JP2004134323A - 固体酸化物形燃料電池セル - Google Patents
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Abstract
【課題】電解質層のクラックや、電極層と電解質層の間の層間剥離を防止することができ、高温使用時の耐熱性と共に、昇温・降温時の耐熱衝撃性を改善することが可能な固体酸化物形燃料電池セルを提供する。
【解決手段】固体酸化物から成る電解質層を両電極層で狭持した積層構造を備えた固体酸化物形燃料電池セルにおいて、電極層4と電解質層1の間に、電極材料で構成される第1の線状体Aと電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体Bとが交互に配列された縞状構造を有する第1の中間層2、若しくは電解質材料で構成される第3の線状体Cと上記第2の線状体Bとの縞状構造を有する第2の中間層3、あるいはその両方を少なくとも1層介在させる。
【選択図】 図1
【解決手段】固体酸化物から成る電解質層を両電極層で狭持した積層構造を備えた固体酸化物形燃料電池セルにおいて、電極層4と電解質層1の間に、電極材料で構成される第1の線状体Aと電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体Bとが交互に配列された縞状構造を有する第1の中間層2、若しくは電解質材料で構成される第3の線状体Cと上記第2の線状体Bとの縞状構造を有する第2の中間層3、あるいはその両方を少なくとも1層介在させる。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体酸化物から成る電解質を備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC)に係わり、特に電極層と電解質層の間に中間層を有する積層構造を備え、電極層や電解質層における亀裂や層間剥離を防止することができる固体酸化物形燃料電池セルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、電気化学的な反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であって、固体酸化物形燃料電池の場合、燃料極、固体電解質および空気極の各層を配置し、積層してこれら3層を構成し、これを燃料電池の発電部とし、外部から燃料極の側に水素、炭化水素等の燃料ガスを供給し、空気極には空気等の酸化剤ガスを供給して電気を発生させるようになっている。
【0003】
一般に、固体酸化物形燃料電池において、固体電解質には、例えばイットリア(Y2O3)酸化ネオジウム(Nd2O3)、酸化サマリウム(Sm2O3)、酸化ガドリニウム(Gd2O3)、酸化スカンジウム(Sc2O3)などを固溶した安定化ジルコニアや、セリア(CeO2)系固溶体、酸化ビスマスおよびランタンガレート(LaGaO3)などの酸化物から成る材料が用いられる。
固体電解質層には、電子を通さず、イオンを通す特性が要求され、酸素イオンが発電の導体である場合は、酸素イオンの導伝特性が高いことが望まれる。さらに、固体電解質層の重要な特性として、ガス不透過性であることが挙げられる。
【0004】
空気極としては、銀(Ag)や白金(Pt)などの金属系と、LaSrMnOやLaSrCoOに代表されるペロブスカイト構造の酸化物材料が一般的に用いられる。空気極に必要な特性としては、酸化に強く、酸化ガスを透過し、電気伝導度が高く、酸素分子を酸素イオンに変換する触媒作用に優れていることが挙げられる。
【0005】
また、燃料極としては、ニッケル(Ni)やニッケルと固体電解質のサーメットなどが一般的に用いられる。燃料極に要求される特性としては、還元雰囲気に強く、燃料ガスを透過し、電気伝導度が高く、水素分子をプロトンに変換する触媒作用に優れていることが挙げられる。
【0006】
固体酸化物形燃料電池は、以上のような特性を有する燃料極、固体電解質及び空気極から構成され、一般的な固体酸化物形燃料電池の単位発電セルは、固体電解質層が空気極と燃料極に挟持された構造、すなわち異なる材質、物性を有する3つの異種材料が積層されて構成されている。しかし、固体酸化物形燃料電池は、その動作温度が800〜1100℃程度と高温であることから、各層を構成する材料の熱膨張率の違いに起因する層間剥離が発生するおそれがある。
そこで、このような層間剥離の問題に対処するため、例えば特開平5−82135公報においては、凹凸形状を持つ電極を作製し、その凸部に応力を集中させることにより電解質層と電極層の剥離を防止するようにした固体電解質型(固体酸化物形)燃料電池が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載された技術においては、電極層の凸部に応力が集中する結果として、電解質層に亀裂が生じ、低温動作、高効率発電が期待される薄膜電解質を有する固体酸化物形燃料電池には適用できず、また昇降温の繰り返しによって電解質への亀裂が多く発生し、電解質の表面層の粉砕や亀裂の貫通などの恐れがあることから、長期的な安定性に問題がある。
特に、自動車等の移動体に搭載するための固体酸化物形燃料電池においては、頻繁な起動停止を伴うことから、とくに熱耐久性、耐熱衝撃性を向上、電解質層のクラック、あるいは電解質層と電極層の界面での剥離を防止することが極めて重要となる。
【0008】
本発明は、電解質層が固体酸化物で形成された固体酸化物形燃料燃料電池において、固体酸化物から成る電解質層のクラックや、電極層と電解質層の間の層間剥離をより確実に防止することができ、高温使用時の耐熱性と共に、昇温・降温時の耐熱衝撃性を改善することが可能な固体酸化物形燃料電池セルを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物から成る電解質層を二つの電極層で狭持した積層構造を有し、電極層と電解質層の間に、電極材料で構成される第1線状体又は電解質材料で構成される第3の線状体と、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体が積層面方向に交互に配列された縞状構造を備えた中間層が少なくとも1層設けてある構成としたことを特徴としている。また、電極層と電解質層間の電極層の側に、上記第1の線状体と上記第2の線状体から成る縞状構造を有する第1の中間層が少なくとも1層介在すると共に、電極層と電解質層間の電解質層の側に、上記第3の線状体と上記第2の線状体から成る縞状構造を有する第2の中間層が少なくとも1層介在している構成としたことを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物から成る電解質層を空気極と燃料極の両電極層で狭持して成る積層構造を有し、電極層と電解質層の間に、電極材料で構成される第1の線状体と、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体が積層面方向に交互に配列された縞状構造を備えた第1の中間層、又は上記第2の線状体と電解質材料で構成される第3の線状体から成り同様の縞状構造を備えた第2の中間層を少なくとも1層、さらには上記電極層と電解質層間の電極層の側に第1の中間層と、電解質層の側に第2の中間層とをそれぞれ少なくとも1層配設した構造のものであるから、これらの中間層が起動・停止時における昇温・降温に起因する熱応力の緩和層として機能することから、各層のクラックや層間剥離を防止して、固体酸化物形燃料電池セルの耐熱性や耐熱衝撃性が改善されることになる。
【0011】
また、本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおいては、上記各中間層をそれぞれ複数層形成して、隣接する中間層同士の縞方向が互いに異なる向きとなるように積層することや、複数層の中間層のうち、電極層に近い層ほど第1の線状体の体積比が高くなるように積層したり、電解質層に近い層ほど第3の線状体の体積比が高くなるように積層したりすることも必要に応じて望ましく、これによって、応力緩和層としての中間層の機能がより向上し、セルの耐熱性や耐熱衝撃性がより一層向上することになる。
【0012】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおいて、電解質として機能する材料に関しては、微結晶構造、柱状構造、ラメラ構造などの緻密性の高い構造であることが要求される。また、電極として機能する材料については、多孔質、柱状構造、ラメラ構造などのガス透過性を備えた構造であることが要求される。
【0013】
一方、本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおける中間層は、上記したように、高温使用に際して電解質材料と電極材料の熱膨張率の違いによって層間に発生する歪を緩和して、層間剥離を防止すると共に、電解質層や電極層に発生する歪の差による応力を緩和して電解質層や電極層における亀裂発生を防止する機能を有する。
【0014】
この中間層は縞状構造を有しており、2つの異なる線状体が交互に並ぶものであり、隣り合った線状体は互いに密着し、一体化している。この中間層を形成する2つの異なる線状体は、一方が電極材料又は電解質材料であり、他方は電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料、又は電極材料と電解質材料の共相であるから、電解質層と電極層に発生する歪の差等を中間層全体で緩和することができる。
例えば、空気極の電極材料にLaMnO3、電解質にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いた場合には、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料とは、例えばLaよりもイオン半径が小さい元素を固溶させたLa1−xCaxMnO3を用いることができる。なお、ここで中間の熱膨張係数とは、10.2〜11.2×10−6K−1の範囲を意味する。
【0015】
また、同様に、空気極の電極材料としてLaMnO3、電解質としてYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いた場合に、電極材料と電解質材料の共相とはLaMnO3とYSZの混合物となる。すなわち共相とは電極材料と電解質材料の混合物を意味する。
【0016】
中間層をこのような材料構成とすることによって、例えば電解質層に隣接した中間層が電極材料からなる第1の線状体を有する燃料電池が形成された場合、あるいは電極層に隣接した中間層が電解質材料からなる第3の線状体を有する燃料電池が形成された場合、異種材料同士の接合部が存在して熱膨張係数差による歪や応力の発生が懸念される。しかし、異種材料同士の接触面積が小さくなるため、中間層全体と電極層または電解質層全体の歪差は小さく、剥離発生が低減することになる。
また、例えば電解質層あるいは電極層に隣接した中間層が電解質材料と電極材料の共相又は電解質材料と電極材料の中間の熱膨張係数を持つ第2の線状体を有する燃料電池が形成された場合、異種材料ではあるものの電解質層あるいは電極層と中間層の熱膨張係数が近いため、これらの線状体が電解質層あるいは電極層と接する部位での剥離が起こりにくくなる。
【0017】
この中間層を複数層積層させた場合、2種類の線状体によって形成される縞の方向が隣接する中間層同士で互いに異なるものとなるように設置することが望ましい。このような構成とすることで歪の方向が一方向に集中するのを防止して応力を分散することができる。
すなわち、隣接する中間層の縞方向が同じ場合は、それだけ厚い中間層を設置した場合と同じことになり、熱膨張率が一定でも厚いものの方がそれだけ層間に発生する応力が大きくなってしまうことから、熱応力分散効果をより効率的に発生させるには、出力低下などの影響を与えない範囲内で、適当数の中間層を設置し、隣接した中間層における縞の方向が異なるようにする方がより好ましいことになる。
【0018】
このとき、各中間層の縞方向をランダムに異ならせるよりも、その層数に応じた規則的な配置をすることによって中間層部全体、すなわち燃料電池セル全体で応力分散効果を発生させるような配置が望ましい。例えば、中間層を3層設ける場合、1層目に対して2層目の縞方向を60°だけ交叉させ、さらに3層目は1層目に対して120°(2層目に対しては60°)だけ交叉させるように設置すると、全体では正六角形の頂点方向に縞方向が向いたように設置されることとなり、応力を効果的に分散させることができる。この他、同様に正八角形等の正多角形状に配置しても同様な効果が得られ、特に、中間層を複数設置する場合には、縞方向を90°ずつ交叉させて積層することにより、積層数を増加させることなく効果的な応力分散が可能になる。
【0019】
線状体の体積比の制御は、等しい膜厚で積層した場合は線状体の幅を調整することによって行うことができる。電極層に近い層ほど第1の線状体の体積比が高い場合、電極層直上に位置する縞状構造中間層における電極層と等しい熱膨張係数を持つ部位の体積が大きいことになるため、直上の縞状構造層全体の体積膨張と電極層の体積膨張の差が小さくなる。その結果、電極層と直上の縞状構造層の熱膨張による剥離を防ぐことができる。また、電極層から離れた層ほど第1の線状体の体積比を低くすることにより、積層構造における隣り合った層間の体積膨張差を低減することができ、層間剥離を効果的に防止することができる。
【0020】
また、電解質層に近い層ほど第3の線状体の体積比が高い場合、電解質層直上の縞状構造中間層において、電解質層と等しい熱膨張係数を持つ部位の体積が大きいことになるため、直上の縞状構造層全体の体積膨張と電解質層の体積膨張の差が小さくなる。その結果、電解質層と直上の縞状構造層の熱膨張による剥離を防ぐことができる。また、電解質層から離れた層ほど第3の線状体の体積比を低くすることにより、積層構造における隣り合った層間の体積膨張差を低減することができ、層間剥離を防ぐことができる。
【0021】
一方、電極層と電解質層の熱膨張係数差が大きい場合、熱膨張係数が中間の材料を採用したとしても、その係数差は大きいために剥離が発生する可能性がある。したがって、このような場合は、電極層ならびに電解質層に対してそれぞれ中間層を形成し、熱膨張係数差を徐々に変化させることが望ましい。第1と第2の線状体で構成される第1の中間層と、第3と第2の線状体で構成される第2の中間層の両方を用いた場合には、層全体の体積膨張を電極と電解質の間で徐々に変化させることができ、また異なる方向で積層することにより応力を分散させることができることから、剥離防止にさらに有効である。
なお、電解質と電極材料の線状体が接することとなり異種材料どうしの接合部が存在して熱膨張係数差による歪や応力の発生が懸念されるが、異種材料同士の接触面積が小さいため、中間層全体と電極層または電解質層全体の歪差は小さく、剥離発生を低減することができる。さらには隣接する電解質材料と電極材料の共相または中間の熱膨張係数を持つ材料で熱膨張差が軽減されるため、剥離が発生することはない。
【0022】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおいては、上記したように、固体電解質として安定化ジルコニア、セリア含有固溶体、ランタンガレートなど、空気極として、LSM(LaSrMnO)、LSC(LaSrCoO)、Ag、Ptなど、燃料極としてはNi、Niサーメットなどを用いることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0023】
なお、本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおいては、電解質膜厚を0.5μm〜5mmとし、線状体の線幅は0.5μm〜1mm、線状体から成る縞状構造を有する中間層の厚さは0.5μm〜1mmとすることが望ましく、また、第1の線状体と第2の線状体から成る第1の中間層、及び第3の線状体と第2の線状体から成る第2の中間層における線幅比は、それぞれ10〜90%とすることが望ましい。
【0024】
これら中間層の縞状構造は、縞状のマスクを通じて電極材料または電解質材料の成膜を行うことにより基板上に縞状体を形成し、その上から電極材料と電解質材料の共相、または電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料を全面成膜することにより、初段の縞状構造の間隔を埋めることができる。その後、研磨もしくはエッチングを行うことにより、表面が平滑な縞状構造層が形成される。基板に対するマスクの角度を変え、これらの手順を繰り返すことにより、互いに異なる角度を持つ縞状構造を備えた中間層を形成することができる。
【0025】
これらの電解質、電極、電解質と電極の共相、及び電解質と電極の中間の熱膨張係数を持つ材料の線状構造層の形成方法としては、湿式成膜法と乾式成膜法がある。湿式製膜法には、例えばスラリーコーティング法やテープキャスティング法があり、乾式成膜法には、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、プラズマスプレー法、イオンプレーティング法、フレームスプレー法、プラズマジェットトーチ法、EVD法、CVD法などがある。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されることはない。
【0027】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものである。
すなわち、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電解質材料であるYSZを所定間隔を隔てた線状に成膜した(第3の線状体C)。その後、上記マスクを除去し、空気極として機能するLaMnO3とYSZを共スパッタすることによって、YSZから成る第3の線状体Cの間にLaMnO3とYSZの共相を成膜し(第2の線状体B)、さらに表面を研磨することによって第2の線状体Bと第3の線状体Cとの縞状構造を有する中間層3を形成した。
そして、その上からLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。これらのプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成る縞状構造を備えた中間層3が介在した構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0028】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行った結果、中間層を設けない場合に比べて10%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0029】
(実施例2)
図2は、本発明の第2の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものである。
まず、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電解質材料であるYSZを線状に成膜した(第3の線状体C)。その後、上記マスクを除去し、空気極であるLaMnO3と電解質であるYSZの中間の熱膨張係数を有するLa0.8Ca0.2MnO3をスパッタ成膜し(第2の線状体B)、表面を研磨することによって縞状構造を有する中間層3を形成した。
そして、その上からLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料の中間の熱膨張係数を有する第2の線状体Bから成る縞状構造を備えた中間層3が介在した構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0030】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行った結果、中間層を設けない場合に比べて10%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0031】
(実施例3)
図3は、本発明の第3の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものである。
まず、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電極材料であるLaMnO3を線状に成膜した(第1の線状体A)。その後、上記マスクを除去し、空気極として機能するLaMnO3とYSZを共スパッタすることにより、LaMnO3から成る第1の線状体Aの間にLaMnO3とYSZの共相を成膜し(第2の線状体B)、さらに表面を研磨することによって第1の線状体Aと第2の線状体Bによる縞状構造を有する中間層2を形成した。
そして、その上からLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に電極材料から成る第1の線状体Aと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成る縞状構造を備えた中間層2が介在した構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0032】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、中間層を設けてないセルに比べて10%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0033】
(実施例4)
図4は、本発明の第4の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける3層からなる中間層の累層状況を示すものである。
すなわち、まず、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電解質材料であるYSZを線状に成膜した(第3の線状体C)。その後、上記マスクを除去し、LaMnO3とYSZの共スパッタによりLaMnO3とYSZの共相を成膜し(第2の線状体B)、研磨をすることにより縞状構造中間層の第1層3aを形成した。次に、マスクを60度回転させ、上記同様にマスクによるYSZから成る第3の線状体Cの線状成膜、マスクを除去したLaMnO3とYSZの共相から成る第2の線状体Bの成膜、及び研磨のプロセスにより縞状構造中間層の第2層3bを形成した。そして、マスクをさらに60度回転して同様のプロセスを繰り返し、縞状構造中間層の第3層3cを形成した。螺旋状に積層された縞状構造層を形成した。
そして、その上からLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に、電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成る縞状構造を備えた3層から成る中間層3a,3b及び3cが60度ずつ回転させた状態に積層された構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0034】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、中間層を設けていないセルに比べて20%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0035】
(実施例5)
図5は、本発明の第5の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものである。
すなわち、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電解質材料であるYSZからなる第3の線状体Cを所定間隔を隔てた線状に成膜した。その後、上記マスクを除去し、空気極として機能するLaMnO3とYSZを共スパッタすることによって、YSZから成る第3の線状体Cの間にLaMnO3とYSZの共相を成膜し(第2の線状体B)、さらに表面を研磨することにより第2の線状体Bと第3の線状体Cとの縞状構造を有する中間層の第1層3aを形成した。
次に、第1層で利用したマスクよりも開口部の狭いマスクを、その開口部の方向が第1層3aの縞方向と直交するように設置し、第1層3aと同様の要領によって、YSZからなる第3の線状体Cの体積率が上記第1層3aよりも低い中間層の第2層3bを形成した。次いで、さらに狭い開口部を持つマスクを第2層3bの縞方向と直交するように設置し、第1層と同様の手順によってYSZからなる第3の線状体Cの体積率が上記第2層3bよりもさらに低い中間層の第3層3cを形成した。そして、最後に中間層の第3層3cの上にLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。
【0036】
以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に、電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから構成される縞状構造を有し、第3の線状体Cの体積率が電解質層から離れるにつれて小さくなる第1層3a、第2層3b及び第3層3cから成る中間層を備えた構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0037】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、中間層を設けていないセルに比べて20%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0038】
(実施例6)
図6は、本発明の第6の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものであって、当該実施例においては、空気極側に位置し、電極材料から成る第1の線状体Aと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bとの縞状構造を備えた3層から成る第1の中間層2と、電解質層側に位置し、電解質材料から成る第3の線状体Cと上記第2の線状体Bとの縞状構造を備えた3層から成る第2の中間層3との都合6層からなる中間層を有している。
【0039】
すなわち、まず電解質であるYSZ層1の上に、上記実施例5と同様の要領によって第1層3a、第2層3b及び第3層3cから成る第2の中間層3を形成した。そして当該第3層3cの上に、最も開口部の狭いマスクを、その開口部の方向が第3層3cの縞方向と直交するように設置し、電極材料であるLaMnO3から成る第1の線状体Aを線状に形成したのち、上記マスクを除去し、LaMnO3とYSZを共スパッタすることにより、第1の線状体Aの間にLaMnO3とYSZの共相である第2の線状体Bを成膜し、さらに表面を研磨することによって第1の線状体Aと第2の線状体Bによる縞状構造を有する第4層2a(第1の中間層2の第1層2a)を形成した。続いて、中間サイズの開口部を有するマスクを、その開口部の方向が第4層2aの縞方向と直交するように設置し、第4層2aと同様の要領によって、LaMnO3から成る第1の線状体Aの体積率が上記第4層2aよりも高い第5層2b(第1の中間層2の第2層2b)を形成し、次いで、最も広い開口部を持つマスクをこの第5層2bの縞方向と直交するように設置し、同様の要領によって第1の線状体Aの体積率が第5層2bよりもさらに高い第6層2c(第1の中間層2の第3層2c)を形成した。そして、最後に第6層2cの上にLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。
【0040】
以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に、電極材料から成る第1の線状体Aと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成り、第1の線状体Aの体積率が電極層4に近づくにつれて大きくなる第1層2a、第2層2b及び第3層2cから成る第1の中間層2と、電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成り、第3の線状体Cの体積率が電解質層1から離れるにつれて小さくなる第1層3a、第2層3b及び第3層3cから成る第2の中間層3とを備えた中間層を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0041】
当該実施例6の燃料電池セルにおけるこのような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、実施例1の燃料電池セルに比べて50%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係わる固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物から成る電解質層を二つの電極層で狭持した積層構造を有し、電極層と電解質層の間に、電極材料で構成される第1の線状体と電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体とが交互に配列された縞状構造を有する第1の中間層、若しくは電解質材料で構成される第3の線状体と上記第2の線状体とが交互に配列された縞状構造を有する第2の中間層が少なくとも1層介在している構成、あるいは上記第1の中間層が電極層の側に、第2の中間層が電解質層の側にそれぞれ少なくとも1層介在している構成としたものであるから、電解質層と電極層の界面における剥離や、電解質層及び電極層の割れを防止することができ、熱耐久性や耐熱衝撃性を大幅に向上させることができる。したがって、起動停止が迅速かつ頻繁に行われることになる自動車等の移動体搭載用固体酸化物形燃料電池として極めて好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の間に位置する中間層の概略構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおける中間層の概略構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおける中間層の概略構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の第4の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける中間層の累層構造を透視的に示す説明図である。
【図5】本発明の第5の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおいて複数層からなる中間層の概略構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の第6の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおいて複数層からなる中間層の概略構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 電解質層
2 (第1の)中間層
2a 第1層
2b 第2層
2c 第3層
3 (第2の)中間層
3a 第1層
3b 第2層
3c 第3層
4 空気極層(電極層)
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体酸化物から成る電解質を備えた固体酸化物形燃料電池(SOFC)に係わり、特に電極層と電解質層の間に中間層を有する積層構造を備え、電極層や電解質層における亀裂や層間剥離を防止することができる固体酸化物形燃料電池セルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
燃料電池は、電気化学的な反応により化学エネルギーを電気エネルギーに変換する装置であって、固体酸化物形燃料電池の場合、燃料極、固体電解質および空気極の各層を配置し、積層してこれら3層を構成し、これを燃料電池の発電部とし、外部から燃料極の側に水素、炭化水素等の燃料ガスを供給し、空気極には空気等の酸化剤ガスを供給して電気を発生させるようになっている。
【0003】
一般に、固体酸化物形燃料電池において、固体電解質には、例えばイットリア(Y2O3)酸化ネオジウム(Nd2O3)、酸化サマリウム(Sm2O3)、酸化ガドリニウム(Gd2O3)、酸化スカンジウム(Sc2O3)などを固溶した安定化ジルコニアや、セリア(CeO2)系固溶体、酸化ビスマスおよびランタンガレート(LaGaO3)などの酸化物から成る材料が用いられる。
固体電解質層には、電子を通さず、イオンを通す特性が要求され、酸素イオンが発電の導体である場合は、酸素イオンの導伝特性が高いことが望まれる。さらに、固体電解質層の重要な特性として、ガス不透過性であることが挙げられる。
【0004】
空気極としては、銀(Ag)や白金(Pt)などの金属系と、LaSrMnOやLaSrCoOに代表されるペロブスカイト構造の酸化物材料が一般的に用いられる。空気極に必要な特性としては、酸化に強く、酸化ガスを透過し、電気伝導度が高く、酸素分子を酸素イオンに変換する触媒作用に優れていることが挙げられる。
【0005】
また、燃料極としては、ニッケル(Ni)やニッケルと固体電解質のサーメットなどが一般的に用いられる。燃料極に要求される特性としては、還元雰囲気に強く、燃料ガスを透過し、電気伝導度が高く、水素分子をプロトンに変換する触媒作用に優れていることが挙げられる。
【0006】
固体酸化物形燃料電池は、以上のような特性を有する燃料極、固体電解質及び空気極から構成され、一般的な固体酸化物形燃料電池の単位発電セルは、固体電解質層が空気極と燃料極に挟持された構造、すなわち異なる材質、物性を有する3つの異種材料が積層されて構成されている。しかし、固体酸化物形燃料電池は、その動作温度が800〜1100℃程度と高温であることから、各層を構成する材料の熱膨張率の違いに起因する層間剥離が発生するおそれがある。
そこで、このような層間剥離の問題に対処するため、例えば特開平5−82135公報においては、凹凸形状を持つ電極を作製し、その凸部に応力を集中させることにより電解質層と電極層の剥離を防止するようにした固体電解質型(固体酸化物形)燃料電池が提案されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報に記載された技術においては、電極層の凸部に応力が集中する結果として、電解質層に亀裂が生じ、低温動作、高効率発電が期待される薄膜電解質を有する固体酸化物形燃料電池には適用できず、また昇降温の繰り返しによって電解質への亀裂が多く発生し、電解質の表面層の粉砕や亀裂の貫通などの恐れがあることから、長期的な安定性に問題がある。
特に、自動車等の移動体に搭載するための固体酸化物形燃料電池においては、頻繁な起動停止を伴うことから、とくに熱耐久性、耐熱衝撃性を向上、電解質層のクラック、あるいは電解質層と電極層の界面での剥離を防止することが極めて重要となる。
【0008】
本発明は、電解質層が固体酸化物で形成された固体酸化物形燃料燃料電池において、固体酸化物から成る電解質層のクラックや、電極層と電解質層の間の層間剥離をより確実に防止することができ、高温使用時の耐熱性と共に、昇温・降温時の耐熱衝撃性を改善することが可能な固体酸化物形燃料電池セルを提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物から成る電解質層を二つの電極層で狭持した積層構造を有し、電極層と電解質層の間に、電極材料で構成される第1線状体又は電解質材料で構成される第3の線状体と、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体が積層面方向に交互に配列された縞状構造を備えた中間層が少なくとも1層設けてある構成としたことを特徴としている。また、電極層と電解質層間の電極層の側に、上記第1の線状体と上記第2の線状体から成る縞状構造を有する第1の中間層が少なくとも1層介在すると共に、電極層と電解質層間の電解質層の側に、上記第3の線状体と上記第2の線状体から成る縞状構造を有する第2の中間層が少なくとも1層介在している構成としたことを特徴としている。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物から成る電解質層を空気極と燃料極の両電極層で狭持して成る積層構造を有し、電極層と電解質層の間に、電極材料で構成される第1の線状体と、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体が積層面方向に交互に配列された縞状構造を備えた第1の中間層、又は上記第2の線状体と電解質材料で構成される第3の線状体から成り同様の縞状構造を備えた第2の中間層を少なくとも1層、さらには上記電極層と電解質層間の電極層の側に第1の中間層と、電解質層の側に第2の中間層とをそれぞれ少なくとも1層配設した構造のものであるから、これらの中間層が起動・停止時における昇温・降温に起因する熱応力の緩和層として機能することから、各層のクラックや層間剥離を防止して、固体酸化物形燃料電池セルの耐熱性や耐熱衝撃性が改善されることになる。
【0011】
また、本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおいては、上記各中間層をそれぞれ複数層形成して、隣接する中間層同士の縞方向が互いに異なる向きとなるように積層することや、複数層の中間層のうち、電極層に近い層ほど第1の線状体の体積比が高くなるように積層したり、電解質層に近い層ほど第3の線状体の体積比が高くなるように積層したりすることも必要に応じて望ましく、これによって、応力緩和層としての中間層の機能がより向上し、セルの耐熱性や耐熱衝撃性がより一層向上することになる。
【0012】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおいて、電解質として機能する材料に関しては、微結晶構造、柱状構造、ラメラ構造などの緻密性の高い構造であることが要求される。また、電極として機能する材料については、多孔質、柱状構造、ラメラ構造などのガス透過性を備えた構造であることが要求される。
【0013】
一方、本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおける中間層は、上記したように、高温使用に際して電解質材料と電極材料の熱膨張率の違いによって層間に発生する歪を緩和して、層間剥離を防止すると共に、電解質層や電極層に発生する歪の差による応力を緩和して電解質層や電極層における亀裂発生を防止する機能を有する。
【0014】
この中間層は縞状構造を有しており、2つの異なる線状体が交互に並ぶものであり、隣り合った線状体は互いに密着し、一体化している。この中間層を形成する2つの異なる線状体は、一方が電極材料又は電解質材料であり、他方は電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料、又は電極材料と電解質材料の共相であるから、電解質層と電極層に発生する歪の差等を中間層全体で緩和することができる。
例えば、空気極の電極材料にLaMnO3、電解質にYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いた場合には、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料とは、例えばLaよりもイオン半径が小さい元素を固溶させたLa1−xCaxMnO3を用いることができる。なお、ここで中間の熱膨張係数とは、10.2〜11.2×10−6K−1の範囲を意味する。
【0015】
また、同様に、空気極の電極材料としてLaMnO3、電解質としてYSZ(イットリア安定化ジルコニア)を用いた場合に、電極材料と電解質材料の共相とはLaMnO3とYSZの混合物となる。すなわち共相とは電極材料と電解質材料の混合物を意味する。
【0016】
中間層をこのような材料構成とすることによって、例えば電解質層に隣接した中間層が電極材料からなる第1の線状体を有する燃料電池が形成された場合、あるいは電極層に隣接した中間層が電解質材料からなる第3の線状体を有する燃料電池が形成された場合、異種材料同士の接合部が存在して熱膨張係数差による歪や応力の発生が懸念される。しかし、異種材料同士の接触面積が小さくなるため、中間層全体と電極層または電解質層全体の歪差は小さく、剥離発生が低減することになる。
また、例えば電解質層あるいは電極層に隣接した中間層が電解質材料と電極材料の共相又は電解質材料と電極材料の中間の熱膨張係数を持つ第2の線状体を有する燃料電池が形成された場合、異種材料ではあるものの電解質層あるいは電極層と中間層の熱膨張係数が近いため、これらの線状体が電解質層あるいは電極層と接する部位での剥離が起こりにくくなる。
【0017】
この中間層を複数層積層させた場合、2種類の線状体によって形成される縞の方向が隣接する中間層同士で互いに異なるものとなるように設置することが望ましい。このような構成とすることで歪の方向が一方向に集中するのを防止して応力を分散することができる。
すなわち、隣接する中間層の縞方向が同じ場合は、それだけ厚い中間層を設置した場合と同じことになり、熱膨張率が一定でも厚いものの方がそれだけ層間に発生する応力が大きくなってしまうことから、熱応力分散効果をより効率的に発生させるには、出力低下などの影響を与えない範囲内で、適当数の中間層を設置し、隣接した中間層における縞の方向が異なるようにする方がより好ましいことになる。
【0018】
このとき、各中間層の縞方向をランダムに異ならせるよりも、その層数に応じた規則的な配置をすることによって中間層部全体、すなわち燃料電池セル全体で応力分散効果を発生させるような配置が望ましい。例えば、中間層を3層設ける場合、1層目に対して2層目の縞方向を60°だけ交叉させ、さらに3層目は1層目に対して120°(2層目に対しては60°)だけ交叉させるように設置すると、全体では正六角形の頂点方向に縞方向が向いたように設置されることとなり、応力を効果的に分散させることができる。この他、同様に正八角形等の正多角形状に配置しても同様な効果が得られ、特に、中間層を複数設置する場合には、縞方向を90°ずつ交叉させて積層することにより、積層数を増加させることなく効果的な応力分散が可能になる。
【0019】
線状体の体積比の制御は、等しい膜厚で積層した場合は線状体の幅を調整することによって行うことができる。電極層に近い層ほど第1の線状体の体積比が高い場合、電極層直上に位置する縞状構造中間層における電極層と等しい熱膨張係数を持つ部位の体積が大きいことになるため、直上の縞状構造層全体の体積膨張と電極層の体積膨張の差が小さくなる。その結果、電極層と直上の縞状構造層の熱膨張による剥離を防ぐことができる。また、電極層から離れた層ほど第1の線状体の体積比を低くすることにより、積層構造における隣り合った層間の体積膨張差を低減することができ、層間剥離を効果的に防止することができる。
【0020】
また、電解質層に近い層ほど第3の線状体の体積比が高い場合、電解質層直上の縞状構造中間層において、電解質層と等しい熱膨張係数を持つ部位の体積が大きいことになるため、直上の縞状構造層全体の体積膨張と電解質層の体積膨張の差が小さくなる。その結果、電解質層と直上の縞状構造層の熱膨張による剥離を防ぐことができる。また、電解質層から離れた層ほど第3の線状体の体積比を低くすることにより、積層構造における隣り合った層間の体積膨張差を低減することができ、層間剥離を防ぐことができる。
【0021】
一方、電極層と電解質層の熱膨張係数差が大きい場合、熱膨張係数が中間の材料を採用したとしても、その係数差は大きいために剥離が発生する可能性がある。したがって、このような場合は、電極層ならびに電解質層に対してそれぞれ中間層を形成し、熱膨張係数差を徐々に変化させることが望ましい。第1と第2の線状体で構成される第1の中間層と、第3と第2の線状体で構成される第2の中間層の両方を用いた場合には、層全体の体積膨張を電極と電解質の間で徐々に変化させることができ、また異なる方向で積層することにより応力を分散させることができることから、剥離防止にさらに有効である。
なお、電解質と電極材料の線状体が接することとなり異種材料どうしの接合部が存在して熱膨張係数差による歪や応力の発生が懸念されるが、異種材料同士の接触面積が小さいため、中間層全体と電極層または電解質層全体の歪差は小さく、剥離発生を低減することができる。さらには隣接する電解質材料と電極材料の共相または中間の熱膨張係数を持つ材料で熱膨張差が軽減されるため、剥離が発生することはない。
【0022】
本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおいては、上記したように、固体電解質として安定化ジルコニア、セリア含有固溶体、ランタンガレートなど、空気極として、LSM(LaSrMnO)、LSC(LaSrCoO)、Ag、Ptなど、燃料極としてはNi、Niサーメットなどを用いることができるが、これらのみに限定されるものではない。
【0023】
なお、本発明の固体酸化物形燃料電池セルにおいては、電解質膜厚を0.5μm〜5mmとし、線状体の線幅は0.5μm〜1mm、線状体から成る縞状構造を有する中間層の厚さは0.5μm〜1mmとすることが望ましく、また、第1の線状体と第2の線状体から成る第1の中間層、及び第3の線状体と第2の線状体から成る第2の中間層における線幅比は、それぞれ10〜90%とすることが望ましい。
【0024】
これら中間層の縞状構造は、縞状のマスクを通じて電極材料または電解質材料の成膜を行うことにより基板上に縞状体を形成し、その上から電極材料と電解質材料の共相、または電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料を全面成膜することにより、初段の縞状構造の間隔を埋めることができる。その後、研磨もしくはエッチングを行うことにより、表面が平滑な縞状構造層が形成される。基板に対するマスクの角度を変え、これらの手順を繰り返すことにより、互いに異なる角度を持つ縞状構造を備えた中間層を形成することができる。
【0025】
これらの電解質、電極、電解質と電極の共相、及び電解質と電極の中間の熱膨張係数を持つ材料の線状構造層の形成方法としては、湿式成膜法と乾式成膜法がある。湿式製膜法には、例えばスラリーコーティング法やテープキャスティング法があり、乾式成膜法には、例えばスパッタリング法、電子ビーム蒸着法、プラズマスプレー法、イオンプレーティング法、フレームスプレー法、プラズマジェットトーチ法、EVD法、CVD法などがある。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されることはない。
【0027】
(実施例1)
図1は、本発明の第1の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものである。
すなわち、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電解質材料であるYSZを所定間隔を隔てた線状に成膜した(第3の線状体C)。その後、上記マスクを除去し、空気極として機能するLaMnO3とYSZを共スパッタすることによって、YSZから成る第3の線状体Cの間にLaMnO3とYSZの共相を成膜し(第2の線状体B)、さらに表面を研磨することによって第2の線状体Bと第3の線状体Cとの縞状構造を有する中間層3を形成した。
そして、その上からLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。これらのプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成る縞状構造を備えた中間層3が介在した構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0028】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行った結果、中間層を設けない場合に比べて10%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0029】
(実施例2)
図2は、本発明の第2の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものである。
まず、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電解質材料であるYSZを線状に成膜した(第3の線状体C)。その後、上記マスクを除去し、空気極であるLaMnO3と電解質であるYSZの中間の熱膨張係数を有するLa0.8Ca0.2MnO3をスパッタ成膜し(第2の線状体B)、表面を研磨することによって縞状構造を有する中間層3を形成した。
そして、その上からLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料の中間の熱膨張係数を有する第2の線状体Bから成る縞状構造を備えた中間層3が介在した構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0030】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行った結果、中間層を設けない場合に比べて10%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0031】
(実施例3)
図3は、本発明の第3の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものである。
まず、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電極材料であるLaMnO3を線状に成膜した(第1の線状体A)。その後、上記マスクを除去し、空気極として機能するLaMnO3とYSZを共スパッタすることにより、LaMnO3から成る第1の線状体Aの間にLaMnO3とYSZの共相を成膜し(第2の線状体B)、さらに表面を研磨することによって第1の線状体Aと第2の線状体Bによる縞状構造を有する中間層2を形成した。
そして、その上からLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に電極材料から成る第1の線状体Aと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成る縞状構造を備えた中間層2が介在した構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0032】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、中間層を設けてないセルに比べて10%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0033】
(実施例4)
図4は、本発明の第4の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける3層からなる中間層の累層状況を示すものである。
すなわち、まず、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電解質材料であるYSZを線状に成膜した(第3の線状体C)。その後、上記マスクを除去し、LaMnO3とYSZの共スパッタによりLaMnO3とYSZの共相を成膜し(第2の線状体B)、研磨をすることにより縞状構造中間層の第1層3aを形成した。次に、マスクを60度回転させ、上記同様にマスクによるYSZから成る第3の線状体Cの線状成膜、マスクを除去したLaMnO3とYSZの共相から成る第2の線状体Bの成膜、及び研磨のプロセスにより縞状構造中間層の第2層3bを形成した。そして、マスクをさらに60度回転して同様のプロセスを繰り返し、縞状構造中間層の第3層3cを形成した。螺旋状に積層された縞状構造層を形成した。
そして、その上からLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に、電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成る縞状構造を備えた3層から成る中間層3a,3b及び3cが60度ずつ回転させた状態に積層された構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0034】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、中間層を設けていないセルに比べて20%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0035】
(実施例5)
図5は、本発明の第5の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものである。
すなわち、電解質として機能するYSZ層1の上に金属製マスクを設置し、電解質材料であるYSZからなる第3の線状体Cを所定間隔を隔てた線状に成膜した。その後、上記マスクを除去し、空気極として機能するLaMnO3とYSZを共スパッタすることによって、YSZから成る第3の線状体Cの間にLaMnO3とYSZの共相を成膜し(第2の線状体B)、さらに表面を研磨することにより第2の線状体Bと第3の線状体Cとの縞状構造を有する中間層の第1層3aを形成した。
次に、第1層で利用したマスクよりも開口部の狭いマスクを、その開口部の方向が第1層3aの縞方向と直交するように設置し、第1層3aと同様の要領によって、YSZからなる第3の線状体Cの体積率が上記第1層3aよりも低い中間層の第2層3bを形成した。次いで、さらに狭い開口部を持つマスクを第2層3bの縞方向と直交するように設置し、第1層と同様の手順によってYSZからなる第3の線状体Cの体積率が上記第2層3bよりもさらに低い中間層の第3層3cを形成した。そして、最後に中間層の第3層3cの上にLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。
【0036】
以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に、電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから構成される縞状構造を有し、第3の線状体Cの体積率が電解質層から離れるにつれて小さくなる第1層3a、第2層3b及び第3層3cから成る中間層を備えた構造を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0037】
このような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、中間層を設けていないセルに比べて20%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0038】
(実施例6)
図6は、本発明の第6の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の界面構造を示すものであって、当該実施例においては、空気極側に位置し、電極材料から成る第1の線状体Aと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bとの縞状構造を備えた3層から成る第1の中間層2と、電解質層側に位置し、電解質材料から成る第3の線状体Cと上記第2の線状体Bとの縞状構造を備えた3層から成る第2の中間層3との都合6層からなる中間層を有している。
【0039】
すなわち、まず電解質であるYSZ層1の上に、上記実施例5と同様の要領によって第1層3a、第2層3b及び第3層3cから成る第2の中間層3を形成した。そして当該第3層3cの上に、最も開口部の狭いマスクを、その開口部の方向が第3層3cの縞方向と直交するように設置し、電極材料であるLaMnO3から成る第1の線状体Aを線状に形成したのち、上記マスクを除去し、LaMnO3とYSZを共スパッタすることにより、第1の線状体Aの間にLaMnO3とYSZの共相である第2の線状体Bを成膜し、さらに表面を研磨することによって第1の線状体Aと第2の線状体Bによる縞状構造を有する第4層2a(第1の中間層2の第1層2a)を形成した。続いて、中間サイズの開口部を有するマスクを、その開口部の方向が第4層2aの縞方向と直交するように設置し、第4層2aと同様の要領によって、LaMnO3から成る第1の線状体Aの体積率が上記第4層2aよりも高い第5層2b(第1の中間層2の第2層2b)を形成し、次いで、最も広い開口部を持つマスクをこの第5層2bの縞方向と直交するように設置し、同様の要領によって第1の線状体Aの体積率が第5層2bよりもさらに高い第6層2c(第1の中間層2の第3層2c)を形成した。そして、最後に第6層2cの上にLaMnO3を成膜することによって空気極層4を形成した。
【0040】
以上のプロセスにより、電解質層1と電極層4の間に、電極材料から成る第1の線状体Aと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成り、第1の線状体Aの体積率が電極層4に近づくにつれて大きくなる第1層2a、第2層2b及び第3層2cから成る第1の中間層2と、電解質材料から成る第3の線状体Cと電解質材料と電極材料との共相から成る第2の線状体Bから成り、第3の線状体Cの体積率が電解質層1から離れるにつれて小さくなる第1層3a、第2層3b及び第3層3cから成る第2の中間層3とを備えた中間層を有する固体酸化物形燃料電池セルが得られた。
【0041】
当該実施例6の燃料電池セルにおけるこのような構造は、電子顕微鏡を用いて割断面を観察することによって確認できた。このようにして得られた燃料電池セルに対して、室温から1000℃まで昇降温を繰り返す熱衝撃試験を行ったところ、実施例1の燃料電池セルに比べて50%だけ耐剥離性が向上することが確認された。
【0042】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係わる固体酸化物形燃料電池セルは、固体酸化物から成る電解質層を二つの電極層で狭持した積層構造を有し、電極層と電解質層の間に、電極材料で構成される第1の線状体と電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体とが交互に配列された縞状構造を有する第1の中間層、若しくは電解質材料で構成される第3の線状体と上記第2の線状体とが交互に配列された縞状構造を有する第2の中間層が少なくとも1層介在している構成、あるいは上記第1の中間層が電極層の側に、第2の中間層が電解質層の側にそれぞれ少なくとも1層介在している構成としたものであるから、電解質層と電極層の界面における剥離や、電解質層及び電極層の割れを防止することができ、熱耐久性や耐熱衝撃性を大幅に向上させることができる。したがって、起動停止が迅速かつ頻繁に行われることになる自動車等の移動体搭載用固体酸化物形燃料電池として極めて好適なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおける電解質層と空気極の間に位置する中間層の概略構造を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおける中間層の概略構造を示す斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおける中間層の概略構造を示す斜視図である。
【図4】本発明の第4の実施例としての固体酸化物形燃料電池セルにおける中間層の累層構造を透視的に示す説明図である。
【図5】本発明の第5の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおいて複数層からなる中間層の概略構造を示す斜視図である。
【図6】本発明の第6の実施例に係わる固体酸化物形燃料電池セルにおいて複数層からなる中間層の概略構造を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 電解質層
2 (第1の)中間層
2a 第1層
2b 第2層
2c 第3層
3 (第2の)中間層
3a 第1層
3b 第2層
3c 第3層
4 空気極層(電極層)
Claims (9)
- 固体酸化物から成る電解質層を一方の電極層と他方の電極層で狭持した積層構造を有する固体酸化物形燃料電池セルにおいて、
電極層と電解質層の間に少なくとも1層の中間層が設けてあり、該中間層は電極材料で構成される第1の線状体と、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体が積層面方向に交互に配列された縞状構造を備えていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。 - 電極層と電解質層の間に上記中間層が複数層介在し、隣接する中間層同士の縞方向が互いに異なる向きに積層されていることを特徴とする請求項1に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
- 電極層に近い層ほど第1の線状体の体積比が高いことを特徴とする請求項2に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
- 固体電解質から成る電解質層を一方の電極層と他方の電極層で狭持した積層構造を有する固体酸化物形燃料電池セルにおいて、
電極層と電解質層の間に少なくとも1層の中間層が設けてあり、該中間層は電解質材料で構成される第3の線状体と、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と固体電解質材料との共相から成る第2の線状体が積層面方向に交互に配列された縞状構造を備えていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。 - 電極層と電解質層の間に上記中間層が複数層介在し、隣接する中間層同士の縞方向が互いに異なる向きに積層されていることを特徴とする請求項4に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
- 電解質層に近い層ほど第3の線状体の体積比が高いことを特徴とする請求項5に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
- 固体酸化物から成る電解質層を一方の電極層と他方の電極層で狭持した積層構造を有する固体酸化物形燃料電池セルにおいて、
電極層と電解質層の間に、電極層の側に位置する第1の中間層と、電解質層の側に位置する第2の中間層がそれぞれ少なくとも1層設けてあり、
上記第1の中間層は電極材料で構成される第1の線状体と、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体が積層面方向に交互に配列された縞状構造を備え、
上記第2の中間層は電解質材料で構成される第3の線状体と、電極材料と電解質材料の中間の熱膨張係数を持つ材料又は電極材料と電解質材料との共相から成る第2の線状体が積層面方向に交互に配列された縞状構造を備えていることを特徴とする固体酸化物形燃料電池セル。 - 電極層と電解質層の間に上記第1及び第2の中間層がそれぞれ複数層介在し、隣接する中間層同士の縞方向が互いに異なる向きに積層されていることを特徴とする請求項7に記載の固体酸化物形燃料電池セル。
- 第1の中間層は電極層に近い層ほど第1の線状体の体積比が高く、第2の中間層は電解質層に近い層ほど第3の線状体の体積比が高いことを特徴とする請求項8に記載の固体酸化物形燃料電池用セル。
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