JP2004136836A - 車両の制動力制御装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】手段31は、減速操作に応じて要求減速度αdemを算出し、手段32は、αdemに基づいて規範となる目標減速度αrefを算出し、手段33は、このαrefが達成される制動トルク指令値Tdcomを算出し、手段34は、このTdcomを実現するよう制動力を制御する。手段35は、減速操作の終了を判定し、手段36は、減速度偏差Δαdr=αdem−αrefを算出し、手段37は、減速操作終了時のΔαdrが大きいほど制動力制御継続時間設定tcを短く設定し、手段38は、減速操作終了時からtcが経過した時にTdcomを0にする終了信号を手段33に指令する。減速操作終了時からtcが経過する時にTdcomが0にされるから、減速操作終了時以後に実減速度をαrefよりも早期に低下させることができ、中間的な速さで減速操作を終わらせているのにブレーキの粘り感が全くないという違和感や、不要に大きなブレーキの粘り感があるという問題を回避し得る。
【選択図】 図2
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車等の車両の制動力制御装置に関し、特に、運転者による、または先行車追従走行制御などの車速制御装置による車両の減速操作が終了した後において要求される微妙な減速感を達成可能にした車両の制動力制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両の制動力制御装置としては従来、例えば特許文献1に記載されているように、車両の減速操作量に基づいて設定した目標減速度と実際の減速度との偏差に基づいて制動力をフィードバック制御する手段(偏差基準制御量決定手段)と、車両の減速操作量に応じて制動力をフィードフォワード制御する手段(操作量基準制御量決定手段)とを具え、減速操作量の単位時間あたりの変化量(減速操作速度)に応じて上記のフィードバック制御とフィードフォワード制御とを切り替え、緩操作時はフィードバック制御を用い、急操作時はフィードフォワードを用いるものが知られている。
【0003】
【特許文献1】
特開平6−206531号公報
【0004】
運転者がブレーキペダルを除々に戻す場合、運転者は減速度を少しずつゼロにしたいと意図しているので、ペダル操作量に対して実際の減速度が若干減速度を引きずる様な遅れ応答で漸減するのが好ましく、逆にブレーキペダルを急に離す場合、運転者は減速度をすぐにゼロにしたいと意図しているので、ペダル操作量に対して減速度が上記の引きずり感なしにすばやい応答で低下するのが好ましいが、
上記の制動力制御によれば、これらの要求を以下のごとくに満足させることができる。
【0005】
図12は、瞬時t1からマスターシリンダ液圧が図示のごとくに急低下するようなブレーキペダルの戻し操作を開始した場合の動作タイムチャートで、急なブレーキペダルの戻し操作に呼応して要求減速度が図示のごとく急低下し、フィードフォワード制御により制動トルク指令値が図示のごとくに設定される。
かかる制動トルク指令値に一致するような制動力制御により車両は、破線で示すような実減速度の経時変化をもって高応答で減速度を低下され、ブレーキペダルの戻し操作終了瞬時t2から僅かな時間Δt1のうちに減速度が0になることから、ブレーキペダルの急戻し時における上記の要求を満足する引きずり感のない減速感を達成可能である。
【0006】
図13は、瞬時t1からマスターシリンダ液圧が図示のごとくに徐々に低下するようなブレーキペダルの緩戻し操作を開始した場合の動作タイムチャートで、ブレーキペダルの緩戻し操作に呼応して要求減速度が図示のごとくゆっくりと低下し、これから求められた目標変速度に実減速度が追従するようなフィードバック制御により制動トルク指令値が図示のごとくに設定される。
かかる制動トルク指令値に一致するような制動力制御により車両は、破線で示すような実減速度の経時変化をもって低応答で減速度を低下され、ブレーキペダルの戻し操作終了瞬時t2から比較的長い時間Δt2をかけて減速度が0になることから、ブレーキペダルの緩戻し時における上記の要求を満足する引きずり感のある減速を達成可能である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記従来のような制動力制御装置にあっては以下に説明するような問題を生ずる。
つまり減速操作速度に応じてフィードバック制御とフィードフォワード制御との二者択一的な切り替えを行うだけのため、ブレーキペダルを徐々に戻す操作と急に戻す操作の中間的な操作を行う場合において、除々に戻す操作と判定されれば、要求減速度から求めた所定応答の目標減速度に実減速度が追従するようなフィードバック制御により制動トルクを操作するため、ブレーキの引きずり感が強く運転者に違和感を与えるという問題を生ずるし、逆に急に戻す操作と判定されれば、目標減速度を無視してフィードフォワード制御により要求減速度対応の制動トルク指令値が設定され、これに制動トルクが一致するよう制御されてしまうため、ブレーキの引きずり感や粘り感が足りなくなってこの場合も運転者に違和感を与えるという問題を生ずる。
【0008】
図10により付言するに、瞬時t1からマスターシリンダ液圧が図示のごとくに中間的な速度で低下するようなブレーキペダルの戻し操作に呼応して要求減速度αdemが図示のごとくに設定された場合を考察する。
この操作が急戻しと判定されると、フィードフォワード制御により要求減速度αdemに対応した制動トルク指令値がA1のように設定され、結果としてB1で示すような車両減速度の経時変化となる。
この場合、ブレーキペダルの戻し操作終了瞬時t2から僅かな時間Δt1のうちに減速度が0になることから、ブレーキペダルの中間的な速度での戻しにもかかわらず全く引きずり感のないものとなる。
【0009】
逆に当該ブレーキ操作が緩戻しと判定されると、要求減速度αdemをもとに所定の応答を持つよう求められた目標減速度αrefに実減速度(B2で示す)を追従させるフィードバック制御により制動トルク指令値がA2のごとくに設定され。
この場合、ブレーキペダルの戻し操作終了瞬時t2から比較的長い時間Δt2をかけて減速度が0になることから、ブレーキペダルの中間的な速度での戻しにもかかわらず大きな引きずり感を持ったものとなる。
【0010】
本発明は、車両の減速操作に応じた要求減速度に基づいて規範となる目標減速度を求め、この目標減速度が達成されるよう車輪の制動力を制御する制動力制御装置の場合、減速操作の終了時における要求減速度と目標減速度との間における減速度偏差が、その後において要求される減速形態、つまり上記ブレーキの引きずり感や粘り感に関する要求を良く表しているとの事実認識に基づき、
当該減速度偏差に応じて減速操作終了後における減速の終わらせ方を制御することにより、如何なる減速操作終了速度のもとでも減速操作終了後において要求される微妙な減速感を達成可能にした車両の制動力制御装置を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的のため本発明による車両の制動力制御装置は、請求項1に記載のごとく、上記形式の車両の制動力制御装置に対し、
前記車両の減速操作が終わったのを判定する減速操作終了判定手段と、
前記要求減速度および目標減速度間における減速度偏差を算出する減速度偏差算出手段と、
これら手段からの信号に応答し、車両の減速操作が終わった時の上記減速度偏差が大きいほど減速操作終了時以後における制動力を早期に低下させるよう制動力を補正する制動力補正手段とを設けたことを特徴とするものである。
【0012】
【発明の効果】
かかる本発明の構成によれば、減速操作が終わった時における要求減速度および目標減速度間の減速度偏差が大きいほど減速操作終了時以後における制動力を早期に低下させるため、 そして上記の減速度偏差が、減速操作終了後において要求される減速操作終了速度ごとの前記したブレーキの引きずり感や粘り感に関する要求を良く表していることから、
如何なる減速操作終了速度のもとでも減速操作終了後において要求される微妙な減速感を確実に達成可能である。
【0013】
従って、従来装置の前記した問題、つまり、中間的な速さで減速操作を終わらせる場合において、その速度が速いと判定された結果、中間速度での減速操作であるにもかかわらずブレーキの引きずり感や粘り感が全くなくて運転者に違和感を与えたり、減速操作速度が遅いと判定された結果、中間速度での減速操作であるにもかかわらず大きなブレーキの引きずり感や粘り感があって運転者に違和感を与えるという問題を解消することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態になる制動力制御装置の制御システム図で、本実施の形態においては、車輪1(図では1個の駆動輪のみを示す)に関連して設けられたホイールシリンダ2への液圧供給により制動力を発生する液圧ブレーキ装置と、車輪1に歯車箱3を介して駆動結合された交流同期モータ4により車輪回転エネルギーを電力に変換する回生ブレーキ装置との組み合わせにより構成した複合ブレーキに対し本発明の着想を適用する。
かかる複合ブレーキにおいて協調制御装置は、交流同期モータ4により回生制動トルクを制御して主たる制動力を得る間に、ホイールシリンダ2へのブレーキ液圧を減圧制御することで回生エネルギーを効率的に回収することを趣旨とする。
【0015】
運転者が希望する車両の制動力に応じて踏みこむブレーキペダル5で、該ブレーキペダル5の踏力が油圧ブースタ6により倍力され、倍力された力でマスターシリンダ7の図示せざるピストンカップが押し込まれることによりマスターシリンダ7はブレーキペダル5の踏力に応じたマスターシリンダ液圧Pmcをブレーキ液圧配管8に出力するものとする。
なお、ブレーキ液圧配管8を図1では、1個の駆動輪(ここでは前輪)1に設けたホイールシリンダ2のみに接続しているが、図示せざる他の3輪に係るホイールシリンダにも接続することはいうまでもない。
【0016】
油圧ブースタ6およびマスターシリンダ7は共通なリザーバ9内のブレーキ液を作動媒体とする。
油圧ブースタ6はポンプ10を具え、このポンプはリザーバ9から吸入して吐出したブレーキ液をアキュムレータ11内に蓄圧し、アキュムレータ内圧を圧力スイッチ12によりシーケンス制御する。
油圧ブースタ6は、アキュムレータ11内の圧力を圧力源としてブレーキペダル5の踏力を倍力し、この倍力した踏力でマスターシリンダ7内のピストンカップを押し込み、マスターシリンダ7はリザーバ9からのブレーキ液をブレーキ配管8内に封じ込めてブレーキペダル踏力に対応したマスターシリンダ液圧Pmcを発生させ、これを元圧としてホイールシリンダ液圧Pwcをホイールシリンダ2に供給する。
【0017】
ホイールシリンダ液圧Pwcは、アキュムレータ11のアキュムレータ内圧を用いて後述のごとくにフィードバック制御可能とし、これがためブレーキ配管8の途中に電磁切替弁13を挿置し、該電磁切替弁13よりもホイールシリンダ2の側においてブレーキ配管8に、ポンプ10の吐出回路から延在すると共に増圧弁14を挿置した増圧回路15、およびポンプ10の吸入回路から延在すると共に減圧弁16を挿置した減圧回路17をそれぞれ接続する。
電磁切替弁13は、常態でブレーキ配管8を開通させることによりマスターシリンダ液圧Pmcをホイールシリンダ2に向かわせ、ソレノイド13aのON時にブレーキ配管8を遮断すると共にマスターシリンダ7をストロークシミュレータ26に通じさせてホイールシリンダ2と同等の油圧負荷を与え、これによりブレーキペダル5に通常時と同じ操作フィーリングを与え続け得るようになす。
【0018】
増圧弁14は、常態で増圧回路15を開通してアキュムレータ11の圧力によりホイールシリンダ液圧Pwcを増圧するが、ソレノイド14aのON時に増圧回路15を遮断してホイールシリンダ液圧Pwcの増圧を中止するものとし、
減圧弁16は、常態で減圧回路17を遮断しているが、ソレノイド16aのON時に減圧回路17を開通してホイールシリンダ液圧Pwcを減圧するものとする。
ここで増圧弁14および減圧弁16は、切替弁13がブレーキ配管8を開通している間、対応する増圧回路15および減圧回路17を遮断しておき、これによりホイールシリンダ液圧Pwcがマスターシリンダ液圧Pmcにより決定されるようにし、
また、増圧弁14または減圧弁16によるホイールシリンダ液圧Pwcの増減圧が行われる間は、切替弁13のONによりブレーキ配管8を遮断しておくことでマスターシリンダ液圧Pmcの影響を受けることのないようにする。
切替弁13、増圧弁14および減圧弁16の制御は液圧ブレーキコントローラ18により行い、これがため当該コントローラ18には、運転者が要求する車両の制動力を表すマスターシリンダ液圧Pmcを検出する圧力センサ19からの信号と、液圧制動トルクの実際値を表すホイールシリンダ液圧Pwcを検出する圧力センサ20からの信号とを入力する。
【0019】
駆動輪1に歯車箱3を介して駆動結合された交流同期モータ4は、モータトルクコントローラ21からの3相PWM信号により直流・交流変換用電流制御回路(インバータ)22での交流・直流変換を介して制御され、モータ4による車輪1の駆動が必要な時は直流バッテリ23からの電力で車輪1を駆動し、車輪1の制動が必要な時は回生制動トルク制御により車両運動エネルギーをバッテリ23ヘ回収するものである。
【0020】
液圧ブレーキコントローラ18およびモータトルクコントローラ21は 複合ブレーキ協調コントローラ24との間で通信を行いながら、該コントローラ24からの指令により対応する液圧制動装置および回生制動装置を後述するごとくに制御する。
モータトルクコントローラ21は、複合ブレーキ協調コントローラ24からの回生制動トルク指令値に基づいてモータ4による回生制動トルクを制御し、また、車輪1の駆動要求時にはモータ4による車輪1の駆動トルク制御を行なう。
さらにモータトルクコントローラ21は、バッテリ23の充電状態や温度などで決まるモータ4に許容される最大回生制動トルク設定値を算出して複合ブレーキ協調コントローラ24ヘ対応する信号を送信する。
これがため複合ブレーキ協調コントローラ24には、液圧ブレーキコントローラ18を経由した圧力センサ19,20からのマスターシリンダ液圧Pmcおよびホイールシリンダ液圧Pwcに関する信号を入力するほか、車輪1の車輪速Vwを検出する車輪速センサ25からの信号を入力する。
【0021】
複合ブレーキ協調コントローラ24は、これら入力情報を基に図2に機能ブロック線図および図3にフローチャートで示すような処理により複合ブレーキの協調制御を介して本発明が狙いとする制動力制御を行う。
図3は、10msecごとの定時割り込みにより繰り返し実行されるもので、先ずステップS1において、各圧力センサ19,20からの信号に基づきマイコン内蔵のA/D変換機を用いて、マスターシリンダ液圧Pmcおよびホイールシリンダ液圧Pwcを算出する。
次のステップS2では、マイコン内蔵のインプットキャプチャ機能付きのタイマーを用いて各車輪速を計測し、その中の最大値Vwを算出すると共に、これを次式の伝達関数Fbpf(s)で示されるバンドパスフィルタに通して車輪減速度推定値αv(車両減速度)を求める。ただし実際には、タスティン近似等で離散化して得られた漸化式を用いて算出する。
Fbpf(s)=s/{(1/ω2)s2+(2ζ/ω)s+1}・・・(1)
s:ラプラス演算子
【0022】
ステップS3では、モータトルクコントローラ21との間の高速通信受信バッファから、モータ4により達成可能な最大回生制動トルク設定値Tmmaxを読み込む。この最大回生制動トルクTmmaxはモータトルクコントローラ21がバッテリ23の充電率などに応じて決定し、例えば図4に示すごとく車速VSP(車輪速Vw)に応じて異なる。
ステップS4では、マスターシリンダ液圧Pmcと、あらかじめROMに記録した車両諸元定数K1とを用いて、車両の要求減速度αdemを次式により算出する。
αdem=−(Pmc×K1)・・・(2)
なお、加速度αやトルクTは、負値を減速度、制動トルクとする。
ここで車両要求減速度αdemは、マスターシリンダ液圧Pmcにより運転者が指令する物理量により決まるだけでなく、車間距離制御装置や定速走行制御装置などの車速制御装置を搭載した車両においては、これら装置による自動ブレーキによる物理量に応じても決定すること勿論である。
【0023】
ステップS5では、要求減速度αdemを実現するために必要な制動トルク指令値Tdff(フィードフォワード補償量)を以下により算出する。
まず、車両諸元により決まる定数K2を用いて要求減速度αdemを制動トルクに換算する。
つぎに、規範モデル特性Fref(s)に、制御対象車両の応答特性Pm(s)を一致させるためのフィードフォワード補償器(位相補償器)の次式で表される特性CFF(s)に上記要求減速度αdemを通して要求減速度αdem用の制動トルク指令値Tdff(フィードフォワード補償量)を求める。
なお実際には前述と同様に離散化して計算を行う。
CFF(s)=Fref(s)/Pm(s)=(Tp・s+1)/(Tr・s+1)・・(3)
【0024】
ステップS6では、後述する減速度補償器の一部である次式で表される規範モデルFref(s)に要求減速度αdemを通して目標減速度αrefを算出する。
Fref(s)=1/(Tr・s+1)・・・(4)
Tr:規範応答時定数
ステップS7では、要求減速度αdemと目標減速度αrefから、後述する制御継続時間を設定するための必要な減速度偏差Δαdrを算出する。
Δαdr=αdem―αref ・・・(5)なお、目標減速度αrefの代わりにステップS2で求めた減速度推定値αvまたは、減速度センサなどの検出手段で直接検出した実減速度を用いても良い。
【0025】
ステップS8では、マスターシリンダ液圧Pmcと微少設定値Psとを比較して、前者が大きければ、運転者がブレーキ操作(減速操作)中であると判断し、ステップS14へ進み、後者が大きければ、運転者がブレーキ操作をしていない(減速操作終了状態)と判断し、ステップS9へ進む。
よってステップS8は、本発明における減速操作終了判定手段に相当するが、減速操作の終了判定に当たっては、上記したマスターシリンダ液圧Pmcの代わりに、ステップS4で求めた要求減速度αdemが0になった時をもって減速操作が終了したと判定してもよい。
ステップS9では、制動力制御継続時間設定フラグの状態を判定する。ここで制動力制御継続時間とは、減速操作終了時からいつまで制動力制御を継続するかを定めた時間を意味し、制動力制御継続時間設定フラグは、減速操作の終了で以下のごとくに制動力制御継続時間が設定されるとき1にセットされ、減速操作があったとき0にクリアされるものとする。
制動力制御継続時間設定フラグがクリアされている場合にはステップS10において、図5に例示するマップをもとに減速度偏差Δαdrから制動力制御継続時間tcを設定し、同時に当該設定がなされたことを示すように制動力制御継続時間設定フラグを1にセットする。
ステップS10は、ここで制動力制御継続時間設定フラグが1にセットされ、以後はステップS9がステップS10をスキップすることから、ステップS8で減速操作が終了したと判定した直後の1回実行されるだけで、次にステップS8で減速操作終了判定がなされるまでは、今回ステップS10で設定された制動力制御継続時間tcが保持される。
【0026】
次のステップS11では、ステップS8で減速操作終了判定がなされてからの経過時間toffを計測する。
ステップS12では、減速操作終了後からの経過時間toffがステップS10で求めた制動力制御継続時間tcに至ったか否かを判定する。
減速操作終了時から制動力制御継続時間tcが経過していない間は、ステップS8で減速操作中と判定する場合と同様、ステップS14において、減速度フィードバック制御により以下のごとくに制動トルク指令値Tdfb(フードバック補償量)を算出し、更に前記の制動力制御継続時間設定フラグを0にリセットする。
【0027】
減速度フィードバック制御による制動トルク指令値Tdfb(フードバック補償量)の算出に当たっては、先ず、ステップS6で求めた規範モデルに基づく目標減速度αrefとステップS2で演算した減速度推定値(実減速度)αvとの間における減速度フィードバック偏差Δαを次式により算出する。
Δα=αref−αv・・・(6)
この減速度フィードバック偏差Δαを、伝達関数を次式で表わされるフィードバック補償器CFB(s)に通して減速度フィードバック制御による制動トルク指令値Tdfb(フードバック補償量)を求める。
CFB(s)=(Kp・s+Ki)/s・・・(7)
本実施の形態では、例えば伝達関数をPI制御器で構成し、制御係数Kp,Kiはゲイン余裕や位相余裕を考慮して決める。
また上記の(7)式は前述と同様に離散化して得られる漸化式で計算を行う。
【0028】
ステップS12で減速操作終了時から制動力制御継続時間tcが経過したと判定するに至ると、ステップS13において、上記した制動トルク指令値Tdfb(フィードバック補償量)の演算に用いるフィードバック補償器(デジタルフィルタ)の内部変数をすべて初期化(PI補償器の積分項を初期化)すると共に、後述の総制動トルク指令値Tdcomを0にする。
【0029】
上記のような処理を行う減速度制御器は、図6に示されるような「2自由度制御系」のブロック線図で表され、フィードフォワード補償器41(ステップS5に対応)、規範モデル42(ステップS6に対応)、フィードバック補償器43(ステップS14に対応)で構成される。
安定性や耐外乱性など閉ループ性能は、フィードバック補償器43で調整され、要求減速度に対する応答性は基本的には(モデル化誤差がない場合には)フィードフォワード補償器41で調整される。
まず、規範モデル42に基づく目標減速度αrefと、実減速度αvから減速度オフセット量αBを差し引いて求めた値との間における減速度フィードバック偏差Δαを算出する。
この減速度フィードバック偏差Δαを、CFB(s)の伝達関数を持ったフィードバック補償器)43に通して減速度フィードバック制御により制動トルク指令値(フィードバック補償量)Tdfbを求める。
最後に、要求減速度αdemをフィードフォワード補償器41に通して得られるフィードフォワード制御による制動トルク指令値(フィードフォワード補償量)Tdffとフィードバック補償量Tdfbとの合算より、総制動トルク指令値Tdcomを算出する。
【0030】
図3のステップS15では、ステップS3で求めた最大許容回生トルク設定値Tmmaxを、低周波成分用回生トルク制限値Tmmaxl(基本配分用)と、高周波成分用回生トルク制限値Tmmaxh(過渡補正用)とに分離する。ここでは、あらかじめ設定した定数Kkatoを用いて次式により算出する。
Tmmaxl=Tmmax× Kkato
Tmmaxh=Tmmax×(1−Kkato)・・・(8) ステップS16では、上記総制動トルク指令値Tdcomを、制動トルク指令値高周波成分Tdcomhと、制動トルク指令値低周波成分Tdcomlとに分離演算する。
具体的には、まず次式で表されるハイパスフィルタFhpf(s)を用いて高周波成分を分離する。なお実際には前述と同様にFhpf(s)を離散化して得られる漸化式に基づいて計算を行う。
Fhpf(s)= Thp・s/(Thp・s+1)・・・(9)
次に、ステップS15で算出した高周波成分用回生トルク制限値Tmmaxh(過渡補正用)を許容最大値として制動トルク指令値高周波成分Tdcomhを算出する。
さらに次式により、制動トルク指令値低周波成分Tdcomlを算出する。
Tdcoml=Tdcom−Tdcomh・・・(10)
【0031】
ステップS17では、複合ブレーキの協調制御を実現するために制動トルク指令値低周波成分Tdcomlを、液圧制動トルク指令値Tbcomと回生制動トルク指令値Tmcomとに配分する。この場合、燃費向上のために、ステップS15で算出した低周波成分用回生トルク制限値Tmmaxl(基本配分用)を、できる限りすべて使用するように配分する。
なお液圧制動トルク指令値Tbcomはさらに前輪(駆動輪)用と後輪(従動輪)用に配分する。
本実施の形態では、回生ブレーキ用モータ4を駆動輪である前輪のみに設定しているため、通常の制動力前後配分を崩さずにすむ場合のモード1,2と、通常の制動力前後配分が崩れる場合のモード3,4とが発生する。
【0032】
まず液圧制動トルク指令値Tbcomを、あらかじめ記憶した図7に例示するマップデータをもとに通常どおりに前後配分して、通常時の前輪制動トルク指令値Tdcomfおよび後輪制動トルク指令値Tdcomrを求める。
通常の前後制動トルク配分は、制動中における前後輪荷重移動に伴う後輪ロック防止、車両挙動の安定性、制動距離の短縮などを考慮して決められた、回生制動中でない時の基準となる前後制動力配分特性のことである。
【0033】
以下に、下記条件(モード)ごとの回生協調ブレーキ制御を説明する。
(モード4)
Tmmaxl≦(Tdcomf+Tdcomr)の場合:回生制動のみ
Tbcomf=0
Tbcomr=0
Tmcom=Tdcomf+Tdcomr
(モード3)
Tdcomf+Tdcomr<Tmmaxl≦Tdcomfの場合:回生制動+後輪液圧制動
Tbcomf=0
Tbcomr=Tdcomf+Tdcomr−Tmmaxl
Tmcom=Tmmaxl
(モード2)
Tdcomf<Tmmaxl≦微少設定値の場合:回生制動+前後輪液圧制動
Tbcomf=Tdcomf−Tmmaxl
Tbcomr=Tdcomr
Tmcom=Tmmaxl
(モード1)
上記以外の場合:液圧制動のみ
Tbcomf=Tdcomf
Tbcomr=Tdcomr
Tmcom=0
【0034】
ステップS18では、ステップS17で求まった回生制動トルク指令値Tmcomに、制動トルク指令値高周波成分Tdcomhを加算して、最終的な回生制動トルク指令値Tmcom2を算出する。
Tmcom2=Tmcom+Tdcomh・・・(12)
【0035】
ステップS19では、前後輪の液圧制動トルク指令値Tbcomf、TbcomrをもとにあらかじめROMに記憶した車両諸元による定数K3を用いて、前後輪ホイールシリンダ液圧指令値Pbcomf、Pbcomrを次式により算出する。
Pbcomf=−(Tbcomf×K3)
Pbcomr=−(Tbcomr×K3)・・・(13)
【0036】
ステップS20では、前後輪ホイールシリンダ液圧指令値Pbcomf、Pbcomr、回生制動トルク指令値Tmcom2を高速通信を用いて、液圧ブレーキコントローラ18およびモータトルクコントローラ21に送信するために、送信バッファへの書き込みなどの送信処理を行う。
モータトルクコントローラ21はインバータ22を介し回生制動トルク指令値Tmcom2が達成されるようモータ4を制御し、液圧ブレーキコントローラ18は電磁弁13,14,16の制御を介し前輪ホイールシリンダ2への液圧を指令値Pbcomfになるよう制御し、後輪ホイールシリンダ液圧も同様にして指令値Pbcomrになるよう制御する。
【0037】
上記した本実施の形態になる制動力制御装置は図2に示す機能別ブロック線図で表すことができ、
運転者のブレーキ操作や、先行車追従走行制御装置および定速走行制御装置を含む車速制御装置による車両の減速操作に応じて要求減速度αdemを算出する要求減速度算出手段31(ステップS4)と、
この要求減速度αdemに基づいて規範となる目標減速度αrefを算出する目標減速度算出手段32(ステップS6)と、
この目標減速度αrefが達成されるよう車輪の制動力を制御する際の制動トルク指令値Tdcomを算出する制動トルク指令値算出手段33(ステップS15〜ステップS19)と、
この制動トルク指令値Tdcomを実現するための制動力制御手段34(ステップS20から送信される信号に応動する制御系)とを具えた制動力制御装置に対し、
以下のような減速操作終了判定手段35(ステップS8)と、減速度偏差算出手段36(ステップS7)と、制動力制御継続時間設定・変更手段37(ステップS10)および制動力解除手段38(ステップS13)よりなる制動力補正手段39とを設けたものである。
【0038】
減速操作終了判定手段35(ステップS8)は、車両の減速操作が終わったのを判定し、減速度偏差算出手段36(ステップS7)は、要求減速度αdemおよび目標減速度αref間における減速度偏差Δαdr=αdem−αrefを算出する。
制動力制御継続時間設定・変更手段37(ステップS10)は、車両の減速操作が終わった時の減速度偏差Δαdrが大きいほど制動力制御継続時間設定tcを短く設定し(図5参照)、制動力解除手段38(ステップS13)は、減速操作終了時から制動力制御継続時間設定tcが経過した時に制動トルク指令値Tdcomを0にする制動力制御終了信号を制動トルク指令値算出手段33に指令する。
【0039】
上記の作用を図10により説明するに、減速操作終了瞬時t2から制動力制御継続時間設定tcが経過する瞬時t3に制動トルク指令値TdcomがA3で示すごとく0にされ、実減速度αvをB3で示すように目標減速度αref(瞬時t3以後も制動力制御を継続して制動トルク指令値Tdcomを0のしなかった場合の実減速度にほぼ同じ)よりも減速操作終了時以後において制動力を早期に低下させることができる。
よって実減速度αvを、減速操作終了時t2からΔt1よりも長くて、Δt2よりも短いΔt3時間で0にすることができ、減速操作終了速度にマッチしたブレーキの引きずり感や粘り感を運転者に感じさせることができ、
中間的な速さで減速操作を終わらせているにもかかわらずブレーキの引きずり感や粘り感が全くなくて運転者に違和感を与えたり、また不要に大きなブレーキの引きずり感や粘り感を運転者に与えるという問題を生ずることがない。
【0040】
しかも制動力制御継続時間設定tcを、減速操作終了瞬時t2における減速度偏差Δαdrが大きいほど短く設定したため、この減速度偏差Δαdrが大きいほど減速操作終了時以後における制動力を早期に低下させることとなり、
如何なる減速操作終了速度のもとでも減速操作終了後において要求される微妙な減速感を確実に達成することができる。
【0041】
なお上記では、減速操作が終わった時の減速度偏差Δαdrから減速終了操作速度を判定し、この減速度偏差Δαdrが大きい(減速終了操作が速い)ほど制動力制御継続時間設定tcを短く設定したが、この代わりに減速終了操作速度を直接的に検出したり、バンドパスフィルターを用いた演算により求め、これを制動力制御継続時間設定tcの設定に用いることもできる。
【0042】
また本実施の形態においては、図2に示すように減速度偏差算出手段36(図3のステップS7)が要求変速度αdemと目標変速度αrefとの間の偏差Δαdrを求めるものとしたが、
加速度検出手段としての図3のステップS2で求めた車両の実減速度αvを目標減速度αrefに代えて用い、実減速度αvおよび要求減速度αdem間における減速度偏差Δαvr=αv−αdemを求めるものとし、これを制動力制御継続時間tcの設定に用いるのが有利である。
【0043】
この場合、以下の利点がある。つまり、走行抵抗変化などの外乱や、車両重量変化、ブレーキ摩擦係数変化などに伴う規範モデルのモデル化誤差が生じた場合、図11に例示するように実減速度αvが目標減速度αrefに対して乖離する。
ところで、前記したごとく減速操作終了時t2の減速度偏差Δαdrを用いて制動力制御継続時間tcを設定する場合、図10につき前述した作用により図11においては減速操作終了瞬時t2から制動力制御継続時間tcが経過する瞬時t3に制動トルク指令値TdcomがA3で示すごとく0にされ、その後実減速度αvはB3で示すような経時変化をもって比較的長い時間をかけて0に至る。
しかし実車は同じ速度での減速終了操作によっても、上記の外乱やモデル化誤差により実減速度αvが目標減速度αrefから図示のごとく乖離して減速度の低下が遅れ気味であり、瞬時t3に制動トルク指令値Tdcomを0にするのではブレーキの引きずり感や粘り感が過大になる。
【0044】
これに対し減速操作終了時t2の減速度偏差Δαvrを用いる場合、これが図11に示すようにΔαdrよりも実減速度αvおよび目標減速度αref間の乖離分だけ大きいことから、同図に示すように制動力制御継続時間tc’が上記の制動力制御継続時間tcよりも短くされ、減速操作終了瞬時t2から制動力制御継続時間tc’が経過する瞬時t3’に制動トルク指令値TdcomがA4で示すごとく0にされる。
よって、その後実減速度αvはB4で示すような経時変化をもって比較的短い時間内で0に至る。
かように、上記の外乱やモデル化誤差により実減速度αvが目標減速度αrefに対し図示のごとく乖離して減速度の低下が遅れ気味になるのに呼応して、瞬時t3よりも早い瞬時t3’に制動トルク指令値Tdcomを0にすることができ、ブレーキの引きずり感や粘り感が過大になるのを防止することができる。
従って、外乱やモデル化誤差にかかわらずブレーキの引きずり感や粘り感を確実に適切なものになるような制動力制御が可能となる。
【0045】
図8および図9は、本発明の他の実施の形態を示し、前述した実施の形態が減速操作終了瞬時から設定時間tcの経過時に制動力指令値Tdcomを0にして所期の目的を達成するものであるのに対し、本実施の形態においては、要求減速度αdemから目標減速度αrefを求める時に用いる、前記(4)式の伝達関数を持った規範モデルFref(s)の規範応答時定数Trを、減速操作終了瞬時から同じように定めた設定時間tcの経過時に、同様の目的が達成されるよう補正するよう構成したものである。
【0046】
これがため本実施の形態においては、先ず図2に対応する図8により概略説明すると、制動力補正手段39を規範応答保持時間設定・変更手段57と、規範応答補正判定手段58と、規範応答補正手段に相当する規範応答演算定数設定手段59とで構成する。
しかして、それ以外は図2におけると同様の構成とし、これがため図2におけると同様に機能する手段については同一符号を付して示すのみとし、重複説明を避けた。
【0047】
規範応答保持時間設定・変更手段57は、減速操作終了判定手段35が減速操作終了と判定した時における減速度偏差算出手段36からの減速度偏差Δαdr=αdem−αrefと、図5のマップとに基づき規範応答保持時間tcを設定し、これを減速操作終了時の減速度偏差Δαdrに応じて変更する。
規範応答補正判定手段58は、減速操作終了判定手段35が減速操作終了と判定してから上記の規範応答保持時間tcが経過した時、規範応答補正指令を発し、それまでは規範応答を通常時と同じ応答に保持する指令を発する。
規範応答演算定数設定手段59は、規範応答補正判定手段58から規範応答補正指令が発せられるまでは前記(4)式の規範モデルFref(s)における規範応答時定数Tr(規範応答演算定数)を通常時と同じ値に保持し、規範応答補正判定手段58から規範応答補正指令が発せられる時規範応答時定数Tr(規範応答演算定数)を前記の目的が達成される減速操作終了用の時定数に変更し、この規範応答時定数Tr(規範応答演算定数)を目標減速度算出手段32に供給して前記した目標減速度αrefの演算に資する。
【0048】
図9により更に詳述するに、図9は、図3に対応するフローチャートで、図3におけると同様の処理を行うステップを同一符号により示し、以下では相違点のみについて説明する。
ステップS1〜ステップS7で図3におけると同様の処理を行った後のステップS21では、減速度偏差Δαdrが微少設定値αs以上か否かにより、制動力制御を継続すべきか終了すべきかを判定する。
減速度偏差Δαdrが微少設定値αs未満であれば、目標減速度αrefが要求減速度αdemにほぼ一致していて制動力制御が不要であるから、ステップS22において、フィードバック補償による制動トルク指令値Tdfbおよびデジタルフィルタによるフィードバック補償器の演算に用いる内部変数をすべて初期化する。具体的には、PI補償器の積分項を初期化する。
【0049】
ステップS21で減速度偏差Δαdrが微少設定値αs以上であると判定する場合、目標減速度αrefが要求減速度αdemにまだ一致しておらず制動力制御が必要であるから、制御をステップS23〜ステップS30に進めて本発明が狙いとする制動力制御を以下のごとくに行う。
先ずステップS23において、マスターシリンダ液圧Pmcと微少設定値Psとを比較し、前者が大きければ、運転者がブレーキ操作(減速操作)中であると判断し、通常の制動力制御用にステップS29へ進み、後者が大きければ、運転者がブレーキ操作をしていない(減速操作終了状態)と判断し、本発明が狙いとする制動力制御用にステップS24〜ステップS28へ進む。
よってステップS23は、本発明における減速操作終了判定手段に相当するが、減速操作の終了判定に当たっては、上記したマスターシリンダ液圧Pmcの代わりに、ステップS4で求めた要求減速度αdemが0になった時をもって減速操作が終了したと判定してもよい。
【0050】
ステップS24では、規範応答保持時間設定フラグの状態を判定する。ここで規範応答保持時間とは、ステップS6で目標減速度αrefを求める時に用いる前記(4)式の規範応答時定数Trを減速操作終了時からいつまで通常時と同じ値にしておくかを定めた時間を意味し、規範応答保持時間設定フラグは、減速操作の終了で以下のごとくに規範応答保持時間が設定されるときに1にセットされ、減速操作が有ったとき0にクリアされるものとする。
規範応答保持時間設定フラグがクリアされている場合にはステップS25において、図5に例示するマップをもとに減速度偏差Δαdrから規範応答保持時間tcを設定し、同時に当該設定がなされたことを示すように規範応答保持時間設定フラグを1にセットする。
ステップS25は、ここで規範応答保持時間設定フラグが1にセットされ、以後はステップS24がステップS25をスキップすることから、ステップS23で減速操作が終了したと判定した直後の1回実行されるだけで、次にステップS23で減速操作終了判定がなされるまでは、今回ステップS25で設定された制動力制御継続時間tcが保持される。
【0051】
次のステップS26では、ステップS23で減速操作終了判定がなされてからの経過時間toffを計測する。
ステップS27では、減速操作終了後からの経過時間toffがステップS25で求めた規範応答保持時間tcに至ったか否かを判定する。
減速操作終了時から規範応答保持時間tcが経過していない間は、ステップS23で減速操作中と判定する場合と同様、ステップS29において、規範応答時定数Trを通常時と同じ値Tr1にしてその変更を行わず、また、規範応答保持時間設定フラグを0にリセットする。
しかしステップS27で減速操作終了時から規範応答保持時間tcが経過したと判定する時は、規範応答時定数Trを通常時の値Tr1から減速操作終了用の値Tr2に変更する。
減速操作終了用の規範応答時定数Tr=Tr2は、これをもとにステップS6で求める目標減速度αrefが、例えば図10にB3で示す如く早期に低下するものとなるような値とする。
【0052】
ステップS28またはステップS29で上記のごとくに規範応答時定数Trを定めた後のステップS30では、これをもとにステップS6で求める目標減速度αrefと、ステップS2で演算する減速度推定値(実減速度)αvとの偏差に基づく減速度フィードバック制御により、図3のステップS14におけると同様の処理により制動トルク指令値Tdfb(フードバック補償量)を算出する。
以後、この減速度フィードバック制御による制動トルク指令値(フィードバック補償量)Tdfbと、ステップS5で求めたフィードフォワード制御による要求減速度(αdem)対応の制動トルク指令値(フィードフォワード補償量)Tdffとの合算より総制動トルク指令値Tdcomを算出し、これをもとにステップS15〜ステップS20で図3におけると同様の処理を行って、液圧ブレーキおよび回生制動の協調制御により制動トルク指令値Tdcomを実現する。
【0053】
本実施の形態においても、図10のような速度で減速操作を終了させ場合につき説明すると、減速操作終了瞬時t2から規範応答保持時間tcが経過した瞬時t3以後は、目標減速度αrefがB3で示すように変更されることから、実減速度αvをこのB3に沿って早期に低下させることができ、前記した実施の形態におけると同様の作用効果を達成することができる。
従って、中間的な速さで減速操作を終わらせているにもかかわらずブレーキの引きずり感や粘り感が全くなくて運転者に違和感を与えたり、また不要に大きなブレーキの引きずり感や粘り感を運転者に与えるという問題を解消することができる。
【0054】
しかも規範応答保持時間tcを、減速操作終了瞬時t2における減速度偏差Δαdrが大きいほど短く設定したため、この減速度偏差Δαdrが大きいほど減速操作終了時以後における減速度を早期に低下させることとなり、
如何なる減速操作終了速度のもとでも減速操作終了後において要求される微妙な減速感を確実に達成することができる。
【0055】
なおいずれの実施の形態においても、減速操作の終了判定は、減速操作により発生する液圧(図示ではマスターシリンダ液圧Pmc)または減速操作対応の要求減速度αdemをもとに当該判定を行うのがよく、これらの場合、減速操作により発生する液圧(図示ではマスターシリンダ液圧Pmc)を検出するセンサ19が既存のものであること、また、要求減速度αdemが制動力制御に不可欠な内部信号であることから、減速操作の終了判定を安価に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態になる制動力制御装置を、回生ブレーキ装置と液圧ブレーキ装置との組み合わせになる複合ブレーキ装置として構成した制動力制御システム図である。
【図2】同実施の形態になる制動力制御装置の機能別ブロック線図である。
【図3】同実施の形態における制動力制御装置の複合ブレーキ協調コントローラが実行する制御プログラムを示すフローチャートである。
【図4】同実施の形態において設定する最大回生制動トルクの特性線図である。
【図5】同実施の形態において設定する制動力制御継続時間の変化特性図である。
【図6】二自由度制御手法を用いた減速度制御器を例示するブロック線図である。
【図7】通常の制動力前後配分特性を例示する特性図である。
【図8】本発明の他の実施の形態になる制動力制御装置を示す、図2と同様な機能別ブロック線図である。
【図9】上記実施の形態になる制動力制御装置の複合ブレーキ協調コントローラが実行する制御プログラムを示す、図4と同様なフローチャートである。
【図10】図1〜図3に示す実施の形態になる制動力制御装置の動作を、従来装置のそれと比較して示す動作タイムチャートである。
【図11】図1〜図3に示す実施の形態において減速度偏差を目標減速度に代わる実減速度と要求減速度との偏差として求めた場合における動作タイムチャートである。
【図12】減速操作を速やかに終了させた場合における従来の制動力制御装置の動作タイムチャートである。
【図13】減速操作をゆっくり終了させた場合における従来の制動力制御装置の動作タイムチャートである。
【符号の説明】
1 車輪
2 ホイールシリンダ
3 歯車箱
4 交流同期モータ(回生ブレーキ装置)
5 ブレーキペダル
6 油圧ブースタ
7 マスターシリンダ
8 ブレーキ液圧配管
9 リザーバ
10 ポンプ
11 アキュムレータ
12 圧力スイッチ
13 電磁切替弁
14 増圧弁
15 増圧回路
16 減圧弁
17 減圧回路
18 液圧ブレーキコントローラ
19 圧力センサ
20 圧力センサ
21 モータトルクコントローラ
22 直流・交流変換用電流制御回路(インバータ)
23 直流バッテリ
24 複合ブレーキ協調コントローラ
25 車輪速センサ
26 ストロークシミュレータ
31 要求減速度算出手段
32 目標減速度算出手段
33 制動トルク指令値算出手段
34 制動力制御手段
35 減速操作終了判定手段
36 減速度偏差算出手段
37 制動力制御継続時間設定・変更手段
38 制動力解除手段
39 制動力補正手段
41 フィードフォワード補償器
42 規範モデル
43 フィードバック補償器
57 規範応答保持時間設定・変更手段
58 規範応答補正判定手段
59 規範応答演算定数設定手段
Claims (5)
- 車両の減速操作に応じて要求減速度を算出する要求減速度算出手段と、
この要求減速度に基づいて規範となる目標減速度を算出する目標減速度算出手段と、
この目標減速度が達成されるよう車輪の制動力を制御する制動力制御手段とを具えた車両の制動力制御装置において、
前記車両の減速操作が終わったのを判定する減速操作終了判定手段と、
前記要求減速度および目標減速度間における減速度偏差を算出する減速度偏差算出手段と、
これら手段からの信号に応答し、車両の減速操作が終わった時の前記減速度偏差が大きいほど減速操作終了時以後における制動力を早期に低下させるよう制動力を補正する制動力補正手段と
を具えてなることを特徴とする車両の制動力制御装置。 - 請求項1に記載の車両の制動力制御装置において、車両の実減速度を検出する加速度検出手段を設け、前記減速度偏差算出手段は、該手段で検出した実減速度を目標減速度に代えて用い、実減速度および要求減速度間における偏差をもって前記減速度偏差とするよう構成したことを特徴とする車両の制動力制御装置。
- 請求項1または2に記載の車両の制動力制御装置において、前記制動力補正手段は、
前記制動力制御手段による制御を減速操作終了瞬時からいつまで実行するのかを決定する制動力制御継続時間設定手段と、
減速操作終了瞬時から該手段により設定した制動力制御継続時間が経過した時に制動力を0にする制動力解除手段と、
前記制動力制御継続時間を前記減速操作終了時の減速度偏差が大きいほど短くする制動力制御継続時間変更手段とで構成したことを特徴とする車両の制動力制御装置。 - 前記目標減速度算出手段が所定の規範応答を持った規範モデルを用いて前記要求減速度から目標減速度を求めるものである請求項1または2に記載の車両の制動力制御装置において、前記制動力補正手段は、
前記所定の規範応答を減速操作終了瞬時からいつまで保持するのかを決定する規範応答保持時間設定手段と、
減速操作終了瞬時から該手段により設定した規範応答保持時間が経過した時に前記規範応答を、制動力の前記早期低下が達成されるように補正する規範応答補正手段と、
前記規範応答保持時間を前記減速操作終了時の減速度偏差が大きいほど短くする規範応答保持時間変更手段とで構成したことを特徴とする車両の制動力制御装置。 - 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の車両の制動力制御装置において、前記減速操作終了判定手段は、車両の減速操作により発生する液圧または前記要求減速度をもとに車両の減速操作が終わったのを判定するよう構成したことを特徴とする車両の制動力制御装置。
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