JP2004137071A - シート巻取り装置 - Google Patents

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Abstract

【課題】シートを引き出した状態からシート端部の係合を解除したときに、シートを確実に巻取ることができると共に、打音や衝撃も和らげることができるようにしたシート巻取り装置を提供する。
【解決手段】一対の支持部材24に巻取り軸22を支持させ、この巻取り軸22にシート14の一端縁を固定し、巻取り軸を巻取り方向に付勢して、シートを引き出せると同時に、自動的に巻取ることができるようにする。そして、巻取り軸の少なくとも一端と支持部材との間に、前記シートの引き出し方向には作用せず、巻取り方向には作用する回転ダンパを設ける。
【選択図】 図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば自動車のトノカバー等のシートを引き出し可能に巻取るためのシート巻取り装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
ワゴン車などの後部座席の後ろの空間に形成された荷物室には、置いた荷物を窓の外から見えないようにし、また、直射日光を遮るために、荷物室の上部を覆うようにトノカバーが配設されている。このトノカバーは、車体の幅方向に渡されて、両端を回転可能に支持された巻取り軸に巻き取られており、必要なときに引き出して荷物室上部を覆うように配置される。
【0003】
上記巻取り軸は、トノカバーを巻き取る方向に常時バネ付勢されており、トノカバーは、引き出した後にその先端に装着されたバーの両端を、車体側に固定されたガイドレールの端部に係合させるようにしている。そして、上記係合を解除すると、上記バネ力によって巻取り軸が自動的に巻き戻り、トノカバーが巻き上げられるようになっている。
【0004】
このトノカバーのようなシート巻取り装置としては、例えば下記特許文献1に示されるように、左右両側に配設した樹脂製の支持体と、前記支持体間に回転自在に装着した中空のシート巻取り軸と、前記シート巻取り軸の外周面に一端を固定したシートと、前記シート巻取り軸の中に配設したコイルバネとであって、シートを引き出したときに弾性力を蓄積し、その復元力でシート巻取り軸を回転させてシートを巻取るようにしたコイルバネとを備えたものが知られている。
【0005】
【特許文献1】
特開2002−174085号公報
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来のシート巻取り装置では、シートを引き出した状態から、シート端部に装着されたバーとガイドレールとの係合を解除して上記バネ力によってシートを巻き戻すときに、シートが高速で巻き上げられるため、シート端部に装着されたバーが、巻取り軸を囲む筒状ケース等に勢いよく当って大きな打音がすると共に、衝撃部を破損する虞れがあった。
【0007】
一方、上記打音や衝撃を軽減するために、巻取り軸のバネ付勢を弱くすると、シートを確実に巻取ることができない虞れがあるという問題があった。
【0008】
したがって、本発明の目的は、シートを引き出した状態からシート端部の係合を解除したときに、シートを確実に巻取ることができると共に、打音や衝撃も和らげることができるようにしたシート巻取り装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の第1は、一対の支持部材に支持される巻取り軸と、この巻取り軸に一端縁を固定されて巻取り状態と引き出し状態とを取り得るシートと、前記支持部材に対して前記巻取り軸を巻取り方向に付勢する手段とを備えたシート巻取り装置において、少なくとも一方の端部における前記巻取り軸と前記支持部材との間に、前記シートの引き出し方向には作用せず、巻取り方向には作用する回転ダンパを設けたことを特徴とするシート巻取り装置を提供するものである。
【0010】
上記発明によれば、シートを引き出すときには、上記回転ダンパが作用しないので、巻取り軸を高速で回転させて容易に引き出すことができ、シートを開放して上記付勢手段によって巻取り軸を回転させてシートを巻き戻すときには、上記回転ダンパが作用するため、シートをゆっくりと巻き戻すことができる。このため、シート端部に装着したバー等が、巻取り軸を囲む筒状ケース等に勢いよく当って大きな打音がしたり、衝撃部を破損したりすることを、効果的に防止することができる。
【0011】
本発明の第2は、上記第1の発明において、前記回転ダンパは、前記巻取り軸の端部に回転方向に係合して挿入される外筒と、この外筒内に挿入されてその内面に摺接する内筒と、前記外筒及び前記内筒との隙間に充填封止された粘性流体と、前記内筒の前記外筒から突出した端面を塞ぐように連設されると共に周縁に円筒状リブが形成された円盤部と、この円盤部の中央に固設された太陽ギヤと、この太陽ギヤに歯合してその外周に配置される遊星ギヤと、前記支持部材側に設けられていて、前記太陽ギヤ及び遊星ギヤを囲む周壁を持ち、前記円盤部の前記円筒状リブ内周に摺接して相対回転可能に挿入されるリテーナとを備え、前記リテーナには、前記外筒が前記シートの巻取り方向に回転するときには、前記遊星ギヤに噛み合ってその回転を制止し、前記外筒が前記シートの引き出し方向に回転するときには、前記遊星ギヤの回転を許容するように保持する収容部が設けられているシート巻取り装置を提供するものである。
【0012】
上記発明によれば、前記外筒が前記巻取り軸と共に、前記シートを巻き戻す方向に回転するときには、前記遊星ギヤが前記リテーナの収容部に噛み合ってその回転が制止され、該遊星ギヤに噛み合う太陽ギヤが回転できなくなるため、内筒が固定された状態で外筒のみが回転し、両者の隙間に充填封止された粘性流体によってダンパ作用がもたらされる。また、前記外筒が前記巻取り軸と共に、前記シートを引き出す方向に回転するときには、前記遊星ギヤの回転が許容されるため、この遊星ギヤに歯合する太陽ギヤも回転することができ、結局、内筒が外筒と一緒に回転するため、ダンパ作用は働かない。このように、ダンパとワンウェイクラッチとを一体化した構造で実現することができ、装置全体を小型化することができる。
【0013】
本発明の第3は、前記第2の発明において、前記リテーナの周壁は、少なくともその鉛直方向に対向する上下壁が円弧状をなしていて、前記円盤部の円筒状リブ内周に摺接しているシート巻取り装置を提供するものである。
【0014】
上記発明によれば、巻取り軸に外筒及び内筒を介して連設された円盤部が、リテーナの上下壁に回転可能に当接して支持されるので、シートが巻き付いて重い巻取り軸を安定して支持することができる。
【0015】
本発明の第4は、前記第3の発明において、前記リテーナの周壁は、少なくともその鉛直方向に対向する上下壁が円弧状をなしていて、前記円盤部の円筒状リブ内周に摺接しており、かつ、上下壁を結ぶ左右壁が前記円盤部の円筒状リブ内周より離れるように形成されていて、前記上下壁の内側に前記遊星ギヤの収容部が形成されているシート巻取り装置を提供するものである。
【0016】
上記発明によれば、巻取り軸に外筒及び内筒を介して連設された円盤部が、リテーナの上下壁に回転可能に当接して支持されるので、シートが巻き付いて重い巻取り軸を安定して支持することができると共に、左右壁が円盤部の円筒状リブ内周より離れることにより、摺動面積を少なくして回転抵抗を軽減でき、かつ、組付け精度の許容度を高めることができ、更に遊星ギヤをリテーナの上下壁の内側に配置することにより、リテーナをコンパクトにすることができる。
【0017】
本発明の第5は、前記第2〜4の発明のいずれか1つにおいて、前記太陽ギヤの中心に孔が形成され、前記リテーナの中心には、前記孔に挿入されるボスが突設されていて、前記ボスを前記孔に挿入したときに、両者がクリック感を伴って嵌合するように構成したシート巻取り装置を提供するものである。
【0018】
上記発明によれば、前記外筒及び内筒を、前記内筒に連設された円盤部の太陽ギヤを、前記リテーナに保持された遊星ギヤと噛み合うように組付けたとき、太陽ギヤの中心の孔に、前記リテーナの中心のボスが挿入され、両者がクリック感を伴って嵌合するので、外筒及び内筒をリテーナに仮組みすることができ、これの部品をユニット化して供給することが可能となる。
【0019】
本発明の第6は、前記第1の発明において、前記回転ダンパは、前記巻取り軸の端部に回転方向に係合して挿入される外筒と、この外筒内に挿入されてその内面に摺接する内筒と、前記外筒及び前記内筒との隙間に充填封止された粘性流体と、前記支持部材側に設けられて周縁に円筒状リブが形成された円盤部と、この円盤部の中央に固設された太陽ギヤと、この太陽ギヤに歯合してその外周に配置される遊星ギヤと、前記内筒の前記外筒から突出した端面を塞ぐように連設されると共に、前記太陽ギヤ及び遊星ギヤを囲む周壁を持ち、前記円盤部の前記円筒状リブ内周に摺接して相対回転可能に挿入されるリテーナとを備え、前記リテーナには、前記リテーナには、前記外筒が前記シートの巻取り方向に回転するときには、前記遊星ギヤに噛み合ってその回転を制止し、前記外筒が前記シートの引き出し方向に回転するときには、前記遊星ギヤの回転を許容するように保持する収容部が設けられているシート巻取り装置を提供するものである。
【0020】
上記発明によれば、前記外筒が前記巻取り軸と共に、前記シートを巻き戻す方向に回転するときには、前記遊星ギヤが前記リテーナの収容部に噛み合ってその回転が制止されるため、前記遊星ギヤが前記太陽ギヤと歯合しながらその周りを回転できなくなる。その結果、前記リテーナ及びそれに連設された内筒の回転が制止されるので、内筒と外筒との摺動面で粘性流体によるダンパ作用が生じる。また、前記外筒が前記巻取り軸と共に、前記シートを引き出す方向に回転するときには、前記遊星ギヤの回転が許容されるため、この遊星ギヤが太陽ギヤと歯合しながらその周りを回転することができ、結局、内筒が外筒と一緒に回転するため、ダンパ作用は働かない。このように、ダンパとワンウェイクラッチとを一体化した構造で実現することができ、装置全体を小型化することができる。また、巻取り軸側に取付けられるリテーナは、円盤部よりも径が小さいので、巻取り軸の径を小さくできる。
【0021】
【発明の実施の形態】
図1〜8には、本発明のシート巻取り装置を、自動車のトノカバーの巻取り装置に適用した一実施形態が示されている。図1はトノカバーを巻き取った状態を示す斜視図、図2はトノカバーを引き出した状態を示す斜視図、図3は巻取り軸の支持構造を示す分解斜視図、図4は同シート巻取り装置に組み込まれたダンパの構造を示す分解斜視図、図5は同ダンパの断面図、図6は同ダンパをサイドカバーに装着した状態を示す一部切欠き断面図、図7は同ダンパとサイドカバーとの間に介在する太陽ギヤ及び遊星ギヤがロックした状態を示す説明図、図8は同ダンパとサイドカバーとの間に介在するに太陽ギヤ及び遊星ギヤが回動可能な状態を示す説明図である。
【0022】
図1、2に示すように、このトノカバー巻取り装置10は、平面視でコ字状をなす枠体11を有している。この枠体11は、一対のほぼ平行に伸びるアーム12、12を有しており、これらのアーム12、12の対向する内面には、長手方向に沿ったガイド溝13、13が形成されている。このガイド溝13のアーム12先端側の端部13aは、下方に向けてL字状に屈曲している。
【0023】
図3を併せて参照すると、トノカバー14は、筒状ケース21内に収容された巻取り軸22に一端を固定され、他端を筒状ケース21のスリット23から引き出された状態で取付けられている。トノカバー14の引き出し側の端部には、幅方向に伸びるバー15が取付けられており、このバー15の両端は、トノカバー14の両側から突出している。そして、バー15の両端は、上記一対のアーム12、12のガイド溝13、13に挿入されている。
【0024】
したがって、トノカバー14を引き出すときには、上記トノカバー14の突出端部を把持して引っ張り出し、上記バー15の両端を前記ガイド溝13の端部13aにて下方に落し込むことにより、端部13aに引き掛けて係止させることができる。
【0025】
トノカバー14の一端が固着された巻取り軸22は、その内部が中空となっていて、この内部に巻取り軸22を巻取り方向に回転付勢するコイルバネが内蔵されている。コイルバネの回転付勢機構については、例えば特開2002−174085号に示されるような公知の構造が採用できる。また、巻取り軸22の一方の端部に渦巻きバネを外付けすることにより回転付勢してもよい。
【0026】
トノカバー14は、筒状ケース21のスリット23から引き出されて使用されると共に、使用しないときは、巻取り軸22に巻き取られて筒状ケース21内に収容される。
【0027】
巻取り軸22は、筒状ケース21の両端開口部に組み付けられる一対のサイドカバー24に、後述するダンパを内蔵する支軸30を介して支持される。なお、ダンパは、少なくとも一方の支軸30に設けられていればよい。また、サイドカバー24は、ネジ25によって筒状ケース21に固定される。
【0028】
図4〜6を併せて参照すると、ダンパを内蔵する支軸30は、外筒31と、内筒32と、この内筒32に連設された円盤部33と、サイドカバー24と一体に形成されたリテーナ34とを有している。外筒31は、その一端面31aが閉塞され、他端面は開口されてその周縁にフランジ31bが形成され、外周の1箇所には軸方向に伸びる突条31cが形成されている。この突条31cは、外筒31を巻取り軸22の孔26に挿入するとき、孔26の内周に形成されたキー溝26a(図3参照)に嵌合して、外筒31を巻取り軸22と回転方向に係合させる。
【0029】
特に図5に示すように、外筒31の内部中心には、閉塞された端面31aから伸びる軸31dが突設されており、その先端部はやや縮径されて最先端には環状の突部31dが形成されている。更に、外筒31は、外側円筒部31eと、内側円筒部31fとの二重壁構造をなし、内側円筒部31fは、上記閉塞された端面31aから伸びて、外側円筒部31eと上記軸31dとの間に配置されている。
【0030】
一方、内筒32は、前記円盤部33から立設された外側円筒部32aと、内側円筒部32bとからなる二重壁構造をなしている。外筒32aの上記円盤部33との接合部外周には、環状の溝32cが形成されており、この溝32cにシールリング35が嵌着されている。内筒32の円盤部33に連結された端面中央部には、円盤部33の内面側に突出する閉塞された円筒部36が形成されている。この円筒部36の内周には、前記外筒31の軸31cの環状突部31dが嵌合する環状の溝が形成されている。
【0031】
したがって、この支軸30の組立てにおいては、外筒31と内筒32との摺動面に予めグリスなどの粘性流体を塗布しておき、内筒32の外側円筒部32aを外筒31の外側円筒部31eと内側円筒部31fとの隙間に挿入し、内筒32の内側円筒部32bを外筒31の内側円筒部31fと軸31dとの隙間に挿入し、軸31cの先端部を内筒32の32の円筒部36に挿入するようにして、外筒31と内筒32とを組付ける。すると、シールリング35は、内筒32の環状の溝32cと、外筒31の外側円筒部31e内周とに挟まれて両者の間隙を気密的にシールし、上記粘性流体を封止する。また、外筒31の軸31cの環状突部31dが、内筒32の円筒部36内周の溝に嵌合して、外筒内筒31が内筒32に仮組みされる。
【0032】
円盤部33は、外周に円筒状のリブ33aを有し、その内面中央には、円盤部33と一体に固設された太陽ギヤ40が突設されている。太陽ギヤ40の内部は前記円筒部36を囲む円筒状の穴41をなし、この穴41の内周に環状の溝42が形成されている。
【0033】
一方、サイドカバー24の内部に形成されたリテーナ34は、鉛直方向に対向する上下壁34a、34bが円筒状をなし、両側壁34c、34dが平面状をなす周壁を有し、上記上下壁34a、34b外周が、上記円盤部33の円筒状リブ33a内周に摺接するようになっている。
【0034】
図7、8を併せて参照すると、上下壁34a、34bの内周には、円弧状の隔壁34e、34fで囲まれた、遊星ギヤ50、51の収容部52、53が設けられている。収容部52、53の内周壁の一端52a、53aは、短い円弧状の壁をなして内方に突き出た形状をなし、上記内周壁の他端52b、53bは、長い円弧状の壁をなして内方に突き出た形状をなしている。
【0035】
更に、図6に示すように、リテーナ34の内面中央には、半割状のボス37が形成されており、このボス37の先端部外周には環状の突部37aが形成されている。
【0036】
そして、円盤部33の円筒状のリブ33aを、リテーナ34の外周に被せながら、円盤部33に一体成形された太陽ギヤ40を、リテーナ34の収容部52、53に配置された遊星ギヤ50、51に歯合させる。すると、ボス37が太陽ギャ40の穴41に挿入され、ボス37の環状の突部37aが、太陽ギヤ40の穴41内周の環状の溝42に嵌合する。その結果、軸部30がサイドカバー24のリテーナ34に仮組みされ、サイドカバー24とユニット化した状態で、トノカバー巻取り装置10の組立てに供することができる。
【0037】
また、サイドカバー24には、水平方向に位置する対向壁部に一対の透孔27が形成され、コイルバネ28で外方に付勢された一対のロック爪片29が、上記透孔27を通してその一部を突出させた状態で装着されている。ロック爪片29は、テーパ状の壁部を有する楔形状をなしている。
【0038】
そして、図3に示すように、前記枠体11の基端部に形成された取付け凹部16に、サイドカバー24を上方から押し込むと、上記ロック爪片29がコイルバネ28を圧縮させて一時的に透孔27内に引き込んだ後、該凹部16の内壁の対向する部分に形成された孔17に嵌入する。こうしてサイドカバー24は、枠体11に着脱可能に固定される。なお、この実施形態においては、サイドカバー24が本発明における支持部材を構成している。
【0039】
また、枠体11の上記凹部16に隣接した部分には、ガイド溝13の基端側端部に連通する凹部18が形成されている。この凹部18は、トノカバー14の先端部に取付けたバー15の両端部を落し込んでガイド溝13に挿入する導入口をなしている。凹部16と凹部18との間には隔壁19が形成され、トノカバー14の巻取り時に、この隔壁19がバー15の両端部に係合してストッパとなる。
【0040】
次に、このトノカバー巻取り装置10の作用について説明する。
前述した態様で、支軸30を取付けたサイドカバー24を、筒状ケース21の端部に組付ける。このとき、支軸30の外筒31の突条31cを、巻取り軸22の孔26の内周に形成されたキー溝26a(図3参照)に嵌合させて、外筒31を巻取り軸22と回転方向に係合させる。
【0041】
なお、上記のような外筒31及び内筒32を有するダンパ付きの支軸30は、一対の筒状ケース24の少なくとも一方に取付ければよく、他方の筒状ケース24には、巻取り軸22の端部を支持する単なる支軸が設けられていてもよい。
【0042】
こうして筒状ケース21の両端にサイドカバー24を取付けると、筒状ケース21の内部で巻取り軸22が回転可能に支持され、この巻取り軸22に基端を固定されたトノカバー14は、その先端をスリット23から引き出された状態となる。なお、トノカバー14の先端にはバー15が取付けられている。
【0043】
そして、この筒状ケース21のサイドカバー24を枠体11の前記凹部16に上方から押し込むと、前述したように、ロック爪片29がコイルバネ28を圧縮させて一時的に透孔27内に引き込んだ後、凹部16の内壁の対向する部分に形成された孔17に嵌入し、サイドカバー24は、枠体11に着脱可能に固定される。また、トノカバー14先端のバー15の両端部を凹部18に落し込むことによって、ガイド溝13に挿入することができる。
【0044】
この状態でトノカバー14の先端部を持って、バー15の両端部をガイド溝13に沿って移動させながら、トノカバー14を引き出す。このとき、巻取り軸22は外筒31を回転させ、外筒31と粘性流体を介して摺接する内筒32も同方向に回転しようとする。この内筒32の回転は、内筒32と一体に形成された太陽ギヤ40の回転となり、太陽ギヤ40が図8の矢印B方向に回転する。
【0045】
このとき、太陽ギヤ40に歯合する遊星ギヤ50、51は、長い円弧状の壁をなして内方に突き出た部分52b、53bに押圧されて回転するが、円弧状の壁が遊星ギヤ51の周囲を幅広く囲んでいるので、遊星ギヤ51は上記壁に当りながら摺動して空回りする。その結果、太陽ギヤ40の回転が許容され、内筒32と外筒31との間で回転摩擦が生じることがなく、巻取り軸22の回転付勢力に抗する力を付与するだけで、トノカバー14を迅速に引き出すことができる。こうして引き出したトノカバー14は、バー15の両端部をガイド溝13の端部13aのL字状に屈曲させた部分に係合させることにより、引き出し状態に保持させることができる。
【0046】
次に、トノカバー14を巻取り軸22に巻取って筒状ケース21内に収容したいときには、バー15の両端部を上記ガイド溝13の端部13aから係合を外して手を離すと、巻取り軸22に取付けられたコイルバネや渦巻きバネのような回転付勢手段によって、巻取り軸22が巻き戻し方向に回転し、トノカバー14を筒状ケース21内に引き込んでいく。
【0047】
このとき、巻取り軸22は外筒31を回転させ、外筒31と粘性流体を介して摺接する内筒32も同方向に回転しようとする。この内筒32の回転は、内筒32と一体に形成された太陽ギヤ40の回転となり、太陽ギヤ40が図7の矢印A方向に回転しようとする。
【0048】
この太陽ギヤ40に歯合する遊星ギヤ50、51は、収容部52、53の短い円弧状の壁をなして内方に突き出た部分52a、53aに押圧されて回転しようとする。ところが、上記内方に突き出た部分52a、53aが遊星ギヤ50、51に噛み合ってしまい、遊星ギヤ50、51が回転できずにロックされる。このため、遊星ギヤ50、51に歯合する太陽ギヤ40と一体の内筒32は回転できず、内筒32に対して摺動しながら外筒31が回転する。このため、内筒32と外筒31との摺動面に封入された粘性流体によって強いダンパ力が作用する。
【0049】
したがって、トノカバー14は、巻取り軸22に高速で巻取られることがなくなり、緩やかにしかし確実に巻取られていく。その結果、トノカバー14の先端部に取付けたバー15等が、筒状ケース21や枠体11のガイド溝13端部等に衝突して大きな打音を発生したり、その衝撃で部材を損傷したりすることがなくなり、トノカバー14を安心して収納させることができる。
【0050】
また、この実施形態では、前述したように、サイドカバー24の内部に形成されたリテーナ34は、その鉛直方向に対向する上下壁34a、34bが円筒状をなし、両側壁34c、34dが平面状をなす周壁を有し、上記上下壁34a、34b外周が、支軸30の円盤部33の円筒状リブ33a内周に摺接するので、支軸30に重い巻取り軸22の荷重がかかっても、回転の滑らかさを維持しつつ、しっかりと支持することができる。
【0051】
更に、両側壁34c、34dが円筒状リブ33aに摺接しないので、円筒状リブ33aとの間の回転摩擦力を軽減できると共に、円筒状リブ33aとリテーナ34との組付け精度の許容度を高めることができる。
【0052】
図9〜11には、本発明のシート巻取り装置を、自動車のトノカバーの巻取り装置に適用した他の実施形態が示されている。図9は、サイドカバーを内面側から見た図、図10は支軸とサイドカバーとの組付け構造を示す断面図、図11はリテーナ及び遊星ギヤを示す平面図である。なお、前記実施形態と実質的に同一の部分には同符合を付して、その説明を省略することにする。
【0053】
この実施形態では、外筒31は内部中心に軸31cを有する構造をなし、内筒32は上記外筒31内周と軸31cとの間に挿入される1重の円筒部を有する構造をなしている。このため、外筒31と内筒32との摺動面積が小さくなり、ダンパ力が軽減されている。
【0054】
しかし、この実施形態のもっと重要な変更点は、リテーナ34が内筒32の基端に形成され、円盤部33及び太陽ギヤ40がサイドカバー23側に形成されていることである。
【0055】
すなわち、内筒32の外筒31から突出した端面には、リテーナ34が一体形成されている。リテーナ34は、円弧状の壁部34a、34bと、直線状の壁部34c、34dとで囲まれた周壁と、この周壁に内側に形成された、遊星ギヤ50、51の収容部52、53を有している。リテーナ34の中央部にはボス37が形成されている。
【0056】
一方、サイドカバー23の内面には、円筒状のリブ33aを有する円盤部33が形成されており、この円盤部33の内部中央には、太陽ギヤ40がサイドカバー23と一体に形成されている。太陽ギヤ40は、穴41を有している。
【0057】
そして、内筒32のリテーナ34を、サイドカバー23の円盤部33の内周に挿入しつつ、太陽ギヤ40を遊星ギヤ50、51に歯合させ、リテーナ34のボス37を太陽ギヤ40の穴41に挿入することより、軸部30をサイドカバー23に組付けることができる。
【0058】
また、リテーナ34の収容部52、53には、前記実施形態と同様に、短い円弧状の壁をなして内方に突き出た部分52a、53aと、長い円弧状の壁をなして内方に突き出た部分52b、53bとが設けられ、遊星ギヤ50、51の回転を一方向に規制している。
【0059】
この実施形態においても、巻取り軸が外筒31と共に、トノカバーの引き出し方向に回転するときには、遊星ギヤ50、51が収容部52、53の長い円弧状の壁をなして内方に突き出た部分52b、53bに接して空回りし、内筒32が外筒31と一緒に周るため、ダンパ力が作用しないで引き出すことができる。
【0060】
また、巻取り軸が外筒31と共に、トノカバーの巻取り方向に回転するときには、遊星ギヤ50、51が収容部52、53の短い円弧状の壁をなして内方に突き出た部分52a、53aに接して噛み合い、内筒32が外筒31と一緒に周ることができないため、内筒32と外筒31との間の摺動抵抗によってダンパ力が作用し、トノカバーを緩やかにしかし確実に巻取ることができる。
【0061】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、シートを引き出すときには、回転ダンパが作用しないので、巻取り軸を高速で回転させて容易に引き出すことができ、シートを開放して付勢手段によって巻取り軸を回転させてシートを巻き戻すときには、回転ダンパが作用するため、シートをゆっくりと巻き戻すことができる。このため、シート端部に装着したバー等が、巻取り軸を囲む筒状ケース等に勢いよく当って大きな打音がしたり、衝撃部を破損したりすることを、効果的に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシート巻取り装置を、自動車のトノカバーの巻取り装置に適用した一実施形態であって、トノカバーを巻き取った状態を示す斜視図である。
【図2】同シート巻取り装置におけるトノカバーを引き出した状態を示す斜視図である。
【図3】同シート巻取り装置における巻取り軸の支持構造を示す分解斜視図である。
【図4】同シート巻取り装置に組み込まれたダンパの構造を示す分解斜視図である。
【図5】同ダンパの断面図である。
【図6】同ダンパをサイドカバーに装着した状態を示す一部切欠き断面図である。
【図7】同ダンパとサイドカバーとの間に介在する太陽ギヤ及び遊星ギヤがロックした状態を示す説明図である。
【図8】同ダンパとサイドカバーとの間に介在するに太陽ギヤ及び遊星ギヤが回動可能な状態を示す説明図である。
【図9】本発明のシート巻取り装置を、自動車のトノカバーの巻取り装置に適用した他の実施形態を示す、サイドカバーを内面側から見た図である。
【図10】同実施形態における支軸とサイドカバーとの組付け構造を示す断面図である。
【図11】同実施形態におけるリテーナ及び遊星ギヤを示す平面図である。
【符号の説明】
10 トノカバー巻取り装置
11 枠体
13 ガイド溝
14 トノカバー
15 バー
21 筒状ケース
22 巻取り軸
23 スリット
24 サイドカバー
30 支軸
31 外筒
32 内筒
33 円盤部
34 リテーナ
34a、34b 上下壁
34c、34d 両側壁
40 太陽ギヤ
41 穴
42 環状の溝
50、51 遊星ギヤ
52、53 収容部
52a、53a 短い円弧状の壁をなして内方に突き出た部分
52b、53b 長い円弧状の壁をなして内方に突き出た部分

Claims (6)

  1. 一対の支持部材に支持される巻取り軸と、この巻取り軸に一端縁を固定されて巻取り状態と引き出し状態とを取り得るシートと、前記支持部材に対して前記巻取り軸を巻取り方向に付勢する手段とを備えたシート巻取り装置において、少なくとも一方の端部における前記巻取り軸と前記支持部材との間に、前記シートの引き出し方向には作用せず、巻取り方向には作用する回転ダンパを設けたことを特徴とするシート巻取り装置。
  2. 前記回転ダンパは、前記巻取り軸の端部に回転方向に係合して挿入される外筒と、この外筒内に挿入されてその内面に摺接する内筒と、前記外筒及び前記内筒との隙間に充填封止された粘性流体と、前記内筒の前記外筒から突出した端面を塞ぐように連設されると共に周縁に円筒状リブが形成された円盤部と、この円盤部の中央に固設された太陽ギヤと、この太陽ギヤに歯合してその外周に配置される遊星ギヤと、前記支持部材側に設けられていて、前記太陽ギヤ及び遊星ギヤを囲む周壁を持ち、前記円盤部の前記円筒状リブ内周に摺接して相対回転可能に挿入されるリテーナとを備え、前記リテーナには、前記外筒が前記シートの巻取り方向に回転するときには、前記遊星ギヤに噛み合ってその回転を制止し、前記外筒が前記シートの引き出し方向に回転するときには、前記遊星ギヤの回転を許容するように保持する収容部が設けられている請求項1記載のシート巻取り装置。
  3. 前記リテーナの周壁は、少なくともその鉛直方向に対向する上下壁が円弧状をなしていて、前記円盤部の円筒状リブ内周に摺接している請求項2記載のシート巻取り装置。
  4. 前記リテーナの周壁は、少なくともその鉛直方向に対向する上下壁が円弧状をなしていて、前記円盤部の円筒状リブ内周に摺接しており、かつ、上下壁を結ぶ左右壁が前記円盤部の円筒状リブ内周より離れるように形成されていて、前記上下壁の内側に前記遊星ギヤの収容部が形成されている請求項3記載のシート巻取り装置。
  5. 前記太陽ギヤの中心に孔が形成され、前記リテーナの中心には、前記孔に挿入されるボスが突設されていて、前記ボスを前記孔に挿入したときに、両者がクリック感を伴って嵌合するように構成した請求項2〜4のいずれか1つに記載のシート巻取り装置。
  6. 前記回転ダンパは、前記巻取り軸の端部に回転方向に係合して挿入される外筒と、この外筒内に挿入されてその内面に摺接する内筒と、前記外筒及び前記内筒との隙間に充填封止された粘性流体と、前記支持部材側に設けられて周縁に円筒状リブが形成された円盤部と、この円盤部の中央に固設された太陽ギヤと、この太陽ギヤに歯合してその外周に配置される遊星ギヤと、前記内筒の前記外筒から突出した端面を塞ぐように連設されると共に、前記太陽ギヤ及び遊星ギヤを囲む周壁を持ち、前記円盤部の前記円筒状リブ内周に摺接して相対回転可能に挿入されるリテーナとを備え、前記リテーナには、前記外筒が前記シートの巻取り方向に回転するときには、前記遊星ギヤに噛み合ってその回転を制止し、前記外筒が前記シートの引き出し方向に回転するときには、前記遊星ギヤの回転を許容するように保持する収容部が設けられている請求項1記載のシート巻取り装置。
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