JP2004137352A - 架橋熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法 - Google Patents

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柴籐啓介
Tetsuo Konno
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Abstract

【課題】圧縮永久歪み、色調、強度(破断応力)に優れた架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法に関するものである。
【解決手段】オレフィン系樹脂(a)とオレフィン系共重合ゴム(b)を主成分とする混合物を、過酸化物架橋剤及び/またはマレイミド架橋剤からなる予備架橋剤(c)で予備架橋した後、続いてフェノール樹脂架橋剤からなる架橋剤(d)で架橋してなり、オレフィン系樹脂(a)とオレフィン系共重合ゴム(b)の配合比率(重量比)が10/90〜40/60であり、オレフィン系共重合ゴム(b)100重量部に対して予備架橋剤(c)が0.05〜10重量部、架橋剤(d)が0.5〜15重量部である架橋熱可塑性エラストマー組成物に存する。

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱可塑性エラストマー組成物に関する。詳しくは、圧縮永久歪み、色調、強度(破断応力)に優れた架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリプロピレンにオレフィン系ゴムを混合した組成物はオレフィン系熱可塑性エラストマーとして自動車部品、家電部品、医療用機器部品、電線、及び雑貨等の分野でその市場を拡大している。一般にオレフィン系熱可塑性エラストマーは架橋構造を取ることによって圧縮永久歪み、耐油性等の性能が向上し、硫黄架橋、過酸化物架橋、フェノール樹脂架橋、キノンジオキシム架橋等が提案されてきた。中でもフェノール樹脂架橋剤を用いることにより良好な圧縮永久歪みを有する組成物が得られることが報告されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、熱安定性が悪く樹脂組成物が褐色に変色してしまうという問題があった。他方、オレフィン系熱可塑性エラストマーの性能を向上させるためにそのモルフォロジーの制御は必須であり、そのためポリプロピレンとオレフィン系ゴムの混練時に高いせん断力をかける必要がある。その際樹脂はせん断発熱により高温となり、フェノール樹脂架橋剤に起因すると思われる変色が生じる。これら熱安定性、耐光性及び色調の改良のため、架橋剤として特定のものを用いることも提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、その改良の程度は不充分であり、これまで、樹脂の最適な架橋とモルフォロジーを両立させることは難しい問題であった。
【0003】
【特許文献1】
特公昭58−46138号公報(第2頁左欄25行〜右欄25行)
【特許文献2】
特公平8−32803号公報(第2頁左欄42行〜右欄15行)
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、圧縮永久歪み、色調、強度(破断応力)に優れた架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記の目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、オレフィン系樹脂とオレフィン系共重合ゴムを主成分とする混合物を架橋剤を用いて段階的に架橋することにより、好適には有機過酸化物等により予備架橋した後、最終的にフェノール樹脂架橋剤により架橋することにより、圧縮永久歪み、色調、強度(破断応力)に優れた架橋熱可塑性エラストマー組成物が得られることを見出して、本発明に到達した。
【0006】
即ち、本発明の要旨は、オレフィン系樹脂(a)(以下「(a)」と略記することがある)とオレフィン系共重合ゴム(b)(以下「(b)」と略記することがある)を主成分とする混合物を予備架橋剤(c)で予備架橋した後、続いて架橋剤(d)で架橋してなる架橋熱可塑性エラストマー組成物に存している。
【0007】
本発明の別の要旨は、上記(a)が、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂、結晶性ポリブテン樹脂、及びそれらを主成分とする共重合体から選ばれる少なくと一種であり、上記(b)が、エチレンープロピレンー非共役ジエン共重合ゴムであり、上記予備架橋剤(c)が過酸化物架橋剤、マレイミド架橋剤、上記架橋剤(d)がフェノール樹脂架橋剤である架橋熱可塑性エラストマー組成物に存している。
【0008】
本発明の他の要旨は、成分(a)と(b)の配合比率(重量比)が10/90〜40/60であり、成分(b)100重量部に対して予備架橋剤(c)が0.05〜10重量部、架橋剤(d)が0.5〜15重量部である架橋熱可塑性エラストマー組成物に存している。
本発明の別のもう一つの要旨は、上記(a)と上記(b)を主成分とする混合物を予備架橋剤(c)で予備架橋した後、続いて架橋剤(d)で架橋することを特徴とする架橋熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に存している。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(1)組成物とその原材料
本発明に用いられるオレフィン系樹脂(a)は、例えば、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂、結晶性ポリブテン樹脂、及びそれらを主成分とする共重合体を用いるのが好ましい。該共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のエチレン系樹脂を挙げることが出来る。これらオレフィン系樹脂(a)の中では、プロピレン系樹脂を用いることが好ましく、該プロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体、プロピレンを主成分とする共重合体樹脂が好適であり、具体的にはプロピレン・エチレンランダム共重合体、プロピレン・エチレンブロック共重合体等を挙げることができる。これらプロピレン系樹脂のメルトフローレート(JIS−K7210、230℃、21.2N荷重)としては、通常0.05〜100g/10分であり、0.1〜50g/10分であることが好ましい。メルトフローレートが上記未満のものを用いた場合は、成形性が悪化し、得られる成形体の外観に不具合が生じることがあり、また、上記範囲を超えるものを用いた場合は、機械的特性、特に引張破壊強さが低下する傾向にある。
【0010】
本発明において用いられるオレフィン系共重合体ゴム(b)は、例えば、エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム、エチレン−ブテン−非共役ジエン共重合体ゴム、プロピレン−ブタジエン共重合体ゴム等の、オレフィンを主成分とする無定型ランダム共重合体の弾性体が挙げられる。これらの中では、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体ゴム(EPDM)が好適であり、非共役ジエンとしては、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチレンノルボルネン、エチリデンノルボルネン等が使用され、特にエチレン−プロピレン−エチリデンノルボルネン共重合体ゴムは、適度な架橋構造が得られる点で好適である。
【0011】
上記のオレフィン系共重合体ゴムにおいて、エチレン含有量は通常50〜90重量%、好ましくは60〜80重量%、プロピレン含有量は通常5〜50重量%、好ましくは10〜45重量%、非共役ジエン含有量は、通常1〜30重量%、好ましくは3〜20重量%である。エチレン含有量が90重量%を超える場合は、得られる組成物の柔軟性が失われることがあり、50重量%未満の場合は機械的性能が低下する傾向にある。また、非共役ジエン含有量が1重量%未満の場合は、得られる組成物の架橋度が上がらないために機械的特性が低下し、30重量%を超える場合には押出成形性が低下する傾向にある。
【0012】
上記オレフィン系共重合ゴムには、鉱物油系軟化剤が含有されていてもよい。鉱物油系軟化剤は、得られる架橋オレフィン系熱可塑性エラストマーを軟化させ、柔軟性と弾性を増加させるとともに、得られる組成物の加工性、流動性を向上させる目的のために使用される。一般に、鉱物油系ゴム用軟化剤は、芳香族炭化水素、ナフテン系炭化水素及びパラフィン系炭化水素の混合物である。全炭素量に対し、芳香族炭化水素の炭素の割合が35重量%以上のものは芳香族系オイル、ナフテン系炭化水素の炭素の割合が30〜45重量%のものはナフテン系オイル、パラフィン系炭化水素の炭素の割合が50重量%以上のものはパラフィン系オイルと呼ばれる。これらのうち、本発明においては、パラフィン系オイルが好適に使用される。軟化剤の添加方法は、特に限定されるものではなく、組成物の製造に先だって、ゴムに予め含有されていてもよく、組成物の製造中に原料と共に添加してもよく、また、組成物を成型品とする段階で添加してもよい。
【0013】
上記オレフィン系樹脂(a)とオレフィン系共重合ゴム(b)の配合比率(重量比)は、10/90〜40/60であることが好ましい。オレフィン系樹脂(a)の比率が10/90より少ないと成形が困難となり、40/60より多いと硬度が高くなる傾向となる。
【0014】
本発明の予備架橋剤(c)としては、特に限定はされないが下記のフェノール樹脂架橋剤以外の架橋剤を用いることが望ましく、中でも有機過酸化物架橋剤、マレイミド架橋剤が好ましい。有機過酸化物架橋剤は、芳香族系もしくは脂肪族系のいずれも使用でき、単一の過酸化物でも2種以上の過酸化物の混合物でもよい。具体的には、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のジアルキルパーオキシド類、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキシン−3等のパーオキシエステル類、アセチルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、p−クロロベンゾイルパーオキシド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類等が用いられる。この中では、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンが好適に使用される。
【0015】
架橋効率を上げるために硫黄、p−キノンジオキシム、p−ジニトロソベンゼン、1,3−ジフェニルグアニジン等の過酸化物用助剤、ジビニルベンゼン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート等の多官能ビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物、フェニルビスマレイミド、エチレンビスマレイミド、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系化合物等、公知の架橋助剤を併用しても良い。
【0016】
有機過酸化物架橋剤の添加量としては、通常、オレフィン系共重合ゴム(b)100重量部に対し0.05〜5重量部である。0.05重量部未満では第一段階での架橋度が不足し、好ましい機械的強度が得られず、5重量部超過では添加量を増しても添加量の増加に対応した効果が得られず経済的に不利な傾向となる。なお、マレイミド系化合物は単独でもマレイミド架橋剤として使用することが出来る。この場合の添加量としてはオレフィン系共重合ゴム100重量部あたり0.1〜10重量部が好ましく、より好ましくは0.5〜5重量部である。0.1重量部未満では第1段階での架橋度が不足となり好ましい機械的強度が得られず、10重量部超過ではやはり、添加量を増しても添加量の増加に対応した効果が得られず経済的に不利な傾向となる。
【0017】
本発明の架橋剤(d)としては、フェノール樹脂架橋剤が好ましく、該架橋剤を使用することにより本発明の効果は最大限に発現される。フェノール樹脂架橋剤としては、特公昭58−46138に記載されているものを使用することができ、例えば、置換フェノールまたは未置換フェノールとアルデヒドの縮合或いは二官能性フェノールとジアルコールの縮合によるフェノール系樹脂である。該フェノール系架橋剤は通常、活性剤と共に使用される。ここで用いることができる活性剤としては、例えば、塩化第一スズ、塩化第二鉄、塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレンのようなハロゲン供与体、及び酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、二酸化珪素、酸化亜鉛のような受酸剤が用いられる。フェノール系樹脂がハロゲン化されている場合にはハロゲン供与体は用いなくてもよい。
【0018】
フェノール樹脂架橋剤の添加量はオレフィン系共重合ゴム(b)100重量部に対して0.5〜15重量部が好ましく、より好ましくは1〜10重量部、特に好ましくは2〜8重量部である。0.5重量部未満では架橋度が不足し圧縮永久歪みが不良となりやすく、15重量部超過では多く添加しても架橋度は殆ど変わらず経済的に不利となる。
【0019】
ハロゲン供与体の添加量はオレフィン系共重合ゴム(b)100重量部あたり通常、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部である。0.01重量部未満では架橋度が不足となりやすく、10重量部超過ではハロゲン化水素の発生量が過大となり混練機の腐食を招く場合がある。受酸剤を用いる場合の添加量はオレフィン系共重合ゴム(b)100重量部あたり通常、0.001〜5重量部である。0.001重量部未満では発生するハロゲン化水素の捕捉が不足し混練機が腐食する恐れがあり、5重量部超過では架橋速度が低下することがある。
本発明の架橋熱可塑性エラストマー組成物には、上記必須成分に加えて、本発明の効果を損なわない範囲で各種目的に応じ他の任意の配合成分を配合することができる。
【0020】
任意成分としては、例えば、充填材(フィラー)、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、滑剤、防曇剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、分散剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、導電性付与剤、金属不活性化剤、分子量調整剤、防菌剤、防黴材、蛍光増白剤等の各種添加物、上記必須成分以外の熱可塑性樹脂、上記必須成分以外のエラストマーを挙げることができ、これらの中から任意のものを単独でまたは併用して用いることができる。
【0021】
ここで、必須成分以外の熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリフェニレンエーテル系樹脂、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリオキシメチレンホモポリマー、ポリオキシメチレンコポリマー等のポリオキシメチレン系樹脂、ポリメチルメタクリレート系樹脂等を挙げることができる。
更に、充填材としては、ガラス繊維、中空ガラス球、炭素繊維、タルク、炭酸カルシウム、マイカ、チタン酸カリウム繊維、シリカ、二酸化チタン、カーボンブラック等を挙げることができる。
【0022】
(2)組成物の製造方法
本発明の架橋熱可塑性エラストマー組成物の好適な製造方法については、オレフィン系樹脂(a)とオレフィン系共重合ゴム(b)を主成分とする混合物を予備架橋剤(c)で予備架橋した後、続いて架橋剤(d)で架橋するのが好ましい。即ち、混練時、高いせん断力の必要なモルフォロジー形成時には色調への影響が少ない有機過酸化物架橋剤或いはマレイミド架橋剤を用いて最適なモルフォロジーを作り上げておき、その後、褐色への変色が生じにくく、しかも架橋への影響のない混練条件でフェノール樹脂架橋をすることによって本発明の架橋熱可塑性エラストマーを得ることができる。
【0023】
フェノール樹脂架橋剤のみの一段階架橋では、樹脂成分の分散時のせん断発熱、反応熱による樹脂温度の上昇は避けられず、組成物の著しい着色、スクリュー腐食を招くことがある。混練機の剪断速度を落とすことにより樹脂温度の上昇を抑えることは出来るが、樹脂成分の分散が不十分となり、強度(破断応力)が極めて低い物となる傾向となりあまり好ましくない。
【0024】
組成物の製造に用いる装置としては、特に限定されるものではなく、開放型のミキシングロール、非開放型バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー、ニーダー、単軸或いは二軸押出機など公知のものを使用することができる。前述のように、本発明の方法では、予備架橋剤(c)、架橋剤(d)を用いて段階的に架橋させることにより目的の組成物を製造することが出来る。架橋の段数については、二段階又はそれ以上であるのが好ましいが、プロセスの簡素さと効果とのバランスから二段階とするのが好ましい。また、三段階以上とする場合でも、架橋剤(d)は最終段階で用いることが好ましい。
【0025】
架橋剤の添加方法は用いる混練機に合わせて適宜採用すればよく、例えば連続式押出機の場合、予備架橋剤を加える第一段階では、あらかじめ樹脂成分に混合する、或いはフィード口から供給する等の方法を用い、第二段階以降は架橋剤が液体であれば原液のまま、或いは溶媒などに希釈してポンプにより注入してもよく、固体又は粉体であれば溶融状態でポンプにより注入する方法、樹脂成分とのマスターバッチを添加する方法、または溶液或いは分散体にして注入する方法、等を用いればよい。また、第一段階で予備架橋させた組成物を一旦取り出し、第二段階に用いられる架橋剤と混合した後再び押出機で混練する方法を用いてもよい。他方、バンバリーミキサー、ブラベンダーミキサー等のバッチ式混練機の場合は、予備架橋剤や架橋剤は、その形態のまま添加することが出来る。
【0026】
本発明に於ける混練時の樹脂温度としては、オレフィン系樹脂の溶融温度以上で230℃以下、好ましくは210℃以下、より好ましくは200℃以下とするのがよい。230℃より高いとフェノール樹脂架橋剤の高度な縮合体が生成し、得られる組成物が著しく着色したり、混練機のデッドスペースに滞留し黒色斑点として現れたりする。また、混練機の腐食が促進されることもある。
【0027】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
<材料>
成分(a):ポリプロピレン(日本ポリケム社製、EG8)(MFR:0.8g/10min、測定条件:230℃、荷重2.16kgf)
成分(b):EPDM(ジェイエスアール社製、EP504EC、油展用鉱物油100重量部含有)
成分(c1):有機過酸化物(化薬アクゾ社製、カヤヘキサAD−40C)
成分(c2):フェニルビスマレイミド(ケイ・アイ化成社製)
成分(d):フェノール樹脂架橋剤(田岡化学工業社製、タッキロール201)
架橋助剤:ジビニルベンゼン(三成化成工業社製、55%品)
活性剤:塩化第1スズ(和光純薬工業社製、特級試薬)
受酸剤:酸化亜鉛(和光純薬工業社製、特級試薬)
【0028】
<評価方法>
1)硬度:JIS K−6253(ショア硬度A)に従い測定した。
2)圧縮永久歪み:JIS K−6262に準拠し、温度70℃、22時間、25%圧縮の条件で測定した。
3)色目:成形品を目視にて判定し、淡黄色・黄色を○、褐色・暗褐色・黒色を×とした。
4)色差:カラーテスター(スガ試験機(株)、SC−3型)にて白色に対する色ΔEを測定した。数値が小さいほど良好である。
5)破断応力:JIS K−6251に準拠し、JIS3号ダンベル、引っ張り速度500mm/minの条件で測定した。
【0029】
<実施例、比較例>
(実施例1)
(a)成分のオレフィン系樹脂としてポリプロピレン(日本ポリケム製、EG8)、(b)成分のオレフィン系共重合ゴムとしてEPDM(ジェイエスアール社製、EP504EC、油展用鉱物油100重量部含有)を、(a)と(b)中のゴム成分の重量比が20/80となるように配合し、更に(b)成分中のゴム成分100重量部あたり、予備架橋剤(c)として有機過酸化物(カヤヘキサAD−40C、化薬ヌーリー(株))0.6重量部、ジビニルベンゼン0.3重量部、塩化第一スズ0.8重量部、酸化亜鉛0.4重量部を、180℃に設定したブラベンダープラストミル(東洋精機(株)製、30C150)に投入し、回転数150rpmにて2分間混練して予備架橋した後(一段目)、回転数を75rpmに下げ、更に2分後に架橋剤(d)としてフェノール樹脂架橋剤(タッキロール201、田岡化学工業(株))3.2重量部を投入し(二段目)、更に6分間混練を続けた後、組成物を取り出し、200℃、100kg/cmにて5分間2mm厚にプレス成形して上記の項目について評価した。 配合、混練条件、評価結果を表1に示す。
(実施例2〜3、および比較例1〜4)
表1の配合及び混練り条件で、実施例1と同様にして組成物を製造、評価した。結果を表1に示す。
【0030】
【表1】
Figure 2004137352
<結果の評価>
1)比較例1では、フェノール樹脂架橋剤のみを使用した低回転数の1段階架橋であるため、強度(破断応力)が低く、色調が悪い。
2)比較例2、4では、フェノール樹脂架橋剤のみを使用した高回転数の1段階架橋であるため、色調が悪い。
3)比較例3では、フェノール樹脂架橋剤のみを使用した低回転数の1段階架橋であり、しかも架橋剤量が多いため、成形品を得ることが出来なかった。
【0031】
【発明の効果】
本発明により、圧縮永久歪み、色調、強度(破断応力)に優れた架橋オレフィン系熱可塑性エラストマー組成物及びその製造方法を提供することができる。本発明の架橋オレフィン系熱可塑性エラストマーは、自動車部品、土木資材、建材、スポーツ用具、工業用部品、家電用途に有用である。

Claims (6)

  1. オレフィン系樹脂(a)(以下「(a)」と略記する)とオレフィン系共重合ゴム(b)(以下「(b)」と略記する)を主成分とする混合物を、予備架橋剤(c)で架橋した後、続いて架橋剤(d)で架橋してなる架橋熱可塑性エラストマー組成物。
  2. 上記(a)が、プロピレン系樹脂、エチレン系樹脂、結晶性ポリブテン樹脂、及びそれらを主成分とする共重合体から選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の架橋熱可塑性エラストマー組成物。
  3. 上記(b)が、エチレンープロピレンー非共役ジエン共重合ゴムである請求項1に記載の架橋熱可塑性エラストマー組成物。
  4. 上記予備架橋剤(c)が過酸化物架橋剤、マレイミド架橋剤、上記架橋剤(d)がフェノール樹脂架橋剤である請求項1に記載の架橋熱可塑性エラストマー組成物。
  5. 上記(a)と上記(b)の配合比率(重量比)が10/90〜40/60であり、(b)100重量部に対して予備架橋剤(c)が0.05〜10重量部、架橋剤(d)が0.5〜15重量部である請求項1に記載の架橋熱可塑性エラストマー組成物。
  6. 上記(a)と上記(b)を主成分とする混合物を予備架橋剤(c)で架橋した後、続いて架橋剤(d)で架橋することを特徴とする架橋熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
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