JP2004136018A - 発泡長靴及びその製造方法 - Google Patents

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Kazuaki Hara
原 和明
Mikio Tenkai
天海 幹雄
Tetsuya Kamimura
上村 哲也
Yukio Iwasaki
岩崎 幸夫
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Abstract

【課題】比重0.4以下で且つ部位による比重量のばらつきの小さい軽量の合成樹脂発泡長靴を製造出来るようにする。
【解決手段】エチレン酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量26%)30部、エチレンプロピレンゴム(EPDM)70部に対し、充填材としての炭酸カルシウム10部、過酸化物系架橋剤としてのジクミルパーオキサイド2部、発泡剤としてのアゾジカルボンアミド5部、着色剤5部の配合物からなる発泡性成形材料をモールド1のキャビティ2内に射出充填し、架橋反応させた後、キャビティ2を開放して発泡・膨張させて、比重0.2〜0.4の軽量の長靴本体Hを成形する。
【選択図】   図3

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軽量で且つ部位による比重量のばらつきの少ない長靴本体を備えた発泡長靴及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば水産市場や食品工場や水溜りの多い道を歩行する時等に使用される長靴として、総ゴム製のものや、塩化ビニル製のものや、熱可塑性ゴム製のもの等が良く知られているが、このような長靴は重くて長時間履いていると疲れやすくなるため、軽量化する方策がいろいろ検討され、例えば、長靴材料に軽量充填材を充填する方法や、長靴材料にカプセル発泡剤や化学発泡剤を混合して発泡させる方法や、射出成形時のゲート位置を変更する方法等が提案されている。(例えば、特許文献1参照。)。
一方、靴底部材を軽量化する技術として、水酸化ニトリルブタジエンゴムと、エチレン性不飽和カルボン酸金属塩のポリマーでグラフトされたH−NBRと、エチレン酢酸ビニル共重合体を含有する組成物を発泡させるようにした技術が知られている。(例えば、特許文献2参照。)。
また、一般的な軽量発泡製品を得る技術として、エチレン酢酸ビニル共重合体に発泡剤と過酸化水素(架橋剤)とを混合し、射出成形することにより、軽量で適度のクッション性を有し、表面層が柔軟な感触の発泡製品を得るような技術も知られている。(例えば、特許文献3参照。)。
【0003】
【特許文献1】
特開2001−334586号公報(図3)
【特許文献2】
特開2002−34601号公報
【特許文献3】
特開昭52−125575号公報
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、長靴本体を成形する際、軽量充填材を混合したり、カプセル発泡剤や化学発泡剤で発泡させる方法では、軽量化に限度があり、その比重はせいぜい0.5程度であった。ここで、本発明では、長靴本体とは、筒部と甲部と底部が一体となった防水性を有する構造のものをいう。
これは、軽量充填材を混合する方法の場合、軽量充填材を多く混入してもそれほどの軽量化が図れない。また、発泡剤を使用して発泡させる場合、長靴本体の筒部を射出成形するための成形型のキャビティが狭いため、高い射出圧力が必要となって充分な発泡が得られない。また同じく発泡剤を用いてショートショット法で圧力をゼロに近づけようとすると、材料の未充填箇所が出来て成形不良になるからである。
また、従来の射出成形によって成形される軽量長靴は、部位によって比重量(単位体積当たりの重量)のばらつきが生じやすかった。
【0005】
そこで、本発明は、比重0.4以下で且つ部位による比重量のばらつきの小さい軽量合成樹脂発泡長靴及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため本発明は、長靴本体が、エチレン酢酸ビニル共重合体を含む発泡性成形材料を用いて比重0.4以下に成形されているようにした。
【0007】
ここで、発泡長靴としては、アウトソールを別体に作製し、長靴本体の底面にアウトソールを接着する構造にしても良く、長靴本体だけで構成するようにしても良いが、この際、長靴本体を、エチレン酢酸ビニル共重合体を含む発泡性成形材料により、比重0.4以下の長靴本体にすれば、長時間履いていても疲れない軽量な長靴になり、この際、比重を0.20〜0.40にするとより好ましい。これは、比重が0.20未満であると、履用によって長靴の形状が崩れる傾向になり、0.40を越えると、従来の長靴との差がなくなり、軽量であるメリットが無くなるからである。
また、発泡性成形材料としては、架橋発泡後の収縮の問題が殆どないエチレン酢酸ビニル共重合体を用いる。これに混合するものとしては、高分子間を結合するための架橋剤及び発泡させるための発泡剤の他に、必要に応じて、硬さ等を調整するための樹脂またはゴム成分、着色するための着色剤、充填材等を使用する。そして、このエチレン酢酸ビニル共重合体は、柔軟であるため、可塑剤を添加する必要がなく、可塑剤を含む場合の不具合、例えば耐油性の低下等を防止出来る。
エチレン酢酸ビニル共重合体の使用量は、樹脂及びゴム成分を100部とすると、その組合せによって最適範囲は異なるが、実用上の収縮を抑制するために、30部以上使用することが好ましい。
【0008】
尚、長靴本体の硬度は、55〜65(JIS K6301スプリング式硬さ試験C形による測定)であることが好ましい。これは、硬度が55未満であると、履用によって長靴の形状が崩れる傾向にあり、65を超えると、履き心地が悪くなるからである。
また、長靴本体の内側にソックス状の裏布を接着して履き心地性を向上させるようにしても良い。
【0009】
また本発明では、モールドにより画成されるキャビティ内に、エチレン酢酸ビニル共重合体と架橋剤と発泡剤とを含む発泡性成形材料を射出した後、モールドを加熱することで前記発泡性成形材料を架橋反応させるとともに発泡を封じ込めた加圧状態とし、その後、キャビティを開放して発泡・膨張させることにより、比重0.4以下の長靴本体を成形するようにした。
【0010】
このようにすれば、発泡によって生成される気泡は独立気泡であるので防水性が充分で、且つ比重0.2〜0.4程度の極めて軽量な長靴本体を成形出来る。また、金型加熱により発泡性成形材料を発泡・膨張する方式であるので、表面が非常に薄いスキン層となり、外観仕上がりが良好で、且つ、履き心地がソフトになる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明に実施の形態について添付した図面に基づき説明する。
ここで図1は本発明に係る発泡長靴の側面図、図2は成形型に発泡性成形材料を射出した状態の断面図、図3はキャビティを開放した状態の説明図である。
【0012】
本発明に係る発泡長靴及びその製造方法は、長靴本体の比重が0.4以下で且つ部位による比重量のばらつきの少ない軽量の合成樹脂発泡長靴を成形出来るようにされ、発泡性成形材料にエチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)を含ませるとともに、キャビティ内に発泡性成形材料を射出した後、キャビティを開放することで発泡成形するようにしている。
尚、エチレン酢酸ビニル共重合体は、天然ゴムや合成ゴムに較べて射出時の流動性が良いため、本発明では射出成形法が適している。
【0013】
このようなエチレン酢酸ビニル共重合体は、耐候性や耐薬品性や強靭性等に優れている樹脂として知られており、従来では、靴底の成形材料成分、特にミッドソール材料の成分として使用されることはあったが、長靴本体の成形材料として使用されることはなかったのであるが、本発明者等は、このエチレン酢酸ビニル共重合体を含む発泡性成形材料を長靴本体の材料として使用すれば、長靴として良好な特性を有し、特に、軽量化の面で顕著な効果が得られることを知見し本発明に至ったものである。
【0014】
発泡性成形材料としては、エチレン酢酸ビニル共重合体、架橋剤及び発泡剤、充填剤の他に、硬度等を調整するための樹脂、ゴムを混合することが好ましい。硬度等を調整するための樹脂、ゴムとしては、ポリエチレンや、天然ゴムや、エチレンプロピレンゴムや、ポリブタジエンゴム等を使用することが出来る。
【0015】
また、架橋剤としては、ジクミルパーオキサイドや、2,5−ジメチル−2,5ジ(ターシャリーブチル)パーオキサイドや、1,3ビス(ターシャルブチルパーオキシ−イソプロピル)ベンゼンや、m−オクタデジルアジドホルメートや、ターシャリグチルパーオキシクメン等を使用することが出来、発泡剤としては、アゾジカルボンアミドや、アゾビスイソブチロニトリルや、ジニトロソペンタメチレンテトラミンや、P,P´−オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)や、パラトルエンスルホニルヒドラジドや、炭酸アンモニウムや、重炭酸ナトリウム等を使用することが出来る。
【0016】
このような発泡性成形材料を用いた発泡長靴の製造方法について説明すると、まず、発泡性成形材料を射出成形機によって、図2に示すようなモールド1のキャビティ2内に射出する。このキャビティ2は、実際の長靴のサイズより1/発泡倍率の比率で小型のサイズである。
【0017】
この時、成形材料は溶融するが発泡剤は発泡しない程度の温度にして射出し、その後モールドを加熱して発泡温度以上にして発泡可能な状態でキャビティ内に閉じ込めておく。そして、射出後から架橋反応が始まるようにしておき、成形材料の架橋が進行して流動性がなくなった時点でキャビティを開放し、発泡・膨張させると、均質に発泡・膨張するため、軽量で且つ比重量のばらつきの小さい長靴が製造出来る。
【0018】
ここで、本発明の実施例について説明する。
【実施例】
発泡性成形材料として、エチレン酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量26%)30部、エチレンプロピレンゴム(EPDM)70部に対し、充填材としての炭酸カルシウム10部、過酸化物系架橋剤としてのジクミルパーオキサイド2部、発泡剤としてのアゾジカルボンアミド5部、着色剤5部の配合物を準備した。
尚、エチレンプロピレンゴムとしては、JIS(Aタイプ)45〜65の比較的柔らかいものを用いて長靴の硬度を調整した。
【0019】
このような発泡性成形材料を混合し、射出成形機により140℃でキャビティ2内に射出し、その後、モールド温度を190℃にして10分間保持した後、キャビティ2を開放した。
そしてキャビティ2の開放は、図3に示すように、左右のサイドモールド3とボトムモールド4を急速に両側及び下方に移動させて行うようにしたが、キャビティ2が開放されると材料はラストモールド5を中心にして一気に発泡・膨張し、所望のサイズに成形された。
【0020】
そして、この成形物を中折れ式のラストモールドに装着し、一日放置して安定させた。そして、長靴本体の筒部の上部より試験片を採取したところ、比重が0.27、JIS K6301スプリング式硬さ試験C形の硬度が58、引張強度が2.7MPa、伸び率が255%の長靴本体H(図1)を得ることが出来た。また、甲部より試験片を採取したが、これらの物性値は上記値と同じであった。
このような方法で成形された長靴本体Hは、部位による比重量のばらつきの小さいものであった。また、発泡時に成形品がどこも冷却体に接触しないので、表面にスキン層が殆ど形成されず、履き心地がソフトであった。
【0021】
また、このような長靴本体Hは、そのまま発泡長靴として使用することが出来るが、防滑性や耐磨耗性等に優れた素材からアウトソールを別体として作製し、これを長靴本体Hの底面に貼着するようにして機能性を高めることも可能である。この場合は、長靴全体として、比重が0.4を超えることもある。
【0022】
更に、本長靴本体Hの内側に、ソックス状の裏布を接着して履用性を高めるようにしても良い。
【0023】
尚、本発明は以上のような実施形態に限定されるものではない。本発明の特許請求の範囲に記載した事項と実質的に同一の構成を有し、同一の作用効果を奏するものは本発明の技術的範囲に属する。
例えば、発泡性成形材料の具体的配合例は一例であり、また、成形法は射出成形法が最も好ましいが、これに限られるものではない。
【0024】
【発明の効果】
以上のように本発明に係る発泡長靴及びその製造方法は、長靴本体が、エチレン酢酸ビニル共重合体を含む発泡性成形材料を用いて比重0.4以下に成形されているようにしたため、極めて軽量で且つ長時間履いていても疲れない長靴となる。
また製造方法として、モールドにより画成されるキャビティ内に、エチレン酢酸ビニル共重合体と架橋剤と発泡剤とを含む発泡性成形材料を射出した後、モールドを加熱することで発泡性成形材料を架橋反応させるとともに加圧状態とし、その後、キャビティを開放して発泡・膨張させるようにすれば、発泡が完全に行われて、比重0.4以下の長靴本体を容易に成形できる。
この際、発泡性成形材料は、発泡前にキャビティ内に充填され、その後に発泡・膨張することになるので、気泡径、気泡の分散状態等が均質であり、比重量のばらつきの小さい長靴となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る発泡長靴の側面図
【図2】成形型に発泡性成形材料を射出した状態の断面図
【図3】キャビティを開放した状態の説明図
【符号の説明】
1…モールド、2…キャビティ、H…長靴本体。

Claims (2)

  1. 長靴本体が、エチレン酢酸ビニル共重合体を含む発泡性成形材料を用いて比重0.4以下に成形されていることを特徴とする発泡長靴。
  2. モールドにより画成されるキャビティ内に、エチレン酢酸ビニル共重合体と架橋剤と発泡剤とを含む発泡性成形材料を射出した後、モールドを加熱することで前記発泡性成形材料を架橋反応させるとともに加圧状態とし、その後、キャビティを開放して発泡・膨張させることにより、比重0.4以下の長靴本体を成形することを特徴とする発泡長靴の製造方法。
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