JP2004137547A - 被膜部材および成膜方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コストの高い基板を使用することなく品質の高いZnO系薄膜を得る。
【解決手段】70%以上の酸化亜鉛と、酸化亜鉛の割合xに対してyの割合で混晶させた酸化亜鉛とは異なる任意の金属Mの酸化物とを混晶させた混晶ZnOを、基材2の表面に薄膜状に形成した酸化亜鉛系薄膜17を有する被膜部材Xを得るようにした。これにより、結晶性が高く、結晶粒サイズの大きい酸化亜鉛系薄膜17を形成することができ、酸化亜鉛系薄膜17中における結晶粒界の数を減らして、品質が高く工業生産に適した酸化亜鉛系薄膜を、コストの高い基板を使用することなく形成することができる。
【選択図】  図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被膜部材および成膜方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、MBE法(Molecular Beam Epitaxy),PLD法(Pulsed Laser Deposition),MOCVD法(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等を用いて、鏡面研磨されたサファイヤ基板等の上に、酸化亜鉛系の結晶薄膜(以降、ZnO系薄膜という)をエピタキシャル成長させることで、c軸方向に配向性の揃った六角柱結晶薄膜を形成するようにした技術がある。MBE法,PLD法,MOCVD法等を用いることにより、サファイヤ基板上に品質の高い六角柱結晶薄膜を形成することができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した方法によって形成したZnO系薄膜においては、ZnO結晶の格子定数とサファイヤ基板の格子定数との間に差異があることから、この格子定数の差異を緩和するために、サファイヤ基板上に成長したZnO系薄膜内では数多くの転移が発生する。
【0004】
この転移によって、ZnO系薄膜内には、ナノメートルサイズの非常に微小なZnO結晶粒が形成され、これにより結晶粒の境である結晶粒界が多数形成されてしまう。このような構造は、ZnO系薄膜を平面として見た場合に、基板平面上に形成された個々の微細な結晶粒界が位相不整合して密集した状態となっており、モザイク構造と呼ばれている。
【0005】
結晶粒界は、電流に対して電気抵抗成分となるため、ZnO系薄膜中に結晶粒界が多数あるとZnO系薄膜の抵抗値が高くなってしまう。また、結晶粒界は、光の吸収または散乱を発生させる要因となるため、例えば、光電子素子として用いた場合、ZnO系薄膜中に結晶粒界が多数あると光信号中に損失成分あるいは雑音成分が多くなってしまう。
【0006】
このようなことから、ZnO系薄膜を半導体デバイスとして用いるためには、ZnO系薄膜における結晶粒サイズを大きくし、ZnO系薄膜における結晶粒界の数を減らさなくてはならないが、上述した技術では、ZnO系薄膜中にモザイク構造が形成され、微細な結晶粒および結晶粒界との集合体となったZnO系薄膜が形成されてしまうため、結晶粒サイズを大きくし、結晶粒界の数を減らすことは非常に困難である。このことは、半導体デバイスとして用いるZnO系薄膜の高性能化を大きく阻害している。
【0007】
また、ZnO系薄膜を半導体デバイスとして用いるためには、各ZnO系薄膜の特性(結晶粒サイズや結晶粒界の数等)を揃えなくてはならないが、上述したような方法では、各ZnO系薄膜の特性を揃えることは非常に困難である。
【0008】
加えて、サファイヤ基板は、それ自体が非常に高価な材料を用いることに加えて、加工工程においても多大なコストを要するため、サファイヤ基板を用いたZnO系薄膜では工業生産的な魅力に欠ける。
【0009】
本発明の目的は、コストの高い基板を使用することなく品質の高いZnO系薄膜(酸化亜鉛系薄膜)を得ることである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の発明の被膜部材は、金属合金材料によって形成された基材と、前記基材の表面に形成されて、70%以上の酸化亜鉛と、酸化亜鉛の割合xに対してyの割合で混晶させた酸化亜鉛とは異なる任意の金属の酸化物とを混晶させた薄膜状の混晶によって形成された酸化亜鉛系薄膜と、を具備する。
【0011】
したがって、結晶性が高く、結晶粒サイズの大きい酸化亜鉛系薄膜を形成することができる。これによって、酸化亜鉛系薄膜中における結晶粒界の数を減らすことができる。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の被膜部材において、前記基材は、少なくとも銅および亜鉛を含む金属合金材料によって形成されている。
【0013】
したがって、少なくとも銅および亜鉛を含む金属合金材料によって形成された基材の表面に酸化亜鉛系薄膜を形成することにより、酸化亜鉛系薄膜中の結晶粒サイズを大きくし、結晶粒界の数をより効果的に減らすことができる。
【0014】
請求項3記載の発明の成膜方法は、金属合金材料によって形成された基材の表面に、70%以上の酸化亜鉛と、酸化亜鉛の割合xに対してyの割合で混晶させた酸化亜鉛とは異なる任意の金属Mの酸化物とを混晶させた混晶を薄膜状に成膜した酸化亜鉛系薄膜を形成する。
【0015】
したがって、結晶性が高く、結晶粒サイズの大きい酸化亜鉛系薄膜を形成することができる。これによって、酸化亜鉛系薄膜中における結晶粒界の数を減らすことができる。
【0016】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の成膜方法において、前記基材は、少なくとも銅および亜鉛を含む金属合金材料によって形成されている。
【0017】
したがって、少なくとも銅および亜鉛を含む金属合金材料によって形成された基材の表面に酸化亜鉛系薄膜を形成することにより、酸化亜鉛系薄膜中の結晶粒サイズを大きくし、結晶粒界の数をより効果的に減らすことができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明の一実施の形態について図1ないし図4を参照して説明する。
【0019】
図1は、大気圧MOCVD法により酸化亜鉛系薄膜を形成する本実施の形態の装置の基本構成を概略的に示す説明図である。大気圧MOCVD法により酸化亜鉛系薄膜(以降、ZnO系薄膜という)を形成する装置(以降、成膜装置という)1は、基材としての基板2、および、基板2を加熱する基板ヒーター3を内側に保持する石英チューブ4を備えている。
【0020】
本実施の形態では、基板2として、銅(以降、Cuとする)および亜鉛(以降、Znとする)を含む金属合金材料であるCu−Zn合金基板を用いた。本実施例では、Znを40%含むCu−Zn合金基板を用いたが、基板2としてはこれに限るものではなく、少なくともCuおよびZnを含む金属合金材料であればよい。
【0021】
基板ヒーター3は、基板2を285℃に加熱する。
【0022】
石英チューブ4の一方の開口部4aには、石英チューブ4内に原料反応ガスを供給する供給管5の一端が連通されている。本実施の形態では、原料反応ガスとして酸素Oを用いた。また、開口部4aには、一端が、丸底フラスコ6に連通する供給管7の他端が連通されている。丸底フラスコ6内には、アセチルアセトナート亜鉛Zn(Cが保持されている。アセチルアセトナート亜鉛Zn(Cは、図1中、符号100で説明する。
【0023】
丸底フラスコ6には、一端が、別の丸底フラスコ8に連通された供給管9の他端が連通されている。この別の丸底フラスコ8には、丸底フラスコ8内に原料キャリアガス(図1中キャリアガスと記載)を供給する供給管10が連通されている。本実施の形態では、原料キャリアガスとしてアルゴンArが用いられている。
【0024】
また、成膜装置1は、丸底フラスコ6内を加熱するブロックヒーター11を備えている。ブロックヒーター11は、丸底フラスコ6内に保持されているアセチルアセトナート亜鉛100が、90〜100℃となるように加熱する。
【0025】
石英チューブ4の他方の開口部4bには、一端が冷却器12に連通する送出管13の他端が連通されている。公知の技術であるため図示および説明を省略するが、冷却器12には、入水口12aから冷却器12内を経由して出水口12bから排出されるように、水を還流させるホースが連通されている。
【0026】
冷却器12には、三角フラスコ14に連通する送出管15が連通されており、送出管13を経由した石英チューブ4からの加熱排気は、水の還流箇所とは隔絶された冷却路12cおよび三角フラスコ14を経由して、排気管16から排気される。
【0027】
開口部4aの供給管5と石英チューブ4内との連通位置以外は、ゴム栓等によって密閉されている。開口部4bの送出管13と石英チューブ4内との連通位置以外も、ゴム栓等によって密閉されている。同様に、丸底フラスコ6,8および三角フラスコ14の開口部6a,8a,14aもゴム栓等によって密閉されている。
【0028】
以上が、本実施の形態の大気圧MOCVD法によりZnO系薄膜を形成する本実施の形態の装置の基本構成を概略的に示す説明図である。
【0029】
このような成膜装置1を用いて、基板ヒーター3により基板2を加熱し、ブロックヒーター11によってアセチルアセトナート亜鉛100を加熱しながら、原料反応ガスOおよび原料キャリアガスArを石英チューブ4内に供給することで、基板2上にZnO系薄膜17を形成した。このとき、成膜時間を45分とした。これにより、基板2上には、酸化亜鉛(以降、ZnO)によって形成されたZnO系薄膜17が成膜された。本実施の形態では、ZnO系薄膜17および表面にZnO系薄膜17が形成(成膜)された基板2によって被膜部材Xが実現されている。
【0030】
本実施の形態では、図1に示すような基本構成を有する成膜装置1によって形成されるZnO系薄膜17に加えて、図2に示すような構成を有する成膜装置1’を用いてZnO系薄膜17を形成した。
【0031】
ここで、図2は、図1に示す成膜装置1を基本構成とした成膜装置1’を概略的に示す説明図である。成膜装置1’は、一端が、供給管7から分岐するように連通され、他端が丸底フラスコ21に連通された分岐供給管20を備えている。丸底フラスコ21内には、アセチルアセトナートマグネシウムMg(Cが保持されている。アセチルアセトナートマグネシウムMg(Cは、図2中、符号101で説明する。
【0032】
丸底フラスコ21には、一端が、別の丸底フラスコ22に連通された供給管23の他端が連通されている。この別の丸底フラスコ22には、丸底フラスコ22内に原料キャリアガス(図2中キャリアガスと記載)を供給する供給管24が連通されている。本実施の形態では、原料キャリアガスとしてアルゴンArが用いられている。
【0033】
また、成膜装置1’は、丸底フラスコ21内を加熱するブロックヒーター25を備えている。ブロックヒーター25は、丸底フラスコ6内に保持されているアセチルアセトナートマグネシウム101が、90〜100℃となるように加熱する。
【0034】
丸底フラスコ21,22の開口部21a,22aは、ゴム栓等によって密閉されている。
【0035】
図2に示す成膜装置1’を用いて、基板ヒーター3により基板2を加熱し、ブロックヒーター11によってアセチルアセトナート亜鉛100を加熱するとともに、ブロックヒーター25によってアセチルアセトナートマグネシウム101を加熱しながら、原料反応ガスOおよび原料キャリアガスArを石英チューブ4内に供給することで、基板2上にZnO系薄膜17を形成した。このとき、成膜時間を45分とした。
【0036】
これにより、基板2上には、ZnOとは異なる任意の金属Mの酸化物を、ZnOの割合xに対して、yの割合で混晶させた混晶ZnOによって形成されたZnO系薄膜17が成膜された。
【0037】
本実施の形態では、任意の金属Mとしてマグネシウム(以降、Mgとする)を用いた。このため、混晶ZnOは、ZnO中に酸化マグネシウム(以降、MgOとする)が混晶されたZnMgOとなる。この混晶ZnMgOは、ZnOの結晶格子中で、一部のZnがMgに置換された結晶構造を有している。本実施の形態では、ZnO系薄膜17および表面にZnO系薄膜17が形成(成膜)された基板2によって被膜部材Xが実現されている。
【0038】
なお、本実施の形態では、金属Mとして、Mgを用いたが、これに限るものではなく、金属Mは金属元素一般であり、Mgの他に、例えば、カドミウム(Cd)等が好ましい。
【0039】
次に、上述したように形成したZnO系薄膜17の性能について説明する。
【0040】
図3は、ZnO系薄膜の室温におけるフォトルミネッセンススペクトルを示している。図3(a)が、基板2としてCu−Zn合金基板を用いて形成したZnO系薄膜17、図3(b)が同じ装置を用いて、サファイヤC面基板を用いて形成したZnO系薄膜のスペクトルを示している。
【0041】
ここで、サファイヤC面基板を用いたZnO系薄膜は、図1に示す成膜装置1を用いて形成した。このとき、丸底フラスコ6内にはアセチルアセトナート亜鉛Zn(Cが保持されており、原料反応ガスとして酸素Oを用い、原料キャリアガスとしてアルゴンArを用いた。そして、ブロックヒーター11によって丸底フラスコ6内のアセチルアセトナート亜鉛Zn(Cを110℃に加熱するとともに、基板ヒーター3により基板2を500℃に加熱しながら、原料反応ガスOおよび原料キャリアガスArの流量をともに100sccmとして、30分間成膜を行なった。これにより、サファイヤ基板の表面には約1μmのZnO系薄膜が形成された。
【0042】
図3からも判るように、いずれのZnO系薄膜も、発光スペクトルの波長ピークが、ZnO結晶のバンド端発光領域である377nmであることが判る。すなわち、いずれのZnO系薄膜にもZnO結晶が形成されていることが判る。
【0043】
図3によれば、基板2としてCu−Zn合金基板を用いて形成したZnO系薄膜17の方が、サファイヤC面基板を用いて形成したZnO系薄膜に対して、約3倍の強度で発光していることが判る。
【0044】
図4は、ZnO系薄膜の表面モホロジーを示している。図4(a)が、基板2としてCu−Zn合金基板を用いて形成したZnO系薄膜17、図4(b)が同じ装置を用いて、サファイヤC面基板を用いて形成したZnO系薄膜のSEM(Scanning Electronic Microscope:走査電子顕微鏡)写真を示している。
【0045】
図4から判るように、サファイヤC面基板を用いて形成したZnO系薄膜では、先端が尖った針状のZnO結晶が形成されているのに対し、基板2としてCu−Zn合金基板を用いて形成したZnO系薄膜17におけるZnO結晶は、ほぼ六角柱形状で粒の大きさが揃っており、形状に差が見られることが明らかであることが判る。
【0046】
また、図4から判るように、サファイヤC面基板を用いて形成したZnO系薄膜では、平均粒径サイズが0.1μmのZnO結晶が形成されており、大きいものでも粒径サイズが0.2μmであるが、これに対し、基板2としてCu−Zn合金基板を用いて形成したZnO系薄膜17におけるZnO結晶は、粒径サイズが1μm近いことが判り、これによっても形状に差が見られることは明らかである。
【0047】
ところで、本実施の形態では、ZnOを含むZnO系薄膜17、および、ZnOとMgOとの混晶ZnMgOによって形成されたZnO系薄膜17について性質を評価した。
【0048】
次に、ZnO系薄膜17中におけるZnOの含有量とZnO系薄膜17の性質との関係について以下に説明する。
【0049】
ここで、表1は、ZnOの含有量を複数段階に調整して、上述と同様にして各種ZnO系薄膜17を形成した場合の、ZnO系薄膜17中におけるZnOの含有量とZnO系薄膜17の性質との関係を示している。表1では、ロッキングカーブ半値幅、結晶性、粒子サイズをZnO系薄膜17の性質として評価した。結晶性はロッキングカーブ半値幅に基づいて判定された結果であり、粒子サイズはZnO系薄膜17中における最大粒径サイズを示している。表1中、yで示す値は、ZnO系薄膜17中におけるMgOの組成比を示しており、ZnO系薄膜17中におけるZnOの組成比xとの関係が、x+y=1を満たす値である。本実施の形態では、X線反射法(XRD)測定によってZnO系薄膜17の(002)面(c軸方向)の反射角度位置からベガド則に則って算出した値をyとして用いている。
【0050】
なお、このとき、CuとZnとが65:35の組成比を有する金属合金材料によって形成された基板2を用いた。
【0051】
【表1】
Figure 2004137547
【0052】
表1中のロッキングカーブ半値幅とは、X線回折法によって、ZnO系薄膜17を構成する結晶の(002)面(c軸方向)の回折強度曲線であるロッキングカーブにおけるピーク値の半値となる幅を示している。ロッキングカーブ曲線はガウス分布により近似できることから、この分布の標準偏差σはc軸の配向性を定量的に表している。すなわち、ガウス分布におけるσの値が小さい程c軸配向のばらつきが小さく、また、ロッキングカーブ半値幅も小さい程配向性が高くなり、結晶性が高い(結晶性に優れた)薄膜であることが判る。多結晶薄膜の評価に際しては、ロッキングカーブを用いることにより、多結晶薄膜の評価を有効に行なうことができる。表1中では、ロッキングカーブ半値幅の数字が角度(deg)で示されている。
【0053】
表1によれば、xの値が0.3を超えると、配向性が急激に劣化することが判る。同様に、表1によれば、xの値が0.3を超えると、ZnO系薄膜17中における最大粒径サイズが小さくなることが判る。これは、六方晶系の結晶であるZnO成分に対して、NaCl型の立方晶系の結晶であるMgOが混入することにより、ZnO系薄膜17における結晶構造自体が変化し、ZnO系薄膜17の結晶性が劣化するためであると推測される。
【0054】
特に図示しないが、ZnO系薄膜17中に混入する金属Mを、カドミウムCdを始めとする一般的な金属元素とした混晶ZnOによってZnO系薄膜を形成した場合も、表1と同様の結果を得ることができる。
【0055】
このように、基板2の表面に形成されて、70%以上のZnOと、ZnOの割合xに対してyの割合で混晶させたZnOとは異なる金属M(但し、Mは任意の金属)の酸化物とを混晶させた薄膜状の混晶ZnOをZnO系薄膜17とすることにより、結晶性が高く、結晶粒サイズの大きい酸化亜鉛系薄膜を形成することができる。
【0056】
これによって、酸化亜鉛系薄膜中における結晶粒界の数を減らして、品質が高く工業生産に適した酸化亜鉛系薄膜を、コストの高い基板を使用することなく形成することができる。
【0057】
次に、基板2におけるCuおよびZnの割合と、ZnO系薄膜17中の結晶粒サイズと、の関係について以下に説明する。
【0058】
ここで、表2は、CuおよびZnの割合を複数段階に調整した基板2の表面に、ZnOおよび金属Mの酸化物の割合を複数段階に調整した各種ZnO系薄膜を形成した場合の、ZnO系薄膜17中のZnOおよび金属Mの酸化物の割合と、基板2中のCuおよびZnの割合と、ZnO系薄膜17中の結晶粒サイズとの関係を示している。
【0059】
【表2】
Figure 2004137547
【0060】
表2中、“○”印はZnO系薄膜17中において最大粒径サイズが1μm以上の結晶粒が観察されたZnO系薄膜17であることを示し、“×”印はZnO系薄膜17中における結晶粒の最大粒径サイズが1μm未満のZnO系薄膜17であることを示している。また、表2中、“△”は、ZnO系薄膜17中において最大粒径サイズが1μm以上の結晶粒が観察されたものの、基板2から剥離する等、被膜として判定ができなかったことを示している。
【0061】
表2によれば、少なくともCuおよびZnを含む基板2の表面にZnO系薄膜17を形成することにより、ZnO系薄膜17中の結晶粒サイズをより確実に大きくできることが判る。
【0062】
これによって、結晶粒界の数をより効果的に減らして、より品質の高いZnO系薄膜17を得ることができる。特に、基板2中のZn含有量が多い程、ZnO系薄膜17中の結晶粒サイズを大きくすることができることが判る。
【0063】
これによって、少なくともCuおよびZnを含む基板2の表面に、ZnOを70%以上含むZnO系薄膜17を形成することにより、ZnO系薄膜17中の結晶粒サイズをより確実に大きくし、結晶粒界の数をより効果的に減らして、より品質の高いZnO系薄膜17を得ることができる。
【0064】
なお、本実施の形態では、大気圧MOCVD法を用いてZnO系薄膜を形成するようにしたが、これに限るものではなく、例えば、スパッタ蒸着法、真空蒸着法、MBE法、PLD法、PCVD法等、その他各種気相成長法を用いてもよい。
【0065】
【発明の効果】
請求項1記載の発明の被膜部材によれば、金属合金材料によって形成された基材と、前記基材の表面に形成されて、70%以上の酸化亜鉛と、酸化亜鉛の割合xに対してyの割合で混晶させた酸化亜鉛とは異なる任意の金属の酸化物とを混晶させた薄膜状の混晶によって形成された酸化亜鉛系薄膜と、を具備することにより、結晶性が高く、結晶粒サイズの大きい酸化亜鉛系薄膜を得ることができ、酸化亜鉛系薄膜中における結晶粒界の数を減らして、品質が高く工業生産に適した被膜部材を、コストの高い基材(基板)を使用することなく形成することができる。
【0066】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の被膜部材において、少なくとも銅および亜鉛を含む金属合金材料によって形成された基材の表面に酸化亜鉛系薄膜を形成することにより、酸化亜鉛系薄膜中の結晶粒サイズをより確実に大きくし、結晶粒界の数をより効果的に減らして、より品質の高い酸化亜鉛系薄膜を得ることができる。
【0067】
請求項3記載の発明の成膜方法によれば、金属合金材料によって形成された基材の表面に、70%以上の酸化亜鉛と、酸化亜鉛の割合xに対してyの割合で混晶させた酸化亜鉛とは異なる任意の金属Mの酸化物とを混晶させた混晶を薄膜状に成膜した酸化亜鉛系薄膜を形成することにより、結晶性が高く、結晶粒サイズの大きい酸化亜鉛系薄膜を得ることができ、酸化亜鉛系薄膜中における結晶粒界の数を減らして、品質が高く工業生産に適した被膜部材を、コストの高い基材(基板)を使用することなく形成することができる。
【0068】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の成膜方法において、少なくとも銅および亜鉛を含む金属合金材料によって形成された基材の表面に酸化亜鉛系薄膜を形成することにより、酸化亜鉛系薄膜中の結晶粒サイズを大きくし、結晶粒界の数をより効果的に減らして、より品質の高い酸化亜鉛系薄膜を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態の大気圧MOCVD法により酸化亜鉛系薄膜を形成する本実施の形態の装置の基本構成を概略的に示す説明図である。
【図2】図1に示す成膜装置を基本構成とした成膜装置を概略的に示す説明図である。
【図3】ZnO系薄膜の室温におけるフォトルミネッセンススペクトルを示しており、(a)がCu−Zn合金基板上に形成したZnO系薄膜、(b)がサファイヤC面基板上に形成したZnO系薄膜のスペクトルを示している。
【図4】ZnO系薄膜の表面モホロジーを示しており、(a)がCu−Zn合金基板上に形成したZnO系薄膜、(b)がサファイヤC面基板上に形成したZnO系薄膜のSEM写真を示している。
【符号の説明】
2   基材
17   酸化亜鉛系薄膜
X   被膜部材

Claims (4)

  1. 金属合金材料によって形成された基材と、
    前記基材の表面に形成されて、70%以上の酸化亜鉛と、酸化亜鉛の割合xに対してyの割合で混晶させた酸化亜鉛とは異なる任意の金属の酸化物とを混晶させた薄膜状の混晶によって形成された酸化亜鉛系薄膜と、
    を具備する被膜部材。
  2. 前記基材は、少なくとも銅および亜鉛を含む金属合金材料によって形成されている請求項1記載の被膜部材。
  3. 金属合金材料によって形成された基材の表面に、70%以上の酸化亜鉛と、酸化亜鉛の割合xに対してyの割合で混晶させた酸化亜鉛とは異なる任意の金属Mの酸化物とを混晶させた混晶を薄膜状に成膜した酸化亜鉛系薄膜を形成する成膜方法。
  4. 前記基材は、少なくとも銅および亜鉛を含む金属合金材料によって形成されている請求項3記載の成膜方法。
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