JP2004134320A - 塗装電線の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】塗料Eを入れた非導電性材料からなる塗料槽3を高周波誘導加熱コイル5内に配置し、線材1を塗料槽3内の塗料E中を走行させつつ高周波誘導コイル5により加熱し、塗料槽3の塗料Eを走行する線材1表面の塗料E並びに該線材1外周の塗料Eを硬化乃至は溶剤揮発の進行した高濃度、高粘度の増粘状態の増粘塗膜層FAに形成させた後、増粘塗膜層FAの膜厚を調整する膜厚調整具4と加熱硬化炉7を通し、線材1外周に硬化塗膜層FBを形成させる。
【選択図】 図1
Description
【産業上の利用分野】
本発明は、塗装電線の製造方法に関するもので、特に均一な厚さの塗膜層を形成するための塗装電線の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の一般的な塗装電線の製造方法では、図3の製造工程側面説明図に図示するように、ボビン等の線材供線装置22から繰出された線材21は、塗料槽23にて塗料を塗布され、塗料槽23直後に設けたダイスやフェルト等の塗料絞り具24にて線材21表面の塗布塗料Eを略均一厚さに扱かれ、塗料塗布された線材21は電熱炉や熱風循環炉等の高温の焼付炉25に導入され、炉25内で線材21に塗布された塗料Eを反応硬化させながら塗料E中の溶剤を揮発除去した硬化塗膜層Fが形成されて焼付炉25から導出される。導出された線材21は再び塗料槽23と塗料絞り具24および焼付炉25を通過させる工程を複数回繰り返され、線材21表面に所要厚さの硬化塗膜層Fが形成された後、キャプスタン等の引取装置26により引取られボビン等の巻取装置27に巻きとられ、塗装電線30が製造されていた。また、既に塗装された線材21Aの表面に異種の硬化塗膜層F、例えば融着塗膜層や滑性塗膜層等を形成させる場合も同様の工程で行われていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の塗装電線の製造方法では、線材21の表面に硬化塗膜層Fを形成させるのに、先ず塗料槽23にて線材21表面に塗料Eを塗布し、次にダイスやフェルト等の塗料絞り具24でこの線材21表面の塗布塗料Eを略均一厚さに絞り、その後高温の焼付炉25に導入し線材21表面の塗料層の反応硬化と塗料中の溶剤揮発除去を行って硬化塗膜層Fを形成する方法であった。かかる従来の塗装電線の製造方法の場合、焼付炉25内が高温雰囲気に設定されるので焼付炉25の線材導入口25A付近も高温雰囲気となる。このため、焼付炉25からの熱で塗料槽23内の塗料E或いは塗料絞り具24の塗料Eが影響されることのないよう、塗料槽23と塗料絞り具24は焼付炉25の線材導入口25Aから相当程度の間隔L(通常約40cm程度)を隔てて配置する必要があった。このように塗料塗布から塗料硬化までの間に長い距離があり、そのうえ線材21表面に塗布された塗料Eが溶剤を多く含有したままの低粘度の塗料であるため、折角、塗料槽23と塗料絞り具24にて線材21表面に均一に塗料層を塗布しても、塗料塗布層は焼付炉25内で反応硬化し硬化塗膜層Fを形成するまでの間に、線材21表面で流動し、形成される硬化塗膜層Fが偏肉するという問題を生じていた。特に、線材断面が平角形状のような場合に硬化塗膜層Fの偏肉が顕著となっていた。図4は従来の平角塗装電線30の拡大断面図で、硬化塗膜層Fは平角塗装電線エッジ部Yで薄く(硬化塗膜層厚さb1)、平角塗装電線平坦部Xで厚く(硬化塗膜層厚さa1)形成される。この硬化塗膜層Fの偏肉は、平角線材21の塗布塗料層の塗料Eが低粘度であるため、塗布塗料層が反応硬化する前に表面張力により平角線材エッジ部Yから平角線材平坦部Xへと流動現象を生ずるためと考えられる。
【0004】
このような線材の硬化塗膜層の偏肉は、薄い硬化塗膜層部分での絶縁破壊電圧の低下をもたらし、電子機器の信頼性を著しく損なうものとなっていた。近年、電子機器は精密性を増し、一層の絶縁破壊電圧の向上が強く求められるようになってきており、絶縁破壊電圧の低下を引き起こす線材の硬化塗膜層の偏肉の改善は常に検討課題となっていた。
【0005】
このようなことから、特に大きな偏肉を生じ勝ちな平角塗装電線ではその対策手段として、断面円形状の裸線材上に上述の塗装電線製造方法により丸形塗装電線を形成し、この丸形塗装電線を圧延機により断面平角形状の平角塗装電線に圧延成形し、この後、この平角塗装電線上に上述の塗装電線製造方法により再度硬化塗膜層を施し、平角塗装電線を製造するという方法がとられていた。しかし、かかる平角塗装電線製造方法では、硬化塗膜層の偏肉は改善されるものの、塗膜焼付工程→圧延工程→補強塗膜焼付工程と、製造工程数が増え、製造コストが増大する難点があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、硬化塗膜層に生ずる偏肉を防止することのできる塗装電線の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、第1の観点では、本発明は、塗料を入れた非導電性材料からなる塗料槽を高周波誘導加熱コイル内に配置し、線材を前記塗料槽内の塗料中を走行させつつ前記高周波誘導加熱コイルにより加熱し、前記塗料槽の塗料中を走行する加熱線材表面の塗料並びに加熱線材外周の塗料を硬化乃至は溶剤揮発の進行した高濃度、高粘度の増粘状態の増粘塗膜層に形成させた後、前記線材を前記増粘塗膜層の膜厚を調整する塗膜厚調整具と加熱硬化炉を通過させ、前記線材外周に硬化塗膜層を形成させることを特徴とする塗装電線の製造方法を提供する。
【0008】
第2の観点では、本発明は、塗装線材を前記高周波誘導加熱コイル内に配置した塗料槽の塗料中を走行させつつ高周波誘導加熱コイルにより加熱し、前記塗料槽内にて前記走行する塗装線材の塗膜層表面の塗料並びに塗装線材外周の塗料を硬化乃至は溶剤揮発の進行した高濃度、高粘度の増粘状態の増粘塗膜層に形成させた後、前記塗装線材を前記増粘塗膜層の膜厚を調整する塗膜厚調整具と加熱硬化炉を通過させ、前記塗装線材外周に異種の硬化塗膜層を形成させることを特徴とする塗装電線の製造方法を提供する。
【0009】
第3の観点では、本発明は、上記塗装電線の製造方法において、前記加熱硬化炉が高周波誘導加熱炉であること特徴とする塗装電線の製造方法を提供する。
【0010】
第4の観点では、本発明は、上記塗装電線の製造方法において、前記加熱硬化炉が熱風循環炉若しくは電熱炉であること特徴とする塗装電線の製造方法を提供する。
【0011】
第5の観点では、本発明は、上記塗装電線の製造方法において、前記線材若しくは前記塗装線材の断面が円形状であること特徴とする塗装電線の製造方法を提供する。
【0012】
第6の観点では、本発明は、上記塗装電線の製造方法において、前記線材若しくは前記塗装線材の断面が平角形状、四角形状または六角形状の角状線材であることを特徴とする塗装電線の製造方法を提供する。
【0013】
【作用】
上記第1の観点による本発明の塗装電線の製造方法では、塗料を入れた塗料槽は高周波誘導加熱コイル内に配置され、線材はこの塗料槽内の塗料中に導入される。かかる構成により、線材は塗料内にて高周波誘導加熱コイルにより直接加熱され、塗料内を走行している間に、加熱線材表面と直接接触する塗料は硬化し、加熱線材の外周塗料は線材表面からの距離に従って溶剤の揮発除去が順次減少した高濃度、高粘度の増粘状態の増粘塗膜層が形成される。この増粘塗膜層の形成された線材を塗料槽から導出後、塗膜厚調整具と加熱硬化炉を通過させることにより、線材外周には完全硬化した所要の塗膜厚を有する硬化塗膜層が形成される。このように、塗料槽から導出されたとき、線材外周には硬化、半硬化乃至は溶剤揮発の進行した高濃度、高粘度の増粘塗膜層が形成される。従って、従来の製造方法の線材表面に塗布された低粘度のままの塗料塗布層と異なり、増粘塗膜層は完全硬化するまでの間に表面張力で流動化するという現象を生ずることがない。この結果、塗料の流動現象に起因する塗膜層の偏肉発生が防止され、均一な厚さの硬化塗膜層を有する塗装電線が製造される。
【0014】
上記第2の観点による本発明の塗装電線の製造方法では、既に塗膜層を設けた塗装線材上に更に異種の硬化塗膜層を施す。塗装線材を高周波誘導加熱コイル内の 塗料槽の塗料中を走行させることにより、上記第1の観点の作用と全く同様、塗料槽から導出された塗装線材表面並びに塗装線材外周には硬化、半硬化乃至は溶剤揮発の進行した高濃度、高粘度の増粘状態の増粘塗膜層が形成される。この増粘塗膜層は、前述のように、完全硬化するまでの間に表面張力で流動化することがないので、塗装線材外周には均一な異種の硬化塗膜層が形成させる。このように、第2の観点の塗装電線の製造方法によれば、塗膜層のダブルコーテングも可能であり、例えば絶縁塗膜層上に異種の絶縁塗膜層或いは融着塗膜層や滑性塗膜層等の機能性塗膜層を偏肉なく施すことができるようなる。
【0015】
上記第3の観点による本発明の塗装電線の製造方法では、加熱硬化炉が高周波誘導加熱炉からなる。塗料槽の加熱に加え硬化炉の加熱に高周波誘導加熱方式を用いれば、塗料槽と硬化炉の高周波誘導加熱コイルに通電することにより、直ちに線材の塗装加工を行うことができるようになる。従って、従来の塗装電線の製造方法のように、焼付炉の炉温を長時間かけて所要の高温まで昇温させることも非製造時にも炉温を維持させることも必要なくなり、電力消費量が大幅に節減され、また製造立ち上げ時間が大幅に短縮される。この結果、製造エネルギー効率が向上し、環境保全、エネルギー資源の負荷低減が図られるようになる。
【0016】
上記第4の観点による本発明の塗装電線の製造方法では、加熱硬化炉が熱風循環炉または電熱炉からなる。加熱硬化炉に既存の熱風循環炉や電熱炉を用い、この既存の熱風循環炉や電熱炉の線材導入口の手前に高周波誘導加熱コイル内に配置された塗料槽を設けるだけで、本発明の塗装電線の製造方法の実施が可能となる。従って、設備投資コストの節減が図れる利点がある。
【0017】
上記第5の観点による本発明の塗装電線の製造方法では、線材或いは塗装線材が断面円形状の丸形線材からなる。丸形線材の場合、特に厚い塗膜層を形成させようとすると塗布した塗料層がたれて偏り、偏肉を生じ易い。このため、従来、厚い塗膜層を形成させるときは、薄い塗膜層を何回も繰り返し形成させ所要の塗膜厚さとしていたため、塗装工程数が多くなる欠点があった。しかし、本発明の製造方法によれば、線材外周には塗料中で増粘塗膜層が形成されるので、線材外周に厚い増粘塗膜層を形成した場合にも増粘塗膜層がたれを生ずることがなく、偏肉のない硬化塗膜層が形成される。また、塗料槽を加熱する高周波誘導加熱コイルの通電出力を調整することにより、増粘塗膜層の膜厚の調整が可能なので、1度に厚い塗膜層を偏肉なく比較的容易に形成させることができる。
【0018】
上記第6の観点による本発明の塗装電線の製造方法では、線材或いは塗装線材が断面平角形状、四角形状または六角形状の角状形状からなる。前述のように従来の製造方法の場合、線材表面に塗布された塗料層は塗料粘度が低いため、断面平角形状の線材では、塗料層が表面張力により平角状線材エッジ部から平角状線材平坦部へと流動し、平角状線材エッジ部の硬化塗膜層が薄くなる偏肉現象を生じていた。また、線材が四角形状或いは六角形状等の角状線材になると、線材表面に塗布した塗料層の角状線材エッジ部から角状線材平坦部へと流動化現象が一層酷くなり、角状線材表面に塗膜層を形成させることは困難であった。しかし、本発明の製造方法では、塗料槽中で角状線材外周に硬化乃至は高濃度、高粘度の増粘塗膜層が形成される。増粘塗膜層は硬化乃至は溶剤揮発の進行した半硬化乃至は高濃度、高粘度状態となっているので、増粘塗膜層が硬化塗膜層を形成するまでの間に流動化することがない。この結果、平角形状線材はもとより、従来塗膜層の形成が難しかった四角形状、六角形状等の角状線材の場合であっても、線材外周形状に沿って均一な増粘塗膜層が形成され、硬化塗膜層厚さが角状線材エッジ部で薄く、角状線材平坦部で厚くなる偏肉現象を生ずることがなくなる。従って、平角線材の場合、従来のように、丸形塗装電線を平角形状に圧延加工し、更にこの圧延加工角状塗装線材の上に硬化塗膜層を施すといった面倒な工程によることなく、偏肉の少ない硬化塗膜層を有する平角塗装電線が得られる。更に、従来塗膜層形成の難しかった四角形状或いは六角形状等の角状線材の場合であっても、均一な硬化塗膜層を有する角状塗装電線の製造が可能となり、角状塗装電線の新たな用途拡大が期待されるようになった。
【0019】
【実施例】
以下、本発明の塗装電線の製造方法を一実施例に基づき説明する。図1は本発明の塗装電線の製造工程を示す側面説明図であり、図2は本発明の製造方法により製造された平角塗装電線の拡大断面図である。なお、これにより本発明が限定されるものではない。
【0020】
図1に示すように、本発明の塗装電線の製造方法の製造工程は、高周波誘導加熱コイル5と、高周波誘導加熱コイル5に高周波電力を供給する高周波電源6と、高周波誘導加熱コイル5内に配置された塗料Eを入れた塗料槽3と、塗料槽3中で線材1外周に形成された増粘塗膜層FAの膜厚を調整する塗膜厚調整具4と、線材1外周に形成された増粘塗膜層FAを完全硬化させる加熱硬化炉7とに特徴を有し、その他は通常使用されるボビン等の線材供線装置2と、キャプスタン等の塗装電線10の引取装置8と、塗装電線10を巻き取る巻取装置9とである。図1に沿い製造工程を説明すると、供線装置2から繰出された線材1は、高周波誘導加熱コイル5内に配置された塗料槽3に導入される。このとき、高周波誘導加熱コイル5は高周波電源6から所要の高周波電力が通電された状態となっていて、塗料槽3に導入された線材1は塗料槽3内の塗料E中で高周波誘導加熱コイル5により直ちに誘導加熱される。この結果、加熱された線材1の表面に接する塗料Eは線材1からの熱で反応硬化し、線材1の外周塗料Eは線材1表面から離れるにつれ線材1から受ける熱量が低下するので、線材1表面から離れるに従って塗料E中の溶剤揮発量が順次低下し、半硬化状態乃至は高濃度、高粘度の増粘状態の増粘塗膜層FAが形成される。増粘塗膜層FAの形成された線材1は、塗料槽3の線材導出口3Bに設けた塗膜厚調整具4により増粘塗膜層FAの膜厚が調整なされて塗料槽3から導出される。塗料槽3から導出された線材1は加熱硬化炉7を通過することにより、線材1に形成された増粘塗膜層FAが完全硬化し、線材1表面に所要膜厚の硬化塗膜層FBが形成される。加熱硬化炉7から導出された塗装電線10は、引取装置8により引き取られ巻取装置9に巻き取られる。次に、各部構成につき説明する。塗料槽3には、線材導入口3Aに塗料槽3内の塗料Eが漏れ出さないよう、線材1の通過可能な内寸を有するスリット状、角状或いは円形状の耐熱性封止部材3Cが設けられ、塗料槽3の線材導出口3Bに前述の塗膜厚調整具4が設けられる。塗膜厚調整具4は、線材の寸法形状、形成する塗膜厚さにより選択され、例えば平角線ではスリット状ダイス、丸線では円形状ダイスが用いられ、ダイス内寸法は硬化塗膜層FBの仕上り厚さと増粘塗膜層FAの引落し率を考慮して設定される。また、塗料槽3の塗料Eの液面上に空間部3Dが設けられ、増粘塗膜層FA形成時に揮散する溶剤ガスを空間部3Dに収集し塗料槽3上面に設けた溶剤ガス排出穴4Eから溶剤ガス燃焼処理装置(図示せず)を経由して無害ガスとして大気へ放出するよう構成する。加熱硬化炉7には、高周波誘導加熱炉或いは熱風循環炉、電熱炉が使用される。なお、図1の製造工程の側面説明図では、塗料槽3と加熱硬化炉7が横型に配置された構成例を示したが、塗料槽3と加熱硬化炉7は縦型にタンデムに配置構成してもよい。
【0021】
次に、本発明の塗装電線の製造方法による製造実施例を説明する。
【0022】
〔実施例1〕
線材1には外径0.4mmの丸形軟銅線を用い、塗料Eにはポリイミド塗料を用いた。塗料槽3には内径4mm、長さ400mmのガラス製パイプを用い、塗料槽3上面に複数の溶剤ガス排出穴3Eを設け、塗料槽3の上面空間部3Dに集まる溶剤ガスを溶剤ガス排出穴3Eから溶剤ガス燃焼処理装置(図示せず)へ排出するよう構成した。また、塗料槽3の線材導入口3Aには封止部材3Cとして線材1の外径より若干大きい内径を有する耐熱材の円形ダイス3Cを配置し、塗料槽3の線材導出口3Bには内径0.5mmの耐熱性の円形状塗膜厚調整具4を配置した。加熱硬化炉7には炉長1.2mm、炉温400°Cの電熱炉を用いた。ポリイミド塗料Eを約半分程充たした塗料槽3を高周波誘導加熱コイル4の中央部に配置し、高周波誘導加熱コイル4に高周波電力を通電した状態で丸形線材1を線速2m/minで塗料槽3のポリイミド塗料E中を通過させ増粘塗膜層FAを形成せしめた後、塗膜厚調整具4から導出し、加熱硬化炉7を通過させ、平均硬化塗膜層FB厚さ5μmの丸形ポリイミド塗装電線10を製造した。
【0023】
〔実施例2〕
線材1に厚さ0.1mm、幅1.6mmの平角軟銅線を用い、塗料Eにポリイミド塗料を用いた。塗料槽3には実施例1と同じ寸法、構造のガラス製パイプを用い、線材導入口3Aに線材1の外寸より若干大きい内寸の耐熱スリットダイス3Cを封止部材3Cとして配置し、線材導出口3Bには内寸縦0.2mm×幅2.0mmの耐熱材からなるスリット状の塗膜厚調整具4を配置した。加熱硬化炉7には、実施例1と同じ炉長1.2mm、炉温400°Cの電熱炉を用いた。ポリイミド塗料Eを入れた塗料槽3を高周波誘導加熱コイル4の中央部に配置し、高周波誘導加熱コイル4に高周波電力を通電した状態で、平角線材1を線速2m/minで塗料槽3のポリイミド塗料E中を通過させ増粘塗膜層FAを形成せしめた後、塗膜厚調整具4から導出し、加熱硬化炉7を通過させ、平均硬化塗膜層FB厚さ5μmの平角ポリイミド塗装電線10を製造した。
【0024】
〔比較例1〕
線材21に外径0.4mmの丸形軟銅線を用い、塗料Eにポリイミド塗料を用いた。焼付炉25には炉温440°Cに設定した炉長3mの熱風循環炉を用い、焼付炉25の線材導入口手前からL=40cmの位置にポリイミド塗料Eを充たした塗料槽23と円形状の塗料絞りダイス24を配置した。丸形線材21を線速20m/minで塗料槽23、塗料絞りダイス24と焼付炉25を通過させ硬化塗膜を形成せしめ、平均硬化塗膜層F厚さ5μmの丸形ポリイミド塗装電線30を製造した。
【0025】
〔比較例2〕
線材21に厚さ0.1mm、幅1.6mmの平角軟銅線を用い、塗料Eにポリイミド塗料を用いた。焼付炉25には、比較例1と同じく炉温440°Cの熱風循環炉を用い、焼付炉25の線材導入口手前からL=40cmの位置にポリイミド塗料Eを充たした塗料槽23と塗料絞りフェルト24を配置した。平角線材21を線速20m/minで塗料槽23、塗料絞りフェルト24と焼付炉25を通過させ硬化塗膜を形成せしめ、平均硬化塗膜層F厚さ5μmの平角ポリイミド塗装電線30を製造した。
【0026】
上記実施例1および実施例2と上記比較例1および比較例2について、絶縁破壊電圧と硬化塗膜層の偏肉度を比較測定した結果を表1に示す。絶縁破壊電圧は、実施例1と比較例1の丸形塗装電線についてはJISC3003に規定の2ケより法にて測定し、実施例2と比較例2の平角塗装電線についてはJISC3003に規定の金属シリンダ法にて測定した。また、偏肉度は、各塗装電線試料の拡大断面写真から硬化塗膜層厚さ寸法を測定して行った。実施例1と比較例1の丸形塗装電線試料については、試料塗装電線毎に最も厚い部分の硬化塗膜層厚さaを1したときの最も薄い部分の硬化塗膜層厚さbの比率を求め、その比a/bを偏肉度とした。実施例2と比較例2の平角塗装電線試料については、試料塗装電線毎に平角塗装電線平坦部Xの硬化塗膜層厚さa1を1としたときの平角塗装電線エッジ部Yの硬化塗膜層厚さb1の比率を求め、その比a1/b1を偏肉度とした。なお、絶縁破壊電圧および偏肉度の測定試料数は各々5本とし、表1の測定値は5本の平均値を示す。
【0027】
【表1】
【0028】
上記表1から明らかなように、本発明の塗装電線の製造方法によれば、硬化塗膜層の偏肉度が大幅に改善され、特に平角塗装電線の偏肉度の改善は顕著で、絶縁破壊電圧が大幅に向上していることが分かる。
【0029】
【発明の効果】
本発明の塗装電線の製造方法では、線材を塗料中で直接加熱し線材外周に増粘塗膜層を形成した後、加熱硬化炉を通し、この増粘塗膜層を完全硬化させて線材外周に硬化塗膜層を形成させる製造工程が採用される。増粘塗膜層は完全硬化するまでの間に流動化現象を生ずることがないので、形成される硬化塗膜層には偏肉の発生がなくなる。従来、偏肉の生じ易かった平角塗装電線の偏肉改善効果は特に顕著であり、更に加え従来製造の難しかった四角形状或いは六角形状等の角状塗装電線の製造も可能となり、角状塗装電線の新たなる用途拡大が期待される。また、線材の硬化塗膜層の偏肉が改善されたことにより、塗装電線の絶縁破壊電圧が向上し、高品質で信頼性に優れる塗装電線が得られるようになった。また、本発明の塗装電線の製造方法において、塗料槽および加熱硬化炉の加熱手段に高周波誘導加熱方式を用いれば、製造時の消費電力量が低減し、エネルギー効率が向上し、エネルギー資源、環境負荷の改善に寄与するところ大となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の塗装電線の製造方法の一実施態様を示す製造工程の側面説明図である。
【図2】本発明の塗装電線の製造方法により製造された平角塗装電線の拡大断面図である。
【図3】従来の塗装電線の製造方法を示す製造工程の側面説明図である。
【図4】従来の塗装電線の製造方法により製造された平角塗装電線の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 線材
2 供線装置
3 塗料槽
3A 塗料槽の線材導入口
3B 塗料槽の線材導出口
3C 塗料封止部材
3D 空間部
3E 溶剤ガス排出穴
4 塗膜厚調整具
5 高周波誘導加熱コイル
6 高周波電源
7 加熱硬化炉
8 引取装置
9 巻取装置
10 塗装電線
E 塗料
FA 増粘塗膜層
FB 硬化塗膜層
a 最も厚い部分の硬化塗膜層厚さ
b 最も薄い部分の硬化塗膜層厚さ
a1 平角線材平坦部の硬化塗膜層厚さ
b1 平角線材エッジ部の硬化塗膜層厚さ
X 平角線材平坦部
Y 平角線材エッジ部
Claims (6)
- 塗料を入れた非導電性材料からなる塗料槽を高周波誘導加熱コイル内に配置し、線材を前記塗料槽内の塗料中を走行させつつ前記高周波誘導加熱コイルにより加熱し、前記塗料槽の塗料中を走行する加熱線材表面の塗料並びに加熱線材外周の塗料を硬化乃至は溶剤揮発の進行した高濃度、高粘度の増粘状態の増粘塗膜層に形成させた後、前記線材を前記増粘塗膜層の膜厚を調整する塗膜厚調整具と加熱硬化炉を通過させ、前記線材外周に硬化塗膜層を形成させることを特徴とする塗装電線の製造方法。
- 塗装線材を前記高周波誘導加熱コイル内に配置した塗料槽の塗料中を走行させつつ高周波誘導加熱コイルにより加熱し、前記塗料槽内にて前記走行する塗装線材の塗膜層表面の塗料並びに塗装線材外周の塗料を硬化乃至は溶剤揮発の進行した高濃度、高粘度の増粘状態の増粘塗膜層に形成させた後、前記塗装線材を前記増粘塗膜層の膜厚を調整する塗膜厚調整具と加熱硬化炉を通過させ、前記塗装線材外周に異種の硬化塗膜層を形成させることを特徴とする塗装電線の製造方法。
- 前記加熱硬化炉が高周波誘導加熱炉であること特徴とする請求項1または請求項2記載の塗装電線の製造方法。
- 前記加熱硬化炉が熱風循環炉若しくは電熱炉であること特徴とする請求項1または請求項2記載の塗装電線の製造方法。
- 前記線材若しくは前記塗装線材の断面が円形状であること特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の塗装電線の製造方法。
- 前記線材若しくは前記塗装線材の断面が平角形状、四角形状または六角形状の角状線材であることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載の塗装電線の製造方法。
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JP2002300243A JP4197605B2 (ja) | 2002-10-15 | 2002-10-15 | 塗装電線の製造方法 |
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