特に、ある特定の疾患を罹患している患者由来のmRNA試料を用いれば、その疾患に関与している遺伝子(例えば、GPCR遺伝子)の特定が容易となる。特に、複数の遺伝子が関与しているといわれる癌などの多遺伝子関与疾患に関与するGタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャンネル遺伝子を特定する場合は、本発明によれば、各遺伝子の発現レベルを一度の定量操作で調べることができるので、関与遺伝子・タンパク質の特定が容易となる。
遺伝子発現量の定量または遺伝子発現量の絶対値の算出は、後述する標的mRNAの定量法に従って行うことが出来る。
【0010】
(複数の反応場所を有する反応器具)
複数の反応場所とは、2つ以上の反応場所であれば特に限定さればいが、通常2〜数万個、好ましくは2〜1000個、より好ましくは10〜800個、さらに好ましくは10〜300個の反応場所である。
本発明においては、mRNA試料中に含まれ得る標的mRNAを増幅するために、その標的mRNAに対応するプライマー対をそれぞれ含む各増幅試薬とを一度に反応させる。このために、本発明では、好ましくは複数の反応場所を有する反応器具が用いられ、mRNA試料と各増幅試薬との反応は、各反応場所で行われる。本発明で用いる反応器具は、mRNA試料と各増幅試薬とを一度に反応させることができるように、2つ以上の反応場所を有している限り、反応器具の構成及び構造は限定されない。好ましくは、本発明において用いられる反応器具として、例えば、複数の穴を有するプレート、複数のスライドグラスを備えてなる反応器具、複数の試験管を備えてなる反応器具などが挙げられる。実験スペース、操作性等を考慮した場合は、複数の穴を有するプレートを好ましく用いることができる。これらのプレートは、使用するプライマー対の数によって決められるが、市販されている96穴または384穴プレートが好ましく用いられる。しかし、プライマー対の数に応じて所望の数の反応場所を設けた反応器具を使うことができる。また、市販されている96穴または384穴プレートを2個以上使用することにより、本発明の方法を実施することもできる。
【0011】
(増幅試薬)
本発明において用いられる各増幅試薬は、例えば、標的mRNAに対応する一対のプライマー対、標的mRNAに対応するプローブ、DNAポリメラーゼ、緩衝液等を含む。
ここで、本発明において用いられる「標的mRNAに対応するプライマー対」とは、標的mRNAをコードする標的遺伝子配列のエクソン領域の一方の鎖に相補的又は実質的に相補的である第1のプライマーおよび該標的遺伝子配列のエクソン領域の他方の鎖に相補的又は実質的に相補的である第2のプライマーから成るプライマーの一対をいう。本発明においては、これらのプライマー対を少なくとも2対以上使って、一度に、mRNA試料中の標的遺伝子から転写されるmRNAの有無及びその転写量を検出できる。したがって、使用するプライマー対の数は、多ければ多いほど、本発明の定量方法の効率が上がることになる。
本発明の定量方法において、使用されるプライマー対群は、標的mRNAの数に応じて調整すればよいので特に限定されないが、例えば、10〜800個のプライマー対から構成される。本発明の他の態様によれば、使用されるプライマー対群は、10〜300個のプライマー対から構成される。プライマー対の数が多い場合は、異なるセットの増幅試薬を複数枚のプレート(例えば、2〜10枚のプレート)に分けてセットしておき、定量反応を複数回に分けて行うこともできる。
【0012】
本発明における好ましい態様によれば、標的遺伝子は、Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどをコードする遺伝子であり、ゆえに標的mRNAはGタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャンネルなどのファミリーに属する遺伝子mRNAである。この場合、標的Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャンネルなどのファミリーに属する遺伝子mRNAに対応するプライマー対を含んでなる各増幅試薬とmRNA試料とを、反応器具の各反応場所において接触させることにより、増幅反応させ、mRNA増幅生成物を定量することによって、そのmRNA試料中に含まれていたGタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャンネルなどのファミリーに属する遺伝子の発現量を測定することができる。
本発明のより好ましい態様によれば、全ての公知のGタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャンネルなどのファミリーに属する遺伝子mRNAに対応するプライマー対を全て準備し、そのプライマー対をそれぞれ含む増幅試薬を各反応場所にセットしておけば、一度の定量作業で、mRNA試料中において、どのGタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャンネルなどのファミリーに属する遺伝子mRNAがどの程度産生していたかを知ることができる。勿論、必要に応じて、異なるセットの増幅試薬を複数枚のプレートに分けてセットしておき、定量反応を複数回に分けて行うこともできる。
なお、現在、Gタンパク質共役型レセプター(または遺伝子)として次のものが公知である。
(1)アセチルコリンレセプター: M; M; M; M; M
(2)アデノシンレセプター: A; A2A; A2B; A
(3)アドレノセプター(Adrenoceptors): α1A; α1B; α1D; α2A; α2B;α2C; β1; β2; β3
(4)アンギオテンシンレセプター: AT1; AT2
(5)ボンベシン(Bombesin)レセプター: BB1; BB2; bb3
(6)ブラジキニンレセプター: B; B
(7)カルシトニン・アイニリン・CGRP及びアドレノメヅリン(adrenomedullin)レセプター:
(8)カンナビノイドレセプター: CB1;CB2
(9)ケモカインレセプター: CCR1; CCR2; CCR3; CCR4; CCR5; CCR6; CCR7; CCR8; CCR9; CCR10; CXCR1; CXCR2; CXCR3; CXCR4; CXCR5; CXCR1; XCR1;
(10)ケニオタクチックペプチド(Cheniotactic)レセプター: C3a; C5a; fMLP
(11)コレシストキニン及びガストリン(Cholecystokinin and gastrin)レセプター: CCK; CCK
(12)コーチコトロピン放出因子(Corticotropin−releasing factor)レセプター: CRF; CRF
(13)ドーパミンレセプター: D1; D2; D3; D4; D5
(14)エンドセリンレセプター: ET; ET
(15)ガラニンレセプター(Galanin receptors): GAL1; GAL2; GAL3
(16)グルタメートレセプター: mglu; mglu; mglu; mglu; mglu; mglu; mglu; mglu
(17)グリコプロテインホルモン(Glycoprotein hormone)レセプター: FSH; LSH; TSH
(18)ヒスタミンレセプター: H; H; H; H
(19)5−HTレセプター: 5−HT1A; 5−HT1B; 5−HT1D; 5−ht1B; 5−ht1F;5−HT2A; 5−HT2F; 5−HT2C; 5−HT; 5−HT; 5−ht5A; 5−ht5B; 5−HT; 5−HT
(20)ロイコトリエンレセプター: BLT; CysLT; CysLT
(21)リソフォスフォリピッド(Lysophospholipid)レセプター: edg1; edg2; edg3; edg4
(22)メラノコーリン(Melanocorlin)レセプター:MC; MC; MC; MC; MC
(23)メラトニンレセプター: MT; MT; MT
(24)ニューロペプチドYレセプター: Y; Y; Y; Y; Y
(25)ニューロテンション(Neurotension)レセプター: NTS1; NTS2
(26)オピオイド: DOP; KOP; MOP; NOP
(27)P2Y レセプター: P2Y; P2Y; P2Y; P2Y; P2Y11; P2Y12
(28)パーオキシソームプロリフェレータ(Peroxisome proliferator)活性化レセプター: PPAR−α; PPAR−β; PPAR−γ
(29)プロスタノイド(Prostanoid)レセプター: DP; FP; IP; TP; EP; EP; EP; EP
(30)プロテアーゼ活性化(Protease−activated)レセプター: PAR1; PAR2; PAR3; PAR4
(31)ソマトスタチン(Somatotatin)レセプター: sst; sst; sst; sst; sst
(32)タチキニン(Tachykinin)レセプター: NK; NK; NK
(33)チロトロピン放出ホルモン(Thyrotropin−releasing hormone)レセプター: TRH; TRH
(34)ウロテンシン−II(Urotensin−II)レセプター:
(35)バソアクティブインテスティナルペプチド(Vasoactive intestinal peptide)及びピチュイタリアデニレートサイクラーゼ活性ペプチド(pituitary adenylate cyclase activating peptide)レセプター: VPAC; VPAC; PAC
(36)バソプレシン(Vasopressin)及び オキシトシン(oxytocin)レセプター: V1a; V1b; V; OT
また、現在、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャンネル遺伝子などのファミリーに属する遺伝子として、次のものが公知である。
(37)イオンチャネル: Naチャネル(タイプI; タイプII/タイプIIA; タイプIII; SCL11/NaG; PN1; NaCh6; NaDRG; SkM1/μ1, SkM2)、Kチャネル(Kv; EAG; KQT; IRK; ROMK; GIRK; KATP等)、Ca2+チャネル(α1G; α1E; α1S:α1C; α1D; α1B; α1A; IP3; リアノジンレセプターなど)、Clチャネル(GABA; GABA; グリシンレセプター;C1C0; C1C1; CFTRなど)、非選択性カチオンチャネル(nAChR; 5−HT; NMDA; AMPA; P2XATP; CNGなど)など
(38)チロシンリン酸化酵素レセプター:インスリンレセプター;EGFレセプターなど
【0013】
本発明の他の態様によれば、ある一群のGタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、またはイオンチャネルのファミリーに属する遺伝子のmRNAに対応する一群のプライマー対を用いることにより、一度の定量操作で、その一群のGタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、またはイオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子のなかで高発現しているGタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、またはイオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子を特定することができる。
例えば、創薬のターゲットは、(1)低分子物質を結合するタンパク質(GPCR、核内レセプター、イオンチャネルなど)、(2)低分子あるいは高分子の基質に対して触媒活性をもつ酵素、(3)タンパク質や核酸や多糖類などの高分子に結合するタンパク質の3種類に分類することができる。したがって、この分類にしたがって、以下のような遺伝子のグルーピングをすることもできる。
(1)低分子物質を結合する下記タンパク質関連遺伝子
アドレナリンレセプター;アセチルコリンレセプター;ヒスタミンレセプター;ドーパミンレセプター;セロトニンレセプター;グルタミンレセプター;エンドセリンレセプター;バソプレシンレセプター;セロトニントランスポーター;グルココルチコイドレセプター;エストロゲンレセプター;Ca2+チャネル;Naチャネル:Clチャネル
(2)低分子あるいは高分子の基質に対して触媒活性をもつ下記酵素関連遺伝子HMG−CoA還元酵素;アンジオテンシン転換酵素;トロンボキサン合成酵素;プロトンポンプ;アルドース還元酵素;シクロオキシゲナーゼ;ホスホジエステラーゼ;タンパク質リン酸化酵素;タンパク質脱リン酸化酵素;HIV逆転写酵素;真菌スクワレンエポキシダーゼ;DNAジャイレース;β−ラクタマーゼ
(3)タンパク質や核酸や多糖類などの高分子に結合する下記タンパク質関連遺伝子
インスリンレセプター:エリスロポエチンレセプター;G−CSFレセプター;成長ホルモンレセプター;インターフェロンレセプター;増殖因子レセプターHER2;腫瘍壊死因子TNFレセプター;血小板インテグリンGPIIb/IIIa
なお、標的mRNAを増幅させるためのプライマー対は、その標的GPCR遺伝子の配列に基づいて当業者であれば容易に設計することができる(例えば、Genome Res. 1996 Oct;6(10):986−94参照)。
【0014】
本発明において用いられるmRNAの定量方法は、hGPCRの機能解析以外にも種々の用途に用いることができる。例えば、判明している疾患遺伝子が産生するmRNAを検出するプライマー対を含んでなる複数の増幅試薬のセットを用いることにより、特定疾患の診断をすることができる。本発明によれば、各遺伝子の発現レベルを正確に測定することができるので、公知の方法と比較して、より正確な診断ができるという利点がある。
【0015】
次に、本発明において用いられる標的mRNAに対応するプローブは、標的配列に応じて当業者に容易に設計できる(例えば、Genome Res. 1996 Oct; 6(10):986−94参照)。本発明において用いられる適当なオリゴヌクレオチドプローブは、好ましくは約15〜約50ヌクレオチドの長さを有し、より好ましくは約25〜約35ヌクレオチドの長さを有する。オリゴヌクレオチドプローブは、生化学的、免疫化学的、又は化学的な手段によって検出可能な化学物質等を組込むことによって標識することができる。有用な標識としては、32P等の放射性同位元素、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネート等の蛍光物質、ルミノール、ルシフェリン等の発光物質、β−ガラクトシダーゼ、パーオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ等の酵素、ビオチン、及び抗体等があげられる。
本発明において用いられるDNAポリメラーゼとしては、逆転写活性および5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有する耐熱性DNAポリメラーゼ、例えば、rTth DNAポリメラーゼなどが挙げられる。
本発明においては、公知のあるいは市販されている緩衝液が用いられる(例えば、PE Biosystems社製緩衝液;Genome Res. 1996 Oct;6(10):986−94参照)。
【0016】
(mRNAの増幅)
本発明の解析法において、mRNA試料中に含まれ得る標的mRNAは、その標的mRNAを増幅させるためのプライマー対を含む増幅試薬を用いて増幅される。本発明の好ましい態様によれば、標的mRNAの増幅は公知のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて行われる(米国特許第4,683,195号;第4,683,202号;第4,965,188号など参照)。
mRNAの増幅は、最初に、例えばウィルスの逆転写酵素を用いて、標的mRNAを逆転写し、生じたcDNAを増幅することによって行うことができる。さらに好ましい態様において、mRNAの増幅は、逆転写−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を用いて行われる(米国特許第5,310,652号;第5,322,770号;第5,561,058号;第5,641,864号;5,693,517号等参照)。
なお、本発明においては、前記ポリメラーゼ連鎖反応以外にも種々のmRNA増幅法が用いられる。そのような増幅法として、例えば、鎖置換アッセイ法(米国特許第5,455,166号など参照)、転写に基づく増幅法(TAS)(米国特許第5,437,990号;第5,409,818号;第5,399,491号等参照)、自立配列複製法(3SR)(WO92/08800等参照)などが挙げられる。
これらの増幅反応の反応条件は、使用する試薬の種類等に応じて、当業者によって容易に設定することができる。
【0017】
(標的mRNAの定量法)
次に、本発明の解析方法においては、前記のmRNA増幅生成物の生成量を定量する。増幅生成物の定量は、好ましくはプローブを使用する方法によって行われる。好ましい態様によれば、蛍光物質により標識したプローブを用いた方法によって行われる。
本発明のより好ましい態様によれば、標的mRNAの定量は「TaqMan法」又は「5’ヌクレアーゼアッセイ法」を用いて行われる(プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー、第88巻、第7276−7280頁(1991年); 米国特許第5,210,015号;第5,487,972号;第5,804,375号など参照)。TaqManアッセイ法において、5’末端を標識したプローブが用いられる。また、このプローブは、プローブがDNA合成のためのプライマーとして働くことを防ぐために3’末端が修飾される。この修飾として、リン酸基、蛍光物質等の末端への付加があげられる。標的mRNAの増幅は、5’→3’エキソヌクレアーゼ活性を有するDNAポリメラーゼ、例えばTth DNAポリメラーゼを用いて行われる。前記プライマーの下流の標的mRNAにハイブリダイズするプローブは、増幅反応の間、DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性によって分解される。新規に標的領域が増幅されるたびに、プローブが分解され、標識物質が遊離される。この遊離される標識物質を定量することにより、標的mRNA量が間接的に測定される。
遊離される標識物質を定量的に検出するためには公知の方法が用いられる。好ましい方法において、前記プローブは、2つの蛍光物質で5’および3’末端が標識され、このうちの一方が、他方の物質の蛍光を消光することができる。このプローブは鋳型DNAにハイブリダイズしている間は2つの蛍光物質の相互作用により蛍光が消光されているが、DNAポリメラーゼが有する5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により分解されることにより蛍光を発するようになる。増幅反応の進行に伴い蛍光が増大し、この蛍光の増大がモニターされる。
標的mRNAを含む試料の定量は、予め知られている量の標的mRNAを含む試料を用い、これを増幅させて作製した「標準曲線」に基づいて行われる。標準曲線は、増幅の間に生じたシグナル由来の、投入したコピー数を計算するために使用される。従って、試料中の、未知の標的配列のコピー数は、前記の標準曲線を用いて、あらかじめ観察されるものに等しいシグナルを生じることが決定されたコピー数を計算することによって推計される。次に、前記試料中の標的配列の濃度を、反応前に決定する投入コピー数及び試料のサイズから計算することができる(特許公開第2001−204483号公報など参照)。
実験上の誤差を排除するために内部標準を用いることができる。内部標準を用いる、増幅を基にした定量法は、米国特許第5,219,717号、第5,476,774号などに記載されている。増幅反応の特異性を増大させるための種々の方法が知られており、例えば、欧州特許出願第0 866,071号などに記載されている。
【0018】
(プライマー対キット及び定量キット)
また、本発明は、本発明の方法を実施するために用いられる、プライマー対キット及びmRNA定量キットに関する。
本発明のプライマー対キットは、標的遺伝子配列のエクソン領域の一方の鎖に相補的又は実質的に相補的である第1のプライマーおよび該標的遺伝子配列のエクソン領域の他方の鎖に相補的又は実質的に相補的である第2のプライマーから成るプライマー対を2対以上含んでなるキットである。このようなキットが事前に準備されていれば、本発明の定量方法を迅速に行うことができる。本発明の好ましいプライマー対キットは、ヒトGタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子から転写されるmRNAに対応するプライマー対を有する。本発明の一態様によれば、プライマー対キットは、10〜800個のプライマー対あるいは10〜300個のプライマー対で構成されるプラマー対群を含む。
本発明のより好ましい態様によれば、複数の反応場所を有する反応器具の各反応場所に、標的mRNAに対応するプライマー対をそれぞれ含む各増幅試薬を充填してなるmRNA定量キットが提供される。好ましくは、そのキットにおける標的遺伝子は疾患関連遺伝子である。より好ましくは、そのキットは、さらに蛍光プローブを含んでなり、またさらに好ましくは、Tth DNAポリメラーゼを含んでなる。これらのキットは、必要に応じて、例えば、プライマー伸長生成物の合成を触媒する薬剤、基質のヌクレオシド三リン酸塩、標識に使用する手段(例えば、標識がビオチンならば、アビジン−酵素抱合体及び酵素の基質及び色素原)、PCR又はハイブリダイゼーション反応に適した緩衝液などを含むことができる。
【0019】
(疾患の診断方法およびその疾患を治療する医薬)
次に、本発明の上記(30)による方法によれば、患者から採取したmRNA試料を用いて遺伝子発現解析を行い、特定疾患関連遺伝子の特徴的発現を検知することによってその患者が罹患している疾患を診断することができる。本発明によれば、特定疾患関連遺伝子ファミリー(特に、特定疾患関連GPCR遺伝子ファミリー)に属する遺伝子の発現をまとめて解析することにより、複数の特定疾患関連遺伝子のなかで、どの遺伝子の発現が特徴的であるかを一度の操作で特定することができる。
したがって、このようにして特定された遺伝子の遺伝子産物に対するアゴニスト、アンタゴニストもしくは抗体、またはその遺伝子産物をコードするDNAを含む医薬は、その診断対象の患者に対して特に有効である。本発明においては、複数の異常発現遺伝子を特定することができ、かつその遺伝子の発現レベルまでをも正確に定量することができる。したがって、その患者に適当な処方として、複数のアゴニスト、アンタゴニストまたは抗体を選択し、その処方量についても、疾患関連遺伝子の発現レベルに応じて調製することができる。すなわち、本発明によれば、その患者のみに処方される、いわゆるテーラーメード医薬の調製が可能となる。
より詳細に述べると、例えば、生体内においてあるレセプタータンパク質が減少しているためにリガンドの生理作用が期待できない(該レセプタータンパク質の欠乏症)患者がいる場合に、(1)そのレセプタータンパク質を該患者に投与し該レセプタータンパク質の量を補充したり、(2)(イ)本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを該患者に投与し発現させることによって、あるいは(ロ)対象となる細胞に本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを挿入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内におけるレセプタータンパク質の量を増加させ、リガンドの作用を充分に発揮させることができる。
本発明の医薬は、特定された遺伝子が関与する疾患の予防または治療に有効であり、例えば、中枢疾患(例えば、アルツハイマー病、痴呆、摂食障害など)、内分泌疾患(例えば、高血圧症、性腺機能異常、甲状腺機能異常、下垂体機能異常など)、代謝疾患(例えば、糖尿病、脂質代謝異常、高脂血症など)、癌(例えば、非小細胞肺癌、卵巣癌、前立腺癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌等)などの予防および/または治療に有用である。
本発明で特定された遺伝子の遺伝子産物(例えば、レセプタータンパク質)、それに対するアゴニスト、アンタゴニストもしくはその抗体、またはその遺伝子をコードするDNAを上記予防及び/又は治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
【0020】
一方、DNA(以下、本発明のDNAと略記する場合がある)を上記予防及び/又は治療剤として使用する場合は、そのDNAを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。そのDNAは、そのままで、あるいは摂取促進のための補助剤とともに、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。例えば、本発明で用いられる医薬は、必要に応じて糖衣を施した錠剤、カプセル剤、エリキシル剤、マイクロカプセル剤などとして経口的に、あるいは水もしくはそれ以外の薬学的に許容し得る液との無菌性溶液、または懸濁液剤などの注射剤の形で非経口的に使用できる。例えば、本発明の医薬を、生理学的に認められる公知の担体、香味剤、賦形剤、ベヒクル、防腐剤、安定剤、結合剤などとともに一般に認められた製剤実施に要求される単位用量形態で混和することによって製造することができる。これら製剤における有効成分量は指示された範囲の適当な用量が得られるようにするものである。
錠剤、カプセル剤などに混和することができる添加剤としては、例えば、ゼラチン、コーンスターチ、トラガント、アラビアゴムのような結合剤、結晶性セルロースのような賦形剤、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸などのような膨化剤、ステアリン酸マグネシウムのような潤滑剤、ショ糖、乳糖またはサッカリンのような甘味剤、ペパーミント、アカモノ油またはチェリーのような香味剤などが用いられる。調剤単位形態がカプセルである場合には、上記タイプの材料にさらに油脂のような液状担体を含有することができる。注射のための無菌組成物は注射用水のようなベヒクル中の活性物質、胡麻油、椰子油などのような天然産出植物油などを溶解または懸濁させるなどの通常の製剤実施に従って処方することができる。注射用の水性液としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖やその他の補助薬を含む等張液(例えば、D−ソルビトール、D−マンニトール、塩化ナトリウムなど)などが用いられ、適当な溶解補助剤、例えば、アルコール(例、エタノール)、ポリアルコール(例、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例、ポリソルベート80TM、HCO−50)などと併用してもよい。油性液としては、例えば、ゴマ油、大豆油などが用いられ、溶解補助剤である安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどと併用してもよい。
【0021】
また、上記予防および/または治療剤は、例えば、緩衝剤(例えば、リン酸塩緩衝液、酢酸ナトリウム緩衝液)、無痛化剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、塩酸プロカインなど)、安定剤(例えば、ヒト血清アルブミン、ポリエチレングリコールなど)、保存剤(例えば、ベンジルアルコール、フェノールなど)、酸化防止剤などと配合してもよい。調製された注射液は通常、適当なアンプルに充填される。
このようにして得られる製剤は安全で低毒性であるので、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
【0022】
本発明の予防および/または治療剤の投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
本発明のDNAの投与量は、投与対象、対象臓器、症状、投与方法などにより差異はあるが、経口投与の場合、一般的に例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1mg〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0023】
上記の本発明の遺伝子発現解析方法を用いた結果得られる、例えば配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一または実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質の新規用途について、以下に説明する。
【0024】
(レセプタータンパク質)
本発明で用いられるレセプタータンパク質は、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質(以下、本発明のレセプタータンパク質ともいう)である。なお、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列を有するタンパク質は、ヒト由来dj287G14.2レセプタータンパク質である。ヒト由来dj287G14.2レセプターは、WO2001/18207に記載されているタンパク質と同一のアミノ酸配列を有する。
本発明者らは、アスパラギン結合型糖鎖やセリン・スレオニン結合型糖鎖などの糖鎖に親和性を示すタンパク質(例えば、、ConA(コンカナバリンA)、Lentil lectin(レンズマメレクチン)、Pea lectin(エンドウマメレクチン)、Datura lectin(チョウセンアサガオレクチン)、Maackia Amurensis lectin(イヌエンジュレクチン)、フィトヘマグルチニンなどのレクチン)が、dj287G14.2レセプターのリガンドの1つであることを初めて確認した。本発明のレセプタータンパク質は、例えば、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)のあらゆる細胞〔例えば、網膜細胞、脾細胞、神経細胞、グリア細胞、膵臓β細胞、骨髄細胞、メサンギウム細胞、ランゲルハンス細胞、表皮細胞、上皮細胞、内皮細胞、繊維芽細胞、繊維細胞、筋細胞、脂肪細胞、免疫細胞(例、マクロファージ、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞、肥満細胞、好中球、好塩基球、好酸球、単球、白血球)、巨核球、滑膜細胞、軟骨細胞、骨細胞、骨芽細胞、破骨細胞、乳腺細胞、肝細胞もしくは間質細胞、またはこれら細胞の前駆細胞、幹細胞もしくは癌細胞(例、乳癌細胞株(GI−101)、結腸癌細胞株(CX−1、GI−112)、肺癌細胞株(LX−1、GI−117)、卵巣癌細胞株(GI−102)、前立腺癌細胞株など)など〕、またはそれらの細胞が存在するあらゆる組織、例えば、脳、脳の各部位(例、嗅球、扁頭核、大脳基底球、海馬、視床、視床下部、視床下核、大脳皮質、延髄、小脳、後頭葉、前頭葉、側頭葉、被殻、尾状核、脳染、黒質)、脊髄、下垂体、胃、膵臓、腎臓、肝臓、生殖腺、甲状腺、胆のう、骨髄、副腎、皮膚、筋肉、肺、消化管(例、大腸、小腸)、血管、心臓、胸腺、脾臓、顎下腺、末梢血、末梢血球、前立腺、睾丸、精巣、卵巣、胎盤、子宮、骨、関節、骨格筋など、または血球系の細胞もしくはその培養細胞(例えば、MEL,M1,CTLL−2,HT−2,WEHI−3,HL−60,JOSK−1,K562,ML−1,MOLT−3,MOLT−4,MOLT−10,CCRF−CEM,TALL−1,Jurkat,CCRT−HSB−2,KE−37,SKW−3,HUT−78,HUT−102,H9,U937,THP−1,HEL,JK−1,CMK,KO−812,MEG−01など)に由来するタンパク質であってもよく、また合成タンパク質であってもよい。
【0025】
本明細書において、「実質的に同一のアミノ酸配列」とは、比較するアミノ酸配列に対して、例えば、約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、なかでも好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をいう。
配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質と実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。実質的に同質の活性としては、例えば、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後に記載するリガンドの決定方法やスクリーニング方法に従って測定することができる。
【0026】
また、本発明のレセプタータンパク質としては、(1)配列番号:9、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25または配列番号:27で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:9、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25または配列番号:27で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(3)配列番号:9、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25または配列番号:27で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(4)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質なども用いられる。
【0027】
本明細書におけるレセプタータンパク質は、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。本発明のレセプタータンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
本発明のレセプタータンパク質がC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものも本発明のレセプタータンパク質に含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、本発明のレセプタータンパク質には、上記したタンパク質において、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
本発明のレセプタータンパク質の具体例としては、例えば、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列からなるヒト由来dj287G14.2レセプタータンパク質、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25または配列番号:27で表わされるアミノ酸配列からなるマウス由来dj287G14.2レセプタータンパク質などが挙げられる。なお、配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25または配列番号:27で表わされるアミノ酸配列からなるマウス由来dj287G14.2レセプタータンパク質は新規なタンパク質である。
本発明のレセプタータンパク質またはその塩は、上記したヒトや哺乳動物の細胞または組織から公知のレセプタータンパク質の精製方法によって製造することもできるし、後に記載する本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを含有する形質転換体を培養することによっても製造することができる。また、後に記載するタンパク質合成法またはこれに準じて製造することもできる。
ヒトや哺乳動物の組織または細胞から製造する場合、ヒトや哺乳動物の組織または細胞をホモジナイズした後、酸などで抽出を行ない、該抽出液を逆相クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィーを組み合わせることにより精製単離することができる。
【0028】
(レセプタータンパク質の部分ペプチド)
本発明の部分ペプチド(以下、単に「部分ペプチド」と略記する場合がある)としては、上記した本発明のレセプタータンパク質の部分アミノ酸配列を有するペプチドであれば何れのものであってもよいが、例えば、本発明のレセプタータンパク質の分子のうち、細胞膜の外に露出している部位であって、本発明のレセプタータンパク質と実質的に同質のレセプター結合活性を有するものなどが用いられる。
具体的には、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列を有する本発明のレセプタータンパク質の部分ペプチドとしては、疎水性プロット解析において細胞外領域(親水性(Hydrophilic)部位)であると分析された部分を含むペプチドである。また、疎水性(Hydrophobic)部位を一部に含むペプチドも同様に用いることができる。個々のドメインを個別に含むペプチドも用い得るが、複数のドメインを同時に含む部分のペプチドでも良い。
本発明の部分ペプチドのアミノ酸の数は、上記した本発明のレセプタータンパク質の構成アミノ酸配列のうち少なくとも20個以上、好ましくは50個以上、より好ましくは100個以上のアミノ酸配列を有するペプチドなどが好ましい。実質的に同一のアミノ酸配列とは、これらアミノ酸配列と約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、なかでも好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列を示す。
ここで、「実質的に同質のレセプター結合活性」とは、上記と同意義を示す。「実質的に同質のレセプター結合活性」の測定は上記と同様に行なうことができる。
【0029】
また、本発明の部分ペプチドは、上記アミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失し、または、そのアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜20個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加し、または、そのアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜10個程度、より好ましくは数個、さらに好ましくは1〜5個程度)のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されていてもよい。
また、本発明の部分ペプチドはC末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)であってもよい。
さらに、本発明の部分ペプチドには、上記した本発明のレセプタータンパク質と同様に、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したGlnがピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基が適当な保護基で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖ペプチドなどの複合ペプチドなども含まれる。
本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの塩としては、酸または塩基との生理学的に許容される塩が挙げられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸)との塩などが用いられる。
本発明の部分ペプチドまたはその塩は、公知のペプチドの合成法に従って、あるいは本発明のGPCRを適当なペプチダーゼで切断することによって製造することができる。ペプチドの合成法としては、例えば、固相合成法、液相合成法のいずれによっても良い。すなわち、本発明のGPCRを構成し得る部分ペプチドもしくはアミノ酸と残余部分とを縮合させ、生成物が保護基を有する場合は保護基を脱離することにより目的のペプチドを製造することができる。公知の縮合方法や保護基の脱離としては、例えば、以下のa)〜e)に記載された方法が挙げられる。
a)M. Bodanszky および M.A. Ondetti、ペプチド シンセシス (Peptide Synthesis), Interscience Publishers, New York (1966年)
b)SchroederおよびLuebke、ザ ペプチド(The Peptide), Academic Press, New York (1965年)
c)泉屋信夫他、ペプチド合成の基礎と実験、 丸善(株) (1975年)
d)矢島治明 および榊原俊平、生化学実験講座 1、 タンパク質の化学IV、 205、(1977年)
e)矢島治明監修、続医薬品の開発 第14巻 ペプチド合成 広川書店
また、反応後は通常の精製法、例えば、溶媒抽出・蒸留・カラムクロマトグラフィー・液体クロマトグラフィー・再結晶などを組み合わせて本発明の部分ペプチドを精製単離することができる。上記方法で得られる部分ペプチドが遊離体である場合は、公知の方法によって適当な塩に変換することができるし、逆に塩で得られた場合は、公知の方法によって遊離体に変換することができる。
【0030】
(ポリヌクレオチド)
本発明のレセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドとしては、上記した本発明のレセプタータンパク質をコードする塩基配列(DNAまたはRNA、好ましくはDNA)を含有するものであればいかなるものであってもよい。該ポリヌクレオチドとしては、本発明のレセプタータンパク質をコードするDNA、mRNA等のRNAであり、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。二本鎖の場合は、二本鎖DNA、二本鎖RNAまたはDNA:RNAのハイブリッドでもよい。一本鎖の場合は、センス鎖(すなわち、コード鎖)であっても、アンチセンス鎖(すなわち、非コード鎖)であってもよい。
本発明のレセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを用いて、例えば、実験医学増刊「新PCRとその応用」15(7)、1997記載の公知の方法またはそれに準じた方法により、本発明のレセプタータンパク質のmRNAを定量することができる。
本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAとしては、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞または組織由来のcDNA、上記した細胞または組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞または組織よりtotal RNAまたはmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
具体的には、本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAとしては、例えば、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列を含有するDNA、または配列番号:8、配列番号:10、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質と実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するレセプタータンパク質をコードするDNAが挙げられる。
配列番号:8、配列番号:10、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列を有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAとしては、例えば、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0031】
ハイブリダイゼーションは、公知の方法あるいはそれに準じる方法、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。より好ましくは、ハイストリンジェントな条件に従って行なうことができる。
「該ハイストリンジェントな条件」とは、例えば、ナトリウム濃度が約19〜40mM、好ましくは約19〜20mMで、温度が約50〜70℃、好ましくは約60〜65℃の条件を示す。特に、ナトリウム濃度が約19mMで温度が約65℃の場合が最も好ましい。
本発明の「レセプタータンパク質をコードするDNAの塩基配列の一部、または該DNAと相補的な塩基配列の一部を含有してなるポリヌクレオチド」とは、下記の本発明の部分ペプチドをコードするDNAを包含するだけではなく、RNAをも包含する意味で用いられる。
本発明に従えば、レセプタータンパク質遺伝子の複製または発現を阻害することのできるアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)を、クローン化した、あるいは決定されたレセプタータンパク質をコードするDNAの塩基配列情報に基づき設計し、合成しうる。そうしたポリヌクレオチド(核酸)は、レセプタータンパク質遺伝子のRNAとハイブリダイズすることができ、該RNAの合成または機能を阻害することができるか、あるいはレセプタータンパク質関連RNAとの相互作用を介してレセプタータンパク質遺伝子の発現を調節・制御することができる。レセプタータンパク質関連RNAの選択された配列に相補的なポリヌクレオチド、およびレセプタータンパク質関連RNAと特異的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは、生体内および生体外でレセプタータンパク質遺伝子の発現を調節・制御するのに有用であり、また病気などの治療または診断に有用である。用語「対応する」とは、遺伝子を含めたヌクレオチド、塩基配列または核酸の特定の配列に相同性を有するあるいは相補的であることを意味する。ヌクレオチド、塩基配列または核酸とペプチド(タンパク質)との間で「対応する」とは、ヌクレオチド(核酸)の配列またはその相補体から誘導される指令にあるペプチド(タンパク質)のアミノ酸を通常指している。レセプタータンパク質遺伝子の5’端ヘアピンループ、5’端6−ベースペア・リピート、5’端非翻訳領域、ポリペプチド翻訳開始コドン、タンパク質コード領域、ORF翻訳終止コドン、3’端非翻訳領域、3’端パリンドローム領域、および3’端ヘアピンループは好ましい対象領域として選択しうるが、レセプタータンパク質遺伝子内の如何なる領域も対象として選択しうる。
本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチド(以下、包括的に本発明のレセプタータンパク質と略記する場合がある)を完全にコードするDNAのクローニングの手段としては、本発明のレセプタータンパク質の部分塩基配列を有する合成DNAプライマーを用いてPCR法によって増幅するか、または適当なベクターに組み込んだDNAを本発明のレセプタータンパク質の一部あるいは全領域をコードするDNA断片もしくは合成DNAを用いて標識したものとのハイブリダイゼーションによって選別することができる。ハイブリダイゼーションの方法は、例えば、モレキュラー・クローニング(Molecular Cloning)2nd(J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989)に記載の方法などに従って行なうことができる。また、市販のライブラリーを使用する場合、添付の使用説明書に記載の方法に従って行なうことができる。
【0032】
(アンチセンス・ポリヌクレオチド)
目的核酸と、対象領域の少なくとも一部に相補的なポリヌクレオチドとの関係は、対象物とハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドとの関係は、「アンチセンス」であるということができる。アンチセンス・ポリヌクレオチドは、2−デオキシ−D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、D−リボースを含有しているポリヌクレオチド、プリンまたはピリミジン塩基のN−グリコシドであるその他のタイプのポリヌクレオチド、あるいは非ヌクレオチド骨格を有するその他のポリマー(例えば、市販のタンパク質、核酸および合成配列特異的な核酸ポリマー)または特殊な結合を含有するその他のポリマー(但し、該ポリマーはDNAやRNA中に見出されるような塩基のペアリングや塩基の付着を許容する配置をもつヌクレオチドを含有する)などが挙げられる。それらは、二本鎖DNA、一本鎖DNA、二本鎖RNA、一本鎖RNA、さらにDNA:RNAハイブリッドであることができ、さらに非修飾ポリヌクレオチド(または非修飾オリゴヌクレオチド)、さらには公知の修飾の付加されたもの、例えば当該分野で知られた標識のあるもの、キャップの付いたもの、メチル化されたもの、1個以上の天然のヌクレオチドを類縁物で置換したもの、分子内ヌクレオチド修飾のされたもの、例えば非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホルアミデート、カルバメートなど)を持つもの、電荷を有する結合または硫黄含有結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)を持つもの、例えばタンパク質(ヌクレアーゼ、ヌクレアーゼ・インヒビター、トキシン、抗体、シグナルペプチド、ポリ−L−リジンなど)や糖(例えば、モノサッカライドなど)などの側鎖基を有しているもの、インターカレート化合物(例えば、アクリジン、ソラレンなど)を持つもの、キレート化合物(例えば、金属、放射活性をもつ金属、ホウ素、酸化性の金属など)を含有するもの、アルキル化剤を含有するもの、修飾された結合を持つもの(例えば、αアノマー型の核酸など)であってもよい。ここで「ヌクレオシド」、「ヌクレオチド」および「核酸」とは、プリンおよびピリミジン塩基を含有するのみでなく、修飾されたその他の複素環型塩基をもつようなものを含んでいて良い。こうした修飾物は、メチル化されたプリンおよびピリミジン、アシル化されたプリンおよびピリミジン、あるいはその他の複素環を含むものであってよい。修飾されたヌクレオチドおよび修飾されたヌクレオチドはまた糖部分が修飾されていてよく、例えば、1個以上の水酸基がハロゲンとか、脂肪族基などで置換されていたり、あるいはエーテル、アミンなどの官能基に変換されていてよい。
【0033】
本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチド(核酸)は、RNA、DNA、あるいは修飾された核酸(RNA、DNA)である。修飾された核酸の具体例としては核酸の硫黄誘導体やチオホスフェート誘導体、そしてポリヌクレオシドアミドやオリゴヌクレオシドアミドの分解に抵抗性のものが挙げられるが、それに限定されるものではない。本発明のアンチセンス核酸は次のような方針で好ましく設計されうる。すなわち、細胞内でのアンチセンス核酸をより安定なものにする、アンチセンス核酸の細胞透過性をより高める、目標とするセンス鎖に対する親和性をより大きなものにする、そしてもし毒性があるならアンチセンス核酸の毒性をより小さなものにする。
こうした修飾は当該分野で数多く知られており、例えば J. Kawakami et al.,Pharm Tech Japan, Vol. 8, pp.247, 1992; Vol. 8, pp.395, 1992; S. T. Crooke et al. ed., Antisense Research and Applications, CRC Press, 1993 などに開示がある。
本発明のアンチセンス核酸は、変化せしめられたり、修飾された糖、塩基、結合を含有していて良く、リポゾーム、ミクロスフェアのような特殊な形態で供与されたり、遺伝子治療により適用されたり、付加された形態で与えられることができうる。こうして付加形態で用いられるものとしては、リン酸基骨格の電荷を中和するように働くポリリジンのようなポリカチオン体、細胞膜との相互作用を高めたり、核酸の取込みを増大せしめるような脂質(例えば、ホスホリピド、コレステロールなど)といった疎水性のものが挙げられる。付加するに好ましい脂質としては、コレステロールやその誘導体(例えば、コレステリルクロロホルメート、コール酸など)が挙げられる。こうしたものは、核酸の3’端あるいは5’端に付着させることができ、塩基、糖、分子内ヌクレオシド結合を介して付着させることができうる。その他の基としては、核酸の3’端あるいは5’端に特異的に配置されたキャップ用の基で、エキソヌクレアーゼ、RNaseなどのヌクレアーゼによる分解を阻止するためのものが挙げられる。こうしたキャップ用の基としては、ポリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのグリコールをはじめとした当該分野で知られた水酸基の保護基が挙げられるが、それに限定されるものではない。
アンチセンス核酸の阻害活性は、本発明の形質転換体、本発明の生体内や生体外の遺伝子発現系、あるいはレセプタータンパク質の生体内や生体外の翻訳系を用いて調べることができる。該核酸は公知の各種の方法で細胞に適用できる。
本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドは、生体内における本発明のタンパク質または本発明のポリヌクレオチド(例、DNA)の機能を抑制することができるので、例えば、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として用いることができる。さらに、本発明のアンチセンス・ポリヌクレオチドは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできるので、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の診断に用いることができる。
【0034】
(部分ペプチドをコードするDNA)
本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、上記した本発明の部分ペプチドをコードする塩基配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。また、ゲノムDNA、ゲノムDNAライブラリー、上記した細胞または組織由来のcDNA、上記した細胞または組織由来のcDNAライブラリー、合成DNAのいずれでもよい。ライブラリーに使用するベクターは、バクテリオファージ、プラスミド、コスミド、ファージミドなどいずれであってもよい。また、上記した細胞または組織よりmRNA画分を調製したものを用いて直接Reverse Transcriptase Polymerase Chain Reaction(以下、RT−PCR法と略称する)によって増幅することもできる。
具体的には、本発明の部分ペプチドをコードするDNAとしては、例えば、
(1)配列番号:8、配列番号:10、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列を含有するDNAの部分塩基配列を有するDNA、
(2)配列番号:8、配列番号:10、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAを有し、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列を含有するタンパク質ペプチドと実質的に同質の活性(例、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用など)を有するタンパク質をコードするDNAの部分塩基配列を有するDNAなどが用いられる。
配列番号:8、配列番号:10、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列を含有するDNAとハイストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAとしては、例えば、配列番号:8、配列番号:10、配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列と約70%以上、好ましくは約80%以上、より好ましくは約90%以上、さらに好ましくは約95%以上の相同性を有する塩基配列を含有するDNAなどが用いられる。
【0035】
(抗体)
本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体は、本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩、あるいは本発明のレセプタータンパク質を含有する細胞を認識し得る抗体であれば、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体の何れであってもよい。
本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩(以下、本発明のレセプタータンパク質等と略記する場合がある)に対する抗体は、本発明のレセプタータンパク質等を抗原として用い、公知の抗体または抗血清の製造法に従って製造することができる。
【0036】
〔モノクローナル抗体の作製〕
(a)モノクローナルモノクローナル抗体産生細胞の作製
本発明のレセプタータンパク質等は、哺乳動物に対して投与により抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は通常2〜6週毎に1回ずつ、計2〜10回程度行なわれる。用いられる哺乳動物としては、例えば、サル、ウサギ、イヌ、モルモット、マウス、ラット、ヒツジ、ヤギが挙げられるが、マウスおよびラットが好ましく用いられる。
モノクローナル抗体産生細胞の作製に際しては、抗原を免疫された温血動物、例えば、マウスから抗体価の認められた個体を選択し最終免疫の2〜5日後に脾臓またはリンパ節を採取し、それらに含まれる抗体産生細胞を骨髄腫細胞と融合させることにより、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを調製することができる。抗血清中の抗体価の測定は、例えば、後記の標識化レセプタータンパク質等と抗血清とを反応させたのち、抗体に結合した標識剤の活性を測定することにより行なうことができる。融合操作は既知の方法、例えば、ケーラーとミルスタインの方法〔ネイチャー(Nature)、256巻、495頁(1975年)〕に従い実施することができる。融合促進剤としては、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)やセンダイウィルスなどが挙げられるが、好ましくはPEGが用いられる。
骨髄腫細胞としては、例えば、NS−1、P3U1、SP2/0などが挙げられるが、P3U1が好ましく用いられる。用いられる抗体産生細胞(脾臓細胞)数と骨髄腫細胞数との好ましい比率は1:1〜20:1程度であり、PEG(好ましくは、PEG1000〜PEG6000)が10〜80%程度の濃度で添加され、約20〜40℃、好ましくは約30〜37℃で約1〜10分間インキュベートすることにより効率よく細胞融合を実施できる。
【0037】
モノクローナル抗体産生ハイブリドーマのスクリーニングには種々の方法が使用できるが、例えば、レセプタータンパク質等の抗原を直接あるいは担体とともに吸着させた固相(例、マイクロプレート)にハイブリドーマ培養上清を添加し、次に放射性物質や酵素などで標識した抗免疫グロブリン抗体(細胞融合に用いられる細胞がマウスの場合、抗マウス免疫グロブリン抗体が用いられる)またはプロテインAを加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法、抗免疫グロブリン抗体またはプロテインAを吸着させた固相にハイブリドーマ培養上清を添加し、放射性物質や酵素などで標識したレセプタータンパク質等を加え、固相に結合したモノクローナル抗体を検出する方法などが挙げられる。
モノクローナル抗体の選別は、公知あるいはそれに準じる方法に従って行なうことができるが、通常はHAT(ヒポキサンチン、アミノプテリン、チミジン)を添加した動物細胞用培地などで行なうことができる。選別および育種用培地としては、ハイブリドーマが生育できるものならばどのような培地を用いても良い。例えば、1〜20%、好ましくは10〜20%の牛胎児血清を含むRPMI 1640培地、1〜10%の牛胎児血清を含むGIT培地(和光純薬工業(株))またはハイブリドーマ培養用無血清培地(SFM−101、日水製薬(株))などを用いることができる。培養温度は、通常20〜40℃、好ましくは約37℃である。培養時間は、通常5日〜3週間、好ましくは1週間〜2週間である。培養は、通常5%炭酸ガス下で行なうことができる。ハイブリドーマ培養上清の抗体価は、上記の抗血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。
【0038】
(b)モノクローナル抗体の精製
モノクローナル抗体の分離精製は、通常のポリクローナル抗体の分離精製と同様に免疫グロブリンの分離精製法〔例、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体(例、DEAE)による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相またはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法〕に従って行なうことができる。
【0039】
〔ポリクローナル抗体の作製〕
本発明のポリクローナル抗体は、公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(本発明のタンパク質等の抗原)とキャリアータンパク質との複合体をつくり、上記のモノクローナル抗体の製造法と同様に哺乳動物に免疫を行ない、該免疫動物から本発明のレセプタータンパク質等に対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。
哺乳動物を免疫するために用いられる免疫抗原とキャリアータンパク質との複合体に関し、キャリアータンパク質の種類およびキャリアーとハプテンとの混合比は、キャリアーに架橋させて免疫したハプテンに対して抗体が効率良くできれば、どの様なものをどの様な比率で架橋させてもよいが、例えば、ウシ血清アルブミン、ウシサイログロブリン、キーホール・リンペット・ヘモシアニン等を重量比でハプテン1に対し、約0.1〜20、好ましくは約1〜5の割合でカプルさせる方法が用いられる。
また、ハプテンとキャリアーのカプリングには、種々の縮合剤を用いることができるが、グルタルアルデヒドやカルボジイミド、マレイミド活性エステル、チオール基、ジチオビリジル基を含有する活性エステル試薬等が用いられる。
縮合生成物は、温血動物に対して、抗体産生が可能な部位にそれ自体あるいは担体、希釈剤とともに投与される。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計約3〜10回程度行なうことができる。ポリクローナル抗体は、上記の方法で免疫された哺乳動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。
抗血清中のポリクローナル抗体価の測定は、上記の血清中の抗体価の測定と同様にして測定できる。ポリクローナル抗体の分離精製は、上記のモノクローナル抗体の分離精製と同様の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
【0040】
[レセプタータンパク質、DNAなどの用途]
アスパラギン結合型糖鎖やセリン・スレオニン結合型糖鎖などの糖鎖に親和性を示すタンパク質(例えば、コンカナバリンA、レンズマメレクチン、エンドウマメレクチン、チョウセンアサガオレクチン、イヌエンジュレクチン、フィトヘマグルチニンなどのレクチンなど)は本発明のレセプタータンパク質のリガンドの1つである。
従って、本発明のレセプタータンパク質、それをコードするポリヌクレオチド(以下、本発明のポリヌクレオチドと略記する場合がある)、本発明のレセプタータンパク質に対する抗体(以下、本発明の抗体と略記する場合がある)、本発明のDNAに対するアンチセンスポリヌクレオチド(以下、本発明のアンチセンスポリヌクレオチドと略記する場合がある)などは、以下の用途を有している。
【0041】
(1)本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤
本発明のレセプタータンパク質は前立腺(癌)、胎盤、肝臓で発現が見られることから、a)本発明のレセプタータンパク質またはb)本発明のレセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチド(例、DNA)を、本発明のレセプタータンパク質の機能不全、特に前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤などの医薬として使用することができる。
例えば、生体内において本発明のレセプタータンパク質が減少しているために、リガンドの生理作用が期待できない(本発明のレセプタータンパク質の欠乏症)患者がいる場合に、a)本発明のレセプタータンパク質を該患者に投与し該レセプタータンパク質の量を補充したり、b)(イ)本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを該患者に投与し発現させることによって、あるいは(ロ)対象となる細胞に本発明のレセプタータンパク質をコードするDNAを挿入し発現させた後に、該細胞を該患者に移植することなどによって、患者の体内における該レセプタータンパク質の量を増加させ、リガンドの作用を充分に発揮させることができる。すなわち、本発明のレセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドは、安全で低毒性な該レセプタータンパク質の機能不全、特に前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤として有用である。
本発明のレセプタータンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドを上記医薬として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
【0042】
(2)本発明のポリヌクレオチドまたはアンチセンスポリヌクレオチドを用いる診断剤及び診断方法
本発明のポリヌクレオチド(例、DNA)およびアンチセンスポリヌクレオチド(例、アンチセンスDNA)は、プローブとして使用することにより、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど)における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするDNAまたはmRNAの異常(遺伝子異常)を検出することができるので、例えば、該DNAまたはmRNAの損傷、突然変異あるいは発現低下や、該DNAまたはmRNAの増加あるいは発現過多などの遺伝子診断剤として有用である。
本発明のポリヌクレオチドまたはアンチセンスポリヌクレオチドを用いる上記の遺伝子診断は、例えば、公知のノーザンハイブリダイゼーションやPCR−SSCP法(ゲノミックス(Genomics),第5巻,874〜879頁(1989年)、プロシージングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシイズ・オブ・ユーエスエー(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America),第86巻,2766〜2770頁(1989年))などにより実施することができる。
例えば、ノーザンハイブリダイゼーションにより本発明のレセプタータンパク質の発現低下または発現過多が検出された場合は、例えば、本発明のレセプタータンパク質の機能不全または過剰発現に起因する疾患、特に前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石に罹患している可能性が高いまたは将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
(3)本発明のアンチセンスポリヌクレオチドを含有してなる医薬
本発明のアンチセンスポリヌクレオチドは、本発明のレセプタータンパク質の過剰発現などに起因する疾患(例えば、前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石などの疾患)の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤として用いることができる。
例えば、該アンチセンスポリヌクレオチドを用いる場合、該アンチセンスポリヌクレオチドを単独あるいはレトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノウイルスアソシエーテッドウイルスベクターなどの適当なベクターに挿入した後、常套手段に従って実施することができる。該アンチセンスポリヌクレオチドは、そのままで、あるいは摂取促進のために補助剤などの生理学的に認められる担体とともに製剤化し、遺伝子銃やハイドロゲルカテーテルのようなカテーテルによって投与できる。
さらに、該アンチセンスポリヌクレオチドは、組織や細胞における本発明のDNAの存在やその発現状況を調べるための診断用オリゴヌクレオチドプローブとして使用することもできる。
【0043】
(4)本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニング方法
本発明のDNAは、プローブとして用いることにより、本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、例えば、(i)非ヒト哺乳動物の(1)血液、(2)特定の臓器、(3)臓器から単離した組織もしくは細胞、または(ii)形質転換体等に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドのmRNA量を測定することによる、本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0044】
本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドのmRNA量の測定は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗癌剤など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肺、大腸、前立腺など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。
得られた細胞に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドのmRNAは、例えば、通常の方法により細胞等からmRNAを抽出し、例えば、TaqManPCRなどの手法を用いることにより定量することができ、公知の手段によりノザンブロットを行うことにより解析することもできる。
(ii)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体を上記の方法に従い作製し、該形質転換体に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドのmRNAを同様にして定量、解析することができる。
【0045】
本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に被検化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、細胞に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドのmRNA量を定量、解析することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に被検化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、該形質転換体に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドのmRNA量を定量、解析することにより行なうことができる。
【0046】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を増加させることにより、レセプターを介する細胞刺激活性を増強させる化合物、(ロ)本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を減少させることにより、該細胞刺激活性を減弱させる化合物である。
細胞刺激活性としては、例えば、(1)アラキドン酸遊離、(2)アセチルコリン遊離、(3)細胞内Ca2+遊離、(4)細胞内cAMP生成、(5)細胞内cGMP生成、(6)イノシトールリン酸産生、(7)細胞膜電位変動、(8)細胞内タンパク質(例、MAPキナーゼ)のリン酸化、(9)c−fosの活性化、(10)pHの低下、(11)Rho,Rac,Rasなどの低分子量Gタンパク質の活性化、(12)転写因子CRE(cAMP responsiveelement)、AP1、NFAT、SRE(serum responsive element)などの下流につないだレポーター遺伝子(例、ルシフェラーゼなど)の活性化などが挙げられ、特に細胞内cAMP生成の促進活性などが好ましい。
該化合物としては、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
該細胞刺激活性を増強させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質等の生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
該細胞刺激活性を減弱させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質等の生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
上記したとおり、本発明のレセプタータンパク質のリガンドの1つは、糖鎖に親和性を示すタンパク質(例、レクチンなど)である。したがって、上記スクリーニング方法で得られる本発明のレセプタータンパク質の発現量を変化させる化合物は、前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石などの予防および/または治療剤、または分娩誘発剤として用いることができる。
【0047】
(5)本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤
本発明のレセプタータンパク質は上記のとおり、例えば、中枢機能など生体内で何らかの重要な役割を果たしていると考えられる。したがって、本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として用いることができる。
該化合物を本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として使用する場合は、常套手段に従って製剤化することができる。
【0048】
(6)本発明のレセプタータンパク質とリガンドとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニストなど)のスクリーニング方法及びスクリーニングキット
本発明のレセプタータンパク質等を用いるか、または組換え型レセプタータンパク質等の発現系を構築し、該発現系を用いたレセプター結合アッセイ系を用いることによって、リガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物(例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物など)またはその塩を効率よくスクリーニングすることができる。
上記したとおり、本発明のレセプタータンパク質に対するリガンドの1つとして、糖鎖に親和性を示すタンパク質(例えば、レクチン)が挙げられる。
さらに、リガンドとしては、糖鎖に親和性を示すタンパク質と本発明のレセプタータンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩を用いることもできる。この糖鎖に親和性を示すタンパク質と本発明のレセプタータンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩は、例えば、リガンドとして糖鎖に親和性を示すタンパク質を用いて、本発明のスクーニング方法を実施することによって得ることができる。
糖鎖に親和性を示すタンパク質と本発明のレセプタータンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩としては、低分子合成化合物が好ましく、新規または公知の何れの化合物であってもよい。特に、本発明のレセプタータンパク質に対するアンタゴニストをスクリーニングする場合には、糖鎖に親和性を示すタンパク質に代えて、アゴニスト活性を有する低分子合成化合物を用いるのが好ましい。
低分子合成化合物は、糖鎖に親和性を示すタンパク質に比べて標識が容易であるため、スクリーニングに適している。以下、これらの糖鎖に親和性を示すタンパク質や低分子合成化合物をまとめてリガンドと記載する。
リガンドと本発明のレセプタータンパク質との結合性を変化させる化合物には、(イ)レセプターを介する細胞刺激活性などを促進する活性または抑制する活性など)を有する化合物(いわゆる、本発明のレセプタータンパク質に対するアゴニスト)、(ロ)該細胞刺激活性を有しない化合物(いわゆる、本発明のレセプタータンパク質に対するアンタゴニスト)、(ハ)リガンドと本発明のGタンパク質共役型レセプタータンパク質との結合力を増強する化合物、あるいは(ニ)リガンドと本発明のレセプタータンパク質との結合力を減少させる化合物などが含まれる(なお、上記(イ)の化合物は、上記したリガンド決定方法によってスクリーニングすることが好ましい)。
細胞刺激活性としては、例えば、(1)アラキドン酸遊離、(2)アセチルコリン遊離、(3)細胞内Ca2+遊離、(4)細胞内cAMP生成、(5)細胞内cGMP生成、(6)イノシトールリン酸産生、(7)細胞膜電位変動、(8)細胞内タンパク質(例、MAPキナーゼ)のリン酸化、(9)c−fosの活性化、(10)pHの低下、(11)Rho,Rac,Rasなどの低分子量Gタンパク質の活性化、(12)転写因子CRE(cAMP responsiveelement)、AP1、NFAT、SRE(serum responsive element)などの下流につないだレポーター遺伝子(例、ルシフェラーゼなど)の活性化などが挙げられ、特に細胞内cAMP生成の促進活性などが好ましい。
すなわち、本発明は、(i)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩と、リガンドとを接触させた場合と(ii)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩と、リガンドおよび試験化合物とを接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするリガンドと本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法においては、(i)と(ii)の場合における、例えば、該レセプタータンパク質等に対するリガンドの結合量、細胞刺激活性などを測定して、比較することを特徴とする。
【0049】
より具体的には、本発明は、
(i)標識したリガンドを、本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合と、標識したリガンドおよび試験化合物を本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合における、標識したリガンドの該レセプタータンパク質等に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするリガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(ii)標識したリガンドを、本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合と、標識したリガンドおよび試験化合物を本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞または該細胞の膜画分に接触させた場合における、標識したリガンドの該細胞または該膜画分に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするリガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
(iii)標識したリガンドを、本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現したレセプタータンパク質等に接触させた場合と、標識したリガンドおよび試験化合物を本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合における、標識したリガンドの該レセプタータンパク質等に対する結合量を測定し、比較することを特徴とするリガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、
【0050】
(iv)本発明のレセプタータンパク質等を活性化する化合物(例えば、リガンドなど)を本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞に接触させた場合と、本発明のレセプタータンパク質等を活性化する化合物および試験化合物を本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞に接触させた場合における、レセプターを介した細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするリガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法、および
(v)本発明のレセプタータンパク質等を活性化する化合物(例えば、リガンドなど)を本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合と、本発明のレセプタータンパク質等を活性化する化合物および試験化合物を本発明のDNAを含有する形質転換体を培養することによって細胞膜上に発現した本発明のレセプタータンパク質等に接触させた場合における、レセプターを介する細胞刺激活性を測定し、比較することを特徴とするリガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
まず、本発明のスクリーニング方法に用いる本発明のレセプタータンパク質等としては、上記した本発明のレセプタータンパク質等を含有するものであれば何れのものであってもよいが、本発明のレセプタータンパク質等を含有する哺乳動物の臓器の細胞膜画分が好適である。しかし、特にヒト由来の臓器は入手が極めて困難なことから、スクリーニングに用いられるものとしては、組換え体を用いて大量発現させたヒト由来のレセプタータンパク質等などが適している。
本発明のリセプタータンパク質を製造するには、上記の方法が用いられるが、本発明のDNAを哺乳細胞や昆虫細胞で発現することにより行なうことが好ましい。目的とするタンパク質部分をコードするDNA断片には相補DNAが用いられるが、必ずしもこれに制約されるものではない。例えば、遺伝子断片や合成DNAを用いてもよい。本発明のレセプタータンパク質をコードするDNA断片を宿主動物細胞に導入し、それらを効率よく発現させるためには、該DNA断片を昆虫を宿主とするバキュロウイルスに属する核多角体病ウイルス(nuclear polyhedrosis virus;NPV)のポリヘドリンプロモーター、SV40由来のプロモーター、レトロウイルスのプロモーター、メタロチオネインプロモーター、ヒトヒートショックプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、SRαプロモーターなどの下流に組み込むのが好ましい。発現したレセプターの量と質の検査はそれ自体公知の方法で行うことができる。例えば、文献〔Nambi,P.ら、ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J. Biol. Chem.),267巻,19555〜19559頁,1992年〕に記載の方法に従って行なうことができる。
なお、本発明のスクリーニング方法において、本発明のレセプタータンパク質等を含有するものとしては、公知の方法に従って精製したレセプタータンパク質等であってもよいし、該レセプタータンパク質等を含有する細胞を用いてもよく、また該レセプタータンパク質等を含有する細胞の膜画分を用いてもよい。
【0051】
本発明のスクリーニング方法において、本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞を用いる場合、該細胞をグルタルアルデヒド、ホルマリンなどで固定化してもよい。固定化方法は公知の方法に従って行なうことができる。
本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞としては、該レセプタータンパク質等を発現した宿主細胞をいうが、該宿主細胞としては、大腸菌、枯草菌、酵母、昆虫細胞、動物細胞などが好ましい。
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したレセプタータンパク質等と細胞由来のリン脂質や膜タンパク質などの膜成分が多く含まれる。
該レセプタータンパク質等を含有する細胞や膜画分中のレセプタータンパク質の量は、1細胞当たり10〜10分子であるのが好ましく、10〜10分子であるのが好適である。なお、発現量が多いほど膜画分当たりのリガンド結合活性(比活性)が高くなり、高感度なスクリーニング系の構築が可能になるばかりでなく、同一ロットで大量の試料を測定できるようになる。
【0052】
リガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする上記の(1)〜(3)を実施するためには、例えば、適当なレセプタータンパク質画分と、標識したリガンドが必要である。
レセプタータンパク質画分としては、天然型のレセプタータンパク質画分か、またはそれと同等の活性を有する組換え型レセプタータンパク質画分などが望ましい。ここで、同等の活性とは、同等のリガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などを示す。
標識したリガンドとしては、標識したリガンド、標識したリガンドアナログ化合物などが用いられる。例えば〔H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識されたリガンドなどが用いられる。
具体的には、リガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物のスクリーニングを行なうには、まず本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞または細胞の膜画分を、スクリーニングに適したバッファーに懸濁することによりレセプタータンパク質標品を調製する。バッファーには、pH4〜10(望ましくはpH6〜8)のリン酸バッファー、トリス−塩酸バッファーなどのリガンドとレセプタータンパク質との結合を阻害しないバッファーであればいずれでもよい。また、非特異的結合を低減させる目的で、CHAPS、Tween−80TM(花王−アトラス社)、ジギトニン、デオキシコレートなどの界面活性剤をバッファーに加えることもできる。さらに、プロテアーゼによるレセプターやリガンドの分解を抑える目的でPMSF、ロイペプチン、E−64(ペプチド研究所製)、ペプスタチンなどのプロテアーゼ阻害剤を添加することもできる。0.01ml〜10mlの該レセプター溶液に、一定量(5000cpm〜500000cpm)の標識したリガンドを添加し、同時に10−4M〜10−10Mの試験化合物を共存させる。非特異的結合量(NSB)を知るために大過剰の未標識のリガンドを加えた反応チューブも用意する。反応は約0℃から50℃、望ましくは約4℃から37℃で、約20分から24時間、望ましくは約30分から3時間行う。反応後、ガラス繊維濾紙等で濾過し、適量の同バッファーで洗浄した後、ガラス繊維濾紙に残存する放射活性を液体シンチレーションカウンターまたはγ−カウンターで計測する。拮抗する物質がない場合のカウント(B)から非特異的結合量(NSB)を引いたカウント(B−NSB)を100%とした時、特異的結合量(B−NSB)が、例えば、50%以下になる試験化合物を拮抗阻害能力のある候補物質として選択することができる。
【0053】
リガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物をスクリーニングする上記の(4)〜(5)の方法を実施するためには、例えば、上記したレセプタータンパク質を介する細胞刺激活性を公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。
具体的には、まず、本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行なうにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
細胞刺激活性を測定してスクリーニングを行なうには、適当なレセプタータンパク質を発現した細胞が必要である。本発明のレセプタータンパク質等を発現した細胞としては、天然型の本発明のレセプタータンパク質等を有する細胞株、上記の組換え型レセプタータンパク質等を発現した細胞株などが望ましい。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが用いられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
また、試験化合物としては、本発明のレセプタータンパク質の活性部位の原子座標およびリガンド結合ポケットの位置に基づいて、リガンド結合ポケットに結合するように設計された化合物が好ましく用いられる。本発明のレセプタータンパク質の活性部位の原子座標およびリガンド結合ポケットの位置の測定は、公知の方法あるいはそれに準じる方法を用いて行うことができる。
【0054】
リガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キットは、本発明のレセプタータンパク質等、本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞、または本発明のレセプタータンパク質等を含有する細胞の膜画分を含有するものなどである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
(1)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
(2)Gタンパク質共役型レセプター標品
本発明のレセプタータンパク質を発現させたCHO細胞を、12穴プレートに5×10個/穴で継代し、37℃、5%CO、95%airで2日間培養したもの。
(3)標識リガンド
市販の〔H〕、〔125I〕、〔14C〕、〔35S〕などで標識したリガンド
水溶液の状態のものを4℃あるいは−20℃にて保存し、用時に測定用緩衝液にて1μMに希釈する。
(4)リガンド標準液
リガンドを0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
【0055】
2.測定法
(1)12穴組織培養用プレートにて培養した本発明のレセプタータンパク質発現CHO細胞を、測定用緩衝液1mlで2回洗浄した後、490μlの測定用緩衝液を各穴に加える。
(2)10−3〜10−10Mの試験化合物溶液を5μl加えた後、標識リガンドを5μl加え、室温にて1時間反応させる。非特異的結合量を知るためには試験化合物の代わりに10−3Mのリガンドを5μl加えておく。
(3)反応液を除去し、1mlの洗浄用緩衝液で3回洗浄する。細胞に結合した標識リガンドを0.2N NaOH−1%SDSで溶解し、4mlの液体シンチレーターA(和光純薬製)と混合する。
(4)液体シンチレーションカウンター(ベックマン社製)を用いて放射活性を測定し、Percent Maximum Binding(PMB)を次の式で求める。
PMB=[(B−NSB)/(B−NSB)]×100
PMB:Percent Maximum Binding
B :検体を加えた時の値
NSB:Non−specific Binding(非特異的結合量)
:最大結合量
【0056】
リガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる化合物またはその塩がアゴニストであるかアンタゴニストであるかの具体的な評価方法は以下の(i)または(ii)に従えばよい。
(i)前記(1)〜(3)のスクリーニング方法で示されるバインディング・アッセイを行い、リガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる(特に、結合を阻害する)化合物を得た後、該化合物が上記した本発明のレセプタータンパク質を介する細胞刺激活性を有しているか否かを測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩はアゴニストであり、該活性を有しない化合物またはその塩はアンタゴニストである。
(ii)(a)試験化合物を本発明のレセプタータンパク質を含有する細胞に接触させ、上記した本発明のレセプタータンパク質を介する細胞刺激活性を測定する。細胞刺激活性を有する化合物またはその塩はアゴニストである。
(b)本発明のレセプタータンパク質を活性化する化合物(例えば、リガンドまたは本発明のレセプタータンパク質に対するアゴニストなど)を本発明のレセプタータンパク質を含有する細胞に接触させた場合と、本発明のレセプタータンパク質を活性化する化合物および試験化合物を本発明のレセプタータンパク質を含有する細胞に接触させた場合における、上記した本発明のレセプタータンパク質を介する細胞刺激活性を測定し、比較する。本発明のレセプタータンパク質を活性化する化合物による細胞刺激活性を減少させ得る化合物またはその塩はアンタゴニストである。
本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られる化合物またはその塩は、リガンドと本発明のレセプタータンパク質等との結合性を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(1)上記した本発明のレセプタータンパク質を介する細胞刺激活性を有する化合物(いわゆる、本発明のレセプタータンパク質に対するアゴニスト)、(2)該細胞刺激活性を有しない化合物(いわゆる、本発明のレセプタータンパク質に対するアンタゴニスト)、(3)リガンドと本発明のレセプタータンパク質との結合力を増強する化合物、あるいは(4)リガンドと本発明のレセプタータンパク質との結合力を減少させる化合物である。
該化合物としては、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
本発明のレセプタータンパク質等に対するアゴニストは、本発明のレセプタータンパク質等に対する上記リガンドが有する生理活性と同様の作用を有しているので、該生理活性に応じて安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のレセプタータンパク質等に対するアンタゴニストは、本発明のレセプタータンパク質等に対する上記リガンドが有する生理活性を抑制することができるので、該生理活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
リガンドと本発明のレセプタータンパク質との結合力を増強する化合物は、本発明のレセプタータンパク質等に対する上記リガンドが有する生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
リガンドと本発明のレセプタータンパク質との結合力を減少させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質等に対する上記リガンドが有する生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
【0057】
具体的には、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるリガンドと本発明のリセプタータンパク質との結合性を変化させる作用を有する化合物またはその塩は、例えば、前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石などの疾患に対する予防及び/又は治療薬、または分娩誘発薬として有用である。
(7)本発明のレセプタータンパク質とリガンドとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニストなど)を含有する各種疾病の予防および/または治療剤)
本発明のレセプタータンパク質とリガンドとの結合性を変化させる化合物(アゴニスト、アンタゴニスト)や本発明のレセプタータンパク質に対する上記リガンドは、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患、例えば、前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石などの疾患に対する予防および/または治療剤、または分娩誘発剤として用いることができる。
該化合物やリガンドを本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として使用する場合は、上述したような常套手段に従って製剤化することができる。
【0058】
(8)本発明の抗体を用いるタンパク質などの定量、本発明の抗体を含有する診断薬およびそれを用いる診断方法
本発明の抗体は、本発明のレセプタータンパク質等を特異的に認識することができるので、被検液中の本発明のレセプタータンパク質等の定量、特にサンドイッチ免疫測定法、競合法、イムノメトリック法あるいはネフロメトリーなどによる定量などに使用することができる。
【0059】
これら個々の免疫学的測定法を本発明の測定方法に適用するにあたっては、特別の条件、操作等の設定は必要とされない。それぞれの方法における通常の条件、操作法に当業者の通常の技術的配慮を加えて本発明のレセプタータンパク質またはその塩の測定系を構築すればよい。これらの一般的な技術手段の詳細については、総説、成書などを参照することができる〔例えば、入江 寛編「ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和49年発行)、入江 寛編「続ラジオイムノアッセイ」(講談社、昭和54年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(医学書院、昭和53年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第2版)(医学書院、昭和57年発行)、石川栄治ら編「酵素免疫測定法」(第3版)(医学書院、昭和62年発行)、「メソッズ・イン・エンジモノジー(Methods in ENZYMOLOGY)Vol. 70(Immunochemical Techniques(Part A))、 同書 Vol. 73(Immunochemical Techniques(Part B))、 同書 Vol. 74(Immunochemical Techniques(Part C))、 同書 Vol. 84(Immunochemical Techniques(Part D:Selected Immunoassays))、 同書 Vol. 92(Immunochemical Techniques(Part E:Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods))、 同書 Vol. 121(Immunochemical Techniques(Part I:Hybridoma Technology and Monoclonal Antibodies))(以上、アカデミックプレス社発行)、WO 00/14227号公報第39頁第25行〜第42頁第8行、EP1111047A2号公報段落[0115]第19頁第35行〜第20頁第47行など参照」。
以上のように、本発明の抗体を用いることによって、本発明のレセプタータンパク質またはその塩を感度良く定量することができる。
さらに、本発明の抗体を用いて、生体内での本発明のレセプタータンパク質またその塩を定量することによって、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する各種疾患の診断をすることができる。
例えば、本発明の抗体を用いて本発明のレセプタータンパク質の濃度を定量することによって、該レセプタータンパク質の濃度の増加または減少が検出された場合、例えば、該レセプタータンパク質の機能不全または過剰発現、特に前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石に罹患している可能性が高い、または将来罹患する可能性が高いと診断することができる。
また、本発明の抗体は、体液や組織などの被検体中に存在する本発明のレセプタータンパク質等を特異的に検出するために使用することができる。また、本発明のレセプタータンパク質等を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中の本発明のレセプタータンパク質等の検出、被検細胞内における本発明のレセプタータンパク質の挙動の分析などのために使用することができる。
【0060】
(9)細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法
本発明の抗体は、本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を特異的に認識することができるので、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち本発明は、例えば、
(i)非ヒト哺乳動物のa)血液、b)特定の臓器、c)臓器から単離した組織もしくは細胞等を破壊した後、細胞膜画分を単離し、細胞膜画分に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドを定量することによる、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法、
(ii)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体等を破壊した後、細胞膜画分を単離し、細胞膜画分に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドを定量することによる、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法、
(iii)非ヒト哺乳動物のa)血液、b)特定の臓器、c)臓器から単離した組織もしくは細胞等を切片とした後、免疫染色法を用いることにより、細胞表層での該レセプタータンパク質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該タンパク質を確認することによる、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法を提供する。
(iv)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体等を切片とした後、免疫染色法を用いることにより、細胞表層での該レセプタータンパク質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該タンパク質を確認することによる、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニング方法を提供する。
【0061】
細胞膜画分に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの定量は具体的には以下のようにして行なう。
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗癌剤など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肺、大腸、前立腺など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。得られた臓器、組織または細胞等を、例えば、適当な緩衝液(例えば、トリス塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、ヘペス緩衝液など)等に懸濁し、臓器、組織あるいは細胞を破壊し、界面活性剤(例えば、トリトンX100TM、ツイーン20TMなど)などを用い、さらに遠心分離や濾過、カラム分画などの手法を用いて細胞膜画分を得る。
【0062】
細胞膜画分としては、細胞を破砕した後、公知の方法で得られる細胞膜が多く含まれる画分のことをいう。細胞の破砕方法としては、Potter−Elvehjem型ホモジナイザーで細胞を押し潰す方法、ワーリングブレンダーやポリトロン(Kinematica社製)のよる破砕、超音波による破砕、フレンチプレスなどで加圧しながら細胞を細いノズルから噴出させることによる破砕などが挙げられる。細胞膜の分画には、分画遠心分離法や密度勾配遠心分離法などの遠心力による分画法が主として用いられる。例えば、細胞破砕液を低速(500rpm〜3000rpm)で短時間(通常、約1分〜10分)遠心し、上清をさらに高速(15000rpm〜30000rpm)で通常30分〜2時間遠心し、得られる沈澱を膜画分とする。該膜画分中には、発現したレセプタータンパク質等と細胞由来のリン脂質や膜タンパク質などの膜成分が多く含まれる。
【0063】
細胞膜画分に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドは、例えば、本発明の抗体を用いたサンドイッチ免疫測定法、ウエスタンブロット解析などにより定量することができる。
かかるサンドイッチ免疫測定法は上記の方法と同様にして行なうことができ、ウエスタンブロットは公知の手段により行なうことができる。
【0064】
(ii)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体を上記の方法に従い作製し、細胞膜画分に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドを定量することができる。
【0065】
細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物のスクリーニングは、
(i)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物に対して、薬剤あるいは物理的ストレスなどを与える一定時間前(30分前〜24時間前、好ましくは30分前〜12時間前、より好ましくは1時間前〜6時間前)もしくは一定時間後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、または薬剤あるいは物理的ストレスと同時に被検化合物を投与し、投与後一定時間経過後(30分後〜3日後、好ましくは1時間後〜2日後、より好ましくは1時間後〜24時間後)、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を定量することにより行なうことができ、
(ii)形質転換体を常法に従い培養する際に被検化合物を培地中に混合させ、一定時間培養後(1日後〜7日後、好ましくは1日後〜3日後、より好ましくは2日後〜3日後)、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を定量することにより行なうことができる。
【0066】
細胞膜画分に含まれる本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの確認は具体的には以下のようにして行なう。
(iii)正常あるいは疾患モデル非ヒト哺乳動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ、サルなど、より具体的には痴呆ラット、肥満マウス、動脈硬化ウサギ、担癌マウスなど)に対して、薬剤(例えば、抗痴呆薬、血圧低下薬、抗癌剤、抗肥満薬など)あるいは物理的ストレス(例えば、浸水ストレス、電気ショック、明暗、低温など)などを与え、一定時間経過した後に、血液、あるいは特定の臓器(例えば、脳、肺、大腸など)、または臓器から単離した組織、あるいは細胞を得る。得られた臓器、組織または細胞等を、常法に従い組織切片とし、本発明の抗体を用いて免疫染色を行う。細胞表層での該レセプタータンパク質の染色度合いを定量化することにより、細胞膜上の該タンパク質を確認することにより、定量的または定性的に、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を確認することができる。
(iv)本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドを発現する形質転換体等を用いて同様の手段をとることにより確認することもできる。
【0067】
本発明のスクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる作用を有する化合物であり、具体的には、(イ)細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を増加させることにより、レセプターを介する細胞刺激活性を増強させる化合物、(ロ)細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を減少させることにより、該細胞刺激活性を減弱させる化合物である。
該化合物としては、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物などが挙げられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
該細胞刺激活性を増強させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質等の生理活性を増強するための安全で低毒性な医薬として有用である。
該細胞刺激活性を減弱させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質等の生理活性を減少させるための安全で低毒性な医薬として有用である。
【0068】
(10)細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物、及びその化合物を含有する各種疾病の予防および/または治療剤
本発明のレセプタータンパク質は上記のとおり、例えば、生体内で重要な役割を果たしていると考えられる。したがって、細胞膜における本発明のレセプタータンパク質またはその部分ペプチドの量を変化させる化合物は、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として用いることができる。例えば、このような化合物は、該レセプタータンパク質の過剰発現などに起因する疾患(例えば、前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石などの疾患)の予防及び/又は治療薬、または分娩誘発薬として用いることができる。
該化合物を本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患の予防および/または治療剤として使用する場合は、上述した常套手段に従って製剤化することができる。
【0069】
(11)本発明のレセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはそれらの塩に対する抗体を含有する医薬
本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体の、それらレセプタータンパク質などに対する中和活性とは、該レセプタータンパク質の関与する活性、例えばシグナル伝達機能を不活性化する活性を意味する。従って、該抗体が中和活性を有する場合は、該レセプタータンパク質の関与するシグナル伝達、例えば、該レセプタータンパク質を介する細胞刺激活性(例えば、アラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性など、特に細胞内cAMP生成の促進活性)を不活性化することができる。したがって、このような抗体は、該レセプタータンパク質の過剰発現などに起因する疾患の予防および/または治療に用いることができる。例えば、本発明のレセプタータンパク質に対する中和抗体は、該レセプタータンパク質の過剰発現などに起因する疾患(例えば、前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石などの疾患)の予防及び/又は治療薬、または分娩誘発薬として用いることができる。
本発明の医薬の製剤化、投与量、投与方法等は前述のものが採用できる。(【0019】から【0022】参照)。
【0070】
(12)本発明のDNA導入動物の作製
本発明は、外来性の本発明のDNA(以下、本発明の外来性DNAと略記する)またはその変異DNA(本発明の外来性変異DNAと略記する場合がある)を有する非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物、
〔2〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕記載の動物、
〔3〕ゲッ歯動物がマウスまたはラットである第〔2〕記載の動物、および
〔4〕本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを含有し、哺乳動物において発現しうる組換えベクターを提供するものである。
本発明の外来性DNAまたはその変異DNAを有する非ヒト哺乳動物(以下、本発明のDNA転移動物と略記する)は、未受精卵、受精卵、精子およびその始原細胞を含む胚芽細胞などに対して、好ましくは、非ヒト哺乳動物の発生における胚発生の段階(さらに好ましくは、単細胞または受精卵細胞の段階でかつ一般に8細胞期以前)に、リン酸カルシウム法、電気パルス法、リポフェクション法、凝集法、マイクロインジェクション法、パーティクルガン法、DEAE−デキストラン法などにより目的とするDNAを転移することによって作出することができる。また、該DNA転移方法により、体細胞、生体の臓器、組織細胞などに目的とする本発明の外来性DNAを転移し、細胞培養、組織培養などに利用することもでき、さらに、これら細胞を上述の胚芽細胞と公知の細胞融合法により融合させることにより本発明のDNA導入動物を作出することもできる。
非ヒト哺乳動物としては、例えば、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、マウス、ラットなどが用いられる。なかでも、病体動物モデル系の作成の面から個体発生および生物サイクルが比較的短く、また、繁殖が容易なゲッ歯動物、とりわけマウス(例えば、純系として、C57BL/6系統,DBA2系統など、交雑系として、B6C3F系統,BDF系統,B6D2F系統,BALB/c系統,ICR系統など)またはラット(例えば、Wistar,SDなど)などが好ましい。
哺乳動物において発現しうる組換えベクターにおける「哺乳動物」としては、上記の非ヒト哺乳動物の他にヒトなどがあげられる。
【0071】
本発明の外来性DNAとは、非ヒト哺乳動物が本来有している本発明のDNAではなく、いったん哺乳動物から単離・抽出された本発明のDNAをいう。
本発明の変異DNAとしては、元の本発明のDNAの塩基配列に変異(例えば、突然変異など)が生じたもの、具体的には、塩基の付加、欠損、他の塩基への置換などが生じたDNAなどが用いられ、また、異常DNAも含まれる。
該異常DNAとしては、異常な本発明のレセプタータンパク質を発現させるDNAを意味し、例えば、正常な本発明のレセプタータンパク質の機能を抑制するレセプタータンパク質を発現させるDNAなどが用いられる。
本発明の外来性DNAは、対象とする動物と同種あるいは異種のどちらの哺乳動物由来のものであってもよい。本発明のDNAを対象動物に導入するにあたっては、該DNAを動物細胞で発現させうるプロモーターの下流に結合したDNAコンストラクトとして用いるのが一般に有利である。例えば、本発明のヒトDNAを導入する場合、これと相同性が高い本発明のDNAを有する各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のDNAを発現させうる各種プロモーターの下流に、本発明のヒトDNAを結合したDNAコンストラクト(例、ベクターなど)を対象哺乳動物の受精卵、例えば、マウス受精卵へマイクロインジェクションすることによって本発明のDNAを高発現するDNA導入哺乳動物を作出することができる。
【0072】
本発明のレセプタータンパク質の発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミド、酵母由来のプラスミド、λファージなどのバクテリオファージ、モロニー白血病ウィルスなどのレトロウィルス、ワクシニアウィルスまたはバキュロウィルスなどの動物ウイルスなどが用いられる。なかでも、大腸菌由来のプラスミド、枯草菌由来のプラスミドまたは酵母由来のプラスミドなどが好ましく用いられる。
上記のDNA発現調節を行なうプロモーターとしては、例えば、▲1▼ウイルス(例、シミアンウイルス、サイトメガロウイルス、モロニー白血病ウイルス、JCウイルス、乳癌ウイルス、ポリオウイルスなど)に由来するDNAのプロモーター、▲2▼各種哺乳動物(ヒト、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来のプロモーター、例えば、アルブミン、インスリンII、ウロプラキンII、エラスターゼ、エリスロポエチン、エンドセリン、筋クレアチンキナーゼ、グリア線維性酸性タンパク質、グルタチオンS−トランスフェラーゼ、血小板由来成長因子β、ケラチンK1,K10およびK14、コラーゲンI型およびII型、サイクリックAMP依存タンパク質キナーゼβIサブユニット、ジストロフィン、酒石酸抵抗性アルカリフォスファターゼ、心房ナトリウム利尿性因子、内皮レセプターチロシンキナーゼ(一般にTie2と略される)、ナトリウムカリウムアデノシン3リン酸化酵素(Na,K−ATPase)、ニューロフィラメント軽鎖、メタロチオネインIおよびIIA、メタロプロティナーゼ1組織インヒビター、MHCクラスI抗原(H−2L)、H−ras、レニン、ドーパミンβ−水酸化酵素、甲状腺ペルオキシダーゼ(TPO)、ペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)、βアクチン、αおよびβミオシン重鎖、ミオシン軽鎖1および2、ミエリン基礎タンパク質、チログロブリン、Thy−1、免疫グロブリン、H鎖可変部(VNP)、血清アミロイドPコンポーネント、ミオグロビン、トロポニンC、平滑筋αアクチン、プレプロエンケファリンA、バソプレシンなどのプロモーターなどが用いられる。なかでも、全身で高発現することが可能なサイトメガロウイルスプロモーター、ヒトペプチド鎖延長因子1α(EF−1α)のプロモーター、ヒトおよびニワトリβアクチンプロモーターなどが好適である。
上記ベクターは、DNA導入哺乳動物において目的とするmRNAの転写を終結する配列(一般にターミネターと呼ばれる)を有していることが好ましく、例えば、ウイルス由来および各種哺乳動物由来の各DNAの配列を用いることができ、好ましくは、シミアンウイルスのSV40ターミネターなどが用いられる。
【0073】
その他、目的とする外来性DNAをさらに高発現させる目的で各DNAのスプライシングシグナル、エンハンサー領域、真核DNAのイントロンの一部などをプロモーター領域の5’上流、プロモーター領域と翻訳領域間あるいは翻訳領域の3’下流に連結することも目的により可能である。
正常な本発明のレセプタータンパク質の翻訳領域は、ヒトまたは各種哺乳動物(例えば、ウサギ、イヌ、ネコ、モルモット、ハムスター、ラット、マウスなど)由来の肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来DNAおよび市販の各種ゲノムDNAライブラリーよりゲノムDNAの全てあるいは一部として、または肝臓、腎臓、甲状腺細胞、線維芽細胞由来RNAより公知の方法により調製された相補DNAを原料として取得することが出来る。また、外来性の異常DNAは、上記の細胞または組織より得られた正常な本発明のレセプタータンパク質の翻訳領域を点突然変異誘発法により変異した翻訳領域を作製することができる。
該翻訳領域は転移動物において発現しうるDNAコンストラクトとして、前記のプロモーターの下流および所望により転写終結部位の上流に連結させる通常のDNA工学的手法により作製することができる。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞のすべてに存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において、本発明の外来性DNAが存在することは、作出動物の後代がすべて、その胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを保持することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞のすべてに本発明の外来性DNAを有する。
本発明の外来性正常DNAを導入した非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して、該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。
受精卵細胞段階における本発明の外来性DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに過剰に存在するように確保される。DNA導入後の作出動物の胚芽細胞において本発明の外来性DNAが過剰に存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫はその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の外来性DNAを過剰に有する。
導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを過剰に有するように繁殖継代することができる。
【0074】
本発明の正常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の正常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を促進することにより最終的に本発明のレセプタータンパク質の機能亢進症を発症することがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の正常DNA導入動物を用いて、本発明のレセプタータンパク質の機能亢進症や、本発明のレセプタータンパク質が関連する疾患の病態機序の解明およびこれらの疾患の治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、本発明の外来性正常DNAを導入した哺乳動物は、遊離した本発明のレセプタータンパク質の増加症状を有することから、本発明のレセプタータンパク質に関連する疾患に対する治療薬のスクリーニング試験にも利用可能である。
一方、本発明の外来性異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、交配により外来性DNAを安定に保持することを確認して該DNA保有動物として通常の飼育環境で継代飼育することが出来る。さらに、目的とする外来DNAを前述のプラスミドに組み込んで原科として用いることができる。プロモーターとのDNAコンストラク卜は、通常のDNA工学的手法によって作製することができる。受精卵細胞段階における本発明の異常DNAの導入は、対象哺乳動物の胚芽細胞および体細胞の全てに存在するように確保される。DNA転移後の作出動物の胚芽細胞において本発明の異常DNAが存在することは、作出動物の子孫が全てその胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有することを意味する。本発明の外来性DNAを受け継いだこの種の動物の子孫は、その胚芽細胞および体細胞の全てに本発明の異常DNAを有する。導入DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得し、この雌雄の動物を交配することによりすべての子孫が該DNAを有するように繁殖継代することができる。
【0075】
本発明の異常DNAを有する非ヒト哺乳動物は、本発明の異常DNAが高発現させられており、内在性の正常DNAの機能を阻害することにより最終的に本発明のレセプタータンパク質の機能不活性型不応症となることがあり、その病態モデル動物として利用することができる。例えば、本発明の異常DNA導入動物を用いて、本発明のレセプタータンパク質の機能不活性型不応症の病態機序の解明およびこの疾患を治療方法の検討を行なうことが可能である。
また、具体的な利用可能性としては、本発明の異常DNA高発現動物は、本発明のレセプタータンパク質の機能不活性型不応症における本発明の異常レセプタータンパク質による正常レセプタータンパク質の機能阻害(dominant negative作用)を解明するモデルとなる。
また、本発明の外来異常DNAを導入した哺乳動物は、遊離した本発明のレセプタータンパク質の増加症状を有することから、本発明のレセプタータンパク質の機能不活性型不応症に対する治療薬スクリーニング試験にも利用可能である。また、上記2種類の本発明のDNA導入動物のその他の利用可能性として、例えば、
▲1▼組織培養のための細胞源としての使用、
▲2▼本発明のDNA転移動物の組織中のDNAもしくはRNAを直接分析するか、またはDNAにより発現された本発明のレセプタータンパク質を分析することによる、本発明のレセプタータンパク質により特異的に発現あるいは活性化する本発明のレセプタータンパク質との関連性についての解析、
▲3▼DNAを有する組織の細胞を標準組織培養技術により培養し、これらを使用して、一般に培養困難な組織からの細胞の機能の研究、
▲4▼上記▲3▼記載の細胞を用いることによる細胞の機能を高めるような薬剤のスクリーニング、および
▲5▼本発明の変異レセプタータンパク質を単離精製およびその抗体作製などが考えられる。
さらに、本発明のDNA導入動物を用いて、本発明のレセプタータンパク質の機能不活性型不応症などを含む、本発明のレセプタータンパク質に関連する疾患の臨床症状を調べることができ、また、本発明のレセプタータンパク質に関連する疾患モデルの各臓器におけるより詳細な病理学的所見が得られ、新しい治療方法の開発、さらには、該疾患による二次的疾患の研究および治療に貢献することができる。
また、本発明のDNA導入動物から各臓器を取り出し、細切後、トリプシンなどのタンパク質分解酵素により、遊離したDNA導入細胞の取得、その培養またはその培養細胞の系統化を行なうことが可能である。さらに、本発明のレセプタータンパク質産生細胞の特定化、アポトーシス、分化あるいは増殖との関連性、またはそれらにおけるシグナル伝達機構を調べ、それらの異常を調べることなどができ、本発明のレセプタータンパク質およびその作用解明のための有効な研究材料となる。
さらに、本発明のDNA導入動物を用いて、本発明のレセプタータンパク質の機能不活性型不応症を含む、本発明のレセプタータンパク質に関連する疾患の治療薬の開発を行なうために、上述の検査法および定量法などを用いて、有効で迅速な該疾患治療薬のスクリーニング法を提供することが可能となる。また、本発明のDNA導入動物または本発明の外来性DNA発現ベクターを用いて、本発明のレセプタータンパク質が関連する疾患のDNA治療法を検討、開発することが可能である。
【0076】
(13)ノックアウト動物
本発明は、本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞および本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を提供する。
すなわち、本発明は、
〔1〕本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞、
〔2〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化された第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔3〕ネオマイシン耐性である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔4〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔1〕項記載の胚幹細胞、
〔5〕ゲッ歯動物がマウスである第〔4〕項記載の胚幹細胞、
〔6〕本発明のDNAが不活性化された該DNA発現不全非ヒト哺乳動物、
〔7〕該DNAがレポーター遺伝子(例、大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子)を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうる第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔8〕非ヒト哺乳動物がゲッ歯動物である第〔6〕項記載の非ヒト哺乳動物、
〔9〕ゲッ歯動物がマウスである第〔8〕項記載の非ヒト哺乳動物、および
〔10〕第〔7〕項記載の動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞とは、該非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAに人為的に変異を加えることにより、DNAの発現能を抑制するか、もしくは該DNAがコードしている本発明のレセプタータンパク質の活性を実質的に喪失させることにより、DNAが実質的に本発明のレセプタータンパク質の発現能を有さない(以下、本発明のノックアウトDNAと称することがある)非ヒト哺乳動物の胚幹細胞(以下、ES細胞と略記する)をいう。
非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNAに人為的に変異を加える方法としては、例えば、遺伝子工学的手法により該DNA配列の一部又は全部の削除、他DNAを挿入または置換させることによって行なうことができる。これらの変異により、例えば、コドンの読み取り枠をずらしたり、プロモーターあるいはエクソンの機能を破壊することにより本発明のノックアウトDNAを作製すればよい。
【0077】
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞(以下、本発明のDNA不活性化ES細胞または本発明のノックアウトES細胞と略記する)の具体例としては、例えば、目的とする非ヒト哺乳動物が有する本発明のDNAを単離し、そのエクソン部分にネオマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子を代表とする薬剤耐性遺伝子、あるいはlacZ(β−ガラクトシダーゼ遺伝子)、cat(クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ遺伝子)を代表とするレポーター遺伝子等を挿入することによりエクソンの機能を破壊するか、あるいはエクソン間のイントロン部分に遺伝子の転写を終結させるDNA配列(例えば、polyA付加シグナルなど)を挿入し、完全なmRNAを合成できなくすることによって、結果的に遺伝子を破壊するように構築したDNA配列を有するDNA鎖(以下、ターゲッティングベクターと略記する)を、例えば相同組換え法により該動物の染色体に導入し、得られたES細胞について本発明のDNA上あるいはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析あるいはターゲッティングベクター上のDNA配列とターゲッティングベクター作製に使用した本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列をプライマーとしたPCR法により解析し、本発明のノックアウトES細胞を選別することにより得ることができる。
また、相同組換え法等により本発明のDNAを不活化させる元のES細胞としては、例えば、前述のような既に樹立されたものを用いてもよく、また公知のEvansとKaufmanの方法に準じて新しく樹立したものでもよい。例えば、マウスのES細胞の場合、現在、一般的には129系のES細胞が使用されているが、免疫学的背景がはっきりしていないので、これに代わる純系で免疫学的に遺伝的背景が明らかなES細胞を取得するなどの目的で例えば、C57BL/6マウスやC57BL/6の採卵数の少なさをDBA/2との交雑により改善したBDFマウス(C57BL/6とDBA/2とのF)を用いて樹立したものなども良好に用いうる。BDFマウスは、採卵数が多く、かつ、卵が丈夫であるという利点に加えて、C57BL/6マウスを背景に持つので、これを用いて得られたES細胞は病態モデルマウスを作出したとき、C57BL/6マウスとバッククロスすることでその遺伝的背景をC57BL/6マウスに代えることが可能である点で有利に用い得る。
また、ES細胞を樹立する場合、一般には受精後3.5日目の胚盤胞を使用するが、これ以外に8細胞期胚を採卵し胚盤胞まで培養して用いることにより効率よく多数の初期胚を取得することができる。
また、雌雄いずれのES細胞を用いてもよいが、通常雄のES細胞の方が生殖系列キメラを作出するのに都合が良い。また、煩雑な培養の手間を削減するためにもできるだけ早く雌雄の判別を行なうことが望ましい。
【0078】
ES細胞の雌雄の判定方法としては、例えば、PCR法によりY染色体上の性決定領域の遺伝子を増幅、検出する方法が、その1例としてあげることができる。この方法を使用すれば、従来、核型分析をするのに約10個の細胞数を要していたのに対して、1コロニー程度のES細胞数(約50個)で済むので、培養初期におけるES細胞の第一次セレクションを雌雄の判別で行なうことが可能であり、早期に雄細胞の選定を可能にしたことにより培養初期の手間は大幅に削減できる。
また、第二次セレクションとしては、例えば、G−バンディング法による染色体数の確認等により行うことができる。得られるES細胞の染色体数は正常数の100%が望ましいが、樹立の際の物理的操作等の関係上困難な場合は、ES細胞の遺伝子をノックアウトした後、正常細胞(例えば、マウスでは染色体数が2n=40である細胞)に再びクローニングすることが望ましい。
このようにして得られた胚幹細胞株は、通常その増殖性は大変良いが、個体発生できる能力を失いやすいので、注意深く継代培養することが必要である。例えば、STO繊維芽細胞のような適当なフィーダー細胞上でLIF(1−10000U/ml)存在下に炭酸ガス培養器内(好ましくは、5%炭酸ガス、95%空気または5%酸素、5%炭酸ガス、90%空気)で約37℃で培養するなどの方法で培養し、継代時には、例えば、トリプシン/EDTA溶液(通常0.001−0.5%トリプシン/0.1−5mM EDTA、好ましくは約0.1%トリプシン/1mM EDTA)処理により単細胞化し、新たに用意したフィーダー細胞上に播種する方法などがとられる。このような継代は、通常1−3日毎に行なうが、この際に細胞の観察を行い、形態的に異常な細胞が見受けられた場合はその培養細胞は放棄することが望まれる。
ES細胞は、適当な条件により、高密度に至るまで単層培養するか、または細胞集塊を形成するまで浮遊培養することにより、頭頂筋、内臓筋、心筋などの種々のタイプの細胞に分化させることが可能であり〔M. J. Evans及びM. H. Kaufman, ネイチャー(Nature)第292巻、154頁、1981年;G. R. Martin プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・ユーエスエー(Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.)第78巻、7634頁、1981年;T. C. Doetschman ら、ジャーナル・オブ・エンブリオロジー・アンド・エクスペリメンタル・モルフォロジー、第87巻、27頁、1985年〕、本発明のES細胞を分化させて得られる本発明のDNA発現不全細胞は、インビトロにおける本発明のレセプタータンパク質または本発明のレセプタータンパク質の細胞生物学的検討において有用である。
【0079】
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、該動物のmRNA量を公知方法を用いて測定して間接的にその発現量を比較することにより、正常動物と区別することが可能である。
該非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものが用いられる。
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、例えば、前述のようにして作製したターゲッティングベクターをマウス胚幹細胞またはマウス卵細胞に導入し、導入によりターゲッティングベクターの本発明のDNAが不活性化されたDNA配列が遺伝子相同組換えにより、マウス胚幹細胞またはマウス卵細胞の染色体上の本発明のDNAと入れ換わる相同組換えをさせることにより、本発明のDNAをノックアウトさせることができる。
本発明のDNAがノックアウトされた細胞は、本発明のDNA上またはその近傍のDNA配列をプローブとしたサザンハイブリダイゼーション解析またはターゲッティングベクター上のDNA配列と、ターゲッティングベクターに使用したマウス由来の本発明のDNA以外の近傍領域のDNA配列とをプライマーとしたPCR法による解析で判定することができる。非ヒト哺乳動物胚幹細胞を用いた場合は、遺伝子相同組換えにより、本発明のDNAが不活性化された細胞株をクローニングし、その細胞を適当な時期、例えば、8細胞期の非ヒト哺乳動物胚または胚盤胞に注入し、作製したキメラ胚を偽妊娠させた該非ヒト哺乳動物の子宮に移植する。作出された動物は正常な本発明のDNA座をもつ細胞と人為的に変異した本発明のDNA座をもつ細胞との両者から構成されるキメラ動物である。該キメラ動物の生殖細胞の一部が変異した本発明のDNA座をもつ場合、このようなキメラ個体と正常個体を交配することにより得られた個体群より、全ての組織が人為的に変異を加えた本発明のDNA座をもつ細胞で構成された個体を、例えば、コートカラーの判定等により選別することにより得られる。このようにして得られた個体は、通常、本発明のレセプタータンパク質のヘテロ発現不全個体であり、本発明のレセプタータンパク質のヘテロ発現不全個体同志を交配し、それらの産仔から本発明のレセプタータンパク質のホモ発現不全個体を得ることができる。
【0080】
卵細胞を使用する場合は、例えば、卵細胞核内にマイクロインジェクション法でDNA溶液を注入することによりターゲッティングベクターを染色体内に導入したトランスジェニック非ヒト哺乳動物を得ることができ、これらのトランスジェニック非ヒト哺乳動物に比べて、遺伝子相同組換えにより本発明のDNA座に変異のあるものを選択することにより得られる。
このようにして本発明のDNAがノックアウトされている個体は、交配により得られた動物個体も該DNAがノックアウトされていることを確認して通常の飼育環境で飼育継代を行なうことができる。
さらに、生殖系列の取得および保持についても常法に従えばよい。すなわち、該不活化DNAの保有する雌雄の動物を交配することにより、該不活化DNAを相同染色体の両方に持つホモザイゴート動物を取得しうる。得られたホモザイゴート動物は、母親動物に対して、正常個体1,ホモザイゴート複数になるような状態で飼育することにより効率的に得ることができる。ヘテロザイゴート動物の雌雄を交配することにより、該不活化DNAを有するホモザイゴートおよびヘテロザイゴート動物を繁殖継代する。
本発明のDNAが不活性化された非ヒト哺乳動物胚幹細胞は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を作出する上で、非常に有用である。
また、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のレセプタータンパク質により誘導され得る種々の生物活性を欠失するため、本発明のレセプタータンパク質の生物活性の不活性化を原因とする疾病のモデルとなり得るので、これらの疾病の原因究明及び治療法の検討に有用である。
【0081】
(14a)本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニング方法
本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物のスクリーニングに用いることができる。
すなわち、本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に試験化合物を投与し、該動物の変化を観察・測定することを特徴とする、本発明のDNAの欠損や損傷などに起因する疾病に対して治療・予防効果を有する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
該スクリーニング方法において用いられる本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記と同様のものがあげられる。
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液、血漿などがあげられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
具体的には、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物を、試験化合物で処理し、無処理の対照動物と比較し、該動物の各器官、組織、疾病の症状などの変化を指標として試験化合物の治療・予防効果を試験することができる。
試験動物を試験化合物で処理する方法としては、例えば、経口投与、静脈注射などが用いられ、試験動物の症状、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。また、試験化合物の投与量は、投与方法、試験化合物の性質などにあわせて適宜選択することができる。
【0082】
該スクリーニング方法において、試験動物に試験化合物を投与した場合、該試験動物の血糖値が約10%以上、好ましくは約30%以上、より好ましくは約50%以上低下した場合、該試験化合物を上記の疾患に対して治療・予防効果を有する化合物として選択することができる。
該スクリーニング方法を用いて得られる化合物は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のレセプタータンパク質の欠損や損傷などによって引き起こされる疾患(例えば、前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石などの疾患に対する予防及び/又は治療薬、または分娩誘発薬など)に対する安全で低毒性な治療・予防剤などの医薬として使用することができる。さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸、有機酸など)や塩基(例、アルカリ金属など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のレセプタータンパク質とリガンドとの結合性を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、該化合物を経口投与する場合、一般的に例えば、前立腺癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、前立腺癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0083】
(14b)本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物をスクリーニング方法
本発明は、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物に、試験化合物を投与し、レポーター遺伝子の発現を検出することを特徴とする本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩のスクリーニング方法を提供する。
上記スクリーニング方法において、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物としては、前記した本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物の中でも、本発明のDNAがレポーター遺伝子を導入することにより不活性化され、該レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの制御下で発現しうるものが用いられる。
試験化合物としては、前記と同様のものがあげられる。
レポーター遺伝子としては、前記と同様のものが用いられ、β−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)、可溶性アルカリフォスファターゼ遺伝子またはルシフェラーゼ遺伝子などが好適である。
本発明のDNAをレポーター遺伝子で置換された本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物では、レポーター遺伝子が本発明のDNAに対するプロモーターの支配下に存在するので、レポーター遺伝子がコードする物質の発現をトレースすることにより、プロモーターの活性を検出することができる。
例えば、本発明のレセプタータンパク質をコードするDNA領域の一部を大腸菌由来のβ−ガラクトシダーゼ遺伝子(lacZ)で置換している場合、本来、本発明のレセプタータンパク質の発現する組織で、本発明のレセプタータンパク質の代わりにβ−ガラクトシダーゼが発現する。従って、例えば、5−ブロモ−4−クロロ−3−インドリル−β−ガラクトピラノシド(X−gal)のようなβ−ガラクトシダーゼの基質となる試薬を用いて染色することにより、簡便に本発明のレセプタータンパク質の動物生体内における発現状態を観察することができる。具体的には、本発明のレセプタータンパク質欠損マウスまたはその組織切片をグルタルアルデヒドなどで固定し、リン酸緩衝生理食塩液(PBS)で洗浄後、X−galを含む染色液で、室温または37℃付近で、約30分ないし1時間反応させた後、組織標本を1mM EDTA/PBS溶液で洗浄することによって、β−ガラクトシダーゼ反応を停止させ、呈色を観察すればよい。また、常法に従い、lacZをコードするmRNAを検出してもよい。
上記スクリーニング方法を用いて得られる化合物またはその塩は、上記した試験化合物から選ばれた化合物であり、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物である。
該スクリーニング方法で得られた化合物は塩を形成していてもよく、該化合物の塩としては、生理学的に許容される酸(例、無機酸など)や塩基(例、有機酸など)などとの塩が用いられ、とりわけ生理学的に許容される酸付加塩が好ましい。この様な塩としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、硫酸など)との塩、あるいは有機酸(例えば、酢酸、ギ酸、プロピオン酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、蓚酸、安息香酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸など)との塩などが用いられる。
【0084】
本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進する化合物またはその塩は、本発明のレセプタータンパク質の発現を促進し、該レセプタータンパク質の機能を促進することができるので、例えば、本発明のレセプタータンパク質の機能不全に関連する疾患などの予防及び/又は治療薬などの医薬として有用である。
本発明のDNAに対するプロモーター活性を阻害する化合物またはその塩は、本発明のレセプタータンパク質の発現を阻害し、該レセプタータンパク質の機能を阻害することができるので、例えば、本発明のレセプタータンパク質の発現過多に関連する疾患などの予防及び/又は治療薬などの医薬として有用である。
具体的には、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物は、例えば、前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石などの予防及び/又は治療薬、または分娩誘発薬として有用である。
さらに、上記スクリーニングで得られた化合物から誘導される化合物も同様に用いることができる。
【0085】
該スクリーニング方法で得られた化合物またはその塩を含有する医薬は、前記した本発明のレセプタータンパク質またはその塩とリガンドとの結合性を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製造することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
該化合物またはその塩の投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、本発明のDNAに対するプロモーター活性を促進または阻害する化合物を経口投与する場合、一般的に例えば、前立腺癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、前立腺癌患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
このように、本発明のDNA発現不全非ヒト哺乳動物は、本発明のDNAに対するプロモーターの活性を促進または阻害する化合物またはその塩をスクリーニングする上で極めて有用であり、本発明のDNA発現不全に起因する各種疾患の原因究明または予防及び/又は治療薬の開発に大きく貢献することができる。
また、本発明のレセプタータンパク質のプロモーター領域を含有するDNAを使って、その下流に種々のタンパクをコードする遺伝子を連結し、これを動物の卵細胞に注入していわゆるトランスジェニック動物(遺伝子導入動物)を作成すれば、特異的にそのレセプタータンパク質を合成させ、その生体での作用を検討することも可能となる。さらに上記プロモーター部分に適当なレポータ遺伝子を結合させ、これが発現するような細胞株を樹立すれば、本発明のレセプタータンパク質そのものの体内での産生能力を特異的に促進もしくは抑制する作用を持つ低分子化合物の探索系として使用できる。
【0086】
さらに、上記の本発明の遺伝子発現解析方法を用いた結果、EDG−1レセプターが血管内皮細胞で高発現していること、およびEDG−2レセプターが血管平滑筋細胞で高発現していることが明らかになった。したがって、血管内皮細胞はEDG−1レセプターアゴニストまたはアンタゴニスト、特に動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防及び/又は治療薬となるEDG−1レセプターアゴニストのスクリーニングに有用であり、血管平滑筋細胞はEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニスト、特に動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防及び/又は治療薬となるEDG−2レセプターアンタゴニストのスクリーニングに有用であることが分かった。
以下に、本発明のEDG−1レセプターアゴニスト・アンタゴニストまたはEDG−2レセプターアゴニスト・アンタゴニストのスクリーニング方法について説明する。
【0087】
本発明で用いられるEDG−1レセプターは、配列番号:38で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプターである。なお、配列番号:38で表わされるアミノ酸配列を有するEDG−1レセプターは、(Genbank accession 番号 AAA52336)に記載されているタンパク質と同一のアミノ酸配列を有する。
本発明で用いられるEDG−2レセプターは、配列番号:40で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプターである。なお、配列番号:40で表わされるアミノ酸配列を有するEDG−2レセプターは、(Genbank accession 番号 U80811)に記載されているタンパク質と同一のアミノ酸配列を有する。
「実質的に同一のアミノ酸配列」とは、比較するアミノ酸配列に対して、例えば、約50%以上、好ましくは約60%以上、より好ましくは約70%以上、さらに好ましくは約80%以上、なかでも好ましくは約90%以上、最も好ましくは約95%以上の相同性を有するアミノ酸配列をいう。
配列番号:38で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、配列番号:38で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:38で表わされるアミノ酸配列を含有するEDG−1レセプターと実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
配列番号:40で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質としては、例えば、配列番号:40で表わされるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含有し、配列番号:40で表わされるアミノ酸配列を含有するEDG−2レセプターと実質的に同質の活性を有するタンパク質などが好ましい。
実質的に同質の活性としては、例えば、リガンド結合活性、シグナル情報伝達作用などが挙げられる。実質的に同質とは、それらの活性が性質的に同質であることを示す。したがって、リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性が同等(例、約0.01〜100倍、好ましくは約0.5〜20倍、より好ましくは約0.5〜2倍)であることが好ましいが、これらの活性の程度やタンパク質の分子量などの量的要素は異なっていてもよい。
リガンド結合活性やシグナル情報伝達作用などの活性の測定は、公知の方法に準じて行なうことができるが、例えば、後に記載するリガンドの決定方法やスクリーニング方法に従って測定することができる。
【0088】
また、EDG−1レセプターとしては、(1)配列番号:38で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:38で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(3)配列番号:38で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(4)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質なども用いられる。
EDG−2レセプターとしては、(1)配列番号:40で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が欠失したアミノ酸配列、(2)配列番号:40で表わされるアミノ酸配列に1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が付加したアミノ酸配列、(3)配列番号:40で表わされるアミノ酸配列中の1または2個以上(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは数個(1〜5個))のアミノ酸が他のアミノ酸で置換されたアミノ酸配列、または(4)それらを組み合わせたアミノ酸配列を含有するタンパク質なども用いられる。
【0089】
EDG−1レセプターおよびEDG−2レセプターは、ペプチド標記の慣例に従って、左端がN末端(アミノ末端)、右端がC末端(カルボキシル末端)である。本発明のレセプタータンパク質は、C末端がカルボキシル基(−COOH)、カルボキシレート(−COO)、アミド(−CONH)またはエステル(−COOR)の何れであってもよい。
ここでエステルにおけるRとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピルもしくはn−ブチルなどのC1−6アルキル基、例えば、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのC3−8シクロアルキル基、例えば、フェニル、α−ナフチルなどのC6−12アリール基、例えば、ベンジル、フェネチルなどのフェニル−C1−2アルキル基もしくはα−ナフチルメチルなどのα−ナフチル−C1−2アルキル基などのC7−14アラルキル基のほか、経口用エステルとして汎用されるピバロイルオキシメチル基などが用いられる。
EDG−1レセプターおよびEDG−2レセプターがC末端以外にカルボキシル基(またはカルボキシレート)を有している場合、カルボキシル基がアミド化またはエステル化されているものもEDG−1レセプターおよびEDG−2レセプターに含まれる。この場合のエステルとしては、例えば上記したC末端のエステルなどが用いられる。
さらに、EDG−1レセプターおよびEDG−2レセプターには、上記したEDG−1レセプターおよびEDG−2レセプターにおいて、N末端のメチオニン残基のアミノ基が保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、N端側が生体内で切断され生成したグルタミル基がピログルタミン酸化したもの、分子内のアミノ酸の側鎖上の置換基(例えば、−OH、−SH、アミノ基、イミダゾール基、インドール基、グアニジノ基など)が適当な保護基(例えば、ホルミル基、アセチルなどのC2−6アルカノイル基などのC1−6アシル基など)で保護されているもの、あるいは糖鎖が結合したいわゆる糖タンパク質などの複合タンパク質なども含まれる。
EDG−1レセプターの具体例としては、例えば、配列番号:38で表わされるアミノ酸配列からなるレセプタータンパク質などが挙げられる。
EDG−2レセプターの具体例としては、例えば、配列番号:40で表わされるアミノ酸配列からなるレセプタータンパク質などが挙げられる。
【0090】
本発明のEDG−1レセプターアゴニスト・アンタゴニストのスクリーング方法では、他の細胞または組織と比較して、EDG−1レセプターを極めて高発現している血管内皮細胞を用いることを特徴とする。
一方、EDG−2レセプターアゴニスト・アンタゴニストのスクリーング方法では、他の細胞または組織と比較して、EDG−2レセプターを極めて高発現している血管平滑筋細胞を用いることを特徴とする。
EDG−1レセプターに対するリガンドとしては、EDG−1レセプターに結合する化合物であれば特に限定されないが、例えば、Sphingosine−1−phosphate(S1P)などが用いられる。以下、EDG−1レセプターに結合する化合物を単にEDG−1と略載する。
EDG−2レセプターに対するリガンドとしては、EDG−2レセプターに結合する化合物であれば特に限定されないが、例えば、lysophosphatidic acid(LPA)などが用いられる。以下、EDG−2レセプターに結合する化合物を単にEDG−2と略載する。
【0091】
具体的には、本発明のスクリーニング方法は、
(1)(i)EDG−1と血管内皮細胞を接触させた場合と(ii)EDG−1と試験化合物を血管内皮細胞とを接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするEDG−1レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法A、および
(2)(i)EDG−2と血管平滑筋細胞を接触させた場合と(ii)EDG−2と試験化合物を血管平滑筋細胞とを接触させた場合との比較を行なうことを特徴とするEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法Bを提供する。
本発明のスクリーニング方法Aにおいては、(i)と(ii)の場合における、例えば、血管内皮細胞のアラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、一酸化炭素産生、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性などを測定して、比較することを特徴とする。
本発明のスクリーニング方法Bにおいては、(i)と(ii)の場合における、例えば、血管平滑筋細胞のアラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、一酸化炭素産生、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性などを測定して、比較することを特徴とする。
【0092】
より具体的には、本発明のスクリーング方法Aは、
(1a)試験化合物を血管内皮細胞に接触させた場合における血管内皮細胞の細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、一酸化炭素産生、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下を測定し、上記活性が例えば10%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上上昇している試験化合物を選択することを特徴とするEDG−1レセプターアゴニストのスクリーニング方法、
(1b)EDG−1を血管内皮細胞に接触させた場合に比べて、EDG−1および試験化合物を血管内皮細胞に接触させた場合における血管内皮細胞の細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、一酸化炭素産生、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下を測定し、上記活性が例えば10%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上上昇している試験化合物を選択することを特徴とするEDG−1レセプターアゴニストのスクリーニング方法、または
(1c)EDG−1を血管内皮細胞に接触させた場合に比べて、EDG−1および試験化合物を血管内皮細胞に接触させた場合における血管内皮細胞の細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、一酸化炭素産生、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下を測定し、上記活性が例えば10%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上減少している試験化合物を選択することを特徴とするEDG−1レセプターアンタゴニストのスクリーニング方法である。
一方、本発明のスクリーング方法Bは、
(2a)試験化合物を血管平滑筋細胞に接触させた場合における血管平滑筋細胞の細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、一酸化炭素産生、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下を測定し、上記活性が例えば10%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上上昇している試験化合物を選択することを特徴とするEDG−2レセプターアゴニストのスクリーニング方法、
(2b)EDG−1を血管平滑筋細胞に接触させた場合に比べて、EDG−1および試験化合物を血管平滑筋細胞に接触させた場合における血管平滑筋細胞の細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、一酸化炭素産生、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下を測定し、上記活性が例えば10%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上上昇している試験化合物を選択することを特徴とするEDG−2レセプターアゴニストのスクリーニング方法、または
(2c)EDG−2を血管平滑筋細胞に接触させた場合に比べて、EDG−2および試験化合物を血管平滑筋細胞に接触させた場合における血管平滑筋細胞のアラキドン酸遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、細胞増殖、遊走活性、低分子量Gタンパク質RhoやRacの活性化、ホスファチジルイノシトール(PI)3キナーゼ活性、pHの低下を測定し、上記活性が例えば10%以上、好ましくは30%以上、特に好ましくは50%以上減少している試験化合物を選択することを特徴とするEDG−2レセプターアンタゴニストのスクリーニング方法である。
【0093】
試験化合物としては、例えば、ペプチド、タンパク質、非ペプチド性化合物、合成化合物、発酵生産物、細胞抽出液、植物抽出液、動物組織抽出液などが用いられ、これら化合物は新規な化合物であってもよいし、公知の化合物であってもよい。
また、スクリーニング方法Aの試験化合物としては、EDG−1とEDG−1レセプターとの結合性を変化させる化合物を用い、本発明のスクリーニング方法Aを該化合物の2次評価系として使用するのが好ましい。
一方のスクリーニング方法Bの試験化合物としては、EDG−2とEDG−2レセプターとの結合性を変化させる化合物を用い、本発明のスクリーニング方法Bを2次評価系として使用するのが好ましい。
EDG−1とEDG−1レセプターとの結合性を変化させる化合物またはEDG−2とEDG−2レセプターとの結合性を変化させる化合物のスクリーニングは、前述したdj287G14.2レセプタータンパク質とそのリガンドとの結合性を変化させる化合物のスクリーニング方法に準じて実施することができる。
【0094】
本発明のスクリーニング方法の具体的な説明を以下にする。
血管内皮細胞または血管平滑筋細胞は、ヒトやその他の哺乳動物(例えば、モルモット、ラット、マウス、ウサギ、ブタ、ヒツジ、ウシ、サルなど)の血管から自体公知の方法に準じて調製することができる。
血管内皮細胞の培養は、例えば、(Cell 1999 Oct 29;99(3):301−12)に記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って行うことができる。
または血管平滑筋細胞の培養は、例えば、(Cardiovasc Res 1996 Sep;32(3):516−23)に記載の方法あるいはそれに準じる方法に従って行うことができる。
具体的には、本発明のスクリーニング方法を実施するためには、血管内皮細胞または血管平滑筋細胞のアラキドン酸遊離、アセチルコリン遊離、細胞内Ca2+遊離、細胞内cAMP生成、細胞内cAMP抑制、細胞内cGMP生成、イノシトールリン酸産生、細胞膜電位変動、細胞内タンパク質のリン酸化、c−fosの活性化、pHの低下などを促進する活性または抑制する活性などを公知の方法または市販の測定用キットを用いて測定することができる。
具体的には、まず、血管内皮細胞または血管平滑筋細胞をマルチウェルプレート等に培養する。スクリーニングを行なうにあたっては前もって新鮮な培地あるいは細胞に毒性を示さない適当なバッファーに交換し、試験化合物などを添加して一定時間インキュベートした後、細胞を抽出あるいは上清液を回収して、生成した産物をそれぞれの方法に従って定量する。細胞刺激活性の指標とする物質(例えば、アラキドン酸など)の生成が、細胞が含有する分解酵素によって検定困難な場合は、該分解酵素に対する阻害剤を添加してアッセイを行なってもよい。また、cAMP産生抑制などの活性については、フォルスコリンなどで細胞の基礎的産生量を増大させておいた細胞に対する産生抑制作用として検出することができる。
【0095】
EDG−1レセプターアゴニスト・アンタゴニストまたはEDG−2レセプターアゴニスト・アンタゴニストのスクリーニング用キットは、血管内皮細胞または血管平滑筋細胞を含有するものである。
本発明のスクリーニング用キットの例としては、次のものが挙げられる。
1.スクリーニング用試薬
(1)測定用緩衝液および洗浄用緩衝液
Hanks’ Balanced Salt Solution(ギブコ社製)に、0.05%のウシ血清アルブミン(シグマ社製)を加えたもの。
孔径0.45μmのフィルターで濾過滅菌し、4℃で保存するか、あるいは用時調製しても良い。
(2)血管内皮細胞または血管平滑筋細胞
血管内皮細胞または血管平滑筋細胞を12穴プレートに5×10個/穴で継代し、37℃、5%CO、95%airで2日間培養したもの。
(3)リガンド標準液
EDG−1またはEDG−2を0.1%ウシ血清アルブミン(シグマ社製)を含むPBSで1mMとなるように溶解し、−20℃で保存する。
【0096】
本発明のスクリーニング方法Aまたはスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニストは、EDG−1が有する生理活性と同様の作用を有しているので、該生理活性に応じて安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のスクリーニング方法Aまたはスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアンタゴニストは、EDG−1が有する生理活性を抑制することができるので、該生理活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のスクリーニング方法Aまたはスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアゴニストは、EDG−2が有する生理活性と同様の作用を有しているので、該生理活性に応じて安全で低毒性な医薬として有用である。
本発明のスクリーニング方法Bまたはスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアンタゴニストは、EDG−2が有する生理活性を抑制することができるので、該生理活性を抑制する安全で低毒性な医薬として有用である。
具体的には、本発明のスクリーニング方法またはスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニストとEDG−2レセプターアンタゴニストは、例えば、動脈硬化、心筋梗塞、脳梗塞、虚血性心疾患などの疾患に対する予防及び/又は治療薬として有用である。
EDG−1レセプターアゴニスト・アンタゴニストまたはEDG−2レセプターアゴニスト・アンタゴニストを上記疾患の予防および/または治療剤として使用する場合は、前記したdj287G14.2レセプタータンパク質とリガンドとの結合性を変化させる化合物を含有する医薬と同様にして製剤化することができる。
このようにして得られる製剤は、安全で低毒性であるので、例えば、ヒトまたは哺乳動物(例えば、ラット、マウス、モルモット、ウサギ、ヒツジ、ブタ、ウシ、ウマ、ネコ、イヌ、サルなど)に対して投与することができる。
EDG−1レセプターアゴニストまたはEDG−2レセプターアンタゴニストの投与量は、対象疾患、投与対象、投与ルートなどにより差異はあるが、例えば、EDG−1レセプターアゴニストまたはEDG−2レセプターアンタゴニストを経口投与する場合、一般的に例えば、動脈硬化患者(60kgとして)においては、一日につき約0.1〜100mg、好ましくは約1.0〜50mg、より好ましくは約1.0〜20mgである。非経口的に投与する場合は、その1回投与量は投与対象、対象臓器、症状、投与方法などによっても異なるが、例えば、注射剤の形では通常例えば、動脈硬化患者(60kgとして)においては、一日につき約0.01〜30mg程度、好ましくは約0.1〜20mg程度、より好ましくは約0.1〜10mg程度を静脈注射により投与するのが好都合である。他の動物の場合も、60kg当たりに換算した量を投与することができる。
【0097】
(略号の表示)
本明細書において、塩基、アミノ酸、化合物等を略号で表示する場合、IUPAC−IUB Commission on Biochemical Nomenclatureによる略号あるいは当該分野における慣用略号に基づき表示を行い、その例を以下に記載する。またアミノ酸が光学異性体を取りうる場合、特に明示しなければL体を表す。
DNA :デオキシリボ核酸
cDNA :相補的デオキシリボ核酸
aまたはA :アデニン
tまたはT :チミン
gまたはG :グアニン
cまたはC :シトシン
uまたはU :ウラシル
RNA :リボ核酸
mRNA :メッセンジャーリボ核酸
dATP :デオキシアデノシン三リン酸
dTTP :デオキシチミジン三リン酸
dGTP :デオキシグアノシン三リン酸
dCTP :デオキシシチジン三リン酸
ATP :アデノシン三リン酸
Gly :グリシン
Ala :アラニン
Val :バリン
Leu :ロイシン
Ile :イソロイシン
Ser :セリン
Thr :スレオニン
Cys :システイン
Met :メチオニン
Glu :グルタミン酸
Asp :アスパラギン酸
Lys :リジン
Arg :アルギニン
His :ヒスチジン
Phe :フェニルアラニン
Tyr :チロシン
Trp :トリプトファン
Pro :プロリン
Asn :アスパラギン
Gln :グルタミン
pGlu :ピログルタミン酸
【0098】
本明細書の配列表記載の配列は以下のとおりである。
[配列番号:1]hORL1の塩基配列を表す。
[配列番号:2]実施例1で用いた上流プライマーM−572Fの塩基配列を表す。
[配列番号:3]実施例1で用いた下流プライマーM−714Rの塩基配列を表す。
[配列番号:4]実施例1で用いたプローブM−658Tの塩基配列を表す。
[配列番号:5]実施例2および3で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:6]実施例2および3で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:7]実施例2および3で用いたプローブの塩基配列を表す。
[配列番号:8]ヒト型dj287G14.2レセプターをコードするDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:9]ヒト型dj287G14.2レセプターのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:10]実施例2で得られたcDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:11]参考例1のPCRに用いたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:12]参考例1のPCRに用いたプライマーの塩基配列を示す。
[配列番号:13]マウス型dj287G14.2レセプターAのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:14]マウス型dj287G14.2レセプターAをコードするDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:15]マウス型dj287G14.2レセプターBのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:16]マウス型dj287G14.2レセプターBをコードするDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:17]マウス型dj287G14.2レセプターCのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:18]マウス型dj287G14.2レセプターCをコードするDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:19]マウス型dj287G14.2レセプターDのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:20]マウス型dj287G14.2レセプターDをコードするDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:21]マウス型dj287G14.2レセプターEのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:22]マウス型dj287G14.2レセプターEをコードするDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:23]マウス型dj287G14.2レセプターFのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:24]マウス型dj287G14.2レセプターFをコードするDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:25]マウス型dj287G14.2レセプターGのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:26]マウス型dj287G14.2レセプターGをコードするDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:27]マウス型dj287G14.2レセプターHのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:28]マウス型dj287G14.2レセプターHをコードするDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:29]実施例6で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:30]実施例6で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:31]実施例6で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:32]実施例6で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:33]実施例6で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:34]実施例6で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:35]実施例6で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:36]実施例6で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:37]実施例6で用いたプライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:38]ヒトEDG−1レセプターのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:39]ヒトEDG−1レセプターのアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:40]ヒトEDG−2レセプターのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:41]ヒトEDG−2レセプターのアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:42]ヒトEDG−3レセプターのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:43]ヒトEDG−3レセプターのアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:44]ヒトEDG−4レセプターのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:45]ヒトEDG−4レセプターのアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:46]ヒトEDG−5レセプターのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:47]ヒトEDG−5レセプターのアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:48]ヒトEDG−6レセプターのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:49]ヒトEDG−6レセプターのアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:50]ヒトEDG−7レセプターのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:51]ヒトEDG−7レセプターのアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:52]ヒトEDG−8レセプターのアミノ酸配列を表す。
[配列番号:53]ヒトEDG−8レセプターのアミノ酸配列をコードするcDNAの塩基配列を表す。
[配列番号:54]実施例7で用いたヒトEDG−1レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:55]実施例7で用いたヒトEDG−1レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:56]実施例7で用いたヒトEDG−1レセプター用プローブの塩基配列を表す。
[配列番号:57]実施例7で用いたヒトEDG−2レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:58]実施例7で用いたヒトEDG−2レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:59]実施例7で用いたヒトEDG−2レセプター用プローブの塩基配列を表す。
[配列番号:60]実施例7で用いたヒトEDG−3レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:61]実施例7で用いたヒトEDG−3レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:62]実施例7で用いたヒトEDG−3レセプター用プローブの塩基配列を表す。
[配列番号:63]実施例7で用いたヒトEDG−4レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:64]実施例7で用いたヒトEDG−4レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:65]実施例7で用いたヒトEDG−4レセプター用プローブの塩基配列を表す。
[配列番号:66]実施例7で用いたヒトEDG−5レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:67]実施例7で用いたヒトEDG−5レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:68]実施例7で用いたヒトEDG−5レセプター用プローブの塩基配列を表す。
[配列番号:69]実施例7で用いたヒトEDG−6レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:70]実施例7で用いたヒトEDG−6レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:71]実施例7で用いたヒトEDG−6レセプター用プローブの塩基配列を表す。
[配列番号:72]実施例7で用いたヒトEDG−7レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:73]実施例7で用いたヒトEDG−7レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:74]実施例7で用いたヒトEDG−7レセプター用プローブの塩基配列を表す。
[配列番号:75]実施例7で用いたヒトEDG−8レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:76]実施例7で用いたヒトEDG−8レセプター用プライマーの塩基配列を表す。
[配列番号:77]実施例7で用いたヒトEDG−8レセプター用プローブの塩基配列を表す。
【0099】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、これは本発明の範囲を限定するものではない。
実施例1
この実施例においては、ヒト成人正常脳由来のmRNA試料を用い、TaqMan法によって、この試料中の、標的Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子由来mRNAの有無及びその産生量を定量し、標的Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子の発現レベルを解析する。本例においては、384穴プレートを用いて、192種の標的Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子の発現を解析する。標的GPCR遺伝子として、例えばORL; M; M; M; M; M; A; A2A; A2B; A;α1A; α1B; α1D; α2A; α2B; α2C; β1; β2; β3;AT1; AT2;BB1; BB2;bb3;B; B;CB1;CB2;CCR1; CCR2; CCR3; CCR4; CCR5; CCR6; CCR7; CCR8; CCR9; CCR10; CXCR1; CXCR2; CXCR3; CXCR4; CXCR5; CXCR1; XCR1; C3a; C5a; fMLP;CCK; CCK;CRF; CRF;D1; D2; D3; D4; D5;ET; ET;GAL1; GAL2; GAL3;mglu; mglu; mglu; mglu; mglu; mglu; mglu; mglu;FSH; LSH; TSH;H; H; H; H;5−HT1A; 5−HT1B; 5−HT1D; 5−ht1B; 5−ht1F;5−HT2A; 5−HT2F; 5−HT2C; 5−HT; 5−HT; 5−ht5A; 5−ht5B; 5−HT; 5−HT; BLT: CysLT; CysLT;edg1; edg2; edg3; edg4; MC; MC; MC; MC; MC;MT; MT; MT;Y; Y; Y; Y; Y;NTS1; NTS2;DOP; KOP; MOP; NOP; P2Y; P2Y; P2Y; P2Y; P2Y11; P2Y12;PPAR−α; PPAR−β; PPAR−γ;DP; FP; IP; TP; EP; EP; EP; EP;PAR1; PAR2; PAR3; PAR4;sst; sst; sst; sst; sst;NK; NK; NK;TRH; TRH;VPAC; VPAC; PAC;V1a; V1b; V; OT; Naチャネル(タイプI; タイプII/タイプIIA; タイプIII; SCL11/NaG; PN1; NaCh6; NaDRG; SkM1/μ1, SkM2);Kチャネル(Kv; EAG; KQT; IRK; ROMK; GIRK; KATP等);Ca2+チャネル(α1G; α1E; α1S: α1C; α1D; α1B; α1A; IP3; リアノジンレセプターなど);Clチャネル(GABA; GABA; グリシンレセプター;C1C0; C1C1; CFTRなど);非選択性カチオンチャネル(nAChR; 5−HT; NMDA; AMPA; P2XATP; CNGなど)などから選択される。
【0100】
(1)試料
増幅は、以下の試料を用いて行う。
まず、hORL1 mRNA(配列番号1:hGPCR mRNAの一種、GenBankアクセッション番号 X77130)用試料の調製について記載する。
(hORL1 mRNA定量用試料)
hORL1ポジティブコントロールcDNAの連続希釈溶液。
25ngのヒト成人正常脳由来の全RNA。
本件のヒト成人正常脳は、hORL1 mRNAを発現することが知られている。
(hORL1 mRNA定量用増幅プライマーおよび検出プローブ)
hORL1 mRNAの領域の増幅は、上流プライマーM−572F(配列番号:2)および下流プライマーM−714R(配列番号:3)を用いて行った。上流プライマーM−572Fは、hORL1 mRNA内の749−771位の相補配列にハイブリダイズし、下流プライマーM−714Rは、hORL1 mRNA内の869−891位の配列にハイブリダイズする。これらのプライマーにより、完全長のhORL1 mRNA配列の一部を含む、143塩基対の生成物が増幅される。
検出は、M−658T(配列番号:4)を用いて行う。このプローブは、hORL1 mRNA内の835−860位の相補配列にハイブリダイズする。
TaqMan形式での検出を可能にするために、前記プローブM−658Tは、5’端をフルオレセイン型の蛍光色素(FAM:リポーター)で、3’端をローダミン型の蛍光色素(TAMRA:クェンチャー)で標識する。
標識したプローブは、ハイブリダイズしない状態の場合には、蛍光共鳴エネルギーの移動現象により、リポーターの蛍光は抑制される。DNAポリメラーゼによる前記プローブの伸長を、増幅の間防ぐために、前記プローブの3’末端はリン酸ブロックで合成する。
(hORL1 mRNA以外の標的mRNA定量用試料)
上記hORL1 mRNAの場合と同様にして、残りの191種の標的mRNA定量用試料を調製する。
【0101】
(2)増幅
各々のPCR増幅は、TaqMan(商標)EZ RT−PCR Kit(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)を用いて、20μlの合計反応液量で行う。最終試薬濃度を以下の様にする:試料遺伝子、50mM Bicine、pH8.2、115mM KOAc、0.01mM EDTA、60nM ROX、8%(W/V)グリセロール、3mM Mn(OAc)、300μM dATP,dGTP,dCTP、600μM dUTP、900nM 各プライマー、250nM プローブ、0.5ユニット AmpErase UNG、5ユニット rTth DNAポリメラーゼ。
増幅反応は、ABI PRIZM(商標)7900HT配列検出システム(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)を用い、下記のような温度周期プロファイルで増幅反応を行う。
サーマルサイクリングの時間及び温度
反応前のインキュベーション:50℃で2分間、逆転写:60℃で30分間、不活性化:95℃で5分間、変性・アニール/伸長:40サイクル:94℃で20秒間、62℃で1分間。
【0102】
(3)定量的TaqMan解析
TaqMan反応において、増幅の間に、前記DNAポリメラーゼの5’→3’エキソヌクレアーゼ活性により、前記標的配列にハイブリダイズするプローブは5’末端から加水分解される。その結果、リポーター蛍光色素は遊離し、蛍光強度が増加する。
増幅生成物の蓄積は、反応液中のリポーター蛍光色素の蛍光強度の増加を測定することによって測定する。また同時に、反応液の実験誤差補正用の蛍光リファレンス(蛍光色素:ROX)の蛍光強度も測定する。各々の増幅サイクルの間、前記リポーター蛍光色素およびリファレンス蛍光色素は、その最大の励起に近い波長の光で励起し、そして前記リポーター蛍光色素およびリファレンス蛍光色の発光は、その発光の最大付近で測定される。これらの周波数は、ABI PRIZM(商標)7900HT配列検出システムであらかじめ決定され、別の検出機器を使用したならば、適当な周波数を選択すべきである。
蛍光測定値は、7900HT SDSソフトウェア(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)により解析した。まず、リポーター蛍光色素の蛍光強度をリファレンス蛍光色素の蛍光強度で標準化し、標準化リポーターシグナル(Rn)を算出した。更に、RnからPCR初期サイクルのサイクルの間で比較的一定なRnの平均値(ベースライン)を差し引いた値をΔRnとする。サイクル数に対してΔRnをプロットした増幅曲線上で、増幅産物の指数関数的増幅に相当する蛍光シグナル(ΔRn)の増加を解析アルゴリズムが初めて検出したサイクル数をThreshold Cycle(C)とする。具体的には、このCを決定するために、増幅産物の指数関数的増幅に至っていないと考えられるPCR初期サイクル(3−15サイクル)をベースラインとして、このサイクル内の平均ΔRnの標準偏差を計算した。次にこの標準偏差を10倍した値をThresholdと定義し、各増幅曲線上でこのThresholdの値に相当するサイクル数をCとする。
増幅産物の指数関数的増幅期の間、Cは最初の標的コピー数の対数に比例する。後期のサイクルにおける増幅生成物の蓄積は反応を阻害し、そしてついには反応のプラトーをもたらす。
【0103】
(5)結果
hORL1mRNA定量用の各試料から、例えば、次のようなC値が得られる。各C値は、複数回(例えば4回)の反応から得られる平均値を表わす。
(コントロール試料) (C値)
10コピーのhORL1ポジティブコントロール 21.1、
10コピーのhORL1ポジティブコントロール 24.4、
10コピーのhORL1ポジティブコントロール 27.5、
10コピーのhORL1ポジティブコントロール 30.8、
10コピーのhORL1ポジティブコントロール 33.9、
コピーのhORL1ポジティブコントロール 40.0。
(ヒト成人正常脳由来の試料) (C値)
25ngのヒト成人正常脳由来の全RNA 27.2
【0104】
検量線は、既知量のhORL1 cDNAポジティブコントロールの鋳型(標準サンプル)の増幅から得たC値から導かれる。具体的には標準サンプルの初期既知量(対数値)に対してCをプロットし、検量線を作成する。近似曲線にはC=(Log[DNA]−Log[DNA])/Log(1+e)(ここで、[DNA]は標的テンプレートの初期濃度であり、[DNA]はCサイクル時の増幅産物の濃度であり、eは平均増幅効率であり、そしてLog(X)はXが10の底を表す対数である)の一次方程式を用い、7900HT SDSソフトウェアにより、パラメーターを定める。
前記のコントロール試料から得たC値から、以下の検量線が得られる:
=40.83−3.307*Log[DNA]
前記ヒト成人正常脳由来の試料の投入時のコピー数の計算は、既知のコントロールの鋳型から作製した検量線を用いて行う。mRNAの濃度は、計算したコピー数を試料のサイズで割ることで得られる。
上述した標準曲線を用いて、hORL1 mRNAの濃度(全RNAのng当たりのhORL1 mRNAのコピー数)を、前記の組織試料に対して計算すると、次の結果が得られる。
計算したhORL1濃度(コピー数/ng)
(試料) hORL1濃度
25ngのヒト成人正常脳由来の全RNA 1.04*10
以下、同様にして、他の標的Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子mRNAの産生量が定量される。そして、全ての標的Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子mRNAの産生量を比較することによって、ヒト成人正常脳における各標的Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャネルなどのファミリーに属する遺伝子の発現量を解析する。
【0105】
実施例2 前立腺癌細胞におけるdj287G14.2の発現解析
(細胞および培地)
PrECは宝酒造から購入した。LNCaP−FGCは大日本製薬から購入した。PC−3およびDu145細胞はATCCから購入した。PrECは前立腺上皮細胞培地キット(宝酒造)を用いて培養した。LNCaP−FGCは10%FCSを含むRPMI−1640(Invitrogen社)で、PC−3およびDu145細胞はそれぞれ10% FCSを含むHams F12 K(Invitrogen社)、10% FCS、2mM L−グルタミン、Eagle BSS、非必須アミノ酸を加えたMinimum essential medium Eagle(いずれもInvitrogen社)で培養した。
(RNAの抽出およびcDNA合成)
それぞれの細胞をプレコンフルエントになるまで培養した。細胞を0.25%トリプシン−1mM EDTA(Invitrogen 社)ではがし細胞数を測定した後、RNeasy mini KIT(QIAGEN社)のマニュアルに従って全RNAを抽出精製した。抽出したRNAはSuperScript II(Invitrogen社)のマニュアルに従ってfirst strand cDNAを合成し、エタノール沈殿後下記のように溶解して用いた。
(TaqManを用いた定量)
合成したcDNAは10mg/ml RNA相当になるようにTEに溶解した後、50μg/mlの酵母tRNAを含むTEに6.67ng/μlになるように希釈した。希釈したcDNA溶液3.75μl(25ngのRNAに相当)に対し、増幅反応試薬は、TaqMan(商標) Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)、TaqMan(商標) Probe Kit(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)を用い、15μlの合計反応液量に調製した。各プライマー、プローブはヒト型dj287G14.2レセプターの塩基配列からソフトウエアPrimer Express(アプライドバイオシステムズ社)を使用してデザインした配列番号:5−7で表されるものを用い、最終濃度はマニュアルに従った。
TaqMan(商標)PCRは、ABI PRISM(商標)7900HT配列検出システム(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)で行い、使用した温度周期はTaqMan(商標)Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)のマニュアルに従った。
増幅生成物の定量的TaqMan解析は、7900HT SDSソフトウェア(アプライドバイオシステムズジャパン株式会社)を用いて行った。コピー数はヒト型dj287G14.2レセプターの塩基配列(配列番号:8)をもとに設計したプライマー増幅領域を含む配列番号:10で表されるcDNAをstandardとして求めた。
図1にそれぞれの細胞株におけるdj287G14.2の発現を示す。
【0106】
実施例3 dj287G14.2レセプターのmRNAのヒト組織での発現量
mRNAの発現量の定量にはABI PRISM 7900HT(アプライドバイオシステムズ社)を使用した。ヒト型dj287G14.2レセプターの塩基配列から定量に用いるプライマーとプローブは、実施例2と同じものを使用した。サンプルとして使用するcDNAは、ヒト各種組織由来のpolyA+RNA(クロンテック社)1μgからランダムプライマーを用いて逆転写反応した。逆転写酵素SuperScriptII(GIBCO BRL社)を使用し、添付のプロトコールにしたがって反応させ、エタノール沈殿して100μlのTEに溶解した。定量のための反応液はTaqMan Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)のプロトコールにしたがって、プライマー(0.9μM)、プローブ(0.25μM)、サンプルcDNAを0.5μlを反応液に加えて1ウェルあたり20μlとして調製した。ABI PRISM 7900HTでの反応は、50℃(2分)、95℃(10分)後、95℃(15秒)、60℃(1分)のサイクルを40回行なった。
ヒト各種組織でのdj287G14.2レセプターmRNAの発現分布を図2に示す。胎盤、肝臓などで高い発現量が観察された。
【0107】
参考例1 ヒト前立腺ガン由来細胞株LNCAPのcDNAからのPCR法によるdj287G14.2レセプター遺伝子の取得
ヒト前立腺ガン由来細胞株LNCAPのcDNAを鋳型として、以下の2種類の合成DNAを用いて、PCRによる増幅を行った。
F1: 5’−CTCGAGATGATGTTTCGCTCAGATCGAATGTGG−3’ (配列番号:11)
R1: 5’−GCTAGCTCAGCATGGGCCAGTTTTGACAAGGAC−3’ (配列番号:12)
PCRの反応液はcDNA溶液1μl、0.5μl F1(10μM)、0.5μl R1(10μM)、2.5μl 添付の10×反応液、2.5μl dNTP(10mM)、0.5μl ExTaq(宝)、17.5μl 大塚蒸留水を加えて合計25μlにした。反応液を、ThermalCycler9600を用いてPCR反応にかけた。PCRの条件は95℃、2分の変性の後、98℃・10秒、63℃・20秒、72℃・180秒のサイクルを35回繰り返した。PCR産物の一部を用いて電気泳動で約3700bpのPCR産物の増幅を確認した後、PCR産物をQIAGEN PCR purification Kitを用いて精製し、TAベクター(pCR2.1TOPO)にサブクローニングした後、配列決定を行ったところ図3〜4で示す配列(配列番号:8)が得られた。図3〜4のDNA配列から予測されるアミノ酸配列は図5〜8(配列番号:9)に示すものであった。
【0108】
実施例4 植物レクチンによる、dj/GFP発現CHO細胞のcAMP産生上昇活性
参考例1で得たdJ287G14.2とGFPの融合タンパク質を安定的に発現するCHO細胞株であるCHO−dJ287G14.2−GFPを実験に用いた。CHO−dJ287G14.2−GFP細胞またはpAKKO−111Hをトランスフェクションしたmock CHO細胞を2×10/wellの濃度で96ウェルプレートに撒いて一晩培養後、cAMP産生量の測定に用いた。アッセイ用バッファーとしてHBSS(Hank’s balanced salt solution,Gibco)に0.1%ウシ血清アルブミン、0.2mM 3−Isobutyl−1−methylxanthine(IBMX, Sigma)を添加したものを用いた。アッセイバッファーで細胞を2回洗浄し、37℃で30分プレインキュベーションした。細胞を2回洗浄した後、アッセイバッファーに希釈したレクチンなどのサンプルを細胞に添加して30分間インキュベーションした。培養上清を捨てて、cAMP Screen System(ABI)によってcAMP産生量を測定した。その結果、図9に示す通りCHO−dJ287G14.2−GFPにおいてConA(コンカナバリンA, Wako)、Lentil Lectin(レンズマメレクチン, Wako)、Pea Lectin(エンドウマメレクチン, Wako)を添加することにより濃度依存的なcAMP産生上昇が認められた。一方、図10に示す通り、コントロールとなるmock CHO細胞においては上記のレクチン添加によってcAMP産生上昇は認められなかった。
【0109】
実施例5 CHO細胞に発現させたdJ287G14.2−GFP融合タンパク質のコンカナバリンA添加による細胞内への移行
dJ287G14.2のC末端に翻訳のフレーム合わせてオワンクラゲより単離されたGreen Fluorescent Protein(GFP)cDNAをつないだ融合タンパクを発現させるための発現プラスミドを構築した。その際GFP cDNAにはGFPの発現ベクターpQBI25(宝酒造)から切り出した断片を用いた。dJ287G14.2はPCR法によりその終止コドンを制限酵素XbaIの認識配列に修正し、ここにGFP断片を連結して、実施例1に記載の発現ベクターpAKKO−111Hに挿入した。その結果、dJ287G14.2とGFPの融合タンパク(以下、dJ287G14.2−GFP)発現ベクターのプラスミド が構築できた。次にこのdJ287G14.2−GFP発現ベクターのプラスミドを、ジーントランスファー(和光純薬)を用いてCHOdhfr細胞に導入した。その2日後に選択培地に置き換えて増殖してきた形質転換体からGFPの発現を指標として細胞を選別し、dJ287G14.2とGFPの融合タンパク発現CHO細胞株CHO−dJ287G14.2−GFPを樹立した。
dJ287G14.2−GFP融合タンパク質の細胞内での発現局在は、このCHO−dJ287G14.2−GFPをLab−TekIIカバーグラスチェンバー(Nalgen Nunc社)にまき、37℃、5%CO条件下で一晩培養した後に、共焦点顕微鏡観察用培地[Hanks’ Balanced Salt Solution(GIBCO BRL社)]に置き換え、共焦点顕微鏡(ライカ社)でGFPの蛍光像を観察した。また共焦点顕微鏡観察用培地にナタマメ由来のレクチン、コンカナバリンA(ConA, 和光純薬)を60μg/mlの濃度で添加した培地に置き換え37℃条件下で2時間反応させた細胞も観察した。その際、GFPの励起は488nMで行った。
その結果、dJ287G14.2−GFP融合タンパクが細胞膜に発現していることが観察された(図11)。この細胞をConAを添加した培地で2時間培養すると、GFPの蛍光が細胞膜ではなく、細胞質に移動していることが見出された(図12)。これらのことはdJ287G14.2が細胞膜に発現するGタンパク質共役型のレセプターであるとともに、dJ287G14.2がConAに反応して細胞質へ移行、すなわちConAによりインタナリゼーションしたことを示していた。
【0110】
実施例6 マウスdj287G14.2 カウンターパートのクローニング
セレラ・マウスゲノムデータベースを用いて、マウスdj287G14.2をコードしているエクソンを探しだし、この配列を元にして翻訳領域を増幅するプライマー、5’RACE用、3’RACE用プライマーを作製した。翻訳領域の増幅はプライマー(配列番号29,30,31,32)と鋳型としてマウス脾臓、肺、14日目胎児cDNA (Marathon−ready cDNA,Clontech社)、PyroBEST DNA polymerase(TAKARA)を用いてPCRを行った。3’RACEの増幅は遺伝子特異的プライマー(配列番号33,34)と鋳型としてマウス脾臓cDNA(Marathon−ready cDNA)、Advantage−2 polymerasemix(Clontech社)を用いて行った。5’RACEの増幅はoligo−cap法を用いて遺伝子特異的プライマー(配列番号35,36,37)と鋳型としてマウス胎盤cDNA(Cap site cDNA dT Mouse Placenta, NIPPON GENE 社)、Gene TaqNT (NIPPON GENE社)を用いて行った。これらの結果から、マウスdj287G14.2は第1エクソンのドナ−部位からから第二エクソンのアクセプター部位へのつながり方によってN末端の配列が異なる二種類が存在し、さらに第六エクソンをスキップしているもの、第26エクソンをスキップしてC末端のアミノ酸配列が変化しているものが存在し、総アミノ酸残基数1165〜1258アミノ酸残基からなるマウスdj287G14.2(配列番号:13、15、17、19、21、23、25、27)をコードするORF(配列番号:14、16、18、20、22、24、26、28)が得られた。
【0111】
実施例7 血管細胞におけるGタンパク質共役型レセプターEDGファミリーのmRNAの発現
定量のヒト正常冠状動脈血管内皮細胞、ヒト正常冠状動脈血管平滑筋細胞、ヒト正常大動脈血管内皮細胞、ヒト正常大動脈血管平滑筋細胞(旭テクノグラス社より購入)から、Isogen(ニッポンジーン社)のマニュアルにしたがってtotal RNAを調製した。RNA1μgから逆転写酵素としてSuperScriptII逆転写酵素(GIBCO BRL社)を用い、添付のマニュアルに従って42℃で反応を行い、反応終了後にエタノール沈殿してTEに溶解した(RNA 100ng/μl相当)。EDGファミリーのmRNA発現量はSequence Detection System Prism 7900HTシステム(アプライドバイオシステムズ社)を用いて定量した。それぞれのレセプター発現量定量のために、それぞれのレセプターを特異的認識するTaqManプローブおよびプライマーをPrimer Express(PE Applied Biosystems社製ソフトウエアー)を用いて設計し合成した。EDG−1の検出用には5’− CCACCGACCCATGTACTATTTT −3’(配列番号:54), 5’−TGTAGGCTACTCCTGCCAACAG −3’(配列番号:55)およびTaqMan probeとして5’−(Fam)− TTGGCAATCTGGCCCTCTCAGA −(Tamra)−3’(配列番号:56)を、EDG−2検出用には5’− ACTGTCAGCACATGGCTCCTT −3’(配列番号:57), 5’−ACCGTAATGTGCCTCTCGATT −3’(配列番号:58)およびTaqMan probeとして5’−(Fam)− ATTGACACCAGCCTGACGGCAT −(Tamra)−3’(配列番号:59)を、EDG−3検出用には5’− CCGTGCTCTTCTTGGTCAT−3’ (配列番号:60), 5’− CCAGATGGCAATCAAAACC −3’(配列番号:61)およびTaqMan probeとして5’−(Fam)− TGCAGCTTCATCGTCTTGGAGAACCT −(Tamra)−3’ (配列番号:62)を、EDG−4検出用には5’− CCTGGTCAAGACTGTTGTCATC−3’(配列番号:63), 5’− CAGGACATTGCAGGACTCA −3’(配列番号:64)およびTaqMan probeとして5’−(Fam)− TGGTACTGCTCCTGGATGGTTTAGGCT −(Tamra)−3’(配列番号:65)を、EDG−5検出用には5’− CCAACAAGGTCCAGGAACA−3’(配列番号:66), 5’− AGGTTTTCCACCACAATGG −3’(配列番号:67)およびTaqMan probeとして5’−(Fam)− AATTATACCAAGGAGACGCTGGAAACGC −(Tamra)−3’(配列番号:68)を、EDG−6検出用には5’− GAACTGCCTGTGCGCCTTT−3’(配列番号:69), 5’− CCATAGAGGCCCATGATGGT −3’(配列番号:70)およびTaqMan probeとして5’−(Fam)− TCTGCCCCTCTACTCCAAGCGCTACATC−(Tamra)−3’(配列番号:71)を、EDG−7検出用には5’− TGACTGCTTCCCTCACCAA−3’(配列番号:72), 5’− GCATCCTCATGATTGACATGTG −3’(配列番号:73)およびTaqMan probeとして5’−(Fam)− TTGCTGGTTATCGCCGTGGAGA−(Tamra)−3’(配列番号:74)を、またEDG−8検出用には5’− CTTGCTCCACTGTCTTGCC−3’(配列番号:75), 5’− TAGAGTGCACAGATCGCGG −3’(配列番号:76)およびTaqMan probeとして5’−(Fam)− CTCTACGCCAAGGCCTACGTGCTCTTCT−(Tamra)−3’(配列番号:77)をそれぞれ使用した。
定量のための反応液はTaqMan Universal PCR Master Mix(アプライドバイオシステムズ社)のマニュアルに従い、それぞれのGタンパク質共役型レセプターのプライマー(0.9μM)、プローブ(0.25μM)、cDNAをtotalRNA25ng相当加えて調製した。PCR反応は50℃・2分、95℃・10分の後、95℃・15秒、60℃・1分のサイクルを40回繰り返した。その結果、ヒト正常冠状動脈血管内皮細胞、ヒト正常大動脈血管内皮細胞ではEDG−1がそれぞれ1,676,305コピー/25ng totalRNA、1,017,396コピー/25ng totalRNAと定量した354種のGタンパク質共役型レセプターのうちで最も高い発現量を示した。一方ヒト正常冠状動脈血管平滑筋細胞トヒト正常大動脈血管平滑筋細胞ではEDG−2がそれぞれ148,922コピー/25ng totalRNA、310,544コピー/25ng totalRNAとやはり定量した354種のGタンパク質共役型レセプターのうちで最も高い発現量を示した。EDG−3,4,5,6,7および8はEDG−1あるいはEDG−2に比べるとかなり発現量が少なかった。これらの結果はEDG−1に対するアゴニスト,アンタゴニストのスクリーニングには血管内皮細胞を、またEDG−2に対するアゴニスト,アンタゴニストのスクリーニングには血管平滑筋細胞を用いるのが適していることを示すものであった。
【0112】
【発明の効果】
本発明の解析方法及び定量キットによれば、多種類のmRNAを含む試料について、標的mRNAの有無及びその転写量を一度の処理で高感度で検出することができるシステムが提供できる。したがって、本発明によれば、標的遺伝子の発現解析を高感度で迅速に行うことができるシステムを提供することができる。
また、標的mRNAとして複数のGタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャンネルなどのファミリーに属する遺伝子mRNAを選択することによって、Gタンパク質共役型レセプター、チロシンリン酸化酵素型レセプター、イオンチャンネルなどのファミリーに属する遺伝子等に関連する疾病遺伝子の特定を迅速かつ高感度に行うことができる。
また、本発明の診断方法によれば、患者から採取したmRNA試料を用いて、患者が罹患している疾患を高精度に診断することができる。
本発明のレセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩、または本発明のレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドをコードするDNAは、前立腺癌、およびその他の癌(非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌等)、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、分娩誘発剤、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全、結石などの予防及び/又は治療薬として有用である。
また、本発明のレセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩とリガンドの1つである糖鎖に親和性を示すタンパク質(例、レクチン)とを用いることによって、該リガンドと本発明のdJ287G14.2レセプター、その部分ペプチドまたはその塩との結合性を変化させる化合物を効率良くスクリーニングすることができる。
さらに、血管内皮細胞を用いることによりEDG1レセプターアゴニスト・アンタゴニストを、血管平滑筋細胞を用いることによりEDG2レセプターアゴニスト・アンタゴニストを効率良くスクリーニングすることができる。
【0113】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】各種細胞株におけるdj287G14.2の発現を示す。
【図2】ヒト各種組織でのdj287G14.2レセプターmRNAの発現分布を示す。
【図3】dj287G14.2レセプターのアミノ酸配列を示す。
【図4】dj287G14.2レセプターのアミノ酸配列を示す。図3の続きである。
【図5】dj287G14.2レセプターをコードするDNAの塩基配列を示す。
【図6】dj287G14.2レセプターをコードするDNAの塩基配列を示す。図5の続きである。
【図7】dj287G14.2レセプターをコードするDNAの塩基配列を示す。図6の続きである。
【図8】dj287G14.2レセプターをコードするDNAの塩基配列を示す。図7の続きである。
【図9】dJ287G14.2−GFP融合タンパク質を発現したCHO細胞内のcAMP産生量に対するレクチンの影響を調べた結果を示す。横軸はレクチン濃度を、縦軸はcAMP産生量を表す。ConAはコンカナバリンAを、Lentilはレンズマメレクチンを、Peaはエンドウマメレクチンを、FSKはホルスコリンを示す。平均値±標準偏差(n=2)。
【図10】mock CHO細胞内のcAMP産生量に対するレクチンの影響を調べた結果を示す。横軸はレクチン濃度を、縦軸はcAMP産生量を表す。n=2の平均値である。ConAはコンカナバリンAを、Lentilはレンズマメレクチンを、Peaはエンドウマメレクチンを、FSKはホルスコリンを示す。平均値±標準偏差(n=2)。
【図11】CHO細胞に発現させたdJ287G14.2−GFP融合タンパクのGFPの蛍光像を共焦点顕微鏡(ライカ社)で観察した結果を示す。
【図12】CHO細胞に発現させたdJ287G14.2−GFP融合タンパク質にコンカナバリンAを添加した時のGFPの蛍光像を共焦点顕微鏡(ライカ社)で観察した結果を示す。

Claims (104)

  1. 複数の遺伝子個々の発現量をまとめて定量解析することにより、ある細胞または組織においてその発現が特徴的に亢進または減少している遺伝子を同定することを特徴とする遺伝子発現解析方法。
  2. 特定の遺伝子ファミリーに属する複数の遺伝子の発現解析をまとめて行うことにより、その遺伝子ファミリーの中で、ある細胞または組織においてその発現が特徴的に亢進または減少している遺伝子をその発現量の絶対値を算出することで同定する請求項1記載の方法。
  3. 複数の各反応場所で、複数の標的mRNAを含み得るmRNA試料と、それぞれの標的mRNAに対応するプライマー対をそれぞれ含んでなる各増幅試薬とを接触させることにより、増幅反応を行い、得られた増幅生成物の生成量を測定することによって遺伝子の発現解析を行う請求項1記載の方法。
  4. 複数の反応場所を有する反応器具の各反応場所で、複数の標的mRNAを含み得るmRNA試料と、それぞれの標的mRNAに対応するプライマー対をそれぞれ含んでなる各増幅試薬とを接触させることにより、増幅反応を行い、得られた増幅生成物の生成量を測定することによって遺伝子の発現解析を行う請求項1記載の方法。
  5. 前記特定の遺伝子ファミリーがGタンパク質共役型レセプター遺伝子ファミリーである請求項2記載の方法。
  6. 前記特定の遺伝子ファミリーがチロシンリン酸化酵素型レセプター遺伝子ファミリーである請求項2記載の方法。
  7. 前記特定の遺伝子ファミリーがイオンチャネル遺伝子ファミリーである請求項2記載の方法。
  8. 前記特定の遺伝子ファミリーが転写因子、トランスポーター、プロテインキナーゼ、プロテインフォスファターゼ、プロテアーゼ、ヒートショックプロテイン、ATPaseまたはDNA結合プロテインのいずれかに関連する遺伝子ファミリーである請求項2記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって特定される、ある細胞や組織において特徴的に発現が亢進または減少している遺伝子またはその遺伝子産物を含む医薬。
  10. 前記反応器具が反応場所としての複数の穴を有するプレートである請求項3または4記載の方法。
  11. 前記プレートが96穴または384穴プレートである請求項10記載の方法。
  12. 10〜800個のプライマー対を用いる請求項3または4記載の方法。
  13. 10〜300個のプライマー対を用いる請求項3または4記載の方法。
  14. 前記増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応である請求項3、4、12または13記載の方法。
  15. SNPの解析を行う前記請求項14記載の方法。
  16. 増幅生成物の生成量の測定が、該増幅生成物に相補的又は実質的に相補的であるプローブを用いて行われる請求項3または4記載の方法。
  17. 前記プローブが、mRNAにハイブリダイズするプローブである請求項16記載の方法。
  18. 前記プローブが蛍光標識されたプローブである請求項17記載の方法。
  19. 前記mRNA試料として、正常ヒト由来のmRNA試料および特定の疾患患者由来のmRNA試料とを用いる請求項3または4記載の方法。
  20. 前記疾患患者由来のmRNA試料中で発現が亢進または減少しているmRNAを特定し、該mRNAをコードする遺伝子を該疾患関連遺伝子であると特定する請求項19記載の方法。
  21. 前記特定の遺伝子ファミリーがヒトGタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子ファミリーであり、癌患者由来のmRNA試料を用いることによって癌関連遺伝子を特定する請求項20記載の方法。
  22. 標的遺伝子配列のエクソン領域の一方の鎖に相補的又は実質的に相補的である第1のプライマーおよび該標的遺伝子配列のエクソン領域の他方の鎖に相補的又は実質的に相補的である第2のプライマーから成るプライマー対を2対以上含んでなるプライマー対キット。
  23. 前記標的遺伝子がヒトGタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子、チロシンリン酸化酵素型レセプター遺伝子またはイオンチャネル遺伝子である請求項22記載のプライマー対キット。
  24. 10〜800個のプライマー対で構成される請求項23記載のプライマー対キット。
  25. 10〜300個のプライマー対で構成される請求項23記載のプライマー対キット。
  26. 疾患関連遺伝子を特定するための請求項23記載のプライマー対キットの使用。
  27. 複数の反応場所を有する反応器具の各反応場所に、標的mRNAに対応するプライマー対をそれぞれ含む各増幅試薬を充填してなるmRNA定量キット。
  28. さらに蛍光プローブを含んでなる請求項27記載のキット。
  29. さらにTth DNAポリメラーゼを含んでなる請求項28記載のキット。
  30. 請求項1〜4のいずれかの方法または請求項27の定量キットを用いて、患者から採取したmRNA試料に含まれ得る複数の標的疾患遺伝子のmRNAを定量することにより、あるいはそのmRNAの変異量を測定することによりその患者の疾患を診断する方法。
  31. 癌関連ヒトGタンパク質共役型レセプタータンパク質遺伝子を同定することによって癌を診断する請求項30記載の診断方法。
  32. 請求項30記載の診断方法によって同定された遺伝子の遺伝子産物に対するアゴニスト、アンタゴニストもしくは抗体、またはその遺伝子産物をコードするDNAを含んでなる医薬。
  33. 癌治療剤である請求項32記載の医薬。
  34. 請求項30に記載の診断方法によって同定された遺伝子の遺伝子産物に対するアゴニスト、アンタゴニストもしくは抗体、またはその遺伝子産物をコードするDNAを投与することによってその遺伝子が関与する疾患を治療する方法。
  35. 前記疾患が癌である請求項34記載の治療方法。
  36. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩を含有してなる医薬。
  37. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤である請求項36記載の医薬。
  38. 癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である請求項37記載の医薬。
  39. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる診断薬。
  40. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の診断薬である請求項39記載の診断薬。
  41. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体を含有してなる医薬。
  42. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤である請求項41記載の医薬。
  43. (1)配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩および(2)糖鎖に親和性を示すタンパク質を用いることを特徴とする該レセプタータンパク質またはその塩と糖鎖に親和性を示すタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング方法。
  44. 糖鎖に親和性を示すタンパク質がアスパラギン結合型糖鎖またはセリン・スレオニン結合型糖鎖に親和性を示すタンパク質である請求項43記載のスクリーニング方法。
  45. 糖鎖に親和性を示すタンパク質がレクチンである請求項43記載のスクリーニング方法。
  46. 糖鎖に親和性を示すタンパク質がコンカナバリンA、レンズマメレクチン、エンドウマメレクチン、チョウセンアサガオレクチン、イヌエンジュレクチンまたはフィトヘマグルチニンである請求項43記載のスクリーニング方法。
  47. (1)配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩および(2)糖鎖に親和性を示すタンパク質を含有することを特徴とする該レセプタータンパク質またはその塩と糖鎖に親和性を示すタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩のスクリーニング用キット。
  48. 請求項46記載のスクリーニング方法または請求項47記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、糖鎖に親和性を示すタンパク質と配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩との結合性を変化させる化合物またはその塩。
  49. 請求項48記載の化合物またはその塩を含有してなる医薬。
  50. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤である請求項49記載の医薬。
  51. 癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である請求項50記載の医薬。
  52. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを用いることを特徴とする、当該Gタンパク質共役型レセプタータンパク質の発現量を変化させ、癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石を予防及び/又は治療する化合物またはその塩、または分娩誘発薬のスクリーニング方法。
  53. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる、当該Gタンパク質共役型レセプタータンパク質の発現量を変化させ、癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石を予防及び/又は治療する化合物またはその塩、または分娩誘発薬のスクリーニング用キット。
  54. 請求項52記載のスクリーニング方法または請求項53記載のスクリーニング用キットを用いて得られうる、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドの発現量を変化させ、癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石を予防及び/又は治療する化合物またはその塩、または分娩誘発薬。
  55. 請求項54記載の化合物またはその塩を含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤。
  56. 癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である請求項55記載の剤。
  57. 糖鎖に親和性を示すタンパク質を含有してなる配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質のシグナル伝達作用増強剤。
  58. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤である請求項57記載の剤。
  59. 癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である請求項58記載の剤。
  60. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤。
  61. 癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である請求項60記載の剤。
  62. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の診断薬。
  63. 癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である請求項62記載の診断薬。
  64. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンス・ポリヌクレオチドを含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療剤、または分娩誘発剤。
  65. 癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である請求項64記載の剤。
  66. 配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンス・ポリヌクレオチドを含有してなる癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の診断薬。
  67. 癌の診断薬である請求項66記載の診断薬。
  68. 癌が前立腺癌、非小細胞癌、卵巣癌、胃癌、膀胱癌、乳癌、子宮頸部癌、結腸癌、直腸癌または大腸癌である請求項67記載の診断薬。
  69. 哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法。
  70. 哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法。
  71. 哺乳動物に対して、配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩と糖鎖に親和性を示すタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防及び/又は治療方法、または分娩誘発方法。
  72. 哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質の発現量を変化させる化合物またはその塩の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法。
  73. 哺乳動物に対して、糖鎖に親和性を示すタンパク質またはその塩の有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法。
  74. 哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンス・ポリヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法。
  75. 哺乳動物に対して、配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドの有効量を投与することを特徴とする癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療方法、または分娩誘発方法。
  76. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するレセプタータンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩の使用。
  77. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質もしくはその部分ペプチドまたはその塩に対する抗体の使用。
  78. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩と糖鎖に親和性を示すタンパク質との結合性を変化させる化合物またはその塩の使用。
  79. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質の発現量を変化させる化合物またはその塩の使用。
  80. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための糖鎖に親和性を示すタンパク質またはその塩の使用。
  81. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するタンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるアンチセンス・ポリヌクレオチドの使用。
  82. 癌、前立腺肥大症、男性性腺機能障害、不妊、早産、子宮内膜症、肝硬変、肝炎、肝不全または結石の予防および/または治療剤、または分娩誘発剤を製造するための配列番号:9で表されるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその部分ペプチドをコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドの使用。
  83. 配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25または配列番号:27で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩。
  84. 配列番号:13、配列番号:15、配列番号:17、配列番号:19、配列番号:21、配列番号:23、配列番号:25または配列番号:27で表わされるアミノ酸配列からなるGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩。
  85. 請求項81記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
  86. 配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列からなるDNA。
  87. 請求項83記載のポリヌクレオチドを含有する組換えベクター。
  88. 請求項87記載の組換えベクターで形質転換させた形質転換体。
  89. 請求項88記載の形質転換体を培養し、請求項83記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質を生成せしめることを特徴とする請求項83記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩の製造法。
  90. 請求項83記載のGタンパク質共役型レセプタータンパク質またはその塩に対する抗体。
  91. 配列番号:14、配列番号:16、配列番号:18、配列番号:20、配列番号:22、配列番号:24、配列番号:26または配列番号:28で表わされる塩基配列からなるDNAとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNA。
  92. 請求項85記載のポリヌクレオチドと相補的な塩基配列またはその一部を含有してなるポリヌクレオチド。
  93. 血管内皮細胞を用いることを特徴とするEDG−1レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法。
  94. EDG−1レセプターが配列番号:38で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩である請求項93記載のスクリーニング方法。
  95. 血管内皮細胞を含有することを特徴とするEDG−1レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング用キット。
  96. 請求項93記載のスクリーニング方法または請求項95記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニストまたはアンタゴニスト。
  97. 請求項93記載のスクリーニング方法または請求項85記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニストを含有してなる動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防及び/又は治療剤。
  98. 血管平滑筋細胞を用いることを特徴とするEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング方法。
  99. EDG−2レセプターが配列番号:40で表わされるアミノ酸配列と同一もしくは実質的に同一のアミノ酸配列を含有するGタンパク質共役型レセプタータンパク質、その部分ペプチドまたはその塩である請求項98記載のスクリーニング方法。
  100. 血管平滑筋細胞を含有することを特徴とするEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニストのスクリーニング用キット。
  101. 請求項98記載のスクリーニング方法または請求項100記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニスト。
  102. 請求項98記載のスクリーニング方法または請求項100記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアゴニストまたはアンタゴニストを含有してなる動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防及び/又は治療剤。
  103. 哺乳動物に対して、請求項93記載のスクリーニング方法または請求項95記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニスト、または請求項98記載のスクリーニング方法または請求項100記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアンタゴニストの有効量を投与することを特徴とする動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防および/または治療方法。
  104. 動脈硬化症、心筋梗塞、脳梗塞または虚血性疾患の予防及び/又は治療剤を製造するための請求項93記載のスクリーニング方法または請求項95記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−1レセプターアゴニスト、または請求項98記載のスクリーニング方法または請求項100記載のスクリーニング用キットを用いて得られるEDG−2レセプターアンタゴニストの使用。
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