JP2004137619A - 皮革様シートの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】外観、風合いが良好で、多種の着色剤が使用可能であり、機械的特性に優れ、生産効率が高く、製造時の環境負荷の少ない皮革様シートに関する。
【解決手段】0.3dtex以下の極細繊維から構成された不織布およびその内部に弾性重合体が含有されてなる皮革様シートを製造するに際し、特定の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体成分(A)と顔料着色剤を含みかつ融点が270℃以下の熱可塑性成分(B)からなる複合繊維を用いて不織布とする工程、および該複合繊維を水溶液で該成分(A)のみを抽出除去する工程を含むことを特徴とする皮革様シートの製造方法。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スエード調あるいはスムース調の皮革様シートに関する。さらに詳しくは、外観、風合いが良好で、多種の着色剤が使用可能であり、機械的特性に優れ、生産効率が高く、製造時の環境負荷の少ない皮革様シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
人工皮革は、例えば以下の工程を組み合わせることにより得られる。すなわち、海島構造繊維を製造する工程、該繊維からなる絡合不織布を製造する工程、必要に応じて不織布を仮固定する工程、該絡合不織布に弾性重合体液を含浸し、凝固させて緻密な発泡体を形成する工程、該繊維から海成分ポリマーを除去して極細繊維束に変性する工程(海成分ポリマーを除去後に弾性重合体を含浸しても良い)、染色する工程、表面加工する工程等を必要に応じて順次行うことにより得ることができる。
海島構造繊維は、皮革様シートを構成する熱可塑性ポリマーに対して相溶性が小さい熱可塑性ポリマーを海成分として複合または混合紡糸することにより得られる。海成分は、皮革様シートを構成する熱可塑性ポリマーと溶剤・分解剤に対する溶解性・分解性を異にして(皮革様シートを構成する熱可塑性ポリマーからなる島成分よりも溶解性・分解性が大きい)いなければならない。
従来、このような海成分としては例えばポリエチレン、ポリスチレン、共重合ポリエチレン、変性ポリエステル、などのポリマーから選ばれた少なくとも1種のポリマーが用いられている。例えばポリスチレンはトルエンにより、またポリエチレンはトリクレンにより容易に抽出可能であり、またスルホイソフタル酸ソーダ共重合ポリエチレンテレフタレート等の変性ポリエステルはアルカリにより除去可能である。そしてこの海島構造繊維から海成分ポリマーを抽出又は分解除去することにより極細繊維束にすることができる。
しかしながら、海成分を除去するときに有機溶剤やアルカリに浸漬して溶解または分解除去するために、抽出後に得られる熱可塑性ポリマーからなる繊維シートの強伸度等の機械的特性あるいは風合等の触感が劣化するという問題が有った。
また有機溶媒やアルカリを用いて抽出するために、製造時の作業環境が劣悪となりやすく、また得られた人工皮革に有機溶媒やアルカリ等が残らないように何度も洗浄する工程が必要であった。
また、一般に極細繊維は通常繊度の繊維に比較して染色性が劣るため、極細繊維からなるスエード素材などを染色し、濃色の色目を出そうとした場合には大量の染料を必要とし、耐光堅牢度、染色堅牢度等の品質面、およびコスト面などの問題がある。これらの対策として、極細繊維成分に着色剤を添加する方法、いわゆる原料着色(以下原着と言うこともある)と称される方法により、耐光堅牢度、染色堅牢度等の品質を向上しようとすることも多数提案されている。
【0003】
例えば島成分のポリエチレンテレフタレートにカーボンブラックを1%添加した海島型複合繊維が提案されている(例えば特許文献1参照)。また赤色顔料を5%添加した6−ナイロンを島成分とする混合紡糸繊維が提案されている(例えば特許文献2参照)。また、カーボンブラックを5%添加した6−ナイロンを島成分とする混合紡糸繊維や、カーボンブラックを主成分とする顔料を5%添加して重合したポリエステルとポリアミドがサイドバイサイドに並んだ多層中空貼り合せ繊維がそれぞれ提案されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。しかしながら、0.1デシテックス以下のポリアミド極細繊維の発色を充分にさせるためには、顔料を3〜10%添加しなければならず、顔料の添加による溶融粘度の上昇のため、紡糸時の糸切れ、孔詰まり、フィルター詰まりなどによる紡糸性の悪化、繊維物性の低下を余儀なくされ、濃色化と機械的物性の両立した皮革様シートとはならなかった。
【0004】
また、これらの紡糸性および繊維物性の改良として、ポリアミドの重合時にカーボンブラックを添加しさらに分散剤を添加する方法、液状ポリエステルを顔料の分散剤として用いたポリアミド原着用液状顔料を添加する方法、ポリアミド樹脂の減粘効果をもつ化合物の添加、ポリアミド原着用マスターバッチにおいて、該ポリアミド樹脂に酸変性ポリオレフィン、酸変性ポリエステルの微粉末を分散させる方法がそれぞれ提案されている(例えば、特許文献5〜8参照)。しかしこれらの分散剤、減粘剤を含有するマスターバッチを用いたのでは、ポリアミドの溶融紡糸時に分散剤の分解、増粘による凝集、相分離また減粘剤の発泡、相分離が生じ、紡糸口金からのベンディングや断糸が生じ、特に濃色化のため着色剤含有率を3%/原着糸質量以上にするとこの傾向が益々顕著になり、このことがポリアミド原着糸の生産性と繊維物性を阻害する大きな原因となり、濃色化と機械的物性を兼ね備えた皮革様シート基体とはならなかった。
【0005】
マスターバッチに使用する着色剤としては、アゾ系、フタロシアニン系、ペリレン系、アンスラキノン系などの有機系顔料、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、群青などの無機系顔料を挙げることができる。しかし極細繊維を工業的に得る最も有力な方法として、本発明のごとく極細化繊維を用いて、その一成分を除去もしくは剥離させる手段が知られているが、一般的にそのような極細化処理工程において、従来手法で除去成分としてポリオレフィン系樹脂を使用した場合、除去処理で有機溶剤を使用するため有機系顔料は顔料の一部が溶剤中に溶け出す欠点がある。このためポリオレフィン系樹脂を除去成分とする極細化手法においては、着色剤としては実質的に無機系顔料のみに限定されるといった欠点があった。
【0006】
【特許文献1】
特公昭48−11925号公報
【特許文献2】
特公昭55−504号公報
【特許文献3】
特公昭59−12785号公報
【特許文献4】
特公昭59−44416号公報
【特許文献5】
特公昭54−37997号公報
【特許文献6】
特開平4−50265号公報
【特許文献7】
特開平4−352814号公報
【特許文献8】
特開平8−157713号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述の問題点を解決するものであり、水溶液抽出のために、抽出による着色剤の染み出しが起こらないため、十分な発色が可能であり、さまざまな種類の有機系着色剤の使用が可能であり、強度等の機械的特性あるいは風合等の触感の劣化等が起こらず、しかも抽出廃液が生分解されるために、製造時の環境負荷が低減される皮革様シートを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
そして、本発明は、0.3dtex以下の極細繊維から構成された不織布およびその内部に弾性重合体が含有されてなる皮革様シートを製造するに際し、下記(1)および(2)を満足する水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体成分(A)と顔料着色剤を含みかつ融点が270℃以下の熱可塑性成分(B)からなる複合繊維を用いて不織布とする工程、および該複合繊維を水溶液で該成分(A)のみを抽出除去する工程を含むことを特徴とする皮革様シートの製造方法である。
(1)粘度平均重合度200〜500、ケン化度90〜99.99モル%、ビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率が70〜99.9モル%、融点160℃〜230℃、およびアルカリ金属イオンがナトリウムイオン換算で0.0003〜1質量%含有されていること、
(2)炭素数4以下のオレフィン単位および/またはビニルエーテル単位を1〜20モル%含有すること、
【0009】
なお、本発明の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体成分(A)(以下PVAと略すこともある)とは、ポリビニルアルコールのホモポリマーは勿論のこと、例えば、共重合、末端変性、および後反応により官能基を導入した変性ポリビニルアルコールも包含するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられるPVAは水溶液(水単体でも良い)に対して高い溶解性を持ち、該PVAと着色剤を含有する融点が270℃以下の熱可塑性ポリマーを用い、潜在的に極細化が可能な複合繊維を製造した後に該PVAを水溶液で溶解抽出することにより、皮革様シートに好適な0.3dtex以下の着色剤を含有する融点が270℃以下の熱可塑性ポリマー成分からなる極細繊維とそれを用いてなる風合の優れた皮革様シートを得ることが可能である。
【0011】
本発明に用いられるPVAの粘度平均重合度(以下、単に重合度と略記する)は200〜500であり、230〜470が好ましく、250〜450が特に好ましい。重合度が200未満の場合には紡糸時に十分な曳糸性が得られず、繊維化できない。重合度が500を越えると溶融粘度が高すぎて、紡糸ノズルからポリマーを吐出することができない。また重合度500以下のいわゆる低重合度のPVAを用いることにより、水溶液で溶解するときに溶解速度が速くなるという利点が有る。
【0012】
ここで言うPVAの重合度(P)は、JIS−K6726に準じて測定される。すなわち、PVAを再ケン化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求められるものである。
P=([η]×10/8.29)(1/0.62)
重合度が上記範囲にある時、本発明の目的が達せられる。
【0013】
本発明のPVAのケン化度は90〜99.99モル%でなければならない。そして93〜99.98モル%が好ましく、94〜99.97モル%がより好ましく、96〜99.96モル%が特に好ましい。ケン化度が90モル%未満の場合には、PVAの熱安定性が悪く熱分解やゲル化によって満足な溶融紡糸を行うことができないのみならず、後述する共重合モノマーの種類によってはPVAの水溶性が低下し、本発明の複合繊維を得ることができない場合がある。
一方、ケン化度が99.99モル%よりも大きいPVAは安定に製造することができず、また、安定した繊維化も難しい。
【0014】
本発明で使用されるPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。PVAを溶解した後の廃液の処理には活性汚泥法が好ましい。該PVA水溶液を活性汚泥で連続処理すると2日間から1ヶ月で分解される。また、本発明に用いるPVAは燃焼熱が低く、焼却炉に対する負荷が小さいので、PVAを溶解した排水を乾燥させてPVAを焼却処理してもよい。
【0015】
生分解性の点から該PVAのケン化度は90〜99.99モル%であり、92〜99.98モル%が好ましく、93〜99.97モル%がより好ましい。
【0016】
本発明に用いられるPVAの融点(Tm)は160〜230℃であり、170〜227℃が好ましく、175〜224℃がより好ましく、180〜220℃が特に好ましい。融点が160℃未満の場合にはPVAの結晶性が低下し繊維強度が低くなると同時に、PVAの熱安定性が悪くなり、繊維化できない場合がある。一方、融点が230℃を越えると溶融紡糸温度が高くなり紡糸温度とPVAの分解温度が近づくためにPVA繊維を安定に製造することができない。
【0017】
PVAの融点は、DSC(TA3000、パーキンエルマー社製)測定器を用いて、窒素中、昇温速度10℃/分で250℃まで昇温後、室温まで冷却し、再度昇温速度10℃/分で250℃まで昇温した場合のPVAの融点を示す吸熱ピークのピークトップの温度を意味する。
【0018】
本発明のPVAは、ビニルエステル単位をケン化することにより得られる。ビニルエステル単位を形成するためのビニル化合物単量体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、これらの中でも本発明のPVAを得る点からは酢酸ビニルが好ましい。
【0019】
本発明で使用されるPVAは、ホモポリマーであっても共重合単位を導入した変成PVAであってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、共重合単位を導入した変性PVAを用いることが好ましい。
【0020】
共重合単量体の種類としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のαーオレフィン類、アクリル酸およびその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸i−プロピル等のアクリル酸エステル類、メタクリル酸およびその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸i−プロピル等のメタクリル酸エステル類、アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、ビニルトリメトキシシラン等のビニルシリル類、酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のαーオレフィン類、フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸または無水イタコン酸等に由来するカルボキシル基を有する単量体;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等に由来するスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等に由来するカチオン基を有する単量体が挙げられる。これらの単量体の含有量は、通常20モル%以下である。
【0021】
これらの単量体の中でも、入手のしやすさなどから、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有のビニルエーテル類、アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類、オキシアルキレン基を有する単量体、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有のα−オレフィン類に由来する単量体が好ましい。
【0022】
特に、共重合性、溶融紡糸性および繊維の水溶性の観点からエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテンの炭素数4以下のα−オレフィン類、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類がより好ましい。炭素数4以下のα−オレフィン類および/またはビニルエーテル類に由来する単位は、PVA中に1〜20モル%存在していることが必要であり、さらに4〜15モル%が好ましく、6〜13モル%が特に好ましい。
さらに、α−オレフィンがエチレンである場合において、繊維物性が高くなることから、特にエチレン単位が4〜15モル%であることが好ましく、6〜13モル%導入されたPVAを使用することがより好ましい。
【0023】
本発明で使用されるPVAは、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。その中でも、無溶媒あるいはアルコールなどの溶媒中で重合する塊状重合法や溶液重合法が通常採用される。溶液重合時に溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合に使用される開始剤としては、a、a`−アゾビスイソブチロニトリル、2,2`ーアゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、過酸化ベンゾイル、nープロピルパーオキシカーボネートなどのアゾ系開始剤または過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。重合温度については特に制限はないが、0℃〜150℃の範囲が適当である。
【0024】
本発明のPVAにおけるアルカリ金属イオンの含有割合は、ナトリウムイオン換算で0.0003〜1質量%であり、0.0003〜0.8質量%が好ましく、0.0005〜0.6質量%がより好ましく、0.0005〜0.5質量%が特に好ましい。アルカリ金属イオンの含有割合が0.0003質量%未満の場合には、得られた十分な水溶性を示さず未溶解物が残る場合がある。またアルカリ金属イオンの含有量が1質量%より多い場合には溶融紡糸時の分解及びゲル化が著しく繊維化することができない。
アルカリ金属イオンとしては、カリウムイオン、ナトリウムイオン等があげられる。
【0025】
本発明において、特定量のアルカリ金属イオンをPVA中に含有させる方法は特に制限されず、PVAを重合した後にアルカリ金属イオン含有の化合物を添加する方法、ビニルエステルの重合体を溶媒中においてケン化するに際し、ケン化触媒としてアルカリイオンを含有するアルカリ性物質を使用することによりPVA中にアルカリ金属イオンを配合し、ケン化して得られたPVAを洗浄液で洗浄することにより、PVA中に含まれるアルカリ金属イオン含有量を制御する方法などが挙げられるが後者のほうが好ましい。
なお、本発明におけるPVA中に含まれるアルカリ金属イオンの含有量は、原子吸光法で求めることができる。
【0026】
ケン化触媒として使用するアルカリ性物質としては、水酸化カリウムまたは水酸化ナトリウムがあげられる。ケン化触媒に使用するアルカリ性物質のモル比は、酢酸ビニル単位に対して0.004〜0.5が好ましく、0.005〜0.05が特に好ましい。ケン化触媒は、ケン化反応の初期に一括添加しても良いし、ケン化反応の途中で追加添加しても良い。
ケン化反応の溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどがあげられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく、含水率を0.001〜1質量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.003〜0.9質量%に制御したメタノールがより好ましく、含水率を0.005〜0.8質量%に制御したメタノールが特に好ましい。洗浄液としては、メタノール、アセトン、酢酸メチル、酢酸エステル、ヘキサン、水などがあげられ、これらの中でもメタノール、酢酸メチル、水の単独もしくは混合液がより好ましい。
洗浄液の量としてはアルカリ金属イオンの含有割合を満足するように設定されるが、通常、PVA100質量部に対して、300〜10000質量部が好ましく、500〜5000質量部がより好ましい。洗浄温度としては、5〜80℃が好ましく、20〜70℃がより好ましい。洗浄時間としては20分間〜10時間が好ましく、1時間〜6時間がより好ましい。
【0027】
本発明において、トライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基とは、PVAのd6−DMSO溶液での500MHz プロトンNMR(JEOL GX−500)装置、65℃測定による水酸基プロトンのトライアッドのタクティシティを反映するピーク(I)を意味する。
ピーク(I)はPVAの水酸基のトライアッド表示のアイソタクティシティ連鎖(4.54ppm)、ヘテロタクティシティ連鎖(4.36ppm)およびシンジオタクティシティ連鎖(4.13ppm)の和で表わされ、全てのビニルアルコールユニットにおける水酸基のピーク(II)はケミカルシフト4.05ppm〜4.70ppmの領域に現れることから、本発明のビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率は、(I)/(II)×100%で表されるものである。
【0028】
本発明の複合繊維におけるPVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量は70〜99.9モル%であり、74〜97モル%が好ましく、75〜96モル%がより好ましく、76〜95モル%が特に好ましい。
PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が70モル%未満である場合には、ポリマーの結晶性が低下し、繊維強度が低くなると同時に、溶融紡糸時に繊維が膠着して巻取り後に巻き出しできない場合がある。また本発明で目的とする水溶性の熱可塑性繊維が得られない場合がある。
PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が99.9モル%を越える場合には、ポリマーの融点が高いため溶融紡糸温度を高くする必要があり、その結果、溶融紡糸時のポリマーの熱安定性が悪く、分解、ゲル化、ポリマー着色が起こる。
【0029】
また、本発明のPVAがエチレン変性のPVAである場合、下記式を満足することで本発明の効果は更に高くなるものである。
−1.5×Et+100≦モル分率≦−Et+85
ここで、モル分率(単位:モル%)はビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率を表し、Etはビニルアルコール系重合体が含有するエチレン含量(単位:モル%)を表す。
【0030】
本発明に用いる融点が270℃以下の熱可塑性ポリマーは、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリヘキサメチレンテレフタレート等の芳香族ポリエステル、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリヒドロキシブチレート−ポリヒドロキシバリレート共重合体、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルおよびその共重合体、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン10、ナイロン12、ナイロン6−12等の脂肪族ポリアミドおよびその共重合体、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィンおよびその共重合体、エチレン単位を25モル%から70モル%含有する変性ポリビニルアルコール、ポリスチレン系、ポリジエン系、塩素系、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリアミド系、フッ素系のエラストマー等の中から少なくとも一種類を選んで用いることができる。
本発明に用いるPVAと複合紡糸しやすい点からは、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ナイロン6、ナイロン6−12、ポリプロピレンおよびエチレン単位を25モル%から70モル%含有する変性ポリビニルアルコールが好ましい。
特に、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルを一成分とする複合繊維から他方の成分を除去して、脂肪族ポリエステルからなる繊維を製造するに当たり、該他方の成分を水以外の薬品で抽出すると、脂肪族ポリエステル繊維の劣化、分解を伴うので、かかるポリエステルを一成分とする複合繊維を製造するにおいては、本発明に示したPVAを他方成分とすることが有効である。
さらに、本発明において、融点が270℃以下の熱可塑性ポリマーとして、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルを使用すると、ポリ乳酸自体が生分解性を有し、ポリビニルアルコール成分も抽出後の水溶液として生分解性を示し、複合繊維全体が生分解性の重合体からなるので好ましい。
【0031】
また本発明の目的や効果を損なわない範囲で、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体成分(A)および融点270℃以下の熱可塑性ポリマーには必要に応じて銅化合物等の等の安定剤、着色剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、可塑剤、潤滑剤、結晶化速度遅延剤を重合反応時、またはその後の工程で添加することができる。特に熱安定剤としてヒンダードフェノール等の有機系安定剤、ヨウ化銅等のハロゲン化銅化合物、ヨウ化カリウム等のハロゲン化アルカリ金属化合物を添加すると、繊維化の際の溶融滞留安定性が向上するので好ましい。
【0032】
また必要に応じて平均粒子径が0.01μm以上5μm以下の微粒子を0.05質量%以上10質量%以下、重合反応時、またはその後の工程で添加することができる。微粒子の種類は特に限定されず、たとえばシリカアルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の不活性微粒子を添加することができ、これらは単独で使用しても2種以上併用しても良い。特に平均粒子径が0.02μm以上1μm以下の無機微粒子が好ましく、紡糸性、延伸性が向上する。
【0033】
天然皮革のような風合いの優れた皮革様シートを得るためには、該シートを構成する繊維を極細化する必要がある。具体的にはシートを構成する繊維の繊度は0.3dtex以下でなくてはならない。好ましくは0.05dtex以下であり、より好ましくは0.01dtex以下である。本発明に用いる複合繊維は、前述の様にして得られた水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)を海成分にし、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体(A)に対して相溶性が小さい1種以上の融点が270℃以下の熱可塑性ポリマーを複合または混合紡糸することにより得られる。
【0034】
島成分となる融点が270℃以下の熱可塑性ポリマーは紡糸条件下でPVAより溶融粘度が大きく、かつ表面張力が小さいポリマーが好ましい。またPVAと水溶液に対する溶解性又は分解性を異にして(PVAよりも溶解性又は分解性が小さい)いることが好ましい。またPVAとの相溶性の小さいポリマーであり、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンおよびエチレン単位を25モル%から70モル%含有する変性ポリビニルアルコールから選ばれる少なくとも1種の熱可塑性ポリマーである。そしてこの海島構造繊維から海成分であるPVAを抽出又は分解除去することにより極細繊維束にすることができる。
【0035】
本発明において海島構造繊維とは、繊維横断面において、海成分が島成分ポリマーにより複数個に分割されていてもよく、例えば海成分ポリマーと島成分ポリマーとがそれぞれ層となり、多層貼り合わせ状態となっているような繊維や島成分が芯鞘構造になっている繊維であってもよい。なお島成分ポリマーは繊維長さ方向にエンドレスで連なっていても、あるいは不連続の状態であってもよい。
混合紡糸による方法では、PVA(A)と熱可塑性成分(B)とを、押し出し機で溶融混練し、引き続き紡糸ノズルから吐出させて巻取り、繊維化することが出来る。
また複合紡糸による方法では、PVA(A)と熱可塑性成分(B)とをそれぞれ別の押し出し機で溶融混練し、引き続き同一の紡糸ノズルから吐出させて巻き取り、繊維化することが出来る。
【0036】
皮革様シートの風合いを向上させる目的で、シートを構成する繊維を極細化させると、染料による濃色化が非常に困難になる。染料による極細繊維の濃色化の染色法の問題点を解決する手段として、融点270℃以下の熱可塑性ポリマーに着色剤を添加する手法を用いる。この具体的方法として、融点270℃以下の熱可塑性ポリマーの重合時に着色剤を添加する方法があるが、融点270℃以下の熱可塑性ポリマーの重合時に、金属触媒や有機塩もしくは無機塩などのイオン性物質が存在する場合、これらのイオン物質が顔料の凝集を促進し、顔料粒子を均一に分散しての重合過程において凝集しやすく均一な分散状態となり難い傾向がある。この方法は、融点270℃以下の熱可塑性ポリマー重合と同時に原着ペレットが出来上がりプロセス的には簡単な方法であるが、重合設備ラインの洗浄に多大の労力を伴う傾向がある。そこで本発明では、融点270℃以下の熱可塑性ポリマーの未着色ペレットと着色剤をエクストルーダーなどのコンパクトな設備を用いて融点270℃以下の熱可塑性ポリマーの溶融状態で混練した後ペレット化したマスターバッチを使用することが好ましい。
【0037】
海成分に水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(A)以外の、ポリオレフィン系樹脂等で代表される溶剤可溶性樹脂を用いると、極細化処理工程においてトルエン等に代表される有機溶剤を使用する必要がある。この際、融点が270℃以下の熱可塑性成分(B)中に添加されている着色剤が、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン、群青などの無機系顔料であれば、着色剤の抽出浴への溶出は実質的に起こりにくく、製造工程に支障をきたすことはないが、より製品のバリエーションを充足させるべく多色化を行う目的で、アゾ系、フタロシアニン系、ペリレン系、アンスラキノン系などの有機系顔料を用いた場合、有機溶剤を用いて抽出処理を行うため、着色剤が抽出浴へ溶出し、抽出浴の汚染、単繊維繊度が0.3dtex以下の成分(B)中に添加されている着色剤の減量による淡色化が起こり、実質的に有機系顔料を使用することは不可能である。また海成分に、ポリオレフィン系樹脂を用いた場合、極細化処理工程においてトルエン等に代表される有機溶剤を使用する必要があるため、島成分に海成分と異なるポリオレフィン系樹脂を用いるとトルエン処理によって溶出してしまうため、事実上海成分にポリオレフィン系樹脂を用いることが出来ない。
【0038】
海成分に変性ポリエステルを用いた場合、極細化処理工程において熱アルカリ溶液を用いるために、シートを構成する繊維が0.3dtex以下の成分(B)がポリエステルの場合、成分(B)の加水分解反応によって繊維強度が低下しシートの脆化が起こるため、成分(B)はポリエステル以外の熱可塑性樹脂に限定されるといった欠点がある上に、着色剤によってはアルカリ処理によって変性を起こし色調が変化したり、淡色化が起こる場合も有るために好ましくない。またポリエステル以外の熱可塑性樹脂を用いた場合においても、熱アルカリ処理によって繊維強度の低下が起こり、シートの脆化が起こる場合も有る。
【0039】
しかしながら、本発明の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分(A)を海成分として用いると、抽出工程に水溶液を用いることから、着色剤の抽出浴への溶出が実質的に起こらないため、成分(B)に添加される着色剤は無機系のみならずこれまで不可能であった有機系顔料の使用が可能となり、製品シートの色調が大幅に充実する可能性が見出された。また本発明の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分(A)を海成分として用いる潜在的に極細化が可能な繊維において、水溶液で水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分(A)を除去処理する際に、収縮挙動により、島成分の極細繊維間に構造捲縮が発現することで、不織布が嵩高く緻密なものとなり、風合の優れた皮革様シートが得られることも見出されている。また本発明の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分(A)を海成分として用いる潜在的に極細化が可能な繊維において、水溶液で水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分(A)を除去処理する際に、成分(B)の分解反応が実質的に起こらないために、成分(B)に用いる熱可塑性樹脂の限定がないことも大きな特徴である。
【0040】
本発明の顔料着色剤の含有量は、熱可塑性成分(B)に対して、0.5〜5.0質量%であることが好ましい。0.5質量%未満の場合には、極細繊維の発色性が低下する傾向にあり、この傾向は、極細化が進むほど顕著に表れる傾向がある。また、5.0質量%を越えた場合には、繊維物性さらには得られる皮革様シートの物性が低下する傾向がある。
【0041】
紡糸ノズルから吐出された該海島構造繊維は通常延伸処理される。延伸はノズルから吐出された後に一旦巻き取ってから延伸する場合と、捲き取る前に延伸する場合が有るがいずれでもよい。延伸方法は通常熱延伸されるが、熱風、熱板、熱ローラー、水浴等のいずれを用いて行ってもよい。ただし、本発明のPVAは水溶液抽出されやすいので、シート状にしてから抽出する場合には40℃以上の水浴で延伸することよりは、水分の影響の少ない熱風で延伸することが好ましい。
該繊維からなる絡合不織布を製造するには、捲縮後カードで解繊し、ウェッバーを通してウェッブを形成し、得られた繊維ウェッブは、所望の重さ、厚さに積層し、次いで、公知の方法、例えばニードルパンチ方法や高圧水流絡合処理方法等で絡合処理を行って不織布とするか、あるいはこのステープルを編織布に水流やニードル等を使用して絡合させ、布帛とする。必要に応じて熱可塑性ポリマーの単独糸、レーヨン、キュプラ、麻、綿等を混綿しても良い。
【0042】
なお、必要に応じて上記方法により製造された不織布の構成繊維の表面を溶融して不織布構成繊維間を接着し、不織布を仮固定する処理を行ってもよい。本発明に用いるPVAは熱可塑性なので、融点付近の温度で熱圧着しても良いし、該PVAは吸湿すると低温でも接着性を有するので、20〜50℃の水浴に浸せき後に熱圧着しても良い。この処理を行うことにより、その後に行う弾性重合体溶液の含浸等の工程で不織布が張力等により構造破壊することを防ぐことができる。
【0043】
次に、該不織布に弾性重合体液を含浸し、加熱乾燥することでゲル化させるかあるいは弾性重合体の非溶剤を含む液に浸漬して湿式凝固することで弾性重合体の緻密な発泡スポンジを形成する。ここで含浸する弾性重合体としては、例えば、平均分子量500〜3000のポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカーボネートジオール等のジオールあるいはポリエステルポリエーテルジオール等の複合ジオール等から選ばれた少なくとも1種類のポリマージオールと、4、4’ージフェニルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどの芳香族系、脂環族系、脂肪族系のジイソシアネートなどから選ばれた少なくとも1種類のジイソシアネートと、エチレングリコール、イソホロンジアミン等の2個以上の活性水素原子を有する少なくとも1種類の低分子化合物とを所定のモル比で反応させて得たポリウレタンおよびその変性物が挙げられ、その他に、ポリエステルエラストマー、スチレン−イソプレンブロック共重合体の水素添加物等の弾性重合体およびアクリル系等の樹脂なども挙げられる。またこれらを混合した重合体組成物でもよい。しかし、柔軟性、弾性回復性、スポンジ形成性、耐久性等より上記のポリウレタンが好ましく用いられる。
【0044】
この重合体液には必要に応じて着色剤、凝固調節剤、酸化防止剤、分散剤等の添加剤が配合されていてもよい。特に、着色剤が弾性重合体に対して1〜5質量%含有されることが好ましく、着色された極細繊維と共色であることがより好ましい。そして、海成分除去後の繊維シートに占める弾性重合体の比率は皮革様シートに対して固形分として質量比で10%以上が好ましく、30〜50%の範囲がより好ましい。弾性体比率が10%未満では緻密な弾性体スポンジが形成されにくく、極細繊維発生後の極細繊維の素抜けが生じやすくなる。
【0045】
また本発明の複合繊維は、溶融紡糸法で製造されるので、ジメチルスルホキシドやメタノール等の有機溶媒を用いる溶媒湿式紡糸法と異なり、製造時の作業環境が良好で、得られた繊維に微量の有機溶媒が残存するという問題もない。
【0046】
本発明の製造方法に関して、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体成分(A)を抽出後に融点が270℃以下の熱可塑性成分(B)における顔料着色剤残存率が90%以上であり、かつ抽出後の繊維の抽出前に対する強度保持率が80%以上となることが好ましい。顔料着色剤残存率が90%未満の場合には、極細繊維の十分な発色性が得られにくく、抽出浴が汚染された状態で長時間処理を行うことによって、処理の先頭と後尾の色が異なったり、堅牢性が低下する傾向にある。また、強度保持率が80%未満の場合には得られる機械特性が低下する傾向にある。このような好適な範囲とするために、予め水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体成分(A)の水溶液に対する溶解性を調査し、抽出条件設定することが好ましい。
【0047】
本発明の水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール成分(A)は100℃〜50℃の水溶液で完全に溶解される。例えば1gの該繊維を300ccの水に入れ、90℃で1時間の溶解処理を施し目視観察すると、未溶解物が無く完全に溶解していることがわかる。該繊維を溶解する水溶液には、通常は軟水が用いられるがアルカリ水溶液、酸性水溶液等であってもよいし、界面活性剤や浸透剤を含んだものであってもよい。
そして、溶解処理温度は目的および本発明の繊維の性質に応じて適宜調整すればよいが、例えば処理温度は高く温度に応じて処理時間が短く設定することが好ましい。熱水を用いて溶解する場合には、50℃以上で処理するのが好ましく、60℃以上がさらに好ましく、70℃以上が特に好ましく、80℃以上が最も好ましい。またPVAからなる溶融紡糸繊維の溶解処理は該繊維の分解を伴うものであってもよい。
【0048】
溶解された該PVAはそまま自然界に放出してもいずれは分解されて水と炭酸ガスになるが、活性汚泥で処理する方が早期に分解されるために環境的に好ましい。
本発明のPVAは生分解性を有しており、活性汚泥処理あるいは土壌に埋めておくと分解されて水と二酸化炭素になる。該繊維を活性汚泥で連続処理すると2日間で分解される。生分解性の点から該繊維のけん化度は90〜99.99モル%が好ましく、92〜99.98モル%がより好ましく、93〜99.97モル%が特に好ましい。
【0049】
本発明の皮革様シートは、その表面を毛羽立て、柔軟化処理、染色処理することによりスエード調の人工皮革が得られる。毛羽立てる方法としてはサンドペーパーや針布等を用いたバフがけを用いることができる。
また、公知の方法により所望の条件にてエンボス加工、柔軟化処理、染色などの処理で銀付き調、または半銀付き調の皮革様シートとすることもできる。
【0050】
このような皮革用シートからは、靴、鞄、手袋、小物入れ等の雑貨の他、ソファーの上張り材等のインテリア用品、衣料等の用途に用いることができる。
【0051】
【実施例】
次に本発明を具体的に実施例で説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の部及び%はことわりのない限り質量に関するものである。
【0052】
[熱可塑性樹脂の融点]
DSC(TA3000、パーキンエルマー社)を使用し、試料10mg、昇温速度10℃/分の条件で窒素雰囲気下で測定した。
【0053】
[PVAの分析方法]
PVAの分析方法は特に記載のない限りはJIS−K6726に従った。変性量は変性ポリビニルエステルあるいはPVAを用いて500MHz プロトン NMR(JEOL GX−500)装置による測定から求めた。アルカリ金属イオンの含有量は原子吸光法で求めた。
【0054】
本発明のPVAのトライアッド表示による3連鎖の水酸基量の割合は以下の測定により求めた。
本発明のPVAをケン化度99.5モル%以上にケン化後、十分にメタノール洗浄を行い、次いで90℃減圧乾燥を2日間行ったPVAを用いて、d6−DMSOに溶解した試料を500MHz プロトン NMR(JEOL GX−500)装置により65℃測定を行った。PVA中のビニルアルコールユニットの水酸基由来のピークはケミカルシフト4.05ppmから4.70ppmの領域に現れ、この積分値をビニルアルコールユニット量(II)とする。PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基はそれぞれアイソタクティシティ連鎖の場合4.54ppm、ヘテロタクティシティ連鎖の場合4.36ppmおよびシンジオタクティシティ連鎖の場合は4.13ppmに現れる。この3者の積分値の和をトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基量(I)とする。
本発明のPVAのビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率は、(I)/(II)×100で表される。
【0055】
[繊維化工程性評価]
100kgの繊維を紡糸する際に何回断糸するかによって、次のように評価した。
○:3回以内/100kg
△:4回〜7回/100kg
×:8回以上/100kg
【0056】
[繊維の強度・伸度]
JIS L1013に準じて測定した。
【0057】
[水溶性]
得られた海島構造繊維1gと100gの水を容器に入れ、90℃の温度で1時間攪拌処理し、島繊維成分を除いた後の処理液を濾紙を用いて濾過した後、濾紙上の未溶解物を絶乾させて量を測り、次式により溶解率を求めて評価した。
溶解率=(X−Y)/X×100(%)
X:該海島構造繊維1g中に含まれる水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール(A)の質量(g)
Y:絶乾した未溶解物の質量(g)
○:溶解率80%以上
△: 〃  50%以上80%未満
×: 〃  50%未満
【0058】
[皮革様シートの風合]
人工皮革の開発にかかわる者10人が下記評価方法にて評価した結果、最も多い評価を占めた結果を示す。
◎:非常に柔らかい天然皮革並の風合い
○:柔らかい天然皮革並の風合
△:やや硬い風合い
×:硬くゴム感の有る風合い
【0059】
[顔料着色剤残存率、強度保持率の算出]
任意の除去成分(A)と、所定の含有率で顔料着色剤を含有する任意の島成分(B)とを、海島構造型溶融複合紡糸用口金を用い、口金より溶融吐出し紡糸した。成分(A)を海成分かつ40質量%となるようにし、島成分(B)を島成分かつ60質量%となるように海島構造繊維の製造を行った。該紡糸繊維をローラープレート方式で通常の条件により延伸し、約140dtex/48fのマルチフィラメントを得た。該繊維の強度を測定し、成分(A)除去前の強度とした。該繊維を筒編み状とし20g計量し、除去成分(A)に適した除去手法で成分(A)を除去した。成分(A)除去後の島成分(B)の質量および強度を測定し、下式により着色剤残存率および強度保持率を算出した。測定は5回行い、平均値を顔料着色剤残存率、強度保持率とした。
顔料着色剤残存率(%)=100×{(20×0.6×顔料着色剤含有率×1/100)−(20×0.6−成分(A)除去後の島成分(B)の質量)}/20×0.6×顔料着色剤含有率×1/100
強度保持率(%)=100×成分(A)除去後の島成分(B)の強度/成分(A)除去前の強度
【0060】
[皮革様シートの坪量]
JIS P8124に準じて、得られた皮革様シートを10cm角に切り取り、その質量Wを電子天秤(メトラー社:AE160)で測定し、W/0.01により坪量(g/m)を求めた。
【0061】
以下、製造例、実施例、比較例について述べる。製造例1〜7については、水溶性熱可塑生ポリビニルアルコールを用いた極細繊維の製造に関するものであり、実施例1〜9、および比較例1〜6は該極細繊維を用いた皮革様シートに関するものである。
【0062】
[製造例1]
[水溶性熱可塑生ポリビニルアルコールの製造]
攪拌機、窒素導入口、エチレン導入口および開始剤添加口を備えた100L加圧反応槽に酢酸ビニル29.0kgおよびメタノール31.0kgを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9kg/cmとなるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液170mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9kg/cmに、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて610mL/hrでAMVを連続添加して重合を実施した。10時間後に重合率が70%となったところで冷却して重合を停止した。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が50%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液200g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニルの酢酸ビニルユニットに対してモル比(MR)0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してケン化を行った。アルカリ添加後約2分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、60℃で1時間放置してケン化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥した。
【0063】
得られたPVAのケン化度は98.4モル%であった。また該PVAを灰化させた後、酸に溶解したものを用いて原子吸光光度計により測定したナトリウムの含有量は、PVA100質量部に対して0.03質量部であった。また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをd6−DMSOに溶解し、500MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレンの含有量は10モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5でケン化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置してケン化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたPVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ330であった。該精製PVAの1,2−グリコール結合量および水酸基3連鎖の水酸基の含有量を5000MHzプロトンNMR(JEOL GX−500)装置による測定から前述のとおり求めたところ、それぞれ1.50モル%および83%であった。さらに該精製されたPVAの5%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ206℃であった。結果を表1および表2に示す。
【0064】
【表1】
Figure 2004137619
【0065】
【表2】
Figure 2004137619
【0066】
次に、ソルビトール1モルに対してエチレンオキサイドを2モル付加した化合物を二軸押出機を用いて上記で得られたPVAに5質量%添加した可塑剤添加PVAを作成した。得られた可塑剤添加PVAを海成分に用い、カーボンブラックを2.0質量%含有する固有粘度0.65(フェノ−ル/テトラクロロエタンの等質量混合溶液にて30℃で測定)のイソフタル酸(IPAと略すこともある)10モル%含有したポリエチレンテレフタレ−トチップを島成分(B)とし、島成分が37島となるような溶融複合紡糸用口金を用い、240℃で口金より吐出し紡糸した。該紡糸繊維をローラープレート方式で通常の条件により延伸し、約70dtex/24fのマルチフィラメントを得た。紡糸性、連続ランニング性、延伸性は良好で全く問題がなかった。また、海成分(A)の水溶性についても90℃の水中で1時間処理した結果、96%の溶解率となり、実質的に完全に海成分が抽出され、島成分の極細繊維の平均デニール(1本の繊維束に存在する極細繊維の全断面積を本数で割ることにより求める)が約0.05dtexの原着極細繊維が得られた。
【0067】
[製造例2〜5]
製造例1で用いたPVAの代わりに表1および表2に示すPVAを用いること以外は製造例1と同様の方法でマルチフィラメントを得た。紡糸性、延伸性は良好であり、水溶性についても問題なかった。
【0068】
[製造例6〜12]
製造例1で用いたPVAの代わりに表1および表2に示すPVAを用いること以外は製造例1と同様に紡糸を実施した。製造例6及び10はPVAの溶融粘度が高すぎて巻取り不可であった。製造例7はPVAの溶融粘度が低すぎて曳糸性不良となり、単糸切れが頻発した。製造例8及び12はPVAが熱分解、ゲル化を起こして紡糸性が悪く巻き取れなかった。製造例9は、PVAの結晶性が低下しているためと推定される糸の膠着が起こり、解舒することが安定してできず、延伸性不良であった。製造例11は、紡糸性、延伸性は問題なかったが、90℃の水中で1時間処理しても、未溶解物が多く残り、水溶性不良であった。
【0069】
[皮革様シートの製造]
[実施例1]
製造例1で製造した島数が37島である海島構造繊維に、捲縮機で捲縮を付与し51mmにカットしてステープル化した。このステープルをクロスラップ法で目付500g/mのウェッブを形成、ついで両面から交互に1050P/cmのニードルパンチングをおこなった。さらにカレンダーロールでプレスすることで表面の平滑な絡合不織布をつくった。この絡合不織布の目付は520g/m、見かけ比重は、0.41であった。この絡合不織布にポリテトラメチレンエーテル系ポリウレタンを主体とする固型分13%のポリウレタンのトリクロールエチレン溶液を含浸し、40℃のジメチルホルムアミド(DMFと略すこともある)/水混合液の中に浸して湿式凝固した後、95℃の熱水中で複合紡糸繊維中の海成分を抽出除去して極細繊維束を発現させ、厚さ1.5mmのシートを得た。極細繊維の平均デニール(1本の繊維束に存在する極細繊維の全断面積を本数で割ることにより求める)は0.049dtexであった。繊維シート中のポリウレタンの質量比率は35%であった。この繊維シートを2枚にスライスし、次いでバフがけを行って起毛して基布とした。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、極細繊維から構成されているにもかかわらず十分な濃色性と、天然皮革のようなやわらかな風合を有しているものであった(表3および表4)。また抽出後のPVAを含む廃液は活性汚泥で処理し、河川に放流することができた。濃色化の原因としては、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールが溶解する際の収縮挙動により、島成分の極細繊維間に構造捲縮が発現すること、また海成分を水で抽出除去するときに顔料が溶出しにくいことがその一因であると考えられる。また収縮挙動により、島成分の極細繊維間に構造捲縮が発現することが、風合の優れた皮革様シートが得られる要因であると考えられる。
【0070】
【表3】
Figure 2004137619
【0071】
【表4】
Figure 2004137619
【0072】
[実施例2]
島数が200島であること、及び島成分(B)における原着カーボンブラックの含有量が2.2質量%であること以外は製造例1と同様に繊維化を行い海島構造繊維を得た。該繊維を用いて実施例1と同様にシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維の平均デニールが0.009dtexと非常に細化されているため、非常に滑らかな風合であり、天然皮革の風合に近いものであった。また濃色性についても十分使用に耐えうるものであった。
【0073】
[実施例3]
島数が600島であること、及び島成分(B)における原着カーボンブラックの含有量が2.5質量%であること以外は製造例1と同様に繊維化を行い海島構造繊維を得た。該繊維を用いて実施例1と同様にシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維の平均デニールが0.003dtexと非常に細化されているため、非常に滑らかな風合であり、天然皮革の風合に近いものであった。また濃色性についても十分使用に耐えうるものであった。
【0074】
[実施例4]
島成分(B)をナイロンー6(Ny)に変更したこと以外は製造例1と同様に繊維化を行い海島構造繊維を得た。該繊維を用いて実施例1と同様にシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維の平均デニールは0.057dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、極細繊維から構成されているにもかかわらず十分な濃色性と、天然皮革のようなやわらかな風合を有しているものであった。
【0075】
[実施例5]
島成分(B)をポリ乳酸(PLLA)に変更したこと以外は製造例1と同様に繊維化を行い海島構造繊維を得た。該繊維を用いて実施例1と同様にシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維の平均デニールは0.054dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、極細繊維から構成されているにもかかわらず十分な濃色性と、天然皮革のようなやわらかな風合を有しているものであった。
【0076】
[実施例6]
着色剤を有機系青顔料に変更し、島成分(B)中の顔料の含有量を3質量%に変更したこと以外は製造例1と同様に繊維化を行い海島構造繊維を得た。該繊維を用いて実施例1と同様にシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維を発生させる抽出工程で、熱水を使用しているため、有機系顔料の染み出しは実質的に起こらず、シート化工程性は良好であった。極細繊維の平均デニールは0.049dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、極細繊維から構成されているにもかかわらず十分な濃色性と、天然皮革のようなやわらかな風合を有しているものであった。
【0077】
[実施例7]
着色剤を有機系赤顔料に変更し、島成分(B)中の顔料の含有量を3質量%に変更したこと以外は製造例1と同様に繊維化を行い海島構造繊維を得た。該繊維を用いて実施例1と同様にシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維を発生させる抽出工程で、熱水を使用しているため、有機系顔料の染み出しは実質的に起こらず、シート化工程性は良好であった。極細繊維の平均デニールは0.050dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、極細繊維から構成されているにもかかわらず十分な濃色性と、天然皮革のようなやわらかな風合を有しているものであった。
【0078】
[実施例8]
着色剤を有機系黄色顔料に変更し、島成分(B)中の顔料の含有量を3質量%に変更したこと以外は製造例1と同様に繊維化を行い海島構造繊維を得た。該繊維を用いて実施例1と同様にシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維を発生させる抽出工程で、熱水を使用しているため、有機系顔料の染み出しは実質的に起こらず、シート化工程性は良好であった。極細繊維の平均デニールは0.050dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、極細繊維から構成されているにもかかわらず十分な濃色性と、天然皮革のようなやわらかな風合を有しているものであった。
【0079】
[実施例9]
着色剤を有機系黒顔料に変更し、島成分(B)中の顔料の含有量を3質量%に変更したこと以外は製造例1と同様に繊維化を行い海島構造繊維を得た。該繊維を用いて実施例1と同様にシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維を発生させる抽出工程で、熱水を使用しているため、有機系顔料の染み出しは実質的に起こらず、シート化工程性は良好であった。極細繊維の平均デニールは0.050dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、極細繊維から構成されているにもかかわらず十分な濃色性と、天然皮革のようなやわらかな風合を有しているものであった。
【0080】
[比較例1]
スルホイソフタル酸を2.5モル%含有したポリエチレンテレフタレ−ト(SIP変性PETと略すこともある)チップを海成分に用い、カーボンブラックを2.0質量%含有する固有粘度0.65(フェノ−ル/テトラクロロエタンの等質量混合溶液にて30℃で測定)のイソフタル酸(IPAと略すこともある)10モル%含有したポリエチレンテレフタレ−トチップを島成分(B)とし、島成分が37島となるような溶融複合紡糸用口金を用い、290℃で口金より吐出し紡糸した。該紡糸原糸をローラープレート方式で通常の条件により延伸し、約70dtex/24fのマルチフィラメントを得た。該海島構造繊維を用い、抽出溶剤を90℃の10%水酸化ナトリウム水溶液に変更したこと以外は実施例1と同様にシート化した。極細繊維の平均デニールは0.057dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、やわらかな風合を有してはいるが、濃色性に劣るものであった。
【0081】
[比較例2]
島数が200島であること、及び島成分(B)における原着カーボンブラックの含有量が2.2質量%であること以外は比較例1と同様に繊維化、及びシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維の平均デニールは0.01dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、やわらかな風合を有してはいるが、濃色性に劣るものであった。
【0082】
[比較例3]
島数が600島であること、及び島成分(B)における原着カーボンブラックの含有量が2.5質量%であること以外は比較例15と同様に繊維化、及びシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維の平均デニールは0.003dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、やわらかな風合を有してはいるが、濃色性に劣るものであった。
【0083】
[比較例4]
低密度ポリエチレン(LDPE)を海成分に用い、カーボンブラックを2.0質量%含有する固有粘度0.65(フェノ−ル/テトラクロロエタンの等質量混合溶液にて30℃で測定)のイソフタル酸(IPAと略すこともある)10モル%含有したポリエチレンテレフタレ−トチップを島成分(B)とし、島成分が37島となるような溶融複合紡糸用口金を用い、280℃で口金より吐出し紡糸した。該紡糸原糸をローラープレート方式で通常の条件により延伸し、約70dtex/24fのマルチフィラメントを得た。該海島構造繊維を用い、抽出溶剤を90℃の熱トルエンに変更したこと以外は実施例1と同様にシート化した。極細繊維の平均デニールは0.06dtexであった。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、やわらかな風合を有してはいるが、濃色性、機械的強度に劣るものであった。
【0084】
[比較例5]
着色剤を有機系黒顔料に変更し、島成分(B)中の含有量を3.0質量%に変更したこと以外は比較例1と同様に繊維化、及びシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。得られた基布はスエード調の皮革様シートであり、やわらかな風合を有してはいるが、抽出工程で有機溶剤を用いたため、顔料の染み出しが起こり抽出浴の汚染が激しく実質的に工程性はなかった。得られたシートは濃色性、機械的強度に劣るものであった。
【0085】
[比較例6]
島数が8島であること以外は実施例1と同様に繊維化を行い約130dtex/24fのマルチフィラメントを得た海島構造繊維を得た。該繊維を用いて実施例17と同様にシート化を行いスエード調の皮革様シートを得た。極細繊維の平均デニールは0.4dtexであった。得られた基布は濃色性、機械的強度は優れているものの、風合の硬いものであった。
【0086】
【発明の効果】
本発明によれば、複合繊維の一成分であるPVA成分を抽出することにより、機械的性質および風合等の触感を劣化させることなく少量の着色剤の添加で濃色性の高い原着皮革様シートを得ることができる。

Claims (4)

  1. 0.3dtex以下の極細繊維から構成された不織布およびその内部に弾性重合体が含有されてなる皮革様シートを製造するに際し、下記(1)および(2)を満足する水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体成分(A)と顔料着色剤を含みかつ融点が270℃以下の熱可塑性成分(B)からなる複合繊維を用いて不織布とする工程、および該複合繊維を水溶液で該成分(A)のみを抽出除去する工程を含むことを特徴とする皮革様シートの製造方法。
    (1)粘度平均重合度200〜500、ケン化度90〜99.99モル%、ビニルアルコールユニットに対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率が70〜99.9モル%、融点160℃〜230℃、およびアルカリ金属イオンがナトリウムイオン換算で0.0003〜1質量%含有されていること、
    (2)炭素数4以下のオレフィン単位および/またはビニルエーテル単位を1〜20モル%含有すること、
  2. 顔料着色剤が融点270℃以下の熱可塑性成分(B)に対して、0.5〜5.0質量%含有している請求項1に記載の皮革様シートの製造方法。
  3. 水溶性熱可塑性ポリビニルアルコール系重合体成分(A)を抽出除去後、融点が270℃以下の熱可塑性成分(B)からなる繊維における顔料着色剤残存率が90%以上であり、かつ抽出前後の強度保持率が80%以上である請求項1または2に記載の皮革様シートの製造方法。
  4. 請求項1〜3いずれか1項に記載の製造方法により得られる皮革様シート。
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