(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るトラックボール装置が搭載された車両のコックピットの外観斜視図である。図1において、車両のコクピットは、機器操作装置1と、トラックボール装置2と、ディスプレイ3とを備える。トラックボール装置2は、機器操作装置1内に設置されている。トラックボール装置2に内蔵されているボールの回転方向を説明するために、図面上、XYZ軸を記載し、方向が理解できるようにしておく。なお、図面上、見やすくするために、XYZ軸の中心をトラックボール装置2からずらして記載しているが、以下の説明では、XYZ軸の中心は、トラックボール装置2に内蔵されているボールの中心にあるものとする。X軸は、車両の左右の方向を指すものとする。Y軸は、車両の前後の方向を指すものとする。Z軸は、車両の鉛直方向を指すものとする。
図1に示すように、機器操作装置1は、運転席と助手席との間のセンターコンソールの延長部に設置されている。したがって、運転者または助手席の乗員は、機器操作装置1を手で操作することができる。機器操作装置1の操作対象は、車両に搭載されたナビゲーションシステムやオーディオ、空調システム、テレビなどの電子機器(以下、車載機器という)である。ディスプレイ3は、各種車載機器を操作するためのメニュー画面を表示する。
図2は、機器操作装置1の外観および機器操作装置1が適用される車両内システムの構成を模式的に示す図である。図2において、XYZ軸については、矢印を用いて正の方向を示すこととする(以下の図面においても同様)。機器操作装置1は、シリアル通信などの通信手段によって、各車載機器11と接続されている。ユーザは、機器操作装置1を操作することによって、車載機器11を操作することができる。車載機器11は、機器操作装置1へメニュー画面に関する情報を送る。
機器操作装置1は、ボタン4〜8と、トラックボール装置2と、レスト部9とを含む。ボタン4〜8は、操作対象の車載機器11を選択するためのボタンである。ボタン4〜8の数は、片手の指の本数にあわせて5つである。ボタン4〜8は、ユーザがボタンを見なくても押せるように配置されている。トラックボール装置2は、ボタン4〜8によって選択された操作対象の車載機器11を操作するための装置である。ユーザは、トラックボール装置2のボール21を回転させることによって、車載機器11を操作する。レスト部9は、ボール21を回転させる際、手首から手のひら部分を安定させるために、操作者の手がフィットしてボール21の操作がしやすい形状になっている。
次に、図3〜図5を用いて、トラックボール装置2の構造について説明する。図3は、トラックボール装置2をYZ平面で切断したときの断面図である。図4は、図3に示す横中心面A−aに沿ってトラックボール装置2を切断したときの断面を矢印Lの方向から見たときの図である。図5は、図3に示す横中心面B−bに沿ってトラックボール装置2を切断したときの断面を矢印Lの方向から見たときの図である。
トラックボール装置2は、球体状のボール21と、ボール21を囲う鉄製のケース22と、ボール21の上部が突出するように塞ぐ蓋板24と、第1〜第4の固定磁性部材31,32,33,34と、ローラ40,41,42と、軸43,44,45と、軸受け46A,46B,47A,47B,48A,48Bと、ロータリーエンコーダ50,51とを備える。
ボール21は、着磁されていない軟質の磁性体材料からなる可動磁性体25と、非磁性材料からなる樹脂部29とを含む。可動磁性体25は、三本の棒体26,27,28を有する。棒体26,27,28は、互いに直交する三軸(XYZ軸)上に配置されている。棒体26,27,28は、樹脂部29内に埋め込まれている。棒体26,27,28の両端部分は、ボール21の表面近傍まで達するような長さとなっている。好ましくは、ボール21の全表面は、硬くて滑らかな絶縁被膜等で覆われているとよい。図5に示すように、ボール21は、3つのローラ40,41,42によって、ボール21の中心より下の部分を全方向回転自在に支持されている。ボール21の上端部は、蓋板24中央の丸孔から露出している。
ローラ40およびローラ41は、回転軸が直交するように設置されている。ローラ40,41,42は、中心を貫通する軸43,44,45に滑りがないように結合されている。軸43,44,45は、それぞれ、ケース22に取り付けられた軸受け46Aおよび46B、47Aおよび47B、48Aおよび48Bによって、軸の回転が可能なように支持されている。軸43および軸44には、ロータリーエンコーダ50および51が接続されている。ロータリーエンコーダ50および51は、それぞれ、ローラ40および41の回転方向と回転量とを検出する。ロータリーエンコーダ50,51に接続された検出部(図示せず)は、ロータリーエンコーダ50,51から得られるボール21の回転方向と回転量とに基づいて、二軸を中心としたボール21の動きを検出する。
図4に示すように、第1〜第4の固定磁性部材31〜34は、ボール21の中心を通るXY平面上のXY軸上に接着固定されている。第1〜第4の固定磁性部材31〜34とボール21の表面との間には、所定の間隔が空いている。第1〜第4の固定磁性部材31〜34は、いずれもボール21の中心に向かって同極性(たとえばN極)を有すると共に、ほぼ等しい磁気量を有するように着磁されている。第1〜第4の固定磁性部材31〜34は、それぞれ、ボール21に内蔵された三本の棒体26〜28におけるそれぞれの両端部26A,26B,27A,27B,28A,28Bと磁気結合するようになっている。第1〜第4の固定磁性部材31〜34は、直方体形状をしている。第1〜第4の固定磁性部材31〜34は、小型でありながら強力な磁気結合力を発生する加工が簡単な希土類磁石等からなる。第1〜第4の固定磁性部材31〜34の磁力は、それぞれ同じである。
図3に示すように、第5の固定磁性部材35は、ケース22の底部中央、すなわちボール21の中心を通るZ軸負の方向上に接着固定されている。第5の固定磁性部材35とボール21の表面との間には、所定の間隔が空いている。第5の固定磁性部材35は、ボール21の中心に向かって第1〜第4の固定磁性部材31〜34の極性と逆の極性(たとえばS極)を有すると共に、第1〜第4の固定磁性部材31〜34の2倍程度の磁気量を有するように着磁されている。第5の固定磁性部材35は、ボール21に内蔵された三本の棒体26〜28のいずれかの片端部と磁気結合するようになっている。第5の固定磁性部材35は、直方体形状をしている。第5の固定磁性部材35は、小型でありながら強力な磁気結合力を発生する加工が簡単な希土類磁石等からなる。
第1〜第4の固定磁性部材31〜34および第5の固定磁性部材35は、鉄製のケース22に固定されている。図6は、第1〜第5の固定磁性部材31〜35およびケース22によって形成される磁力線を示す図である。図6に示すように、第1の実施形態に係るトラックボール装置2のような構成にすると、磁力線36A,36Bのような磁気回路が組み込まれることとなる。これにより、可動磁性体25の端部と第1〜第5の固定磁性部材31〜35との磁気吸引力はより強くなる。また、磁力がケース22の外に及ばないこととなる。そのため、ケース22に鉄粉等の磁性体のゴミが吸着することや、腕時計など他の機械に影響を与えることもない。
次に、上記のように構成されるトラックボール装置2において、ユーザが何らの操作もしない通常状態でのボール21の位置について説明する。ボール21に内蔵された三本の棒体26〜28の内、XY平面上に存在する二本の棒体の両端は、それぞれ第1および第3の固定磁性部材31,33および第2および第3の固定磁性部材32,34に強く吸引される。Z軸上に存在する残りの一本の棒体の片端部は、第5の固定磁性部材35に強く吸引される。したがって、ボール21は、第1〜第5の固定磁性部材31〜35に最も接近した状態で安定的に停止する。
次に、ボール21を回転させるときのトラックボール装置2の動作について説明する。まず、ボール21は、図3および図4に示すような位置で停止した状態になっていると想定する。すなわち、棒体26の両端部26A,26Bは、第1および第3の固定磁性部材31,33に磁気結合して吸引されている。棒体27の両端部27A,27Bは、第2および第4の固定磁性部材32,34に磁気結合して吸引されている。棒体28の片端部28Bは、第5の固定磁性部材35に磁気結合して吸引されている。したがって、棒体26はY軸上にあり、棒体27はX軸上にあり、棒体28はZ軸上にあることとなる。
このような状態において、ユーザは、蓋板24の丸孔から露出したボール21の上端部を手や指で触れて、Y軸正の方向(図2および図3に示す矢印Yの方向)にボール21を回転させるとする。これによって、ボール21には、矢印Yの方向への回転力が加えられることとなる。したがって、ボール21は、支持部であるローラ40を回転させ、ローラ41の上を滑り、ローラ42を回転させながら、回転していく。このときのボール21の回転軸は、棒体27の中心軸、すなわち第2の固定磁性部材32と第4の固定磁性部材34とを結ぶ軸である。この場合、ボール21は、棒体26の両端部26A,26Bを吸引する第1および第3の固定磁性部材31,33の吸引力、ならびに棒体28の片端部28Bに対する第5の固定磁性部材35の吸引力に逆らって回転することとなる。
図7は、ボール21の回転途中の状態を示す図である。ボール21の回転角度が棒体26と棒体28との中間角度位置である約45°よりも大きくなると、今度は、棒体28の両端部28A,28Bが第1および第3の固定磁性部材31,33に吸引される力が大きく働く。また、棒体26の片端部26Aが第5の固定磁性部材35に吸引される力が大きく働く。したがって、ボール21は、この回転方向に対して、約90°の位置まで自然に回転することとなり、安定した位置に対峙することとなる。引き続き、ユーザがボール21の上端部に回転力を加えると、ボール21は、同様に、90°毎に安定した位置に対峙するように、回転する。このとき、このトラックボール装置2を操作するユーザは、棒体26,28に対する第1および第3の固定磁性部材31,33の吸引力、すなわち磁気結合力によって、90°回転毎に回転が重くなったり軽くなったりする抵抗を断続的に感じることとなり、クリック節度感を手や指に得ることができる。
同様にして、上記で説明した逆方向(Y軸負の方向)へボール21を回転させた場合や、X軸の正負いずれの方向にボール21を回転させた場合でも、ユーザは、90°毎のクリック節度感を感じることができる。
ユーザがXまたはY軸方向から若干ずれた角度にボール21へ力を加えたとしても、ボール21は、XまたはY軸方向のいずれかの正または負の方向へ回転する。これは、第1〜第4の固定磁性部材31〜34による回転方向制限効果である。すなわち、XまたはY軸方向のいずれかの正または負の方向へボール21を回転させる場合、ユーザは、第1〜第4の固定磁性部材31〜34の内、対面する二つの固定磁性部材に対する吸引力に逆らってボール21を回転させることとなる。一方、上記以外の方向へボール21を回転させる場合、ユーザは、全ての固定磁性部材の吸引力に逆らってボール21を回転させることとなる。したがって、XまたはY軸方向のいずれかの正または負の方向以外の方向へは、ボール21は、回転しにくくなっている。ゆえに、若干角度がずれた力をボール21に加えたとしても、ボール21は、回転しやすいXまたはY軸方向に回転していくこととなる。
次に、第5の固定磁性部材35の効果について説明する。ユーザは、ボール21を回転させるには、固定磁性部材による吸引力に逆らって、ボール21をXまたはY軸方向に回転させなければならない。たとえば、Y軸正の方向にボール21を回転させる場合、ボール21とローラ40との接触力が弱くなり、ボール21は、第1の固定磁性部材31に近づこうとする。
ここで、もし、第5の固定磁性部材35が無かったと仮定する。ユーザが第1および第3の固定磁性部材31,33の吸引力に逆らってボール21にY軸の正の方向への力を加えると、ボール21は、ローラ40から離れる。そして、ボール21と第1の固定磁性部材31との間の距離が短くなる。したがって、第1の固定磁性部材31と棒体26の端部26Aとの吸引力が急激に増す一方、第3の固定磁性部材33と棒体26の端部26Bとの吸引力が急激に減少してしまう。それゆえ、ボール21に加わっている磁力が不安定となり、ボール21の回転が不安定となってしまう。
しかし、本実施形態のように第5の固定磁性部材35が存在する場合、第5の固定磁性部材35の吸引力によって、ボール21とローラ40〜42との間の接触力が増すこととなる。したがって、X軸方向、Y軸方向のいずれの方向にボール21を回転させたとしても、ボール21が各ローラから離れることを防止することができ、その結果、ボール21が第1〜第4の固定磁性部材31〜34のいずれかに近づくことによって、ボール21に加わっている磁力が不安定になることを防止することができる。それゆえ、ボール21の回転を安定的なものとすることができ、ユーザは、X軸方向,Y軸方向のいずれの方向にボール21を回転させたとしても、同じようなクリック節度感を得ることができる。このように、ボール21を安定的に回転させるためには、第5の固定磁性部材35の磁力が第1〜第4の固定磁性部材31〜34それぞれの磁力の2倍になっていればよいことを、本発明の発明者は、実験を繰り返すことによって知ることができた。
図8〜図10は、トラックボール装置2を内蔵している機器操作装置1の使用例を説明するための図である。以下、図8〜図10を参照しながら、機器操作装置1の使用例について、空調システムの設定を例にして説明する。本実施形態において、ボタン4〜8には、それぞれ、操作対象として、空調システム、オーディオ、テレビ、ナビゲーション、インフォメーションが割り当てられているとする。ボタン4〜8に割り当てる操作対象や順序は、上記のものに限られない。
空調システムの設定を行う場合、ユーザは、図2のボタン4を押して、操作対象を空調システムに設定する。ボタン4が押されると、機器操作装置1は、ディスプレイ3に、図8〜10に示すような表示例100を表示させる。空調システムの設定において、機器操作装置1は、ユーザの操作に応じて、吹き出し口の設定、温度設定、および風量設定という3つの設定を行う。ユーザは、設定項目選択枠110の位置によって、どの項目の設定変更が可能な状態にあるかを確かめることができる。
図8における表示例100は、吹き出し口の設定が可能な状態を示している。図9における表示例100は、温度設定が可能な状態を示している。図10における表示例100は、風量設定が可能な状態を示している。
ボタン4が押された時、機器操作装置1は、前回最後に設定した項目の位置を設定項目選択枠110の位置とするようディスプレイ3に表示させる。設定項目選択枠110の位置を変更したい場合、ユーザは、ボール21に対して、X軸正または負の方向に力を加えて、ボール21を回転させる。図8のように吹き出し口の設定が可能な状態から、図10のように風量設定が可能な状態に変更するには、ユーザは、X軸正の方向へ180°ボール21を回転させる。このとき、ユーザは、2回のクリック節度感を手または指などに感じる。このように、設定項目選択枠110によって現在選択されている設定項目とは別の設定項目を新たに選択したい場合、ユーザは、新たに設定したい項目が表示されている方向と同じ方向に力を加えてボール21を回転させる。これにより、設定項目を変更することができる。このような操作方法は、ユーザにとって感覚的であり、自然である。ユーザは、90°回転毎に抵抗を感じるので、ボール21を回転し過ぎたり、他の方向へ回転しそうになったりすることを防止することができる。よって、ユーザは、確実に設定項目選択枠110の位置をたとえば2つ右へ変更することができる。
次に、3つの設定項目における設定変更について説明する。まず、図8を参照しながら吹き出し口の設定について説明する。シンボル101〜105は、自動車の空調システムにおける吹き出し口の位置を表したものである。ユーザは、いずれかのシンボルを選択することによって、吹き出し口の位置を変更することができる。
シンボル101が選択されると、機器操作装置1は、フロントウィンドウの曇り止めのためにフロントウィンドウ下部から風が吹き出すように空調システムを制御する。シンボル102が選択されると、機器操作装置1は、フロントウィンドウの曇り止めのためにフロントウィンドウ下部および足元から風が吹き出すように空調システムを制御する。シンボル103が選択されると、機器操作装置1は、インパネ上部から風が吹き出すように空調システムを制御する。シンボル104が選択されると、機器操作装置1は、インパネ上部および足元から風が吹き出すように空調システムを制御する。シンボル105が選択されると、機器操作装置1は、足元から風が吹き出すように空調システムを制御する。シンボル106が選択されると、機器操作装置1は、空調システムが自動設定となって、適切な吹き出し口から風が吹き出すように空調システムを制御する。
吹き出し口選択枠107は、現在選択されているシンボルを囲む。図8に示す例では、シンボル104が選択されている。吹き出し口の変更は、設定項目選択枠110がシンボル101〜106を囲む位置にあるときのみ可能である。図8は、吹き出し口の変更が可能な状態を表している。吹き出し口を変更する場合、ユーザは、ボール21をY軸正または負の方向へ回転させる。Y軸の正方向(車両の前方向)に力を加えてボール21を90°回転させる毎に、ユーザは、クリック節度感を得ることができ、シンボル103、シンボル102、シンボル101の順で、吹き出し口を選択することができる。逆に、Y軸負方向(車両の後方向)に力を加えてボール21を90°回転させる毎に、ユーザは、クリック節度感を得ることができ、シンボル105、シンボル106の順で、吹き出し口を選択することができる。吹き出し口の選択は6つの項目選択であるので、シンボルを変更する毎にユーザは、クリック節度感を得ることができる。
また、シンボル101が選択されている状態でY軸正の方向にボール21を回転させると、機器操作装置1は、シンボル106が選択されるようにする。逆に、シンボル106が選択されている状態でY軸負の方向にボール21を回転させると、機器操作装置1は、シンボル101が選択されるようにする。このように、機器操作装置1は、できるだけ少ない操作で選択変更が可能なユーザインターフェイスを提供する。
機器操作装置1は、他の設定を行ったり空調システム以外の機能操作を行ったりしても、新たに吹き出し口に変更されるまで、選択された吹き出し口を維持するように空調システムを制御する。
次に、図9を参照しながら温度設定について説明する。機器操作装置1は、設定温度表示部113に現在設定されている車室内温度を表示させ、設定温度表示バー112に設定温度目盛に対応した現在の設定温度を表示させる。設定温度の変更は、設定項目選択枠110が設定温度表示部113、設定温度表示バー112、設定温度目盛を囲む位置にあるときにのみ可能である。設定温度の変更が可能な状態において、ボール21がY軸正または負の方向に回転させられることによって、機器操作装置1は、空調システムの設定温度を変更することができる。
ユーザがボール21に対してY軸正の方向(車両の前方向)に力を加えることによってボール21を回転させた場合、機器操作装置1は、設定温度を上昇させる。逆に、ユーザがボール21に対してY軸負の方向(車両の後方向)に力を加えることによってボール21を回転させた場合、機器操作装置1は、設定温度を下降させる。機器操作装置1は、設定温度を変更させるのに合わせて、設定温度表示部113および設定温度表示バー112を設定温度に合わせて変化させる。
本実施形態の空調システムは、設定温度を0.5℃単位で変更することができる。しがたって、機器操作装置1は、ボール21の90°回転を温度0.5℃に対応させて、空調システムの設定温度を変更させる。これにより、ユーザは、0.5℃の変化毎にクリック節度感を得ることができる。
本実施形態の空調システムにおいて設定できる温度の範囲は、16℃以上、32℃以下である。したがって、設定温度が16℃の状態の場合に、ユーザがいくら温度を下げるための操作を行ったとしても、機器操作装置1は、設定温度を変化させることはない。設定温度が32℃の状態の場合に、ユーザが温度を上げるための操作を行った場合も同様である。
機器操作装置1は、他の設定を行ったり空調システム以外の機能操作を行ったりしても、新たに設定温度が変更されるまで、一度設定された温度を変更することはない。
次に、図10を参照しながら風量設定について説明する。風量設定は、3つに分かれている。第1は、手動で風量設定を自由に行うための手動設定である。機器操作装置1は、手動設定が選択されている場合、ディスプレイ3に手動風量設定枠123の輝度を高くさせる。第2は、空調システムにおける自動風量設定である。機器操作装置1は、自動風量設定が選択されている場合、ディスプレイ3に自動風量設定枠124の輝度を高くさせる。第3は、送風無し設定である。機器操作装置1は、送風無し設定が選択されている場合、ディスプレイ3に送風無枠125の輝度を高くさせる。
図10に示す例では、手動風量設定枠123の輝度が高くなっており、手動設定が選択されていることが分かる。風量表示バー122は、手動設定により設定されている風量を表す。設定範囲121の下端は、送風ゼロ(風量無し)を示す。設定範囲121の上端は、風量最大を示す。風量の変更は、設定項目選択枠110が手動風量設定枠123、自動風量設定枠124、送風無枠125を囲む位置にある場合にのみ可能である。風量の変更が可能な状態で、ボール21がY軸正または負の方向へ回転した場合、機器操作装置1は、風量が変更するよう空調システムを制御する。
図10に示す例では、手動風量設定枠123の輝度が高くなっている。したがって、手動設定が選択されていることとなる。この場合、ユーザがボール21に対してY軸正の方向(車両の前方向)に力を加えてボール21を回転させると、機器操作装置1は、風量が増加するように空調システムを制御する。逆に、ユーザがボール21に対してY軸負の方向(車両の後方向)に力を加えてボール21を回転させると、機器操作装置1は、風量が減少するように空調システムを制御する。ここで、手動設定における風量は、風量ゼロから風量最大までの5段階で調整できるものとする。したがって、手動風量設定枠123の輝度が高くなっている手動設定の状態において、ユーザがボール21を90°回転させる毎に、機器操作装置1は、1段階ずつ風量を変化させ、同時に風量表示バー122も変化させる。
手動操作における風量最大の状態の場合に、ユーザがいくら風量を増加させる方向の操作を行ったとしても、機器操作装置1は、風量を変化させることはない。逆に、手動操作における風量ゼロの状態において、ユーザが風量を減少させる方向の操作を行った場合、すなわちユーザがボール21をY軸負の方向へ90°回転させた場合、機器操作装置1は、手動設定から自動風量設定に設定を切り換え、自動風量設定枠124の輝度を高くさせる。さらに、ユーザがボール21をY軸負の方向へ90°回転させた場合、機器操作装置1は、自動風量設定から送風無し設定に設定を切り換え、送風無枠125の輝度を高くさせる。さらに、送付無し設定の状態からボール21がY軸負の方向に回転させられたとしても、機器操作装置1は、風量を変化させない。
逆に、送風無し設定の状態において、ユーザがボール21をY軸正の方向(車両の前方向)に力を加えてボール21を90°回転させた場合、機器操作装置1は、送風無し設定から自動風量設定に設定を切り換え、自動風量設定枠124の輝度を高くさせる。さらに、ユーザがボール21をY軸正の方向(車両の前方向)に力を加えてボール21を90°回転させた場合、機器操作装置1は、自動風量設定から手動設定に設定を切り換え、手動風量設定枠123の輝度を高くさせる。
このように、第1の実施形態では、ボールの下側に固定磁性部材を設けて、常にボールを引きつけるような力を働かせることによって、安定した操作感をユーザに与えることができる。また、機器操作装置がディスプレイ上に提供する画面とトラックボール装置との動きとを対応させることによって、車載機器を直感的に操作するためのインターフェイスが提供されることとなる。
なお、上記実施形態では、ボールには、三軸上に三本の棒体が内蔵されていることとしたが、一方方向(たとえば、Y方向)のみの回転にだけクリック節度感を与えるのでよいのであれば、ボールには、少なくとも互いに直交する二軸上に着磁されていない二本の棒体が内蔵されているといった構成でもよい。この場合、側面に取り付けられている磁石がボールに内蔵されている磁性体と磁気結合することによって、クリック節度感を与えることとなる。また、ケースの底面に取り付けられた磁石がボールに内蔵されている磁性体を引きつけることによって、安定した操作感をユーザに与えることができる。
また、上記実施形態では、ボールには棒体が埋め込まれていることとしたが、XYZ軸と交差するボールの8つの表面部分が磁性部材となっているように、ボールが形成されていれば、上記のように棒体が埋め込まれている構造に限られない。たとえば、8つの表面部分に、円柱や多角柱が埋め込まれていることとしてもよいし、くさび形の磁性体が埋め込まれていてもよいし、球体が埋め込まれていてもよい。また、これ以外の形状であってもよい。つまり、ボールは、ボールの中心でそれぞれ直交する第1,第2および第3の軸の軸線方向に磁気結合可能なように、少なくとも一以上の磁性体を内蔵していればよい。このことは、少なくとも二軸上に磁性体が内蔵されている場合についても同様である。つまり、ボールは、中心で互いに直交する第1および第2の軸の軸線方向に磁気結合可能なように、少なくとも一以上の磁性体を内蔵していればよい。
また、棒体は、XYZ軸上に埋め込まれていることとしたが、これに限られるものではない。すなわち、棒体が互いに直交しないように所定の位置に埋め込まれていてもよい。この場合、所定の位置でボールが安定的に対峙することとなり、所定の角度毎にユーザはクリック節度感を得ることができる。
なお、上記第1〜第5の固定磁性部材は、永久磁石であってもよいし、電磁石であってもよく、磁気を帯びる部材であれば、あらゆるものを用いることができる。
なお、いずれの設定を行っている場合においても、操作対象を切り換えるためのボタン4〜8が押されれば、機器操作装置1は、新たな操作対象の操作画面をディスプレイ3に表示させ、新たな操作が行えるようになる。
なお、上記実施形態では、車両に本トラックボール装置を用いることとしたが、これに限られるものではない。たとえば、エアコンや、オーディオ機器、テレビのリモートコントローラー、電話機、携帯電話機等、あらゆる電子機器に本トラックボール装置を用いることができ、その応用範囲は多岐に渡る。
(第2の実施形態)
図11は、本発明の第2の実施形態に係るトラックボール装置2aの断面図である。図11は、第1の実施形態における図3に相当する。図11において、第1の実施形態と同様の機能を有する部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。また、機器操作装置1と車載機器11との関係は、第1の実施形態と同様であるので、図2を援用することとする。
トラックボール装置2aは、ボール21と、ケース22と、第1〜第4の固定電磁石331〜334と、第5の固定電磁石335と、第6の固定電磁石338と、電磁石コントローラ340と、ローラ40〜42と、軸43〜45と、軸受け46A〜48Bと、ロータリーエンコーダ50,51とを備える。ローラ41,42、軸43〜45、軸受け46A〜48B、およびロータリーエンコーダ50,51については、第1の実施形態と同様であるので図示を省略する。
第2の実施形態では、第1の実施形態における第1〜第4の固定磁性部材31〜34が第1〜第4の固定電磁石に置き換わっており、第5の固定磁性部材35が第5の固定電磁石335に置き換わっている。また、第6の固定電磁石336が新たに付加されている。図12は、ボール21が棒体27の中心軸、すなわち固定磁性部材332と334を結ぶ軸を回転軸として、図11に示す位置から45°回転した時の状態を示す図である。第6の固定電磁石336は、図12に示す状態のときに、棒体26または棒体28の延長上にくるように配置されている。
電磁石コントローラ340は、機器操作装置1を介して車載機器11から送られてくるメニューに関するモード信号に基づいて、第1〜第6の固定電磁石331〜336の磁力の有無や磁力強度を変化させる。
第1〜第4および第6の固定電磁石331〜334,336が同一の磁力を有し、第5の固定電磁石335がその2倍の磁力を有しかつ逆の極性を有するように電磁石コントローラ340によって制御された場合、ボール21は図12に示すような状態でも安定的に対峙することができる。したがって、ユーザは、ボール21を回転させる際、45°毎にクリック節度感を得ることができる。車載機器11は、45°のクリック節度感が必要な場合は、このような磁力になるよう機器操作装置1にモード信号を送る。
第1〜第4固定電磁石331〜334が同一の磁力を有し、第5の固定電磁石335がその2倍の磁力を有しかつ逆の極性を有するように電磁石コントローラ340によって制御された場合、ボール21は、第1の実施形態と同様に、図11に示すような状態で安定的に対峙することとなるので、ユーザは、ボール21を回転させる際、90°毎にクリック節度感を得ることができる。車載機器11は、90°のクリック節度感が必要な場合は、このような磁力になるよう機器操作装置1にモード信号を送る。
次に、図8〜図10を参照しながら、第2の実施形態に係る機器操作装置1の使用例について、空調システムの設定を例にして説明する。第1の実施形態と同様、図2のボタン4を押すと同時に、機器操作装置1は、ディスプレイ3に図8〜図10に示すような表示例100を表示させる。
空調システムを制御する場合、機器操作装置1は、空調システムからのモード信号に基づいて、第6の固定電磁石336の磁力を発生させるか否かを判断して、電磁石コントローラ340を制御する。
空調システムについて、ユーザは、吹き出し口の設定、温度設定、および風量設定を行うことができる。ユーザは、設定項目選択枠110の位置によって、どの項目の設定変更が可能な状態であるかを確かめることができる。設定項目選択枠110の位置を変更する場合、ユーザは、第1の実施形態と同様にして、ボール21にX軸正または負の方向に力を加えて、ボール21を回転させればよい。
まず、吹き出し口の設定について説明する。吹き出し口設定が選択された場合、機器操作装置1は、第1〜第5の固定電磁石331〜335のみが磁力を発生し、第6の固定電磁石336が磁力を発生しないように、電磁石コントローラ340を制御する。したがって、ユーザは、第1の実施形態と同様にして、吹き出し口の設定を行うことができる。
次に、図9を参照しながら、温度設定について説明する。温度設定が選択された場合、機器操作装置1は、第1〜第6の固定電磁石331〜336の全てが磁力を発生するように、電磁石コントローラ340を制御する。機器操作装置1は、Y軸正または負の方向にボール21を45°回転させる毎に、温度が0.5℃変化するように、空調システムを制御する。ユーザが45°回転毎にクリック節度感を得る以外は、第1の実施形態と同様である。
温度設定は、吹き出し口の設定のように一定のパターンの中から一つを選択するようなものではなく、温度という一つの項目を段階的に調整するものである。したがって、選択のための段階数は、吹き出し口の設定よりも多くなるので、一段階の調整に要するボール21の回転角度は小さい方が好ましい。したがって、機器操作装置1は、温度設定に関しては、45°毎に、0.5℃ずつ設定温度の変化させるように、制御するのが有効である。
次に、図10を参照しながら風量設定について説明する。風量設定において、手動風量設定が選択されている場合、機器操作装置1は、第1〜第6の固定電磁石331〜336の全てが磁力を発生するように、電磁石コントローラ340を制御する。自動風量設定が選択されている場合、機器操作装置1は、第1〜第5の固定電磁石331〜335のみが磁力を発生するように、電磁石コントローラ340を制御する。送風無し設定が選択されている場合、機器操作装置1は、第1〜第5の固定電磁石331〜335のみが磁力を発生するように、電磁石コントローラ340を制御する。
手動風量設定が選択されている場合、第1〜第6の固定電磁石331〜336の全てで磁力が発生しているので、ボール21が45°回転する毎に、風量が一段階ずつ変化するよう、機器操作装置1は、空調システムを制御する。手動風量設定において、風量が最低の場合、ボール21が45°回転させられると、機器操作装置1は、自動風量設定となるように、空調システムを制御と共に、第6の固定電磁石336が磁力を発生しないように、電磁石コントローラ340を制御する。逆に、自動風量設定となっている場合において、Y軸正の方向にボール21が90°回転させられると、機器操作装置1は、手動風量設定となるように、空調システムを制御すると共に、第6の固定電磁石336の磁力が発生するように、電磁石コントローラ340を制御する。これ以外の制御については、第1の実施形態の場合と同様である。
このように、第2の実施形態では、固定電磁石の磁力を制御することによって、車載機器の操作内容に応じて、クリック節度感の頻度を調整することができる。
なお、上記実施形態では、固定電磁石を用いることとしたが、45°毎のクリック節度感を得るためだけの目的であれば、全て固定磁性部材を用いて、トラックボール装置を構成してもよい。
また、第6の固定電磁石のみを電磁石として、第1〜第5の固定電磁石を永久磁石に置き換えてもよい。
また、固定磁性部材を用いる場合、光学実験用のボルダーマウントのように、ボール21の可動磁性体25に磁力が及ばないような機械的な機構を備えることによって、固定磁性部材の磁力の有無をモータやソレノイドによって切り換えてもよい。これによって、固定磁性部材を用いても、90°毎のクリック節度感と45°毎のクリック節度感とを切り換えることができる。
なお、全ての固定電磁石が磁力を発生しないように制御されることによって、クリック節度感の無いトラックボール装置を提供することができる。このように、固定電磁石の磁力が発生しない場合と磁力が発生する場合とを組み合わせることによって、ナビゲーションシステムにおける地図のスクロールをクリック節度感の無い状態で操作することができるなど、多種多様な応用が考えられる。
なお、ボールが45°回転する毎にクリック節度感が得られるようにするには、第6の固定電磁石を設置する代わりに、ボールに内蔵される可動磁性体を図13のような構成となるようにしてもよい。図13は、YZ平面でのボール21の断面図である。棒体301、302は、棒体27と直交し、かつ棒体26,28のそれぞれと45°の角度をなし、ボールの中心を棒体の中心軸が通るように配置されている。これにより、第6の固定電磁石がなくても、棒体27を中心軸とした場合、45°回転毎のクリック節度感をユーザに与えることができる。
また、図14に示すように、棒体303,304,305,306が、棒体27と直交し、かつ棒体26,28のいずれかと30°または60°の角度をなし、ボールの中心を棒体の中心軸が通るように配置されていてもよい。これにより、棒体27を中心軸とした場合、30°回転毎のクリック節度感をユーザに与えることができる。
また、より細かく複数の棒体(より好ましくは、偶数本の棒体)をボール内に埋め込むことによって、より細かなクリック節度感をユーザに与えることができるのは、言うまでもない。
(第3の実施形態)
図15は、本発明の第3の実施形態に係るトラックボール装置2bのYZ面での断面図である。図15は、第1の実施形態における図3に相当する断面図である。図16は、本発明の第3の実施形態に係るトラックボール装置2bのXY平面での断面図である。図16は、第1の実施形態における図4に相当する断面図である。図17は、ボール21aのYZ平面での断面図である。図15〜図17において、第1の実施形態と同様の部分については、同一の参照符号を付し、説明を省略する。
第3の実施形態に係るトラックボール装置2bは、第1の実施形態のトラックボール装置における第2および第4の固定磁性部材32,34と、互いに直交する3軸上の三本の棒体の内の一本(図16では、棒体27)とを取り除いた構成をしている。
図15に示すように、第3の実施形態に係るボール21aには、YZ平面上に、四本の棒体26,28,301a,302aが埋め込まれている。四本の棒体26,28,301a,302aは、ボール21aの中心で互いに交わっており、かつ隣り合う棒体の角度が互いに等しくなるように埋め込まれている。各棒体の両端部は、ボール21aの表面またはその近傍まで達するようになっている。
第1および第3の固定磁性部材31,33は、ボール21aの中心を通る棒体の中心軸(図15では棒体26の中心軸)を中心として回転するように、棒体の端部と磁気結合している。また、第5の固定磁性部材35は、棒体28の端部と磁気結合する。
ケース22の上面を塞ぐ蓋板324は、ボール21aの上端部を露出させる開口部を有している。蓋板324から露出するボール21aの上端部は、手または指で触れることのできる部分を制約している。具体的には、ボール21aの直径の1/4程度、すなわち、ボール21aが複数の棒体の間の角度である45°だけ回転するように、蓋板324から露出している。第5の固定磁性部材35の吸引力は、Z軸方向の棒体を中心として、四方八方45°の範囲まで及ぶ強さを有している。
ユーザがボール21aに対してX軸方向に力を加えてボール21を回転させようとした場合、ボール21aは、棒体26を中心として動く。しかし、第5の固定磁性部材35の吸引力によって、ボール21aには、元の状態に戻る力が働くこととなる。よって、ユーザが、ボール21aから手または指を離すと、ボール21aは、第5の固定磁性部材35の吸引力により、X軸方向に操作したのと逆の方向に回転し、第5の固定磁性部材35の上に棒体28がきたところで安定する。このように、第3の実施形態では、ボール21aは、X軸方向に回転することができない。
このように、第3の実施形態では、ボールはX軸方向に回転することができず、ボールは元の位置に戻ってくることとなるので、ジョイスティックを操作しているような感覚をユーザに与えることができる。また、45°間隔で棒体26,28,301a,302bが配置されているので、Y軸方向に回転させる場合、ユーザは、45°回転毎にクリック節度感を得ることができる。したがって、X軸方向とY軸方向との操作感を異なるものとすることとなるので、操作ミス等を防止することに有効である。
なお、第3の実施形態に係るトラックボール装置を用いる場合、機器操作装置は、ボールがX方向へ、所定の角度(たとえば、30°)以上回転させられた場合、X方向への操作がなされたものとみなして、車載機器を制御するようにしてもよい。この場合、X軸方向の操作は、ジョイスティックのように操作毎にボールが戻るため、選択肢の少ないメニューの選択を行う場合に有効である。Y軸方向の操作は、クリック節度感のある回転操作を行うことができ、選択肢が多い場合のメニューの選択や値の設定などを行うときに有効である。
なお、図18に示すように、複数の棒体26,28,303,304,305,306をそれぞれの成す角度が等しくなるように配置してもよい。これにより、30°回転毎にクリック節度感をユーザに与えることができる。これら複数の棒体は、偶数本であることが好ましい。
なお、ケース22の上面を塞ぐ蓋板324は、平板に円形の孔を開けたものでなくてもよい。すなわち、手による1回の操作で回転可能な角度が、X方向とY方向で異なるようにしてもよい。蓋板324がY方向に大きな楕円の穴を設けているなどして、Y方向に回転可能な角度は、X方向に回転可能な角度よりも大きく設定することが好ましい。
なお、第1,第3,および第5の固定磁性部材31,33,35は、電磁石等、磁力の有無の切り換えが可能なユニットであってもよい。この場合、電磁石の磁力をなくすことによって、ボール21aが自由に回転するようなトラックボール装置として使用することができる。
(第4の実施形態)
図19は、本発明の第4の実施形態に係るトラックボール装置401が搭載された車両のコックピット部分の外観斜視図である。図19において、ハンドル400は、トラックボール装置401と、ボタン402とを備える。トラックボール装置401およびボタン402によって、第4の実施形態に係る機器操作装置が構成される。
トラックボール装置401は、操作対象となる車載機器を操作するための装置であって、ステアリングのスポーク部分に埋め込まれている。トラックボール装置401は、親指で操作しやすい位置に設置されている。図19において、トラックボール装置401は、左手親指で操作しやすい位置に設置されているが、この位置に限られるものではない。
ボタン402は、操作対象となる車載機器を選択するためのボタンであって、ステアリングのスポーク部分に埋め込まれている。ボタン402は、親指で操作しやすい位置に設置されている。図19において、ボタン402は、右手親指で操作しやすい位置に設置されているが、この位置に限られるものではない。
第1の実施形態と同様、ディスプレイ3は、機器操作装置からの指示に応じて、車載機器を操作するためのメニュー画面を表示する。
トラックボール装置401の構造は、第1の実施形態と同様である。したがって、図3〜5を援用することとする。ただし、第4の実施形態において、トラックボール装置401は、XY平面がハンドル400によって構成される平面上にくるように配置されている。図19では、理解のために、XYZ軸を図示している。図1と同様、XYZ軸の中心は、トラックボール装置401に含まれるボールの中心にあるものとする。
運転者がボール21にふれていない場合、第5の固定磁性部材35は、ボール21を引きつける。したがって、図3に示すように、ボール21は、ローラ40に密着するような状態で静止している。
次に、トラックボール装置401の操作方法について説明する。運転者は、ステアリングを把持しながら、親指でボール21をX方向またはY方向に操作する。ボール21を回転させるためには、指とボール21との間の摩擦力がボール21を静止させようとする磁力に打ち勝つ必要がある。したがって、ボール21を回転させるために、運転者は、指でボール21を押さえながら回転させる必要がある。よって、操作中に、ボール21が、ローラ40,41,42から離れることはない。
次に、機器操作装置を用いて、車載機器を操作するための方法について説明する。運転者は、まず、ステアリングに設置されたボタン402を押して、操作対象の車載機器を選択する。このとき、機器操作装置は、ボタン402が押された回数に応じて、操作対象の機器が何であるかをディスプレイ3に表示させる。また、機器操作装置は、ディスプレイ3の表示を切り換えると共に、現在の操作対象の車載機器を音声で案内する。音声で案内されることによって、運転者は、ディスプレイ3を視認することなく、現在の操作対象の車載機器を認識することができる。
運転者は、所望の車載機器が操作対象となった場合、トラックボール装置401を操作する。これに応じて、機器操作装置は、当該車載機器の動作を制御する。たとえば、空調システムを操作する場合、機器操作装置は、トラックボール21がY方向に動かされたら、吹き出し口を選択したり、温度や風量を調整する。トラックボール21がX方向に動かされたら、機器操作装置は、吹き出し口設定、温度設定、または風量設定を選択することとなる。これらについては、第1の実施形態の場合と同様である。
また、オーディオを操作する場合、機器操作装置は、Y軸正の方向にトラックボール21が動かされたら、ボリュームをアップし、Y軸負の方向にトラックボール21が動かされたら、ボリュームをダウンする。トラックボール21がX方向に動かされたら、機器操作装置は、トラックボールの回転角度に応じて、オーディオに再生すべき曲を選曲させる。
このように、第4の実施形態では、ハンドルにトラックボール装置を設置することによって、運転者は、各種車載機器を簡単に操作することができる。また、第4の実施形態で用いるトラックボール装置は、第1の実施形態で用いるものと同様であるので、従来のものと比較して、操作感は良好である。
なお、軸受け46A、46B,47A,48B,48A,48Bには、バネが内蔵されているようにしてもよい。これにより、ボール21が押されることによって、ローラ40,41,42に取り付けられている軸43,44,45が軸受け46A〜48Bのバネを押すこととなり、ローラ40,41,42が常に、ボール21に接触することとなる。このとき、バネの力は、磁力によってボール21がローラ40,41,42に押される力よりも十分弱くなければならない。
なお、第4の実施形態に用いるトラックボール装置は、第2の実施形態に係るトラックボール装置であってもよいし、第3の実施形態に係るトラックボール装置であってもよい。