JP2004136502A - 液体噴射装置の駆動制御方法、及び、液体噴射装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】初期充填動作の終了後においてインク導入針内に残存する気泡を確実に除去する。
【解決手段】電源供給直後になされるメンテナンス動作において、制御部42は、接点端子38を通じて接点ROM37の情報が読み出せるか否かによってインクカートリッジ31が装着されているか否かを判断する。そして、制御部42は、初回のカートリッジ装着であることを条件に、キャップ部材46によるノズル形成面の封止状態でポンプユニット50を作動させて記録ヘッド3内にインクを初期充填する。この初期充填の終了後から規定回数までの初期タイマークリーニングに関し、制御部42は、インク導入針内の気泡を排出可能な第1クリーニングモードで実行する。一方、規定回数よりも後になされる通常タイマークリーニングに関し、制御部42は、インク導入針の気泡が排出されない第2クリーニングモードで実行する。
【選択図】 図9
【解決手段】電源供給直後になされるメンテナンス動作において、制御部42は、接点端子38を通じて接点ROM37の情報が読み出せるか否かによってインクカートリッジ31が装着されているか否かを判断する。そして、制御部42は、初回のカートリッジ装着であることを条件に、キャップ部材46によるノズル形成面の封止状態でポンプユニット50を作動させて記録ヘッド3内にインクを初期充填する。この初期充填の終了後から規定回数までの初期タイマークリーニングに関し、制御部42は、インク導入針内の気泡を排出可能な第1クリーニングモードで実行する。一方、規定回数よりも後になされる通常タイマークリーニングに関し、制御部42は、インク導入針の気泡が排出されない第2クリーニングモードで実行する。
【選択図】 図9
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット式記録装置、ディスプレー製造装置、電極形成装置、或いは、バイオチップ製造装置等、液体噴射ヘッドを用いて液体を噴射する液体噴射装置、及び、その駆動制御方法に係り、特に、カートリッジに貯留された液体を液体導入針を介して液体噴射ヘッド側に導入するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
液体を液滴の状態で吐出可能な液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置としては、例えば、インク滴を吐出して記録紙上に画像等を記録する画像記録装置、液状の電極材を基板上に吐出して電極を形成する電極形成装置、生体試料を吐出してバイオチップを製造するバイオチップ製造装置、或いは、所定量の試料を容器に吐出するマイクロピペットが提案されている。この種の液体噴射装置では、吐出する液体を貯留容器に貯留し、この液体を液体噴射ヘッドに供給して吐出させている。
【0003】
この装置では、貯留容器から液体噴射ヘッドまでの液体流路を、装置の最初の使用に先立って使用液体で満たしておく必要がある。このため、工場から出荷された装置を初めて使用する際には、液体噴射ヘッドのノズル開口側を負圧にして貯留容器内の液体を吸い出し、液体流路内の空気やメンテナンス液、或いは、気泡を、ノズル開口を通じて排出しながら液体流路内に液体を充填する。即ち、初期充填動作が行われる。この初期充填動作では大量の液体が消費される。そこで、貯留容器を最初に接続した場合に限り、初期充填動作を行うようにした装置が提案されている。例えば、初期充填動作が行われたか否かを示すフラグを設定可能なフラグ領域(履歴記憶手段)を設け、電源の投入を条件にこのフラグ領域の内容を参照して、初期充填動作を実行するか否かを決定する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、上記のノズル開口付近では、液体が空気に曝されているので溶媒の蒸発が生じており、長期間に亘って放置されるとノズル開口付近で液体の粘度上昇が生じる可能性がある。そして、液体の粘度が上昇すると液滴の飛行曲がりが生じたり、吐出量がばらついてしまったりする。さらに、液体の粘度が過度に上昇してしまうと、ノズル開口に目詰まりが生じてしまう可能性もある。この点に鑑み、電源オン時に、放置時間、或いは、前回クリーニングからの経過時間を取得して、取得した時間に応じた内容のクリーニング動作を行うタイマークリーニングを行う装置も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−267785号公報(第2頁,第2図)
【特許文献2】
特開2001−219567号公報(第8頁,第5−6図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の貯留容器には、カートリッジタイプのもの(以下、単にカートリッジという。)がある。このカートリッジは、液体噴射ヘッドが取り付けられたキャリッジに装着される。この装着状態では、ヘッド側に設けた液体導入針がカートリッジの針挿入口に挿入されるので、この液体導入針を介してキャリッジ内に貯留された液体を液体噴射ヘッドに供給することができる。
【0007】
しかしながら、カートリッジを使用する装置では、初期充填動作終了時において液体導入針内に気泡が残存してしまう。これは、カートリッジ側から空気が流れてくること、及び、液体導入針の下流端に異物濾過用のフィルタを配設していること等による。この気泡は、初期充填動作中において、比較的小さな気泡が隣接した状態で浮遊した状態になっている。このため、液体の流れに乗り難く、初期充填動作の終了後もこの液体導入針内に留まってしまう。そして、これらの気泡は、初期充填動作終了後から暫く静止すると自然に合体し、比較的大きな気泡となる。さらに、合体後の気泡は、流れてくる液体中の空気を吸収したり、流路を区画する部材(例えば、合成樹脂)を透過する空気を吸収したりして徐々に成長する。
【0008】
そして、液体導入針内の気泡が過度に成長してしまうと、使用時の比較的緩やかな液体の流れであっても下流側への移動が可能となる。そして、成長した気泡が上記のフィルタに接触すると、この気泡がフィルタの表面を覆った状態で留まってしまうことがある。この場合には、気泡によって液体の流量が減ってしまうので、液体の供給量が不足し、液滴の吐出不良が生じてしまう。
また、成長した気泡がフィルタを通り抜けてしまうと、この気泡はノズル開口からヘッド外部に排出されるので、多くのノズルから液滴が吐出されない多ノズル抜けの状態となってしまう。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、初期充填動作の終了後において液体導入針内に残存する気泡を確実に除去できる液体噴射装置、及び、その駆動方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体を貯留したカートリッジが着脱可能であり、液体導入針を有するカートリッジ装着部と、前記カートリッジのカートリッジ装着部への装着を検出可能なカートリッジ検出手段と、前記液体導入針を通じて導入された液体をノズル形成面のノズル開口から吐出可能な液体噴射ヘッドと、負圧空部を有し前記ノズル形成面を封止可能なキャッピング手段と、前記負圧空部内を負圧化可能な負圧ポンプと、前回電源オフ時からの放置時間を計時可能なタイマー手段と、制御部とを有し、
前回電源オフからの放置時間が第1判断基準時間以上であることを条件に、前記制御部が、電源の投入に連動して液体噴射ヘッド内の液体を吸引するタイマークリーニングの実行を制御する液体噴射装置の駆動制御方法において、
前記カートリッジ検出手段からの検出情報に基づいて初回のカートリッジ装着を前記制御部が認識する初回装着認識ステップと、
該初回装着認識ステップで初回装着と認識されたことを条件に、前記キャッピング手段によるノズル形成面の封止状態で前記制御部が負圧ポンプを作動させ、液体噴射ヘッド内に前記液体を充填させる初期充填ステップと、
該初期充填ステップの終了から規定回数までは、前記液体導入針内の気泡を排出可能な第1クリーニングモードによる初期タイマークリーニングを行い、前記規定回数よりも後は、前記液体導入針内の気泡は排出されない第2クリーニングモードによる通常タイマークリーニングを行うタイマークリーニングステップとからなることを特徴とする。
ここで、「第1判断基準時間」とは、ノズル開口付近において液体に軽い粘度上昇が生じ、そのまま液滴を吐出させた場合に液滴の飛行に支障が生じ得る放置時間を基準に定められる。なお、この第1判断基準時間は、使用する液体の種類、ノズル開口の形状、使用環境等によって異なるので、実験等によって適宜定められる。
【0011】
また、本発明は、液体を貯留したカートリッジが着脱可能であって液体導入針を有するカートリッジ装着部と、前記カートリッジのカートリッジ装着部への装着を検出可能なカートリッジ検出手段と、前記液体導入針を通じて導入された液体をノズル形成面のノズル開口から吐出可能な液体噴射ヘッドと、負圧空部を有し前記ノズル形成面を封止可能なキャッピング手段と、前記負圧空部内を負圧化可能な負圧ポンプと、前回電源オフ時からの放置時間を計時可能なタイマー手段と、制御部とを有し、
前回電源オフからの放置時間が第1判断基準時間以上であることを条件に、前記制御部が、電源の投入に連動して液体噴射ヘッド内の液体を吸引するタイマークリーニングの実行を制御する液体噴射装置において、
前記制御部は、
前記カートリッジ検出手段からの検出情報に基づき、初回のカートリッジ装着か否かを認識し、
初回装着であることを条件に、前記キャッピング手段によるノズル形成面の封止状態で負圧ポンプを作動させて液体噴射ヘッド内に液体を充填し、
該初期充填の終了後から規定回数までの初期タイマークリーニングを前記液体導入針内の気泡を排出可能な第1クリーニングモードで行い、前記規定回数よりも後になされる通常タイマークリーニングを前記液体導入針内の気泡は排出されない第2クリーニングモードで行うことを特徴とする。
【0012】
上記方法及び構成によれば、初期充填の後になされる初期タイマークリーニングが第1クリーニングモードで実行されるので、初期充填後において液体導入針内に残存した気泡が放置期間において成長したとしても、この気泡を確実に液体噴射ヘッドの外部に排出することができる。そして、この気泡を高い吸引量で排出した後に液体噴射ヘッドによる液滴の吐出がなされるので、液滴の吐出不良を防止することができる。また、この初期タイマークリーニングは、初期充填後から規定回数に亘って行われるので、初期充填で液体導入針内に入り込んだ気泡を確実に排出することができる。さらに、初期タイマークリーニングを規定回数行った後は、通常タイマークリーニングが第2クリーニングモードで実行される。この第2クリーニングモードは、液体導入針内の気泡が排出されない程度の吸引条件(吸引量,吸引力)であるので、タイマークリーニングで消費される液体量を低減することができる。
【0013】
上記構成において、前記初期タイマークリーニングに対応する第1判断基準時間を、通常タイマークリーニングに対応する第1判断基準時間よりも短く設定することが好ましい。
この構成によれば、初期タイマークリーニングが通常タイマークリーニングよりも短い放置期間で実行されるので、初期充填で液体導入針内に入り込んだ気泡を確実に排出することができる。
【0014】
上記構成において、前記制御部は、前回電源オフからの放置時間が、第1判断基準時間よりも長時間に設定された第2判断基準時間を超えた時間であることを条件に、通常タイマークリーニングを前記第1クリーニングモードで行うことが好ましい。
ここで、「第2判断基準時間」とは、液体導入針内の気泡を強制的に除去すべき放置時間を意味する。即ち、この第2判断基準時間を超えて放置されると、液体導入針内で成長した気泡が、使用時の液体の流れで噴射ヘッド側に移動してしまう可能性が高くなる。そして、この第2判断基準時間も、使用する液体の種類、ノズル開口の形状、使用環境等によって異なるので、実験等によって適宜定められる。
この構成によれば、初期タイマークリーニングの終了後においても、液体導入針内に残存してしまった比較的小さな気泡や、新たに液体導入針内に入り込んでしまった気泡が長期間に亘って放置されて成長したとしても、この気泡をヘッド外部に排出することができる。
【0015】
上記構成において、前記第1クリーニングモードの実行条件を記憶した第1クリーニングテーブルと、前記第2クリーニングモードの実行条件を記憶した第2クリーニングテーブルと、初期充填の終了後からのタイマークリーニング回数を計数するクリーニングカウンタとを設け、
前記制御部は、クリーニングカウンタのカウント値を参照して前記クリーニングテーブルを選択し、対応するクリーニングモードでタイマークリーニングの実行を制御することが好ましい。
この構成によれば、簡単な構成及び制御によってタイマークリーニングの実行を確実に制御できる。
【0016】
上記構成において、前記第1クリーニングモードの実行条件を記憶した第1クリーニングテーブルと、前記第1クリーニングモード及び第2クリーニングモードの実行条件を記憶した第2クリーニングテーブルと、初期充填の終了後からのタイマークリーニング回数を計数するクリーニングカウンタとを設け、
前記制御部は、クリーニングカウンタのカウント値を参照して前記クリーニングテーブルを選択し、対応するクリーニングモードでタイマークリーニングの実行を制御することが好ましい。
この構成によれば、簡単な構成及び制御によってタイマークリーニングの実行を確実に制御できる。
【0017】
上記構成において、前記カートリッジは、そのカートリッジに関する固有情報を記憶したカートリッジ情報記憶素子を備え、
前記カートリッジ検出手段は、前記カートリッジ装着部に備えられ、前記カートリッジの装着状態でカートリッジ情報記憶素子と電気的に接続可能な接点端子によって構成されていることが好ましい。
ここで、「固有情報」とは、そのカートリッジ専用の情報であり、少なくともそのカートリッジを特定可能な識別情報(例えば、製造番号)を含む。
上記構成によれば、カートリッジ情報記憶素子及び接点端子を多用途に使用できるので、装置構成を簡素化できる。また、カートリッジ情報記憶素子を有さないカートリッジを用いた場合には初期充填が行われないので、装置の信頼性を高める上で有利である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタという。)を例に挙げる。このプリンタは、ノズル開口から吐出させた液体状のインク(本発明の液体の一種)を、記録紙(印刷記録媒体の一種)の表面に着弾させることで文字や画像を記録するものであり、画像記録装置の一種でもある。
【0019】
図1に示したプリンタ1は、カートリッジ装着部2と記録ヘッド3(本発明の液体噴射ヘッドの一種)とを設けたキャリッジ4を有する。このキャリッジ4は、ガイドロッド5に軸支されて記録紙6の幅方向(主走査方向)に移動可能に取り付けられている。このキャリッジ4には、駆動プーリー7と遊転プーリー8との間に掛け渡したタイミングベルト9が接続されている。そして、この駆動プーリー7はパルスモータ10の回転軸に接合されている。従って、キャリッジ4は、パルスモータ10の作動によって記録紙6の幅方向に移動する。キャリッジ4の移動範囲内であって印刷領域よりも外側の端部領域には、ホームポジションが設定されている。このホームポジションには、記録ヘッド3のノズルプレート11の表面(本発明のノズル形成面に相当、図2参照。)をクリーニングするためのワイパー機構12と、このノズル形成面をキャッピング(封止)可能なキャッピング機構13とが左右隣り合わせて配設されている。
【0020】
図2に示すように、上記の記録ヘッド3は、キャリッジ4のベース板部16に対し、ノズルプレート11が記録紙6と対向するように下向きに取り付けられている。この記録ヘッド3は、図3にその一部を示すように、振動子ユニット17と、この振動子ユニット17を収納可能な樹脂製のケース18と、ケース18の先端面に接着される流路ユニット19等を備える。
【0021】
上記の振動子ユニット17は、圧電振動子群20と、この圧電振動子群20が接合される固定板21と、圧電振動子群20に駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル(図示せず)等から構成される。本実施形態の圧電振動子群20は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子22を備える。各圧電振動子22は、固定端部が固定板21上に接合され、自由端部が固定板21の先端面よりも外側に突出している。即ち、各圧電振動子22は、所謂片持ち梁の状態で固定板21上に取り付けられている。また、各圧電振動子22を支持する固定板21は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。
【0022】
ケース18は、直方体ブロック状のケース本体と、このケース本体の上端部から側方に向けて延出形成されたフランジ部とを有する。本実施形態では、このケース18を、熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂を成形することで作製している。そして、ケース本体の先端面、即ち、フランジ部とは反対側の端面には、流路ユニット19が接着されている。また、このケース18内部には、上記の振動子ユニット17を収納可能な収納空部23を、ケース18の高さ方向を貫通させた状態で形成している。そして、固定板21の背面を収納空部23を区画するケース内壁面に接着することで、振動子ユニット17は収納空部23内に収納されている。この他にケース内部には、共通インク室24とケース上面との間を連通するインク供給路25を形成している。
【0023】
流路ユニット19は、ノズルプレート11、流路形成基板26、及び、弾性板27から構成される。そして、ノズルプレート11を流路形成基板26の一方の表面に、弾性板27をノズルプレート11とは反対側となる流路形成基板26の他方の表面にそれぞれ配置し、接着等により一体化している。この流路ユニット19内には、共通インク室24、インク供給口28、及び、圧力室29からなる一連のインク流路が形成されている。ノズルプレート11は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口30を列状に開設したステンレス鋼製の薄いプレートである。本実施形態では、例えば180個のノズル開口30を列設し、これらのノズル開口30によってノズル列を構成する。そして、このノズル列を複数列横並びに形成している。
【0024】
流路形成基板26は、各ノズル開口30に対応させて圧力室29となる空部を隔壁で区画した状態で複数形成すると共に、インク供給口28となる溝部及び共通インク室24となる空部を形成した板状の部材である。この流路形成基板26は、シリコンウェハーのエッチング処理やニッケル基板のプレス加工によって作製される。上記の圧力室29は、ノズル開口30の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、共通インク室24は、インクカートリッジ31(図1参照)に貯留されたインクを各圧力室29に供給するための室であり、インク供給口28を通じて対応する各圧力室29に連通している。弾性板27は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材であり、圧力室29となる空部の一方の開口面を封止し、ダイヤフラム部として機能する。また、共通インク室24となる空部の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部としても機能する。そして、ダイヤフラム部には、圧電振動子22の自由端部の先端を接合するための島部32を設けている。また、コンプライアンス部として機能する部分については弾性フィルムだけにしている。
【0025】
この記録ヘッド3は、圧電振動子22を素子長手方向に伸縮させると、島部32が圧力室29に近接する方向或いは離隔する方向に移動する。これにより、圧力室29の容積が変化し、圧力室29内のインクに圧力変動が生じる。この圧力変動によってノズル開口30からインク滴(液滴の一種)が吐出される。
【0026】
次に、上記のカートリッジ装着部2について説明する。このカートリッジ装着部2は、インクカートリッジ31が装着される部分であり、キャリッジ4のベース板部上面に設けられる。本実施形態のプリンタ1は、4種類のインク、具体的には、ブラック、シアン、マゼンタ、及び、イエローからなる4色のインクを用いて記録を行う。このため、図4に示すように、インクカートリッジ31は、ブラックインクのみを貯留したブラックインクカートリッジ31Aと、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを個別に貯留したカラーインクカートリッジ31Bとが用いられる。
【0027】
これらのインクカートリッジ31(31A,31B)には、その底面に針挿入口35が設けられている。この針挿入口35は、インク導入針36(図5参照)が挿入される部分である。未使用時において、この針挿入口35はフィルムで封止されており、空気のカートリッジ内部への侵入を防止している。これは、インクカートリッジ31内のインクは脱気状態で貯留されているので、使用直前までこの脱気状態を保つためである。また、これらのインクカートリッジ31には接点付きROM37(以下、接点ROM37という。)が備えられている。
この接点ROM37は、カートリッジ底面(若しくは側面)に設けられており、本発明のカートリッジ情報記憶素子の一種である。この接点ROM37は、電源の非供給状態であっても記録された情報を保持することができ、且つ、外部から情報を書換可能な不揮発性の情報記憶媒体によって構成されている。そして、この接点ROM37には、そのカートリッジに関する固有情報が記憶されている。ここで、固有情報とは、そのカートリッジ専用の情報であり、少なくともそのカートリッジを特定可能な識別情報を含んでいる。例えば、製造番号、機種コード、製造年月日、装着回数、装着・取り外し日時等の情報が含まれている。
【0028】
このようなインクカートリッジ31が装着されるカートリッジ装着部2には、インク導入針36と接点端子38(図9参照。)とが設けられる。インク導入針36は、本発明の液体導入針の一種であり、図5(a)に示すように、ベース板部16の上面に上方へ向けて立設されている。このインク導入針36は、図5(b)に示すように、先端が円錐上に尖った中空針であり、下半部分が下方に向けて拡開するテーパー形状に形成されている。そして、このインク導入針36の下端面には、下端開口を覆うようにフィルタ39が配設されている。このフィルタ39はインク内の異物を濾過し、記録ヘッド3側への侵入を防止するための部材である。
【0029】
本実施形態では、上記したように4色のインクが用いられるため、カートリッジ装着部2には、各色のインクに対応させて合計4本のインク導入針36が横並びに配設されている。そして、インクカートリッジ31をベース板部上に載置してカートリッジ装着部2に取り付けると、インク導入針36がインクカートリッジ31の針挿入口35内に挿入される。これにより、インクカートリッジ31の内部空間とインク導入針36内の流路とが連通する。このインク導入針36の内部流路は、インク連通路40を通じて記録ヘッド3のインク供給路25(図3参照)に連通される。従って、インクカートリッジ31に貯留されたインクは、インク導入針36及びインク連通路40を通じて記録ヘッド3に供給される。
【0030】
上記の接点端子38は、インクカートリッジ31のカートリッジ装着部2への装着状態で接点ROM37と電気的に接続可能に構成されている。そして、この接点端子38はプリンタコントローラ41の制御部42(図9参照)に電気的に接続されているので、インクカートリッジ31が装着されると、制御部42は、接点ROM37に記録された各種の情報を読み出すことができる。従って、この制御部42は、接点ROM37の記録情報が読み出せるか否かにより、インクカートリッジ31のカートリッジ装着部2への装着状態を検出できる。このため、接点端子38は、本発明におけるカートリッジ検出手段の一種として機能する。また、制御部42は、インクカートリッジ31の装着状態において、接点ROM37に記録された各種の情報を書き換えることもできる。
【0031】
次に、キャッピング機構13について説明する。このキャッピング機構13は、本発明のキャッピング手段の一種であり、図6〜図8に示すように、負圧空部45を有し、ノズル形成面を封止可能なキャップ部材46と、このキャップ部材46を支持し、斜め上下方向に移動可能なスライダ機構47と、このキャップ部材46の負圧空部45と排液タンク49の間を連通する可撓性を有する排液チューブ48と、この排液チューブ48の途中に配設されたポンプユニット50とから構成される。
【0032】
キャップ部材46は、平面から見て略矩形状の箱体、詳しくは、上面開放のトレイ状部材であり、その全体が例えばエラストマーなどの弾性素材によって作製されている。このキャップ部材46の底面には、排液チューブ48に連通される排液口51が形成されている。また、このキャップ部材46の内部には、吸液性・保湿性を有する吸液シート52を配設している。この吸液シート52は、例えばフェルト等によって構成される。
【0033】
スライダ機構47は、上面にキャップ部材46が配設されたスライダ部材53と、側面にカム面となる長孔54が形成されたホルダ部材55と、これらのスライダ部材53及びホルダ部材55が取り付けられるフレーム56とから概略構成されている。フレーム56の側面には係合軸57が突設されており、この係合軸57にはアーム部材58の一端が回動可能に取り付けられている。このアーム部材58の他端は、スライダ部材53に軸支されている。また、スライダ部材53の側面に突設された支持軸59は、ホルダ部材55の長孔54内に移動可能な状態で挿入されている。この長孔54は、記録領域側(プラテン60側)に近い先端側に低所部が形成され、記録領域から遠い後端部に水平な高所部が形成されている。さらに、これらの低所部と高所部との間に傾斜部が形成されている。そして、この長孔54は、記録領域側が低く、記録領域から離隔する程に上昇するカム面を構成する。
【0034】
スライダ部材53は、一端が支持軸59に他端がフレーム56に取り付けられたスプリング61(引っ張りバネ)により、斜め下方向に付勢されている。このため、キャリッジ4がホームポジション外に位置する状態において、スライダ部材53は記録領域側に位置している(図7(a)に示す退避状態)。この退避状態では、支持軸59が長孔54の記録領域側端部に位置しているので、スライダ部材53に設けたキャップ部材46は、記録ヘッド3のノズル形成面の高さよりも低い退避位置に位置付けられる。
【0035】
一方、スライダ部材53が記録領域から離隔する方向に移動して、長孔54の反対側端部(便宜上、離隔側端部という。)に位置付けられると、具体的には、スライダ部材53に一体に設けた当接突片にキャリッジ4の当接部が当接した状態で、キャリッジ4がホームポジションに位置付けられると、スライダ部材53はスプリング61の引っ張り力に抗して移動し、支持軸59側の部分は長孔54に沿って上昇する。また、キャップ部材46は、アーム部材58の回動によって持ち上げられた状態となる。これにより、キャップ部材46が斜め上方に移動してノズル形成面を封止する(図7(b)に示すキャッピング状態)。このキャッピング状態では、ノズル形成面に開設されたノズル開口30がキャップ部材46の負圧空部45内に臨み、且つ、キャップ部材46の上端縁とノズル形成面とが液密状態で密着している。
従って、キャリッジ4がホームポジションで停止すると、キャップ部材46によってノズル形成面が封止される。この封止状態では、吸液シート52が存在するので負圧空部45内は高湿状態に保たれる。その結果、ノズル開口30からのインク溶媒の蒸発が抑制され、インク粘度の上昇が抑制される。
【0036】
そして、キャリッジ4がホームポジションから記録領域側に移動すると、スライダ部材53は、スプリング61の引っ張り力によって記録領域側に移動する。このとき、スライダ部材53は、支持軸59側の部分が長孔54に沿って下降し、アーム部材58の戻り回動によって記録領域側の部分も下降する。これにより、キャップ部材46は、記録領域側に向かって斜め下方向に移動し、ノズル形成面よりも下側に位置する。
【0037】
また、このスライダ部材53と記録領域(プラテン60)との間には、上記したワイパー機構12が設けられる。このワイパー機構12は、ワイパーブレード64と、ワイパーホルダ65と、ワイパー移動機構66(図9参照)とを備える。ワイパーブレード64は、例えば、ゴム製の板状部材であり、その下半部分がワイパーホルダ65に保持されている。そして、ワイパーホルダ65は、ワイパー移動機構66によって水平方向に移動し、記録ヘッド3の移動経路に重なるワイピング位置と、この移動経路から外れた退避位置とに進退可能に構成されている。
そして、ワイピング位置においては、ワイパーブレード64の上端部がノズル形成面に摺接可能な高さに位置する。このため、記録ヘッド3の主走査方向の移動により、ワイパーブレード64の上端部がノズル形成面に摺接し、インクや紙粉等が払拭される。
【0038】
上記のポンプユニット50は、記録紙6を搬送するための紙送りモータ67を駆動源としており、この紙送りモータ67と共に本発明の負圧ポンプの一種として機能する。即ち、このポンプユニット50と紙送りモータ67との間には、図示しない駆動力伝達機構が配設されており、紙送りモータ67と駆動力伝達機構とを制御部42が制御することにより、紙送りモータ67の回転力を記録紙6の搬送や、ポンプユニット50の動力に使用できる。
このポンプユニット50は、図8(b)に示すように、排液チューブ48をローラー68で押し潰してしごくことにより、この排液チューブ48内の空気やインクを下流側に送る所謂チューブポンプによって構成されている。このポンプユニット50は、キャップ部材46の負圧空部45内を負圧化するための負圧化手段として機能する。
そして、このポンプユニット50(負圧ポンプ)を作動させると、負圧空部45内に排出されたインクを排液タンク49側に送ることができる。また、上記のキャッピング状態でポンプユニット50を作動させると、負圧空部45内が負圧化されるのでノズル開口30を通じて記録ヘッド3内のインクを排出することができる。これにより、ノズル開口30付近で増粘したインクを強制的に排出でき、インク滴の吐出を良好に維持することができる。
【0039】
次に、このプリンタ1の電気的構成について説明する。図9に示すように、このプリンタ1は、プリンタコントローラ41と、プリントエンジン71とから概略構成されている。
【0040】
プリンタコントローラ41は、CPU72,ROM73,RAM74を備えた制御部42と、前回電源オフからの経過時間、及び、記録ヘッド3による累積記録時間(記録ヘッド3が記録動作を行なった累積時間)を計時するタイマー75と、インクの初期充填以降に行われたタイマークリーニングの回数を計数するクリーニングカウンタ76とを備えている。ここで、タイマークリーニングとは、前回電源オフからの放置時間が判断基準時間以上であることを条件になされ、プリンタ1に対する電源の投入に連動して記録ヘッド3内のインクを吸引するクリーニングを意味する。
そして、制御部42には、メンテナンススイッチ77の操作信号が入力されている。また、上記したように、制御部42は、接点端子38と電気的に接続されているので、接点ROM37に記録された情報を読み出したり、接点ROM37に情報を書き込んだりすることができる。一方、プリントエンジン71は、パルスモータ10と、ワイパー移動機構66と、紙送りモータ67と、記録ヘッド3とを備えている。そして、これらの各部は、制御部42によってその動作が制御可能である。
【0041】
上記のタイマー75は、本発明のタイマー手段の一種であり、前回電源オフからの経過時間を計時する放置時間タイマーと、記録ヘッド3による累積記録時間(累積印字時間)を計時する累積記録時間タイマーとからなる。そして、放置時間タイマーは電源オフ時であってもカウント可能なように、また、累積記録時間タイマーは電源オフ時であってもカウント値を保持可能なように、それぞれ電源オフ時においては二次電池やコンデンサからの給電を受けて動作する。これらのタイマー75は、例えば、所定時間毎(例えば、放置時間タイマーは1時間毎、累積記録時間タイマーは1分毎)にカウントアップするカウンタによって構成される。
なお、時間を直接的或いは間接的に計時できれば、タイマー75はこの構成に限定されるものではない。例えば、放置時間タイマーに関し、プリンタ1に電気的に接続されてるホストコンピュータから電源オフ時の時刻情報を取得して記憶保持し、電源オン時に取得した時刻情報との差から放置時間を算出する構成であってもよい。また、累積記録時間タイマーに関し、インク滴の吐出回数をカウントする吐出数カウンタによって構成してもよい。
【0042】
上記の制御部42は、このプリンタ1における制御を行う部分であり、例えば、図示しないホストコンピュータからの印刷データに基づいてドットパターンデータを生成したり、生成したドットパターンデータを記録ヘッド3に転送したりする。また、制御部42は、パルスモータ10を作動させて、キャリッジ4(記録ヘッド3)を所望の位置に移動させたり、紙送りモータ67を作動させて、記録紙6を送り出したり、ポンプユニット50を作動させたりもする。
【0043】
さらに、この制御部42は、クリーニング制御手段としても機能する。例えば、電源スイッチ78の投入、インクカートリッジ31の交換、メンテナンススイッチ77の操作等に連動してなされるクリーニング動作や、インクのダミー吐出動作(所謂フラッシング動作)も制御する。さらに、制御部42は、インク吸引動作やフラッシング動作に連動してなされるワイピング動作も制御する。
【0044】
この制御部42が有するRAM74の一部は、電源オフ時においても記憶内容を保持可能な不揮発性RAM(例えば、フラッシュRAM)によって構成されている。そして、この不揮発性RAMの一部領域は、インクの初期充填動作の有無を判断するための初期充填フラグがセットされる初期充填フラグ領域として用いられている。
【0045】
また、この制御部42が備えるROM73の一部領域は、図10に示すように、クリーニングテーブルを記憶したクリーニングテーブル領域として使用されている。本実施形態におけるクリーニングテーブルは、第1クリーニングテーブル(図10(a)参照)と第2クリーニングテーブル(図10(b)参照)の2種類のテーブルからなる。第1クリーニングテーブルは、インクの初期充填から規定回数(本実施形態では2回)までの初期タイマークリーニングで参照され、第2クリーニングテーブルは、規定回数よりも後(本実施形態では3回以降)の通常タイマークリーニングで参照される。
【0046】
これらのクリーニングテーブルは、前回電源オフからの経過時間と記録ヘッド3による累積記録時間とをパラメータとしたテーブル情報である。そして、制御部42は、経過時間及び累積記録時間によって実行するクリーニングの内容を定める。例えば、図10(a)の第1クリーニングテーブルを使用する場合、前回電源オフからの経過時間が24時間(1日)未満であって累積記録時間が2時間未満であれば、制御部42はフラッシング動作を選択する。そして、前回電源オフからの経過時間が24時間以上である場合、もしくは、前回電源オフからの経過時間が24時間未満であっても累積記録時間が2時間以上である場合には、制御部42は、タイマークリーニング(強)を選択する。このタイマークリーニング(強)は、インク導入針36内に存在する気泡を排出可能な吸引条件(吸引力,吸引量)で実行される吸引クリーニングであり、本発明の第1クリーニングモードに相当する。具体的には、このタイマークリーニング(強)では、キャッピング時間(吸引時間)を1.7秒間、インクの吸引量を4gに設定している。なお、この条件は一例であり、その装置毎に実験等によって適宜設定される。
【0047】
また、図10(b)の第2クリーニングテーブルを使用する場合、制御部42は、前回電源オフからの経過時間が120時間(5日)未満であって、累積記録時間が2時間未満であればフラッシング動作を行う。そして、前回電源オフからの経過時間が120時間以上である場合、もしくは、前回電源オフからの経過時間が120時間未満であっても累積記録時間が2時間以上である場合には、タイマークリーニング(弱)を行う。このタイマークリーニング(弱)は、インク導入針36内に存在する気泡が排出されない程度の吸引条件で実行される吸引クリーニングであり、本発明の第2クリーニングモードに相当する。具体的には、このタイマークリーニング(弱)では、キャッピング時間(吸引時間)を0.5秒間、インクの吸引量を1gに設定している。さらに、第2クリーニングテーブルでは、前回電源オフからの経過時間が336時間(14日)以上である場合には、タイマークリーニング(弱)に代えてタイマークリーニング(強)を行う。なお、この条件は一例であり、その装置毎に実験等によって適宜設定される。
【0048】
そして、これらのクリーニングテーブルにおいて、第1クリーニングテーブルでは、フラッシング動作、タイマークリーニング(強)の優先順位で動作が選択される。これは、インクの初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡を除去するためである。
また、第2クリーニングテーブルでは、フラッシング動作、タイマークリーニング(弱)、タイマークリーニング(強)の優先順位で動作が選択される。これは、放置期間が14日までであれば、ノズル開口30付近の増粘インクを排除することでプリンタ1を良好な状態で使用できること、放置期間が14日以上になると、インク導入針36内の気泡が成長してインクの供給不良が発生してしまう虞があることによる。
【0049】
これらのクリーニングテーブルにおいて、フラッシング動作とタイマークリーニングとを切り替える第1判断基準時間は、第1クリーニングテーブルが24時間であり、第2クリーニングテーブルが120時間である。即ち、第1判断基準時間に関し、第1クリーニングテーブルの方が第2クリーニングテーブルよりも短い。これは、インクの初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡を効率よく除去するためである。
【0050】
即ち、最初にインクカートリッジ31を装着すると、インクカートリッジ31とインク導入針36との間から高い確率で空気が侵入してしまう。この侵入した空気は、記録ヘッド3内にインクを充填する際にインク導入針36の内部に入り込んでしまう。そして、図11(a)に示すように、インク導入針36内に入り込んだ直後の気泡Aは比較的小さく、複数に分かれた状態となっている。この状態では、初期充填時の吸引動作では除去は難しい。そして、これらの気泡Aは数分程度の放置によって合体し、図11(b)に示すように、比較的大きな気泡Aとなる。この合体直後の気泡Aは、通常の使用によっては排出されないが、インク中に溶け込んでいる空気を吸収したり、インク流路を構成する樹脂を透過した空気を吸収したりして成長する(図11(c)の状態。)。このため、数日程度放置されると、成長した気泡Aは、通常の使用によっても記録ヘッド3側に移動する可能性があり、インクの供給不良等を生じさせる虞がある。
そして、本実施形態のように、第1クリーニングテーブルの第1判断基準時間を第2クリーニングテーブルの第1判断基準時間よりも短く設定すると、インクの初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡Aが合体した後を狙ってこの気泡Aを確実に除去することができる。
【0051】
また、第2クリーニングテーブルにおいて、タイマークリーニング(弱)とタイマークリーニング(強)とを切り替えているのは、放置期間が長期間に亘ることでインク導入針36内に入り込んで成長した気泡Aを効果的に除去するためである。
即ち、インク導入針36内に入り込んだ気泡Aを完全に除去することは困難であり、この入り込んだ気泡Aは放置されることで次第に成長するので、通常の使用であっても記録ヘッド3側に移動してインクの供給不良等を生じさせる虞がある。
そして、本実施形態のように、第2判断基準時間が経過した以降はタイマークリーニング(強)を実行するようにすると、インク導入針36内に入り込んだ気泡Aが万一成長したとしても、これを確実に除去することができる。
【0052】
次に、上記構成のプリンタ1の動作、詳しくは、電源オン時におけるインクの初期充填動作やタイマークリーニングについて、図12のフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
電源スイッチ78がオンされると、制御部42は、イニシャライズ動作を行う(S1)。このイニシャライズ動作では、キャリッジ4を主走査方向に移動させてキャリッジ4の位置を認識する等、制御部42はプリンタ1を動作させるために必要な準備処理を行う。
【0054】
イニシャライズ動作が終了したならば、制御部42は、インクカートリッジ31の装着が初回であるか否かを判断する(初回装着認識ステップ,S2)。即ち、制御部42は、接点端子38を通じて接点ROM37内の情報を読み出せるかどうか、及び、RAM74の初期充填フラグ領域に初期充填フラグがセットされているかどうかを確認する。そして、接点ROM37内の情報が読み出せ、且つ、初期充填フラグがセットされている場合に、まだインクが充填されていないと判断する。そして、インクが充填されていないと判断した場合には、初期充填フラグを消去して初期充填動作(初期充填ステップ,S3)に移行する。
【0055】
初期充填動作(S3)では、制御部42は、まず、パルスモータ10を制御してキャリッジ4をホームポジションに位置付ける。これにより、キャッピング状態(図7(b)の状態)となり、キャップ部材46によってノズル形成面が封止される。次に、制御部42は、このキャッピング状態を維持したままポンプユニット50を動作させる。これにより、キャップ部材46内の負圧空部45内が負圧化される。これにより、記録ヘッド3内に予め充填されている保存液や記録ヘッド3内の空気を負圧空部45内に吸い出すことができる。そして、保存液や空気が吸い出されることで、インクカートリッジ31に貯留されているインクがインク導入針36内に流入する。この流入したインクは、記録ヘッド3内を満たしノズル開口30から負圧空部45へ排出される。そして、記録ヘッド3内の流路がインクに置換される程度に十分に吸引を行ったならば、制御部42は吸引を終了する。その後、ノズル形成面をワイパーブレード64で払拭し、後述するフラッシング動作(S8)に移行する。
そして、この初期充填動作では、上記したように、針挿入口35の空気がインク供給針内に侵入して気泡Aとなる。そして、この気泡Aは、初期充填動作の実行期間中において細かく分かれた状態で存在するので、初期充填動作で記録ヘッド3から排出することは困難である。
【0056】
上記ステップS2にて、インクカートリッジ31の装着が初回でないと判断された場合、即ち、既に初期充填動作が行われていた場合には、テーブル選択動作(S4)を行う。このテーブル選択動作では、制御部42は、クリーニングカウンタ76のカウント値を参照し、過去に実行されたタイマークリーニングの回数を取得する。そして、取得した実行回数が2回未満であった場合、具体的には、0回若しくは1回であった場合には、第1クリーニングテーブルを選択する(S5)。また、取得した実行回数が2回以上であった場合には、第2クリーニングテーブルを選択する(S6)。ここで、実行回数が2回未満であった場合に第1クリーニングテーブルを選択する構成としたのは、上記したように、インクの初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡Aを除去するためである。
【0057】
使用するクリーニングテーブルを選択したならば、制御部42は、フラッシング動作を実行するか、タイマークリーニングを実行するかを判断する(S7)。即ち、第1クリーニングテーブルを選択した場合には、制御部42は、前回電源オフからの経過時間が24時間未満であって累積記録時間が2時間未満である場合に、フラッシング動作の実行を選択する。また、第2クリーニングテーブルを選択した場合には、制御部42は、前回電源オフからの経過時間が120時間未満であって累積記録時間が2時間未満である場合に、フラッシング動作の実行を選択する。そして、それ以外の条件であった場合には、制御部42は、タイマークリーニングの実行を選択する。
【0058】
このステップS7でフラッシング動作の実行を選択したならば、制御部42は、フラッシング動作を制御する(S8)。このフラッシング動作で制御部42は、パルスモータ10を制御してノズル形成面の真下にキャッピング部材を位置付け、記録ヘッド3に対してフラッシング用の吐出信号を供給する。これにより、ノズル開口30からインク滴が繰り返し吐出される。そして、吐出されたインク滴は、キャッピング部材の負圧空部45内に着弾する。また、制御部42は、紙送りモータ67及び駆動力伝達機構(図示せず)を制御してポンプユニット50を駆動する。これにより、負圧空部45内に着弾したインクを、排液チューブ48を通じて排液タンク49側に送り出すことができる。このフラッシング動作が終了すると一連の動作が終了するので、記録可能状態となる。
【0059】
一方、上記のステップS7でタイマークリーニング動作を選択したならば、制御部42は、タイマークリーニング動作を制御する(タイマークリーニングステップ,S9)。このタイマークリーニング動作で制御部42は、パルスモータ10を制御してキャリッジ4をホームポジションに位置付ける。これにより、上記したキャッピング状態となり、ノズル形成面はキャッピング部材によって液密状態で封止される。キャッピング状態としたならば、制御部42は、紙送りモータ67及び駆動力伝達機構(図示せず)を制御してポンプユニット50を駆動する。これにより、負圧空部45内が負圧化され、ノズル開口30を通じて記録ヘッド3内のインクが負圧空部45側に吸い出される。
【0060】
ここで、ポンプユニット50の駆動条件(即ち、インクの吸引条件)は、実行されるクリーニングモードに応じて異なる。即ち、初期充填ステップ(S3)の終了後から2回までの初期タイマークリーニングでは、上記した第1クリーニングテーブルが選択されるので、タイマークリーニング(強)が選択される。即ち、インク導入針36内に存在する気泡Aを排出可能な吸引条件の第1クリーニングモードによるタイマークリーニングが実行される。
一方、初期充填ステップ(S3)の終了後から3回以降の通常タイマークリーニングでは、上記した第2クリーニングテーブルが選択されるので、原則的にタイマークリーニング(弱)が選択される。即ち、インク導入針36内に存在する気泡Aは排出されない吸引条件の第2クリーニングモードによるタイマークリーニングが実行される。但し、本実施形態では、この通常タイマークリーニングであっても、長期間(本実施形態では14日以上)に亘って放置された場合には、タイマークリーニング(弱)に代えてタイマークリーニング(強)が実行されることになる。
【0061】
このような制御を行うことにより、初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡Aについては、合体して比較的大きくなった状態(図11(b)の状態)で吸引して排出することができる。これにより、インク導入針36内で過度に成長した気泡Aが、使用時において記録ヘッド3側に移動して吐出不良(例えば、多ノズル抜け)を生じさせる不具合を事前に防止できる。
また、タイマークリーニング(強)は原則的に初期タイマークリーニングに限られるので、通常クリーニングにおけるインク消費量を可及的に少なくすることができる。
さらに、タイマークリーニングを実行したとしても、インク導入針36内の気泡Aを完全に除去することは困難であり、例えば、図11(d)に示すように、比較的小さな気泡Aが残ってしまう可能性がある。この点に関し、本実施形態では、通常タイマークリーニングであっても、放置期間が過度に長くなった場合には、タイマークリーニング(強)が実行されるので、放置期間中にインク導入針36内の気泡Aが過度に大きくなったとしても、これを除去することができる。従って、インク滴の吐出不良(例えば、多ノズル抜け)を効果的に防止することができる。
【0062】
そして、タイマークリーニング動作が終了したならば、経過時間タイマー75及び累積記録タイマー75をリセットし、クリーニングカウンタをインクリメント(+1)する(S10)。このタイマー75のリセット及びクリーニングカウンタのインクリメントによって一連の動作が終了するので、記録可能状態となる。なお、リセットされた経過時間タイマー75は、電源スイッチ78のオフに伴って計時を開始する。また、リセットされた累積記録タイマー75は、記録動作の実行に伴って計時を行う。
【0063】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。例えば、カートリッジ検出手段に関し、発光素子及び受光素子からなるフォトセンサを用いて構成しても良いし、インクカートリッジ31の装着/非装着を機械的に検出可能なマイクロスイッチを用いて構成しても良い。
【0064】
また、キャッピング手段に関し、キャップ部材46を備え、このキャップ部材46をノズル形成面に密着させた封止状態(キャッピング状態)とノズル形成面から離隔した開放状態(非キャッピング状態)とに切り替え可能であれば、他の構成であってもよい。例えば、ラックアンドピニオン、即ち、ラックおよびピニオンから構成される移動機構により、キャップ部材46を移動させてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、通常タイマークリーニングに関し、原則的にはタイマークリーニング(弱)、即ち第2クリーニングモードで行い、放置期間が長期間に亘った場合にタイマークリーニング(強)、即ち第1クリーニングモードで行う構成としたがこれに限定されない。例えば、通常タイマークリーニングについては、タイマークリーニング(弱)のみとしてもよい。
【0066】
また、以上は、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ1を例に挙げて説明したが、本発明は他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタを製造するディスプレー製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーやFED(面発光ディスプレー)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,極く少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。そして、ディスプレー製造装置では、色材噴射ヘッドからR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を吐出する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を吐出する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を吐出する。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリンタの構成を説明する斜視図である。
【図2】キャリッジをノズル形成面側から見た斜視図である。
【図3】記録ヘッドの部分断面図である。
【図4】(a),(b)は、インクカートリッジを底面側から見た斜視図である。
【図5】(a)はキャリッジをインク導入針側から見た斜視図、(b)はインクカートリッジにインク導入針を挿入した状態を説明する断面図である。
【図6】キャッピング機構の平面図である。
【図7】キャッピング機構の状態を説明する図であり、(a)は退避状態を説明する図、(b)はキャッピング状態を説明する図である。
【図8】キャッピング機構の説明図であり、(a)はキャップ部材、ポンプユニット及び排液タンクの関係を説明する模式図、(b)はポンプユニットの構造を説明する図である。
【図9】プリンタの電気的構成を説明するブロック図である。
【図10】(a),(b)は、クリーニングテーブルを説明する図である。
【図11】(a)〜(d)は、インク導入針内の気泡を説明する図である。
【図12】電源オン時になされる動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1…インクジェット式プリンタ,2…カートリッジ装着部,3…記録ヘッド,4…キャリッジ,5…ガイドロッド,6…記録紙,7…駆動プーリー,8…遊転プーリー,9…タイミングベルト,10…パルスモータ,11…ノズルプレート,12…ワイパー機構,13…キャッピング機構,16…キャリッジのベース板部,17…振動子ユニット,18…ケース,19…流路ユニット,20…圧電振動子群,21…固定板,22…圧電振動子,23…収納空部,24…共通インク室,25…インク供給路,26…流路形成基板,27…弾性板,28…インク供給口,29…圧力室,30…ノズル開口,31…インクカートリッジ,32…島部,35…針挿入口,36…インク導入針,37…接点ROM,38…接点端子,39…フィルタ,40…インク連通路,41…プリンタコントローラ,42…制御部,45…負圧空部,46…キャップ部材,47…スライダ機構,48…排液チューブ,49…排液タンク,50…ポンプユニット,51…排液口,52…吸液シート,53…スライダ部材,54…長孔,55…ホルダ部材,56…フレーム,57…係合軸,58…アーム部材,59…支持軸,60…プラテン,61…スプリング,64…ワイパーブレード,65…ワイパーホルダ,66…ワイパー移動機構,67…紙送り機構,68…ローラー,71…プリントエンジン,72…CPU,73…ROM,74…RAM,75…タイマー,76…クリーニング,77…メンテナンススイッチ,78…電源スイッチ
【発明の属する技術分野】
本発明は、インクジェット式記録装置、ディスプレー製造装置、電極形成装置、或いは、バイオチップ製造装置等、液体噴射ヘッドを用いて液体を噴射する液体噴射装置、及び、その駆動制御方法に係り、特に、カートリッジに貯留された液体を液体導入針を介して液体噴射ヘッド側に導入するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
液体を液滴の状態で吐出可能な液体噴射ヘッドを有する液体噴射装置としては、例えば、インク滴を吐出して記録紙上に画像等を記録する画像記録装置、液状の電極材を基板上に吐出して電極を形成する電極形成装置、生体試料を吐出してバイオチップを製造するバイオチップ製造装置、或いは、所定量の試料を容器に吐出するマイクロピペットが提案されている。この種の液体噴射装置では、吐出する液体を貯留容器に貯留し、この液体を液体噴射ヘッドに供給して吐出させている。
【0003】
この装置では、貯留容器から液体噴射ヘッドまでの液体流路を、装置の最初の使用に先立って使用液体で満たしておく必要がある。このため、工場から出荷された装置を初めて使用する際には、液体噴射ヘッドのノズル開口側を負圧にして貯留容器内の液体を吸い出し、液体流路内の空気やメンテナンス液、或いは、気泡を、ノズル開口を通じて排出しながら液体流路内に液体を充填する。即ち、初期充填動作が行われる。この初期充填動作では大量の液体が消費される。そこで、貯留容器を最初に接続した場合に限り、初期充填動作を行うようにした装置が提案されている。例えば、初期充填動作が行われたか否かを示すフラグを設定可能なフラグ領域(履歴記憶手段)を設け、電源の投入を条件にこのフラグ領域の内容を参照して、初期充填動作を実行するか否かを決定する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
また、上記のノズル開口付近では、液体が空気に曝されているので溶媒の蒸発が生じており、長期間に亘って放置されるとノズル開口付近で液体の粘度上昇が生じる可能性がある。そして、液体の粘度が上昇すると液滴の飛行曲がりが生じたり、吐出量がばらついてしまったりする。さらに、液体の粘度が過度に上昇してしまうと、ノズル開口に目詰まりが生じてしまう可能性もある。この点に鑑み、電源オン時に、放置時間、或いは、前回クリーニングからの経過時間を取得して、取得した時間に応じた内容のクリーニング動作を行うタイマークリーニングを行う装置も提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
【特許文献1】
特開平8−267785号公報(第2頁,第2図)
【特許文献2】
特開2001−219567号公報(第8頁,第5−6図)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の貯留容器には、カートリッジタイプのもの(以下、単にカートリッジという。)がある。このカートリッジは、液体噴射ヘッドが取り付けられたキャリッジに装着される。この装着状態では、ヘッド側に設けた液体導入針がカートリッジの針挿入口に挿入されるので、この液体導入針を介してキャリッジ内に貯留された液体を液体噴射ヘッドに供給することができる。
【0007】
しかしながら、カートリッジを使用する装置では、初期充填動作終了時において液体導入針内に気泡が残存してしまう。これは、カートリッジ側から空気が流れてくること、及び、液体導入針の下流端に異物濾過用のフィルタを配設していること等による。この気泡は、初期充填動作中において、比較的小さな気泡が隣接した状態で浮遊した状態になっている。このため、液体の流れに乗り難く、初期充填動作の終了後もこの液体導入針内に留まってしまう。そして、これらの気泡は、初期充填動作終了後から暫く静止すると自然に合体し、比較的大きな気泡となる。さらに、合体後の気泡は、流れてくる液体中の空気を吸収したり、流路を区画する部材(例えば、合成樹脂)を透過する空気を吸収したりして徐々に成長する。
【0008】
そして、液体導入針内の気泡が過度に成長してしまうと、使用時の比較的緩やかな液体の流れであっても下流側への移動が可能となる。そして、成長した気泡が上記のフィルタに接触すると、この気泡がフィルタの表面を覆った状態で留まってしまうことがある。この場合には、気泡によって液体の流量が減ってしまうので、液体の供給量が不足し、液滴の吐出不良が生じてしまう。
また、成長した気泡がフィルタを通り抜けてしまうと、この気泡はノズル開口からヘッド外部に排出されるので、多くのノズルから液滴が吐出されない多ノズル抜けの状態となってしまう。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、初期充填動作の終了後において液体導入針内に残存する気泡を確実に除去できる液体噴射装置、及び、その駆動方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであり、液体を貯留したカートリッジが着脱可能であり、液体導入針を有するカートリッジ装着部と、前記カートリッジのカートリッジ装着部への装着を検出可能なカートリッジ検出手段と、前記液体導入針を通じて導入された液体をノズル形成面のノズル開口から吐出可能な液体噴射ヘッドと、負圧空部を有し前記ノズル形成面を封止可能なキャッピング手段と、前記負圧空部内を負圧化可能な負圧ポンプと、前回電源オフ時からの放置時間を計時可能なタイマー手段と、制御部とを有し、
前回電源オフからの放置時間が第1判断基準時間以上であることを条件に、前記制御部が、電源の投入に連動して液体噴射ヘッド内の液体を吸引するタイマークリーニングの実行を制御する液体噴射装置の駆動制御方法において、
前記カートリッジ検出手段からの検出情報に基づいて初回のカートリッジ装着を前記制御部が認識する初回装着認識ステップと、
該初回装着認識ステップで初回装着と認識されたことを条件に、前記キャッピング手段によるノズル形成面の封止状態で前記制御部が負圧ポンプを作動させ、液体噴射ヘッド内に前記液体を充填させる初期充填ステップと、
該初期充填ステップの終了から規定回数までは、前記液体導入針内の気泡を排出可能な第1クリーニングモードによる初期タイマークリーニングを行い、前記規定回数よりも後は、前記液体導入針内の気泡は排出されない第2クリーニングモードによる通常タイマークリーニングを行うタイマークリーニングステップとからなることを特徴とする。
ここで、「第1判断基準時間」とは、ノズル開口付近において液体に軽い粘度上昇が生じ、そのまま液滴を吐出させた場合に液滴の飛行に支障が生じ得る放置時間を基準に定められる。なお、この第1判断基準時間は、使用する液体の種類、ノズル開口の形状、使用環境等によって異なるので、実験等によって適宜定められる。
【0011】
また、本発明は、液体を貯留したカートリッジが着脱可能であって液体導入針を有するカートリッジ装着部と、前記カートリッジのカートリッジ装着部への装着を検出可能なカートリッジ検出手段と、前記液体導入針を通じて導入された液体をノズル形成面のノズル開口から吐出可能な液体噴射ヘッドと、負圧空部を有し前記ノズル形成面を封止可能なキャッピング手段と、前記負圧空部内を負圧化可能な負圧ポンプと、前回電源オフ時からの放置時間を計時可能なタイマー手段と、制御部とを有し、
前回電源オフからの放置時間が第1判断基準時間以上であることを条件に、前記制御部が、電源の投入に連動して液体噴射ヘッド内の液体を吸引するタイマークリーニングの実行を制御する液体噴射装置において、
前記制御部は、
前記カートリッジ検出手段からの検出情報に基づき、初回のカートリッジ装着か否かを認識し、
初回装着であることを条件に、前記キャッピング手段によるノズル形成面の封止状態で負圧ポンプを作動させて液体噴射ヘッド内に液体を充填し、
該初期充填の終了後から規定回数までの初期タイマークリーニングを前記液体導入針内の気泡を排出可能な第1クリーニングモードで行い、前記規定回数よりも後になされる通常タイマークリーニングを前記液体導入針内の気泡は排出されない第2クリーニングモードで行うことを特徴とする。
【0012】
上記方法及び構成によれば、初期充填の後になされる初期タイマークリーニングが第1クリーニングモードで実行されるので、初期充填後において液体導入針内に残存した気泡が放置期間において成長したとしても、この気泡を確実に液体噴射ヘッドの外部に排出することができる。そして、この気泡を高い吸引量で排出した後に液体噴射ヘッドによる液滴の吐出がなされるので、液滴の吐出不良を防止することができる。また、この初期タイマークリーニングは、初期充填後から規定回数に亘って行われるので、初期充填で液体導入針内に入り込んだ気泡を確実に排出することができる。さらに、初期タイマークリーニングを規定回数行った後は、通常タイマークリーニングが第2クリーニングモードで実行される。この第2クリーニングモードは、液体導入針内の気泡が排出されない程度の吸引条件(吸引量,吸引力)であるので、タイマークリーニングで消費される液体量を低減することができる。
【0013】
上記構成において、前記初期タイマークリーニングに対応する第1判断基準時間を、通常タイマークリーニングに対応する第1判断基準時間よりも短く設定することが好ましい。
この構成によれば、初期タイマークリーニングが通常タイマークリーニングよりも短い放置期間で実行されるので、初期充填で液体導入針内に入り込んだ気泡を確実に排出することができる。
【0014】
上記構成において、前記制御部は、前回電源オフからの放置時間が、第1判断基準時間よりも長時間に設定された第2判断基準時間を超えた時間であることを条件に、通常タイマークリーニングを前記第1クリーニングモードで行うことが好ましい。
ここで、「第2判断基準時間」とは、液体導入針内の気泡を強制的に除去すべき放置時間を意味する。即ち、この第2判断基準時間を超えて放置されると、液体導入針内で成長した気泡が、使用時の液体の流れで噴射ヘッド側に移動してしまう可能性が高くなる。そして、この第2判断基準時間も、使用する液体の種類、ノズル開口の形状、使用環境等によって異なるので、実験等によって適宜定められる。
この構成によれば、初期タイマークリーニングの終了後においても、液体導入針内に残存してしまった比較的小さな気泡や、新たに液体導入針内に入り込んでしまった気泡が長期間に亘って放置されて成長したとしても、この気泡をヘッド外部に排出することができる。
【0015】
上記構成において、前記第1クリーニングモードの実行条件を記憶した第1クリーニングテーブルと、前記第2クリーニングモードの実行条件を記憶した第2クリーニングテーブルと、初期充填の終了後からのタイマークリーニング回数を計数するクリーニングカウンタとを設け、
前記制御部は、クリーニングカウンタのカウント値を参照して前記クリーニングテーブルを選択し、対応するクリーニングモードでタイマークリーニングの実行を制御することが好ましい。
この構成によれば、簡単な構成及び制御によってタイマークリーニングの実行を確実に制御できる。
【0016】
上記構成において、前記第1クリーニングモードの実行条件を記憶した第1クリーニングテーブルと、前記第1クリーニングモード及び第2クリーニングモードの実行条件を記憶した第2クリーニングテーブルと、初期充填の終了後からのタイマークリーニング回数を計数するクリーニングカウンタとを設け、
前記制御部は、クリーニングカウンタのカウント値を参照して前記クリーニングテーブルを選択し、対応するクリーニングモードでタイマークリーニングの実行を制御することが好ましい。
この構成によれば、簡単な構成及び制御によってタイマークリーニングの実行を確実に制御できる。
【0017】
上記構成において、前記カートリッジは、そのカートリッジに関する固有情報を記憶したカートリッジ情報記憶素子を備え、
前記カートリッジ検出手段は、前記カートリッジ装着部に備えられ、前記カートリッジの装着状態でカートリッジ情報記憶素子と電気的に接続可能な接点端子によって構成されていることが好ましい。
ここで、「固有情報」とは、そのカートリッジ専用の情報であり、少なくともそのカートリッジを特定可能な識別情報(例えば、製造番号)を含む。
上記構成によれば、カートリッジ情報記憶素子及び接点端子を多用途に使用できるので、装置構成を簡素化できる。また、カートリッジ情報記憶素子を有さないカートリッジを用いた場合には初期充填が行われないので、装置の信頼性を高める上で有利である。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の説明では、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ(以下、単にプリンタという。)を例に挙げる。このプリンタは、ノズル開口から吐出させた液体状のインク(本発明の液体の一種)を、記録紙(印刷記録媒体の一種)の表面に着弾させることで文字や画像を記録するものであり、画像記録装置の一種でもある。
【0019】
図1に示したプリンタ1は、カートリッジ装着部2と記録ヘッド3(本発明の液体噴射ヘッドの一種)とを設けたキャリッジ4を有する。このキャリッジ4は、ガイドロッド5に軸支されて記録紙6の幅方向(主走査方向)に移動可能に取り付けられている。このキャリッジ4には、駆動プーリー7と遊転プーリー8との間に掛け渡したタイミングベルト9が接続されている。そして、この駆動プーリー7はパルスモータ10の回転軸に接合されている。従って、キャリッジ4は、パルスモータ10の作動によって記録紙6の幅方向に移動する。キャリッジ4の移動範囲内であって印刷領域よりも外側の端部領域には、ホームポジションが設定されている。このホームポジションには、記録ヘッド3のノズルプレート11の表面(本発明のノズル形成面に相当、図2参照。)をクリーニングするためのワイパー機構12と、このノズル形成面をキャッピング(封止)可能なキャッピング機構13とが左右隣り合わせて配設されている。
【0020】
図2に示すように、上記の記録ヘッド3は、キャリッジ4のベース板部16に対し、ノズルプレート11が記録紙6と対向するように下向きに取り付けられている。この記録ヘッド3は、図3にその一部を示すように、振動子ユニット17と、この振動子ユニット17を収納可能な樹脂製のケース18と、ケース18の先端面に接着される流路ユニット19等を備える。
【0021】
上記の振動子ユニット17は、圧電振動子群20と、この圧電振動子群20が接合される固定板21と、圧電振動子群20に駆動信号を供給するためのフレキシブルケーブル(図示せず)等から構成される。本実施形態の圧電振動子群20は、櫛歯状に列設された複数の圧電振動子22を備える。各圧電振動子22は、固定端部が固定板21上に接合され、自由端部が固定板21の先端面よりも外側に突出している。即ち、各圧電振動子22は、所謂片持ち梁の状態で固定板21上に取り付けられている。また、各圧電振動子22を支持する固定板21は、例えば厚さ1mm程度のステンレス鋼によって構成されている。
【0022】
ケース18は、直方体ブロック状のケース本体と、このケース本体の上端部から側方に向けて延出形成されたフランジ部とを有する。本実施形態では、このケース18を、熱硬化性樹脂の一種であるエポキシ樹脂を成形することで作製している。そして、ケース本体の先端面、即ち、フランジ部とは反対側の端面には、流路ユニット19が接着されている。また、このケース18内部には、上記の振動子ユニット17を収納可能な収納空部23を、ケース18の高さ方向を貫通させた状態で形成している。そして、固定板21の背面を収納空部23を区画するケース内壁面に接着することで、振動子ユニット17は収納空部23内に収納されている。この他にケース内部には、共通インク室24とケース上面との間を連通するインク供給路25を形成している。
【0023】
流路ユニット19は、ノズルプレート11、流路形成基板26、及び、弾性板27から構成される。そして、ノズルプレート11を流路形成基板26の一方の表面に、弾性板27をノズルプレート11とは反対側となる流路形成基板26の他方の表面にそれぞれ配置し、接着等により一体化している。この流路ユニット19内には、共通インク室24、インク供給口28、及び、圧力室29からなる一連のインク流路が形成されている。ノズルプレート11は、ドット形成密度に対応したピッチで複数のノズル開口30を列状に開設したステンレス鋼製の薄いプレートである。本実施形態では、例えば180個のノズル開口30を列設し、これらのノズル開口30によってノズル列を構成する。そして、このノズル列を複数列横並びに形成している。
【0024】
流路形成基板26は、各ノズル開口30に対応させて圧力室29となる空部を隔壁で区画した状態で複数形成すると共に、インク供給口28となる溝部及び共通インク室24となる空部を形成した板状の部材である。この流路形成基板26は、シリコンウェハーのエッチング処理やニッケル基板のプレス加工によって作製される。上記の圧力室29は、ノズル開口30の列設方向(ノズル列方向)に対して直交する方向に細長い室として形成されている。また、共通インク室24は、インクカートリッジ31(図1参照)に貯留されたインクを各圧力室29に供給するための室であり、インク供給口28を通じて対応する各圧力室29に連通している。弾性板27は、ステンレス鋼等の金属製の支持板上に弾性フィルムをラミネート加工した二重構造の複合板材であり、圧力室29となる空部の一方の開口面を封止し、ダイヤフラム部として機能する。また、共通インク室24となる空部の一方の開口面を封止し、コンプライアンス部としても機能する。そして、ダイヤフラム部には、圧電振動子22の自由端部の先端を接合するための島部32を設けている。また、コンプライアンス部として機能する部分については弾性フィルムだけにしている。
【0025】
この記録ヘッド3は、圧電振動子22を素子長手方向に伸縮させると、島部32が圧力室29に近接する方向或いは離隔する方向に移動する。これにより、圧力室29の容積が変化し、圧力室29内のインクに圧力変動が生じる。この圧力変動によってノズル開口30からインク滴(液滴の一種)が吐出される。
【0026】
次に、上記のカートリッジ装着部2について説明する。このカートリッジ装着部2は、インクカートリッジ31が装着される部分であり、キャリッジ4のベース板部上面に設けられる。本実施形態のプリンタ1は、4種類のインク、具体的には、ブラック、シアン、マゼンタ、及び、イエローからなる4色のインクを用いて記録を行う。このため、図4に示すように、インクカートリッジ31は、ブラックインクのみを貯留したブラックインクカートリッジ31Aと、シアン、マゼンタ、イエローの各インクを個別に貯留したカラーインクカートリッジ31Bとが用いられる。
【0027】
これらのインクカートリッジ31(31A,31B)には、その底面に針挿入口35が設けられている。この針挿入口35は、インク導入針36(図5参照)が挿入される部分である。未使用時において、この針挿入口35はフィルムで封止されており、空気のカートリッジ内部への侵入を防止している。これは、インクカートリッジ31内のインクは脱気状態で貯留されているので、使用直前までこの脱気状態を保つためである。また、これらのインクカートリッジ31には接点付きROM37(以下、接点ROM37という。)が備えられている。
この接点ROM37は、カートリッジ底面(若しくは側面)に設けられており、本発明のカートリッジ情報記憶素子の一種である。この接点ROM37は、電源の非供給状態であっても記録された情報を保持することができ、且つ、外部から情報を書換可能な不揮発性の情報記憶媒体によって構成されている。そして、この接点ROM37には、そのカートリッジに関する固有情報が記憶されている。ここで、固有情報とは、そのカートリッジ専用の情報であり、少なくともそのカートリッジを特定可能な識別情報を含んでいる。例えば、製造番号、機種コード、製造年月日、装着回数、装着・取り外し日時等の情報が含まれている。
【0028】
このようなインクカートリッジ31が装着されるカートリッジ装着部2には、インク導入針36と接点端子38(図9参照。)とが設けられる。インク導入針36は、本発明の液体導入針の一種であり、図5(a)に示すように、ベース板部16の上面に上方へ向けて立設されている。このインク導入針36は、図5(b)に示すように、先端が円錐上に尖った中空針であり、下半部分が下方に向けて拡開するテーパー形状に形成されている。そして、このインク導入針36の下端面には、下端開口を覆うようにフィルタ39が配設されている。このフィルタ39はインク内の異物を濾過し、記録ヘッド3側への侵入を防止するための部材である。
【0029】
本実施形態では、上記したように4色のインクが用いられるため、カートリッジ装着部2には、各色のインクに対応させて合計4本のインク導入針36が横並びに配設されている。そして、インクカートリッジ31をベース板部上に載置してカートリッジ装着部2に取り付けると、インク導入針36がインクカートリッジ31の針挿入口35内に挿入される。これにより、インクカートリッジ31の内部空間とインク導入針36内の流路とが連通する。このインク導入針36の内部流路は、インク連通路40を通じて記録ヘッド3のインク供給路25(図3参照)に連通される。従って、インクカートリッジ31に貯留されたインクは、インク導入針36及びインク連通路40を通じて記録ヘッド3に供給される。
【0030】
上記の接点端子38は、インクカートリッジ31のカートリッジ装着部2への装着状態で接点ROM37と電気的に接続可能に構成されている。そして、この接点端子38はプリンタコントローラ41の制御部42(図9参照)に電気的に接続されているので、インクカートリッジ31が装着されると、制御部42は、接点ROM37に記録された各種の情報を読み出すことができる。従って、この制御部42は、接点ROM37の記録情報が読み出せるか否かにより、インクカートリッジ31のカートリッジ装着部2への装着状態を検出できる。このため、接点端子38は、本発明におけるカートリッジ検出手段の一種として機能する。また、制御部42は、インクカートリッジ31の装着状態において、接点ROM37に記録された各種の情報を書き換えることもできる。
【0031】
次に、キャッピング機構13について説明する。このキャッピング機構13は、本発明のキャッピング手段の一種であり、図6〜図8に示すように、負圧空部45を有し、ノズル形成面を封止可能なキャップ部材46と、このキャップ部材46を支持し、斜め上下方向に移動可能なスライダ機構47と、このキャップ部材46の負圧空部45と排液タンク49の間を連通する可撓性を有する排液チューブ48と、この排液チューブ48の途中に配設されたポンプユニット50とから構成される。
【0032】
キャップ部材46は、平面から見て略矩形状の箱体、詳しくは、上面開放のトレイ状部材であり、その全体が例えばエラストマーなどの弾性素材によって作製されている。このキャップ部材46の底面には、排液チューブ48に連通される排液口51が形成されている。また、このキャップ部材46の内部には、吸液性・保湿性を有する吸液シート52を配設している。この吸液シート52は、例えばフェルト等によって構成される。
【0033】
スライダ機構47は、上面にキャップ部材46が配設されたスライダ部材53と、側面にカム面となる長孔54が形成されたホルダ部材55と、これらのスライダ部材53及びホルダ部材55が取り付けられるフレーム56とから概略構成されている。フレーム56の側面には係合軸57が突設されており、この係合軸57にはアーム部材58の一端が回動可能に取り付けられている。このアーム部材58の他端は、スライダ部材53に軸支されている。また、スライダ部材53の側面に突設された支持軸59は、ホルダ部材55の長孔54内に移動可能な状態で挿入されている。この長孔54は、記録領域側(プラテン60側)に近い先端側に低所部が形成され、記録領域から遠い後端部に水平な高所部が形成されている。さらに、これらの低所部と高所部との間に傾斜部が形成されている。そして、この長孔54は、記録領域側が低く、記録領域から離隔する程に上昇するカム面を構成する。
【0034】
スライダ部材53は、一端が支持軸59に他端がフレーム56に取り付けられたスプリング61(引っ張りバネ)により、斜め下方向に付勢されている。このため、キャリッジ4がホームポジション外に位置する状態において、スライダ部材53は記録領域側に位置している(図7(a)に示す退避状態)。この退避状態では、支持軸59が長孔54の記録領域側端部に位置しているので、スライダ部材53に設けたキャップ部材46は、記録ヘッド3のノズル形成面の高さよりも低い退避位置に位置付けられる。
【0035】
一方、スライダ部材53が記録領域から離隔する方向に移動して、長孔54の反対側端部(便宜上、離隔側端部という。)に位置付けられると、具体的には、スライダ部材53に一体に設けた当接突片にキャリッジ4の当接部が当接した状態で、キャリッジ4がホームポジションに位置付けられると、スライダ部材53はスプリング61の引っ張り力に抗して移動し、支持軸59側の部分は長孔54に沿って上昇する。また、キャップ部材46は、アーム部材58の回動によって持ち上げられた状態となる。これにより、キャップ部材46が斜め上方に移動してノズル形成面を封止する(図7(b)に示すキャッピング状態)。このキャッピング状態では、ノズル形成面に開設されたノズル開口30がキャップ部材46の負圧空部45内に臨み、且つ、キャップ部材46の上端縁とノズル形成面とが液密状態で密着している。
従って、キャリッジ4がホームポジションで停止すると、キャップ部材46によってノズル形成面が封止される。この封止状態では、吸液シート52が存在するので負圧空部45内は高湿状態に保たれる。その結果、ノズル開口30からのインク溶媒の蒸発が抑制され、インク粘度の上昇が抑制される。
【0036】
そして、キャリッジ4がホームポジションから記録領域側に移動すると、スライダ部材53は、スプリング61の引っ張り力によって記録領域側に移動する。このとき、スライダ部材53は、支持軸59側の部分が長孔54に沿って下降し、アーム部材58の戻り回動によって記録領域側の部分も下降する。これにより、キャップ部材46は、記録領域側に向かって斜め下方向に移動し、ノズル形成面よりも下側に位置する。
【0037】
また、このスライダ部材53と記録領域(プラテン60)との間には、上記したワイパー機構12が設けられる。このワイパー機構12は、ワイパーブレード64と、ワイパーホルダ65と、ワイパー移動機構66(図9参照)とを備える。ワイパーブレード64は、例えば、ゴム製の板状部材であり、その下半部分がワイパーホルダ65に保持されている。そして、ワイパーホルダ65は、ワイパー移動機構66によって水平方向に移動し、記録ヘッド3の移動経路に重なるワイピング位置と、この移動経路から外れた退避位置とに進退可能に構成されている。
そして、ワイピング位置においては、ワイパーブレード64の上端部がノズル形成面に摺接可能な高さに位置する。このため、記録ヘッド3の主走査方向の移動により、ワイパーブレード64の上端部がノズル形成面に摺接し、インクや紙粉等が払拭される。
【0038】
上記のポンプユニット50は、記録紙6を搬送するための紙送りモータ67を駆動源としており、この紙送りモータ67と共に本発明の負圧ポンプの一種として機能する。即ち、このポンプユニット50と紙送りモータ67との間には、図示しない駆動力伝達機構が配設されており、紙送りモータ67と駆動力伝達機構とを制御部42が制御することにより、紙送りモータ67の回転力を記録紙6の搬送や、ポンプユニット50の動力に使用できる。
このポンプユニット50は、図8(b)に示すように、排液チューブ48をローラー68で押し潰してしごくことにより、この排液チューブ48内の空気やインクを下流側に送る所謂チューブポンプによって構成されている。このポンプユニット50は、キャップ部材46の負圧空部45内を負圧化するための負圧化手段として機能する。
そして、このポンプユニット50(負圧ポンプ)を作動させると、負圧空部45内に排出されたインクを排液タンク49側に送ることができる。また、上記のキャッピング状態でポンプユニット50を作動させると、負圧空部45内が負圧化されるのでノズル開口30を通じて記録ヘッド3内のインクを排出することができる。これにより、ノズル開口30付近で増粘したインクを強制的に排出でき、インク滴の吐出を良好に維持することができる。
【0039】
次に、このプリンタ1の電気的構成について説明する。図9に示すように、このプリンタ1は、プリンタコントローラ41と、プリントエンジン71とから概略構成されている。
【0040】
プリンタコントローラ41は、CPU72,ROM73,RAM74を備えた制御部42と、前回電源オフからの経過時間、及び、記録ヘッド3による累積記録時間(記録ヘッド3が記録動作を行なった累積時間)を計時するタイマー75と、インクの初期充填以降に行われたタイマークリーニングの回数を計数するクリーニングカウンタ76とを備えている。ここで、タイマークリーニングとは、前回電源オフからの放置時間が判断基準時間以上であることを条件になされ、プリンタ1に対する電源の投入に連動して記録ヘッド3内のインクを吸引するクリーニングを意味する。
そして、制御部42には、メンテナンススイッチ77の操作信号が入力されている。また、上記したように、制御部42は、接点端子38と電気的に接続されているので、接点ROM37に記録された情報を読み出したり、接点ROM37に情報を書き込んだりすることができる。一方、プリントエンジン71は、パルスモータ10と、ワイパー移動機構66と、紙送りモータ67と、記録ヘッド3とを備えている。そして、これらの各部は、制御部42によってその動作が制御可能である。
【0041】
上記のタイマー75は、本発明のタイマー手段の一種であり、前回電源オフからの経過時間を計時する放置時間タイマーと、記録ヘッド3による累積記録時間(累積印字時間)を計時する累積記録時間タイマーとからなる。そして、放置時間タイマーは電源オフ時であってもカウント可能なように、また、累積記録時間タイマーは電源オフ時であってもカウント値を保持可能なように、それぞれ電源オフ時においては二次電池やコンデンサからの給電を受けて動作する。これらのタイマー75は、例えば、所定時間毎(例えば、放置時間タイマーは1時間毎、累積記録時間タイマーは1分毎)にカウントアップするカウンタによって構成される。
なお、時間を直接的或いは間接的に計時できれば、タイマー75はこの構成に限定されるものではない。例えば、放置時間タイマーに関し、プリンタ1に電気的に接続されてるホストコンピュータから電源オフ時の時刻情報を取得して記憶保持し、電源オン時に取得した時刻情報との差から放置時間を算出する構成であってもよい。また、累積記録時間タイマーに関し、インク滴の吐出回数をカウントする吐出数カウンタによって構成してもよい。
【0042】
上記の制御部42は、このプリンタ1における制御を行う部分であり、例えば、図示しないホストコンピュータからの印刷データに基づいてドットパターンデータを生成したり、生成したドットパターンデータを記録ヘッド3に転送したりする。また、制御部42は、パルスモータ10を作動させて、キャリッジ4(記録ヘッド3)を所望の位置に移動させたり、紙送りモータ67を作動させて、記録紙6を送り出したり、ポンプユニット50を作動させたりもする。
【0043】
さらに、この制御部42は、クリーニング制御手段としても機能する。例えば、電源スイッチ78の投入、インクカートリッジ31の交換、メンテナンススイッチ77の操作等に連動してなされるクリーニング動作や、インクのダミー吐出動作(所謂フラッシング動作)も制御する。さらに、制御部42は、インク吸引動作やフラッシング動作に連動してなされるワイピング動作も制御する。
【0044】
この制御部42が有するRAM74の一部は、電源オフ時においても記憶内容を保持可能な不揮発性RAM(例えば、フラッシュRAM)によって構成されている。そして、この不揮発性RAMの一部領域は、インクの初期充填動作の有無を判断するための初期充填フラグがセットされる初期充填フラグ領域として用いられている。
【0045】
また、この制御部42が備えるROM73の一部領域は、図10に示すように、クリーニングテーブルを記憶したクリーニングテーブル領域として使用されている。本実施形態におけるクリーニングテーブルは、第1クリーニングテーブル(図10(a)参照)と第2クリーニングテーブル(図10(b)参照)の2種類のテーブルからなる。第1クリーニングテーブルは、インクの初期充填から規定回数(本実施形態では2回)までの初期タイマークリーニングで参照され、第2クリーニングテーブルは、規定回数よりも後(本実施形態では3回以降)の通常タイマークリーニングで参照される。
【0046】
これらのクリーニングテーブルは、前回電源オフからの経過時間と記録ヘッド3による累積記録時間とをパラメータとしたテーブル情報である。そして、制御部42は、経過時間及び累積記録時間によって実行するクリーニングの内容を定める。例えば、図10(a)の第1クリーニングテーブルを使用する場合、前回電源オフからの経過時間が24時間(1日)未満であって累積記録時間が2時間未満であれば、制御部42はフラッシング動作を選択する。そして、前回電源オフからの経過時間が24時間以上である場合、もしくは、前回電源オフからの経過時間が24時間未満であっても累積記録時間が2時間以上である場合には、制御部42は、タイマークリーニング(強)を選択する。このタイマークリーニング(強)は、インク導入針36内に存在する気泡を排出可能な吸引条件(吸引力,吸引量)で実行される吸引クリーニングであり、本発明の第1クリーニングモードに相当する。具体的には、このタイマークリーニング(強)では、キャッピング時間(吸引時間)を1.7秒間、インクの吸引量を4gに設定している。なお、この条件は一例であり、その装置毎に実験等によって適宜設定される。
【0047】
また、図10(b)の第2クリーニングテーブルを使用する場合、制御部42は、前回電源オフからの経過時間が120時間(5日)未満であって、累積記録時間が2時間未満であればフラッシング動作を行う。そして、前回電源オフからの経過時間が120時間以上である場合、もしくは、前回電源オフからの経過時間が120時間未満であっても累積記録時間が2時間以上である場合には、タイマークリーニング(弱)を行う。このタイマークリーニング(弱)は、インク導入針36内に存在する気泡が排出されない程度の吸引条件で実行される吸引クリーニングであり、本発明の第2クリーニングモードに相当する。具体的には、このタイマークリーニング(弱)では、キャッピング時間(吸引時間)を0.5秒間、インクの吸引量を1gに設定している。さらに、第2クリーニングテーブルでは、前回電源オフからの経過時間が336時間(14日)以上である場合には、タイマークリーニング(弱)に代えてタイマークリーニング(強)を行う。なお、この条件は一例であり、その装置毎に実験等によって適宜設定される。
【0048】
そして、これらのクリーニングテーブルにおいて、第1クリーニングテーブルでは、フラッシング動作、タイマークリーニング(強)の優先順位で動作が選択される。これは、インクの初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡を除去するためである。
また、第2クリーニングテーブルでは、フラッシング動作、タイマークリーニング(弱)、タイマークリーニング(強)の優先順位で動作が選択される。これは、放置期間が14日までであれば、ノズル開口30付近の増粘インクを排除することでプリンタ1を良好な状態で使用できること、放置期間が14日以上になると、インク導入針36内の気泡が成長してインクの供給不良が発生してしまう虞があることによる。
【0049】
これらのクリーニングテーブルにおいて、フラッシング動作とタイマークリーニングとを切り替える第1判断基準時間は、第1クリーニングテーブルが24時間であり、第2クリーニングテーブルが120時間である。即ち、第1判断基準時間に関し、第1クリーニングテーブルの方が第2クリーニングテーブルよりも短い。これは、インクの初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡を効率よく除去するためである。
【0050】
即ち、最初にインクカートリッジ31を装着すると、インクカートリッジ31とインク導入針36との間から高い確率で空気が侵入してしまう。この侵入した空気は、記録ヘッド3内にインクを充填する際にインク導入針36の内部に入り込んでしまう。そして、図11(a)に示すように、インク導入針36内に入り込んだ直後の気泡Aは比較的小さく、複数に分かれた状態となっている。この状態では、初期充填時の吸引動作では除去は難しい。そして、これらの気泡Aは数分程度の放置によって合体し、図11(b)に示すように、比較的大きな気泡Aとなる。この合体直後の気泡Aは、通常の使用によっては排出されないが、インク中に溶け込んでいる空気を吸収したり、インク流路を構成する樹脂を透過した空気を吸収したりして成長する(図11(c)の状態。)。このため、数日程度放置されると、成長した気泡Aは、通常の使用によっても記録ヘッド3側に移動する可能性があり、インクの供給不良等を生じさせる虞がある。
そして、本実施形態のように、第1クリーニングテーブルの第1判断基準時間を第2クリーニングテーブルの第1判断基準時間よりも短く設定すると、インクの初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡Aが合体した後を狙ってこの気泡Aを確実に除去することができる。
【0051】
また、第2クリーニングテーブルにおいて、タイマークリーニング(弱)とタイマークリーニング(強)とを切り替えているのは、放置期間が長期間に亘ることでインク導入針36内に入り込んで成長した気泡Aを効果的に除去するためである。
即ち、インク導入針36内に入り込んだ気泡Aを完全に除去することは困難であり、この入り込んだ気泡Aは放置されることで次第に成長するので、通常の使用であっても記録ヘッド3側に移動してインクの供給不良等を生じさせる虞がある。
そして、本実施形態のように、第2判断基準時間が経過した以降はタイマークリーニング(強)を実行するようにすると、インク導入針36内に入り込んだ気泡Aが万一成長したとしても、これを確実に除去することができる。
【0052】
次に、上記構成のプリンタ1の動作、詳しくは、電源オン時におけるインクの初期充填動作やタイマークリーニングについて、図12のフローチャートに基づいて説明する。
【0053】
電源スイッチ78がオンされると、制御部42は、イニシャライズ動作を行う(S1)。このイニシャライズ動作では、キャリッジ4を主走査方向に移動させてキャリッジ4の位置を認識する等、制御部42はプリンタ1を動作させるために必要な準備処理を行う。
【0054】
イニシャライズ動作が終了したならば、制御部42は、インクカートリッジ31の装着が初回であるか否かを判断する(初回装着認識ステップ,S2)。即ち、制御部42は、接点端子38を通じて接点ROM37内の情報を読み出せるかどうか、及び、RAM74の初期充填フラグ領域に初期充填フラグがセットされているかどうかを確認する。そして、接点ROM37内の情報が読み出せ、且つ、初期充填フラグがセットされている場合に、まだインクが充填されていないと判断する。そして、インクが充填されていないと判断した場合には、初期充填フラグを消去して初期充填動作(初期充填ステップ,S3)に移行する。
【0055】
初期充填動作(S3)では、制御部42は、まず、パルスモータ10を制御してキャリッジ4をホームポジションに位置付ける。これにより、キャッピング状態(図7(b)の状態)となり、キャップ部材46によってノズル形成面が封止される。次に、制御部42は、このキャッピング状態を維持したままポンプユニット50を動作させる。これにより、キャップ部材46内の負圧空部45内が負圧化される。これにより、記録ヘッド3内に予め充填されている保存液や記録ヘッド3内の空気を負圧空部45内に吸い出すことができる。そして、保存液や空気が吸い出されることで、インクカートリッジ31に貯留されているインクがインク導入針36内に流入する。この流入したインクは、記録ヘッド3内を満たしノズル開口30から負圧空部45へ排出される。そして、記録ヘッド3内の流路がインクに置換される程度に十分に吸引を行ったならば、制御部42は吸引を終了する。その後、ノズル形成面をワイパーブレード64で払拭し、後述するフラッシング動作(S8)に移行する。
そして、この初期充填動作では、上記したように、針挿入口35の空気がインク供給針内に侵入して気泡Aとなる。そして、この気泡Aは、初期充填動作の実行期間中において細かく分かれた状態で存在するので、初期充填動作で記録ヘッド3から排出することは困難である。
【0056】
上記ステップS2にて、インクカートリッジ31の装着が初回でないと判断された場合、即ち、既に初期充填動作が行われていた場合には、テーブル選択動作(S4)を行う。このテーブル選択動作では、制御部42は、クリーニングカウンタ76のカウント値を参照し、過去に実行されたタイマークリーニングの回数を取得する。そして、取得した実行回数が2回未満であった場合、具体的には、0回若しくは1回であった場合には、第1クリーニングテーブルを選択する(S5)。また、取得した実行回数が2回以上であった場合には、第2クリーニングテーブルを選択する(S6)。ここで、実行回数が2回未満であった場合に第1クリーニングテーブルを選択する構成としたのは、上記したように、インクの初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡Aを除去するためである。
【0057】
使用するクリーニングテーブルを選択したならば、制御部42は、フラッシング動作を実行するか、タイマークリーニングを実行するかを判断する(S7)。即ち、第1クリーニングテーブルを選択した場合には、制御部42は、前回電源オフからの経過時間が24時間未満であって累積記録時間が2時間未満である場合に、フラッシング動作の実行を選択する。また、第2クリーニングテーブルを選択した場合には、制御部42は、前回電源オフからの経過時間が120時間未満であって累積記録時間が2時間未満である場合に、フラッシング動作の実行を選択する。そして、それ以外の条件であった場合には、制御部42は、タイマークリーニングの実行を選択する。
【0058】
このステップS7でフラッシング動作の実行を選択したならば、制御部42は、フラッシング動作を制御する(S8)。このフラッシング動作で制御部42は、パルスモータ10を制御してノズル形成面の真下にキャッピング部材を位置付け、記録ヘッド3に対してフラッシング用の吐出信号を供給する。これにより、ノズル開口30からインク滴が繰り返し吐出される。そして、吐出されたインク滴は、キャッピング部材の負圧空部45内に着弾する。また、制御部42は、紙送りモータ67及び駆動力伝達機構(図示せず)を制御してポンプユニット50を駆動する。これにより、負圧空部45内に着弾したインクを、排液チューブ48を通じて排液タンク49側に送り出すことができる。このフラッシング動作が終了すると一連の動作が終了するので、記録可能状態となる。
【0059】
一方、上記のステップS7でタイマークリーニング動作を選択したならば、制御部42は、タイマークリーニング動作を制御する(タイマークリーニングステップ,S9)。このタイマークリーニング動作で制御部42は、パルスモータ10を制御してキャリッジ4をホームポジションに位置付ける。これにより、上記したキャッピング状態となり、ノズル形成面はキャッピング部材によって液密状態で封止される。キャッピング状態としたならば、制御部42は、紙送りモータ67及び駆動力伝達機構(図示せず)を制御してポンプユニット50を駆動する。これにより、負圧空部45内が負圧化され、ノズル開口30を通じて記録ヘッド3内のインクが負圧空部45側に吸い出される。
【0060】
ここで、ポンプユニット50の駆動条件(即ち、インクの吸引条件)は、実行されるクリーニングモードに応じて異なる。即ち、初期充填ステップ(S3)の終了後から2回までの初期タイマークリーニングでは、上記した第1クリーニングテーブルが選択されるので、タイマークリーニング(強)が選択される。即ち、インク導入針36内に存在する気泡Aを排出可能な吸引条件の第1クリーニングモードによるタイマークリーニングが実行される。
一方、初期充填ステップ(S3)の終了後から3回以降の通常タイマークリーニングでは、上記した第2クリーニングテーブルが選択されるので、原則的にタイマークリーニング(弱)が選択される。即ち、インク導入針36内に存在する気泡Aは排出されない吸引条件の第2クリーニングモードによるタイマークリーニングが実行される。但し、本実施形態では、この通常タイマークリーニングであっても、長期間(本実施形態では14日以上)に亘って放置された場合には、タイマークリーニング(弱)に代えてタイマークリーニング(強)が実行されることになる。
【0061】
このような制御を行うことにより、初期充填でインク導入針36内に入り込んだ気泡Aについては、合体して比較的大きくなった状態(図11(b)の状態)で吸引して排出することができる。これにより、インク導入針36内で過度に成長した気泡Aが、使用時において記録ヘッド3側に移動して吐出不良(例えば、多ノズル抜け)を生じさせる不具合を事前に防止できる。
また、タイマークリーニング(強)は原則的に初期タイマークリーニングに限られるので、通常クリーニングにおけるインク消費量を可及的に少なくすることができる。
さらに、タイマークリーニングを実行したとしても、インク導入針36内の気泡Aを完全に除去することは困難であり、例えば、図11(d)に示すように、比較的小さな気泡Aが残ってしまう可能性がある。この点に関し、本実施形態では、通常タイマークリーニングであっても、放置期間が過度に長くなった場合には、タイマークリーニング(強)が実行されるので、放置期間中にインク導入針36内の気泡Aが過度に大きくなったとしても、これを除去することができる。従って、インク滴の吐出不良(例えば、多ノズル抜け)を効果的に防止することができる。
【0062】
そして、タイマークリーニング動作が終了したならば、経過時間タイマー75及び累積記録タイマー75をリセットし、クリーニングカウンタをインクリメント(+1)する(S10)。このタイマー75のリセット及びクリーニングカウンタのインクリメントによって一連の動作が終了するので、記録可能状態となる。なお、リセットされた経過時間タイマー75は、電源スイッチ78のオフに伴って計時を開始する。また、リセットされた累積記録タイマー75は、記録動作の実行に伴って計時を行う。
【0063】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。例えば、カートリッジ検出手段に関し、発光素子及び受光素子からなるフォトセンサを用いて構成しても良いし、インクカートリッジ31の装着/非装着を機械的に検出可能なマイクロスイッチを用いて構成しても良い。
【0064】
また、キャッピング手段に関し、キャップ部材46を備え、このキャップ部材46をノズル形成面に密着させた封止状態(キャッピング状態)とノズル形成面から離隔した開放状態(非キャッピング状態)とに切り替え可能であれば、他の構成であってもよい。例えば、ラックアンドピニオン、即ち、ラックおよびピニオンから構成される移動機構により、キャップ部材46を移動させてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、通常タイマークリーニングに関し、原則的にはタイマークリーニング(弱)、即ち第2クリーニングモードで行い、放置期間が長期間に亘った場合にタイマークリーニング(強)、即ち第1クリーニングモードで行う構成としたがこれに限定されない。例えば、通常タイマークリーニングについては、タイマークリーニング(弱)のみとしてもよい。
【0066】
また、以上は、液体噴射装置の一種であるインクジェット式プリンタ1を例に挙げて説明したが、本発明は他の液体噴射装置にも適用することができる。例えば、液晶ディスプレー等のカラーフィルタを製造するディスプレー製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレーやFED(面発光ディスプレー)等の電極を形成する電極製造装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置,極く少量の試料溶液を正確な量供給するマイクロピペットにも適用することができる。そして、ディスプレー製造装置では、色材噴射ヘッドからR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を吐出する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を吐出する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を吐出する。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリンタの構成を説明する斜視図である。
【図2】キャリッジをノズル形成面側から見た斜視図である。
【図3】記録ヘッドの部分断面図である。
【図4】(a),(b)は、インクカートリッジを底面側から見た斜視図である。
【図5】(a)はキャリッジをインク導入針側から見た斜視図、(b)はインクカートリッジにインク導入針を挿入した状態を説明する断面図である。
【図6】キャッピング機構の平面図である。
【図7】キャッピング機構の状態を説明する図であり、(a)は退避状態を説明する図、(b)はキャッピング状態を説明する図である。
【図8】キャッピング機構の説明図であり、(a)はキャップ部材、ポンプユニット及び排液タンクの関係を説明する模式図、(b)はポンプユニットの構造を説明する図である。
【図9】プリンタの電気的構成を説明するブロック図である。
【図10】(a),(b)は、クリーニングテーブルを説明する図である。
【図11】(a)〜(d)は、インク導入針内の気泡を説明する図である。
【図12】電源オン時になされる動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
1…インクジェット式プリンタ,2…カートリッジ装着部,3…記録ヘッド,4…キャリッジ,5…ガイドロッド,6…記録紙,7…駆動プーリー,8…遊転プーリー,9…タイミングベルト,10…パルスモータ,11…ノズルプレート,12…ワイパー機構,13…キャッピング機構,16…キャリッジのベース板部,17…振動子ユニット,18…ケース,19…流路ユニット,20…圧電振動子群,21…固定板,22…圧電振動子,23…収納空部,24…共通インク室,25…インク供給路,26…流路形成基板,27…弾性板,28…インク供給口,29…圧力室,30…ノズル開口,31…インクカートリッジ,32…島部,35…針挿入口,36…インク導入針,37…接点ROM,38…接点端子,39…フィルタ,40…インク連通路,41…プリンタコントローラ,42…制御部,45…負圧空部,46…キャップ部材,47…スライダ機構,48…排液チューブ,49…排液タンク,50…ポンプユニット,51…排液口,52…吸液シート,53…スライダ部材,54…長孔,55…ホルダ部材,56…フレーム,57…係合軸,58…アーム部材,59…支持軸,60…プラテン,61…スプリング,64…ワイパーブレード,65…ワイパーホルダ,66…ワイパー移動機構,67…紙送り機構,68…ローラー,71…プリントエンジン,72…CPU,73…ROM,74…RAM,75…タイマー,76…クリーニング,77…メンテナンススイッチ,78…電源スイッチ
Claims (7)
- 液体を貯留したカートリッジが着脱可能であり、液体導入針を有するカートリッジ装着部と、前記カートリッジのカートリッジ装着部への装着を検出可能なカートリッジ検出手段と、前記液体導入針を通じて導入された液体をノズル形成面のノズル開口から吐出可能な液体噴射ヘッドと、負圧空部を有し前記ノズル形成面を封止可能なキャッピング手段と、前記負圧空部内を負圧化可能な負圧ポンプと、前回電源オフ時からの放置時間を計時可能なタイマー手段と、制御部とを有し、
前回電源オフからの放置時間が第1判断基準時間以上であることを条件に、前記制御部が、電源の投入に連動して液体噴射ヘッド内の液体を吸引するタイマークリーニングの実行を制御する液体噴射装置の駆動制御方法において、
前記カートリッジ検出手段からの検出情報に基づいて初回のカートリッジ装着を前記制御部が認識する初回装着認識ステップと、
該初回装着認識ステップで初回装着と認識されたことを条件に、前記キャッピング手段によるノズル形成面の封止状態で前記制御部が負圧ポンプを作動させ、液体噴射ヘッド内に前記液体を充填させる初期充填ステップと、
該初期充填ステップの終了から規定回数までは、前記液体導入針内の気泡を排出可能な第1クリーニングモードによる初期タイマークリーニングを行い、前記規定回数よりも後は、前記液体導入針内の気泡は排出されない第2クリーニングモードによる通常タイマークリーニングを行うタイマークリーニングステップとからなることを特徴とする液体噴射装置の駆動制御方法。 - 液体を貯留したカートリッジが着脱可能であって液体導入針を有するカートリッジ装着部と、前記カートリッジのカートリッジ装着部への装着を検出可能なカートリッジ検出手段と、前記液体導入針を通じて導入された液体をノズル形成面のノズル開口から吐出可能な液体噴射ヘッドと、負圧空部を有し前記ノズル形成面を封止可能なキャッピング手段と、前記負圧空部内を負圧化可能な負圧ポンプと、前回電源オフ時からの放置時間を計時可能なタイマー手段と、制御部とを有し、
前回電源オフからの放置時間が第1判断基準時間以上であることを条件に、前記制御部が、電源の投入に連動して液体噴射ヘッド内の液体を吸引するタイマークリーニングの実行を制御する液体噴射装置において、
前記制御部は、
前記カートリッジ検出手段からの検出情報に基づき、初回のカートリッジ装着か否かを認識し、
初回装着であることを条件に、前記キャッピング手段によるノズル形成面の封止状態で負圧ポンプを作動させて液体噴射ヘッド内に液体を充填し、
該初期充填の終了後から規定回数までの初期タイマークリーニングを前記液体導入針内の気泡を排出可能な第1クリーニングモードで行い、前記規定回数よりも後になされる通常タイマークリーニングを前記液体導入針内の気泡は排出されない第2クリーニングモードで行うことを特徴とする液体噴射装置。 - 前記初期タイマークリーニングに対応する第1判断基準時間を、通常タイマークリーニングに対応する第1判断基準時間よりも短く設定したことを特徴とする請求項2に記載の液体噴射装置。
- 前記制御部は、前回電源オフからの放置時間が、第1判断基準時間よりも長時間に設定された第2判断基準時間を超えた時間であることを条件に、通常タイマークリーニングを前記第1クリーニングモードで行うことを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液体噴射装置。
- 前記第1クリーニングモードの実行条件を記憶した第1クリーニングテーブルと、前記第2クリーニングモードの実行条件を記憶した第2クリーニングテーブルと、初期充填の終了後からのタイマークリーニング回数を計数するクリーニングカウンタとを設け、
前記制御部は、クリーニングカウンタのカウント値を参照して前記クリーニングテーブルを選択し、対応するクリーニングモードでタイマークリーニングの実行を制御することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の液体噴射装置。 - 前記第1クリーニングモードの実行条件を記憶した第1クリーニングテーブルと、前記第1クリーニングモード及び第2クリーニングモードの実行条件を記憶した第2クリーニングテーブルと、初期充填の終了後からのタイマークリーニング回数を計数するクリーニングカウンタとを設け、
前記制御部は、クリーニングカウンタのカウント値を参照して前記クリーニングテーブルを選択し、対応するクリーニングモードでタイマークリーニングの実行を制御することを特徴とする請求項4に記載の液体噴射装置。 - 前記カートリッジは、そのカートリッジに関する固有情報を記憶したカートリッジ情報記憶素子を備え、
前記カートリッジ検出手段は、前記カートリッジ装着部に備えられ、前記カートリッジの装着状態でカートリッジ情報記憶素子と電気的に接続可能な接点端子によって構成されていることを特徴とする請求項2から請求項6の何れかに記載の液体噴射装置。
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