JP2004137485A - 水系制振材用増粘剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】 制振材として形成された塗膜の乾燥性を向上させて、塗膜表面におけるクラックや膨張を抑制する手段を提供する。
【解決手段】 アルカリ可溶性モノマーユニットおよび会合性モノマーユニットを有する重合体からなる制振材用増粘剤を用いることによって、上記課題は解決される。前記アルカリ可溶性モノマーユニットは、カルボキシル基、スルホン酸基もしくはリン酸基、またはこれらの塩を有することが好ましい。また、前記会合性モノマーユニットは、側鎖に、−(R−O)−X−R(式中、Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基またはブチレン基であり、nは10〜300であり、Xは、直接結合、−C(=O)−、または−C(=O)NH−であり、Rは炭素数6〜30の炭化水素基である)で表される基を有することが好ましい。
【選択図】      なし

Description

 本発明は、制振材を形成するための塗料中に含まれる増粘剤に関し、より詳しくは、塗膜の乾燥性を向上させて、塗膜表面におけるクラックや膨張の発生を抑制し得る増粘剤に関する。
 塗料には、保護、絶縁、美粧などの用途に応じて、様々な特性が求められる。塗料の用途の一つとして制振材がある。制振材とは、音の伝達を遮断したり、振動を防止したりするために、材料表面に配置される材料をいう。例えば、自動車のシャシー表面には、車内を静謐にするために、制振材が配置されることが望ましい。
 制振材として利用できる材料としては、遮音シートが挙げられる。しかしながら、遮音シートを配置するには手間がかかる。特に、自動車のシャシーのような、複雑な表面形状を有する部材に配置する場合には、生産性の著しい低下は避けられない。また、オートメーション化が困難であり、生産コスト削減の障害となる。
 そこで、制振材としての特性を有する塗膜に注目が集まっている。制振材として作用する塗膜に関する技術としては、例えば、共役ジエン系単量体(a)、エポキシ基を有するエチレン系不飽和単量体(b)、エチレン系不飽和カルボン酸アミド単量体(c)、(b)及び(c)以外のエチレン系不飽和単量体(d)を特定重量割合で含む単量体混合物を乳化重合して得られる制振材用共重合体ラテックスがある(特許文献1参照)。制振材は、該ラテックスが配合された塗料を用いて形成される。このように塗料を用いて制振材を形成するのであれば、生産性もよく、オートメーション化も可能である。
 制振材として作用するためには、塗膜は一定の膜厚を有している必要がある。ところが、厚い塗膜を乾燥させる場合、表面から乾燥していく傾向があるため、内部の塗膜がまだ水分を保持している一方で、表面近傍の塗膜が硬化してしまう。このため、塗膜内部の水分の蒸発によって、既に硬化している表面近傍の塗膜が塗膜外側に膨張する問題や、塗膜にクラックが発生する問題が生じる。塗膜が膨張したり、クラックが発生したりすると、制振材としての特性が大きく低下する。これでは、制振材として利用するために、わざわざ塗膜を形成した意義が失われてしまう。なお、これらの問題は、エマルション塗料を用いて塗膜を形成する場合に、特に顕著である。エマルション塗料は、粒子周辺の水分量が少なくなると、すぐに融着して膜を形成する傾向があるからである。
特開2000−178499号公報
 そこで、本発明が目的とするところは、制振材として形成された塗膜の乾燥性を向上させて、塗膜表面におけるクラックや膨張を抑制する手段を提供することである。
 本発明は、アルカリ可溶性モノマーユニットおよび会合性モノマーユニットを有する重合体からなる水系制振材用増粘剤である。
 本発明の水系制振材用増粘剤が配合された塗料は、増粘剤によって形成されたネットワーク構造中に水分を取り込み得る。このため、塗料の保水性が向上する。高い保水性を有していると、塗膜はある程度の水分を含んだまま、均一に乾燥していく。その結果、厚い塗膜が形成された場合であっても、塗膜にクラックや膨張が生じにくい。つまり、本発明の水系制振材用増粘剤が配合された塗料は、乾燥性に優れるため、表面にクラックや膨張が発生しづらい。表面にクラックや膨張が少ないため、制振性に優れる、高品質な制振材が提供される。
 また、アルカリ可溶性モノマーユニットは、アルカリ性溶液に溶解すると、負の電荷を帯びた官能基同士の反発によって、溶液の粘度を上昇させる。かようなメカニズムによる増粘作用は非常に高い。このため、少量でも十分な効果が得られ、材料コスト、設備コストを削減することができる。
 さらに、本発明の水系制振材用増粘剤は、会合性モノマーユニットを有する。会合性モノマーユニットに含まれる疎水基同士が会合することによって、いっそう効果的な増粘作用が引き起こされる。かような疎水基間の会合は比較的弱い結合であるため、本発明の水系制振材用増粘剤を含む塗料は、チキソトロピックな粘性を有する。かような性質は、塗料をスプレー塗布する際に非常に有用である。スプレー時には剪断力が強いため粘度が低く、塗布しやすい。一方、塗布後は剪断力が弱いため粘度が高く、液ダレしにくい。
 本発明は、アルカリ可溶性モノマーユニットおよび会合性モノマーユニットを有する重合体からなる水系制振材用増粘剤である。以下、本発明の制振材用増粘剤について、詳細に説明する。なお、本願において、「制振材用増粘剤」は、特に記載がない限り、「水系制振材用増粘剤」を意味する。
 アルカリ可溶性モノマーユニットとは、モノマーユニットが酸性の官能基またはその塩を有し、アルカリ性溶液中で増粘作用を果たすモノマーユニットをいう。酸性の官能基としては、カルボキシル基(−COOH)、スルホン酸基(−SOH)、リン酸基(−PO)などが挙げられる。塩は、酸性の官能基をアルカリ性化合物などで中和することによって形成され得る。塩としては、酸性の官能基のナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩などが挙げられる。ただし、酸性の官能基およびその塩はこれらに限定されるものではない。酸性の官能基およびその塩の中では、カルボキシル基およびその塩が好ましい。これは、カルボキシル基またはその塩を有しているモノマーは、他の酸基含有モノマーと比べて親水性が低く、重合時の安定性が高いためである。カルボキシル基またはその塩を有するモノマーの中では、他のモノマーとの共重合性が良好なアクリル酸およびメタクリル酸ならびにこれらの塩が好ましい。
 なお、アルカリ可溶性モノマーユニットは、酸性の官能基を有するモノマーユニットのみからなり、その塩を有するモノマーユニットが存在しなくてもよい。逆に、アルカリ可溶性モノマーユニットは、その塩を有するモノマーユニットのみからなり、酸性の官能基を有するモノマーユニットが存在しなくてもよい。また、アルカリ可溶性モノマーユニットは、酸性の官能基を有するモノマーユニットおよびその塩を有するモノマーユニットの双方を含んでいてもよい。
 アルカリ可溶性モノマーユニットは、これらの官能基を有する重合性モノマーを用いて重合することによって形成される。塩は重合体を形成した後に、アルカリ可溶性モノマーユニットに含まれる酸を中和することによって形成できる。予め中和されたモノマーを用いて重合体を形成してもよい。
 アルカリ可溶性モノマーユニットにより引き起こされる増粘作用について簡単に説明する。アルカリ可溶性モノマーユニットがアルカリ性溶液中に存在すると、アルカリ可溶性モノマーユニットが有する酸性の官能基がイオン化した状態で存在する。例えば、カルボキシル基(−COOH)は、NaOHなどの塩基によって、陰イオン(−COO)として存在する。−COOは負の電荷を帯びているため、アルカリ可溶性モノマーユニットを有する重合体は、電気的な反発によって溶液中に拡がる。その結果、溶液の粘度が増加する。
 アルカリ可溶性モノマーユニットを形成する原料としてのモノマーには、アクリル酸、メタクリル酸、アクリロキシプロピオン酸、シトラコン酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのカルボキシル基を有するモノマー:ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレートなどのスルホン酸基を有するモノマー:モノ(2−メタクリロイルオキシエチル)ホスフェート、モノ(2−アクリロイルオキシエチル)ホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシ−3−クロロプロピルホスフェート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルホスフェートなどのリン酸基を有するモノマーが含まれる。また、これらのモノマーの、ナトリウム塩、カリウム塩またはアンモニウム塩が含まれる。ただし、アルカリ可溶性モノマーユニットの原料としてのモノマーはこれらに限定されるものではなく、重合性であり、かつ、酸性の官能基またはその塩を有していればよい。また、使用される原料としてのモノマーは、1種でも、2種以上でもよい。
 会合性モノマーユニットとは側鎖に疎水基を有し、この疎水基によって、複数の重合体が会合することを可能にするモノマーユニットをいう。重合体が会合することを可能にする疎水基としては、下記式(I):
で表される基が挙げられる。
 式(I)において、Rはメチレン基(−CH−)、エチレン基(−CHCH−)、プロピレン基(−CHCH(CH)−)またはブチレン基(−CHCH(CHCH)−)である。この中では、入手の容易性などの理由からエチレン基であることが好ましい。エチレン基である場合には、(R−O)で表される繰り返し単位は、エチレンオキシドである。なお、Rは、複数の官能基からなっていてもよい。例えば、上述の(R−O)は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドとの組み合わせであってもよい。
 nは(R−O)で表される繰り返し単位の繰り返し数である。nは10〜300であることが好ましく、10〜100であることがより好ましく、20〜80であることがさらに好ましく、40〜60であることが特に好ましく、45〜55であることが最も好ましい。
 Xは、直接結合、−C(=O)−、または−C(=O)NH−である。
 Rは炭素数6〜30の炭化水素基である。炭化水素基には、直鎖、分岐または環状アルキル基、アリール基、アルキルアリール基などが含まれる。これらの炭化水素基は、会合性モノマーユニットによる会合作用が阻害されない限りにおいて、一部が置換されていてもよい。直鎖アルキル基には、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、オクタデシル基などが含まれる。分岐アルキル基には、3−メチルヘキシル基、4,4−ジエチルオクチル基などが含まれる。環状アルキル基には、シクロオクチル基、コレスタニル基、ラノスタニル基などが含まれる。アリール基には、フェニル基、ナフチル基、アントリル基などが含まれる。アルキルアリール基には、ノニルフェニル基、ドデシルフェニル基、ノニルフェニル基などが含まれる。効率的な会合を考慮すると、Rは、好ましくは炭素数8〜30の炭化水素基であり、より好ましくは炭素数8〜30のアルキル基であり、さらに好ましくは炭素数12〜20のアルキル基であり、特に好ましくは炭素数16〜20のアルキル基であり、最も好ましくは炭素数18のアルキル基である。
 会合性モノマーユニットにより引き起こされる増粘作用について簡単に説明する。会合性モノマーユニットにおいて、実際に会合する部分は、式(I)におけるRの部分である。Rはドデシル基のような疎水性の官能基であるため、溶液中に分散している重合体は、Rの有する疎水性を利用して会合する。かような疎水基間の会合は比較的弱い結合であるため、本発明の制振材用増粘剤によって、チキソトロピックな粘性が発現しうる。
 (R−O)で表される繰り返し単位は、Rの移動の自由度を高めて、会合しやすくするための部位である。即ち、Rが主鎖に直接結合しているまたは主鎖から近い場合、Rが疎水性を有していても、自由に動き回ることができない。このため、R同士がうまく会合することができない。一方、(R−O)によってRが主鎖部分から相当距離離れていると、R同士がうまく会合することができる。
 会合性モノマーユニットの好ましい具体的態様は、下記式(II):
である。式(II)で表されるモノマーユニットは、Rがエチレン基である式(I)の官能基を側鎖に有する。なお、式(II)において、n、XおよびRは前記定義通りであるため、説明を省略する。
 制振材用増粘剤として用いられる重合体は、さらに他のモノマーユニットを有していてもよい。例えば、アルカリ可溶性モノマーユニット、会合性モノマーユニット、およびアルカリ可溶性モノマーユニットの塩の原料であるモノマーと、共重合可能なエチレン性不飽和モノマーに起因するモノマーユニット(以下、「エチレン性不飽和モノマーユニット」とも記載)を有していてもよい。重合体がエチレン性不飽和モノマーユニットを有していると、重合安定性が良い。
 エチレン性不飽和モノマーには、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、エチルビニルベンゼン、クロロメチルスチレン等のスチレン系重合性モノマー;(メタ)アクリルアミド、N−モノメチル(メタ)アクリルアミド、N−モノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系重合性モノマー;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル等の(メタ)アクリル酸と炭素数1〜8のアルコールとのエステルである(メタ)アクリル酸エステル系重合性モノマー;(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等のシクロヘキシル基含有重合性モノマー;(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル系重合性モノマー;ポリエチレングリコール(メタ)アクリルエステル等の(メタ)アクリル酸とポリアルキレングリコールとのモノエステルであるポリエチレングリコール鎖含有重合性モノマー;酢酸ビニル;(メタ)アクリロニトリル;N−ビニルピロリドン、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の塩基性重合性モノマー;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド等の架橋性(メタ)アクリルアミド系重合性モノマー;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリエトキシシラン等のケイ素原子に直結する官能基を有する加水分解性ケイ素基含有重合性モノマー;(メタ)アクリル酸グリシジル、アクリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有重合性モノマー;2−イソプロペニル−2−オキサゾリン、2−ビニルオキサゾリン等のオキサゾリン基含有重合性モノマー;(メタ)アクリル酸−2−アジリジニルエチル、(メタ)アクロイルアジリジン等のアジリジン基含有重合性モノマー;フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン含有重合性モノマーが含まれる。二種以上のエチレン性不飽和モノマーが用いら手もよい。また、他のモノマーが原料として用いられてもよい。
 制振材用増粘剤として用いられる重合体は、架橋性モノマーユニットを有していてもよい。架橋性モノマーユニットは、分子内に重合性不飽和基を2個以上有する多官能モノマーから形成されうる。かような多官能モノマーには、(メタ)アクリル酸と、エチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステル化物のような(メタ)アクリル酸エステル系モノマー;メチレン(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリル酸アミド系モノマー;ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート等のアリル系重合性単量体;(メタ)アクリル酸アリル、ジビニルベンゼンなどが含まれる。これらの2種以上を併用してもよい。ただし、架橋性モノマーユニットは、ポリマー鎖間を架橋するものであれば、これらに限定されない。
 制振材用増粘剤として用いられる重合体は、上述のモノマーユニットが組み合わされてなる。参考までに、例えば、メタクリル酸に起因するモノマーユニット;nが50、Xが−C(=O)−、Rが−C1735である前記式(II)で表されるモノマーユニット;および、アクリル酸エチルに起因するモノマーユニットからなる重合体は、下記式:
で表される。
 本発明の制振材用増粘剤は、アルカリ可溶性モノマーユニットおよび会合性モノマーユニットを有する重合体からなる。したがって、「制振材用増粘剤」は、重合体単体のみならず、重合体を含むエマルションなどの溶液も、その概念中に包含する。また、本発明の制振材用増粘剤は、通常は、水系で用いられる。
 次に、本発明の制振材用増粘剤として用いられる重合体の各モノマーユニットの構成比率について説明する。増粘剤として用いられる重合体は、アルカリ可溶性モノマーユニット、会合性モノマーユニットを必須に含む。また、重合体は、エチレン性不飽和モノマーに起因するモノマーユニットなどの他のモノマーユニットを含んでいてもよい。
 アルカリ可溶性モノマーユニットの配合割合は、全モノマーユニットに対して好ましくは20〜69モル%であり、より好ましくは25〜64モル%である。アルカリ可溶性モノマーユニットの配合割合が低すぎると、アルカリ可溶し難いため、十分な増粘性が得られない恐れがある。一方、アルカリ可溶性モノマーユニットの配合割合が高すぎると、エマルション重合における重合安定性が保てない恐れがある。なお、2種以上のアルカリ可溶性モノマーユニットを用いる場合には、各アルカリ可溶性モノマーユニットの総量が、上記範囲を満たすことが好ましい。
 会合性モノマーユニットの配合割合は、全モノマーユニットに対して好ましくは0.001〜2.0モル%であり、より好ましくは0.005〜1.5モル%である。会合性モノマーユニットの配合割合が低すぎると、重合体における疎水性基の量が不足し、会合性モノマーユニットによる粘性の改質が不十分となる恐れがある。一方、会合性モノマーユニットの配合割合が高すぎると、エマルション重合によって共重合体を製造することが困難になる上、同一重合体内での疎水性基同士の会合が増加し、粘性を高める効果が低下する。
 エチレン性不飽和モノマーの配合割合は、全モノマーユニットに対して好ましくは30〜79モル%であり、より好ましくは35〜74モル%である。エチレン性不飽和モノマーユニットの配合割合が低すぎると、エマルション重合における重合安定性が保てない恐れがある。一方、エチレン性不飽和モノマーユニットの配合割合が高すぎると、アルカリ可溶し難いため、十分な増粘性が得られない恐れがある。
 本発明の制振材用増粘剤において増粘剤として用いられる重合体の重量平均分子量は、好ましくは3,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは100,000以上である。ただし、架橋性単量体を用いた場合などは、分子量が非常に高くなり、GPCによる分子量測定は困難である。
 増粘剤としての重合体は、モノマー成分を重合することによって得られる。単量体成分の重合方法は、特に限定されない。エマルション重合、逆相懸濁重合、懸濁重合、溶液重合、水溶液重合、塊状重合などを用いて重合することができる。これらの重合方法の中では、エマルション重合が好ましい。エマルション重合は、高分子量の共重合体を高濃度で重合できる上、取扱い粘度も低く、生産コストも安い。エマルション重合によって重合体を製造する場合においても、手順については特に限定されない。例えば、所定量のモノマーを溶解させた水溶液を準備し、乳化剤を用いてプレエマルションを形成させ、その後、重合開始剤を添加して、重合反応を進行させてもよい。各モノマーの配合比率は、上記説明した重合体におけるモノマーユニットの配合比率に応じて決定される。
 アルカリ可溶性モノマーユニット、エチレン性不飽和モノマーなどは、市販の薬剤を用いてもよく、自ら原料を準備してもよい。会合性モノマーユニットも、市販の薬剤を用いてもよく、特開2001−240630号公報などに記載の公知の方法に準拠して合成してもよい。
 以下、エマルション重合によって、増粘剤としての重合体を得る場合に用いられる乳化剤、重合開始剤、および重合条件について説明する。
 エマルション重合は、水性媒体中で行われうる。水性媒体は特に限定されず、例えば、水、水と混じり合うことができる溶媒の1種又は2種以上の混合溶媒、このような溶媒に水が主成分となるように混合した混合溶媒等が挙げられる。これらの中では、水が好ましい。
 乳化剤は、特に限定はなく、各種乳化剤を用いることが可能である。たとえば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、高分子界面活性剤、これらの反応性界面活性剤等を、乳化剤として用いることができる。これらを組み合わせて使用してもよい。
 アニオン系界面活性剤には、ナトリウムドデシルサルフェート、カリウムドデシルサルフェート、アンモニウムアルキルサルフェート等のアルキルサルフェート塩;ナトリウムドデシルポリグリコールエーテルサルフェート;ナトリウムスルホリシノエート;スルホン化パラフィン塩等のアルキルスルホネート;ナトリウムドデシルベンゼンスルホネート、アルカリフェノールヒドロキシエチレンのアルカリ金属サルフェート等のアルキルスルホネート;高アルキルナフタレンスルホン酸塩;ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物;ナトリウムラウレート、トリエタノールアミンオレエート、トリエタノールアミンアビエテート等の脂肪酸塩;ポリオキシアルキルエーテル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンカルボン酸エステル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレンフェニルエーテル硫酸エステル塩;コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸塩;ポリオキシエチレンアルキルアリールサルフェート塩などが含まれる。ただし、アニオン系界面活性剤は、これらに限定されない。また、2種以上のアニオン系界面活性剤を用いてもよい。
 ノニオン系界面活性剤には、ポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル;ソルビタン脂肪族エステル;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪族エステル;グリセロールのモノラウレート等の脂肪族モノグリセライド;ポリオキシエチレンオキシプロピレン共重合体;エチレンオキサイドと脂肪族アミン、アミドまたは酸との縮合生成物などが含まれる。ただし、ノニオン系界面活性剤は、これらに限定されない。また、2種以上のノニオン系界面活性剤を用いてもよい。
 カチオン系界面活性剤には、ジアルキルジメチルアンモニウム塩、エステル型ジアルキルアンモニウム塩、アミド型ジアルキルアンモニウム塩、ジアルキルイミダゾリニウム塩などが含まれる。ただし、カチオン系界面活性剤は、これらに限定されない。また、2種以上のカチオン系界面活性剤を用いてもよい。
 両性界面活性剤には、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルジメチルアミンオキサイド、アルキルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、アルキルアミドプロピルベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタインなどが含まれる。ただし、両性界面活性剤は、これらに限定されない。また、2種以上の両性界面活性剤を用いてもよい。
 高分子界面活性剤には、ポリビニルアルコールおよびその変性物;(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ヒドロキシエチル(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリル酸系水溶性高分子;ポリビニルピロリドン等が含まれる。ただし、高分子界面活性剤は、これらに限定されない。また、2種以上の高分子界面活性剤を用いてもよい。
 乳化剤の中では、反応性乳化剤を用いるのが好ましい。また、環境面からは、非ノニルフェニル型の乳化剤を用いることが好ましい。
 重合開始剤は、熱によって分解し、ラジカル分子を発生させる物質であれば特に限定されない。エマルション重合では、水溶性の開始剤が好適に使用される。重合開始剤には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;2,2’−アゾビス(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)等の水溶性アゾ化合物;過酸化水素等の熱分解系開始剤;過酸化水素とアスコルビン酸、t−ブチルヒドロパーオキサイドとロンガリット、過硫酸カリウムと金属塩、過硫酸アンモニウムと亜硫酸水素ナトリウム等のレドックス系重合開始剤などが含まれる。ただし、重合開始剤は、これらに限定されない。また、2種以上の重合開始剤を用いてもよい。
 重合開始剤の使用量は、特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。例えば、全モノマーの総量を100質量部としたときに、好ましくは0.1〜2質量部、より好ましくは0.2〜1質量部使用する。
 制振材用増粘剤を製造するための乳化重合は、必要に応じて、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム等のキレート剤、ポリアクリル酸ナトリウム等の分散剤や無機塩等の存在下で行われる。また、モノマーや重合開始剤等の添加方法としては、一括添加法、連続添加法、多段添加法等が挙げられる。これらの添加方法を適宜組み合わせてもよい。
 エマルション重合における重合温度は、特に限定されない。重合温度は、好ましくは0〜100℃、より好ましくは40〜95℃である。重合時間も、特に限定されない。重合時間は、好ましくは3〜15時間である。エマルション重合する際に、得られる重合体の物性に悪影響を及ぼさない範囲で、親水性溶媒や添加剤等を加えてもよい。単量体成分をエマルション重合反応系に添加する方法は、特に限定はなく、一括添加法、単量体成分滴下法、プレエマルション法、パワーフィード法、シード法、多段添加法等を用いることができる。
 エマルション重合反応後に得られるエマルション中の不揮発分、すなわち、増粘剤としての重合体は、60質量%以下であるのが好ましい。不揮発分が60質量%を超えると、エマルションの粘度が高すぎるため、分散安定性が保てず、凝集が起きる恐れがある。上記エマルションの平均粒径については、特に限定はないが、好ましくは10nm〜1μmであり、さらに好ましくは20〜500nmである。エマルションの平均粒径が10nm未満であると、エマルションの粘度が高くなりすぎ、また、分散安定性が保てずに凝集する恐れがある。他方、1μmを超えると、エマルションではなくなってしまう。
 エマルション重合時に、分子量低減のために、連鎖移動剤を単量体成分100質量部当たり0.001〜2質量部用いてもよい。連鎖移動剤には、四塩化炭素、ブロモホルム、ブロモトリクロロエタン等のハロゲン置換アルカン;n−ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、テトラデシルメルカプタン、ヘキサデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオグリコール酸ブチル、チオグリコール酸イソオクチル、チオグリコール酸ドデシル等のモノチオグリコール酸アルキル等のチオエステル;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;α−メチルスチレンダイマー、ターピノール、テルピネン、ジペンテン等が挙げられる。ただし、連鎖移動剤は、これらに限定されない。また、2種以上の連鎖移動剤を用いてもよい。
 本発明の制振材用増粘剤は、実施例に示すように、他成分と配合されて、制振材用組成物、例えば、制振材用エマルション塗料とされる。配合される他成分には、溶媒;水系共重合体ラテックス;可塑剤;安定剤;湿潤剤;防腐剤;発泡防止剤;無機質充填剤;着色剤;分散剤;防錆顔料;消泡剤;老化防止剤;防黴剤;紫外線吸収剤;帯電防止剤等が含まれる。好ましくは、制振材用組成物は、少なくとも、本発明の水系制振材用増粘剤、水性共重合体ラテックス、および無機質充填剤を含む。
 これらの配合物は、公知の材料から適宜選択されうる。例えば、溶媒としては、エチレングリコール、ブチルセロソルブ、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート等が挙げられる。水系共重合体ラテックスとしては、スチレン/ブタジエン系共重合体ラテックス、(メタ)アクリル酸系共重合体エマルション、スチレン/(メタ)アクリル酸系共重合体エマルション、酢酸ビニル系共重合体エマルション等が挙げられる。これらは、2種以上がブレンドされていてもよい。また、多段重合により、2種以上が複合化されていてもよい。無機質充填剤としては、炭酸カルシウム、カオリン、シリカ、タルク、硫酸バリウム、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、ガラストーク、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム、タルク、珪藻土、クレー等の無機質の充填剤;ガラスフレーク、マイカ等の鱗片状無機質充填剤;金属酸化物ウィスカー、ガラス繊維等の繊維状無機質充填剤等が挙げられる。着色剤としては、酸化チタン、カーボンブラック、弁柄、ハンザイエロー、ベンジンイエロー、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド等の有機または無機の着色剤が挙げられる。分散剤としては、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等の無機質分散剤およびポリカルボン酸系分散剤等の有機質分散剤が挙げられる。防錆顔料としては、リン酸金属塩、モリブデン酸金属塩、硼酸金属塩等が挙げられる。消泡剤としては、シリコン系消泡剤等が挙げられる。
 制振材用組成物は、好ましくは約40〜90質量%、より好ましくは約50〜85質量%、さらに好ましくは約60〜80質量%の範囲内の固形分を含有する。また、制振材用組成物のpHは、好ましくは7〜11、より好ましくは8〜10の範囲内である。
 制振材用組成物における各成分の配合量は、特に限定されない。通常用いられる量が、得られる特性を考慮しながら配合される。例えば、本発明の制振材用増粘剤の配合量は、制振材用組成物の固形分100質量部に対して、固形分で、好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.05〜1.5質量部、さらに好ましくは0.1〜1質量部である。水性共重合体ラテックスの配合量は、制振材用組成物の固形分100質量部に対して、固形分で、好ましくは10〜60質量部、より好ましくは15〜55質量部、さらに好ましくは20〜50質量部である。無機質充填剤の配合量は、制振材用組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは40〜90質量部、より好ましくは45〜85質量部、さらに好ましくは50〜80質量部である。ただし、配合量がこの範囲に限定されるわけではない。
 制振材用組成物は、また、多価金属化合物を含むことが好ましい。これにより、制振材用組成物の安定性、分散性、加熱乾燥性や、制振材用組成物から形成される制振材の制振性が向上する。多価金属化合物としては特に限定されず、例えば、酸化亜鉛、塩化亜鉛、硫酸亜鉛等が挙げられる。これらの2種以上を併用してもよい。
 上記多価金属化合物の形態は特に限定されず、例えば、粉体、水分散体や乳化分散体等であってよい。これらの中では、制振材用組成物中への分散性が向上することから、好ましくは水分散体または乳化分散体、より好ましくは乳化分散体の形態で使用する。また、多価金属化合物の使用量は、制振材用組成物中の固形分100質量部に対して、好ましくは0.05〜5.0質量部であり、より好ましくは0.05〜3.5質量部である。
 混合に用いる装置は特に限定されず、例えば、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、スパイラルミキサー、ニーダー、ディゾルバー等が用いられる。
 水系共重合体ラテックスは、特に限定されず、特開2000−355602号公報などに記載されている水系共重合体ラテックスの製造方法を参照して製造できる。例えば、フラスコ内に親水性成分である酸成分を予め仕込んでおいて重合を開始してもよい。新規な製造方法を用いて、水系共重合体ラテックスを製造しても勿論構わない。水系共重合体ラテックスは、保水性、増粘性などの各種特性に優れる増粘剤と配合される。このため、膜厚が厚い塗膜が形成された場合であっても、クラックや膨張が発生しにくく、制振性に優れる制振材が提供される。水系共重合体ラテックスは、粒子周辺の水分量が少なくなると、すぐに融着して膜を形成する傾向があるため、水系共重合体ラテックスを用いて塗膜を形成する場合に、本発明は特に有用である。なお、制振材用組成物に予め本発明の制振材用増粘剤が配合されていてもよい。
 制振材用組成物が基材に塗布および乾燥されることによって、制振材として作用する塗膜が形成される。基材は特に限定されるものではない。また、制振材用組成物を基材に塗布するためには、刷毛、へら、エアスプレー、エアレススプレー、モルタルガン、リシンガン等を用いることができる。
 本発明の制振材用増粘剤を用いて調製された制振材用組成物は、自動車の室内床下、鉄道車両、船舶、航空機、電気機器、建築構造物、建設機器等に適用される。ただし、これらに限定されない。
 本発明の制振材用組成物を用いて形成される塗膜は、制振性に優れる。塗膜を形成したときの損失係数(tanδ)が、好ましくは0.15以上であり、より好ましくは0.16以上であり、さらに好ましくは0.18以上である。なお、上記損失係数が大きいほど、制振性に優れることを意味する。損失係数は、実施例記載の方法により算出することができる。
 制振材用塗料の塗布量は、用途や所望する性能等により設定される。具体的には、乾燥時の被膜の膜厚が、好ましくは0.5〜5.0mmであり、より好ましくは1.5〜4.5mmである。
 上記制振材用塗料を塗布した後、乾燥して被膜を形成させるには、加熱乾燥してもよく、常温乾燥してもよい。効率性の点で加熱乾燥することが好ましい。本発明の制振材用組成物を用いて形成された制振材用塗料は、強制的に加熱して乾燥する場合であっても、乾燥性に優れるため、膨張やクラックが発生しにくい。このため、加熱乾燥を用いる場合に、特に有益である。加熱乾燥の温度は、好ましくは80〜210℃、より好ましくは110〜160℃である。
 本発明の効果について、実施例および比較例を用いて説明する。なお、特別の記載がない限り、以下の実施例において「部」は「質量部」を意味する。
 [実施例1:アルカリ可溶性モノマーユニットおよび会合性モノマーユニットを有する重合体の合成]
 撹拌機、温度計、冷却器、窒素導入管、滴下ロートを備えた四ツ口セパラブルフラスコに、イオン交換水(115部)、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩(1.5部)を投入した。内温68℃で撹拌しながら、緩やかに窒素を流し、反応容器内を完全に窒素置換した。次に、ポリオキシエチレンドデシルエーテルのスルホン酸アンモニウム塩(1.5部)をイオン交換水(92部)に溶解させた。
 ここに、重合体のモノマーとして、メタクリル酸(40部)、オクタデシルポリオキシエチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルのエステル結合物(エチレンオキシド50モル付加物)(10部)、およびアクリル酸エチル(50部)の混合物を投入し、撹拌してプレエマルションを作製した。因みに、メタクリル酸はアルカリ可溶性モノマーユニットの原料であり、オクタデシルポリオキシエチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルは会合性モノマーユニットの原料であり、アクリル酸エチルはエチレン性不飽和モノマーユニットの原料である。なお、オクタデシルポリオキシエチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルのエステル結合物(エチレンオキシド50モル付加物)の構造を以下に示す。
 重合体のモノマーを含む前記プレエマルションの5%を反応容器に投入して5分撹拌後、亜硫酸水素ナトリウム(0.017部)を投入した。別途、過硫酸アンモニウム(0.23部)を、イオン交換水(23部)に混合し、重合開始剤水溶液を作製した。この重合開始剤水溶液の5%を、前記反応容器に投入して、20分間撹拌し、初期重合を行った。反応容器の内温を72℃に保ち、残りのプレエマルション及び開始剤水溶液を2時間にわたって均一に滴下した。滴下終了後、イオン交換水(8部)で滴下槽を洗浄後、反応容器に投入した。内温を72℃に保ち、さらに1時間撹拌を続けた後、冷却して反応を完了させた。不揮発分30%の、制振材用増粘剤1を得た。
 [実施例2:アルカリ可溶性モノマーユニットおよび会合性モノマーユニットを有する重合体の合成]
 重合体のモノマーとして、メタクリル酸(40部)、オクタデシルポリオキシエチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルのエステル結合物(エチレンオキシド50モル付加物)(10部)、およびアクリル酸エチル(50部)の代わりに、メタクリル酸(40部)、オクタデシルポリオキシエチレンアクリレートのエステル結合物(エチレンオキシド50モル付加物)(10部)、およびアクリル酸エチル(50部)を用いる以外は、実施例1と同様の手法で、制振材用増粘剤2を得た。
 [比較例1:会合性モノマーユニットを有さない増粘剤の合成]
 重合体のモノマーとして、メタクリル酸(40部)、オクタデシルポリオキシエチレン(3−メチル−3−ブテニル)エーテルのエステル結合物(エチレンオキシド50モル付加物)(10部)、およびアクリル酸エチル(50部)の代わりに、メタクリル酸(35部)、およびアクリル酸エチル(65部)を用いる以外は、実施例1と同様の手法で、比較制振材用増粘剤3を得た。
 [実施例3、4、比較例2:制振材用エマルション塗料の調製]
 実施例1、2および比較例1で得られた制振材用増粘剤、ならびに他の成分を下記に示す配合比率で配合して、制振材用組成物である制振材用エマルション塗料を調製した。
 (配合比率)
・エマルション(株式会社日本触媒製アクリセットDC−172)  148部
・炭酸カルシウム(日東粉化工業株式会社製NN#200)     240部
・添加剤(プロピレングリコール)                 19部
・分散剤(花王株式会社製デモールEP)             4.3部
・制振材用増粘剤                          7部
・消泡剤(サンノプコ株式会社製ノプコ8034L)        0.3部
 なお、比較例2においては、制振材用増粘剤を14部配合した。これは、制振材用エマルション塗料の粘度を所定の値にするためである。
 調製された制振材用エマルション塗料の乾燥性および形成された塗膜の損失係数について、それぞれ評価した。各評価項目の測定方法は、以下の通りである。また、評価結果をまとめて表1に示す。
 [乾燥性]
 鋼板(日本テストパネル製SPCC−SD;75mm幅×150mm長さ×0.8mm厚み)の上に、制振材用エマルションを、塗布厚みが1.5mm、3.0mm、および4.5mmとなるように、塗布した。その後、塗布された制振材用エマルションを、熱風乾燥機を用いて、150℃で30分間乾燥させた。得られた乾燥塗膜の膨張およびクラックの有無を評価した。膨張およびクラックが全くない場合を◎、膨張およびクラックがほぼない場合を○、膨張およびクラックが少し発生している場合を△、膨張およびクラックが多数発生している場合を×とした。
 [損失係数]
 鋼板(日本テストパネル製SPCC−SD;15mm幅×250mm長さ×0.8mm厚み)の上に、制振材用エマルションを、塗布厚みが3.0mmとなるように、塗布した。その後、塗布された制振材用エマルションを、熱風乾燥機を用いて、150℃で30分間乾燥させた。得られた乾燥塗膜の制振性を、損失係数を用いて評価した。損失係数は、株式会社小野測機・損失係数測定システムを用いて、25℃の測定環境において、片持ち梁法のtanδを測定することによって評価した。損失係数の値が大きいほど、制振性が良好であることを示す。
 表1に示されるように、本発明の制振材用エマルションを用いて形成された塗膜は、クラックや膨張が生じにくく、優れた制振性を発揮する。
 本発明の制振材用増粘剤が配合された塗料は、保水性が向上するため、厚い塗膜が形成された場合であっても、塗膜にクラックや膨張が生じにくい。このため、制振性に優れる塗膜が形成される。また、本発明の制振材用増粘剤が有するアルカリ可溶性モノマーユニットによって、溶液の粘度が効果的に上昇する。さらに、本発明の制振材用増粘剤が有する会合性モノマーユニットによって、いっそう効果的な増粘作用が引き起こされる。

Claims (6)

  1.  アルカリ可溶性モノマーユニットおよび会合性モノマーユニットを有する重合体からなる水系制振材用増粘剤。
  2.  前記会合性モノマーユニットは、側鎖に、下記式(I):
    (式中、Rはメチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基からなる群より選択される1種以上であり、nは10〜300であり、Xは、直接結合、−C(=O)−、または−C(=O)NH−であり、Rは炭素数6〜30の炭化水素基である)
    で表される基を有することを特徴とする請求項1に記載の水系制振材用増粘剤。
  3.  前記会合性モノマーユニットは、下記式(II):
    (式中、n、XおよびRは前記定義通りである)
    で表されることを特徴とする請求項1または2に記載の水系制振材用増粘剤。
  4.  前記重合体は、前記アルカリ可溶性モノマーユニットおよび前記会合性モノマーユニットの原料であるモノマーと共重合可能な、エチレン性不飽和モノマーに起因するモノマーユニットをさらに有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水系制振材用増粘剤。
  5.  前記アルカリ可溶性モノマーユニットの配合割合は、全モノマーユニットに対して20〜69モル%であり、会合性モノマーユニットの配合割合は、全モノマーユニットに対して0.001〜2.0モル%であり、前記エチレン性不飽和モノマーに起因するモノマーユニットの配合割合は、全モノマーユニットに対して30〜79モル%であることを特徴とする請求項4に記載の水系制振材用増粘剤。
  6.  請求項1〜5のいずれか1項に記載の水系制振材用増粘剤、水性共重合ラテックス、および無機質充填剤を含む、制振材用組成物。
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