JP2012195212A - コイル用平角絶縁導線素材とその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】長軸と短軸との長さの比が15以上で、短軸の長さが0.3mm〜1.2mmで、角部の曲率半径を精度良く形成でき、バリがなく、曲がりや反りも少なく、表面粗さが均質で良好であり、安定した樹脂被覆が得られるコイル用平角絶縁導線素材を製造する。
【解決手段】タフピッチ銅或いは無酸素銅からなり、矩形断面をなしている長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bが15以上であり、前記短軸の長さbが0.3mm〜1.2mmであり、前記矩形断面の四隅に形成される角部5に0.05mm〜0.60mmの曲率半径の面取りがなされ、前記角部の表面の算術平均粗さRaが0.05μm〜0.3μmであり、最大高さRzが0.5μm〜2.5μmであり、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比率(Rq/Rz)が0.06〜1.1である。
【選択図】図1

Description

本発明は、モーターやトランス等の電気機器用コイルに使用される平角絶縁導線素材とその製造方法、そのコイル用平角絶縁導線素材から得られたコイル用平角絶縁導線、そのコイル用平角絶縁導線により得られた電気機器用コイルに関する。
近年、電気自動車やハイブリッド車用に用いられている電動モーターは、円筒形のステータと、ステータの内側に配置された円柱形のローターと、ローターに接続されているシャフトとから構成されている。このステータは、内歯形状のステータコアの内歯(ティース)に平角導線を巻き付けて構成されていることが多い。
この平角導線は、コイル状に巻回した場合、断面形状が円形の導線より占積率が高く、機器等の小型化が望めるという点で、断面形状が平角状の導線の外周に絶縁層を設けた平角絶縁導線が使用されている。また、その製造方法としては、従来では、伸線加工、1方向の圧延加工、スリット加工、それらを合わせたものなどが適用されていたが、近年の電動モーターの高性能軽量化の流れの中で、平角絶縁導線にも精度が要求されている。
その要求を満足させるため、特許文献1では、対向する2組の圧延ロールによって形成されているカセットローラーダイス(CRD)の断面略四角状の空隙に断面形状が円状である導線を通し、その圧延ロールで冷間加工させて断面形状が平角状である導線に加工する工程1と、工程1の後に更に四角状の孔を有するダイスによる伸線加工を施した後、断面形状が平角状である導線の外周に電着によって絶縁層を形成させる工程2とを有し、冷間加工後の平角導線のコーナー部の角Rが小さく、かつ、スリット加工では必要であったバリ除去などの工程を有さない平角絶縁導線の製造方法が開示されている。
特許文献2には、断面が略四角形の導体の外周に、樹脂からなる少なくとも1層の絶縁被覆層を有し、導体の平坦部に被覆された絶縁被覆層の厚さt[mm]、導体のコーナー部の曲率半径R1[mm]、および絶縁被覆層のコーナー部の曲率半径R2[mm]が関係式:0<R2<R1+t/1.5を満たす巻線用絶縁電線であって、コーナー部での電界集中を抑制し、コロナ放電開始電圧や絶縁破壊電圧を向上させることができる高占積用の巻線として好適な巻線用絶縁電線及びその製造方法が開示されている。
特開2005−209378号公報 特開2010−55965号公報
ところで、平角導線の断面形状の長軸と短軸との長さの比(アスペクト比)が15:1以上に大きくなると、短軸の長さが1.2mm以下では、矩形断面の角部の曲率半径を精度良く形成するには無理があり、平角導線自体に曲がりや反りが生じ易くなり、被覆樹脂厚みの変動も大きくなるという欠点があった。
本発明は、長軸と短軸との長さの比が15以上で、短軸の長さが1.2mm以下でも、角部の曲率半径を精度良く形成でき、バリがなく、曲がりや反りも少なく、表面粗さが均質で良好であり、安定した樹脂被覆が得られるコイル用平角絶縁導線素材とその製造方法、そのコイル用平角絶縁導線素材から得られたコイル用平角絶縁導線、そのコイル用平角絶縁導線により得られた電気機器用コイルを提供する。
本発明者らは、上述の課題を解くべく鋭意検討の結果、タフピッチ銅或いは無酸素銅からなる平角絶縁導線素材において、その矩形断面の四隅に形成される角部の曲率半径と、その角部の表面粗さとに着目し、角部が特定の曲率半径となるように面取りされ、かつ、表面粗さが適切な範囲内となるように仕上げると、長軸と短軸との長さの比が15:1以上で、短軸の長さが1.2mm以下でも、矩形断面の角部の曲率半径を精度良く形成でき、バリがなく、曲がりや反りも少なく、表面粗さが均質で良好であり、安定した樹脂被覆ができることを見出した。
そして、そのようなコイル用平角絶縁導線素材は、従来方法の丸線から圧延して製造するのではなく、タフピッチ銅或いは無酸素銅の条材を切断機にて、その条材の厚みをtmmとした場合に、発生するバリの高さが0.05tmm以下となるようにスリット加工して、矩形断面を有するスリット条材を作製した後、抽伸加工して、矩形断面の角部を成形することにより製造できることを見出した。
すなわち、本発明のコイル用平角絶縁導線素材は、タフピッチ銅或いは無酸素銅からなり、矩形断面をなしている長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bが15以上であり、前記短軸の長さbが0.3mm〜1.2mmであり、前記矩形断面の四隅に形成される角部に0.05mm〜0.60mmの曲率半径の面取りがなされ、前記角部の表面の算術平均粗さRaが0.05μm〜0.3μmであり、最大高さRzが0.5μm〜2.5μmであり、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比率(Rq/Rz)が0.06〜1.1であることを特徴とする。
このコイル用平角絶縁導線素材は、矩形断面の長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bが15以上で、短軸の長さbが0.3mm〜1.2mmであり、角部の曲率半径が精度良く形成され、バリがなく、曲がりや反りも少なく、表面粗さが均質で良好であり、安定した樹脂被覆ができる。
矩形断面の長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bが15未満では、カセットローラーダイスを用いた従来法(CRD法)で製造されるものと大差なく、スリット切断するだけコストがかかる。なお、長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bをあまりに大きくし過ぎても製造技術上無理があり、反り等が生じない加工限界としては60程度である。
短軸の長さbが0.3mm未満では、曲がりや反りが許容範囲を超え、短軸の長さbが1.2mmを超えると、小型軽量化に寄与し難くなる。
角部の曲率半径は0.05mm未満とすることは、製造技術上無理があり、絶縁樹脂の被覆性も悪くなる。曲率半径が0.60mmを超えると、曲がり量が大きくなり、占積率も低下する。
角部の表面粗さは、算術平均粗さRaが0.3μmを超える、又は最大高さRzが2.5μmを超える、あるいは二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比率(Rq/Rz)が0.6未満のいずれかであると、絶縁樹脂の被覆性が悪くなる。算術平均粗さRaが0.05mm未満、最大高さRzが0.5mm未満、あるいはRq/Rzが1.1を超える、いずれかの状態となると、絶縁樹脂の被覆性の効果が飽和して無駄である。
更に、本発明のコイル用平角絶縁導線は、前記コイル用平角絶縁導線素材に絶縁皮膜が施されたものである。
更に、本発明の電気機器用コイルは、前記コイル用平角絶縁導線をコイル状に巻いて製造されたものである。
そして、前述のコイル用平角絶縁導線素材の製造方法は、タフピッチ銅或いは無酸素銅のインゴットを圧延し、その圧延により得られた圧延条材を切断機にてスリット加工し、短軸の長さがtmmであり、発生するバリの高さが0.05tmm以下である矩形断面を有するスリット条材を作製した後、前記スリット条材を抽伸ダイスにより抽伸加工して、前記矩形断面の角部を成形することを特徴とする。
圧延により平角状としているため、長軸と短軸との長さの比が大きい銅板を容易に製造することができ、また、バリの高さが0.05t以下となるようにスリット加工して得られたスリット条材を抽伸加工するので、スリット条材の角部を抽伸ダイスにより所定の曲率半径で精度よく成形することができ、曲がりや反りも少なく、表面粗さが均質で良好であり、安定した樹脂被覆が得られるコイル用平角絶縁導線素材を製造することができる。
バリの高さが0.05tを超えると、抽伸加工にてバリを取り込んで所定の表面粗さを有する矩形断面を形成することが難しくなる。
本発明で意味するバリの高さとは、スリット条材の短軸面から下方向に伸びるバリの最大長さである。
なお、抽伸加工は、スリット条材を抽伸ダイスに通して、矩形断面の角部を成形するものであればよく、その角部を成形するために、角部以外の平面部分もわずかにスキンパス状に成形されるものであってもよい。
本発明によれば、矩形断面の長軸と短軸との長さの比が15以上で、短軸の長さが0.3mm〜1.2mmで、角部の曲率半径を精度良く形成でき、バリがなく、曲がりや反りも少なく、表面粗さが均質で良好であり、安定した樹脂被覆が得られるコイル用平角絶縁導線素材を製造することができる。
本発明のコイル用平角絶縁導線の一実施形態を示す横断面図である。 実施形態のコイル用平角絶縁導線に用いられる平角絶縁導線素材の製造工程での変化を説明するための図であり、(A)がスリット条材の端部の横断面図、(B)が平角絶縁導線素材の端部の横断面図である。 実施形態のコイル用平角絶縁導線により形成された電気機器用コイルを示す斜視図である。 実施形態のコイル用平角絶縁導線素材の製造方法に用いられる抽伸ダイスを示す(A)が縦断面図、(B)が(A)のX−X線に沿う断面図である。
以下に、本発明の実施形態について説明する。
本実施形態のモーター用或いはトランス用の電気機器用コイル1は、図3に示すように、コイル用平角絶縁導線2をコイル状に巻いて製造されたものである。この場合、図3に示す例では、平角絶縁導線2の平面どうしが重なるように、矩形断面の長軸方向(幅方向)がコイルの軸方向とほぼ直交する方向に配置された、エッジワイズ巻とされている。
コイル用平角絶縁導線2は、図1に示すように、コイル用平角絶縁導線素材3に絶縁皮膜4が施されたものである。
コイル用平角絶縁導線素材3は、純度99.90%以上のタフピッチ銅或いは純度99.96%以上の無酸素銅からなり、後述するように、扁平な断面形状であり、その角部5が特定の曲率半径及び表面粗さに形成されている。
絶縁被覆4は、特に限定されるものではないが、電着により被覆を形成し得る絶縁性樹脂であればよく、従来から電線などの分野において電着用水分散樹脂ワニスとして使用されているもののいずれをも使用することができる。これらのなかで好ましいものは、アクリル系水分散樹脂ワニスであり、特に、エポキシ−アクリル系水分散樹脂ワニスが耐熱性に優れるため好ましい。
コイル用平角絶縁導線素材3の詳細について説明すると、その断面形状は、図1及び図2(B)に示すように、矩形をなしている長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bが15以上であり、短軸の長さbが0.3mm〜1.2mmである。また、矩形断面の四隅に形成される角部5に、0.05mm〜0.60mmの曲率半径rの面取りがなされ、角部5の表面の算術平均粗さRaが0.05μm〜0.3μmであり、最大高さRzが0.5μm〜2.5μmであり、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比率(Rq/Rz)が0.06〜1.1である。
コイル用平角絶縁導線素材3の矩形断面の長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bが15未満では、カセットローラーダイスを用いた従来法(CRD法)で製造されるものと大差なく、スリット切断するだけコストがかかる。なお、長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bをあまりに大きくし過ぎても製造技術上無理があり、反り等が生じない加工限界としては60程度である。
短軸の長さbが0.3mm未満では、曲がりや反りが許容範囲を超え、短軸の長さbが1.2mmを超えると、小型軽量化に寄与し難くなる。
また、矩形断面の四隅に形成される角部5の曲率半径rは0.05mm未満とすることは、製造技術上無理があり、絶縁樹脂の被覆性も悪くなる。曲率半径rが0.60mmを超えると、曲がり量が大きくなり、占積率も低下する。
角部5の表面粗さは、算術平均粗さRaが0.3μmを超える、又は最大高さRzが2.5μmを超える、あるいは二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比率(Rq/Rz)が0.6未満のいずれかであると、絶縁樹脂の被覆性が悪くなる。算術平均粗さRaが0.05mm未満、最大高さRzが0.5mm未満、あるいはRq/Rzが1.1を超える、いずれかの状態となると、絶縁樹脂の被覆性の効果が飽和して無駄である。
このように構成されるコイル用平角絶縁導線素材3は、タフピッチ銅或いは無酸素銅のインゴットを圧延し、その圧延により得られた圧延条材を切断機にてスリット加工し、短軸の長さがtmmであり、発生するバリの高さが0.05tmm以下である矩形断面を有するスリット条材6を作製した後、そのスリット条材6を抽伸ダイスにより抽伸加工することにより製造される。
圧延銅板は、タフピッチ銅或いは無酸素銅の銅板を熱間圧延、中間冷間圧延、焼鈍、最終冷間圧延、最終焼鈍して厚さ1.0mm程度、あるいは1.0mm以下の薄板としたものであり、スリット条材6は、この圧延条材を切断機にて所定幅にスリット加工して得られる。
このスリット加工は、圧延条材の一方の面から他方の面まで一度に切断するのではなく、一方の面から厚さの半分まで切断した、いわゆる「半切り」状態にした後、他方の面から切り戻すようにして切断することにより、バリの発生を回避したスリット加工法とするのが好ましい。
抽伸加工では、図4に示す抽伸ダイスが用いられる。この抽伸ダイス11は、断面矩形のダイス孔12を有しており、そのダイス孔12の長軸及び短軸の長さは、スリット条材6の長軸及び短軸の長さとほぼ同じか、それよりわずかに小さい長さに設定され、その四隅に形成されるコーナー部13は、所定の表面粗さの円弧面に形成されている。
そして、この抽伸ダイス11によりスリット条材6を抽伸加工することにより、長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bが15以上で、短軸の長さbが0.3mm〜1.2mmのコイル用平角絶縁導線素材3が形成される。また、抽伸ダイス11のコーナー部の円弧面により、コイル用平角絶縁導線素材3の角部5は、0.05mm〜0.60mmの曲率半径rの面取りがなされ、角部5の表面は、算術平均粗さRaが0.05μm〜0.3μm、最大高さRzが0.5μm〜2.5μm、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比率(Rq/Rz)が0.06〜1.1に形成される。
抽伸ダイス11のダイス孔12は、スリット条材6の矩形断面の角部を上述した面取り形状、表面状態に成形するものであればよく、その角部を成形するために、角部以外の平面部分もわずかにスキンパス状に成形されるものであってもよい。実用的には、全体として10%程度の断面減少率となるように成形するとよい。
このように、この抽伸加工は、予め矩形断面に形成した発生するバリの高さが0.05tmm(tはスリット条材の短軸の厚み)以下となるようにスリット加工して、矩形断面を有するスリット条材を作製した後、前記スリット条材を抽伸ダイスにより抽伸加工して、前記矩形断面の角部を成形することを特徴とする。スリット条材6の主として角部を成形するものであるため、抽伸ダイス11にかかる負担が小さく、その角部を所望の形状に成形することが容易であり、傷等の発生もなく表面状態が良好なコイル用平角絶縁導線素材3を得ることができる。
このようにして製造されたコイル用平角絶縁導線素材3を平角絶縁導線2とするには、平角絶縁導線素材3を有機溶剤等の洗浄槽に浸漬して、超音波洗浄等によって洗浄し、表面に付着した異物、酸化物等を除去した後、その表面に電着によりアクリル系水分散樹脂ワニス等の絶縁性樹脂からなる絶縁被覆4を形成することにより行われる。電着条件は、平角絶縁導線素材3の表面に1μm〜30μmの絶縁被覆4が形成される程度であればよく、例えば、D.C電圧5〜100V、電着時間は0.01〜30秒、電着の際のワニス温度は5〜40℃とされる。電着後、余剰溶剤等を除去するため、100℃〜700℃の温度で焼付け処理される。
この平角絶縁導線素材3は、角部の曲率半径が精度良く小さく形成され、バリがなく、表面粗さが均質で良好であるため、絶縁被覆4を例えば5μm以下の薄膜としても安定した絶縁被覆4を得ることができる。
次に、この絶縁被覆4を施した平角絶縁導線2は、所望の長さに切断され、コイル状に巻回される。図3に示す例ではエッジワイズ巻としたが、使用される態様に合わせて、整列巻、α巻などのコイルに加工される。
この平角絶縁導線2は、平角絶縁導線素材3の矩形断面の長軸と短軸との長さの比a/bが15以上で、短軸の長さbが0.3mm〜1.2mmであり、バリがなく、曲がりや反りも少ないため、導線間の隙間にばらつき等が生じることがなく、電気機器用コイルとしての巻回状態が良く、小型化、軽量化を図ることができる。
本発明の実施例を比較例とともに説明する。
厚さ3.0mmの三菱マテリアル株式会社製のタフピッチ銅(Cu:99.92%、O:300ppm、P:0ppm)からなる銅板に、熱間圧延、中間冷間圧延、焼鈍をこの順で施してタフピッチ銅薄板を作製し、更に、最終冷間圧延、最終焼鈍を施しタフピッチ銅薄板(圧延銅板)を得た。
次に、このタフピッチ銅薄板を切断機にてスリット加工し、厚みが0.3mm〜1.2mm、幅が4.8mm〜50mm、長さが2000mmの平角状薄板(スリット条材)を作製した。
ここで、切断面を光学顕微鏡(20倍)にて目視観察したところバリの高さは、0.001〜0.050mmであった。
次に、得られた平角状薄板を、抽伸ダイスを有する抽伸加工機に通し、平角状薄板の角部に面取り加工を施してコイル状に巻取り、表1に示す精度の面取り角部の曲率半径(r)と、表面粗さ(Ra,Rz,Rq/Rz)と、曲がり量を有する実施例1〜5に示すコイル用極細平角絶縁導線素材を作製した。
比較例として、同様のタフピッチ銅から押出し加工により形成された線径が1.4mm〜8.5mmのタフピッチ銅母線を、対向する2組の圧延ローラを有するカセットローラーダイスを通して冷間伸線加工を施してコイル状に巻取り、表1に示す精度の面取り角部の曲率半径(r)と、表面粗さ(Ra,Rz,Rq/Rz)と、曲がり量を有する比較例1〜5に示すコイル用極細平角絶縁導線素材を作製した。
面取り角部の曲率半径rの測定は、マイクロスコープ(倍率:100倍)を用いて、各コイル用極細平角絶縁導線素材の断面における長軸方向の角部長さcと短軸方向の角部長さd(図2(B)参照)をそれぞれ測定し、(長軸方向の角部長さc+短軸方向の角部長さd)/2により求めた。この曲率半径rを複数の断面について測定し、その平均値と標準偏差とを求めた。
表面粗さRa、Rz、Rqは、各コイル用極細平角絶縁導線素材から切出した試料の表面をオリンパス株式会社製の走査型共焦点レーザ顕微鏡LEXT OLS−3000を用い、対物レンズ100倍の条件でレーザ光を照射して、その反射光から距離を測定し、そのレーザ光を試料の表面に沿って直線的にスキャンしながら距離を連続的に測定することにより求めた。
曲がり量は、各コイル用極細平角絶縁導線素材1000mm長さ当りの曲がり量を実測して求めた。
次に、実施例1〜5、比較例1〜5に示すコイル用極細平角絶縁導線素材を有機溶剤にて超音波洗浄を行った後、その表面に絶縁樹脂(エポキシ−アクリル系水分散樹脂ワニス:ワニス温度25℃)を電着し、大気中で400℃にて10分間焼付けて、各試料に厚さ2μmの絶縁樹脂の被覆を施した。
これらの各試料につき、絶縁樹脂の被覆の均一性を測定した。その結果を表1に示す。
絶縁樹脂被覆の均一性は、各試料の断面を連続的にSEM観察して被覆厚みの平均値と標準偏差を求めて評価した。
Figure 2012195212
この表1に示す結果から明らかなように、圧延銅板をスリット加工した後、抽伸ダイスにより抽伸加工して得た実施例の平角導線素材は、丸状母線をカセットローラーダイスで平角状とした比較例に比べて、長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bが15以上で、短軸の長さbが1.2mm以下であっても、その矩形断面の角部の曲率半径が精度よく形成され、その表面が平滑であり、曲がり量も小さく、表面の絶縁被覆が均一で安定している。
また、実施例3で設定した寸法の平角絶縁導線素材に対して、スリット加工を「半切り」した後、他方の面から切り戻す切断方法ではなく、一度に他方の面まで切断した。実施例3では、バリが0.050mmであったところ、一度に他方の面まで切断した場合には、バリが0.13mmに増大し、その後の抽伸加工後の角部の表面粗さがRaで0.45μm、Rzで2.8μmとなり、所望の表面状態が得られなかった。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの記載に限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
1 電気機器用コイル
2 コイル用平角絶縁導線
3 コイル用平角絶縁導線素材
4 絶縁被覆
5 角部
6 スリット条材
11 抽伸ダイス
12 ダイス孔
13 コーナー部

Claims (4)

  1. タフピッチ銅或いは無酸素銅からなり、矩形断面をなしている長軸の長さaと短軸の長さbとの比a/bが15以上であり、前記短軸の長さbが0.3mm〜1.2mmであり、前記矩形断面の四隅に形成される角部に0.05mm〜0.60mmの曲率半径の面取りがなされ、前記角部の表面の算術平均粗さRaが0.05μm〜0.3μmであり、最大高さRzが0.5μm〜2.5μmであり、二乗平均平方根粗さRqと最大高さRzの比率(Rq/Rz)が0.06〜1.1であることを特徴とするコイル用平角絶縁導線素材。
  2. 請求項1記載のコイル用平角絶縁導線素材に絶縁皮膜が施されたことを特徴とするコイル用平角絶縁導線。
  3. 請求項2記載のコイル用平角絶縁導線をコイル状に巻いて製造された電気機器用コイル。
  4. 請求項1記載のコイル用平角絶縁導線素材の製造方法であって、タフピッチ銅或いは無酸素銅のインゴットを圧延し、その圧延により得られた圧延条材を切断機にてスリット加工し、短軸の長さがtmmであり、発生するバリの高さが0.05tmm以下である矩形断面を有するスリット条材を作製した後、前記スリット条材を抽伸ダイスにより抽伸加工して、前記矩形断面の角部を成形することを特徴とするコイル用平角絶縁導線素材の製造方法。
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