JP2004131417A - 豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】Bbおよび/またはPm由来抗原ならびにマイクロエマルジョンを含有するワクチンを作製し、豚のAR予防用製剤とする。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、豚の萎縮性鼻炎(atrophic rhinitis,以下ARと略記)の予防用ワクチン製剤に関し、詳しくは、高い安全性と優れた有効性を発現する豚用ワクチン製剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
ARはボルデテラ・ブロンキセプチカ(Bordetella bronchiseptica,以下Bbと略記)および毒素産生性パスツレラ・ムルトシダ(Pasteurella multocida,以下Pmと略記)の単独あるいは混合感染により起こる。豚の萎縮性鼻炎はわが国を含めた世界の養豚地帯で発生し、養豚経営上多大な経済的被害をもたらしている。
【0003】
本病の予防のため、両病原体の不活化菌体あるいは不活化毒素を成分とするワクチンが開発され広く利用されている。この不活化ワクチンには、免疫効果の誘導のため免疫賦活剤(アジュバント)が含まれるが、これは油性アジュバントと水酸化アルミニウムゲルアジュバントの二つに区別される。油性アジュバントを含むワクチンは高い免疫応答を誘導する反面、接種豚に強いストレスを誘発することおよび接種部位に重度な接種反応を惹起して接種物や接種痕を遺残させるという問題がある。一方、水酸化アルミニウムゲルアジュバントを含むワクチンは上記ストレスおよび遺残に関する問題はないが、そのアジュバント効果は油性アジュバントに較べると一般に弱い。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように豚用AR不活化ワクチンにおいては、高い安全性を保持しつつ優れた有効性を発現することが可能なアジュバントを含む製剤が要望されている。
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、接種豚に過度のストレスを誘導せず、注射局所における接種物質の残留および接種反応が極めて軽度で、高い安全性を保持する豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤を提供することである。
【0006】
さらに、本発明の他の課題は、妊娠豚への注射によってBbおよびPm毒素に対して高値の抗体を誘導し、それが初乳を介して産子に伝達され、育成および肥育期間中におけるARに対する高度な防御能を賦与する優れた有効性を保持するワクチン製剤を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するするために、本発明者らはマイクロエマルジョンをARワクチンのアジュバントに応用することを試み、鋭意研究を進め、上記のような問題を解決できることを見いだし、本発明を完成させた。すなわち、本発明は次の通りである。
(1)ボルデテラ・ブロンキセプチカ由来抗原および/またはパスツレラ・ムルトシダ由来抗原と、キレート化剤を有するマイクロエマルジョンを免疫賦活剤として含有することを特徴とする豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤。
(2)前記ボルデテラ・ブロンキセプチカ由来抗原が、ボルデテラ・ブロンキセプチカ不活化菌体である前記(1)に記載の豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤。
(3)前記パスツレラ・ムルトシダ由来抗原が、分子量約140 kDaの皮膚壊死毒素タンパク質である前記(1)に記載の豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤。
(4)ボルデテラ・ブロンキセプチカ由来抗原および/またはパスツレラ・ムルトシダ由来抗原の他に、さらに豚に由来する細菌性またはウイルス性の病原体由来抗原の1種または2種以上を含む混合ワクチンである、前記(1)から(3)のいずれかに記載の豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤。
【0008】
【発明の実施の形態】
上記課題を解決するために本発明より提供される動物用ワクチン製剤の特徴は、Bbおよび/またはPm由来抗原ならびにマイクロエマルジョンを含有するワクチンであり、特に、このワクチンが豚のAR予防用のものであるところにある。
【0009】
本発明におけるマイクロエマルジョンは免疫賦活剤として機能するものであり、本発明におけるマイクロエマルジョンとは、水中に分散された微小油性粒子からなるものである。微小油性粒子とは、軽鉱物油と界面活性剤を混合し、水中で乳化することにより5nmから500nmの粒子を形成させたものである。軽鉱物油としては、たとえばエ−テル化流動パラフィン、マコール52(商品名、セピック(株)製)、ドラケオール6VR(商品名、ペンレコ(株)製)、軽質流動化パラフィン(日局)等を挙げることができる。界面活性剤としては、たとえばマンナイドモノオレイン酸、オレイン酸マンニタンエステルのエトキシル化誘導体、モノステアリン酸グリセリル、モノラウリン酸デカグリセリル、ソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート等が使用できるが、軽鉱物油からマイクロエマルジョンを調製できればこれらのものに限定されない。
【0010】
本発明のマイクロエマルジョンは、これらの軽鉱物油をマイクロエマルジョン当り、0.001〜10.0wt%、好ましくは、0.01〜0.1wt%含むものである。0.001wt%未満では粒子が不安定となり、10wt%を超えて添加すると接種動物に対して接種物の遺残をもたらすことになる。
【0011】
また、界面活性剤は、上記軽鉱物油を乳化してマイクロエマルジョンとすることができれば、その添加量は特に限定されない。
【0012】
本発明のマイクロエマルジョンに含まれるキレ−ト化剤は、微小油性微粒子に結合した抗原の安定化と、微小油性粒子の免疫担当細胞への結合を介助する作用があり、例として、グルコン酸カルシウム、グルコン酸マンガン、サリチル酸アルミニウムまたは可溶性酢酸アルミニウム等の多イオン性酸複合体等が使用できる。これらのキレート化剤の添加量は、マイクロエマルジョン当り0.002〜30wt%、好ましくは0.01〜15wt%である。0.002wt%未満では免疫増幅効果が期待されず、30wt%を超えて添加すると接種動物に対して副作用がもたらされる。
【0013】
本発明のキレート化剤を有するマイクロエマルジョンを調製する方法は、例えば、水に、上記軽鉱物油、界面活性剤およびキレート化剤を加えて、公知の乳化手段により乳化して、マイクロエマルジョンとすればよい。
【0014】
キレート化剤を有するマイクロエマルジョンの最終ワクチン製剤液量に対する添加量は、好ましくは20〜50%(V/V)の範囲であり、特に好ましくは50%(V/V)とする。
【0015】
本発明の対象となるBb由来抗原としては、Bb菌体に由来し、抗原として作用するものを用いることができ、具体的にはBbの不活化菌体またはその菌体由来成分が含まれる。菌体由来成分は、Bbより抽出・精製したもの、あるいはBbの遺伝子をもとに大腸菌等の他の生物または細胞で発現させた組換えタンパク質であってもよい。
【0016】
本発明の対象となるPm由来抗原としては、好ましくは不活化Pm毒素であり、毒素産生性Pmより抽出・精製し化学的処理によって毒素活性を消失させたもの、あるいはPmの遺伝子をもとに一部改変し、大腸菌等の他の生物または細胞で発現させた無毒型の組換えタンパク質であってもよい。また、毒素以外のPm菌体成分を抽出したもの、あるいはPmの遺伝子をもとに大腸菌等の他の生物または細胞で発現させた組換えタンパク質であってもよい。
【0017】
また、本発明のワクチン製剤には、Bbおよび/またはPm由来抗原の他に、抗原性を有する物質を混合してもよい。例えば、豚由来病原性細菌または病原ウイルス由来抗原が好適であり、より具体的には、エリジペロスリックス・ルジオパシエ(Erysipelothrix rhusiopathiae)、マイコプラズマ・ハイオニュ−モニエ(Mycoplasma hyopneumoniae)、アクチノバシラス・プルロニュ−モニエ(Actinobacillus pleuropneumoniae)、ヘモフィルス・パラスイス(Haemophilus parasuis)、大腸菌(Esherichia coli)、サルモネラ・コレレエスイス(Salmonella choleraesuis)、連鎖球菌(Streptococcus suis)、豚繁殖呼吸障害症候群ウイルス(Porcine reproductive and respiratory syndrome virus)、日本脳炎ウイルス(Japanese encephalitis virus)、豚サ−コウイルス(Porcine Circovirus)、豚インフルエンザウイルス(Swine Influenza virus)、オーエスキー病ウイルス(Aujesky’s Disease virus)等を挙げることができる。病原体由来抗原とは、当該菌またはウイルスそのもの、あるいは当該菌またはウイルスより抽出・精製したもの、あるいはその遺伝子をもとに大腸菌等の他の生物で発現させた組換えタンパク質であってもよい。
【0018】
さらに、本発明のワクチン製剤には、一般にワクチン製剤に混合することがある他の成分を配合してもよい。
【0019】
本発明のワクチン製剤は、各成分を撹拌しながら混合することにより得られる。各成分の配合順序は限定されない。
【0020】
本発明のワクチン製剤は、筋肉内接種しても接種豚に過度の局所および全身性の接種反応を惹起せず、接種物の残存も比較的短期間に消失し、これらの性状は豚用のワクチンとして重要である。
【0021】
以下、本発明を実施例を挙げて説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0022】
【実施例】
<実施例1> マイクロエマルジョンワクチンの調製
(1)抗原液の調製
Bb N−40株(野外採取し、日生研株式会社が保有)を液体培地で37℃、15〜24時間培養した。培養菌液に0.25%(V/V)の割合で日局ホルマリンを加えて不活化後、遠心集菌して得られた菌体をリン酸緩衝食塩液(以下PBSと略す)に均一に浮遊して抗原液とした。なお、ワクチン調製時には所定の総菌数(4×109〜4×1010個/2 mL,ド−ス)となるようPBSで調整した。Pm G−7株(野外採取し、日生研株式会社が保有)を液体培地で37℃、5〜8時間培養した。これを遠心集菌して得られた菌体をリン酸緩衝液に均一に浮遊した後、物理的処理により菌体を破砕した。これを陰イオン交換カラムクロマトグラフィ−により分画し、毒素活性の存在する分画を採取して濃縮後、0.4%(V/V)の割合で日局ホルマリンを加えて不活化した。なお、ワクチン調製時には所定の不活化前タンパク量(60〜100μg/2 mL,ド−ス)となるようPBSで調整した。
【0023】
(2)マイクロエマルジョンの調製
牛脂を40気圧下にて200℃で20分間処理して水解した。得られた水解物よりグリセロール分画を除去し、180℃にて減圧下に蒸留した。蒸留により得られたオレイン酸にプリオレン6930(商品名、セピック(株)製)とマンニトールを加え、230℃で6時間加温してエステル化した。形成されたマンナイドモノオレイン酸70g、エーテル化流動パラフィン10g、およびキレート化剤であるグルコン酸マンガン10gを、PBS900mlに溶解し、エマルジョン形成用乳化機を用いて、室温で処理して乳化し、マイクロエマルジョンを調製した。
【0024】
なお、得られたマイクロエマルジョンの物性値は以下の通りであった。
・粒子サイズ:200nm
・比重:1.0
・粘度:5mPas(25℃)
・屈折率:1.367
・固形物含量:22.3%
・外観:白色不透明液体
・過酸化物値:2mmole以下
・ヨウ素値:3.6g I2/100g
・ケン化値:22mg KOH/g
・pH:5.6
・総灰分:0.5%
・異常毒性:なし
【0025】
(3)ワクチン製剤の調製
調製したそれぞれの抗原液とマイクロエマルジョンとを、等量に混合し、室温で5分間以上撹拌した。
【0026】
<実施例2> マイクロエマルジョンワクチンの豚に対する安全性
実施例1で試作したワクチン2 mLずつを、約3か月齢の豚4頭の頚部筋肉内に1か月間隔で2回注射した。各回注射後10日間、臨床上の異常(振顫、嘔吐、横臥、食欲消失等)の有無を観察した。さらに第2回注射後3か月に剖検して注射局所の肉眼的観察を行い、異常(投与物質の残存、肉芽腫の形成、筋肉の変色等)の有無を調べた。結果は表1及び表2に示した。
【0027】
【表1】
【0028】
表1中、臨床的に異常のないものは−で示した。
表1に示す通り、本試作ワクチンを注射した豚はいずれも臨床的異常を示さなかった。
【0029】
【表2】
【0030】
表2中、異常のないものは−で示した。
表2に示す通り、初回(剖検時接種後4か月)及び第2回(剖検時接種後3か月)注射局所のいずれにも異常は見られなかった。
【0031】
このように、マイクロエマルジョンを用いたARワクチンは、接種豚に対して極めて安全であることが示された。
【0032】
<実施例3>マイクロエマルジョンワクチンの豚における有効性
妊娠豚2頭を供試した。実施例1で作製したワクチン2 mLずつを、1産目には1または2か月間隔で2回、2産目には1回を、それぞれ筋肉内注射した。1産目の第2回注射および2産目の注射は、分娩予定前2週〜4週に実施した。比較のため、実施例1と同じ抗原を用い、マイクロエマルジョンのかわりに水酸化アルミニウムゲルをアジュバントとしたワクチン(従来品)を調製し、同じ方法で妊娠豚に注射した。
【0033】
マイクロエマルジョンワクチンおよび従来ワクチンを注射した母豚から初乳および分娩後約3週の血清を採取して、Bb凝集抗体価およびPm毒素ELISA抗体価を測定した。それぞれの母豚の産子から経時的に4週齢から最終12週齢まで採血し、同様に抗体価を測定した。
【0034】
さらに、マイクロエマルジョンワクチンについてはPm毒素に対する防御能の持続を確認するため、母豚No.1の 2産目の約6か月齢産子3頭および非注射対照母豚由来産子2頭に対し、Pm毒素を約4μg/体重kgとなるよう筋肉内に注射して攻撃した。攻撃後2週に剖検し、鼻甲介部を肉眼的に観察してAR病変の形成の有無を判定した。
【0035】
抗体応答の成績を表3および表4に示した。
【0036】
【表3】
【0037】
表3中、Bb抗体は凝集価で、Pm毒素抗体はELISA(E)値で示した。以降の表についても同様である。なお、表3中、「・」は、注射・採血を実施していないことを示した。
表3に示すように、試験に用いた4頭の母豚の初回注射時のBb凝集価はすべて20倍と低値であった。マイクロエマルジョンワクチンを注射した2頭の母豚の1産目の分娩後の血清のBb凝集価は1280あるいは2560倍に上昇し、水酸化アルミニウムゲルワクチン注射豚の抗体価(320及び160倍)に比べて4〜16倍高値であった。初乳においても、マイクロエマルジョンワクチン注射豚の凝集価は10240および20480倍で、水酸化アルミニウムゲルワクチン注射豚の抗体価に比べて4〜16倍高値であった。マイクロエマルジョンワクチン注射豚の2産目の分娩後血清および初乳の凝集価は1産目と同値から2倍を示し、2産目においても高い抗体価を維持できることが示された。
【0038】
試験に用いた4頭の母豚の初回注射時のPm毒素E値は0〜0.05と低値であった。マイクロエマルジョンワクチンを注射した2頭の母豚の1産目の分娩後の血清のE値は0.41及び0.96に上昇し、水酸化アルミニウムゲルワクチン注射豚の抗体価(0.12および0.25)に比べて約2〜8倍高値であった。初乳においても、マイクロエマルジョンワクチン注射豚のE値はいずれも2.0以上で、水酸化アルミニウムゲルワクチン注射豚の抗体価(2.0以上)と同様に高値であった。マイクロエマルジョンワクチン注射豚の2産目の分娩後血清および初乳のE値はすべて 2.0以上を示し、2産目においても高い抗体価を維持することが示された。
【0039】
図1に、マイクロエマルジョンワクチン注射母豚由来産子(第1産目および第2産目)ならびに水酸化アルミニウムゲルワクチン注射母豚由来産子(第1産目)において、4週齢から12週齢まで経時的に採血し、Bb凝集価およびPm毒素E値の推移を調査した成績を示した。Bb凝集価は、マイクロエマルジョンワクチン注射母豚由来第1産目産子では、4週齢時で825倍と初乳を介する高い移行抗体の伝達が認められ、以降週齢とともに抗体価は低下し、12週齢でも43倍を保持した。マイクロエマルジョンワクチン注射母豚の第2産目産子ではさらに高い移行抗体の伝達がみられ、4週齢では1000倍以上で、12週齢においても69倍の抗体価が保持された。一方、従来品である水酸化アルミニウムゲルワクチン注射母豚由来産子の凝集価は、4週齢で166倍で、10週齢以降は検出されなかった。
【0040】
Pm毒素に対するE値は、マイクロエマルジョンワクチン注射母豚の第1産目産子では、4週齢時で0.44と初乳を介する高い移行抗体の伝達が認められ、以降週齢とともに低下し、10週齢時以降は0.1以下となり陰転した。マイクロエマルジョンワクチン注射母豚の第2産目産子ではさらに高い移行抗体の伝達がみられ、4週齢では2.0以上で、12週の時点でも0.14と陽性を保持した。一方、従来品である水酸化アルミニウムゲルワクチン注射母豚の第1産目産子のE値は、4週齢で0.41で、8週齢以降0.1以下となり陰転した。
【0041】
このように、Bb凝集抗体およびPm毒素ELISA抗体は、従来品である水酸化アルミニウムゲルワクチンに比べて発明品であるマイクロエマルジョンワクチンで注射母豚に高く誘導され、それが初乳を介して産子に伝達され、高度な移行抗体が長期にわたって産子に保持されることが判明した。
【0042】
マイクロエマルジョンワクチン注射母豚由来産子において、高週齢においてPm毒素ELISA抗体消失後も防御能を保持していることを確認するため、ワクチン注射母豚由来産子が25週齢に達した時点で、ワクチン非注射対照母豚由来産子とともにPm毒素を筋肉内に注射して攻撃した。攻撃後2週に剖検し、鼻甲介を肉眼的に観察して形成されたAR病変をスコアリングした。
【0043】
【表4】
【0044】
表4中、AR病変スコアは、肉眼的観察により −:正常、1+:軽度、2+:中等度、3+:重度の4段階で示した。
【0045】
表4に示すように、攻撃時のPm毒素抗体価はすべての豚で0.1以下であり、陰性であった。攻撃後に形成されたAR病変は非注射対照母豚由来産子では中等度(2+)及び重度(3+)であったが、マイクロエマルジョンワクチン注射母豚由来産子では3頭すべてで陰性(−)であった。このことより、マイクロエマルジョンワクチン注射母豚由来産子においては、高週齢になり抗体が陰転しても、Pm毒素攻撃に対する防御能は保持されることが確認された。
【0046】
マイクロエマルジョンワクチンを母豚に注射することにより、従来の水酸化アルミニウムゲルアジュバントワクチンより高値の抗体が産生され、産子への移行抗体もより高値となり長期間持続することが確認された。また、Pm毒素に対する防御能は、通常の出荷月齢に相当する約6か月齢までの長期にわたって持続することがあわせて確認された。
【0047】
以上の成績により、本マイクロエマルジョンワクチンは、ARの制御にあたって従来品以上に重要な道具になるものと考えられる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の、豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤は、接種豚に過度のストレスを誘導せず、注射局所における接種物質の残留および接種反応が極めて軽度で、高い安全性を保持するものである。
【0049】
また本発明の、豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤は、妊娠豚への注射によってBbおよびPm毒素に対して高値の抗体を誘導し、それが初乳を介して産子に伝達され、育成および肥育期間中におけるARに対する高度な防御能を賦与する優れた有効性を保持するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例3におけるマイクロエマルジョンワクチンあるいは水酸化アルミニウムゲルアジュバントワクチン(従来品)を注射した母豚由来産子における移行抗体の消長を示すグラフである。それぞれ母豚2頭ずつに由来する産子の平均抗体価を示す。
Claims (4)
- ボルデテラ・ブロンキセプチカ由来抗原および/またはパスツレラ・ムルトシダ由来抗原と、キレート化剤を有するマイクロエマルジョンを免疫賦活剤として含有することを特徴とする豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤。
- 前記ボルデテラ・ブロンキセプチカ由来抗原が、ボルデテラ・ブロンキセプチカ不活化菌体である請求項1に記載の豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤。
- 前記パスツレラ・ムルトシダ由来抗原が、分子量約140 kDaの皮膚壊死毒素タンパク質である請求項1に記載の豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤。
- ボルデテラ・ブロンキセプチカ由来抗原および/またはパスツレラ・ムルトシダ由来抗原の他に、さらに豚に由来する細菌性またはウイルス性の病原体由来抗原の1種または2種以上を含む混合ワクチンである、請求項1から3のいずれかに記載の豚の萎縮性鼻炎用ワクチン製剤。
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